JP2014007247A - 輻射熱伝導抑制シート - Google Patents

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智紀 兵藤
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裕介 河本
Hidetoshi Maikawa
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Abstract

【課題】筐体表面の温度上昇およびヒートスポットの発生を抑制することができ、さらに、筐体への取り付け作業がきわめて容易な輻射熱伝導抑制シートを提供すること。
【解決手段】本発明の輻射熱伝導抑制シートは、熱伝導層と厚みが100μm以下の粘着剤層とを有し、熱伝導層は、波長7μm〜10μmにおける遠赤外線吸収率が0.6以下であり、熱伝導率が200W/m・K以上である。この輻射熱伝導抑制シートは、内部に発熱体を有する筐体に固定して用いられ、熱伝導層が発熱体に密着することなく発熱体の放熱面と対峙する位置で熱伝導抑制層側が筐体に固定される。
【選択図】図1

Description

本発明は、輻射熱伝導抑制シートに関する。
近年、パーソナルコンピューター、タブレットPC、PDA、携帯電話、デジタルカメラ等の電子機器の小型化、薄型化および高性能化に伴い、それらの電子機器の内部に配置されたCPU、LSI、通信チップ等の電子部品の高密度化および高集積化、および、当該電子部品のプリント配線基板への高密度実装化が進んでいる。当該電子機器の薄型化により、電子部品と筐体との距離が非常に小さくなり、その結果、電子部品から筐体へ放射される熱により、筐体表面にヒートスポットが発生するという問題、および、筐体表面の温度上昇に伴って使用者が低温火傷を起こすという問題が生じる。さらに、上記電子部品の高密度化および高集積化に伴い、当該電子部品の発熱量が大きくなっており、冷却を効率よく行わなければ、電子機器が熱暴走により誤動作してしまうという問題が生じる。
従来、電子部品から発生した熱を外部に効率よく放出する手段として、熱伝導性充填剤を充填したシリコーングリースやシリコーンゴムを、電子部品とヒートシンク(代表的には、アルミニウム、銅、それらの合金等から構成される)との間に設置することにより、接触熱抵抗を小さくして、熱伝導によって熱をヒートシンクに導き、ヒートシンクから空気中に放熱する手段がある。また、ヒートシンクの代わりに合金製のヒートパイプを設置し、ヒートパイプ内の熱伝導によって熱を冷却ファンに導き、当該冷却ファンから筐体外部に放熱する手段がある。これらの手段に用いられるヒートシンクおよびヒートパイプはいずれも、熱伝導率の高い物質を用いて形成されている。したがって、ヒートシンクまたはヒートパイプの筐体内における放熱により、電子部品周辺の筐体表面温度が上昇する。すなわち、これらの手段によっては、上記のヒートスポットの問題および使用者の低温火傷の問題は十分に解決されない。
上記のような問題を解決するために、特許文献1では、装置内部の発熱部と筐体との間に放熱板と真空断熱材とを重ねて配置した放熱構造が提案されている。特許文献2では、断熱シートと電子部品に密着可能な柔軟な材料で形成された熱伝導シートとを有する複合シートを、熱伝導シートが電子部品側となり、かつ、電子部品と筐体内面の両方に接触した状態で配置した放熱構造が提案されている。特許文献3では、電子部品と対向するよう筐体内面上に配置された押当部材と、当該押当部材を介して一部が電子部品に押し当てられ、かつ、他の部分が筐体内面に固着された熱拡散シートとを有する冷却構造が提案されている。しかし、上記特許文献に記載のいずれの技術によっても、筐体表面温度の上昇およびヒートスポットの問題を十分に解決することはできない。
特許第3590758号公報 特許第4104887号公報 特開平10−229287号公報
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、筐体表面の温度上昇およびヒートスポットの発生を抑制することができ、さらに、筐体への取り付け作業がきわめて容易な輻射熱伝導抑制シートを提供することにある。
本発明の輻射熱伝導抑制シートは、熱伝導層と厚みが100μm以下の粘着剤層とを有し;該熱伝導層は、波長7μm〜10μmにおける遠赤外線吸収率が0.6以下であり、熱伝導率が200W/m・K以上であり;内部に発熱体を有する筐体に固定して用いられ、該熱伝導層が該発熱体に密着することなく該発熱体の放熱面と対峙する位置で該粘着剤層を介して該筐体に固定される。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層のゲル分率は70%以上である。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層は、アクリル系粘着剤、エポキシ系接着剤およびシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1つで構成されている。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層は厚み方向に複数の貫通孔を有し、平面視した場合に、該粘着剤層の面積に占める該貫通孔の面積の割合は30%以上である。
1つの実施形態においては、上記熱伝導層は、グラファイトシートおよび金属箔から選択される。
1つの実施形態においては、上記熱伝導層は、前記対峙する発熱部品の放熱面の面積に対して4倍以上の面積を有する。
本発明によれば、薄膜の粘着剤層と特定の熱伝導率および遠赤外線吸収率を有する熱伝導層とを備える輻射熱伝導抑制シートを、熱伝導層を筐体内の発熱体に接触させることなく当該発熱体に対峙して配置し、かつ、粘着剤層を介して筐体内面に固定することにより、発熱体からの輻射熱を当該熱伝導層で効率良く反射するとともに、対流によって当該熱伝導層に伝達した熱を、当該熱伝導層の面方向に効率良く熱拡散し、かつ、粘着剤層を通じて輻射熱伝導抑制シートの厚さ方向に徐々に伝導しながら、筐体に放熱することが可能となる。したがって、小型電子機器のような非常に狭小な空間内であっても、発熱体からの熱を非常に効率的に放熱することができ、結果として、筐体表面の温度上昇およびヒートスポットの発生を良好に抑制することができる。
また、本発明によれば、熱伝導層を発熱体に接触させることがないので、熱伝導層の輻射熱反射機能を有効に利用することができる。その結果、発熱体の発熱量が同等である場合には、発熱体と接触させて熱拡散のみで放熱する場合に比べて、熱伝導層から粘着剤層へ伝導される熱量を少なくすることができるので、粘着剤層から筐体に放熱される熱量もまた少なくすることができ、筐体表面の過大な温度上昇を回避することができる。さらに、輻射熱伝導抑制シートを発熱体と非接触で用いることにより、当該輻射伝熱抑制シートを発熱体の形状に追従させる必要がない。その結果、発熱体の高さにバラツキがあっても、シートを発熱体形状に合わせて変形させて密着させる必要がないので、発熱体(電子部品)の公差による寸法バラツキを吸収することができ、製造効率およびコストにおいても有利である。
本発明の1つの実施形態による輻射熱伝導抑制シートの概略断面図である。 本発明に用いられる粘着剤層に形成される貫通孔の種々の形態を説明する概略平面図である。 本発明に用いられる枠状の粘着剤層の代表例を説明する概略平面図である。 本発明に関連する熱伝導率測定の概略図である。 本発明に関連する輻射熱伝導抑制効果の測定の概略図である。
A.輻射熱伝導抑制の概略
図1は、本発明の1つの実施形態による輻射熱伝導抑制シートの概略断面図である。本実施形態の輻射熱伝導抑制シート10は、熱伝導層1と粘着剤層2とを有する。本発明の輻射熱伝導抑制シートは、任意の適切な形状を採り得る。本発明の輻射熱伝導抑制シートにおける、厚さ、長辺および短辺等の長さは、任意の適切な値を採り得る。
B.熱伝導層
本発明の実施形態による輻射熱伝導抑制シートにおいては、熱伝導層の遠赤外線吸収率を小さくすることで、発熱体からの輻射伝熱を抑制することができ、かつ、発熱体からの対流による熱伝達に起因する発熱体の温度上昇を抑制することができるとともに、熱伝導層内での面方向の熱拡散によって、筐体表面の温度上昇およびヒートスポットを抑制することが可能になる。
熱伝導層としては、例えば、グラファイトシート、金属箔が挙げられる。金属箔の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅が挙げられる。高い遠赤外線反射率を有し、かつ、プロセスコストの安価なアルミニウム箔および銅箔が好ましい。
ここで、発熱体の対象となる電子機器内部に配置されたCPU、LSI、通信チップ等の発熱部品は、使用時に最大で70℃〜100℃まで発熱することが知られている。発熱部品から放射される輻射熱(遠赤外線)のピーク波長と温度の関係を示すウィーンの変位則より推定した場合、発熱部品から放射される遠赤外線のピーク波長は7.7μm〜9.2μmとなる。したがって、熱伝導層は、上記波長域の遠赤外線を効率良く反射することが望ましい。
熱伝導層の遠赤外線吸収率は、FT−IRを用いて測定した波長7μm〜10μmにおける透過率と反射率から、式1を用いて算出される。波長7μm〜10μmにおける熱伝導層の遠赤外線吸収率は0.6以下であり、好ましくは0.4以下であり、より好ましくは0.3以下である。波長7μm〜10μmにおける熱伝導層の遠赤外線吸収率が0.6より大きいと、発熱体から放出される遠赤外線を熱伝導層でも吸収し、変換した熱を直ちに周囲へ固体熱伝導するため、筐体表面にヒートスポットが発生するおそれがある。また、発熱体から放出される遠赤外線を熱伝導層が透過することにより、筐体表面の温度が上昇するおそれがある。
遠赤外線吸収率=1−(透過率+反射率)/100 ・・・式1
熱伝導層の波長7μm〜10μmにおける遠赤外線反射率は、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.7以上である。熱伝導層の遠赤外線反射率が0.4より小さいと、熱伝導層での遠赤外線の反射が十分に起きず、遠赤外線の吸収または透過により筐体表面の温度が上昇するおそれがある。なお、熱伝導層の遠赤外線反射率は、FT−IRを用いた反射率測定により求めることができる。
定常法から測定される熱伝導層の熱伝導率は200W/m・K以上であり、好ましくは300W/m・K以上であり、より好ましくは400W/m・K以上である。熱伝導率が200W/m・Kより小さいと、熱伝導抑制層からの固体熱伝導性が低下するため、発熱体から放出される遠赤外線を熱伝導抑制層が効率よく吸収することができなくなり、発熱体の温度上昇を抑制することができなくなるおそれがある。なお、熱伝導率の実用的な上限は、例えば1500W/m・Kである。
熱伝導層の厚みは、目的に応じて、任意の適切な厚みに調整し得る。熱伝導層の厚みは、好ましくは0.03mm以上であり、より好ましくは0.05mm以上であり、さらに好ましくは0.1mm以上であり、特に好ましくは0.15mm以上である。熱伝導層の厚みが0.03mmより小さい場合には、熱伝導層内での面方向の熱拡散性が低下しやすくなり、筐体表面のヒートスポット発生の抑制効果が低下するおそれがある。
熱伝導層の面積は、目的に応じて、任意の適切な面積に調整し得る。輻射熱伝導抑制シートが内部に発熱体を有する筐体に固定して用いられ、該熱伝導層が該発熱体に密着することなく該発熱体の放熱面と対峙する位置で該熱伝導抑制層側が該筐体に固定される場合、熱伝導層の面積は、当該発熱体の放熱面の面積に対して好ましくは4倍以上であり、より好ましくは7倍以上であり、さらに好ましくは10倍以上である。このような構成であれば、発熱体で生じた熱を、熱伝導層を介して面方向に効率的に拡散することができ、熱伝導層で拡散された熱が熱伝導抑制層を介して筺体表面に徐々に伝導するので、筺体表面の局所的な温度上昇を防ぐことが可能となる。一方、熱伝導層の面積が発熱体の放熱面の面積に対して4倍より小さい場合には、熱伝導層内での面方向の熱拡散性が不十分となり、筺体表面のヒートスポット発生の抑制効果が不十分となるおそれがある。
C.粘着剤層
本発明の実施形態による輻射熱伝導抑制シートにおいては、粘着剤層の厚みを小さくすることで、発熱体からの熱を対流によって熱伝導層に伝達し、当該熱伝導層の面方向に効率良く拡散した熱を、粘着剤層内部に蓄熱することなく、筐体に放熱することができる。粘着剤層の厚みは100μm以下であり、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。粘着剤層の厚みが100μmより大きい場合には、粘着剤層内において過大な蓄熱が生じる場合があり、結果として、筺体表面の温度上昇やヒートスポットが発生する場合がある。さらに、薄型化が進む電子機器に対し、非接触条件での該輻射伝熱抑制シートの導入が困難となるおそれがある。一方、粘着剤層の厚みは、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。粘着剤層の厚さが10μmより小さいと、接着面に対する追従性に劣り、これによって剥離が生じた場合には、筐体への放熱性能が低下する場合がある。
粘着剤層のゲル分率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。ゲル分率が70%未満である場合には、耐熱性の低下により、輻射熱伝導抑制シートが筐体側から剥がれ、または、熱伝導層が剥がれる場合がある。
1つの実施形態においては、粘着剤層は、厚み方向に複数の貫通孔を有する。貫通孔を形成することにより、熱伝導層に対する粘着剤層の接着面積が小さくなり、熱伝導層と粘着剤層との界面の接触熱抵抗が増加する。これにより、発熱体からの対流によって伝達した熱を熱伝導層内で面方向に熱拡散し易くなる。このような構成は、熱伝導層の厚みが100μm未満である場合、および、熱伝導層が等方的な熱伝導率を有する(方向によって熱伝導率に差が見られない)場合に、特に有効である。
貫通孔の形状、サイズ、粘着剤層に形成される個数は、目的に応じて適切に設定され得る。貫通孔の平面視形状は、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形(方形、矩形、台形、平行四辺形)、五角形以上の多角形、不定形が挙げられる。貫通孔の個数およびサイズは、粘着剤層に占める貫通孔の面積(後述)が所望の範囲となるように調整され得る。図2は、粘着剤層に形成される貫通孔の種々の形態を説明する概略平面図である。例えば、貫通孔は、図2(a)に示すように、円形の貫通孔が規則的に形成されてもよく;図2(b)に示すように、円形の貫通孔がランダムに形成されてもよく;図2(c)に示すように、複数のサイズの円形の貫通孔がランダムに形成されてもよく;図2(d)に示すように、楕円形の貫通孔がランダムに形成されてもよく;図2(e)に示すように、矩形の貫通孔がランダムに形成されてもよい。もちろん、これらの形態が適宜組み合わせられてもよい(例えば、楕円形の貫通孔と円形の貫通孔が組み合わせて形成されてもよく、異なるサイズの矩形の貫通孔がランダムまたは規則的に形成されてもよい)。所定のパターン(例えば、形状、サイズ、個数および配置)の貫通孔は、任意の適切な手段(例えば、フォトリソグラフィー、パンチング)により形成することができる。
好ましくは、貫通孔は、平面視した場合に、粘着剤層の面積に占める貫通孔の面積の割合が好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上となるように形成され得る。例えば、輻射熱伝導抑制シートのサイズが70mm×70mmである場合には、直径6mm〜8mmの平面視円形の貫通孔が20個〜30個形成され得る。貫通孔の面積の割合が30%より小さいと、粘着剤層と熱伝導層との界面における接触熱抵抗の増加割合が小さく、筐体表面温度の上昇を抑制する効果が不十分となる場合が多い。なお、貫通孔の面積の割合の実用的な上限は、例えば90%である。貫通孔の面積の割合が大きすぎると、粘着剤層の形状維持が困難となる場合がある。
別の実施形態においては、粘着剤層は、熱伝導層と同じ外郭形状を有する枠状であり得る。この場合も貫通孔を形成する場合と同様に、熱伝導層に対する粘着剤層の接着面積が小さくなり、熱伝導層と粘着剤層との界面の接触熱抵抗が増加する。これにより、発熱体からの対流によって伝達した熱を熱伝導層内で面方向に熱拡散し易くなる。枠の形状は任意の適切な形状を採用することができる。図3は、枠状の粘着剤層の代表例を説明する概略平面図である。例えば、粘着剤層は、図3(a)に示すように通常の一定幅を有する枠状であってもよく、図3(b)に示すように矩形の外郭形状と円形の内周形状とを有する枠状であってもよい。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、上記のような特性が得られる限りにおいて任意の適切な粘着剤を用いることができる。具体例としては、アクリル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤が挙げられる。なお、粘着剤の構成としては、当業界で通常用いられている構成を採用することができる。一例として、以下のD項に記載の粘着剤層の製造方法において、アクリル系粘着剤の詳細が言及されている。
D.粘着剤層の製造方法
粘着剤層は、任意の適切な方法で製造され得る。粘着剤層は、例えば、活性エネルギー線重合型粘着剤組成物を賦形および重合することによって製造され得る。より詳細には、粘着剤層は、上記活性エネルギー線重合型粘着剤組成物(モノマー組成物)を基材の一面に塗工した後に、活性エネルギー線重合により該モノマー組成物を重合することにより形成される。活性エネルギー線重合を用いることにより、用いる活性エネルギー線の照射強度や照射時間等を制御することにより、所望の特性を有する粘着剤層を形成することができ、かつ、初期にゲル化率が飽和するため、架橋のための養生時間を必要としないので、製造効率上も有利である。さらに、モノマー以外は、有機溶剤などの環境負荷物質を使用しないので、環境面からも好ましい方法である。
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線などが挙げられる。好ましくは、紫外線、可視光線であり、より好ましくは、波長が200nm〜800nmの可視光〜紫外線であり、さらに好ましくは紫外線である。
このような重合方法においては、例えば、モノマー成分と光重合開始剤と架橋剤とを含む紫外線重合型粘着剤組成物を基材の一面に直接塗工し、不活性ガス雰囲気下あるいはシリコーン等の剥離剤をコートした紫外線透過性フィルムによる被覆で酸素が遮断された状態で紫外線を照射することにより、粘着剤層を得ることができる。
D−1.モノマー成分
モノマー成分は、エチレン性不飽和モノマーを含む。エチレン性不飽和モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであれば、任意の適切なモノマーを採用することができる。1つの実施形態においては、モノマー成分の実質的にすべてが、エチレン性不飽和モノマーで構成され得る。エチレン性不飽和モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルを含む。エチレン性不飽和モノマー中の(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは85重量%以上である。(メタ)アクリル酸エステルの含有割合の上限は、例えば100重量%であり、好ましくは98重量%である。(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、炭素数が1個〜20個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートである。上記アルキル基の炭素数は、より好ましくは1個〜18個であり、さらに好ましくは4個〜18個であり、特に好ましくは4個〜14個である。なお、本明細書において、アルキル基は、シクロアルキル基、アルキル(シクロアルキル)基、(シクロアルキル)アルキル基をも含む概念として用いられ得る。また、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルの意味であり、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートの意味である。
炭素数が1個〜20個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な極性モノマーをさらに含む。当該極性モノマーを含むことにより、本発明の効果がより顕著となる粘着剤層を得ることができる。エチレン性不飽和モノマー中の極性モノマーの含有割合は、好ましくは0重量%を超えており、より好ましくは1重量%以上であり、さらに好ましくは2重量%以上である。極性モノマーの含有割合の上限は、例えば20重量%であり、好ましくは15重量%である。極性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;などが挙げられる。
D−2.光重合開始剤
紫外線重合型粘着剤組成物には、好ましくは、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−2959)、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−1173)、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−651)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−184)などのアセトフェノン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤;その他のハロゲン化ケトン;アシルフォスフィンオキサイド(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−819);などを挙げることができる。光重合開始罪は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の含有割合は、紫外線重合型粘着剤組成物全体に対し、好ましくは0.05重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上である。光重合開始剤の含有割合の上限は、好ましくは5.0重量%であり、より好ましくは1.0重量%である。光重合開始剤の含有割合が0.05重量%未満の場合には、未反応のモノマー成分が多くなり、得られる粘着剤層中の残存モノマー量が増加するおそれがある。重合開始剤の含有割合が5.0重量%を超える場合には、得られる粘着剤層のゲル分率が低下するおそれがある。
なお、光重合開始剤によるラジカル発生量は、照射する光の種類、強度、照射時間、モノマー混合物中の溶存酸素量などによって変化し得る。また、溶存酸素が多い場合には、光重合開始剤によるラジカル発生量が抑制され、重合が十分に進行せず、未反応物が多くなることがある。したがって、光照射の前に、反応系中に窒素等の不活性ガスを吹き込み、酸素を不活性ガスで置換、または、減圧処理によって脱気しておくことが好ましい。
D−3.架橋剤
紫外線重合型粘着剤組成物には、好ましくは、架橋剤が含まれる。架橋剤は、代表的には、ポリマー鎖同士を連結して三次元的な分子構造を構築するために用いられる。架橋剤の種類と含有量の選択は、得られる粘着剤層に所望される構造的特性、機械的特性、および流体処理特性に応じて決定され得る。架橋剤の具体的な種類および含有量の選択は、粘着剤層の構造的特性、機械的特性、および流体処理特性の望ましい組み合わせを実現する上で重要となる。架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粘着剤層の形成においては、好ましくは、架橋剤として、重量平均分子量の異なる少なくとも2種類の架橋剤が用いられ得る。より好ましくは、架橋剤として、重量平均分子量が200以上である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上が使用され得る。ここで、多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレートであり、多官能(メタ)アクリルアミドとは、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリルアミドである。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジアクリレート類、トリアクリレート類、テトラアクリレート類、ジメタクリレート類、トリメタクリレート類、テトラメタクリレート類などが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートは、例えば、ジオール類、トリオール類、テトラオール類、ビスフェノールA類などから誘導できる。具体的には、例えば、1,10−デカンジオール、1,8−オクタンジオール、1,6ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ブタン−2−エンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性物などから誘導できる。
多官能(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジアクリルアミド類、トリアクリルアミド類、テトラアクリルアミド類、ジメタクリルアミド類、トリメタクリルアミド類、テトラメタクリルアミド類などが挙げられる。
多官能(メタ)アクリルアミドは、例えば、対応するジアミン類、トリアミン類、テトラアミン類などから誘導できる。
架橋剤として、重量平均分子量が200以上である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上を使用する場合、その使用量は、紫外線重合型粘着剤組成物中のエチレン性不飽和モノマーの合計量100重量部に対して、好ましくは0.05重量部以上であり、より好ましくは0.08重量部以上である。架橋剤の使用量の上限は、好ましくは2重量部であり、より好ましくは1.5重量部である。使用量が0.05重量部未満の場合、耐熱性が低下してしまうおそれがある。使用量が2重量部を超える場合、得られる粘着剤層の粘着力が低下してしまうおそれがある。
D−4.添加剤
紫外線重合型粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、粘着付与樹脂;タルク;炭酸カルシウム、ケイ酸やその塩類、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、水酸化アルミニウム、クレー、雲母粉、亜鉛華、ベントナイン、カーボンブラック、シリカ、アセチレンブラックなどの充填剤;顔料;染料;などが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
D−5.その他の成分
紫外線重合型粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分が含まれ得る。このようなその他の成分としては、代表的には、酸化防止剤、光安定剤などが挙げられる。その他の成分は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
D−6.重合方法
活性エネルギー線の照射による重合を用いた粘着剤層の製造方法においては、上記のとおり、活性エネルギー線は、好ましくは波長が200nm〜800nmの可視光〜紫外線であり、より好ましくは紫外線である。W/O型エマルションは光を散乱させる傾向が強いため、波長が200nm〜800nmの可視光〜紫外線を用いればW/O型エマルションに光を貫通させることができる。また、200nm〜800nmの波長で活性化できる光重合開始剤は入手しやすく、光源も入手しやすい。活性エネルギー線の波長は、より好ましくは300nm以上である。活性エネルギー線の波長の上限は、より好ましくは450nmである。
活性エネルギー線の照射に用いられる代表的な装置としては、例えば、紫外線照射を行うことができる紫外線ランプとして、波長300nm〜400nm領域にスペクトル分布を持つ装置が挙げられ、その例としては、ケミカルランプ、ブラックライト(東芝ライテック(株)製の商品名)、メタルハライドランプ、LEDランプなどが挙げられる。
活性エネルギー線の照射を行う際の照度は、照射装置から被照射物までの距離や電圧の調節によって、任意の適切な照度に設定され得る。例えば、特開2003−13015号公報に開示された方法によって、各工程における紫外線照射をそれぞれ複数段階に分割して行い、それにより重合反応を精密に調節することができる。
紫外線照射は、重合禁止作用のある酸素が及ぼす悪影響を防ぐために、例えば、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面に紫外線重合型組成物を塗工して賦形した後に不活性ガス雰囲気下で行うことや、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後にシリコーン等の剥離剤をコートしたポリエチレンテレフタレート等の紫外線は通過するが酸素を遮断するフィルムを被覆させて行うことが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムとしては、一面に紫外線重合型組成物を塗工して賦形できるものであれば、任意の適切な熱可塑性樹脂フィルムを採用し得る。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやシートが挙げられる。また、該フィルムは、一方またはその両面に剥離処理されていてもよい。
不活性ガス雰囲気とは、光照射ゾーン中の酸素を不活性ガスにより置換した雰囲気をいう。したがって、不活性ガス雰囲気においては、できるだけ酸素が存在しないことが好ましく、酸素濃度で5000ppm以下であることが好ましい。
E.輻射熱伝導抑制シートの用途
本発明の実施形態による輻射熱伝導抑制シートは、内部に発熱体を有する筐体に固定して用いられ、上記熱伝導層が該発熱体に密着することなく該発熱体の放熱面と対峙する位置で上記粘着剤層を介して該筐体に固定される。このようにして得られる輻射熱伝導抑制シート付筐体は、発熱体の温度上昇が抑制され、筐体表面にヒートスポットが発生し難く、筐体表面の温度上昇も抑制される。さらに、本発明の実施形態による輻射熱伝導抑制シートは、筐体への取り付け作業がきわめて容易である。
〔分子量の測定〕
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー(株)製「HLC−8020」
カラム:東ソー(株)製「TSKgel GMHHR−H(20)」
溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
〔粘着剤層のゲル分率の測定〕
実施例および比較例で得られた粘着剤層から約100mgを採取し、120mm角に切り出したテフロン(登録商標)膜(日東電工(株)製、TEMISH NTF−1122)に包み込んだ後、50mlスクリュー巻中で酢酸エチルに常温雰囲気下、7日間浸漬した。浸漬後、溶剤を加熱乾燥により除去し、浸漬前後の重量変化量から、粘着剤層のゲル分率を求めた。
〔遠赤外線透過率および反射率の測定、ならびに遠赤外線吸収率の算出〕
実施例で得られた熱伝導抑制層(多孔質体)について、波長7μm〜10μmにおける遠赤外線の透過率および反射率をそれぞれ測定した。具体的には、(株)パーキンエルマージャパン製のFT−IR装置「Spectrum One」を使用し、反射率および透過率を測定した。反射率の測定の際は、リファレンスとして金ミラー、反射アクセサリとしてPIKE TECHNOLOGIES製の10Degrees Specular Reflectance Accessory装置を使用した反射法によって測定した。測定にあたっては、分解能4cm−1、積算回数16回として、各測定試料につきそれぞれ2回測定し、その平均値を求めた。
得られた反射率および透過率に基づき、式1によって遠赤外線吸収率を算出した。
遠赤外線吸収率=1−(透過率+反射率)/100 ・・・式1
〔熱伝導率の測定〕
熱伝導率は、図4に示す測定装置によって測定した。
(i)測定装置の構成
1辺が20mmの立方体となるように形成されたアルミニウム製(A5052、熱伝導率:140W/m・K)の一対のロッドL間に、試験片(20mm×20mm)を挟み込む。次いで、一対のロッドが上下となるように発熱体(ヒーターブロック)Hと放熱体(冷却水が内部を循環するように構成された冷却ベース板)Cとの間に配置する。より具体的には、上側のロッドL上に発熱体Hを配置し、下側にロッドLの下に放熱体Cを配置する。
ここで、一対のロッドLは、発熱体および放熱体を貫通する一対の圧力調整用ネジTの間に位置している。なお、圧力調整用ネジTと発熱体Hとの間にはロードセルRが配置されており、圧力調整用ネジTを締めこんだ際の圧力が測定されるように構成されており、かかる圧力を試験片に加わる圧力とする。
さらに、下側のロッドLおよび試験片を放熱体C側から貫通するように接触式変位計の3本のプローブP(直径1mm)を設置する。この際、プローブPの上端部は、上側のロッドLの下面に接触した状態になっており、上下のロッドL間の間隔(試験片の厚み)を測定可能に構成されている。
発熱体Hおよび上下のロッドLには温度センサーDを取り付ける。具体的には、発熱体Hの1箇所、各ロッドLの上下方向に5mm間隔で5箇所、温度センサーDを取り付ける。
(ii)測定
測定は、まず初めに、圧力調整用ネジTを締めこんで、試験片に圧力を加え、発熱体Hの温度を80℃に設定するともに、放熱体Cに20℃の冷却水を循環させた。
次いで、発熱体Hおよび上下のロッドLの温度が安定した後、上下のロッドLの温度を各温度センサーDで測定し、上下のロッドLの熱伝導率と温度勾配から試験片を通過する熱流束を算出するとともに、上下のロッドLの試験片との界面の温度を算出した。これらを用いて当該圧縮率における熱伝導率(W/m・K)を算出した。
〔輻射熱伝導抑制効果の評価〕
図5に示すように、厚さ2mmのポリカーボネート(PC)板より形成したステージに熱電対を備えたセラミックヒーター(25mm角)を設置し、電力量を1.18Wとした。実施例で得られた輻射伝熱抑制シートを70mm角に切断して伝熱試験片とし、該熱伝導層を発熱部品に密着させることなく、発熱部品の放熱面と向かいあう位置になるよう、筐体とするPC板(160mm×160mm×2mm)に熱伝導抑制層側を固定し、上記ステージに組み付けた。
セラミックヒーターの温度を熱電対で測定し、筐体表面温度をサーモグラフィー(NEC Avio Intrared Technologied Co.,Ltd.製 TYOE H2640)で測定し、両者の温度が定常状態になったときの各温度を発熱体温度および筐体表面温度とした。
〔貼り付け保存性の測定〕
得られた粘着剤層を切断し、粘着剤層の片側の面にアルミ箔(ニラコ(株)製、AL−013351、厚み;100μm)を直接貼り合せ、70mm×70mmに切断した後、もう一方の面をPC板に貼り付けて測定試料とした。水平に置いた測定試料に2kgローラーを一往復させて圧着した。圧着後、試験片が垂直になるようホルダーに設置し、常温または80℃または60℃/90%RH、または−40℃雰囲気下で240時間放置した。240時間放置後のアルミ箔の浮き、剥がれの様子を4段階評価で観察した。◎;剥がれ・浮きなし、○;わずかな浮きあり、△;一部剥がれあり、×;貼り付け面積の40%以上が浮き、または剥がれあり。
〔製造例1〕:紫外線重合型粘着剤組成物の調製および粘着剤層の作製
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)95重量部と極性基を有するビニルモノマーとしてのアクリル酸(AA)5重量部とからなる混合モノマーに、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・ジャパン社製、商品名「IRGACURE651」)0.05重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ジャパン社製、商品名「IRGACURE184」)0.05重量部を加えた溶液を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、紫外線に曝露して部分的に光重合(重合率7%)させることによって、Mwが約500万のプレポリマーを含むシロップを得た。
この部分重合したシロップ100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名「NKエステルA−HD−N」)0.08重量部を均一混合し、脱泡処理を行い目的の紫外線重合型粘着剤組成物を調製した。
この組成物を光照射後の厚さが所定の厚みとなるように、剥離処理された基材上に塗布し、更にその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートに、ブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を、重合率99%に達するまでに必要な時間だけ照射し、粘着剤層を得た。組成物の基材への塗布厚みを変えることにより、異なる厚みを有する以下の粘着剤層を得た:粘着剤層1(厚み;50μm)、粘着剤層2(厚み;100μm)、粘着剤層3(厚み;200μm)。得られた粘着剤層のゲル分率はいずれも82%であった。
〔実施例1〕
粘着剤層1を用いた。粘着剤層1の厚さ方向の熱伝導率は0.12W/m・Kであった。この粘着剤層1の一方の面に、熱伝導層としてアルミ箔(東洋アルミニウム製、厚み;80μm)を積層し、70mm×70mmに打ち抜き、総厚が約0.13mmの輻射伝熱抑制シート1を作製した。得られた輻射伝熱抑制シート1を、上述の輻射伝熱抑制効果の評価に供し、筐体表面温度の最大値と発熱体の最大値を観察した。結果を表1に示した。さらに、粘着剤層1の密着性(貼り付け保存性)評価結果を表2に示した。
〔実施例2〕
粘着剤層1の代わりに粘着剤層2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、総厚が約0.18mmの輻射伝熱抑制シート2を作製した。粘着剤層2の厚さ方向の熱伝導率は0.14W/m・Kであった。得られた輻射伝熱抑制シート2を、上述の輻射伝熱抑制効果の評価に供し、筐体表面温度の最大値と発熱体の最大値を観察した。結果を表1に示した。さらに、粘着剤層2の密着性(貼り付け保存性)評価結果を表2に示した。
〔実施例3〕
熱伝導層としてアルミ箔(ニラコ(株)製、AL−013323、厚み;100μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして総厚が約0.15mmの輻射伝熱抑制シート3を作製した。得られた輻射伝熱抑制シート3を、上述の輻射伝熱抑制効果の評価に供し、筐体表面温度の最大値と発熱体の最大値を観察した。結果を表1に示した。
〔実施例4〕
製造例1で得られた粘着剤層1に、7.9φのポンチを用いて70mm×70mmのエリアに対して25個(5行×5列)の貫通孔を形成して粘着剤層4とした。粘着剤層4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、総厚が約0.13mmの輻射伝熱抑制シート4を作製した。得られた輻射伝熱抑制シート4を、上述の輻射伝熱抑制効果の評価に供し、筐体表面温度の最大値と発熱体の最大値を観察した。結果を表1に示した。さらに、粘着剤層4の密着性(貼り付け保存性)評価結果を表2に示した。
〔実施例5〕
製造例1で得られた粘着剤層1を70mm×70mmに打ち抜き、打ち抜いた粘着剤層の内部をさらに打ち抜いて60mm×60mmの開口部を形成し、幅5mmの枠状の粘着剤層5を得た。粘着剤層5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、総厚が約0.13mmの輻射伝熱抑制シート5を作製した。得られた輻射伝熱抑制シート5を、上述の輻射伝熱抑制効果の評価に供し、筐体表面温度の最大値と発熱体の最大値を観察した。結果を表1に示した。さらに、粘着剤層5の密着性(貼り付け保存性)評価結果を表2に示した。
〔比較例1〕
伝熱試験片を、筐体とするPC板に固定することなく、ブランクで輻射伝熱抑制効果の評価を行った。結果を表1に示した。
〔比較例2〕
粘着剤層1の代わりに粘着剤層3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、総厚が約0.28mmの輻射伝熱抑制シート6を作製した。粘着剤層3の厚さ方向の熱伝導率は0.18W/m・Kであった。得られた輻射伝熱抑制シート6を、上述の輻射伝熱抑制効果の評価に供し、筐体表面温度の最大値と発熱体の最大値を観察した。結果を表1に示した。
表1に示すように、輻射伝熱抑制シートを用いない比較例1および粘着剤層の厚みが所定の範囲外である比較例2と比較して、実施例の輻射伝熱抑制シートを導入することによって、筐体表面の温度上昇およびヒートスポットの発生を抑制し、かつ発熱体の温度上昇を抑制していることが確認された。また、表2に示すように、実施例の輻射伝熱抑制シートは、被着体に対して十分な密着性が得られることが確認された。
本発明の輻射熱伝導抑制シートは、例えば、電子機器等に搭載される電子部品等の発熱体を囲う製品筐体等に接着して用いることができる。取り付け箇所の例としては、パーソナルコンピューター、タブレットPC、PDA、携帯電話、デジタルカメラ等の電子機器や、印字印刷装置、複写機、プロジェクター等の情報機器、ジャーポットや電子レンジ、給湯器などの調理家電等の遮熱が必要な部位が挙げられる。
1 熱伝導層
2 粘着剤層
10 輻射熱伝導抑制シート

Claims (6)

  1. 熱伝導層と厚みが100μm以下の粘着剤層とを有し、
    該熱伝導層は、波長7μm〜10μmにおける遠赤外線吸収率が0.6以下であり、熱伝導率が200W/m・K以上であり、
    内部に発熱体を有する筐体に固定して用いられ、該熱伝導層が該発熱体に密着することなく該発熱体の放熱面と対峙する位置で該粘着剤層を介して該筐体に固定される、
    輻射熱伝導抑制シート。
  2. 前記粘着剤層のゲル分率が70%以上である、請求項1に記載の輻射熱伝導抑制シート。
  3. 前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤およびゴム系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1つで構成されている、請求項1または2に記載の輻射熱伝導抑制シート。
  4. 前記粘着剤層が厚み方向に複数の貫通孔を有し、平面視した場合に、該粘着剤層の面積に占める該貫通孔の面積の割合が30%以上である、請求項1から3のいずれかに記載の輻射熱伝導抑制シート。
  5. 前記熱伝導層が、グラファイトシートおよび金属箔から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の輻射熱伝導抑制シート。
  6. 前記熱伝導層が、前記対峙する発熱部品の放熱面の面積に対して4倍以上の面積を有する、請求項1から5のいずれかに記載の輻射熱伝導抑制シート。
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