以下、本発明の発電装置を実施するための形態について、図1〜図24を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
1.発電装置の第1の実施形態の構成
まず、本発明の発電装置の第1の実施形態の構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の発電装置の第1の実施形態の断面図である。
図1に示すように、発電装置10は、羽根車8と、羽根車8の回転を増速させる増速部(磁気歯車)1と、増速部1によって増速された回転を用いて発電する発電部9と、ケース2とを備える。
増速部1は、第1の回転軸3と、第2の回転軸4と、外歯車5と、内歯車6とを備えている。外歯車5は、第2の回転軸4に固定され、内歯車6は、第1の回転軸3に固定されている。
ケース2は、中空部を有する箱状のケース本体11と、ケース本体11の内部に配置された軸支持部12及びステータ部13とを有している。ケース本体11は、両端が開口された円筒状の筒部14と、筒部14の一方の端部に接合される略筒状の中間部15と、中間部15の開口を塞ぐ第1蓋部16と、筒部14の他方の開口を塞ぐ第2蓋部17から構成されている。
ケース本体11の中間部15は、筒部14と同軸の筒状に形成された中間部本体15aと、中間部本体15aの内周面から突出する固定片15bとを有している。中間部本体15aの軸方向の一端部は、第1蓋部16に液密又は気密に接合され、他端部は、筒部14の軸方向の一端部に接合されている。また、中間部本体15aの内周部には、発電部9の後述する磁石27が固定されている。
固定片15bは、筒部14及び中間部本体15aと同軸のリング状に形成されている。この固定片15bには、ステータ部13が液密又は気密に接合される。
ケース本体11の第1蓋部16は、適当な厚みを有する板状に形成されており、筒部14の軸方向に略直交する平面を有している。この第1蓋部16の一方の平面には、中間部15における中間部本体15aの軸方向の一端部が液密又は気密に接合されている。また、第1蓋部16は、中間部本体15aの外周面よりも突出する鍔片16aを有している。この鍔片16aは、例えば、発電装置10の設置部(不図示)に、ねじなどの固定部材を用いて固定される。
さらに、第1蓋部16には、第1の回転軸3が貫通する貫通孔が設けられている。第1蓋部16の貫通孔には、軸受21が配置されている。この軸受21は、第1蓋部16に固定されており、第1の回転軸3を回転可能に支持する。
ケース本体11の第2蓋部17は、適当な厚みを有する板状に形成されており、筒部14の軸方向に略直交する平面を有している。この第2蓋部17は、筒部14の内側に嵌合され、筒部14と接合されている。
また、第2蓋部17には、第2の回転軸4が貫通する貫通孔が設けられている。第2蓋部17の貫通孔には、軸受22が配置されている。この軸受22は、第2蓋部17に固定されており、第2の回転軸4を回転可能に支持する。
軸支持部12は、筒部14の内部において第1蓋部16と第2蓋部17の中間部よりも第2蓋部17側に配置されている。この軸支持部12は、適当な厚みを有する円板状に形成されており、第1蓋部16に対向する第1平面12aと、第2蓋部17に対向する第2平面12bとを有している。
軸支持部12の第1平面12a及び第2平面12bには、それぞれ凹部が設けられている。第1平面12aの凹部には、軸受23が配置されている。この軸受23は、軸支持部12に固定されており、第1の回転軸3を回転可能に支持する。また、第2平面12bの凹部には、軸受24が配置されている。この軸受24は、軸支持部12に固定されており、第2の回転軸4を回転可能に支持する。
ステータ部13は、略円筒状に形成されている。このステータ部13の一端部は、中間部15における固定片15bに液密又は気密に接合されている。また、ステータ部13の他端部は、軸支持部12に嵌合され、軸支持部12と液密又は気密に接合されている。
軸支持部12、ステータ部13及び中間部15は、ケース本体11の内部空間を第1収納室18と、第2収納室19に区画する。これら第1収納室18と第2収納室19は、互いに液密又は気密に遮断されている。
第1収納室18は、軸支持部12、ステータ部13、中間部15及び第1蓋部16に囲まれた空間であり、第2収納室19は、軸支持部12、ステータ部13、筒部14、中間部15及び第2蓋部17に囲まれた空間である。第1収納室18には内歯車6及び発電部9が配置され、第2収納室19には外歯車5が配置されている。そして、第1収納室18に配置された内歯車6と、第2収納室19に配置された外歯車5との間には、ステータ部13が介在されている。
ケース本体11(筒部14、中間部15、第1蓋部16及び第2蓋部17)と、軸支持部12は、防錆および磁束漏れを防止のため、腐食に強い非磁性材料によって形成することが望ましい。これらケース本体11及び軸支持部12の材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、銅等の金属、又は合成樹脂を挙げることができる。
なお、ステータ部13の材料及び構成については、後で図4〜図6を参照して説明する。
第1の回転軸3及び第2の回転軸4は、防錆および磁束漏れを防止のため、ケース本体11及び軸支持部12と同様に、腐食に強い非磁性材料から形成することが望ましい。第1の回転軸3の軸心及び第2の回転軸4の軸心は、第1蓋部16と第2蓋部17が対向する方向と平行であって、互いに一致している。
第1の回転軸3は、ケース2の第1蓋部16を貫通しており、内歯車6に連結されている。この第1の回転軸3は、内歯車6と同軸に配置されている。そして、第1の回転軸3は、軸受21,23によって第1蓋部16と軸支持部12に回転可能に取り付けられている。
第2の回転軸4は、第1軸部4aと、第1軸部4aの先端に設けられた円板部4bと、円板部4bの第1軸部4aと反対側に設けられた第2軸部4cから構成されている。第1軸部4aは、第2蓋部17を貫通しており、軸受22によって第2蓋部17に回転可能に取り付けられている。この第1軸部4aには、羽根車8が挿入される嵌合穴4dが形成されている。羽根車8は、第1軸部4aに嵌合することによって、第2の回転軸4に同軸に接続されている。
第2の回転軸4の円板部4bには、外歯車5が連結されており、第2の回転軸4は、外歯車5と同軸に配設されている。また、第2軸部4cの軸心は、第1軸部4aの軸心と一致している。この第2軸部4cは、軸受24によって軸支持部12に回転可能に取り付けられている。
軸受21,22,23及び24は、それぞれ転動体21a,22a,23a及び24aを有する転がり軸受(ボールベアリング)である。第1の回転軸3を回転可能に支持する軸受21,23は、潤滑剤を用いた金属製の軸受を適用することが好ましい。この金属製の軸受は、第1の回転軸3の高速回転に耐える強度を有する。
一方、第2の回転軸4を回転可能に支持する軸受22,24は、潤滑剤を使用しない樹脂製やセラミック製の軸受を適用することが好ましい。これにより、オイルミストの発生を防止して、第2の回転軸4及び外歯車5が配置される側の領域を清潔な空間にすることができる。
また、樹脂製やセラミック製の軸受は、金属製の軸受よりも強度が低くて高速回転に適していない。しかし、羽根車8が接続される第2の回転軸4は、入力側であり、第1の回転軸3よりも回転速度が遅いため、第2の回転軸4を支持する軸受22,24を樹脂製やセラミック製にすることが可能である。
なお、本発明に係る軸受は、転がり軸受に限定されるものではなく、例えば、すべり軸受、流体軸受等を適用することもできる。
[発電部]
次に、発電部9について図1を参照して説明する。
発電部9は、ケース2の中間部15に固定された複数の磁石27と、第1の回転軸3に固定されたコイル28と、コイル28が接続された不図示のスリップリングと、スリップリングに接触する複数のブラシとを備える。
複数の磁石27は、中間部15における中間部本体15aの内周部に固定されており、第1の回転軸3の径方向においてコイル28に対向している。コイル28が第1の回転軸3と一緒に回転することにより、コイル28に電流が発生する。コイル28に発生した電流は、不図示のスリップリング及びブラシを介して交流として出力される。
このように、本実施の形態の発電部9は、一般的な発電機に用いる構成を採用することができる。
また、本発明に係る発電部としては、コイルがケース2の中間部15に固定され、磁石が、第1の回転軸3に固定されていてもよい。また、本発明に係る発電部としては、直流を出力するものであってもよい。この場合は、スリップリングに替えて整流子を用いる。
[外歯車]
次に、外歯車5の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
図2は、図1に示すA−A線に沿う断面図である。なお、図2では、ケース2の筒部14を省略している。
外歯車5は、第2の回転軸4の円板部4bに固定された外側筒31と、外側筒31の内周部に取り付けられた複数の外側磁石片32から構成されている。
外側筒31は、円形の筒孔31aを有している。この外側筒31は、例えば、電磁鋼板、電磁軟鉄などの磁性材料からなる複数の板状部材を積層することにより形成されている。なお、磁性材料からなる複数の板状部材は、カシメ、溶接、接着剤などの固着方法により固着されて一体に形成されている。
このように、磁性材料からなる複数の板状部材を積層して外側筒31を形成すると、重なり合う板状部材間の微細な間隙が抵抗になり、外側筒31の軸方向に流れる渦電流を遮断することができる。そのため、外側筒31は、磁性材料からなる複数の板状部材を積層して形成することが好ましい。なお、渦電流の遮断をより確実にするために、重なり合う板状部材間に電流絶縁材あるいは電流絶縁塗膜を介在させてもよい。
複数の外側磁石片32は、複数の外側磁石片32A,32Bから構成されている。複数の外側磁石片32A,32Bは、それぞれ筒孔31aの軸方向に細長い略棒状に形成された永久磁石である。これら複数の外側磁石片32A,32Bは、筒孔31aの径方向に磁化されている。
外側磁石片32Aと外側磁石片32Bは、筒孔31aの周方向に交互に並べられている。外側磁石片32Aは、外側筒31側がS極であり、ステータ部13の後述する磁性歯部55側がN極である。一方、外側磁石片32Bは、外側筒31側がN極であり、ステータ部13の後述する磁性歯部55側がS極である。したがって、複数の外側磁石片32A,32Bは、異なる磁極が筒孔31aの周方向に隣り合うように並べられている。
本実施の形態では、複数の外側磁石片32A,32Bを磁性材料からなる外側筒31に貼り付けることにより、外側筒31の磁気モーメントを揃えて、大きな表面磁束密度を得ることができる。また、複数の外側磁石片32A,32Bは、磁気吸引力によって外側筒31の内周部に吸着させることができるため、複数の外側磁石片32A,32Bを外側筒31の内周部に簡単に取りつけることができる。
[内歯車]
次に、内歯車6について図2及び図3を参照して説明する。
図3は、内歯車6の分解斜視図である。
図2に示すように、内歯車6は、外歯車5の筒孔31a内であって、第1収納室18内に配置されている。この内歯車6は、円形の外周部を有する内側筒41と、内側筒41の外周部に取り付けられた複数の内側磁石片42から構成されている。
図3に示すように、内側筒41は、第1の回転軸3が嵌合される円形の筒孔41aを有する円筒状に形成されている。この内側筒41は、例えば、電磁鋼板、電磁軟鉄などの磁性材料からなる複数の板状のリング部材41Aを積層することにより形成されている。複数のリング部材41Aは、カシメ、溶接、接着剤などの固着方法により固着されて一体成形されている。このように、磁性材料からなる複数のリング部材41Aを積層して内側筒41を形成することにより、内側筒41の軸方向に流れる渦電流を遮断することができる。そのため、内側筒41は、磁性材料からなる複数のリング部材41Aを積層して形成することが好ましい。
複数の内側磁石片42は、それぞれ内側筒41(筒孔41a)の軸方向に長い略長方形の板状に形成された永久磁石である。これら複数の内側磁石片42は、内側筒41(筒孔41a)の径方向に磁化されている。そして、複数の内側磁石片42は、磁化された方向が互いに反対である複数の内側磁石片42A,42Bから構成されている。
図2に示すように、内側磁石片42Aと内側磁石片42Bは、内側筒41の周方向に交互に並べられている。内側磁石片42Aは、内側筒41側がN極であり、ステータ部13の後述する磁性歯部55側ががS極である。一方、内側磁石片42Bは、内側筒41側がS極であり、ステータ部13の後述する磁性歯部55側がN極である。したがって、複数の内側磁石片42A,42Bは、異なる磁極が内側筒41(筒孔41a)の周方向に隣り合うように並べられている。
[ステータ部]
次に、ステータ部13について図4〜図6を参照して説明する。
図4は、ステータ部13の斜視図である。図5は、図4に示すB−B線に沿う断面図である。図6は、図5に示すC−C線に沿う断面図である。
図4及び図5に示すように、ステータ部13は、円筒状に形成されている。このステータ部13は、円筒体であるステータ本体51と、このステータ本体51の軸方向の一端部に連続する中間部側接合部52と、ステータ本体51の軸方向の他端部に連続する支持部側接合部53とを備えている。
ステータ本体51は、外歯車5の外側磁石片32A,32Bと、内歯車6の内側磁石片42A,42Bとの間に配置される(図1参照)。このステータ本体51は、第1の回転軸3の周方向に沿って所定の間隔をあけて配置された複数の磁性歯部55と、複数の磁性歯部55の間を埋めた補強部56と、磁性歯部55の外側磁石片32A,32Bに対向する面を覆う被覆部57とを有している。
複数の磁性歯部55は、ステータ本体51の軸方向に延びる略棒状に形成されている。つまり、複数の磁性歯部55は、第1の回転軸3及び第2の回転軸4と平行な方向に延びる棒状に形成されている。そして、各磁性歯部55は、ステータ本体51の軸方向(第1の回転軸3及び第2の回転軸4と平行な方向)に複数の磁性片63を積層することにより形成されている。この磁性片63の材料としては、例えば、電磁鋼板を挙げることができる。
後述するように、本実施の形態の増速部1では、外歯車5と内歯車6が互いに反対方向に回転する。したがって、ステータ本体51の磁性歯部を連続した1本の棒状に形成すると、磁性歯部の中で渦電流が発生する。そして、磁性歯部に渦電流が発生すると、レンツの法則により外歯車5及び内歯車6の回転に抗する電磁ブレーキが生じてトルク損失となる。
そこで、本実施の形態では、磁性歯部55を複数の磁性片63を積層して形成し、渦電流を遮断している。
図6に示すように、各磁性歯部55は、隣り合う磁性歯部55に対向する面に凹部59を有している。この凹部59は、磁性歯部55の長手方向(ステータ本体51の軸方向)に延びる溝状に形成されている。
補強部56及び被覆部57は、非磁性材料によって一体に形成されている。本実施の形態では、複数の磁性片63を積層することで磁性歯部55を形成しているため、複数の磁性片63間には、僅かな間隙が形成されている。そこで、磁性歯部55の外側磁石片32A,32B(図1参照)に対向する面を被覆部57で覆うことにより、ステータ本体51の内側の空間と外側の空間を遮断する。その結果、第1収納室18と第2収納室19(図1参照)は、互いに液密又は気密に区画される。
なお、磁性歯部55の内側磁石片42A,42Bに対向する面は、非磁性材料によって覆われずに露出されている。しかし、本発明に係るステータ部としては、磁性歯部の内側磁石片に対向する面を非磁性材料によって覆ってもよい。
本実施の形態では、磁性歯部55に凹部59を形成している。そのため、磁性歯部55がステータ部13の径方向にずれて補強部56から外れないようにすることができる。
図5に示すように、中間部側接合部52は、ステータ本体51と同軸の円筒状に形成されている。中間部側接合部52の外径及び内径は、ステータ本体51の外径及び内径と略等しく設定されている。この中間部側接合部52は、ケース2の中間部15と液密又は気密に接合されている(図1参照)。
支持部側接合部53は、中間部側接合部52と同様に、ステータ本体51と同軸の円筒状に形成されている。支持部側接合部53の外径及び内径は、ステータ本体51の外径及び内径と略等しく設定されている。この支持部側接合部53は、ケース2の軸支持部12と液密又は気密に接合されている(図1参照)。
本実施の形態では、中間部側接合部52を中間部15に接着剤を用いて接合し、支持部側接合部53を軸支持部12と一体成形している。なお、支持部側接合部53は、接着剤を用いて軸支持部12に接合してもよい。また、中間部側接合部52を中間部15と一体成形してもよい。
また、中間部側接合部52と中間部15の接合及び支持部側接合部53と軸支持部12の接合は、接着剤を用いることに限定されず、両者を液密又は気密に接合するその他の方法を用いてもよい。その他の方法としては、例えば、一方に雄ねじ部を設け、他方に雌ねじ部を設けて両者をねじ結合する方法や、両者をテーパ嵌合させる方法を挙げることができる。
中間部側接合部52及び支持部側接合部53は、ステータ本体の補強部56及び被覆部57と同様に非磁性材料によって形成されており、補強部56及び被覆部57と共に磁性歯部55を固定する。これら中間部側接合部52、支持部側接合部53、補強部56及び被覆部57の材料としては、合成樹脂が好ましい。これにより、ステータ部13を樹脂と金属の一体成形で簡単に製造することができる。
[ステータ部の製造方法]
次に、ステータ部13の製造方法について、図7を参照して説明する。
図7Aは、ステータ部13を製造する際に用いる磁性部材の平面図である。図7Bは、磁性部材を積層して形成された磁性歯部品を示す側面図である。図7Cは、磁性歯部品と合成樹脂を一体成形して補強部及び被覆部を形成した状態を示す側面図である。
まず、磁性歯部55を形成する磁性部材61について説明する。
図7Aに示すように、磁性部材61は、例えば、電磁鋼板、電磁軟鉄などの磁性材料からなり、中央部に円形の貫通孔を有する円環状に形成されている。
磁性部材61は、円環状の連結片62と、連結片62の外周部に連続する複数の磁性片63とを有している。複数の磁性片63は、それぞれ連結片62の径方向の外側に突出しており、連結片62の周方向に所定の間隔をあけて配置されている。各磁性片63は、略長方形の板状に形成されており、一方の短辺が連結片62に連続している。各磁性片63の2つの長辺には、それぞれ切欠き63aが形成されている。切欠き63aは、略半円状に形成されている。なお、本発明に係る磁性片の切欠きは、略半円状に限定されず、三角形や四角形など任意の形状にすることができる。
次に、ステータ部13の製造工程について説明する。
ステータ部13を製造するには、まず、上述した磁性部材61を軸方向に積層し、数点をカシメ、溶接、接着剤などの固着方法により固着して一体に仮形成する。これにより、図7Bに示す磁性歯部品65が組み立てられる。磁性歯部品65では、複数の磁性片63が磁性部材61の軸方向に積み重なって磁性歯部55を形成し、複数の切欠き63aが磁性部材61の軸方向に積み重なって凹部59を形成する。
続いて、金属製の磁性歯部品65と非磁性材料である合成樹脂とを不図示の型を用いて一体成形する。その結果、図7Cに示すように、中間部側接合部52、支持部側接合部53、補強部56(図6参照)及び被覆部57が形成される。このとき、非磁性材料である合成樹脂が磁性歯部55の凹部59に入り込んで補強部56の一部を形成する。そのため、磁性歯部55と補強部56との結合を強固にすることができ、磁性歯部55が補強部56から外れないようにすることができる。
なお、本実施の形態では、中間部側接合部52、支持部側接合部53、補強部56(図6参照)及び被覆部57と一緒に、軸支持部12を一体成形する。
その後、連結片62を切削する。これにより、複数の磁性歯部55がそれぞれ独立して設けられた状態になり、円筒状のステータ部13が完成する。
本実施の形態では、渦電流を遮断するために、複数の磁性片63を積層して磁性歯部55を形成する。本実施の形態では、複数の磁性片63と連結片62からなる磁性部材61を積層して複数の磁性歯部55を形成した。これにより、円状に並ぶ複数の磁性歯部55を効率良く形成することができる。
一方、磁性歯部55が連結片62によって一体に繋がっていると、磁性歯部全体に磁束が通ることになる。また、磁極の固有振動数を歯車の回転数の数倍にするためには、ステータ部13の磁性歯部55に剛性が必要となる。そのため、ステータ部13の磁性歯部55は、剛性があり、且つ、独立して形成されていることが好ましい。
そこで、本実施の形態では、隣り合う磁性歯部55間を補強部56で埋めて磁性歯部55の剛性を高めた。これにより、磁性歯部55の変形を防止することができる。
また、連結片62を切削して複数の磁性歯部55を独立して形成した。これにより、磁性歯部55の長手方向に流れる渦電流が遮断され、トルク損失を軽減することができる。
なお、本実施の形態では、磁性歯部55の材料として、電磁鋼板を採用したが、本発明に係る磁性歯部は、これに限定されない。本発明に係る磁性歯部としては、例えば圧粉磁心を用いてもよい。圧粉磁心は、鉄粉同士が絶縁されているため、電気抵抗が高い。
圧粉磁心によって磁性歯部を形成した場合は、磁性歯部の電気抵抗が高くなるため、磁性歯部に渦電流が流れにくくなる。その結果、増速部1におけるトルク損失を軽減することができる。また、圧粉磁心は安価であるため、圧粉磁心により磁性歯部を形成すると材料費のコストを低減することができる。さらに、圧粉磁心は成形性がよいため、連結片と磁性片から構成される磁性部材を容易に製造することができる。
2.発電装置の第1の実施形態の動作
次に、発電装置10の動作について図8〜図12を参照して説明する。
図8は、内歯車6における内側磁石片42Aa,42Abの中央部が、ステータ部13における磁性歯部55A,55Bの中央部に内歯車6の径方向で一致した状態の説明図である。
図8に示す状態におけるステータ部13の磁性歯部55A,55Bに注目すると、外歯車5における外側磁石片32Aa,32Abの中央部に対向する側がS極となり、反対側がN極となっている。そして、磁性歯部55A,55BのN極は、内歯車6における内側磁石片42Aa,42Abの中央部に対向している。
したがって、外側磁石片32Aaと磁性歯部55Aとの間、及び外側磁石片32Abと磁性歯部55Bとの間に生じる磁気吸引力は、半径方向のみならず周方向にも釣り合っている。また、磁性歯部55Aと内側磁石片42Aaとの間、及び磁性歯部55Bと内側磁石片42Abとの間に生じる磁気吸引力は、半径方向のみならず周方向にも釣り合っている。
図8に示す状態から第2の回転軸4を矢印R1方向に回転させると、第2の回転軸4と共に外歯車5が矢印R1方向に回転する。そして、外歯車5における外側磁石片32Ba,32Bbの中央部が、ステータ部13における磁性歯部55C,55Dの中央部に外歯車5の径方向で一致する。
なお、矢印R1方向は、第1の回転軸3の軸心を中心とした回転方向である。
図9は、外歯車5における外側磁石片32Ba,32Bbの中央部が、磁性歯部55C,55Dの中央部に外歯車5の径方向で一致した状態の説明図である。
外側磁石片32Ba,32Bbの中央部が、磁性歯部55C,55Dの中央部に外歯車5の径方向で一致すると、磁性歯部55C,55Dにおける外側磁石片32Ba,32Bbに対向する側がN極となり、反対側がS極となる。このとき、磁気吸引力の釣り合いが崩れ、磁性歯部55Cと内歯車6の内側磁石片42Baとの間、及び磁性歯部55Dと内側磁石片42Bbとの間に周方向の磁気吸引力が生じる。
これにより、内歯車6が矢印R2方向に回転し、内歯車6の内側磁石片42Ba,42Bbの中央部と、磁性歯部55C,55Dの中央部が内歯車6の径方向で一致する。その結果、増速部1は、図9に示すような釣り合い状態になる。
なお、矢印R2方向は、第1の回転軸3の軸心を中心とした回転方向であり、矢印R1方向と反対の方向である。
図9に示す状態から第2の回転軸4及び外歯車5を矢印R1方向に回転させると、外歯車5の外側磁石片32Ac,32Adの中央部が、ステータ部13における磁性歯部55E,55Fの中央部に外歯車5の径方向で一致する。
図10は、外歯車5における外側磁石片32Ac,32Adの中央部が、磁性歯部55E,55Fの中央部に外歯車5の径方向で一致した状態の説明図である。
外側磁石片32Ac,32Adの中央部が、磁性歯部55E,55Fの中央部に外歯車5の径方向で一致すると、磁性歯部55E,55Fにおける外側磁石片32Ac,32Adに対向する側がS極となり、反対側がN極となる。このとき、磁気吸引力の釣り合いが崩れ、磁性歯部55Eと内歯車6の内側磁石片42Acとの間、及び磁性歯部55Fと内側磁石片42Adとの間に周方向の磁気吸引力が生じる。
これにより、内歯車6が矢印R2方向に回転し、内歯車6の内側磁石片42Ac,42Adの中央部と、磁性歯部55E,55Fの中央部が内歯車6の径方向で一致する。その結果、増速部1は、図10に示すような釣り合い状態になる。
図10に示す状態から第2の回転軸4及び外歯車5を矢印R1方向に回転させると、外歯車5の外側磁石片32Bc,32Bdの中央部が、ステータ部13における磁性歯部55G,55Hの中央部に外歯車5の径方向で一致する。
図11は、外歯車5における外側磁石片32Bc,32Bdの中央部が、磁性歯部55G,55Hの中央部に外歯車5の径方向で一致した状態の説明図である。
外側磁石片32Bc,32Bdの中央部が、磁性歯部55G,55Hの中央部に外歯車5の径方向で一致すると、磁性歯部55G,55Hにおける外側磁石片32Bc,32Bdに対向する側がN極となり、反対側がS極となる。このとき、磁気吸引力の釣り合いが崩れ、磁性歯部55Gと内歯車6の内側磁石片42Bcとの間、及び磁性歯部55Hと内側磁石片42Bdとの間に周方向の磁気吸引力が生じる。
これにより、内歯車6が矢印R2方向に回転し、内歯車6の内側磁石片42Bc,42Bdの中央部と、磁性歯部55G,55Hの中央部が内歯車6の径方向で一致する。その結果、増速部1は、図11に示すような釣り合い状態になる。
図11に示す状態から第2の回転軸4及び外歯車5を矢印R2方向に回転させると、外歯車5の外側磁石片32Ae,32Afの中央部が、ステータ部13における磁性歯部55I,55Jの中央部に内歯車6の径方向で一致する。
図12は、外歯車5における外側磁石片32Ae,32Afの中央部が、磁性歯部55I,55Jの中央部に外歯車5の径方向で一致した状態の説明図である。
外側磁石片32Ae,32Afの中央部が、磁性歯部55I,55Jの中央部に外歯車5の径方向で一致すると、磁性歯部55I,55Jにおける外側磁石片32Ae,32Afに対向する側がS極となり、反対側がN極となる。このとき、磁気吸引力の釣り合いが崩れ、磁性歯部55Iと内歯車6の内側磁石片42Aaとの間、及び磁性歯部55Jと内側磁石片42Abとの間に周方向の磁気吸引力が生じる。
これにより、内歯車6が矢印R2方向に回転し、内歯車6の内側磁石片42Aa,42Abの中央部と、磁性歯部55I,55Jの中央部が内歯車6の径方向で一致する。その結果、増速部1は、図12に示すような釣り合い状態になる。
磁性歯部55I,55Jは、矢印R2方向で磁性歯部55A,55Bに隣り合う。そして、図8に示す状態から図12に示す状態になるまでに、内側磁石片42Aa,42Ab(内歯車6)は、矢印R2方向へ磁性歯部55の1ピッチ角度だけ回転する。このとき、外歯車5は、矢印R1方向へ磁性歯部55の1ピッチ角度よりも小さい角度だけ回転する。したがって、発電部9が連結された第1の回転軸3の回転は、外歯車5が固定された第2の回転軸4の回転に対して増速される。
本実施の形態の発電装置10は、増速部1の外歯車5と内歯車6が非接触で回転を伝えるため、機械式増速部を用いる場合よりも機械効率を向上させることができる。また、増速部1の振動や騒音を小さくすることがでる。
また、本実施の形態の発電装置10では、内歯車6と外歯車5を第1の回転軸3の径方向に間隙をあけて重ねる構造とした。内歯車6に設けた複数の内側磁石片42と、外歯車5に設けた複数の外側磁石片32は、それぞれ第1の回転軸3の周方向に並べられている。そして、複数の内側磁石片42と複数の外側磁石片32とは、第1の回転軸3の径方向において対向する。これにより、複数の内側磁石片42と複数の外側磁石片32との個数を異ならせることにより、容易に増速比を高くすることができる。
また、内歯車6及び外歯車5の径を大きくしなくても、複数の内側磁石片42と複数の外側磁石片32との個数を異ならせれば、増速比を高めることができる。したがって、本実施の形態の発電装置10によれば、発電に必要な増速比を確保することができ、かつ、小型化を図ることができる。
増速部(磁気歯車)1の増速比をI1、内歯車6の外径をd(図1参照)、コイル28の外径をD(図1参照)とすると、発電装置10の増速費Iは、以下の式で表される。
I=I1(D/d)
例えば、増速部(磁気歯車)1の増速比I1が10であり、D/d=2である場合に、発電装置10の増速比Iは、20になる(I=20)。このように、発電装置10では、機械式増速部(機械式歯車)を用いずに大きな増速比を確保することができ、羽根車8の回転速度が数十rpmである(遅い)場合でも発電を行うことができる。
また、本実施の形態の発電装置10では、磁気吸引力を用いた歯車である増速部1を備えるため、トルクリミッタ機能を有する。これにより、羽根車8が過負荷で回転した場合に、増速部1の第2の回転軸4が空転することになり、発電装置10に破損が生じないようにすることができる。
また、本実施の形態の発電装置10では、内歯車6及び発電部9が配置される第1収納室18と、外歯車5が配置される第2収納室19とを遮断して区画するケース2を備えている。第1の回転軸3は、内歯車6の内側筒41に接続され、第2の回転軸4は、外歯車5の外側筒31に接続されている。そして、内歯車6の内側磁石片42A,42Bと外歯車5の外側磁石片32A,32Bは、ケース2のステータ部13を介して対向している。
第1の回転軸3及び内歯車6の回転は、ステータ部13を介して外歯車5及び第2の回転軸4に伝達される。したがって、外歯車5及び第2の回転軸4が配置される側(例えば、入力側)と、内歯車6及び第1の回転軸3が配置される側(例えば、出力側)との間で気体や液体が出入りすることを防止することができる。
また、本実施の形態の発電装置10は、第1収納室18と第2収納室19とを遮断して区画するケース2を備えているため、環状パッキンを用いる必要が無く、長時間使用しても、第1収納室18と第2収納室19との間で気体や液体が出入りすることが無い。また、外歯車5と内歯車6は非接触で回転を伝達するため、外歯車5及び内歯車6が磨耗することが無い。したがって、増速部1は、半永久的にメンテナンスを必要としない。
また、環状パッキンを用いないため、潤滑剤を使用する必要が無く、内歯車6及び第1の回転軸3が配置される側(例えば、入力側)と、外歯車5及び第2の回転軸4が配置される側(例えば、出力側)のうちの少なくとも一方を清潔で衛生的な環境にすることができる。さらに、環状パッキンを用いる場合よりも、第1及び第2の回転軸3,4の回転損失を小さくすることができ、機械効率を向上させることができる。
また、第1収納室18と第2収納室19とを遮断するケース2が固定される部材である(回転する部分では無い)ため、第1収納室18と第2収納室19との間の気密性或いは液密性を容易に高めることができる。
また、本実施の形態の発電装置10では、回転軸3,4の軸方向に磁気吸引力が発生せず、かつ回転軸3,4の径方向(ラジアル方向)の磁気吸引力のバランスが保たれる(釣り合った状態になる)。これにより、磁気吸引力によって作用する軸受荷重をキャンセルさせることができる。その結果、外歯車5と内歯車6との間に隔壁(ステータ部13)を設ける構成であっても、軸受摩擦を極端に小さくすることができる。
また、本実施の形態の発電装置10では、外歯車5の外側筒31及び内歯車6の内側筒41を磁性材料によって形成した。これにより、複数の外側磁石片32A,32B及び複数の内側磁石片42A,42Bで外側筒31及び内側筒41の磁気モーメントを揃えて、大きな表面磁束密度を得ることができる。
しかし、増速部1では、内歯車6から外歯車5に、又は外歯車5から内歯車6にステータ部13の磁性歯部55を介して磁場が作用する。そこで、増速部1では、外側筒31及び内側筒41を磁性材料からなる複数の板状部材を積層することにより形成した。これにより、外側筒31及び内側筒41の軸方向に流れる渦電流を遮断して、トルク損失(渦電流損)を軽減することができる。
3.発電装置の第2の実施形態の構成
次に、本発明の発電装置の第2の実施形態の構成について、図13及び図14を参照して説明する。
図13は、本発明の発電装置の第2の実施形態の断面図である。図14は、図13に示すD−D線に沿う断面図である。
図13に示すように、発電装置210は、羽根車208と、羽根車208の回転を増速させる増速部(磁気歯車)101と、増速部101によって増速された回転を用いて発電する発電部209と、ケース102とを備える。
増速部101は、第1の回転軸103と、第2の回転軸104と、第1内歯車105と、第2内歯車106と、外歯車107と、複数の第1磁性歯部108と、複数の第2磁性歯部109とを備えている。第1の回転軸103には、第1内歯車105が固定され、第2の回転軸104には、第2磁性歯部109が固定されている。
[ケース]
次に、ケース102について説明する。
図13に示すように、ケース102は、中空部を有する箱状に形成されている。ケース102は、両端が開口された筒状の外装筒114と、外装筒114の一方の端部に接合される略筒状の中間部115と、中間部115の開口を塞ぐ第1蓋部116と、外装筒114の他方の開口を塞ぐ第2蓋部117から構成されている。なお、図14では、外装筒114を省略している。
中間部115は、外装筒114と同軸の筒状に形成された中間部本体115aと、中間部本体115aの内周面から突出する固定片115bとを有している。中間部本体115aの軸方向の一端部は、第1蓋部116に接合され、他端部は、外装筒114の軸方向の一端部に接合されている。また、中間部本体115aの内周部には、発電部209の後述する磁石227が固定されている。
固定片115bは、外装筒114及び中間部本体115aと同軸のリング状に形成されている。この固定片115bには、第1の回転軸103が貫通する貫通孔と、軸受取り付け部115cが設けられている。軸受取り付け部115cは、固定片115bの第2蓋部117に対向する面に設けられている。
軸受取り付け部115cは、中間部115における貫通孔の周囲に形成された円形の凹部である。この軸受取り付け部115cには、軸受121が取り付けられる。そして、軸受121には、第2内歯車106が固定されている。
また、固定片115bの第2蓋部117に対向する面には、複数の第1磁性歯部108が固定されている。複数の第1磁性歯部108は、貫通孔と軸受取り付け部115cとの間に配置されている。
第1蓋部116は、適当な厚みを有する板状に形成されており、外装筒114の軸方向に略直交する2つの平面を有している。この第1蓋部116は、中間部本体115aの軸方向の一端部に接合されている。また、第1蓋部116には、第1の回転軸3が貫通する貫通孔と、軸受取り付け部116aが設けられている。
軸受取り付け部116aは、第1蓋部116の第2蓋部117に対向する面に設けられている。軸受取り付け部116aは、第1蓋部116における貫通孔の周囲に形成された円形の凹部である。この軸受取り付け部116aには、軸受122が取り付けられる。そして、軸受122には、第1の回転軸103が固定されている。
第2蓋部117は、適当な厚みを有する板状に形成されており、外装筒114の軸方向に略直交する2つの平面を有している。この第2蓋部117は、外装筒114の軸方向の他端部に接合されている。また、第2蓋部117には、第2の回転軸104が貫通する貫通孔と、軸受取り付け部117aが設けられている。
軸受取り付け部117aは、第2蓋部117の第1蓋部116に対向する面に設けられている。この軸受取り付け部117aは、第2蓋部117における貫通孔の周囲に形成された円形の凹部である。軸受取り付け部117aには、軸受123が取り付けられる。そして、軸受123には、第2の回転軸104が固定されている。
ケース102(外装筒114、中間部115、第1蓋部116及び第2蓋部117)は、防錆および磁束漏れを防止のため、腐食に強い非磁性材料によって形成することが望ましい。ケース102の材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、銅等の金属、又は合成樹脂を挙げることができる。
[第1の回転軸及び第2の回転軸]
次に、第1の回転軸103及び第2の回転軸104について説明する。
第1の回転軸103及び第2の回転軸104は、防錆および磁束漏れを防止のため、ケース102と同様に、腐食に強い非磁性材料から形成することが望ましい。図1に示すように、第1の回転軸103の軸心及び第2の回転軸104の軸心は、第1蓋部116と第2蓋部117が対向する方向と平行であって、互いに一致している。
第1の回転軸103は、ケース102の中間部115及び第1蓋部116を貫通しており、第1内歯車105に連結されている。この第1の回転軸103は、第1内歯車105と同軸に配置されている。
第2の回転軸104は、軸部104aと、軸部104aの先端に設けられた円板部104bと、円板部104bに設けられた軸受取り付け部104c,104dを有している。軸部104aは、第2蓋部117を貫通しており、軸受123に固定されている。つまり、第2の回転軸104は、軸受123を用いて第2蓋部117に回転可能に取り付けられている。また、軸部104aには、羽根車208が挿入される嵌合穴104eが形成されている。羽根車208は、軸部104aに嵌合することによって、第2の回転軸104に同軸に接続されている。
軸部104aは、円板部104bの中心部に連続している。円板部104bは、ケース102の内部に配置されており、外装筒114の軸方向に略直交する2つの平面を有している。円板部104bの一方の平面は、第2蓋部117に対向し、他方の平面は、第1蓋部116に対向している。
軸受取り付け部104c,104dは、円板部104bの他方の平面に設けられている。軸受取り付け部104cは、円板部104bの中央部に形成された円形の凹部である。この軸受取り付け部104cには、軸受124が取り付けられる。そして、軸受124には、第1の回転軸103が固定されている。つまり、第1の回転軸103は、軸受122,124を用いて第1蓋部116及び第2の回転軸104に回転可能に支持されている。
軸受取り付け部104dは、軸受取り付け部104cの周囲に形成された環状の凹部である。この軸受取り付け部104dには、軸受125が取り付けられる。そして、軸受125には、第2内歯車106が固定されている。
軸受121,122,123,124及び125は、それぞれ転動体121a,122a,123a,124a及び125aを有する転がり軸受(ボールベアリング)である。これら軸受121〜125の転動体121a〜125aは、非磁性材料または炭素含有量が多い材料によって形成することが好ましい。通常使用される転がり軸受は、硬度を確保するための焼き入れを行うため、炭素含有量は多い。したがって、そのような通常の転がり軸受を用いてもよい。
なお、本実施形態に係る軸受は、転がり軸受に限定されるものではなく、例えば、すべり軸受、流体軸受等を適用することもできる。
[発電部]
次に、発電部209について図1を参照して説明する。
発電部209は、ケース102の中間部115に固定された複数の磁石227と、第1の回転軸103に固定されたコイル228と、コイル228が接続された不図示のスリップリングと、スリップリングに接触する複数のブラシとを備える。
複数の磁石227は、中間部115における中間部本体115aの内周部に固定されており、第1の回転軸103の径方向においてコイル228に対向している。コイル228が第1の回転軸103と一緒に回転することにより、コイル228に電流が発生する。コイル228に発生した電流は、不図示のスリップリング及びブラシを介して交流として出力される。
このように、本実施の形態の発電部209は、一般的な発電機に用いる構成を採用することができる。
また、本発明に係る発電部としては、コイルがケース102の中間部115に固定され、磁石が、第1の回転軸103に固定されていてもよい。また、本発明に係る発電部としては、直流を出力するものであってもよい。この場合は、スリップリングに替えて整流子を用いる。
[第1内歯車]
次に、第1内歯車105について説明する。
図1及び図2に示すように、第1内歯車105は、円形の外周部を有する第1内側筒131と、第1内側筒131の外周部に取り付けられた複数の第1磁石片132とを備えている。
第1内側筒131は、第1の回転軸103が嵌合される円形の筒孔131aを有する円筒状に形成されている。つまり、第1内歯車105は、第1の回転軸103と同軸に連結されている。第1内側筒131は、例えば、電磁鋼板、電磁軟鉄などの磁性材料からなる板状の複数のリング部材133を積層することにより形成されている(図13参照)。
複数のリング部材133は、カシメ、溶接、接着剤などの固着方法により固着されて一体成形されている。このように、磁性材料からなる複数のリング部材133を積層して第1内側筒131を形成することにより、第1内側筒131の軸方向に流れる渦電流を遮断することができる。そのため、第1内側筒131は、磁性材料からなる複数のリング部材133を積層して形成することが好ましい。
複数の第1磁石片132は、それぞれ第1内側筒131(筒孔131a)の軸方向に長い略長方形の板状に形成された永久磁石である。これら複数の第1磁石片132は、第2内歯車106の後述する複数の第2磁石片142と対向している。
複数の第1磁石片132は、第1内側筒131の径方向に磁化されている。そして、複数の第1磁石片132は、磁化された方向が互いに反対である複数の第1磁石片132A,132Bから構成されている。
第1磁石片132Aと第1磁石片132Bは、第1内側筒131の外周部に沿って交互に並べられている。つまり、複数の第1磁石片132A,132Bは、異なる磁極が第1内側筒131の周方向に沿って隣り合うように並べられている。第1磁石片132Aは、第1内側筒131側がN極であり、第2内歯車106の後述する第2磁石片142側がS極である。一方、第1磁石片132Bは、第1内側筒131側がS極であり、第2磁石片142側がN極である。
[第2内歯車]
次に、第2内歯車106について図13及び図14を参照して説明する。
図13及び図14に示すように、第2内歯車106は、第1内歯車105が配置される筒孔141aを有する第2内側筒141と、第2内側筒141の内周部に取り付けられた複数の第2磁石片142と、第2内側筒141の外周部に取り付けられた複数の第3磁石片143とを備えている。
第2内側筒141は、軸受121,125に固定されており、第1の回転軸103及び第1内歯車105と同軸に配置されている。つまり、第2内歯車106は、軸受121,125を用いて中間部115及び第2の回転軸104に回転可能に支持されている。
第2内側筒141は、例えば、電磁鋼板、電磁軟鉄などの磁性材料からなる板状の複数のリング部材不図示を積層することにより形成されている。これにより、第2内側筒がヨークとなり、高磁束密度を得ることができる。
複数の第2磁石片142は、それぞれ第2内側筒141(筒孔141a)の軸方向に長い略長方形の板状に形成された永久磁石である。これら複数の第2磁石片142は、第1内歯車105の複数の第1磁石片132と対向している。複数の第2磁石片142の個数は、複数の第1磁石片132の個数よりも多く設定されている。
第1内歯車105の回転は、複数の第1磁石片132と複数の第1磁性歯部108との間、及び複数の第2磁石片142と複数の第1磁性歯部108との間に生じる磁気吸引力により、第2内歯車106に伝達される。したがって、複数の第2磁石片142の個数を複数の第1磁石片132の個数よりも多くすることにより、第1内歯車105の回転角度に対する第2内歯車106の回転角度を小さくすることができる。その結果、第2内歯車106の回転速度を、第1内歯車105の回転速度に対して減速させることができる。
複数の第2磁石片142は、それぞれ第2内側筒141の径方向に磁化されている。そして、複数の第2磁石片142は、磁化された方向が互いに反対である複数の第2磁石片142A,142Bから構成されている。
第2磁石片142Aと第2磁石片142Bは、第2内側筒141の内周部に沿って交互に並べられている。つまり、複数の第2磁石片142A,142Bは、異なる磁極が第2内側筒141の内周部に沿って隣り合うように並べられている。第2磁石片142Aは、第2内側筒141側がS極であり、第1磁石片132側がN極である。一方、第2磁石片142Bは、第2内側筒141側がN極であり、第1磁石片132側がS極である。
複数の第3磁石片143は、それぞれ第2内側筒141(筒孔141a)の軸方向に長い略長方形の板状に形成された永久磁石である。これら複数の第3磁石片143は、外歯車107の後述する複数の第4磁石片152に対向している。
複数の第3磁石片143は、それぞれ第2内側筒141の径方向に磁化されている。そして、複数の第3磁石片143は、磁化された方向が互いに反対である複数の第3磁石片143A,143Bから構成されている。
第3磁石片143Aと第3磁石片143Bは、第2内側筒141の外周部に沿って交互に並べられている。つまり、複数の第3磁石片143A,143Bは、異なる磁極が第2内側筒141の外周部に沿って隣り合うように並べられている。第3磁石片143Aは、第2内側筒141側がS極であり、外歯車107の後述する第4磁石片152側がN極である。一方、第3磁石片143Bは、第2内側筒141側がN極であり、外歯車107の第4磁石片152側がS極である。
[外歯車]
次に、外歯車107について図13及び図14を参照して説明する。
図13及び図14に示すように、外歯車107は、第2内歯車106が配置される筒孔151aを有する外側筒151と、外側筒151の内周部に取り付けられた複数の第4磁石片152とを備えている。
外側筒151は、ケース102における外装筒114の内周部に固定されており、第1の回転軸103、第1内歯車105及び第2内歯車106と同軸に配置されている。外側筒151は、例えば、電磁鋼板、電磁軟鉄などの磁性材料からなる板状の複数のリング部材153を積層することにより形成されている(図13参照)。
複数のリング部材153は、カシメ、溶接、接着剤などの固着方法により固着されて一体成形されている。このように、磁性材料からなる複数のリング部材153を積層して外側筒151を形成することにより、外側筒151の軸方向に流れる渦電流を遮断することができる。そのため、外側筒151は、磁性材料からなる複数のリング部材153を積層して形成することが好ましい。
複数の第4磁石片152は、それぞれ外側筒151(筒孔151a)の軸方向に長い略長方形の板状に形成された永久磁石である。これら複数の第4磁石片152は、第2内歯車106の複数の第3磁石片143と対向している。複数の第4磁石片152の個数は、複数の第3磁石片143の個数よりも多く設定されている。
第2内歯車106の回転は、複数の第3磁石片143と複数の第2磁性歯部109との間、及び複数の第4磁石片152と複数の第2磁性歯部109との間に生じる磁気吸引力により、第2の回転軸104(複数の第2磁性歯部109)に伝達される。したがって、複数の第4磁石片152の個数を複数の第3磁石片143の個数よりも多くすることにより、第2内歯車106の回転角度に対する第2の回転軸104の回転角度を小さくすることができる。その結果、第2の回転軸104の回転速度を、第2内歯車106の回転速度に対して減速させることができる。
複数の第4磁石片152は、外側筒151の径方向に磁化されている。そして、複数の第4磁石片152は、磁化された方向が互いに反対である複数の第4磁石片152A,152Bから構成されている。
第4磁石片152Aと第4磁石片152Bは、外側筒151の内周部に沿って交互に並べられている。つまり、複数の第4磁石片152A,152Bは、異なる磁極が外側筒151の内周部に沿って隣り合うように並べられている。第4磁石片152Aは、外側筒151側がN極であり、第3磁石片143側がS極である。一方、第4磁石片152Bは、外側筒151側がS極であり、第3磁石片143側がN極である。
[第1磁性歯部]
次に、複数の第1磁性歯部108について図13及び図14を参照して説明する。
図13に示すように、複数の第1磁性歯部108は、ケース102の中間部115に取り付けられており、第1内歯車105の複数の第1磁石片132と、第2内歯車106の複数の第2磁石片142との間に配置されている。
複数の第1磁性歯部108は、第1の回転軸103の周方向に沿って所定の間隔をあけて並んでいる。複数の第1磁性歯部108は、第1の回転軸103の軸方向と平行な方向に延びる略棒状に形成されている。第1磁性歯部108は、板状の複数の磁性片161(図13参照)を長手方向(第1の回転軸103の軸方向に平行な方向)に積層することにより形成されている。この磁性片161の材料としては、例えば、電磁鋼板を挙げることができる。
後述するように、本実施の形態の増速部1では、第1内歯車105と第2内歯車106が互いに反対方向に回転する。したがって、第1磁性歯部108を1つの磁性材料によって棒状に形成すると、磁性歯部に渦電流が発生する。そして、磁性歯部に渦電流が発生すると、レンツの法則により第1内歯車105及び第2内歯車106の回転に抗する電磁ブレーキが生じてトルク損失となる。
そこで、本実施の形態では、複数の磁性片161を積層して第1磁性歯部108を形成し、渦電流が第1磁性歯部108の長手方向に流れることを遮断している。
複数の第1磁性歯部108の長手方向の一端部は、中間部115に接合されている。また、複数の第1磁性歯部108の長手方向の他端部には、環状部材162が接合されている(図1参照)。環状部材162は、非磁性材料により形成されており、複数の第1磁性歯部108における他端部の変位を拘束する。これにより、複数の第1磁性歯部108の強度を高めることができると共に、複数の第1磁性歯部108の振動を抑制あるいは防止することができる。
環状部材162の材料としては、合成樹脂が好ましい。環状部材162と第1磁性歯部108との接合は、例えば、接着剤を用いてもよく、樹脂と金属の一体成形で接合してもよい。また、第1磁性歯部108と第1蓋部116との接合は、例えば、接着剤を用いてもよく、カシメ、溶接などの固着方法を用いてもよい。
[第2磁性歯部]
次に、複数の第2磁性歯部109について図13及び図14を参照して説明する。
図13及び図14に示すように、複数の第2磁性歯部109は、第2の回転軸104に取り付けられており、第2内歯車106の複数の第3磁石片143と、外歯車107の複数の第4磁石片152との間に配置されている。
複数の第2磁性歯部109は、第2の回転軸104の周方向に沿って所定の間隔をあけて並んでいる。複数の第2磁性歯部109は、第2の回転軸104の軸方向と平行な方向に延びる略棒状に形成されている。第2磁性歯部109は、板状の複数の磁性片165(図13参照)を長手方向(第1の回転軸103の軸方向に平行な方向)に積層することにより形成されている。この磁性片165の材料としては、例えば、電磁鋼板を挙げることができる。
後述するように、本実施の形態の増速部101では、第2内歯車106と複数の第2磁性歯部109が互いに反対方向に回転する。したがって、第2磁性歯部109を1つの磁性材料によって棒状に形成すると、磁性歯部に渦電流が発生する。そして、磁性歯部に渦電流が発生すると、レンツの法則により第2内歯車106と第2磁性歯部109の回転に抗する電磁ブレーキが生じてトルク損失となる。
そこで、本実施の形態では、複数の磁性片165を積層して第2磁性歯部109を形成し、渦電流が第2磁性歯部109の長手方向に流れることを遮断している。
第2磁性歯部109の長手方向の一端部には、環状部材166が接合されている(図13参照)。環状部材166は、第1磁性歯部108に接合した環状部材162と同様に、非磁性材料により形成されており、複数の第2磁性歯部109における一端部の変位を拘束する。これにより、複数の第2磁性歯部109の強度を高めることができると共に、複数の第2磁性歯部109の振動を抑制あるいは防止することができる。
また、複数の第2磁性歯部109の長手方向の他端部には、ブラケット167が接合されている。このブラケット167は、非磁性材料によって円環状に形成されている。ブラケット167の軸方向の一方の面には、複数の第2磁性歯部109が接合されており、他方の面は第2の回転軸104に固定されている。つまり、複数の第2磁性歯部109は、ブラケット167を介して第2の回転軸104に取り付けられている。
環状部材166及びブラケット167の材料としては、合成樹脂が好ましい。環状部材166及びブラケット167と第2磁性歯部109との接合は、例えば、接着剤を用いてもよく、樹脂と金属の一体成形で接合してもよい。
4.発電装置の第2の実施形態の動作
次に、発電装置210の動作について説明する。
まず、第2の回転軸4(第2磁性歯部109)の回転に応じた第2内歯車106の回転について、図15〜図18を参照して説明する。
図15は、第2磁性歯部109A,109B,109Cの中央部が、第1の回転軸103の径方向において外歯車107の第4磁石片152Aa,152Ab,152Acの中央部に一致した状態の説明図である。
図15に示す状態では、第2内歯車106の第3磁石片143Aa,143Ab,143Acの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第2磁性歯部109A,109B,109Cの中央部に一致している。図15に示す状態の第2磁性歯部109A,109B,109Cに注目すると、第3磁石片143Aa,143Ab,143Acの中央部に対向する側がS極となり、反対側がN極となっている。そして、第2磁性歯部109A,109B,109CのN極は、第4磁石片152Aa,152Ab,152AcのS極に対向している。
したがって、第2磁性歯部109Aと第4磁石片152Aaとの間、第2磁性歯部109Bと第4磁石片152Abとの間、及び第2磁性歯部109Cと第4磁石片152Acとの間に生じる磁気吸引力は、半径方向のみならず周方向にも釣り合っている。また、第2磁性歯部109Aと第3磁石片143Aaとの間、第2磁性歯部109Bと第3磁石片143Abとの間、及び第2磁性歯部109Cと第3磁石片143Acとの間に生じる磁気吸引力は、半径方向のみならず周方向にも釣り合っている。
図15に示す状態から第2の回転軸104(図13参照)が矢印R1方向に回転すると、第2の回転軸104と共に複数の第2磁性歯部109が矢印R1方向に回転する。そして、第2磁性歯部109D,109E,109Fの中央部が、第1の回転軸103の径方向において外歯車107の第4磁石片152Ba,52Bb,52Bcの中央部に一致する。
なお、矢印R1方向は、第1の回転軸103の軸心を中心とした回転方向である。
図16は、第2磁性歯部109D〜109Fの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第4磁石片152Ba〜52Bcの中央部と一致した状態の説明図である。
第2磁性歯部109D〜109Fの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第4磁石片152Ba〜52Bcの中央部に一致すると、第3磁石片143Ba〜143Bcと第2磁性歯部109D〜109Fとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。これにより、第3磁石片143Ba〜143Bcと第2磁性歯部109D〜109Fとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、第2内歯車106が矢印R2方向に回転し、第3磁石片143Ba〜143Bcの中央部が、第1の回転軸103の径方向において、第2磁性歯部109D〜109Fの中央部に一致する。その結果、増速部101は、図16に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
なお、矢印R2方向は、矢印R1方向と同じ方向である。
図16に示す状態から第2磁性歯部109(第2の回転軸104)が矢印R1方向に回転すると、第2磁性歯部109G,109H,109Iの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第4磁石片152Ad,152Ae,152Afの中央部に一致する。
図17は、第2磁性歯部109G〜109Iの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第4磁石片152Ad〜152Afの中央部と一致した状態の説明図である。
第2磁性歯部109G〜109Iの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第4磁石片152Ad〜152Afの中央部に一致すると、第3磁石片143Aa〜143Acと第2磁性歯部109G〜109Iとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。これにより、第3磁石片143Aa〜143Acと第2磁性歯部109G〜109Iとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、第2内歯車106が矢印R2方向に回転し、第3磁石片143Aa〜143Acの中央部が、第1の回転軸103の径方向において、第2磁性歯部109G〜109Iの中央部に一致する。その結果、増速部101は、図17に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
図17に示す状態から第2磁性歯部109(第2の回転軸104)が矢印R1方向に回転すると、第2磁性歯部109J,109K,109Lの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第4磁石片152Bd,152Be,152Bfの中央部に一致する。
図18は、第2磁性歯部109J〜109Lの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第4磁石片152Bd〜152Bfの中央部と一致した状態の説明図である。
第2磁性歯部109J〜109Lの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第4磁石片152Bd〜152Bfの中央部に一致すると、第3磁石片143Ba〜143Bcと第2磁性歯部109J〜109Lとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。これにより、第3磁石片143Ba〜143Bcと第2磁性歯部109J〜109Lとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、第2内歯車106が矢印R2方向に回転し、第3磁石片143Ba〜143Bcの中央部が、第1の回転軸103の径方向において、第2磁性歯部109J〜109Lの中央部に一致する。その結果、増速部101は、図18に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
図15に示す状態から図17に示す状態になるまでに、第2内歯車106は、矢印R2方向へ複数の第2磁性歯部109における1ピッチ角度だけ回転する。このとき、複数の第2磁性歯部109は、複数の第2磁性歯部109における1ピッチ角度よりも小さい角度(本例では、第2磁性歯部109の1ピッチ角度の1/6程度)だけ矢印R1方向へ回転する。したがって、第2内歯車106の回転は、複数の第2磁性歯部109が固定された第2の回転軸104の回転に対して増速される。
次に、第2内歯車106の回転に応じた第1内歯車105(第1の回転軸103)の回転について、図19〜図22を参照して説明する。
図19は、第2内歯車106における第2磁石片142Aa,142Ab,142Acの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108A,108B,108Cの中央部に一致した状態の説明図である。なお、図19に示す状態は、図15に示す状態と同じである。
図19に示す状態では、第1内歯車105の第1磁石片132Aa,132Ab,132Acの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108A,108B,108Cの中央部に一致している。図19に示す状態の第1磁性歯部108A〜108Cに注目すると、第2磁石片142Aa〜142Acの中央部に対向する側がS極となり、反対側がN極となっている。そして、第1磁性歯部108A〜108CのN極は、第1内歯車105の第1磁石片132Aa〜132AcのS極に対向している。
したがって、第1磁性歯部108Aと第2磁石片142Aaとの間、第1磁性歯部108Bと第2磁石片142Abとの間、及び第1磁性歯部108Cと第2磁石片142Acとの間に生じる磁気吸引力は、半径方向のみならず周方向にも釣り合っている。また、第1磁石片132Aaと第1磁性歯部108Aとの間、第1磁石片132Abと第1磁性歯部108Bとの間、及び第1磁石片132Acと第1磁性歯部108Cとの間に生じる磁気吸引力は、半径方向のみならず周方向にも釣り合っている。
図19に示す状態から複数の第2磁性歯部109(第2の回転軸104)が矢印R3方向に回転すると、第2内歯車106が矢印R2方向に回転する。そして、第2内歯車106の第2磁石片142Ba,142Bb,142Bcの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108D,108E,108Fの中央部と一致する。
図20は、第2内歯車106における第2磁石片142Ba〜142Bcの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108D〜8Fの中央部と一致した状態の説明図である。
第2磁石片142Ba〜142Bcの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108D〜108Fの中央部に一致すると、第1磁性歯部108D〜108Fにおける第2磁石片142Ba〜142Bcに対向する側がN極となり、反対側がS極となる。
これにより、第1内歯車105の第1磁石片132Ba,132Bb,132Bcと第1磁性歯部108D,108E,108Fとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。そして、第1磁性歯部108Dと第1磁石片132Baとの間、第1磁性歯部108Eと第1磁石片132Bbとの間、第1磁性歯部108Fと第1磁石片132Bcとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、第1内歯車105(第1の回転軸103)が矢印R3方向に回転し、第1磁石片132Ba〜132Bcの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108D〜108Fの中央部に一致する。その結果、増速部101は、図20に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
なお、矢印R3方向は、第1の回転軸103の軸心を中心とした回転方向であり、矢印R2方向と反対の方向である。
図20に示す状態から第2内歯車106が矢印R2方向に回転すると、第2内歯車106の第2磁石片142Ad,142Ae,142Afの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108G,108H,108Iの中央部と一致する。
図21は、第2内歯車106における第2磁石片142Ad〜142Afの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108G〜108Iの中央部と一致した状態の説明図である。
第2磁石片142Ad〜142Afの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108G〜108Iの中央部に一致すると、第1磁性歯部108G〜108Iにおける第2磁石片142Ad〜142Afに対向する側がS極となり、反対側がN極となる。
これにより、第1内歯車105の第1磁石片132Aa,132Ab,132Acと第1磁性歯部108G,108H,108Iとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。そして、第1磁性歯部108Gと第1磁石片132Aaとの間、第1磁性歯部108Hと第1磁石片132Abとの間、第1磁性歯部108Iと第1磁石片132Acとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、第1内歯車105(第1の回転軸103)が矢印R3方向に回転し、第1磁石片132Aa〜132Acの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108G〜108Iの中央部に一致する。その結果、増速部101は、図21に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
図21に示す状態から第2内歯車106が矢印R2方向に回転すると、第2内歯車106の第2磁石片142Bd,142Be,142Bfの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108J,108K,108Lの中央部と一致する。
図22は、第2内歯車106における第2磁石片142Bd〜142Bfの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108J〜108Lの中央部と一致した状態の説明図である。
第2磁石片142Bd〜142Bfの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108J〜108Lの中央部に一致すると、第1磁性歯部108J〜108Lにおける第2磁石片142Bd〜142Bfに対向する側がN極となり、反対側がS極となる。
これにより、第1内歯車105の第1磁石片132Ba,132Bb,132Bcと第1磁性歯部108J,108K,108Lとの間に生じる磁気吸引力の釣り合いが崩れる。そして、第1磁性歯部108Jと第1磁石片132Baとの間、第1磁性歯部108Kと第1磁石片132Bbとの間、第1磁性歯部108Lと第1磁石片132Bcとの間には、周方向に作用する磁気吸引力が生じる。
したがって、第1内歯車105(第1の回転軸103)が矢印R3方向に回転し、第1磁石片132Ba〜132Bcの中央部が、第1の回転軸103の径方向において第1磁性歯部108J〜108Lの中央部に一致する。その結果、増速部101は、図22に示すように、磁気吸引力が釣り合った状態になる。
図19に示す状態から図21に示す状態になるまでに、第1内歯車105(第1の回転軸103)は、複数の第1磁性歯部108における1ピッチ角度だけ矢印R3方向へ回転する。このとき、第2内歯車106は、複数の第1磁性歯部108における1ピッチ角度よりも小さい角度(本例では、第1磁性歯部108の1ピッチ角度の1/6程度)だけ矢印R2方向へ回転する。したがって、第1内歯車105(第1の回転軸103)の回転は、第2内歯車106の回転に対して増速される。
本実施の形態の発電装置210では、羽根車208に接続された第2の回転軸104の回転が、複数の第2磁性歯部109から第2内歯車106に非接触で伝達される。このとき、第2内歯車106の回転速度は、第2の回転軸104の回転速度に対して増速される。また、第2内歯車106の回転は、第1内歯車105が取り付けられた第1の回転軸103に非接触で伝達される。このとき、第1の回転軸103の回転速度は、第2内歯車106に対して増速される。これにより、1組の歯車ユニット(例えば、ハイスピードロータとロースピードロータ)を備える発電装置よりも、増速比を大きくすることができる。
その結果、発電装置210では、機械式増速部(機械式歯車)を用いずに大きな増速比を確保することができ、羽根車208の回転速度が遅い場合でも発電を行うことができる。また、機械式増速部を用いる場合よりも機械効率を向上させることができると共に、増速部1の振動や騒音を小さくすることがでる。
また、本実施の形態の発電装置210では、複数の第1磁石片132よりも複数の第2磁石片142の個数を多くすると共に、複数の第3磁石片143よりも複数の第4磁石片152の個数を多くした。これにより、増速部101の増速比を高めることができる。したがって、発電に必要な増速比を確保することができ、かつ、小型化を図ることができる。
また、本実施の形態の発電装置210では、磁気吸引力を用いた歯車である増速部101を備えるため、トルクリミッタ機能を有する。そのため、羽根車208が過負荷で回転した場合に、増速部101の第2の回転軸104が空転することになり、発電装置210に破損が生じないようにすることができる。
また、発電装置で発生するトルクは、一般的に、歯車ユニットの径の長さに比例する。本実施の形態の発電装置210では、第1内歯車105、第2内歯車106、外歯車107の順に径が長くなるため、入力側となる第2の回転軸104のトルクを十分に確保することができる。
また、本実施の形態の増速部101は、筒状に形成された第1内歯車105、第2内歯車106及び外歯車107を第1の回転軸103の径方向に重ねる構造にした。そのため、増速部101は、第1の回転軸103に平行な方向に大型化することなく、増速比を大きくすることができる。
また、本実施の形態の発電装置210では、回転軸103,104の軸方向に磁気吸引力が発生せず、かつ回転軸103,104の径方向(ラジアル方向)の磁気吸引力のバランスが保たれる(釣り合った状態になる)。これにより、磁気吸引力によって作用する軸受荷重をキャンセルさせることができ、軸受摩擦を極端に小さくすることができる。
また、本実施の形態の増速部101では、第1内歯車105の第1内側筒131及び外歯車107の外側筒151を磁性材料によって形成した。これにより、複数の第1磁石片132A,132B及び複数の第4磁石片152A,52Bで第1内側筒131及び外側筒151の磁気モーメントを揃えて、大きな表面磁束密度を得ることができる。
また、本実施の形態の増速部101では、第2内歯車106が第1内歯車105と外歯車107との間に配置され、複数の第2磁性歯部109が取り付けられた第2の回転軸104の回転を第1内歯車105(第1の回転軸103)に伝える。これにより、第2内側筒141が第2内歯車106の出力軸と第1内歯車105の入力軸を兼ねる構成となるため、部品点数を削減することができる。
本実施の形態の増速部101では、第1内歯車105から第2内歯車106に、又は第2内歯車106から第1内歯車105に第1磁性歯部108を介して磁場が作用する。また、第2内歯車106から外歯車107に、又は外歯車107から第2内歯車106に第2磁性歯部109を介して磁場が作用する。そこで、増速部101は、第1内側筒131及び外側筒151を磁性材料からなる複数の板状部材を積層して形成する構成とした。これにより、第1内側筒131及び外側筒151の軸方向に流れる渦電流を遮断して、トルク損失(渦電流損)を軽減することができる。
5.発電装置の第3の実施形態の構成
次に、本発明の発電装置の第3の実施形態の構成について、図23及び図24を参照して説明する。
図23は、本発明の発電装置の第3の実施形態の断面図である。図24は、図23に示すE−E線に沿う断面図である。
第3の実施形態の発電装置310は、第2の実施形態の発電装置210(図13参照)と同様の構成を有している。発電装置310の発電装置210と異なる構成は、ケース302と、第2の回転軸304と、外歯車307である。そのため、ここでは、ケース302、第2の回転軸304、外歯車307について説明する。
図23及び図24に示すように、発電装置310は、羽根車208と、羽根車208の回転を増速させる増速部(磁気歯車)301と、増速部301によって増速された回転を用いて発電する発電部209と、ケース302とを備える。
増速部301は、第1の回転軸103と、第2の回転軸304と、第1内歯車105と、第2内歯車106と、外歯車307とを備えている。第1の回転軸103には、第1内歯車105が固定され、第2の回転軸304には、外歯車307が固定されている。
第1の回転軸103、第1内歯車105及び第2内歯車106は、第2の実施形態の増速部101に適用したものと同じである。
[ケース]
次に、ケース302について説明する。
図23に示すように、ケース302は、中空部を有する箱状のケース本体311と、ケース本体311の内部に配置された軸支持部312、第1ステータ部308及び第2ステータ部308とを有している。ケース本体311は、両端が開口された円筒状の筒部314と、筒部314の一方の端部に接合される略筒状の中間部315と、中間部315の開口を塞ぐ第1蓋部316と、筒部314の他方の開口を塞ぐ第2蓋部317から構成されている。
中間部315は、筒部314と同軸の筒状に形成された中間部本体315aと、中間部本体315aの内周面から突出する固定片315bとを有している。中間部本体315aの軸方向の一端部は、第1蓋部316に接合され、他端部は、筒部314の軸方向の一端部に接合されている。また、中間部本体315aの内周部には、発電部209の磁石227が固定されている。
固定片315bは、筒部314及び中間部本体315aと同軸のリング状に形成されている。この固定片315bには、第1の回転軸103が貫通する貫通孔と、軸受取り付け部315cが設けられている。軸受取り付け部315cは、固定片315bの第2蓋部117に対向する面に設けられている。
軸受取り付け部315cは、中間部315における貫通孔の周囲に形成された円形の凹部である。この軸受取り付け部315cには、軸受321が取り付けられる。そして、軸受321には、第2内歯車106が固定されている。
また、固定片315bの第2蓋部317に対向する面には、第1ステータ部308と、第2ステータ部309が固定されている。第1ステータ部308は、貫通孔と軸受取り付け部315cとの間に配置されている。第2ステータ部309は、軸受取り付け部315cの周囲を囲うように配置されており、固定片315bに液密又は気密に接合されている。
第1蓋部316は、適当な厚みを有する板状に形成されており、筒部314の軸方向に略直交する2つの平面を有している。この第1蓋部316は、中間部本体315aの軸方向の一端部に液密又は気密に接合されている。また、第1蓋部316には、第1の回転軸103が貫通する貫通孔と、軸受取り付け部316aが設けられている。
軸受取り付け部316aは、第1蓋部316の第2蓋部317に対向する面に設けられている。軸受取り付け部316aは、第1蓋部316における貫通孔の周囲に形成された円形の凹部である。この軸受取り付け部316aには、軸受322が取り付けられる。そして、軸受322には、第1の回転軸103が固定されている。
第2蓋部317は、適当な厚みを有する板状に形成されており、筒部314の軸方向に略直交する2つの平面を有している。この第2蓋部317は、筒部314の軸方向の他端部に接合されている。また、第2蓋部317には、第2の回転軸304が貫通する貫通孔と、軸受取り付け部317aが設けられている。
軸受取り付け部317aは、第2蓋部317の第1蓋部316に対向する面に設けられている。この軸受取り付け部317aは、第2蓋部317における貫通孔の周囲に形成された円形の凹部である。軸受取り付け部317aには、軸受323が取り付けられる。そして、軸受323には、第2の回転軸304が固定されている。
軸支持部312は、筒部314の内部において第1蓋部316と第2蓋部317の中間よりも第2蓋部317側に配置されている。この軸支持部312は、適当な厚みを有する円板状に形成されており、第1蓋部316に対向する第1平面312aと、第2蓋部317に対向する第2平面312bとを有している。
軸支持部312の第1平面12aには、軸受用突部312cが設けられている。この軸受用突部312cには、軸受324が配置される凹部が設けられている。軸受324は、軸受用突部312cに固定されており、第1の回転軸103を回転可能に支持する。また、軸受用突部312cの外周部には、軸受325が固定されている。この軸受325は、第2内歯車106を回転可能に支持する。
軸支持部312の第2平面312bには、それぞれ凹部が設けられている。この凹部には、軸受326が配置されている。この軸受326は、軸支持部312に固定されており、第2の回転軸304を回転可能に支持する。
第1ステータ部308及び第2ステータ部309は、略円筒状に形成されている。ステータ部308の軸方向の一端部は、第1蓋部315の第2蓋部317に対向する面に接合されている。この第1ステータ部308は、第1内歯車5の複数の第1磁石片32A,32Bと第2内歯車6の第2磁石片42A,42Bとの間に配置されている。
第2ステータ部309の軸方向の一端部は、第1蓋部315の第2蓋部317に対向する面に液密又は気密に接合されている。また、第2ステータ部309の他端部は、軸支持部312に嵌合され、軸支持部312と液密又は気密に接合されている。この第2ステータ部309は、第2内歯車6の第3磁石片43A,43Bと外歯車7の第4磁石片52A,52Bとの間に配置されている。
軸支持部312、第2ステータ部309、中間部315は、ケース本体311の内部空間を第1収納室318と、第2収納室319に区画する。これら第1収納室318と第2収納室319は、互いに液密又は気密に遮断されている。
第1収納室318は、軸支持部312、第2ステータ部309、中間部315及び第1蓋部316に囲まれた空間であり、第2収納室319は、軸支持部312、第2ステータ部309、筒部314、中間部315及び第2蓋部317に囲まれた空間である。第1収納室318には第1内歯車105、第2内歯車106及び発電部209が配置され、第2収納室319には外歯車307が配置されている。そして、第1収納室318に配置された第2内歯車106と、第2収納室319に配置された外歯車307との間には、第2ステータ部309が介在されている。
ケース本体311(筒部314、中間部315、第1蓋部316及び第2蓋部317)と、軸支持部312は、防錆および磁束漏れを防止のため、腐食に強い非磁性材料によって形成することが望ましい。これらケース本体311及び軸支持部312の材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、銅等の金属、又は合成樹脂を挙げることができる。
第1ステータ部308は、第2の実施形態の第1磁性歯部108と、環状部材162から構成されている。また、第2ステータ部309は、第1の実施の形態のステータ部13と同じ構成である。
[第2の回転軸]
次に、第2の回転軸304について説明する。
第2の回転軸304は、防錆および磁束漏れを防止のため、ケース本体311と同様に、腐食に強い非磁性材料から形成することが望ましい。図23に示すように、第1の回転軸103の軸心及び第2の回転軸304の軸心は、第1蓋部316と第2蓋部317が対向する方向と平行であって、互いに一致している。
第2の回転軸304は、第1軸部304aと、第1軸部304aの先端に設けられた円板部304bと、円板部304bの第1軸部304aと反対側に設けられた第2軸部304cから構成されている。第1軸部304aは、第2蓋部317を貫通しており、軸受323によって第2蓋部317に回転可能に取り付けられている。この第1軸部304aには、羽根車208が挿入される嵌合穴304dが形成されている。羽根車208は、第1軸部304aに嵌合することによって、第2の回転軸304に同軸に接続されている。
第2の回転軸304の円板部304bには、外歯車307が連結されており、第2の回転軸304と外歯車307とが同軸に配設されている。また、第2軸部304cの軸心は、第1軸部304aの軸心と一致している。この第2軸部304cは、軸受326によって軸支持部312に回転可能に取り付けられている。
軸受321,322,323,324,325及び326は、それぞれ転動体321a,322a,323a,324a,325a及び326aを有する転がり軸受(ボールベアリング)である。第1の回転軸103を回転可能に支持する軸受322,324と、第2内歯車106を回転可能に支持する軸受321,325は、潤滑剤を用いた金属製の軸受を適用することが好ましい。この金属製の軸受は、第1の回転軸103の高速回転に耐える強度を有する。
一方、第2の回転軸304を回転可能に支持する軸受323,326は、潤滑剤を使用しない樹脂製やセラミック製の軸受を適用することが好ましい。これにより、オイルミストの発生を防止して、第2の回転軸304及び外歯車307が配置される第2収納室319と、第2収納室319に連通する領域を清潔な空間にすることができる。
[外歯車]
外歯車307は、第2の回転軸304の円板部304bに固定された外側筒31と、外側筒31の内周部に取り付けられた複数の第4磁石片152から構成されている。
外側筒31は、第1の実施形態に係る増速部1に適用したもの同じである。また、複数の第4磁石片152は、第2の実施形態に係る増速部101に適用したものと同じであり、磁化された方向が互いに反対である複数の第4磁石片152A,152Bから構成されている。
6.発電装置の第3の実施形態の動作
本実施の形態の発電装置310では、羽根車208に接続された第2の回転軸304の回転が、外歯車307から第2内歯車106に非接触で伝達される。このとき、第2内歯車106の回転速度は、第2の回転軸104の回転速度に対して増速される。また、第2内歯車106の回転は、第1内歯車105が取り付けられた第1の回転軸103に非接触で伝達される。このとき、第1の回転軸103の回転速度は、第2内歯車106に対して増速される。これにより、1組の歯車ユニット(例えば、ハイスピードロータとロースピードロータ)を備える発電装置よりも、増速比を大きくすることができる。
その結果、発電装置310では、機械式増速部(機械式歯車)を用いずに大きな増速比を確保することができ、羽根車208の回転速度が遅い場合でも発電を行うことができる。また、機械式増速部を用いる場合よりも機械効率を向上させることができると共に、増速部301の振動や騒音を小さくすることがでる。
また、本実施の形態の発電装置310では、第1内歯車105、第2内歯車106及び発電部209が配置される第1収納室318と、外歯車307が配置される第2収納室319とを遮断して区画するケース2を備えている。第1の回転軸103は、第1内歯車105の内側筒141に接続され、第2の回転軸304は、外歯車307の外側筒31に接続されている。そして、第2内歯車106の第3磁石片143A,143Bと外歯車307の第4磁石片152A,152Bは、ケース302の第2ステータ部309を介して対向している。
これにより、外歯車307及び第2の回転軸304が配置される側(例えば、入力側)と、第1内歯車105,第2内歯車106及び第1の回転軸103が配置される側(例えば、出力側)との間で気体や液体が出入りすることを防止することができる。したがって、環状パッキンを回転軸103,304に取り付けて入力側と出力側との間をシールする必要が無い。これにより、第1及び第2の回転軸103,304の回転損失を小さくすることができ、機械効率を向上させることができる。そして、外歯車307、第1内歯車105及び第2内歯車106は非接触で回転を伝達するため、磨耗することが無い。したがって、増速部301は、半永久的にメンテナンスを必要としない。
また、第1収納室318と第2収納室319とを遮断するケース302は、固定される部材である(回転する部分では無い)ため、第1収納室318と第2収納室319との間の気密性或いは液密性を容易に高めることができる。
7.変形例
以上、本発明の発電装置の実施の形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の発電装置は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述の第1の実施形態では、第1の回転軸3を挟んで対向する2つの内側磁石片を1組として、各組の内側磁石片における中央部を所定の磁性歯部55の中央部に内歯車6の径方向で順番に一致させる構成とした。しかしながら、本発明の発電装置としては、内側磁石片の中央部を1つずつ順番に磁性歯部55の中央部に一致させる構成であってもよい。
また、上述の第1の実施形態では、磁性歯部55に凹部59を設けて、磁性歯部55がステータ部13の径方向にずれて補強部56から外れないようにした。しかし、本発明に係る磁性歯部としては、隣り合う磁性歯部に向かって突出する突部が形成されていてもよい。これにより、磁性歯部の突部が補強部に入り込むため、磁性歯部がステータ部の径方向にずれて補強部から外れないようにすることができる。
また、磁性歯部に形成する突部の形状としては、例えば、磁性歯部の長手方向に延びる突条にしてもよい。しかし、磁性歯部に形成する突部としては、突条に限定されるものではなく、形状を適宜設定できる。例えば、突起を有する磁性部材61と、突起を有していない磁性部材を交互に積層することにより磁性歯部を形成してもよい。
また、上述の第1の実施形態では、磁性片63を第1及び第2の回転軸3,4の軸方向に積層してステータ部13の磁性歯部55を形成した。また、上述の第2の実施形態では、磁性片161を第1の回転軸103の軸方向に積層して第1磁性歯部108を形成し、磁性片165を第1の回転軸103の軸方向に積層して第2磁性歯部109を形成した。しかし、本発明に係る磁性歯部は、磁性片を積層して形成することに限定されるものではなく、1つの棒状部材から形成してもよい。
また、上述の第1の実施形態では、円環状の複数の磁性部材61をその軸方に積層して磁性歯部55を形成した。しかし、本発明に係る磁性歯部としては、複数の磁性部材61を周方向に徐々にずらしながらその軸方に積層して形成してもよい。この場合は、磁性歯部がステータ部の軸方向に対してスキューされる。すなわち、磁性歯部は、ステータ部の中心軸回りに回転するように捻れた形状になる。
これにより、磁気回路がステータ部の周方向にずれて配置され、磁性歯部を通る磁束の急激な変化を抑制することができる。また、ステータ部と、外歯車の外側磁石片及び内歯車の内側磁石片との引力及び斥力を小さく抑えることができる。その結果、増速部のコギングトルクを小さくすることができる。
また、上述の第1の実施形態では、外側筒31及び内側筒41を円筒状に形成した。しかしながら、本発明に係る外側筒は、円形の筒孔を有していればよく、外径は三角形や四角形などの多角形にしてもよい。また、本発明に係る内側筒は、円形の外周部を有していればよく、筒孔は三角形や四角形などの多角形であってもよい。
また、上述の第1の実施形態では、複数の板状部材を積層することにより、外側筒31及び内側筒41を形成した。しかしながら、本発明に係る外側筒及び内側筒は、板状部材を積層して形成することに限定されず、例えば、一様な円筒部材であってもよく、また、2つ以上の筒状部材を軸方向に接合して形成してもよい。
また、上述の第1の実施形態では、外歯車5に外側磁石片32A,32Bを設け、内歯車6に内側磁石片42A,42Bを設ける構成とした。また、上述の第2の実施形態では、第1内側筒131、第2内側筒141及び外側筒151を円筒状に形成した。しかし、本発明に係る磁石片としては、磁束が集中する磁束収束部を有するものであってもよい。このような構成にすることにより、各歯車間に生じる磁気吸引力を増大させることができる。その結果、大きな伝達トルクを得ることができ、かつ、機械効率を向上させることができる。
上述の第2及び第3の実施形態では、第1内側筒131の周方向に沿って1つ置きに配置された3つの第1磁石片132を1組とした。そして、各組の第1磁石片132における中央部を第1の回転軸103の径方向において所定の第1磁性歯部108の中央部に順番に一致させる構成とした。しかしながら、本発明に係る増速部としては、第1磁石片の中央部を1つずつ順番に第1磁性歯部108の中央部に一致させる構成であってもよい。また、2つの第1磁石片を1組としてもよく、4つ以上の第1磁石片を1組としてもよい。
また、上述の第2及び第3の実施形態では、第2内側筒141の周方向に沿って1つ置きに配置された3つの第3磁石片143を1組とした。そして、各組の第3磁石片143における中央部を第1の回転軸103の径方向において所定の第4磁石片152の中央部に順番に一致させる構成とした。しかしながら、本発明の増速部としては、第3磁石片の中央部を1つずつ順番に第4磁石片152の中央部に一致させる構成であってもよい。また、2つの第3磁石片を1組としてもよく、4つ以上の第3磁石片を1組としてもよい。
また、上述の第2の実施形態では、第1内側筒131、第2内側筒141及び外側筒151を円筒状に形成した。しかしながら、本発明に係る外側筒は、第2内歯車が配置される円形の筒孔を有していればよく、外径は三角形や四角形などの多角形にしてもよい。また、本発明に係る第1内側筒は、円形の外周部を有していればよく、筒孔は三角形や四角形などの多角形であってもよい。
上述の第2の実施形態では、第1内歯車105と、第2内歯車106と、外歯車107を備える構成とした。また、上述の第3の実施形態では、第1内歯車105と、第2内歯車106と、外歯車307を備える構成とした。しかしながら、本発明に係る増速部としては、複数の磁石片が取り付けられた4つ以上の歯車を第1の回転軸の径方向に重ね合わせる構成にしてもよい。
つまり、本発明に係る増速部は、第1の回転軸と、内歯車と、複数の中間歯車と、外歯車と、内側磁性歯部と、中間磁性歯部と、外側磁性歯部と、第2の回転軸とを備えていてもよい。
内歯車は、第1の回転軸に同軸に連結された内側筒と、内側筒の外周部に取り付けられた複数の磁石片とを有する。
複数の中間歯車は、内歯車が配置される筒孔を有する中間筒と、中間筒の内周部に取り付けられた複数の磁石片と、中間筒の外周部に取り付けられた複数の磁石片とを有し、第1の回転軸の径方向に間隙をあけて重ね合わされる。
外歯車は、複数の中間歯車が配置される筒孔を有する外側筒と、外側筒の内周部に取り付けられた複数の磁石片とを有する。
複数の内側磁性歯部は、内歯車と、複数の中間歯車のうちの最内周の中間歯車との間に配置される。
複数の中間磁性歯部は、複数の中間歯車間に配置される。
複数の外側磁性歯部は、複数の中間歯車のうちの最外周の中間歯車と、外歯車との間に配置される。
第2の回転軸には、複数の外側磁性歯部が固定される。