JP2014019694A - 抗体単量体の分離用分離剤及び分離方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硫酸基が担体に固定化されている分離剤を使用することを特徴とする、抗体の単量体の分離・精製方法、及び、担体が無機材料、多糖類、及び合成高分子からなる群より選ばれることを特徴とする、抗体の単量体の分離・精製方法。
【選択図】図2
Description
本願発明の分離方法は、抗体単量体と抗体重合体を含む溶液を上述した分離剤と接触させる工程(以下第1工程と記載することがある)と、抗体単量体を抗体重合体と分離した状態で回収する工程(以下第2工程と記載することがある)とからなる。
第1工程は、分離剤の寸法や形状に応じて種々の形で実施することができるが、例えば容器状の分離剤を用いる場合には当該容器に抗体単量体を含む溶液を投入すれば良い。中でも本願発明の分離剤を液体クロマトグラフィー用充填剤として使用し、これを充填したカラムに抗体単量体を含む溶液を供することによって実施することが、操作性の向上、高純度の抗体単量体の回収等という観点から好ましい。
第1工程において、分離剤が有する硫酸基と抗体とのアフィニティー(親和結合力)は、抗体単量体の結合力と比較して抗体重合体の結合力が高い。このため、抗体と分離剤との結合力に影響を与える塩濃度等を調節した溶液を抗体単量体含有溶液と混合して第1工程を実施することにより、(1)抗体単量体と抗体重合体の両者が分離剤と結合する、又は、(2)抗体単量体は分離剤と結合せず、抗体重合体のみが分離剤と結合する、のいずれかを生じさせることができる。なかでも、塩濃度等の設定が容易であり、抗体単量体の回収量の低下を招くおそれが少ない(1)が好ましい。また(1)であれば、抗体単量体を分離剤から遊離させない溶液で洗浄することにより、分離剤に結合しないか、結合しても抗体単量体と比較して弱くしか結合しない抗体重合体以外の夾雑物を除去することもできる。
サンプル中のIgG単量体と重合体の組成は、ゲル濾過クロマトグラフィーの手法により確認した。市販のゲル濾過クロマトグラフィー用カラム(TSKgel(登録商標) G3000SWXL、東ソー株式会社製)を室温(約23℃)条件下におき、溶離液は0.2mol/Lアルギニン塩酸塩を含む0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.8)とし、流速は1mL/分とした。カラムからの遊離物は280nmの吸光度を測定して検出した。
図1は、上記条件にてサンプル中の抗体単量体を分離した結果を示すものである。図1において、IgG単量体とIgG重合体のピークはそれぞれ8分、6〜7分付近に現れている。
親水性ビニル系ポリマーを基材とした市販のゲル濾過クロマトグラフィー用充填剤(TOYOPEARL(登録商標) HW−65C、東ソー株式会社製、ポリエチレンオキシド換算の排除限界分子量60万、粒子径50〜100μm)をガラスフィルターにとり、水で洗浄・吸引濾過を繰り返して、水湿潤ゲルとした。該ゲルの含水率は、加熱式水分量計(株式会社エー・アンド・デイ製、MX−50)で測定した結果、75重量%であった。
イオン交換容量の評価は、次のように実施した。10gの分離剤1をガラスフィルターに移し、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液30mLで3回洗浄した後、ろ液のpHが8以下になるまで水でゲルを洗浄した。次に、0.5mol/L塩酸30mLでゲルを3回洗浄した後、ろ液のpHが5以上になるまで水で洗浄した。以上の処理を行ったゲルを20mLの水に懸濁して、リザーバーを装着したガラスフィルター付きガラス管(容積3mL)に注ぎ、吸引ろ過によって溶媒を除去した。ガラス管からリザーバーを外し、ガラス管内に堆積した水湿潤ゲル(3mL)を回収して、100mLの0.5mol/L塩化ナトリウム水溶液に懸濁した。これを、酸塩基自動滴定装置(AT−500N、京都電子工業株式会社)を用いて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定した。滴定終点はpH7.0とし、終点までの滴定液量からイオン交換容量を算出した結果、11μeq/mLであった。
IgG吸着容量の評価は次のように実施した。300mLの三角フラスコに、52mLの吸着用緩衝液(0.054mol/L酢酸緩衝液、pH4.7)と、1.0mLの分離剤1を投入した。これに、ヒト血清γ−グロブリン(IgG濃度約150mg/mL、一般財団法人化学及血清療法研究所)1.7mLを加え、温度25℃で3時間振盪し、IgG吸着処理を行った。その上清を吸着用緩衝液で10倍に希釈して、280nmの吸光度を紫外可視分光光度計(UV−1800、株式会社島津製作所)で測定するとIs=0.6176であった。IgG 1.0mg/mL当たりの吸光度を1.4とみなすと、下記の式から上清中のIgG濃度(Cs)は4.411mg/mLとなる。なおIsは、10倍希釈上清の吸光度である。
また、ヒト血清γ−グロブリンを吸着用緩衝液で200倍に希釈して同様に吸光度を測定するとIf=1.103であった。IgG 1.0mg/mL当たりの吸光度を1.4とみなすと、下記の式からヒト血清γ−グロブリン中のIgG濃度(Cf)は157.6mg/mLとなる。なおIfは、200倍希釈ヒト血清γ−グロブリンの吸光度である。
ヒト血清γ−グロブリン中のIgG濃度[mg/mL]:Cf=(If/1.4)×200
上記のようにして求めたCs及びCfの値を使用し、次の式から分離剤1のIgG吸着容量を求めると28mg/mLであった。なお分離剤の含水量は0.7mLとみなした。
[クロマトグラフィー評価]
試作した分離剤による「IgGの単量体」と「IgGの重合体を含む不純物」との混合物のクロマトグラフィー分離を、以下の方法で検討した。
ステンレス製カラム(内径7.5mm、長さ7.5cm)に分離剤1を充填した後、HPLC装置(東ソー株式会社)に接続した。流速1.0ml/分にて、カラム容量の約10倍量の0.05mol/L酢酸緩衝液(pH5.5)で平衡化した後、前述のクロマトグラフィー評価用サンプル(100μL)を該カラムへ注入した。溶出は、1mol/L塩化ナトリウムを含む0.05mol/L酢酸緩衝液(pH5.5)を使用して、60分の直線塩濃度勾配溶出法(リニアグラジエント)で実施した。なお、流速は1.0ml/分、検出は280nmの吸光度、カラム温度は室温(約23℃)として評価を実施した。
分離剤として、TOYOPEARL HW−65Cにデキストラン硫酸ナトリウム(名糖産業株式会社、硫黄含量約5%、分子量;約1,600)を固定化したゲルを使用する以外は、実施例1と同様の反応と評価を実施した。この場合のイオン交換容量は3μeq/mL、IgG吸着容量は17mg/mLであった。クロマトグラフィー評価の結果を図3に示した。IgGの単量体と重合体の溶出時間はそれぞれ約9分と約20分、ピーク分離度Rsは1.1であった。実施例2では、IgG吸着容量及びRsが実施例1より低かったが、この理由としては、イオン交換容量(言い換えると、硫酸基の固定化量)が低い点が考えられる。
分離剤として、多糖類の一種であるアガロースから成るゲル濾過クロマトグラフィー用充填剤Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケア・ジャパン株式会社、ポリエチレンオキシド換算の排除限界分子量30万、粒子径45〜165μm)にデキストラン硫酸(分子量約50万)を固定化したゲルを使用する以外は、実施例1と同様の反応と評価を行った。イオン交換容量は38μeq/mL、IgG吸着容量は44mg/mLであった。クロマトグラフィー評価の結果は図4に示したとおりであり、IgGの単量体と重合体の溶出時間はそれぞれ約19分と約35分で、ピーク分離度Rsは1.9であった。
分離剤として、ヘパリン(ブタ粘膜由来)を導入したアフィニティークロマトグラフィー用充填剤TOYOPEARL AF−Heparin HC−650M(東ソー株式会社、粒子径40〜90μm)を用いた以外は、実施例1と同じ条件でIgGの単量体とIgGの重合体との混合物のクロマトグラフィー分離を検討した。得られたクロマトグラムを図5に示す。IgGの単量体と重合体の溶出時間はそれぞれ約16分と約28分であり、ピーク分離度Rsは1.9であった。
実施例1と同様の反応でTOYOPEARL HW−65Cから得たエポキシ化水湿潤ゲル(含水率77重量%)100gを、デキストラン(名糖産業株式会社、分子量約7万)39gを110mlの水に溶解した水溶液に懸濁し、48重量%NaOH水溶液4.3gを加えて、40℃で16時間撹拌することにより反応を実施した。反応終了後、ゲルをガラスフィルターで濾過し、水で洗浄した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、和光純薬工業株式会社)で洗浄して、デキストラン固定化ゲル(含液率73重量%)を得た。
分子量の異なるデキストラン(MP Biomedicals Inc.分子量約17,500)を用いる以外は、実施例5と同様の反応を行い、硫酸基を含む分離剤を得た。イオン交換容量は640μeq/mL、IgG吸着容量は76mg/mLであった。クロマトグラフィー評価の結果を図7に示した。IgGの単量体と重合体の溶出時間はそれぞれ約20分と約36分であり、ピーク分離度Rsは1.7であった。
デキストランの代わりにプルラン(株式会社林原、分子量約20万)を用いる以外は、実施例5と同様の反応を行った。ただし、プルランの仕込み量はデキストランの3分の2として、硫酸基を含む分離剤を得た。イオン交換容量は670μeq/mL、IgG吸着容量は91mg/mLであった。図8に、クロマトグラフィー評価の結果を示した。IgGの単量体と重合体の溶出時間はそれぞれ約21分と約38分であり、ピーク分離度Rsは1.8であった。
TOYOPEARL HW−65Cをガラスフィルターにとり、水で洗浄・吸引濾過を繰り返した後、DMFで同様に洗浄し、DMF湿潤ゲルとした(含液率83重量%)。
分離剤として、スルホン酸型の強陽イオン交換体であるTOYOPEARL SP−650M(東ソー株式会社、粒子径40〜90μm)を用いた以外は、実施例1と同じ条件でIgGの単量体とIgGの重合体との混合物のクロマトグラフィー分離を検討した。得られたクロマトグラムを図10に示す。IgGの単量体と重合体の溶出時間はそれぞれ約12分と約17分であり、ピーク分離度Rsは0.6であった。
分離剤として、デキストランのグラフト鎖を含む架橋アガロース担体から成る、スルホン酸型充填剤SP Sepharose XL(GEヘルスケア・ジャパン株式会社、粒子径45〜165μm)を用いた以外は、実施例1の記載と同一条件でIgGの単量体とIgGの重合体との混合物の分離を行なった。その結果、図11に示したとおり、IgGの単量体とIgGの重合体のピーク分離は見られなかった。
特許文献(国際公開第2007/123242号公報)に従って、TOYOPEARL HW−65Cにポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社、分子量約25万)を固定化した分離剤を試作して、実施例1の記載と同一条件でIgGの単量体とIgGの重合体との混合物の分離を行なった。図12に得られたクロマトグラムを示した。IgGの単量体と重合体の溶出時間はそれぞれ約18分と約26分であり、ピーク分離度Rsは1.3であった。また、IgG吸着容量は41mg/mLであった。
Claims (4)
- 硫酸基を有する、抗体単量体と抗体重合体との分離用分離剤。
- 抗体単量体がヒト免疫グロブリンG単量体であり、抗体重合体が2分子以上のヒト免疫グロブリンが結合した多量体である、請求項1の分離剤。
- 抗体単量体と抗体重合体を含む溶液を、硫酸基を有する分離用分離剤と接触させる工程と、抗体単量体を抗体重合体と分離した状態で回収する工程とからなる、抗体単量体の分離方法。
- 抗体単量体がヒト免疫グロブリンG単量体であり、抗体重合体が二分子以上のヒト免疫グロブリンが結合した多量体である、請求項3の分離方法。
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JP2012163399A JP6064402B2 (ja) | 2012-07-24 | 2012-07-24 | 抗体単量体の分離用分離剤及び分離方法 |
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JPN6016019577; Journal of Chromatography B vol.678, 1996, p.173-180 * |
JPN6016019578; Immunobiol. vol.157, 1980, p.407-413 * |
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