JP2014024997A - ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】雲母やクレイ等の粘土鉱物を高配合量で配合したゴム組成物において、カーボンブラックの配合量を低減させても、加硫時間の低下を抑制することができ、かつ耐空気透過性を向上させたゴム組成物、特にタイヤのインナーライナー用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含有するゴム成分(A)に対して、層状又は板状粘土鉱物(B)、カーボンブラック(C)及びチアゾール系加硫促進剤(D)を配合してなるゴム組成物であって、該カーボンブラック(C)の配合量が、該ゴム成分(A)100質量部に対して、15質量部以下であることを特徴とするゴム組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物及び該ゴム組成物をインナーライナーに用いた空気入りタイヤに関し、特に作業性が改良され、加硫速度が改善されたインナーライナー用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
従来、タイヤの低燃費化及び軽量化を目的に、タイヤのインナーライナーの耐空気透過性を向上させて、インナーライナーを薄肉化することが提案されている。例えば、低級のカーボンブラックを高配合量で充填したゴム組成物をインナーライナーに使用して、インナーライナーを薄肉化することが提案されているが、この場合、インナーライナーの耐屈曲性や低温耐久性に問題があった。
これに対して、非補強性で偏平な雲母やクレイを配合したゴム組成物をインナーライナーに使用することで、インナーライナーの耐屈曲性や低温耐久性を維持しつつ、耐空気透過性を向上できることが知られている。例えば、特許文献1には、有機化処理した層状粘土鉱物を固体状ゴム100質量部に対して1〜150質量部配合したインナーライナー用ゴム組成物が開示されており、また、特許文献2には、ゴム成分とアスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したインナーライナー用ゴム組成物が開示されている。
しかしながら、非補強性で偏平な雲母やクレイを高配合量で用いたゴム組成物を使用することで、カーボンブラックの配合量を低減させてタイヤのインナーライナーの耐空気透過性を向上させることは可能となるが、カーボンブラックの配合量を低減させると加硫時間が長くなり、タイヤの生産効率が低下するという問題点があった。
特開2003−335902号公報 国際公開第01/62846号
本発明は、雲母やクレイ等の粘土鉱物を高配合量で配合したゴム組成物において、カーボンブラックの配合量を低減させても、加硫時間の低下を抑制することができ、かつ耐空気透過性を向上させたゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、非補強性で偏平な雲母やクレイ等の粘土鉱物を高配合量で含有させるに当たって、低配合量のカーボンブラック及びチアゾール系加硫促進剤を配合することにより、上記目的を達成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
1.ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含有するゴム成分(A)に対して、層状又は板状粘土鉱物(B)、カーボンブラック(C)及びチアゾール系加硫促進剤(D)を配合してなるゴム組成物であって、該カーボンブラック(C)の配合量が、該ゴム成分(A)100質量部に対して、15質量部以下であることを特徴とするゴム組成物、
2.前記チアゾール系加硫促進剤(D)の配合量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部である上記1に記載のゴム組成物、
3.前記ゴム成分(A)が、ハロゲン化ブチルゴムを80〜100質量%含有する上記1又は2に記載のゴム組成物、
4.前記層状又は板状粘土鉱物(B)の配合量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、80質量部以上である上記1〜3のいずれかに記載のゴム組成物、
5.前記ゴム組成物がタイヤのインナーライナー用ゴム組成物である上記1〜4のいずれかに記載のゴム組成物、
6.上記1〜5のいずれかに記載のゴム組成物をインナーライナーに用いた空気入りタイヤ、
を提供する。
本発明によれば、ゴム成分(A)に非補強性で偏平な雲母やクレイ等の層状又は板状粘土鉱物(B)を高配合量で配合し、カーボンブラック(C)の配合量を低減させたゴム組成物において、チアゾール系加硫促進剤(D)を配合することにより、加硫時間の低下を抑制することができ、かつ耐空気透過性を向上することができるので、特にタイヤのインナーライナー用ゴム組成物として作業性が向上し、優れた性質を有するゴム組成物及び空気入りタイヤが得られる。
本発明に係る層状又は板状粘土鉱物(B)に用いる平均アスペクト比の定義を示す模式図である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含有するゴム成分(A)に層状又は板状粘土鉱物(B)、カーボンブラック(C)及びチアゾール系加硫促進剤(D)を配合してなるものである。
[ゴム成分(A)]
本発明のゴム組成物に用いられるゴム成分(A)として、ハロゲン化ブチルゴム50質量%以上を含むゴム成分が用いられる。
前記ハロゲン化ブチルゴムとしては、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、その変性
ゴムなどが含まれる。例えば塩素化ブチルゴムとしては「Enjay Butyl HT10−66」(エンジェイケミカル社製、商標)があり、臭素化ブチルゴムとしては「ブロモブチル2255」(エクソンモービルケミカル社製、商標)がある。また、変性ゴムとして、ハロゲン化ポリ(イソブチレン−パラメチルスチレン)共重合体または臭素化ポリ(イソブチレン−パラメチルスチレン)共重合体と呼ばれ、「EXXPRO」(エクソンモービルケミカル社製、商標)という名称で市販されているエラストマーがある。
ゴム成分(A)中のハロゲン化ブチルゴムの好ましい含有量は、耐空気透過性向上の点から、80〜100質量%であることが好ましい。該ゴム成分(A)中には、0〜50質量%、好ましくは0〜20質量%の割合で、ジエン系ゴムや非ハロゲン化ブチルゴムを含有させることができる。
ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレン合成ゴム(IR)、シス1,4−ポリブタジエン(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(1,2BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
本発明においては、前記ジエン系ゴムや非ハロゲン化ブチルゴムは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
[層状又は板状粘土鉱物(B)]
本発明のゴム組成物に用いる層状又は板状粘土鉱物(B)は、タイヤのインナーライナーとした際の耐屈曲性や低温耐久性を維持しつつ、耐空気透過性を向上するために使用される。
層状又は板状粘土鉱物は、天然品、合成品のいずれも使用することができる。層状又は板状粘土鉱物としては、例えば、クレイ(例えば、カオリン質クレイ、セリサイト質クレイ、焼成クレイ等),マイカ,長石,シリカ及びアルミナの含水複合体などが挙げられる。特に層状粘土鉱物を例示すれば、モンモリロナイト,サポナイト,ヘクトライト,バイデライト,スティブンサイト,ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物,バーミキュライト,ハロイサイト,及び膨潤性マイカなどが挙げられる。これらの層状又は板状粘土鉱物は、天然のものでも,合成されたものでもよい。また、これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に使用される上記に説明した層状又は板状粘土鉱物(B)のうち、層状粘土鉱物は、有機化した層状粘土鉱物も好ましく用いることができる。
ここで、有機化した層状粘土鉱物とは、有機オニウムイオンによって有機化された層状粘土鉱物をいう。この層状粘土鉱物としては、前述したモンモリロナイト,サポナイト,ヘクトライト,バイデライト,スティブンサイト,ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物,バーミキュライト,ハロイサイト,及び膨潤性マイカ等を用いることができる。
有機化した層状粘土鉱物は、後述する有機オニウム塩の分子が該粘土鉱物の層間に侵入(いわゆるインターカレート)し易いように、有機溶剤に対して膨潤性のある層状粘土鉱物を用いることが好ましい。このような膨潤性の層状粘土鉱物を用いることにより、有機オニウム塩は十分に層間に侵入し、ゴムとの混練りの際には、さらに、ゴム分子の浸入による層間拡大により、ゴムマトリックス中での層状粘土鉱物の分散はナノオーダーで得られる。この点から、上記層状粘土鉱物の中でも、平均粒径が大きいマイカ、特に膨潤性マイカが好ましい。また、層状粘土鉱物の有機化は有機オニウム塩で処理することにより行なえるが、有機オニウム塩としては、特にアンモニウム塩が好ましい。
前記層状粘土鉱物を有機化する有機オニウムイオンとしては、例えば、ヘキシルアンモニウムイオン,オクチルアンモニウムイオン,2−エチルヘキシルアンモニウムイオン,ドデシルアンモニウムイオン,オクタデシルアンモニウムイオン,ジオクチルジメチルアンモニウムイオン,トリオクチルアンモニウムイオン,ジステアリルジメチルアンモニウムイオン,トリメチルオクタデシルアンモニウムイオン,ジメチルオクタデシルアンモニウムイオン,メチルオクタデシルアンモニウムイオン,トリメチルドデシルアンモニウムイオン,ジメチルドデシルアンモニウムイオン,メチルドデシルアンモニウムイオン,トリメチルヘキサデシルアンモニウムイオン,ジメチルヘキサデシルアンモニウムイオン,メチルヘキサデシルアンモニウムイオン等が挙げられる。
また,不飽和,不飽和有機オニウムイオンとしての,1−ヘキセニルアンモニウムイオン,1−ドデセニルアンモニウムイオン,9−オクタデセニルアンモニウムイオン(オレイルアンモニウムイオン),9,12−オクタデカジエニルアンモニウムイオン(リノールアンモニウムイオン),9,12,15−オクタデカトリエニルアンモニウムイオン(リノレイルアンモニウムイオン)等を用いることもできる。上記の有機化した層状粘度鉱物の中では、特にジステアリルジメチルアンモニウムイオンで有機化されたものが好ましい。層状粘土鉱物の有機化は、例えば、有機オニウムイオンを含む水溶液中に粘土鉱物を浸漬した後、該粘土鉱物を水洗して過剰な有機オニウムイオンを除去することにより得られる。こうして得られた有機化された層状粘土鉱物は、ゴム成分に配合、混練りすることにより、層状粘土鉱物はゴム中にナノオーダーの微粒子として分散され、極めて効果的に耐空気透過性を向上させることが可能となる。
このため、上記の有機化された層状粘土鉱物は、特にガラス転移温度が−55℃以下のゴム成分に配合することにより、耐空気透過性と低温時の耐久性の双方を満足するゴム組成物を得ることができる。
本発明のゴム組成物として用いる粘土鉱物としては、上記に説明した層状又は板状粘土鉱物(B)の中でも、特にクレイが好ましく、カオリン質クレイ、セリサイト質クレイ、焼成クレイ、表面処理を施したシラン改質クレイ等の板状のクレイが好ましく、カオリン質クレイが特に好ましい。これら(B)成分の層状又は板状粘度鉱物の平均粒径(平均ストークス相当径)は大きすぎると耐屈曲性の低下を招くので50μm以下とすることが好ましく、更に0.2〜30μmがより好ましく、特に0.2〜5μm程度の範囲がより好ましく、最も好ましくは、0.2〜2μmのものが用いられる。
層状又は板状粘土鉱物(B)のアスペクト比は、2〜200であれば、インナーライナー中で層状又は板状粘度鉱物粒子の面が、インナーライナーの厚さ方向と交差する方向に配向し、空気の透過経路を遮る結果、良好な耐空気透過性が得られるが、平均アスペクト比を好ましくは3〜150、より好ましくは5〜100、さらに好ましくは5〜50、特に好ましくは5〜30とすることにより、より優れた耐空気透過性を得ることができる。
平均アスペクト比が200を超える(B)成分を使用すると、充填量を増していった場合にゴム混練時の(B)成分の分散が均一に行われず、分散不良から耐屈曲性や耐空気透過性の低下を招くため好ましくない。
なお、平均アスペクト比は、図1に示すように平均長径xと平均厚みyよりx/yとして求められる。
[カーボンブラック(C)]
本発明のゴム組成物に用いるカーボンブラック(C)としては、従来ゴム組成物の補強用として慣用されているものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、好ましいカーボンブラックとして例示すれば、N539(FEF−LS)、N550(FEF)、N660(GPF)、N634(GPF−LS)、N642(GPF−LS)、N7524、N762(SRF−LM−NS)、N772、N774(SRF−HM−NS)等を挙げることができる。また、カーボンブラックは以下のコロイダル特性を有するものが好ましい。すなわち、窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以下が好ましく、20〜50m2/gがより好ましい。また、ジブチルフタレート吸油量(DBP)は、125cm3/100g以下が好ましく、100〜30cm3/100g程度であればより好ましい。ここで、上記コロイダル特性の窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K 6217−2:2001、DBPはJIS K 6217−4:2008に従ってそれぞれ測定される値である。
[チアゾール系加硫促進剤(D)]
本発明のゴム組成物に用いるチアゾール系加硫促進剤(D)としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールシクロヘキシルアミン塩、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩、2(4−モルホリニルジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられ、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド及び2−メルカプトベンゾチアゾールは反応性が高いのでより好ましい。
[ゴム成分(A)に対する層状又は板状粘土鉱物(B)、カーボンブラック(C)及びチアゾール系加硫促進剤(D)の配合量]
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分(A)100質量部に対して、層状又は板状粘土鉱物(B)は、80質量部以上を配合することが耐空気透過性を向上させる観点から好ましく、より好ましくは、85〜200質量部、特に好ましくは90〜160質量部とすることが望ましい。
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分(A)100質量部に対して、カーボンブラック(C)の配合量は、15質量部以下であることを要す。カーボンブラックの配合量が15質量部を超えると、カーボンブラックによる立体障害等が発生しやすくなり、タイヤ用インナーライナーとして本発明のゴム組成物を用いた場合に、層状又は板状粘土鉱物(B)をタイヤ周方向に規則的に配列させることが困難となり、その結果、耐屈曲疲労性及び耐空気透過性に対して、優れた効果が得られにくくなる。カーボンブラック(C)の好ましい配合量は、3〜15質量部、特に好ましくは5〜13質量部である。カーボンブラック(C)を3質量部以上とすることにより、耐屈曲疲労性及び耐空気透過性に対して、優れた効果が得られると共に、また、補強性の低下や、ゴム組成物搬送時にモゲ、チギレによる工場作業性の低下も抑制することができる。
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分(A)100質量部に対して、チアゾール系加硫促進剤(D)は、0.1〜10質量部、好ましくは0.15〜5質量部を配合することが望ましい。(D)成分をこの範囲内で配合することにより、本発明のゴム組成物を加硫させる際の加硫時間が長くなるのを抑制することができることから、作業効率を向上させることができる。
本発明のゴム組成物において、脂肪酸金属塩の配合は必須でないが、本発明のゴム組成物は脂肪酸金属塩を含んでいてもよい。該脂肪酸金属塩は、脂肪酸と金属との塩であり、未加硫のゴム組成物のロールへの密着を抑制して、ゴム組成物の作業性を向上させる効果を奏する。なお、上記脂肪酸塩は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。上記脂肪酸金属塩の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲が好ましい。
本発明のゴム組成物にはナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマオイル、ブローンアスファルトなどの軟化剤を配合してもよい。その配合量は特に制限されず、用途に応じて適宜配合されるが、例えば、カーボンブラックの配合量と層状又は板状粘土鉱物(B)の配合量の合計が比較的少ない場合(ゴム成分100質量部あたり100質量部程度まで)には、ゴム成分100質量部に対して1質量部以上、特に3質量部から20質量部配合してもよい。ここで、ナフテン系オイルは環分析(m−d−M法)による%CN が30以上のものであり、パラフィン系オイルは%CP が60以上のものである。
また、本発明のゴム組成物においては、層状又は板状粘土鉱物(B)のゴムへの分散性を向上させるために、所望により、シランカップリング剤、ジメチルステアリルアミン、トリエタノールアミンなどの分散改良剤を添加することができる。その添加量としては、ゴム成分100質量部当たり0.1質量部から5質量部が好ましい。
さらに、本発明のゴム組成物には有機高分子樹脂からなる有機短繊維を配合することができる。このように有機短繊維を配合することにより、インナーライナーの厚みが薄いタイヤを製造する際に生じる可能性がある内面コード露出を効率よく抑制することができる。この有機短繊維の平均径は1μmから100μmで、平均長は0.1mmから0.5mm程度であることが好ましい。この有機短繊維は、短繊維と未加硫ゴム成分とをあらかじめ練って得られる複合体(以下FRRと称することがある)として配合してもよい。
このような有機短繊維の配合量はゴム成分100質量部あたり0.3質量部から15質量部が好ましい。この配合量を0.3質量部以上とすることにより内面コード露出の解消効果を十分得ることができ、5質量部以下とすることにより加工性への悪影響を抑えることができる。有機短繊維の材質には特に制限はなく、例えばナイロン6,ナイ66などのポリアミド、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリエチレンなどを挙げることができるが、これらの中では、ポリアミドが好ましい。また、有機短繊維を配合する場合には、得られるゴム組成物のモジュラスを増大させるために、ヘキサメチレンテトラミンやレゾルシンなどのゴムと繊維との接着向上剤をさらに配合することができる。
本発明のゴム組成物には、前記の配合剤以外にも、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、本発明で使用されるチアゾール系加硫促進剤以外の他の加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを本発明の目的が損なわれない範囲で配合させることができる。
本発明のゴム組成物は、通常の方法で製造することができる。つまり、ゴム成分(A)、層状又は板状粘土鉱物(B)、カーボンブラック(C)、チアゾール系加硫促進剤(D)、及び、必要に応じて適宜使用される配合剤を、混練機を用いて混練する。
層状又は板状粘土鉱物(B)とカーボンブラック(C)との総配合量が多い場合(例えば100質量部を超える場合)は、まず、ゴム成分(A)、層状又は板状粘土鉱物(B)とカーボンブラック(C)、その他の配合剤[加硫剤及びチアゾール系加硫促進剤(D)は含まない]を高温にて十分に混練し、次に、加硫剤及びチアゾール系加硫促進剤(D)を加えて低温にて練る方法が好ましい。この場合、高温練りは、必要に応じ、2ステージ以上に分けて行なうことができる。また、層状又は板状粘土鉱物(B)とカーボンブラック(C)との総配合量が少ない場合(例えば100質量部以下である場合)は、ゴム成分(A)を予備練りする工程(a)を導入することにより消費電力量を低減することができ、生産性をあげることができる。この場合、予備練りしたゴム成分(A)と、前記層状又は板状粘土鉱物(B)、カーボンブラック(C)及びその他の配合剤とを混練する工程(b)において、加硫剤及びチアゾール系加硫促進剤(D)を除いたすべての配合薬品を同時に投入し、混練を1ステージで行なうことにより、さらに生産性を上げることができて好ましい。前記工程(a)と前記工程(b)とは連続的に行なうことが好ましい。
上記ゴム成分を予備練りする工程(a)は、前述のゴム成分(A)のみを、バンバリーミキサーなどの混練機で素練り処理する工程である。本発明においては、この素練り処理は10秒間以上行なうことが好ましい。この素練り処理時間を10秒間以上とすることにより、続いての混練処理工程におけるローター表面に層状又は板状粘土鉱物(B)の凝集塊の生成を抑えることができ、加硫ゴム組成物とした際に優れた耐空気透過性及び耐屈曲疲労性を得ることができる。また、この素練り処理時間を長くすることは生産性が低下するので、該素練り処理時間は10秒間から60秒間の範囲がより好ましい。また、前記予備練り工程を施さずに混練工程を1ステージで行なうと、層状又は板状粘土鉱物(B)の凝集塊がローター表面で生成し易くなり、加硫ゴム組成物の耐空気透過性及び耐屈曲疲労性が十分得られないことがある。
混練処理工程(b)は、高温練りで行なわれ、素練り処理されたゴム成分(A)に、前述の層状又は板状粘土鉱物(B)、カーボンブラック(C)及びその他の配合剤[加硫剤及びチアゾール系加硫促進剤(D)は含まない]とを加え、混練処理する工程である。この混練工程は、1段階で行なってもよいし、複数段階に分けて行っても良い。混練温度は、80〜150℃程度の温度で混練することが好ましい。また、混練時間は、適宜、均一な混練状態となるように選択すればよいが、通常は、1〜30分間の混練時間で行なえばよい。
混練処理工程(b)を終えたゴム組成物は、加硫剤添加工程(c)を行なうために、加硫剤及びチアゾール系加硫促進剤(D)を添加して加硫剤添加工程(c)が行なわれる。この加硫剤添加工程(c)における温度は、通常は、80〜120℃程度の範囲内の温度で混練が行なわれる。混練り温度が120℃を超えると、加硫が始まり、加硫ゴム組成物の耐空気透過性や耐屈曲疲労性が低下する原因となる可能性があり、望ましくない。加硫剤添加工程(c)における混練り時間は、通常は、1〜10分間程度の範囲内の時間で行なわれる。
前記で説明した本発明のゴム組成物を、このような混練方法を用いることにより、層状又は板状粘土鉱物(B)及びカーボンブラック(C)の分散性が良好で、耐空気透過性、耐屈曲疲労性、低温耐久性などに優れるゴム組成物を生産性よく製造することができる。
混練機の種類は特に制限されず、バンバリーミキサー、インターミックスなどの密閉式混練機、ロールミキサーなど、通常ゴム業界で用いられるものから適宜選択することができるが、密閉式混練機が好ましい。
このようにして得られた本発明のゴム組成物は、タイヤのインナーライナー用ゴム組成物として好適に用いられる。このゴム組成物は加硫後の−20℃、歪振幅0.1%下での動的弾性率が、800MPa以下、さらに好ましくは600MPa以下であることが望ましい。
本発明の空気入りタイヤは、前記のゴム組成物をインナーライナーに用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて上記のような各種薬品を配合して得られる本発明のゴム組成物を未加硫の状態でインナーライナー用部材として加工し、従来の製造工程によりタイヤのインナーライナーとして成形、加工する。インナーライナー層の加硫は、タイヤとして成形された後、130℃以上の加硫温度で加硫を行なう。
本願発明のゴム組成物は、高配合量で層状又は板状粘土鉱物(B)を含有するにもかかわらず、従来の加硫時間より短時間で加硫を行なうことができることから、作業時間を短縮することが可能となり、タイヤの生産性を向上することができる。
また、本発明のゴム組成物をインナーライナーに用いることにより、インナーライナーの厚みが薄いタイヤ、つまり、インナーライナーが薄ゲージ化されたタイヤを容易に製造することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。各種物性評価方法は以下の方法により行った。
(1)空気透過率(耐空気透過性)
実施例1〜9及び比較例1〜6によって得られた加硫後のゴム組成物を、空気透過試験機M−C1(東洋精機(株)製)を用いて60℃にて空気透過率を測定した。比較例1の空気透過率を100として、空気透過率を指数で示した。指数が小さいほど、空気透過率は小さく耐空気透過性は良好であることを示す。
(2)加硫時間
実施例1〜9及び比較例1〜6によって得られた未加硫ゴム組成物をJIS K6300−2:2001の振動式加硫試験機による加硫特性の求め方に準じ、50%加硫時間[Tc(50)](min、145℃)を測定した。測定機として、ジェイエスアール(株)製のキュラストメーターを用いて、145℃±1℃で加硫トルクカーブを測定し、最大値の50%に達するまでに要する時間(min)を50%加硫時間[Tc(50)]とした。比較例1の加硫時間を100として指数で表示した。指数が小さいほど加硫時間が短く、優れていることを示す。
(3)耐屈曲疲労性
実施例1〜9及び比較例1〜6によって得られた加硫後のゴム組成物を、JIS K6260:2010の屈曲試験法に準じて、加硫ゴム試験片を作製し、屈曲試験を実施し、試験片に10mmのクラックが発生するまでの時間を測定した。比較例1の時間を100として、指数で示した。指数が大きいほど、耐屈曲疲労性に優れていることを示す。
(4)未加硫ゴム組成物の強度
実施例1〜9及び比較例1〜6によって得られた未加硫ゴム組成物の強度を未加硫ゴムの引張り試験JIS K−6251に準拠して測定した。厚さ4.00±0.40mmの未加硫ゴムシートをリング状(JIS−5号型)に打ち抜いたサンプルを、温度40℃にて100±5mm/分の速度で引張り、破断時までの応力測定を行い、引張り強さを測定した。実施例1の引張り強さを100として指数で表示した。指数が大きいほど、未加硫ゴム組成物の強度に優れていることを示す。
実施例1〜9及び比較例1〜6
第1表に示す種類と量の配合剤及びステアリン酸3質量部、スピンドルオイル5.0質量部、亜鉛華1.0質量部、及び硫黄1.0質量部を配合する15種類のゴム組成物を調製した。
これらのゴム組成物をバンバリーミキサーを用いて高温練り(最高温度140℃)と低温練り(最高温度100℃)の2ステージにて混練し、未加硫ゴム組成物を得た。なお、低温練りでは、亜鉛華、加硫促進剤及び硫黄を添加して混練した。得られた未加硫ゴム組成物について、加硫時間を測定した。また、未加硫ゴム組成物をカレンダー成形によって得られた試験片について、未加硫ゴム組成物の強度を測定した。次にカレンダー成形によって得られた試験片の未加硫ゴム組成物を160℃、50分間の条件で加硫し、得られた加硫後の試験片のゴム組成物について、耐空気透過性及び耐屈曲疲労性を測定した。その結果を第1表に示す。
Figure 2014024997
[注]表1において、
*1: JSR株式会社製、商標:「JSR BROMOBUTYL 2255」
*2: 旭カーボン株式会社製、N660、商品名「旭#55」
*3: 偏平クレイ[J,M,Huber社製 商標:「POLYFIL DL」(アスペクト比:10)](偏平クレイとは、カオリンクレイのアスペクト比が大きいもの)
*4: 加硫促進剤〔ノクセラーDM-P、大内新興化学工業(株)製 商標(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)〕
*5: 加硫促進剤〔ノクセラーM-P、大内新興化学工業(株)製 商標(2−メルカプトベンゾチアゾール)〕
*6: 加硫促進剤〔ノクセラーPZ、大内新興化学工業(株)製 商標(ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛)〕
*7: 加硫促進剤〔ノクセラーTOT−N、大内新興化学工業(株)製 商標(テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)〕
[評価結果]
第1表に示す実施例1〜9のゴム組成物は、空気透過率の指数(この指数が小さいほど耐空気透過性が良好であることを示す。)が低く、耐空気透過性が優れていることを示している。また、実施例1〜9のゴム組成物は、クレイの配合量が高いにもかかわらず、加硫速度が低いことを示している。一方、比較例2のゴム組成物は、カーボンブラックの配合量が多いため、耐空気透過性や耐屈曲疲労性が低下していることがわかる。そして、比較例5のゴム組成物は、カーボンブラックを用いない場合には、未加硫強度ゴム組成物の強度が低下していることがわかる。また、比較例1、3、4及び6のゴム組成物は、チアゾール系加硫促進剤を用いなかったり、他の加硫促進剤を用いたものであるが、加硫速度が低下して加硫時間が長くかかっていることがわかる。
本発明のゴム組成物は各種タイヤのインナーライナー用ゴム組成物として有用であり、乗用車用、小型トラック用、軽乗用車用、軽トラック用及び大型車両用(トラック・バス用、建設車両用等)等の各種空気入りタイヤのインナーライナーとして好適に用いられる。

Claims (6)

  1. ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含有するゴム成分(A)に対して、層状又は板状粘土鉱物(B)、カーボンブラック(C)及びチアゾール系加硫促進剤(D)を配合してなるゴム組成物であって、該カーボンブラック(C)の配合量が、該ゴム成分(A)100質量部に対して、15質量部以下であることを特徴とするゴム組成物。
  2. 前記チアゾール系加硫促進剤(D)の配合量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部である請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記ゴム成分(A)が、ハロゲン化ブチルゴムを80〜100質量%含有する請求項1又は2に記載のゴム組成物。
  4. 前記層状又は板状粘土鉱物(B)の配合量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、80質量部以上である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
  5. 前記ゴム組成物がタイヤのインナーライナー用ゴム組成物である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物をインナーライナーに用いた空気入りタイヤ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109679239A (zh) * 2018-12-24 2019-04-26 贵州轮胎股份有限公司 一种全钢子午轮胎的气密层胶料及其制备方法

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