JP2014029009A - チタン板およびチタン板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Feの含有量が0.08質量%以上0.40質量%以下、Oの含有量が、下記式(1)
0.5[O]+0.11[Fe]≧0.075・・・・・・(1)
ここで、[O]:Oの質量%、[Fe]:Feの質量%
を満たし、且つ0.3質量%以下であり、残部がチタンおよび不可避的不純物からなるチタン板であって、HCP構造であるα相の結晶粒界にBCC構造であるβ相が存在し、前記α相の結晶粒界に存在する前記β相の面積率が全組織に対して0.50%以上であり、前記α相の結晶粒界に存在する前記β相のアスペクト比が2.0以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
その中でもプレート式の熱交換器は、熱交換効率を高めるため、チタン板をプレス成形することによって波目状に加工し表面積を増やす必要がある。したがって、チタン板をプレート式熱交換器に適用する場合は、チタン板に優れた成形性が要求される。
また、チタン板の強度を向上させる方法として、チタン板の結晶粒を微細化する方法も存在するが、結晶粒の微細化に伴いチタン板の成形性は低下してしまう。
例えば、特許文献1には、Fe、Ni、Crの含有量を特定し、平均結晶粒径を20〜80μmに規制するとともに、酸洗処理の条件を特定したチタン板の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、Fe含有量をO含有量よりも多く特定するとともに、平均結晶粒径を10μm以下に特定したチタン板が開示されている。
特許文献4に係る技術は、FeとOの含有量の上限値が低く規定されており、十分な強度が得られない。また、FeとOを、規定された上限値以上含有させてしまうと、冷延中に耳割れが発生してしまい、歩留まりが低下してしまうことから生産性の点で好ましくない。
具体的には以下のとおりである。
0.5[O]+0.11[Fe]≧0.075・・・・・・(1)
ここで、[O]:Oの質量%、[Fe]:Feの質量%
を満たし、且つ0.3質量%以下であり、残部がチタンおよび不可避的不純物からなるチタン板であって、HCP構造であるα相の結晶粒界にBCC構造であるβ相が存在し、前記α相の結晶粒界に存在する前記β相の面積率が全組織に対して0.50%以上であり、前記α相の結晶粒界に存在する前記β相のアスペクト比が2.0以上であることを特徴とする。
≪チタン板≫
本発明のチタン板は、Feの含有量が0.08質量%以上0.40質量%以下、Oの含有量が、下記式(1)
0.5[O]+0.11[Fe]≧0.075・・・・・・(1)
ここで、[O]:Oの質量%、[Fe]:Feの質量%
を満たし、且つ0.3質量%以下であり、残部がチタンおよび不可避的不純物からなる。
さらに、このチタン板は、HCP構造であるα相の結晶粒界にBCC構造であるβ相が存在し、このβ相の面積率が全組織に対して0.50%以上であり、α相の結晶粒界に存在するβ相のアスペクト比が2.0以上である。
以下、各構成について説明する。
Feは、β相を形成する効果がある。Feの含有量が0.08質量%未満では、所望量のβ相を形成できない。よって、Feの含有量は0.08質量%以上とする。好ましくは0.10質量%以上である。一方、Feは偏析し易い元素であるため、Fe含有量が0.40質量%を超えると、インゴットの製造が難しくなる。よって、Feの含有量は0.40質量%以下とする。好ましくは0.30質量%以下である。
Oは、強度向上、且つFeとの相互作用による強度異方性改善の観点から、下記式(1)を満足する必要がある。なお、より高いレベルで強度と成形性のバランスを向上させる場合は、式(2)を満足することが好ましい。なお、これらの式は、Feの含有量とOの含有量との関係に着目し、実験的に導き出したものである。
0.5[O]+0.08[Fe]≧0.075・・・・・・(2)
ここで、[O]:Oの質量%、[Fe]:Feの質量%
(Cの含有量:0.080質量%以下(0質量%を含まない))
Cは、強度向上に有効である。しかしながら、Cの含有量が0.080質量%を超えると、成形性が低下する。そのため、チタン板にCを添加する場合は、Cの含有量は0.080質量%以下とする。好ましくは0.070質量%以下である。一方、Cの含有量が0.015質量%未満ではその効果は十分ではない。よって、その含有量は0.015質量%以上とするのが好ましい。より好ましくは0.02質量%以上である。
チタン板の成分は前記の通りであり、残部はチタンおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物は、チタン板の諸特性を害さない範囲で許容できる。例えば、Nは、0.02質量%程度まで、Hは、0.02質量%程度までであれば、これらの元素の含有は問題ない。
HCP構造(六方最密充填構造:Hexagonal Close-Packed structure)とは、結晶構造の一種である。HCP構造は、一般に正六角柱で表し、この正六角柱の上面および底面の各角および中心と、六角柱の内部で高さ1/2のところに3つの原子が存在する。
BCC構造(体心立方格子構造:Body-Centered Cubicstructure)とは、結晶構造の一種である。BCC構造は、立方体形の単位格子の各頂点と中心に原子が位置する。
本発明においては、HCP構造であるα粒界に、BCC構造であるβ相が存在する。そして、その面積率が全組織に対して0.50%以上である。
α粒界に存在するβ相の面積率を0.50%以上とすることで、L方向のYSとT方向のYSの異方性が低減する。
α粒界に存在するβ相の面積率が0.50%未満では、L方向のYSとT方向のYSの異方性低減効果が小さい。よって、α粒界に存在するβ相の面積率は0.50%以上とする。好ましくは0.60%以上である。
なお、α粒界に存在するβ相の面積率の上限は特に定めないが、5.00%もしくはそれ近くとするためには低温で長時間の焼鈍が必要になる。そのため、生産性を考慮すると4.00%以下が好ましく、より好ましくは3.00%以下である。
α粒界に存在するβ相のアスペクト比(平均)を2.0以上とすることで、β相がα粒界をより占有しやすくなる。
α粒界に存在するβ相のアスペクト比が2.0未満では、十分に粒界を占有することが出来ない。よって、β相のアスペクト比は2.0以上とする。好ましくは2.5以上である。なお、β相のアスペクト比の上限は特に定めないが、通常10以下となる。
チタン板の縦断面を機械研磨し、バフ研磨、化学研磨で鏡面に仕上げた後、板厚中心部を反射電子像(BSE)にてβ相の観察を実施する。チタン板に対して任意の270μm×230μmの領域を倍率5,000倍で観察し、観察視野全体に対する、α相の結晶粒界に接しているβ相の面積率を画像解析により求める。
また、同様の観察にてα結晶粒界上の個々のβ相の形状を測定し、β相のアスペクト比の平均値を求める。なお、個々のβ相のアスペクト比を求めるにあたっては、まずβ相の最大幅を求め、これを長径とする。次に、長径と直交する方向の長さのうち、最大のものを求め、これを短径とする。そして、長径を短径で除することによってアスペクト比を求める。
≪チタン板の製造方法≫
本発明のチタン板の製造方法は、前記した本発明のチタン板を製造するものである。
そしてチタン板の製造方法は、図1に示すように、熱間圧延工程S2と、焼鈍工程S3(S5)と冷間圧延工程S4(S6)とからなる焼鈍・冷間圧延工程S100と、最終焼鈍工程S7と、を含む。なお、ここでは、熱間圧延工程S2の前に、純チタン材料を製造する純チタン材料製造工程S1を含む。
以下、各工程について説明する。
純チタン材料製造工程S1は、熱間圧延工程S2の前に、純チタン材料を製造する工程である。
チタン板を製造する場合、まず、従来のチタン板を製造する場合と同様、鋳塊(インゴット(工業用純チタン))を製造し、この鋳塊を分塊圧延して、その後の工程に供する純チタン材料を得る。鋳塊の製造や分塊圧延の方法は特に限定されず、従来公知の方法で行えばよい。例えば、まず、所定成分の原料を真空アーク溶解により溶解した後、鋳造してチタン鋳塊を得る。この鋳塊を所定の大きさのブロック形状に分塊圧延して純チタン材料とする。
熱間圧延工程S2は、純チタン材料に対して熱間圧延を行う工程である。熱間圧延の方法は特に限定されず、従来公知の方法で行えばよい。例えば、700℃から950℃に加熱して熱間圧延を行えばよい。
焼鈍・冷間圧延工程S100は、熱間圧延工程S2の後、焼鈍と冷間圧延とを1回以上繰り返す工程である。
すなわち、この焼鈍・冷間圧延工程S100は、熱間圧延の後に焼鈍を施す工程と、この焼鈍の後に冷間圧延を施す工程とからなる。ここでは、焼鈍と冷間圧延を2回繰り返す場合として、焼鈍工程S3、冷間圧延工程S4、焼鈍工程(中間焼鈍工程)S5、冷間圧延工程(最終冷間圧延工程)S6を図示している(図1参照)。
後記するように、最終焼鈍工程S7では、それまでの焼鈍(焼鈍工程S3,S5の焼鈍)における焼鈍温度よりも高い温度で焼鈍を行う必要がある。そのため、焼鈍工程S3もしくは焼鈍工程S5での焼鈍温度は、最終焼鈍工程S7での焼鈍温度よりも低い温度とする。さらに、焼鈍工程S3もしくは焼鈍工程S5では、最終焼鈍工程S7よりも、長時間での焼鈍を実施することが望ましい。
冷間圧延の方法は特に限定されず、従来公知の方法で行えばよい。また、冷間圧延での圧下率は従来と同程度で良い。例えば、20〜70%程度の圧下率とすればよい(ただし、後記するように、最終冷間圧延工程S6での圧下率は40%以上とする)。圧下率が40%以上であれば、最終焼鈍時にα相の再結晶が素材のほぼ全面で起こり均質な組織が得られる。一方、圧下率が70%以下であれば、冷間圧延中に耳割れが生じにくく、歩留りが落ちることが抑制される。
なお、最終冷間圧延工程S6の前の冷間圧延工程S4の場合、その後の中間焼鈍工程S5にて再結晶を起こす必要は必ずしも無いため、圧下率は40%未満であっても構わない。ただし、その後の冷間圧延での耳割れを防ぐためには再結晶させることが好ましい。そのため、冷間圧延工程S4での圧下率は40%以上が好ましい。
最終焼鈍工程S7は、焼鈍・冷間圧延工程S100の後、最終焼鈍を施す工程である。
ここで、所望の組織形態を得るためには、最終焼鈍において、α相の再結晶後にβ相を析出させる必要がある。なお、それ以前の焼鈍工程でもβ相は析出しているが、それらは焼鈍工程にて粒状に近い形状となり、α相結晶粒の粒界の占有の観点では効果的でない。
そのため、最終焼鈍工程S7では、それまでの焼鈍(焼鈍工程S3,S5の焼鈍)における焼鈍温度よりも高い温度で焼鈍を行う。理由については、前記した焼鈍・冷間圧延工程S100における焼鈍工程で説明したとおりである。
その後、表1に示す条件にて冷延前焼鈍を行い、圧下率60%の冷間圧延を行なった後、750℃3分の中間焼鈍を行った。その後、再度、圧下率60%の冷間圧延を行い、表1に示す条件にて最終焼鈍を行った。なお、各焼鈍の後には、ソルト炉に浸漬し、その後フッ硝酸溶液に浸漬する脱スケール処理を施した。このようにして、試験材となる板厚0.5mmの純チタン板を得た。
試験材である純チタン板の縦断面を機械研磨し、バフ研磨、化学研磨で鏡面に仕上げた後、板厚中心部を反射電子像(BSE)にてβ相の観察を実施した。各試験材に対して任意の270μm×230μmの領域を倍率5,000倍で観察し、α相の結晶粒界上に析出するβ相の面積率を画像解析により求めた。なお、0.1%未満は0%とした。
また、同様の観察にてα結晶粒界上のβ相の個々の形状を測定し、アスペクト比の平均値を求めた。
試験材から、試験材の圧延方向が荷重軸と一致する方向(L方向)および幅方向に一致する方向(T方向)にJISZ2201に規定される13号試験片をそれぞれ採取し、室温でJISH4600に基づいて引張試験を実施した。そして、L方向の0.2%耐力(YS−L)およびT方向の0.2%耐力(YS−T)を測定し、その比「(YS−T)/(YS−L)」を求めた。「(YS−T)/(YS−L)」が1.080以下の場合に合格とした。
成形性の評価は、各試験材に対してプレート式熱交換器の熱交換部分(プレート)を模擬した成形金型を用いたプレス成形を行うことで評価した。
図2(a)、(b)に示すように、成形金型の形状は、成形部が100mm×100mmで、ピッチ17mm、最大高さ6.5mmの綾線部を4本有し、各綾線部は頂点に、R=2.5のR形状を有している。
この成形金型を用いて80tonプレス機によってプレス成形を行った。プレス成形は各試験材の両面を潤滑のために厚み0.03mmのポリエチレンシートで挟んだうえで、各試験材の圧延方向が図2(a)の上下方向と一致するように下側の金型の上に配置した。そして、フランジ部を板押さえで拘束した後、プレス速度1mm/秒の条件で金型を押込んだ。金型は、0.1mm間隔で押込み、割れが発生しない最大の押し込み深さ量(Y:単位mm)を実験で求めた。
なお、L方向(圧延方向)のYS(単位はMPa)を用い、下記式(3)で規定される成形性指標(F)が0.5以上の場合に合格とした。
F=Y−(A−B×X)・・・(3)
A=8.75、B=0.0137
X=L方向のYSを無次元化した数値
Y=最大押込み深さ量を無次元化した数値
試験材No.1〜3及びNo.11〜13は、本発明で規定する要件を満たすチタン板であり、強度異方性および成形性のいずれも合格と判断でき、強度と成形性のバランスに優れていることが分かる。
これに対して試験材No.4〜10は、本発明で規定する要件を満たしていないため、強度異方性や成形性が合格の基準を満たさず、強度と成形性のバランスが悪いことがわかる。
試験材No.5は、式(1)を満たさず、且つ最終焼鈍温度が冷延前焼鈍の温度と同じである。そのため、α粒界上のβ相の面積率が低く、またアスペクト比が小さく、YSの異方性が大きかった。また、成形性に劣っていた。
試験材No.7は、Fe濃度が下限値未満であり、式(1)を満たさず、且つ最終焼鈍の温度が冷延前焼鈍の温度以下である。そのため、α粒界上のβ相の面積率が低く、またアスペクト比が小さく、YSの異方性が大きかった。また、成形性に劣っていた。
試験材No.8は、Fe濃度が下限値未満である。そのため、α粒界上のβ相の面積率が低く、YSの異方性が大きかった。また、成形性に劣っていた。
試験材No.10は、最終焼鈍温度が冷延前焼鈍の温度と同じである。そのため、α粒界上のβ相の面積率が低く、またアスペクト比が小さく、YS異方性が大きかった。また、成形性に劣っていた。
なお、No.5、10は、最終焼鈍温度が冷延前焼鈍の温度と同じであるため、No.9に比べて、α粒界上のβ相の面積率が高くなっている。
S2 熱間圧延工程
S3 焼鈍工程
S4 冷間圧延工程
S5 焼鈍工程
S6 冷間圧延工程
S7 最終焼鈍工程
S100 焼鈍・冷間圧延工程
Claims (5)
- Feの含有量が0.08質量%以上0.40質量%以下、
Oの含有量が、下記式(1)
0.5[O]+0.11[Fe]≧0.075・・・・・・(1)
ここで、[O]:Oの質量%、[Fe]:Feの質量%
を満たし、且つ0.3質量%以下であり、
残部がチタンおよび不可避的不純物からなるチタン板であって、
HCP構造であるα相の結晶粒界にBCC構造であるβ相が存在し、前記α相の結晶粒界に存在する前記β相の面積率が全組織に対して0.50%以上であり、
前記α相の結晶粒界に存在する前記β相のアスペクト比が2.0以上であることを特徴とするチタン板。 - さらに、Cを0.080質量%以下(0質量%を含まない)含有することを特徴とする請求項1に記載のチタン板。
- Cが0.015質量%以上であることを特徴とする請求項2に記載のチタン板。
- プレート式の熱交換器に用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のチタン板。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のチタン板の製造方法であって、
純チタン材料に対して熱間圧延を行う熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程の後、焼鈍と冷間圧延とを1回以上繰り返す焼鈍・冷間圧延工程と、
前記焼鈍・冷間圧延工程の後、最終焼鈍を施す最終焼鈍工程と、を含み、
前記最終焼鈍工程の直前の冷間圧延を圧下率40%以上で行い、
前記最終焼鈍工程において、それまでの焼鈍における焼鈍温度よりも高い温度で焼鈍を行うことを特徴とするチタン板の製造方法。
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