JP7120663B2 - 糖尿病性腎臓病の診断することを補助する方法、糖尿病性腎臓病の検査用キット、動物治療方法、及び糖尿病性腎臓病用医薬 - Google Patents
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Description
糖尿病性腎症では、自覚症状が殆どないため、病状が進行して末期腎不全に至り、透析導入となることが多い。透析導入は、糖尿病患者のQOLを著しく低下させ、更に、重篤な場合には生命に関わってくる。
このように、糖尿病性腎症を早期に正確に診断できる診断方法は存在しなかった。
このような従来の経過をとらない糖尿病性腎症を含めて、国際的に、病名として糖尿病性腎臓病(Diabetic kidney disease、DKD)と呼ばれるようになってきている。
特許文献1を参照すると、慢性的な糖尿病の状態を示す指標、特に糖尿病性網膜症のバイオマーカーとして、miR-1、miR-144、miR-146a、miR-200b、miR-320、miR-450が記載されている。
本発明の糖尿病性腎臓病の診断することを補助する方法は、前記miRNA-125b-5pの血清中での発現が上昇している場合及び/又は前記miRNA-181b-5pの発現が低下している場合、糖尿病性腎臓病と診断することを補助することを特徴とする。
本発明の糖尿病性腎臓病の診断することを補助する方法は、診断は、糖尿病性腎臓病(DKD)と、糖尿病を合併しているその他の腎障害との判別を含むことを特徴とする。
本発明の糖尿病性腎臓病の検査用キットは、miRNA-125b-5p及び/又はmiRNA-181b-5pを測定する試薬を含むことを特徴とする。
本発明の動物治療方法は、ヒト以外の動物の治療方法であって、miRNA-181b-5pミミックを含む組成物を投与し、糖尿病性腎臓病の腎臓を治療することを特徴とする。
本発明の糖尿病性腎臓病用医薬は、miRNA-181b-5pミミックを含む組成物であることを特徴とする。
本発明の糖尿病性腎臓病用医薬は、前記組成物は、II型糖尿病による糖尿病性腎臓病用の医薬であることを特徴とする。
従来、糖尿病性腎臓病の確定診断は腎生検が行われている。また、アルブミン尿、腎機能などで病状評価されているが、両者とも糖尿病性腎臓病に特異的ではなくほとんどの腎疾患で共通したマーカーにすぎなかった。
このため、本発明者らは、多様な病態に関与していることが知られてきたmiRNAに着目した。miRNAは人を含む哺乳類で2000種類程度あることがわかっており、その塩基配列は、公共のデータベース(miRBase等)に登録されている。
しかしながら、糖尿病性腎臓病のバイオマーカーとして有用なmiRNAは確立されていなかった。
具体的には、後述の実施例1で詳細を説明するように、本発明者らは、糖尿病性腎臓病モデルマウスの腎臓と血液で変化しているmiRNAをマイクロアレイ法、及びリアルタイムPCRの一種であるqRT-PCR法で網羅的に解析、同定した。さらに、同定したmiRNA発現変化をヒトの血清サンプルについて、qRT-PCRで、健常人、腎障害のない糖尿病患者、腎生検で組織学的に診断された糖尿病性腎臓病患者、糖尿病性腎臓病以外の腎疾患患者で比較検討し、糖尿病性腎臓病患者の血清で特異的に変化するmiRNAを同定し、本発明を完成させるに至った。
より詳細に説明すると、本発明の実施の形態に係る糖尿病性腎臓病特異的バイオマーカーは、患者のmiRNAであることを特徴とする。
miRNAは、タンパク質へ翻訳されないRNAであり、機能性のノンコーディングRNAの一種である。miRNAは、真核生物のゲノム上にコードされ、多段階的な生成過程を経て、最終的に20~25塩基程度の一本鎖RNAとなり、遺伝子の転写後発現調節に関与する。miRNAは、転写後発現調節により、発生、増殖、分化、アポトーシス、代謝といった広範な生物学的プロセスに重要な働きをする。
このうち、マウスの成熟型miRNA-125b-5p(miRbase No:MIMAT0000136)の配列を以下に示す:
5’-ucccugagacccuaacuuguga-3’ (配列番号1)
5’-ucccugagacccuaacuuguga-3’ (配列番号2)
5’-aacauucauugcugucgguggguu-3’(配列番号3)
5’-aacauucauugcugucggugggu-3’ (配列番号4)
さらに、本実施形態の各miRNAは、miRNA、pri-miRNA、pre-miRNA等をコードするRNA、DNA等の核酸分子であってもよい。また、この核酸分子は、人工核酸分子、例えば、ペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid、PNA)、ロックド核酸(Locked Nucleic Acid、LNA)等も含む。
本発明の実施の形態に係る糖尿病性腎臓病の診断方法は、上述の糖尿病性腎臓病特異的バイオマーカーを用いることを特徴とする。
本発明の実施の形態に係る糖尿病性腎臓病の診断方法では、主に、患者の血清中又は血漿(以下、単に「血液」という。)に存在するmiRNAレベルを検出することで、糖尿病性腎臓病であることを診断する。すなわち、本実施形態の糖尿病性腎臓病の診断方法は、糖尿病性腎臓病の検査方法としても用いることが可能である。
さらに、miRNA-181b-5p及びmiRNA-125b-5pは、いずれも、糖尿病性腎臓病と、糖尿病を合併しているその他の腎障害と判別することが可能である。
さらに、miRNA-181b-5pの発現が血清及び/又は腎臓中で低下している場合、糖尿病性腎臓病と診断することが可能である。
これら、miRNA-125b-5pの血清での発現の上昇若しくは腎臓中での発現低下、miRNA-181b-5pの血清並びに/若しくは腎臓中での発現の低下については、組み合わせて判断しても、いずれかの発現のみで判断してもよい。
miRNA-181b-5pの発現が低下と、miRNA-125b-5pの発現の上昇とを組み合わせて判断すると、より確実に糖尿病性腎臓病と診断することが可能となる。後述の実施例2では、この組み合わせの効果について、実際の実験結果を示している。
検定の結果、統計的に有意であれば、当該患者は、糖尿病性腎臓病であると診断され得る。逆に、統計的に有意でなければ、当該患者は、糖尿病性腎臓病ではないと診断され得る。この場合、他の指標等から、糖尿病性腎臓病ではない、別の腎症の患者であると診断することも可能である。
このような診断方法により、発症初期の段階でも、高い信頼性をもって糖尿病性腎臓病であることを判定することができる。これにより、治療方針の決定に対して重要な情報を提供することができる。
本実施形態の診断方法は、糖尿病性腎臓病の疑いのある患者から血液及び/又は腎臓組織を採取する工程、採取した血液及び/又は腎臓組織についてmiRNA-181b-5p及び/又はmiRNA-125b-5pの発現量を測定する工程、測定されたmiRNA-181b-5p及び/又はmiRNA-125b-5pの発現量と健常者のmiRNA-181b-5p及び/又はmiRNA-125b-5pの発現量(標準量)とを比較する工程、miRNA-181b-5pの発現量がmiRNA-181b-5pの標準量よりも低いこと検出する及び/又はmiRNA-125b-5pの発現量がmiRNA-125b-5pの標準量よりも高いこと検出する工程、及び検出された患者は糖尿病性腎臓病であるリスクが高いと決定する工程、を含む糖尿病性腎臓病の診断方法であることを特徴とする。
本発明の実施の形態に係る糖尿病性腎臓病の検査用キットは、上述の糖尿病性腎臓病特異的バイオマーカーとなるmiRNAを測定する試薬を含むことを特徴とする。
このようなmiRNA測定用の試薬としては、例えば、ノーザンブロット、マイクロアレイ、QCMセンサ測定法、リアルタイムPCR法等の検出用の方式に対応したものを含む。すなわち、本実施形態の各miRNA検出用のプローブやプライマー等、各種酵素類、緩衝液、洗浄液、溶解液等も含まれる。これに加えて、上述の方式によりmiRNAを検出するための資材、器材等を含んでもよい。
本実施形態の糖尿病性腎臓病用医薬(医療用組成物)は、miRNAの発現量の増加又は低下させる組成物を含むことを特徴とする。
具体的には、本実施形態の医療用組成物は、miRNA-125b-5p、及び/又はmiRNA-181b-5pの機能活性調整剤を含むことを特徴とする。この機能活性調整剤は、miRNAの発現を調節する作用を有する組成物である。
一方、miRNA-181b-5pに対する機能活性調整剤は、機能活性亢進剤を用いる。この機能活性亢進剤は、miRNA-181b-5pに対応したmiRNAミミックを含む。このmiRNAミミックは、合成されたmiRNAを含む組成物であってもよい。
この媒体としては、例えば、プラスミドやウイルスベクターを用いてもよい。このウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス等の当業者に一般的なウイルスを用いて構成されてもよい。
本発明の実施の形態に係る糖尿病性腎臓病用医薬は、非経口的又は経口的の投与に適した投与形態において、当該分野で周知の製剤上許容しうる担体を用いて処方され得る。
本発明の実施の形態に係る糖尿病性腎臓病用医薬の1回の投与量および投与回数は、投与の目的により、更に、患者の年齢および体重、症状および疾患の重篤度などの種々の条件に応じて適宜選択および変更することが可能である。
投与回数及び期間は、1回のみでもよいし、1日1回~数回、数週間程度投与し、疾患の状態をモニターし、その状態により再度又は繰り返し投与を行ってもよい。
また、本発明の実施の形態において、疾患が改善又は軽減される期間は特に限定されないが、一時的な改善又は軽減であってもよいし、一定期間の改善又は軽減であってもよい。
さらに、本実施形態の糖尿病性腎臓病用医薬を予防用に用いることで、糖尿病性腎臓病の病態の進行を抑え、糖尿病や高血圧の治療と合わせて腎臓の機能を温存することが可能となる。
本発明の実施の形態に係る動物治療方法は、動物の治療方法であって、miRNA-125b-5p、及び/又はmiRNA-181b-5pの機能活性を調整することを特徴とする。
具体的には、本発明の実施の形態に係る糖尿病性腎臓病用医薬は、動物の治療を行う動物治療にも用いることが可能である。この動物は、特に限定されるものではなく、脊椎動物及び無脊椎動物を広く含む。脊椎動物としては、魚類、両生類、は虫類、鳥類、及び哺乳類を含む。具体的には、例えば、哺乳類は、例えば、マウス、ラット、フェレット、ハムスター、モルモット、又はウサギ等のげっ歯類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、又は非ヒューマンのトランスジェニック霊長類等、及びヒトを含んでいてもよい。また、野生動物としては、哺乳類の他にも、魚類、家禽を含む鳥類、爬虫類等を含む。また、エビや昆虫等を含む甲殻類、その他のイカ等の無脊椎動物等も広く含む。
すなわち、本発明の実施の形態に係る糖尿病性腎臓病用医薬は、ヒトの治療の他に、各種動物の治療、家畜の発育増進等の方法にも用いることができる。このため、本実施形態の患者は、ヒト、及び、上述のヒト以外の動物も含む。
そして、この糖尿病性腎臓病の治療は、miRNA-181b-5p及び/又はmiRNA-125b-5pの機能活性を調整する治療を含むことを特徴とする。このmiRNA-181b-5p及び/又はmiRNA-125b-5pの機能活性を調整する治療は、上述の糖尿病性腎臓病用医薬を投与すること含むことを特徴とする。
さらに、下記に示すような、当業者により実行される典型的な治療法を組み合わせることで、より効果的に糖尿病性腎臓病を治療することが可能となる。
これらの進行に応じた治療では、早期に診断をして、インスリン治療を含めた血糖管理をする。この際、糖尿病性腎症では、糖尿病の食事療法に加え、慢性腎不全の食事療法を併用する必要がある。薬物療法としては、高血圧の治療を行うため、一般にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシン受容体拮抗薬、カルシウム拮抗薬等を用いる。そして、降圧薬として利尿剤を投与し、浮腫の管理を行う。
従来から、透析導入となる腎疾患でもっとも多いのが糖尿病性腎臓病である。糖尿病性腎臓病は糖尿病に合併しておこる腎障害で全透析患者、新規導入透析患者のともに約4割を占めている。糖尿病性腎臓病は高齢者に多いため、今後の高齢化社会でさらに患者数が増加すると考えられている。このように糖尿病性腎臓病の予後が極めて悪く、大きな問題である原因は、糖尿病患者数が極めて多いこと、そのうち約半数が糖尿病性腎臓病に罹患していると考えられているにも関わらず、糖尿病性腎臓病の正確な診断法、特異的な治療法がないことである。糖尿病性腎臓病に特異的で有効な治療法が開発されない理由は、糖尿病性腎臓病を特異的に診断できる検査法がないため、正確な早期診断ができないこと、治療法の効果、病状の進行を正確に判断することができないことがある。
また、特許文献1に記載されたような、従来の糖尿病についてのmiRNAについては、少数の患者研究、コントロールが健常人のみの研究、特定miRNAのみの研究等、糖尿病性腎臓病特異的なmiRNAの解析ではなかった。すなわち、最大の問題は、報告されたmiRNAが糖尿病性腎臓病のみで特異的に変化するのかどうかという特異性の検討がなされていなかった。さらに、腎生検組織との相関が解明されておらず、精度が不明であった。すなわち、従来、糖尿病性腎症のバイオマーカー及び治療ターゲットとして有用なmiRNAは同定されていなかった。
すなわち、本実施形態のバイオマーカーにより、予後の悪い腎疾患である糖尿病性腎臓病を、早期のうちに正確に診断できる。これにより、治療効果が期待できる。
加えて、本実施形態のバイオマーカーは、実際の腎生検組織との相関があったため、糖尿病性腎臓病の実際の病理的な症状との関連性が高く、診断用として有用である。
また、本発明の実施の形態に係る糖尿病性腎臓病の診断方法では、判別の難しい糖尿病性腎臓病と、糖尿病を合併しているその他の腎障害とを、臨床上の診断にて判別可能となり、治療上の有益な指標を提供することができる。
これに対して、miRNA-125b-5p及び/又はmiRNA-181b-5pの機能活性調整剤を用いることで、新規の糖尿病性腎臓病用医薬を提供でき、上述の診断と合わせて早期治療が可能となる。
このように、本実施形態のmiRNAは、糖尿病性腎臓病の診断から治療まで一括して使用でき、診断及び治療による糖尿病性腎臓病の予後改善が可能となる。
しかしながら、miRNAは血液以外、例えば、尿中にも安定して存在している。このため、血液以外の組織、体液、尿等から取得されたmiRNAの量により、糖尿病性腎臓病であると検出するように構成することも可能である。
さらに、後述する実施例1に記載したような、miRNA-125b-5p及びmiRNA-181b-5pの発現調整の対象となる遺伝子、遺伝子産物、アゴニスト/アンタゴニスト、その他のパスウェイに対する作用を介した組成物を、機能活性調整剤として用いることも可能である。
加えて、後述する実施例1に記載した対象とする遺伝子やパスウェイに対する作用を介した遺伝子治療を行うことも可能である。
(マイクロアレイ分析)
miRNA発現の分析は、microRNA Complete Labeling Reagent及びHybキット(Agilent Technologies、CA、USA社製)を用いて、北海道システムサイエンス社(北海道、日本)に外注して実行した。100ngのトータルRNAを、仔ウシ腸ホスファターゼを用いて37℃で30分間脱リン酸化し、100℃で7分間、100%ジメチルスルホキシドを用いて変性させた。次いで、このサンプルを氷上で2分間冷却した。次いで、サンプルにT4リガーゼを用いて16℃で、2時間インキュベーションさせpCp-Cy3で標識した。その後pCp-Cy標識サンプルを8×15KフォーマットAgilentマウスmicroRNAアレイ上でハイブリダイズさせた。その後プレートを洗浄し、Agilent Technologies Microarrayスキャナーを用いて3μmの分解能でスキャンした。データは、Agilent Feature Extractionソフトウェアバージョン10.7.3.1を使用して解析した。
AgilentデータをGeneSpring GX(Agilent Technologies社製)にインポートし、チップあたり90パーセンタイルに正規化した。 一元配置分散分析(ANOVA)を用いて異なる群間の差異を解析した。ANOVAによって統計的有意性が検出された場合、2つの異なる群の平均を比較するためにポストホック検定としてTukey検定を行った。P<0.05を有意差ありと判定した。
(マウス腎臓)
ガラスホモジナイザー及びフィルターカラムシュレッダー(QIAシュレッダー、Qiagen、Valencia、CA、USA製)を用いて、マウス腎臓をホモジナイズした。その後、miRNeasy mini kit(Qiagen)を使用して、均質化した腎臓サンプルからmiRNAを含むトータルRNAを単離した。次に、miScript II RTキット(Qiagen)を用いて、単離された1μgのtotal RNAを逆転写した。次に、miScript SYBR green PCRキット(Qiagen)を用いてリアルタイムRT-PCR(qRT-PCR)を行った。qRT-PCRの条件はQuantStudio 12K Flex Flex Real-Time PCR systemを用いて、95℃で15分間のプレインキュベーション、次いで、(1)94℃で15秒間の変性、(2)55℃で30秒間のアニーリング、(3)70℃で30秒間の伸長のサイクルを40サイクル行い、結果は、RNU6-2(QUIAGEN社製)をendogenous controlとして用いて、2-ΔΔCT methodで解析した。
ヒト血清のmiRNAレベル解析は、NucleoSpin miRNA Plasmaカラム(Macherey-Nagel、PA、USA製)を用いて400μlの血清からトータルRNAを単離した。次に、単離したトータルRNAをmiScript II RTキット(Qiagen)を用いて逆転写した。次に、miScript SYBR green PCRキット(Qiagen)を用いてリアルタイムRT-PCRを行った。qRT-PCRの条件はQuantStudio-12K Flex Flex Real-Time PCR systemを用いて、95℃で15分間のプレインキュベーション、次いで(1)94℃で15秒間の変性、(2)55℃で30秒間のアニーリング、(3)及び70℃で30秒間の伸長のサイクルを40サイクル行い、結果は、miRNA-16-5p(QUIAGEN社製)をendogenous controlとして用いて、2-ΔΔCT methodで解析した。
マウスmiRNA-125b-5p:
5’-UCCCUGAGACCCUAACUUGUGA-3’ (配列番号5)
マウスmiRNA-181b-5p:
5’-AACAUUCAUUGCUGUCGGUGGGU-3’(配列番号6)
ヒトmiRNA-125b-5p:
5’-UCCCUGAGACCCUAACUUGUGA-3’ (配列番号7)
ヒトmiRNA-181b-5p:
5’-AACAUUCAUUGCUGUCGGUGGGU-3’(配列番号8)
糖尿病性腎臓病マウス(I型糖尿病モデルマウス):AKITA/SLcマウス(日本エスエルシー株式会社より購入)。
糖尿病性腎臓病マウス(II型糖尿病モデルマウス):db/dbマウス(C57BLKS/J Iar-+Leprdb/+Leprdb マウス。動物繁殖研究所より購入)。
コントロールマウス:正常マウス(C57/B6系統)、動物繁殖研究所より購入。
(糖尿病性腎臓病マウスの腎臓の変化)
図1に、糖尿病性腎臓病モデルマウスであるAKITA/SLcマウスの腎臓の変化を示す。図1(a)がコントロールマウス(正常マウス)、図1(b)が糖尿病性腎臓病モデルマウス(AKTAマウス)の腎臓を示す。糖尿病性腎臓病マウスでは、糸球体腫大とメサンギウム基質の増大が認められた。
図2に、マイクロアレイ解析の結果を示す。本実施例1では、糖尿病性腎臓病マウス(4匹)と正常マウス(コントロールマウス)(4匹)の腎臓で、1,880種類のmiRNAのマイクロアレイ解析を行った。
結果として、糖尿病性腎臓病マウス(AKITA/SLc)の腎臓で1.2倍以上上昇しているmiRNAを13種類、1.2倍以上低下しているmiRNAを28種類、合計41種類を選出し、更に、qRT-PCRで確認した。
なお、糖尿病性腎症マウス(AKITA/SLcマウス)はI型糖尿病モデルマウスでもあるため、II型糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)での変化も、qRT-PCRで確認した。糖尿病性腎症マウス及びdb/dbマウスの血清でも、コントロールマウスに比べて変化していることを確認した。
マウスの血清で特異的に変化するmiRNAについて、ヒトにおいて、健常人、腎障害のない糖尿病患者、他の腎疾患患者と比較し、糖尿病性腎臓病のバイオマーカーとなるmiRNAを同定した。
具体的には、上述の41種類のmiRNAの血清での発現変化をqRT-PCR法を用いて、健常人(17例)、腎障害のない糖尿病患者(miRNA-125b-5pは22例、miRNA181b-5pは10例)、腎生検で診断された糖尿病性腎臓病患者(10例)、腎生検で診断された糖尿病性腎臓病以外の腎疾患患者(miRNA-125b-5pは18例、miRNA181b-5pは17例。このうち、IgA腎症5例、膜性腎症4例、腎硬化症3例、間質性腎炎3例、微小変化ネフローゼ3例)で比較検討し、糖尿病性腎臓病患者の血清でのみ特異的に発現変化する2種類のmiRNAとして、miRNA-125b-5pと、miRNA-181b-5pとを同定した。なお、腎疾診断は全て腎生検で、組織学的診断した。
ここで、図3により、miRNA-125b-5pの発現量の変化について説明する。
図3(a)は、リアルタイムPCRによる血清中のmiRNA-125b-5pの測定について、健常人(15例)、糖尿病患者(22例)、糖尿病性腎臓病患者(10例)、及び糖尿病性腎臓病以外の腎疾患患者(15例)について、健常人を1として正規化し、qRT-PCRによる発現量の差をみたグラフである。miRNA-125b-5pは、同様の対照患者に比べて、P<0.05で有意に発現量が増加した。
この解析結果について、下記の表1に平均及び標準偏差を示す。
この曲線の下の領域積についての検定結果を、下記の表2に示す。
次に、図4により、miRNA-181b-5pの発現量の変化について説明する。
図4(a)は、健常人、糖尿病患者、糖尿病性腎臓病患者、糖尿病性腎臓病以外の腎疾患患者について、健常人を1として正規化し、qRT-PCRによる発現量の差をみたグラフである。miRNA-181b-5pの発現量は、P<0.05で有意に低下していた。
この解析結果について、下記の表3に平均及び標準偏差を示す。
この曲線の下の領域積についての検定結果を、下記の表4に示す。
図5により、miRNA-125b-5p及びmiRNA-181b-5pの発現の変化による糖尿病性腎臓病の作用機序についての考察について説明する。
miRNA-125b-5pは、従来から、血管平滑筋細胞で、ヘテロクロマチンの形成や機能の維持に中心的な役割を果たすヒストンメチル化酵素であるSuv39h1を標的mRNAとして抑制し、その結果MCP-1、IL-6を上昇させることが知られている。さらに、miRNA-125b-5pは、滑膜繊維芽細胞でIκB及びp65上昇を介して、TNF-α、IL-6、IL-1βを上昇させ、マクロファージを活性化させることが知られている。このため、miRNA-125b-5pの発現量が上昇することで、炎症関連の因子により、糖尿病性腎臓病の症状を生じさせると考えられる。
これらの作用機序のパスウェイに関する調整剤を用いることで、さらなる糖尿病性腎臓病の診断及び治療効果が期待できる。また、遺伝子治療にも用いることが可能である。
(糖尿病性腎臓病の作用機序)
図6に、他の予備実験を含めて推定された、miRNA-125b-5p及びmiRNA-181b-5pによる糖尿病性腎臓病の発症、進展の推定機序について説明する。
miRNA-125b-5pは、Suv39h1の他にもIkB、STAT3、TNFAIP3、VEGF、TNF-α、IRF4等の発現を調整し、これを介して、少なくとも一部は、P53、MCP-1、IL-6、IL-1βの発現を調整することで、糖尿病性腎臓病の発症、進展に関わると考えられる。
一方、miRNA-181b-5pは、TGFβR1、importin α3、PHLPP2、CYLD、TIMP3等の発現を調整し、これを介して、少なくとも一部は、TNF-α、NF-kBの発現を抑制することで、糖尿病性腎臓病の発症、進展に関わると考えられる。
次に、図7A及び図7Bにより、上述の実施例1における実験と同様の手法により、患者数を増加させて、miRNA-125b-5pの発現量の変化を調べた結果について説明する。
図7Aは、リアルタイムPCRによる血清中のmiRNA-125b-5pの測定について、健常人(20例)、糖尿病患者(10例)、糖尿病性腎臓病患者(15例)、及び糖尿病性腎臓病以外の腎疾患患者(50例)について、健常人を1として正規化し、qRT-PCRによる発現量の差をみたグラフである。グラフは、グラフ中の「*」は、P<0.05であることを示す。miRNA-125b-5pは、同様の対照患者に比べて、P<0.05で有意に発現量が増加した。
この解析結果について、下記の表5に、平均、標準偏差、2±SE(標準誤差)の解析結果を示す。
この曲線の下の領域積についての検定結果を、下記の表8に示す。
次に、図8A、図8Bにより、上述の実施例1における実験と同様の手法により、患者数を増加させて、miRNA-181b-5pの発現量の変化を調べた結果について説明する。
図8Aは、健常人(20例)、糖尿病患者(10例)、糖尿病性腎臓病患者(20例)、及び糖尿病性腎臓病以外の腎疾患患者(50例)について、健常人を1として正規化し、qRT-PCRによる発現量の差をみたものである。miRNA-181b-5pの発現量は、P<0.05で有意に低下していた。
この解析結果について、下記の表9に、平均、標準偏差、2±SE(標準誤差)の解析結果を示す。
この曲線の下の領域積についての検定結果を、下記の表12に示す。
次に、図9により、miRNA-181b-5p及びmiRNA-181b-5pを組み合わせて診断した結果について説明する。
図9(a)は、各個人でmiRNA-125b-5p及びmiRNA-181b-5pの2つのマイクロRNAの比を算出し、診断能力について解析した結果を示すグラフである。
具体的には、健常人(20例)、糖尿病患者(10例)、糖尿病性腎臓病患者(15例)、及び糖尿病性腎臓病以外の腎疾患患者(50例)について、
発現量の比 = miRNA-125b-5pの発現量/miRNA-181b-5pの発現量
を算出し、健常人を1として正規化することで、相対的な変化量を算出した。結果として、この相対的な変化量は、糖尿病性腎臓病患者で、P<0.01で統計的に有意に上昇した。
このように、miRNA-125b-5pとmiRNA-181b-5pとの組み合わせ(miRNA-125b-5p/miRNA-181b-5p)により、更に糖尿病性腎臓病の診断能の感度と特異度を上昇させることができた。
次に、糖尿病合併CKDのうち、糖尿病性腎臓病(DKD)(13例)と、糖尿病を合併しているその他の腎障害(10例)とについて、miRNA-125b-5p及びmiRNA-181b-5pで鑑別可能であるかを調べた。いずれも腎生検で確定診断している症例について調べた。
図10に、この解析結果を示す。図10(a)はmiRNA-181b-5pの結果、図10(b)はmiRNA-125b-5pの結果を示す。
結果として、miRNA-181b-5pの発現量は、P<0.01で有意に低下していた。一方、miRNA-125b-5pの発現量については、5%有意にはならなかったものの、明らかに増加していた。
なお、更に、miRNA-125b-5pとmiRNA-181b-5pの組み合わせ(miRNA-125b-5p/miRNA-181b-5p)の比(相対的な変化量)を求めることで、糖尿病性腎臓病(DKD)と、糖尿病を合併しているその他の腎障害とを、より顕著に鑑別(判別)可能であった。すなわち、さらに糖尿病性腎臓病の診断能の感度と特異度とが上昇した。
miRNA-125b-5p及びmiRNA-181b-5pと相同性のあるファミリーRNAについて、上述の実施例1と同様にqRT-PCRで発現量が変化するか評価した。このうち、miRNA-125b-5pのファミリーRNAとして、miRNA-125a-3p、miRNA-125a-5p、及びmiRNA-125b-3pを用いた。
ヒトmiRNA-125a-3p:
5’-ACAGGUGAGGUUCUUGGGAGCC-3’ (配列番号9)
ヒトmiRNA-125a-5p:
5’-UCCCUGAGACCCUUUAACCUGUGA-3’(配列番号10)
ヒトmiRNA-125b-1-3p:
5’-ACGGGUUAGGCUCUUGGGAGCU-3’ (配列番号11)
ヒトmiRNA-181a-3p:
5’-ACCAUCGACCGUUGAUUGUACC-3’ (配列番号12)
ヒトmiRNA-181a-5p:
5’-AACAUUCAACGCUGUCGGUGAGU-3’ (配列番号13)
ヒトmiRNA-181b-3p:
5’-CUCACUGAACAAUGAAUGCAA-3’ (配列番号14)
ヒトmiRNA-181c-3p:
5’-AACCAUCGACCGUUGAGUGGAC-3’ (配列番号15)
ヒトmiRNA-181c-5p:
5’-AACAUUCAACCUGUCGGUGAGU-3’ (配列番号16)
ヒトmiRNA-181d-3p:
5’-CCACCGGGGGAUGAAUGUCAC-3’ (配列番号17)
ヒトmiRNA-181d-5p:
5’-AACAUUCAUUGUUGUCGGUGGGU-3’ (配列番号18)
図11A、図11B、図11Cに、これらのファミリーRNAの相対発現量の変化を示す。具体的には、図11AはmiRNA-125a-5p、図11BはmiRNA-181c-3p、図11CはmiRNA-181d-5pにおける健常人、糖尿病患者、糖尿病性腎臓病患者、他腎疾患患者についての発現量の差をそれぞれ調べた結果である。いずれも、灰色の点線は、健常人を1と正規化した際の、糖尿病性腎臓病の相対発現量(fold)を示す。
結果として、いずれも糖尿病性腎臓病で特異的に変化する傾向は、認められなかった。すなわち、上述のmiRNA-181b-5p及びmiRNA-125b-5pのみが特異的に糖尿病性腎臓病特異的バイオマーカーとして効果的に利用可能であることが分かった。
次に、DDS(ドラッグデリバリーシステム)として、Polyethylenimine nanoparticle(PEI-NPs)を用いて、miRNAミミックをマウス腎臓へのデリバリーし、実際の糖尿病性腎臓病への治療効果について調べた。
(マウス)
本実施例においては、上述の実施例1と同じII型糖尿病モデルマウスdb/db(C57BLKS/J Iar-+Leprdb/+Leprdb マウス(動物繁殖研究所より購入)を、糖尿病性腎臓病(DKD)のモデルマウスとして用いた。
DDSとして、Linear polyethylenimine-based nanoparticle(in vivo-jetPEI(TM)、以下「PEI-NP」という。)は、Polyplust transfection SA, Illkirch-Graffenstaden、France)から購入した。miRNA-181b-5pミミック(ジーンデザイン社製)を蒸留水に溶解し100μMとした。このmiRNAミミック及びPEI-NPを混合し、室温で15分間インキュベートし、miRNA-181b-5pミミック-PEI-NPとして調整した(以下、図面では「miRNA-181b-5p-mimic」と記載する。)。同じ方法を用いて、miRNA-125b-5pミミック-PEI-NP(以下、図面では「miRNA-125b-5p-mimic」と記載する。)、及びmiRNAコントロール-PEI-NP(以下、図面では「miRNA-control」と記載する。)を調製した。miRNA-125b-5pミミック、miRNAコントロールは、いずれもジーンデザイン社製である。
マウスmiRNA-181b-5pミミック:
5’-AACAUUCAUUGCUGUCGGUGGGUU-3’(配列番号19)
マウスmiRNA-125b-5pミミック:
5’-UCCCUGAGACCCUAACUUGUGA-3’ (配列番号20)
miRNAコントロール:
5’-GGUUCGUACGUACACUGUUCA-3’ (配列番号21)
図12によると、ミミックの添付プロトコルに従って、各db/dbマウスに、合計200μLのmiRNA-181b-5pミミック-PEI-NP(miRNA:50μg、N/P比=6)を尾静脈から静脈注射して投与した。コントロールとして、db/dbマウスに水(Mock)だけ投与(以下、図面では「db/db」と記載する。)、正常マウスにmiRNA-181b-5pミミック-PEI-NPを投与したもの(以下、図面では「m+/m+」と記載する。)も用意した。期間、回数としては、10週齢から週1回、合計10回投与し、20週齢で解剖して比較した。
24時間尿を蓄尿し尿中アルブミンを免疫比濁法で測定(μg/L)し、同時に尿中クレアチニンを酵素法で測定(mg/L)し、UACR(尿アルブミン/クレアチニン比)(μg/mg Cr)を算出して、蛋白尿の評価とした。
マウスの腎臓を4%パラホルムアルデヒドで固定し、その後パラフィンに包埋した。PAS染色を使用して、AMDCCプロトコルに従ってメサンギウムインデックス(PAS染色の面積/糸球体の総面積)を決定し、メサンギウム拡張を評価した。マウスから各々10個の糸球体をランダムに選出し、その平均を計算した。個体数は各群3匹(n=3)ずつで、糸球体の総計は30個である。
(ミミックの腎臓での発現量の確認)
図13により説明すると、まず、実施例1と同様のqRT-PCRで、Mock(水のみ投与)、miRNA-181b-5pミミックの投与、miRNAコントロール-PEI-NPの投与について発現量の変化を調べた。結果として、miRNA-181b-5pミミック-PEI-NPの投与により、miRNA-181b-5pの発現量増加(over expression)が1週間程度持続できることを確認した。
図14に、miRNA-181b-5pミミック-PEI-NPを投与したマウスの蛋白尿の状態を測定した結果を示す。このグラフの横軸は、投与週(Weeks after treatment)、縦軸はUACR(μg/mg Cr)の値を示す。
結果として、miRNA-181b-5pミミック-PEI-NPの投与により、db/dbマウスにおいて、蛋白尿の増加が抑制された。
図15に、各マウスにおいて、腎臓のメサンギウム細胞の機能障害を示すメサンギウム拡張の評価を行った結果を示す。このグラフは、10週(Week 10)、20週(Week 20)における、各マウスのメサンギウムインデックス(mesangial expression (% of area))を示す。
結果として、20週では、db/dbマウスにmiRNA-181b-5pミミック-PEI-NPを投与したものは、db/dbマウスにmiRNAコントロール-PEI-NPを投与したものに比べて、p<0.05でメサンギウムインデックスが減少した。すなわち、メサンギウム細胞の増加を抑制した。
図16に、この20週の状態で固定した腎臓の状態を示す。db/dbマウスと、db/dbマウスにmiRNAコントロール-PEI-NPを投与したものは、メサンギウム細胞の増加が確認できる。これに対して、db/dbマウスにmiRNA-181b-5pミミック-PEI-NPを投与したものは、正常マウスに比べて、あまりメサンギウム細胞が増加していなかった。
上述の各マウス(n=3)の血液について、AST、ALT、γ-GTP、LDHの生化学検査を行った。
この結果を、下記の表13に示す。
また、投与後の組織病理についても目視で確認した。結果として、肉眼的所見で肝、脾、肺、心には、異常は認められなかった。
結果として、miRNA-181b-5pの発現を増加させることで、糖尿病性腎臓病に特異的な治療薬として用いることが可能であることが分かった。すなわち、miRNA-181b-5pミミック-PEI-NPのような核酸医薬、これを模した低分子化合物等を新規の糖尿病性腎臓病用医薬として提供可能であることが裏付けられた。
(方法)
次に、上述の実施例1のAKITA/SLcマウス(AKITAマウス)、及び実施例1並びに実施例2のdb/dbマウスにおいて、高カロリー食を投与した群と、水のみ投与のコントロール(Mock)とについて、miRNA-181b-5p及びmiRNA-125b-5pの腎臓での発現量が変化するかどうか、20週の腎臓を取得し、上述と同様のqRT-PCRで調べた。
さらに、miRNAの発現量を経時的に観察して解析した。具体的には、AKITAマウス及びdb/dbマウスにおいて、5週(5w)、12週(12w)、28週(28w)の血清及び腎臓におけるmiRNA-125b-5p及びmiRNA-181b-5pの発現量の変化をqRT-PCRで調べた。
UUOマウスは、正常マウスの尿管を片側性に結紮する(UUO)ことで作成した。
IRIマウスは、C57/B6 mice(9週齢、雄)の右腎臓を摘出後、左腎動脈を45分間クランプして腎血流を遮断し、急性腎不全を誘導し、24時間後に解剖した。
図17に、AKITAマウス及びdb/dbマウスにおける腎臓での発現量の変化を示す。図17(a)は、AKITAマウスでのmiRNA-181b-5pの発現量、図17(b)はAKITAマウスでのmiRNA-125b-5pの発現量、図17(c)はdb/dbマウスでのmiRNA-181b-5pの発現量、図17(d)はdb/dbマウスでのmiRNA-125b-5pの発現量を、それぞれ示す。各グラフは、コントロール(Mock)群の発現量を1で正規化した、相対発現量を示す。
いずれも、高カロリー食を投与した群では、コントロール群に比べて、miRNA-181b-5p及びmiRNA-125b-5pの腎臓での発現量は低下していた。つまり、miRNA-125b-5pの発現量については、血清とは異なり、腎臓では低下していた。
結果として、糖尿病性腎臓病以外のモデルマウスでは、いずれの発現量も変化していなかった。
これらの結果から、miRNA-125b-5p及びmiRNA-181b-5pは、糖尿病性腎臓病に特異的であると考えられる。
Claims (7)
- miRNA-125b-5p及び/又はmiRNA-181b-5pである
糖尿病性腎臓病特異的バイオマーカーを用いる
ことを特徴とする糖尿病性腎臓病の診断することを補助する方法。 - 前記miRNA-125b-5pの血清中での発現が上昇している場合及び/又は前記miRNA-181b-5pの発現が低下している場合、糖尿病性腎臓病と診断することを補助する
ことを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性腎臓病の診断することを補助する方法。 - 診断は、糖尿病性腎臓病(DKD)と、糖尿病を合併しているその他の腎障害との判別を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の糖尿病性腎臓病の診断することを補助する方法。 - miRNA-125b-5p及び/又はmiRNA-181b-5pを測定する試薬を含む
ことを特徴とする糖尿病性腎臓病の検査用キット。 - ヒト以外の動物の治療方法であって、
miRNA-181b-5pミミックを含む組成物を投与し、
糖尿病性腎臓病の腎臓を治療する
ことを特徴とする動物治療方法。 - miRNA-181b-5pミミックを含む組成物である
ことを特徴とする糖尿病性腎臓病用医薬。 - 前記組成物は、
II型糖尿病による糖尿病性腎臓病用の医薬である
ことを特徴とする請求項6に記載の糖尿病性腎臓病用医薬。
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