JP2014009168A - (メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸又はそのエステルを製造する方法であって、該製造方法は、該3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを脱水反応させることにより(メタ)アクリル酸又はそのエステルを生成させる脱水工程を含み、該脱水工程は、脱水触媒を用いて行い、かつ、該脱水触媒は、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有してなる特定の酸化物であることを特徴とする、(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法。
【選択図】なし
Description
また(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸のエステル化等により製造されており、粘着剤、塗料等各種樹脂の原料として広く用いられている。
更に、3−ヒドロキシプロピオン酸水溶液を、気相反応にて脱水するに際し、SiO2、TiO2、α−アルミナ、γ−アルミナが触媒として示されている(特許文献2参照)。
(メタ)アクリル酸の製法において、3−ヒドロキシカルボン酸を脱水反応させる時には、脱炭酸による分解や、短鎖のカルボン酸の生成等の副反応が起こることを見出し、これにより(メタ)アクリル酸の選択率が低くなることがわかった。これは、特に3−ヒドロキシカルボン酸の転化率が高い時に顕著である。
また、(メタ)アクリル酸の製法における生成物の(メタ)アクリル酸等は、上記文献に開示されている脱水触媒上では吸着しやすく、コーキングを起こしやすいため、触媒の活性低下が非常に大きいことを見出した。更に、(メタ)アクリル酸の製法に用いる原料の3−ヒドロキシカルボン酸には、原料中にオリゴマーやN含有化合物が混入する場合があり、一般的な脱水触媒を用いた場合は、オリゴマーやN含有化合物が脱水触媒に強固に付着し、コーキングが起こりやすくなることを見出した。コーキングが多いと、触媒の活性低下が早く、頻繁な触媒再生や触媒交換が必要となり、生産性が低下するという問題や、触媒内部に生成したコークにより、触媒の破壊・粉化が起こり、反応器の閉塞や触媒寿命が短くなるという弊害があることも見出した。
MaXbYcOd (1)
(式中、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Xは珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Yはホウ素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Oは酸素を表す。aは1、bは1〜300の数、cは0〜0.8の数、dはa、b、cの値及び各種構成元素の結合状態により定まる数値を表す。)
で表される酸化物であることを特徴とする、(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法である。
また、本発明は、前記3−ヒドロキシカルボン酸が、3−ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする上記製造方法である。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
MaXbYcOd (1)
(式中、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Xは珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Yはホウ素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Oは酸素を表す。aは1、bは1〜300の数、cは0〜0.8の数、dはa、b、cの値及び各種構成元素の結合状態により定まる数値を表す。)
で表される酸化物である。
また、M元素と、必要に応じて添加するY元素との割合は1:0〜0.8である。つまり、cは0〜0.8である。触媒活性や活性の維持の点から、cは、好ましくは0.01〜0.8、より好ましくは0.03〜0.8、更に好ましくは0.05〜0.8である。
dは、a、b、cの値及び各種構成元素の結合状態により定まる数値であるが、触媒の安定性の点から、好ましくは2〜600、より好ましくは3〜400、更に好ましくは5〜300である。
M、X、Yがそれぞれ複数の元素より成る場合、添字aは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる複数の元素の合計の原子数を表し、bは、珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる複数の元素の合計の原子数を表し、cは、ホウ素とリンの合計の原子数を表す。
なお、一般式(1)においては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる元素の合計の原子数を表すaを1とした場合の、b、c、dの数値を記載している。
上記アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムが挙げられ、好ましくはマグネシウム、カルシウム、バリウムである。
Mとしては、好ましくはナトリウム、カリウム、セシウム、バリウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウム、セシウムである。
Xとしては、好ましくは珪素、アルミニウムであり、より好ましくは珪素である。
Yとしては、好ましくはリンである。
上記M元素は、その原料として、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、塩類(炭酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩等)、金属そのもの等が用いられる。
上記X元素の内、珪素は、その原料として、酸化珪素、ケイ酸、ケイ酸塩類(アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩等)、珪素含有ゼオライト(アルミノシリケート、シリコアルミノホスフェート等)、有機ケイ酸エステル等が用いられる。ゼオライトとしてはA型、X型、Y型、X型、ZSM−5型、β型等が例示できる。アルミニウム、チタン及びジルコニウムは、その原料として、それぞれの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド及び塩類(炭酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸塩等)等が用いられる。
必要に応じて加えられる上記Y元素は、その原料としては、リン酸、リン酸塩、ホウ酸、ホウ酸塩及び酸化物等が用いられる。
なお、上記(2)〜(3)では、X元素が珪素である場合について記載したが、X元素がアルミニウム、チタン、ジルコニウムの場合も、上記と同様にして得ることができる。
また、触媒にY元素を含有させるには、M元素源又はX元素源中にY元素を含有する原料を用いても良いし、触媒調製途中でY元素の原料を加えても良い。
上記触媒の焼成温度は、用いる触媒原料の種類等にもよるが、好ましくは300〜1000℃であり、より好ましくは400〜800℃である。
上記触媒の焼成時間は、特に限定されないが、好ましくは0.2〜24時間であり、より好ましくは0.5〜12時間である。
MaXbYcOd (1)
(式中、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Xは珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Yはホウ素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Oは酸素を表す。aは1、bは1〜300の数、cは0〜0.8の数、dはa、b、cの値及び各種構成元素の結合状態により定まる数値を表す。)
で表される酸化物であることを特徴とする(メタ)アクリル酸又はそのエステル製造用触媒も、本発明の1つである。
上記3−ヒドロキシカルボン酸は、1種でも2種でも用いることができる。また、(メタ)アクリル酸は、使用した3−ヒドロキシカルボン酸の種類に応じて得られる。
原料組成物に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸とそのエステルの総量の濃度は、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは7〜90質量%、更に好ましくは10〜90質量%である。
本発明において、原料組成物中に溶媒を含有させる場合、原料組成物100質量%における溶媒の濃度は、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは10〜93質量%、更に好ましくは10〜90質量%である。溶媒の濃度が5質量%以上であれば、粘度の低下により原料組成物の取り扱いが容易になり、また、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸発が促進される効果が期待できる。一方、95質量%以下とすることにより、蒸発にかかる熱量を抑制し、用役費の低減に寄与できる。
3−ヒドロキシカルボン酸としては、農作物等から得られる糖類やセルロース等を分解して得られる糖類から、更に発酵により調製された3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシイソ酪酸等を用いることができる。
本発明においては、原料組成物中に含まれる3−ヒドロキシカルボン酸の少なくとも一部又は全部が、発酵により得られる3−ヒドロキシカルボン酸であることが好ましい。
また3−ヒドロキシカルボン酸の原料として、バイオマス等の生物由来資源であることが好ましい。
不純物が少ない原料組成物を得る方法としては、公知の方法が利用可能である。具体的には、発酵により得られた粗製3−ヒドロキシカルボン酸を、カルシウム塩を用いて沈殿させて、3−ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩として回収した後、硫酸等の酸と反応させて、3−ヒドロキシカルボン酸を精製する方法;発酵により得たアンモニウム型の3−ヒドロキシカルボン酸を、電気透析又は陽イオン交換法によって3−ヒドロキシカルボン酸に化学変換させて精製する方法;等が利用できる。
また、発酵により得られたアンモニウム塩型の3−ヒドロキシカルボン酸水溶液に、水に不混和性のアミン溶媒を添加し加熱することにより、アンモニアを除去して3−ヒドロキシカルボン酸のアミン溶液を得ることができる。そこに水を加えて加熱することにより、3−ヒドロキシカルボン酸の水溶液を得ることができる。
また、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧を利用して、蒸発にて精製することもできる。しかし、3−ヒドロキシカルボン酸の蒸気圧は小さく、かつ加熱によりオリゴマー化等の副反応が進行しやすいため、減圧下での薄層蒸発のような熱履歴の小さな蒸発方法が好ましい。
更に、3−ヒドロキシカルボン酸をアルコールによってエステル化し、得られた3−ヒドロキシカルボン酸エステルを蒸留にて精製した後、3−ヒドロキシカルボン酸エステルを加水分解することで、精製した3−ヒドロキシカルボン酸を得ることもできる。
原料組成物中に無機化合物が存在すると、気相反応の場合、蒸発器中で無機化合物が析出して、閉塞や蒸発効率の低下が生じることがあり、また、無機化合物の作用によって、3−ヒドロキシカルボン酸が蒸発器中で変性し、オリゴマーや他の副生物となり、(メタ)アクリル酸収率の低下を招くおそれがある。また、無機化合物が触媒に吸着すると、触媒活性の低下や(メタ)アクリル酸選択率の低下を招く場合もある。
無機化合物の量は、原料組成物中の3−ヒドロキシカルボン酸とそのエステルの総量100質量%に対して、総量で1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。無機化合物の量が1質量%以下であれば、蒸発器での析出による閉塞や3−ヒドロキシカルボン酸のオリゴマー化等の副反応が抑えられ、また、脱水工程においても触媒の活性低下を抑制できるため、長期間の安定運転が可能となる。
また、蒸発器内の原料組成物の流路に、ラシヒリング、ベルルサドル、球状成型物、金網の成型物(ディクソンパッキン、マクマホンパッキン等)、メラパック(スルザーケムテック社製)といった不規則充填物や規則充填物等の、単位充填容積当たりの表面積が大きな充填物を充填し、そこに原料組成物を供給することで、原料組成物(液体)が接する表面積を大きくして蒸発させる方法も挙げられる。こうすることにより、供給した原料組成物が、表面積の大きな充填物と接触することになり、伝熱面積が増え、効率的に熱が伝わり、短時間で蒸発が進み、そのため、蒸発器内での原料組成物の転化率が低くなる。
上記充填物の材料としては、鉄やステンレス等の金属材料や、シリカ、セラミック等の無機材料等が使用できる。
また、原料組成物を流動床式の蒸発器に供給して、気化させても良い。例えば、粉体状の不活性固体を不活性ガスで流動化させ、加熱された流動床式蒸発器に原料組成物を供給し、気化させても良い。
ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、水が蒸発した水蒸気等が挙げられ、これらは1種でも2種以上でも用いることができる。好適には、窒素、水蒸気である。この水蒸気には、原料組成物中に溶媒として含まれる水が気化した水蒸気も含まれる。
ガスの供給量としては、原料組成物中の3−ヒドロキシカルボン酸及びそのオリゴマーの総量に対して、水及び/又は不活性気体の総量として0.5モル倍〜100モル倍が好ましく、1モル倍〜50モル倍がより好ましい。
上記固定床連続反応器を用いる場合は、反応器内に触媒を充填して加熱しておき、そこに原料組成物の蒸気を供給すればよい。原料組成物の蒸気は、上昇流、下降流、水平流、いずれも好適に使用できる。また、熱交換の容易さから、固定床多管式連続反応器が好適に使用できる。
上記流動床連続反応器を用いる場合は、反応器の中に粉体状の触媒を入れ、原料組成物の蒸気や、別途供給する不活性ガス等で触媒を流動させながら、反応させることができる。触媒が流動しているため、重質分による閉塞が起こりにくい。また、触媒の一部を連続的に抜き出して、新しい触媒や再生した触媒を連続的に供給することもできる。
また、蒸発器と反応器を一体化しても良い。例えば、反応管に、蒸発層として表面積の大きい充填物を充填し、当該蒸発層の下に触媒を充填することにより、蒸発層を蒸発工程、触媒層を脱水工程として連続した運転も、好ましい形態の1つである。
また、1つ乃至は複数の蒸発層と、触媒を充填した多管式の反応器を連結して運転することも、好ましい形態である。
上記触媒は、粉体状でも成形体であっても良い。成形体形状としては、限定されるものではなく、球状、シリンダー型、リング型、ハニカム型等が挙げられる。触媒の形態は使用する反応形式に応じて選択することができる。固定床反応器の場合は、圧力損失を小さくするために成型体が好ましく、流動床反応器の場合は、触媒を流動させるために粉体の方が好ましい。
反応圧力は、特に限定されないが、原料組成物の蒸発方法、脱水反応の生産性、脱水反応後の捕集効率等を勘案して決定することができる。反応圧力としては、10kPa〜1000kPaが好ましく、より好ましくは30kPa〜300kPa、更に好ましくは50kPa〜250kPaである。
酸化剤としては、過酸化水素水、有機過酸化物、硝酸、亜硝酸等が溶解した液状の酸化剤を使用しても良いし、ガス状の酸化剤を使用しても良い。好ましくは、ガス状の酸化剤である。
ガス状の酸化剤は、炭素状物質の酸化分解のために該炭素状物質に酸素元素を供給することが可能な気体分子であり、例えば、酸素(空気中の酸素も酸化剤に該当する)、オゾン、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素等を挙げることができる。これらの酸化剤のうち、一種以上のガス状酸化剤が含まれていれば良く、例えば、空気と酸素との混合ガス、一酸化窒素と酸素との混合ガス等を使用しても良く、また、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム及び水蒸気等の不活性ガスから任意に選択した一種以上のガスと酸化剤との混合ガスを使用しても良い。好ましくは酸素を含んだガスである。
酸化剤濃度としては、温度制御や生産コスト等の点から、好ましくは1〜21体積%である。
処理時間としては、(メタ)アクリル酸の生産性等の点から、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間である。
該組成物中の(メタ)アクリル酸濃度は、好ましくは5質量%〜95質量%、より好ましくは10〜95質量%、更に好ましくは20〜95質量%である。
精製工程は、蒸留、抽出、膜分離、晶析等の公知の技術により実施でき、それらを組み合わせて実施しても良い。
上記のようにして得られた(メタ)アクリル酸を含む反応生成物は、捕集や精製工程の取扱いを、重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。重合禁止剤としては、メトキノン、酢酸マンガン、ニトロソフェノール、クペロン、N−オキシル化合物、ジブチルチオカルバミン酸銅、フェノチアジン、ハイドロキノン等が例示できる。また、必要に応じて酸素含有ガスを供給してもよい。
当該方法としては、具体的には、晶析により(メタ)アクリル酸又はそのエステルを精製する工程を含む。
ここで、粗(メタ)アクリル酸とは、冷却工程で得られた(メタ)アクリル酸を含む組成物を指し、特に(メタ)アクリル酸の水溶液が好適に用いられる。
晶析工程は、粗(メタ)アクリル酸からプロピオン酸を分離することができる従来公知の方法、例えば、特開平9−227445号公報や特表2002−519402号公報に記載された方法等を用いて行うことができる。
使用するアルコールとしては、特に限定されず、用途に応じて選択すればよいが、炭素数が1〜20のアルコールが好ましく、炭素数が1〜10のアルコールがより好ましく、炭素数1〜5のアルコールが更に好ましい。
エステル化触媒としては、公知のものが使用できるが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸類;ゼオライトやイオン交換樹脂等の固体酸類;ヘテロポリ酸等の無機酸類;p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類;ジブチルスズジラウレート、酸化スズ、ジブチルスズオキサイド、酢酸亜鉛、テトラアルコキシチタン等の金属化合物類;等が挙げられる。
反応温度は、50℃〜300℃が好ましく、80℃〜250℃がより好ましい。
エステル化反応は平衡反応のため、収率向上のために、反応蒸留や、生成物を抽出しながらの反応も効果的である。
また、微生物を使用して、3−ヒドロキシカルボン酸とアルコールから、3−ヒドロキシカルボン酸エステルを合成することもできる。
このようにして得られた反応生成物中には、主な反応生成物である(メタ)アクリル酸エステル及び水が含まれており、その他(メタ)アクリル酸、副生物や原料組成物中の溶媒や不純物が含まれる場合がある。その場合は、精製工程を加えることにより、高純度の(メタ)アクリル酸エステルにすることができる。精製工程は、蒸留、抽出、膜分離、晶析等の公知の技術により実施でき、それらを組み合わせて実施しても良い。
なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。
3HPの発酵による製造を、特開2012−085635号公報の実施例1の方法に従って行った。得られた発酵液から濾過にて菌体を分離し、得られた濾液700gに、n−ドデカノール100gを添加し、エバポレーターで水を留去した。最終的に50℃、2.7kPaで留出がなくなるまで行った。
得られた残液を、80℃、10Paの薄膜蒸発器にかけ、3HPとn−ドデカノールの混合物を留分として取得した。得られた留分に等量の水を添加し、混合して水相に3HPを抽出した。油水分離した油相に再度等量の水を添加し、3HPの抽出を行った。油水分離した水相を合わせて濾過を行い、3HP水溶液を得た。3HPの濃度は16質量%であった。得られた3HP水溶液に水を添加して12質量%に調整し、この水溶液を脱水反応の原料組成物とした。
(触媒の調製)
硫酸リチウム一水和物2.1gを水100gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化珪素20gを加えた後、濃縮乾固してから空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。得られた固体を粗粉砕し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がLi1Si10からなる触媒を得た。得られた触媒を10〜24メッシュに破砕して、脱水反応に用いた。
(脱水反応)
内径10mmのステンレス管に、蒸発層としてステンレス製の1.5mmディクソンパッキンを充填し、電気炉内に設置し蒸発器とした。また内径10mmのステンレス管に、上記の触媒2.2mlを充填し、電気炉内に設置し反応器とした。蒸発器の出口と反応器の入口をステンレス管で連結し、周囲を電気ヒーターで加熱できるようにした。
また、蒸発器内の温度を275℃とし、反応器内の温度を300℃とし、上記調製例1で得られた3−ヒドロキシプロピオン酸の12質量%水溶液を、毎時16.7gの速度で蒸発器の上部に供給した。同時に、毎時3Lの速度で窒素ガスを流した。このときのGHSVは10000であった。蒸発器の出口ガスはそのまま反応器へ供給し、8時間継続して、反応器内で脱水反応を実施した。1〜8時間の出口ガスを冷却捕集し、反応液を取得した。反応液を分析したところ、3HPの転化率は95モル%であり、アクリル酸の収率は92モル%、アクリル酸の選択率は97モル%であった。反応後抜き出した触媒に若干着色が観察され、コーキングが生じていることが示唆された。示差熱天秤を用いて触媒を空気中で加熱し、重量減少から触媒上のコーク量を算出したところ、2.7質量%であった。
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸ナトリウム2.8gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がNa1Si10からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は98モル%であり、アクリル酸の収率は96モル%、アクリル酸の選択率は98モル%であった。触媒上のコーク量は2.3質量%であった。
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硫酸カリウム2.9gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がK1Si10からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は98モル%であり、アクリル酸の収率は95モル%、アクリル酸の選択率は97モル%であった。触媒上のコーク量は2.6質量%であった。
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸セシウム3.3gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がCs1Si10からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は100モル%であり、アクリル酸の収率は98モル%、アクリル酸の選択率は98モル%であった。触媒上のコーク量は2.6質量%であった。
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸ナトリウム2.8gとリン酸水素二アンモニウム1.4gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がNa1P0.3Si10からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は100モル%であり、アクリル酸の収率は98モル%、アクリル酸の選択率は98モル%であった。触媒上のコーク量は2.4質量%であった。
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸セシウム3.3gとホウ酸0.28gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がCs1B0.2Si10からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は95モル%であり、アクリル酸の収率は92モル%、アクリル酸の選択率は97モル%であった。触媒上のコーク量は2.6質量%であった。
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硫酸マグネシウム2.0gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がMg1Si20からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は90モル%であり、アクリル酸の収率は87モル%、アクリル酸の選択率は97モル%であった。触媒上のコーク量は1.9質量%であった。
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸カルシウム4水和物3.9gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がCa1Si20からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は92モル%であり、アクリル酸の収率は90モル%、アクリル酸の選択率は98モル%であった。触媒上のコーク量は2.2質量%であった。
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを水酸化バリウム8水和物5.2gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がBa1Si20からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は92モル%であり、アクリル酸の収率は89モル%、アクリル酸の選択率は97モル%であった。触媒上のコーク量は2.4質量%であった。
(触媒の調製)
上記実施例1において、硫酸リチウム一水和物2.1gを硝酸カリウム0.67gと炭酸セシウム2.7gに変更した以外は全く同様にして、酸素を除く組成がCs1K0.4Si20からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は100モル%であり、アクリル酸の収率は95モル%、アクリル酸の選択率は95モル%であった。触媒上のコーク量は1.6質量%であった。
(触媒の調製)
硫酸カリウム1.0gを水100gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化アルミニウム20gを加えた後、濃縮乾固してから空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。得られた固体を粗粉砕し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がK1Al20からなる触媒を得た。得られた触媒を10〜24メッシュに破砕して、脱水反応に用いた。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は98モル%であり、アクリル酸の収率は96モル%、アクリル酸の選択率は94モル%であった。触媒上のコーク量は2.3質量%であった。
(触媒の調製)
特開2009−190915号公報の方法に従い、球状のZSM−5型ゼオライト(プロトン型、珪素/アルミニウム=100/1)を合成した。硝酸セシウム1.0gを水100gに溶解し、室温で上記ゼオライト20gを加えて3時間撹拌後、濾過してゼオライトを分離し、再度硝酸セシウム水溶液に加え、室温で3時間撹拌後濾過した。得られたセシウム担持ゼオライトを、空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がCs1Al1.4Si143からなる触媒を得た。
(脱水反応)
上記の触媒を用いて、実施例1と同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は100モル%であり、アクリル酸の収率は99モル%、アクリル酸の選択率は99モル%であった。触媒上のコーク量は2.4質量%であった。
実施例1の脱水工程において、触媒を酸化珪素に変更した以外は、同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は43モル%であり、アクリル酸の収率は39モル%、アクリル酸の選択率は91モル%であった。触媒上のコーク量は1.9質量%であった。実施例の触媒に比べると、活性が著しく劣り、3HPの転化率が非常に低かった。アクリル酸収率が低いため、アクリル酸収率当たりの触媒上のコーク量[触媒上のコーク量(質量%)]/[アクリル酸収率(モル%)]の値は0.05と、実施例1の場合の0.02に比べて2倍以上と大きく、同じアクリル酸生産量に対して、実施例1に比べて比較例1ではコーク生成量が2倍以上になることが示唆される。
実施例1の脱水工程において、触媒を酸化チタンに変更した以外は、同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は97モル%であり、アクリル酸の収率は88モル%、アクリル酸の選択率は91モル%であった。触媒上のコーク量は7.6質量%であった。実施例の触媒に比べると、アクリル酸の選択率が低く、触媒上のコーク量が著しく多かった。
実施例1の脱水工程において、触媒を酸化ジルコニウムに変更した以外は、同様に脱水反応を実施した。3HPの転化率は98モル%であり、アクリル酸の収率は87モル%、アクリル酸の選択率は89モル%であった。触媒上のコーク量は9.3質量%であった。実施例の触媒に比べると、アクリル酸の選択率が低く、触媒上のコーク量が著しく多かった。
(触媒の調製)
硝酸カリウム1.7gとリン酸水素二アンモニウム1.1gを水100gに溶解し、90℃で加熱撹拌しながら酸化珪素20gを加えた後、濃縮乾固してから空気雰囲気中120℃で20時間乾燥した。得られた固体を粗粉砕し、更に空気中500℃で2時間焼成することにより、酸素を除く組成がK1P0.5Si20からなる触媒を得た。得られた触媒を10〜24メッシュに破砕して、脱水反応に用いた。
(脱水反応)
内径10mmのステンレス管に、蒸発層としてステンレス製の1.5mmディクソンパッキンを充填し、電気炉内に設置し蒸発器とした。また内径10mmのステンレス管に、上記の触媒2.2mlを充填し、電気炉内に設置し反応器とした。蒸発器の出口と反応器の入口をステンレス管で連結し、周囲を電気ヒーターで加熱できるようにした。
また、蒸発器内の温度を275℃とし、反応器内の温度を300℃とし、3−ヒドロキシプロピオン酸の12質量%水溶液を、毎時33.5gの速度で蒸発器の上部に供給した。同時に、毎時6Lの速度で窒素ガスを流した。このときのGHSVは20000であった。蒸発器の出口ガスはそのまま反応器へ供給し、24時間継続して、反応器内で脱水反応を実施した。1〜2時間及び23〜24時間の出口ガスを冷却捕集し、反応液を取得した。反応液を分析したところ、1〜2時間の3HPの転化率は88モル%、アクリル酸の収率は86モル%であり、23〜24時間の3HPの転化率は82モル%、アクリル酸の収率は81モル%と、触媒活性の低下が観察された。
そこで、反応器の温度を450℃に上げ、酸素2容量%、窒素98容量%の混合ガスを毎時6Lで12時間流通させ、引き続き空気を毎時6Lで12時間流通させて、触媒上に析出しているコークを燃焼させて触媒再生を実施した。
その後上記反応条件で、再び反応したところ、1〜2時間の3HPの転化率は88モル%、アクリル酸の収率は87モル%であり、23〜24時間の3HPの転化率は81モル%、アクリル酸の収率は80モル%と、1回目とほぼ同じ反応結果が得られた。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
Claims (2)
- 3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを含む原料組成物から、(メタ)アクリル酸又はそのエステルを製造する方法であって、
該製造方法は、該3−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを脱水反応させることにより(メタ)アクリル酸又はそのエステルを生成させる脱水工程を含み、
該脱水工程は、脱水触媒を用いて行い、かつ、
該脱水触媒は、下記一般式(1):
MaXbYcOd (1)
(式中、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Xは珪素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Yはホウ素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素;Oは酸素を表す。aは1、bは1〜300の数、cは0〜0.8の数、dはa、b、cの値及び各種構成元素の結合状態により定まる数値を表す。)
で表される酸化物であることを特徴とする、(メタ)アクリル酸又はそのエステルの製造方法。 - 前記3−ヒドロキシカルボン酸は、3−ヒドロキシプロピオン酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
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