1.第1実施形態
〔基本構成〕
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1に、本実施形態に係る弁開閉時期制御装置10の構成を表す縦断面図を示し、図2に、図1のII-II線断面図で第1中間ロック位相P1でのロック状態を表す断面図を示す。図1および図2に示すように、内燃機関としてのエンジンEの吸気バルブ(不図示)の開閉時期を設定する弁開閉時期制御装置10と、エンジンEとを制御するエンジン制御ユニット(ECU)40を備えた内燃機関制御システムが構成されている。
本実施形態に係る内燃機関制御システムは、信号待ち等で停車した際にエンジンEを停止させるアイドリングストップ制御を実現するものである。なお、この内燃機関制御システムは、ハイブリッド型の車両のようにエンジンEの停止と始動とが頻繁に行われる車両において、弁開閉時期制御装置10とエンジンEとを制御する場合にも適用できる。
図1に示すエンジンEは、乗用車等の車両に備えられるものであり、クランクシャフト1に駆動回転力を伝えるスタータモータMと、インテークポートあるいは燃焼室に対する燃料の噴射を制御する燃料制御装置5と、点火プラグ(不図示)による点火を制御する点火制御装置6と、クランクシャフト1の回転角と回転速度とを検出するシャフトセンサ1Sとを備えている。弁開閉時期制御装置10には外部ロータ11と内部ロータ12との相対回転位相を検出する位相検出センサ46が備えられている。位相検出センサ46は直接的に相対回転位相を検出するものだけに限定されるのではなく、例えばカム角センサのように間接的に相対回転位相を算出可能なものも含んでいる。
ECU40は、機関制御部41と位相制御部42とを備えている。機関制御部41はエンジンEの自動始動と自動停止とを行い、位相制御部42は弁開閉時期制御装置10の相対回転位相とロック機構とを制御する。このECU40に関連する制御構成と、制御形態については後述する。
〔弁開閉時期制御装置〕
図1に示すように、弁開閉時期制御装置10は、エンジンEのクランクシャフト1と同期回転する駆動側回転部材としての外部ロータ11と、エンジンEの燃焼室の吸気バルブ(不図示)を開閉するカムシャフト3に連結ボルト13により連結する従動側回転部材としての内部ロータ12とを備えている。内部ロータ12は、カムシャフト3の軸芯Xと同軸芯に配置され、この内部ロータ12と外部ロータ11とは軸芯Xを中心にして相対回転自在に構成されている。
外部ロータ11と内部ロータ12とは軸芯Xと同軸芯上に配置され、外部ロータ11はフロントプレート14とリヤプレート15とに挟み込まれる状態で締結ボルト16により締結されている。リヤプレート15の外周にはタイミングスプロケット15Sが形成されている。内部ロータ12のリヤプレート15側の端部に吸気側のカムシャフト3が連結される。
図2に示すように、外部ロータ11には、軸芯Xの方向(径方向内側)に向けて突出する複数の突出部11Tが一体的に形成されている。内部ロータ12は複数の突出部11Tの突出端に密接する外周を有する円柱状に形成されている。これにより、回転方向で隣接する突出部11Tの間に流体圧室Cが形成される。内部ロータ12の外周には、流体圧室Cに向けて突出するように嵌め込まれているベーン17を複数備えている。このベーン17により仕切られた流体圧室Cは、回転方向で進角室Caと遅角室Cbとに分割されている。
図1に示すように、内部ロータ12とフロントプレート14とに亘って、外部ロータ11と内部ロータ12との相対回転位相(以下、相対回転位相と称する)が最遅角にある状態から相対回転位相を第1中間ロック位相P1に達するまで付勢力を作用させるトーションスプリング18が備えられている。なお、トーションスプリング18の付勢力が作用する範囲は、第1中間ロック位相P1を超えるものでも良く、第1中間ロック位相P1に達しないものであっても良い。
この弁開閉時期制御装置10は、エンジンEのクランクシャフト1に設けた出力スプロケット7と、外部ロータ11のタイミングスプロケット15Sとに亘ってタイミングチェーン8を巻回することで、外部ロータ11はクランクシャフト1と同期回転する。図面には示していないが、排気側のカムシャフト3の前端にも弁開閉時期制御装置10と同様の構成の装置が備えられており、この装置に対してもタイミングチェーン8から回転力が伝達される。
図2に示すように、弁開閉時期制御装置10は、クランクシャフト1からの駆動力により外部ロータ11が駆動回転方向Sに向けて回転する。また、外部ロータ11に対して内部ロータ12が駆動回転方向Sと同方向へ回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向への回転方向を遅角方向Sbと称する。この弁開閉時期制御装置10では、相対回転位相が進角方向Saに変化する際に変化量の増大に伴い吸気圧縮比を高め、相対回転位相が遅角方向Sbに変化する際に変化量の増大に伴い吸気圧縮比を低減するようにクランクシャフト1とカムシャフト3との関係が設定されている。
進角室Caは作動油が供給されることで相対回転位相を進角方向Saに変化させ、逆に遅角室Cbは作動油が供給されることで相対回転位相を遅角方向Sbに変化させる。ベーン17が進角方向Saの移動端(軸芯Xを中心にした揺動端)に達した状態での相対回転位相を最進角位相と称し、ベーン17が遅角側の移動端(軸芯Xを中心にした揺動端)に達した状態での相対回転位相を最遅角位相と称する。なお、最進角位相はベーン17の進角方向Saの移動端だけはなく、この近傍を含む概念である。これと同様に、最遅角位相はベーン17の遅角方向Sbでの移動端だけではなく、この近傍を含む概念である。
内部ロータ12には進角室Caに連通する進角制御油路21と、遅角室Cbに連通する遅角制御油路22と、後述する3つのロック機構に作動油を供給する主解除油路23とが形成されている。この弁開閉時期制御装置10では、エンジンEのオイルパン1Aに貯留される潤滑油を作動油として用いており、この作動油が進角室Caまたは遅角室Cbに供給される。
〔弁開閉時期制御装置:ロック機構〕
この弁開閉時期制御装置10は、第1中間ロック機構L1と、第2中間ロック機構L2と、最遅角ロック機構L3の3つのロック機構を備えている。図3に、弁開閉時期制御装置10の第2中間ロック位相P2でのロック状態を表す断面図を示す。図4に、弁開閉時期制御装置10の最遅角ロック位相P3でのロック状態を表す断面図を示す。第1中間ロック機構L1は、外部ロータ11と内部ロータ12との相対回転位相を図2に示す第1中間ロック位相P1にロックする機能と、そのロックを解除する機能とを有する。第2中間ロック機構L2は、相対回転位相を第1中間ロック位相P1より遅角方向Sbで図3に示す第2中間ロック位相P2にロックする機能と、そのロックを解除する機能とを有する。最遅角ロック機構L3は、相対回転位相を図4に示す最遅角位相に対応する最遅角ロック位相P3にロックする機能と、そのロックを解除する機能とを有する。
第1中間ロック位相P1は、相対回転位相が進角方向Saの作動端となる最進角位相と遅角方向Sbの作動端となる最遅角位相との間の所定位相に設定され、低温状態のエンジンEの始動を良好に行うことができる相対回転位相である。第2中間ロック位相P2は、エンジンEの始動後のアイドリング時にHC排出量を抑制できる相対回転位相である。最遅角ロック位相P3は、高温状態で停止しているエンジンE(停止から時間が経過していない状態のエンジンE)を低トルクでクランキングする相対回転位相である。
図2〜図4に示すように、第1中間ロック機構L1と第2中間ロック機構L2と最遅角ロック機構L3とは、第1ロック部材31と、第2ロック部材32と、第1凹部35と、第2凹部36と、第3凹部37との組み合わせにより構成される。本実施形態において、第1ロック部材31と第2ロック部材32とはロック部材の一例であり、第1凹部35及び後述する第2嵌合凹部36Aは凹部の一例である。
第1ロック部材31と第2ロック部材32はプレート状の部材で構成され、軸芯Xに平行な姿勢で軸芯X方向に向けて移動/離間できるように外部ロータ11に対し出退自在に支持されている。第1ロック部材31は第1スプリング31Sの付勢力により内部ロータ12の方向に移動し、第2ロック部材32は第2スプリング32Sの付勢力により内部ロータ12の方向に移動する。
第1凹部35は、内部ロータ12の外周の軸芯方向に沿って溝状に区画形成されており、径方向に平行な第1壁部分35aを備えている。第1凹部35の周方向の幅は、第1ロック部材31の厚みよりも十分広い。第1壁部分35aのうち、進角方向Sa側の部分が、第1中間ロック位相P1時に第1ロック部材31と当接する第1当接壁部分35cである。
第2凹部36は内部ロータ12の外周の軸芯方向に沿って溝状に区画形成されており、進角方向Saに向かって2段階で深さが深くなるラチェット構造を有している。浅い方の溝である第2ガイド凹部36Bの深さは第1凹部35と比較して浅く、且つその進角方向Saの端部には第2ロック部材32と嵌合する第2嵌合凹部36Aが連続的に形成されている。第2嵌合凹部36Aは、径方向に平行な第2壁部分36aを備えている。第2嵌合凹部36Aの深さは、第1凹部35の深さと同じである。第2凹部36全体の周方向の幅は第1凹部35の幅よりも広く、第2嵌合凹部36Aの幅は、第2ロック部材32の厚みより少し広い。第2壁部分36aのうち、進角方向Sa側の部分が、第2中間ロック位相P2時に第2ロック部材32と当接する第2当接壁部分36cである。
第3凹部37は内部ロータ12の軸芯方向に沿って溝状に区画形成されている。周方向の幅は、第1ロック部材31が打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌合可能な大きさに形成されている。
図2に示すように、第1中間ロック位相P1では、第1凹部35と嵌合した第1ロック部材31が第1当接壁部分35cに当接すると共に、第2凹部36と嵌合した第2ロック部材32が第2ガイド凹部36Bの内面の遅角方向Sbの端部に当接している。
上述したように、第1中間ロック機構L1は、第1ロック部材31と第1凹部35と第2ロック部材32と第2凹部36とで構成され、これにより相対回転位相を第1中間ロック位相P1に拘束(ロック)する。
第2中間ロック位相P2は、相対回転位相が第1中間ロック位相P1にある状態で第1ロック部材31を第1凹部35から離間させた後に、相対回転位相を遅角方向Sbに変化させて第2ロック部材32を第2嵌合凹部36Aに嵌合させたときの位相である。このとき、図3に示すように、第2ロック部材32は、第2当接壁部分36cに当接している。
このように、第2中間ロック機構L2は、第2ロック部材32と第2凹部36、特に第2嵌合凹部36Aとで構成され、これにより相対回転位相を第2中間ロック位相P2にロックする。
なお、この第2中間ロック位相P2では、第2ロック部材32が第2凹部36の第2嵌合凹部36Aと嵌合する構成は必須ではない。第2嵌合凹部36Aを備えずに第2ガイド凹部36Bだけが形成された第2凹部36によって、第2中間ロック機構L2を構成しても良い。このように第2凹部36が第2ガイド凹部36Bだけを備える構成では、第2中間ロック位相P2において、第2凹部36の進角方向Saの壁面に第2ロック部材32が当接して回転を規制する構成となる。
最遅角ロック位相P3は、相対回転位相が第2中間ロック位相P2にある状態で第2ロック部材32を第2凹部36から離間させた後に、相対回転位相をさらに遅角方向Sbに変化させて、図4に示すような、第1ロック部材31を第3凹部37に嵌合させたときの位相である。
このように、弁開閉時期制御装置10においては、第1中間ロック機構L1、第2中間ロック機構L2、最遅角ロック機構L3のそれぞれについて専用のロック部材と凹部を設ける必要がなく、第1ロック部材31、第2ロック部材32と、第1凹部35、第2凹部36、第3凹部37の組み合わせにより構成される。従って、弁開閉時期制御装置10の構成部品点数を減らして安価にすることができると共に、装置全体を小型にすることができる。
〔弁開閉時期制御装置:油路構成〕
図2〜図4に示すように、内部ロータ12には、主解除油路23から分岐して主解除油路23を流通する作動油を第1凹部35に給排する第1解除油路23Aと、第2凹部36に給排する第2解除油路23Bと、第3凹部37に給排する第3解除油路23Cとが形成されている。
特に、主解除油路23から第2解除油路23Bを介して第2凹部36に供給される作動油の流れを抑制するために、この油路系にオリフィス部Rが備えられている。前述したように、第2凹部36には第2嵌合凹部36Aが形成されている。この第2嵌合凹部36Aの径方向内側に接続された第2解除油路23Bにオリフィス部Rが形成されている。図5に、オリフィス部Rの構成を表す断面図を示す。
図5に示すように、オリフィス部Rは、第2解除油路23Bの内部に移動自在に収容されたボール26と、第2解除油路23Bに嵌め込まれる筒状のシート27と、ボール26が当接するホーン状の当接面27Sと、当接面27Sからボール26を離間させる方向に付勢力を与えるようにシート27とボール26との間に介装されるスプリング28とを備えている。シート27には、当接面27Sにボール26が当接した場合にも作動油の流通を可能にする溝部27Aが形成されている。図6に、図5のVI-VI線断面図を示す。図6に示すように、溝部27Aの流路断面積を第1解除油路23Aの流路断面積より小さくすることにより、ボール26が当接面27Sに当接しているときに第2解除油路23B(溝部27A)を流通する作動油には、第1解除油路23Aを流通する作動油より高い流路抵抗が発生する。
スプリング28は、内部ロータ12の回転時に発生する遠心力によりボール26が当接面27Sに当接しようとするのを、付勢力で阻止するために備えられている。また、付勢力が作用する状態でボール26に当接してボール26の位置を決める規制ピン29が第2解除油路23Bの内部に形成されている。
この構成により、オリフィス部Rは、主解除油路23から第2ロック部材32に作動油が供給される時には、作動油の圧力がスプリング28の付勢力を上回ることによりボール26が当接面27Sに当接して溝部27Aにのみ作動油が流通する状態となる。これにより、流路断面積が小さくなり作動油の流れが抑制される。第2凹部36から作動油が排出される時には、油圧およびスプリング28の付勢力によりボール26が当接面27Sから離間するので、作動油はオリフィス部Rにおいても第2解除油路23Bを流通する。その結果、排出時の流路抵抗は小さくなり、第2解除油路23Bを流通して排出される作動油は、第1解除油路23Aを流通して排出される作動油と同等に排出される。
このように、オリフィス部Rを備えることにより、第1中間ロック位相P1状態で主解除油路23に作動油が供給された場合には、第1凹部35には短時間に作動油が供給され、短時間のうちに第1ロック部材31を第1凹部35から離間させることができる。これに対して、第2凹部36への作動油の供給は、オリフィス部Rにより作動油の流通が制限されるため、第2ロック部材32の第2凹部36からの離間は、第1ロック部材31の離間より遅くなる。すなわち、第1ロック部材31が第1凹部35から離間した時点では、第2ロック部材32は第2ガイド凹部36Bと未だ嵌合した状態にあり、その後しばらくの間は、嵌合状態を維持する。
このように第1ロック部材31に対する第2ロック部材32の離間が遅延する現象を利用することで、第1ロック部材31の離間を確実に行いつつ、第2ロック部材32と第2ガイド凹部36Bの嵌合を維持する状態を実現できる。これにより、第1中間ロック位相P1から第2中間ロック位相P2への移行を確実に行うことが可能になる。
なお、オリフィス部Rを、ボール26に代えてポペット弁を用いることや、ボール26やポペット弁が備えられた流路と並列にオリフィス用の流路を備えて構成しても良い。
このように、主解除油路23を設けることにより、第1中間ロック機構L1、第2中間ロック機構L2、最遅角ロック機構L3のそれぞれについて個別に油路を形成する必要がなくなり、弁開閉時期制御装置10の油路の加工工数を削減して安価にすることができる。また、油路が占有する体積を削減することができるので、弁開閉時期制御装置10を小型化することができる。
〔弁開閉時期制御装置の流体制御機構〕
図1に示すように、エンジンEには、エンジンEの駆動力でオイルパン1Aの潤滑油を吸引して作動油として送り出す油圧ポンプ20を備えている。本実施形態に係る内燃機関制御システムでは、油圧ポンプ20から吐出された作動油を弁開閉時期制御装置10の進角室Caと遅角室Cbとの一方を選択して供給する電磁操作型の位相制御弁24と、油圧ポンプ20から吐出された作動油を主解除油路23に供給する電磁操作型の解除制御弁25とを備えている。特に、油圧ポンプ20と、位相制御弁24と、解除制御弁25と、作動油が給排される油路とを併せて弁開閉時期制御装置10の流体制御機構が構成されている。
位相制御弁24は、制御信号により進角ポジションと遅角ポジションと中立ポジションとに切り換え操作可能な電磁弁として構成されている。つまり、進角ポジションでは、油圧ポンプ20から吐出される作動油が進角制御油路21を流通して進角室Caに供給されると共に、遅角室Cbの作動油が遅角制御油路22から排出される。遅角ポジションでは、油圧ポンプ20から吐出される作動油が遅角制御油路22を流通して遅角室Cbに供給されると共に、進角室Caの作動油が進角制御油路21から排出される。中立ポジションでは、進角室Caと遅角室Cbのいずれにも作動油の給排は行われない。なお、位相制御弁24へ100%デューティで通電がなされたときには位相制御弁24は進角ポジションとなり、通電が切断されたときは遅角ポジションとなる。
解除制御弁25は、ECU40からの制御信号によりアンロックポジションとロックポジションとに切換操作可能な電磁弁として構成されている。つまり、アンロックポジションでは、油圧ポンプ20から吐出される作動油が主解除油路23を流通して第1凹部35と第2凹部36と第3凹部37とに供給される。ロックポジションでは、主解除油路23を流通して第1凹部35と第2凹部36と第3凹部37とからそれぞれ作動油が排出されることにより、第1ロック部材31と第2ロック部材32がそれぞれ第1凹部35、第2凹部36、第3凹部37のいずれかに嵌合可能になる。なお、解除制御弁25への通電がなされたときには解除制御弁25はロックポジションとなり、通電が切断されたときにはアンロックポジションとなる。
本実施形態では、相対回転位相制御のために位相制御弁24を用い、ロック制御のために位相制御弁24とは別に解除制御弁25を用いたが、この構成に限られない。進角制御油路21,遅角制御油路22と、主解除油路23,第1解除油路23A,第2解除油路23B,第3解除油路23Cとが互いに独立した油路である限りは、1つのソレノイドで相対回転位相制御とロック制御が可能なバルブを用いてもよい。
〔制御構成〕
図1に示すように、ECU40には、シャフトセンサ1Sと、イグニッションスイッチ43と、アクセルペダルセンサ44と、ブレーキペダルセンサ45と、位相検出センサ46とからの信号が入力される。ECU40は、スタータモータMと、燃料制御装置5と、点火制御装置6のそれぞれを制御する信号を出力すると共に、位相制御弁24と解除制御弁25を制御する信号を出力する。
イグニッションスイッチ43は、内燃機関制御システムが起動されるスイッチとして構成され、ON操作によりエンジンEが始動され、OFF操作によりエンジンEが停止される。また、ON操作された場合には、アイドリングストップ制御によるエンジンEの自動停止と自動始動とが可能な状態になる。
アクセルペダルセンサ44は、アクセルペダル(不図示)の踏み込み量を検出し、ブレーキペダルセンサ45は、ブレーキペダル(不図示)の踏み込みを検出する。
機関制御部41は、イグニッションスイッチ43の操作に基づいてエンジンEの始動と停止とを実現すると共に、エンジンEがアイドリング状態で停車した際にエンジンEを一時的に停止するアイドリングストップ制御を実現する。
位相制御部42は、エンジンEの稼動時に弁開閉時期制御装置10による吸気弁のタイミング制御を行い、エンジンEが停止する際の状況に基づいて弁開閉時期制御装置10の相対回転位相を設定し、ロック機構によるロック状態への移行を実現する。もし相対回転位相が変化されてロック状態への移行を図る途中でロック状態となる所望の相対回転位相を超過したことを位相検出センサ46が検出したときには、位相制御部42は相対回転位相の変化方向が反転される制御を行って所望の相対回転位相に戻し、速やかにロック状態への移行を図る。
〔制御形態:最遅角ロック位相のロック状態から第2中間ロック位相のロック状態へ〕
次に、本実施形態に係る内燃機関制御システムの制御形態のうち、最遅角ロック位相P3のロック状態から第2中間ロック位相P2のロック状態へ相対回転位相が変化するときの制御について図面を用いて説明する。図7に、相対回転位相が最遅角ロック位相P3でのロック状態におけるロック機構と流体制御機構を表す模式図を示す。図8に、相対回転位相が第2中間ロック位相P2を超過した時のロック機構と流体制御機構を表す模式図を示す。図9に、相対回転位相が第2中間ロック位相P2でのロック状態におけるロック機構と流体制御機構を表す模式図を示す。また、図12に、この相対回転位相の変化の過程における位相制御弁24の制御、解除制御弁25の制御、相対回転位相の変化のタイムチャートを示す。
最遅角ロック位相P3でロックされている時は、いわゆるアイドリングストップ制御により、エンジンEは停止している。この状態では、位相制御弁24は、通電は切断されて遅角ポジションを維持している。また、解除制御弁25は通電がなされており、ロックポジションになっている。ここから、位相制御部42が相対回転位相を第2中間ロック位相P2へ変化させる進角制御を行うときは、位相制御部42は、まず解除制御弁25をアンロックポジションに切り換える制御を行う。解除制御弁25のアンロックポジションへの切り換えが完了した段階で、位相制御弁24に100%デューティの通電を行い、進角ポジションに切り換える制御を行う。
一旦、外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が進角方向Saへ変化し始め、第1ロック部材31と第3凹部37とが対向しなくなった後、位相制御部42は解除制御弁25を再びロックポジションへ切り換える制御を行う。これにより、第1凹部35,第2凹部36,第3凹部37から作動油が排出される。
上述したように、第2当接壁部分36cは第2中間ロック位相P2時に第2ロック部材32が当接する面であるが、図7に示すように、最遅角ロック位相P3時には第2ロック部材32は、第2凹部36のうち、第2当接壁部分36cと最も距離が近い。そのため、進角方向Saへの相対回転位相が急激に変化した場合、第2ロック部材32と第2嵌合凹部36Aとが対向する前に第2凹部36から作動油が排出されたとしても、第2ロック部材32は第2嵌合凹部36Aと嵌合できず、図8に示すように、相対回転位相が第2中間ロック位相P2を超過して、第2ガイド凹部36Bと嵌合する場合がある。
相対回転位相が第2中間ロック位相P2を超過したときは、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、位相制御部42は相対回転位相の超過を認識する。そして、直ちに外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が進角方向Saから遅角方向Sbに反転されるように制御する。その結果、図9に示すように、相対回転位相が第2中間ロック位相P2でロックされる。
このように、相対回転位相が第2中間ロック位相P2を超過したときであっても、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、位相制御部42は、外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が進角方向Saから遅角方向Sbに反転されるように制御する。その結果、進角方向Saへの相対回転位相が急激に変化した場合であっても、相対回転位相を第2中間ロック位相P2で確実にロックさせることができる。
第2中間ロック位相P2においては、第2ロック部材32だけでロック状態を実現しているので、第1ロック部材31と第2ロック部材32とによりロック状態を実現する第1中間ロック位相P1と比べると、相対回転位相の急激な変化により所望の相対回転位相を超過するおそれは第2中間ロック位相P2でロックする場合の方が大きい。しかし、本実施形態のように、第2中間ロック位相P2を超過したときでも、位相制御部42が外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が進角方向Saから遅角方向Sbに反転されるように制御するので、第2ロック部材32だけで第2中間ロック位相P2でのロック状態を確実に実現することができる。
〔制御形態:第2中間ロック位相のロック状態から第1中間ロック位相のロック状態へ〕
本実施形態に係る内燃機関制御システムの制御形態のうち、第2中間ロック位相P2のロック状態から第1中間ロック位相P1のロック状態へ相対回転位相が変化するときの制御について図面を用いて説明する。図9に、相対回転位相が第2中間ロック位相P2でのロック状態におけるロック機構と流体制御機構を表す模式図を示す。図10に、相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過した時のロック機構と流体制御機構を表す模式図を示す。図11に、相対回転位相が第1中間ロック位相P1でのロック状態におけるロック機構と流体制御機構を表す模式図を示す。また、図13に、この相対回転位相の変化の過程における位相制御弁24の制御、解除制御弁25の制御、相対回転位相の変化のタイムチャートを示す。
第2中間ロック位相P2でロックされている時は、位相制御弁24は、通電は切断されて遅角ポジションを維持している。また、解除制御弁25は通電がなされており、ロックポジションになっている。ここから、位相制御部42が相対回転位相を第1中間ロック位相P1へ変化させる進角制御を行うときは、位相制御部42は、まず位相制御弁24を中立ポジションに切り換える制御を行う。これにより、解除制御弁25をアンロックポジションに切り換えても相対回転位相は変化しない。位相制御弁24を中立ポジションに切り換えた後、解除制御弁25をアンロックポジションに切り換える制御を行う。解除制御弁25のアンロックポジションへの切り換えが完了した段階で、位相制御弁24に100%デューティの通電を行い、進角ポジションに切り換える制御を行う。
一旦、外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が進角方向Saへ変化し始め、第2ロック部材32と第2嵌合凹部36Aとが対向しなくなった後、位相制御部42は解除制御弁25を再びロックポジションへ切り換える制御を行う。これにより、第1凹部35,第2凹部36,第3凹部37から作動油が排出される。
上述したように、第1当接壁部分35cは第1中間ロック位相P1時に第1ロック部材31が当接する面であるが、図9に示すように、相対回転位相が第2中間ロック位相P2である時には、第1ロック部材31は、第1凹部35のうちで第1当接壁部分35cと最も距離が近い。そのため、進角方向Saへの相対回転位相が急激に変化した場合、第1ロック部材31と第1凹部35とが対向する前に第1凹部35から作動油が排出され第1ロック部材31は第1凹部35に嵌合したとしても、第1ロック部材31は第1当接壁部分35cと当接できず、図10に示すように、相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過してしまう場合がある。
相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過したときは、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、位相制御部42は相対回転位相の超過を認識する。そして、直ちに外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が進角方向Saから遅角方向Sbに反転されるように制御する。その結果、図11に示すように、相対回転位相が第1中間ロック位相P1で拘束される。
このように、相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過したときであっても、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、位相制御部42は、外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が進角方向Saから遅角方向Sbに反転されるように制御する。その結果、進角方向Saへの相対回転位相が急激に変化した場合であっても、相対回転位相を第1中間ロック位相P1で確実にロックさせることができる。
〔制御形態:最遅角ロック位相のロック状態から第1中間ロック位相のロック状態へ〕
本実施形態に係る内燃機関制御システムの制御形態のうち、最遅角ロック位相P3のロック状態から第1中間ロック位相P1のロック状態へ相対回転位相を変化させるときの制御について図面を用いて説明する。図14に、この相対回転位相の変化の過程における位相制御弁24の制御、解除制御弁25の制御、相対回転位相の変化のタイムチャートを示す。
最遅角ロック位相P3でロックされている時は、位相制御弁24は、通電は切断されて遅角ポジションを維持している。また、解除制御弁25は通電がなされており、ロックポジションになっている。ここから、位相制御部42が第1中間ロック位相P1への相対回転位相を変化させる進角制御を行うときは、位相制御部42は、まず解除制御弁25をアンロックポジションに切り換える制御を行う。解除制御弁25のアンロックポジションへの切り換えが完了した段階で、位相制御弁24に100%デューティの通電を行い、進角ポジションに切り換える制御を行う。
一旦、外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が進角方向Saへ変化し始め、相対回転位相が第2中間ロック位相P2を過ぎた後、位相制御部42は解除制御弁25を再びロックポジションへ切り換える制御を行う。これにより、第1凹部35,第2凹部36,第3凹部37から作動油が排出される。相対回転位相が第2中間ロック位相P2を過ぎた後に解除制御弁25をロックポジションに切り換える理由は、仮に第1ロック部材31と第3凹部37とが対向しなくなった直後に解除制御弁25をロックポジションに切り換えると、第2ロック部材32が第2凹部36と嵌合するおそれがあるからである。
上述したように、第1当接壁部分35cは第1中間ロック位相P1時に第1ロック部材31が当接する面であるが、図9に示すように、第2中間ロック位相P2時には第1ロック部材31は、第1凹部35のうち、第1当接壁部分35cと最も距離が近い。そのため、進角方向Saへの相対回転位相が急激に変化した場合、第1ロック部材31と第1凹部35とが対向する前に第1凹部35から作動油が排出して第1ロック部材31が第1凹部35に嵌合したとしても、第1当接壁部分35cと当接できず、図10に示すように、相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過してしまう場合がある。
相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過したときは、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、位相制御部42は相対回転位相の超過を認識する。そして、直ちに外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が進角方向Saから遅角方向Sbに反転されるように制御する。その結果、図11に示すように、相対回転位相が第1中間ロック位相P1で拘束される。
このように、相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過したときであっても、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、位相制御部42は、外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が進角方向Saから遅角方向Sbに反転されるように制御する。その結果、進角方向Saへの相対回転位相が急激に変化した場合であっても、相対回転位相を第1中間ロック位相P1で確実にロックさせることができる。
本実施形態においては、遅角方向Sbへ相対回転位相を変化させるときは、上述のような相対回転位相の変化の方向を反転する制御は必要ではない。例えば、相対回転位相が最進角位相にあって遅角方向Sbに変化させて第1中間ロック位相P1でロックさせる場合においては、最進角位相では第1ロック部材31は第1凹部35の中で第1当接壁部分35cと最も距離が離れている。この場合、遅角方向Sbへの相対回転位相が急激に変化したとしても、第1凹部35の周方向の幅は、第1ロック部材31の厚みよりも十分広いので、第1ロック部材31は第1凹部35と嵌合し、慣性力で第1当接壁部分35cと当接して相対回転が拘束される。その時第2ロック部材32も第2ガイド凹部36Bと嵌合し、図2に示すような第1中間ロック位相P1でのロック状態を実現することができる。従って、相対回転位相の変化方向を反転させてロック状態にする機能は相対回転位相の一方向の変化にのみに設けるだけでよいので、弁開閉時期制御装置10のコストを低減することができる。
2.第2実施形態
以下、本発明の第2の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。本実施形態においては、ロック機構の構造が第1実施形態とは異なっており、その他の構造は同じである。よって、本実施形態の説明においては、第1実施形態と同じ構成の箇所には同じ符号を付し、同様の構成に関する説明は省略する。
〔弁開閉時期制御装置:ロック機構〕
この弁開閉時期制御装置10は、第1中間ロック機構L1と、最遅角ロック機構L3の2つのロック機構を備えている。図15に、本実施形態に係る弁開閉時期制御装置10において、相対回転位相が最進角位相付近にある状態を表す断面図を示す。図16に、相対回転位相が最進角位相付近の位相から遅角方向Sbに変化して第1中間ロック位相P1を超過した状態を表す断面図を示す。図17に、第1中間ロック位相P1でのロック状態を表す断面図を示す。図18に、最遅角ロック位相P3でのロック状態を表す断面図を示す。図15〜図18に示すように、第1中間ロック機構L1と最遅角ロック機構L3とは、第1ロック部材31と、第2ロック部材32と、第1凹部35と、第2凹部36と、第3凹部37との組み合わせにより構成される。第1ロック部材31と、第2ロック部材32の構成は第1実施形態と同じである。なお、本実施形態において、第1ロック部材31はロック部材の一例である。
図15に示すように、第1凹部35は、内部ロータ12の外周の軸芯方向に沿って溝状に区画形成されており、遅角方向Sbに向かって2段階で深さが深くなるラチェット構造を有している。深い方である第1嵌合凹部35Aが中間ロック位相P1時に第1ロック部材31と嵌合する溝であり、径方向に平行な第1壁部分35aを備えている。第1嵌合凹部35Aの幅は、第1ロック部材31の厚みよりもやや広い。第1壁部分35aのうち、遅角方向Sb側の部分が、第1中間ロック位相P1でのロック状態で第1ロック部材31と第1凹部35と当接する第1当接壁部分35cである。なお、本実施形態において、第1嵌合凹部35Aは凹部及び嵌合凹部の一例である。
第2凹部36は内部ロータ12の外周の軸芯方向に沿って溝状に区画形成されており、径方向に平行な第2壁部分36aを備えている。第2凹部36の周方向の幅は、第2ロック部材32の厚みよりもやや広い。第2凹部36のうち、進角方向Sa側の部分が、第1中間ロック位相P1でのロック状態で第2ロック部材32と当接する第2当接壁部分36cである。第1凹部35と第2凹部36とは、共に主解除油路23から分岐した通路により作動油の給排が行われる。
第3凹部37は内部ロータ12の軸芯方向に沿って溝状に区画形成されている。周方向の幅は、第2ロック部材32が打音の発生の抑制と確実なロック解除とを両立できる隙間で嵌合可能な幅に形成されている。第3凹部37は進角制御油路21から作動油の給排が行われる。
上述したように、第1中間ロック機構L1は、第1ロック部材31と第1凹部35と第2ロック部材32と第2凹部36とで構成され、これにより相対回転位相を第1中間ロック位相P1に拘束(ロック)する。図17に示すように、第1中間ロック位相P1のロック状態では、第1凹部35と嵌合した第1ロック部材31が第1当接壁部分35cに当接すると共に、第2凹部36と嵌合した第2ロック部材32が第2当接壁部分36cに当接している。
最遅角ロック機構L3は第2ロック部材32と第3凹部37とで構成され、図18に示すように、第2ロック部材32が第3凹部37に嵌合することにより相対回転位相を最遅角ロック位相P3に拘束(ロック)する。
〔制御形態:最進角位相の状態から中間ロック位相のロック状態へ〕
本実施形態に係る内燃機関制御システムの制御形態のうち、相対回転位相が最進角位相付近の位相である状態から第1中間ロック位相P1のロック状態へ相対回転位相を変化させるときの制御について図面を用いて説明する。図19に、この相対回転位相の変化の過程における位相制御弁24の制御、解除制御弁25の制御、相対回転位相の変化のタイムチャートを示す。
図15に示すように、相対回転位相が最進角位相付近の一定位相の時、位相制御弁24は、中立ポジションを維持している。また、解除制御弁25は通電がなされておらず、アンロックポジションになっている。ここから位相制御部42が相対回転位相を第1中間ロック位相P1へ変化させる遅角制御を行うときは、まず解除制御弁25をロックポジションに切り換える制御を行う。これにより、第1凹部35,第2凹部36から作動油が排出される。解除制御弁25のロックポジションへの切り換えが完了した段階で、位相制御弁24への通電を遮断し、遅角ポジションに切り換える制御を行う。これにより、第3凹部37からも作動油が排出される。
上述したように、第1当接壁部分35cは第1中間ロック位相P1でのロック状態において第1ロック部材31が当接する面であるが、図15に示す状態においては、第1ロック部材31は、第1凹部35のうち、第1当接壁部分35cと最も距離が近い。そのため、遅角方向Sbへの相対回転位相が急激に変化した場合、第1ロック部材31の厚みと比べて第1凹部35全体の幅は広いものの第1嵌合凹部35Aの幅はやや広い程度であるために第1嵌合凹部35Aと嵌合できないおそれがある。すなわち、第1ロック部材31が図16に示すように第1凹部35の浅い方の溝である第1ガイド凹部35Bと嵌合してしまい、相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過してしまう場合がある。また、このとき、第2ロック部材32は第2凹部36と嵌合できずに第2凹部36を超えてしまう。なお、本実施形態において、第1ガイド凹部35Bはガイド凹部の一例である。
相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過したときは、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、位相制御部42は相対回転位相の超過を認識する。そして、直ちに外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が遅角方向Sbから進角方向Saに反転されるように制御する。その結果、図17に示すように、相対回転位相が第1中間ロック位相P1で拘束される。
このように、相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過したときであっても、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、位相制御部42は、外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が遅角方向Sbから進角方向Saに反転されるように制御する。その結果、遅角方向Sbへの相対回転位相が急激に変化した場合であっても、相対回転位相が第1中間ロック位相P1で確実にロックすることができる。
相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過した状態において内部ロータ12の相対回転位相の変化方向が遅角方向Sbから進角方向Saに反転したときに、内部ロータ12の回転による剪断力が第1当接壁部分35cを介して第1ロック部材31に作用し、第1ロック部材31が第1嵌合凹部35Aに完全に嵌合する(図17の状態になる)前に止まってしまう場合がある。この状態を図20に示す。この状態は作動油の油圧が高いときに発生しやすくなる。このように、嵌合動作の途中で第1ロック部材31に剪断力が作用すると、相対回転位相は第1中間ロック位相P1になっているものの第1ロック部材31を第1嵌合凹部35Aに完全に嵌合させることができず、不完全なロック状態となる。
このような不完全なロック状態を防ぐためには、内部ロータ12の相対回転位相の変化方向が遅角方向Sbから進角方向Saに反転してから所定時間経過後に、位相制御弁24が再度遅角ポジションに反転される制御を行うか中立ポジションに切り換えられる制御を行うと良い。これにより、第1ロック部材31に作用する剪断力をなくすことができ、第1ロック部材31を第1嵌合凹部35Aに完全に嵌合させることができる。中立ポジションでも第1ロック部材31を第1嵌合凹部35Aに完全に嵌合させることができるのは、中立ポジションでは位相が保持された状態であっても内部ロータ12のバタつきによる多少の位相変化が発生するからである。
また、内部ロータ12の相対回転位相の変化方向が遅角方向Sbから進角方向Saに反転されてから所定時間経過したことだけに基づいて位相制御弁24が再度遅角ポジションに反転される制御を行うか中立ポジションに切り換えられる制御を行うのではなく、位相検出センサ46によって相対回転位相が第1中間ロック位相P1であることも同時に検出し、経過時間と相対回転位相の両方に基づいて位相制御弁24の切り換え制御を行う構成にしても良い。このように、相対回転位相が第1中間ロック位相P1にあり且つ所定時間経過後にのみ位相制御弁24の切り換え制御を行うことにより、より確実に第1ロック部材31を第1嵌合凹部35Aに完全に嵌合させることができる。
第1凹部35を構成する第1ガイド凹部35Bについては、その回転方向の角度(回転方向の幅と対応している)について特段の制約はない。ただし、第1ロック部材31が第1ガイド凹部35Bにあった場合でも、クランクシャフト1のクランキング中のカムの変動トルクにより第1ガイド凹部35Bから第1嵌合凹部35Aに移動するように第1ガイド凹部35Bの回転方向の角度が設定されていてもよい。
このような構成にすることにより、何らかの原因により第1ロック部材31が第1ガイド凹部35Bと嵌合した状態でエンジンEが停止した場合であっても、エンジンEの始動時のクランクシャフト1のクランキングにより第1ロック部材31を第1嵌合凹部35Aに移動させることができるので、エンジンEの始動時の特性が悪化するのを抑制することができる。
本実施形態においては、進角方向Saへ相対回転位相を変化させて第1中間ロック位相P1でロックさせるときは、上述のような相対回転位相の変化の方向が反転される制御は必要ではない。例えば、図18に示すような相対回転位相が最遅角ロック位相P3から相対回転位相を進角方向Saに変化させて図17で示すような第1中間ロック位相P1でロックさせる場合においては、最遅角ロック位相P3では第1ロック部材31は第1凹部35の中で第1当接壁部分35cと最も距離が離れており、第1ガイド凹部35Bと最も距離が近い。この場合、進角方向Saへの相対回転位相が急激に変化したとしても、第1凹部35の幅は第1ロック部材31の厚みよりも十分広く、またラチェット構造を備えているので、第1ロック部材31は第1凹部35のいずれかの溝と嵌合する。
そして相対回転位相がさらに進角方向Saへ変化するのに対応して第1凹部35の深さが段階的に深くなるので、一度第1ロック部材31が第1凹部35と嵌合すると、第1ロック部材31は第1凹部35の深さの深化に追従して移動する。この結果、第1ロック部材31によって内部ロータ12の相対回転が妨げられることはなく、最終的に第1ロック部材31が第1嵌合凹部35Aと嵌合して第1当接壁部分35cと当接して相対回転が拘束される。このとき、第2ロック部材32も第2凹部36と嵌合して第2当接壁部分36cに当接し、図17に示すような第1中間ロック位相P1でのロック状態を実現することができる。従って、相対回転位相の変化方向を反転させてロック状態にする機能は相対回転位相の一方向の変化にのみに設けるだけでよいので、弁開閉時期制御装置10のコストを低減することができる。
3.第3実施形態
以下、本発明の第3の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。本実施形態においては、ロック機構の構造が第1実施形態,第2実施形態とは異なっており、その他の構造は同じである。よって、本実施形態の説明においては、第1実施形態,第2実施形態と同じ構成の箇所には同じ符号を付し、同様の構成に関する説明は省略する。
〔弁開閉時期制御装置:ロック機構〕
この弁開閉時期制御装置10は、第1中間ロック機構L1と、最遅角ロック機構L3の2つのロック機構を備えており、第1ロック部材31と、第2ロック部材32と、第1凹部35と、第2凹部36と、第3凹部37との組み合わせにより2種類のロック状態を実現させる点は第2実施形態と同じである。第2実施形態と異なるのは、第1凹部35および第2凹部36の形状である。図21に、本実施形態に係る弁開閉時期制御装置10において、相対回転位相が最進角位相付近にある状態を表す断面図を示す。図22に、相対回転位相が最進角位相付近の位相から遅角方向Sbに変化して第1中間ロック位相P1を超過した状態を表す断面図を示す。図23に、第1中間ロック位相P1でのロック状態を表す断面図を示す。なお、本実施形態において、第2ロック部材32はロック部材の一例である。
図21に示すように、第1凹部35は、内部ロータ12の外周の軸芯方向に沿って溝状に区画形成されており、遅角方向Sbに向かって第1ガイド凹部35B、第1嵌合凹部35Aの順に2段階で深さが深くなるラチェット構造を有している。本実施形態においては、第1嵌合凹部35Aの周方向の幅は第2実施形態における第1嵌合凹部35Aの幅よりも十分大きく、図21の状態から外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が遅角方向Sbへ変化しても、第1ロック部材31は必ず第1嵌合凹部35Aと嵌合するように構成されている。
また、第1中間ロック位相P1においては、第1ロック部材31は、第1嵌合凹部35Aの進角方向Sa側,遅角方向Sb側のいずれの側の第1壁部分35aとも当接しない。すなわち、第1ロック部材31は、第1嵌合凹部35Aに嵌合しても第1中間ロック位相P1からの相対回転位相の変化を規制しない。相対回転位相の規制は後述する第2ロック部材32により実現される。
第2凹部36も、内部ロータ12の外周の軸芯方向に沿って溝状に区画形成されており、遅角方向Sbに向かって第2ガイド凹部36B、第2嵌合凹部36Aの順に2段階で深さが深くなるラチェット構造を有している。なお、本実施形態において、第2嵌合凹部36Aは凹部及び嵌合凹部の一例であり、第2ガイド凹部36Bはガイド凹部の一例である。第2嵌合凹部36Aは、径方向に平行な第2壁部分36aを備えている。第2壁部分36aのうち、遅角方向Sb側の部分が、第1中間ロック位相P1でのロック状態で第2ロック部材32と当接する第2当接壁部分36cである。本実施形態においては、第2嵌合凹部36Aの周方向の幅は第2実施形態における第2凹部36の幅よりも十分狭く、第2ロック部材32の厚みよりもわずかに広い程度である。この結果、本実施形態の第1中間ロック機構L1においては、第1中間ロック位相P1における進角方向Sa,遅角方向Sbのいずれの方向への相対回転位相の変化の規制も第2ロック部材32が第2嵌合凹部36Aの両側の第2壁部分36aに当接することにより実現している。
第1中間ロック機構L1は、第1ロック部材31と第1凹部35と第2ロック部材32と第2凹部36とで構成され、これにより相対回転位相を第1中間ロック位相P1に拘束(ロック)する。上述したように、実際の第1中間ロック位相P1における相対回転位相の変化の規制は上述したように第2ロック部材32と第2嵌合凹部36Aとの嵌合により実現され、第1ロック部材31と第1凹部35の嵌合は、相対回転位相が第1中間ロック位相P1から大きくずれるのを防ぐために設けられている。
〔制御形態:最進角位相の状態から中間ロック位相のロック状態へ〕
本実施形態に係る内燃機関制御システムの制御形態のうち、相対回転位相が最進角位相付近の位相である状態から第1中間ロック位相P1のロック状態へ相対回転位相が変化するときの制御は第2実施形態と同じであるので、詳細な説明は省略する。
上述したように、第2当接壁部分36cは第1中間ロック位相P1でのロック状態において第2ロック部材32が当接する面であるが、図21に示す状態においては、第2ロック部材32は、第2凹部36のうち、第2当接壁部分36cと最も距離が近い。そのため、遅角方向Sbへの相対回転位相が急激に変化した場合、第2ロック部材32の厚みと比べて第2凹部36全体の幅は広いものの第2嵌合凹部36Aの幅は第2ロック部材32の厚みよりもわずかに広い程度であるために第2嵌合凹部36Aと嵌合できないおそれがある。すなわち、第2ロック部材32が図22に示すように第2凹部36の第2ガイド凹部36Bと嵌合してしまい、相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過してしまう場合がある。このとき、第1ロック部材31は第1嵌合凹部35Aの進角方向Sa側の第1壁部分35aと当接して、相対回転位相がそれ以上遅角方向Sbに変化するのを防いでいる。
相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過したときは、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、位相制御部42は相対回転位相の超過を認識する。そして、直ちに外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が遅角方向Sbから進角方向Saに反転されるように制御する。その結果、図23に示すように、第2ロック部材32が第2嵌合凹部36Aと嵌合し、相対回転位相が第1中間ロック位相P1で拘束される。
このように、相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過したときであっても、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、位相制御部42は、外部ロータ11に対する内部ロータ12の相対回転方向が遅角方向Sbから進角方向Saに反転されるように制御する。その結果、遅角方向Sbへの相対回転位相が急激に変化した場合であっても、相対回転位相が第1中間ロック位相P1で確実にロックすることができる。
本実施形態においても、第2実施形態と同様、内部ロータ12の相対回転方向が遅角方向Sbから進角方向Saに反転されたときに、内部ロータ12の回転による剪断力が第2当接壁部分36cを介して第2ロック部材32に作用し、第2ロック部材32が第2嵌合凹部36Aに完全に嵌合する前に止まってしまう場合がある。この場合、第2実施形態と同様、内部ロータ12の相対回転方向が遅角方向Sbから進角方向Saに反転されてから所定時間経過後に、位相制御弁24が再度遅角ポジションに反転される制御を行うか中立ポジションに切り換えられる制御を行うことにより第2ロック部材32を第2嵌合凹部36Aに完全に嵌合させることができる。また、経過時間の検出と共に位相検出センサ46による相対回転位相も同時に検出し、経過時間と相対回転位相の両方に基づいて位相制御弁24の切り換え制御を行う構成にすることができるのは当然である。
第2ガイド凹部36Bの回転方向の角度も、第2実施形態と同様、クランクシャフト1のクランキング中のカムの変動トルクにより第2ロック部材32が第2ガイド凹部36Bから第2嵌合凹部36Aに移動するように設定されていてもよい。また、本実施形態においても、進角方向Saへ相対回転位相が変化して第1中間ロック位相P1でロックするときは、上述のような相対回転位相の変化の方向が反転する制御は必要ではない。
本実施形態の第1中間ロック機構L1において、第1ロック部材31と第1凹部35は、嵌合することにより相対回転位相が第1中間ロック位相P1から大きくずれるのを防ぐために設けられている。しかし、相対回転位相が第1中間ロック位相P1を超過したときは、位相検出センサ46が出力する相対回転位相の検出信号により、ECU40は相対回転方向が遅角方向Sbから進角方向Saに反転されるように制御するため、第1ロック部材31と第1凹部35がなくても、第2ロック部材32と第2凹部36とを嵌合させることができ、第1中間ロック位相P1でロック状態にすることができる。すなわち、第1ロック部材31と第1凹部35は必ずしも必要ではない。このように、第1中間ロック機構L1を第2ロック部材32と第2凹部36だけで構成することにより、部品点数が減って構成が簡素化されると共に、弁開閉時期制御装置10のコストダウンを図ることができる。
第1,第2実施形態においては、外部ロータ11の径方向に第1ロック部材31と第2ロック部材32が移動/離間したがこれだけに限られるものではない。第1ロック部材31と第2ロック部材32とが軸芯Xの方向に沿って移動/離間する構造であっても、第1,第2実施形態で説明した制御が適用できることは言うまでもない。