JP2014012757A - アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂組成物 - Google Patents

アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 特に高い耐トラッキング性を有すると共に、機械的強度、成形性、および成形品外観にも優れることから、電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気部品用途に有用なアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(A)100重量部に対し、少なくともエチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)1〜50重量部、及び水酸化マグネシウム(C1),2CaO・3B・5HOで表されるホウ酸カルシウムの水和物(C2),ハイドロタルサイト(C3)から選択される1種以上の無機フィラー(C)30〜200重量部を含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(以下、ABS樹脂と記す。)が本来有する耐衝撃性などの機械的特性、成形性、成形品外観、寸法安定性などを損なうことなく、耐トラッキング性をも高めたABS樹脂組成物に関するものであり、更に詳しくは、高い耐電圧特性を要求される電気・電子部品や自動車電装部品のような、特に高度な耐トラッキング性と優れた機械的強度とを同時に要求される用途に適するABS樹脂組成物に関するものである。
ABS樹脂は、機械的強度、成形性、成形品外観、寸法安定性などに優れることから、自動車外装部品や内装部品、冷蔵庫やテレビ等の電気機器等に幅広く用いられている。しかし、電気特性、中でも耐トラッキング性は一般的に悪く、耐トラッキング性が要求される自動車電装部品や、高電圧のかかる電気・電子部品には使用が困難であった。
一方、耐トラッキング性を要求される部品には、耐トラッキング性の良好な脂肪族ナイロンや、PBT、PPS等が使用されているが、何れも高価であり、汎用プラスチックで耐トラッキング性の良好な材料の開発が望まれている。
そして、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂にポリオレフィン系ワックスを配合してなる家電部品、OA機器部品への適用可能なスチレン系樹脂組成物(例えば特許文献1参照。)、ポリ乳酸樹脂、分岐ポリカーボネート樹脂、さらにビニル系樹脂を配合してなる樹脂組成物(例えば特許文献2参照。)、等が提案されている。
特開2001−064463号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開2010−077349号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
しかし、特許文献1に提案されたスチレン系樹脂組成物は、成形性、寸法性を改良した家電部品、OA機器部品への適応を想定したものではあるが、耐トラッキング性という点では満足できるものではない。また、特許文献2において提案された樹脂組成物においては、ABS樹脂に代表されるビニル系樹脂は主成分でないことから、本質的にABS樹脂の耐トラッキング性を改良したものではない、等の課題を有するものであり、ABS樹脂が本来有する高い機械的強度、成形性、成形品外観を維持したまま、耐トラッキング性を向上するという点では満足できるものが提案されていないのが現状である。
そこで、本発明は、高い耐トラッキング性を有すると共に、機械的強度、成形性、成形品外観に優れるABS樹脂組成物を提供することを目的とし、さらに詳しくは、電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気部品用途に有用なABS樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ABS樹脂にエチレン−ビニルアルコール系共重合体、及び無機フィラーを配合し、更に必要に応じて無機充填材、離型剤を配合するABS樹脂組成物が、高い耐トラッキング性を有すると共に、機械的強度、成形性、成形品外観にも優れる組成物となりうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、ABS樹脂(A)100重量部に対し、少なくとも下記の一般式(1)で示されるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)1〜50重量部、及び水酸化マグネシウム(C1),2CaO・3B・5HOで表されるホウ酸カルシウムの水和物(C2),ハイドロタルサイト(C3)から選択される1種以上の無機フィラー(C)30〜200重量部を含むことを特徴とするABS樹脂組成物に関するものである。
Figure 2014012757
(ここで、x、zはいずれもが0を超え、yが0以上、x+y+z=1であり、Rは炭素数1〜10の炭化水素基である。)
以下、本発明に関し詳細に説明する。
本発明のABS樹脂組成物は、ABS樹脂(A)100重量部に対し、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)1〜50重量部、及び水酸化マグネシウム(C1),2CaO・3B・5HOで表されるホウ酸カルシウムの水和物(C2),ハイドロタルサイト(C3)から選択される1種以上の無機フィラー(C)30〜200重量部からなるものである。
本発明のABS樹脂組成物を構成するABS樹脂(A)としては、公知のABS樹脂を用いることができる。ABS樹脂とは、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを原料モノマーとして用い、共重合を行うことにより得られる樹脂の総称であり、各成分の比率は任意のものを用いることができる。また、重合法も任意の方法を選択することができる。該ABS樹脂の製造方法としては、ポリブタジエンにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトするグラフト共重合法が一般的ではあるが、例えば乳化グラフト法やポリマーブレンド法等で重合したABS樹脂をも用いることができる。該ABS樹脂としては、例えば(商品名)テクノABS(テクノポリマー株式会社製)、(商品名)UMG ABS(ユーエムジー・エービーエス株式会社製)、(商品名)クララスチック(日本エイアンドエル株式会社製)、(商品名)スタイラック(旭化成ケミカルズ株式会社製)、(商品名)トヨラック(東レ株式会社製)、(商品名)デンカABS(電気化学工業株式会社製)、等の市販品をも用いることができる。
また、該ABS樹脂(A)としては、ABS樹脂を成分とするものであれば如何なる樹脂、例えばABS樹脂ブレンド物、ABSアロイ等をも用いることが可能であり、そのようなものとしては、例えばポリカーボネート/ABS樹脂アロイ(以下、PC/ABSアロイと記す。)を挙げることができ、該PC/ABSアロイとしては、例えば(商品名)ユーピロン(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)、(商品名)エクセロイ(テクノポリマー株式会社製)、(商品名)マルチロン(帝人化成株式会社製)、(商品名)タフロン(出光興産株式会社製)、(商品名)SDポリカ(住化スタイロンポリカーボネート株式会社製)、等の市販品をも例示することができる。
本発明のABS樹脂組成物を構成する上記の一般式(1)で示されるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)は、ABS樹脂組成物の耐トラッキング性を向上させるために用いられるものである。そして、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)は、上記の一般式(1)において、x、zはいずれもが0を超え、yは0以上、x+y+z=1であり、Rは炭素数1〜10の炭化水素基からなるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
ここで、xが0である場合、得られる組成物は耐熱性に劣るものとなる。また、zが0である場合、得られる組成物は耐トラッキング性に劣るものとなる。そして、特に高い耐トラッキング性と良好な機械的強度を併せ持つABS樹脂組成物となることから、x=0.25〜0.94、y=0〜0.15、z=0.02〜0.75の範囲であるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体であることが好ましく、また、x、y、zはいずれもが0を超えるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体、特にx=0.69〜0.94、y=0.01〜0.15、z=0.02〜0.30の範囲であるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体であることが好ましい。
また、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等を挙げることができる。ここで、炭素数10を超えるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体である場合、得られる組成物は機械的強度に劣るものとなる。
該エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)の製法は特に制限はなく、例えばエチレン単量体、脂肪酸ビニルエステル単量体及びビニルアルコール単量体を共重合する方法;エチレン−脂肪酸ビニルエステル共重合体を部分鹸化する方法、等により得ることが可能であり、中でもエチレン−脂肪酸ビニルエステル共重合体を部分鹸化し得られるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体は工業的に入手が容易であることから好ましく、中でもエチレン−酢酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体は、工業的に入手が容易であること、特に耐トラッキング性に優れるABS樹脂組成物となることから最も好ましい。
本発明のABS樹脂組成物を構成する該エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)の配合量は、ABS樹脂(A)100重量部に対し、1〜50重量部である。該エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)の配合量が1重量部未満である場合、得られる組成物は耐トラッキング性に劣るものとなる。一方、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)の配合量が50重量部を越える場合、得られる組成物は機械的強度、成形性、成形品外観にも劣るものとなる。
本発明のABS樹脂組成物を構成する無機フィラー(C)としては、水酸化マグネシウム(C1),2CaO・3B・5HOで表されるホウ酸カルシウムの水和物(C2),ハイドロタルサイト(C3)から選択される1種以上の無機フィラーである。
該水酸化マグネシウム(C1)としては、水酸化マグネシウムと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも、得られるABS樹脂組成物が、耐トラッキング性に優れ、かつ高い機械的強度を有するものとなることから、化学式Mg(OH)で示される水酸化物を80重量%以上含む比較的純度の高い水酸化マグネシウムが好ましく、化学式Mg(OH)で示される水酸化物を80重量%以上、CaO含有量5重量%以下、塩素含有量1重量%以下である水酸化マグネシウムがより好ましく、Mg(OH)95重量%以上、CaO含有量1重量%以下、塩素含有量0.5重量%以下である水酸化マグネシウムが更に好ましく、Mg(OH)98重量%以上、CaO含有量0.1重量%以下、塩素含有量0.1重量%以下の高純度水酸化マグネシウムが最も好ましい。
該水酸化マグネシウム(C1)は、特に耐トラッキング性、機械的強度、成形性、成形品外観に優れるABS樹脂組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D50)が0.3〜10μmの範囲を有するものであることが好ましく、特に0.5〜3μmの範囲を有するものであることが好ましい。また、該水酸化マグネシウム(C1)の比表面積は、特に耐トラッキング性、機械的強度に優れるABS樹脂組成物となることから、比表面積が10m/g以下であることが好ましい。
該水酸化マグネシウム(C1)としては、例えば表面処理が施されていない水酸化マグネシウム(以下、表面未処理水酸化マグネシウム(C1−1)と記す。)、高級脂肪酸及び/又は高級脂肪酸の金属塩、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等で表面処理が施された水酸化マグネシウム(以下、表面処理水酸化マグネシウム(C1−2)と記す。)、等が挙げられる。そして、表面処理水酸化マグネシウムの表面被覆処理剤について特に制限はなく、高級脂肪酸及びその金属塩としては、例えばステアリン酸、オレイン酸等、及びそのアルカリ金属塩等;アニオン系界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル等;リン酸エステルとしては、例えばオルトリン酸と高級アルコールのエステル類等;シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等;チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート等;アルミニウム系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等;多価アルコールと脂肪酸のエステル類としては、例えばグリセリンモノステアレート等、が挙げられる。そして、これら水酸化マグネシウム(C1)の中でも特に機械的強度に優れるABS樹脂組成物となることから、表面処未理水酸化マグネシウム(C1−1)、シラン系カップリング剤で表面処理が施された表面処理水酸化マグネシウム(C1−2)及びこれらの混合物が好ましい。
本発明のABS樹脂組成物を構成する無機フィラー(C)として用いられるホウ酸カルシウムの水和物(C2)とは、2CaO・3B・5HOの構造式で表されるものであり、一般的には天然鉱物であるコマレナイトとして称されることもあるものであり、該ホウ酸カルシウムの水和物(C2)が2CaO・3B・5HOの構造を有するものであれば、天然鉱物に限定されるものではない。
そして、該ホウ酸カルシウムの水和物(C2)は、特に耐トラッキング性、機械的強度、成形性、成形品外観に優れるABS樹脂組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D50)が1〜30μmの範囲を有するものであることが好ましく、特に1〜20μmの範囲を有するものであることが好ましい。
また、該ホウ酸カルシウムの水和物(C2)は、その表面が被覆処理されているもの、若しくはされていないもののいずれも用いることができる。表面が被覆処理される場合の、表面被覆処理剤は特に制限はなく、高級脂肪酸及び/又は高級脂肪酸の金属塩、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、多価アルコールと脂肪酸のエステル類等が挙げられる。高級脂肪酸及びその金属塩としては、例えばステアリン酸、オレイン酸等、及びそのアルカリ金属塩等;アニオン系界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル等;リン酸エステルとしては、例えばオルトリン酸と高級アルコールのエステル類等;シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等;チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート等;アルミネート系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等;多価アルコールと脂肪酸のエステル類としては、例えばグリセリンモノステアレート等、が挙げられる。
本発明のABS樹脂組成物を構成する無機フィラー(C)として用いられるハイドロタルサイト(C3)とは、ハイドロタルサイトと称される範疇に属するものであれば如何なるものも用いることが可能であり、例えば下記の一般式(2)で示されるものを挙げることができる。
(M1−a(OH))(Cn−a/n・mHO (2)
(ここで、Mは2価の金属、Nは3価の金属、Cn−は陰イオンを表し、aは0<a<1、mはm≧0、nは1,2又は3である。)
上記の一般式(2)で示されるハイドロタルサイトは、(M1−a(OH))で表わされる複合金属水酸化物の層と、その層の間に挿入したCn−で示される陰イオン及び水とから成る構造よりなるものである。そして、層間に挿入された水(以下、層間水と言う。)は、おおよそ200℃前後に加熱することにより層間より脱離させることが可能である。
本発明のABS樹脂組成物を調製する際には、加熱溶融混練法により調製することが一般的であり、その際の混練温度は200℃程度に達することが多いことから、該ハイドロタルサイト(C3)としては、加熱溶融混練時における層間水の脱離を抑制することが可能となることから、予め層間水を脱離させたものであることが好ましい。層間水を脱離させる方法としては、例えば加熱乾燥する方法が挙げられる。この様な加熱乾燥装置としては、例えば静置型乾燥機、回転・撹拌型乾燥機、搬送型乾燥機等が例示できる。また加熱条件としては、処理するハイドロタルサイトの量、加熱乾燥装置の型式や大きさ等により異なるものではあるが、例えば加熱温度としては200〜280℃、加熱時間としては2時間〜半日程度であることが好ましい。
そして、上記の一般式(2)で示されるハイドロタルサイトのMである2価の金属としては、例えばMg、Zn、Ca、Ni、Co等を挙げることができ、Nである3価の金属としては、例えばAl、Fe、Mn、Cr等を挙げることができ、Cn−である陰イオンとしては、例えばCO 2−、SO 2−、Cl等を挙げることができる。また、aは0<a<1であり、層間水の量を示すmとしては、m≧0であり、本発明のABS樹脂組成物を調製する際に脱離する水が少なくなることから0≦m≦5であることが好ましい。
該ハイドロタルサイト(C3)としては、具体的には(Mg0.75Al0.25(OH))(CO 2−0.125・4HO、(Mg0.75Al0.25(OH))(CO 2−0.125、(Mg0.67Al0.33(OH))(CO 2−0.167・3HO、(Mg0.67Al0.33(OH))(CO 2−0.167、(Mg0.7Al0.3(OH))(CO 2−0.15・3.5HO又は(Mg0.7Al0.3(OH))(CO 2−0.15等を挙げることができる。
該ハイドロタルサイト(C3)は、特に耐トラッキング性、機械的強度、成形性、成形品外観に優れたABS樹脂組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D50)が0.3〜10μmの範囲を有するものであることが好ましく、特に0.4〜2μmの範囲を有するものであることが好ましい。また、該ハイドロタルサイト(C3)の比表面積は、特に耐トラッキング性、機械的強度に優れるABS樹脂組成物となることから、20m/g以下であることが好ましい。
また、該ハイドロタルサイト(C3)は、その表面が被覆処理されているもの、若しくはされていないもののいずれも用いることができる。表面が被覆処理される場合の、表面被覆処理剤は特に制限はなく、高級脂肪酸及び/又は高級脂肪酸の金属塩;アニオン系界面活性剤、リン酸エステル、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、多価アルコールと脂肪酸のエステル類等が挙げられる。高級脂肪酸及びその金属塩としては、例えばステアリン酸、オレイン酸等、及びそのアルカリ金属塩等;アニオン系界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル等;リン酸エステルとしては、例えばオルトリン酸と高級アルコールのエステル類等;シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等;チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート等;アルミネート系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等;多価アルコールと脂肪酸のエステル類としては、例えばグリセリンモノステアレート等、が挙げられる。
本発明のABS樹脂組成物において、該無機ファイラー(C)として、水酸化マグネシウム(C1)、ホウ酸カルシウムの水和物(C2)、ハイドロタルサイト(C3)のそれぞれ単独で用いることも可能であり、又は2種以上の混合物として用いることも可能である。
本発明のABS樹脂組成物を構成する無機フィラー(C)の配合量は、ABS樹脂(A)100重量部に対し、30〜200重量部である。該無機フィラー(C)の配合量が30重量部未満である場合、得られる組成物は耐トラッキング性に劣るものとなる。一方、該無機フィラー(C)の配合量が200重量部を越える場合、得られる組成物は機械的強度、成形性、成形品外観に劣るものとなる。
本発明のABS樹脂組成物は、機械的強度及び寸法安定性がさらに向上したものとなることから繊維状充填剤(D)を配合してなることが好ましい。繊維状充填剤(D)としては、繊維状充填材の範疇に属するものであればよく、例えばガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維等が例示でき、その中でも、ガラス繊維が好ましい。該繊維状充填剤(D)は、該ABS樹脂組成物の機械的強度がより高いものとなることから、イソシアネート系化合物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、エポキシ化合物等で表面処理したものであることが好ましい。
該繊維状充填剤(D)の配合量は、得られるABS樹脂組成物が機械的強度、成形性、成形品外観に優れるものとなることから、ABS樹脂(A)100重量部に対し、30〜200重量部であることが好ましい。
本発明のABS樹脂組成物は、得られる成形品の金型離型性や外観をより優れたものとするために離型剤(E)を配合してなることが好ましい。該離型剤(E)としては離型剤として知られている範疇に属するものであれば用いることが可能であり、例えばカルナバワックス(E1)、ポリエチレンワックス(E2)、ポリプロピレンワックス(E3)、ステアリン酸金属塩(E4)、酸アマイド系ワックス(E5)等を挙げることができ、その中でも特に得られる成形品の金型離型性、成形品外観に優れるABS樹脂組成物となることからカルナバワックス(E1)であることが好ましい。
該カルナバワックス(E1)としては、一般的な市販品を用いることができ、例えば(商品名)精製カルナバ1号粉(日興ファインプロダクツ製)等を挙げることができる。
該離型剤(E)の配合量は、特に金型離型性、成形品外観に優れるABS樹脂組成物となることからABS樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜5重量部であることが好ましい。
本発明のABS樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、非繊維状充填剤を配合していてもよく、非繊維状充填剤としては、例えばワラストナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、タルク、アルミナシリケート等の珪酸塩;酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム等の窒化物;ガラスフレーク、ガラスビーズ等を例示でき、その中でも、マイカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ガラスビーズが好ましい。また、該非繊維状充填剤は、イソシアネート系化合物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、エポキシ化合物等で表面処理したものであってもよい。
さらに、本発明のABS樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えばエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等の1種以上を混合して使用することができる。
本発明のABS樹脂組成物の製造方法としては、従来使用されている加熱溶融混練方法を用いることができる。例えば単軸または二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダー等による加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではなく、通常180〜300℃の中から任意に選ぶことが出来る。また、本発明のABS樹脂組成物は、射出成形機、押出成形機、トランスファー成形機、圧縮成形機等を用いて任意の形状に成形することができる。
さらに、本発明のABS樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、従来公知の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、発泡剤、金型腐食防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料、顔料等の着色剤、帯電防止剤等の添加剤を1種以上併用しても良い。
本発明のABS樹脂組成物は、パワーモジュール、各種端子板、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバータ、多極ロッド、電気部品キャビネット、ライトソケット、プラグ、コンデンサ封口板などの用途に特に好適に使用できる。
本発明は、高い耐トラッキング性を有すると共に、機械的強度、成形性、および成形品外観にも優れるABS樹脂組成物を提供するものであり、該ABS樹脂組成物は、特に電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気部品用途に特に有用なものである。
次に、本発明を実施例及び比較例によって説明するが、本発明はこれらの例になんら制限されるものではない。
実施例及び比較例において用いたABS樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、無機フィラー、繊維状充填剤、カルナバワックスの詳細を以下に示す。
<ABS樹脂>
ABS樹脂(A−1)(以下、ABS(A−1)と記す。):旭化成ケミカルズ社製、(商品名)スタイラック121。
<エチレン−ビニルアルコール系共重合体>
エチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体(B−1)(以下、単に共重合体(B−1)と記す。):東ソー(株)製、(商品名)メルセンH6820、x=0.817、y=0.021、z=0.162、Rがメチル基。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(B−2)(以下、共重合体(B−2)と記す。):東ソー(株)製、(商品名)メルセンH6051、x=0.802、y=0、z=0.198。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(B−3)(以下、共重合体(B−3)と記す。):(株)クラレ製、(登録商標)エバール F171B、x=0.32、y=0、z=0.68。
<水酸化マグネシウム>
表面未処理水酸化マグネシウム(C1−1)(以下、水酸化マグネシウム(C1−1)と記す。);マーティンスベルク社製、(商品名)マグニフィンH5;Mg(OH)含有量99.8重量%、平均粒子径0.8μm、比表面積5.5m/g。
表面処理水酸化マグネシウム(C1−2)(以下、水酸化マグネシウム(C1−2)と記す。);協和化学工業(株)製、(商品名)キスマ5P;Mg(OH)含有量99.5重量%、平均粒子径0.7μm、比表面積6.5m/g、表面処理:メタクリロキシシラン。
ホウ酸カルシウムの水和物(C2−1)(以下、ホウ酸カルシウム(C2−1)と記す。);キンセイマテック(株)製、(商品名)UBP3ミクロン品、平均粒子径3μm。
ハイドロタルサイト(C3−1)(以下、ハイドロタルサイト(C3−1)と記す。);堺化学工業(株)製、(商品名)STABIACE HT-1;(Mg0.67Al0.33(OH))(CO 2−0.167・3HO、平均粒子径0.58μm、BET比表面積10m/g。
ハイドロタルサイト(C3−2)(以下、ハイドロタルサイト(C3−2)と記す。);ハイドロタルサイト(C−1)を加熱処理し、層間水を脱離除去し、(Mg0.67Al0.33(OH))(CO 2−0.167としたもの。
<繊維状充填剤>
ガラス繊維(D−1);エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91;繊維径9μm、繊維長3mm。
<カルナバワックス>
カルナバワックス(E1−1);日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末。
ハイドロタルサイトの加熱処理
送風定温乾燥機(アドバンテック社製、(商品名)FC−610)にハイドロタルサイト(C−1)を入れ、220℃で5時間加熱処理し、ハイドロタルサイトの層間水を脱離除去しハイドロタルサイト(C−2)を得た。本加熱処理によりハイドロタルサイト(C−1)は11重量%減量し、層間水は脱離除去された。
実施例及び比較例で用いた評価・測定方法を以下に示す。
〜耐トラッキング性の測定〜
射出成形により直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を作製し、該試験片を用いて、ICE112に準じて比較トラッキング指数(以下、CTIと記す。)を測定した。CTIとして500(V)を超えるものを耐トラッキング性に優れると判断した。
〜曲げ強度の測定〜
射出成形により長さ127mm、幅12.7mm、厚み3.2mmの試験片を作製し、該試験片を用いて、ASTM D−790 Method−1(三点曲げ法)に準じ、曲げ強度を測定した。測定装置は(商品名)AG−5000B(島津製作所製)を用い、支点間距離50mm、測定速度1.5mm/分の試験条件で行った。曲げ強度として80MPa以上のものを機械的強度に優れると判断した。
〜成形品外観〜
耐トラッキング性の測定と同じ円盤状試験片を作成し、該試験片の表面状態を目視にて観察した。表面全体に艶のあるものを○、表面の一部に艶のあるものを△、表面にまったく艶のないものを×として判定した。成形品外観が○であるものを成形品外観に優れると判断した。
実施例1
ABS樹脂(A−1)45.5重量%、共重合体(B−1)9.0重量%及び水酸化マグネシウム(C1−1)45.5重量%の割合で配合して、シリンダー温度220℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ペレット状のABS樹脂組成物を作製した。その際のABS樹脂組成物の構成割合は,ABS樹脂(A−1)100重量部に対し、共重合体(B−1)20重量部、水酸化マグネシウム(C1−1)100重量部であった。
該ABS樹脂組成物を、シリンダー温度220℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入し、CTIを測定し成形品外観を評価するための円盤状試験片、曲げ強度を測定するための試験片をそれぞれ成形した。これらの結果を表1に示した。
得られたABS樹脂組成物は、CTI、曲げ強度、及び成形品外観に優れていた。
実施例2〜6
ABS(A−1)、共重合体(B−1,2,3)、水酸化マグネシウム(C1−1)、水酸化マグネシウム(C1−2)、ホウ酸カルシウム(C2−1)、ハイドロタルサイト(C3−1)、ハイドロタルサイト(C3−2)、ガラス繊維(D−1)及びカルナバワックス(E1−1)を表1に示す配合割合とし、ガラス繊維(D−1)を配合する際は二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーに投入し配合した以外は、実施例1と同様の方法によりABS樹脂組成物を作製し、実施例1と同様の方法により評価した。評価結果を表1に示した。
得られた全てのABS樹脂組成物は、CTI、曲げ強度、及び成形品外観に優れていた。
Figure 2014012757
比較例1〜6
ABS(A−1)、共重合体(B−1)、水酸化マグネシウム(C1−1)、水酸化マグネシウム(C1−2)、及びホウ酸カルシウム(C2−1)を表2に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様の方法により組成物を作製し、実施例1と同様の方法により評価した。評価結果を表2に示した。
比較例1〜6はCTIで劣り、さらに比較例3、4、6では成形品外観でも劣っていた。
Figure 2014012757
本発明のABS樹脂組成物は、高い耐トラッキング性を有すると共に、機械的強度、成形性、および成形品外観にも優れるものであり、特に電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気部品用途に期待されるものである。

Claims (6)

  1. アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(A)100重量部に対し、少なくとも下記の一般式(1)で示されるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)1〜50重量部、及び水酸化マグネシウム(C1),2CaO・3B・5HOで表されるホウ酸カルシウムの水和物(C2),ハイドロタルサイト(C3)から選択される1種以上の無機フィラー(C)30〜200重量部を含むことを特徴とするアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂組成物。
    Figure 2014012757
    (ここで、x、zはいずれもが0を超え、yは0以上、x+y+z=1であり、Rは炭素数1〜10の炭化水素基である。)
  2. エチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)が、x=0.25〜0.94、y=0〜0.15、z=0.02〜0.75であるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂組成物。
  3. エチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体(B)が、x=0.69〜0.94、y=0.01〜0.15、z=0.02〜0.30であるエチレン−脂肪酸ビニルエステル−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂組成物。
  4. アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(A)100重量部に対し、さらに繊維状充填剤(D)30〜200重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂組成物。
  5. アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(A)100重量部に対し、さらに離型剤(E)0.01〜5重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂組成物。
  6. 離型剤(E)が、カルナバワックス(E1)、ポリエチレンワックス(E2)、ポリプロピレンワックス(E3)、ステアリン酸金属塩(E4)、酸アマイド系ワックス(E5)からなる群より選択される1種以上の離型剤であることを特徴とする請求項5に記載のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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