JP2014033665A - ブリ細菌性溶血性黄疸の病原体抗原ポリペプチド、及びこれを含む水産用ワクチン - Google Patents

ブリ細菌性溶血性黄疸の病原体抗原ポリペプチド、及びこれを含む水産用ワクチン Download PDF

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Abstract

【課題】ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対して高いワクチン活性を有する抗原ポリペプチドを同定し、該抗原ポリペプチドを利用したブリの細菌性溶血性黄疸に対するサブユニットワクチンを提供すること。
【解決手段】本発明は、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対して高いワクチン活性を有する4種類の抗原タンパク質を提供する。また、本発明はこれらの抗原タンパク質を含むブリの細菌性溶血性黄疸に対するワクチンを提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ブリ細菌性溶血性黄疸の病原体抗原ポリペプチド及びこれを含む水産用ワクチンに関する。更には、本発明は前記ポリペプチドや水産用ワクチンの製造に有用な、ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、該発現ベクターを含む形質転換体等に関する。
世界的な人口増加に伴う食糧不足を解決するため、魚介類水産資源の重要性が注目されており、魚介類の養殖生産量に対する需要は年々増加している。養殖生産による魚介類の安定供給を図るには、計画的な生産の支障となっている感染症被害を軽減する必要がある。感染症の対策として、これまで薬剤(抗生物質や合成抗菌剤)を用いた治療が行なわれてきたが、近年では「食の安心・安全」という観点から薬剤に代わりワクチンを用いた予防が主流となってきている。
現在日本で市販されている全ての水産用ワクチンは、化学処理によって不活化したウイルスや細菌を抗原とした不活化ワクチンである。不活化ワクチンの作製には、病原体を安価に大量に培養することが必須である。しかし、魚病細菌を含めた海洋微生物の多くは培養が困難であり、ワクチンの開発が進まない事例が多い。ブリの細菌性溶血性黄疸の病原体も難培養性細菌の一つであり、これまで多くの研究者が培養法の改良を試みてきたが、特殊で高価な培地を用いても極少量の増殖が見られるのみで、ワクチン開発の障壁となっている。
サブユニットワクチンは、病原体の感染防御抗原の遺伝子情報を元に作製した組換えタンパクを用いたワクチンで、病原体の培養の必要がない。しかし、水産分野では細菌病に応用された例はなく、世界的にも、ゲノムサイズの小さいIPNウイルスに対してのみ開発されているにすぎない。
ブリ養殖でも、問題となっている幾つかの感染症に対しては、開発されたワクチンが絶大な効果を示し、抗生剤などの医薬品の使用が抑えられるようになった。その反面、まだワクチンの開発されていない細菌性溶血性黄疸による被害が顕著になっている。本疾病は、西日本一帯の養殖ブリに広く発生し、出荷前の大型魚でも発生するため、経済的損失が大きい(2007 年推定被害額約4 億円)。また、感染魚は生残したとしても、ビリルビンの作用により長期間に渡って魚肉に苦みが付き、商品価値が落ちるため、本疾病の予防が重要になる。以上の点からブリの細菌性溶血性黄疸に対するワクチン開発がメーカーや業者から強く望まれている。
ブリの細菌性溶血性黄疸の病原体は既に分離・培養されている(非特許文献1、2)。ブリの細菌性溶血性黄疸の原因細菌のドラフトゲノム解析がなされたとの報告があるが(非特許文献3)、配列情報については何ら開示されていない。養殖ブリ細菌性溶血性黄疸原因菌の感染防御抗原遺伝子を発現クローニングにより探索した結果、感染耐過ブリから得られた抗血清と反応する、分子量40〜60kDaのタンパク質が検出されたことが報告されている(非特許文献4)。ブリ細菌性溶血性黄疸原因菌に対するマウス抗体を用いた免疫学的スクリーニングにより、新規主要抗原遺伝子として、3種類(possible T4-like proximal tail fiber, phosphodiesterase, DNA topoisomerase IV subunit B)の配列をコードするクローンが得られたことが報告されている(非特許文献5)。
魚病研究(1993年)28巻3号:119−124頁 魚病研究(1994年)29巻1号:25−28頁 「ブリの細菌性溶血性黄疸の原因細菌のドラフトゲノム解析」日本魚病学会(2011年3月26日)要旨集:17頁 「養殖ブリ細菌性溶血性黄疸原因菌の感染防御抗原遺伝子の探索」日本水産学会(2011年3月27日)要旨集:158頁 「ブリ細菌性溶血性黄疸原因菌の新規主要抗原遺伝子の同定」日本水産学会(2012年3月26日)要旨集:141頁
本発明は、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対して高いワクチン活性を有する抗原ポリペプチドを同定し、該抗原ポリペプチドを利用したブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するサブユニットワクチンを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的に鑑み、鋭意検討を行った。難培養性であるブリ細菌性溶血性黄疸の病原体については、これまでに遺伝子配列情報についてほとんど解析がされていない。そこでまず、本発明者らは、このブリ細菌性溶血性黄疸の病原体の全ゲノム解析を行い、約1500個ものタンパク質コード領域を決定した。次にこの中から、構造上菌体表面に存在する可能性が高いと推測された256種類の抗原を選択し、大腸菌を用いて組換えタンパク質を作製し、可溶性画分に発現した145種類を選択した。更に、これらの可溶性抗原の中で、細菌性溶血性黄疸を耐過したブリの抗血清と強力に反応した64種類の抗原をワクチン候補抗原として選定した。これらの抗原をブリに接種し、3週間後に細菌性溶血性黄疸の病原体で攻撃を行った結果、優れたワクチン効果を有する4種類の抗原を見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]以下の(1)〜(4)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含み、且つブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン活性を有するポリペプチド:
(1)配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列;
(2)配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列;
(3)配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列;及び
(4)10アミノ酸以上の長さを有する、上記(1)〜(3)から選択されるいずれかのアミノ酸配列の部分配列。
[2][1]記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
[3][2]記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[4][3]記載の発現ベクターで形質転換された形質転換体。
[5][1]記載のポリペプチドを特異的に認識する抗体。
[6][1]記載のポリペプチドを含む、組成物。
[7][1]記載のポリペプチドを含む、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン。
[8][1]記載のポリペプチドの有効量をブリ属魚類へ投与することを含む、当該ブリ属魚類における細菌性溶血性黄疸の予防方法。
[9][1]記載のポリペプチドの有効量をブリ属魚類へ投与すること、および当該ブリ属魚類を飼育することを含む、ブリ属魚類の養殖方法。
本発明により、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対して高いワクチン活性を有する抗原ポリペプチド、及び該抗原ポリペプチドを含むブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するサブユニットワクチンが提供される。
細菌性溶血性黄疸の病原体は難培養性であるため、これまでワクチンの開発が進まなかったが、本発明の抗原ポリペプチド及びワクチンは、遺伝子組換技術を用いることにより安価に大量に調製することができるので、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチンの実用化に資する。
各種抗原で免疫したブリにおける、細菌性溶血性黄疸病原体接種後の死亡率 各種抗原で免疫したブリにおける、細菌性溶血性黄疸病原体接種後の死亡率
1.細菌性溶血性黄疸病原体の抗原ポリペプチド
本発明は、以下の(1)〜(4)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含み、且つブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン活性を有するポリペプチド(以下、本発明のポリペプチドと称する場合がある)を提供するものである:
(1)配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列;
(2)配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列;
(3)配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列;及び
(4)10アミノ酸以上の長さを有する、上記(1)〜(3)から選択されるいずれかのアミノ酸配列の部分配列。
配列番号10、12、14及び16で表されるアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号2、4、6及び8で表されるアミノ酸配列の部分配列に相当する。
本発明のポリペプチドは、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン活性を有する。ブリ属魚類には、ブリ、ヒラマサ、カンパチ、ヒレナガカンパチ等が包含されるが、好ましくは、ブリである。
ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン活性の有無は、例えば以下の方法で評価することができる。
評価対象のポリペプチドを発現するベクター(pET30a)により形質転換された大腸菌(BL21)の死菌を、ブリの0歳魚(体重70〜140g)に、腹腔内投与する(投与量 2mg/尾)。抗原投与から3週間後に、尾部血管内接種により、細菌性溶血性黄疸の病原体(JBKA−6株)でブリを攻撃する(攻撃菌量 5.0×10〜1.5×10MPN/尾)。攻撃から18〜20日後に、累積死亡率を算出し、対照区(E.coli投与)と比較して、ポリペプチド投与区の死亡率が低い場合に、当該評価対象のポリペプチドはブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン活性を有すると評価する。ブリの飼育水温は17〜25℃とする。
ブリ細菌性溶血性黄疸の病原体の単離及び培養、並びに細菌性溶血性黄疸の病原体によるブリの攻撃試験は、「養殖ブリ黄疸の病態生理」魚病研究(1995年)30巻1号:7−14頁に準じて行うことができる。
上記(2)のアミノ酸配列は、配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、より更に好ましくは98%以上の同一性を有する。
本明細書においてアミノ酸配列の「同一性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する、同一アミノ酸残基の割合(%)を意味する。
本明細書におけるアミノ酸配列の同一性は、NCBIのインターネットホームページ上に公開されている相同性計算アルゴリズムNCBI blastp/Blast 2 sequences(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(Short queries=off/Expect threshold=10/Matrix=BLOSUM62/Gap Costs=Existence:11 Extension:1/Compositional adjustments=Conditional compositional score matrix adjustment/filter=off/Mask=off)にて計算することができる。
上記(3)のアミノ酸配列は、配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、例えば、(1)配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列中の1又は複数(好ましくは1〜300個、より好ましくは1〜100個、さらに好ましくは1〜30個、更により好ましくは1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2) 配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列に1又は複数(好ましくは1〜300個、より好ましくは1〜100個、さらに好ましくは1〜30個、更により好ましくは1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3) 配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列に1又は複数(好ましくは1〜300個、より好ましくは1〜100個、さらに好ましくは1〜30個、更により好ましくは1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4) 配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列中の1又は複数(好ましくは1〜300個、より好ましくは1〜100個、さらに好ましくは1〜30個、更により好ましくは1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わされたアミノ酸配列(欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸の総数が、好ましくは1〜300個、より好ましくは1〜100個、さらに好ましくは1〜30個、更により好ましくは1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)である。
一態様において、上記(3)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1〜290個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、例えば、(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列中の1〜290個(好ましくは1〜193個、より好ましくは1〜96個、さらに好ましくは1〜48個、更により好ましくは1〜19個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜290個(好ましくは1〜193個、より好ましくは1〜96個、さらに好ましくは1〜48個、更により好ましくは1〜19個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列に1〜290個(好ましくは1〜193個、より好ましくは1〜96個、さらに好ましくは1〜48個、更により好ましくは1〜19個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号2で表されるアミノ酸配列中の1〜290個(好ましくは1〜193個、より好ましくは1〜96個、さらに好ましくは1〜48個、更により好ましくは1〜19個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わされたアミノ酸配列(欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸の総数が、1〜290個、好ましくは1〜193個、より好ましくは1〜96個、さらに好ましくは1〜48個、更により好ましくは1〜19個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)である。
一態様において、上記(3)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列は、配列番号4で表されるアミノ酸配列において1〜124個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、例えば、(1)配列番号4で表されるアミノ酸配列中の1〜124個(好ましくは1〜83個、より好ましくは1〜41個、さらに好ましくは1〜20個、更により好ましくは1〜8個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号4で表されるアミノ酸配列に1〜124個(好ましくは1〜83個、より好ましくは1〜41個、さらに好ましくは1〜20個、更により好ましくは1〜8個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号4で表されるアミノ酸配列に1〜124個(好ましくは1〜83個、より好ましくは1〜41個、さらに好ましくは1〜20個、更により好ましくは1〜8個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号4で表されるアミノ酸配列中の1〜124個(好ましくは1〜83個、より好ましくは1〜41個、さらに好ましくは1〜20個、更により好ましくは1〜8個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わされたアミノ酸配列(欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸の総数が、1〜124個、好ましくは1〜83個、より好ましくは1〜41個、さらに好ましくは1〜20個、更により好ましくは1〜8個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)である。
一態様において、上記(3)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列は、配列番号6で表されるアミノ酸配列において1〜108個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、例えば、(1)配列番号6で表されるアミノ酸配列中の1〜108個(好ましくは1〜72個、より好ましくは1〜36個、さらに好ましくは1〜18個、更により好ましくは1〜7個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号6で表されるアミノ酸配列に1〜108個(好ましくは1〜72個、より好ましくは1〜36個、さらに好ましくは1〜18個、更により好ましくは1〜7個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号6で表されるアミノ酸配列に1〜108個(好ましくは1〜72個、より好ましくは1〜36個、さらに好ましくは1〜18個、更により好ましくは1〜7個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号6で表されるアミノ酸配列中の1〜108個(好ましくは1〜72個、より好ましくは1〜36個、さらに好ましくは1〜18個、更により好ましくは1〜7個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わされたアミノ酸配列(欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸の総数が、1〜108個、好ましくは1〜72個、より好ましくは1〜36個、さらに好ましくは1〜18個、更により好ましくは1〜7個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)である。
一態様において、上記(3)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列は、配列番号8で表されるアミノ酸配列において1〜294個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、例えば、(1)配列番号8で表されるアミノ酸配列中の1〜294個(好ましくは1〜196個、より好ましくは1〜98個、さらに好ましくは1〜49個、更により好ましくは1〜19個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号8で表されるアミノ酸配列に1〜294個(好ましくは1〜196個、より好ましくは1〜98個、さらに好ましくは1〜49個、更により好ましくは1〜19個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号8で表されるアミノ酸配列に1〜294個(好ましくは1〜196個、より好ましくは1〜98個、さらに好ましくは1〜49個、更により好ましくは1〜19個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号8で表されるアミノ酸配列中の1〜294個(好ましくは1〜196個、より好ましくは1〜98個、さらに好ましくは1〜49個、更により好ましくは1〜19個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わされたアミノ酸配列(欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸の総数が、1〜294個、好ましくは1〜196個、より好ましくは1〜98個、さらに好ましくは1〜49個、更により好ましくは1〜19個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)である。
一態様において、上記(3)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列は、配列番号10で表されるアミノ酸配列において1〜282個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、例えば、(1)配列番号10で表されるアミノ酸配列中の1〜282個(好ましくは1〜188個、より好ましくは1〜94個、さらに好ましくは1〜47個、更により好ましくは1〜18個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号10で表されるアミノ酸配列に1〜282個(好ましくは1〜188個、より好ましくは1〜94個、さらに好ましくは1〜47個、更により好ましくは1〜18個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号10で表されるアミノ酸配列に1〜282個(好ましくは1〜188個、より好ましくは1〜94個、さらに好ましくは1〜47個、更により好ましくは1〜18個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号10で表されるアミノ酸配列中の1〜282個(好ましくは1〜188個、より好ましくは1〜94個、さらに好ましくは1〜47個、更により好ましくは1〜18個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わされたアミノ酸配列(欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸の総数が、1〜282個、好ましくは1〜188個、より好ましくは1〜94個、さらに好ましくは1〜47個、更により好ましくは1〜18個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)である。
一態様において、上記(3)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列は、配列番号12で表されるアミノ酸配列において1〜114個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、例えば、(1)配列番号12で表されるアミノ酸配列中の1〜114個(好ましくは1〜76個、より好ましくは1〜38個、さらに好ましくは1〜19個、更により好ましくは1〜7個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号12で表されるアミノ酸配列に1〜114個(好ましくは1〜76個、より好ましくは1〜38個、さらに好ましくは1〜19個、更により好ましくは1〜7個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号12で表されるアミノ酸配列に1〜114個(好ましくは1〜76個、より好ましくは1〜38個、さらに好ましくは1〜19個、更により好ましくは1〜7個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号12で表されるアミノ酸配列中の1〜114個(好ましくは1〜76個、より好ましくは1〜38個、さらに好ましくは1〜19個、更により好ましくは1〜7個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わされたアミノ酸配列(欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸の総数が、1〜114個、好ましくは1〜76個、より好ましくは1〜38個、さらに好ましくは1〜19個、更により好ましくは1〜7個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)である。
一態様において、上記(3)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列は、配列番号14で表されるアミノ酸配列において1〜98個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、例えば、(1)配列番号14で表されるアミノ酸配列中の1〜98個(好ましくは1〜65個、より好ましくは1〜32個、さらに好ましくは1〜16個、更により好ましくは1〜6個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号14で表されるアミノ酸配列に1〜98個(好ましくは1〜65個、より好ましくは1〜32個、さらに好ましくは1〜16個、更により好ましくは1〜6個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号14で表されるアミノ酸配列に1〜98個(好ましくは1〜65個、より好ましくは1〜32個、さらに好ましくは1〜16個、更により好ましくは1〜6個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号14で表されるアミノ酸配列中の1〜98個(好ましくは1〜65個、より好ましくは1〜32個、さらに好ましくは1〜16個、更により好ましくは1〜6個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わされたアミノ酸配列(欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸の総数が、1〜98個、好ましくは1〜65個、より好ましくは1〜32個、さらに好ましくは1〜16個、更により好ましくは1〜6個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)である。
一態様において、上記(3)のポリペプチドに含まれるアミノ酸配列は、配列番号16で表されるアミノ酸配列において1〜150個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、例えば、(1)配列番号16で表されるアミノ酸配列中の1〜150個(好ましくは1〜100個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜25個、更により好ましくは1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号16で表されるアミノ酸配列に1〜150個(好ましくは1〜100個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜25個、更により好ましくは1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号16で表されるアミノ酸配列に1〜150個(好ましくは1〜100個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜25個、更により好ましくは1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号16で表されるアミノ酸配列中の1〜150個(好ましくは1〜100個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜25個、更により好ましくは1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)上記(1)〜(4)の変異が組み合わされたアミノ酸配列(欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸の総数が、1〜150個、好ましくは1〜100個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜25個、更により好ましくは1〜10個、最も好ましくは1、2、3、4又は5個)である。
1つの好ましい態様において、上記(2)及び(3)のアミノ酸配列は、動物の天然のミステリンポリペプチドである。「天然の」とは、ポリペプチドを構成するアミノ酸配列がブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸の天然の病原体のゲノム中にコードされていることをいう。
遺伝子を構成するヌクレオチド配列には通常多型(個体差)が存在することが知られている。上記(2)及び(3)のアミノ酸配列には、多型により生じた上記(1)のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列が含まれる。
上記(4)のアミノ酸配列の長さは、本発明のポリペプチドがブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン活性を有する限り限定されないが、通常10アミノ酸以上、好ましくは15アミノ酸以上、より好ましくは20アミノ酸以上、更に好ましくは50アミノ酸以上、より更に好ましくは100アミノ酸以上である。
本発明のポリペプチドは、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン活性を有する限り、その長さは限定されず、使用目的に応じて所望の長さのポリペプチドを選択することができる。例えば、本発明のポリペプチドとして、長さが3000アミノ酸以下のもの、2500アミノ酸以下のもの、2000アミノ酸以下のもの、1500アミノ酸以下のもの、1000アミノ酸以下のもの、500アミノ酸以下のもの、400アミノ酸以下のもの、300アミノ酸以下のもの等を適宜選択することが出来る。
本発明のポリペプチドにおける、上記(1)〜(4)から選択されるいずれかのアミノ酸配列以外の部分のアミノ酸配列は、本発明のポリペプチドがブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン活性を有する限り、特に限定されない。
一態様において、本発明のポリペプチドのN末端及び/又はC末端には、少なくとも1つのタグポリペプチド又はシグナル配列が含まれる。
タグポリペプチドとは、ポリペプチドの検出や精製等を容易にならしめるために付加されるポリペプチドをいう。タグポリペプチドとしては、エピトープタグ、蛍光ポリペプチド、イムノグロブリンFc領域等を挙げることが出来るがこれに限定されない。エピトープタグとは、抗体または他の結合パートナーによって特異的に認識されるペプチドをいい、具体的には、Flagタグ、ポリヒスチジンタグ、c−Mycタグ、HAタグ、AU1タグ、GSTタグ、MBPタグ等を挙げることが出来る。蛍光ポリペプチドとしては、GFP、YFP、RFP、CFP、BFP、EGFP等を挙げることが出来る。このようなタグポリペプチドは当業者に周知であり、当該タグポリペプチドを特異的に認識する多様な抗体が市販されている。
シグナル配列とは、ポリペプチドの翻訳と同時にまたは翻訳後に、合成部位から細胞内部の特定部位、又は細胞外部へのポリペプチドの運搬や局在を指示するポリペプチド配列をいう。シグナル配列には、ポリペプチドの分泌を誘導するリーダー配列、核移行シグナル配列(例えば、SV40 T抗原の核移行シグナル配列)、核外移行シグナル配列、核小体局在シグナル等を挙げることが出来るがこれに限定されない。このようなシグナル配列は当業者に周知であり、目的に応じて適宜選択することが出来る。
好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、上記(1)〜(4)から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなる。
本発明のポリペプチドは修飾されていてもよい。該修飾としては、脂質鎖の付加(脂肪族アシル化(パルミトイル化、ミリストイル化等)、プレニル化(ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化等)等)、リン酸化(セリン残基、スレオニン残基、チロシン残基等におけるリン酸化)、アセチル化、糖鎖の付加(Nグリコシル化、Oグリコシル化)等を挙げることが出来る。
また、本発明のポリペプチドは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)、アフィニティタグ(例:ビオチン等)などで標識されていてもよい。
また、本明細書において用語「ポリペプチド」は、その塩をも含む意味として用いられる。ポリペプチドの塩としては生理学的に許容される酸(例:無機酸、有機酸)や塩基(例:アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが挙げられる。
本発明のポリペプチドは単離又は精製されていることが好ましい。「単離又は精製」とは、目的とする成分以外の因子を除去する操作がなされ、天然に存在する状態を脱していることを意味する。単離又は精製された本発明のポリペプチドの純度(全ポリペプチド重量に対する、本発明のポリペプチドの重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば100%)である。
本発明のポリペプチドの製造方法については特に制限はなく、公知のペプチド合成法に従って製造してもよく、また公知の遺伝子組み換え技術を用いて製造してもよい。ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明のポリペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とするポリペプチドを製造することができる。
遺伝子組み換え技術を用いて本発明のポリペプチドを製造する場合には、先ず後述するような本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得し、該ポリペプチドを発現し得る発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、得られる形質転換体を培養することによって、該ポリペプチドを製造することができる。該ポリヌクレオチド、遺伝子組み換え技術を用いた本発明のポリペプチドの製造方法については後述する。
本発明のポリペプチドは、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチンの有効成分等として有用である。
2.細菌性溶血性黄疸病原体の抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
本発明は上記本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供するものである。
本発明のポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、該ポリヌクレオチドは二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。
本発明のポリヌクレオチドとしては、配列番号1、3、5、7、9、11、13又は15で表されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを例示することが出来るが、これらに限定されない。配列番号1で表されるヌクレオチド配列は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、配列番号3で表されるヌクレオチド配列は配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、配列番号5で表されるヌクレオチド配列は配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、配列番号7で表されるヌクレオチド配列は配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、配列番号9で表されるヌクレオチド配列は配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、配列番号11で表されるヌクレオチド配列は配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、配列番号13で表されるヌクレオチド配列は配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、配列番号15で表されるヌクレオチド配列は配列番号16で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、それぞれコードする。
本発明のポリヌクレオチドは、本明細書の配列表に記載された配列情報に基づき、公知の遺伝子組換え技術を利用することにより容易に製造することが出来る。例えば、配列情報に基づき適当なプライマーを設計し、ブリの細菌性溶血性黄疸病原体から単離した全RNAから調製したcDNAを鋳型とするRT−PCRにより、本発明のポリヌクレオチドを製造することが出来る。或いは、本明細書の配列表に記載された配列情報に基づいて、ポリヌクレオチド合成装置により本発明のポリヌクレオチドを合成してもよい。
取得された本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該ポリヌクレオチドはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
本発明のポリヌクレオチドは単離又は精製されていることが好ましい。「単離又は精製」とは、目的とする成分以外の因子を除去する操作がなされ、天然に存在する状態を脱していることを意味する。単離又は精製された本発明のポリヌクレオチドの純度(全ポリヌクレオチド重量に対する、本発明のポリヌクレオチドの重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば100%)である。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドの製造に有用である。
3.発現ベクター及び形質転換体
本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び該発現ベクターを含む形質転換体を提供するものである。
該発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを適当な発現ベクター中のプロモーターに機能可能に連結することにより製造することができる。ベクターの種類としては、プラスミドベクター、ウイルスベクター等を挙げることができ、用いる宿主細胞に応じて適宜選択することが出来る。
宿主細胞には、原核生物細胞及び真核生物細胞が含まれる。原核生物細胞としては、エシェリヒア属菌(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等)、バチルス属菌(バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)等)等が用いられる。真核生物細胞としては、酵母(サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等)、昆虫細胞(夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)等)、哺乳動物細胞(ヒト細胞(293等)、サル細胞(COS-7等)、チャイニーズハムスター細胞(CHO細胞等)等)などが用いられる。
哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜;イヌ、ネコ等のペット;ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
プラスミドベクターとしては、大腸菌内で増幅可能なプラスミドベクター(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌内で増幅可能なプラスミドベクター(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母内で増幅可能なプラスミドベクター(例、pSH19,pSH15)等を挙げることができ、用いる宿主の種類や使用目的に応じて適宜選択することが出来る。
ウイルスベクターの種類は、用いる宿主細胞の種類や使用目的に応じて適宜選択することが出来る。例えば、宿主として昆虫細胞を用いる場合には、バキュロウイルスベクター等を用いることが出来る。また、宿主として哺乳動物細胞を用いる場合には、モロニーマウス白血病ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター等のレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター等を用いることが出来る。
また、プロモーターは、用いる宿主細胞の種類に対応して、該宿主細胞内で転写を開始可能なものを選択することが出来る。例えば、宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。宿主が哺乳動物細胞である場合、サブゲノミック(26S)プロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
本発明の発現ベクターは、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを、それぞれ機能可能な態様で含有していてもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(Ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(Neoと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。
本発明の発現ベクターは好ましくは単離又は精製されている。
本発明の発現ベクターは、適切な宿主細胞内において、本発明のポリペプチドを発現し得るので、本発明のポリペプチドの製造に有用である。
上記本発明の発現ベクターを、自体公知の遺伝子導入法(例えば、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、Gene Gunによる遺伝子導入法等)に従って上記宿主細胞へ導入することにより、該発現ベクターが導入された形質転換体(本発明の形質転換体)を製造することができる。該形質転換体は本発明のポリペプチドを発現し得る。本発明の形質転換体は、本発明のポリペプチドの製造等に有用である。
本発明の形質転換体を、宿主の種類に応じて、自体公知の方法で培養し、培養物から本発明のポリペプチドを単離することにより、本発明のポリペプチドを製造することが出来る。宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、LB培地やM9培地等の適切な培地中、通常約15〜43℃で、約3〜24時間行なわれる。宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、適切な培地中、通常約30〜40℃で、約6〜24時間行なわれる。宿主が酵母である形質転換体の培養は、バークホールダー培地等の適切な培地中、通常約20℃〜35℃で、約24〜72時間行なわれる。宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたGrace’s Insect medium等の適切な培地中、通常約27℃で、約3〜5日間行なわれる。宿主が動物細胞である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたMEM培地等の適切な培地中、通常約30℃〜40℃で、約15〜60時間行なわれる。いずれの培養においても、必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。培養物からの本発明のポリペプチドの単離又は精製は、例えば、菌体溶解液や培養上清を、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどの複数のクロマトグラフィーに供することにより達成することができる。
4.細菌性溶血性黄疸病原体を特異的に認識する抗体
本発明は、上記本発明のポリペプチドを特異的に認識する抗体(以下、本発明の抗体と称することがある)を提供する。
抗体による抗原Xの「特異的な認識」とは、抗原抗体反応における、抗体の抗原Xに対するアフィニティが、抗原X以外の抗原に対するアフィニティよりも強いことを意味する。
本発明の抗体は、本発明のポリペプチドやその抗原性を有する部分ペプチドを免疫原として用い、既存の一般的な製造方法によって製造することができる。本明細書において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体、ヒト抗体、およびこれらの結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又はこれらの結合性断片である。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前述の抗体の一部分の領域を意味し、具体的には例えばF(ab')2、Fab'、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAb等が挙げられる(Exp. Opin. Ther. Patents, Vol.6, No.5, p.441-456, 1996)。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgG又はIgMであり、精製の容易性等を考慮するとより好ましくはIgGである。
本発明の抗体は、本発明のポリペプチドやブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸病原体の検出のための試薬として有用である。
5.ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン
ブリ属魚類を本発明のポリペプチドにより免疫すると、本発明のポリペプチドに対する免疫反応が惹起され、本発明のポリペプチド又はその抗原エピトープを含む細菌性溶血性黄疸の病原体もこの獲得された免疫反応により排除される。従って、本発明のポリペプチドにより免疫されたブリ属魚類は、細菌性溶血性黄疸の病原体の感染に対する耐性を獲得する。よって、本発明は、上記本発明のポリペプチドを含む、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン(以下、本発明のワクチンと称することがある。)を提供する。本発明のポリペプチドの有効量をブリ属魚類へ投与することにより、当該ブリ属魚類における細菌性溶血性黄疸を予防することができる。
本発明のワクチンの投与対象魚類は、細菌性溶血性黄疸の病原体の感染対象であるブリ属魚類(ブリ、ヒラマサ、カンパチ、ヒレナガカンパチ等)であり、好ましくはブリである。
本発明のワクチンは、上記本発明のポリペプチドのみを含有するものに限定されず、薬学的に許容される液状又は固体状の担体をさらに含有してもよい。本発明は、このような組成物(水産用医薬組成物)をも提供する。液状の担体としては水、リン酸緩衝液(PBS)、生理食塩水等が挙げられる。固体状の担体としては、タルク、シュークロースなどの賦形剤が挙げられる。本発明のワクチンの形態は特に制限されず、注射剤、経口剤、浸漬剤のいずれであってもよいが、少量の投与で長期間にわたって効果の持続性がある注射剤の形態を採用することが好ましい。また、経口剤の形態である場合には、通常の魚類の飼料に上記本発明のポリペプチドを混合してもよい。
本発明のワクチンは、水産用ワクチンにおいて通常用いられる手法、例えば、注射法、浸漬法、経口法等により、投与対象に対して投与される。注射法においては、注射可能な大きさの魚に、本発明のワクチンを、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、静脈内等(好ましくは腹腔内)へ接種する。浸漬法においては、本発明のワクチンの構成成分を含む液中に、魚を0.05〜24時間程度浸漬する。浸漬法は、注射法と比較してワクチン効果が低下する可能性があるため、必要に応じて追加免疫を行ってもよい。経口法では、本発明のワクチンの構成成分を含有する飼料を自由摂餌させる。経口法を採用する場合には、5〜14日間の連続投与が望ましい。
注射用ワクチンは、上記本発明のポリペプチドを滅菌した魚類用生理食塩水等に懸濁して調製することができる。なお、当該注射用ワクチンには、上記本発明のポリペプチド及び生理食塩水の他、当該注射剤に通常用いられる懸濁化剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤またはその他の適当な添加剤を配合することもできる。
従来からワクチン効果等を向上させるために種々のアジュバントが用いられている。一態様において、本発明のワクチンは、アジュバントを使用するまでもなく、十分なワクチン効果を奏することができる。しかしながら、本発明はアジュバントの使用を何ら制限するものではなく、所望に応じて、上記成分に加えてアジュバントを配合することもできる。
アジュバントの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:油性アジュバント(鉱物、植物及び動物性油脂、ビタミンEなどの油溶性ビタミン等)、これらを添加するための界面活性剤、ミョウバン、アルミニウム化合物、ベントナイト、ムラミルジペプチド誘導体、インターロイキン、内毒素。
一態様において、本発明のワクチンは油性アジュバントを実質的に含有しない。本発明のワクチンは、十分なワクチン効果を発揮することができるので、油性アジュバントの添加は不要である。食用魚の養殖において油性アジュバントを含むワクチンを使用した場合、レシピエントの体内に残留した油性アジュバントを除去するのに十分な水揚げ禁止期間を設ける必要があるが、油性アジュバントを実質的に含有しないワクチンを用いることにより、この水揚げ禁止期間が不要となる。尚、「実質的に含有しない」とは、油性アジュバントの含有量がワクチン効果増強量を下回ることを意味する。好ましい態様において、本発明のワクチンは油性アジュバントを含有しない。
本発明のワクチンに含まれる本発明のポリペプチドの量は、本発明のワクチンとして用いられた際に、ブリ属魚類における細菌性溶血性黄疸病原体感染の予防を達成し得る範囲で特に限定されず、抗原の態様、投与ルート、投与対象等により適宜選択することができる。例えば、本ポリペプチドを発現するベクターにより形質転換された大腸菌死菌を注射により投与する場合、0.5〜5mg/100μL(大腸菌死菌タンパク質量/容積)とする。
本発明のワクチンの投与量は、ブリ属魚類における細菌性溶血性黄疸病原体感染の予防を達成し得る範囲で特に限定されず、抗原の態様、投与ルート、投与対象等により適宜選択することができる。例えば、本ポリペプチドを発現するベクターにより形質転換された大腸菌死菌を注射により投与する場合、大腸菌死菌タンパク質として、通常0.5〜5mg/尾とする。
なお、魚に投与するワクチンの体積を増減することによって、有効量を適宜調節することができるので、本発明のワクチン中の本発明のポリペプチドの含有量は、上記のものに限定されることはない。
本発明のワクチンを魚に腹腔内注射する場合の望ましい投与量は、投与するワクチン中に含有される有効成分の量、魚の種類、年齢及び体重などの種々の要因によって異なり、一概に規定することはできない。しかし、投与量が多すぎると、投与作業が煩雑になり、また、投与量が少なく過ぎると、投与毎の投与量の誤差が増大する懸念があるので、体重5〜100gの魚に対して通常0.025〜0.5mL程度を体重に応じて腹腔内注射することが好ましい。
本発明のワクチンは、ブリ属魚類であれば、魚の体重や年齢等に特に制限はされることなく投与することができる。ワクチンをより有効に利用するためには、細菌性溶血性黄疸の病原体に感染する前、例えば稚魚の段階で投与することが好ましい。
本発明のワクチンの投与回数は、そのワクチン効果(細菌性溶血性黄疸病原体感染予防効果)が持続する限り1回でよいが、複数回投与してもよい。複数回投与により、ワクチン効果の増強が期待できる。複数回投与の場合の投与間隔は、通常1〜30日である。また投与回数は、通常2〜5回である。本発明のワクチンの投与回数は好ましくは1〜3回、最も好ましくは1回である。
また、本発明は、上記本発明のポリペプチドのワクチン有効量をブリ属魚類に投与すること、および当該ブリ属魚類を飼育することを含む、ブリ属魚類の養殖方法を提供する。
ブリ属魚類の飼育方法は、公知であり、適切な人為的な条件下で給餌しながら、市場への出荷に十分な大きさになるまで飼育する。
一態様において、油性アジュバントを実質的に含まない本発明のワクチンが魚へ投与される。このようなワクチンを用いることにより、油性アジュバントを用いた場合に設けることを要する水揚げ禁止期間(例えば、ワクチン投与後49週間)の経過前に水揚げを行い、市場へ出荷することが可能となる。
刊行物、特許文献等を含む、本明細書に引用されたすべての参考文献は、引用により、それらが個々に具体的に参考として援用されかつその内容全体が具体的に記載されているのと同程度まで、本明細書に援用される。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
[試験例1]
(抗原候補の選択)
1991年に香川県で分離されたブリの細胞細菌性溶血性黄疸の病原体 JKBA-6株を、10%子牛血清を添加したL-15培地中で培養し、菌体を回収し、ゲノムDNAを抽出した。次いで、抽出したゲノムDNAを断片化し、ライブラリーを作製し、複数の次世代シークエンサーを用いてゲノムシークエンスを行った。
具体的には、ロッシュ社の454 GS FLX Titaniumを用いて、187,150リードを解析し、約6,500万塩基対を解読した。そのうち、173,826リード(93%)をアセンブルし、215配列のコンティグ、及び2,345配列のシングルトンが得られた。
次に、イルミナ社の次世代シークエンサーを利用してペアエンド法(0.2kb以上離れた位置に存在する塩基配列を任意に決定する方法)によるゲノム解析を行った。取得データ量は43,005,291配列(1配列あたり78塩基)であり、総計3.4 Gbpの塩基配列を決定した。
更に、メイトペア法(3.0kb以上離れた位置に存在する塩基配列を任意に決定する方法)によるゲノム解析も行った。取得データ量は354,647,712配列(1配列あたり100塩基)であり、総計35 Gbp(350億塩基対)の塩基配列を決定した。
これらの解析結果のアッセンブルを行った結果、本病原体の全ゲノムを7個の大きな配列情報(スキャッフォールド;scaffold)として纏め上げることがでた。約1,500個のORFが予想され、この配列情報を基にPSORTb及びLipoP 1.0 serverを用いて抗原候補遺伝子の予測を行い、427個を候補として選択した。
427個の候補のうち、菌体表面に存在する可能性の高い256種類の抗原について、大腸菌を用いて組換えタンパク質を作製し、可溶性分画に発現した145種類を選択した。尚、組換えタンパク質を作製するための発現ベクターとしてはpET30a(Novagen社製)を、大腸菌としてはBL21を、それぞれ用いた。
次に、145種類の抗原から、細胞細菌性溶血性黄疸の病原体感染を耐過したブリの抗血清と強く反応する64種類の抗原を選択した。
(ワクチン有効性評価)
上述の64種類の抗原をそれぞれ発現する64種類の大腸菌死菌を用いた。この大腸菌死菌2種類ずつを組み合わせることにより、32組の試作ワクチンを調整し、ブリの0歳魚(体重136.5g)に、腹腔内投与することにより免疫した(投与量 大腸菌死菌タンパク質として2mg/尾)。対照区として、JBKA-6 株ホルマリン死菌(FKC)、PBS およびE.coliを同様に腹腔内接種した。尚試験を通じた飼育水温は17.7〜19.9℃であった。
免疫3 週間後に、尾部血管内接種により、JBKA-6 株でブリを攻撃し(攻撃菌量1.4×102 MPN/尾)、経時的に死亡率を評価したところ、4 組の混合抗原(8 種類の抗原候補を含む)(表1)で、陽性対照のJBKA-6 株ホルマリン死菌ワクチンと同等か、それを上回る防御効果が得られた(図1)。
水温22.2〜23.0℃,平均魚体重77.7g,攻撃菌量5.6×101 MPN/尾の条件で別途行った試験においても、同一の防御効果が確認された。
防御効果の見られた4 組(8 種類)の混合抗原から、防御抗原を特定するため、上記と同様に8つの抗原を単独でブリ各10 尾に腹腔内接種した。接種4 週間後に細菌性溶血性黄疸の病原体で攻撃を行ない、18 日間死亡率を観察した。その結果、対照区(ワクチンなし)となるPBS 区で40%、E.coli 区で60%の死亡率だったのに対し、ワクチンセット1-2内の3A2 抗原で20%、1-5 内の2B7 で10%、1-8内の1C10 で20%、3-1内の3G1 で0%の死亡率であった。即ち、4つのワクチンセットから各1 種類の抗原単独で、ワクチン有効性が認められた(図2)。
尚、本試験と同時に上記4組の混合抗原についても試験を行い、18 日間の死亡率は、1-2で20%、1-5で0%、1-8で10%、3-1で10%であった。
3A2、2B7、1C10及び3G1の全長アミノ酸配列を配列番号2、4、6、8にそれぞれ示す。また、3A2、2B7、1C10及び3G1の対応するcDNA配列を配列番号1、3、5及び7にそれぞれ示す。尚、ワクチン有効性の確認試験においては、各抗原の部分配列からなるポリペプチドを使用した。使用した部分配列は以下の通りである。
BlastPで解析したところ、2B7及び1C10はno-hitであった。3A2については、Dysgonomonas mossii 由来のhypothetical proteinが、3G1については、Grouper iridovirus由来のunknown proteinが、それぞれヒットしたが、いずれも機能不明な遺伝子であった。Max-identityは、それぞれ37%及び35%であった。従って、ワクチン効果が確認された全ての抗原は新規遺伝子であると考えられた。
本発明により、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対して高いワクチン活性を有する抗原ポリペプチド、及び該抗原ポリペプチドを含むブリの細菌性溶血性黄疸に対するサブユニットワクチンが提供される。
細菌性溶血性黄疸の病原体は難培養性であるため、これまでワクチンの開発が進まなかったが、本発明の抗原ポリペプチド及びワクチンは、遺伝子組換技術を用いることにより安価に大量に調製することができるので、ブリ属の細菌性溶血性黄疸に対するワクチンの実用化に資する。

Claims (9)

  1. 以下の(1)〜(4)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含み、且つブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン活性を有するポリペプチド:
    (1)配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列;
    (2)配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列;
    (3)配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列;及び
    (4)10アミノ酸以上の長さを有する、上記(1)〜(3)から選択されるいずれかのアミノ酸配列の部分配列。
  2. 請求項1記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
  3. 請求項2記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  4. 請求項3記載の発現ベクターで形質転換された形質転換体。
  5. 請求項1記載のポリペプチドを特異的に認識する抗体。
  6. 請求項1記載のポリペプチドを含む、組成物。
  7. 請求項1記載のポリペプチドを含む、ブリ属魚類の細菌性溶血性黄疸に対するワクチン。
  8. 請求項1記載のポリペプチドの有効量をブリ属魚類へ投与することを含む、当該ブリ属魚類における細菌性溶血性黄疸の予防方法。
  9. 請求項1記載のポリペプチドの有効量をブリ属魚類へ投与すること、および当該ブリ属魚類を飼育することを含む、ブリ属魚類の養殖方法。
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