以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、感光層の膜厚の摩耗に応じて交流電圧設定時に帯電ローラに印加される電圧が低下する限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
従って、中間転写体を用いる方式、記録材搬送体を用いる方式、タンデム型、1ドラム型、フルカラー、モノクロの区別なく、振動電圧が印加される帯電部材を用いた画像形成装置において等しく実施できる。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
なお、特許文献1〜3に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図2は画像形成部の構成の説明図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト31に沿って画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
制御部50は、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd、及びその他のユニット内の機構の動作を制御するための制御基板やモータドライブ基板(不図示)などから成る。環境センサ51は、装置内で熱源となる定着装置40などの影響を受けずに装置周囲の温度湿度が正確に測定できるように配置されている。制御部50は、環境センサ51の出力に基づいて様々な制御を行う。
画像形成部Paでは、感光ドラム11aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト31に一次転写される。画像形成部Pbでは、感光ドラム11bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト31のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部Pc、Pdでは、それぞれ感光ドラム11c、11dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて同様に中間転写ベルト31に順次重ねて一次転写される。
中間転写ベルト31に一次転写された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。トナー像を転写された記録材Pは、中間転写ベルト31から分離されて定着装置40へ搬送されてトナー像の定着処理を受ける。
中間転写ベルト31は、テンションローラ33、駆動ローラ32、及び対向ローラ34に掛け渡して支持され、駆動ローラ32に駆動されて320mm/secのプロセススピードで矢印R2方向に回転する。中間転写ベルト31の材料として例えば、PET[ポリエチレンテレフタレート]やPVdF[ポリフッ化ビニリデン]などが用いられる。中間転写ベルト31は、厚さ100μmのポリイミドを用い、一次転写部Ta、Tb、Tc、Tdのスラスト方向幅は330mmである。
駆動ローラ32は、金属ローラの表面に数mm厚のゴム(ウレタンまたはクロロプレン)をコーティングしてスリップを防いでおり、パルスモータ(不図示)によって回転駆動される。テンションローラ33は、中間転写ベルト31に所定のテンションを付与する。二次転写ローラ36は、中間転写ベルト31を挟んで対向ローラ34に圧接することにより、中間転写ベルト31と二次転写ローラ36との間に二次転写部T2を形成する。
分離ローラ23は、記録材カセット21からピックアップローラ22によって引き出された記録材Pを1枚ずつに分離して、レジストローラ25へ送り出す。レジストローラ25は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、中間転写ベルト31のトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ送り込む。
二次転写部T2に搬送された記録材Pは、トナー像を担持した中間転写ベルト31と二次転写ローラ36との間に挟持して搬送される。その間、電源D2が二次転写ローラ36にトナーの帯電極性と逆極性である正極性の直流電圧を印加することにより、中間転写ベルト31上のトナー像が記録材Pに二次転写される。
ベルトクリーニング装置38は、中間転写ベルト31にクリーニングブレードを当接させて、二次転写部T2を通過した中間転写ベルト31の表面に残留する転写残トナーを回収する。
定着装置40は、中心にヒータを配置した定着ローラ41に加圧ローラ42を圧接して加熱ニップを形成する。記録材Pは、加熱ニップで挟持搬送される過程で、加熱加圧を受けてトナー像を溶融させ、フルカラー画像を表面に定着された後、排出ローラ45を通じて排出トレイ46へ排出される。
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれの現像装置14a、14b、14c、14dで用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、ほぼ同一に構成される。このため、以下では、画像形成部Paについて説明し、他の画像形成部Pb、Pc、Pdについては、説明中の符号末尾のaを、b、c、dに読み替えて説明されるものとする。
図2に示すように、画像形成部Paは、感光ドラム11aの周囲に、帯電ローラ12a、露光装置13a、現像装置14a、一次転写ローラ35a、クリーニング装置15aを配置している。
感光ドラム11aは、回転ドラム型の電子写真感光体、さらに詳しくは、アルミニウム製シリンダの外周面に、帯電極性が負極性の有機光導電体(OPC)の薄膜が塗布形成されている。感光ドラム11a全体は、外径30mmに構成され、矢印R1方向に320mm/secのプロセススピード(周速度)をもって回転駆動される。
帯電ローラ12aは、後述するように、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加されて、感光ドラム11aの表面を一様な電位に帯電する。
露光装置13aは、イエローの分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム11aの表面に画像の静電像を書き込む。
現像装置14aは、現像容器14eにイエローの非磁性トナーと磁性キャリアとを混合した二成分現像剤を充填されている。カラー用トナーの特性としては、重量平均粒径が5〜8μmであることが、良好な画像を形成する上で好ましい。重量平均粒径が、この範囲内であれば、十分な解像性を有し、鮮明で高画質の画像を形成でき、静電力よりも付着力や凝集力が小さくなり、種々のトラブルが低減するからである。非磁性トナー粒子の重量平均粒径は、ふるい分け法、沈降法、光子相関法等の種々の方法によって測定できる。
トナー粒子は、構成材料を加熱溶融により均一化した後に、これを冷却固化して粉砕することによりトナー粒子を製造する粉砕法によって製造できる。しかし、粉砕法で得られるトナー粒子は一般に不定形であるため、略球形形状とするには機械的、熱的または何らかの特殊な処理を行うことが必要である。また、前述した範囲の重量平均粒径とするには球形化処理後のトナー粒子を分級することも必要になる。このため、トナー粒子の製造法としては、粉砕法よりも重合法を採用することが好ましい。
現像容器14eに配置された不図示の攪拌スクリューは、二成分現像剤を攪拌しつつ循環させて、非磁性トナーを負極性に、磁性キャリアを正極性にそれぞれ帯電させる。現像スリーブ14hは、固定のマグネットローラ14iの周囲で回転して、帯電した二成分現像剤をマグネットローラ14iの磁力で表面に担持し、穂立ち状態の二成分現像剤で感光ドラム11aを摺擦させる。電源D4は、負極性の直流電圧Vdcに交流電圧Vppを重畳した振動電圧を現像スリーブ14hに印加する。より具体的には、−550Vの直流電圧Vdcに、周波数9.2kHz、ピーク間電圧Vpp=1.8kVの矩形波の交流電圧を重畳した振動電圧である。これにより、現像スリーブ14hから、相対的に正極性になった感光ドラム11aの露光部へと帯電したトナーが移転して静電像が反転現像される。
一次転写ローラ35aは、中間転写ベルト31を介して感光ドラム11aに圧接して、中間転写ベルト31と感光ドラム11aとの間に一次転写部T1を形成する。電源D1は、感光ドラム11a上のトナー像が一次転写部T1を通過する間、一次転写ローラ35aにトナーの帯電極性と逆極性である正極性の直流電圧を印加して、感光ドラム11a上のトナー像を中間転写ベルト31へ一次転写させる。感光ドラム11a上のトナーの電荷保持量は30μC/gであり、一次転写ローラ35aの芯金35eに対して40μAの電流が流れるように、電源D1が出力する定電圧を設定してある。
一次転写ローラ35は、直径φ8mmの芯金35eの外側に発泡ポリウレタンの厚さ4mmの弾性層35fを形成した外径φ16mmのウレタンスポンジローラであって、1kVの電圧印加で5×107Ωの抵抗値を有する。
クリーニング装置15aは、感光ドラム11aにクリーニングブレード15eを当接させて、一次転写部T1を通過した感光ドラム11a表面に付着した転写残トナーを掻き落として回収する。クリーニング装置15aは、カウンターブレード方式を用い、クリーニングブレード15eの自由長が8mmである。クリーニングブレード15eは、ウレタンを主体とした弾性ブレードで、感光ドラム11aに対して、線圧約35g/cmの押圧で当接されている。
<感光ドラム>
図3は感光ドラムの感光層の膜厚の説明図である。図3に示すように、感光ドラム11aは、アルミニウム製シリンダの支持体(導電性ドラム基体)11αの表面に、下引き層11β、電荷発生層11γ、及び電荷輸送層1ωを順次塗布して重ね合わせた四層構成である。
最も内側に配置される支持体11αは、導電性を示す材料であって硬度の測定に影響を与えない範囲内のものであれば、特に制限なく使用できる。例えばアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレスなどの金属や合金を感光ドラム状に成形したものなどが使用できる。
下引き層11βは、光の干渉を抑えて上層の接着性を向上させる。また、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、または感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。
下引き層11βの材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼインを用いることができる。ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわおよびゼラチンなども用いることができる。これらを適当な溶剤に溶解し、支持体11α上に塗布する。下引き層11βの膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
感光ドラム11aの感光層は、有機半導体(OPC)を、厚さ1μmの電荷発生層11γと厚さ29μmの電荷輸送層11ωとに機能分離して積層させた厚さ30μmの積層型感光層である。
電荷発生層11γは、表面から入射した露光光(レーザービーム)のエネルギーを吸収して電荷キャリア対を発生する。電荷発生層11γに用いる電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、各種の中心金属および結晶系がある。具体的には、α、β、γ、εおよびX型などの結晶型を有するフタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料等である。モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニン、及び特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコン等である。本実施例では、高画質を実現するために感度を高くできるフタロシアニン化合物を用いた電荷発生層11γを用いた。電荷発生層11γは、ジスアゾ顔料をCGL層(キャリア発生層)としている。
上記電荷発生物質は、0.3〜4倍量の結着樹脂および溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライターおよびロールミルなどの方法を用いて分散される。分散後、分散液を下引き層上に塗布し乾燥させることにより電荷発生層11γが形成される。あるいは、電荷発生物質の単独組成からなる膜を蒸着法などを用いることにより下引き層B上に堆積して電荷発生層11γが形成される。電荷発生層11γは、膜厚が5μm以下であることが好ましく、特に0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
上記結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、などのビニル化合物の重合体および共重合体が利用可能である。ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタンも利用可能である。セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂等も利用可能である。
電荷輸送層11ωは、電荷発生層11γで発生した電荷キャリアから受け渡された電荷を表面へ搬送する。電荷輸送層11ωは、適当な電荷輸送物質を適当な結着樹脂とともに溶剤に分散/溶解し、該溶液を上述の方法を用いて電荷発生層11γ上に塗布して乾燥させることにより形成する。
電荷輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリスチリルアントラセンなどの複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、カルバゾールなどの複素環化合物を利用できる。トリフェニルメタンなどのトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの低分子化合物も利用できる。結着樹脂としては、電荷発生層11γの結着樹脂と同様な樹脂を利用できる。
電荷輸送物質と結着樹脂の比率は、両者の全重量を100とした場合に電荷輸送物質の重量は20〜100であることが好ましく、より好ましくは30〜100である。電荷輸送物質の量がそれ以下であると、電荷輸送能が低下し、感度低下および残留電位の上昇などの問題が生ずる。
積層型感光体における電荷輸送層11ωの膜厚は1〜50μmが好ましく、より好ましくは3〜30μmである。本実施例としては、電荷輸送層11ωは、ヒドラゾンと樹脂を混合したものをCTL層(キャリア輸送層)として厚さ29μmに形成されている。
<帯電装置>
感光ドラムの帯電装置としては、ローラ型、ブレード型などの帯電部材を感光ドラム表面に接触させる接触帯電方式が広く採用されており、特に、帯電ローラは、長期にわたって、安定した帯電を行なうことができる。
帯電ローラには、帯電の一様性を得るために、所望の暗部電位VDに相当する直流電圧Vdcに、直流電圧印加時の放電開始電圧Vthの2倍以上のピーク間電圧Vppをもつ交流電圧を重畳した振動電圧が印加される。振動電圧を用いることで、感光ドラム上の局所的な電位ムラが解消され、帯電された暗部電位VDは、直流電圧値Vdcに均一に収束するからである。
帯電ローラ12aは、弾性層12fの弾性を利用してギャップを作らずに感光ドラム11aと接触させる接触式帯電ローラである。振動電圧を印加するための導電性支持体として金属製軸部材の芯金12eが用いられ、芯金12eは、軸受け部と、電圧印加部を兼ねた軸受け部と、外径がφ14mmの被覆部が一体で構成されている。被覆部の周面上には、ポリエーテルエステルアミド等のイオン導電性の高分子化合物を含有した熱可塑性樹脂であるABS樹脂の体積抵抗値105〜107Ωcmの抵抗調整層が、射出成形で0.5〜1mmの厚みに被覆形成加工される。抵抗調整層の表面には、酸化スズなどの導電性微粒子が分散した熱可塑性樹脂組成物からなる保護層が形成されている。
なお、抵抗調整層は、カーボンブラック等の導電剤を分散混入させた1〜2mmの厚さを有する導電性ゴムとし、画像形成時の帯電ムラを防止するために、抵抗値を105〜107Ωcmに調製してもよい。
<検出手段、制御手段>
図4は帯電ローラに印加する電圧の制御系のブロック図である。図5は帯電ローラに印加する交流電圧のピーク間電圧と交流電流の関係の説明図である。図6は交流電圧のピーク間電圧を設定する制御の説明図である。
帯電部材に振動電圧を印加した場合、直流成分のみを印加する場合に比べて感光体に対する放電電流が増えるため、感光体表面が荒れて摩耗する等、表面劣化が促進される傾向がある。このため、交流電圧のピーク間電圧Vppをできるだけ小さく抑え、帯電部材が感光体に対して過剰に放電することを防ぐ必要がある。
また、高温高湿な環境下で放電電流が増えると、感光体表面に放電生成物が付着し、付着した放電生成物が空気中の水分を呼び込んで表面に抵抗ムラが形成される。このような抵抗ムラは、感光体表面に形成される静電像を不均一にし、静電像のドットが伸びたり、太ったり、飛び散ったりなど、いわゆる画像ボケを生じさせる原因となる。このため、交流電圧のピーク間電圧Vppをできるだけ小さく抑え、帯電部材が感光体に対して過剰に放電することを防ぐ必要がある。
交流電圧のピーク間電圧Vppと放電電流の関係は、環境の温度湿度、帯電部材の材料、耐久状態等によって異なる。例えば、帯電部材に同じピーク間電圧を印加しても、低温低湿環境では帯電部材の抵抗値が上昇するので放電電流が少なくなり、高温多湿環境では抵抗値が低下するので放電電流が多くなる。
特に、帯電部材としての昨今の帯電ローラは、長寿命を目指すが故に、帯電ローラ内部の電荷の応答性の高いイオン導電剤を使用している。イオン導電剤を使用した帯電ローラは、電子導電剤を使用した従来の帯電ローラに比較すると、耐久性が高い反面、温度湿度変動による抵抗の振幅が大きいため、交流電圧のピーク間電圧Vppと放電電流の関係の変動が著しくなる。
そこで、画像形成装置100では、非画像形成時に、複数段階の交流試験電圧を印加して交流電流を測定し、測定結果に基いて所定の放電電流が得られるような交流電圧の定電圧を設定している。帯電ローラ12aに放電領域のピーク間電圧Vppを印加した際の交流電流Iacと、帯電ローラ12aに未放電領域のピーク間電圧Vppを印加した際の交流電流Iacとが測定される。そして、測定データを補間演算して放電電流ΔIacとピーク間電圧Vppの関係式を求め、この算出式に所定の放電電流D(例えば50μA)を代入することにより、ピーク間電圧Vppの定電圧を設定する。
このようにして、放電電流ΔIacをより直接的に制御するので、温度湿度の変動に伴ってピーク間電圧Vppと放電電流との関係が変動しても、放電電流を一定に保つように高精度に交流電圧を制御可能である。
図4に示すように、直流電圧Vdcに周波数fの交流電圧Vacを重畳した振動電圧が電源D3から芯金12eを介して帯電ローラ12aに印加されることで、感光ドラム11aの周面が所定の電位に帯電処理される。電源D3は、直流電源101と交流電源102とを含む。
制御部50は、直流電源101と交流電源102とをオン・オフ制御して、帯電ローラ12aに直流電圧と交流電圧のどちらか、若しくはその両方の重畳電圧を印加させる機能を有する。また、制御部50は、直流電源101から帯電ローラ12aに印加する直流電圧値と、交流電源102から帯電ローラ12aに印加する交流電圧のピーク間電圧値とを制御する機能を有する。
交流電流測定回路104は、感光ドラム11aを介して帯電ローラ12aに流れる交流電流を測定する。交流電流測定回路104から制御部50に、測定された交流電流情報が入力する。環境センサ51は、画像形成装置100が設置されている環境の温度及び湿度を検知する。環境センサ51が検知した温度湿度情報が制御部50に入力する。
制御部50は、交流電流測定回路104から入力された交流電流値情報、更には環境センサ105から入力された温度湿度情報から、帯電ローラ12aに印加する振動電圧の交流電圧における適切なピーク間電圧を演算・決定する。
従来から、種々の検討により、以下の定義により数値化した放電電流ΔIacが実際の交流放電の量を代用的に示し、感光ドラム11aの削れ、画像流れ、帯電均一性と強い相関関係があることが見出されている。
図5に示すように、帯電ローラ12aを流れる交流電流Iacは、放電開始電圧Vth×2(V)未満のピーク間電圧Vppの未放電領域では線形の関係にある。放電開始電圧Vth×2(V)以上のピーク間電圧Vppの放電領域では、徐々に交流電流Iacが増加方向にずれる。しかし、放電の発生しない真空中で同様の実験を行ったところ、放電開始電圧Vth×2(V)以上でも未放電領域のままの線形の関係が保たれていたため、増加方向のずれは、放電に関与している電流の増分ΔIacであると考えられる。そして、放電開始電圧Vth×2(V)未満のピーク間電圧Vppに対する電流Iacの比をαとしたとき、放電による電流以外の、接触部へ流れる交流電流(ニップ電流)はα・Vppとなる。そして、放電開始電圧Vth×2(V)以上のピーク間電圧Vpp印加時に測定される交流電流Iacと、ニップ電流α・Vppの差分ΔIacを放電の量を代用的に示す放電電流と定義する。
ΔIac=Iac−α・Vpp ・・・式1
放電電流ΔIacは、一定のピーク間電圧Vppの振動電圧を用いて帯電を行った場合、環境の温度湿度や画像形成装置の累積使用時間につれて変化する。これは、ピーク間電圧Vppと放電電流ΔIacの関係がこれらの要因によって変動するからである。
そこで、交流電圧設定モードでは、常に所望の放電電流を得るため、以下の要領で交流電圧設定モードの制御を実行して交流電圧の定電圧を求めている。制御部50は、印字準備回転動作時に、交流電圧設定モードのプログラムを実行して、印字工程時の帯電工程で所望の放電電流Dが得られるような交流電圧のピーク間電圧Vppの定電圧を決定する。制御部50は、帯電ローラ12aに印加される振動電圧の交流電圧Vacの適切なピーク間電圧値Vppを演算・決定する。
制御部50は、印字準備回転動作時、交流電源102を制御して、図6に示すように、放電領域のピーク間電圧(Vpp)を3点、未放電領域のピーク間電圧を3点、順次帯電ローラ12aに印加させる。そして、その時の感光ドラム11aを介して帯電ローラ12aに流れる交流電流値Iacが交流電流測定回路104で測定されて制御部50に入力される。
制御部50は、測定された3点ずつの交流電流Iacから、最小二乗法を用いて、放電、未放電領域のピーク間電圧Vppと交流電流Iacの関係をそれぞれ直線近似し、以下の式2、式3を算出する。
放電領域の近似直線 :Yα=αXα+A ・・・式2
未放電領域の近似直線 :Yβ=βXβ+B ・・・式3
式2の放電領域の近似直線と式3の未放電領域の近似直線の差分が放電電流ΔIacである。このため、この放電電流ΔIacが所定の放電電流量Dとなるようなピーク間電圧Vpp1は、式4によって決定される。
初回用のピーク間電圧 :Vpp1=(D−A+B)/(α−β) ・・・式4
そして、帯電ローラ12aに印加するピーク間電圧Vppを式4で求めたVpp1に切り替え、ピーク間電圧Vpp1で交流電圧を定電圧制御した振動電圧を用いた印字工程へ移行する。
印字工程時には、ピーク間電圧Vpp1に定電圧制御された交流電圧を含む振動電圧が帯電ローラ12aに印加され、その状態で帯電ローラ12aに流れる交流電流Iachが交流電流測定回路104によって測定される。
また、印字工程中の画像と画像の間の画像間(紙間)において、帯電ローラ2に未放電領域のピーク間電圧Vppmの交流電圧を含む振動電圧が印加され、その時に流れる交流電流Iacm値が交流電流測定回路104によって測定される。
そして、新たに測定されたピーク間電圧Vpp1と交流電流Iachの関係とピーク間電圧Vppmと交流電流Iacmの関係とを、印字準備回転動作時に測定したピーク間電圧Vppと交流電流Iacの関係に加えて統計的処理を行なう。これにより、以下の式5、式6を算出する。
新たな印字工程時の測定点(ピーク間電圧Vpp1/交流電流Iach)と画像間の測定点(ピーク間電圧Vppm/交流電流Iacm)を、印字準備回転動作時に求めた測定点に追加して、測定点数を多くして、最小二乗法を用いて再計算させる。
放電領域の近似直線 :Yα=α’Xα+A’ ・・・式5
未放電領域の近似直線 :Yβ=β’Xβ+B ・・・式6
式5の放電領域の近似直線と式6の未放電領域の近似直線の差分が新たな測定によって補正された放電電流ΔIacである。このため、この放電電流ΔIacが所定の放電電流量Dとなるように補正した次回用のピーク間電圧Vpp2は、式7によって決定される。
次回用のピーク間電圧 :Vpp2=(D−A’−B)/(α’−β’) ・・・式7
そして、制御部50は、初回の画像形成で帯電ローラ12aに印加したピーク間電圧Vpp1を、式7で求めたピーク間電圧Vpp2に切り替えて、次回の画像形成を行なう。そして、制御部50は、次回の画像形成においても、同様に、印字工程中と紙間とにおいてそれぞれ交流電流Iacを測定して、新たに得られた測定データを追加した統計処理を行って式5、式6を補正する。紙間ごとにピーク間電圧と放電電流の関係式(式7)を補正して、印字工程時に帯電ローラ12aに印加する交流電圧のピーク間電圧を紙間ごとに補正し続ける。
このようにして、印字準備回転動作時に、初回の印字工程時で所定の放電電流量Dを得るために必要なピーク間電圧Vpp1を算出する。そして、印字工程中には、求めたピーク間電圧Vpp1を用いて画像形成を行いつつ、新たに得られた測定データを追加して所定の放電電流量Dを得るために必要なピーク間電圧Vpp2を補正する。連続印字モード時には、印字工程中の交流電流Iachと、紙間で帯電ローラ12aに未放電領域のピーク間電圧Vppmを印加した際の交流電流Iacmとを測定して、次の印字工程時に印加するピーク間電圧Vpp2を補正する。
このような交流電圧設定モードの制御によって、帯電ローラ12aの製造ばらつきや材質の環境変動に起因する抵抗値のふれや、本体装置の高圧ばらつきを吸収して、必要最小限に抑えた放電電流Dにて帯電工程を行うことができる。連続印字モードでは、帯電ローラ12aの抵抗値変動に対しても一枚ごとに補正を入れることで、確実に所望の放電電流Dで制御可能である。
ところで、ピーク間電圧Vppと交流電流Iacが大きく変化する要因として、感光ドラムの感光層の膜厚の影響が存在する。感光ドラムに当接させた帯電ローラに振動電圧を印加して感光ドラムを帯電させる場合、放電によって感光ドラムの削れ量が多くなって感光ドラムの長寿命化の妨げとなる。感光ドラムの削れ量は、特に、OPC感光ドラムを使用した場合に顕著であり、表層となる電荷輸送層(11ω:図3)が主に削れる。感光ドラムの削れとは、感光ドラムの表面が削れて電荷輸送層(11ω:図3)の膜厚が薄くなることである。
帯電ローラ12aにより与えられる感光ドラム11aの表面電位V0と感光ドラム11aの感光層の膜厚dとの間に式8の関係が成立する。膜厚dは、感光層の表面から導電性基体(11d:図3)表面までの距離である。Qは感光層に与えられる単位面積あたりの電荷量、Cは感光層の単位面積あたりの静電容量、ε0は真空中の誘電率、εrは感光層の比誘電率をそれぞれ示す。
Q=CV0 =ε0 ・εr ・1/d・V0 ・・・式8
式8からわかるように、感光ドラム11aが摩耗して感光層の膜厚dが減少すると、感光ドラム11aに対して同一の表面電位V0をのせるのにより多くの電荷Qが必要になる。すなわち、同一の表面電位V0を確保するために必要なQが増えるため、帯電の交流電圧の設定を定電圧で制御している場合、交流電流の値が、感光ドラム11aの膜厚が薄くなるにつれて大きくなる。それに合わせて感光ドラム11aの表面に劣化を与える放電電流も増加する。
従って、感光層の膜厚が薄くなっても、厚いときと同じ交流試験電圧を印加し続けると、交流試験電圧の印加に伴って過剰な放電電流が発生して感光ドラム11aの感光層の劣化が進んでしまう。感光ドラム11aの感光層の劣化を抑制できる放電電流を設定するための交流電圧設定モードで過剰な放電電流が発生してしまう。
そこで、画像形成の累積に伴う感光層の削れ量を画像形成の累積枚数、感光ドラムの累積回転時間などによって推定し、交流電圧設定モードで使用される交流試験電圧を推定結果に応じて低下させる制御が提案された。しかし、感光ドラム11aの感光層の膜厚は、使用枚数や感光ドラムの回転時間のみで予測できるものではなく、使用された環境の温度湿度や、1日に流されるコピーボリュームなどに左右される。また、感光ドラム11aに対する現像剤のキャリア付着、記録材のジャムと言った突発的なトラブルの後、急速に感光ドラム11aが消耗することもある。従って、感光ドラム11aの感光層の膜厚を正確に知るためには、やはり、リアルタイムでの感光ドラム11aの感光層の膜厚を検知する方法が有効である。
そこで、以下の実施例では、交流電圧設定モードの中で、既存の構成を用いて感光ドラム11aの感光層の膜厚を測定し、膜厚に応じた適正な範囲の交流試験電圧をリアルタイムに設定している。これにより、交流電圧設定モードの交流試験電圧によって過剰な放電電流が発生することを阻止するとともに、適正な放電電流に近い範囲で交流試験電圧を設定して放電電流の設定精度を高めている。
<実施例1>
図7は感光ドラムに流れる直流電流量に基づく感光層の膜厚測定の説明図である。図8は感光層の膜厚及び環境に応じたピーク間電圧と交流電流の関係の変化の説明図である。図9は感光層の摩耗に伴う放電電流の増加の説明図である。図10は感光層の膜厚の測定結果に応じた交流試験電圧の設定の説明図である。図11は実施例1の交流電圧設定モードのフローチャートである。
実施例1では、印字準備回転動作時に用いる交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´と画像間で用いる交流試験電圧ACm(ピーク間電圧Vppm)とを感光層の膜厚に応じて設定する。
図4に示すように、感光ドラム11aと接地電位との間に、感光ドラム11aの感光層の膜厚を検出するための寿命検出手段として、直流電流測定回路106が設けられている。直流電流測定回路106は、振動電圧の直流電圧によって帯電ローラ12aから感光ドラム11aに流れる直流電流を測定するための抵抗Rと、交流電圧によって感光ドラム11aに流れる交流電流をバイパスするためのコンデンサCとを含む。
直流電流測定回路106は、帯電ローラ12aに印加される直流電圧を制御部50でモニタするための既存の構成であって、この既存の構成が感光ドラム11aの感光層の膜厚測定を兼ねている。
制御部50は、抵抗Rの端子間電圧を測定し、その測定値に基づいて感光ドラム11aの感光層の現在膜厚を算出する。制御部50は、感光ドラム11aの現状の膜厚を判断して、交流試験電圧が過剰にならないようにしている。
図9に示すように、感光ドラムの帯電電位(VD)を一定として、感光ドラム11aの膜厚が変化した時、感光ドラム11aから帯電ローラ12aへ流れ出す直流電流が変化する。
実施例1では、1日の最初にメイン電源がONされた際の起動前回転時のタイミングで電源D3から帯電ローラ12aに直流電圧−600Vを含む振動電圧を印加して、直流電流測定回路106により、そのときの直流電流成分を測定している。
1日の間に感光ドラム11aの削れ量がそれほど進むわけではないので、1日1回くらいの頻度で膜厚測定を実行すれば十分である。そして、1日の最初にメイン電源がONされた際の起動前回転時は、感光ドラム11aの表面電位、温度等が安定しているため好ましい。一方、画像形成中は、レーザー露光等により、感光ドラム11aの表面電位が保証されないので、好ましくない。
なお、膜厚測定の頻度を上げるのであれば、スリープ復帰時の前回転時のタイミング、又は画像間隔を広げて連続画像形成中の画像間のタイミングで膜厚測定を実行することも可能である。しかし、感光層の膜厚減少は、画像形成の累積を通じてジワジワ進行するものなので、ヘビーユーザーの1日の画像形成枚数を前提としても、メイン電源のON時のみで十分である。
感光層の膜厚測定で用いる直流電圧は、実施例の感光ドラム11aと帯電ローラ12aとの組み合わせにおいては、−400V〜−800Vを用いることが好ましい。特に−600Vのときに最も再現性が高く安定した測定結果が得られている。
感光層の膜厚測定時には、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加することが好ましい。膜厚測定時に用いる直流電圧は、直流電流を精度良く検出できれば、実際には何Vであっても構わない。しかし、直流電圧に重畳する交流電圧は、感光ドラム11aと帯電ローラ12aとの間に十分な放電電流が確保されて、直流電圧に等しい帯電電位(VD)を感光ドラム11aに形成できる電圧であることが好ましい。図14は、直流電圧に重畳する交流電圧の説明図である。
図14の(a)に示すように、交流電圧が十分でないと、帯電ローラ12aに印加した直流電圧を感光ドラム11aの帯電電位(ドラム電位)に十分に反映できない。
図14の(b)に示すように、交流電圧が十分でないと、帯電ローラ12aを流れて測定される電流値と直流電圧の関係が不安定になる。
要するに、膜厚測定時の直流電圧は、帯電ローラ12aに印加した直流電圧に帯電電位(ドラム電位)が収束してくれさえすればよく、その時、測定される直流電流も安定した領域になる。従って、膜厚測定時に重要なのは、直流電圧ではなく、交流電圧がきちんと放電開始域以上の電圧になっていることである。
感光層の厚さと直流電流の関係は、感光ドラム11aの材質、プロセススピード、温度湿度によっても異なる。半導体薄膜である感光層の抵抗値は温度によって異なるからである。しかし、これらのパラメータが等しければ、感光層の膜厚が減少するにつれて、感光ドラム11aに流れる直流電流は増加する。このため、感光ドラム11aの材質、プロセススピード、温度湿度に応じて区分された膜厚の換算テーブルを準備して、直流電流測定回路106を用いた直流電流の測定結果で参照することによって、感光層の膜厚を求めることができる。
なお、一般的には、感光ドラム11aの膜厚検知手段(106)は、感光ドラム11aの寿命を算出するのに利用されている。すなわち、感光ドラム11aの膜厚変化を測定することで、感光ドラム11aを含むカートリッジの画像不良に至るまでの限界を予測している。
図10の(a)に示すように、帯電ローラ12aに印加されるピーク間電圧Vppと交流電流Iacの関係は、感光ドラムの膜厚によって大きく左右される。
図10の(b)に示すように、帯電ローラ12aに印加されるピーク間電圧Vppと交流電流Iacの関係は、使用される環境の温度湿度(絶対湿度)の変動によって大きく左右される。このことを考慮して、従来から実施されている手段として、環境センサ51の検出結果に基づいて、交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´を変更する提案がされている。つまり、画像形成装置100の使用されている環境を予測して、環境変動によって発生する帯電ローラに印加されるピーク間電圧と交流電流の関係の変化を補正することができる。
しかしながら、感光ドラム11aの膜厚の変化に伴って発生する帯電ローラに印加されるピーク間電圧と交流電流の関係の変化に関しては、補正していないのが現状であった。
図9に示すように、感光ドラムの感光層の膜厚が29μmから15μmに減ったとき、膜厚が29μmのときと同じ交流試験電圧AC1、AC2、AC3を印加すると、過剰な放電電流が発生して大きな交流電流が流れる。膜厚の減少に伴ってピーク間電圧Vppと放電電流ΔIacの関係が変化する。このため、所定の放電電流Dが得られる式4のピーク間電圧Vpp1は、感光層の膜厚が29μmのときに用いた交流試験電圧AC1、AC2、AC3から大きくかけ離れた値に設定されることになる。
つまり、感光層の膜厚が15μmになると、膜厚が29μmのときに用いた交流試験電圧AC1、AC2、AC3は、ピーク間電圧Vpp1を求めるには不適正で誤差の大き過ぎるピーク間電圧になっている。膜厚の変化に伴って帯電ローラ12aに印加されるピーク間電圧Vppと交流電流Iacの関係が大きく変化するため、上述した式2、式3の算出誤差が大きくなって交流電圧設定モードの信頼性が低下する。
また、感光層の膜厚が29μmのとき、連続印字工程の紙間で帯電ローラ11aに印加する未放電領域の交流試験電圧AC1’は、膜厚が15μmになると、放電領域のピーク間電圧になっている。この場合、放電領域の交流電流/ピーク間電圧データ(AC1’)を未放電領域の交流電流/ピーク間電圧として用いることになり、紙間でのピーク間電圧の補正を適正に実施できなくなる。
このため、実施例1では、交流電圧設定モードに際して、上述した式2、式3を算出するために用いる未放電領域及び放電領域の交流試験電圧を環境変動及び感光ドラム11aの膜厚に応じて変更する。また、連続印字工程の紙間で帯電ローラ11aに印加する未放電領域の交流試験電圧も、環境変動及び感光ドラムの膜厚に応じて変更する。
図6に示すように、交流電圧設定モードでは、放電領域に定めた三段階の交流試験電圧と、未放電領域に定めた三段階の交流試験電圧とを使用する。
図9に示すように、感光ドラム11aの感光層の膜厚の変化や環境変動によって、帯電ローラ12aに印加されるピーク間電圧と放電開始電圧(Vth×2)との関係が異なってくる。膜厚が29μmのとき、三段階の交流試験電圧AC1’、AC2’、AC3’は、いずれも放電開始電圧より低い未放電領域値に選択されている。しかし、膜厚が15μmになると、交流試験電圧AC1’が放電開始電圧をまたいで放電領域に移ってしまう。このため、交流試験電圧AC1’、AC2’、AC3’の交流電流Iac/ピーク間電圧Vppのデータを用いて未放電領域の関係式(式2)を求めると誤差が大きくなる。
また、放電開始電圧を越えた放電領域におけるピーク間電圧Vppと交流電流Iacの関係は、実際には図6のような直線的な比例関係とはならず、図9のような二次関数的な関係となる。帯電ローラ12aに印加されるピーク間電圧Vppと放電電流ΔIacの関係は、直線的に比例して変化するわけではない。このため、所定の放電電流Dを設定するようにピーク間電圧Vppを制御する場合、放電開始電圧よりも高い交流試験電圧AC1、AC2、AC3は、なるべく実使用するピーク間電圧Vpp1に近い範囲に設定する必要がある。そして、実使用するピーク間電圧Vpp1に近い範囲で放電電流D(式4)を算出する必要がある。
このため、実施例1では、放電領域の三段階の交流試験電圧AC1、AC2、AC3及び未放電領域の三段階の交流試験電圧AC1´、AC2´、AC3´は、感光ドラム11aの感光層の膜厚に応じて設定される。表1に示す環境変動及び表2に示す感光層の膜厚に応じて設定される。
図4に示すように、実施例1では、直流電流測定回路106により測定した直流電流[μA]で表2のテーブルを参照することにより、感光ドラム11aの感光層の膜厚を正確に測定する。そして、測定した膜厚に応じて、表3に示すように、放電領域の三段階の交流試験電圧AC1、AC2、AC3及び未放電領域の三段階の交流試験電圧AC1´、AC2´、AC3´を設定する。
表3に示すように、交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´は、直流電流測定回路106により測定した感光ドラム11aの感光層の膜厚が小さくなるほど低く設定される。感光層の膜厚が変化しても放電電流Dは一定に設定される。
表1に示すように、交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´は、環境センサ105により測定した空気中の水分量(絶対湿度)が多いほど低く設定される。空気中の水分量(絶対湿度)が多いほど放電電流Dも低く設定される。
図4を参照して図11に示すように、制御部50は、式4からVpp1を随時算出しながら連続画像形成を行う。Vpp1を算出する制御(S13〜15)は、コピー枚数をカウントして、前回の設定からの累積枚数が200枚をカウントする毎(S12のYES)に1回行った。図6を参照して説明したように、放電領域(S13)と未放電領域(S14)とで交流試験電圧による交流電流を測定し、所定の放電電流Dに相当するピーク間電圧Vpp1を求めた(S15)。
また、感光ドラム11aの膜厚検知制御(S20〜S22)に関しては、コピー枚数をカウントして前回の交流試験電圧の調整からの累積枚数が1000枚をカウントする毎に(S19のYES)、1回行った。感光ドラム11aの膜厚を検知して(S21)、交流試験電圧を調整した(S22)。
また、毎回の印字工程で放電領域のピーク間電圧による交流電流を測定し(S16)、紙間で未放電領域のピーク間電圧による交流電流を測定して(S17)、ピーク間電圧Vppを紙間ごとに調整した(S18)。
もちろん、Vpp1を算出する制御は、本体の構成、感光ドラム11aの特性、帯電ローラ12aの特性等に合わせて、制御頻度を変えてもよい。一般的に制御頻度としては、100枚〜1000枚に1回の場合が多く、生産性と制御の正確性を考慮して、200枚〜500枚に1回が望ましい。
また、感光ドラム11aの膜厚検知制御に関しても制御頻度は変えてもよく、感光ドラム11aの削れ量を考慮して、1μm削れる間に1回のペースは守るのが望ましい。本件では、1000枚に1回としたが、昨今の削れ量の少ない感光ドラムを使用する場合などは、本体の電源がONされた直後のウォームアップ時にのみ行うなどの制御も可能である。
また、実施例1は、画像形成中の帯電高圧条件Vpp1を算出する制御の測定ポイントとして、AC1、AC2、AC3、及びAC1´、AC2´、AC3´の6点を使用している。しかし、もちろんこれに限ったものではなく、少なくとも、放電領域での式2、及び未放電領域での式3が算出できれば良いので、放電領域、未放電領域でのそれぞれ2点ずつの交流試験電圧があれば十分である。逆に式2、3の精度を上げたければ、交流試験電圧の段階を6以上に増やすことも可能である。
表1に示すように、帯電ローラ12aに印加されるピーク間電圧Vppと交流電流Iacの関係を算出し、画像形成中の交流電圧のピーク間電圧Vpp1を決定する制御を行わせた。感光ドラム11aの膜厚の変化を感光層の膜厚検知制御で予測し、その膜厚の変化に応じて、試験交流電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´を変更させた。
これにより、感光ドラム11aの寿命を通じて、感光ドラム11aに劣化を与える基となる放電電流Dを正確に制御できるようになった。そして、従来から感光ドラム11aの膜厚が少なくなってきた際に問題となっていた異常放電が阻止された。これにより、感光ドラム11aの劣化よる画像ボケや、感光ドラム11aのムラ削れによる画像ムラは全く発生しなくなり、画像形成装置100の感光ドラム11aの5万枚コピー通紙後の画像評価には、画像欠陥は存在しなかった。
実施例1では、感光ドラム11a表面の劣化へ大きな影響を与える帯電の放電電流を適正に保つことができる。交流電圧のピーク間電圧と交流電流の関係を測定し、関係式から放電電流量を算出することができる。従来困難となっていた寿命末期の放電電流量の制御を、感光ドラム11aの膜厚を正確に把握しながら、その膜厚の変化に応じて交流試験電圧を変更することによって可能にし、常に放電電流の制御を正確に行うことが可能になった。これにより、感光ドラム11aの劣化の要因となる帯電ローラ12aから感光ドラム11aに放電される放電電流を必要最低限に抑えることができる。感光ドラム11aの膜厚が変化した際の交流電圧設定モードの信頼性の低下を、感光ドラム11aの膜厚検知手段の検出結果に基づいて、制御に使用する交流試験電圧を変更することによって防止する。従って、感光ドラム11aの使用状況に応じて、発生し易くなっていた画像ボケや感光ドラム11aのムラ削れによる不良画像を格段に抑制することが可能になり、画像形成装置100の画像品質は格段に向上した。
なお、実施例1では、感光ドラム11aの膜厚を検知する手段として、感光ドラム11aと接地電位との間に寿命検出手段としての直流電流検知回路106を設ける実施形態を述べた。しかし、これに限らず、実施例1における直流電流測定回路106は、帯電ローラ12aと直流電源101との間に配置してもよく、直流電源101と接地電位との間に配置してもよい。同様に、交流電流測定回路104は、帯電ローラ12aと交流電源102との間に配置してもよく、交流電源102と接地電位との間に配置してもよい。
<実施例2>
実施例1では、上記表1に示すように、絶対湿度(g/kgAir)と感光層の膜厚の組み合わせごとの刻みで交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´を設定した。これに対して、実施例2では、絶対湿度(g/kgAir)の刻みごとに感光層の初期膜厚(感光ドラム11aの新品状態)における交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´を設定した。そして、感光ドラム11aの新品状態からの使用開始後は、実施例1と同様に所定の直流電圧を印加した際に感光層に流れる電流を測定して感光層の膜厚を計算し、初期膜厚からの摩耗量を求める。そして、摩耗量の刻みごとに交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´を設定した。図10に示すように、摩耗量が3μmに達するごとに交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´を一律に20Vずつ低下させた。
表4では、実施例1のように任意ではなく、直流電流測定回路106による直流電圧の測定結果に基づいて算出された感光ドラム11aの感光層の膜厚減少に応じて、リニアに交流試験電圧を低下させた。感光ドラム11aにおける3μmの摩耗量に対してピーク間電圧Vppが20V低下するように規則性を持たせて交流試験電圧のテーブルを設定した。
表5では、表2よりも感光層の膜厚減少の刻みを大きくして、感光ドラム11aにおける5μmの摩耗量に対してピーク間電圧Vppが40V低下するように規則性を持たせて交流試験電圧のテーブルを設定した。
表4のテーブルを用いて、実施例1と同様に連続画像形成の実験を行った。準備前回転動作時と、連続画像形成中の所定のタイミングで帯電ローラ12aに印加されるピーク間電圧と交流電流の関係を算出し、画像形成中の交流電圧のピーク間電圧Vpp1を決定する交流電圧設定モードを行わせた。感光ドラム11aの感光層の膜厚の変化を電気的に測定して、膜厚の変化に応じて、交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´を一律変更していった。
これにより、感光ドラム11aの寿命を通じて、感光ドラム11aに劣化を与える基となる放電電流Dを正確に制御できるようになった。そして、異常放電による感光ドラム11aの劣化よる画像ボケや、感光ドラム11aのムラ削れによる画像ムラは全く発生しなくなった。そして、画像形成装置100の連続5万枚コピー後の画像評価において画像欠陥は存在しなかった。
<実施例3>
図12は実施例3における感光層の膜厚測定のための構成の説明図である。図13は交流電流と感光層の膜厚との関係の説明図である。
実施例1、実施例2では、所定の直流電圧を帯電ローラ12aに印加した際に感光ドラムの感光層に流れる電流、すなわち感光層の直流抵抗に応じて感光ドラムの膜厚を評価した。これに対して、実施例3では、所定の交流電圧を帯電ローラ12aに印加した際に流れる交流電流、すなわち感光層の静電容量に応じて感光ドラムの膜厚を評価する。
図12に示すように、実施例3では、感光ドラム11aの膜厚を検出するための寿命検出手段として、感光ドラム11aと接地電位との間に交流電流測定回路107を設けている。制御部50は、交流電流測定回路107の端子間電圧を検知して感光ドラム11aの感光層の現状の膜厚を測定し、感光層の現状の膜厚に応じた交流試験電圧を設定する。
交流電流測定回路107は、感光ドラム11aに接触させて帯電バイアスとして直流バイアスと交流バイアスの重畳電圧を印加した帯電ローラ12aを流れる交流電流を測定するための抵抗Rと、直流電流をバイパスするコンデンサCとよりなる。
図13は、帯電電位を一定として感光ドラム11aの膜厚が変化した時に感光ドラム11aに流れる交流電流の変化を示したグラフである。図13からわかるように、実施例1、実施例2で行ったように、感光ドラム11aに流れる直流電流だけではなく、交流電流についても、感光層の膜厚が減少するにつれて、感光ドラム11aに流れる電流量は増加している。
式8について説明したように、感光層の膜厚dが薄くなると、感光層の静電容量Cが増加して、等しい交流電圧Vacを印加した際の交流電流Iacが増加するからである。従って、実施例1のように感光ドラムの膜厚を検知する手段は、直流電流測定回路(106:図4)のみならず、交流電流測定回路107によっても可能である。
また、帯電ローラ12aに印加されるピーク間電圧Vppと交流電流Iacの関係によって、画像形成中の交流電圧Vacの設定条件を決定する構成においては、元々、交流電流Iacの検出回路が必要である。画像形成装置100は、交流電流測定回路107が存在する構成が前提となっているため、交流電流で感光ドラム12aの感光層の膜厚検知を行う場合は、本来交流電圧の設定条件を決定する制御に使用する交流電流測定回路をそのまま利用できる。従って、実施例1のように直流電流測定回路106を特別に設ける必要がないというメリットを有する。
また、交流電流Iacに応じて、感光ドラム12aの膜厚を測定する方法においては、式1、式2を算出する基となる交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´の測定の最中に、感光ドラム12aの膜厚を検知することも可能である。
例えば、交流試験電圧AC4´を測定ポイントに加え、交流試験電圧AC4´の測定条件を毎回同じ条件に保ち、交流試験電圧AC4´の印加中の交流電流の検出結果から、感光ドラム11aの膜厚を検出することができる。
また、元々、交流電圧設定モードの制御に使用する交流試験電圧AC3´の測定ポイントを、常に一定の交流電圧に固定し、交流試験電圧AC3´の印加中の交流電流の検出結果から感光ドラム11aの膜厚を測定してもよい。
いずれにせよ、感光ドラム12aの感光層の膜厚検知手段と交流電圧の設定条件を決定する放電電流制御手段とを併用できれば、制御時間は格段に縮まり、生産性の向上を図ることが可能になる。
実施例3では、交流電流で感光ドラム12aの感光層の膜厚検知を行い、検出結果に基づいて、表3に示すように交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´を任意に変更している。
表6のテーブルを用いて測定した交流電流は感光層の膜厚に変換される。膜厚に応じた交流試験電圧の設定は実施例1と同様である。
表7に示すように、実施例3では、環境変動によっても交流試験電圧AC1、AC2、AC3、AC1´、AC2´、AC3´を変化させている。実施例3では、環境に応じて放電電流Dのターゲットを変化させて、式4により交流電流のピーク間電圧Vpp1を随時算出しながら、交流電圧設定モードの制御を行った。ピーク間電圧Vpp1を算出する制御は、コピー枚数をカウントし、その積算値が200枚をカウントする毎に1回行った。また、感光ドラム12aの膜厚検知制御に関しては、コピー枚数をカウントし、その積算値が1000枚をカウントする毎に1回行って感光ドラム12aの膜厚を検知した。
<実施例4>
ところで、振動電圧の交流成分を定電流で制御する定電流方式が提案されている。定電流方式は、感光ドラムに流れる交流電流Iacを検出して、これを一定になるように印加電圧を制御する。定電流制御方式を用いると、環境変動によるインピーダンス変化に対して、交流ピーク間電圧が自在に変化するため、環境変動によらず、交流電流Iacを常にほぼ一定に保つことができる。
しかし、交流電圧の定電流制御方式では、帯電部材から感光体に流れる総電流(ニップ電流α・Vppと放電電流量ΔIacの和)を一定値に制御している。定電流制御では、放電電流ΔIacだけでなく、ニップ電流α・Vppも含めて一定値に制御するため、実際に感光体を帯電させるのに必要な電流である放電電流量ΔIacは一定値に制御できていない。
このため、定電流制御においては、同じ電流値で制御していても、帯電部材の材質の抵抗値の変化によってニップ電流α・Vppが多くなれば放電電流量ΔIacは減り、ニップ電流α・Vppが減れば放電電流量ΔIacは増えてしまう。
従って、特許文献2に示される定電流制御方式では、完全に放電電流量の増減を抑制することは不可能であり、長寿命を目指したとき、感光ドラム11aの削れと帯電均一性の両立を実現することは困難であった。このため、感光ドラムに流れる交流電流Iacを一定に制御する定電流方式では、過放電による感光ドラム削れや画像ボケといった現象を引き起したり、あるいは、放電不足による砂地画像等の帯電不良画像を発生させたりしていた。
あるいは、放電電流ΔIacは、一定の交流電流を維持する定電流制御で帯電を行った場合、環境の温度湿度や画像形成装置の累積使用時間につれて変化する。これは、交流電流値Iacと放電電流ΔIacとの関係がこれらの要因によって変動するからである。
そこで、実施例4の交流電圧設定モードでは、非画像形成時に、帯電ローラ12aに放電領域と未放電領域とでそれぞれ複数段階に定電流を設定された交流試験電流を印加して交流電圧を測定する。そして、放電領域における交流試験電圧と交流電圧の関係式と、未放電領域における交流試験電圧と交流電圧との関係式とから交流電流と放電電流との関係式を求める。そして、所定の放電電流(例えば50μA)を「交流電流と放電電流との関係式」に代入して画像形成時に用いる交流電流の定電流値を設定する。
ところが、この場合、感光ドラム11aの感光層の膜厚が薄くなると、交流試験電流が過剰となって異常放電による感光ドラムの劣化を招くことがある。そこで、実施例4では、実施例1〜3のように感光層の膜厚を電気的に実測して、膜厚の摩耗に応じて次第に交流試験電流を低下させている。すなわち、実施例4では、制御手段が交流電圧設定モードを実行して、交流試験電流を帯電部材に印加して検出した交流電圧に応じて交流電圧の定電流を設定する。そして、感光層の膜厚を電気的に検出する検出手段を備え、交流電圧設定モードでは、検出手段の検出結果に基づいて、感光層の膜厚が小さくなるほど交流試験電流を低く設定する。