JP2011072883A - 吸着体およびそれを用いた精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】各種吸着体、特に治療用または医療用吸着体や抗体医薬品精製用吸着体に関し、高線速下での動的吸着容量が大きい吸着体を提供する。
【解決手段】メジアン粒径が30μm以上65μm以下である多孔質担体に、抗体結合性タンパク質リガンドを固定化することにより、高線速下での動的吸着容量が大きい吸着体を得ることができ、アフィニティークロマトグラフィーを用いた各種目的物の精製(特に、抗体医薬品精製)や、治療用(医療用)吸着体に好適に利用することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は各種吸着体、特に治療用(医療用)吸着体や抗体医薬品精製用吸着体に関する。
吸着体、例えば各種クロマトグラフィー用吸着体やアフィニティー吸着体は、効率よく目的物を精製、または不要物濃度を低減できることから、従来より幅広い分野で使用されている。なかでも、アフィニティー吸着体は医療用吸着体や抗体医薬品精製用吸着体としての利用が進んできている。特に、リウマチ、血友病、拡張型心筋症の治療用(医療用)吸着体として、プロテインAをアフィニティーリガンドとして多孔質担体に固定化した吸着体が注目されている(例えば非特許文献1、非特許文献2)。一方、免疫グロブリン(IgG)を特異的に吸着、溶出できる吸着体として、プロテインAをアフィニティーリガンドとして多孔質担体に固定化した吸着体(抗体医薬品精製用吸着体)が注目されている。通常これらアフィニティー吸着体は、カラムに充填されて用いられることから、動的吸着容量が重要視される。しかしながら、一般的なアフィニティー吸着体の動的吸着容量は、その静的吸着容量より小さく、特にその傾向は、吸着処理の線速が大きい場合に顕著であり、高価なアフィニティーリガンドを有効に活用できていないといえる。
Annals of the New York Academy of Sciences 2005. Vol.1051 P635−646 American Heart Journal Vol.152, Number 4 2006
本発明は従来の技術が有する上記課題に鑑みてなされたものであり、高線速下でも動的吸着容量が大きい吸着体を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究の結果、下記発明を提供した。
即ち本発明は、多孔質担体に抗体結合性タンパク質リガンドを固定してなる吸着体であって、メジアン粒径が30μm以上65μm以下である事をを特徴とする吸着体を提供する。
また本発明は、5%圧縮時の圧縮応力が0.01MPa以上1MPa以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.03MPa以上3MPa以下、および15%圧縮時の圧縮応力が0.06MPa以上5MPa以下であることを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、5%圧縮時の圧縮応力が0.02MPa以上1MPa以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.06MPa以上3MPa以下、および15%圧縮時の圧縮応力が0.1MPa以上5MPa以下であることを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、樹脂含量が2%以上50%以下であることを特徴とする吸着体に関する。
また本発明は、吸着体および/またはその前駆体が架橋されていることを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、抗体結合性タンパク質リガンドの密度が1〜10mg/mlであることを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、サイズ110kDaのデキストランに対するKavが0.65以上であることを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、多孔質担体が炭水化物を含有することを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、炭水化物が多糖類であることを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、多糖類がセルロースおよび/またはセルロース誘導体であることを特徴とする請求項9に記載の吸着体に関する。
また本発明は、抗体結合性タンパク質リガンドがプロテインAであることを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、精製目的物の吸着量が精製用吸着体1mLあたり1〜100mgであることを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、動的吸着容量/静的吸着容量が0.7以上であることを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、吸着体から精製目的物中にリークしたリガンドの濃度が、100ppm以下であることを特徴とする、吸着体に関する。
また本発明は、吸着体を用いた精製方法に関する。
また本発明は、直径2cm以上及び高さ5cm以上のカラムを用いることを特徴とする、精製方法に関する。
また本発明は、線速が100〜1000cm/hで通液する工程を有することを特徴とする、精製方法に関する。
本発明によれば、高線速下での動的吸着容量が大きい吸着体が提供される。
本発明者らは鋭意研究の結果、理由は定かではないが、驚くべきことに、多孔質担体に抗体結合性タンパク質リガンドを固定してなる吸着体であって、メジアン粒径が30μm以上65μm以下である事を特徴とする吸着体を提供することにより、高線速下での動的吸着容量が大きい吸着体が得られた。メジアン粒径が30μm未満であれば、高線速下で使用した場合、圧密化が生じてしまい、またカラム底部の担持ろ材をすり抜け易くなる。また65μm以上であると、高線速下での動的吸着容量が小さくなる。また、メジアン粒径は40μm以上65μm以下であることが好ましく、50μm以上65μm以下であることがより好ましく、55μm以上65μm以下であることが特に好ましく、60μm以上65μm以下が最も好ましい。ここで、メジアン粒径とは、累積体積分布が50%の時の粒径である(d50v)。メジアン粒径は、ランダムに選んだ100個以上の吸着体の粒径を測定して求めることができる。個々の多孔質担体の粒径は、個々の多孔質担体の顕微鏡写真を撮影して電子データーとして保存し、粒径測定ソフトウェア(メディアサイバーネティックス社製イメージプロプラス)を用いて、測定することができる。
吸着体は治療用(医療用)吸着体をはじめとする各種クロマトグラフィー用吸着体やアフィニティー吸着体として広く用いられているが、特に抗体医薬品精製の分野においては、抗体医薬品市場の大きな伸びに伴って、精製の大スケール化及び高線速化が積極的に行われている。精製の大スケール化及び高線速化に伴って、精製に用いられる吸着体、つまりは多孔質担体の強度を大きくする必要が生じる場合がある。また、本発明の吸着体は、通常産業用途に用いられているアフィニティー吸着体に比べると粒径が小さい傾向にある。そのため、本発明の吸着体は、高強度であることが好ましい。高強度であれば、高線速下での使用においても、圧密化が生じにくくなり、好ましい。本発明者らは強度の指標として、圧縮応力を用いている。本発明の吸着体は5%圧縮時の圧縮応力が0.01MPa以上1MPa以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.03MPa以上3MPa以下、および15%圧縮時の圧縮応力が0.06MPa以上5MPa以下であることが好ましい。これによれば、大スケール、高線速で精製を行っても圧密化を生じない吸着体が得られやすいため、好ましい。また、吸着体の5%圧縮時の圧縮応力が1MPA以下、10%圧縮時の圧縮応力が3MPA以下、および15%圧縮時の圧縮応力が5MPA以下であれば、脆性が向上し、微粒子発生が抑制されやすいため、好ましい。
ここで、5%圧縮時の圧縮応力とは、吸着体が圧縮されて、初期体積より体積が5%減少した時の応力、10%圧縮時の圧縮応力とは、吸着体が圧縮されて、初期体積より体積が10%減少した時の応力、15%圧縮時の圧縮応力とは、吸着体が圧縮されて、初期体積より体積が15%減少した時の応力である。初期体積とは、吸着体を含むスラリーに振動を与えながら、吸着体の体積が減少しなくなるまで沈降させて充填した状態の体積である。圧縮時の圧縮応力は、以下の方法で測定しうるものである。
1) 内径15mmのガラス製メスシリンダーに吸着体の50vol%のスラリーを投入する。
2) ガラス製メスシリンダーに振動を与えながら、吸着体の体積が減少しなくなるまで沈降させて充填し、多孔質担体体積が約4mLとなるよう多孔質担体量を調整する。この時の体積を初期体積とする。
3) 金属製ピストン(メスシリンダーの内壁と摩擦を生じず、且つ吸着体が漏れないように加工したもの)を、20N用ロードセルを装着したオートグラフ(SHIMADZU製EZ−TEST)に取り付ける。
4) 吸着体の120vol%に相当する位置にピストンの底面を合わせる。
5) 気泡が入らないように、試験速度5mm/minでピストンを下降させ、多孔質担体を圧縮して体積を減少させる。
6) 任意の点の圧縮応力を測定する。
また、本発明の吸着体は、5%圧縮時の圧縮応力が0.01MPA以上1MPA以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.04MPA以上3MPA以下、および15%圧縮時の圧縮応力が0.06MPA以上5MPA以下であることがより好ましく、さらに、5%圧縮時の圧縮応力が0.01MPA以上1MPA以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.06MPA以上3MPA以下、および15%圧縮時の圧縮応力が0.07MPA以上5MPA以下であることが好ましい。特に、繰り返し使用に適しているという理由から、吸着体の5%圧縮時の圧縮応力が0.02MPA以上1MPA以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.06MPA以上3MPA以下、および15%圧縮時の圧縮応力が0.09MPA以上5MPA以下であることが特に好ましく、最も好ましくは、5%圧縮時の圧縮応力が0.02MPA以上1MPA以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.08MPA以上3MPA以下、および15%圧縮時の圧縮応力が0.11MPA以上5MPA以下である。また、コストの観点から、5%圧縮時の圧縮応力が0.5MPA以下、10%圧縮時の圧縮応力が1.5MPA以下、および15%圧縮時の圧縮応力が2.5MPA以下であることが好ましく、5%圧縮時の圧縮応力が0.2MPA以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.7MPA以下、および15%圧縮時の圧縮応力が2MPA以下であることが好ましく、さらに5%圧縮時の圧縮応力が0.1MPA以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.3MPA以下、および15%圧縮時の圧縮応力が2MPA以下であることが特に好ましい。
プロテインAをアフィニティーリガンドとして多孔質担体に固定化する方法としては、多孔質担体が含有するホルミル基と、プロテインAのアミノ基との反応を利用する方法が挙げられ、本発明に好ましく用いる事ができる。
また、高強度を達成する方法としては特に限定は無いが、吸着体の樹脂含量を大きくすることが好ましい。本発明の吸着体の充填体積あたりの樹脂含量は、2%以上50%以下であることが好ましい。充填体積あたりの樹脂含量が2%以上であれば、大スケール、高線速で精製を行っても圧密化を生じない吸着体が得られるため好ましい。また、充填体積あたりの樹脂含量が50%以下であると、精製目的物を吸着させるに十分な大きさの孔を確保できるため好ましい。また、充填体積あたりの樹脂含量のより好ましい範囲は4%以上25%以下、さらに好ましくは5%以上15%以下であり、最も好ましくは8%以上12%以下である。充填体積あたりの樹脂含量は、多孔質担体体積が減少しなくなるまで沈降させて充填し、多孔質担体体積が1mLとなるよう多孔質担体量を調整する。この担体を105℃で12時間乾燥させ、その乾燥重量から、充填体積あたりの乾燥重量パーセント、つまり樹脂含量を求めることができる。
また、高強度を達成しつつも多孔質担体の細孔径が小さくなり難いという利点から、架橋剤を作用させて多孔質担体の強度を大きくすることがより好ましい。すなわち、本発明の製造方法において、前記多孔質担体が架橋されていることが好ましい。本発明に用いることができる架橋剤や架橋反応条件に特に限定は無く、公知の技術を用いて行うことができる。例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジクロロヒドリン等のハロヒドリンや、レソルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヒドロゲナートビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、ジグリシジルオルトフタレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の2官能以上のエポキシ化合物を作用させることによって、架橋を行うことができる。
これら架橋剤を用いて、多孔質担体の強度を大きくする方法に特に限定は無いが、反応効率の観点から、これら架橋剤をアルカリ条件下で担体に作用させることが好ましい。架橋剤の投入方法には特に限定は無く、全使用量を反応初期から投入しても良いし、複数回に分けて反応を繰り返しても良く、また滴下ロート等を用いて、少量ずつ架橋剤を投入しても良く、また架橋剤が投入された反応容器に多孔質担体を投入しても良い。架橋反応の溶媒については特に限定は無いが、水、ヘプタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン等の汎用有機溶媒や、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコールや、これらの2種以上の混合溶媒を用いることができる。また、反応効率を高めるため、ソディウムボロヒドリド等の還元剤を共存させることがより好ましい。架橋反応時の温度については特に限定は無いが、反応速度的に有利であるという理由から0℃以上であることが好ましく、および/または安全性や多孔質担体へのダメージの観点から100℃以下であることが好ましく、官能基が失活し難いという理由から70℃以下であることがより好ましい。架橋反応は攪拌または振とうしながら行うことが好ましく、その1分間当りの回転数または回数は、特に限定は無いが、均一攪拌が可能で、且つ多孔質担体に物理的なダメージが加わらないという理由から1分間あたり1回以上1000回以下であることが好ましく、より好ましくは10回以上500回以下、さらに好ましくは30回以上300回以下、特に好ましくは50回以上200回以下、最も好ましくは75回以上150回以下であるが、各原料の比重の差や多孔質担体の強度に合わせて調整し、多孔質担体が反応液中で均一に分散されている状態となることが特に好ましい。架橋反応時間については、特に限定は無いが、官能基の失活や担体へのダメージが少ないという理由から、ハロヒドリンを用いる場合は、1時間以上8時間以下、2官能以上のエポキシ化合物を用いる場合は、1時間以上、15時間未満であることが好ましく、架橋剤の反応性や、pHや、反応温度に合わせて調整することが、より好ましい。
また、本発明の吸着体の抗体結合性タンパク質リガンドの密度に特に限定は無いが、吸着体1mL当り、1mg以上10mg以下であることが好ましい。アミノ基含有リガンドの固定化量が吸着体1mL当り1mg以上であれば、目的物に対する吸着量が大きくなるため好ましく、10mg以下であれば、製造コストを抑制できるたり、目的物の溶出がし易くなるため好ましい。より好ましいアミノ基含有リガンドの固定化量は、多孔質担体1mL当り3mg以上10mg以下であり、さらに好ましくは4mg以上10mg以下であり、特に好ましくは5mg以上9mg以下であり、最も好ましくは6mg以上8mg以下である。アミノ基含有リガンドの固定化量は、固定化反応後の反応液上清中のアミノ基含有リガンド由来の吸光度を測定することによって求めることができる。また、元素分析法を用いて、アミノ基含有リガンドの導入量を求めることが、より好ましい。例えば、アミノ基含有リガンドであれば、吸着体のN含量分析を行うことにより、アフィニティーリガンドの導入量を測定することができる。
また、本発明の吸着体はサイズ110kDaのデキストランに対するKavが0.65以上であること好ましい。 Kavとはゲル相分配係数をいい、所定の大きさの分子に対する溶出又は保持容量VR(Veとも表される。)、空隙容量Vo及びカラムの幾何容量Vcから次式で算出される、カラムとは独立した変数である。
Kav=(VR−Vo)/(Vc−Vo)
(例えばHandbook of Process Chromatography,A Guide to Optimization,Scale−Up and validation(1997) Academic Press, San Diego.Gail Sofer & Lars Hagel eds.ISBN0−12−654266−X,p.368参照)。
サイズ110kDaのデキストランに対するKavが0.65以上であれば、目的物、特にIgG等の抗体に対する吸着量が大きくなる傾向があるため好ましい。また、サイズ110kDaのデキストランに対するKavが0.65以上が0.65以上0.98以下であることがより好ましい。サイズ110kDaのデキストランに対するKavが0.90以下であれば、吸着体の強度が大きくなる傾向があるため好ましい。特に好ましくは、サイズ110kDaのデキストランに対するKavが0.65以上0.85以下、最も好ましくは0.70以上0.80以下である。
また、本発明の多孔質担体の材質には特に限定は無く、例えば、多糖類、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、およびこれらの誘導体等を挙げることができる。これらは、ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシ基を有する高分子材料やポリエチレンオキサイド鎖を有する単量体と他の重合性単量体との共重合のようなグラフト共重合体等のコーティング層を有していてもよい。これらの中で多糖類や、ポリビニルアルコール等が、担体表面に活性基を導入しやすいため、好ましく用いることができる。なかでも本発明の多孔質担体は炭水化物を含有することが好ましい。炭水化物は一般的に入手が容易であり、また安全性が高いため、好ましく用いることができる。
また、本発明に用いることができる炭水化物は、多糖類であることが好ましい。多糖類は産業的に容易に得ることが可能であり、また生体に対する安全性が高いため好ましい。本発明における前記多孔質担体に用いることができる多糖類に特に限定は無いが、例えば、アガロース、セルロース、デキストリン、デキストラン、キトサン、キチン、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
また、本発明の多孔質担体に用いることができる多糖に特に限定は無いが、セルロースおよび/またはセルロース誘導体を含有することがより好ましい。セルロースまたはセルロース誘導体を含有する多孔質担体は、機械的強度が比較的高く、強靱であるため破壊されたり微粒子を生じたりすることが少なく、カラムに充填した場合に液を高線速で流しても比較的圧密化し難いため好ましい。前記セルロース誘導体に特に限定は無いが、例えば、水酸基が、アシル基(炭素数1〜10の鎖状もしくは分岐状のものであり、飽和、不飽和結合を含む、例えば、アセチル基)、アルキル基(炭素数1〜10の鎖状もしくは分岐状のものであり、飽和、不飽和結合を含む、例えば、メチル基、エチル基)、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基、アミノエチル基、ニトロ基、スルホ基、リン酸基などに置換されたものが挙げられる。なかでも、本発明に用いることができるセルロース誘導体は、コストや加工性に優れるという理由から、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、フタル酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースが好ましい。また、これら置換基の置換度には特に限定は無いが、クロマトグラフィーにおける使用条件(温度や使用される液体)において、耐久性を有するように調整されていることが好ましい。本発明における多孔質担体に用いることができる多糖は、強度やコストの観点から、セルロースおよび/または再生セルロースであることが最も好ましい。
また、本発明の吸着体の用途に特に限定は無く、例えば、抗体精製用吸着体、抗体医薬品精製用吸着体、治療用(医療用)吸着体、アフィニティー吸着体、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー用の吸着体を挙げることができる。また、本発明の吸着体は、用途に合わせた抗体結合性タンパク質リガンドが固定化されていることが好ましい。本発明の抗体結合性タンパク質リガンドに特に限定は無いが、例えば、抗体に特異性の高い抗原やタンパク質や、プロテインG、Lやその変異体、抗体結合活性を有するペプチド等を挙げることができる。特に、免疫グロブリン(IgG)等を特異的に吸着、溶出できる吸着体として、プロテインAをアフィニティーリガンドとして担体に固定化した吸着体が注目されている。プロテインAを固定化した吸着体は、リウマチ、血友病、拡張型心筋症の治療用吸着体として注目されている。また、抗体医薬精製の分野においては、IgG等の抗体の精製を大スケール、高速、及び低コストで行える吸着体が望まれている。このような観点から、本発明の吸着体は、抗体結合性タンパク質リガンドとしてプロテインAが導入された吸着体であることが、より好ましい。本発明に用いることができるプロテインAに特に限定は無く、天然物、遺伝子組み換え物、単量体、多量体等を制限なく使用することができる。また、抗体結合ドメイン及びその変異体を含むものや、融合蛋白質等であってもよい。また、菌体抽出物もしくは培養上清より、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー及び膜分離技術を用いた分子量分画、分画沈殿法等の手法から選択される精製法を組合せ、および/または繰り返すことにより製造された、プロテインAを用いることもできる。特に、国際公開特許公報WO2006/004067や米国特許公報US5151350に記載されている方法で得られたプロテインAであることが好ましい。
また、本発明の吸着体の、目的物の吸着量は、吸着体1mLあたり1mg以上であることが好ましい。目的物の吸着量が、吸着体1mLあたり1mg以上であれば、効率よく精製が行えるため好ましい。また目的物の吸着量が、吸着体1mLあたり100mg以下であれば、吸着した目的物を吸着体から溶出しやすいため好ましい。より好ましい吸着体の、目的物の吸着量は、吸着体1mLあたり5mg以上90mg以下であり、さらに好ましくは10mg以上80mg以下であり、特に好ましくは20mg以上70mg以下であり、最も好ましくは30mg以上60mg以下である。
目的物の吸着量の求め方としては、特に限定は無いが、静的吸着量や動的吸着量によって求めることができる。例えば、静的吸着量を測定する場合は、pH7.4のリン酸バッファー(シグマ社製)で置換した吸着体0.5mLに対し、70mgの目的物を35mLのpH7.4のリン酸バッファー(シグマ社製)に溶解させた溶液を接触させ、25℃で2時間攪拌した後、上清中の目的物の減少量を測定することにより求めることができる。
また、目的物の動的吸着量及び目的物中にリークしたリガンドの濃度を求める方法の一例を以下に述べる。
(1)溶液作製
A液としてpH7.4リン酸バッファー(シグマ社製)、B液としてpH3.5の35mM酢酸ナトリウム(和光純薬工業社製の酢酸、酢酸ナトリウム、RO水で調整)、C液として1M酢酸(和光純薬工業社製酢酸とRO水で調整)、D液として1mg/mLのヒトポリクローナルIgG溶液(バクスター社製ガンマガードとA液で調整)、E液として6M尿素、F液としてA液に対して0.2vol%の界面活性剤(和光純薬工業社製ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を添加した液、中和液として2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(シグマ社製トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとRO水で調整)を作製し、各溶液を使用前に脱泡する。
(2)充填、準備
カラムクロマトグラフィー用装置として、AKTAexplorer 100(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い、直径0.5cm、高さ15cmのカラムに22μmのメッシュを取り付け、本発明の吸着体をそれぞれ3mL入れ、線速400cm/hで20%エタノール水溶液(和光純薬工業社製エタノールとRO水で調整)を1時間通液して充填する。フラクションコレクターに15mlの採取用チューブをセットし、溶出液の採取用チューブについては、あらかじめ中和液を入れておく。
(3)洗浄
必要に応じて、F液、B液、A液、C液、E液の順に、各液を線速300cm/hで吸着体の3倍量を通液する。この通液サイクルを任意の回数、繰り返す。
(4)IgG精製
A液を線速300cm/hで9mL通液し、次いでD液をUVをモニターしながら、IgGが10%破過するまで線速300cm/hで通液する。次いで、A液を線速300cm/hで30mL通液し、B液を線速300cm/hで30mL通液してIgGを溶出させる。次にC液を線速300cm/hで9mL,E液を線速300cm/hで9mL通液する。吸着体の充填終了後からの操作をさらに2回繰り返すことにより、溶出液中のIgG量とIgG中にリークしたリガンドの濃度を求めることができる。
また、本発明の吸着体は、動的吸着容量/静的吸着容量が0.7以上であることが好ましい。動的吸着容量/静的吸着容量が0.7以上であれば、高価なプロテインAを効率よく使用できるため、好ましい。また、動的吸着容量/静的吸着容量が0.80以上であることがより好ましく、0.85以上であることが特に好ましく、0.90以上であることが最も好ましい。この動的吸着容量は、線速300cmで精製した時の5%ダイナミックバイディングキャパシティーとしている。
また、本発明の吸着体は、これを用いて治療や精製を行った場合、吸着体から目的物中にリークしたリガンドの濃度が、100ppm以下であることが好ましい。目的物中にリークしたリガンドの濃度が100ppm以下であれば、治療や精製の安全性を高めることができ、さらに目的物の純度を高めることができ、精製における後工程の煩雑さが軽減されるため好ましい。より好ましい目的物中にリークしたリガンドの濃度は、0ppm以上80ppm以下、さらに好ましくは0ppm以上60ppm以下、特に好ましくは0ppm以上40ppm以下、最も好ましくは0ppm以上20ppm以下である。目的物中にリークしたリガンドの濃度は、Steindl F. et al. Journal of Immunological Methods 235 (2000) 61−69、に記載の方法で求めることができる。
本発明の吸着体のアミノ基含有リガンドのリーク量をさらに低減するために、吸着体を洗浄することが好ましい。洗浄剤や洗浄方法に特に限定は無いが、水、酢酸、アルコール、各種有機溶剤、pH2〜5の液体、pH8〜13の液体、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、緩衝剤、界面活性剤、尿素、グアニジン、グアニジン塩酸塩、その他の再生剤等の、少なくとも1種を含有する溶液等を通液、または投入して攪拌することが好ましい。また、これらの洗浄液は交互に用いたり、繰り返し用いると、リガンドのリーク量がさらに減少するため好ましい。
本発明の吸着体及び/または本発明の製造方法により製造された吸着体は、アフィニティークロマトグラフィーを用いた各種目的物の精製(特に、抗体医薬品精製)や、治療用(医療用)吸着体に利用することができる。精製方法や治療方法には特に限定は無く、公知の方法を好適に用いる事ができる。
さらに、本発明の吸着体は、目的物の吸着量が大きいにも関わらず、精製を大スケール、高速且つ低コストで行うことを可能とする。よって、本発明の吸着体を用いた精製や治療は、直径0.5cm以上及び高さ3cm以上のカラムを用いることが好ましい。直径が0.5cm以上及び高さ3cm以上であれば、精製や治療を効率よく行うことができる。また、精製や治療の精度や効率の観点から、カラムの大きさは直径2000cm以下及び高さ5000cm以下であることが好ましい。より好ましいカラムの大きさは直径2cm以上200cm以下、高さ5cm以上300cm以下であり、さらに好ましくは直径5cm以上100cm以下及び高さ8cm以上150cm以下であり、特に好ましくは直径10cm以上85cm以下及び高さ12cm以上85cm以下であり、最も好ましくは直径20cm以上85cm以下及び高さ14cm以上35cm以下である。
また、本発明の吸着体を用いた治療や精製は、線速100cm/h以上で通液する工程を有することが好ましい。線速100cm/h以上で通液する工程を有していれば、治療や精製を効率よく行うことができるため好ましい。また治療や精製の精度や装置の耐久性の観点から、本発明の吸着体を用いた治療や精製は、線速1000cm/h以下で行うことが好ましい。より好ましい精製の線速は150cm/h以上800cm/h以下、さらに好ましくは250cm/h以上750cm/h以下、特に好ましくは300cm/h以上750cm/h以下、最も好ましくは500cm/h以上750cm/h以下である。
本発明の吸着体は、本発明を用いない場合に比べて、高線速下での動的吸着容量が著しく向上する。
以下、本発明を実施例をもとに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、反応仕込み時の多孔質担体の体積は、特に記載が無い限り、自然沈降体積である。自然沈降体積とは、多孔質担体とRO水のスラリーを、計量容器に投入し、振動の無い状態で2時間静置して求めたものである。また、官能基含量、IgG吸着量における多孔質担体の体積は、特に記載が無い限り、多孔質担体とRO水のスラリーを、計量容器に投入し、振動を与えながら、それ以上体積が減少しなくなるまで沈降させた状態の体積である。
(作製例1)
体積平均粒径が92μm、樹脂含量が6%、排除限界分子量が5000万の多孔質セルロース担体(チッソ社製CK−A)を63μmのメッシュ(NONAKA RIKAKI製、ワイヤ径45μm)と分級機(筒井理化学器械社製300−MM)を用いて、2時間、湿式分級を行い、メジアン粒径が64μmの多孔質担体Aを得た。多孔質担体AとRO水の1:1スラリーを、グラスフィルター(TOP社製17G−2)上で15分間吸引ろ過(サクションドライ)した。得られたサクションドライ済みの多孔質担体A274gをガラス製のセパラブルフラスコ(TOP社製2L)に投入し、これに0.6M水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製水酸化ナトリウムとRO水で調整)274mLを加え、40℃で30分加温した。液温が40℃に加温された後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)を548mg、架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテルを含有するデナコールEX−314(ナガセケムテックス社製)274mLの順に加え、40℃で5時間、120回/分で攪拌しながら反応させた。反応終了後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で吸引ろ過しながら、多孔質担体の20倍体積量のRO水で洗浄し、架橋多孔質担体を得た。この架橋多孔質担体の5%圧縮時の圧縮応力は0.020MPa、10%圧縮時の圧縮応力は0.049MPa、15%圧縮時の圧縮応力は0.080MPaであった。
得られた架橋多孔質担体にRO水を加えて、全量を架橋多孔質担体の2倍体積量とし、ガラス製ビーカー(1L)に入れ、アルミ箔2枚で封をして、オートクレーブ(サクラ社製 高圧滅菌器ネオクレーブ)を用いて120℃で40分間加温した。室温まで放冷した後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で多孔質担体の5倍体積量のRO水で洗浄し、エポキシ基がグリセリル基に変化した架橋多孔質担体を得た。この洗浄後の架橋多孔質担体について、再度同様の方法で更に架橋反応を行った。得られた架橋多孔質担体の5%圧縮時の圧縮応力は0.026MPa、10%圧縮時の圧縮応力は0.063MPa、15%圧縮時の圧縮応力は0.103MPaである。
この架橋多孔質担体にRO水を加えて、全量を架橋多孔質担体の2倍体積量とし、ガラス製ビーカー(1L)に入れ、アルミ箔2枚で封をして、オートクレーブ(サクラ社製 高圧滅菌器ネオクレーブ)を用いて120℃で40分間加温した。室温まで放冷した後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で多孔質担体の5倍体積量のRO水で洗浄し、エポキシ基がグリセリル基に変化した、多孔質担体Bを得た。
35mLの多孔質担体BにRO水を加えて、全量を52mLとして、セパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れた。次に16gの過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をRO水に溶解させ1400mLにメスアップした。この過ヨウ素酸ナトリウム水溶液35mLを500mLのセパラブルフラスコに加えて、25℃で15分、150回/分で攪拌しながら反応させた。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の20倍体積量のRO水で洗浄し、多孔質担体Cを得た。得られたホルミル基含有多孔質担体のホルミル基含量を前述の方法で測定した結果、ホルミル基含量は多孔質担体1mLあたり68μmolであった。ホルミル基含量は、pH8の0.1Mリン酸バッファーで置換した多孔質担体2mLと、フェニルヒドラジンを溶解したpH8の0.1Mリン酸バッファー溶液2mLとを接触させ、40℃で1時間攪拌し、UV測定により反応液の上清の278nm付近の吸収極大の吸光度を測定し、これにより得られたフェニルヒドラジンの多孔質担体への吸着量として見積もった。この時、フェニルヒドラジンの投入量は予想ホルミル基含量の3倍モルとし、フェニルヒドラジンの投入量に対して、多孔質担体への吸着量が15%以下、または45%以上であった場合は、フェニルヒドラジンの投入量を見直し、再度測定を行うものとしている。
(作製例2)
作製例1で作製した多孔質担体C30mLとRO水との1:1スラリーを15℃に調整した後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で15分間吸引ろ過(サクションドライ)した。得られたサクションドライ済みの多孔質担体Cをガラス製のセパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に全量投入した。その後、このセパラブルフラスコに3.6gのグルコサミン塩酸塩(協和発酵社製発酵グルコサミンK)を投入した。次いで、グルコサミン塩酸塩を溶解しながら15℃のRO水を加え、溶解後の反応液全量が53mLとなるように調整した。反応液を15℃に調整した後、4Nの水酸化ナトリウム水溶液とRO水を用いて、pHを11に調整した。次いで15℃で5時間、150回/分で攪拌した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)を0.17g添加し、15℃で60分間、150回/分で攪拌した。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の40倍体積量のRO水で洗浄した。
「次いで、この洗浄後の多孔質担体をガラス製のセパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に全量投入し、RO水を加えて、全量が59mLとなるように調整した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)を0.17g添加し、25℃で60分間、150回/分で攪拌した。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の40倍体積量のRO水で洗浄した。」
この「」内の操作を更にもう2回行い、多孔質担体Dを得た。非水滴定によりグルコサミンのアミノ基量を定量し、多孔質担体Dのグルコサミン固定化量を測定した結果、担体の1mLあたり18μmolであった。
(作製例3)
作製例2と同様の方法で作製した、21mLの多孔質担体DにRO水を加えて、全量を32mLとして、セパラブルフラスコ(TOP社製2L)に入れ、150回/分で攪拌しながら25℃に調整した。次に3.4gの過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をRO水に溶解させ300mLにメスアップし、25℃に調整した。この過ヨウ素酸ナトリウム水溶液21mLをセパラブルフラスコに加えて、25℃で1時間、150回/分で攪拌しながら反応させた。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の40倍体積量のRO水で洗浄し、多孔質担体Eを得た。得られたホルミル基含有多孔質担体のホルミル基含量を前述の方法で測定した結果、ホルミル基含量は多孔質担体1mLあたり6.7μmolであった。
(実施例1)
作製例3で作製したホルミル基含有多孔質担体18mLを、グラスフィルター(TOP社製17G−2)上で、0.5Mクエン酸三ナトリウム+0.15M食塩バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、RO水を用いて調整)54mLで置換した。置換後のホルミル基含有多孔質担体を100mLのビーカー(岩城硝子製)に入れ、0.5Mクエン酸三ナトリウム+0.15M食塩バッファーを加えて全量を24mLとし、150回/分で攪拌しながら4℃に調整した。次に国際公開特許公報WO2006/004067に記載の方法で作製されたプロテインAの濃度が52.9mg/mLのプロテインA含有溶液(カネカ社製プロテインA溶液PNXL30)2.74mLをビーカーに加えた。4M水酸化ナトリウムと0.5Mクエン酸三ナトリウム+0.15M食塩バッファーを用いて、pHを11に調整しながら、反応液全量を32.8mLとした後、150回/分で攪拌しながら4℃で一晩反応した。
反応後、反応液のpHが6.8になるように4M塩酸(和光純薬工業社製塩酸とRO水で調整)を用いて調整した後、51mgの水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)を添加し、150回/分で攪拌しながら4℃で1時間反応した。反応後、反応液の276nm付近の吸収極大の吸光度を測定した結果、アフィニティーリガンドであるプロテインAの固定化量は、多孔質担体1mL当り、7.5mgであることがわかった。反応後の多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製17G―2)上で、多孔質担体の10倍体積量のRO水で洗浄した。
この洗浄した多孔質担体にRO水を加えて36mLとし、100mLビーカーに入れ、150回/分で攪拌しながら25℃に調節した。その後、51mgの水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)を添加し、150回/分で攪拌しながら25℃で1時間反応した。反応後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製17G―2)上で、多孔質担体の10倍体積量のRO水で洗浄した。
次いで、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製17G―2)上で、3倍体積量の0.01M塩酸(和光純薬工業社製塩酸とRO水で調整)で置換した。次に、置換した多孔質担体に0.01M塩酸を加えて全量を36mLとし、100mLビーカーに入れ、150回/分で攪拌しながら25℃で30分間、酸洗浄を行った。
酸洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製17G―2)上で、ろ過し、次いで、3倍体積量の0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、RO水で調整)で置換した。次に、置換した多孔質担体に0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液を加えて全量を36mLとし、100mLビーカーに入れ、150回/分で攪拌しながら25℃で20分間、アルカリ洗浄を行った。アルカリ洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製17G―2)上で、ろ過し、次いで、3倍体積量の0.5Mクエン酸三ナトリウム+0.15M食塩バッファーで置換し、中和した。中和後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製17G―2)上で、ろ過し、次いで、RO水を用いて、洗浄ろ液の電導度が5μS/cm以下になるまで洗浄し、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。洗浄ろ液の電導度は、導電率計(EUTECH INSTRUMENTS製 ECTestr10 pure+)で測定した。
続いて、20%エタノール水溶液(日本薬局方のエタノールとRO水で調整)で多孔質担体を置換し、さらに20%エタノール水溶液を用いて、50mLのポリ容器(岩城硝子製遠沈管)に入れ、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。
得られた吸着体の目的物としてヒトポリクローナルIgG(バクスター社製ガンマガード)を選択し、静的吸着量、動的吸着量、目的物中にリークしたリガンド量を求めた。静的吸着量は45mg/mLであった。動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目40mg/mL、2回目39mg/mL、3回目40mg/mLであった。また、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は、1回目が52ppm、2回目が29ppm、3回目が20ppmであった。また、サイズ110kDaのデキストランに対するKavは0.74であった。粒径と強度については、多孔質担体での測定値と差がみられなかった。
(比較例1)
作成例1での分級を90μmのメッシュ(NONAKA RIKAKI製、ワイヤ径63μm)で行った以外は、実施例1と同様の方法で、プロテインAを固定化した吸着体を得た。
この吸着体のメジアン粒径は79μmであった。IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目33mg/mL、2回目34mg/mL、3回目34mg/mLであった。
<動的吸着量、及び目的物中にリークしたリガンド濃度測定>
(1)溶液作製
A液としてpH7.4リン酸バッファー(シグマ社製)、B液としてpH3.5の35mM酢酸ナトリウム(和光純薬工業社製の酢酸、酢酸ナトリウム、RO水で調整)、C液として1M酢酸(和光純薬工業社製酢酸とRO水で調整)、D液として1mg/mLのヒトポリクローナルIgG溶液(バクスター社製ガンマガードとA液で調整)、E液として6M尿素、F液としてA液に対して0.2vol%の界面活性剤(和光純薬工業社製ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を添加した液、中和液として2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(シグマ社製トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとRO水で調整)を作製し、各溶液を使用前に脱泡した。
(2)充填、準備
カラムクロマトグラフィー用装置として、AKTAexplorer 100(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い、直径0.5cm、高さ15cmのカラムに22μmのメッシュを取り付け、本発明の吸着体をそれぞれ3mL入れ、線速400cm/hで20%エタノール水溶液(和光純薬工業社製エタノールとRO水で調整)を1時間通液して充填した。フラクションコレクターに15mlの採取用チューブをセットし、溶出液の採取用チューブについては、あらかじめ中和液を入れておいた。
(3)IgG精製
A液を線速300cm/hで9mL通液し、次いでD液をUVをモニターしながら、IgGが10%破過するまで線速300cm/hで通液した。次いで、A液を線速300cm/hで30mL通液し、B液を線速300cm/hで30mL通液してIgGを溶出させた。次にC液を線速300cm/hで9mL,E液を線速300cm/hで9mL通液した。吸着体の充填終了後からの操作をさらに2回繰り返すことにより、溶出液中のIgG量と、IgG中にリークしたリガンド濃度を求めた。
<Kav測定>
(原理)
実施例1の吸着体のゲル相分配係数をゲル濾過で測定した。分子量の異なる2種類のデキストランを、吸着体を充填したカラムに流した。各デキストランの保持容量を検出して各Kavを算出し、Mp 110000のKav値を報告した。Kav測定に用いた機器、条件を表1に示す。
Figure 2011072883
(化合物)
充填時および選択性試験時の移動相は0.20M NaClの水溶液とした。
カラムの充填は、移動相への2%アセトン注入によって試験した。
選択性試験に用いたデキストランは以下の通りである。Kav測定に用いた化合物を表2に示す。
Figure 2011072883
Mp=196300の場合に0.25M NaClで希釈した以外は、デキストランはすべて0.20M NaCl溶液で希釈し、カラムの総体積の標識として用いた。
(サンプルの前処理)
ガラスフィルター上にて吸着体の3倍量の0.20M NaClで吸着体を洗浄した後、吸着体と0.20M NaClとの1:1スラリーを形成させた。
(検量)
個々のマニュアルに従い、使用する機器を制御し、検量した。
(方法)
1回の分析は、1本のカラムを充填して、2回試験する(すなわちデキストランを2回
注入)ことからなる。
(カラムの充填)
カラムを底部アダプターによって充填チューブに接続した。充填チューブをポンプに接続し、ポンプで水を少量注入し、約0.5cmの水で満たした。ゲルスラリーを移し、0.2M NaClで満たし、フィルター及び底部アダプターをカラムに配設した。
約22ml/分の流速で流し、カラムを直立させ、10分間送液を続けた。ゲル面が低下すれば、パスツールピペットでゲルスラリーを追加し、ゲル相長さが323mmとなるように調整した。上部アダプターのフィルター面をゲル面に合わせ、移動相のみの長さをゼロとした。ベッドが安定するまで10ml/分の流量で添加し、ベッドの安定性を確認した。ゲル層の更なる圧縮が観察されなくなったら、安定であるとした。
(選択性試験)
1.カラムを、少なくとも1.5CVの0.20M NaClで平衡化した。
2.50μlのデキストラン溶液を注入した。
3.移動相の1.3CVによって溶出した。
工程2及び3はその後、デキストラン又はデキストランミックス*ごとに繰り返した。
*デキストランは、以下のプロトコルで混合してもよく、また1度に注入してもよい。
混合物1:天然デキストラン+Mp66700
混合物2:0.25M NaCl中のMp196300
(解析)
各デキストランの保持容量は、得られたクロマトグラムのRIカーブから導出する。ここで、ピークは目的のデキストランの最大RIとして定義する。デキストランに対するKavは、以下の式によって算出される:
Kav=(VR−Vo)/(Vc−Vo)
式中、
VR=(余分のカラムベッド体積(ml)のために調整された、溶出デキストランの保持容量)
Vo=(余分のカラムベッド体積(ml)のために調整された、間隙容量(天然デキストランのための保持容量))
Vc=(カラムの幾何学的体積(ベッド高(cm)、カラム表面積(cm2))。
Kav値をその後デキストランのlogMp上にプロットした。各デキストランにおけ
る2つの結果(4つの数値)を、1つのダイヤグラムにプロットした。2つのデキストラ
ン間の一次補間は、レポートされた110000(Mp値)の分子量に対応するKav値
として算出した。

Claims (16)

  1. 多孔質担体に抗体結合性タンパク質リガンドを固定してなる吸着体であって、メジアン粒径が30μm以上65μm以下である事を特徴とする吸着体。
  2. 5%圧縮時の圧縮応力が0.02MPa以上1MPa以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.06MPa以上3MPa以下、および15%圧縮時の圧縮応力が0.1MPa以上5MPa以下であることを特徴とする、請求項1に記載の吸着体。
  3. 樹脂含量が2%以上50%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の吸着体。
  4. 前記吸着体および/またはその前駆体が架橋されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸着体。
  5. 前記抗体結合性タンパク質リガンドの密度が1〜10mg/mlであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸着体。
  6. サイズ110kDaのデキストランに対するKavが0.65以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸着体。
  7. 前記多孔質担体が炭水化物を含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸着体。
  8. 前記炭水化物が多糖類であることを特徴とする、請求項7に記載の吸着体。
  9. 前記多糖類がセルロースまたはセルロース誘導体であることを特徴とする請求項8に記載の吸着体。
  10. 前記抗体結合性タンパク質リガンドがプロテインAであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸着体。
  11. 5%圧縮時の圧縮応力が0.01MPa以上1MPa以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.03MPa以上3MPa以下、および15%圧縮時の圧縮応力が0.06MPa以上5MPa以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の吸着体。
  12. 精製目的物の吸着量が精製用吸着体1mLあたり1〜100mgであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸着体。
  13. 動的吸着容量/静的吸着容量が0.7以上であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の吸着体。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の吸着体を用いた精製方法。
  15. 直径2cm以上及び高さ5cm以上のカラムを用いることを特徴とする、請求項14に記載の精製方法。
  16. 線速が100〜1000cm/hで通液する工程を有することを特徴とする、請求項14または15に記載の精製方法。
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