JP2014038118A - 反射鏡およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特に耐水性に優れた反射鏡を提供する。
【解決手段】反射膜を有する第一のガラス基板と、この第一のガラス基板の反射膜側に対向配置した第二のガラス基板と、前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板とを封止する封着ガラス層とから構成され、第二のガラス基板の前記第一のガラス基板の反射膜面との対向面にも反射膜を形成し、さらに、第一のガラス基板と封着ガラス層との界面、および第二のガラス基板と封着ガラス層との界面に、封止により生じる反応層を形成させた反射鏡。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽光の集光に使用される反射鏡に関し、特に耐水性に優れたものに関する。
近年、太陽光を集光して得られる熱エネルギーを利用する装置およびシステムが注目されており、太陽光集熱器および太陽光集光システムの開発および実用化が進められている。
例えば、太陽光を集光し、その熱エネルギーにより高温および高圧の蒸気を発生させ、その蒸気を用いてタービンなどを駆動する太陽熱発電システムなどが検討されている。
一般に、反射鏡は、ガラスなどの透明基板の上にアルミニウムや銀などの金属薄膜をコーティングして作製される。しかしながら、このような金属薄膜をコーティングした反射鏡は、表面の金属薄膜が環境雰囲気中の水分、酸素などにより劣化するという問題がある。
現在は、金属薄膜コーティングの上にアクリル樹脂やエポキシ樹脂などで構成された保護膜を塗付した反射鏡が主流であるが、これらの樹脂は耐水性に劣るため、長期間において金属薄膜の劣化を防ぐことは難しい。
特許文献1においては、合わせガラス鏡の全周線に沿いシリコンシ―ラントからなる弾性シール剤で被覆した反射鏡が提案されている。しかし、シリコンシーラントにおいても水バリア性は完全ではなく耐水性に劣る。
特許文献2においては、無機膜で全面を保護した反射鏡が提案されているが、無機保護膜は非常に薄膜なことから、熱膨張などにより徐々にクラックが入り信頼性に乏しい。
本発明者は、反射膜を有する第一のガラス基板と、この第一のガラス基板の反射膜側に対向配置した第二のガラス基板と、前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板とを封止する封着ガラス層とから構成し、第二のガラス基板の前記第一のガラス基板の反射膜面との対向面にも反射膜を形成させ、さらに、第一のガラス基板と封着ガラス層との界面、および第二のガラス基板と封着ガラス層との界面に、封止により生じる反応層を形成させることにより、耐水性に優れた反射鏡が提供できることを見出した。
特開昭58−060702号公報 特開2010−055058号公報
本発明は、特に耐水性に優れた反射鏡を提供することである。
本発明の反射鏡は、反射膜を有する第一のガラス基板と、この第一のガラス基板の反射膜側に対向配置した第二のガラス基板と、前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板とを封止する封着ガラス層とから構成されている。また、第二のガラス基板の 前記第一のガラス基板の反射膜面との対向面にも反射膜を形成する。さらに、第一のガラス基板と封着ガラス層との界面、および第二のガラス基板と封着ガラス層との界面に、封止により生じる反応層が形成されている。
本発明の反射鏡の製造方法は、反射膜を有する第一のガラス基板を準備する工程と、封着用ガラス体を第二のガラス基板上に形成する工程と、第一のガラス基板の反射膜面と第二のガラス基板の封着用ガラス体を形成した面とを対向配置し重ね合わせ基板とする工程と、この重ね合わせ基板の封着用ガラス体を加熱溶融し、第一のガラス基板および第二のガラス基板を封止する工程とを備える。また、封着用ガラス体の加熱溶融は、電磁波照射による部分加熱か、重ね合わせ基板を焼成炉内へ入れる全体加熱で行われる。
本発明によれば、第一および第二のガラス基板を封着ガラス層で封止しているので、反射鏡内部に水分等の侵入を防ぐことができる。したがって、反射膜の特性劣化を防ぐことができ、長期間特性を維持できる。特に、電磁波を使用して封着用ガラス体を封止し封着ガラス層とすると、局所的な加熱ができるので、封止時の熱による反射膜の特性劣化を防ぐこともできる。
本発明の反射鏡の実施形態を示す断面図である。 本発明の反射鏡の他の実施形態を示す断面図である。 本発明の反射鏡の他の実施形態を示す断面図である。 反応層の形状を拡大して示す断面図である。 ガラス基板に生成された反応層を模式的に示す図である。 実施例1で作製した反射鏡の反応層痕を測定した結果を示す図である。 実施例2で作製した反射鏡の反応層痕を測定した結果を示す図である。 実施例3で作製した反射鏡の反応層痕を測定した結果を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1〜図3は本発明の反射鏡の代表的な構造を示す断面図である。
まず、図1に示す反射鏡1は、反射膜5を有する第一のガラス基板2と、前記反射膜5側に対向配置された第二のガラス基板4とが、封着ガラス層3により外周が封止されている。また、第一のガラス基板2と封着ガラス層3との界面、および第二のガラス基板と封着ガラス層3との界面には、封止時に生じた反応層7が形成されている。
第一および第二のガラス基板2、4は例えば各種公知の組成を有する無アルカリガラスやソーダライムガラス等で構成される。無アルカリガラスは35〜40(×10−7/℃)程度の熱膨張係数を有している。ソーダライムガラスは80〜90(×10−7/℃)程度の熱膨張係数を有している。反射率の観点からソーダライムガラスは透明度が高い白板ガラスが望ましい。また、強度の観点から、ソーダライムガラスは強化ガラスであることが望ましい。強化の方法は化学強化、風冷強化のいずれであってもよい。またソーダライムガラス以外の化学強化ガラスであってもよい。
第一および第二のガラス基板2、4の厚みは、0.03〜5mmである。反射率を考慮すると第一および第二のガラス基板2、4の厚みは、薄い方が望ましく0.03〜2.8mmが望ましく、より望ましくは0.03〜1.1mmである。また構造体の質量を考慮すると第一および第二のガラス基板2、4の厚みは、薄い方が望ましく0.03〜2.8mmが望ましく、より望ましくは0.03〜1.1mmである。強度を考慮すると第一および第二のガラス基板2、4の厚みは、厚い方が望ましく、0.7mm〜5mmが望ましく、1.1mm〜5mmがより望ましい。
例えば、第一のガラス基板2のみに反射膜5を有する反射鏡1を用い、第一のガラス基板2の側のみを反射面として使用する場合、第一のガラス基板2の厚みは0.03〜0.7mmt、第二のガラス基板4の厚みは0.7〜5mmtが望ましい。
反射膜5は、アルミニウム、銀、銀合金(銀−白金合金、銀−パラジウム合金)を使用できる。反射膜5の形成は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、イオンビーム照射法、スプレーコート法のいずれかによって行われる。本発明によれば、上記各種方法で形成された反射膜5上にアクリル樹脂やエポキシ樹脂などで構成された保護膜を形成するプロセスを削減することもできる。
封着ガラス層3は、必須成分として低融点ガラスを含み、任意成分としてセラミックスフィラーや電磁波吸収材を含んだ封着ガラス材料を溶融固化させたものである。セラミックスフィラーを含有させる主目的は、低融点ガラスとガラス基板との熱膨張係数差の調整であり、電磁波吸収材を含有させる主目的は、封着ガラス材料の電磁波の吸収を向上させ加熱効率のアップである。このように、封止を全て無機材料で行うことにより、従来よりも高い気密性を得ることができ、反射膜5の劣化の原因となる、水分等の侵入を防ぎ耐環境性に優れた反射鏡1を得ることができる。
封着ガラス材料の組み合わせや配合量は、封着ガラス層3を形成するための加熱方法や第一および第二のガラス基板2、4との相性を考慮し選定される。加熱方法は、焼成炉を用い反射鏡1の全体を加熱したり、電磁波の一種であるレーザ光を用い反射鏡1の封止部分のみを加熱したりするものがある。
封着ガラス材料の構成としては、低融点ガラス60〜100体積%、セラミックスフィラー0〜40体積%、電磁波吸収材0〜40体積%である。
封着ガラス材料は少なくとも、低融点ガラスを含有していればよく、セラミックスフィラーおよび電磁波吸収材の含有量は零であってもよい。
低融点ガラスとしては、例えば錫−リン酸系ガラス、ビスマス系ガラス、バナジウム系ガラス、鉛系ガラス、シリカホウ酸アルカリガラス等の低融点ガラスが用いられる。これらのうち、ガラス基板2、4に対する封着性(接着性)やその信頼性(接着信頼性や密閉性)、さらには環境や人体に対する影響性等を考慮して、ビスマス系ガラスからなる封着ガラスを使用することが好ましい。
低融点ガラスが60体積%未満では、封着時の封着ガラス材料の流動性が下がり、良好な封着ができないおそれがある。封着ガラス材料中の低融点ガラスの割合は好ましくは、60体積%以上、さらに好ましくは65体積%以上である。上限値はガラス基板との熱膨張の調整を考慮すると97体積%以下、好ましくは90体積%以下である。
セラミックスフィラーとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、珪酸ジルコニウム、コージェライト、リン酸ジルコニウム系化合物、ソーダライムガラス、および硼珪酸ガラスから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。リン酸ジルコニウム系化合物としては、(ZrO)、NaZr(PO、KZr(PO、Ca0.5Zr(PO、NbZr(PO、Zr(WO)(PO、これらの複合化合物が挙げられる。セラミックスフィラーの好ましい下限は3体積%以上であり、さらに好ましくは10体積%以上である。一方、40体積%超では、封着時の封着ガラス材料の流動性が下がり、良好な封着が難しくなる。好ましくは40体積%以下、さらに好ましくは35体積%以下である。
電磁波吸収材としてはFe、Cr、Mn、Co、NiおよびCuから選ばれる少なくとも1種の金属または前記金属を含む酸化物等の化合物が用いられる。また、これら以外の電磁波吸収材であってもよい。電磁波吸収材の好ましい下限は0.1体積%以上であり、さらに好ましくは1体積%以上である。一方、40体積%超では、封着時の封着ガラス材料の流動性が下がってしまい、良好な封着ができない。好ましくは25体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。
具体的な低融点ガラスは、ビスマス系ガラスを適用する場合、質量割合で70〜90%のBi、1〜20%のZnO、2〜12%のB、および10〜1000ppmのNaOの組成を適用することが好ましい。Bi、ZnO、およびBの3成分で形成されるガラスは、透明でガラス転移点が低い等の特性を有することから、封着ガラス材料に好適である。ただし、上記した3成分による低融点ガラスでは、ガラス基板2、4と封着ガラス層3との間に十分な反応層7を生成できないおそれがある。そのために、微量のNaOを含有している。
ガラス基板2、4と封着ガラス層3との接着界面に反応層7を形成するためには、低融点ガラス中に拡散しやすい元素、具体的には1価の軽金属を含有させることが効果的である。特に、NaOをビスマス系ガラスに含有させることが効果的である。このようなBi、ZnO、およびBの3成分で形成されるビスマス系ガラスに適量のNaOを含有させた4成分系の低融点ガラス使用することによって、ガラス基板2、4と封着ガラス層3との接着界面に反応層7が生成されやすくなる。
上述した4成分で形成されるビスマス系ガラスフリットにおいて、Biはガラスの網目を形成する成分であり、封着ガラス中に70〜90質量%の範囲で含有させることが好ましい。Biの含有量が70質量%未満であると低融点ガラスの軟化温度が高くなる。Biの含有量が90質量%を超えるとガラス化しにくくなり、ガラスの製造が困難になると共に、熱膨張係数が高くなりすぎる傾向がある。封着温度等を考慮して、Biの含有量は78〜87質量%の範囲とすることがより好ましい。
ZnOは熱膨張係数や軟化温度を下げる成分であり、封着ガラス中に1〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。ZnOの含有量が1質量%未満であるとガラス化が困難になる。ZnOの含有量が20質量%を超えると低融点ガラス成形時の安定性が低下し、失透が発生しやすくなって、ガラスが得られないおそれがある。ガラス製造の安定性等を考慮して、ZnOの含有量は7〜12質量%の範囲とすることがより好ましい。
はガラス骨格を形成してガラス化が可能になる範囲を広げる成分であり、低融点ガラス中に2〜12質量%の範囲で含有させることが好ましい。Bの含有量が2質量%未満であるとガラス化が困難になる。Bの含有量が12質量%を超えると軟化点が高くなる。ガラスの安定性や封着温度等を考慮して、Bの含有量は5〜10質量%の範囲とすることがより好ましい。
NaOはガラス基板2、4と封着ガラス層3との反応性を高める成分であり、低融点ガラス中に質量割合で10〜1000ppmの範囲で含有させることが好ましい。NaOの含有量が10ppm未満であると反応層7の生成効率を十分に高めることができない。一方、NaOの含有量が多すぎるとガラスの安定性が損なわれ、失透が発生しやすくなる。ガラス基板2、4と封着ガラス層3との接着強度の向上効果、配線等への影響、ガラスの安定性等を考慮して、NaOの含有量は質量割合で100〜1000ppmの範囲とすることがより好ましい。
上述したNaOと同様に、LiOやKOもガラス基板2、4と封着ガラス層3との接着界面に反応層7を形成させる成分として機能する。ただし、これらアルカリ金属酸化物のうちでも、特にガラス基板2、3との反応性に優れるNaOが効果的であることから、低融点ガラスとして用いるビスマス系ガラスはNaOを含むことが好ましい。なお、NaOの一部はLiOやKOから選ばれる少なくとも1種で置換してもよい。LiOやKOによるNaOの置換量は、接着界面における反応層7の形成性等を考慮して、NaO量の50質量%以下とすることが好ましい。
上述した4成分で形成されるビスマス系ガラスはガラス転移点が低く、封着材料に適したものであるが、Al、CeO、SiO、AgO、WO、MoO、Nb、Ta、Ga、Sb、CsO、CaO、SrO、BaO、P、SnO(xは1または2である)等の任意成分を含有していてもよい。ただし、任意成分の含有量が多すぎるとガラスが不安定となって失透が発生したり、ガラス転移点や軟化点が上昇したりするおそれがあるため、任意成分の合計含有量は10質量%以下とすることが好ましい。任意成分の合計含有量の下限値は特に限定されるものではない。ビスマス系ガラスには、添加内容に基づいて有効量の任意成分を配合できる。
上記した任意成分のうち、Al、SiO、CaO、SrO、BaO等はガラスの安定化に寄与する成分であり、その含有量は0〜5質量%の範囲とすることが好ましい。CsOはガラスの軟化温度を下げる効果を有し、CeOはガラスの流動性を安定化させる効果を有する。AgO、WO、MoO、Nb、Ta、Ga、Sb、P、SnO等はガラスの粘性や熱膨張係数等を調整する成分として含有させることができる。これら各成分の含有量は任意成分の合計含有量が10質量%を超えない範囲(0質量%を含む)内において、適宜に設定できる。
反応層7は第一および第二のガラス基板2、4の構成元素と封着ガラス層3の構成元素との混合層である。このような反応層7をガラス基板2、4の内部に生成すると共に、その最大深さを30nm以上とすることによって、ガラス基板2、4と封着ガラス層3との接着状態を強固にできる。また、良好な気密構造とすることもできる。反応層7の最大深さが30nm未満であると、接着強度を高めたり、気密構造としたりする効果を十分に得ることが難しくなる。反応層7の最大深さは30nm以上とすることがより好ましく、さらに好ましくは150nm以上である。
さらに、反応層7は封着ガラス層3の端部付近より中心部付近が第1および第2のガラス基板2、4の内部に向けて突出した形状を有することが好ましい。言い換えると、反応層7は第一および第二のガラス基板2、4の内部への深さが封着ガラス層3の端部側より中心部付近の方が深い形状を有することが好ましい。このような反応層7によれば、第一および第二のガラス基板2、4と反応層7との界面に生じる応力を反応層7全体に分散させることができるため、第一および第二のガラス基板2、4と封着ガラス層3との接着強度をより一層高めることが可能となる。反応層の深さが一様であると、残留応力が反応層の側面や底面等に集中するおそれがある。反応層7の形状は図4に示すような形状に限らず、突出部分が複数存在するような形状であってもよい。
上記した反応層7の具体的な形状としては、図5に示すように、反応層7の最大深さD1が封着ガラス層3の端部付近における深さD2に対して1.1倍以上(D1/D2≧1.1)の突形状であることが好ましい。ここで、反応層7の端部付近の深さD2は、反応層7の端部から最大深さD1となる位置までの距離をL1としたとき、端部から距離L1の1/10の距離L2(L2=1/10*L1)の位置における深さを示すものとする。また、突出部分が複数(例えば2つ)存在する場合には、最大深さD1とその位置の最寄りの端部から最大深さD1となる位置までの距離L1の1/10の距離L2の位置における深さD2とに基づいてD1/D2を求める。
封着層3の端部付近における深さD2に対する最大深さD1の比(D1/D2)が1.1以上の反応層7によれば、第一および第二のガラス基板2、4と封着ガラス層3との接着強度をより一層高めることができると共に、第一および第二のガラス基板2、4と反応層7との界面における応力の分散効果を再現性よく得ることが可能となる。すなわち、D1/D2比を1.1以上とすることによって、反応層7の形成量を増加させつつ、反応層7の形状をガラス基板2、4内により突出させた形状にできる。したがって、第一および第二のガラス基板2、4と封着ガラス層3との接着強度の向上効果と、第一および第二のガラス基板2、4と反応層7との界面における応力の分散効果をより向上させることが可能となる。D1/D2比は2.0以上であることがより好ましい。
また、反応層7の形成量に関しては、その断面積が50μm以上であることが好ましい。反応層7の断面積を50μm以上することによって、ガラス基板2、4と封着層8とをより強固に接着できる。反応層7の断面積は100μm以上であることがより好ましい。反応層7の断面積は、例えば反応層7の形状(深さ等)により増加させることができる。なお、反応層7の断面積は封着ガラス層3の幅(線幅)を広くしても増加させることができ、これも第一および第二のガラス基板2、4と封着ガラス層3との接着強度を高める手段として挙げられる。
反応層7の生成は、第一および第二のガラス基板2、4と封着ガラス層3との接着界面近傍のEE−EPMA線組成分析により確認できるが、実用的な方法として以下に示す方法が挙げられる。ここでは、反応層7の形状(深さ、断面積、D1/D2比等)に関しては以下に示す方法で測定した値を示す。
まず、封着した反射鏡1の一部を研磨しやすいように切り出して試料とする。この試料から一方のガラス基板を研磨して除去する。なお、封着ガラス層3の強度が低くて封着ガラス層3内で剥離する場合には、ガラス基板の研磨工程を省くことができる。次いで、一方のガラス基板を除去した試料をエッチング液に浸漬して封着ガラス層3を除去する。エッチング液には封着ガラス層の構成元素を溶解することが可能な酸液を使用する(封着ガラス層に低融点ガラスとしてビスマス系ガラスを用いた場合には、例えば30%硝酸水溶液を使用する)。反応層7は第一および第二のガラス基板2、4の構成元素と封着ガラス層の構成元素の混合層であるため、封着ガラス層3の除去と同時に反応層7も除去される。
このようにして、反応層7の形成跡が凹状部として残存するガラス基板を作製する。このような凹状部を有するガラス基板の表面形状を表面粗さ計で測定することによって、反応層7の形成跡である凹状部の形状、すなわち反応層7の形状を測定、評価できる。図6は後述する実施例1で作製した反射鏡1におけるガラス基板の反応層7の表面形状を測定した結果を示す図である。この図に示すように、第一および第二のガラス基板2、4から反応層7を溶解除去した後に、第一および第二のガラス基板2、4の表面形状を表面粗さ計で測定することによって、反応層7の形状を評価できる。
反応層7をより深く形成するために、封止領域の反射膜5のみトリミングし、直接封着用ガラス体と第一のガラス基板2とを密着させて封着してもよい。トリミングの方法としては、反射膜5を形成させた後に、封止領域を硝酸などのエッチング液に浸す方法や、反射膜5を形成させる前に、テープ等でマスキングする方法がある。
第一のガラス基板2、第二のガラス基板4および封着ガラス層3で囲まれた空間6は、雰囲気を空気としてもよいが、空気中の酸素と反射膜5との反応を考慮すると、雰囲気を真空とするか、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスとすることが望ましい。また、強度を考慮すると、空間6に樹脂を充填することやスペーサーを入れることが望ましい。
また、第一のガラス基板2と第二のガラス基板4の間の距離は、空間6の充填物の酸素と反射膜5との反応や熱膨張等の影響を低減させるため、短い方がよい。第一のガラス基板2と第二のガラス基板4の間は500μm以下が望ましく、100μm以下がより望ましく、さらに好ましくは10μm以下が望ましい。
次に、焼成炉を使用した反射鏡1の製造方法を説明する。
[封着用ガラスペーストの作成]
封着用ガラスペーストは封着用ガラス材料の各構成成分とビヒクルとを混合して調製される。ビヒクルは、バインダ成分である樹脂を溶剤に溶解したものである。ビヒクル用の樹脂としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、オキシエチルセルロース、ベンジルセルロース、プロピルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル系モノマーの1種以上を重合して得られるアクリル系樹脂等の有機樹脂が用いられる。溶剤としては、セルロース系樹脂の場合はターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等の溶剤、アクリル系樹脂の場合はメチルエチルケトン、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等の溶剤が用いられる。
封着用ガラスペーストの粘度は、ガラス基板4に塗布する装置に対応した粘度に合わせればよく、樹脂(バインダ成分)と溶剤の割合や封着用ガラス材料の成分とビヒクルの割合により調整できる。封着用ガラスペーストには、消泡剤や分散剤のようにガラスペーストで公知の添加物を加えてもよい。これらの添加物も通常焼成時に消失する成分である。封着材料ペーストの調製には、撹拌翼を備えた回転式の混合機やロールミル、ボールミル等を用いた公知の方法を適用できる。
[封着用ガラス体の形成]
第二のガラス基板4の外周の封止領域に、スクリーン印刷やディスペンサーにより、封着用ガラスペーストを塗付する。塗付膜の幅は、強度を保つため、0.5mm〜20mmであることが望ましい。また、塗付膜の厚さは、目標となる封着後の封着ガラス層3の厚さになるよう、乾燥、仮焼成といった次の工程での収縮を考慮し調整されるべきである。
封着用ガラスペーストを塗付した第二のガラス基板4を60〜150℃の乾燥機に30秒から10分間投入乾燥し、有機溶剤成分を飛ばす。続いて、焼成炉で封着ガラス材料のガラス転移点から30℃低い温度条件で樹脂バインダ成分を飛ばし。さらに封着用ガラス材料が仮焼成される温度(封着ガラス材料のガラス軟化点から10〜100℃高い温度条件)にて焼成し、封着用ガラス材料を第二のガラス基板4に焼き付け、封着用ガラス体とする。本明細書でガラス転移点は、示唆熱分析(DTA)の第1変曲点の温度で、ガラス軟化点は、示唆熱分析(DTA)の第4変曲点の温度で定義されるものである。
[第一および第二ガラス基板の封止]
封着用ガラス体を有する第二のガラス基板4と、反射膜5を有する第一のガラス基板2とを張り合わせ、焼成炉で焼成する。反射鏡1の強度を考慮し、空間6にスペーサーを入れる場合、張り合わせ時にスペーサーを入れる。スペーサーとしては、耐熱性を有するアルミナ、シリカ等のセラミックスペーサーが望ましい。焼成炉の雰囲気は、反射膜5の劣化を防ぐため、真空あるいは、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性雰囲気、あるいは真空状態が望ましい。封着用ガラス体中の低融点ガラスの組成が反射膜5を突き抜け第一のガラス基板に反応層7が形成されることにより、強固な接着が得られる。
前記反応層7が薄いと接着力が弱く、ヒートサイクル試験やピール試験などで剥がれてしまい、長寿命な反射鏡1を作ることが難しくなる。
反応層7の形成のしやすさは、封着ガラス体中の低融点ガラスの組成、焼成温度、封着用ガラス体と第一のガラス基板上の反射膜5との密着性に依存する。反応層7をより深く形成するために、封着用ガラス体中の低融点ガラスの組成としてはビスマス系、鉛系、シリカホウ酸アルカリ系が適しているが、環境面、耐水性の面からビスマス系ガラスが好ましい。
焼成温度は高い温度ほど反応層7が進みやすいが、ガラス基板の変形を考慮するとガラス基板の転移点以下であることが望ましい。
密着性は耐熱クリップや重りなどにより荷重を加えることで、向上する。
以上の工程により、図1の反射鏡1は作製する。
続いて、レーザ等の電磁波を用いた封止工程について、図1の反射鏡1を例に説明する。
[封着用ガラスペーストの作製]
封着用ガラスペーストの作製方法は、電磁波吸収材を含ませることを除き、焼成炉を使用した反射鏡1の製造方法と同様である。
[封着用ガラス体の形成]
まず、第二のガラス基板4の外周の封止領域に、スクリーン印刷やディスペンサーにより、封着用ガラスペーストを塗付する。塗付膜の幅は、強度を保つため、0.5mm〜20mmであることが望ましい。また、塗付膜の厚さは、目標となる封着後の封着ガラス層3の厚さになるよう、乾燥、仮焼成といった次の工程での収縮を考慮し調整されるべきである。
封着用ガラスペーストを塗付した第二のガラス基板4を60〜150℃、30秒から10分で乾燥し有機溶剤成分を飛ばす。続いて、焼成炉で封着ガラス材料のガラス転移点から30〜50℃低い温度条件で樹脂バインダ成分を飛ばす。さらに封着用ガラスが仮焼成される温度(封着ガラス材料のガラス軟化点から10〜50℃高い温度条件)にて焼成し、封着用ガラス材料を第二のガラス基板4に焼き付ける。
樹脂バインダ成分を飛ばす工程と封着用ガラス材料を第二のガラス基板4に焼き付ける工程は、レーザ等の電磁波により行うこともできる。レーザ等の電磁波による局所的な加熱により、封止領域以外は加熱されないため、第二のガラス基板4が反射膜5を有する場合に、反射膜5が劣化することなく封着用ガラス材料を第二のガラス基板4に焼き付けることができる。
次に反射膜5を有する第一のガラス基板2と張り合わせ、第二のガラス基板4側からレーザ等の電磁波を照射し、封着用ガラス体を加熱することに、封着用ガラス体中の低融点ガラス中の組成が反射膜5を突き抜け第一のガラス基板2に反応層7が形成される。
封着用ガラス体はレーザ等の電磁波により局所的に加熱されるため、ガラス基板の温度は封着用ガラス体よりも加熱されない。つまり、封着用ガラス体は焼成炉で全体加熱されるときよりも、高温で加熱してもよい。より高温で加熱することにより、反応層7はより深く形成できる。
また電磁波としてレーザを用いる場合、レーザのスポットの中心の強度を最も強くし、外側にいくにつれ弱くすることにより、照射される封着用ガラス体に温度分布をつけて、反応層7の形状を図4のような第一ガラス基板2に向かって下に凸にすることにより、応力を緩和しより強固な接着が得られる。
封着用ガラス体はレーザ等の電磁波により局所的に加熱されるため、封止領域以外は加熱されにくいため、反射膜5の熱による劣化がなく、高い反射率をもつ反射鏡1が得られる。
第一のガラス基板2と第二のガラス基板4の間の空間6には、空気があってもよいが、空気中の酸素と光反射膜との反応を考慮すると、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスが充填されていることあるいは真空状態が望ましい。その場合は、不活性ガス中あるいは真空中でレーザ等の電磁波による封着を行う。
また、強度を考慮すると、空間6に樹脂を充填することやスペーサーを入れることが望ましい。スペーサーとしては、耐熱性を有するアルミナ、シリカ等のセラミックスペーサーでもよいが、局所加熱での封着のため、スペーサーは耐熱性を持たない、樹脂やプラスチックでもよい。
封着後の封着ガラス層3の膜厚をそろえるためにスペーサーを封着材料中に入れてもよい。
反射鏡1の強度をより高めるため、第一のガラス基板2と第二のガラス基板4との間の空間6を樹脂で充填する場合には、張り合わせる前に、封着ガラス層の内側に樹脂を塗付し、反射膜5を有する第一のガラス基板2とを張り合わせレーザで封止する。
以上の工程により、図1の反射鏡1は作製する。
反射鏡1としては、図2のように第二のガラス基板4にも反射膜5を有することが望ましい。第一のガラス基板2を反射面として使用し外表面が傷つき、乱反射や吸収により反射率が下がった場合に、反射鏡1を反転させ、第二のガラス基板4側を反射面として使用する。この操作により反射鏡1としての寿命をさらに伸ばすことができる。
例えば、第一のガラス基板2と第二のガラス基板4の両方が反射膜5を有する反射鏡1を用い第一のガラス基板2と第二のガラス基板4の両側を反射面として使用する場合、反射鏡1の強度と反射率のバランスを考慮し、第一のガラス基板2と第二のガラス基板4の厚みは0.55〜2.8mmtが望ましい。
また、反射鏡1の形状としては、図3のように湾曲したガラス基板を使用して、湾曲構造でもよい。湾曲した反射鏡が求められるトラフ型などに対応できる。
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。なお、以下の説明は本発明を限定するものではく、本発明の趣旨に沿った形での改変が可能である。
(実施例1)
低融点ガラスとして、Bi83.2質量%、B5.6質量%、ZnO10.7質量%、Al0.5質量%、NaO100ppmの組成を有し、平均粒径(D50)が1.0μmのビスマス系ガラスフリット(軟化点:410℃)と、セラミックスフィラーとしてコージェライト粉末を用意した。コージェライト粉末は、平均粒径(D50)が2.0μmである。
粒度分布は、レーザ回折・散乱法を用いた粒度分析計(日機装社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した。測定条件は、測定モード:HRA−FRAモード、Particle Transparency:yes、Spherical Particles:no、Particle Refractive index:1.75、Fluid Refractive index:1.33とした。
上述したビスマス系ガラスフリット75体積%とコージェライト粉末25体積%を混合して封着用ガラス材料とし、この封着用ガラス材料80質量%をビヒクル20質量%と混合して封着用ガラスペーストを調製した。ビヒクルはバインダ成分としてのエチルセルロース(2.5質量%)をターピネオールからなる溶剤(97.5質量%)に溶解したものである。
次に、ソーダライムガラスからなる第二のガラス基板4(寸法:100×100×1.1mmt)を用意し、このガラス基板の封止領域に封着用ガラスペーストをスクリーン印刷法で塗布した後、120℃×10分の条件で乾燥させた。印刷パターンは線幅が1.0mmで80mm×80mmの額縁状パターンとし、コーナー部の曲率半径Rは2mmとした。つづいて、塗布層を300℃×30分の条件で樹脂バインダ成分を飛ばした。次いで、塗布層を480℃×10分の条件で焼成することによって、膜厚が15μmの封着用ガラス体を形成した。
次に、第一のガラス基板2(第二のガラス基板4と同組成、同形状のソーダライムガラスからなる基板)に銀薄膜をスプレーコート法によって成膜した。
上述した封着材料層を有する第二のガラス基板4と反射膜5として銀薄膜を有する第一のガラス基板2(第二のガラス基板4と同組成、同形状のソーダライムガラスからなる基板)とを積層し、耐熱クリップにて第一のガラス基板2と第二のガラス基板4を挟みこみ、2枚のガラス板を密着させ、焼成炉に投入し、窒素雰囲気、480℃×10分の条件で焼成することによって第一のガラス基板2と第二のガラス基板4とを封着した。このようにして、封止した反射鏡1を後述する特性評価に供した。
作製した反射鏡1の封着ガラス層3とガラス基板2、4との接着状態を顕微鏡で確認したところ、封着領域は反射膜5のようには見えず、封着ガラス層3の色が見られ、封着ガラス層3中の低融点ガラス成分は、銀薄膜を突き抜け、第一のガラス基板2としっかりと反応しているように見られた。また、未接着な箇所やクラック等の接着不良は見られず、十分な接着が得られていることを確認した。
高温高湿試験(60℃−90%)1000時間に投入し、反射率の変化を確認したが、ほとんど変化はなかった。
また、前述の方法にて反応層7を測定したところ、図6のようにおよそ50〜60nmの反応層が形成されていることを確認した。
(実施例2)
低融点ガラスとして、Bi83.2質量%、B5.6質量%、ZnO10.7質量%、Al0.5質量%、NaO150ppmの組成を有し、平均粒径(D50)が1.0μmのビスマス系ガラスフリット(軟化点:410℃)と、セラミックスフィラーとしてコージェライト粉末と、Fe−CuO−MnO−Al組成を有する電磁波吸収材とを用意した。コージェライト粉末は、平均粒径(D50)が2.0μmである。また、電磁波吸収材は、平均粒径(D50)が0.9μmである。
上述したビスマス系ガラスフリット72.7体積%とコージェライト粉末22.0体積%と電磁波吸収材5.3体積%と(コージェライト粉末と電磁波吸収材との合計含有量は27.3体積%)を混合して封着用ガラス材料とし、この封着用ガラス材料80質量%をビヒクル20質量%と混合して封着用ガラスペーストを調製した。ビヒクルはバインダ成分としてのエチルセルロース(2.5質量%)をターピネオールからなる溶剤(97.5質量%)に溶解したものである。
次に、無アルカリガラスからなる第二のガラス基板4(寸法:90×90×0.7mmt)を用意し、このガラス基板の封止領域に封着用ガラスペーストをスクリーン印刷法で塗布した後、120℃×10分の条件で乾燥させた。印刷パターンは線幅が0.75mmで80mm×80mmの額縁状パターンとし、コーナー部の曲率半径Rは2mmとした。つづいて、塗布層を300℃×30分の条件で樹脂バインダ成分を飛ばした。次いで、塗布層を480℃×10分の条件で焼成することによって、膜厚が7μmの封着材料層を形成した。
次に、第一のガラス基板2(第二のガラス基板4と同組成、同形状の無アルカリガラスからなる基板)にアルミ薄膜を蒸着法によって成膜した。
上述した封着用ガラス体を有する第二のガラス基板4と反射膜5としてアルミ薄膜を有する第一のガラス基板2(第二のガラス基板4と同組成、同形状の無アルカリガラスからなる基板)とを積層した。次いで、第二のガラス基板4上から0.1MPaの圧力を加えた状態で、第二のガラス基板4を通して封着用ガラス体に対して、波長940nm、出力30W、スポット径1.6mmのレーザ光(半導体レーザ)を10mm/sの走査速度で照射し、封着材料層を溶融並びに急冷固化することによって、第一のガラス基板2と第二のガラス基板4とを封着した。レーザ照射時の加工温度(放射温度計で測定)は720℃であった。このようにして、封止した反射鏡1を後述する特性評価に供した。
作製した反射鏡1の封着ガラス層3とガラス基板2、4との接着状態を顕微鏡で確認したところ、封着領域は反射膜5のようには見えず、封着ガラス層3の黒色が見られ、封着ガラス層中の低融点ガラス成分は、アルミ薄膜を突き抜け、第一のガラス基板2としっかりと反応しているように見られた。また、未接着な箇所やクラック等の接着不良は見られず、十分な接着が得られていることを確認した。
高温高湿試験((60℃−90%)1000時間に投入し、反射率の変化を確認したが、ほとんど変化はなかった。
また、前述の方法にて反応層7を測定したところ、図7のようにおよそ100〜150nmの凸型の反応層7が形成されていることを確認した。
(実施例3)
低融点ガラスとして、Bi83.2質量%、B5.6質量%、ZnO10.7質量%、Al0.5質量%、NaO150ppmの組成を有し、平均粒径(D50)が1.0μmのビスマス系ガラスフリット(軟化点:410℃)と、セラミックスフィラーとしてコージェライト粉末と、Fe−CuO−MnO−Al組成を有する電磁波吸収材とを用意した。コージェライト粉末は、平均粒径(D50)が4.3μmである。また、電磁波吸収材は、平均粒径(D50)が1.2μmである。
上述したビスマス系ガラスフリット66.8体積%とコージェライト粉末32.2体積%と電磁波吸収材1.0体積%と(コージェライト粉末と電磁波吸収材との合計含有量は33.2体積%)を混合して封着用ガラス材料とし、この封着用ガラス材料80質量%をビヒクル20質量%と混合して封着用ガラスペーストを調製した。ビヒクルはバインダ成分としてのエチルセルロース(2.5質量%)を2,2,4−トリメチル−1,3ペンタンジオールモノイソブチレートからなる溶剤(97.5質量%)に溶解したものである。
次に、ソーダライムガラスからなる第二のガラス基板4(寸法:100×100×0.7mmt)を用意し、このガラス基板4の封止領域に封着用ガラスペーストをスクリーン印刷法で塗布した後、120℃×10分の条件で乾燥させた。印刷パターンは線幅が0.75mmで80mm×80mmの額縁状パターンとし、コーナー部の曲率半径Rは2mmとした。つづいて、塗布層を300℃×30分の条件で樹脂バインダ成分を飛ばした。次いで、塗布層を480℃×10分の条件で焼成することによって、膜厚が15μmの封着材料層を形成した。
次に、第一のガラス基板2(第二のガラス基板4と同組成、同形状のソーダライムガラスからなるガラス基板)に反射膜5として銀薄膜をスプレーコート法によって成膜した。
第一のガラス基板2の封止領域以外の領域をフィルムでカバーし、第一のガラス基板2の封止領域を30%硝酸水溶液に30秒から1分間浸し、封止領域上の銀薄膜を剥離させ、トリミングした。硝酸水溶液を蒸留水で洗い流した後、水分をエアナイフで飛ばし、フィルムカバーを取りはずして60℃の乾燥器へ投入し10分間乾燥させた。
上述した封着用ガラス体を有する第二のガラス基板4と反射膜5として銀薄膜を有する第一のガラス基板2(第二のガラス基板4と同組成、同形状ソーダライムガラスからなるガラス基板)とを積層した。次いで、第二のガラス基板4上から0.25MPaの圧力を加えた状態で、第二のガラス基板4を通して封着用ガラス体に対して、波長808nm、出力70W、スポット径3.0mmのレーザ光(半導体レーザ)を2mm/sの走査速度で照射し、封着材料層を溶融並びに急冷固化することによって、第一のガラス基板2と第二のガラス基板4とを封着した。レーザ照射時の加工温度(放射温度計で測定)は620℃であった。このようにして、封止した反射鏡1を後述する特性評価に供した。
作製した反射鏡1の封着ガラス層3とガラス基板2との接着状態を顕微鏡で確認したところ、未接着な箇所やクラック等の接着不良は見られず、十分な接着が得られていることを確認した。
高温高湿試験(60℃−90%)240時間に投入し、反射率の変化を確認したが、ほとんど変化はなかった。
また、前述の方法にて反応層7を測定したところ、図8のようにおよそ70〜150nmの凸型の反応層7が形成されていることを確認した。
上記実施例では、加熱源をレーザ光としているが、この他にも赤外線等の電磁波を使用することも可能である。
(比較例1)
ソーダライムガラスからなるガラス基板(寸法:100×100×4mmt)に銀薄膜をスプレーコート法によって成膜した。つづいて銀薄膜の上に、およそ0.03μm銅薄膜をスプレーコートし、さらにエポキシ系樹脂保護膜を45μmコートし、反射鏡を作製した。
高温高湿試験(60℃−90%)240時間に投入し、反射率の変化を確認したところ、およそ10〜15%の反射率の低下が350nm〜1000nmの波長帯で確認された。
(比較例2)
ソーダライムガラスからなるガラス基板(寸法:100×100×4mmt)に銀薄膜をスプレーコート法によって成膜した。前記銀薄膜を成膜したガラス基板とソーダライムガラスからなるガラス基板(寸法:100×100×2.8mmt)とで0.38mmの厚みのポリビニルブチラールを挟み込み、120℃、40分の条件で加熱し、合わせガラス反射鏡とした。
高温高湿試験(60℃−90%)240時間に投入し、反射率の変化を確認したところ、およそ10〜20%の反射率の低下が350nm〜1000nmの波長帯で確認された。
1…反射鏡、2…第1のガラス基板、3…封着ガラス層、4…第2のガラス基板
5…反射膜、6…空間、7…反応層

Claims (16)

  1. 反射膜を有する第一のガラス基板と、
    前記第一のガラス基板の反射膜側に対向配置した第二のガラス基板と、
    前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板とを封止する封着ガラス層とから構成することを特徴とする反射鏡。
  2. 前記第二のガラス基板の 前記第一のガラス基板の反射膜を形成した面との対向面に反射膜を有する請求項1記載の反射鏡。
  3. 前記第一のガラス基板と前記封着ガラス層との界面および第二のガラス基板と前記封着層との界面に封止により生じる反応層が形成された請求項1または2記載の反射鏡。
  4. 前記封着ガラス層が形成される 前記第一のガラス基板および/または前記第二のガラス基板上の反射膜の一部をトリミングした請求項1〜3いずれかに記載の反射鏡。
  5. 前記反応層は前記第一のガラス基板および第2のガラス基板に形成した反射膜を貫通し、前記第一のガラス基板および第二のガラス基板に形成された請求項3記載の反射鏡。
  6. 前記反応層が最大深さ30nm以上である請求項3〜5いずれかに記載の反射鏡。
  7. 前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板との間は500μm以下である請求項1〜6いずれかに記載の反射鏡。
  8. 前記第一のガラス基板および前記第二のガラス基板が、平板または湾曲形状である請求項1〜7いずれかに記載の反射鏡
  9. 前記第一のガラス基板および第二のガラス基板の厚みが0.03〜4mmである請求項1〜8いずれかに記載の反射鏡。
  10. 前記第一のガラス基板および前記第二のガラス基板が、無アルカリガラスまたはソーダライムガラス、化学強化ガラスのいずれかである請求項1〜9いずれかに記載の反射鏡。
  11. 前記封着ガラス層は、必須成分として低融点ガラスと、任意成分としてセラミックスフィラーおよび電磁波吸収材から選ばれる少なくとも一方を含有する請求項1〜10いずれかに記載の反射鏡。
  12. 前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板との空間が、空気、真空、不活性ガスおよび樹脂から選ばれるいずれかで充填されている請求項1〜11いずれかに記載の反射鏡。
  13. 前記第一のガラス基板と前記第二のガラス基板との空間に、スペーサーを有する請求項1〜12いずれかに記載の反射鏡。
  14. 反射膜を有する第一のガラス基板を準備する工程と、
    封着用ガラス体を第二のガラス基板上に形成する工程と、
    第一のガラス基板の反射膜面と第二のガラス基板の封着用ガラス体を形成した面とを対向配置し重ね合わせ基板とする工程と、
    この重ね合わせ基板の封着用ガラス体を加熱溶融し、第一のガラス基板および第二のガラス基板を封止する工程と、を備えることを特徴とする反射鏡の製造方法。
  15. 前記重ね合わせ基板を焼成炉内へ入れ前記封着用ガラス体の加熱溶融を行う請求項14記載の反射鏡の製造方法。
  16. 前記封着用ガラス体に向けて電磁波を照射し、前記封着用ガラス体の加熱溶融を行う請求項15記載の反射鏡の製造方法。
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