JP2014019901A - 方向性電磁鋼板の製造方法および方向性電磁鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気特性の向上効果を十分に享受し得る条件で高エネルギービームを照射しても、被膜破壊を抑制することができ、しかも、絶縁被膜を再コートする必要がない磁区細分化処理方法を提案するとともに、その方法で製造した方向性電磁鋼板を提供する。
【解決手段】二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に、常温における被膜張力が5MPa以上である張力絶縁被膜を形成してなる方向性電磁鋼板の表面に対して、圧延方向と交差する向きに電子ビームを照射し、点状もしくは線状の熱歪み領域を導入して磁区細分化処理を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、前記電子ビームの照射を、鋼板温度を50〜600℃に加熱して行う、好ましくはさらに、鋼板表面に圧縮応力を付与した状態において行う、ことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法および方向性電磁鋼板に関し、具体的には、電子ビームを照射し磁区細分化処理を施すことによって低鉄損の方向性電磁鋼板を製造する方法と、その方法で製造した方向性電磁鋼板に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主として変圧器や電気機器等の鉄心材料として用いられるものであるため、磁気特性に優れていること、特に、省エネルギーの観点から、鉄損特性に優れる(鉄損が低い)ことが強く求められている。方向性電磁鋼板の鉄損を低減するためには、二次再結晶粒を{110}<001>方位(いわゆる「ゴス方位」)に高度に揃えてやることや、製品鋼板中の不純物量をできる限り低減することが重要である。
しかし、結晶方位の制御技術や、不純物の低減技術は、現在までにかなり高度なレベルまで到達しており、これ以上の改善は、製造コストとの兼ね合いから限界がある。そこで、鋼板の表面に、何らかの物理的な手法で不均一性(歪)を導入して磁区の幅を細分化することで鉄損を低減する磁区細分化技術が開発され、実用に供されている。
例えば、特許文献1には、方向性電磁鋼板の最終製品板にレーザビームを照射し、鋼板表層に線状の高転位密度領域(熱歪み領域)を導入し、磁区幅を狭くすることによって、鉄損を低減する技術が提案されている。レーザ照射を用いる磁区細分化技術は、その後、さらに改良されて、鉄損特性がより良好な方向性電磁鋼板が得られるようになってきている(特許文献2〜特許文献4参照。)。
また、レーザ照射以外の手段で熱歪領域を導入する方法としては、例えば、特許文献5には、鋼板表面にプラズマ炎を放射して線状の高転位密度領域を導入する方法が、また、特許文献6には、鋼板表面に電子ビームを照射して線状の高転位密度領域を導入する方法がそれぞれ提案されている。
しかし、電子ビームやレーザビームのような高いエネルギーを有するビームの照射は、鋼板表面に被成された絶縁被膜を溶融したり、破壊したりするため、絶縁被膜が薄くなったり、鋼板表面(地鉄)が露出したりする。その結果、高エネルギービームの照射によって磁区が細分化され、鉄損が低減されるものの、絶縁被膜の溶融や破壊によって、製品鋼板の絶縁性や防錆性(耐食性)が劣化してしまうという問題が発生する。
このような問題点を解決するため、絶縁被膜の破損部を補修する技術が提案されている。例えば、特許文献7には、磁区細分化により破壊された被膜の上に、絶縁被膜を再塗布する技術が、また、特許文献8には、再塗布する被膜中に固形物を添加して鋼板のすべり性を改善する技術が開示されている。
特公昭57−002252号公報 特開2006−117964号公報 特開平10−204533号公報 特開平11−279645号公報 特開昭62−096617号公報 特開平01−281708号公報 特開昭56−105421号公報 特開平04−165022号公報
しかしながら、上記特許文献7や特許文献8の技術のように、絶縁被膜を再コートする方法は、製造コストを上昇させるため極力回避したい。そのため、磁気特性の改善には最適ではないが、被膜破壊が起こらない条件で、高エネルギービームの照射が実施されているのが実情である。しかし、磁気特性を重視する場合には、敢えて被膜破壊が生ずる条件で高エネルギービームを照射しなければならない場合もある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気特性の向上効果を十分に享受し得る条件で高エネルギービームを照射しても、被膜破壊を抑制することができ、しかも、絶縁被膜を再塗布する必要がない方向性電磁鋼板の製造方法を提案するとともに、その方法で製造した方向性電磁鋼板を提供することにある。
発明者らは、上記の課題を解決するべく、高エネルギービームの中で、特に電子ビーム照射による熱歪導入方法に着目して鋭意検討を重ねた。その結果、仕上焼鈍後、張力絶縁被膜を形成した方向性電磁鋼板を、所定の温度に加熱した後、その表面に電子ビームを照射して熱歪み領域を導入してやることが、絶縁皮膜の破壊の抑制に極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に常温における被膜張力が5MPa以上である張力絶縁被膜を形成してなる方向性電磁鋼板の表面に対して、圧延方向と交差する向きに電子ビームを照射し、点状もしくは線状の熱歪み領域を導入して磁区細分化処理を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、前記電子ビームの照射を、鋼板表面を50〜600℃の温度に加熱して行うことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記電子ビームの照射を、圧縮応力を付与した鋼板表面に対して行うことを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記電子ビームを照射した鋼板表面に、絶縁被膜を再塗布しないことを特徴とする。
また、本発明は、上記のいずれかに記載の方法で製造したことを特徴とする方向性電磁鋼板である。
本発明によれば、方向性電磁鋼板の磁区細分化による鉄損低減効果を十分に享受し得る高いエネルギービームを照射しても、絶縁被膜の破壊を抑制することができるので、絶縁被膜を再塗布する必要のない低鉄損の方向性電磁鋼板を提供することが可能となる。
捩じり変形して鋼板に湾曲部を形成する方法を説明する図である。
まず、本発明は、二次再結晶焼鈍と純化焼鈍を兼ねた仕上焼鈍を施すことによって得られた方向性電磁鋼板の表面に、張力絶縁被膜を被成した後、その鋼板表面に電子ビームを照射して点状もしくは線状の熱歪領域を導入して磁区細分化処理を施す方向性電磁鋼板の製造方法である。
ここで、本発明において第一に重要なことは、上記電子ビームの照射は、仕上焼鈍と張力絶縁被膜の被成後に行う必要があることである。これは、方向性電磁鋼板の素材鋼板に二次再結晶を起こさせ、ゴス方位粒を優先成長させる仕上焼鈍工程、および、絶縁被膜に張力付与効果を発現させる被膜焼付工程は、いずれも高温で熱処理を施す工程であるため、電子ビームの照射で熱歪を付与しても、それらの熱処理によって上記熱歪が減少または消滅し、磁区細分化の効果が消失してしまうからである。
また、本発明において第二に重要なことは、上記張力絶縁被膜は、下地のフォルステライトを主体とするガラス質の被膜と、仕上焼鈍後に被成した絶縁被膜との合計で5MPa以上の引張応力を付与するものであることである。5MPa未満では、鉄損低減効果が十分に得られないからである。
そして、本発明の特徴である第三に重要なことは、上記電子ビームの照射を、鋼板を50〜500℃の温度に加熱した状態で行うことによって絶縁被膜の破壊を防止することである。鋼板を加熱して電子ビームを照射することで、被膜の破壊が抑制される理由は、現時点では、まだ十分明確にはできていないが、発明者らは以下のように考えている。
電子ビームの照射を受けた部分は、急激に加熱されるが、この際、地鉄と絶縁被膜との間の熱膨張差によって、被膜に過度な引張応力が付与され、被膜破壊が生ずる。そこで、鋼板を加熱しておくことによって、被膜の延性が向上するとともに、地鉄と被膜の熱膨張率差による応力も緩和されるので、被膜破壊が抑制される。その結果、本発明を適用した場合には、電子ビームを照射して磁区細分化処理を施した後も、絶縁被膜の絶縁性や耐食性が温存されるので、絶縁被膜を再塗布する必要がない。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の成分組成について説明する。
本発明の磁区細分化処理を施す方向性電磁鋼板は、従来公知の成分組成を有するものであればよく、例えば、下記の成分組成を有するものであることが好ましい。
Si:2.0〜8.0mass%
Siは、鋼の電気抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効な元素であるが、含有量が2.0mass%に満たないと、十分な鉄損低減効果が得られない。一方、8.0mass%を超えると、加工性が著しく低下するだけでなく、磁束密度も低下する。よって、Siは2.0〜8.0mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは2.5〜6.0mass%の範囲である。
C:0.0050mass%以下
製品板中に含まれるCは、磁気時効を起こして磁気特性を劣化させる元素であるため、0.0050mass%以下であることが好ましい。
なお、本発明の方向性電磁鋼板の素材となるスラブ中に含まれるCは、0.0050mass%以下でも二次再結晶が可能であるので下限を設ける必要はないが、熱延板組織を改善する効果があるため、0.0050mass%超え含有させてもよい。一方、0.15mass%を超えて含有させると、製造工程で磁気時効の起こらない0.0050mass%以下までCを低減することが難しくなるので、上限は0.15mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.0050〜0.10mass%の範囲である。
Mn:0.005〜1.0mass%
Mnは、鋼の熱間加工性を向上させるために必要な元素であるが、0.005mass%未満では上記添加効果に乏しく、一方、1.0mass%を超えると、磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.005〜1.0mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.01〜0.3mass%の範囲である。
本発明の方向性電磁鋼板において、上記Si,CおよびMn以外の成分は、二次再結晶を生じさせるために、インヒビターを利用する場合と、しない場合とで分けられる。
まず、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用する場合で、例えば、AlN系インヒビターを利用するときには、AlおよびNを、Al:0.01〜0.065mass%、N:0.005〜0.012mass%の範囲で含有させるのが好ましい。また、MnS・MnSe系インヒビターを利用するときには、前述した量のMnと、Seおよび/またはSを、それぞれS:0.005〜0.03mass%、Se:0.005〜0.03mass%の範囲で含有させるのが好ましい。なお、AlN系とMnS・MnSe系インヒビターを併用してもよい。
一方、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用しない場合には、上述したインヒビター形成成分であるAl,N,SおよびSeの含有量を極力低減し、Al:0.01mass%以下、N:0.0050mass%以下、S:0.0050mass%以下およびSe:0.0050mass%以下に制限するのが好ましい。
本発明の方向性電磁鋼板における上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、磁気特性の改善を目的として、Ni:0.03〜1.50mass%、Sn:0.01〜1.50mass%、Sb:0.005〜1.50mass%、Cu:0.03〜3.0mass%、P:0.03〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.10mass%およびCr:0.03〜1.50mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を添加してもよい。
上記Niは、熱延板の組織を改善して磁気特性を向上させるのに有用な元素であるが、0.03mass%未満では、上記磁気特性の向上効果が小さく、一方、1.5mass%を超えると、二次再結晶が不安定になり、磁気特性が劣化するため、0.03〜1.5mass%の範囲とするのが好ましい。
また、Sn,Sb,Cu,P,MoおよびCrは、いずれも磁気特性の向上に有効な元素であるが、上記した下限値に満たない添加量では磁気特性の向上効果が小さく、一方、上記した上限値を超える添加は、二次再結晶粒の発達を阻害するようになる。よって、上記元素は、それぞれ、上記の範囲で含有させるのが好ましい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について、具体的に説明する。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上述した成分組成に調整した鋼を溶製し、鋼素材(スラブ)とした後、熱間圧延して熱延板とし、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、一次再結晶焼鈍または脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、その後、二次再結晶焼鈍と純化焼鈍を兼ねた仕上焼鈍を施した後、鋼板表面に張力絶縁被膜を被成する従来公知の方法で製造した方向性電磁鋼板に対して磁区細分化処理を施す一連の工程からなる。
上記製造方法において、鋼の溶製方法は常法に従って行えばよく、特に制限はない。また、鋼素材(スラブ)を製造する方法は、連続鋳造法、造塊−分塊圧延法のいずれの方法を用いてもよく、また、薄スラブ鋳造法を用いてもよい。
次いで、上記鋼素材を常法で熱間圧延して熱延板とする。この熱間圧延する前のスラブ加熱温度は、インヒビター形成成分を含有する場合には、それらの成分を固溶させるため1300℃以上とするのが好ましい。一方、インヒビター形成成分を含有しない場合には、熱間圧延が可能であれば、上記温度より低くてもよく、また、加熱炉で再加熱することなく、連続鋳造後、直ちに熱間圧延に供してもよい。さらに、鋼素材が薄スラブである場合には、熱間圧延してもよいし、省略してもよい。
熱間圧延後の熱延板は、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。この熱延板焼鈍の温度は、800〜1200℃の範囲とするのが好ましい。焼鈍温度が800℃未満では、熱間圧延で形成されたバンド組織が残留し、一次再結晶組織を整粒化するのが難しく、二次再結晶粒の成長が阻害されて、製品板のゴス組織を高度に発達させることができなくなる。一方、焼鈍温度が1200℃を超えると、結晶粒が粗大化し過ぎ、却って一次再結晶組織を整粒化することが困難となるからである。
次いで、上記熱延板は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とした後、一次再結晶焼鈍あるいは脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施してから、例えば、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥した後、二次再結晶させるとともに、フォルステライト被膜の形成および純化を図ること目的とした仕上焼鈍を施す。なお、上記一次再結晶焼鈍中あるいは一次再結晶焼鈍後から二次再結晶開始までの間に、インヒビターを強化する目的で、鋼板に窒化処理を施してもよい。
仕上焼鈍を施した鋼板は、その後、鋼板表面に絶縁被膜処理液を塗布し、形状矯正を兼ねた平坦化焼鈍で焼き付けて張力絶縁被膜を被成する。なお、張力被膜の焼き付けは、平坦化焼鈍の前または後で行ってもよい。
ここで、上記張力絶縁被膜とは、下地のフォルステライト質の被膜と合わせて5MPa以上の引張張力を鋼板に対して付与することができる絶縁被膜のことをいう。被膜の種類としては、従来公知のシリカおよびリン酸塩を主成分とするものや、ホウ酸塩とアルミナゾルを用いたコーティング、複合水酸化物を用いたものでもよいが、リン酸アルミニウムまたはリン酸マグネシウム等のリン酸塩とシリカを主成分とするガラス質の張力絶縁被膜を用いるのが好ましい。
上記張力絶縁被膜を被成した方向性電磁鋼板は、その後、鋼板表面に電子ビームを照射して点状もしくは線状の熱歪領域を導入し、磁区細分化処理を施す。ここで、本発明において重要なことは、上記電子ビームの照射を、鋼板を50〜500℃の温度に加熱した状態で行う必要があることである。鋼板を加熱する方法は、特に制限はなく、例えば、誘導加熱や赤外線加熱、雰囲気炉での加熱もしくはロール加熱(加熱したロールからの熱伝導による加熱)等の方法を用いることができる。
電子ビーム照射による熱歪み領域の導入は、圧延方向と交差する方向、好ましくは圧延方向と直交する方向に行うのが望ましい。なお、上記熱歪み領域の形態は線状あるいは点状のいずれでもよく、歪み導入深さは5〜30μm程度とするのが好ましい。また、導入する熱歪み領域の間隔(走査間隔)は、磁区細分化による鉄損低減効果を効果的に発現させる観点から、圧延方向に2〜20mmの間隔とするのが好ましい。
また、上記電子ビーム照射は、上述した鋼板を加熱することに加えて、鋼板表面に圧縮応力を付与した状態で行うことでより一層の効果が得られる。斯かる効果が得られる理由は、現時点ではまだ十分に明確となっていないが、発明者らは以下のように考えている。
張力絶縁被膜が形成された鋼板表面に電子ビームを照射した場合、被照射部の絶縁被膜は、溶融されたり、急速加熱や急速冷却を受けたりする。ここで、絶縁被膜が溶融したときには、絶縁被膜によって付与されている引張応力によって被膜が破壊され、地鉄が露出しやすくなる。また、絶縁被膜が急速加熱や急速冷却を受けたときには、地鉄と被膜の間の熱膨張差によって絶縁被膜に過大な引張応力が残留し、被膜破壊を引き起こしやすくなる。そこで、絶縁被膜に予め圧縮応力を付与しておくことによって、引張応力が緩和され、被膜の破壊が抑制されるものと考えられる。したがって、圧縮応力付与による被膜破壊抑制効果は、被膜張力が大きいほど大きい。
なお、板表面に圧縮応力を付与する方法については、特に限定しないが、例えば、図1に示したように、鋼板を円柱等に巻き付けたような形状に捩じり変形させて鋼板を湾曲させ、その湾曲部の内面に圧縮応力を生じさせる方法が好ましい。この方法は、鋼板の通板経路(パスライン)を屈曲させるだけで鋼板を容易に湾曲させることが可能であり、また、鋼板を湾曲させるのに要する長さも短くできるなどのメリットがある。
ここで、鋼板を湾曲させて圧縮応力を付与する場合、湾曲部の曲率半径は板厚の10000倍以下とするのが好ましい。板厚の10000倍を超える曲率半径では、湾曲部の内面に生じる圧縮応力が小さくなり、本発明の損傷低減効果が得られ難い。一方、曲率半径を小さくし過ぎて、湾曲部の内面に生じる圧縮応力が鋼板の降伏応力の90%を超えると、鋼板が塑性変形を起こして磁気特性の劣化が生じる易くなる。よって、鋼板を湾曲させるときの曲率半径は、板厚の10000倍以下とし、かつ、鋼板に付与される圧縮応力が降伏応力の90%以下となるように下限値を設定することが好ましい。
ここで、湾曲させた鋼板表面に付与される圧縮応力は、下記(1)式で求めることができる。

σ=E・ε=E・(t/2R) ・・・(1)
ここで、E:鋼板の<100>方向(圧延方向)のヤング率E(=1.4×10MPa)
ε:鋼板表面の歪量(板厚中心でε=0)
R:曲率半径(mm)
t:板厚(mm)
また、鋼板を湾曲させる場合、特に規定はしないが、鋼板の圧延方向(進行方向)と湾曲面の母線とがなす角度は、5°未満では、鋼板を湾曲させるのに必要な長さが長くなるため設備が長大化するため、5°以上とするのが好ましい。
ところで、磁区細分化処理の効果は、方向性電磁鋼板の二次再結晶のゴス方位への集積度が高いほど大きいことが知られている。方向性電磁鋼板における方位集積度の目安としては、一般に磁束密度B(800A/mで磁化した際の磁束密度)がよく用いられるが、本発明を適用する方向性電磁鋼板としては、Bが1.88T以上であることが好ましく、1.92T以上であることがより好ましい。また、磁区細分化による鉄損低減効果は、被膜直下の地鉄の表面粗さが小さいほど大きいことが知られており、算術平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましい。
Siを3.3mass%含有する最終板厚0.23mmに冷間圧延した冷延板に、脱炭と一次再結晶焼鈍を兼ねた焼鈍を施した後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布・乾燥してコイルに巻き取り、二次再結晶過程と純化過程を含む最終仕上焼鈍を施した後、50mass%のコロイダルシリカとリン酸マグネシウムからなる絶縁被膜液を塗布し、形状矯正を兼ねた800℃の平坦化焼鈍で焼き付け、鋼板表面にフォルステライト被膜と絶縁被膜の合計で約14MPaの引張張力を付与した。なお、この方向性電磁鋼板の降伏応力は348MPaであった。次いで、上記焼鈍後の鋼板から、圧延方向を長手方向とする500mmL×300mmCおよび500mmL×150mmCの2種類の試験片を切り出し、前者の試験片は圧延方向と湾曲部の母線とがなす角度を10〜30°として曲率半径100mm以上で湾曲させ、一方、後者の試験片は圧延方向と湾曲部の母線とがなす角度を10〜30°として曲率半径100mm未満で湾曲させ、鋼板表面に圧縮応力または引張応力を付与した状態とし、さらに赤外線で種々の温度に昇温した後、表1に示した条件で電子ビームを照射し、磁区細分化処理を施した。なお、一部の試験片には湾曲付与や昇温は行わなかった。
ここで、上記電子ビームの照射は、加速電圧:150kV、ビーム径:0.1mmφ、走査速度:10m/secの条件で行い、この際の電子ビームの出力は、鋼板表面1cm当たりの熱量に換算した。電子ビームの走査方向は、圧延方向に対して直角方向(90°)とし、圧延方向に対する照射間隔(走査間隔)は5mmとした。
Figure 2014019901
上記のようにして得た電子ビーム照射後の試験片を以下の評価試験に供した。
<鉄損W17/50の測定>
磁区細分化処理を施した各試験片の長さ方向および幅方向中央部から、300mmL×100mmCの磁気測定用試験片を採取し、単板磁気測定装置SSTで励磁条件1.7Tおよび50Hzにおける鉄損W17/50を測定した。因みに、電子ビーム照射前の鋼板の磁気特性を測定したところ、鉄損W17/50は0.89W/kg、そして磁化力800A/mにおける磁束密度Bは1.93Tであった。
<層間抵抗の測定>
磁区細分化処理を施した各試験片の長さ、幅中央部から、400mmL×150mmCの試料を採取し、JIS C2550に記載のA法に準拠して層間抵抗を測定した。
<耐錆性>
磁区細分化処理を施した各試験片の長さ、幅中央部から、100mmL×50mmCの試料を採取し、温度:50℃、露点:50℃の大気中で50時間保持した後、試料表面に発生した錆の発生率を目視で測定した。
上記測定の結果を表1に併記した。この結果から、本発明に適合する条件で加熱して磁区細分化処理を施した鋼板は、従来のように平坦な状態で磁区細分化処理を施した鋼板に比べて、絶縁性や耐錆性に優れていることがわかる。さらに、鋼板を湾曲させてその内側、すなわち鋼板に圧縮応力をかけた状態で電子ビームを照射した場合には、上記効果がより高まることがわかる。
本発明の技術は、方向性電磁鋼板のみならず、冷延鋼板や表面処理鋼板、ステンレス鋼板、銅板、アルミニウム板等への電子ビーム、レーザビーム等の照射にも適用することができる。

Claims (4)

  1. 二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に常温における被膜張力が5MPa以上である張力絶縁被膜を形成してなる方向性電磁鋼板の表面に対して、圧延方向と交差する向きに電子ビームを照射し、点状もしくは線状の熱歪み領域を導入して磁区細分化処理を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記電子ビームの照射を、鋼板表面を50〜600℃の温度に加熱して行うことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記電子ビームの照射を、圧縮応力を付与した鋼板表面に対して行うことを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記電子ビームを照射した鋼板表面に、絶縁被膜を再塗布しないことを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法で製造したことを特徴とする方向性電磁鋼板。
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