以下、本発明の磁気歯車装置を実施するための形態について、図1〜図18を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
1.磁気歯車装置の第1の実施形態の構成
まず、本発明の磁気歯車装置の第1の実施形態の構成について、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、本発明の磁気歯車装置の第1の実施形態の断面図である。図2は、図1に示すA−A線に沿う断面図である。図3は、本発明の磁気歯車装置の第1の実施形態の分解斜視図である。
図1〜図3に示すように、磁気歯車装置1は、ケース2と、第1の回転軸3と、第2の回転軸4と、第1内歯車5と、第2内歯車6と、外歯車7と、複数の第1磁性歯部8と、複数の第2磁性歯部9とを備えている。第1の回転軸3には、第1内歯車5が固定され、第2の回転軸4には、第2磁性歯部9が固定されている。
[ケース]
次に、ケース2について説明する。
図1に示すように、ケース2は、中空部を有する箱状に形成されている。ケース2は、両端が開口された筒状の外装筒14と、外装筒14の一方の開口を塞ぐ第1蓋部15と、外装筒14の他方の開口を塞ぐ第2蓋部16から構成されている。第1蓋部15と第2蓋部16は、外装筒14の軸方向で対向している。なお、図2では、外装筒14を省略している。
第1蓋部15は、適当な厚みを有する板状に形成されており、外装筒14の軸方向に略直交する2つの平面を有している。この第1蓋部15は、外装筒14の軸方向の一端部に接合されている。また、第1蓋部15には、第1の回転軸3が貫通する貫通孔と、軸受取り付け部15a,15bが設けられている。
軸受取り付け部15a,15bは、第1蓋部15の第2蓋部16に対向する面に設けられている。軸受取り付け部15aは、第1蓋部15における貫通孔の周囲に形成された円形の凹部である。この軸受取り付け部15aには、軸受21が取り付けられる。そして、軸受21には、第1の回転軸3が固定されている。
軸受取り付け部15bは、軸受取り付け部15aの周囲に形成された環状の凹部である。この軸受取り付け部15bには、軸受22が取り付けられる。そして、軸受22には、第2内歯車6が固定されている。
また、第1蓋部15の第2蓋部16に対向する面には、第1磁性歯部8が固定されている。
第2蓋部16は、適当な厚みを有する板状に形成されており、外装筒14の軸方向に略直交する2つの平面を有している。この第2蓋部16は、外装筒14の軸方向の他端部に接合されている。また、第2蓋部16には、第2の回転軸4が貫通する貫通孔と、軸受取り付け部16aが設けられている。
軸受取り付け部16aは、第2蓋部16の第1蓋部15に対向する面に設けられている。この軸受取り付け部16aは、第2蓋部16における貫通孔の周囲に形成された円形の凹部である。軸受取り付け部16aには、軸受23が取り付けられる。そして、軸受23には、第2の回転軸4が固定されている。
ケース2(外装筒14、第1蓋部15及び第2蓋部16)は、防錆および磁束漏れを防止のため、腐食に強い非磁性材料によって形成することが望ましい。ケース2の材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、銅等の金属、又は合成樹脂を挙げることができる。
[第1の回転軸及び第2の回転軸]
次に、第1の回転軸3及び第2の回転軸4について説明する。
第1の回転軸3及び第2の回転軸4は、防錆および磁束漏れを防止のため、ケース2と同様に、腐食に強い非磁性材料から形成することが望ましい。図1に示すように、第1の回転軸3の軸心及び第2の回転軸4の軸心は、第1蓋部15と第2蓋部16が対向する方向と平行であって、互いに一致している。
第1の回転軸3は、ケース2の第1蓋部15を貫通しており、第1内歯車5に連結されている。この第1の回転軸3は、第1内歯車5と同軸に配置されている。
第2の回転軸4は、軸部4aと、軸部4aの先端に設けられた円板部4bと、円板部4bに設けられた軸受取り付け部4c,4dを有している。軸部4aは、第2蓋部16を貫通しており、軸受23に固定されている。つまり、第2の回転軸4は、軸受23を用いて第2蓋部16に回転可能に取り付けられている。
また、軸部4aは、円板部4bの中心部に連続している。円板部4bは、ケース2の内部に配置されており、外装筒14の軸方向に略直交する2つの平面を有している。円板部4bの一方の平面は、第2蓋部16に対向し、他方の平面は、第1蓋部15に対向している。
軸受取り付け部4c,4dは、円板部4bの他方の平面に設けられている。軸受取り付け部4cは、円板部4bの中央部に形成された円形の凹部である。この軸受取り付け部4cには、軸受24が取り付けられる。そして、軸受24には、第1の回転軸3が固定されている。つまり、第1の回転軸3は、軸受21,24を用いて第1蓋部15及び第2の回転軸4に回転可能に支持されている。
軸受取り付け部4dは、軸受取り付け部4cの周囲に形成された環状の凹部である。この軸受取り付け部4dには、軸受25が取り付けられる。そして、軸受25には、第2内歯車6が固定されている。
軸受21,22,23,24及び25は、それぞれ転動体21a,22a,23a,24a及び25aを有する転がり軸受(ボールベアリング)である。これら軸受21〜25の転動体21a〜25aは、非磁性材料または炭素含有量が多い材料によって形成することが好ましい。通常使用される転がり軸受は、硬度を確保するための焼き入れを行うため、炭素含有量は多い。したがって、そのような通常の転がり軸受を用いてもよい。
なお、本発明に係る軸受は、転がり軸受に限定されるものではなく、例えば、すべり軸受、流体軸受等を適用することもできる。
[第1内歯車]
次に、第1内歯車5について説明する。
図1及び図2に示すように、第1内歯車5は、円形の外周部を有する第1内側筒31と、第1内側筒31の外周部に取り付けられた複数の第1磁石片32とを備えている。
第1内側筒31は、第1の回転軸3が嵌合される円形の筒孔31aを有する円筒状に形成されている。つまり、第1内歯車5は、第1の回転軸3と同軸に連結されている。第1内側筒31は、例えば、電磁鋼板、電磁軟鉄などの磁性材料からなる板状の複数のリング部材33を積層することにより形成されている(図1参照)。
複数のリング部材33は、カシメ、溶接、接着剤などの固着方法により固着されて一体成形されている。このように、磁性材料からなる複数のリング部材33を積層して第1内側筒31を形成することにより、第1内側筒31の軸方向に流れる渦電流を遮断することができる。そのため、第1内側筒31は、磁性材料からなる複数のリング部材33を積層して形成することが好ましい。
複数の第1磁石片32は、それぞれ第1内側筒31(筒孔31a)の軸方向に長い略長方形の板状に形成された永久磁石である。これら複数の第1磁石片32は、第2内歯車6の後述する複数の第2磁石片42と対向している。
複数の第1磁石片32は、第1内側筒31の径方向に磁化されている。そして、複数の第1磁石片32は、磁化された方向が互いに反対である複数の第1磁石片32A,32Bから構成されている。
第1磁石片32Aと第1磁石片32Bは、第1内側筒31の外周部に沿って交互に並べられている。つまり、複数の第1磁石片32A,32Bは、異なる磁極が第1内側筒31の周方向に沿って隣り合うように並べられている。第1磁石片32Aは、第1内側筒31側がN極であり、第2内歯車6の後述する第2磁石片42側がS極である。一方、第1磁石片32Bは、第1内側筒31側がS極であり、第2磁石片42側がN極である。
[第2内歯車]
次に、第2内歯車6について図1及び図2を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、第2内歯車6は、第1内歯車5が配置される筒孔41aを有する第2内側筒41と、第2内側筒41の内周部に取り付けられた複数の第2磁石片42と、第2内側筒41の外周部に取り付けられた複数の第3磁石片43とを備えている。
第2内側筒41は、軸受22,25に固定されており、第1の回転軸3及び第1内歯車5と同軸に配置されている。つまり、第2内歯車6は、軸受22,25を用いて第1蓋部15及び第2の回転軸4に回転可能に支持されている。
第2内側筒41は、例えば、電磁鋼板、電磁軟鉄などの磁性材料からなる板状の複数のリング部材不図示を積層することにより形成されている。これにより、第2内側筒がヨークとなり、高磁束密度を得ることができる。
複数の第2磁石片42は、それぞれ第2内側筒41(筒孔41a)の軸方向に長い略長方形の板状に形成された永久磁石である。これら複数の第2磁石片42は、第1内歯車5の複数の第1磁石片32と対向している。複数の第2磁石片42の個数は、複数の第1磁石片32の個数よりも多く設定されている。
第1内歯車5の回転は、複数の第1磁石片32と複数の第1磁性歯部8との間、及び複数の第2磁石片42と複数の第1磁性歯部8との間に生じる磁気吸引力により、第2内歯車6に伝達される。したがって、複数の第2磁石片42の個数を複数の第1磁石片32の個数よりも多くすることにより、第1内歯車5の回転角度に対する第2内歯車6の回転角度を小さくすることができる。その結果、第2内歯車6の回転速度を、第1内歯車5の回転速度に対して減速させることができる。
複数の第2磁石片42は、それぞれ第2内側筒41の径方向に磁化されている。そして、複数の第2磁石片42は、磁化された方向が互いに反対である複数の第2磁石片42A,42Bから構成されている。
第2磁石片42Aと第2磁石片42Bは、第2内側筒41の内周部に沿って交互に並べられている。つまり、複数の第2磁石片42A,42Bは、異なる磁極が第2内側筒41の内周部に沿って隣り合うように並べられている。第2磁石片42Aは、第2内側筒41側がS極であり、第1磁石片32側がN極である。一方、第2磁石片42Bは、第2内側筒41側がN極であり、第1磁石片32側がS極である。
複数の第3磁石片43は、それぞれ第2内側筒41(筒孔41a)の軸方向に長い略長方形の板状に形成された永久磁石である。これら複数の第3磁石片43は、外歯車7の後述する複数の第4磁石片52に対向している。
複数の第3磁石片43は、それぞれ第2内側筒41の径方向に磁化されている。そして、複数の第3磁石片43は、磁化された方向が互いに反対である複数の第3磁石片43A,43Bから構成されている。
第3磁石片43Aと第3磁石片43Bは、第2内側筒41の外周部に沿って交互に並べられている。つまり、複数の第3磁石片43A,43Bは、異なる磁極が第2内側筒41の外周部に沿って隣り合うように並べられている。第3磁石片43Aは、第2内側筒41側がS極であり、外歯車7の後述する第4磁石片52側がN極である。一方、第3磁石片43Bは、第2内側筒41側がN極であり、外歯車7の第4磁石片52側がS極である。
[外歯車]
次に、外歯車7について図1及び図2を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、外歯車7は、第2内歯車6が配置される筒孔51aを有する外側筒51と、外側筒51の内周部に取り付けられた複数の第4磁石片52とを備えている。
外側筒51は、ケース2における外装筒14の内周部に固定されており、第1の回転軸3、第1内歯車5及び第2内歯車6と同軸に配置されている。外側筒51は、例えば、電磁鋼板、電磁軟鉄などの磁性材料からなる板状の複数のリング部材53を積層することにより形成されている(図1参照)。
複数のリング部材53は、カシメ、溶接、接着剤などの固着方法により固着されて一体成形されている。このように、磁性材料からなる複数のリング部材53を積層して外側筒51を形成することにより、外側筒51の軸方向に流れる渦電流を遮断することができる。そのため、外側筒51は、磁性材料からなる複数のリング部材53を積層して形成することが好ましい。
複数の第4磁石片52は、それぞれ外側筒51(筒孔51a)の軸方向に長い略長方形の板状に形成された永久磁石である。これら複数の第4磁石片52は、第2内歯車6の複数の第3磁石片43と対向している。複数の第4磁石片52の個数は、複数の第3磁石片43の個数よりも多く設定されている。
第2内歯車6の回転は、複数の第3磁石片43と複数の第2磁性歯部9との間、及び複数の第4磁石片52と複数の第2磁性歯部9との間に生じる磁気吸引力により、第2の回転軸4(複数の第2磁性歯部9)に伝達される。したがって、複数の第4磁石片52の個数を複数の第3磁石片43の個数よりも多くすることにより、第2内歯車6の回転角度に対する第2の回転軸4の回転角度を小さくすることができる。その結果、第2の回転軸4の回転速度を、第2内歯車6の回転速度に対して減速させることができる。
複数の第4磁石片52は、外側筒51の径方向に磁化されている。そして、複数の第4磁石片52は、磁化された方向が互いに反対である複数の第4磁石片52A,52Bから構成されている。
第4磁石片52Aと第4磁石片52Bは、外側筒51の内周部に沿って交互に並べられている。つまり、複数の第4磁石片52A,52Bは、異なる磁極が外側筒51の内周部に沿って隣り合うように並べられている。第4磁石片52Aは、外側筒51側がN極であり、第3磁石片43側がS極である。一方、第4磁石片52Bは、外側筒51側がS極であり、第3磁石片43側がN極である。
[第1磁性歯部]
次に、複数の第1磁性歯部8について図1〜図3を参照して説明する。
図1に示すように、複数の第1磁性歯部8は、ケース2の第1蓋部15に取り付けられており、第1内歯車5の複数の第1磁石片32と、第2内歯車6の複数の第2磁石片42との間に配置されている。
複数の第1磁性歯部8は、第1の回転軸3の周方向に沿って所定の間隔をあけて並んでいる。複数の第1磁性歯部8は、第1の回転軸3の軸方向と平行な方向に延びる略棒状に形成されている。第1磁性歯部8は、板状の複数の磁性片61(図1参照)を長手方向(第1の回転軸3の軸方向に平行な方向)に積層することにより形成されている。この磁性片61の材料としては、例えば、電磁鋼板を挙げることができる。
後述するように、本実施の形態の磁気歯車装置1では、第1内歯車5と第2内歯車6が互いに反対方向に回転する。したがって、第1磁性歯部8を1つの磁性材料によって棒状に形成すると、磁性歯部に渦電流が発生する。そして、磁性歯部に渦電流が発生すると、レンツの法則により第1内歯車5及び第2内歯車6の回転に抗する電磁ブレーキが生じてトルク損失となる。
そこで、本実施の形態では、複数の磁性片61を積層して第1磁性歯部8を形成し、渦電流が第1磁性歯部8の長手方向に流れることを遮断している。
複数の第1磁性歯部8の長手方向の一端部は、第1蓋部15に接合されている。また、複数の第1磁性歯部8の長手方向の他端部には、環状部材62が接合されている(図1参照)。なお、図3では、環状部材62を省略している。環状部材62は、非磁性材料により形成されており、複数の第1磁性歯部8における他端部の変位を拘束する。これにより、複数の第1磁性歯部8の強度を高めることができると共に、複数の第1磁性歯部8の振動を抑制あるいは防止することができる。
環状部材62の材料としては、合成樹脂が好ましい。環状部材62と第1磁性歯部8との接合は、例えば、接着剤を用いてもよく、樹脂と金属の一体成形で接合してもよい。また、第1磁性歯部8と第1蓋部15との接合は、例えば、接着剤を用いてもよく、カシメ、溶接などの固着方法を用いてもよい。
[第2磁性歯部]
次に、複数の第2磁性歯部9について図1〜図3を参照して説明する。
図1〜図3に示すように、複数の第2磁性歯部9は、第2の回転軸4に取り付けられており、第2内歯車6の複数の第3磁石片43と、外歯車7の複数の第4磁石片52との間に配置されている。
複数の第2磁性歯部9は、第2の回転軸4の周方向に沿って所定の間隔をあけて並んでいる。複数の第2磁性歯部9は、第2の回転軸4の軸方向と平行な方向に延びる略棒状に形成されている。第2磁性歯部9は、板状の複数の磁性片65(図1参照)を長手方向(第1の回転軸3の軸方向に平行な方向)に積層することにより形成されている。この磁性片65の材料としては、例えば、電磁鋼板を挙げることができる。
後述するように、本実施の形態の磁気歯車装置1では、第2内歯車6と複数の第2磁性歯部9が互いに反対方向に回転する。したがって、第2磁性歯部9を1つの磁性材料によって棒状に形成すると、磁性歯部に渦電流が発生する。そして、磁性歯部に渦電流が発生すると、レンツの法則により第2内歯車6と第2磁性歯部9の回転に抗する電磁ブレーキが生じてトルク損失となる。
そこで、本実施の形態では、複数の磁性片65を積層して第2磁性歯部9を形成し、渦電流が第2磁性歯部9の長手方向に流れることを遮断している。
第2磁性歯部9の長手方向の一端部には、環状部材66が接合されている(図1参照)。なお、図3では、環状部材66を省略している。環状部材66は、環状部材62と同様に、非磁性材料により形成されており、複数の第2磁性歯部9における一端部の変位を拘束する。これにより、複数の第2磁性歯部9の強度を高めることができると共に、複数の第2磁性歯部9の振動を抑制あるいは防止することができる。
また、複数の第2磁性歯部9の長手方向の他端部には、ブラケット67が接合されている。このブラケット67は、非磁性材料によって円環状に形成されている。ブラケット67の軸方向の一方の面には、複数の第2磁性歯部9が接合されており、他方の面は第2の回転軸4に固定されている。つまり、複数の第2磁性歯部9は、ブラケット67を介して第2の回転軸4に取り付けられている。
環状部材66及びブラケット67の材料としては、合成樹脂が好ましい。環状部材66及びブラケット67と第2磁性歯部9との接合は、例えば、接着剤を用いてもよく、樹脂と金属の一体成形で接合してもよい。
[磁気歯車装置の製造方法]
次に、磁気歯車装置1の製造方法について、図4及び図5を参照して説明する。
図4Aは、第2蓋部16に第2の回転軸4を接続し、第2の回転軸4に第1の回転軸3、第1内歯車5及び第2内歯車6を接続した状態を示す説明図である。図4Bは、図4Aに示す状態の第2の回転軸4に第2磁性歯部9を取り付けた状態を示す説明図である。図5Cは、図4Bに示す状態の第2蓋部16に外装筒14を接合した状態を示す説明図である。図5Dは、図5Cに示す状態の外装筒14に第1蓋部15を接合した状態を示す説明図である。
磁気歯車装置1を製造するには、まず、第2の回転軸4を第2蓋部16に軸受23を用いて接続する(図4A参照)。これにより、第2の回転軸4は、第2蓋部16に回転可能に支持される。
次に、予め第1内歯車5が連結された第1の回転軸を、第2の回転軸4に軸受24を用いて接続する。これにより、第1内歯車5が連結された第1の回転軸3は、第2の回転軸4に回転可能に支持される。
また、第2内歯車6を第2の回転軸4に軸受25を用いて接続する。これにより、第2内歯車6は、第2の回転軸4に回転可能に支持される。そして、第1内歯車5が第2内歯車6の筒孔41aに配置され、第1内歯車5の複数の第1磁石片32A,32Bと第2内歯車6の複数の第2磁石片42A,42Bは、第1の回転軸3の径方向において互いに対向する。
なお、磁気歯車装置1の製造方法としては、第1の回転軸3(第1内歯車5)と第2内歯車6を第2の回転軸4に予め接続しておき、その後、第2の回転軸4を第2蓋部16に接続してもよい。
次に、第2磁性歯部9を第2の回転軸4にブラケット67を介して取り付ける(図4B参照)。第2内歯車6を第2の回転軸4に接続する前に、第2磁性歯部9を第2の回転軸4に接合すると、第2磁性歯部9と第2内歯車6が干渉する。そのため、第2内歯車6を第2の回転軸4に接続した後に、第2磁性歯部9を第2の回転軸4に接合する。
続いて、予め外歯車7が固定された外装筒14を第2蓋部16に接合する(図5C参照)。これにより、第2内歯車6が外歯車7の筒孔51aに配置され、第2内歯車6の複数の第3磁石片43A,43Bと外歯車7の複数の第4磁石片52A,52Bは、第1の回転軸3の径方向において互いに対向する。
その後、予め第1磁性歯部8が取り付けられた第1蓋部15を接合する(図5D参照)。これにより、ケース2が形成される。そして、第1の回転軸3は、第1蓋部15に軸受21を用いて回転可能に接続される。さらに、第2内歯車6は、軸受22によって第1蓋部15に回転可能に接続される。その結果、磁気歯車装置1の製造が完了する。
なお、本実施の形態では、第1磁性歯部8及び第2磁性歯部9の材料として、電磁鋼板を採用したが、本発明に係る磁性歯部は、これに限定されない。本発明に係る磁性歯部としては、例えば圧粉磁心を用いてもよい。圧粉磁心は、鉄粉同士が絶縁されているため、電気抵抗が高い。
圧粉磁心によって磁性歯部を形成した場合は、磁性歯部の電気抵抗が高くなるため、磁性歯部に渦電流が流れにくくなる。その結果、磁気歯車装置1におけるトルク損失を軽減することができる。また、圧粉磁心は安価であるため、圧粉磁心により磁性歯部を形成すると材料費のコストを低減することができる。さらに、圧粉磁心は成形性がよいため、連結片と磁性から構成される磁性部材を容易に製造することができる。
2.磁気歯車装置の第1の実施形態の動作
次に、磁気歯車装置1の動作について説明する。
まず、第1内歯車5(第1の回転軸3)の回転に応じた第2内歯車6の回転について、図6〜図9を参照して説明する。
図6は、第1内歯車5における第1磁石片32Aa,32Ab,32Acの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第1磁性歯部8A,8B,8Cの中央部に一致した状態の説明図である。
図6に示す状態の第1磁性歯部8A,8B,8Cに注目すると、第1磁石片32Aa,32Ab,32Acの中央部に対向する側がN極となり、反対側がS極となっている。そして、第1磁性歯部8A,8B,8CのS極は、第2内歯車6の第2磁石片42Aa,42Ab,42AcのN極に対向している。
したがって、第1磁石片32Aaと第1磁性歯部8Aとの間、第1磁石片32Abと第1磁性歯部8Bとの間、及び第1磁石片32Acと第1磁性歯部8Cとの間に生じる磁気吸引力は、半径方向のみならず周方向にも釣り合っている。また、第1磁性歯部8Aと第2磁石片42Aaとの間、第1磁性歯部8Bと第2磁石片42Abとの間、及び第1磁性歯部8Cと第2磁石片42Acとの間に生じる磁気吸引力は、半径方向のみならず周方向にも釣り合っている。
図6に示す状態から第1の回転軸3を矢印R1方向に回転させると、第1の回転軸3と共に第1内歯車5が矢印R1方向に回転する。そして、第1内歯車5における第1磁石片32Ba,32Bb,32Bcの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第1磁性歯部8D,8E,8Fの中央部と一致する。
なお、矢印R1方向は、第1の回転軸3の軸心を中心とした回転方向である。
図7は、第1内歯車5における第1磁石片32Ba〜32Bcの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第1磁性歯部8D〜8Fの中央部と一致した状態の説明図である。
第1磁石片32Ba〜32Bcの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第1磁性歯部8D〜8Fの中央部に一致すると、第1磁性歯部8D〜8Fにおける第1磁石片32Ba〜32Bcに対向する側がS極となり、反対側がN極となる。
これにより、第2内歯車6の第2磁石片42Ba,42Bb,42Bcと第1磁性歯部8D,8E,8Fとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。そして、第1磁性歯部8Dと第2磁石片42Baとの間、第1磁性歯部8Eと第2磁石片42Bbとの間、第1磁性歯部8Fと第2磁石片42Bcとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、第2内歯車6が矢印R2方向に回転し、第2内歯車6の第2磁石片42Ba〜42Bcの中央部と、第1磁性歯部8D〜8Fの中央部が第1の回転軸3の径方向において一致する。その結果、磁気歯車装置1は、図7に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
なお、矢印R2方向は、第1の回転軸3の軸心を中心とした回転方向であり、矢印R1方向と反対の方向である。
図7に示す状態から第1の回転軸3及び第1内歯車5を矢印R1方向に回転させると、第1内歯車5の第1磁石片32Aa〜32Acの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第1磁性歯部8G〜8Iの中央部に一致する。
図8は、第1内歯車5における第1磁石片32Aa〜32Acの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第1磁性歯部8G〜8Iの中央部と一致した状態の説明図である。
第1磁石片32Aa〜32Acの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第1磁性歯部8G〜8Iの中央部に一致すると、第1磁性歯部8G〜8Iにおける第1磁石片32Aa〜32Acに対向する側がN極となり、反対側がS極となる。
これにより、第2内歯車6の第2磁石片42Ad,42Ae,42Afと第1磁性歯部8G,8H,8Iとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。そして、第1磁性歯部8Gと第2磁石片42Adとの間、第1磁性歯部8Hと第2磁石片42Aeとの間、第1磁性歯部8Iと第2磁石片42Afとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、第2内歯車6が矢印R2方向に回転し、第2内歯車6の第2磁石片42Ad〜42Afの中央部と、第1磁性歯部8G〜8Iの中央部が第1の回転軸3の径方向において一致する。その結果、磁気歯車装置1は、図8に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
図8に示す状態から第1の回転軸3及び第1内歯車5を矢印R1方向に回転させると、第1内歯車5の第1磁石片32Ba〜32Bcの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第1磁性歯部8J〜8Lの中央部に一致する。
図9は、第1内歯車5における第1磁石片32Ba〜32Bcの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第1磁性歯部8J〜8Lの中央部に一致した状態の説明図である。
第1磁石片32Ba〜32Bcの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第1磁性歯部8J〜8Lの中央部に一致すると、第1磁性歯部8J〜8Lにおける第1磁石片32Ba〜32Bcに対向する側がS極となり、反対側がN極となる。
これにより、第2内歯車6の第2磁石片42Bd,42Be,42Bfと第1磁性歯部8J,8K,8Lとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。そして、第1磁性歯部8Jと第2磁石片42Bdとの間、第1磁性歯部8Kと第2磁石片42Beとの間、第1磁性歯部8Lと第2磁石片42Bfとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、第2内歯車6が矢印R2方向に回転し、第2内歯車6の第2磁石片42Bd〜42Bfの中央部と、第1磁性歯部8J〜8Lの中央部が第1の回転軸3の径方向において一致する。その結果、磁気歯車装置1は、図9に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
図6に示す状態から図8に示す状態になるまでに、第1内歯車5(第1の回転軸3)は、矢印R1方向へ複数の第1磁性歯部8における1ピッチ角度だけ回転する。そして、第2内歯車6は、第1磁性歯部8における1ピッチ角度よりも小さい角度(本例では、第1磁性歯部8の1ピッチ角度の1/6程度)だけ矢印R2方向へ回転する。
次に、第2内歯車6の回転に応じた第2磁性歯部9(第2の回転軸4)の回転について、図10〜図13を参照して説明する。
図10は、第2内歯車6における第3磁石片43Aa,43Ab,43Acの中央部が、第1の回転軸3の径方向において外歯車7の第4磁石片52Aa,52Ab,52Acの中央部に一致した状態の説明図である。なお、図10に示す状態は、図6に示す状態と同じである。
図10に示す状態の第2磁性歯部9A,9B,9Cに注目すると、第3磁石片43Aa,43Ab,43Acの中央部に対向する側がS極となり、反対側がN極となっている。そして、第2磁性歯部9A,9B,9CのN極は、第4磁石片52Aa,52Ab,52AcのS極に対向している。
したがって、第3磁石片43Aaと第2磁性歯部9Aとの間、第3磁石片43Abと第2磁性歯部9Bとの間、及び第3磁石片43Acと第2磁性歯部9Cとの間に生じる磁気吸引力は、半径方向のみならず周方向にも釣り合っている。また、第2磁性歯部9Aと第4磁石片52Aaとの間、第2磁性歯部9Bと第4磁石片52Abとの間、及び第2磁性歯部9Cと第4磁石片52Acとの間に生じる磁気吸引力は、半径方向のみならず周方向にも釣り合っている。
図10に示す状態から第1の回転軸3(第1内歯車5)を矢印R1方向に回転させると、上述したように、第2内歯車6が矢印R2方向に回転する。そして、第2内歯車6における第3磁石片43Ba,43Bb,43Bcの中央部が、外歯車7の第4磁石片52Ba,52Bb,52Bcの中央部に第1の回転軸3の径方向において一致する。
図11は、第2内歯車6における第3磁石片43Ba〜43Bcの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第4磁石片52Ba〜52Bcの中央部と一致した状態の説明図である。
第3磁石片43Ba〜43Bcの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第4磁石片52Ba〜52Bcの中央部に一致すると、第3磁石片43Ba〜43Bcと第2磁性歯部9D〜9Fとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。また、第4磁石片52Ba〜52Bcと第2磁性歯部9D〜9Fとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。これにより、第3磁石片43Ba〜43Bcと第2磁性歯部9D〜9Fとの間、及び第4磁石片52Ba〜52Bcと第2磁性歯部9D〜9Fとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、複数の第2磁性歯部9は、第2の回転軸4(図1参照)と共に矢印R3方向に回転する。そして、複数の第2磁性歯部9のうちの第2磁性歯部9D〜9Fの中央部が、第3磁石片43Ba〜43Bcの中央部及び第4磁石片52Ba〜52Bcの中央部と、第1の回転軸3の径方向において一致する。その結果、磁気歯車装置1は、図11に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
なお、矢印R3方向は、矢印R2方向と同じ方向である。
図11に示す状態から第2内歯車6が矢印R2方向に回転すると、第2内歯車6における第3磁石片43Aa,43Ab,43Acの中央部が、外歯車7の第4磁石片52Ad,52Ae,52Afの中央部に第1の回転軸3の径方向において一致する。
図12は、第2内歯車6における第3磁石片43Aa〜43Acの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第4磁石片52Ad〜52Afの中央部と一致した状態の説明図である。
第3磁石片43Aa〜43Acの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第4磁石片52Ad〜52Afの中央部に一致すると、第3磁石片43Aa〜43Acと第2磁性歯部9G〜9Iとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。また、第4磁石片52Ad〜52Afと第2磁性歯部9G〜9Iとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。これにより、第3磁石片43Aa〜43Acと第2磁性歯部9G〜9Iとの間、及び第4磁石片52Ad〜52Afと第2磁性歯部9G〜9Iとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、複数の第2磁性歯部9が、第2の回転軸4(図1参照)と共に矢印R3方向に回転する。そして、複数の第2磁性歯部9のうちの第2磁性歯部9G〜9Iの中央部が、第3磁石片43Aa〜43Acの中央部及び第4磁石片52Ad〜52Afの中央部と、第1の回転軸3の径方向において一致する。その結果、磁気歯車装置1は、図12に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
図12に示す状態から第2内歯車6が矢印R2方向に回転すると、第2内歯車6における第3磁石片43Ba,43Bb,43Bcの中央部が、外歯車7の第4磁石片52Bd,52Be,52Bfの中央部に第1の回転軸3の径方向において一致する。
図13は、第2内歯車6における第3磁石片43Ba〜43Bcの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第4磁石片52Bd〜52Bfの中央部と一致した状態の説明図である。
第3磁石片43Ba〜43Bcの中央部が、第1の回転軸3の径方向において第4磁石片52Bd〜52Bfの中央部に一致すると、第3磁石片43Ba〜43Bcと第2磁性歯部9J〜9Lとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。また、第4磁石片52Bd〜52Bfと第2磁性歯部9J〜9Lとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。これにより、第3磁石片43Ba〜43Bcと第2磁性歯部9J〜9Kとの間、及び第4磁石片52Bd〜52Bfと第2磁性歯部9J〜9Kとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、複数の第2磁性歯部9が、第2の回転軸4(図1参照)と共に矢印R3方向に回転する。そして、複数の第2磁性歯部9のうちの第2磁性歯部9J〜9Lの中央部が、第3磁石片43Ba〜43Bcの中央部及び第4磁石片52Bd〜52Bfの中央部と、第1の回転軸3の径方向において一致する。その結果、磁気歯車装置1は、図13に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
図10に示す状態から図12に示す状態になるまでに、第2内歯車6は、矢印R2方向へ複数の第2磁性歯部9における1ピッチ角度だけ回転する。そして、複数の第2磁性歯部9は、複数の第2磁性歯部9における1ピッチ角度よりも小さい角度(本例では、第2磁性歯部9の1ピッチ角度の1/6程度)だけ矢印R3方向へ回転する。
本実施の形態の磁気歯車装置1では、第1の回転軸3の回転が第1内歯車5から第2内歯車6に非接触で伝達される。このとき、第2内歯車6の回転速度は、第1の回転軸3(第1内歯車5)の回転速度に対して減速される。また、第2内歯車6の回転は、複数の第2磁性歯部9が取り付けられた第2の回転軸4に非接触で伝達される。このとき、第2の回転軸4の回転速度は、第2内歯車6に対して減速される。これにより、1組の歯車ユニット(例えば、ハイスピードロータとロースピードロータ)を備える磁気歯車装置よりも、減速比を大きくすることができる。
また、磁気歯車装置で発生するトルクは、一般的に、歯車ユニットの径の長さに比例する。本実施の形態の磁気歯車装置1では、第1内歯車5、第2内歯車6、外歯車7の順に径が大きくなるため、第1内歯車5が連結される第1の回転軸3を入力側にすれば、出力側となる第2の回転軸4のトルクを十分に確保することができる。
また、本実施の形態の磁気歯車装置1では、筒状に形成された第1内歯車5、第2内歯車6及び外歯車7を第1の回転軸3の径方向に重ねる構造にした。そのため、磁気歯車装置1は、第1の回転軸3に平行な方向に大型化することなく、減速比を大きくすることができる。
また、本実施の形態の磁気歯車装置1では、第1内歯車5の第1内側筒31及び外歯車7の外側筒51を磁性材料によって形成した。これにより、複数の第1磁石片32A,32B及び複数の第4磁石片52A,52Bで第1内側筒31及び外側筒51の磁気モーメントを揃えて、大きな表面磁束密度を得ることができる。
また、本実施の形態の磁気歯車装置1では、第2内歯車6が第1内歯車5と外歯車7との間に配置され、第1内歯車5(第1の回転軸3)の回転を複数の第2磁性歯部9が取り付けられた第2の回転軸4に伝える。これにより、第2内側筒41が第1内歯車5の出力軸と第2内歯車6の入力軸を兼ねる構成となるため、部品点数を削減することができる。
本実施の形態の磁気歯車装置1では、第1内歯車5から第2内歯車6に、又は第2内歯車6から第1内歯車5に第1磁性歯部8を介して磁場が作用する。また、第2内歯車6から外歯車7に、又は外歯車7から第2内歯車6に第2磁性歯部9を介して磁場が作用する。そこで、磁気歯車装置1は、第1内側筒31及び外側筒51を磁性材料からなる複数の板状部材を積層して形成する構成とした。これにより、第1内側筒31及び外側筒51の軸方向に流れる渦電流を遮断して、トルク損失(渦電流損)を軽減することができる。
3.発電装置の第2の実施形態の構成
次に、本発明の磁気歯車装置の第2の実施形態の構成について、図14及び図15を参照して説明する。
図14は、本発明の磁気歯車装置の第2の実施形態の断面図である。図15は、図14に示すB−B線に沿う断面図である。
第2の実施形態の磁気歯車装置301は、第1の実施形態の磁気歯車装置1(図1参照)と同様の構成を有している。磁気歯車装置301の磁気歯車装置1と異なる構成は、ケース302と、第2の回転軸304と、外歯車307である。そのため、ここでは、ケース302、第2の回転軸304、外歯車307について説明する。
図14及び図15に示すように、磁気歯車装置301は、ケース302と、第1の回転軸3と、第2の回転軸304と、第1内歯車5と、第2内歯車6と、外歯車307とを備えている。第1の回転軸3には、第1内歯車5が固定され、第2の回転軸304には、外歯車307が固定されている。
第1の回転軸3、第1内歯車5及び第2内歯車6は、第1の実施形態の磁気歯車装置1に適用したものと同じである。
[ケース]
次に、ケース302について説明する。
図14に示すように、ケース302は、両端が開口された筒状の外装筒314と、外装筒314の一方の開口を塞ぐ第1蓋部316と、外装筒314の他方の開口を塞ぐ第2蓋部317から構成されている。第1蓋部316と第2蓋部317は、外装筒314の軸方向で対向している。
第1蓋部316は、適当な厚みを有する板状に形成されており、外装筒314の軸方向に略直交する2つの平面を有している。この第1蓋部316は、外装筒314の軸方向の一端部に接合されている。また、第1蓋部316には、第1の回転軸3が貫通する貫通孔と、軸受取り付け部316a,316bが設けられている。
軸受取り付け部316a,316bは、第1蓋部316の第2蓋部317に対向する面に設けられている。軸受取り付け部316aは、第1蓋部316における貫通孔の周囲に形成された円形の凹部である。この軸受取り付け部316aには、軸受321が取り付けられる。そして、軸受321には、第1の回転軸3が固定されている。
軸受取り付け部316bは、軸受取り付け部316aの周囲に形成された環状の凹部である。この軸受取り付け部316bには、軸受322が取り付けられる。そして、軸受322には、第2内歯車6が固定されている。
また、第1蓋部316の第2蓋部317に対向する面には、第1ステータ部308と、第2ステータ部309が固定されている。
第2蓋部317は、適当な厚みを有する板状に形成されており、外装筒314の軸方向に略直交する2つの平面を有している。この第2蓋部317は、外装筒314の軸方向の他端部に接合されている。また、第2蓋部317には、第2の回転軸304が貫通する貫通孔と、軸受取り付け部317aが設けられている。
軸受取り付け部317aは、第2蓋部317の第1蓋部316に対向する面に設けられている。この軸受取り付け部317aは、第2蓋部317における貫通孔の周囲に形成された円形の凹部である。軸受取り付け部317aには、軸受323が取り付けられる。そして、軸受323には、第2の回転軸304が固定されている。
軸支持部312は、外装筒314の内部において第1蓋部316と第2蓋部317の中間よりも第2蓋部317側に配置されている。この軸支持部312は、適当な厚みを有する円板状に形成されており、第1蓋部316に対向する第1平面312aと、第2蓋部317に対向する第2平面312bとを有している。
軸支持部312の第1平面12aには、軸受用突部312cが設けられている。この軸受用突部312cには、軸受324が配置される凹部が設けられている。軸受324は、軸受用突部312cに固定されており、第1の回転軸3を回転可能に支持する。また、軸受用突部312cの外周部には、軸受325が固定されている。この軸受325は、第2内歯車6を回転可能に支持する。
軸支持部312の第2平面312bには、それぞれ凹部が設けられている。この凹部には、軸受326が配置されている。この軸受326は、軸支持部312に固定されており、第2の回転軸304を回転可能に支持する。
第1ステータ部308及び第2ステータ部309は、略円筒状に形成されている。ステータ部308の軸方向の一端部は、第1蓋部316の第2蓋部317に対向する面に接合されている。この第1ステータ部308は、第1内歯車5と第2内歯車6との間に配置されている。なお、第1ステータ部308は、第1の実施形態の第1磁性歯部8と、環状部材62から構成されている。
第2ステータ部309の軸方向の一端部は、第1蓋部316の第2蓋部317に対向する面に液密又は気密に接合されている。また、第2ステータ部309の他端部は、軸支持部312に嵌合され、軸支持部312と液密又は気密に接合されている。この第2ステータ部309は、第2内歯車6と外歯車7との間に配置されている。
軸支持部312、第2ステータ部309は、ケース302の内部空間を第1収納室318と、第2収納室319に区画する。これら第1収納室318と第2収納室319は、互いに液密又は気密に遮断されている。
第1収納室318は、軸支持部312、第2ステータ部309及び第1蓋部316に囲まれた空間であり、第2収納室319は、軸支持部312、第2ステータ部309、外装筒314、第1蓋部316及び第2蓋部317に囲まれた空間である。第1収納室318には第1内歯車5、第2内歯車6が配置され、第2収納室319には外歯車307が配置されている。そして、第1収納室318に配置された第2内歯車6と、第2収納室319に配置された外歯車307との間には、第2ステータ部309が介在されている。
ケース302の外装筒314、第1蓋部316、第2蓋部317及び軸支持部312は、防錆および磁束漏れを防止のため、腐食に強い非磁性材料によって形成することが望ましい。これら外装筒314、第1蓋部316、第2蓋部317及び軸支持部312の材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、銅等の金属、又は合成樹脂を挙げることができる。
[第2の回転軸]
次に、第2の回転軸304について説明する。
第2の回転軸304は、防錆および磁束漏れを防止のため、ケース302の外装筒314等と同様に、腐食に強い非磁性材料から形成することが望ましい。図14に示すように、第1の回転軸3の軸心及び第2の回転軸304の軸心は、第1蓋部316と第2蓋部317が対向する方向と平行であって、互いに一致している。
第2の回転軸304は、第1軸部304aと、第1軸部304aの先端に設けられた円板部304bと、円板部304bの第1軸部304aと反対側に設けられた第2軸部304cから構成されている。第1軸部304aは、第2蓋部317を貫通しており、軸受323によって第2蓋部317に回転可能に取り付けられている。この第1軸部304aには、第2の回転軸304に連結する部材が挿入される嵌合穴304dが形成されている。
第2の回転軸304の円板部304bには、外歯車307が連結されており、第2の回転軸304と外歯車307とが同軸に配設されている。また、第2軸部304cの軸心は、第1軸部304aの軸心と一致している。この第2軸部304cは、軸受326によって軸支持部312に回転可能に取り付けられている。
軸受321,322,323,324,325及び326は、それぞれ転動体321a,322a,323a,324a,325a及び326aを有する転がり軸受(ボールベアリング)である。第1の回転軸3を回転可能に支持する軸受322,324と、第2内歯車106を回転可能に支持する軸受321,325は、潤滑剤を用いた金属製の軸受を適用することが好ましい。この金属製の軸受は、第1の回転軸3の高速回転に耐える強度を有する。
一方、第2の回転軸304を回転可能に支持する軸受323,326は、潤滑剤を使用しない樹脂製やセラミック製の軸受を適用することが好ましい。これにより、オイルミストの発生を防止して、第2の回転軸304及び外歯車307が配置される第2収納室319と、第2収納室319に連通する領域を清潔な空間にすることができる。
[外歯車]
外歯車307は、第2の回転軸304の円板部304bに固定された外側筒331と、外側筒331の内周部に取り付けられた複数の第4磁石片152から構成されている。
外側筒331は、円形の筒孔331aを有している。この外側筒331は、例えば、電磁鋼板、電磁軟鉄などの磁性材料からなる複数の板状部材を積層することにより形成されている。なお、磁性材料からなる複数の板状部材は、カシメ、溶接、接着剤などの固着方法により固着されて一体に形成されている。
このように、磁性材料からなる複数の板状部材を積層して外側筒331を形成すると、重なり合う板状部材間の微細な間隙が抵抗になり、外側筒331の軸方向に流れる渦電流を遮断することができる。そのため、外側筒331は、磁性材料からなる複数の板状部材を積層して形成することが好ましい。なお、渦電流の遮断をより確実にするために、重なり合う板状部材間に電流絶縁材あるいは電流絶縁塗膜を介在させてもよい。
複数の第4磁石片52は、第1の実施形態の磁気歯車装置1に適用したものと同じであり、磁化された方向が互いに反対である複数の第4磁石片52A,52Bから構成されている。
[第2ステータ部]
次に、第2ステータ部309について図16〜図18を参照して説明する。
図16は、第2ステータ部309の斜視図である。図17は、図16に示すC−C線に沿う断面図である。図18は、図16に示すD−D線に沿う断面図である。
図16及び図17に示すように、第2ステータ部309は、円筒状に形成されている。この第2ステータ部309は、円筒体であるステータ本体351と、このステータ本体351の軸方向の一端部に連続する蓋側接合部352と、ステータ本体351の軸方向の他端部に連続する支持部側接合部353とを備えている。
ステータ本体351は、第2内歯車6の第3磁石片43A,43Bと外歯車7の第4磁石片52A,52Bとの間に配置される。(図14参照)。このステータ本体351は、第1の回転軸3の周方向に沿って所定の間隔をあけて配置された複数の第2磁性歯部355と、複数の第2磁性歯部355の間を埋めた補強部356と、第2磁性歯部355の第4磁石片52A,52Bに対向する面を覆う被覆部357とを有している。
複数の第2磁性歯部355は、ステータ本体351の軸方向に延びる略棒状に形成されている。つまり、複数の第2磁性歯部355は、第1の回転軸3及び第2の回転軸304と平行な方向に延びる棒状に形成されている。そして、各第2磁性歯部355は、ステータ本体351の軸方向(第1の回転軸3及び第2の回転軸304と平行な方向)に複数の磁性片363を積層することにより形成されている。この磁性片363の材料としては、例えば、電磁鋼板を挙げることができる。
図18に示すように、各第2磁性歯部355は、隣り合う第2磁性歯部355に対向する面に凹部359を有している。この凹部359は、第2磁性歯部355の長手方向(ステータ本体51の軸方向)に延びる溝状に形成されている。
補強部356及び被覆部357は、非磁性材料によって一体に形成されている。本実施の形態では、複数の磁性片363を積層することで第2磁性歯部355を形成しているため、複数の磁性片363間には、僅かな間隙が形成されている。そこで、第2磁性歯部355の第4磁石片52A,52B(図1参照)に対向する面を被覆部357で覆うことにより、ステータ本体351の内側の空間と外側の空間を遮断する。その結果、第1収納室318と第2収納室319(図1参照)は、互いに液密又は気密に区画される。
なお、第2磁性歯部355の第2内歯車6(第3磁石片43A,43B)に対向する面は、非磁性材料によって覆われずに露出されている。しかし、本発明に係るステータ部としては、磁性歯部の第2内歯車6に対向する面を非磁性材料によって覆ってもよい。
本実施の形態では、第2磁性歯部355に凹部359を形成している。そのため、第2磁性歯部355が第2ステータ部309の径方向にずれて補強部356から外れないようにすることができる。
図17に示すように、蓋側接合部352は、ステータ本体351と同軸の円筒状に形成されている。蓋側接合部352の外径及び内径は、ステータ本体351の外径及び内径と略等しく設定されている。この蓋側接合部352は、第1蓋部316と液密又は気密に接合されている(図1参照)。
支持部側接合部353は、蓋側接合部352と同様に、ステータ本体351と同軸の円筒状に形成されている。支持部側接合部353の外径及び内径は、ステータ本体351の外径及び内径と略等しく設定されている。この支持部側接合部353は、軸支持部312と液密又は気密に接合されている(図1参照)。
本実施の形態では、蓋側接合部352を第1蓋部316に接着剤を用いて接合し、支持部側接合部353を軸支持部312と一体成形している。なお、支持部側接合部353は、接着剤を用いて軸支持部312に接合してもよい。また、蓋側接合部352を第1蓋部316と一体成形してもよい。
また、蓋側接合部352と第1蓋部316の接合及び支持部側接合部353と軸支持部312の接合は、接着剤を用いることに限定されず、両者を液密又は気密に接合するその他の方法を用いてもよい。その他の方法としては、例えば、一方に雄ねじ部を設け、他方に雌ねじ部を設けて両者をねじ結合する方法や、両者をテーパ嵌合させる方法を挙げることができる。
蓋側接合部352及び支持部側接合部353は、ステータ本体351の補強部356及び被覆部357と同様に非磁性材料によって形成されており、補強部356及び被覆部357と共に第2磁性歯部355を固定する。これら蓋側接合部352、支持部側接合部353、補強部356及び被覆部357の材料としては、合成樹脂が好ましい。これにより、第2ステータ部309を樹脂と金属の一体成形で簡単に製造することができる。
4.発電装置の第2の実施形態の動作
本実施の形態の磁気歯車装置310では、第1の回転軸3の回転が第1内歯車5から第2内歯車6に非接触で伝達される。このとき、第2内歯車6の回転速度は、第1の回転軸3(第1内歯車5)の回転速度に対して減速される。また、第2内歯車6の回転は、外歯車307に非接触で伝達され、外歯車307が固定された第2の回転軸304が回転する。このとき、第2の回転軸304の回転速度は、第2内歯車6に対して減速される。これにより、1組の歯車ユニット(例えば、ハイスピードロータとロースピードロータ)を備える磁気歯車装置よりも、減速比を大きくすることができる。
また、本実施の形態の磁気歯車装置310では、第1内歯車5、第2内歯車6が配置される第1収納室318と、外歯車307が配置される第2収納室319とを遮断して区画するケース302を備えている。第1の回転軸3は、第1内歯車5の内側筒41に接続され、第2の回転軸304は、外歯車307の外側筒331に接続されている。そして、第2内歯車6の第3磁石片43A,43Bと外歯車307の第4磁石片52A,52Bは、ケース302の第2ステータ部309を介して対向している。
これにより、第1内歯車5,第2内歯車6及び第1の回転軸3が配置される側(例えば、入力側)と、外歯車307及び第2の回転軸304が配置される側(例えば、出力側)との間で気体や液体が出入りすることを防止することができる。したがって、環状パッキンを回転軸3,304に取り付けて入力側と出力側との間をシールする必要が無い。これにより、第1及び第2の回転軸3,304の回転損失を小さくすることができ、機械効率を向上させることができる。そして、外歯車307、第1内歯車105及び第2内歯車106は非接触で回転を伝達するため、磨耗することが無い。したがって、磁気歯車装置310は、半永久的にメンテナンスを必要としない。
また、第1収納室318と第2収納室319とを遮断するケース302は、固定される部材である(回転する部分では無い)ため、第1収納室318と第2収納室319との間の気密性或いは液密性を容易に高めることができる。
5.変形例
以上、本発明の磁気歯車装置の実施の形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の磁気歯車装置は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述の第1及び第2の実施形態では、第1内側筒31の周方向に沿って1つ置きに配置された3つの第1磁石片32を1組とした。そして、各組の第1磁石片32における中央部を第1の回転軸3の径方向において所定の第1磁性歯部8の中央部に順番に一致させる構成とした。しかしながら、本発明の磁気歯車装置としては、第1磁石片の中央部を1つずつ順番に第1磁性歯部8の中央部に一致させる構成であってもよい。また、2つの第1磁石片を1組としてもよく、4つ以上の第1磁石片を1組としてもよい。
また、上述の第1及び第2の実施形態では、第2内側筒41の周方向に沿って1つ置きに配置された3つの第3磁石片43を1組とした。そして、各組の第3磁石片43における中央部を第1の回転軸3の径方向において所定の第4磁石片52の中央部に順番に一致させる構成とした。しかしながら、本発明の磁気歯車装置としては、第3磁石片の中央部を1つずつ順番に第4磁石片52の中央部に一致させる構成であってもよい。また、2つの第3磁石片を1組としてもよく、4つ以上の第3磁石片を1組としてもよい。
また、上述の第1の実施形態では、磁性片61を第1の回転軸3の軸方向に積層して第1磁性歯部8を形成し、磁性片65を第1の回転軸3の軸方向に積層して第2磁性歯部9を形成した。また、第2の実施形態では、磁性片363を第1の回転軸3の軸方向に積層して第2磁性歯部355を形成した。しかしながら、本発明に係る第1磁性歯部及び第2磁性歯部は、磁性片を積層して形成することに限定されるものではなく、1つの棒状部材から形成してもよい。
また、上述の第1及び第2の実施形態では、第1内側筒31、第2内側筒41及び外側筒51,331を円筒状に形成した。しかしながら、本発明に係る外側筒は、第2内歯車が配置される円形の筒孔を有していればよく、外径は三角形や四角形などの多角形にしてもよい。また、本発明に係る第1内側筒は、円形の外周部を有していればよく、筒孔は三角形や四角形などの多角形であってもよい。
また、上述の第1及び第2の実施形態では、第1磁石片32、第2磁石片42、第3磁石片43及び第4磁石片52をそれぞれ配置される筒の周方向に並べる構成とした。しかし、本発明に係る磁石片としては、磁束が集中する磁束収束部を有するものであってもよい。このような構成にすることにより、各歯車間に生じる磁気吸引力を増大させることができる。その結果、大きな伝達トルクを得ることができ、かつ、伝達効率を向上させることができる。
また、上述の第1の実施形態では、第1内歯車5と、第2内歯車6と、外歯車7を備える構成とした。しかしながら、本発明の磁気歯車装置としては、複数の磁石片が取り付けられた4つ以上の歯車を第1の回転軸の径方向に重ね合わせる構成にしてもよい。
つまり、本発明の磁気歯車装置は、第1の回転軸と、内歯車と、複数の中間歯車と、外歯車と、内側磁性歯部と、中間磁性歯部と、外側磁性歯部と、第2の回転軸とを備えていてもよい。
内歯車は、第1の回転軸に同軸に連結された内側筒と、内側筒の外周部に取り付けられた複数の磁石片とを有する。
複数の中間歯車は、内歯車が配置される筒孔を有する中間筒と、中間筒の内周部に取り付けられた複数の磁石片と、中間筒の外周部に取り付けられた複数の磁石片とを有し、第1の回転軸の径方向に間隙をあけて重ね合わされる。
外歯車は、複数の中間歯車が配置される筒孔を有する外側筒と、外側筒の内周部に取り付けられた複数の磁石片とを有する。
複数の内側磁性歯部は、内歯車と、複数の中間歯車のうちの最内周の中間歯車との間に配置される。
複数の中間磁性歯部は、複数の中間歯車間に配置される。
複数の外側磁性歯部は、複数の中間歯車のうちの最外周の中間歯車と、外歯車との間に配置される。
第2の回転軸には、複数の外側磁性歯部が固定される。