JP2014034834A - 免震装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】低降伏点鋼を使うと、他の材料を使ったものよりも格段に大きな減衰性能を有する免震装置を実現できる。
しかしながら、その免震装置を橋に使おうとすると、低降伏点鋼の大きい残留変形が妨げとなり、橋脚が弾性範囲内にあっても、地震前の位置に戻れなくなる。
そこで、低降伏点鋼の残留変形をキャンセルできるダンパー装置を、低降伏点鋼の変形方向に、低降伏点鋼に直列的に設けることで、橋脚が低降伏点鋼の残留変形に影響されず、地震前の位置に戻れるようにした。
【選択図】 図2
Description
なお、このような免震装置は、耐震補強工事だけでなく、新しく設計・施工される橋梁についても利用することができる。
しかしながら、上記従来装置を免震装置として用いた場合、せん断パネルは、せん断変形が大きいとせん断座屈するので残留変位が大きくなる。したがって、せん断パネルの設計では、せん断変形を制限しているので、低降伏点鋼のエネルギー吸収能力を十分に発揮できていない。
また、前記ダンパー装置は、バネ、オイルダンパー、弾性ダンパー、粘性ダンパー、あるいは、粘弾性ダンパーのいずれか1つを衝撃吸収手段として用いたものである。
〔実施例〕
図1は、本発明の一実施例にかかる橋梁(連続橋;単に「橋」ともいう。以下同じ)の構成の概略を示す概略正面図である。
図1において、橋梁の上部構造としての橋桁1は、その橋軸方向の端部が橋台2,3に取り付けられており、橋桁1の中央部は、所定の間隔を離して設けられた2つの橋脚4,5により支持されている。ここに、橋台2,3及び橋脚4,5が、この橋梁の下部構造を構成する。
ここで、支承装置6,7としては、積層ゴム支承や免震ゴム支承などのアイソレーター、あるいは、鋼製支承(鋳物支承)などを用いることができる。
また、低降伏点鋼としては、例えば、LYP235という鋼材を用いることができる。あるいは、極低降伏点鋼としては、例えば、LYP100という鋼材を用いることができる。
オイルダンパー装置11は、オイルが満たされたケース11bの内部を仕切るピストン11cと、このピストン11cに往復方向の力を作用するロッド11aと、ピストン11cをその厚さ方向に貫通する態様に穿設されたオリフィス(小孔)11dからなる。
また、ピストン11cがケース11b内を移動するストロークの中央に位置する状態が、オイルダンパー装置11の初期状態である。また、オリフィス11dにより、ピストン11cで仕切られたケース11bの左側の部屋11eと右側の部屋11fとが連通されている。
この低降伏点鋼ユニット10’は、鋼材SS1の略中央と、低降伏点鋼LY1,LY2のパラペット3b側の端部とをそれぞれ結ぶ直線に沿って設けた補強用の低降伏点鋼LY5,LY6を備えている。
まず、免震装置9の初期状態は、図5(a)に示すような状態であり、この状態で、橋に地震動が作用していない場合、例えば、橋桁1の上を通行する車両や人、あるいは、この橋に作用する風などにより引き起こされる橋軸方向の振動のうち、揺れ(振動)が最も大きくなるこの橋の固有周期に一致する振動(「共振振動」という)は、免震装置9のオイルダンパー装置11,12や支承装置6,7などによりその振動エネルギーの一部が吸収される。したがって、免震装置9は、この橋を使用する際の妨げとはならない。
まず、この橋に作用した地震動のうち、揺れ(振幅)が最も大きくなるこの橋の固有周期に一致する地震動(共振振動)の慣性力により、図5(a)の状態から、図5(b)に示すように、橋桁1が右方向に移動した場合、オイルダンパー装置11のロッド11aが本体内を左方向に移動するとともに、支承装置7が変形する(支承装置7が積層ゴム支承や免震ゴム支承の場合)。
ここで、このときこの橋に作用した地震動により、橋桁1が最も右方向に移動しようとした際に、橋軸方向に変位量LAだけ低降伏点鋼LY1が変位(圧縮)したとする(図6(b)参照)。
ここで、このときにこの橋に作用した地震動により、橋桁1が最も左方向に移動しようとした際に、橋軸方向に変位量LBだけ低降伏点鋼LY1が変位(伸長)したとする(図9(b)参照)。
hB:低降伏点鋼の等価減衰定数
W:低降伏点鋼の弾性エネルギーで、図11に破線で示す2つの三角形の面積の総和(kN・m)
ΔW:低降伏点鋼が吸収するエネルギーの合計で、図11に示す水平変位と水平荷重との関係を表す履歴曲線HLの面積(kN・m)
ここで、図11から、
(ΔW/W)≒3.5
であるので、式(I)より、
hB=0.557
となり、低降伏点鋼(LY1〜LY4)を用いる免震装置9を使うことで、等価減衰定数を約56%にすることができ、地震動による振動エネルギーを大幅に吸収できるので、地震動による慣性力を1/2以下にすることができる。
そこで、免震装置9による地震動の振幅の低減の効果について、加速度応答スペクトル倍率の観点から考えてみる。例えば、示方書(1980年)に基づき、減衰定数h毎の絶対最大加速度応答スペクトル倍率βと固有周期T(秒)の関係の一例をグラフ(図12参照)にすると、h=0.4の場合、固有周期1秒での応答スペクトル倍率βの値は約0.3である。この免震装置9で用いる低降伏点鋼(LY1〜LY4)では、hB=0.557なので、応答スペクトル倍率βの値はより小さくなるものと評価することができる(例えば、0.2程度)。したがって、免震装置9を用いることにより、地震動による橋桁1の揺れが非常に小さくなると予想できる。
地震動終了後に残る免震装置9に用いた低降伏点鋼LY1,LY2,LY3,LY4の残留変形はオイルダンパー装置11,12により解消できるので、弾性範囲内にある橋脚及び支承は地震発生前の状態に戻る。つまり、残留変位は発生しない。
その結果、地震発生時、地震動が始まってから収束するまでの間や地震動が収束した後であっても、適切に橋を利用することができ、橋の可用性を高めることができる。
また、図1に示した実施例の場合は、免震装置8,9の大部分が橋桁1の内部に収容されているので、耐久性及び景観性にも優れている。
このように、この実施例の場合も、免震装置8,9は、橋梁の上部構造としての橋桁1に設けた取付部21,22と、橋梁の下部構造としての橋台2,3の柱部との間に設けられている。
この実施例の免震装置8,9の作用は、上述した実施例と同様なので、その説明は省略する。
例えば、レベル2地震動の収束後に、上述したように残留変位で変形している免震装置8,9の低降伏点鋼ユニット10を交換する作業を行う場合に、作業性が良好である。また、オイルダンパー装置11,12にオイルの経年変化(劣化)を生じ、定期的に交換する必要がある場合に、そのオイルダンパー装置11,12又はオイルダンパー装置11,12に使用しているオイルの交換や補充作業を行う際の作業性が良好である。
また、耐震補強工事として施工する場合、橋桁1の底面に取付部を追加することで、免震装置を橋台に取り付けることができるので、耐震補強工事の内容が簡素であり、工期が短くてすむ。
この実施例において、橋台2,3及び橋脚4,5の上端部には、アイソレーター(積層ゴム支承又は免震支承)SS1,SS2,SS3,SS4がおのおの設けられており、そのアイソレーターSS1,SS2,SS3,SS4を介して、橋桁1は、橋台2,3及び橋脚4,5に支持されている。
ここで、免震装置MM1〜MM6は、免震装置8,9と同様の構成を有するものであり、それらの説明については省略する。
また、示方書では、高橋脚橋梁については、効果を見込めないために免震支承を用いないこととされているが、本発明にかかる免震装置は、大きな免震効果を有するので、このような高橋脚橋梁についても、適用することができる。そして、図1,13,1c,16に示した各実施例は、いずれも高橋脚橋梁に本発明にかかる免震装置を適用したものである。なお、高橋脚橋梁以外の橋梁についても、当然のことながら、本発明にかかる免震装置を適用することができる。
(1) 道路橋示方書では、レベル2地震動に対しては、橋脚の塑性化を許すことにより、地震動のエネルギーを吸収することになっている。そのため、橋脚の塑性化による損傷は免れない。そこで、本装置を用いると、地震動のエネルギー吸収は本装置で行われるため、橋脚の塑性化領域をなくし、弾性状態に保つことができる。または、塑性化領域を極めて小さくできる。
(2) 本装置を用いると道路橋示方書で規定された許容塑性率に余裕ができるため、同示方書で想定したよりも大きい想定外の地震動に対しても保有耐力を有する。
また、本装置を用いて許容塑性率を許容値まで使うと、橋脚断面を小さくできるので、経済的な橋梁設計を行うことができる。
(3) 従来この種の減衰装置は、残留変形が大きいため、地震動終了後の構造物の残留変位が大きく、構造物の機能性に問題が生じ、適用されなかった。例えば、道路橋示方書では残留変位は概ね橋脚高さの1/100以内とされている。本装置では弾性ダンパー(オイルダンパー装置)を併用することで、構造物の復元力を利用して、残留変位を極めて小さくできる。
(4) 弾性ダンパーにはオイルダンパーや粘性ダンパー等があるが、劣化等の耐久性に問題があり、定期的に維持管理が必要なため、あまり適用されなかった。本装置では弾性ダンパーは主として地震動の作用直後の衝撃吸収と低降伏点鋼の残留変形吸収に用いられるため、弾性ダンパーの劣化は本装置の減衰特性に影響を及ぼさない。
(5) 本装置を既設の橋梁の耐震補強に使用する場合は、橋梁に作用する地震動による慣性力を半分以下にできるため、橋脚の補強や基礎の補強が著しく低減できる。
(6) レベル2クラスの地震の発生後、橋梁本体は軽微な損傷なので、即時供用可能である。後日、本装置の低降伏点鋼の残留変形が大きい場合はそれを取り換えるだけで済む。
(7) 平成24年7月19日付け、読売新聞の朝刊の記事にて、緊急輸送道路では道路橋の耐震補強が十分には進んでいないことが報道された。本装置を適用すれば、この緊急輸送道路について、新道路橋示方書を満足する耐震補強が可能である。
1c 端横桁
2,3 橋台
2b,3b パラペット
4,5 橋脚
6,7 アイソレータ
8,9,MM1〜MM6 免震装置
10 低降伏点鋼ユニット
11,12 オイルダンパー装置
11a,12a ロッド
11b、12b ケース
13,14,16,17 取付部材
21,22,BL1〜BL5 取付部
ST 固定支承
MV1〜MV3 可動支承
Claims (2)
- 橋の上部構造と下部構造との間に位置させる免震装置であって、
その変形方向が橋軸方向と平行にされた低降伏点鋼からなる塑性変形部材と、
前記塑性変形部材の変形方向に、該塑性変形部材に直列的に設けたダンパー装置とを備え、
前記ダンパー装置は、そのストローク可能範囲の中央位置を初期状態とすることを特徴とする免震装置。 - 前記ダンパー装置は、バネ、オイルダンパー、弾性ダンパー、粘性ダンパー、あるいは、粘弾性ダンパーのいずれか1つを衝撃吸収手段として用いたものであることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
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