JP2014023434A - デンタルプラークの細菌叢の解析方法 - Google Patents

デンタルプラークの細菌叢の解析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014023434A
JP2014023434A JP2012163813A JP2012163813A JP2014023434A JP 2014023434 A JP2014023434 A JP 2014023434A JP 2012163813 A JP2012163813 A JP 2012163813A JP 2012163813 A JP2012163813 A JP 2012163813A JP 2014023434 A JP2014023434 A JP 2014023434A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
caries
dental plaque
plaque
collected
amplified
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012163813A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoji Saeki
洋二 佐伯
Yoshihisa Yamashita
喜久 山下
Toru Takeshita
徹 竹下
Masaki Yasui
雅樹 安井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyushu University NUC
Lotte Co Ltd
Original Assignee
Kyushu University NUC
Lotte Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyushu University NUC, Lotte Co Ltd filed Critical Kyushu University NUC
Priority to JP2012163813A priority Critical patent/JP2014023434A/ja
Publication of JP2014023434A publication Critical patent/JP2014023434A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】デンタルプラークの細菌叢の詳細な解析を課題とする。
【解決手段】本発明は被験者からデンタルプラークを採取し、採取したデンタルプラーク中のDNAを抽出し、抽出されたDNA中の16S rRNA遺伝子を増幅し、増幅された遺伝子の配列の解析を行うことを特徴とする微生物の解析方法を提供する。
【選択図】図2

Description

本発明はデンタルプラークの細菌叢の解析方法に関する。
齲蝕の発症にデンタルプラークが決定的な原因子として働くことは周知の事実である。一方、従来の齲蝕病因論では、ミュータンス連鎖球菌が主要な齲蝕原性細菌とされるが、これだけで成人の齲蝕病態を十分に説明することができなかった。
デンタルプラークはバイオフィルムの成熟に伴い、細菌の種類ならびに各細菌の割合が変化することでその病原性が変化すると考えられる。これまでのところデンタルプラークを構成する細菌叢の経時的変化については1967年にRitz HLが報告した結果(非特許文献1)に報告がある。しかし、この報告のみでは、複雑な細菌叢を背景とする齲蝕原性バイオフィルムの詳細な構成を解明するには多くの課題を残している。
一方、近年の分子遺伝工学手法の発達により、細菌群集の解析を培養法に頼ることなく実施できるようになり、複雑な細菌叢の解析に新しい取り組みが進められるようになってきた。発明者らは以前、新しい細菌叢分析法として独自に開発した改良Terminal−Restriction Fragment Length Polymorphism(T−RFLP)法を用いて、バイオフィルムとして形成されるデンタルプラークの成熟過程を経日的に追跡することに成功し、興味ある知見を得た(特許文献1)。
特開2011−234687号公報
H.L. Rit,Microbial population shifts in developing human dental plaque. Archives of Oral Biology 12(22): 1561-1568 Oral Microbiol Immunol 22(6):419−28,2007 ISME J.,3(1):65−78,2009. Mol Microbiol.,63(3):872−80,2007. Genome Res.,19:1141−1152,2009.
本発明は、被験者からデンタルプラークを採取し、採取したデンタルプラーク中のDNAを抽出し、抽出されたDNA中の16S rRNA遺伝子を増幅し、増幅された遺伝子の配列の解析を行うことを特徴とする、デンタルプラークの細菌叢の解析方法を提供する。
デンタルプラークの細菌叢の詳細な解析を課題とする。
本発明は被験者からデンタルプラークを採取し、採取したデンタルプラーク中のDNAを抽出し、抽出されたDNA中の16S rRNA遺伝子を増幅し、増幅された遺伝子の配列の解析を行うことを特徴とする微生物の解析方法を提供する。
また、本発明は被験者からデンタルプラークを採取し、採取したデンタルプラーク中のDNAを抽出し、抽出されたDNA中の16S rRNA遺伝子を増幅し、増幅された遺伝子の配列の解析を行うことを特徴とする、齲蝕になりやすさを診断する方法を提供する。
さらに、本発明は被験者からデンタルプラークを採取し、採取したデンタルプラーク中のDNAを抽出し、抽出されたDNA中の16S rRNA遺伝子を増幅し、増幅された遺伝子の配列の解析を行うことを特徴とする、齲蝕になりやすさの診断を補助するためのデータ収集方法を提供する。
本発明においては、16S rRNA遺伝子を増幅する際に、マイクロリアクター内で増幅し、遺伝子の配列の解析は、パイロシーケンス法により行うことができる。また、16S rRNA遺伝子を増幅する際に、検体に特有のタグ配列を付加したプライマーを使用することができる。また、プラーク形成から1から5日目のいずれかにおいてデンタルプラークを採取することができ、とりわけ4日目のデンタルプラークを採取することが好適である。さらには、デンタルプラークの採取の際には、口腔内プラーク形成装置を用いてもよく、その際は、装着から1から5日目のいずれか、とりわけ4日目の口腔内プラーク形成装置からデンタルプラークを採取することが好適である。
本発明の方法によれば、デンタルプラークの細菌叢の詳細な解析が可能となる。マイクロリアクターを用いることで大量の遺伝子情報を得られる。パイロシーケンス法により行うことで、比較的安価に高速に大量の解析を行うことができる。また、検体に特有のタグ配列を付加したプライマーを使用することにより、得られた結果の情報処理が容易となる。
さらには、実施例に示すように、プラーク形成から1日目から5日目、とりわけ4日目のデンタルプラークを採取することにより、齲蝕多発群と齲蝕経験のない群とで明確な差のある解析結果を得ることができる。すなわち、本発明の方法により、齲蝕になりやすさの診断、あるいは、診断を補助するデータ収集が可能となる。
また、デンタルプラークの採取の際に、口腔内プラーク形成装置を用いて行うことで、in vivoで長期に渡りプラークを形成することができ、経日的な解析が可能となる。
デンタルプラーク形成装置の例を示す。 各細菌の構成比率を示す。 菌属レベルでの細菌構成の比率を示す。 菌属レベルでの細菌構成の比率を示す。 菌属レベルでの細菌構成の比率を示す。 菌種レベルでの細菌構成の比率を示す。 菌種レベルでの細菌構成の比率を示す。 菌種レベルでの細菌構成の比率を示す。
本発明は、被験者からデンタルプラークを採取し、採取したデンタルプラーク中のDNAを抽出し、抽出されたDNA中の16S rRNA遺伝子を増幅し、増幅された遺伝子の配列の解析を行うことを特徴とするデンタルプラークの細菌叢の解析方法を提供する。
また、本発明は被験者からデンタルプラークを採取し、採取したデンタルプラーク中のDNAを抽出し、抽出されたDNA中の16S rRNA遺伝子を増幅し、増幅された遺伝子の配列の解析を行うことを特徴とする、齲蝕になりやすさの診断方法を提供する。
さらに、本発明は被験者からデンタルプラークを採取し、採取したデンタルプラーク中のDNAを抽出し、抽出されたDNA中の16S rRNA遺伝子を増幅し、増幅された遺伝子の配列の解析を行うことを特徴とする、齲蝕になりやすさの診断を補助するためのデータ収集方法を提供する。
デンタルプラークとは歯垢ともいい、歯や歯肉に付着するバイオフィルムからなり、細菌をはじめとする微生物およびその代謝物が多く含まれる。
16S rRNAとはリボソームのサブユニットを構成するRNAである。リボソームは配列の保存性が高く、生物種の比較の際の目安となりやすい。中でも16S rRNAは適度な長さを持っており、生物種の決定に好都合に用いられる。
細菌叢とは、特定の環境中に存在する細菌の集合をいう。本明細書において、細菌とは、微生物のことを指し、真正細菌のみでなく、古細菌、真核生物、菌類、粘菌、ウィルスなどを含む。
齲蝕になりやすさとは、個人が齲蝕になる傾向を指す。同じ環境であっても、個人により、齲蝕になる場合と、ならない場合がある。一般的に、齲蝕経験のない者、あるいは少ない者は、齲蝕になりやすさが低く、齲蝕経験の多い者は、齲蝕になりやすさが高いと考えられる。
本実施例では、齲蝕多発群と齲蝕経験のない群とで細菌の構成に差が見られる場合を示す。被験者から採取して解析した細菌の構成が、齲蝕多発群の細菌構成に一致する、あるいは、類似すれば、齲蝕になりやすさが高いと診断でき、齲蝕経験のない群の細菌構成に一致する、あるいは類似すれば、齲蝕になりやすさが低いと判断することができる。
本発明において、16S rRNA遺伝子を増幅する際には、マイクロリアクター内で増幅されることができる。
マイクロリアクターとは、微小なサイズの反応容器のことであり、より具体的にはエマルジョンを挙げることができる。近年、大量遺伝子解析の際、あらかじめアダプターを付加された遺伝子を、アダプターを介してビーズに結合して、エマルジョン内で増幅することで、ビーズ上で、クローナルに遺伝子を増幅する技術が用いられている。
遺伝子の配列の解析は、パイロシーケンス法によることができる。パイロシーケンス法とは、遺伝子配列の解析の方法で、対象となるDNAを鋳型として複製を行う際に、取り込こまれたヌクレオチドから放出されるピロリン酸を検出することを特徴とする方法である。ピロリン酸の検出には、ATPを介し、ルシフェリンの発光に基づくことが多い。たとえば、デオキシリボヌクレオチドを一種類ずつ加え、その際に、どの程度発光が起こるかを検出することで、どの遺伝子が取り込まれたことが分かり、遺伝子配列を決定することができる。
また、16S rRNA遺伝子を増幅する際に検体に特有のタグ配列を付加したプライマーを使用することができる。タグ配列とは、遺伝子配列の解析の際に、試料がどの検体に由来するか知るための手がかりとすべく、人為的に挿入される配列のことである。
本発明は、デンタルプラーク形成から1から5日目、さらに好ましくは4日目のデンタルプラークを採取することができる。デンタルプラーク形成の際は、形成開始の直前に口腔内を洗浄し、その後、デンタルプラーク採取まで口腔内の洗浄を行わないことにより達成できる。デンタルプラークは形成の期間を経た後に、主に口腔内の歯面から綿棒等で採取することができる。
一方、デンタルプラークの採取には口腔内プラーク形成装置を用いて行うことができる。口腔内デンタルプラーク形成装置とは、in vivoでデンタルプラークの形成のために用いられる、着脱可能な装置をいい、歯面の代替となるプラーク形成部を含んでおり、好ましくは、プラーク形成部は焼結体合成ハイドロキシアパタイトからなる。
口腔内プラーク形成装置を装着する場合は、装着した日から1から5日目、さらに好ましくは4日目のデンタルプラークを採取することができる。実施例では、口腔内プラーク形成装置を用いており、装置の装着から4日目の口腔内プラーク形成装置から、採取されるデンタルプラークの細菌叢は、齲蝕の有無によりもっとも顕著に差が認められた。
また、本発明は、上記の細菌叢の解析方法あるいは、齲蝕になりやすさの診断を補助するためのデータ収集方法に用いるための、キットを提供する。
キットは、それぞれの方法を実施するために用いられる、各種試薬、バッファー、酵素、オリゴDNAのほか、デンタルプラークを採取するための綿棒などの道具、あるいは、口腔内プラーク形成装置を含むことができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
1.被験者
九州大学歯学部の学生を対象にボランティアを155名程募り、ボランティア全員に対して齲蝕の診査を行った。齲蝕の診査は、歯冠部齲蝕については社団法人日本学校歯科医会の「う歯(C)及び要観察歯(CO)の検出基準」に準じて齲歯(C)を検出し、根面齲蝕についてはWHOの基準に準じてCを検出した。その結果に基づき、齲蝕を多発する10名を被験者として選んだ。また、被験者に過去の齲蝕経験を質問し、その結果をもとに齲蝕を有さない被験者からなるグループを10名設定した。すなわち、合計20名を本実施例における被験者とした。
被験者の年齢、性別および齲蝕に関する健康パラメータを表1に示す。各10名ずつ、齲蝕を多発する被験者からなるグループ(被験者A〜J)ならびに齲蝕を有さない被験者からなるグループ(被験者K〜S)を選出した。なお、実験開始後、装置装着に対する違和感のため協力できない者が齲蝕を有さない被験者からなるグループに1名発生したため、最終的には齲蝕を有さない被験者からなるグループは9名となった。
被験者の年齢は21歳から28歳であり、齲蝕を多発する被験者からなるグループの平均年齢は24.1歳、齲蝕を有さない被験者からなるグループの平均年齢は23.2歳であったが、t検定により両群間に有意な差は認められなかった。
2.口腔内デンタルプラーク形成装置
in vivoでのデンタルプラークの形成のため、図1に示す着脱可能なデンタルプラーク形成装置を作成した。経日的なプラーク形成過程の観察には10日間程度成熟させたプラークが必要であるが、実際の歯面のプラークの清掃を被験者に長期間停止させることは侵襲性や不快感を考えると倫理的に不可能である。そのため、図1に示す着脱可能な口腔内装置を開発した。
被験者の下顎歯列の印象を採得し、採取した印象をもとにマウスピース様の装置を歯科用の即時重合レジンを用いて作製し、装置による咬頭干渉がないように架橋部を残して咬合面を削除した。両側の臼歯部頬側面には、スティッキーワックスによって、歯面の代替となる焼結体合成ハイドロキシアパタイトのプラーク形成プレート(直径5mm、厚さ2mmの円筒状のプレート)を6枚ずつ接着し、プラークの形成面とした。装置の装着にあたっては、被験者に試適し、歯肉や粘膜への侵襲がないことおよび発音障害などが生じないことを確認した。
装着に際しては、以下の点を被験者に確認した。
(1)食事および歯磨き時は装置を外し、生理食塩水を満たしたケースに入れて保管すること。
(2)その際、決してハイドロキシアパタイトのプレートの面には触れないこと。
(3)食事および歯磨き時以外は常に装置を装着しておくこと。
3.プラークの調製ならびにサンプルからの細菌DNAの抽出
装置装着から5日目までは1日ごとに1枚、さらに7日目に1枚、装置からプラーク形成プレートを取り外し,溶菌液の入ったチューブの中に浸漬した。超音波処理でプラーク形成プレートからプラークを剥ぎ取り、遠心分離機でプラークを一旦沈殿させ、溶菌液からプラーク形成プレートを除去した。取り除いたプラーク形成プレートについては、その表面にプラークの付着が無いことを顕微鏡で確認した。
サンプル中に含まれるDNAの抽出は、非特許文献2の方法を一部改良して行った。菌を採取したチューブの中に0.3gのzirconia−silica beads(直径0.1mM:Biospec Products,USA)と1個のtungsten−carbide bead(直径3mM:Qiagen,Germany)を加えて90℃で10分間加温した後、Disruptor Genie(Scientific Industries,Inc.,USA)を用いて菌体を震盪、破砕し、200μlの1% SDS溶液を加えて、70℃で10分間加温した。さらに、蛋白質成分を除去するため、フェノール(v/v)による抽出を1回、フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール(25:24:1、v/v)混合溶液による抽出を1回行った後、エタノール沈殿処理を行い、生じた沈殿物を50μlのTE溶液(1mM EDTA を含む10mMトリス塩酸緩衝液 ; pH8.0)に溶解し、DNA試料として分析時まで−30℃で凍結保存した。
4.454 Life Sciences genome sequencer FLX instrumentによる遺伝子情報の取得
抽出DNA試料から16S rRNA遺伝子を増幅した。この際、アダプター配列と、検体ごとに人為的に取り決めた遺伝子配列(タグ)、が含まれるように増幅した。
すなわち、5’側にアダプター配列 Life Sciences adaptor Aと6塩基のタグ配列(CCA TCT CAT CCC TGC GTG TCT CCG ACT CAG NNN NNN)を付与した8F(AGA GTT TGA TYM TGG CTC AG)をフォワードプライマーとして、アダプター配列 Life Sciences adaptor B(CCT ATC CCC TGT GTG CCT TGG CAG TCT CAG)を付与した338R(GGA CTA CCR GGG TAT CTA A)をリバースプライマーとしてPCR法により行った。用いたプライマーの配列を表2に示す。なお、検体数に対し、プライマーの種類が少ないが、これは反応と解析を3回に分けて行ったためである。
PCR反応にはKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績株式会社)を用いた。1μlの鋳型DNA(100−500ng/μlになるよう希釈したもの)に5μlのKOD DNAポリメラーゼ10×PCR buffer(60mM 硫酸アンモニウム、100mM 塩化カルシウム、1%Triton X−100、100μgウシ血清アルブミンを含む1.2Mトリス塩酸緩衝液;pH8.0)、5μlの2mM dNTPs、2μlの25mM 塩化マグネシウム、各0.5μlの1μM両プライマー、1μlのKOD DNAポリメラーゼ(2.5U/μl)を加えた後、滅菌蒸留水を加えて総量を50μlとしてPCR反応を行った。PCR反応にはBiometra T3 thermocycler(Biometra,Germany)を用いた。反応条件は98℃ 15秒、60℃ 2秒、72℃ 30秒で30サイクルの反応を行った。得られたPCR産物は、泳動用ゲルすなわち2%(wt/vol)のアガロースを含む1×TAEを用いて、アガロース電気泳動を行い、目的のバンド出現部位を切り出し、Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega,USA)を用いて精製し、未反応プライマー、プライマーダイマー、その他非特異的増幅断片の除去を行った。
精製した16S rRNA遺伝子増幅断片を含む各溶液はNanoDrop spectrophotometer(NanoDrop Technologies Wilmington,DE)を用いDNA濃度を測定し、各検体について等濃度(50ng/μl)になるように調整したのち混合した。混合検体は北海道システム・サイエンス株式会社に受託し、454 Life Sciences genome sequencer FLX instrument(Roche,Basel,Switzerland)による塩基配列の解読を行った。
すなわち、上記で得られたアダプターが付加されたDNAは、一本鎖にした後、アダプターを介してビーズに結合した。ビーズを油水エマルジョンの中に包み込み、ビーズ1つとDNAフラグメント1つを持つマイクロリアクターを形成し、リアクター内にてDNA断片を増幅した。増幅反応後DNAフラグメントがビーズに結合している状態で油水エマルジョンを破壊した。
以上によって、DNAはビーズごとにクローナルに増幅された。これらのビーズを濃縮し、配列解析をするためのピコタイタープレート上に添加した。ピコタイタープレートを装置にセットし、それぞれの配列をパイロシークエンス法により解読した。すなわち、ポリメラーゼによりテンプレートに相補的な塩基が取り込まれた際に放出されるピロリン酸を、ルシフェリンの発光に基づき、CCDカメラで検出することにより、DNAの配列を解読した。
5.塩基配列データ解析
得られた塩基配列データは、まずPHPで記述したスクリプトにより断片長が240塩基以下のもの、平均Quality scoreが25を下回るものを取り除き、次にRで記述したスクリプトにより8Fプライマーを含まないもの、6塩基を超えるホモポリマーを含むもの、Nを含むものを解析から除外した。残りの配列については挿入した6塩基のタグ配列の情報をもとに各被験者に振り分けた。それぞれの配列はHuman Oral Microbiome Database(HOMD)に登録されている1647の口腔細菌16S rRNA遺伝子配列(HOMD rRNA RefSeq Extended Version 1.1)に対して相同性検索を行い、98.5%以上の相同性が認められた場合該当の菌種に振り分けた。振り分けられなかった配列についてはRDP pyrosequencing pipeline に公開されているcomplete−linkage clustering toolを用い、97%以上の相同性を持つものをOperational taxonomicUnit(OTU)としてまとめた。さらにDereplicate request functionを用い各OTUから代表配列を選出した。代表配列はRDP classifierを用いて属レベルまでその由来を決定した。
なお、各菌の存在比率の比較にはWilcoxon rank−sum test を用いた。
6.パイロシーケンスにおける解析リード数
19名の被験者から得られた1から5日目のプラーク検体、計95サンプルについて16S rRNA遺伝子のパイロシーケンスを行い、プライマーに組み込まれたタグ配列を元にデータの解析を行った。得られた372,296 リードの塩基配列のうち、解析可能なものは244,017リードであった。検体ごとの解析リード数を表3に示す。平均2568 ± 916リード、最高4717リード(R,Day4)、最低827 リード(N,Day3)であった。
7.齲蝕多発群と齲蝕経験のない群の検出細菌種数、細菌群集の構成の複雑さの比較
齲蝕多発群と齲蝕経験のない群について、検出OTU(細菌種)数、Chao1、Shannon indexの比較を行った。3日目、4日目については解析リード数に差が認められるため一概に比較することは出来ないが、1日目と2日目は、齲蝕経験のない群において、齲蝕多発群に比べて有意に多くのOTUが検出されており、プラーク形成初期においては齲蝕多発群の細菌群集構成がよりシンプルであることが示唆された。最大検出OTU数であるChao1、細菌群集の複雑さを示すShannon index においても有意とはいえないものの、同様の傾向が認められた(表4)。
齲蝕多発群と比べて有意な差を認めたものをで示す。
8.プラーク中の細菌構成の5日間での変化
19名の被験者のプラーク中からは40菌属と属レベルまでは分類することの出来ない24の細菌群が検出された。そのうちStreptococcus、Neisseria、Terrahaemophilus、Gemella、Rothia、Granulicatella、Prevotella、Actinomyces の8菌属は19名全員から検出され、これら8菌属で全体の7割以上を占めていた。各菌属の構成比率を図2に示す。Streptococcusが経過日数に関わらず最も優勢である一方で、その比率は日数経過に伴って減少が認められた。反対に上記8菌属以外の細菌の比率が日数の経過とともに増加していた。
9.菌属レベルでの齲蝕多発群と齲蝕経験のない群の細菌構成の違い
菌属レベルでの細菌構成の比率を図3から図5に示す。図3以降の図においては、縦軸はパーセントを示し、横軸は19人の被験者に対応している。検出された64の菌属ないし細菌群のうち、9つは齲蝕多発群と齲蝕経験のない群の間にその存在比率に有意な違いが認められた。そのうちAbiotrophia、Class beta−proteobacteria、Gemella、Granulicatella、Neisseria、Porphyromonas、TM7は、5日間のうちどこかで齲蝕経験のない群で多く存在した。特にGemella、Neisseria の2菌属はプラーク形成初期、すなわち1日目から3日目にかけて齲蝕経験のない群で有意に高比率検出されており、細菌の初期付着過程における齲蝕病原性の違いに何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられる。一方でStreptococcus は2日目に、Veillonella は2、4、5日目に齲蝕多発群において有意に高比率検出された。特にVeillonellaが齲蝕多発群においてプラーク成熟期にその比率が増加しているのは興味深い。これらの結果は齲蝕のなりやすさの診断の際の基準となりうる。
10.OTUレベル(菌種レベル)での齲蝕多発群と齲蝕経験のない群の細菌構成の違い
菌属レベルでの細菌構成の比率を図6から図8に示す。今回検出された500OTUのうち、12OTUは齲蝕多発群と齲蝕経験のない群の間でその存在比率に有意な違いが認められた。そのうち8OTUは齲蝕経験のない群で優勢になっており、4OTUは齲蝕多発群で優勢であった。Neisseria flava とGemella haemolysans は付着初期に齲蝕経験のない群で特に高比率で検出された。Gemella属についてはその他のGemella属の菌種(G. sanguinis、G. morbillorum)については有意差こそ認められないものの齲蝕多発群でより高頻度に検出されており、前年度のT−RFLP解析における結果とも良く一致していたと言える。反対に齲蝕多発群において高比率で検出されたのは、Veillonella sp. OT53とStreptococcus oralis であった。Streptococcus oralis は1日目こそ有意差が認められないものの5日間にわたり齲蝕多発群において非常に高比率で検出され、かつコントロール群でほとんど検出されなかった。これらの結果は齲蝕のなりやすさの診断の際の基準となりうる。パイロシーケンスのリード長は400塩基弱と短く菌種同定精度には若干不安があるため本結果からS. oralis であると言い切るには至らないが、齲蝕に関連のある特定のStreptococcus 属の菌種の存在が示唆されたといえる。ちなみに本OTUの塩基配列はS. mutans、S. sobrinus とは大きく異なっており、これらの菌種とは考え難い。
11.考察
本研究から、歯の表面に形成されるデンタルプラークの形成過程には個人差があるが、縁上プラークはほぼ4日間程度で一定の細菌叢に落ち着くことが示唆された。また、齲蝕多発群と齲蝕経験のない群のプラーク細菌叢はプラーク形成後4日目の菌叢全体像のパターン分析によって明確に識別できた。両群間では年齢に有意な差はなく、齲蝕の誘発に関連する唾液流出量や緩衝能にも有意な差が認められなかったことから、両群間の齲蝕経験の差の大部分はプラークを構成する細菌種の差によって説明できると考えられる。また、本実施例で示された、齲蝕多発群と齲蝕経験のない群との細菌の構成の差は、被験者から採取して解析した細菌の構成から、齲蝕になりやすさの判断の基準となりうる。

Claims (10)

  1. 被験者からデンタルプラークを採取し、
    採取したデンタルプラーク中のDNAを抽出し、
    抽出されたDNA中の16S rRNA遺伝子を増幅し、
    増幅された遺伝子の配列の解析を行うことを特徴とする
    デンタルプラークの細菌叢の解析方法。
  2. 被験者からデンタルプラークを採取し、
    採取したデンタルプラーク中のDNAを抽出し、
    抽出されたDNA中の16S rRNA遺伝子を増幅し、
    増幅された遺伝子の配列の解析を行うことを特徴とする、
    齲蝕になりやすさの診断を補助するためのデータ収集方法。
  3. 16S rRNA遺伝子を増幅する際にマイクロリアクター内で増幅されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の解析方法。
  4. 遺伝子の配列の解析は、パイロシーケンス法によることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の解析方法。
  5. 16S rRNA遺伝子を増幅する際に検体に特有のタグ配列を付加したプライマーを使用することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の解析方法。
  6. プラーク形成から1から5日目のいずれかにおいてデンタルプラークを採取することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の解析方法。
  7. プラーク形成から4日目のデンタルプラークを採取することを特徴とする請求項5に記載の解析方法。
  8. 口腔内プラーク形成装置を用いて形成されたデンタルプラークを採取することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の解析方法。
  9. 請求項1および請求項1に係る請求項3から8の解析方法に用いられるデンタルプラークの細菌叢の解析キット。
  10. 請求項2および請求項2に係る請求項3から8のデータ収集方法に用いられる齲蝕になりやすさの診断キット。
JP2012163813A 2012-07-24 2012-07-24 デンタルプラークの細菌叢の解析方法 Pending JP2014023434A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012163813A JP2014023434A (ja) 2012-07-24 2012-07-24 デンタルプラークの細菌叢の解析方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012163813A JP2014023434A (ja) 2012-07-24 2012-07-24 デンタルプラークの細菌叢の解析方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014023434A true JP2014023434A (ja) 2014-02-06

Family

ID=50197714

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012163813A Pending JP2014023434A (ja) 2012-07-24 2012-07-24 デンタルプラークの細菌叢の解析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014023434A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019004400A1 (ja) * 2017-06-30 2019-01-03 ライオン株式会社 齲蝕の有無又はその発症リスクの判定方法及びバイオマーカー

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008538496A (ja) * 2005-04-12 2008-10-30 454 ライフ サイエンシーズ コーポレイション ウルトラディープ配列決定を用いて配列変異体を決定するための方法
JP2009509527A (ja) * 2005-09-29 2009-03-12 キージーン ナムローゼ フェンノートシャップ 変異させた集団のハイスループットスクリーニング
JP2009299048A (ja) * 2008-05-13 2009-12-24 Nippon Sharyo Seizo Kaisha Ltd 燃料ガスの脱硫方法及び脱硫装置
WO2010151842A2 (en) * 2009-06-26 2010-12-29 The Regents Of The University Of California Methods and systems for phylogenetic analysis
WO2011001496A1 (ja) * 2009-06-29 2011-01-06 株式会社 東芝 検体解析方法およびそれに用いるアッセイキット
JP2011234687A (ja) * 2010-05-12 2011-11-24 Lotte Co Ltd 齲蝕に関連する口腔内細菌の特定方法
WO2012036111A1 (ja) * 2010-09-16 2012-03-22 株式会社 東芝 多検体解析のためのプライマー、プローブおよび方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008538496A (ja) * 2005-04-12 2008-10-30 454 ライフ サイエンシーズ コーポレイション ウルトラディープ配列決定を用いて配列変異体を決定するための方法
JP2009509527A (ja) * 2005-09-29 2009-03-12 キージーン ナムローゼ フェンノートシャップ 変異させた集団のハイスループットスクリーニング
JP2009299048A (ja) * 2008-05-13 2009-12-24 Nippon Sharyo Seizo Kaisha Ltd 燃料ガスの脱硫方法及び脱硫装置
WO2010151842A2 (en) * 2009-06-26 2010-12-29 The Regents Of The University Of California Methods and systems for phylogenetic analysis
WO2011001496A1 (ja) * 2009-06-29 2011-01-06 株式会社 東芝 検体解析方法およびそれに用いるアッセイキット
JP2011234687A (ja) * 2010-05-12 2011-11-24 Lotte Co Ltd 齲蝕に関連する口腔内細菌の特定方法
WO2012036111A1 (ja) * 2010-09-16 2012-03-22 株式会社 東芝 多検体解析のためのプライマー、プローブおよび方法

Non-Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
A.DE LILLO, ET AL., J CLIN MICROBIOL., 2004, 42(12), PP5523-5527, JPN6016013629, ISSN: 0003297574 *
B.J.PASTER ET AL., J BACTERIOL., 2001, 183(12), PP3770-3783, JPN6016013631, ISSN: 0003297575 *
FAVERI M., ET AL., ORAL MICROBIOLOGY IMMUNOLOGY, 2008, 23, PP112-118, JPN6016013627, ISSN: 0003297573 *
H.L.RITZ, ARCHS ORAL BIOL., 1967, 12, PP1561-1568, JPN6016013623, ISSN: 0003297571 *
J.C.OLSON, ET AL., BMC ORAL HEALTH, 2011, 11(7), PUBLISHED ONLINE 2011 MAR 1. DOI: 10.1186/1472-6831, JPN6016013622, ISSN: 0003297570 *
K.YAMABE, ET AL., FEMS MICROBIOL LETT., 2008, 287, PP69-75, JPN6016013633, ISSN: 0003297576 *
Z.CHEN, ET AL., CHIN J DENT RES., 2011, 14(2), PP95-103, JPN6016013626, ISSN: 0003297572 *
安井優樹ら、口腔衛生学会誌、2008年、58巻5号、565−566頁, JPN6016013634, ISSN: 0003297577 *

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019004400A1 (ja) * 2017-06-30 2019-01-03 ライオン株式会社 齲蝕の有無又はその発症リスクの判定方法及びバイオマーカー

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Jiang et al. Pyrosequencing analysis of oral microbiota shifting in various caries states in childhood
Okada et al. Detection of Actinobacillus actinomycetemcomitans and Porphyromonas gingivalis in dental plaque samples from children 2 to 12 years of age
Corby et al. Heritability of oral microbial species in caries-active and caries-free twins
JP2020141686A (ja) 口腔内検査方法
JP2017023093A (ja) 歯周病及び齲蝕のリスクの判定方法
Jiang et al. AP-PCR detection of Streptococcus mutans and Streptococcus sobrinus in caries-free and caries-active subjects
Yang et al. The impact of caries status on supragingival plaque and salivary microbiome in children with mixed dentition: a cross-sectional survey
Yasunaga et al. Exploration of bacterial species associated with the salivary microbiome of individuals with a low susceptibility to dental caries
Rams et al. Introduction to clinical microbiology for the general dentist
Neves et al. Quantitative analysis of biofilm bacteria according to different stages of early childhood caries
Hata et al. Quantitative detection of Streptococcus mutans in the dental plaque of Japanese preschool children by real‐time PCR
de Castilho et al. Dental caries experience in relation to salivary findings and molecular identification of S. mutans and S. sobrinus in subjects with Down syndrome
Abbate et al. Correlation between un-stimulated salivary flow, pH and streptococcus mutans, analysed
Göhler et al. Comparison of oral microbe quantities from tongue samples and subgingival pockets
Doğan et al. Occurrence and serotype distribution of Aggregatibacter actinomycetemcomitans in subjects without periodontitis in Turkey
Gaeta et al. The presence of Enterococcus faecalis in saliva as a risk factor for endodontic infection
JP5885910B2 (ja) 齲蝕に関連する口腔内細菌の特定方法
JP6288758B2 (ja) 唾液の細菌叢の解析方法
JP2014023434A (ja) デンタルプラークの細菌叢の解析方法
KR102225447B1 (ko) 구강 세균의 군집을 이용한 알츠하이머 진단용 바이오마커 및 이의 용도
Naik et al. Viability of human dental pulp in determination of sex of an individual by identifying srygene through DNA analysis: A single blind pilot study
RU2324182C1 (ru) Способ диагностики патологических изменений микрофлоры полости рта
Thaweboon et al. A modified dip-slide test for microbiological risk in caries assessment
Kumari et al. Effect of dental caries on human individualization based on Multiplex STR Typing including Amelogenin marker study
Nikolić-Jakoba et al. Polymerase chain reaction in the identification of periodontopathogens: A reliable and satisfactory method?

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150721

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20150721

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160323

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160412

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20160610

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160812

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170105

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20170301

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20170704