JP2014014882A - 工作機械の動特性算出装置および動特性算出方法 - Google Patents

工作機械の動特性算出装置および動特性算出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】容易にかつ高精度に、実際に使用する回転工具を含む振動系における動特性を測定することができる工作機械の動特性算出装置を提供する。
【解決手段】工作機械の動特性算出装置100は、回転工具6を回転しながら被加工物Wに対して相対移動して断続的な切削加工を行う工作機械の動特性を算出する。当該装置100は、回転工具6が加振された場合に、回転工具6の振動によって生じる音波または回転工具6の振動によって変化する磁気を検出する検出器102と、検出器102による検出値に基づいて、回転工具6の刃部6a,6bを振動体とする振動系における刃部6a,6bの固有振動数fを算出する固有振動数算出部103を備える。
【選択図】図6B

Description

本発明は、エンドミル等の回転工具により切削加工を行う工作機械において、回転工具の刃部を振動体とする振動系における回転工具の動特性を算出する装置および方法に関するものである。
エンドミルなどの回転工具による切削加工を高精度に行うために、工作機械の動特性を把握することは、適正な加工条件を決定するために重要である。特許文献1には、主軸にアンバランスマスタを装着して、当該アンバランスマスタの振れ量を検出し、主軸の動剛性を算出することが記載されている。また、特許文献2には、主軸または主軸に取り付けられた工具、疑似工具などの測定対象部を電磁石の磁気吸引力によって加振し、測定対象部の変位を測定して、主軸の動剛性を測定することが記載されている。当該文献には、変位センサとして、渦電流型変位センサ、インダクタンス型変位センサ、光電型変位センサ、静電容量型変位センサなどが記載されている。
特開2010−274375号公報 特開平11−19850号公報
ところで、近年、より高精度な切削加工を行うために、回転工具の小径化および突出量の長大化に伴い、切削加工中に回転工具のたわみ量が大きくなる。そのため、従来のように主軸自体の動剛性を測定するのみでは十分ではなく、実際に使用する回転工具を含む振動系における動特性を測定することが望まれる。そのため、疑似工具を取り付けた状態では、目的の動特性を得ることはできない。また、動特性をより容易に測定することも求められる。そのため、渦電流変位センサなどを用いた場合には、当該センサを高精度に位置決めしなければならず、設置に時間を要する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、容易にかつ高精度に、実際に使用する回転工具を含む振動系における動特性を測定することができる工作機械の動特性算出装置および動特性算出方法を提供することを目的とする。
そこで、発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、当業者が回転工具の振動は微小でかつ振動継続時間が短いため適用できるとは考えられていなかった音波検出器または磁気検出器を用いて、回転工具の振動状態を検出することによって動特性を得ることを見出した。
(請求項1)すなわち、本手段に係る工作機械の動特性算出装置は、1または複数の刃部を備える回転工具を用いて、当該回転工具を回転しながら被加工物に対して相対移動して断続的な切削加工を行う工作機械の動特性を算出する装置であって、前記回転工具が加振された場合に、前記回転工具の振動によって生じる音波または前記回転工具の振動によって変化する磁気を検出する検出器と、前記検出器による検出値に基づいて、前記回転工具の前記刃部を振動体とする振動系における前記刃部の固有振動数を算出する固有振動数算出部とを備える。
(請求項2)また、前記回転工具の加振は、前記工作機械の駆動装置を駆動して、前記工作機械に固定されたターゲット材と前記回転工具とを接触させることにより行ってもよい。
(請求項3)また、前記回転工具の加振は、前記回転工具を加工時とは逆回転に回転させた状態において、前記回転工具の前記刃部と前記ターゲット材とを接触させることにより行ってもよい。
(請求項4)また、前記回転工具は、主軸に装着された工具ホルダに取り付けられ、先端側に前記刃部を有し、基端側に非刃部を有し、前記回転工具の加振は、前記回転工具の前記非刃部と前記ターゲット材とを接触させることにより行ってもよい。
(請求項5)また、前記回転工具の加振は、前記回転工具を加工時と同じ方向に回転させた状態において、前記回転工具の前記非刃部と前記ターゲット材とを接触させることにより行ってもよい。
(請求項6)また、前記回転工具の加振は、人がハンマー材により前記回転工具を叩くことにより行ってもよい。
(請求項7)本手段に係る工作機械の動特性算出方法は、1または複数の刃部を備える回転工具を用いて、当該回転工具を回転しながら被加工物に対して相対移動して断続的な切削加工を行う工作機械の動特性を算出する方法であって、前記回転工具が加振された場合に、前記回転工具の振動によって生じる音波または前記回転工具の振動によって変化する磁気を検出する検出工程と、前記検出工程にて検出した検出値に基づいて、前記回転工具の前記刃部を振動体とする振動系における前記刃部の固有振動数を算出する固有振動数算出工程とを備える。
(請求項1,7)本手段によれば、検出された音波または磁気に基づいて、刃部の固有振動数を算出している。従って、断続的な切削加工によって回転工具の刃部が回転工具の基端部(根元側)に対してたわんで振動する場合に、刃部の固有振動数を用いて加工条件を決定することで、より高精度な切削加工を行うことができる。
さらに、回転工具の振動状態の検出には、回転工具が振動しているときの音波または磁気を検出する検出器を用いている。これらの検出器は、渦電流型変位センサなどに比べて、高精度な位置決めが不要である。そのため、熟練技術を要することなく、かつ、設置に要する時間を短縮できる。
(請求項2)工作機械の駆動装置を駆動することにより、回転工具とターゲット材とを接触させている。これにより、自動化を図ることができる。さらに、実際に使用する回転工具を加振することができるため、高精度な動特性を得ることができる。また、実際の切削加工の直前に行うことができるようになるため、実際の切削加工の状態における動特性を得ることができる。また、回転工具に付与する加振力を高精度に設定できるため、検出器により確実に検出できるように回転工具を振動させることができる。
(請求項3)回転工具を加工時とは逆回転に回転させるため、回転工具に接触させるターゲット材は切削加工されない。そのため、ターゲット材の消耗を抑制できる。
(請求項4)ターゲット材に接触させる部位を、刃部ではなく非刃部とすることで、刃部に与える影響をなくすことができる。その結果、刃部の寿命を向上できる。
(請求項5)回転工具を加工時と同じ方向に回転させた状態として、回転工具の非刃部とターゲット材とを接触させることで、より加工時に近い状態における動特性を得ることができる。
(請求項6)人がハンマーにより回転工具を叩いて回転工具を加振する場合には、新たな設定をすることなく、容易にできる。
本発明の第一実施形態における工作機械の構成を示す図である。 図1の工作機械において、回転工具により被加工物を切削している状態であって、回転工具がたわみ変形している状態を示す図である。 回転工具に生じる切削抵抗および回転工具の回転中心の変位の経過時間に対する挙動を示す。 図4の時刻t1における回転工具と被加工物との位置関係を示す。 図4の時刻t2における回転工具と被加工物との位置関係を示す。 図4の時刻t3における回転工具と被加工物との位置関係を示す。 図4の時刻t4における回転工具と被加工物との位置関係を示す。 図4の時刻t5における回転工具と被加工物との位置関係を示す。 本発明の実施形態における工作機械の動特性算出装置を含む加工条件判定装置の機能ブロック図である。 図5の検出器により音波を検出する際に、回転工具を加振する第一態様を示す図である。 回転工具を加振する第二態様を示す図である。 回転工具を加振する第三態様を示す図である。 図5の検出器による検出処理を示すフローチャートである。 回転主軸の回転速度と加工誤差との関係を示す。 回転主軸の回転速度と回転工具の最大振幅との関係を示す。
本発明に係る工作機械の動特性算出装置を具体化した実施形態について説明する。
(工作機械の機械構成)
適用対象の工作機械の一例として横型マシニングセンタを例に挙げ、図1を参照して説明する。なお、本発明は、当該横型マシニングセンタに限定されるものではなく、他の構成のマシニングセンタでもよく、回転工具を用いる工作機械であれば適用できる。
当該工作機械は駆動軸として、相互に直交する3つの直進軸(X,Y,Z軸)を有する工作機械である。図1に示すように、工作機械は、ベッド1と、ベッド1上にてX軸方向に移動可能なコラム2と、コラム2の前面(図1の左面)にてY軸方向に移動可能なサドル3と、サドル3に取り付けられかつ回転可能な主軸4aを有する主軸装置4と、主軸4aの先端側(図1の左側)に工具ホルダ5を介して取り付けられる回転工具6と、ベッド1上にてZ軸方向に移動可能であり被加工物Wを載置するテーブル7を備える。また、工作機械は、各駆動軸を制御するための制御装置(図示せず)を備える。
(切削加工時の回転工具の状態)
次に、回転工具6により被加工物Wを切削加工する場合における回転工具6の状態について説明する。図2に示すように、回転工具6は、先端側に複数の刃部6a,6bを備えており、基端側(根元側)に工具ホルダ5に支持される非刃部6cを備える。なお、本実施形態においては、2つの刃部6a,6bを有する回転工具6を例に挙げるが、1または3以上の刃部を有する回転工具を適用することもできる。
この回転工具6による切削加工時には、図2に示すように、刃部6a,6bが被加工物Wから切削抵抗Fyを受けることにより、刃部6a,6b側が非刃部6cに対してたわみ変形する。特に、L/D(=長さ/直径)の大きな回転工具6(細長い回転工具)を用いる場合には、当該回転工具6の剛性が低いため、切削抵抗Fyによって当該回転工具6の先端側のたわみ変形量が大きくなる。
ここで、回転工具6に生じる切削抵抗Fyが一定であれば、回転工具6の先端側のたわみ量は一定となる。しかし、回転工具6の刃部6a,6bによる断続的な切削加工により、回転工具6に生じる切削抵抗Fyは逐次変化する。そのため、回転工具6の刃部6a,6bの回転中心Cの変位量は、図2の往復矢印にて示すように、主としてY方向に逐次変化する。
このときの回転工具6の刃部6a,6bの回転中心Cの変位量と切削抵抗Fyとは、回転工具6の刃部6a,6bを振動体とする振動系における動特性(以下、「回転工具の刃部の動特性」と称する)に依存する。回転工具6の刃部6a,6bの動特性は、刃部6a,6bに入力された力に対する変形の挙動を示すものであり、伝達関数(コンプライアンスおよび位相遅れ)もしくはそれから算出される質量係数M、固有振動数f、減衰比ζなどにより表される。なお、動特性として、粘性減衰係数C、ばね定数Kを用いることもあるが、これらは、M、f、ζから求められる。
回転工具6を回転しかつ送りながら被加工物Wの断続的な切削加工を行う際において、回転工具6に生じる切削抵抗Fyおよび回転工具6の刃部6a,6bの回転中心Cの変位量Yaの経過時間tに対する挙動について、図3、図4A〜図4Eを参照して説明する。ここでは、反切込方向(Y方向)における切削抵抗Fyおよび先端側の回転中心Cの変位量Yaを取り上げて説明する。これは、反切込方向(Y方向)が加工誤差に対して最も影響が大きいためである。
図3に示すように、切削抵抗Fyは、ゼロ付近から時刻t1にて大きな値に変化し、時刻t2に再びゼロ付近に変化している。図4Aおよび図4Bが、それぞれ図3の時刻t1,t2に対応する。図4Aに示すように、時刻t1は、一方の刃部6aが被加工物Wに接触開始した瞬間である。つまり、時刻t1は、一方の刃部6aにより切削加工を開始した瞬間である。一方、図4Bに示すように、時刻t2は、一方の刃部6aによる被加工物Wの切削加工を終了した瞬間である。このように、t1〜t2の間において、一方の刃部6aが被加工物Wを切削加工している。
その後、図3に示すように、t2〜t4の間は、切削抵抗Fyがゼロ付近となっている。この間は、時刻t3に対応する図4Cに示すように、両方の刃部6a,6bが被加工物Wに接触していない。つまり、回転工具6は空転している。
その後、図3に示すように、切削抵抗Fyが時刻t4に再び大きな値に変化し、時刻t5に再びゼロ付近に変化している。図3の時刻t4には、対応する図4Dに示すように、他方の刃部6bが被加工物Wに接触開始している。つまり、他方の刃部6bにより切削加工を開始している。また、図3の時刻t5には、対応する図4Eに示すように、他方の刃部6bによる切削加工を終了している。このように、t4〜t5の間において、他方の刃部6bが切削加工している。
ここで、図4A〜図4Eにおける今回の切削領域より、t1〜t2、t4〜t5の各瞬間において、実切込量(瞬間的な切込量を意味し、切込量の指令値とは異なる意味である)が異なることが分かる。つまり、実切込量は、切削開始から一気に多くなり、ピークに達した後に徐々に少なくなっている。より詳細には、前回切削されていない部位と前回切削された部位との境界の前後で変化している。そして、図3の切削抵抗Fyのうち急激に大きくなっている部分に示すように、切削加工中の切削抵抗Fyは、略三角形状になっており、実切込量に応じて変化していることが分かる。
上記のように、回転工具6は、時刻t1〜t2,t4〜t5において断続的な切削加工を行い、時刻t2〜t4において断続的に空転している。つまり、回転工具6は、断続的な切削加工によって、断続的に力を受けることになる。つまり、回転工具6の先端側の回転中心Cは、断続的な切削加工により生じる断続的な力(切削抵抗)によって、少なくとも反切込方向(Y方向)に振動する。
従って、回転工具6の刃部6a,6bの回転中心Cの変位量Yaは、図3に示すように、回転工具6の固有振動数fに応じて振動している。特に、切削抵抗Fyが発生した直後に、回転中心Cの変位量Yaが最も大きくなり、その後に減衰している。そして、再び、切削抵抗Fyにより変位量Yaが大きくなり、繰り返す。
(動特性算出装置)
上述したように、回転中心Cの変位量と切削抵抗Fyとは、回転工具6の刃部6a,6bの動特性に依存する。そのため、当該動特性を把握することが重要となる。回転工具6の刃部6a,6bの動特性を算出する装置について、図5、図6A〜図6Cおよび図7を参照して説明する。
図5に示すように、動特性算出装置100は、FEM解析部101と、検出器102と、算出部103と、記憶部104とを備える。FEM解析部101は、工作機械の構造情報に基づく公知のFEM解析により、固有振動数f、減衰比ζおよび質量係数Mを取得する。FEM解析により、動特性を容易に取得できる。工作機械の構造情報には、各構成部材の形状、材質などの情報が含まれる。そして、FEM解析部101は、取得した固有振動数f、質量係数Mおよび減衰比ζを記憶部104に記憶する。
ここで、固有振動数fは、式(1)により表される。式(1)において、減衰比ζは、1より十分に小さいため、{√(1−ζ2)}は、1とみなすことができる。また、減衰比ζは式(2)により表され、運動方程式は、式(3)により表される。ここで、Cは粘性減衰係数、Kはばね定数、Fは外力、xは変位である。
Figure 2014014882
Figure 2014014882
Figure 2014014882
検出器102は、本実施形態においては音波検出器を適用する。ここで、検出器102の適用例について、図6A〜図6Cを参照して説明する。検出器102は、図6A〜図6Cに示すように、回転工具6の刃部6a,6bの近傍に位置決めする。ただし、当該検出器102は、高精度に位置決めすることなく、ある程度の設置自由度を有する。このように、検出器102は、渦電流型変位センサなどに比べて高精度な位置決めが不要であるため、熟練技術を要することなく、かつ、設置に要する時間を短縮できる。
検出器102は、回転工具6が加振された場合に、回転工具6が振動によって生じる音波を検出する。回転工具6の加振の第一態様として、図6Aに示すように、作業者がハンマー材(ターゲット材)130により回転工具6の非刃部6cを叩くことにより、回転工具6を加振する。この態様では、新たな設定をすることなく、容易に行うことができる。そして、作業者による叩く力の大きさや叩く方向などは、検出精度に大きく影響しない。そのため、当該作業は、容易である。また、実際に使用する回転工具6を加振することができるため、高精度な動特性を得ることができる。さらに、ハンマー材130に接触させる部位を、刃部6a,6bではなく非刃部6cとすることで、刃部6a,6bに与える影響をなくすことができる。その結果、刃部6a,6bの寿命を向上できる。
また、加振の第二の態様として、図6Bに示すように、工作機械の駆動装置を駆動させて、工作機械に固定されたターゲット材140と回転工具6の非刃部6cとを接触させることにより、回転工具6を加振する。これにより、いわゆるハンマリング作業の自動化を図ることができる。この場合も、実際に使用する回転工具6を加振するため、高精度な動特性を得ることができる。さらに、ターゲット材140に接触させる部位を非刃部6cとすることで、刃部6a,6bの寿命を向上できる。
また、実際の切削加工の直前に行うことができるようになるため、実際の切削加工の状態における動特性を得ることができる。また、回転工具6に付与する加振力を高精度に設定できるため、検出器102により確実に検出できるように回転工具6を振動させることができる。また、当該態様においては、回転工具6を回転させながら加振することもできるし、回転工具6を停止させた状態で加振させることもできる。回転工具6を回転させながら加振する場合には、切削加工時により近い状態における動特性を得ることができる。特に、回転工具6を加工時と同じ方向に回転させた状態として、回転工具6の非刃部6cとターゲット材140とを接触させることで、より切削加工時に近い状態における動特性を得ることができる。
また、加振の第三の態様として、図6Cに示すように、回転工具6を加工時とは逆回転に回転させて、回転工具6の刃部6a,6bをターゲット材150としての被加工物Wに接触させることにより、回転工具6を加振する。ここで、被加工物Wの代わりに、他のターゲット材150を適用することもできる。このように、回転工具6を加工時とは逆回転に回転させた状態でターゲット材150に接触させるため、ターゲット材150は切削加工されない。そのため、ターゲット材150の消耗を抑制できる。
次に、検出器102による音波検出処理について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。検出器102には、複数の検出周波数レンジがあり、設定された検出周波数レンジにおける周波数帯の音波を検出する。そこで、検出器102の検出条件としての検出周波数レンジを、FEM解析部101により取得された固有振動数fを含む検出周波数レンジに設定する(S1)。これにより、検出器102は、実際の固有振動数fを含む音波を確実に検出できる。
続いて、図6A〜図6Cに図示した加振態様の何れかによって、回転工具6を加振する(S2)。そして、回転工具6が加振されて回転工具6が振動することによって、回転工具6が発生する音波を、検出器102によって検出する(S3)。
算出部103は、検出器102により検出された音波に基づいて、固有振動数fを算出する。この固有振動数fは、検出された音波の周波数から算出することができる。そして、算出部103は、算出した固有振動数fを、FEM解析部101によって記憶部104に記憶された固有振動数fに変更して、記憶部104に記憶する。つまり、記憶部104に記憶される固有振動数fは、算出部103により算出された固有振動数fとなる。
ここで、作業者による組付ずれなどにより、回転工具6を工具ホルダ5へ取り付ける位置は、FEM解析部101におけるFEM解析と実際とで僅かに異なる。つまり、FEM解析部101におけるFEM解析は、回転工具6が工具ホルダ5へ取り付けられた実際の位置における解析ではない。一方、検出器102により検出される音波は、実際に回転工具6の振動によって生じる音波であるため、回転工具6が工具ホルダ5へ取り付けられた実際の位置に基づいたものとなる。つまり、FEM解析部101により取得された固有振動数fと、算出部103により算出される固有振動数fとは異なる。そして、記憶部104に記憶される固有振動数fは、算出部103により算出される固有振動数f、すなわち実際の回転工具6の刃部6a,6bの固有振動数となる。
(回転工具の回転速度と加工誤差または回転工具の最大振幅との関係)
ここで、回転工具6の回転速度Sと加工誤差Δyとの関係を図8に示し、回転速度Sと回転工具6の最大振幅Aとの関係を図9に示す。例えば、回転速度Sが6500min-1付近において、加工誤差Δyおよび最大振幅Aが小さくなっていることが分かる。このように、回転工具6の回転速度Sを変更することによって、加工誤差Δyおよび最大振幅Aが変化する。これは、回転工具6の刃部6a,6bの振動系における動特性と、回転工具6の刃部6a,6bが被加工物Wに接触するときの周波数との関係が変化することによる。回転工具6の振動系における動特性は変化しないが、回転工具6の刃部6a,6bが被加工物Wに接触するときの周波数は、回転工具6の回転速度Sによって変化する。このように、回転工具6の刃部6a,6bの動特性と回転速度Sとの関係によって、加工誤差Δyおよび最大振幅Aを小さくなったり、大きくなったりする。
そして、図8および図9に示す関係は、回転工具6の刃部6a,6bの動特性を得ることができれば、図示することができる。つまり、回転工具6の刃部6a,6bの動特性を得ることができれば、加工誤差Δyおよび最大振幅Aを小さくすることができる回転速度Sを見出すことができる。特に、得られる固有振動数fが変わると、加工誤差Δyおよび最大振幅Aが急激に変化する回転速度Sが変化することになる。従って、特に、固有振動数fを正確に得ることができることが、高い加工精度を得るためには必要なことと言える。
(動特性算出装置の適用例)
次に、動特性算出装置の適用例について、図5を参照して説明する。図5に示すように、動特性算出装置100は、加工条件判定装置120の一部として機能させることができる。加工条件判定装置120の判定部121は、記憶部104に記憶された回転工具6の刃部6a,6bの動特性を用いて、図8および図9に示したような回転速度Sと加工誤差Δyまたは最大振幅Aとの関係を導き出しておく。さらに、判定部121は、加工誤差Δyまたは最大振幅Aが閾値より小さくなる回転速度Sの範囲を記憶しておく。
そして、判定部121は、現在の加工条件に含まれる回転速度Sの指令値が、記憶されている回転速度Sの範囲内に含まれるか否かを判定する。指令値が当該範囲内に含まれていれば、現在の加工条件は良好であると判断し、当該加工条件において切削加工を行う。一方、指令値が当該範囲内に含まれていない場合には、回転速度Sの指令値を変化させる。
本実施形態によれば、実際に回転工具6を振動させることにより得られる音波に基づいて固有振動数fを算出するため、実際の状態の固有振動数fを得ることができる。従って、断続的な切削加工によって回転工具6の刃部6a,6bが回転工具6の基端部に対してたわんで振動する場合に、所望の加工精度を得ることができる加工条件を決定することができる。
一方、質量係数Mおよび減衰比ζをFEM解析により取得している。ここで、固有振動数fのずれに比べて、質量係数Mおよび減衰比ζのずれによる加工精度への影響は小さい。そこで、質量係数Mおよび減衰比ζをFEM解析により取得することで、容易に取得することができると共に、十分な加工精度を得ることができる。
<第二実施形態>
上記実施形態においては、回転工具6の刃部6a,6bの動特性のうち減衰比ζおよび質量係数Mは、FEM解析部101により取得された情報をそのまま用いた。本実施形態においては、算出部103は、固有振動数fに加えて減衰比ζを、回転工具6の振動により発生する音波を用いて算出することとする。
すなわち、本実施形態においては、FEM解析部101は、FEM解析により質量係数Mおよび固有振動数fを取得する。そして、算出部103は、検出器102により検出された音波に基づいて、固有振動数fを算出すると共に、減衰比ζを算出する。算出部103は、算出した固有振動数fおよび減衰比ζを記憶部104に記憶する。
このように、実際の状態における固有振動数fおよび減衰比ζを得ることにより、より高精度に図8および図9に示すような回転速度Sと加工誤差Δyおよび最大振幅Aとの関係を導き出すことができる。その結果、所望の加工精度を得る加工条件を決定することができる。
<他の実施形態>
上記実施形態において、検出器102は、音波検出器とした。この他に、検出器102は、回転工具6の振動によって変動する磁気を検出できる磁気センサを用いることができる。磁気センサも、音波検出器と同様に、設置の自由度が高いため、設置に熟練技術を要することがないため、設置時間を短縮できる。また、他の効果もほぼ同様の効果を奏する。
5:工具ホルダ、 6:回転工具、 6a,6b:刃部、 6c:非刃部、 100:動特性算出装置、 101:FEM解析部、 102:検出器、 103:算出部(固有振動数算出部,減衰比算出部)、 130:ハンマー材(ターゲット材)、 140,150:ターゲット材、 f:固有振動数、 M:質量係数、 ζ:減衰比

Claims (7)

  1. 1または複数の刃部を備える回転工具を用いて、当該回転工具を回転しながら被加工物に対して相対移動して断続的な切削加工を行う工作機械の動特性を算出する装置であって、
    前記回転工具が加振された場合に、前記回転工具の振動によって生じる音波または前記回転工具の振動によって変化する磁気を検出する検出器と、
    前記検出器による検出値に基づいて、前記回転工具の前記刃部を振動体とする振動系における前記刃部の固有振動数を算出する固有振動数算出部と、
    を備える、工作機械の動特性算出装置。
  2. 前記回転工具の加振は、前記工作機械の駆動装置を駆動して、前記工作機械に固定されたターゲット材と前記回転工具とを接触させることにより行う、請求項1の工作機械の動特性算出装置。
  3. 前記回転工具の加振は、前記回転工具を加工時とは逆回転に回転させた状態において、前記回転工具の前記刃部と前記ターゲット材とを接触させることにより行う、請求項2の工作機械の動特性算出装置。
  4. 前記回転工具は、主軸に装着された工具ホルダに取り付けられ、先端側に前記刃部を有し、基端側に非刃部を有し、
    前記回転工具の加振は、前記回転工具の前記非刃部と前記ターゲット材とを接触させることにより行う、請求項2の工作機械の動特性算出装置。
  5. 前記回転工具の加振は、前記回転工具を加工時と同じ方向に回転させた状態において、前記回転工具の前記非刃部と前記ターゲット材とを接触させることにより行う、請求項4の工作機械の動特性算出装置。
  6. 前記回転工具の加振は、人がハンマー材により前記回転工具を叩くことにより行う、請求項1の工作機械の動特性算出装置。
  7. 1または複数の刃部を備える回転工具を用いて、当該回転工具を回転しながら被加工物に対して相対移動して断続的な切削加工を行う工作機械の動特性を算出する方法であって、
    前記回転工具が加振された場合に、前記回転工具の振動によって生じる音波または前記回転工具の振動によって変化する磁気を検出する検出工程と、
    前記検出工程にて検出した検出値に基づいて、前記回転工具の前記刃部を振動体とする振動系における前記刃部の固有振動数を算出する固有振動数算出工程と、
    を備える、工作機械の動特性算出方法。
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