JP2014013073A - 車輪用軸受装置 - Google Patents

Abstract

【課題】エンコーダの検出精度を高めて安定した出力信号を確保すると共に、軸受部に装着されたシールの密封性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】シール１２が、互いに対向配置されたスリンガ１７と環状のシール板１８とからなるパックシールで構成され、シール１２のインナー側で、外方部材２の端部にバックアップシール２１が装着され、これが外方部材２の端部外周に圧入される嵌合部２２ａと、これから径方向内方に延び、端面２ｃに密着する円板状の遮蔽部２２ｂからなるダストカバー２２と、嵌合部２２ａの外周に加硫接着により一体に接合され、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁された磁気エンコーダ２３を備えると共に、ダストカバー２２の遮蔽部２２ｂがスリンガ１７と僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンス２４が形成されている。
【選択図】図２

Description

本発明は、自動車等の車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、外方部材が車輪と共に回転する、所謂外輪回転タイプに関し、軸受部に装着されたシールの密封性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置に関するものである。

従来から自動車等の車輪を支持する車輪用軸受装置は、車輪を取り付けるための内輪部材を転がり軸受を介して回転自在に支承するもので、駆動輪用と従動輪用とがある。構造上の理由から、駆動輪用では内輪回転タイプが、従動輪用では内輪回転と外輪回転の両タイプが一般的に採用されているが、外輪回転タイプの車輪用軸受装置は、懸架装置への取付部の構造を内輪回転タイプよりも簡素化できるため、一部の自動車で従動輪支持用の車輪用軸受装置として使用されている。然しながら、内方部材に比べて直径が大きな外方部材を回転させるため、慣性モーメントが大きくなり、加速性能を中心とする走行性能や燃費性能を確保する面から、内輪回転タイプに比べて不利になる。このような不利を低減乃至解消するためには、外方部材の軽量化が効果的である。このような事情に鑑みて考えられた外輪回転タイプの車輪用軸受装置として、従来から図１９に示すような構造が知られている。

この車輪用軸受装置１００は、内方部材１０１と、外方部材１０２と、複列のボール１０３と、補強部材１０４とを備えている。このうち内方部材１０１は、外周面に複列の内側転走面１０１ａ、１０１ｂが形成され、使用状態で懸架装置に支持固定されて回転しない。一方、外方部材１０２は、外周面に回転側フランジ１０５を一体に有し、内周面に複列の外側転走面１０２ａ、１０２ｂが形成されている。そして、使用状態でこの車輪取付フランジ１０５に結合固定された車輪（図示せず）と共に回転する。

補強部材１０４は、全体を部分円すい筒状とし、大径側端部を回転側フランジ１０５の外周縁部に、同じく小径端部を外方部材１０２の外周面で、この回転側フランジ１０５よりも軸方向内方寄り部分に、それぞれ溶接により接合固定している。さらに、内方部材１０１を懸架装置に対し固定するために、この内方部材１０１の周面に静止側フランジ１０６が形成されている。

ここで、旋回走行時等には、車輪と路面との接触部からの入力が回転側フランジ１０５に対し、この回転側フランジ１０５を外方部材１０２の本体部分に対し曲げる方向のモーメントとして加わる。すなわち、回転側フランジ１０５と外方部材１０２の本体部分との間に補強部材１０４を設けているので、モーメントに拘わらず、回転側フランジ１０５が外方部材１０２の本体部分に対し曲がることを抑えられる。このため、外方部材１０２を薄肉化しても、車輪の支持剛性を確保して、走行安定性等の必要とする性能を確保することができる（例えば、特許文献１参照。）。

独国特許出願公開第１０ ２００８ ０２３ 号明細書

こうした車輪用軸受装置１００において、車両の姿勢制御への利用のため、より精密な車両の走行状態を検出しようとすると、軸受内部で、外方部材１０２に取り付けられたエンコーダ１０７を、内方部材１０１に内蔵されたセンサ１０８で検出する構造のため、エンコーダ１０７の寸法的な制約が厳しく、エンコーダ１０７の１極の寸法を充分な大きさにできない。

このエンコーダ１０７の１極の幅が小さくなると、センサ１０８で検出できる出力信号が小さくなるため、エンコーダ１０７とセンサ１０８のエアギャップを極力狭めると共に、取付精度を高精度に規制する必要がある。ここで、軸受に荷重が負荷され、エアギャップが広くなる方向に変形した場合、出力信号が非常に小さくなるため、信号を検出できなくなる恐れがある。一方、エアギャップが狭くなる方向に変形した場合、エアギャップを極力狭めているため、エンコーダ１０７とセンサ１０８が接触して破損する恐れがある。

さらに、内方部材１０１と外方部材１０２との間に形成される環状空間の開口部にシール１０９が装着され、このシール１０９によって軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に浸入するのを防止しているが、タイヤで跳ね上げられた泥水や塩水が、外方部材１０２に取り付けられた補強部材１０４を通してシール１０９側に伝わり、密封性が低下して軸受の耐久性が損なわれるといった問題があった。

本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、エンコーダの検出精度を高めて安定した出力信号を確保すると共に、軸受部に装着されたシールの密封性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することを目的としている。

係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項１記載の発明は、外周に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から傾斜する段部を介して軸方向に延びる小径段部が形成された内輪部材、およびこの内輪部材の小径段部に圧入固定され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間のインナー側の開口部に装着されたシールとを備え、前記複列の転動体のうちインナー側の転動体のピッチ円直径がアウター側の転動体のピッチ円直径よりも大径に設定された車輪用軸受装置において、前記外方部材の端部にバックアップシールが装着され、このバックアップシールが、ダストカバーと、このダストカバーに接合され、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁された磁気エンコーダを備えると共に、前記ダストカバーが、前記シールまたは内輪部材に僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスを構成している。

このように、内方部材と外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、外方部材と内方部材との間に形成される環状空間のインナー側の開口部に装着されたシールとを備え、複列の転動体のうちインナー側の転動体のピッチ円直径がアウター側の転動体のピッチ円直径よりも大径に設定された外輪回転タイプの第３世代構造の車輪用軸受装置において、外方部材の端部にバックアップシールが装着され、このバックアップシールが、ダストカバーと、このダストカバーに接合され、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁された磁気エンコーダを備えると共に、ダストカバーが、シールまたは内輪部材に僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスを構成しているので、バックアップシールにより軸受部に装着されたシールの密封性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。また、磁気エンコーダの磁気出力が強くなり安定した検出精度を確保することができ、磁気エンコーダの外径寸法が大きく、磁気エンコーダの極数を多くして高精度化するには好適であると共に、従来のエンコーダに比べ、磁気エンコーダの１極の寸法が大きく取れるので、出力信号も大きくなり、センサとのエアギャップが拡大でき、寸法精度を緩和することができる。これにより、客先でのセンサ設置の設計自由度が向上すると共に、センサ取付部の寸法精度が緩和でき、低コスト化を図ることができる。

好ましくは、請求項２に記載の発明のように、前記シールが、互いに対向配置されたスリンガと環状のシール板とからなるパックシールで構成され、前記スリンガが鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、前記内輪部材の外径に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部を備えると共に、前記ダストカバーが、前記外方部材の端部外周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に延び、前記外方部材のインナー側の端面に密着する円板状の遮蔽部とを備え、この遮蔽部が前記スリンガの立板部と僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンスが形成されると共に、前記ダストカバーの嵌合部の外周に前記磁気エンコーダが接合されていれば、外部からシールに直接泥水が浸入するのを確実に防止することができ、密封性を向上させることができると共に、磁気エンコーダの外径寸法が大きく、磁気エンコーダの極数を多くして高精度化することができる。

また、請求項３に記載の発明のように、前記ダストカバーが、前記嵌合部のアウター側の端部から径方向外方に延びる堰部を備えていれば、外方部材の外周面側から伝わってきた泥水や塩水からシールを保護して耐泥水性を高めることができる。

また、請求項４に記載の発明のように、前記ダストカバーが、前記遮蔽部の内径端からインナー側に延びる折曲部を備え、この折曲部の端部に合成ゴムからなるシール部材が加硫接着によって一体に接合されると共に、このシール部材に、径方向内方に傾斜して延びるシールリップが形成され、前記内輪部材の外径に所定の径方向シメシロを介して摺接していれば、軸受部に装着されたシールの密封性を一層高めて軸受の長寿命化を図ることができる。

また、請求項５に記載の発明のように、前記スリンガの立板部の先端部に合成ゴムからなるシール部材が加硫接着によって一体に接合され、このシール部材に、径方向外方に傾斜して延びるシールリップが形成され、前記ダストカバーの遮蔽部に所定の軸方向シメシロを介して摺接されていれば、軸受部に装着されたシールの密封性を一層高めて軸受の長寿命化を図ることができる。

また、請求項６に記載の発明のように、前記スリンガの立板部と前記ダストカバーの遮蔽部との間にグリースが充填されていれば、シールの内部に外部から泥水やダスト等が浸入するのを確実に防止することができ、シールの密封性が一層向上する。

また、請求項７に記載の発明のように、前記ダストカバーの遮蔽部に磁気エンコーダが接合され、この磁気エンコーダの磁極が前記嵌合部に接合された磁気エンコーダの磁極と異なった極数に設定されていれば、両磁気エンコーダの出力信号を同時に取り込み、さらに高分解能な回転精度を検出することができる。

また、請求項８に記載の発明のように、前記バックアップシールのインナー側で、前記内輪部材の外径に堰部材が装着され、この堰部材が、防錆能を有する鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、前記内輪部材の外径に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部のアウター側の端部から径方向外方に延びる立板部を備え、この立板部が前記ダストカバーの遮蔽部に僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンスが形成されていれば、外部から泥水や塩水がシールに浸入するのを防止することができ、一層シールの密封性を向上させることができる。

また、請求項９に記載の発明のように、前記ダストカバーが非磁性体からなる鋼板で形成され、その遮蔽部のアウター側の側面に前記磁気エンコーダが接合されると共に、前記スリンガの立板部に僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンスが形成されていれば、磁気エンコーダが外部に露出していないため、砂や小石が跳ね上げられても磁気エンコーダに衝突することはなく、長期間に亘って摩耗や欠損を防止することができると共に、軸受部に装着されたシールの密封性を高めて軸受の長寿命化を図ることができる。

また、請求項１０に記載の発明のように、前記内輪部材のインナー側の端部に、ナックルに取り付けられるための取付フランジが形成されると共に、前記シールが、前記外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着によって一体に接合され、前記取付フランジの基部に摺接するリップを備えたシール部材とからなる一体型シールで構成され、前記芯金が鋼板からプレス加工にて形成されて前記ダストカバーと一体化され、前記外方部材の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に延びる内径部と、前記嵌合部から径方向外方に延び、前記外方部材の端面に密着する遮蔽部と、この遮蔽部の外縁からインナー側に延びる笠部を備え、これら遮蔽部と笠部が前記取付フランジに僅かなすきまを介してそれぞれ対向し、ラビリンスが形成され、前記芯金の遮蔽部と笠部にそれぞれ前記磁気エンコーダが接合されていれば、軸受部に装着されたシールの密封性を高めて軸受の長寿命化を図ることができる。

また、請求項１１に記載の発明のように、前記内輪部材のインナー側の端部に、ナックルに取り付けられるための取付フランジが形成され、この取付フランジに前記ナックルの側面が衝合されて固定ボルトによって締結されると共に、前記取付フランジに形成された貫通孔にセンサが嵌挿され、このセンサが前記内輪部材とナックルによって挟持された状態で位置決め固定されていれば、センサ取付ボルトやボルト固定孔等を廃止でき、組立作業を簡素化できると共に、低コスト化を図ることができる。

好ましくは、請求項１２に記載の発明のように、前記センサがスティックタイプの棒状に形成され、前記取付フランジの貫通孔に嵌挿される挿入部と円形のフランジを一体に有すると共に、前記貫通孔のインナー側の開口部に座グリ部が形成され、この座グリ部に前記センサのフランジが嵌合されていれば、センサを精度良く位置決め固定することができる。

本発明に係る車輪用軸受装置は、外周に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から傾斜する段部を介して軸方向に延びる小径段部が形成された内輪部材、およびこの内輪部材の小径段部に圧入固定され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間のインナー側の開口部に装着されたシールとを備え、前記複列の転動体のうちインナー側の転動体のピッチ円直径がアウター側の転動体のピッチ円直径よりも大径に設定された車輪用軸受装置において、前記外方部材の端部にバックアップシールが装着され、このバックアップシールが、ダストカバーと、このダストカバーに接合され、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁された磁気エンコーダを備えると共に、前記ダストカバーが、前記シールまたは内輪部材に僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスを構成しているので、バックアップシールにより軸受部に装着されたシールの密封性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。また、磁気エンコーダの磁気出力が強くなり安定した検出精度を確保することができ、磁気エンコーダの外径寸法が大きく、磁気エンコーダの極数を多くして高精度化するには好適であると共に、従来のエンコーダに比べ、磁気エンコーダの１極の寸法が大きく取れるので、出力信号も大きくなり、センサとのエアギャップが拡大でき、寸法精度を緩和することができる。これにより、客先でのセンサ設置の設計自由度が向上すると共に、センサ取付部の寸法精度が緩和でき、低コスト化を図ることができる。

本発明に係る車輪用軸受装置の第１の実施形態を示す縦断面図である。 図１のシール部を示す要部拡大図である。 本発明に係る車輪用軸受装置の第２の実施形態を示す縦断面図である。 図３のシール部を示す要部拡大図である。 図４の変形例を示す要部拡大図である。 図４の他の変形例を示す要部拡大図である。 本発明に係る車輪用軸受装置の第３の実施形態を示す縦断面図である。 図７の検出部を示す要部拡大図である。 本発明に係る車輪用軸受装置の第４の実施形態を示す縦断面図である。 図９の検出部を示す要部拡大図である。 （ａ）は、図１０のセンサを示す正面図、（ｂ）は、（ａ）の平面図である。 （ａ）は、図１０の内輪部材の貫通孔を示す断面図、（ｂ）は、（ａ）の正面図である。 （ａ）は、図１１のセンサの変形例を示す正面図、（ｂ）は、（ａ）の平面図である。 （ａ）は、図１１のセンサの他の変形例を示す正面図、（ｂ）は、（ａ）の平面図である。 （ａ）は、図１１のセンサの他の変形例を示す正面図、（ｂ）は、（ａ）の平面図である。 図１０の実施形態の変形例を示す要部拡大図である。 図１０の実施形態の他の変形例を示す要部拡大図である。 図１７の実施形態の他の変形例を示す要部拡大図である。 従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。

外周に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から傾斜する段部を介して軸方向に延びる小径段部が形成された内輪部材、およびこの内輪部材の小径段部に圧入固定され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間のインナー側の開口部に装着されたシールとを備え、前記複列の転動体のうちインナー側の転動体のピッチ円直径がアウター側の転動体のピッチ円直径よりも大径に設定された車輪用軸受装置において、前記シールが、互いに対向配置されたスリンガと環状のシール板とからなるパックシールで構成され、前記スリンガが鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、前記内輪部材の外径に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部を備え、前記外方部材の端部にバックアップシールが装着され、このバックアップシールが、鋼板からプレス加工にて形成され、前記外方部材の端部外周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に延び、前記外方部材のインナー側の端面に密着する円板状の遮蔽部とからなるダストカバーと、前記嵌合部の外周に加硫接着により一体に接合され、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁された磁気エンコーダを備えると共に、前記ダストカバーの遮蔽部が前記スリンガの立板部と僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンスが形成されている。

以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図１は、本発明に係る車輪用軸受装置の第１の実施形態を示す縦断面図、図２は、図１のシール部を示す要部拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側（図１の左側）、中央寄り側をインナー側（図１の右側）という。

この車輪用軸受装置は第３世代と呼称される従動輪用であって、固定側部材となる内方部材１と、回転側部材となる外方部材（ハブ輪）２、および両部材１、２間に転動自在に収容された複列の転動体（ボール）３、３とを備えている。内方部材１は、内輪部材４と、この内輪部材４に所定のシメシロを介して圧入された内輪５とからなる。

内輪部材４は、外周に一方（インナー側）の内側転走面４ａと、この内側転走面４ａから段部７ａを介して軸方向に延びる小径段部４ｂが形成されている。内輪５は、外周に他方（アウター側）の内側転走面５ａが形成され、内輪部材４の小径段部４ｂに圧入されて背面合せタイプの複列アンギュラ玉軸受を構成すると共に、小径段部４ｂの端部を塑性変形させて形成した加締部８によって軸方向に固定されている。なお、内輪５および転動体３はＳＵＪ２等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。

内輪部材４はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面４ａから小径段部４ｂの外周面に亙って高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。なお、加締部８は鍛造加工後の表面硬さのままの未焼入れ部とされている。これにより、内輪５の嵌合部となる小径段部４ｂの耐フレッティング性が向上すると共に、微小なクラック等の発生がなく加締部８の塑性加工をスムーズに行うことができる。

外方部材２は、アウター側の端部に車輪（図示せず）を取り付けるための車輪取付フランジ６を一体に有し、この車輪取付フランジ６の周方向等配にハブボルト６ａが植設されている。そして、車輪取付フランジ６のハブボルト６ａの周辺に肉厚のリブ６ｂが形成されている。このリブ６ｂにより、外方部材２の軽量化と高剛性化を図ることができ、大きな曲げモーメント荷重がこの車輪取付フランジ６に負荷されても充分な強度を確保することができる。また、ハブボルト６ａ間には円孔６ｃが形成されている。この円孔６ｃは軽量化に寄与できるだけでなく、装置の組立・分解工程において、レンチ等の締結治具をこの円孔６ｃから挿入することができ作業を簡便化することができる。

また、外方部材２の内周には、内輪５の内側転走面５ａに対向するアウター側の外側転走面２ａと、この外側転走面２ａから段部７ｂを介して内輪部材４の内側転走面４ａに対向するインナー側の外側転走面２ｂが一体に形成されている。これら両転走面間に複列の転動体３、３が収容され、保持器９、１０によって転動自在に保持されている。この外方部材２はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面２ａ、２ｂが高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。

外方部材２と内方部材１との間に形成される環状空間の開口部にはキャップ１１と後述するシール１２が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に浸入するのを防止している。キャップ１１は、防錆能を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板（ＪＩＳ規格のＳＵＳ３０４系等）や防錆処理された冷間圧延鋼板（ＪＩＳ規格のＳＰＣＣ系等）からプレス加工にてカップ状に形成されている。

本実施形態では、インナー側の転動体３のピッチ円直径ＰＣＤｉがアウター側の転動体３のピッチ円直径ＰＣＤｏよりも大径に設定されている（ＰＣＤｉ＞ＰＣＤｏ）。そして、複列の転動体３、３のサイズは同じであるが、このピッチ円直径ＰＣＤｉ、ＰＣＤｏの違いにより、インナー側の転動体３の個数がアウター側の転動体３の個数よりも多く設定されている。

内輪部材４の外郭形状は、内側転走面４ａの溝底部からカウンタ部１３と、このカウンタ部１３から傾斜して形成された段部７ａ、および内輪５が突き合わされる肩部４ｃを介して小径段部４ｂに続いている。一方、外方部材２において、ピッチ円直径ＰＣＤｉ、ＰＣＤｏの違いに伴い、インナー側の外側転走面２ｂがアウター側の外側転走面２ａよりも拡径して形成され、アウター側の外側転走面２ａから傾斜した段部７ｂを介してインナー側の外側転走面２ｂが形成されている。この段部７ｂの傾斜角は、内輪部材４の段部７ａの傾斜角と略同一角度になるように設定されている。

こうした構成の車輪用軸受装置では、インナー側の転動体３のピッチ円直径ＰＣＤｉをアウター側の転動体３のピッチ円直径ＰＣＤｏをよりも大径に設定され、その分、転動体３の個数もインナー側の個数がアウター側の個数よりも多く設定されているため、有効に軸受スペースを活用してアウター側に比べインナー側部分の軸受剛性を増大させることができ、軸受の長寿命化を図ることができる。さらに、内輪部材４の段部７ａと外方部材２の段部７ｂの傾斜が略同一角度に設定されているので、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という、相反する課題を解決することができる。なお、ここでは、転動体３にボールを使用した複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置を例示したが、これに限らず、転動体３に円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受で構成されたものであっても良い。

内輪部材４のインナー側の端部にはすり鉢状の凹所１４を有する取付部１５が形成されている。この凹所１４の深さは肩部４ｃ付近までとされ、内輪部材４のインナー側の端部が略均一な肉厚となっている。これにより、内輪部材４の強度を保ちつつ軽量化を図ることができる。本実施形態では、この取付部１５にボルト孔１６が複数個形成され、これらボルト孔１６に締結される固定ボルト（図示せず）によって懸架装置を構成するナックル（図示せず）に取り付けられる。

また、インナー側の外側転走面２ｂがアウター側の外側転走面２ａよりも拡径して形成されているため、外方部材２の外郭形状は、車輪取付フランジ６のインナー側の基部に形成された断面円弧状の環状凹部２５からインナー側に向かって漸次拡径するテーパ面２６と、このテーパ面２６からインナー側の外側転走面２ｂの外径側となる円筒状の外周面２７で構成されている。環状凹部２５を形成することにより、車輪を固定するためのハブボルト６ａの着脱が容易になり、製造工程における作業効率が向上すると共に、市場における補修作業を簡素化することができる。

さらに、外方部材２は、予め鍛造加工（第１の鍛造工程）にて円筒状の外周面を形成し、冷間ローリング加工（第２の鍛造工程）によってアウター側の外側転走面２ａに相当する部分を整えると共に、インナー側の外側転走面２ｂに相当する部分を拡径させることによって形成している。これにより、ファイバーフローが切断されずに外郭形状に沿って繋がっている外方部材２を形成することができ、モーメント荷重に対する支持剛性を確保し、耐久性の向上を図った車輪用軸受装置を提供することができる。

シール１２は、図２に拡大して示すように、互いに対向配置されたスリンガ１７と環状のシール板１８とからなる、所謂パックシールで構成されている。スリンガ１７は、防錆能を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板やフェライト系のステンレス鋼板（ＪＩＳ規格のＳＵＳ４３０系等）、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、内輪部材４の取付部１５の外径に圧入される円筒部１７ａと、この円筒部１７ａから径方向外方に延びる立板部１７ｂとからなる。

一方、シール板１８は、外方部材２のインナー側の端部に内嵌される芯金１９と、この芯金１９に加硫接着により一体に接合されたシール部材２０とからなる。芯金１９は、オーステナイト系ステンレス鋼板、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成されている。

シール部材２０はＮＢＲ（アクリロニトリル−ブタジエンゴム）等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延び、スリンガ１７の立板部１７ｂのアウター側の側面に所定の軸方向シメシロを介して摺接するサイドリップ２０ａと、このサイドリップ２０ａの内径側で二股状に傾斜して延び、スリンガ１７の円筒部１７ａに所定の径方向シメシロを介して摺接するダストリップ２０ｂとグリースリップ２０ｃを有している。なお、シール部材２０の材質としては、例示したＮＢＲ以外にも、例えば、耐熱性に優れたＨＮＢＲ（水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム）、ＥＰＤＭ（エチレンプロピレンゴム）等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたＡＣＭ（ポリアクリルゴム）、ＦＫＭ（フッ素ゴム）、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。

ここで、本実施形態では、シール１２に加えてバックアップシール２１が外方部材２のインナー側の端部に装着されている。このバックアップシール２１は、ダストカバー２２と、このダストカバー２２に加硫接着により一体に接合された磁気エンコーダ２３とからなる。

ダストカバー２２は、強磁性体の鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼板や防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、外方部材２のインナー側の端部外周に圧入される円筒状の嵌合部２２ａと、この嵌合部２２ａの端部から径方向内方に延び、外方部材２のインナー側の端面２ｃに密着して位置決め精度を高める円板状の遮蔽部２２ｂを備えている。そして、この遮蔽部２２ｂは、シール１２を構成するスリンガ１７の立板部１７ｂに僅かな軸方向すきまを介して対峙し、ラビリンス２４が形成されている。なお、磁気エンコーダ２３は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入されると共に、周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁され、車輪の回転速度検出用のロータリエンコーダを構成し、センサ（図示せず）に所定の径方向エアギャップを介して対峙されている。

このように、本実施形態では、ダストカバー２２が防錆能を有し、強磁性体の鋼板で形成されているので、ダストカバー２２が発錆するのを防止すると共に、磁気エンコーダ２３の磁気出力が強くなり安定した検出精度を確保することができる。また、複列の転動体３、３のうちインナー側の転動体３のピッチ円直径ＰＣＤｉがアウター側の転動体３のピッチ円直径ＰＣＤｏよりも大径に設定された車輪用軸受装置において、ダストカバー２２に加硫接着により一体に接合された磁気エンコーダ２３とからなるバックアップシール２１を外方部材２のインナー側の端部に装着したため、磁気エンコーダ２３の外径寸法が大きく、磁気エンコーダ２３の極数を多くして高精度化するには好適であると共に、従来のエンコーダに比べ、磁気エンコーダ２３の１極の寸法が大きく取れるので、出力信号も大きくなり、センサ（図示せず）とのエアギャップが拡大でき、寸法精度を緩和することができる。これにより、客先でのセンサ設置の設計自由度が向上すると共に、センサ取付部の寸法精度が緩和でき、低コスト化を図ることができる。また、バックアップシール２１により軸受部に装着されたシール１２の密封性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。

図３は、本発明に係る車輪用軸受装置の第２の実施形態を示す縦断面図、図４は、図３のシール部を示す要部拡大図、図５は、図４の変形例を示す要部拡大図、図６は、図４の他の変形例を示す要部拡大図である。なお、この第２の実施形態は、前述した第１の実施形態（図１）と基本的にはシールとダストカバーの構成が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。

この車輪用軸受装置は、内方部材１と外方部材２、および両部材１、２間に転動自在に収容された複列の転動体３、３とを備えている。内方部材１は、内輪部材４と、この内輪部材４に所定のシメシロを介して圧入された内輪５とからなる。

外方部材２と内方部材１との間に形成される環状空間のインナー側の開口部にはシール２８が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に浸入するのを防止している。

シール２８は、図４に拡大して示すように、互いに対向配置されたスリンガ１７’と環状のシール板１８とからなるパックシールで構成されている。スリンガ１７’は、防錆能を有するオーステナイト系ステンレス鋼板やフェライト系のステンレス鋼板、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて形成され、内輪部材４の取付部１５の外径に圧入される円筒部１７ａと、この円筒部１７ａから径方向外方に延びる立板部１７ｂを備えている。そして、この立板部１７ｂの先端部にＮＢＲ等の合成ゴムからなるシール部材２９が加硫接着によって一体に接合されている。このシール部材２９には径方向外方に傾斜して延びるシールリップ２９ａが形成され、後述するダストカバー３１の遮蔽部３１ｂに所定の軸方向シメシロを介して摺接している。

ここで、本実施形態では、シール２８に加えてバックアップシール３０が外方部材２のインナー側の端部に装着されている。このバックアップシール３０は、ダストカバー３１と、このダストカバー３１に加硫接着により一体に接合された２つの磁気エンコーダ２３、３２とからなる。なお、磁気エンコーダ３２は、前述した磁気エンコーダ２３と同様、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入されると共に、周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁され、磁気エンコーダ２３とは異なった極数に設定されてセンサ（図示せず）に所定の軸方向エアギャップを介して対峙されている。

ダストカバー３１は、強磁性体の鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼板や防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて断面が略クランク形状に形成され、外方部材２のインナー側の端部外周に圧入される円筒状の嵌合部３１ａと、この嵌合部３１ａのインナー側の端部から径方向内方に延び、外方部材２のインナー側の端面２ｃに密着して位置決め精度を高める円板状の遮蔽部３１ｂと、嵌合部３１ａのアウター側の端部から径方向外方に延びる堰部３１ｃと、遮蔽部３１ｂの内径端からインナー側に延びる折曲部３１ｄを備えている。そして、この遮蔽部３１ｂは、スリンガ１７’の立板部１７ｂに僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンス２４が形成されている。また、ダストカバー３１が堰部３１ｃを備えていることで、外方部材２の外周面２７側から伝わってきた泥水や塩水からシール２８を保護して耐泥水性を高めることができる。

さらに、本実施形態では、ダストカバー３１の折曲部３１ｄの端部にＮＢＲ等の合成ゴムからなるシール部材３３が加硫接着によって一体に接合されている。このシール部材３３には径方向内方に傾斜して延びるシールリップ３３ａが形成され、内輪部材４の取付部１５の外径に所定の径方向シメシロを介して摺接している。

このように、本実施形態では、スリンガ１７’の立板部１７ｂに接合されたシール部材２９のシールリップ２９ａがバックアップシール３０を構成するダストカバー３１の遮蔽部３１ｂに摺接され、さらに、ダストカバー３１の折曲部３１ｄに接合されたシール部材３３のシールリップ３３ａが内輪部材４の取付部１５の外径に摺接されることにより、軸受部に装着されたシール２８の密封性を一層高めて軸受の長寿命化を図ることができる。

また、バックアップシール３０が、径方向検出面と軸方向検出面からなる２つの磁気エンコーダ２３、３２を備えているので、両磁気エンコーダ２３、３２の出力信号を同時に取り込み、バーニアの原理を用いることで、さらに高分解能な回転精度を検出することができる。ここでいうバーニアの原理とは、主たる制御機器に加えて補助的な制御機器を用いることによって、出力変動を小さくしたり微調整をしたりすることを言う。

図５に変形例を示す。この実施形態は、前述した実施形態（図４）と基本的にはスリンガ１７’のシール部材２９に変えてグリースが充填されている点が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。

このシール１２は、互いに対向配置されたスリンガ１７と環状のシール板１８とからなるパックシールで構成され、スリンガ１７の立板部１７ｂがバックアップシール３０の遮蔽部３１ｂに僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンス３４が形成されている。そして、このラビリンス３４に軸受内部に充填されているグリースと同様のグリース３５が充填されている。

このように、スリンガ１７の立板部１７ｂとバックアップシール３０の遮蔽部３１ｂとで形成されるラビリンス３４にグリース３５が充填されることにより、シール１２の内部に外部から泥水やダスト等が浸入するのを確実に防止することができ、シール１２の密封性が一層向上する。

図６に他の変形例を示す。この実施形態は、前述した実施形態（図２）と基本的にはバックアップシール２１の構成が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。

このシール１２は、互いに対向配置されたスリンガ１７と環状のシール板１８とからなるパックシールで構成されている。そして、このシール１２に加えてバックアップシール３６が外方部材２のインナー側の端部に装着されている。このバックアップシール３６は、ダストカバー３７と、このダストカバー３７に加硫接着により一体に接合された磁気エンコーダ３８とからなる。

ダストカバー３７は、非磁性体の鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板からプレス加工により断面略Ｌ字状に形成され、外方部材２のインナー側の端部外周に圧入される円筒状の嵌合部３７ａと、この嵌合部３７ａの端部から径方向内方に延び、外方部材２のインナー側の端面２ｃに密着して位置決め精度を高める鍔部３７ｂと、この鍔部３７ｂからインナー側に折曲される円板状の遮蔽部３７ｃを備えている。そして、この遮蔽部３７ｃのアウター側の側面に磁気エンコーダ３８が加硫接着によって一体に接合されている。

この磁気エンコーダ３８は、前述した磁気エンコーダ３２と同様、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入されると共に、周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁され、センサ（図示せず）に遮蔽部３７ｃを介して対峙されている。そして、シール１２のシール板１８とスリンガ１７の立板部１７ｂに僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンス３９、４０が形成されている。このように、磁気エンコーダ３８がダストカバー３７の遮蔽部３７ｃのアウター側の側面に接合され、外部に露出していないため、砂や小石が跳ね上げられても磁気エンコーダ３８に衝突することはなく、長期間に亘って摩耗や欠損を防止することができる。

本実施形態では、ダストカバー３７が非磁性体のオーステナイト系ステンレス鋼板で形成されているので、耐食性を有し、センサ（図示せず）の感知性能に悪影響を及ぼすことはない。なお、前述したスリンガ１７自体も非磁性体のオーステナイト系ステンレス鋼板で形成することにより、所望の検出精度を確保することができる。

さらに、バックアップシール３６のインナー側で、内輪部材４の取付部１５の外径に堰部材４１が装着されている。この堰部材４１は、防錆能を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、取付部１５の外径に圧入される円筒状の嵌合部４１ａと、この嵌合部４１ａのアウター側の端部から径方向外方に延びる立板部４１ｂを備えている。そして、この立板部４１ｂがダストカバー３７の遮蔽部３７ｃに僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンス４２が形成されている。これにより、前述したラビリンス３９、４０と相俟って外部から泥水や塩水がシール１２に浸入するのを防止することができ、一層シール１２の密封性を向上させることができる。

図７は、本発明に係る車輪用軸受装置の第３の実施形態を示す縦断面図、図８は、図７の検出部を示す要部拡大図である。なお、この第３の実施形態は、前述した第１の実施形態（図１）と基本的には内方部材とシールの構成が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。

この車輪用軸受装置は、内方部材４３と外方部材２、および両部材４３、２間に転動自在に収容された複列の転動体３、３とを備えている。内方部材４３は、内輪部材４４と、この内輪部材４４に所定のシメシロを介して圧入された内輪５とからなる。

内輪部材４４は、外周に一方の内側転走面４ａと、この内側転走面４ａから段部７ａを介して軸方向に延びる小径段部４ｂが形成されている。この内輪部材４４はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面４ａから小径段部４ｂの外周面に亙って高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。

内輪部材４４の外郭形状は、内側転走面４ａの溝底部からカウンタ部１３と、このカウンタ部１３から傾斜して形成された段部７ａ、および内輪５が突き合わされる肩部４ｃを介して小径段部４ｂに続いている。また、内輪部材４４のインナー側の端部にはすり鉢状の凹所１４を有する取付部４５が形成され、この取付部４５は、内側転走面４ａの大径部から径方向外方に延びる取付フランジ４６を一体に有している。なお、凹所１４の深さは肩部４ｃ付近までとされ、内輪部材４４のインナー側の端部が略均一な肉厚となっている。

本実施形態では、この取付部４５にボルト孔４７が複数個形成されると共に、懸架装置を構成するナックル４９が取付フランジ４６に衝合し、ボルト孔４７に締結される固定ボルト４８によって内輪部材４４がナックル４９に取り付けられる。また、ナックル４９には第１のセンサ５０と、アウター側に突設された取付部５１に第２のセンサ５２が装着されている。

図８に拡大して示すように、ナックル４９には通孔４９ａと、この通孔４９ａの近傍に雌ねじ４９ｂが形成され、通孔４９ａに第１のセンサ５０が嵌挿されると共に、第１のセンサ５０の取付フランジ５３を介して雌ねじ４９ｂに螺着される固定ボルト５４によって第１のセンサ５０がナックル４９に固定されている。また、第１のセンサ５０は、内輪部材４４の取付フランジ４６に穿設された貫通孔４６ａを通して、後述する第１の磁気エンコーダ６１に所定の軸方向エアギャップを介して対峙されている。

一方、取付部５１には通孔５１ａと、この通孔５１ａの近傍に雌ねじ５１ｂが形成され、通孔５１ａに第２のセンサ５２が嵌挿されると共に、取付部材５５を介して雌ねじ５１ｂに螺着される固定ボルト５６によって第２のセンサ５２がナックル４９に固定されている。また、第２のセンサ５２は、後述する第２の磁気エンコーダ６２に所定の径方向エアギャップを介して対峙されている。

外方部材２と内方部材４３との間に形成される環状空間のインナー側の開口部にはシール５７が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に浸入するのを防止している。

このシール５７は、外方部材２のインナー側の端部内周に圧入される芯金５８と、この芯金５８に加硫接着によって一体に接合されたシール部材５９とからなる一体型シールで構成されている。芯金５８は、防錆能を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板や防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて形成され、外方部材２のインナー側の端部内周に圧入され、重合して形成された円筒状の嵌合部５８ａと、この嵌合部５８ａから径方向内方に延びる内径部５８ｂと、嵌合部５８ａから径方向外方に延び、外方部材２のインナー側の端面２ｃに密着する遮蔽部５８ｃと、この遮蔽部５８ｃの外縁からインナー側に延びる笠部５８ｄを備えている。

芯金５８の遮蔽部５８ｃは、内輪部材４４の取付フランジ４６に僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンス６３が形成されると共に、笠部５８ｄが取付フランジ４６の外径に僅かな径方向すきまを介して対向し、ラビリンス６４が形成されている。これにより、軸受部に装着されたシール５７の密封性を高めて軸受の長寿命化を図ることができる。

一方、シール部材５９はＮＢＲ等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延び、取付フランジ４６の基部４６ｂの外周面に嵌着された金属環６０に所定の軸方向シメシロを介して摺接するサイドリップ５９ａとダストリップ５９ｂおよび径方向内方に傾斜して延び、金属環６０の外周面に所定の径方向シメシロを介して摺接するグリースリップ５９ｃを有している。なお、シール部材５９の材質としては、例示したＮＢＲ以外にも、例えば、耐熱性に優れたＨＮＢＲ、ＥＰＤＭ等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたＡＣＭ、ＦＫＭ、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。

金属環６０は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工によって、取付フランジ４６の基部４６ｂに対応して円弧状に形成されている。この金属環６０の曲率半径は、取付フランジ４６の基部４６ｂ曲率半径よりも大きくなるように設定されている。これにより、金属環６０を基部４６ｂに嵌合した時に基部４６ｂの円弧面に金属環６０が干渉して浮き上がり、位置決め固定が不安定になるのを防止することができる。

また、金属環６０は、素材となる鋼板の表面粗さがＲａ０．２〜０．６の範囲に設定されている。これにより、良好なシール摺接面を得ることができ、リップ摩耗を抑制すると共に、劣悪な環境で使用されても、シール５７の密封性能の維持を図ることができる。

ここで、本実施形態では、シール５７の芯金５８に第１の磁気エンコーダ６１と第２の磁気エンコーダ６２が加硫接着により一体に接合されている。第１の磁気エンコーダ６１は芯金５８の遮蔽部５８ｃに接合され、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁されて第１のセンサ５０に所定の軸方向エアギャップを介して対峙されている。

一方、第２の磁気エンコーダ６２は芯金５８の笠部５８ｄに接合され、第１の磁気エンコーダ６１と同様、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入されると共に、周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁され、第１の磁気エンコーダ６１とは異なった極数に設定されて第２のセンサ５２に所定の径方向エアギャップを介して対峙されている。

このように、本実施形態では、シール５７が複数のシールリップを有する一体型シールからなり、芯金５８に第１の磁気エンコーダ６１と第２の磁気エンコーダ６２が一体に接合されると共に、これらの２つの磁気エンコーダ６１、６２がナックル４９に装着された第１のセンサ５０と第２のセンサ５２にそれぞれ対峙されているので、両磁気エンコーダ６１、６２の出力信号を同時に取り込み、高分解能な回転精度を検出することができると共に、有効に軸受スペースを活用し、２つの磁気エンコーダ６１、６２が一体に接合された一体型シールを配設することができ、シール５７の密封性の向上を図ることができる。

図９は、本発明に係る車輪用軸受装置の第４の実施形態を示す縦断面図、図１０は、図９の検出部を示す要部拡大図、図１１（ａ）は、図１０のセンサを示す正面図、（ｂ）は、（ａ）の平面図、図１２（ａ）は、図１０の内輪部材の貫通孔を示す断面図、（ｂ）は、（ａ）の正面図、図１３（ａ）は、図１１のセンサの変形例を示す正面図、（ｂ）は、（ａ）の平面図、図１４（ａ）は、図１１のセンサの他の変形例を示す正面図、（ｂ）は、（ａ）の平面図、図１５（ａ）は、図１１のセンサの他の変形例を示す正面図、（ｂ）は、（ａ）の平面図、図１６は、図１０の実施形態の変形例を示す要部拡大図、図１７は、図１０の実施形態の他の変形例を示す要部拡大図、図１８は、図１７の実施形態の他の変形例を示す要部拡大図である。なお、この第４の実施形態は、前述した第３の実施形態（図７）と基本的には内方部材とシールの構成が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。

この車輪用軸受装置は、内方部材６５と外方部材２、および両部材６５、２間に転動自在に収容された複列の転動体３、３とを備えている。内方部材６５は、内輪部材６６と、この内輪部材６６に所定のシメシロを介して圧入された内輪５とからなる。

内輪部材６６は、外周に一方の内側転走面４ａと、この内側転走面４ａから段部７ａを介して軸方向に延びる小径段部４ｂが形成されている。この内輪部材６６はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面４ａから小径段部４ｂの外周面に亙って高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。

内輪部材６６の外郭形状は、内側転走面４ａの溝底部からカウンタ部１３と、このカウンタ部１３から傾斜して形成された段部７ａ、および内輪５が突き合わされる肩部４ｃを介して小径段部４ｂに続いている。また、内輪部材６６のインナー側の端部にはすり鉢状の凹所１４を有する取付部６７が形成され、この取付部６７は、内側転走面４ａの大径部から径方向外方に延びる取付フランジ６８を一体に有している。

本実施形態では、この取付部６７にボルト孔６９が複数個形成されると共に、懸架装置を構成するナックル７０が取付フランジ６８に衝合し、ボルト孔６９に締結される固定ボルト７１によって内輪部材６６がナックル７０に取り付けられる。また、取付フランジ６８にはセンサ７２が装着されている。なお、このセンサ７２にはケーブル７２ａが接続され、ナックル７０の通孔７０ａを介して図示しないアンチロックブレーキシステム（ＡＢＳ）の制御器に送られる。

図１０に拡大して示すように、内輪部材６６の取付フランジ６８に穿設された貫通孔６８ａにセンサ７２が嵌挿され、後述する磁気エンコーダ７４に所定の軸方向エアギャップを介して対峙されている。また、貫通孔６８ａのインナー側の開口部には座グリ部７３が形成され、センサ７２のフランジ７２ｂが嵌合して軸方向に位置決めされる。

外方部材２と内方部材６５との間に形成される環状空間のインナー側の開口部にはシール７５が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に浸入するのを防止している。

このシール７５は、外方部材２のインナー側の端部内周に圧入される芯金７６と、この芯金７６に加硫接着によって一体に接合されたシール部材５９とからなる一体型シールで構成されている。芯金７６は、防錆能を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板や防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて形成され、外方部材２のインナー側の端部内周に圧入され、円筒状の嵌合部７６ａと、この嵌合部７６ａから径方向内方に延びる内径部７６ｂを備えている。

一方、シール部材５９はＮＢＲ等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延び、取付フランジ６８の基部６８ｂの外周面に所定の軸方向シメシロを介して摺接するサイドリップ５９ａとダストリップ５９ｂおよび径方向内方に傾斜して延び、基部６８ｂの外周面に所定の径方向シメシロを介して摺接するグリースリップ５９ｃを有している。

ここで、本実施形態では、外方部材２の外周面２７に支持環（ダストカバー）７７が嵌合されている。この支持環７７は、防錆能を有する鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼板、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、外周面２７に嵌合される円筒部７７ａと、この円筒部７７ａから径方向外方に延びる立板部７７ｂを備え、この立板部７７ｂのインナー側の側面に磁気エンコーダ７４が加硫接着により一体に接合されている。磁気エンコーダ７４は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁されている。なお、取付フランジ６８の貫通孔６８ａのアウター側の開口部には環状の凸部６８ｃが形成され、検出部に外部から直接泥水等が浸入するのを防止している。

センサ７２は、図１１に示すように、スティックタイプの棒状に形成され、図１２に示す取付フランジ６８の貫通孔６８ａに嵌挿される挿入部７２ｃと、座グリ部７３に嵌合される円形のフランジ７２ｂを一体に有している。そして、このフランジ７２ｂの幅寸法ａは、この座グリ部７３の深さｂよりも大きく（ａ≧ｂ）に設定されている。これにより、取付フランジ６８にナックル７０の側面を衝合させ、固定ボルト７１を締結することにより、センサ７２は内輪部材６６とナックル７０によって挟持された状態で精度良く位置決め固定することができる。これにより、従来のようなセンサ取付ボルトやボルト固定孔等を廃止でき、組立作業を簡素化できると共に、低コスト化を図ることができる。

また、センサ７２のフランジ７２ｂの外径Ｄが座グリ部７３の内径ｄよりも僅かに大径（Ｄ≧ｄ）に設定されていれば、組立工程あるいは搬送時に脱落するのを防止し、センサ７２が車輪用軸受装置に装着された状態で客先に納入することができ、客先での取付工数を削減することができる。

図１３にセンサ７２の変形例を示す。このセンサ７９は、図１２に示す取付フランジ６８の貫通孔６８ａに嵌挿される挿入部７２ｃと、座グリ部７３に嵌合される円形のフランジ７９ａを一体に有している。そして、この７９ａの外周に複数の軸方向に延びる溝８０が形成されている。この溝８０が変形しながら圧入されるので、フランジ７９ａに過大な圧力がかからず、割れ等の心配なく圧入することができる。

図１４にセンサ７２の他の変形例を示す。このセンサ８１は、挿入部７２ｃとフランジ８１ａを一体に有している。そして、このフランジ８１ａの外周がアウター側（圧入側）に向って漸次小径となるテーパ面に形成されている。これにより、センサ８１圧入時に貫通孔６８ａ（図１２）への圧入力が減少し、組立作業が容易となり、作業効率が向上する。

また、図１５に示すように、センサ７２は、前述したものと同様、挿入部７２ｃとフランジ７２ｂを一体に有している。そして、このフランジ７２ｂの側面に予め接着剤８２が塗布されている。これにより、圧入作業を廃止することができ、センサ７２の固定を確実にすることができる。この接着剤８２に変えて粘着シート等を貼り付けて固定するようにしても良い。

なお、図示はしないが、センサの挿入部に雄ねじを形成すると共に、貫通孔６８ａに雌ねじを形成し、ねじ嵌合するようにしても良い。さらに、センサのフランジと貫通孔を凹凸嵌合してセンサの回転を規制することにより、振動等でセンサがずれるを防止しても良い。

次に、図１０を用いて、センサ７２と磁気エンコーダ７４とのエアギャップの調整方法について説明する。
まず、予めセンサ７２の検出部７２ｄからフランジ７２ｂまでの距離と、磁気エンコーダ７４の側面から内輪部材６６における取付フランジ６８の貫通孔６８ａの座グリ部７３までの距離を測定しておき、その距離をランク分けして選別する。これらのランク分けに合わせてエアギャップ調整用のドーナツ形状のシム（間座）を用意し、センサ７２のフランジ７２ｂと座グリ部７３との当接面にランクに合ったシムを挟み込むことで、精密なエアギャップの調整をすることができる。なお、センサ７２のフランジ７２ｂとナックル７０との当接面にシムを介装させても良い。また、シムを周方向の一部に切欠きを有するＵ字状に形成することにより、センサ７２のケーブル７２ａを通すことができ、組立作業性が向上する。なお、シムは金属に限らず合成樹脂や防水処理をした紙でも良い。

前述した実施形態（図１０）は、磁気エンコーダ７４とセンサ７２が軸方向に対峙する、所謂アキシアルタイプを例示したが、これに限らず、図１６に示すようなラジアルタイプであっても良い。なお、この実施形態は、前述した第４の実施形態（図１０）と基本的には検出部の構成が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。

本実施形態では、内輪部材６６の取付部６７にボルト孔６９が複数個形成されると共に、ナックル７０が取付フランジ６８に衝合し、ボルト孔６９に締結される固定ボルト７１によって内輪部材６６がナックル７０に取り付けられる。また、取付フランジ６８にはセンサ８３が装着されている。そして、内輪部材６６の取付フランジ６８に穿設された貫通孔６８ａにセンサ８３が嵌挿され、後述する磁気エンコーダ８４に所定の径方向エアギャップを介して対峙されている。

ここで、外方部材２の外周面２７に支持環８５が嵌合されている。この支持環８５は、防錆能を有する鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼板、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、外周面２７に嵌合される円筒部８５ａと、この円筒部８５ａから径方向内方に延びる立板部８５ｂを備え、円筒部８５ａの外周面に磁気エンコーダ８４が加硫接着により一体に接合されている。磁気エンコーダ８４は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁されている。そして、センサ８３の挿入部８３ａの検出部８３ｂがこの磁気エンコーダ８４に対峙されている。これにより、エアギャップの調整が前述したラジアルタイプに比べ容易になり、組立作業性が一段と向上する。

図１７に前述した支持環７７、８５の変形例を示す。この支持環８６は、防錆能を有する鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼板、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工にて形成され、外周面２７に嵌合される円筒部８６ａと、この円筒部８６ａのインナー側の端部から径方向内方に延び、外方部材２のインナー側の端面２ｃに密着する鍔部８６ｂと、円筒部８６ａのアウター側の端部から径方向に延び、堰部となる立板部８６ｃと、この立板部８６ｃから軸方向に延びる笠部８６ｄを備え、鍔部８６ｂのインナー側の側面に磁気エンコーダ８７が加硫接着により一体に接合されている。磁気エンコーダ８７は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁されている。そして、センサ７２の検出部７２ｄがこの磁気エンコーダ８７に対峙されている。

この実施形態では、取付フランジ６８の凸部６８ｃに加え、支持環８６が立板部８６ｃと笠部８６を一体に備えているので、センサ７２の検出部７２ｄだけでなく、軸受空間を密封するシール７５に外部から直接泥水等が浸入するのを防止することができ、検出精度の向上と共に、長期間に亘って密封性を確保することができ、信頼性を向上させることができる。

図１８に前述した支持環８６の変形例を示す。この支持環８６’は、前述した支持環８６と形状は同じであるが、非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼板からプレス加工にて形成されている。そして、鍔部８６ｂが外方部材２のインナー側の端面２ｃに密着せず、鍔部８６ｂのアウター側の側面と端面２ｃ間に磁気エンコーダ８８が介装され、支持環８６’を介してセンサ７２の検出部７２ｄが対峙されている。これにより、磁気エンコーダ８８が支持環８６によって保護されて外部に露出することがないため、検出精度を向上させることができ、一層信頼性を確保することができる。

以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。

本発明に係る車輪用軸受装置は、第３世代構造の外輪回転タイプの車輪用軸受装置に適用することができる。

１、４３、６５ 内方部材
２ 外方部材
２ａ、２ｂ 外側転走面
２ｃ 外方部材のインナー側の端面
３ 転動体
４、４４、６６ 内輪部材
４ａ、５ａ 内側転走面
４ｂ 小径段部
４ｃ 肩部
５ 内輪
６ 車輪取付フランジ
６ａ ハブボルト
６ｂ リブ
６ｃ 円孔
７ａ、７ｂ 段部
８ 加締部
９、１０ 保持器
１１ キャップ
１２、２８、５７、７５ シール
１３ カウンタ部
１４ 凹所
１５、４５、６７ 取付部
１６、４７、６９ ボルト孔
１７、１７’ スリンガ
１７ａ、７７ａ、８５ａ、８６ａ 円筒部
１７ｂ、４１ｂ、７７ｂ、８５ｂ、８６ｃ立板部
１８ シール板
１９、５８、７６ 芯金
２０、２９、３３、５９ シール部材
２０ａ、５９ａ サイドリップ
２０ｂ、５９ｂ ダストリップ
２０ｃ、５９ｃ グリースリップ
２１、３０、３６ バックアップシール
２２、３１、３７ ダストカバー
２２ａ、３１ａ、３７ａ、４１ａ、５８ａ、７６ａ 嵌合部
２２ｂ、３１ｂ、３７ｃ、５８ｃ 遮蔽部
２３、３２、３８ 磁気エンコーダ
２４、３４、３９、４０、４２、６３、６４ ラビリンス
２５ 環状凹部
２６ テーパ面
２７ 外周面
２９ａ、３３ａ シールリップ
３１ｃ 堰部
３１ｄ 折曲部
３５ グリース
３７ｂ、８６ｂ 鍔部
４１ 堰部材
４６、６８ 取付フランジ
４６ａ 貫通孔
４６ｂ、６８ｂ 取付フランジの基部
４８、５４、５６、７１ 固定ボルト
４９、７０ ナックル
４９ａ、５１ａ、６８ａ、７０ａ 通孔
４９ｂ、５１ｂ 雌ねじ
５０ 第１のセンサ
５１ ナックルの取付部
５２ 第２のセンサ
５３ 取付フランジ
５５ 取付部材
５８ｂ、７６ｂ 内径部
５８ｄ、８６ｄ 笠部
６０ 金属環
６１ 第１の磁気エンコーダ
６２ 第２の磁気エンコーダ
７２、７９、８１、８３ センサ
７２ａ ケーブル
７２ｂ、７９ａ、８１ａ フランジ
７２ｃ、８３ａ 挿入部
７２ｄ、８３ｂ 検出部
７３ 座グリ部
７４、８４、８７、８８ 磁気エンコーダ
７７、８５、８６、８６’ 支持環
６８ｃ 環状の凸部
８０ 溝
８２ 接着剤
１００ 車輪用軸受装置
１０１ 内方部材
１０１ａ、１０１ｂ 内側転走面
１０２ 外方部材
１０２ａ、１０２ｂ 外側転走面
１０３ ボール
１０４ 補強部材
１０５ 回転側フランジ
１０６ 静止側フランジ
１０７ エンコーダ
１０８ センサ
１０９ シール
ａ フランジの幅寸法
ｂ 座グリ部の深さ
ｄ 座グリ部の内径
Ｄ フランジの外径
ＰＣＤｉ インナー側の転動体のピッチ円直径
ＰＣＤｏ アウター側の転動体のピッチ円直径

Claims (12)

1. 外周に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
   外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から傾斜する段部を介して軸方向に延びる小径段部が形成された内輪部材、およびこの内輪部材の小径段部に圧入固定され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、
   この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
   前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間のインナー側の開口部に装着されたシールとを備え、
   前記複列の転動体のうちインナー側の転動体のピッチ円直径がアウター側の転動体のピッチ円直径よりも大径に設定された車輪用軸受装置において、
   前記外方部材の端部にバックアップシールが装着され、このバックアップシールが、ダストカバーと、このダストカバーに接合され、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁された磁気エンコーダを備えると共に、前記ダストカバーが、前記シールまたは内輪部材に僅かなすきまを介して対向し、ラビリンスを構成していることを特徴とする車輪用軸受装置。
2. 前記シールが、互いに対向配置されたスリンガと環状のシール板とからなるパックシールで構成され、前記スリンガが鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、前記内輪部材の外径に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部を備えると共に、前記ダストカバーが、前記外方部材の端部外周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に延び、前記外方部材のインナー側の端面に密着する円板状の遮蔽部とを備え、この遮蔽部が前記スリンガの立板部と僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンスが形成されると共に、前記ダストカバーの嵌合部の外周に前記磁気エンコーダが接合されている請求項１に記載の車輪用軸受装置。
3. 前記ダストカバーが、前記嵌合部のアウター側の端部から径方向外方に延びる堰部を備えている請求項１または２に記載の車輪用軸受装置。
4. 前記ダストカバーが、前記遮蔽部の内径端からインナー側に延びる折曲部を備え、この折曲部の端部に合成ゴムからなるシール部材が加硫接着によって一体に接合されると共に、このシール部材に、径方向内方に傾斜して延びるシールリップが形成され、前記内輪部材の外径に所定の径方向シメシロを介して摺接している請求項１乃至３いずれかに記載の車輪用軸受装置。
5. 前記スリンガの立板部の先端部に合成ゴムからなるシール部材が加硫接着によって一体に接合され、このシール部材に、径方向外方に傾斜して延びるシールリップが形成され、前記ダストカバーの遮蔽部に所定の軸方向シメシロを介して摺接されている請求項２に記載の車輪用軸受装置。
6. 前記スリンガの立板部と前記ダストカバーの遮蔽部との間にグリースが充填されている請求項２に記載の車輪用軸受装置。
7. 前記ダストカバーの遮蔽部に磁気エンコーダが接合され、この磁気エンコーダの磁極が前記嵌合部に接合された磁気エンコーダの磁極と異なった極数に設定されている請求項２に記載の車輪用軸受装置。
8. 前記バックアップシールのインナー側で、前記内輪部材の外径に堰部材が装着され、この堰部材が、防錆能を有する鋼板からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成され、前記内輪部材の外径に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部のアウター側の端部から径方向外方に延びる立板部を備え、この立板部が前記ダストカバーの遮蔽部に僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンスが形成されている請求項１乃至７いずれかに記載の車輪用軸受装置。
9. 前記ダストカバーが非磁性体からなる鋼板で形成され、その遮蔽部のアウター側の側面に前記磁気エンコーダが接合されると共に、前記スリンガの立板部に僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンスが形成されている請求項１または８に記載の車輪用軸受装置。
10. 前記内輪部材のインナー側の端部に、ナックルに取り付けられるための取付フランジが形成されると共に、前記シールが、前記外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着によって一体に接合され、前記取付フランジの基部に摺接するリップを備えたシール部材とからなる一体型シールで構成され、前記芯金が鋼板からプレス加工にて形成されて前記ダストカバーと一体化され、前記外方部材の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に延びる内径部と、前記嵌合部から径方向外方に延び、前記外方部材の端面に密着する遮蔽部と、この遮蔽部の外縁からインナー側に延びる笠部を備え、これら遮蔽部と笠部が前記取付フランジに僅かなすきまを介してそれぞれ対向し、ラビリンスが形成され、前記芯金の遮蔽部と笠部にそれぞれ前記磁気エンコーダが接合されている請求項１に記載の車輪用軸受装置。
11. 前記内輪部材のインナー側の端部に、ナックルに取り付けられるための取付フランジが形成され、この取付フランジに前記ナックルの側面が衝合されて固定ボルトによって締結されると共に、前記取付フランジに形成された貫通孔にセンサが嵌挿され、このセンサが前記内輪部材とナックルによって挟持された状態で位置決め固定されている請求項１に記載の車輪用軸受装置。
12. 前記センサがスティックタイプの棒状に形成され、前記取付フランジの貫通孔に嵌挿される挿入部と円形のフランジを一体に有すると共に、前記貫通孔のインナー側の開口部に座グリ部が形成され、この座グリ部に前記センサのフランジが嵌合されている請求項１１に記載の車輪用軸受装置。

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