JP2014008928A - 空気入りタイヤ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生産性を低下させることなくユニフォミティの改善を図ることのできる空気入りタイヤ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】連続したカーカス部材11をタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることによりカーカス層を形成するようにしたので、1周だけ巻回したものよりもスプライス部の段差の高さを小さくすることができ、スプライス部と他の部分との剛性差を小さくすることができる。これにより、ユニフォミティの改善を図ることができ、タイヤ周方向の不均一性を原因とする走行時の振動を効果的に低減することができる。また、バットスプライスのようにカーカス部材の端面を高精度に突き合わせる必要がないので、生産性を低下させることがないという利点がある。
【選択図】図5
【解決手段】連続したカーカス部材11をタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることによりカーカス層を形成するようにしたので、1周だけ巻回したものよりもスプライス部の段差の高さを小さくすることができ、スプライス部と他の部分との剛性差を小さくすることができる。これにより、ユニフォミティの改善を図ることができ、タイヤ周方向の不均一性を原因とする走行時の振動を効果的に低減することができる。また、バットスプライスのようにカーカス部材の端面を高精度に突き合わせる必要がないので、生産性を低下させることがないという利点がある。
【選択図】図5
Description
本発明は、例えば乗用車、トラック、バス等に用いられる空気入りタイヤ及びその製造方法に関するものである。
近年、自動車の高級化及び静粛化に伴い、タイヤに対しても多くの性能が求められており、特にタイヤの周方向の不均一性を原因とする走行中の振動やノイズを低減するため、ユニフォミティの改善が望まれている。ユニフォミティの悪化は、タイヤの骨格となるカーカス層がシート状のカーカス部材の端部同士を重ね合わせてスプライスすることにより形成されるため、このスプライス部による剛性差が原因となることが知られている。特に、カーカス層が複数層の場合にはスプライス部も周方向2箇所以上となり、タイヤ周方向の不均一性を一層増加させることになる。
そこで、カーカス部材の端部同士をラップさせずに突き合わせる、いわゆるバットスプライスによってカーカス層を形成することにより、タイヤ径方向の厚さがタイヤ周方向に部分的に厚くなるスプライス部が形成されないようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、前記バットスプライスでは、カーカス部材の端面を精度よく突き合わせないと剥離を生じ易くなるため、高度な製造技術を必要とし、生産性を低下させるという問題点があった。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産性を低下させることなくユニフォミティの改善を図ることのできる空気入りタイヤ及びその製造方法を提供することにある。
本発明は前記目的を達成するために、タイヤ周方向に配列された複数本のカーカスコードを有するシート状のカーカス部材をタイヤ周方向に巻回することによりカーカス層を形成してなる空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層は、カーカスコードの外径寸法が0.25mm以上0.6mm以下の連続したカーカス部材をタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることにより形成されている。
また、本発明は前記目的を達成するために、タイヤ周方向に配列された複数本のカーカスコードを有するシート状のカーカス部材をタイヤ周方向に巻回することによりカーカス層を形成してなる空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層は、厚さ寸法が0.5mm以上1.1mm以下の連続したカーカス部材をタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることにより形成されている。
また、本発明は前記目的を達成するために、タイヤ周方向に配列された複数本のカーカスコードを有するシート状のカーカス部材をタイヤ周方向に巻回することによりカーカス層を形成する空気入りタイヤの製造方法において、前記カーカス層を、カーカスコードの外径寸法が0.25mm以上0.6mm以下の連続したカーカス部材を成形ドラム上でタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることにより形成するようにしている。
また、本発明は前記目的を達成するために、タイヤ周方向に配列された複数本のカーカスコードを有するシート状のカーカス部材をタイヤ周方向に巻回することによりカーカス層を形成する空気入りタイヤの製造方法において、前記カーカス層を、厚さ寸法が0.5mm以上1.1mm以下の連続したカーカス部材を成形ドラム上でタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることにより形成するようにしている。
これにより、連続したカーカス部材をタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることによりカーカス層が形成されることから、1周だけ巻回したものよりもスプライス部の段差の高さを小さくすることができるとともに、バットスプライスのようにカーカス部材の端面を高精度に突き合わせる必要もない。この場合、カーカスコードの外径寸法を0.25mm以上0.6mm以下にすることにより、カーカスコードの外径寸法が小さすぎてカーカスコードの密度が過剰に高くなることがなく、カーカスコードの外径寸法が大きすぎてカーカス部材の厚さ寸法が大きくなることによりスプライス部の段差の高さが大きくなることもない。また、各カーカス部材の厚さ寸法を0.5mm以上1.1mm以下にすることにより、カーカス部材の厚さ寸法が小さすぎてカーカス部材の重ね合わせ部分の間のゴム量が不足することがなく、カーカス部材の厚さ寸法が大きすぎてスプライス部の段差の高さが大きくなることもない。
本発明によれば、スプライス部と他の部分との剛性差を小さくすることができるので、ユニフォミティの改善を図ることができ、タイヤ周方向の不均一性を原因とする走行時の振動を効果的に低減することができる。また、バットスプライスのようにカーカス部材の端面を高精度に突き合わせる必要がないので、生産性を低下させることがないという利点もある。この場合、ゴム量の不足による接着強度の低下を生ずることなくスプライス部の剛性低減効果を高めることができるので、実用化に際して極めて有利である。
図1乃至図5及び図7は本発明の一実施形態を示すもので、例えば乗用車用の空気入りタイヤを示すものである。
この空気入りタイヤは、外周面側に形成されるトレッド部1と、幅方向両側に形成されるサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に形成されるビード部3とを備え、左右のビード部3間に亘ってカーカス層4が形成されている。
即ち、この空気入りタイヤは、シート状のインナーライナ10と、複数のカーカス部材11と、複数のベルト12とを成形ドラム上で重ね合わせて円筒状に成形した後、カーカス部材11が左右一対のビード部材13間に跨るようにトロイダル状に成形するとともに、カーカス部材11のタイヤ幅方向両端側をビード部材13の周りからタイヤ幅方向外側に巻き上げてサイドウォール部2側に折り返し、カーカス部材11の外周面にトレッド部材14及びサイドウォール部材15を貼り付けることによって形成される。
インナーライナ10は気密性を有するシート状のゴムからなり、カーカス部材11の内周面側に配置される。
各カーカス部材11は、タイヤ周方向に配列される複数本のカーカスコード11aをシート状のゴムで被覆してなり、厚さ寸法Tが0.5mm以上1.1mm以下になるように形成されている。各カーカスコード11aは、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維からなり、外形寸法Dが0.25mm以上0.6mm以下になるように形成されている。この場合、カーカスコード11aの外周面からカーカス部材11の表面までのゴムの厚さtは、0.1mm以上0.2mm以下が好ましい。
各ベルト12は、スチールコードや高強度繊維等からなる補強用線材をシート状のゴム材で被覆してなり、カーカス部材11の外周面側に互いに重なり合うように配置される。
ビード部材13は、金属線等のワイヤを束ねてなるビードコア13aと、断面略三角形状のゴムからなるビードフィラー13bとからなり、ビードフィラー13bはビードコア13aの外周に配置されている。
トレッド部材14は、押出成形によって形成されるシート状のゴムからなり、カーカス部材11の幅方向中央側及び各ベルト12の外周面側を覆うように配置されている。また、トレッド部材14の外周面には、所定のトレッドパターンをなす溝14aが加硫成型時に形成される。
サイドウォール部材15は、押出成形によって形成されるシート状のゴムからなり、カーカス部材11のタイヤ幅方向両端側を覆うように配置されている。
次に、前記空気入りタイヤの製造方法について説明する。尚、以下に説明する工程はカーカス層4の成形工程を示すもので、他の製造工程については省略する。また、成形ドラムには、カーカス部材11を巻き付ける前にインナーライナ10が巻き付けられるが、図3乃至図5ではインナーライナ10の図示を省略する。
即ち、図3乃至図5に示すように、回転する成形ドラム20に連続したカーカス部材11を巻き付けることにより、カーカス部材11をタイヤ周方向に2周巻回して重ね合わせるとともに、タイヤ周方向に長さLだけ3周目にラップした位置で切断してスプライスする。これにより、カーカス部材11の始端部と周端部との間がタイヤ周方向の長さLだけ3枚重ねになり、他の部分は2枚重ねになる。
これにより、前述のようにカーカス部材11をタイヤ周方向に2周巻回したものは、1周だけ巻回したものよりもスプライス部Sの段差の高さが小さくなる。即ち、図6に示す1周巻きでは、2周巻きと同じ厚さのカーカス層4を形成するためには、2周巻きのカーカス部材11の2倍の厚さを有するカーカス部材11′を用いる必要がある。ここで、図5に示すように、2周巻きのスプライス部S(3枚重ね)におけるカーカス部材11の厚さをA1 、スプライス部S以外の部分(2枚重ね)のカーカス部材11の厚さをA2 とし、図6に示すように、1周巻きのスプライス部S′(2枚重ね)のカーカス部材11の厚さをB1 、スプライス部S′以外の部分(1枚)のカーカス部材11の厚さをB2 とすると、2周巻きのスプライス部Sの段差の高さ(A1 −A2 )は、1周巻回きのスプライス部の段差の高さS′(B1 −B2 )よりも小さくなる。
また、図7に示すように、従来例、本発明の実施例1〜4、比較例1〜4について、RFV試験、外観試験、縦バネ試験及び高速耐久試験を行ったところ、以下の結果が得られた。この試験では、タイヤサイズが205/55R16ものを用い、ホイールサイズが16×61/2Jのアルミホイールに装着して行った。
従来例は、ゴムの厚さが1.0mm、カーカスコードの外径が0.6mm、カーカスコードのエンド数(所定範囲当たりのコード打ち込み本数)が50本/50mmのカーカス部材をタイヤ周方向に1周巻回し、ラップスプライスしたものである。
実施例1〜4は、ゴムの厚さが0.5mm以上1.1mm以下の範囲内、カーカスコードの外径が0.25mm以上0.6mm以下の範囲内、カーカスコードのエンド数が36本/50mm、100本/50mm、67本/50mm、96本/50mmのカーカス部材をタイヤ周方向に2周または3周巻回し、ラップスプライスしたものである。尚、実施例1〜4のエンド数は、カーカス強力が従来例とほぼ等しくなるように計算して設定した。
比較例1〜4は、ゴムの厚さが0.5mm以上1.1mm以下の範囲外、カーカスコードの外径が0.25mm以上0.6mm以下の範囲外、カーカスコードのエンド数が120本/50mm、18本/50mm、50本/50mmのカーカス部材を用いたものである。また、比較例1〜3は、カーカス部材をタイヤ周方向に2周または3周巻回してラップスプライスしたものであり、比較例4は、カーカス部材をタイヤ周方向に1周巻回してバットスプライスしたものである。
ゴムの厚さが0.5〜0.6mm、カーカスコードの外径が0.25〜0.5mm、カーカスコードのエンド数が36〜100本/50mmのカーカス部材をタイヤ周方向に2周または3周巻回し、ラップスプライスしたものである。尚、比較例1〜4のエンド数は、カーカス強力が従来例とほぼ等しくなるように計算して設定した。
ゴムの厚さが0.5〜0.6mm、カーカスコードの外径が0.25〜0.5mm、カーカスコードのエンド数が36〜100本/50mmのカーカス部材をタイヤ周方向に2周または3周巻回し、ラップスプライスしたものである。尚、比較例1〜4のエンド数は、カーカス強力が従来例とほぼ等しくなるように計算して設定した。
RFV試験では、JISD4233に基づき、ユニフォミティ試験機によってRFVを測定し、従来例を100とした場合の指数の逆数を用いて評価し、数値が高い方が優位性ありと判定した。
外観試験では、ユニフォミティ試験機により、タイヤサイドウォール部の周上約25mm以内の局部的な凹凸ピーク値を測定し、従来例を100とした場合の指数の逆数を用いて評価し、数値が高い方が優位性ありと判定した。
縦バネ試験では、撓み試験機によってタイヤ径方向のバネ係数を測定し、従来例を100とした場合の指数の逆数を用いて評価し、数値が高い方が優位性ありと判定した。
高速耐久試験では、JISD4230に基づき、室内高速耐久試験によってタイヤ故障発生までの走行距離を測定し、従来例を100として評価し、数値が高い方が優位性ありと判定した。
前記試験の結果、実施例1〜4は、RFV試験、外観試験、縦バネ試験及び高速耐久試験の何れにおいても従来例より良好な結果が得られた。また、比較例1〜4は、RFV試験、外観試験、縦バネ試験及び高速耐久試験のうち少なくとも一つが従来例よりも指数が低い結果となり、各試験の全ての指数が従来例よりも高い実施例1〜4は、比較例1〜4よりも良好であるといえる。即ち、比較例1〜2は、カーカスコードの外径が0.25mmよりも小さいため、コード密度が高くなりすぎてゴム量が少なくなり、十分な強度を確保できずに縦バネ性能及び高速耐久性能が低くなった。比較例3は、カーカスコードの外径が0.6mmよりも大きいため、スプライス部の段差が大きくなり、外観改善効果が低くなった。比較例4は、バットスプライスであるため、スプライス部の耐久性がラップスプライスよりも低く、高速耐久性能が低くなった。
このように、本実施形態によれば、連続したカーカス部材11をタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることによりカーカス層4を形成するようにしたので、1周だけ巻回したものよりもスプライス部の段差の高さを小さくすることができ、スプライス部と他の部分との剛性差を小さくすることができる。これにより、ユニフォミティの改善を図ることができ、タイヤ周方向の不均一性を原因とする走行時の振動を効果的に低減することができる。また、バットスプライスのようにカーカス部材の端面を高精度に突き合わせる必要がないので、生産性を低下させることがないという利点がある。更に、カーカス部材11を2周以上巻回することにより、カーカス部材11の始端部と周端部との間には少なくとも1枚のカーカス部材11の中間部が介在するので、スプライス部の長さLを小さくすることができ、スプライス部と他の部分との剛性差の低減に極めて有利である。例えば、図8に示すようにカーカス部材11の始端部と周端部との間にスプライス部を設けないようにしてもよい。
この場合、各カーカスコード11を外径寸法が0.25mm以上0.6mm以下になるように形成したので、カーカスコード11aの外径寸法が小さすぎてカーカスコード11aの密度が高くなることがなく、ゴム量の不足によるカーカスコード11aとゴムとの接着強度の低下を防止することができる。また、カーカスコード11aの外径寸法が大きすぎてカーカス部材11の厚さ寸法が大きくなることがないので、スプライス部の段差の高さが大きくなることによるスプライス部の剛性増大を防止することもできる。
更に、各カーカスコード11を厚さ寸法が0.5mm以上1.1mm以下になるように形成したので、カーカス部材の厚さ寸法が小さすぎてカーカス部材11の重ね合わせ部分の間のゴム量が不足することがなく、カーカス部材11の重ね合わせ部分の接着強度の低下を防止することができる。また、カーカス部材11の厚さ寸法が大きくなることがないので、前述と同様、スプライス部の段差の高さが大きくなることによるスプライス部の剛性増大を防止することもできる。
更に、カーカスコード11aが有機繊維からなるので、金属繊維よりも柔軟性があり、薄いカーカス部材11を2周以上巻き付けてカーカス層4を成形する場合に極めて有利である。
尚、前記実施形態では、単一のカーカス層4を備えたものを示したが、カーカス部材11を2周以上巻回して形成したカーカス層4を複数層形成するようにしてもよい。
4…カーカス層、11…カーカス部材、11a…カーカスコード、20…成形ドラム。
Claims (5)
- タイヤ周方向に配列された複数本のカーカスコードを有するシート状のカーカス部材をタイヤ周方向に巻回することによりカーカス層を形成してなる空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層は、カーカスコードの外径寸法が0.25mm以上0.6mm以下の連続したカーカス部材をタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることにより形成されている
ことを特徴とする空気入りタイヤ。 - タイヤ周方向に配列された複数本のカーカスコードを有するシート状のカーカス部材をタイヤ周方向に巻回することによりカーカス層を形成してなる空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層は、厚さ寸法が0.5mm以上1.1mm以下の連続したカーカス部材をタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることにより形成されている
ことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記カーカスコードが有機繊維からなる
ことを特徴とする請求項1または2記載の空気入りタイヤ。 - タイヤ周方向に配列された複数本のカーカスコードを有するシート状のカーカス部材をタイヤ周方向に巻回することによりカーカス層を形成する空気入りタイヤの製造方法において、
前記カーカス層を、カーカスコードの外径寸法が0.25mm以上0.6mm以下の連続したカーカス部材を成形ドラム上でタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることにより形成する
ことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。 - タイヤ周方向に配列された複数本のカーカスコードを有するシート状のカーカス部材をタイヤ周方向に巻回することによりカーカス層を形成する空気入りタイヤの製造方法において、
前記カーカス層を、厚さ寸法が0.5mm以上1.1mm以下の連続したカーカス部材を成形ドラム上でタイヤ周方向に2周以上巻回して重ね合わせることにより形成する
ことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
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JP2021094916A (ja) * | 2019-12-13 | 2021-06-24 | 株式会社ブリヂストン | タイヤ |
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