JP2014040987A - ロータリーキルンのシール構造およびロータリーキルン - Google Patents

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Abstract

【課題】全周的に、かつ充分に、シール界面を冷却することが可能なロータリーキルンのシール構造およびロータリーキルンを提供することを課題とする。
【解決手段】ロータリーキルン1のシール構造4は、回転筒部2の外周面から径方向外側に突出する回転側径方向延在部400と、回転側径方向延在部400から軸方向に延在する環状の回転側軸方向延在部401と、を有する回転フランジ部40と、回転側軸方向延在部401の径方向外側に回転筒部2から独立して配置され、回転側軸方向延在部401との間に環状のシール界面SAを形成する環状の固定側軸方向延在部411を有する固定フランジ部41と、シール界面SAを、回転側軸方向延在部401の径方向内側から全周的に冷却する冷却部45と、冷却部45に供給する冷媒Lの、温度および流量のうち少なくとも一方を、調整する冷媒調整部46と、を備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、被処理物を周方向に揺動させながら軸方向に搬送するロータリーキルンのシール構造およびロータリーキルンに関する。
特許文献1には、ロータリーキルンのシール構造が開示されている。図9に、同文献記載のロータリーキルンの排出筒付近の軸方向断面図を示す。図9に示すように、ロータリーキルン100は、レトルト101と、排出筒102と、フレキシブルチューブ103と、保持板104と、シール材105、106と、受けころ107と、冷却ノズル108と、を備えている。
レトルト101の内部では、被処理物に対して、熱処理が施されている。レトルト101の後端には、径方向外端が前側に折り返された形状の、フランジ101aが形成されている。フランジ101aの後面には、シール材106が埋設されている。シール材106は、石綿製である。レトルト101は、受けころ107の上面に載置されている。レトルト101は、自身の軸周りに回転可能である。一方、排出筒102、フレキシブルチューブ103、保持板104、シール材105は、レトルト101に対して独立している。これらの部材は、架台(図略)に固定されている。シール材105は、保持板104に固定されている。シール材105は、ゴム製である。
図9に太線で示すように、固定側のシール材105の内周面と、可動側のフランジ101aの外周面と、の間には、軸方向のガス通過を禁止する軸方向シール界面Saが配置されている。また、固定側の保持板104の前面と、可動側のシール材106の後面と、の間には、径方向のガス通過を禁止する径方向シール界面Sbが配置されている。
このように、同文献記載のロータリーキルン100には、軸方向シール界面Saと、径方向シール界面Sbと、が配置されている。このため、レトルト101の内部の雰囲気ガスが、ロータリーキルン100の外部に漏出するのを抑制することができる。
しかしながら、レトルト101の熱は、熱伝導により、フランジ101aの全体を介して、軸方向シール界面Saに伝達されてしまう。また、レトルト101の熱は、放射(輻射)により、空間およびフランジ101aの一部を介して、軸方向シール界面Saに伝達されてしまう。このため、ゴム製のシール材105が熱により劣化してしまう。
そこで、同文献のロータリーキルン100には、冷却ノズル108が配置されている。冷却ノズル108からは、冷却水が噴射される。このため、当該冷却水により、軸方向シール界面Saを冷却することができる。
特開2003−21461号公報
しかしながら、同文献のロータリーキルン100によると、全周的に軸方向シール界面Saを冷却することができなかった。すなわち、図9に示すように、冷却水は、レトルト101の外周面の最上部付近に、局所的に噴射されるだけである。一方、軸方向シール界面Saは、レトルト101の全周に亘って、環状に配置されている。このため、軸方向シール界面Saのうち、レトルト101の左右両側部分や下側部分に配置されている部分は、レトルト101の外周面を伝って流れ落ちる冷却水により、冷却されるに過ぎなかった。このように、同文献のロータリーキルン100によると、軸方向シール界面Saを全周的に冷却することができなかった。
また、同文献のロータリーキルン100によると、冷却水の温度を調整することができなかった。このため、冷却水自体が高温の場合、充分に軸方向シール界面Saを冷却することができなかった。
また、同文献のロータリーキルン100によると、本来は冷却不要なレトルト101の外周面を冷却している。当該外周面は高温のため、冷却水が接触すると蒸発し、工場内の湿度が上昇してしまう。このため、製品の種類によっては、当該湿度の上昇が悪影響を及ぼすおそれがある。
本発明のロータリーキルンのシール構造およびロータリーキルンは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、全周的に、かつ充分に、シール界面を冷却することが可能なロータリーキルンのシール構造およびロータリーキルンを提供することを目的とする。
(1)上記課題を解決するため、本発明のロータリーキルンのシール構造は、略水平に配置され、自身の軸周りに回転可能であって、軸方向に流動する被処理物に対して熱処理を施す熱処理室を内部に有する回転筒部を備えるロータリーキルンのシール構造であって、前記回転筒部の外周面から径方向外側に突出する回転側径方向延在部と、該回転側径方向延在部から軸方向に延在する環状の回転側軸方向延在部と、を有する回転フランジ部と、該回転側軸方向延在部の径方向外側に該回転筒部から独立して配置され、該回転側軸方向延在部との間に環状のシール界面を形成する環状の固定側軸方向延在部を有する固定フランジ部と、該シール界面を、該回転側軸方向延在部の径方向内側から全周的に冷却する冷却部と、該冷却部に供給する冷媒の、温度および流量のうち少なくとも一方を、調整する冷媒調整部と、を備えることを特徴とする。ここで、「回転筒部から独立して配置され」とは、回転筒部に固定されていないことをいう。すなわち、回転筒部と共に回転しないことをいう。
本発明のロータリーキルンのシール構造(以下、適宜、「シール構造」と略称する。)は、回転フランジ部と、固定フランジ部と、冷却部と、冷媒調整部と、を備えている。回転フランジ部は、回転側径方向延在部と、回転側軸方向延在部と、を備えている。固定フランジ部は、固定側軸方向延在部を備えている。回転筒部の回転に伴って、回転側軸方向延在部と固定側軸方向延在部とは摺接する。回転側軸方向延在部の外周面と、固定側軸方向延在部の内周面と、の間には、シール界面が形成されている。シール界面は、回転筒部の径方向外側に、全周的に環状に配置されている。
回転筒部の内部には、熱処理室が配置されている。熱処理室においては、被処理物に対して熱処理が施される。このため、回転筒部は、高温である。回転筒部の熱は、熱伝導により、回転側径方向延在部、回転側軸方向延在部を介して、シール界面に伝達される。また、回転筒部の熱は、放射(輻射)により、空間、回転側軸方向延在部を介して、シール界面に伝達される。このため、シール界面を形成する部材(例えばシール材など)が、熱により劣化してしまう。
この点、本発明のシール構造は、冷却部を備えている。冷却部は、シール界面を、回転側軸方向延在部の径方向内側から、全周的に冷却している。このため、本発明のシール構造によると、全周的に、シール界面を冷却することができる。したがって、シール界面を形成する部材が、局所的に熱により劣化してしまうのを抑制することができる。よって、シール界面を形成する部材の寿命を延ばすことができる。延いては、ロータリーキルンのランニングコストを削減することができる。
また、本発明のシール構造は、冷媒調整部を備えている。冷媒調整部は、冷媒の温度および流量(体積流量)のうち、少なくとも一方を調整することができる。すなわち、冷媒の温度を下げることができる。また、冷媒の流量を大きくすることができる。このため、本発明のシール構造によると、充分に、シール界面を冷却することができる。したがって、シール界面を形成する部材が、熱により劣化してしまうのを抑制することができる。よって、シール界面を形成する部材の寿命を延ばすことができる。延いては、ロータリーキルンのランニングコストを削減することができる。また、耐熱性が低い部材を、シール界面を形成する部材として、用いることができる。このため、部材選択の自由度が高くなる。
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記冷却部は、前記回転筒部と前記回転側径方向延在部と前記回転側軸方向延在部との間に挿入され、前記回転側軸方向延在部に向かって、前記冷媒を供給する冷媒供給部を有する構成とする方がよい。
図9に示すように、特許文献1に記載のロータリーキルン100によると、冷却水が、軸方向シール界面Saを形成するフランジ101aではなく、熱源であるレトルト101に噴射されていた。このため、軸方向シール界面Saは、レトルト101、フランジ101aを介して、間接的に冷却されるに過ぎなかった。したがって、充分に軸方向シール界面Saを冷却することができなかった。
これに対して、本構成によると、冷却部の冷媒供給部から、冷媒が、回転筒部ではなく、回転側軸方向延在部に供給される。すなわち、冷媒が、シール界面を形成する回転側軸方向延在部に、径方向内側から、供給される。このため、充分にシール界面を冷却することができる。
また、シール界面は、回転筒部の外周面と比較して、低温である。この点、本構成によると、高温の回転筒部を経由しないでシール界面を冷却することができる。このため、シール界面の冷却に要するエネルギーが少なくて済む。このように、本構成は、省エネルギー性に優れている。
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記冷媒は、液体であり、前記冷却部は、前記回転側軸方向延在部の内周面から径方向内側に突出する環状の仕切壁と、該仕切壁と該回転側軸方向延在部と前記回転側径方向延在部との間に区画され、最下部付近に該液体が溜まる環状の冷却槽と、該冷却槽の底面に敷設され該液体を吸収する環状の液体吸収部と、を有し、前記冷媒調整部は、該冷却槽との間に該液体の循環経路を形成する熱交換器と、該循環経路における該液体の流量を測定する流量計と、該循環経路における該液体の温度を測定する温度計と、該循環経路における該液体の流量を調整するポンプと、該流量計および該温度計から伝送される検出信号を基に、該ポンプおよび該熱交換器のうち少なくとも一方を制御する制御部と、を有する構成とする方がよい。
冷却部は、仕切壁と、冷却槽と、液体吸収部と、を備えている。冷却槽は、径方向に延在する仕切壁と、軸方向に延在する回転側軸方向延在部と、径方向に延在する回転側径方向延在部と、の間に配置されている。冷却槽は、回転筒部の径方向外側に、全周的に環状に配置されている。冷却槽の最下部付近には、冷媒である液体が、自重により溜まっている。回転筒部と共に冷却槽が回転しても、液体は、自重により、冷却槽の最下部付近に滞留している。
液体吸収部は、冷却槽の底面(回転側軸方向延在部の内周面)に敷設されている。液体吸収部は、冷却槽と同様に、回転筒部の径方向外側に、全周的に環状に配置されている。液体吸収部は、液体を吸収可能である。
回転筒部と共に液体吸収部が回転する際、液体吸収部は、冷却槽の最下部付近を通過する。すなわち、液体内を通過する。この際、液体吸収部は、冷却される。また、液体吸収部が、液体を吸収可能な状態である場合(飽和吸収量に達していない場合)は、液体を吸収する。液体吸収部は、回転筒部の回転に伴って、回転する。
このように、本構成によると、回転筒部の回転に伴って、液体を含有した液体吸収部が、回転筒部の径方向外側に、全周的に配置されることになる。このため、全周的に、シール界面を冷却することができる。
また、冷媒調整部は、熱交換器と、流量計と、温度計と、ポンプと、制御部と、を備えている。このため、液体吸収部および冷却槽において、シール界面の冷却により昇温した液体を、熱交換器で冷却して、再び液体吸収部および冷却槽に戻すことができる。つまり、液体を、循環して使用することができる。したがって、ロータリーキルンのランニングコストを削減することができる。また、制御部は、流量計および温度計から伝送される検出信号を基に、ポンプおよび熱交換器のうち少なくとも一方を、制御することができる。このため、液体の流量(循環量)および温度のうち少なくとも一方を、調整することができる。
(3−1)好ましくは、上記(3)の構成において、前記冷媒調整部は、前記冷却槽の液位を測定するレベル計を有し、前記制御部は、前記流量計、前記温度計に加えて、該レベル計から伝送される検出信号を基に、前記ポンプおよび前記熱交換器のうち少なくとも一方を制御する構成とする方がよい。
本構成によると、制御部は、流量計、温度計、レベル計から伝送される検出信号を基に、ポンプおよび熱交換器のうち少なくとも一方を、制御することができる。このため、液体の流量(循環量)および温度のうち少なくとも一方を、より緻密に調整することができる。また、冷却槽からの液体のオーバーフローを制御することができる。
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記冷却部は、前記仕切壁と前記回転側径方向延在部との間に介装され前記冷却槽を複数に分割する分割壁と、前記冷媒を排出する冷媒排出部と、を有し、複数の該冷却槽のうち、一つは、前記冷媒調整部から、前記冷媒供給部を介して、前記液体が供給される冷却槽であり、複数の該冷却槽のうち、別の一つは、該冷媒調整部に、該冷媒排出部を介して、該液体を排出する冷却槽であり、該液体は、複数の該冷却槽の間を、供給側から排出側に向かって、順番に流動する構成とする方がよい。
本構成によると、液体は、複数の冷却槽の間を流動しながら、液体吸収部に接触する。このため、冷却槽と液体吸収部との間で、効率良く熱交換を行うことができる。すなわち、回転筒部の回転に伴って、冷却槽の最下部付近を出発して、回転筒部を周回し、再び冷却槽の最下部付近に到着した液体吸収部を、言い換えると回転側軸方向延在部(シール界面)との間の熱交換により加熱された液体吸収部を、効率良く冷却することができる。
また、液体は、冷媒供給部→複数の冷却槽→冷媒排出部という経路で流動する。このため、ロータリーキルンが配置される場所(例えば、工場の床や架台など)が、液体により濡れるのを抑制することができる。
(5)好ましくは、上記(2)の構成において、前記冷媒は、気体であり、前記冷却部は、前記回転筒部と前記回転側径方向延在部と前記回転側軸方向延在部との間に環状に配置される冷却部本体を有し、前記冷媒供給部は、該冷却部本体に、周方向に所定間隔ずつ離間して、複数配置され、前記冷媒調整部は、コンプレッサーと、該コンプレッサーと該冷却部本体との間に介装され、該コンプレッサーから圧送される気体を、低温の気体と高温の気体とに分離し、低温の該気体を該冷却部本体に供給するボルテックスチューブと、を有する構成とする方がよい。
冷却部は、冷却部本体と、複数の冷媒供給部と、を備えている。冷却部本体は、軸方向に延在する回転筒部と、径方向に延在する回転側径方向延在部と、軸方向に延在する回転側軸方向延在部と、の間に配置されている。冷却部本体は、回転筒部の径方向外側に、全周的に環状に配置されている。複数の冷媒供給部は、冷却部本体に、周方向に所定間隔ずつ離間して、配置されている。
本構成によると、複数の冷媒供給部が、冷却部本体に、全周的に配置されている。このため、全周的に、シール界面を冷却することができる。
また、冷媒調整部は、コンプレッサーと、ボルテックスチューブと、を備えている。このため、ボルテックスチューブにより、コンプレッサーから圧送される気体を、低温の気体と、高温の気体と、に分離することができる。冷媒調整部は、このうち、低温の気体だけを、選択的に、冷却部本体に供給する。したがって、冷媒である気体の温度を、下げることができる。また、冷媒として気体を用いるため、ロータリーキルンが配置される場所(例えば、工場の床や架台など)が、汚れるのを抑制することができる。
(6)好ましくは、上記(5)の構成において、前記気体は、前記冷媒供給部から、前記回転側軸方向延在部の内周面付近、前記回転側径方向延在部の軸方向一面付近、前記回転筒部の外周面付近を経由して、該回転筒部と該回転側径方向延在部と該回転側軸方向延在部との間から、流出する構成とする方がよい。
本構成によると、気体は、回転側軸方向延在部の内周面付近→回転側径方向延在部の軸方向一面付近→回転筒部の外周面付近という経路で、径方向外側から径方向内側にC字状に旋回するように、流動する。このため、回転側軸方向延在部(シール界面)との間の熱交換により加熱された気体が、回転筒部と回転側径方向延在部と回転側軸方向延在部との間の空間に、滞留しにくい。
(7)また、上記課題を解決するため、本発明のロータリーキルンは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成のロータリーキルンのシール構造を備えることを特徴とする。本発明のロータリーキルンによると、全周的に、シール界面を冷却することができる。したがって、シール界面を形成する部材が、局所的に熱により劣化してしまうのを抑制することができる。よって、シール界面を形成する部材の寿命を延ばすことができる。延いては、ロータリーキルンのランニングコストを削減することができる。
また、本発明のロータリーキルンによると、冷媒の温度および流量(体積流量)のうち、少なくとも一方を調整することができる。このため、充分に、シール界面を冷却することができる。
本発明によると、全周的に、かつ充分に、シール界面を冷却することが可能なロータリーキルンのシール構造およびロータリーキルンを提供することができる。
第一実施形態のロータリーキルンの軸方向断面図である。 図1の後側のシール構造付近の拡大図である。 図2のIII−III方向断面図である。 図2の枠IV内の拡大図である。 第二実施形態のロータリーキルンの後側のシール構造付近の軸方向断面図である。 図5のVI−VI方向断面図である。 図5の枠VII内の拡大図である。 その他の実施形態のロータリーキルンの後側のシール構造付近の拡大図である。 従来のロータリーキルンの排出筒付近の軸方向断面図である。
以下、本発明のロータリーキルンの実施の形態について説明する。
<第一実施形態>
[ロータリーキルンの構成]
まず、本実施形態のロータリーキルンの構成について説明する。図1に、本実施形態のロータリーキルンの軸方向断面図を示す。図1に示すように、本実施形態のロータリーキルン1は、回転筒部2と、供給装置3と、前後一対のシール構造4と、加熱装置5と、前後一対のタイヤ受け装置60と、前後一対の筒間シール部材61と、を備えている。
(回転筒部2)
回転筒部2は、外筒20と、内筒21と、を備えている。回転筒部2は、前後方向(軸方向)に延在している。回転筒部2は、略水平に配置されている。詳しくは、回転筒部2は、前側(上流側)から後側(下流側)に向かって、若干下側に傾斜している。
外筒20は、前筒部20aと、中間筒部20bと、後筒部20cと、を備えている。前筒部20a、中間筒部20b、後筒部20cは、各々、ステンレス鋼製であって、前後方向に延びる円筒状を呈している。前筒部20aと中間筒部20bと後筒部20cとは、前後方向に連なっている。
外筒20(中間筒部20b)の外周面には、前後一対のタイヤ200が環装されている。内筒21は、カーボン製であって、前後方向に延びる円筒状を呈している。内筒21は、外筒20の径方向内側に配置されている。内筒21の内部には、熱処理室210が区画されている。また、内筒21の内部には、雰囲気ガスが供給されている。図1に矢印で示すように、被処理物Wは、熱処理室210を、前側から後側に向かって流動する。
(タイヤ受け装置60)
前後一対のタイヤ受け装置60は、架台(図略)に固定されている。前後一対のタイヤ受け装置60は、各々、左右一対の受けころ600を備えている。前側のタイヤ受け装置60には、回転筒部2の前側のタイヤ200が載置されている。後側のタイヤ受け装置60には、回転筒部2の後側のタイヤ200が載置されている。このため、回転筒部2は、前後一対のタイヤ受け装置60上を、自身の中心軸A周りに回転可能である。
(加熱装置5)
加熱装置5は、外壁50と、断熱壁51と、多数のヒータ52と、を備えている。外壁50は、ステンレス鋼製であって、直方体箱状を呈している。断熱壁51は、多数の耐火煉瓦が組み合わされて形成されている。断熱壁51は、外壁50の内面に固定されている。断熱壁51の内部には、多数のヒータ52が挿入されている。多数のヒータ52は、回転筒部2の熱処理室210を、外側から加熱している。
(供給装置3)
供給装置3は、供給ホッパー30と、スクリューフィーダー31と、を備えている。供給装置3は、架台に固定されている。供給装置3は、回転筒部2の前側に配置されている。スクリューフィーダー31は、回転筒部2の前側の開口部2fに、挿入されている。供給ホッパー30は、スクリューフィーダー31の上側に配置されている。被処理物Wは、スクリューフィーダー31を介して、供給ホッパー30から回転筒部2に供給される。
(シール構造4)
前後一対のシール構造4は、回転筒部2の前後両側の開口部2f、2rを封止している。前後一対のシール構造4の構成は略同じである。すなわち、両者の相違点は、後述するように、前側のシール構造4がカバー部材43を備えているのに対して、後側のシール構造4が排出筒44を備えている点である。また、前後一対のシール構造4の配置は前後対称である。ここでは、前後一対のシール構造4を代表して、後側のシール構造4について説明する。
図2に、図1の後側のシール構造付近の拡大図を示す。図3に、図2のIII−III方向断面図を示す。図4に、図2の枠IV内の拡大図を示す。図2〜図4に示すように、後側のシール構造4は、回転フランジ部40と、固定フランジ部41と、フレキシブルチューブ42と、排出筒44と、冷却部45と、冷媒調整部46と、を備えている。なお、図1に示す前側のシール構造4には、排出筒44の代わりに、カバー部材43が配置されている。
回転フランジ部40は、回転側径方向延在部400と、回転側軸方向延在部401と、を備えている。回転側径方向延在部400は、延在部本体400aと、径方向シール材400bと、を備えている。延在部本体400aは、ステンレス鋼製であって、円環状を呈している。延在部本体400aは、外筒20(後筒部20c)の外周面から、径方向外側に突設されている。径方向シール材400bは、グランドパッキン製であって、円環状を呈している。径方向シール材400bは、延在部本体400aに固定されている。
回転側軸方向延在部401は、ステンレス鋼製であって、短軸円筒状を呈している。回転側軸方向延在部401は、延在部本体400aの前面の外周縁から、前側(軸方向一方)に突設されている。
固定フランジ部41は、固定側径方向延在部410と、固定側軸方向延在部411と、を備えている。固定側径方向延在部410は、ステンレス鋼製であって、円環状を呈している。固定側径方向延在部410は、回転側径方向延在部400の後側に配置されている。固定側径方向延在部410の前面と、回転側径方向延在部400の後面(具体的には径方向シール材400bの後面)と、の間には、径方向シール界面SBが形成されている。図2に示すように、径方向シール界面SBは、回転筒部2の内部の雰囲気ガスG4が、ロータリーキルン1の外部に漏出するのを、抑制している。
固定側軸方向延在部411は、延在部本体411aと、二つの軸方向シール材411bと、を備えている。固定側軸方向延在部411は、回転側軸方向延在部401の径方向外側に配置されている。延在部本体411aは、ステンレス鋼製であって、短軸円筒状を呈している。二つの軸方向シール材411bは、各々、シリコンパッキン製であって、円環状を呈している。二つの軸方向シール材411bは、延在部本体411aに固定されている。固定側軸方向延在部411の内周面(具体的には二つの軸方向シール材411bの内周面)と、回転側軸方向延在部401の外周面と、の間には、二つの軸方向シール界面SAが形成されている。二つの軸方向シール界面SAは、各々、本発明の「シール界面」の概念に含まれる。図2に示すように、二つの軸方向シール界面SAは、回転筒部2の内部の雰囲気ガスG4が、ロータリーキルン1の外部に漏出するのを、抑制している。雰囲気ガスG4の漏出流路において、二つの軸方向シール界面SAは、径方向シール界面SBの、下流側に配置されている。
図2に示すように、排出筒44は、ステンレス鋼製であって、上下方向に延びる筒状を呈している。排出筒44は、回転筒部2の後側の開口部2rを、後側(軸方向外側)から覆っている。排出筒44の内部には、バルブ95を介して、雰囲気ガスG4が供給可能である。排出筒44の下端の開口部からは、ロータリーバルブ96を介して、被処理物Wを排出可能である。
フレキシブルチューブ42は、ステンレス鋼製であって、前後方向に延びる短軸円筒状を呈している。フレキシブルチューブ42は、蛇腹部を備えている。フレキシブルチューブ42は、回転筒部2の径方向外側に配置されている。フレキシブルチューブ42は、固定フランジ部41と、排出筒44と、を変芯可能に連結している。
図4に示すように、冷却部45は、冷媒供給部450と、仕切壁451と、二つの冷却槽452と、二つの吸水材453と、分割壁454と、冷媒排出部455と、を備えている。二つの吸水材453は、各々、本発明の「液体吸収部」の概念に含まれる。
仕切壁451は、ステンレス鋼製であって、円環状を呈している。仕切壁451は、回転側軸方向延在部401の内周面の前端から、径方向内側に突設されている。分割壁454は、ステンレス鋼製であって、円環状を呈している。分割壁454は、回転側軸方向延在部401の内周面の前後方向略中央から、径方向内側に突設されている。
二つの冷却槽452は、各々、円環状を呈している。二つの冷却槽452は、前後方向に並んでいる。前側の冷却槽452は、仕切壁451の後面と、分割壁454の前面と、の間に区画されている。後側の冷却槽452は、分割壁454の後面と、延在部本体400aの前面と、の間に区画されている。図3に示すように、二つの冷却槽452の最下部付近には、自重により冷却水Lが溜まっている。冷却水Lは、本発明の「液体」の概念に含まれる。冷却水Lは水である。二つの冷却槽452は、回転筒部2と共に、回転筒部2の中心軸Aの軸周りに、回転可能である。しかしながら、冷却水Lは、自重により、常に冷却槽452の最下部付近に溜まっている。
二つの吸水材453は、各々、円環状を呈している。二つの吸水材453は、各々、セラミックファイバー製である。二つの吸水材453は、前後方向に並んでいる。図3に示すように、二つの吸水材453は、冷却槽452および回転筒部2と共に、回転筒部2の中心軸Aの軸周りに、回転可能である。前側の吸水材453は、前側の冷却槽452の底面(回転側軸方向延在部401の内周面)に敷設されている。前側の吸水材453は、前側の冷却槽452に溜まっている冷却水Lを吸収可能である。後側の吸水材453は、後側の冷却槽452の底面(回転側軸方向延在部401の内周面)に敷設されている。後側の吸水材453は、後側の冷却槽452に溜まっている冷却水Lを吸収可能である。
冷媒供給部450は、ステンレス鋼製であって、円筒状を呈している。冷媒供給部450は、前側の冷却槽452に、上側(径方向内側)から、冷却水Lを供給している。冷媒排出部455は、ステンレス鋼製であって、円筒状を呈している。冷媒排出部455は、後側の冷却槽452から、冷却水Lを排出している。このように、冷却水Lは、冷媒供給部450から、前側の冷却槽452に供給される。供給された冷却水Lは、前側の冷却槽452から後側の冷却槽452に、分割壁454をオーバーフローすることにより、流動する。流動した冷却水Lは、後側の冷却槽452から、冷媒排出部455により排出される。
冷媒調整部46は、クーリングタワー460と、二つの流量計461と、熱電対462と、ポンプ463と、制御部464と、レベル計465と、を備えている。クーリングタワー460は、本発明の「熱交換器」の概念に含まれる。熱電対462は、本発明の「温度計」の概念に含まれる。
クーリングタワー460は、二つの冷却槽452との間に、冷却水Lの循環経路C1を形成している。クーリングタワー460の下流側には、流量計461が配置されている。流量計461は、クーリングタワー460の出側の冷却水Lの流量(体積流量)を測定可能である。流量計461の下流側には、前述の冷媒供給部450が配置されている。一方、前述の冷媒排出部455の下流側には、熱電対462が配置されている。熱電対462は、冷媒排出部455の出側の冷却水Lの温度を測定可能である。熱電対462の下流側には、もう一つの流量計461が配置されている。流量計461は、冷媒排出部455の出側の冷却水Lの流量(体積流量)を測定可能である。流量計461の下流側かつクーリングタワー460の上流側には、ポンプ463が配置されている。ポンプ463は、冷却水Lを循環させている。レベル計465は、冷却槽452における冷却水Lの水位を測定可能である。制御部464は、図示しない入出力インターフェイスと、演算部と、を備えている。演算部には、入出力インターフェイスを介して、二つの流量計461、熱電対462、レベル計465から、検出信号が入力される。入力された検出信号を基に、演算部は、ポンプ463に指示を出す。指示を受けて、ポンプ463は、循環経路C1における、冷却水Lの流量を調整する。また、入力された検出信号を基に、演算部は、クーリングタワー460に指示を出す。指示を受けて、クーリングタワー460は、冷却水Lの温度を調整する。
(前側のシール構造4のカバー部材43)
前述したように、前後一対のシール構造4の相違点は、前側のシール構造4がカバー部材43を備えているのに対して、後側のシール構造4が排出筒44を備えている点である。すなわち、図1に示すように、前側のシール構造4は、カバー部材43を備えている。カバー部材43は、ステンレス鋼製であって、後側に開口する有底円筒状(カップ状)を呈している。カバー部材43の前底壁の中央には、スクリューフィーダー31が挿通されている。
(筒間シール部材61)
図1に示すように、前後一対の筒間シール部材61は、回転筒部2の前後両端に配置されている。筒間シール部材61は、グランドパッキン製であって環状のシール材(図略)を備えている。筒間シール部材61は、内筒21の外周面と、外筒20(前筒部20a、後筒部20c)の内周面と、の間の隙間を封止している。すなわち、筒間シール部材61は、雰囲気ガスG4が、当該隙間に流入するのを抑制している。
[ロータリーキルンの熱処理時の動き]
次に、本実施形態のロータリーキルンの熱処理時の動きについて簡単に説明する。図1に示すように、被処理物Wは、供給ホッパー30から回転筒部2の内部に、スクリューフィーダー31を介して、供給される。図2に示すように、回転筒部2の内部には、所定の雰囲気ガスG4が供給されている。回転筒部2は、前後一対のタイヤ受け装置60により支持された状態で、自身の中心軸A周りに回転している。被処理物Wは、回転筒部2の回転により揺動しながら、回転筒部2の内部つまり熱処理室210を、前側から後側に向かって、流動する。流動する際、加熱装置5からの熱により、被処理物Wに熱処理が施される。熱処理後の被処理物Wは、排出筒44の下端の開口部から、ロータリーバルブ96を介して、排出される。
[ロータリーキルンのシール構造の動き]
次に、本実施形態のロータリーキルンのシール構造の動きについて説明する。ロータリーキルン1には、回転筒部2の内部に雰囲気ガスG4を供給する供給管(図略)と、回転筒部2の内部から雰囲気ガスG4を排出する排出管(図略)と、が接続されている。しかしながら、回転筒部2の内部の雰囲気ガスG4は、回転側部材(例えば、回転筒部2、回転フランジ部40)と、固定側部材(例えば、固定フランジ部41、フレキシブルチューブ42、カバー部材43、排出筒44)と、の間から漏出しようとする。具体的には、図4に示すように、回転フランジ部40と、固定フランジ部41と、の間から漏出しようとする。そこで、回転フランジ部40と固定フランジ部41との間には、径方向に延在する径方向シール界面SBと、軸方向に延在する二つの軸方向シール界面SAと、が設定されている。径方向シール界面SBは、固定側径方向延在部410の前面と、径方向シール材400bの後面と、の間に形成されている。二つの軸方向シール界面SAは、各々、軸方向シール材411bの内周面と、回転側軸方向延在部401の外周面と、の間に形成されている。このように、シール構造4には、合計三つのシール界面(径方向シール界面SB、二つの軸方向シール界面SA)が配置されている。このため、回転筒部2の内部の雰囲気ガスG4が、ロータリーキルン1の外部に漏出するのを、抑制することができる。
ところで、図1に示すように、被処理物Wの熱処理に伴い、回転筒部2は高温になる。図4に示すように、回転筒部2の熱は、伝熱経路H1、H2を経由して、二つの軸方向シール界面SAに伝達される。
すなわち、伝熱経路H1においては、主に熱伝導により、内筒21→外筒20(後筒部20c)→回転側径方向延在部400→回転側軸方向延在部401→二つの軸方向シール界面SAの順に、熱が伝達される。また、回転側径方向延在部400を介して、径方向シール界面SBに、熱が伝達される。また、伝熱経路H2においては、主に放射(輻射)により、内筒21→外筒20(後筒部20c)→外筒20の外周面と回転側軸方向延在部401の内周面との間の空間→回転側軸方向延在部401→二つの軸方向シール界面SAの順に、熱が伝達される。このように、二つの軸方向シール界面SAは、回転筒部2からの伝熱により、加熱されやすい。このため、二つの軸方向シール材411bが劣化しやすい。
この点、本実施形態のシール構造4は、冷却部45、冷媒調整部46を備えている。冷却水Lは、ポンプ463により圧送され、クーリングタワー460から、冷媒供給部450を介して、後側の冷却槽452に注入される。注入された冷却水Lは、分割壁454をオーバーフローして、前側の冷却槽452に流入する。流入した冷却水Lは、冷媒排出部455を介して、再び、クーリングタワー460に戻ってくる。
冷却水Lが、二つの冷却槽452に滞留している間、二つの冷却槽452と、二つの冷却槽452周囲の部材(二つの吸水材453、仕切壁451、分割壁454、回転側径方向延在部400、回転側軸方向延在部401)と、の間で熱交換が行われる。当該熱交換により、二つの軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBが冷却される。
特に、図3に示すように、二つの吸水材453は、回転筒部2の中心軸A周りを回転しながら、二つの冷却槽452の最下部付近(冷却水Lが溜まっている部分)を周期的に通過する。このため、右部分→上部分→左部分という周回で加熱された二つの吸水材453を、下部分の冷却水Lで冷却してから、再び右部分に送り出すことができる。すなわち、二つの吸水材453により、二つの軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBを、全周的に、まんべんなく冷却することができる。
また、二つの冷却槽452は、主に放射(輻射)による伝熱経路H2を遮断するように、配置されている。このため、伝熱経路H2を経由して熱が二つの軸方向シール界面SAに伝わるのを抑制することができる。
[作用効果]
次に、本実施形態のロータリーキルンの作用効果について説明する。図2に示すように、本実施形態のロータリーキルン1のシール構造4は、回転フランジ部40を備えている。回転フランジ部40は、回転筒部2と共に回転する。一方、固定フランジ部41は、回転筒部2から独立している。このため、回転フランジ部40と、固定フランジ部41と、の間には、相対的な位置ずれが発生しやすい。したがって、二つの軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBのシール性が低下しやすい。
この点、本実施形態のロータリーキルン1のシール構造4は、フレキシブルチューブ42を備えている。フレキシブルチューブ42が変形することにより、回転フランジ部40と、固定フランジ部41と、の間の相対的な位置ずれを吸収することができる。このため、二つの軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBのシール性が低下しにくい。
また、図1、図2に示すように、本実施形態のロータリーキルン1のシール構造4は、カバー部材43、排出筒44を備えている。このため、回転筒部2の開口部2f、2rを外側から袋状に覆うことができる。
また、図4に示すように、本実施形態のロータリーキルン1のシール構造4は、冷却部45を備えている。冷却部45は、二つの軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBを、回転側軸方向延在部401の径方向内側から、全周的に冷却している。このため、全周的に、二つの軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBを冷却することができる。したがって、二つの軸方向シール材411b、径方向シール材400bが、局所的に熱により劣化してしまうのを抑制することができる。よって、二つの軸方向シール材411b、径方向シール材400bの寿命を延ばすことができる。延いては、ロータリーキルン1のランニングコストを削減することができる。
また、図4に示すように、本実施形態のロータリーキルン1のシール構造4は、冷媒調整部46を備えている。冷媒調整部46は、冷却水Lの温度および流量を調整することができる。すなわち、クーリングタワー460を制御することにより、冷却水Lの温度を下げることができる。また、ポンプ463を制御することにより、冷却水Lの流量を大きくすることができる。このため、充分に、二つの軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBを、冷却することができる。したがって、二つの軸方向シール材411b、径方向シール材400bが、全周的に熱により劣化してしまうのを抑制することができる。よって、二つの軸方向シール材411b、径方向シール材400bの寿命を延ばすことができる。延いては、ロータリーキルン1のランニングコストを削減することができる。また、耐熱性が低い部材を、二つの軸方向シール材411b、径方向シール材400bを形成する部材として、用いることができる。このため、部材選択の自由度が高くなる。
また、図4に示すように、本実施形態のロータリーキルン1のシール構造4によると、冷却部45の冷媒供給部450から、冷却水Lが、回転筒部2ではなく、回転側軸方向延在部401に供給される。すなわち、冷却水Lが、二つの軸方向シール界面SAを形成する回転側軸方向延在部401に、径方向内側から、供給される。このため、充分に、二つの軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBを、冷却することができる。
また、図3に示すように、本実施形態のロータリーキルン1のシール構造4によると、回転筒部2と共に吸水材453が回転する際、吸水材453は、冷却槽452の最下部付近を通過する。すなわち、溜まっている冷却水L内を通過する。この際、吸水材453は、溜まっている冷却水Lにより、冷却される。また、吸水材453が、冷却水Lを吸収可能な状態である場合(例えば、周回時の熱交換により吸水材453中の冷却水Lが気化してしまい、吸水材453が飽和吸収量に達していない場合)は、冷却槽452内の冷却水Lを吸収する。吸水材453は、回転筒部2の回転に伴って、回転する。
このように、本実施形態のロータリーキルン1のシール構造4によると、回転筒部2の回転に伴って、冷却水Lを含有した吸水材453が、回転筒部2の径方向外側に、全周的に配置されることになる。このため、全周的に、二つの軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBを、冷却することができる。
また、図4に示すように、本実施形態のロータリーキルン1のシール構造4によると、冷却水Lは、二つの冷却槽452の間を流動しながら、吸水材453に接触する。このため、冷却槽452と吸水材453との接触時間が長くなる。また、冷却槽452と吸水材453との接触面積が広くなる。したがって、効率良く熱交換を行うことができる。
また、冷却水Lは、循環経路C1を循環している。このため、冷却水Lが使い捨ての場合と比較して、ロータリーキルン1のランニングコストを削減することができる。また、冷却水Lが循環経路C1を循環しているため、ロータリーキルン1が配置される場所(例えば、工場の床や架台など)が、冷却水Lにより濡れるのを抑制することができる。
<第二実施形態>
本実施形態のロータリーキルンと第一実施形態のロータリーキルンとの相違点は、冷却部が、水冷式ではなく空冷式である点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図5に、本実施形態のロータリーキルンの後側のシール構造付近の軸方向断面図を示す。なお、図2と対応する部材については、同じ符号で示す。図6に、図5のVI−VI方向断面図を示す。なお、図3と対応する部材については、同じ符号で示す。図7に、図5の枠VII内の拡大図を示す。なお、図4と対応する部材については、同じ符号で示す。
図5〜図7に示すように、後側のシール構造4は、冷却部47と、冷媒調整部48と、を備えている。冷却部47は、冷却部本体470と、12個の冷媒供給部471と、を備えている。冷却部本体470は、ステンレス鋼であって、円環状を呈している。冷却部本体470は、円環状のパイプ(一体物であってもよい。また、複数の弧状パイプを連結してなる合体物であってもよい。)である。冷却部本体470は、回転筒部2と回転側径方向延在部400と回転側軸方向延在部401との間の空間に収容されている。冷媒供給部471は、冷却部本体470に穿設された孔である。図7に示すように、冷媒供給部471は、径方向外側かつ後側(回転側軸方向延在部401の内周面側)を向いている。図6に示すように、12個の冷媒供給部471は、中心軸Aを中心に、周方向に30°ずつ離間して、配置されている。図7に示すように、冷媒調整部48は、コンプレッサー480と、ボルテックスチューブ481と、を備えている。
コンプレッサー480から圧送された空気G1は、ボルテックスチューブ481により、低温の空気G2と、高温の空気G3と、に分離される。このうち、低温の空気G2は、冷却部本体470に導入される。低温の空気G2は、本発明の「気体」の概念に含まれる。低温の空気G2は、冷媒供給部471を介して、回転側軸方向延在部401の内周面に吹き付けられる。吹き付けられた空気G2は、流路C2(具体的には、回転側軸方向延在部401の内周面付近→回転側径方向延在部400の前面(軸方向一面)付近→外筒20(後筒部20c)の外周面付近を経由する流路C2)を経由して、回転筒部2と回転側径方向延在部400と回転側軸方向延在部401との間の空間から、排出される。
本実施形態のロータリーキルン1と第一実施形態のロータリーキルンとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有している。また、図6に示すように、本実施形態のロータリーキルン1の冷却部47によると、12個の冷媒供給部471が、冷却部本体470に、全周的に配置されている。このため、全周的に、二つの軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBを冷却することができる。
また、図7に示すように、冷媒調整部48は、ボルテックスチューブ481を備えている。このため、コンプレッサー480出側の空気G1に対して、冷媒である空気G2の温度を、下げることができる。また、冷媒として空気G2を用いるため、ロータリーキルン1が配置される場所(例えば、工場の床や架台など)が、汚れるのを抑制することができる。
また、図7に示すように、本実施形態のロータリーキルン1の冷却部47によると、空気G2が、流路C2を経由して、旋回するように流動する。このため、回転側軸方向延在部401(二つの軸方向シール界面SA)、回転側径方向延在部400(径方向シール界面SB)との間の熱交換により加熱された空気G2が、回転筒部2と回転側径方向延在部400と回転側軸方向延在部401との間の空間に、滞留しにくい。また、冷媒供給部471から噴射された空気G2は、直接、回転側軸方向延在部401に吹き付けられる。このため、径方向シール界面SBに対して、二つの軸方向シール界面SAを、優先的に冷却することができる。
<その他>
以上、本発明のシール構造およびロータリーキルンの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
回転筒部2、シール構造4など、ロータリーキルン1を構成する各部材の材質は特に限定しない。被処理物Wが金属のコンタミネーションを嫌う物質(例えば、LFP(リン酸鉄リチウム)、LMP(リン酸マンガンリチウム)、カーボンなど)の場合、内筒21をセラミック製、カーボン製としてもよい。
雰囲気ガスG4の種類は特に限定しない。不活性ガス、酸化性ガス、還元性ガスなどであってもよい。具体的には、N、He、Ar、CO、Hなどであってもよい。回転筒部2の構成は特に限定しない。単一の筒体により回転筒部を構成してもよい。回転筒部2の径方向断面形状は特に限定しない。真円状は勿論、多角形状(例えば、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状)などであってもよい。
ロータリーキルン1の種類は特に限定しない。図1に示すように、回転筒部2の外部から熱処理室210を加熱する外熱式ロータリーキルンの他、回転筒部2の内部から熱処理室210を加熱する内熱式ロータリーキルンであってもよい。加熱装置5の熱源は特に限定しない。電熱ヒータ、バーナ、マイクロ波などを用いてもよい。
軸方向シール材411b、径方向シール材400bの材質は特に限定しない。例えば、シリコン系、フッ素樹脂系、グラファイト系などを用いることができる。軸方向シール材411b、径方向シール材400bの配置数は特に限定しない。また、軸方向シール界面SA、径方向シール界面SBの配置数は特に限定しない。
図4に示すように、上記実施形態においては、軸方向シール材411bを、固定側軸方向延在部411に配置した。しかしながら、軸方向シール材411bを、回転側軸方向延在部401に配置してもよい。また、複数の軸方向シール材411bを、固定側軸方向延在部411と、回転側軸方向延在部401と、に分けて配置してもよい。
図4に示すように、上記実施形態においては、径方向シール材400bを、回転側径方向延在部400に配置した。しかしながら、径方向シール材400bを、固定側径方向延在部410に配置してもよい。また、複数の径方向シール材400bを、回転側径方向延在部400と、固定側径方向延在部410と、に分けて配置してもよい。
図4に示すように、第一実施形態においては、クーリングタワー460およびポンプ463を、制御部464により制御した。しかしながら、クーリングタワー460またはポンプ463を、制御部464により制御してもよい。すなわち、冷却水Lの温度または流量を、択一的に制御してもよい。
第一実施形態においては、本発明の「液体」として、冷却水Lを用いた。しかしながら、液体の種類は特に限定しない。例えば、純水、オイル、クーラント、工業用水などであってもよい。また、吸水材453の種類は特に限定しない。液体を含有可能であればよい。例えば、スポンジなどの発泡体、セラミックなどの多孔質体、セラミックファイバー、吸水性ポリマーなどを用いることができる。
第一実施形態においては、本発明の「熱交換器」として、クーリングタワー460を用いた。しかしながら、熱交換器の種類は特に限定しない。例えば、クーラーなどを用いることができる。
図8に、その他の実施形態のロータリーキルンの後側のシール構造付近の拡大図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。図8に示すように、冷却水Lは、循環させなくてもよい。すなわち、工場の配管から冷却槽452に、直接、冷却水Lを導入してもよい。この場合、クーリングタワー460は不要である。
第二実施形態においては、本発明の「気体」として、空気G2を用いた。しかしながら、気体の種類は特に限定しない。例えば、不活性ガス、酸化性ガス、還元性ガスなどであってもよい。
1:ロータリーキルン。
2:回転筒部、2f:開口部、2r:開口部、20:外筒、20a:前筒部、20b:中間筒部、20c:後筒部、200:タイヤ、21:内筒、210:熱処理室。
3:供給装置、30:供給ホッパー、31:スクリューフィーダー。
4:シール構造、40:回転フランジ部、400:回転側径方向延在部、400a:延在部本体、400b:径方向シール材、401:回転側軸方向延在部、41:固定フランジ部、410:固定側径方向延在部、411:固定側軸方向延在部、411a:延在部本体、411b:軸方向シール材、42:フレキシブルチューブ、43:カバー部材、44:排出筒、45:冷却部、450:冷媒供給部、451:仕切壁、452:冷却槽、453:吸水材(液体吸収部)、454:分割壁、455:冷媒排出部、455:分割壁、46:冷媒調整部、460:クーリングタワー(熱交換器)、461:流量計、462:熱電対(温度計)、463:ポンプ、464:制御部、465:レベル計、47:冷却部、470:冷却部本体、471:冷媒供給部、48:冷媒調整部、480:コンプレッサー、481:ボルテックスチューブ。
5:加熱装置、50:外壁、51:断熱壁、52:ヒータ。
60:タイヤ受け装置、600:受けころ、61:筒間シール部材。
95:バルブ、96:ロータリーバルブ。
A:中心軸、C1:循環経路、C2:流路、G1:空気、G2:空気(気体)、G3:空気、G4:雰囲気ガス、H1:伝熱経路、H2:伝熱経路、L:冷却水(液体)、SA:軸方向シール界面(シール界面)、SB:径方向シール界面、W:被処理物。

Claims (7)

  1. 略水平に配置され、自身の軸周りに回転可能であって、軸方向に流動する被処理物に対して熱処理を施す熱処理室を内部に有する回転筒部を備えるロータリーキルンのシール構造であって、
    前記回転筒部の外周面から径方向外側に突出する回転側径方向延在部と、該回転側径方向延在部から軸方向に延在する環状の回転側軸方向延在部と、を有する回転フランジ部と、
    該回転側軸方向延在部の径方向外側に該回転筒部から独立して配置され、該回転側軸方向延在部との間に環状のシール界面を形成する環状の固定側軸方向延在部を有する固定フランジ部と、
    該シール界面を、該回転側軸方向延在部の径方向内側から全周的に冷却する冷却部と、
    該冷却部に供給する冷媒の、温度および流量のうち少なくとも一方を、調整する冷媒調整部と、
    を備えることを特徴とするロータリーキルンのシール構造。
  2. 前記冷却部は、前記回転筒部と前記回転側径方向延在部と前記回転側軸方向延在部との間に挿入され、前記回転側軸方向延在部に向かって、前記冷媒を供給する冷媒供給部を有する請求項1に記載のロータリーキルンのシール構造。
  3. 前記冷媒は、液体であり、
    前記冷却部は、前記回転側軸方向延在部の内周面から径方向内側に突出する環状の仕切壁と、該仕切壁と該回転側軸方向延在部と前記回転側径方向延在部との間に区画され、最下部付近に該液体が溜まる環状の冷却槽と、該冷却槽の底面に敷設され該液体を吸収する環状の液体吸収部と、を有し、
    前記冷媒調整部は、該冷却槽との間に該液体の循環経路を形成する熱交換器と、該循環経路における該液体の流量を測定する流量計と、該循環経路における該液体の温度を測定する温度計と、該循環経路における該液体の流量を調整するポンプと、該流量計および該温度計から伝送される検出信号を基に、該ポンプおよび該熱交換器のうち少なくとも一方を制御する制御部と、を有する請求項2に記載のロータリーキルンのシール構造。
  4. 前記冷却部は、前記仕切壁と前記回転側径方向延在部との間に介装され前記冷却槽を複数に分割する分割壁と、前記冷媒を排出する冷媒排出部と、を有し、
    複数の該冷却槽のうち、一つは、前記冷媒調整部から、前記冷媒供給部を介して、前記液体が供給される冷却槽であり、
    複数の該冷却槽のうち、別の一つは、該冷媒調整部に、該冷媒排出部を介して、該液体を排出する冷却槽であり、
    該液体は、複数の該冷却槽の間を、供給側から排出側に向かって、順番に流動する請求項3に記載のロータリーキルンのシール構造。
  5. 前記冷媒は、気体であり、
    前記冷却部は、前記回転筒部と前記回転側径方向延在部と前記回転側軸方向延在部との間に環状に配置される冷却部本体を有し、
    前記冷媒供給部は、該冷却部本体に、周方向に所定間隔ずつ離間して、複数配置され、
    前記冷媒調整部は、コンプレッサーと、該コンプレッサーと該冷却部本体との間に介装され、該コンプレッサーから圧送される気体を、低温の気体と高温の気体とに分離し、低温の該気体を該冷却部本体に供給するボルテックスチューブと、を有する請求項2に記載のロータリーキルンのシール構造。
  6. 前記気体は、前記冷媒供給部から、前記回転側軸方向延在部の内周面付近、前記回転側径方向延在部の軸方向一面付近、前記回転筒部の外周面付近を経由して、該回転筒部と該回転側径方向延在部と該回転側軸方向延在部との間から、流出する請求項5に記載のロータリーキルンのシール構造。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のロータリーキルンのシール構造を備えるロータリーキルン。
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