JP2014036918A - プラズマ塗装方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】被着体の表面に樹脂皮膜を形成するプラズマ塗装方法及び装置を提供すること。
【解決手段】第1のプラズマをプラズマノズルから被着体に向けてプラズマ流として噴射させることで被着体の表面を改質処理する改質処理工程と、表面改質処理工程の完了後、第1のプラズマを第2のプラズマに切り替えて、この第2のプラズマをプラズマノズルから被着体に向けてプラズマ流として噴射させる間に、プラズマ流に皮膜形成性樹脂を連続的に供給することで、プラズマ溶射により樹脂皮膜を形成するプラズマ溶射工程とを同一のプラズマノズルで順次行うように構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラズマ塗装方法及び装置に関し、さらに詳しく述べると、プラズマノズルを備えたプラズマガンを使用して、被着体の表面に樹脂皮膜を形成するプラズマ塗装方法及びプラズマ塗装装置に関する。
従来、各種の物品(以下、総称して「被着体」という。)に塗装を施すため、大きく分けてスプレー法と電着法が採用されている。スプレー法では、塗装原料の粉体を帯電させ、被着体に吸着させた後熱処理にて溶融・硬化させる静電粉体塗装法や、顔料を溶媒に溶融させ被着体に噴霧し、熱処理で乾燥させる溶媒塗装法が一般的である。しかしながら、これらの方法では、被着体に塗布する場合に粉体等の噴霧が飛散するという問題があるので、飛散防止のための大型の塗装ブースが必要であり、また、熱処理を必要とするため、乾燥・硬化のための熱処理炉が必要となる。したがって、設備は非常に大型となり、熱処理のためのエネルギが必要なだけでなく、塗布に伴って引き起こされる不必要な部分への粉体等の付着に対する設備のメンテナンスにもコストが発生することが問題であった。
また、電着法は、化成処理槽、塗装処理槽、乾燥炉を使用するもので、被着体を薬液に浸漬し化学反応やカチオン電着という現象を利用して塗装を行う方法である。この方法では、被着体よりも大きな処理槽が必要で、薬液交換などの非定常作業のコストがかさむという問題がある。また設備として、生産性を向上させるためにバッチ処理を基本とした非常に大型な装置が必要となることが問題であった。
こうした問題を解決するため、溶射法が提案されている。溶射法は、火炎、または高温のプラズマを被着体に向けてノズルからジェット状に噴射し、噴射された火炎、またはプラズマ流に粉体や固体の原料を投入することで溶融させ、被着体の表面に皮膜として塗装を施す方法である。溶射法の一例を示すと、特開2002−69604号公報には、原料粉体を、溶射ガンにて発生させたガスフレームを熱源として溶融させるとともに、ガスフレームにより欠陥部に充填するように吹き付けて、溶射皮膜としての補修皮膜を形成することを特徴とする防食用ライニング皮膜の補修方法が記載されている。また、特表2005−534814号公報には、放射方向にプラズマジェットを発生させる工程と、プラズマジェットのなかに非晶質物質形成性粒子を放射して溶融物を得る工程と、溶融物を溶射及び冷却して非晶質物質を得る工程とを含むプラズマ溶射方法及び装置が記載されている。さらに、特開2011−143336号公報には、樹脂材料を基材とする粉体をプラズマ中に供給して溶融物を形成する工程と、溶融物を樹脂基板面上に溶射する工程と、溶射後冷却して、樹脂基板面上に粉体の塗膜を得る工程とを含む粉体塗膜製造方法が記載されている。
溶射法のなかで火炎溶射法は、樹脂製被着体に塗装を行う場合に多用されている。なぜなら、プラズマ溶射法を使用すると、プラズマが高温であるため、高すぎる温度に原因して樹脂の炭化が発生するからである。火炎溶射法はまた、バインダや溶媒を用いず、かつ原料が飛散することなく塗装でき、処理槽などの大型の設備がなくても済むといったメリットがある。しかしながら、この方法は、高温を適用しないというメリットがある反面、熱を受けた場合に被着体にダメージが発生してしまうという問題がある。また、プラズマ溶射法及び火炎溶射法に共通して、プラズマや火炎によって被着体を酸化させてしまったり、被着体に対する塗装皮膜の密着力が著しく低下してしまい、塗装品質が低下するという問題がある。
特開2002−69604号公報 特表2005−534814号公報 特開2011−143336号公報
従来の塗装原理では、大型の設備が必要であり、設備コストが問題であった。塗装における加工コストを低減するためには、塗装品質を維持したまま、高スループットで小型・低コスト設備で可能な方式・設備での加工が必須の課題である。よって、小型の設備を提供できる溶射法での塗装において、従来の火炎やプラズマの温度で被着体のダメージが発生してしまうのを抑制し、また密着性を確保することが本発明の課題である。
上記の課題は、本発明によれば、プラズマノズルを備えたプラズマガンを使用して、被着体の表面に樹脂皮膜を形成するプラズマ塗装方法であって、
表面処理用ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することで発生させた第1のプラズマを、前記プラズマノズルから前記被着体に向けてプラズマ流として噴射させることで、前記被着体の表面を改質処理する表面改質処理工程と、
前記表面改質処理工程の完了後、皮膜形成用ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することで発生させた第2のプラズマを、前記プラズマノズルから前記被着体に向けてプラズマ流として噴射させる間に、前記プラズマ流に皮膜形成性樹脂を連続的に供給することで、前記樹脂をプラズマ溶射し、溶融した前記樹脂を前記被着体の表面に被着して前記樹脂皮膜を形成するプラズマ溶射工程と
を含んでなることを特徴とするプラズマ塗装方法によって解決することができる。
また、本発明によれば、被着体の表面に樹脂皮膜を形成するプラズマ塗装装置であって、
プラズマ生成ガスのためのガス供給源と、
電極間距離を調整可能な陽極及び陰極、前記電極間に電圧を印加する電源、及び前記ガス供給源から前記プラズマ生成ガスを供給しながら前記電極間に電圧を印加することで生成したプラズマを前記被着体に向けてプラズマ流として噴射させるプラズマノズルを含むプラズマガンと、
前記プラズマノズルの内部あるいは出口の近傍に配置された、噴射前あるいは噴射後の前記プラズマ流に前記樹脂皮膜を形成するための皮膜形成性樹脂を連続的に供給する樹脂供給ポートと
を含んでなり、
前記プラズマガンは一基であり、前記プラズマノズルからは、表面処理用プラズマ生成ガスに由来する第1のプラズマと、皮膜形成用プラズマ生成ガスに由来する第2のプラズマとが、プラズマ照射を遮断することなく順次連続的に噴射されることを特徴とするプラズマ塗装装置によっても上記の課題を解決することができる。
プラズマ塗装を上記のような方法及び装置で行うと、被着体にダメージを与えない程度の温度の大気圧プラズマで溶射塗装を行うことができ、またその大気圧プラズマのラジカルやイオン衝撃による反応活性の高さを利用して、被着体の活性度を向上し被着体に対する密着力の高い皮膜を安価で塗装することができる。
具体的には、プラズマノズルに印加する電圧やパルス間隔(デューティ比)を変更することで、自由に温度を調整できるため、予備加熱や、後加熱などの処理も同一のプラズマノズルを使用して実施することができる。また、プラズマの発生に使用するガス種を変更することで、必要な反応活性を得ることができるため、被着体に適した表面改質処理を行うことができる。また、表面改質処理と後段のプラズマ溶射処理とを連続的に行うことができるので、表面改質処理により得た活性を維持したまま塗装を行うことができ、従来のように表面改質処理工程とプラズマ溶射処理が分離している塗装方法及び装置よりもより一層の塗装品質の向上を図ることができる。
本発明によれば、上記したように、また、以下で具体的に説明するように、特に大気圧状態でプラズマを発生することができる大気圧プラズマノズルを使用して任意の被着体の表面にプラズマ塗装を施すことができるので、従来必要であった被着体表面の化成処理やプライマ塗布などの工程を使用することなく、プラズマの反応活性な状態を利用することで、被着体の表面状態を清浄かつ活性にし、その活性状態を保ったままプラズマ溶射法により塗装を施すことができる。また、この塗装方法及び装置を使用することで、被着体に対する密着度が高くて低コストな樹脂皮膜を提供することができる。
本発明のプラズマ塗装装置の好ましい一形態を示した模式図である。 本発明のプラズマ塗装装置で使用し得るプラズマガンの好ましい一形態を示した断面図である。 図2に示した樹脂供給ポートの一変形例を示した断面図である。 図2に示した樹脂供給ポートのもう1つの変形例を示した断面図である。
引き続いて、本発明方法及び装置をそれらの好ましい形態について説明する。なお、本発明は、これらの形態に限定されるものではない。
本発明のプラズマ塗装方法は、プラズマノズルを備えたプラズマガンを使用して、被着体の表面に樹脂皮膜を形成するものである。ここでいう「樹脂皮膜」は、プラズマガンからの高温のプラズマ流に投入された粉体状の皮膜形成性樹脂から、樹脂の溶融により被着体の表面に塗装された皮膜を指している。ここで、「皮膜形成性樹脂」とは、プラズマ溶射法で一般的に使用されている樹脂系塗料、例えばエポキシ系、ポリエステル系、アクリル系などの粉体塗料を挙げることができる。かかる粉体塗料の粒径は、通常、約10〜500μmの範囲であり、好ましくは、空気、窒素ガス、アルゴンガスなどでかかる粉体塗料を搬送することを考慮して、約20〜100μmの範囲である。また、樹脂皮膜の厚さは、所望とする樹脂皮膜付き被着体に応じて任意に変更することができ、通常、約50〜1000μmの範囲である。
また、「被着体」は、本発明に従いプラズマ塗装を施すことができるものであれば、材料及び形状が限定されるものではなく、任意の材料及び形状を包含する。好ましくは、樹脂製又は金属製の被着体を使用することができる。ここで使用する樹脂は、塗装できれば種類は問わない。適当な樹脂として、主に構造材として用いられる樹脂、例えば、フェノール樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリフェニレンサルファイト(PPS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、FRP(繊維強化プラスチック)、電子部品モールドなどに用いられる樹脂、例えばアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド樹脂などを挙げることができる。また、金属は、金属工業的に用いられている金属であれば、種類は問わない。適当な金属(合金も含む)として、主に自動車ボディやエンジンの構造材として用いられる鉄鋼材、超硬金属、高炭素鋼、複合積層鋼板、ラジエタなどの熱交換器に主に用いられるアルミニウム材などを挙げることができる。
さらに、「プラズマノズルを備えたプラズマガン」は、その基本的な構成は、プラズマ溶射法で一般的に使用されているものに同様な構造であってよく、したがって、従来常用のプラズマガンに大幅な変更を加えることなく、ほぼそのままで本発明の実施に使用することができる。プラズマガンは、通常、本発明に従い電極間距離を調整可能な陽極及び陰極と、こららの電極間に電圧を印加する電源と、ガス供給源からプラズマ生成ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することで生成したプラズマを被着体に向けてプラズマ流として噴射させるプラズマノズルとを有するものであり、必要に応じて、この技術分野において慣用のその他の部材あるいは手段をさらに有していてもよい。なお、プラズマガンの典型例は、図2を参照しながら以下で詳細に説明する。
本発明によるプラズマ塗装方法は、プラズマで被着体の表面改質処理(本発明では、「表面処理」と呼ぶこともある。)を行う工程と、皮膜形成性樹脂をプラズマ溶射(塗装)する工程の2工程を基本とし、必要に応じて、これらの2工程の間で被着体の予備加熱を実施することを特徴としている。すなわち、本発明方法は、
表面処理用ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することで発生させた第1のプラズマを、プラズマノズルから被着体に向けてプラズマ流として噴射させることで、被着体の表面を改質処理する表面改質処理工程と、
表面改質処理工程の完了後、皮膜形成用ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することで発生させた第2のプラズマを、プラズマノズルから被着体に向けてプラズマ流として噴射させる間に、プラズマ流に皮膜形成性樹脂を連続的に供給することで、樹脂をプラズマ溶射し、溶融した樹脂を被着体の表面に被着して樹脂皮膜を形成するプラズマ溶射工程と
を含んでなり、
必要に応じて、表面改質処理工程とプラズマ溶射工程の間で、予備加熱用ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することで発生させた第3のプラズマを、プラズマノズルから被着体に向けてプラズマ流として噴射させることにより被着体を加熱する予備加熱工程をさらに含んでいてもよい。
本発明方法では、表面改質処理工程、任意の予備加熱工程及びプラズマ溶射工程を、それぞれの工程ごとにプラズマ塗装装置を変更することなしに、同一のプラズマガン(ノズル)を使用して順次連続して実施することができる。換言すると、本発明方法では、表面改質処理工程からプラズマ溶射工程までの一連の工程を、プラズマノズルからのプラズマ流の照射を遮断することなく連続的に実施することができる。
同一のプラズマガンを使用するに当たっては、それぞれの工程ごとにプラズマ処理条件(電極間距離、プラズマ生成ガス、電圧など)を切り替えることが推奨される。例えば、表面改質処理工程とプラズマ溶射工程を同一のプラズマガンを使用して実施するとき、表面改質処理工程及びプラズマ溶射工程において、同一のプラズマガンにおける陽極と陰極の間の電極間距離を変更することで、それぞれの工程において要求されたプラズマ処理条件を満足させることができる。また、電極間距離を変更するに当たっては、例えば、電極間距離を容易に変更できる手段、例えばサーボモータなど使って、その都度電極間距離を連続的に変更することなどが推奨される。また、電極間距離の調整と組み合わせるかそれとは独立して、プラズマガンに導入されるプラズマ生成ガスをそれぞれのプラズマ工程において要求されるガスに切り替えるも推奨される。また、予備加熱工程において同一のプラズマガンを使用するときには、密着性改善のための表面改質処理工程や低温プラズマでの塗装が行われるプラズマ溶射工程とは異なり、印加電圧のパルス波形を変更したり、直流などに変更したり、ガスを変更するなどして、プラズマ処理条件面での変更でも対応可能である。
このように同一のプラズマガンを複数のプラズマ処理工程で使用することで、設備の小型化・低コスト化・電源の共通化・ガス配管系統の共有などにより設備の低コスト化のメリットが発生する。また、同一のプラズマガンを使用し続けることで、間隙無く連続処理ができるため、大気暴露による、被着体の不活性化の発生を抑制でき、高品質な密着性を得ることができる。
本発明方法では、電極間に電圧を印加することでプラズマを発生させるとき、次のような理由で、3000℃以下の低温下、直流のパルス波形を印加してプラズマ処理を実施することが好ましい。また、表面改質処理工程、任意の予備加熱工程及びプラズマ溶射工程において、それぞれ、波形を異にする直流のパルス波形を印加してプラズマ処理を実施することが好ましい。
従来から、プラズマ発生技術として直流、パルス、高周波などが存在しており、通常のプラズマ溶射では、直流または高周波を用いている。この場合、プラズマは高温状態にあるがゆえに、プラズマガスの下流に粉体(塗装原料)を導入しなければならず、その場合粉体の導入効率が悪いため、塗装の効率が低下してしまうという問題が存在する。この問題を防ぐためには、プラズマ自体を低温化する必要がある。プラズマを低温化できれば、プラズマノズル近傍に粉体を導入することができ、塗装原料の使用効率を格段に向上することができる。これに着目した本発明者らは、上記のように、印加電圧を直流パルスにし、プラズマ中のイオンエネルギを下げることで低温プラズマを発生させること(いわゆる「大気圧プラズマ」を発生させること)を本発明の実施において提案する。
詳細には、パルス印加時間を長くし、オフ時間を短くすると、ガスを電離して流れる電子のエネルギが、どんどん質量を持つイオンや分子と衝突しエネルギを授受することで、どんどん温度が上がり、1万℃から2万℃のプラズマ温度になる。このプラズマは平衡プラズマといい、通常世の中に出回っているプラズマ溶射装置はこの原理を用いている。一方、パルス印加時間を短くし、パルス時間を短くし、オフ時間を長くすると、電子のみエネルギが高く、イオンはエネルギが低い状態、すなわち非平衡プラズマが発生し、低温となる。この場合のプラズマの温度は、通常、5百℃以下となる。かかる低温プラズマは、通常、表面改質処理などに使用可能である。
本発明は、温度をある一定の範囲内に保つことができれば、高効率でプラズマ塗装ができることを狙っているので、プラズマ塗装時、上記のようにパルスの変調によって温度を制御することを提案する。具体的には、下記の実施例で採用しているように、5μsecのパルス幅、無印加時間20μsecのパルスで、3000℃以下のプラズマ温度が達成でき、この温度であれば、樹脂が溶融するには十分で、本来の樹脂物性が失われる樹脂分解前に被着体に到達するので、安定的にかつ高効率でプラズマ塗装を実行することができる。
次いで、それぞれのプラズマ処理工程について、さらに具体的に説明する。
表面改質処理工程は、上記した通り、表面処理用ガスを使用して発生させた第1のプラズマを、プラズマノズルから被着体に向けてプラズマ流として噴射させることで、被着体の表面を改質処理する工程である。この工程は、基本的に、従来一般的に行われている表面改質処理工程に準じて実施することができるが、表面改質処理工程は、被着体の構成材料(樹脂又は金属)に応じて処理条件を変更することが好ましい。例えば、被着体が樹脂からなる場合、プラズマ温度は樹脂の熱分解温度以下であることが望ましい。また熱分解しないまでも溶融温度に近づくと変形するため、できる限り低温であることが望ましい。具体的には、プラズマ温度は、80℃以下が望ましい。また、ガス種であるが、これは、酸化雰囲気が望ましい。表面処理用のプラズマ生成ガスとして、酸素(O)や、水(HO)、空気が望ましい。また、かかるプラズマ生成ガスは、ガス単体でもよいが、アルゴン(Ar)や窒素(N)、ヘリウム(He)などのプラズマの電離を促進するガスと混合してプラズマノズルに供給してもよい。アルゴンと水素の混合ガスをプラズマ生成ガスとして使用してもよい。ガス流量及びガス組成配分は、プラズマ条件、被着体などのファクタに応じて調整することができる。
被着体が金属からなる場合、適用し得る表面改質処理には二つがあるので、任意に使い分けることができる。例えば表面上の有機汚染物を除去する場合は、酸化雰囲気下で表面処理を行うことができ、一方、活性面を得る場合は、還元雰囲気下で表面処理を行うことができる。
酸化雰囲気下で表面処理を行う場合、被着体に溶融、変形、変色などの熱的ダメージを与えなければ、高温のプラズマ温度を適用してもかまわない。ガス種は、酸素や、水、空気が望ましい。また、かかるプラズマ生成ガスは、ガス単体でもよいが、アルゴンや窒素、ヘリウムなどのプラズマの電離を促進するガスと混合してプラズマノズルに供給してもよい。アルゴンと水素の混合ガスをプラズマ生成ガスとして使用してもよい。ガス流量及びガス組成配分は、プラズマ条件、被着体などのファクタに応じて調整することができる。
還元雰囲気下で表面処理を行う場合、被着体に溶融、変形、変色などの熱的ダメージを与えなければ、高温のプラズマ温度を適用してもかまわない。ガス種は、水素(H)が望ましい。アルゴンと水素の混合ガスをプラズマ生成ガスとして使用してもよい。ガス流量及びガス組成配分は、プラズマ条件、被着体などのファクタに応じて調整することができる。
プラズマ溶射工程は、上記した通り、表面改質処理工程に続けて、必要に応じて、被着体の予備加熱工程の後、皮膜形成用ガスを使用して発生させた第2のプラズマを、プラズマノズルから被着体に向けてプラズマ流として噴射させる間に、プラズマ流に皮膜形成性樹脂を連続的に投入することで、樹脂をプラズマ溶射し、溶融した樹脂を被着体の表面に被着して樹脂皮膜を形成する工程である。この工程は、基本的に、従来一般的に行われているプラズマ溶射工程に準じて実施することができるが、本発明の場合、塗装に用いる樹脂粉体の溶融温度及び硬化温度、被着体の耐熱性に応じてプラズマ温度を決定する。プラズマ温度は、塗装粉体の溶融温度より高温であることが必須であるが、粉体が被着体に到達するまでの間に、熱分解温度までに達しないようプラズマ温度は調整されるべきである。具体的には、プラズマ温度は、3000℃以下であることが望ましい。ガス種は、不活性であるアルゴンが望ましい。必要に応じて、アルゴンガス、アルゴンとヘリウムの混合ガス、アルゴンと酸素の混合ガスなどをプラズマ生成ガスとして使用してもよい。プラズマ溶射工程において、プラズマ溶射に供される樹脂粉体及び塗装対象物である被着体は、それぞれ、前記した通りである。
プラズマ溶射工程において、プラズマ流に対して皮膜形成性樹脂を連続的に投入するが、これは、通常、原料フィーダーに接続された樹脂供給ポートを介して行われる。プラズマ流に対する樹脂の投入位置及び投入角度は、樹脂供給ポートを使用して、任意の実施することができる。例えば、樹脂供給ポートの方向は、プラズマ流に対して直角でも、斜めでも、平行でもよく、狙った量の樹脂が狙った温度履歴(熱量)を経て、被着体に溶融状態で供給されれば目的を達成できたこととなる。樹脂供給ポートの位置も、狙った温度履歴(溶融するだけの熱量が得られ、樹脂が分解まで至らない熱量)になるように設定すればよい。例えば、プラズマノズルの先端から約3mmの位置に樹脂供給ポートの先端を配置してもよい。なお、必要に応じて、プラズマガンの内部、特にノズルの部分において(プラズマ流がノズルポートから噴射される前に)、プラズマ流に樹脂を投入可能な構成を採用してもよい。
予備加熱工程は、必要に応じて、表面改質処理工程とプラズマ溶射工程の間で実施される、予備加熱用ガスを使用して発生させた第3のプラズマを、プラズマノズルから被着体に向けてプラズマ流として噴射させることにより被着体を加熱する工程である。この工程では、塗装に用いる樹脂粉体の溶融温度及び硬化温度、被着体の耐熱性に応じてプラズマ温度を決定する。例えば、被着体が樹脂であれば、樹脂の熱分解温度、融点・軟化点、もしくは変形しない温度以下をプラズマ温度とすることができる。被着体が金属であれば、被着体が熱的ダメージを受ける温度以下をプラズマ温度とすることができる。ただし、プラズマ温度としては、塗装粉体の溶融温度の近傍の温度で、できれば溶融温度の50%以上の温度が望ましい。このことから、プラズマ温度は、約100〜3000℃の範囲で調整されることが望ましい。ガス種は、不活性であるアルゴンや、アルゴンと窒素の混合ガスなどが望ましいが、被着体が目標となる温度になるのであれば、かかるガス種に限定されるものではない。
プラズマ塗装装置は、上述のようなプラズマ塗装方法を実施するための装置で、設備の主な構成要素として、被着体を搬送する搬送系、表面処理や予備加熱、塗装(プラズマ溶射)を施す、プラズマノズルを備えたプラズマガン、プラズマ放電を行うためのガス供給系と電源、ガス供給系と電源などの制御を行う制御系、プラズマノズルの冷却を行う冷却水循環系、そして皮膜形成性樹脂の粉体原料を輸送する原料フィーダーを挙げることができる。本発明のプラズマ塗装装置は、必要に応じて、この分野で一般的に採用されているその他の構成要素を追加的に含んでいてもよい。プラズマノズルには、電圧を印加するための電源が、電気的配線を介して接続されている。プラズマノズルにはまた、プラズマ放電を行うガスのためのガス配管も接続されている。ノズル内部は、ガスの流路を挟んで対向する2つの電極(陽極及び陰極)が配置されており、これらの電極に電圧が印加され、ガスを電離することで、プラズマを発生させることができる。
好ましいプラズマ塗装装置の典型例は、図1に示す通りである。すなわち、プラズマ塗装装置20は、主な構成要素として、プラズマ生成ガスのためのガス供給源7と、電極間距離を調整可能な陽極13及び陰極15、陽極13及び陰極15間に電圧を印加する電源5、及びガス供給源7からプラズマ生成ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することで生成したプラズマを被着体1に向けてプラズマ流Pとして噴射させるプラズマノズル11を含むプラズマガン10と、噴射前あるいは噴射後のプラズマ流Pに投入されるべき、樹脂皮膜2を形成するための皮膜形成性樹脂を収容した原料フィーダー4と、原料フィーダー4に接続され、かつプラズマノズル11の内部あるいは出口の近傍に配置された、皮膜形成性樹脂をプラズマ流Pに連続的に投入する樹脂供給ポート14と、被着体1を搬送する搬送系(コンベヤベルト等)3とを含んでいる。このプラズマ塗装装置20において、プラズマガン10は一基であり、プラズマノズル11からは、表面処理用プラズマ生成ガスに由来する第1のプラズマと、皮膜形成用プラズマ生成ガスに由来する第2のプラズマとが、プラズマ照射を遮断することなく順次連続的に噴射可能である。なお、プラズマガンの好ましい構成は、図2を参照して以下で詳細に説明する。
次いで、図1に示したプラズマ塗装装置20を参照して、本発明の塗装方法のうちプラズマ溶射工程を具体的に説明する。プラズマ塗装装置20において、プラズマガン10は一基であり、そのプラズマノズル(図示せず)からは、表面処理用プラズマ生成ガスに由来する第1のプラズマと、皮膜形成用プラズマ生成ガスに由来する第2のプラズマと、予備加熱用プラズマ生成ガスに由来する第3のプラズマも、プラズマ照射を遮断することなく順次連続的に噴射可能である。すなわち、本塗装装置では、前段の表面改質処理工程及び予備加熱工程も、このプラズマ溶射工程に準じて実施することができるので、ここでの詳細な説明を省略する。
表面に樹脂皮膜を形成されるべき複数個の被着体1は、搬送系3(図ではコンベヤベルト)に載置されて、矢印方向に連続的に搬送される。プラズマ塗装領域では、被着体1の上方の位置にプラズマガン10が配置され、その先端のノズルポート(図示せず)からはプラズマ流Pが連続して噴射されている。プラズマ流Pは、プラズマガン10内で生成されるもので、その生成には、プラズマ生成ガスのためのガス供給源7と、電極間距離を調整可能な陽極13及び陰極15と、陽極13及び陰極15間に電圧を印加する電源5とが関与し、プラズマガン10内で、ガス供給源7からプラズマ生成ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することでプラズマを生成することができる。プラズマガン10の先端から噴射されるプラズマ流Pには、ノズルポートの近傍に先端が配置された樹脂供給ポート14から皮膜形成性樹脂が投入される。皮膜形成性樹脂は、樹脂供給ポート14に接続された原料配管を介して原料フィーダー4から供給される。皮膜形成性樹脂の輸送には搬送気体が併用され、また、原料フィーダー4の制御(オン、オフ)には制御系8が使用される。なお、制御系8は、電源5、チラー6及びガス供給源7にも接続されていて、電源5の電流及び電圧の制御、チラー6からプラズマガン10に循環される冷却水の制御(オン、オフ)、供給されるプラズマ生成ガス(Ar、He、N等)の供給の制御(オン、オフ)や流量制御を行うことができる。なお、図示しないが、ガス供給源7には、ガスバルブ、MFC(マスフローコントローラ)などが備わっている。
プラズマ溶射時、プラズマガン10のプラズマノズルから搬送中の被着体1に向けて噴射された高温度のプラズマ流Pに、樹脂供給ポート14から皮膜形成性樹脂が連続的に投入される。その結果、プラズマ流P内で皮膜形成性樹脂が溶融された後、溶融した樹脂が被着体1の表面に吹き付けられ、樹脂皮膜2が均一な膜厚で形成される。1つの被着体1について樹脂皮膜2の形成が完了した後、後段の被着体1がプラズマ塗装領域に搬送されてくる。この被着体1についても、プラズマ生成ガスを切り替えることで、表面改質処理、予備加熱、そしてプラズマ溶射の各処理工程が、プラズマ照射を遮断することなく連続的に実施される。
図2は、図1のプラズマ塗装装置20で有利に使用可能なプラズマガン10の典型例を示したものである。プラズマガン10は、上記した通り、表面改質処理工程、予備加熱工程及びプラズマ溶射工程において共通して使用することができる。プラズマガン10は、電極間距離を調整可能な陽極13及び陰極15と、プラズマを被着体(図示せず)に向けてプラズマ流Pとして噴射させるプラズマノズル11とを含んでいる。陽極13及び陰極15間には、電源(図示せず)を介して電圧を印加できる。また、プラズマ流Pは、ガス供給源(図示せず)からガス供給管24を介してプラズマガン10にプラズマ生成ガスGを供給しながら電極間に電圧を印加することで生成したプラズマに由来する。
プラズマガン10の構成をさらに詳しく説明すると、プラズマノズル11は、銅、真鍮、ステンレス鋼(SUS)などの金属材料からできていて、その前方中央部に位置するポートから、プラズマ流Pを噴射可能である。プラズマ流Pは、プラズマガスが電離しながらガス流として放出されるものである。図では、ノズルポートの至近位置(例えば、約3mm)にノズルポートに直角に、原料フィーダーからの配管に接続された樹脂供給ポート14が配置されている。この樹脂供給ポート14から皮膜形成性樹脂が矢印で示すように投入され、プラズマ流Pに同伴する。プラズマノズル11の外周は、電気的な保護を行うため、例えばPP(ポリプロピレン)樹脂等の樹脂製のカバー12で覆われている。
陽極13及び陰極15は、図中矢印Dで示されるように、電極間距離を調整可能な状態で配置されている。陰極13は、例えば、銅、真鍮、ステンレス鋼などの金属材料から形成することができる。陰極13には電源線21が接続されている。陽極15は、例えば、タングステン、トリウムタングステン、セリウムタングステンなどの金属材料から形成することができる。陽極15には電源線222が接続されている。陽極13と陰極15の電位を絶縁するため、例えば窒化ケイ素(SiN)、絶縁性樹脂などの絶縁体から絶縁スリーブ16が形成されている。電極間距離の調整には、慣用の調整技術を使用することができ、図ではサーボモータ17が使用されている。電極間距離Dは、通常、約0.2〜2mmの範囲で可変であり、例えば表面改質処理時には、通常、約0.2〜0.6mmの範囲で可変であり、また、予備加熱時やプラズマ溶射時には、通常、約0.5〜2mmの範囲で可変である。
冷却水Wは、ノズルのボディや電極などを冷却するためのものであり、チラー(図示せず)に接続された配管23で供給され、プラズマガン10内を循環可能である。また、ガスGは、プラズマ生成ガスを指し、ガス供給源(図示せず)に接続された例えばステンレス鋼製のガス配管24及び25を介してプラズマガン10内のプラズマ生成空間に供給される。
樹脂供給ポート14は、プラズマノズル11の内部あるいは出口の近傍に配置して、皮膜形成性樹脂をプラズマ流Pに連続的に投入するために使用することができる。例えば、樹脂供給ポート14をプラズマノズル11のノズルポートの出口近傍に配置するときは、図2に示して上記したように、ノズルポートに直角に配置すること以外に、ノズルポートに平行あるいは斜めに任意の傾斜角で配置してもよく、さらには1本の樹脂供給ポート14に代えて2本以上の樹脂供給ポート14を使用してもよい。一例を示すと、図3は、ノズルポートに斜めに1本の樹脂供給ポート14を配置して、プラズマ流Pに対して非平行に皮膜形成性樹脂を投入する例である。図4は、1本の樹脂供給ポート14に代えて2本以上の樹脂供給ポート14を対向して、ノズルポートに直角に配置した例である。
本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
実施例1
本例では、図1及び図2に示したプラズマ塗装装置で、かつ下記の第1表に記載の処理条件で、樹脂製被着体の表面にプラズマ塗装を施した例について説明する。
プラズマノズルにアルゴン(Ar)+酸素(O;20%)の混合ガスを10slmで導入し、電極間に電圧を印加してプラズマを放電させた。電圧は1.5kVの矩形パルスで、印加時間は1μsec、オフ時間は20μsecであった。その後、ポリプロピレン(PP)樹脂製の被着体をプラズマの下部に移動させ、被着体の表面改質処理を行った。この処理の結果、被着体の表面が酸化され、ダングリングボンド(未結合手)が形成された。このときのプラズマ温度は、100℃以下であった。
次いで、プラズマ溶射(塗装)工程に移行するため、プラズマノズルに導入するガスを、混合ガスからArガスに変更し、ガス流量の10slmと電圧の1.5kVはそのままに、オフ時間を5μsecに変更した。プラズマ温度は出口付近で3000℃程度となるため、ノズル及び電極の近傍に冷却水を流して電極を冷却した。放電した熱プラズマに皮膜原料であるエポキシ樹脂の粉体(本例では、静電塗装用粉体を使用)を50g/minの投入量で導入した。プラズマ内部でエポキシ樹脂が溶融し、プラズマジェットに伴って噴射され、被着体の表面に均一なエポキシ樹脂皮膜が形成された。
本例では、プラズマの下部に移動させた被着体を停止させ、固定状態でプラズマ溶射を行った。しかしながら、皮膜の均一性を向上させるため、被着体を回転させながらプラズマ溶射を行うことなど、任意の変更を伴ってもよい。また、本例では、電圧のオフ時間によってプラズマ温度を自由に制御することができるので、被着体の構成材料に応じてプラズマ温度を任意に設定することができる。また、放電電圧は、プラズマノズルの設計によって適正な電圧を設定することができるので、プラズマ温度が所望のレベルとなるようにプラズマノズルや放電電圧を調整することができる。
Figure 2014036918
実施例2
本例では、図1及び図2に示したプラズマ塗装装置で、かつ下記の第2表に記載の処理条件で、金属製被着体の表面にプラズマ塗装を施した例について説明する。本例では、前記実施例1に記載の手法を繰返したけれども、PP樹脂製被着体に代えて金属(鉄)製被着体を使用し、かつ表面改質処理工程とプラズマ溶射(塗装)工程の間に予備加熱工程を介在させた。
プラズマノズルにアルゴン(Ar)+水素(H;30%)の混合ガスを10slmで導入し、電極間に電圧を印加してプラズマを放電させた。電圧は1.5kVの矩形パルスで、印加時間は1μsec、オフ時間は20μsecであった。その後、鉄製被着体をプラズマの下部に移動させ、被着体の表面改質処理を行った。この処理の結果、金属表面が還元され、活性な被着体表面が形成された。なお、処理前の被着体表面に油脂分などが付着しているときには、この表面改質処理に先がけて、酸素を含んだプラズマを被着体の表面に噴射することで、清浄な状態を形成することができる。
表面改質処理の完了後、塗装の濡れ性を上げるため、上記した表面改質処理に準じて、下記の第2表に記載の処理条件下で被着体の予備加熱処理を行った。使用したプラズマは、表面改質処理において使用したものに同じであり、温度を上げた状態で処理を行い、被着体の表面が所望の温度レベルに達するまでプラズマを照射した。
次いで、前記実施例1に記載の手法に準じて、下記の第2表に記載の処理条件下で被着体のプラズマ溶射処理を行った。プラズマノズルに導入するガスを、混合ガスからArガスに変更し、ガス流量の10slmと電圧の1.5kVはそのままに、オフ時間を5μsecに変更した。放電した熱プラズマに静電塗装用エポキシ樹脂粉体を50g/minの投入量で導入した。プラズマ内部でエポキシ樹脂が溶融し、プラズマジェットに伴って噴射され、被着体の表面に均一なエポキシ樹脂皮膜が形成された。
Figure 2014036918
本発明の塗装方法及び塗装装置は、上述のような多くのメリットを生かして、構成材料や形状に限定されることなく、被着体としての多種多様な物品の塗装に利用することができる。塗装することのできる物品の一例を挙げると、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれど、機械部品、電気部品、自動車部品、建築部品、家庭用品などを挙げることができ、とりわけ有利なものとして、自動車部品、例えばボデーやエンジン、ラジエータなどを挙げることができる。
1 被着体
2 樹脂皮膜
3 コンベヤベルト
4 原料フィーダー
5 電源
6 チラー
7 ガス供給源
8 制御系
10 プラズマガン
11 ノズル
12 カバー
13 陽極
14 樹脂供給ポート
15 陰極
16 絶縁スリーブ
17 サーボモータ
20 プラズマ塗装装置

Claims (10)

  1. プラズマノズルを備えたプラズマガンを使用して、被着体の表面に樹脂皮膜を形成するプラズマ塗装方法において、
    表面処理用ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することで発生させた第1のプラズマを、前記プラズマノズルから前記被着体に向けてプラズマ流として噴射させることで、前記被着体の表面を改質処理する表面改質処理工程と、
    前記表面改質処理工程の完了後、皮膜形成用ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することで発生させた第2のプラズマを、前記プラズマノズルから前記被着体に向けてプラズマ流として噴射させる間に、前記プラズマ流に皮膜形成性樹脂を連続的に供給することで、前記樹脂をプラズマ溶射し、溶融した前記樹脂を前記被着体の表面に被着して前記樹脂皮膜を形成するプラズマ溶射工程と
    を含んでなることを特徴とするプラズマ塗装方法。
  2. 前記表面改質処理工程及び前記プラズマ溶射工程を同一の前記プラズマガンを使用して実施する、請求項1に記載のプラズマ塗装方法。
  3. 前記表面改質処理工程から前記プラズマ溶射工程までの一連の工程を、前記プラズマノズルからの前記プラズマ流の照射を遮断することなく連続的に実施する、請求項1又は2に記載のプラズマ塗装方法。
  4. 前記表面改質処理工程と前記プラズマ溶射工程の間に、予備加熱用ガスを供給しながら電極間に電圧を印加することで発生させた第3のプラズマを、前記プラズマノズルから前記被着体に向けてプラズマ流として噴射させることにより前記被着体を加熱する予備加熱工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ塗装方法。
  5. 前記表面改質処理工程及び前記プラズマ溶射工程を同一の前記プラズマガンを使用して実施するとき、前記表面改質処理工程及び前記プラズマ溶射工程において、前記同一のプラズマガンにおける陽極と陰極の間の電極間距離を変更することで、前記それぞれの工程において要求されたプラズマ処理条件を満足させる、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプラズマ塗装方法。
  6. 前記表面改質処理工程及び前記プラズマ溶射工程を同一の前記プラズマガンを使用して実施するとき、前記プラズマガンに導入されるプラズマ生成のためのガスを前記それぞれの工程において要求されたガスに切り替える、請求項2〜5のいずれか1項に記載のプラズマ塗装方法。
  7. 前記表面処理用ガスは、アルゴンと水素の混合ガスであり、前記予備加熱用ガスは、アルゴンガス又はアルゴンと窒素の混合ガスであり、かつ前記皮膜形成用ガスは、アルゴンガス、アルゴンとヘリウムの混合ガス又はアルゴンと酸素の混合ガスである、請求項4〜6のいずれか1項に記載のプラズマ塗装方法。
  8. 電極間に電圧を印加することでプラズマを発生させるとき、3000℃以下の低温下、直流のパルス波形を印加する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラズマ塗装方法。
  9. 前記表面改質処理工程、前記予備加熱工程及び前記プラズマ溶射工程において、それぞれ、波形を異にする直流のパルス波形を印加する、請求項4〜7のいずれか1項に記載のプラズマ塗装方法。
  10. 被着体の表面に樹脂皮膜を形成するプラズマ塗装装置において、
    プラズマ生成ガスのためのガス供給源と、
    電極間距離を調整可能な陽極及び陰極、前記電極間に電圧を印加する電源、及び前記ガス供給源から前記プラズマ生成ガスを供給しながら前記電極間に電圧を印加することで生成したプラズマを前記被着体に向けてプラズマ流として噴射させるプラズマノズルを含むプラズマガンと、
    前記プラズマノズルの内部あるいは出口の近傍に配置された、噴射前あるいは噴射後の前記プラズマ流に前記樹脂皮膜を形成するための皮膜形成性樹脂を連続的に供給する樹脂供給ポートと
    を含んでなり、
    前記プラズマガンは一基であり、前記プラズマノズルからは、表面処理用プラズマ生成ガスに由来する第1のプラズマと、皮膜形成用プラズマ生成ガスに由来する第2のプラズマとが、プラズマ照射を遮断することなく順次連続的に噴射されることを特徴とするプラズマ塗装装置。
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