JP2014039484A - 検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロrna - Google Patents

検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロrna Download PDF

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Abstract

【課題】検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロRNA等の開発が切望されていた。
【解決手段】検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロRNAであり、(a)miR-384-5p、及び、(b)miR-9*又はmiR-9-3p、からなるマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNA、並びに、
哺乳動物における神経病変の検定方法であって、哺乳動物が提供する検体に含まれる、前記マイクロRNAの含有量を測定する第一工程、及び、第一工程で得られた前記検体に含まれるマイクロRNAの含有量の測定値を当該マイクロRNAの含有量の対照値と比較し、その差異に基づいて前記検体を提供する哺乳動物における神経病変の有無を評価する第二工程を有することを特徴とする方法等。
【選択図】なし

Description

本発明は、検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロRNA等に関する。
神経系は生体内の様々な機能を司っており、血圧、呼吸、心拍数など生命に必須の機能をはじめ、内臓機能の調節、視覚、聴覚、平衡感覚などの感覚、筋骨格系の運動、睡眠および覚醒の調節、情動、記憶、学習などの高次機能など、極めて重要な役割を果たす。そのため、神経系に異常を生じる疾患や化学物質の神経系に及ぼす影響は、生体にとって重篤な機能障害に発展することがあることより、この分野の研究は急速に発展している。しかしながら、神経系における異常の発生機序には解明されていない部分が多く、予防法・治療法の確立されていない神経系疾患も少なくない。このような状況において、様々な化学物質の神経系毒性の有無を事前に確認しておくための安全性試験は極めて重要である。従来、化学物質の神経毒性を検定する代表的な方法としては、種々の哺乳動物(例えば、ラット)を多数用い、且つ、長期間の動物飼育を要する安全性試験において、神経症状や詳細な機能観察に加え、剖後に採取される組織等のサンプルについて、病理組織学的手法により神経病変の有無を評価する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
OECD Guidelines for the Testing of Chemicals -Test No.424: Neurotoxicity Study in Rodents, ULR: http://www.oecd-ilibrary.org/docserver/download/fulltext/9742401e.pdf?expires=1329198566&id=id&accname=freeContent&checksum=8E902C42306C59E53A2AA1A80A1AE6FB
しかしながら、上記のような哺乳動物を用いた安全性試験では、病理組織学的手法を用いるために高度な専門技術レベルが不可欠となり、また経時的に神経病変の有無を評価する汎用的な方法はこれまでになかった。具体的には、化学物質の神経系への影響は神経症状や詳細な機能観察においても捉えられないこともあり、神経の異常を検出する従来の方法でも必ずしも十分に満足のゆくものではなかった。
そこで、検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロRNA等の開発が切望されていた。そして、化学物質の神経毒性をできるだけ正確かつ簡便に評価するための神経毒性検定方法の開発も望まれていた。また、神経病変の素因について哺乳動物個体をスクリーニングする方法が必要とされており、またさらに、神経疾患の治療方法も非常に望まれている。
かかる状況の下、本発明者らは鋭意検討した結果、神経病変が存在する哺乳動物由来の血液において、特定のマイクロRNAの含有量が正常生体由来の検体に含まれる当該マイクロRNAの含有量に比べ高い値を示すことを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロRNAであり、以下のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNA(以下、本マイクロRNAと記すこともある。);
<マイクロRNA群>
(a)miR-384-5p、(b)miR-9-3p又はmiR-9*
2.哺乳動物における神経病変の検定方法であって、
(1)哺乳動物が提供する検体に含まれる、以下のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAの含有量を測定する第一工程、及び
(2)第一工程で得られた前記検体に含まれるマイクロRNAの含有量の測定値を当該マイクロRNAの含有量の対照値と比較し、その差異に基づいて前記検体を提供する哺乳動物における神経病変の有無を評価する第二工程
を有することを特徴とする方法(以下、本発明方法と記すこともある。);
<マイクロRNA群>
(a)miR-384-5p、(b)miR-9-3p又はmiR-9*
3.検体が、血液若しくはその内容物が含まれる生体試料であることを特徴とする前項2記載の方法;
4.マイクロRNAの含有量の対照値が、当該マイクロRNAの正常生体由来の検体に含まれる含有量の値であることを特徴とする前項2又は3記載の方法;
5.第二工程において、マイクロRNAの含有量の測定値が対照値の2倍以上、又は、対照値と比較し統計学的に有意な高値であることを指標とし、当該指標に基づいて前記検体における神経病変の有無を評価する工程であることを特徴とする前項2〜4のいずれかに記載される方法;
6.物質の神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性の検定方法であって、
(1)哺乳動物と被験物質とを接触させる第一工程、
(2)第一工程で前記被験物質と接触させた哺乳動物が提供する検体に含まれる、以下のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAの含有量を測定する第二工程、及び
(3)第二工程で得られたマイクロRNAの含有量の測定値を当該マイクロRNAの含有量の対照値と比較し、その差異に基づいて前記被験物質の神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を評価する第三工程
を有することを特徴とする方法(以下、本発明神経毒性活性検定方法と記すこともある。);
<マイクロRNA群>
(a)miR-384-5p、(b)miR-9-3p又はmiR-9*
7.マイクロRNAの含有量の対照値が、当該マイクロRNAの正常生体由来の検体に含まれる含有量の値であることを特徴とする前項6記載の方法;
8.第三工程において、マイクロRNA群の含有量の測定値が対照値の2倍以上若しくは2分の1以下、又は、対照値と比較し統計学的に有意な高値若しくは低値であることを指標とし、前記被験物質の神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を評価することを特徴とする前項6又は7記載の方法;
9.前項6〜8のいずれかに記載される方法により評価された神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性に基づき神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質を選抜する工程を有することを特徴とする神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質の探索方法;
10.哺乳動物が提供する検体における神経病変の有無を評価するための指標を提供する試薬としての、以下のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAの使用;
<マイクロRNA群>
(a)miR-384-5p、(b)miR-9-3p又はmiR-9*
11.哺乳動物が提供する検体について、前項2〜5のいずれかに記載される方法により検出された当該哺乳動物が有する神経病変の有無に係るデータ情報を入力・蓄積・管理する手段、前記データ情報を所望の結果を得るための条件に基づき照会・検索する手段、及び、照会・検索された結果を表示・出力する手段を具備することを特徴とするシステム;
等を提供するものである。
本発明によって、検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロRNA等が提供可能となる。本発明は、化学物質の神経毒性をできるだけ正確かつ簡便に評価するための神経毒性検定方法となりうる。また、神経毒性の素因について哺乳動物個体をスクリーニングする方法や、またさらに、神経疾患の治療方法にも応用可能である。
図1は、ラット血液におけるmiR-384-5pおよびmiR-9*のRT-PCRの結果を示す図である。塩化トリメチルスズ(TMT)誘発神経病変を有するラットでは、投与後7日目において、miR-384-5pの含有量が12 mg/kg群で増加傾向を示し、miR-9*の含有量が9 mg/kg群で増加傾向を示し、12 mg/kg群で有意に増加していることを示す。 図2は、ラット血液におけるmiR-384-5pおよびmiR-9*のRT-PCRの結果を示す図である。塩化トリメチルスズ(TMT)誘発神経病変を有するラットでは、miR-384-5pの含有量が、投与後4日目の9 mg/kg群および12 mg/kg群で有意な増加または増加傾向を示し、投与後7日目の12 mg/kg群において有意に増加していることを示す。また、miR-9*の含有量が、投与後4日目の12 mg/kg群および投与後7日目の6 mg/kg群、9 mg/kg群および12 mg/kg群において有意に増加していることを示す。
本発明は、特定のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAの含有量と神経病変の存在との間の関係を示唆する直接的エビデンスを新たに見出したことに基づくものである。見出された知見の一つには、具体的には例えば、神経病変が存在するラットの血液において、特定のマイクロRNAの含有量が、神経病変が存在しないラットの血液におけるマイクロRNAの含有量と顕著に異なり、増大していること等が含まれる。
本発明は、検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロRNAであり、以下のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNA(即ち、本マイクロRNA)を含む。
<マイクロRNA群>
(a)miR-384-5p(配列番号1:uguaaacaauuccuaggcaaugu)、(b)miR-9-3p又はmiR-9*(配列番号2:auaaagcuagauaaccgaaagu )
本発明において「神経病変」としては、例えば、脳、脊髄などの中枢神経もしくは末梢神経における病変で、神経細胞体、軸索、髄鞘、神経線維などにおける萎縮、変性、壊死、消失といった退行性変化、グリオーシス、炎症性病変、虚血性の壊死などの循環障害、リピドーシス、色素沈着などの蓄積病、先天異常、または過形成、良性腫瘍、悪性腫瘍などのた増殖性および腫瘍性病変などを挙げることができる。
本発明において「マイクロRNA」(以下、miRNAと記すこともある。)は、広範囲にわたる種のゲノムにおいて同定されている短い非コードRNAである。マイクロRNAは、遺伝子発現の負の調節因子であり、タンパク質コードmRNAの3’非翻訳領域内の塩基配列との塩基対の完全若しくは不完全な相互作用によって主に機能すると考えられている。
配列番号1で示される「miR-384-5p」は、例えば、マウス、ラット等において共通な塩基配列であり、現在それぞれは「mmu-miR-384-5p」、「rno-miR-384-5p」というIDが付与されているマイクロRNAである。
また、配列番号2で示される「miR-9-3p」又は「miR-9*」は、例えば、ヒト、マウス、ラット、キンカチョウ等において共通な塩基配列であり、現在それぞれは「hsa-miR-9-3p」、「mmu-miR-9-3p」、「rno-miR-9*」、「tgu-miR-9*」というIDが付与されているマイクロRNAである。
本発明において「検体」とは、例えば、血液、リンパ液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液、関節液、眼房水、唾液、汗、涙、尿、羊水、乳汁、鼻汁などの体液若しくはその内容物が含まれる生体試料をあげることができる。具体的には例えば、被験哺乳動物から採取された血液そのもの、或いは、血清、血漿等の血液成分が含まれる生体試料又はそれらから分離されたマイクロRNAを含む試料等をあげることができる。これらの試料はそのまま検体として用いてもよく、また、かかる試料から分離、分画、固定化等の種々の操作により調製された試料を検体として用いてもよい。
本発明において含有量が測定されるマイクロRNAは、上記のマイクロRNA群(以下、本マイクロRNA群と記すこともある。)から選ばれる1以上のマイクロRNA(即ち、本マイクロRNA)である。
尚、本発明において含有量が測定されるマイクロRNAは、例えば、配列表に示される塩基配列等の公知の塩基配列と全く同一の塩基配列を有する遺伝子のほか、前記の遺伝子の塩基配列に、生物の種差、個体差若しくは器官、組織間の差異等により天然に生じる変異による塩基の欠失、置換若しくは付加が生じた塩基配列を有する遺伝子も含まれる。
本マイクロRNAの含有量の測定は、生体試料におけるRNAの含有量を測定するのに適切な方法、例えば、単位量の検体あたりの本マイクロRNAの転写物量を測定する方法等の通常の方法(具体的には、増幅に基づく方法やハイブリダイゼーションに基づく方法等)を使用して測定することができる。
本マイクロRNAの含有量を測定するには、例えば、マイクロRNA定量的リアルタイム−ポリメラーゼチェイン反応(以下、定量的RT−PCRと記すこともある。)、マイクロRNAマイクロアレイ法等により実施することができる。
増幅に基づく方法では、増幅反応(例えば、ポリメラーゼチェイン反応)における鋳型として、本マイクロRNAを使用する。本マイクロRNAの含有量は、本マイクロRNAの逆転写の後、その逆転写産物のポリメラーゼチェイン反応による増幅によって測定することもできる。本マイクロRNAの含有量は、内部標準、例えば、同じ試料内に存在する含有量に変動がないマイクロRNAの存在量、又は、予め検体に混ぜ込んだ量が既知である検体の動物種とは異なる他の動物種由来のマイクロRNAと比較して定量化することができる。定量的増幅では、濃度が既知である本マイクロRNAの増幅産物の量と元の試料における鋳型の量と比較することにより試料中の含有量を求めることができる。TaqManプローブを使用する定量的RT‐PCRの方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、Chen C et al.(2005) Real-time quantification of microRNAs by stem-loop RT-PCR.Nucleic Acids Res.33(20):e179.、Lao K et al.(2006) Multiplexing RT-PCR for the detection of multiple miRNA species in small samples., Biochem Biophys Res Commun.343(1):85-89.等に記載されている。
ハイブリダイゼーションに基づく方法としては、例えば、ノーザンブロット解析、溶液ハイブリダイゼーション、RNアーゼ保護検定(Hui Wand et al.(2007) Direct and sensitive miRNA profiling from low-input total RNA RNA 13:151-159)も当業者に周知である。
検体に含まれる複数の本マイクロRNAの含有量を同時に測定するのに適切な方法としては、例えば、マイクロアレイに基づく方法等を挙げることができる。当該方法を使用して、例えば、本マイクロRNA群に含まれる全てのマイクロRNAの含有量を測定する場合がある。このような方法は、1組の本マイクロRNAに特異的な1組のプローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロチップフォーマット(即ち、マイクロアレイ)において、オリゴライブラリーを作成する手順を伴う。このようなマイクロアレイを使用して、検体に含まれる複数の本マイクロRNAの含有量は、RNAを逆転写して1組の標的オリゴヌクレオチドを生成し、それらの標的オリゴヌクレオチドをマイクロアレイ上のプローブオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして、ハイブリダイゼーションプロファイル又は発現プロファイルを作成することにより、測定される。次いで、検体のハイブリダイゼーションプロファイルを対照検体のハイブリダイゼーションプロファイルと比較し、どのマイクロRNAにおいて含有量が変化したのかを測定することができる。因みに、マイクロアレイ法の例は、米国特許出願第2005/0277139号等に記載されている。
また、増幅に基づく方法を使用して、本マイクロRNAのコピー数を測定することもできる。当該方法において、対応するマイクロRNAの塩基配列は、増幅反応(例えば、PCR)の鋳型の役割を果たす。定量的増幅では、増幅産物の量が元の検体における鋳型の量に比例する。適切な対照に対する比較により、使用される特異的プローブに対応する本マイクロRNAのコピー数の指標が得られる。TaqManプローブを使用した定量的RT−PCRの方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、Heid et al., 1996, Real time quantitative PCR., Genome Res., 10:986‐994等に記載されている。
また、TaqManに基づく方法を使用して、本マイクロRNAを定量化することもできる。TaqManに基づく方法では、5’蛍光色素及び3’消光剤を含む蛍光発生オリゴヌクレオチドプローブが使用される。当該プローブはPCR産物にハイブリダイズするが、3’末端における遮断剤によりそれ自体は伸長することができない。次のサイクルでPCR産物が増幅されると、ポリメラーゼ(例えば、AmpliTaq)の5’ヌクレアーゼ活性は、TaqManプローブの開裂をもたらす。当該開裂によって、5’蛍光色素と3’消光剤とが分離し、それによって増幅の機能として蛍光が増大する(例えば、http://www2.perkin‐elmer.comを参照)。
適切な増幅方法の他の例として、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace, Genomics, 4:560, 1989、Landegren et al., Science, 241:1077, 1988、Barringer et al., Gene, 89:117, 1990)、転写増幅(Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:1173,1989)、自立配列複製(Guatelli et al., Proc Nat Acad Sci, USA 87:1874, 1990)、ドットPCR、リンカーアダプターPCR等が挙げられるが、これらに限定されない。
本マイクロRNAのコピー数を測定する1つの効果的な方法は、マイクロアレイに基づくプラットフォームを使用する。マイクロアレイ技術は高分解能が得られるため、使用される場合がある。例えば、伝統的なCGHのマッピング分解能は一般的に20Mbと限られているのに対して、マイクロアレイに基づくCGHでは、マッピング分解能の向上が達成される。各種のマイクロアレイ方法の詳細は、例えば、米国特許第6,232,068号、Pollack et al., Nat. Genet., 23(1):41‐6, (1999)等に記載されている。
検体の「発現プロファイル」又は「ハイブリダイゼーションプロファイル」は、本質的には前記検体の状態のフィンガープリントであり、2つの状態にはいずれかの特定のマイクロRNAが同じように発現されている場合があり、いくつかのマイクロRNAの含有量を測定することによって、当該検体に固有のマイクロRNA発現プロファイルの作成が同時に可能となることがある。即ち、異なる状態の検体の発現プロファイルを比較することによって、これらの状態のそれぞれにおいてどのマイクロRNAがより重要であり、効果的であるかに関する情報が得られる。当該情報の使用は、例えば、特定の治療において、(例えば、特定の患者の長期の予後を改善するように化学療法薬が作用するかどうかを判定するために)評価される場合がある。同様に、診断は、患者由来の検体を既知の発現プロファイルと比較することにより実施又は確認される場合がある。更に、これらのマイクロRNA発現プロファイルによって、神経病変発現プロファイルを抑制するか又は予後不良プロファイルを予後良好プロファイルに変える医薬品のスクリーニングが可能となろう。
本マイクロRNAの含有量の測定方法についてさらに説明する。
本マイクロRNAの含有量であるmiRNA量は、例えば、本マイクロRNAの塩基配列に基づいて設計、調製されたプローブ又はプライマーを使用して、通常の遺伝子工学的方法、例えば、定量的RT−PCR、マイクロRNAマイクロアレイ法等を用いることによって測定することができる。具体的には例えば、Chen C et al. (2005) Real-time quantification of microRNAs by stem-loop RT-PCR. Nucleic Acids Res. 33 (20): e179.、Hui Wand et al. (2007) Direct and sensitive miRNA profiling from low-input total RNA, RNA 13: 151-159、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis著;モレキュラー・クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載された方法に準じて行うことができる。この際、検体に含まれる含有量が恒常的に一定であることが知られているマイクロRNAや、検体中に予め一定量混ぜ込む人工マイクロRNA(以下、総じて内部対照RNAと記すこともある。)の量を同時に測定しても良い。そして、内部対照RNAの量若しくはその指標値あたりの本マイクロRNAのmiRNA量又はその指標値を算出することにより、本マイクロRNAの含有量を求めてもよい。
(1.マイクロRNAの定量的RT−PCR)
本マイクロRNAの含有量を測定しようとする検体から以下の方法でmiRNAを調製する。
例えば、まず、マイクロRNAが含まれる検体から、塩酸グアニジン/フェノール法、SDS−フェノール法、グアニジンチオシアネート/CsCl法等の汎用的な方法によってmiRNAを含む全RNAを抽出する。例えば、ISOGEN(ニッポンジーン製)等の市販のキットを利用して全RNAを抽出してもよい。
抽出された全RNAから、例えば、以下のようにしてmiRNAを調製する。まず、オリゴdTをリガンドとして有するポリAカラムを5倍カラム容量以上のLoading buffer[20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、0.5M NaCl、1mM EDTA、0.1%(w/v)SDS]を用いて、平衡化し、続いて前述の方法で調製された全RNAをカラムにかけ、10倍カラム容量のloading bufferで洗浄する。さらに5倍カラム容量のWashing buffer[20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、0.1M NaCl、1mM EDTA、0.1%(w/v)SDS]で洗浄する。続いて、3倍カラム容量のelution buffer[10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、1mM EDTA、0.05%(w/v)SDS]でmRNAを溶出させることによってmiRNAを得る。
また、例えば、PARIS(登録商標)キット(ライフテクノロジーズ)等の市販のキットを利用して全RNAを抽出してもよい。当該方法は検体が血液若しくはその内容物が含まれる生体試料の場合に特に好ましい。
尚、前記の全RNAの抽出において、目的のマイクロRNAの含有量の測定を邪魔しない人工マイクロRNAを一定量混ぜ込み、目的のマイクロRNAの含有量を測定する際の内部対照として使用してもよい。このような人工マイクロRNAとしては、例えば、ショウジョウバエのマイクロRNA(例えば、miR-3、miR-6)等を挙げることができる。
抽出された全RNAからのマイクロRNAの含有量の測定は、例えば、TaqMan(登録商標) MicroRNA Assays(ライフテクノロジーズ)等の市販キットを利用して、目的のマイクロRNAと混ぜ込んだ人工マイクロRNAのCt値を求め、得られたCt値を元に市販キットの説明に従い測定値を算出すればよい。
(2.マイクロRNAマイクロアレイ解析)
本マイクロRNAの含有量の測定には、例えば、ナイロンメンブラン等のメンブランフィルター等に本マイクロRNAのcDNAをスポットして作製されるマクロアレイ、スライドガラス等に、本マイクロRNAのcDNAをスポットして作製されるマイクロアレイ、スライドガラス上に本マイクロRNAの塩基配列の部分配列を有するオリゴヌクレオチド(通常18〜25merの鎖長)を、光化学反応を利用して固定して作製されるプローブアレイ等公知の技術に基づいたマイクロアレイを利用することができる。これらのマイクロアレイの作製は、例えば、ゲノム機能研究プロトコール 実験医学別冊(羊土社刊)等に記載された方法に準じて行うことができる。またAffymetrix社等から市販されているGenechip等を利用することもできる。
また、例えば、Rat マイクロRNA Microarray Kit (8x15K)(Agilent Technologies)等の市販キットを利用して、当該キットに添付される説明書に記載される方法に従い、目的のマイクロRNAのシグナルを数値化し、含有量を測定してもよい。当該方法は検体がラット由来の体液若しくはその内容物が含まれる生体試料の場合に適する。
以下、マイクロアレイを用いて本マイクロRNAの含有量を測定する方法の一例を示す。
(2−1.サンプル調製)
本マイクロRNAの含有量を測定しようとする検体から上記(1.マイクロRNAの定量的RT−PCR)に記載された方法と同様の方法でmiRNAを調製する。調製されたmiRNA100ngに、例えば、miRNA Complete Labeling and Hyb Kit(Agilent社)中のCIP 0.5μL及び10xCIP Buffer 0.4μLを添加し、さらに全量が4μLとなるようにDnase/Rnase free水を加え、得られた混合物を37℃、30分間に保持する(脱リン酸化処理)する。次いで、得られた混合物に2.8μlのDMSOを添加し、得られたサンプルを100℃、5-10分間に加温した(熱変性処理)後、直ちに2分間氷冷する。上記Kitに含まれる10xT4 LigaseBuffer 1.0μL、Cyanine-pCp 3.0μL及びT4 RNA Ligase 0.5μLを混合しておき、氷冷後のサンプルに添加する。得られたサンプルを16℃、2時間に保持した(ライゲーション反応処理)後、真空濃縮機を用いてサンプルを完全乾固させる。これにDnase/Rnase free水 18μLを加え、乾固したRNAを完全に溶解させる。得られた溶解物に上記Kitに含まれる10xGene Expression Blocking Agent 4.5μLと2xHi-RPM Hybridization Buffer 22.5μLとを加え、得られた混合物を100℃、5分間保温した後、これを直ちに5分間氷冷する。氷冷後の混合物を卓上遠心機でスピンダウンした後、全量をアレイとのハイブリダイゼーションに使用する。予め55℃にセットしたオーブン中でアレイを回転(回転数:20rpm)させながら20時間ハイブリダイゼーションさせる。
(2−2.マイクロアレイによる定量)
上記(2−1)で調製されたサンプルを卓上遠心機でスピンダウンした後、全量を用いて、予め55℃にセットしたオーブン中でアレイを回転(回転数:20rpm)させながら20時間ハイブリダイゼーションさせる。Gene Expression Wash Pack(Agilent社)に含まれる洗浄バッファー1の中でアレイを室温で5分間洗浄する。このとき、バッファーはスターラーで中程度の回転数で撹拌しておく。さらに、予め37℃に温めておいた洗浄バッファー2の中でアレイを5分間洗浄する。このときも同様にバッファーはスターラーで中程度の回転数で撹拌しておく。アレイを洗浄バッファーから引き上げる。マイクロアレイ上のシグナル量をスキャナーにより測定することによって、本マイクロRNAの量、即ち、本マイクロRNAの発現量を測定することができる。上記のほかに、市販のマイクロアレイ及びサンプル調製用キット(アフィメトリックス社)等を用いることもできる。
本発明検出方法においては、前記のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAの含有量を、上述のようにして測定する。含有量を測定するマイクロRNAを複数選ぶ場合には、前記のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAを複数選んでもよい。
本マイクロRNAの含有量の測定は、上述のようにして、単位量の検体あたりの本マイクロRNAの含有量を測定する方法等により行うことができる。
上記のようにして得られた前記検体に含まれる本マイクロRNAの含有量の測定値を、当該マイクロRNAの含有量の対照値と比較し、その差異に基づいて前記検体における神経病変の有無を評価する。
本マイクロRNAの含有量の対照値としては、例えば、前記被験物質と接触させていない正常生体由来の検体に含まれる含有量の値をあげることができる。正常生体由来の検体は、正常生体由来の血液、リンパ液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液、関節液、眼房水、唾液、汗、涙、尿、羊水、乳汁、鼻汁などの体液若しくはその内容物が含まれる生体試料、好ましくは血液若しくはその内容物が含まれる生体試料における当該マイクロRNAの含有量の値をあげることができる。ここで正常生体とは、例えば、被験物質と接触していない生体で病理組織学的検査において異常の認められない生体を意味する。かかる対照値は、正常生体由来の検体に含まれる本マイクロRNAの含有量を、被験物質と接触させた哺乳動物由来の検体に含まれる当該マイクロRNAの含有量と併行して測定して求めてもよいし、別途測定して求めてもよい。例えば、被験物質と接触させる前の哺乳動物由来の検体の一部を採取して本マイクロRNAの含有量を測定し、得られた値を対照値とすることもできる。
例えば、被験物質と接触させた哺乳動物由来の検体に含まれる本マイクロRNAの含有量の測定値が、正常生体由来の検体に含まれる本マイクロRNAの含有量の値の2倍以上、又は、対照値と比較し統計学的に有意な高値であれば、検体中に神経病変を有すると評価することができる。
本発明神経毒性活性検定方法においては、まず、哺乳動物と被験物質とを接触させる。哺乳動物としては、例えば、イヌ、ネコ等の愛玩動物、ウシ、ウマ、ヒツジ等の家畜、ラット、マウス、ウサギ等の実験動物、サル、ヒト等の霊長類等を挙げることができる。
本発明神経毒性活性検定方法において、哺乳動物と被験物質との接触は、例えば、哺乳動物に被験物質を投与することにより行ってもよい。哺乳動物は、天然の動物のほか、トランスジェニック動物、遺伝子ノックアウト動物等であってもよい。哺乳動物への被験物質の投与方法としては、例えば、経口(強制又は飲料水や餌に混じ)、筋肉内、静脈内、皮下、腹腔内、経気道等により行うことができる。投与量、投与回数及び投与期間は、例えば、全身状態、全身諸器官組織等に重篤な影響を及ぼさない範囲内(例えば投与量は、最大耐量)とすればよい。
次に、上記のようにして被験物質と接触させた哺乳動物由来の検体に含まれる、前記のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAの含有量を、上述のようにして測定する。含有量を測定するマイクロRNAを複数選ぶ場合には、前記のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAを複数選んでもよい。
本マイクロRNAの含有量の測定は、上述のようにして、単位量の検体あたりの本マイクロRNAの含有量を測定する方法等により行うことができる。
対照値に比較した、検体に含まれる本マイクロRNAの含有量の変化によって、検体を提供する哺乳動物における神経病変が存在することが示される。いくつかの実施形態において、検体に含まれる目的のマイクロRNAの含有量は、対照値よりも高い。本明細書で使用される通り、検体に含まれる本マイクロRNAの含有量が対照値よりも多い場合、本マイクロRNAの含有量は「増加」される。
被験物質と接触させた哺乳動物由来の検体中において、本マイクロRNAの含有量の増加を検出するための好ましい時期としては、例えば、被験物質と接触した後2日目以降を挙げることができる。より好ましくは、例えば、被験物質と接触した後4日目以降を挙げることができる。
複数の本マイクロRNAの含有量が神経病変と関連していることから、神経病変の存在は、本マイクロRNAの含有量のいずれか1つを測定することによって、または測定の際に本マイクロRNAの含有量のいずれかの組み合わせを測定することによって、検定することができる。
本マイクロRNAの含有量の変化は、検体を提供する哺乳動物における神経病変を検出することができる。そのため、本発明はまた、神経病変を生じる危険性がある哺乳動物が提供する検体をスクリーニングする方法であって、前記検体において神経病変に関連する少なくとも1つの本マイクロRNAの含有量又は本マイクロRNAの含有量の組合せを評価する手順を含む方法も提供する。従って、前記検体に含まれる本マイクロRNAの含有量又は本マイクロRNAの含有量の組合せが、対照値に比較して変化することは、前記検体を提供する哺乳動物に神経病変を生じる危険性があることを示す。このようなスクリーニングのために使用される検体は、正常であると考えられる神経組織を含む哺乳動物から提供されるものである。
上記のようにして被験物質と接触させた哺乳動物が提供する検体から得られた本マイクロRNAの含有量の測定値を、当該マイクロRNAの含有量の対照値と比較し、その差異に基づいて前記被験物質の神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を評価する。
本マイクロRNAの含有量の対照値としては、例えば、前記被験物質と接触させていない正常生体由来の検体に含まれる含有量の値をあげることができる。正常生体由来の検体は、正常生体由来の血液、リンパ液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液、関節液、眼房水、唾液、汗、涙、尿、羊水、乳汁、鼻汁などの体液若しくはその内容物が含まれる生体試料若しくはその内容物が含まれる生体試料、好ましくは血液若しくはその内容物が含まれる生体試料における当該マイクロRNAの含有量の値をあげることができる。ここで正常生体とは、例えば、被験物質と接触していない生体で病理組織学的検査において異常の認められない生体を意味する。かかる対照値は、正常生体由来の検体に含まれる本マイクロRNAの含有量を、被験物質と接触させた哺乳動物由来の検体に含まれる当該マイクロRNAの含有量と併行して測定して求めてもよいし、別途測定して求めてもよい。例えば、被験物質と接触させる前の哺乳動物由来の検体の一部を採取して本マイクロRNAの含有量を測定し、得られた値を対照値とすることもできる。
例えば、被験物質と接触させた哺乳動物由来の検体に含まれる本マイクロRNAの含有量の測定値が、正常生体由来の検体に含まれる本マイクロRNAの含有量の値の2倍以上、又は、対照値と比較し統計学的に有意な高値であれば、前記被験物質との接触による神経病変を構成する異常をきたした神経系細胞の発生を意味し、当該被験物質は神経毒性に係る促進活性を有すると評価することができる。
一方、例えば、被験物質と接触させた哺乳動物由来の検体に含まれる本マイクロRNAの含有量の測定値が、正常生体由来の検体に含まれる本マイクロRNAの含有量の2分の1以下、又は、対照値と比較し統計学的に有意な低値であれば、前記被験物質との接触による神経病変を構成する異常をきたした神経系細胞の発生抑制を意味し、当該被験物質は神経毒性に係る抑制活性を有すると評価することができる。因みに、このような場合の実施形態において、検体に含まれる目的の本マイクロRNAの含有量は、対照値よりも低い。本明細書で使用される通り、検体に含まれる本マイクロRNAの含有量が対照値よりも少ない場合、本マイクロRNAの含有量は「減少」する。対照値における相対的な本マイクロRNAの含有量は、1つ以上の本マイクロRNAの含有量に対して測定することができる。
さらに、上記のような本発明神経毒性活性検定方法は、「神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質」の探索等に利用することができる。具体的には、本発明神経毒性活性検定方法により評価された神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性に基づき「神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質」を選抜することによって、「神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質」を探索することができる。
選抜された神経毒性に係る促進活性を有する物質は、例えば、神経毒性モデル哺乳動物の作製等に利用することもできる。また選抜された神経毒性に係る抑制活性を有する物質は、例えば、神経疾患予防剤、神経疾患治療剤等に利用することもできる。
本発明神経毒性活性検定方法により評価された神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性に基づき選抜された「神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質」は、当該技術分野で既知の技法に従って、哺乳動物への投与前に、「医薬品」と通常呼ばれる薬学的組成物として調製することができる。従って、本発明は、神経疾患を治療するための薬学的組成物を包含する。
本発明の薬学的組成物は、少なくとも無菌であり且つ発熱物質がないことを特徴とする。本明細書で使用される場合、薬学的「組成物」又は「製剤」は、ヒト及び獣医学的使用のための製剤を包含する。本発明の薬学的組成物を調製する方法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1985)に記載されている。
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体と混合された少なくとも1つの「神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質」(例えば、0.1〜90重量%)又はその生理的に許容される塩を含む。また、本発明の薬学的組成物は、リポソーム又は薬学的に許容される担体によってカプセル化された少なくとも1つの「神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質」を含んでよい。
適切な薬学的に許容される担体としては、例えば、水、緩衝用水、生理食塩液、0.4重量%生理食塩水、0.3重量%グリシン、ヒアルロン酸等を挙げることができる。
本発明の薬学的組成物は、従来の薬学的賦形剤及び/又は添加剤を含んでもよい。適切な薬学的賦形剤としては、例えば、安定剤、抗酸化剤、モル浸透圧調整剤、緩衝剤、pH調整剤等を挙げることができる。適切な添加剤としては、例えば、生理的に生体適合性を有する緩衝剤(例えば、塩酸トロメタミン)、キレート剤(例えば、DTPAやDTPA‐ビスアミド)、カルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA‐ビスアミド)の添加剤、場合により、カルシウム塩又はナトリウム塩(例えば、塩酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム)の添加剤等を挙げることができる。本発明の薬学的組成物は、液体形態で使用するためにパッケージすることができ、また凍結乾燥することもできる。
本発明の固体の薬学的組成物としては、例えば、従来の無毒性で固体の薬学的に許容される担体(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどの医薬品グレード)等を使用することができる。
例えば、経口投与のための固体の薬学的組成物は、上記の担体及び賦形剤のいずれか、並びに10重量%〜95重量%、好ましくは25重量%〜75重量%の少なくとも1つの「神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質」を含んでよい。エアゾール(吸入)投与のための薬学的組成物は、0.01重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%の、上記の通りのリポソーム及び噴射剤の中にカプセル化した少なくとも1つの「神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質」を含んでよい。また、例えば、鼻腔内送達のためのレシチン等の担体を所望により含んでよい。
本発明は、上記説明の如く、検体を提供する哺乳動物における神経病変の有無を評価するための指標を提供する試薬としての、前記のマイクロRNA群(即ち、miR-384-5p、miR-9-3p)から選ばれる1以上のマイクロRNAの使用を含み、またさらに、哺乳動物が提供する検体について、本発明方法により検出された当該哺乳動物が有する神経病変の有無に係るデータ情報を入力・蓄積・管理する手段(以下、手段aと記すこともある。)、前記データ情報を所望の結果を得るための条件に基づき照会・検索する手段(以下、手段bと記すこともある。)、及び、照会・検索された結果を表示・出力する手段(以下、手段cと記すこともある。)を具備することを特徴とするシステムをも含むものである。
まず、手段aについて説明する。手段aは、前記のとおり、本発明方法により検出された当該哺乳動物が有する神経病変の有無に係るデータ情報を入力した後、入力された当該情報を蓄積・管理する手段である。かかる情報は、入力手段1により入力され、通常記憶手段2に記憶される。入力手段としては、例えばキーボード、マウス等の当該情報の入力可能なものが挙げられる。当該情報の入力及び蓄積・管理が完了すれば、次の手段bに進む。尚、当該情報の蓄積・管理には、コンピュータ等のハードウェアとOS及びデータベース管理等のソフトウエアとを用いて、データ構造を有する情報を入力し、適当な記憶装置、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読取可能な記録媒体に蓄積することにより、大量のデータを効率良く蓄積し管理すればよい。
手段bについて説明する。手段bは、前記のとおり、手段aにより蓄積・管理された前記データ情報を所望の結果を得るための条件に基づき照会・検索する手段である。かかる情報は、入力手段1により照会・検索のための条件が入力され、通常記憶手段2に記憶された上記情報の中で当該条件に合致したものを選択すれば、次の手段cに進む。選択された結果は、通常、記憶手段2に記憶され、さらに表示・出力手段3により表示可能となっている。
手段cについて説明する。手段cは、前記のとおり、照会・検索された結果を表示・出力する手段である。表示・出力手段3としては、例えばディスプレイ、プリンタ等が挙げられ、当該結果をコンピュータのディスプレイ装置に表示するか、印刷等により紙上に出力するか等すればよい。
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 (塩化トリメチルスズ(TMT)誘発神経病変を有するラットの血液を検体とする神経病変の検定方法)(その1)
(1)血液の採取
7週齢のCrl:CD(SD)ラットに塩化トリメチルスズ(純度98.0%以上)を9 mg/kgおよび12 mg/kgの用量で強制経口投与した。7日後に前記化合物が投与されたCrl:CD(SD)ラットおよび前記化合物が投与されず投与媒体であるコーンオイルのみを投与したCrl:CD(SD)ラットとの両者から血液を採血した。採取された血液から通常の方法により、血清を調製した。
(2)全RNAの採取
上記(1)で得られた各血清にショウジョウバエ由来miR-3と同じ配列を有する人工マイクロRNAを0.2fmolの濃度で混ぜ込んだ後、PARIS(登録商標)キット(ライフテクノロジーズ)を用いて全RNAを抽出した。
(3)マイクロRNA定量的RT−PCRによる解析
(2)で抽出した全RNAからTaqMan(登録商標) MicroRNA Assays(ライフテクノロジーズ)等の市販キットを用い、標準プロトコールに従い、目的のマイクロRNAと混ぜ込んだ人工マイクロRNAのCt値を求め、得られたCt値を元に測定値を算出した。
(4)神経病変の有無の評価
図1に示す通り、正常な神経組織を有するCrl:CD(SD)ラットと比較して、神経病変(大脳、小脳における神経細胞の変性・壊死)を有する Crl:CD(SD)ラットにおいては、投与後7日の検体中でのmiR-384-5pの含有量が12 mg/kg群で増加傾向を示した。また、投与後7日の検体中でのmiR-9*の含有量が9 mg/kg群で増加傾向を示し、12 mg/kg群で有意に増加した。よって、当該含有量の差異に基づいて前記検体における神経病変の有無が評価可能であることが判明した。
実施例2 (塩化トリメチルスズ(TMT)誘発神経病変を有するラットの血液を検体とする神経病変の検定方法)(その2)
(1)血液の採取
7週齢のCrl:CD(SD)ラットに塩化トリメチルスズ(純度98.0%以上)を6 mg/kg、 9 mg/kgおよび12 mg/kgの用量で強制経口投与した。投与後1日目、4日目および7日目にこの化合物が投与されたCrl:CD(SD)ラットおよびこの化合物が投与されず投与媒体であるコーンオイルのみを投与したCrl:CD(SD)ラットとの両者から血液を採血した。採取された血液から通常の方法により、血清を調製した。
(2)全RNAの採取
(1)で得られた各血清にショウジョウバエ由来miR-3と同じ配列を有する人工マイクロRNAを0.2fmolの濃度で混ぜ込んだ後、PARIS(登録商標)キット(ライフテクノロジーズ)を用いて全RNAを抽出した。
(3)マイクロRNA定量的RT−PCRによる解析
(2)で抽出した全RNAからTaqMan(登録商標) MicroRNA Assays(ライフテクノロジーズ)等の市販キットを用い、標準プロトコールに従い、目的のマイクロRNAと混ぜ込んだ人工マイクロRNAのCt値を求め、得られたCt値を元に測定値を算出した。
(4)神経病変の有無の評価
図2に示す通り、正常な神経組織を有するCrl:CD(SD)ラットと比較して、神経病変(大脳、小脳における神経細胞の変性・壊死)を有する Crl:CD(SD)ラットにおいては、検体中でのmiR-384-5pの含有量が、投与後4日目の9 mg/kg群および12 mg/kg群で有意な増加または増加傾向を示し、投与後7日目の12 mg/kg群において有意に増加した。また、検体中でのmiR-9*の含有量が、投与後4日目の12 mg/kg群および投与後7日目の6 mg/kg群、9 mg/kg群および12 mg/kg群において有意に増加した。よって、当該含有量の差異に基づいて前記検体における神経病変の有無が評価可能であることが判明した。
本発明によって、検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロRNA等が提供可能となる。本発明は、化学物質の神経毒性をできるだけ正確かつ簡便に評価するための神経毒性検定方法となりうる。また、神経病変の素因について哺乳動物個体をスクリーニングする方法や、またさらに、神経疾患の治療方法にも応用可能である。

Claims (11)

  1. 検体を提供する哺乳動物における神経病変の存在を検出するために有効なマイクロRNAであり、以下のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNA。
    <マイクロRNA群>
    (a)miR-384-5p、(b)miR-9-3p又はmiR-9*
  2. 哺乳動物における神経病変の検定方法であって、
    (1)哺乳動物が提供する検体に含まれる、以下のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAの含有量を測定する第一工程、及び
    (2)第一工程で得られた前記検体に含まれるマイクロRNAの含有量の測定値を当該マイクロRNAの含有量の対照値と比較し、その差異に基づいて前記検体を提供する哺乳動物における神経病変の有無を評価する第二工程
    を有することを特徴とする方法。
    <マイクロRNA群>
    (a)miR-384-5p、(b)miR-9-3p又はmiR-9*
  3. 検体が、血液若しくはその内容物が含まれる生体試料であることを特徴とする請求項2記載の方法。
  4. マイクロRNAの含有量の対照値が、当該マイクロRNAの正常生体由来の検体に含まれる含有量の値であることを特徴とする請求項2又は3記載の方法。
  5. 第二工程において、マイクロRNAの含有量の測定値が対照値の2倍以上、又は、対照値と比較し統計学的に有意な高値であることを指標とし、当該指標に基づいて前記検体における神経病変の有無を評価する工程であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載される方法。
  6. 物質の神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性の検定方法であって、
    (1)哺乳動物と被験物質とを接触させる第一工程、
    (2)第一工程で前記被験物質と接触させた哺乳動物が提供する検体に含まれる、以下のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAの含有量を測定する第二工程、及び
    (3)第二工程で得られたマイクロRNAの含有量の測定値を当該マイクロRNAの含有量の対照値と比較し、その差異に基づいて前記被験物質の神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を評価する第三工程
    を有することを特徴とする方法。
    <マイクロRNA群>
    (a)miR-384-5p、(b)miR-9-3p又はmiR-9*
  7. マイクロRNAの含有量の対照値が、当該マイクロRNAの正常生体由来の検体に含まれる含有量の値であることを特徴とする請求項6記載の方法;
  8. 第三工程において、マイクロRNA群の含有量の測定値が対照値の2倍以上若しくは2分の1以下、又は、対照値と比較し統計学的に有意な高値若しくは低値であることを指標とし、前記被験物質の神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を評価することを特徴とする請求項6又は7記載の方法。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載される方法により評価された神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性に基づき神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質を選抜する工程を有することを特徴とする神経毒性に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質の探索方法。
  10. 哺乳動物が提供する検体における神経病変の有無を評価するための指標を提供する試薬としての、以下のマイクロRNA群から選ばれる1以上のマイクロRNAの使用。
    <マイクロRNA群>
    (a)miR-384-5p、(b)miR-9-3p又はmiR-9*
  11. 哺乳動物が提供する検体について、請求項2〜5のいずれかに記載される方法により検出された当該哺乳動物が有する神経病変の有無に係るデータ情報を入力・蓄積・管理する手段、前記データ情報を所望の結果を得るための条件に基づき照会・検索する手段、及び、照会・検索された結果を表示・出力する手段を具備することを特徴とするシステム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019050772A (ja) * 2017-09-15 2019-04-04 国立大学法人 熊本大学 ワクチン接種後副反応を予測する検査方法

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