JP2014040510A - 蛍光体材料、発光素子、撮像装置および照明装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】赤色〜橙色領域の発光と黄色〜緑色領域の発光の両方を行うことが可能な新規な蛍光体材料を提供する。
【解決手段】380nm〜460nmの波長範囲内の光を吸収し、少なくともEu2O3とCu2Oとを含む複合酸化物であって、前記波長範囲内の光によって励起されたEu3+に基づく発光をし、かつ前記波長範囲内の光によって励起されたCu+に基づく発光が可能である複合酸化物を含む、蛍光体材料とする。
【選択図】図1
【解決手段】380nm〜460nmの波長範囲内の光を吸収し、少なくともEu2O3とCu2Oとを含む複合酸化物であって、前記波長範囲内の光によって励起されたEu3+に基づく発光をし、かつ前記波長範囲内の光によって励起されたCu+に基づく発光が可能である複合酸化物を含む、蛍光体材料とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、酸化物系の蛍光体材料およびこれを用いた発光素子に関する。本発明はまた、前記発光素子を用いた、撮像装置および照明装置に関する。
白色発光素子(白色LED)を用いた照明は、従来の照明に比較して高効率・長寿命であり、省資源・省エネルギーの観点から、商用から一般家庭用まで、幅広く用いられて来ている。
最も一般的な白色LEDには、450nm付近をピークとして発光する青色LEDチップと、この青色光を吸収して、570nm付近をピークとして黄色に発光する蛍光体が用いられており、青色光と補色である黄色光の混合により、擬似白色を得ている。また青色LEDチップと緑色蛍光体と赤色蛍光体の組み合わせや、近紫外LEDチップと、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体の組み合わせ等も提案されている。
蛍光体に関し、Eu3+を発光中心とする蛍光体が赤色〜橙色領域の発光を示すことが知られている。(例えば、特許文献1、ならびに非特許文献1および2参照)。また、Cu+を発光中心とする蛍光体が、黄色〜緑色領域の発光を示すことが知られている(例えば、非特許文献2および3参照)。
白色LEDを用いた照明の白色に関し、青色が優勢な寒色から、黄色が優勢な暖色、さらには赤色が優勢な暖色まで様々な色調がある。青色LEDチップと蛍光体を用いた白色LEDでは、蛍光体の赤色光成分および黄色光成分の強度に応じて、発光色が暖色から寒色まで変化する。
上記のような従来の蛍光体は、赤色〜橙色の発光のみ、または黄色〜緑色の発光のみを示すものである。そのため、白色LEDの調色のために、複数の蛍光体を組み合わせて用いることも行われている。しかし、蛍光体の吸収波長が様々であるため、好適な蛍光体の組み合わせを見つけることは容易ではなく、また、それぞれの蛍光体の粒径や比重が異なるために混合自体も容易ではない。さらにそれぞれの蛍光体の励起波長依存性が同一でないため、LEDチップの発光波長のバラツキが拡大され、製品の色バラツキの原因となりうる。
そこで、赤色〜橙色領域の発光と黄色〜緑色領域の発光の両方を行うことが可能である蛍光体材料があれば、一つの材料種の蛍光体から、暖色から寒色までの広い範囲の白色LEDを比較的容易に作製することができ、有益であると考えられる。
Journal of the Ceramic Society of Japan, 118[12] pp.1217-1220, 2010
physica status solidi (a), 203[11] pp.2723-2728, 2006
Japanese Journal of Applied Physics, 46[23] pp.L546-548, 2007
そこで本発明は、赤色〜橙色領域の発光と黄色〜緑色領域の発光の両方を行うことが可能な新規な蛍光体材料を提供することを目的とする。
本発明は、380nm〜460nmの波長範囲内の光を吸収し、少なくともEu2O3とCu2Oとを含む複合酸化物であって、
前記波長範囲内の光によって励起されたEu3+に基づく発光をし、かつ前記波長範囲内の光によって励起されたCu+に基づく発光が可能である複合酸化物を含む、蛍光体材料である。
前記波長範囲内の光によって励起されたEu3+に基づく発光をし、かつ前記波長範囲内の光によって励起されたCu+に基づく発光が可能である複合酸化物を含む、蛍光体材料である。
本発明によれば、赤色〜橙色領域の発光と黄色〜緑色領域の発光の両方を行うことが可能な新規な蛍光体材料が提供される。
以下、特定の実施形態を挙げて本発明を詳細に説明するが、当然ながら本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
本発明の一実施形態は、380nm〜460nmの波長範囲内の光を吸収し、少なくともEu2O3とCu2Oとを含む複合酸化物であって、
前記波長範囲内の光によって励起されたEu3+に基づく発光をし、かつ前記波長範囲内の光によって励起されたCu+に基づく発光が可能である複合酸化物を含む、蛍光体材料である。
前記波長範囲内の光によって励起されたEu3+に基づく発光をし、かつ前記波長範囲内の光によって励起されたCu+に基づく発光が可能である複合酸化物を含む、蛍光体材料である。
当該実施形態の望ましい一態様では、前記複合酸化物が、La2O3およびMO(Mは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれる少なくとも1種)をさらに含み、より望ましい一態様では、前記複合酸化物が、Y2O3をさらに含む。
当該実施形態の望ましい一態様では、前記複合酸化物が、(1−x−y−z)LaO3/2・xEuO3/2・yMO・zYO3/2・CuO1/2(Mは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、0<x≦0.3、0<y≦0.3、0≦z≦0.5、x+y+z<1である)を含む組成を有する。より望ましい一態様では、前記Mが、Baである。より望ましい別の一態様では、前記xが、0.03≦x≦0.3である。
本発明の別の実施形態は、少なくともLEDチップと、
前記LEDチップの発光を吸収して発光する、前記の蛍光体材料と
を備えた、発光素子である。
前記LEDチップの発光を吸収して発光する、前記の蛍光体材料と
を備えた、発光素子である。
当該実施形態の望ましい一態様では、前記LEDチップが、非極性面または半極性面である成長面を有する窒化物半導体から形成される発光層を備える。
本発明の別の実施形態は、前記の発光素子を備えたフラッシュライトと、
前記フラッシュライトからの光で照射された対象物からの反射光が入射するレンズと、
を備えた、撮像装置である。
前記フラッシュライトからの光で照射された対象物からの反射光が入射するレンズと、
を備えた、撮像装置である。
本発明の別の実施形態は、前記の発光素子を備えた光源部を備えた、照明装置である。
(実施形態1)
蛍光体材料として用いられる複合酸化物を380nm〜460nmの波長範囲内の光(近紫外〜青色光)で励起可能とするためには、少なくとも380nm〜460nmの波長範囲内の光を吸収する必要があるが、通常の酸化物蛍光体に用いられるケイ酸塩系材料やアルミン酸塩系材料は、バンドギャップが大きすぎるために、380nm〜460nmの波長範囲の光を効率よく吸収できない。本発明者等は、バンドギャップが2.1eVと小さいCu2Oに着目した。2.1eVではバンドギャップが小さすぎるために吸収端は590nmとなり、赤色光まで吸収してしまうが、Cu+を含む複合酸化物では、バンドギャップが3.0eV程度となるため、青色光までの短波長域側の光を吸収して、緑色光より長波長の光は透過可能となる。さらにCu+は、380nm〜460nmの波長範囲内の光で励起されて、黄色〜緑色領域の発光が可能である。
蛍光体材料として用いられる複合酸化物を380nm〜460nmの波長範囲内の光(近紫外〜青色光)で励起可能とするためには、少なくとも380nm〜460nmの波長範囲内の光を吸収する必要があるが、通常の酸化物蛍光体に用いられるケイ酸塩系材料やアルミン酸塩系材料は、バンドギャップが大きすぎるために、380nm〜460nmの波長範囲の光を効率よく吸収できない。本発明者等は、バンドギャップが2.1eVと小さいCu2Oに着目した。2.1eVではバンドギャップが小さすぎるために吸収端は590nmとなり、赤色光まで吸収してしまうが、Cu+を含む複合酸化物では、バンドギャップが3.0eV程度となるため、青色光までの短波長域側の光を吸収して、緑色光より長波長の光は透過可能となる。さらにCu+は、380nm〜460nmの波長範囲内の光で励起されて、黄色〜緑色領域の発光が可能である。
次に蛍光体材料として用いられる複合酸化物を赤色〜橙色領域で発光させるために、Eu3+を賦活材として用いた。380nm〜460nmの波長範囲の光を吸収する事は、励起に対して必要条件ではあっても十分条件ではないため、実際に励起可能となるように、Cu+とEu3+を含む複合酸化物を、種々の元素の組み合わせ、組成比、焼成条件で合成・評価を行い、本発明を完成した。
そこで、実施形態1は、380nm〜460nmの波長範囲内の光を吸収し、少なくともEu2O3とCu2Oとを含む複合酸化物であって、
前記波長範囲内の光によって励起されたEu3+に基づく発光をし、かつ前記波長範囲内の光によって励起されたCu+に基づく発光が可能である複合酸化物を含む蛍光体材料である。
前記波長範囲内の光によって励起されたEu3+に基づく発光をし、かつ前記波長範囲内の光によって励起されたCu+に基づく発光が可能である複合酸化物を含む蛍光体材料である。
380nm〜460nmの波長範囲内の光によって励起されたEu3+に基づく発光とは、570〜650nmに複数の発光ピークを有する発光を意味し、通常594nm付近に主ピーク(最も発光強度の大きいピーク)を有する。
380nm〜460nmの波長範囲内の光によって励起されたCu+に基づく発光とは、540〜560nmに発光ピークを有する発光を意味する。
本実施形態の蛍光体材料は、複合酸化物が380nm〜460nmの波長範囲内の光を吸収し、そのエネルギーが伝搬されて励起されたEu3+が発光し、さらに同様に励起されたCu+が発光可能なものである。そのため、本実施形態の蛍光体材料に含まれる複合酸化物の種類は、少なくともEu2O3とCu2Oとを含み、380nm〜460nmの波長範囲内の光を吸収し、Eu3+およびCu+が励起され得る限り特に制限はない。具体的な複合酸化物としては、例えば、Eu2O3とCu2Oに加えてLa2O3とMO(Mは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれる少なくとも1種)を含む複合酸化物が挙げられる。この複合酸化物においては、Cu+を含むLaCuO2が母材骨格を形成し、Laサイトが、賦活材であるEuと、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上によって、部分的に置換されている形をとるものと推測される。
ここで、LaCuO2のLaサイトをEuで部分的に置換した赤色蛍光体は、前述したように既に報告があるが、この材料は、実施例でも示すように380nm〜460nmの波長範囲内の光では励起できない。本実施形態の第一の特徴は、Laサイトの一部を、Euと、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上によって同時置換する事によって、励起波長が460nm付近まで伸び、青色光まで励起可能となる点である。
次に本実施形態の第二の特徴は、通常594nm付近を主ピークとするEu3+の発光とともに、540〜560nm付近をピークとするCu+も同時に発光させる事が可能であり、かつ両者のピーク強度比を、複合酸化物の組成を変化させることにより自由に調整する事が可能である点にある。
通常、複数の発光中心を含む蛍光体であっても、発光は実質的にどちらか一方となってしまう事が多いが、本実施形態の蛍光体材料では、二重発光が可能である。その結果、黄色〜赤色の範囲内で色度を自由に調整可能である。さらに、この二重発光は、同じ母材の光吸収から発光するため、二種類の蛍光体を併用する時のような、粒径や比重差による混合不具合が生じず、また380nm〜460nmの波長範囲の光に対する励起波長依存性が同一であり、LEDチップの発光波長のバラツキによる色ズレの拡大が生じにくい。
Eu3+とCu+の発光強度比を変える方法は複数存在する。Eu3+の置換量を増やせば、Eu3+の発光が強くなりCu+の発光が弱くなる。Ca、Sr、Baのうち、Caを用いるとCu+の発光が強くなりEu3+の発光が弱くなる。Baを用いるとEu3+の発光が強くなり、Cu+は、ほとんど光らなくなる。Srを用いると、両者の中間的になる。これらの方法を組み合わせて用いる事で、広い範囲で色度を調整可能である。
なお、従来の赤色蛍光体材料について、酸化物系材料では、近紫外〜青色光で励起可能な材料が非常に少ない。例えば、非特許文献1に開示されているLaCuO2:Euは、近紫外〜青色光では励起出来ない。稀な例として、Mn4+賦活Ge酸塩系蛍光体等は、近紫外〜青色光で励起可能であるが、この材料は、主成分として希少なGeを含むために高価である。また発光ピークが660nm付近にあり、人間の赤色光に対する視感度のピークである600nm付近では発光しないために、輝度が低い。窒化物材料であれば近紫外〜青色光で励起可能ではあるが、例えば、特許文献1に記載されたCaAlSiN3:Euは、発光ピークが視感度の低い650nm付近にあるため、輝度が充分ではない。また窒化物の製造には、高温、高圧窒素雰囲気が必要となるため、高価となる。
これに対し、本実施形態の蛍光体材料では、Eu3+に基づく赤色〜橙色領域の発光は、600nm付近を主ピークとするものであるため、視感度が高く、輝度が高い。さらに、製造が簡単で安価な酸化物系の材料である。
したがって、本実施形態の蛍光体材料は、赤色〜橙色領域の発光をし、さらに黄色〜緑色領域の発光が可能なものであるが、この黄色〜緑色領域の発光を抑制して本実施形態の蛍光体材料を赤色蛍光体材料として構成した場合には、従来の赤色蛍光体に対して、輝度が高く、簡単かつ安価に製造できるという利点を有する。
本実施形態の蛍光体材料を赤色蛍光体材料として構成するには、MがBaであることが望ましい。一方で、LaサイトをEu3+で3〜30原子%置換することが望ましい。
本実施形態において複合酸化物は、その特性を損なわない範囲内であれば、他の成分を含む事も可能である。例えば、Y2O3をさらに含んでいてもよい。LaサイトをYで置換した場合には発光強度が改善される事がある。
本実施形態において複合酸化物は、望ましくは、(1−x−y−z)LaO3/2・xEuO3/2・yMO・zYO3/2・CuO1/2(Mは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれる少なくとも1種である)を含む組成を有する。
前記組成は、その特性を損なわない範囲内であれば、その他の酸化物成分を含んでいてもよい。例えば、複合酸化物においては、2価のEu、2価のCu等も存在し得るため、上記組成は、EuO、CuO等を含んでいてもよい。
Laサイトを置換するEu量については、30%置換でCu+の発光をほぼ消失させる事が出来るが、594nmを主ピークとする赤色発光の輝度は、10%置換を超えると飽和する。またEuは高価である。そこでxは、望ましくは0.3以下であり、より望ましくは0.15以下である。下限については、Euが極少量でも赤色発光して発光の色度調整が可能となるため、xは0を超えていればよいが、望ましくは0.005以上であり、より望ましくは、0.01以上である。
次にLaサイトを置換するCa、Sr、Ba量については、極少量でも励起波長を青色領域まで広げる効果があるが、置換量が1%を超えると徐々に発光輝度が低下する。そこでyは、0を超えていればよく、望ましくは0.001以上である。上限については、望ましくは0.3以下であり、より望ましくは0.1以下である。
LaサイトをYで置換した場合、置換量が増えすぎると発光輝度が低下し得る。そこで、zは、望ましくは、0≦z≦0.5であり、より望ましくは0≦z≦0.4である。
ただし、x+y+z<1であり、x+y+z≦0.61であることが望ましく、x+y+z≦0.51であることがより望ましい。
上記の組成において、本実施形態の蛍光体材料を赤色蛍光体材料として構成するには、MがBaであることが望ましい。一方で、xが0.03≦x≦0.3であることが望ましい。
次に本実施形態の蛍光体材料の製造方法であるが、固相法、液相法、気相法、いずれの方法を用いる事も出来る。固相法は、それぞれの金属を含む原料粉末(金属酸化物、金属炭酸塩等)を混合し、ある程度以上の温度で熱処理して反応させる方法である。
液相法は、それぞれの金属を含む溶液を作り、これより固相を沈殿させたり、あるいは基板上にこの溶液を塗布後、乾燥し、ある程度以上の温度で熱処理等を行って固相とする方法である。気相法は、蒸着、スパッタリング、CVD等の方法によって膜状の固相を得る方法である。通常は、蛍光体は粉末として用いる事が多いため、安価な固相法を用いれば良い。
固相法で用いる原料としては、酸化物や炭酸塩等の、ごく一般的な原料粉末を用いれば良い。これらの原料粉末を、ボールミル等の手段で混合し、反応させるために、通常の電気炉等で熱処理すれば良いが、Cuは、Cu2+ではなくCu+である必要があるために、原料としてはCuOよりもCu2Oを用いる方が望ましい。また、Cu2+とならないように、非酸化性雰囲気で熱処理する必要がある。そのためには、ArガスやN2ガス、通常はN2ガス雰囲気下で熱処理すれば良い。
本実施形態にかかる蛍光体材料は、酸化物系材料であるため、製造が簡単で安価であるという利点を有する。また、近紫外〜青色領域の光で励起が可能であり、視感度の高い600nm付近で発光する。さらに、本実施形態にかかる蛍光体材料は、複合酸化物の組成を変化させることにより、他の蛍光体と混合する事なく、色度を黄色から赤色まで自由に調整可能である。
本実施形態にかかる蛍光体材料は、白色発光素子(白色LED)に用いることができる。色度を自由に調整可能であるため、青色LEDチップと組み合わせて使用した場合の白色LEDの色度も調整する事が可能であり、青みを帯びた寒色の白色LEDから、赤みを帯びた暖色の白色LEDまで、自由に提供する事が出来る。
本実施形態を白色LEDに用いる場合は、例えば、本実施形態の蛍光体材料を、Eu3+とCu+が同時に発光する黄色蛍光体とし、青色LEDチップで励起する事によって、白色LEDとする事が出来る。また、例えば、本実施形態の蛍光体をEu3+のみ発光する赤色蛍光体とし、青色LEDチップと緑色蛍光体と組み合わせたり、近紫外LEDチップと青色蛍光体、緑色蛍光体と組み合わせて白色LEDとする事も可能である。なお、白色LEDの構成や製造方法については特に限定は無く、例えば、白色LEDの製造に用いられる公知の黄色〜赤色蛍光体材料を、本実施形態の蛍光体材料で置き換えて使用すれば良い。
また、本実施形態の材料は、p型導電性を示す透明酸化物材料でもあるので、n型材料と接合して、電流注入型のEL素子として発光させる事も可能と考えられる。
(実施形態2)
実施形態2の発光素子は、LEDチップと、このLEDチップの発光を吸収して発光する実施形態1の蛍光体とを備えている。LEDチップは、一般的な極性面(c面)の成長面を有する窒化物半導体から形成される発光層を備えるものであってもよい。また、非極性面または半極性面(m面、−r面、(20−21)、(20−2−1)、(10−1−3)、(11−22)面など)の成長面を有する窒化物半導体から形成される発光層を備えるものであってもよい。非極性面または半極性面を成長面とするLEDチップにより、ピエゾ電界の影響を低減して波長380nm〜460nmの光を効率よく発生させることができる。以下、m面を成長面とする窒化物半導体から形成される発光層を備えるLEDチップを用いた発光素子を例に挙げて説明する。
実施形態2の発光素子は、LEDチップと、このLEDチップの発光を吸収して発光する実施形態1の蛍光体とを備えている。LEDチップは、一般的な極性面(c面)の成長面を有する窒化物半導体から形成される発光層を備えるものであってもよい。また、非極性面または半極性面(m面、−r面、(20−21)、(20−2−1)、(10−1−3)、(11−22)面など)の成長面を有する窒化物半導体から形成される発光層を備えるものであってもよい。非極性面または半極性面を成長面とするLEDチップにより、ピエゾ電界の影響を低減して波長380nm〜460nmの光を効率よく発生させることができる。以下、m面を成長面とする窒化物半導体から形成される発光層を備えるLEDチップを用いた発光素子を例に挙げて説明する。
図4は、実施形態2で用いられるLEDチップの構成の一例を示す説明図である。本実施形態で用いられるLED400は、基板401と、n型層402と、発光層405と、p型層407と、n側電極408と、p側電極409と、を備える。基板401は、例えば、主面がm面であるGaN基板である。基板401として、表面にm面GaN層が形成されたm面SiC基板、m面GaN層が形成されたr面サファイア基板、またはm面サファイア基板を用いてもよい。例えば、n型層402は、基板401の上に設けられ、発光層405は、n型層402とp型層407の間に配置される。発光層405とp型層407との間にアンドープ層406を設けてもよい。n型層402、発光層405、アンドープ層406およびp型層407は、例えば、成長面がm面の窒化ガリウム系化合物半導体層である。n型層402は、例えば、Siがドープされたn型AlpGaqInrN(0≦p,q,r≦1、p+q+r=1)層である。発光層405は、例えば、複数のGaN障壁層403および複数のInGaN井戸層404を有する多重量子井戸活性層である。なお、発光層405は、1つのInGaN井戸層404が2つのGaN障壁層403によって挟まれた単一量子井戸活性層であってもよい。p型層407は、例えば、Mgがドープされたp型AllGamInnN(0≦l,m,n≦1、l+m+n=1)層である。n側電極408は、n型層402に接するように設けられる。p側電極409は、p型層407に接するように設けられる。
本明細書における「m面」は、±5°の範囲内でm面(傾斜していない場合のm面)から何れかの方向に傾斜している面およびステップ状の複数のm面領域を有する面を含む。傾斜角度は、発光層405の成長面の法線とm面の法線とが形成する角度により規定される。傾斜角度θの絶対値は、c軸方向において5°以下、または1°以下の範囲であってもよい。また、a軸方向において5°以下、または1°以下の範囲であってもよい。このような僅かな傾きがあっても、ピエゾ電界による内部量子効率低下を十分抑制することができる。また、成長面がm面から僅かに傾斜する場合、当該成長面は、全体的にm面から傾斜しているが、微視的には1から数原子の高さの段差を有するステップ状の複数のm面領域によって構成される。よって、m面から絶対値で5°以下の角度で傾斜した面、または複数のm面ステップを有する面である成長面を有する窒化物半導体は、傾きの無いm面を成長面とする窒化物半導体と同様の性質を有すると考えられる。
次に、本実施形態で用いられるLEDチップの製造方法の一例を説明する。まず、窒化物半導体を成長させる前に、基板401をバッファードフッ酸溶液(BHF)で洗浄し、その後十分に水洗して乾燥する。基板401は洗浄後、なるべく空気に触れさせないようにして、MOCVD装置の反応室に載置する。その後、アンモニア(NH3)、窒素、水素などのガスを供給しながら基板をおよそ850℃まで加熱して基板表面をクリーニング処理する。
窒化ガリウム系化合物半導体層の成長は、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法で行う。トリメチルガリウム(TMG)またはトリエチルガリウム(TEG)、さらにシラン(SiH4)を供給し、基板401を1100℃程度に加熱してn型層402を堆積する。シランはn型ドーパントであるSiを供給する原料ガスである。次にSiH4の供給を止め、基板の温度を800℃未満まで降温してGaN障壁層403を堆積する。さらにトリメチルインジウム(TMI)の供給を開始してInGaN井戸層404を堆積する。GaN障壁層403とInGaN井戸層404を2周期以上で交互に堆積することで、発光層405を形成する。2周期以上とすることにより、大電流駆動時において井戸層内部のキャリア密度が過剰に大きくなることを防ぎ、またオーバーフローするキャリアの数を減らすことができる。InGaN井戸層404は厚さが3nm以上20nm以下となるように成長時間を調整して堆積をおこなってもよい。さらに、m面成長により、ピエゾ電界の影響を抑制できるので、井戸層の厚さを6nm以上にすることができる。これにより発光効率のドループを低減することができる。また、厚さが20nm以下であることにより、InGaN井戸層を均一に形成することができる。また、GaN障壁層403の厚さが6nm以上40nm以下となるように成長時間を調整して堆積をおこなってもよい。厚さが6nm以上であることにより、InGaN井戸層404に対する障壁をより確実に形成することができる。また、厚さが40nm以下であることにより、動作電圧を低くすることができる。InGaN井戸層404のIn量を調整することにより、380nmから460nmの所望の発光波長に設定することができる。
次に、発光層405の上に、アンドープ層406として、例えば厚さ30nmのアンドープGaN層を堆積する。次いで、アンドープ層406の上に、p型層407を形成する。p型層407は、TMG、NH3、TMA、TMIおよびp型不純物原料としてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を供給することにより形成される。p型層407は、例えば、厚さ50nm程度のp−Al0.14Ga0.86N層と、厚さ100nm程度のp−GaN層からなる。p型層407の上部は、Mg濃度を高めたコンタクト層であってもよい。
その後、塩素系ドライエッチングを行うことにより、p型層407、アンドープ層406、活性層405、およびn型層402の一部を除去して凹部を形成し、n型層402を露出させる。次いで、凹部の底部に、n側電極408を形成する。さらに、p型層407の上に、p側電極409を形成する。
図5は、本発明の実施形態2にかかる発光素子の構成の一例を示す説明図である。実施形態2にかかる発光素子500は、上述したLEDチップ400と、実施形態1の蛍光体材料502とを備えている。蛍光体材料502は、LEDチップ400から放射された光の波長を、より長い波長に変換する。LEDチップ400は、表面に配線パターンが形成された支持部材504上に搭載されており、支持部材504上にはLEDチップ400を取り囲むように反射部材503が配置されている。また、樹脂層501が、LEDチップ400を覆うように形成されている。
実施形態2の発光素子500は、例えば、照明装置の光源、撮像装置のフラッシュライト等に用いることができる。
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3にかかる撮像装置の一例を示す説明図である。実施形態3にかかる撮像装置600は、レンズ601とフラッシュライト602とを備えている。撮像装置600は、例えば、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォンなどである。フラッシュライト602は、上述した発光素子500を備える。レンズ601は、フラッシュライト602からの光で照射された対象物からの反射光が入射するように構成されている。
図6は、本発明の実施形態3にかかる撮像装置の一例を示す説明図である。実施形態3にかかる撮像装置600は、レンズ601とフラッシュライト602とを備えている。撮像装置600は、例えば、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォンなどである。フラッシュライト602は、上述した発光素子500を備える。レンズ601は、フラッシュライト602からの光で照射された対象物からの反射光が入射するように構成されている。
(実施形態4)
図7は、本発明の実施形態4にかかる照明装置の一例を示す説明図である。実施形態4にかかる照明装置700は、光源部701を備えている。照明装置700は、例えば、スポットライト、シーリングライト、自動車用ヘッドライトなどである。光源部701は、上述した発光素子500を備える。光源部701は、蛍光体材料502の波長特性により、色度を調整可能である。本実施形態の構成によれば、用途に応じた高品質の光空間を提供することができる。
図7は、本発明の実施形態4にかかる照明装置の一例を示す説明図である。実施形態4にかかる照明装置700は、光源部701を備えている。照明装置700は、例えば、スポットライト、シーリングライト、自動車用ヘッドライトなどである。光源部701は、上述した発光素子500を備える。光源部701は、蛍光体材料502の波長特性により、色度を調整可能である。本実施形態の構成によれば、用途に応じた高品質の光空間を提供することができる。
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
出発原料として試薬特級以上のLa2O3、Eu2O3、Cu2O、CaCO3、SrCO3、BaCO3、Y2O3粉末を用いた。これらの原料をLa、Eu、Ca、Sr、Ba、Cuの原子比が、Cu=1.00に対して表1の比率となるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した後、乾燥し、混合粉末を得た。これらの混合粉末を950℃で窒素中で2h焼成し、蛍光体粉末を得た。
出発原料として試薬特級以上のLa2O3、Eu2O3、Cu2O、CaCO3、SrCO3、BaCO3、Y2O3粉末を用いた。これらの原料をLa、Eu、Ca、Sr、Ba、Cuの原子比が、Cu=1.00に対して表1の比率となるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合した後、乾燥し、混合粉末を得た。これらの混合粉末を950℃で窒素中で2h焼成し、蛍光体粉末を得た。
得られた粉末について、日本分光製FP−6500型蛍光分光装置により、励起波長405nmで、450nmから750nmの発光スペクトルを測定した。ただし、表1中、No.1の試料は405nm励起では事実上発光しないため、266nm励起でも測定した。
405nm励起の発光スペクトル測定結果より、540〜560nm付近の発光ピークの高さ、594nm付近の発光ピークの高さ、色度指数x、y、積分発光強度(輝度;任意単位)を求めた。なお、540〜560nm付近にピークを持つ発光はブロードで、594nm付近の発光ピークと重なるため、両方のピークが観察される試料では、594nm付近の発光ピークのみの高さを直接観察できない。そこで、540〜560nm付近にのみ発光ピークを持つ試料(表1のNo.9)のデータより、このブロードなピークの594nmにおける高さは、540〜560nm付近の高さの0.47倍となるので、両方のピークが認められる試料については、540〜560nm付近のピーク高さ×0.47を、594nm付近の発光ピーク高さから減算する事によって、594nm付近の発光ピークの強度を求めた。
また蛍光波長551nmおよび594nmで励起スペクトルを測定した。結果を表1、図1、図2に示す。
図1は、表1の試料No.1を波長266nmで、No.4、11、21を波長405nmで励起した場合の発光スペクトルである。比較例のNo.1の場合、594nmを主ピークとして、582nm、610nm、620nm、654nm、709nm等発光が見られるが、これらはEu3+による発光と考えられる。一方、Euを含まないNo.11の場合、551nmをピークとするブロードな発光が見られ、これはCu+によるものと考えられる。
これらに対して、本発明の実施例であるNo.4では、551nmのブロードな発光とともに、No.1と同じ594nmを主ピークとする発光の、同時発光が観察された。また、本発明の他の実施例であるNo.21では、No.1と同じ594nmを主ピークとする発光のみが観察された。
図2には、表1のNo.1、4、21の、発光波長594nmにおける励起スペクトルを示す。図より明らかなように、比較例のNo.1は、紫外線領域の370nm付近までは励起可能であるが、励起スペクトルは長波長側へは伸びず、380nm以上の近紫外〜青色領域では、全く励起できない。これに対してNo.4やNo.21は、励起スペクトルが長波長側に伸びて、460nm付近まで励起可能である事が分かる。
この事が、表1の405nm励起の場合の、比較例のNo.1と、実施例の発光ピーク高さの差となって現れる。No.2〜No.10に示すように、少量のCa、Sr、Baを用いる事によって励起波長が長波長側に伸び、405nm励起でも発光が確認できるようになる。その望ましい量は、No.2〜No.8から、極少量0.1%であっても効果が認められるが、あまり多くなると輝度が低下してくるため、30%以下、より望ましくは10%以下が良い。
Euを含まない、比較例のNo.11〜13では、それぞれ550、543、541nmをピークとするブロードな発光が観察されたが、594nmを主ピークとする発光は認められない。結果、色度はxが0.40以下、yが0.55以上となって、緑色〜黄緑色発光となり、黄色よりも青色よりとなるので、青色LEDチップと組み合わせて使用しても、良好な白色光が得られない。
一方、Euを含む場合、Eu量により、色度を広い範囲で調整する事が可能である。Euの量としては、No.11とNo.14から明らかなように、少量であっても色度を緑色側から赤色側へ移動させる効果はあるが、黄色の範囲をx>0.40とすると、No.14〜20の結果より、1%以上が望ましい。また上限については、Euが多いほど赤色側と出来るが、Eu2O3は高価であり、30%となるNo.20で、550nm付近の発光が非常に弱くなっている事、15%のNo.19に対してかなり輝度が低下している事から、30%以下、より望ましくは15%以下が良い。
No.21は、アルカリ土類としてBaを用いたもので、図1にも示したように、Eu量がそれほど多くないにもかかわらず、551nm付近の発光がほぼ消失し、594nmを主ピークとする発光が強く観察される。よって赤色蛍光体とするには、CaやSrよりもBaを用いる事が望ましい。
No.22〜25は、Laの一部をYで置換したものである。置換を行っていないNo.18と比較すれば明らかなように、色度を変化させずに、輝度を増加させる効果が認められる。Y2O3はLa2O3よりも化学的に安定なので、蛍光体を安定化させる効果もある。しかしながら、置換量が多くなりすぎると、逆に輝度が低下する傾向にある。よって望ましい置換量は50%以下、より望ましくは40%以下である。
図3には、No.4の551nmおよび594nmの発光ピークの励起スペクトルを示す。図は、380nm励起時の値で規格化したものである。図より、350nmから長波長側で、両発光ピークの励起スペクトルは全く同じ変化を示しており、励起波長が変化しても蛍光体の色調は変化しない。この事は、同じ母材の吸収から、二種類の発光中心が同時に発光している事を示している。
〔実施例2〕
380nm〜460nmの波長範囲の光を吸収して黄色で発光する実施例1のNo.17の粉末を用意し、これをジメチルシリコーン樹脂に10重量%の割合で加え、三本ロール混練機にて混練して、未硬化状態の蛍光体樹脂混合物を得た。
380nm〜460nmの波長範囲の光を吸収して黄色で発光する実施例1のNo.17の粉末を用意し、これをジメチルシリコーン樹脂に10重量%の割合で加え、三本ロール混練機にて混練して、未硬化状態の蛍光体樹脂混合物を得た。
次に中心波長430nmで発光するLEDチップを用意し、このLEDチップが蛍光体樹脂混合物で覆われた状態にして加熱し、樹脂を硬化させ、LED装置を完成した。LEDチップに通電して発光させ、白色光として観察できる事を確認した。
本発明の蛍光体材料は、例えば、青色LEDチップや近紫外LEDチップ等と組み合わせて、発光素子等に用いることができる。当該発光素子は、例えば、照明装置の光源、撮像装置のフラッシュライト等に用いることができる。
Claims (10)
- 380nm〜460nmの波長範囲内の光を吸収し、少なくともEu2O3とCu2Oとを含む複合酸化物であって、
前記波長範囲内の光によって励起されたEu3+に基づく発光をし、かつ前記波長範囲内の光によって励起されたCu+に基づく発光が可能である複合酸化物を含む、蛍光体材料。 - 前記複合酸化物が、La2O3およびMO(Mは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれる少なくとも1種)をさらに含む、請求項1に記載の蛍光体材料。
- 前記複合酸化物が、Y2O3をさらに含む、請求項2に記載の蛍光体材料。
- 前記複合酸化物が、(1−x−y−z)LaO3/2・xEuO3/2・yMO・zYO3/2・CuO1/2(Mは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、0<x≦0.3、0<y≦0.3、0≦z≦0.5、x+y+z<1である)を含む組成を有する、請求項1に記載の蛍光体材料。
- 前記Mが、Baである、請求項4に記載の蛍光体材料。
- 前記xが、0.03≦x≦0.3である、請求項4または5に記載の蛍光体材料。
- 少なくともLEDチップと、
前記LEDチップの発光を吸収して発光する、請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光体材料と
を備えた、発光素子。 - 前記LEDチップが、非極性面または半極性面である成長面を有する窒化物半導体から形成される発光層を備える、請求項7に記載の発光素子。
- 請求項7または8に記載の発光素子を備えたフラッシュライトと、
前記フラッシュライトからの光で照射された対象物からの反射光が入射するレンズと、
を備えた、撮像装置。 - 請求項7または8に記載の発光素子を備えた光源部を備えた、照明装置。
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