JP2014006994A - ブレーカー及びインサート成型品、並びにブレーカーを備えた安全回路及び2次電池パック - Google Patents

ブレーカー及びインサート成型品、並びにブレーカーを備えた安全回路及び2次電池パック Download PDF

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Abstract

【課題】ブレーカーにおいて、固定接点と可動接点との間の接触導通が妨げられる虞を低減する。
【解決手段】ケース7は、固定接点21を有する固定片2をインサートして成形される。固定片2は、ケース7との境界95に凹部27を有する。凹部27はケース7を構成する樹脂材料の余剰分を収容し、ケース7の成形時にバリが発生することを抑制する。これにより、固定接点21と可動接点3との間にバリ等の異物が介在することが抑制され、両接点間の接触導通が良好となる。
【選択図】図4

Description

本発明は、電気機器の2次電池回路等に内蔵される小型のブレーカー等に関するものである。
各種電気機器の2次電池やモーター等の保護装置(安全回路)としてブレーカーが使用されている(後述する図9及び図10参照)。ブレーカーは、充放電中の2次電池の温度が過度に上昇した場合、又は自動車、家電製品等の機器に装備されるモーター等に過電流が流れた場合等の異常が生じた際に、2次電池やモーター等を保護するために電流を遮断する。このような保護装置として用いられるブレーカーは、機器の安全を確保するために、温度変化に追従して正確に動作する(良好な温度特性を有する)ことと、通電時の抵抗値が安定していることが求められる。
また、ブレーカーが、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型携帯情報端末機器又はスマートフォンと称される薄型の多機能携帯電話機等の電気機器に装備される2次電池等の保護装置として用いられる場合、上述した安全性の確保に加えて、小型化が要求される。特に、近年の携帯情報端末機器にあっては、ユーザーの小型化(薄型化)の志向が強く、各社から新規に発売される機器は、デザイン上の優位性を確保するために、小型に設計される傾向が顕著である。こうした背景の下、携帯情報端末機器を構成する一部品として、2次電池と共に実装されるブレーカーもまた、さらなる小型化が強く要求されている。
ブレーカーには、温度変化に応じて動作し、電流を導通又は遮断する熱応動素子が備えられている。特許文献1には、熱応動素子としてバイメタルを適用したブレーカーが示されている。バイメタルとは、熱膨張率の異なる2種類の板状の金属材料が積層されてなり、温度変化に応じて形状を変えることにより、接点の導通状態を制御する素子である。同文献に示されたブレーカーは、固定片(ベースターミナル)、可動片(可動アーム)、熱応動素子、PTCサーミスター等の部品が、ケースに収納されてなり、固定片及び可動片の端子が電気機器の電気回路に接続されて使用される。
また、特許文献2には、固定接点と可動接点との接触抵抗を安定させるために、可動接点の表面を梨地に加工する技術が開示されている。また、特許文献3には、固定接点と可動接点に振動を加えながら通電し、接点表面の酸化層を破壊して活性化痕を形成する技術が開示されている。
図11は、上記特許文献1に記載されているような、従来のブレーカーにおける固定接点と可動接点の近傍の断面を拡大して示す。ブレーカーは、固定接点21を有する固定片2と、可動接点3が接合される可動片4と、固定片2及び可動片4などを収容するケース7等によって構成されている。固定片2とケース7の樹脂ベース(ケース本体)71とは、インサート成形によって一体化されている。樹脂ベース71は、難燃性・耐熱性に優れた樹脂により構成され、さらに補強のために、ガラス繊維等のフィラーが添加されている。インサート成形においては、固定片2と樹脂ベース71との境界部において、樹脂ベース71を形成する樹脂材料が成形用金型と固定片2との隙間にはみ出してバリ99が生ずることがある。図11に例示したブレーカーにおいては、固定接点21の上面を樹脂ベース71の底壁92の上面よりも十分に高くなるように設計しているので、バリ99が固定接点21と可動接点3との接触面31に達することはなく、上述した活性化痕を形成する技術によって安定した接触導通が得られる。
WO2011/105175号公報 特開2005−116511号公報 特開2000−207966号公報
図12は、上述した小型化が要求されている背景の下で、さらなる低背化を狙ったブレーカーにおける固定接点21と可動接点3の近傍の断面を拡大して示す。このブレーカーは、強度等の要件を満たす限界まで各部品が薄肉化され、固定接点21の上面と樹脂ベース71の底壁92の上面とを略同一の高さになるように設計されており、樹脂ベース71が薄肉化されると共に、ブレーカー内部の空間が縮小されて低背化が図られている。
しかしながら、ブレーカーが固定接点21の上面と樹脂ベース71の底壁92の上面とを略同一の高さになるように設計される場合、図12に示すように、固定片2と樹脂ベース71と境界部において発生するバリ99が可動接点3の端縁部の下方に達することがあり、固定接点21と可動接点3との間の接触導通が妨げられる。一般に樹脂成形においてバリ99の発生量は成形時期や樹脂材料のロット等によって変動するため、安価にかつ生産現場に過度の負担をかけることなく、バリ99を安定的に抑制するのは困難である。もちろん、可動片4の先端を延出し可動接点3を図中左方向に移動させることにより、可動接点3とバリ99との干渉を回避することは可能であるが、それではブレーカーの全長が肥大することになり、小型化を図ることができない。
図13は、成形条件等に細心の注意を払ってインサート成形を遂行することにより、固定片2と樹脂ベース71との境界部において発生するバリを最小限に留めた例を示す。この種のブレーカーにおいては、固定片2と可動片4との間に熱応動素子5及びPTCサーミスター6を介在させつつ、ブレーカーの低背化を図るため、また、固定片2の端子を樹脂ベース71の底面から上方にオフセットさせて突出させるために、固定片2は固定接点21の近傍においてクランク状に段曲げされている。かかる段曲げは、プレス加工によって形成され、固定片2には、互いに逆方向に曲げられた曲部25,26が形成され、底壁92を構成する樹脂は、曲部26の上端に達する。曲部26は、特にその外側において、プレス加工の工程上不可避な曲率を有しているので、固定片2と樹脂ベース71と境界部における底壁92の肉厚は漸減しその先端部92aにおいては極めて薄くなり、バリが発生し易い傾向にある。
上述したように図13に示した例においては、固定片2と樹脂ベース71と境界部におけるバリの発生を最小限に留めているので、底壁92の先端部92aが可動接点3の端縁部の下方に達する虞は少ない。しかしながら、底壁92の先端部92aを構成する樹脂の厚みが極めて薄くなると、補強のために樹脂に添加されているガラス繊維(図示せず)と樹脂との接触面積が小さくなり、ガラス繊維を結合し留めておくことが困難となる。樹脂による束縛が解かれたガラス繊維の一部が、ケース7の内部に飛散して固定接点21と可動接点3との間に介在すると、バリ99による干渉と同様に両接点間の接触導通が妨げられる虞が生ずる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、小型化を図りつつ、固定接点と可動接点との間の接触導通が妨げられる虞を低減できるブレーカーを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、固定接点を有する固定片と、弾性変形する弾性部と該弾性部の先端部に可動接点とを有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、前記固定片、可動片及び熱応動素子を収容するケースとを備えたブレーカーにおいて、前記ケースは、前記固定片をインサートして成形され、前記固定片は、前記ケースとの境界に凹部を有することを特徴とする。
この発明において、前記凹部は、前記固定片に形成されている曲部の外側表面に設けられていることが好ましい。
この発明において、前記凹部は、前記固定片の表面に対して垂直な側壁を有することが好ましい。
この発明において、前記凹部は、前記側壁に向かって登り勾配の斜面を有することが好ましい。
この発明において、前記固定片は、前記凹部が形成されている面とは反対側の面に、前記凹部に対応して形成された凸部を有することが好ましい。
また、本発明の電気機器用の安全回路は、前記ブレーカーを備えたことを特徴とする。
また、本発明の2次電池回路は、前記ブレーカーを備えたことを特徴とする。
また、本発明のインサート成型品は、接点を有する導電体と、前記導電体をインサートして成形された絶縁体とを備え、前記導電体は、前記絶縁体との境界に凹部を有することを特徴とする。
本発明のブレーカーによれば、固定片がケースとの境界において凹部を有するので、ケースを構成する材料が凹部に充填されることより、該境界におけるケースの肉厚を確保することが可能となる。これにより、該境界にバリが発生することを抑制でき、固定接点と可動接点との間の接触導通がバリによって妨げられる虞を低減できる。また、ケースがフィラーとしてガラス繊維等を添加した樹脂によって構成されている場合にあっても、該境界のケースの肉厚を確保できるので、ガラス繊維等を樹脂によって強固に結合し留めておくことが可能となる。これにより、ガラス繊維等の一部が、ケースの内部に飛散して固定接点と可動接点との間に介在することを抑制でき、両接点間の接触導通が妨げられる虞を低減できる。
また、凹部が曲部の外側表面に設けられている構成によれば、ケースの肉厚が漸減し薄くなり易い傾向のある曲部の外側表面においても、ケースの肉厚を確保することが可能となる。これにより、固定接点と可動接点との間の接触導通が妨げられる虞をより一層低減できる。
また、凹部が固定片の表面に対して垂直な側壁を有する構成によれば、固定片とケースとの境界におけるケースの肉厚を十分に確保できるので、固定接点と可動接点との間の接触導通が妨げられる虞をより一層低減できる。
また、凹部は、前記側壁に向かって登り勾配の斜面を有する構成によれば、ケースを構成する材料が、凹部に充填される際に斜面を登りながら凹部に充填されることにより、その先端部分における充填圧力が徐々に低下する。これにより、該先端部分の充填圧力が適正化され、固定片とケースとの境界にバリが発生することをより一層抑制でき、固定接点と可動接点との間の接触導通が妨げられる虞をより一層低減できる。
また、固定片が、凹部が形成されている面とは反対側の面に、凹部に対応して形成された凸部を有する構成によれば、固定片に凹部を形成することによって生ずる固定片の局所的な肉厚の減少を凸部によって補うことができる。これにより、固定片の強度を確保することができる。
また、本発明のブレーカーを備えた安全回路又は2次電池回路によれば、ブレーカーにおける固定接点と可動接点との間の接触導通が確実に得られる安全回路又は2次電池回路を得ることができる。
また、本発明のインサート成型品によれば、導電体が絶縁体との境界において凹部を有するので、絶縁体を構成する材料が凹部に充填されることより、該境界における絶縁体の肉厚を確保することが可能となる。これにより、該境界にバリが発生することを抑制でき、接点部分の接触導通がバリによって妨げられる虞を低減できる。また、絶縁体がフィラーとしてガラス繊維等を添加した樹脂によって構成されている場合にあっても、該境界の絶縁体の肉厚を確保できるので、ガラス繊維等を樹脂によって強固に結合し留めておくことが可能となる。これにより、ガラス繊維等の一部が、絶縁体から飛散して接点の表面に介在することを抑制でき、接点部分の接触導通が妨げられる虞を低減できる。
本発明の一実施形態によるブレーカーの構成を示す組み立て斜視図。 通常の充電又は放電状態におけるブレーカーの動作を示す断面図。 過充電状態又は異常時などにおけるブレーカーの動作を示す断面図。 同ブレーカーにおける接点の周辺構成を拡大して示す断面図。 固定片が成形され、樹脂ベースが固定片をインサートして成形される工程を時系列で示す断面図。 樹脂ベースに可動片が組み込まれ、カバー部材が装着される工程を時系列で示す断面図。 固定片の変形例を示す断面図。 固定片の別の変形例を示す断面図。 本発明のブレーカーを備えた2次電池パックの構成を示す平面図。 本発明のブレーカーを備えた電気機器用の安全回路の回路図。 従来のブレーカーにおける接点の周辺構成を拡大して示す断面図。 従来の低背化を図ったブレーカーにおける接点の周辺構成を拡大して示す断面図。 従来の低背化を図ったブレーカーにおいて、固定片と樹脂ベースと境界部に発生するバリを最小限に留めた例を示す断面図。
本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。図1乃至図3はブレーカーの構成を示す。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点3を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片(導電体)2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収納するケース7等によって構成されている。ケース7は、樹脂ベース(絶縁体、第1ケース)71と樹脂ベース71の上面に装着されるカバー部材(第2ケース)72等によって構成されている。
固定片2は、リン青銅を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、樹脂ベース71にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部と電気的に接続される端子22が形成され、他端部の近傍にはPTCサーミスター6が載置される載置部23が形成されている。PTCサーミスター6は、固定片2の載置部23に3箇所形成された凸状の小突起23aの上に載置される。固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点3に対向する位置に形成され、樹脂ベース71の上方に形成されている開口73bから露出されている。端子22は樹脂ベース71の一端から外側に露出されている。
可動片4は、板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の材料としては、固定片2と同等のリン青銅を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。可動片4の長手方向の一端には外部回路と電気的に接続される端子41が形成されて樹脂ベース71から外側に露出される。可動片4の他端(アーム状の可動片4の先端に相当)には可動接点3が形成されている。可動接点3は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。なお、本出願においては、可動片4において、可動接点3が接合されている面(すなわち図1において下側の面)を裏(うら)面、その反対側の面を表(おもて)面として説明している。表面と裏面については、他の部品、例えば、固定片2等においても同様である。可動片4は、可動接点3と端子41の間に、固定部42(アーム状の可動片4の基端に相当)、弾性部43を有している。固定部42において樹脂ベース71とカバー部材72によって裏表両面側から挟み込まれて可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点3が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。樹脂ベース71とカバー部材72には、可動片4の固定部42と当接し、固定部42を固定状態で保持する当接部74と当接部79がそれぞれ形成されている。本実施形態では、樹脂ベース71の収容部73の外縁から樹脂ベース71の外壁に亘る領域に当接部74が形成されている。また、カバー部材72において、段部77を含み、可動片4を挟んで当接部74と対向する領域に当接部79が形成されている。可動片4は、可動接点3が設けられている裏面側から樹脂ベース71に収容される。固定部42は、その裏面において樹脂ベース71の当接部74と当接し、その表面においてカバー部材72の当接部79と当接する。可動片4は、当接部74及び当接部79によって固定部42の裏表両面から挟み込まれて、ケース7に対して固定される。
可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部43の下面には、熱応動素子5に対向して一対の小突起44が形成されている。小突起44と熱応動素子5とは接触して、小突起44を介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(図2及び図3参照)。
また、可動片4には、可動片4の厚み方向に貫通し、樹脂ベース71の突起74aが挿通される貫通穴45と、クランク状に形成された段曲げ部46と、段曲げ部46に形成された斜面47と、樹脂ベース71の位置決め部75と係合される一対の係合部48と、可動片4の長手方向に対して垂直な短手方向に可動片4の一部が切除されたくびれ部49が形成されている。貫通穴45、段曲げ部46、斜面47、係合部48及びくびれ部49は、弾性部43を挟んで可動接点3とは反対側、すなわち弾性部43に対して端子41の側に設けられている。貫通穴45は、可動片4の長手方向の中心線上に設けられている。斜面47は、可動片4の方向に沿って連続して形成されている。係合部48は、可動片4の短手方向に沿って2箇所に設けられている。
貫通穴45は、可動片4の固定部42に形成されている。固定部42は、弾性部43に対して可動片4の短手方向に幅広に形成されている。これにより、固定部42における可動片4の長手方向に垂直な断面積が、弾性部43における該断面積に対して大きい箇所となる。また、貫通穴45は、平面視で(可動片4の厚み方向に視て)可動片4の短手方向に長い長円又は楕円形状に形成されている。
係合部48は、くびれ部49の端子41の側の端縁にて形成される。くびれ部49は、固定部42を挟んで弾性部43とは反対側で、固定部42と端子41の間に配設されている。くびれ部49の幅寸法(可動片4の短手方向の長さ寸法、以下同様)は、弾性部43の幅寸法に対して同等以下に設定されているのが望ましいが、少なくとも固定部42及び端子41の幅寸法よりも小さく設定されていればよい。本実施形態におけるくびれ部49は、上記特許文献1における第2弾性部としての機能を有しており、端子41に加えられた外力や衝撃を吸収し、可動接点3の位置を適正に維持する。
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、バイメタル、トリメタルなどの複合材料からなる。過熱により動作温度に達すると湾曲形状はスナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨張側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨張側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。
ケース7を構成する樹脂ベース71及びカバー部材72は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの樹脂により成形されている。これらの樹脂には、補強のために、ガラス繊維等の無機物の短繊維がフィラーとして添加されている。樹脂ベース71には、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収納するための収容部73及び可動片4を収納するための開口73a,73bなどが形成されている。収容部73は、樹脂ベース71の側壁91の上端に対して底壁92の内底面が窪むことにより形成される。また、固定片2の固定接点21の近傍には、固定片2と樹脂ベース71との境界95が形成される。なお、樹脂ベース71に組み込まれた熱応動素子5及びPTCサーミスター6の端縁は、収容部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
また、樹脂ベース71は、可動片4の貫通穴45に挿通されて係合する突起74aと、可動片4を位置決めするための一対の位置決め部75と、可動片4の端子41を外部に露出させるための窓76を有する。突起74aは、貫通穴45に対応し、平面視で長円形状に形成され、樹脂ベース71を補強する。突起74aの高さすなわち突出量は、可動片4の厚みより大きく設定され、カバー部材72の裏面には、突起74aの頂部に対応する凹部が必要に応じて設けられる。位置決め部75は、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って2箇所に設けられている。本実施形態では、窓76の存在によって、樹脂ベース71の側壁の一部が可動片4のくびれ部49に対応する形状に形成され、位置決め部75を構成する。すなわち、位置決め部75は、くびれ部49の近傍において切除された部分に介在し、樹脂ベース71を補強する。
カバー部材72は、その内壁面から可動片4の段曲げ部46に対応する形状に突出する段部77と、段部77に形成された斜面78(図6参照)とを有する。斜面78は、可動片4の斜面47に対応し、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って連続して形成されている。
カバー部材72には、カバー片8がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片8は、上述したリン青銅を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成される。カバー片8は、図2及び図3に示すように、可動片4の上面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、カバー部材72のひいては筐体としてのケース7の剛性・強度を高める。
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収納した樹脂ベース71の収容部73を塞ぐように、カバー部材72が、樹脂ベース71の上面に装着される。樹脂ベース71とカバー部材72とは、例えば超音波溶着によって接合される。
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点3は接触し、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の両端子22,41間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点3を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、PTCサーミスター6が過熱され、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点3とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点3の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点3の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点3と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図2に示す導通状態に復帰する。
図4は、ブレーカー1における固定接点21及び可動接点3の周辺構成を拡大して示す。固定片2は、固定接点21とPTCサーミスター6を載置するための載置部23(図1参照)との間でクランク状に段曲げされている。すなわち、固定片2は、第1斜面24を挟んで互いに逆方向に曲げられた曲部25,26を有する。樹脂ベース71の底壁92を構成する樹脂材料は、曲部25、第1斜面24、曲部26に沿って充填され、樹脂ベース71の下面に対する底壁92の上面の高さは、固定片2の端子22及び固定接点21の上面の高さと同等か僅かに低い。曲部26の外側表面(曲率円の径方向の外側表面、すなわち収容部73の側の表面)には、凹部27が形成されている。なお、図4において、固定片2に凹部27を形成する前段階における曲部26の外側表面の仮想線は、破線で示される。凹部27は、第1斜面24と曲部26の境界付近から固定片2と樹脂ベース71との境界95に亘って形成されている。凹部27は、底壁92から固定接点21の表面にはみ出すバリの原因となる余剰な樹脂材料を収容する。凹部27に樹脂材料が充填されることにより、底壁92の先端部92aの肉厚が確保される。凹部27の深さ寸法は、例えば、固定片2の厚み寸法の1/3倍以上で1/2倍未満に設定されることが望ましいと考えられる。凹部27の深さ寸法が固定片2の厚み寸法の1/3倍未満になると、底壁92の先端部92aの肉厚を確保することが困難となり、凹部27の深さ寸法が固定片2の厚み寸法の1/2倍以上になると、固定片2の肉厚が局所的に不足し、固定片2の強度不足が懸念されるからである。
凹部27は、底壁27aと側壁27bを有する。固定片2において、固定接点21、凹部27の底壁27a及び載置部23は、それぞれ段違いに形成される。底壁27aは、側壁27bに向かって登り勾配の第2斜面27cを有する。本実施形態では、底壁27aの全領域に亘って第2斜面27cが形成されているが、一部の領域において第2斜面27cが形成されている形態であってもよい。側壁27bは、境界95から底壁27aに亘って形成されている。側壁27bは、境界95における固定片2の表面(固定接点21の表面)に対して垂直をなすように、すなわち固定片2の厚み方向に形成されているので、境界95において、底壁92の先端部92aの肉厚は、側壁27bの高さ寸法と同等程度に確保される。本実施形態では、底壁27aの全領域が固定片2の表面に対して垂直をなすように形成されているが、一部の領域において固定片2の表面に対して垂直をなす形態であってもよい。なお、樹脂材料の充填性を考慮すると、第1斜面24の迎角αは例えば50°未満、第2斜面27cの迎角βは迎角αよりも小さく例えば10゜未満が望ましいが、それぞれの迎角は、ブレーカー1の小型化及びバインダーとしての樹脂の結合性等を考慮して定めればよい。また、固定接点21と凹部27の底壁27aとの段差(凹部27の深さ)は、底壁27aと載置部23との段差より小さく設定されることが望ましい。PTCサーミスター6を収容するための空間を確保しつつ、固定片2の厚みを薄く設計でき、ブレーカー1の小型化を図ることができるからである。
図5において、(a)乃至(d)は固定片2を成形する工程、(e)乃至(g)は固定片2をインサートして樹脂ベース71を成形する工程を時系列で示す。固定片2は、図5(a)に示す金属板の母材20をプレス加工することにより形成される。かかるプレス工程により、図5(b)に示すように、固定片2に端子22、載置部23、第1斜面24、曲部25,26等が形成される。また、載置部23には、小突起23aが形成される。そして、図5(c)に示すように、曲部26の外側表面に凹部27が形成される。凹部27は、コイニングの他、曲部26の外側表面を切削することによっても形成することができる。さらに、図5(d)に示すように、固定接点21を構成する銀、ニッケル等の金属が凹部27の近傍の表面に形成され、固定片2が完成する。
その後、図5(e)に示すように、固定片2は、第1金型201に装填(インサート)され、第2金型202が矢印方向に閉じられる。これにより、図5(f)に示すように、第1金型201及び第2金型202によってキャビティ空間203が区画される。第1金型201には、押え部204がキャビティ空間203に突出して形成されており、押え部204の頂部が固定片2の裏面と当接し、固定片2を支持しながら、型締め時に固定片2を押圧する。これにより、固定片2は、押え部204によって第2金型202の側に付勢され、固定接点21と第2金型202との間に隙間が生ずることが抑制され、固定接点21と第2金型202との間にバリが生ずることが抑制される。このようにして、固定接点21及び載置部23の表面は、第2金型202と当接され、樹脂材料が流れ込まないように閉鎖される。一方、凹部27とキャビティ空間203とは互いに連通状態にある。かかるキャビティ空間203に樹脂ベース71を構成する樹脂材料が充填され、その硬化後に樹脂ベース71を離型することにより、図5(g)に示すように、固定片2をインサートした樹脂ベース71が得られる。図5(f)において、凹部27とキャビティ空間203とは互いに連通状態にあるので、キャビティ空間203に充填された樹脂材料は、凹部27にも流れ込む。なお、第2金型202の天壁202aは、固定接点21と当接する部位から樹脂ベース71の底壁92を形成する部位に亘って平面状に形成されている。従って、キャビティ空間203に樹脂材料が満たされると、固定接点21と同一の平面上に底壁92の上面が形成される。また、押え部204が突出する領域には、樹脂材料が流れ込むことがないので、凹部93が形成され、固定片2の裏面が露出される。
本実施形態においては、固定片2の曲部26に凹部27が形成されているので、キャビティ空間203に樹脂材料が充填される際、凹部27に樹脂材料が流れ込んで、境界95における樹脂ベース71の肉厚を確保でき、また、固定片2と樹脂ベース71との境界95における充填圧力が過度に高まることを抑制する。これにより、樹脂材料が凹部27の側壁27bを越えて固定接点21の側に流出して、バリが発生することを抑制できる。
また、キャビティ空間203に樹脂材料を充填する際に、その充填圧力を適宜設定することにより、底壁92の上面の高さを、固定接点21の上面の高さに対して僅かに低く形成することも可能である。また、キャビティ空間203に充填された樹脂材料は硬化後の冷却時に収縮するが、この収縮の程度によっては、底壁92の上面の高さが、固定接点21の上面の高さに対して僅かに低く形成されることもある。このような場合にあっても、凹部27によって境界95における樹脂ベース71の肉厚を確保できる。
図6(a)(b)は、樹脂ベース71に可動片4が組み込まれ、カバー部材72が装着されて溶着される様子を時系列で示す。可動片4は、樹脂ベース71の開口73a,73bに案内されて樹脂ベース71に組み込まれる。このとき、図1に示すように、可動片4に形成されているくびれ部49の両側の係合部48に位置決め部75が係合されると共に、貫通穴45に樹脂ベース71の突起74aが挿通される。また、貫通穴45に突起74aが挿通されることに加え、一対の係合部48と一対の位置決め部75との係合により、樹脂ベース71に対する可動片4の回転が規制され、仮の位置決めが容易に行われる。
この仮の位置合わせの段階では、樹脂ベース71に対する可動片4の位置合わせが正確になされている必要はない。また、可動片4は、後の工程で最終的な位置合わせができるように、樹脂ベース71の上に載置された状態であり、固定されてはいない。なお、樹脂ベース71の開口73a,73b及び突起74aの位置、形状、寸法等は、仮の位置合わせがなされた位置から完全に位置決めされる定位置まで可動片4を案内し易くなるように、可動片4の対応する箇所と相似形に形成されている。
図6(a)に示すように可動片4が樹脂ベース71に組み込まれた後、樹脂ベース71にカバー部材72が装着される。カバー部材72は、樹脂ベース71の開口73aに段部77を挿入し、可動片4の段曲げ部46に段部77を押し当てることで可動片4を位置合わせしながら、樹脂ベース71に装着される。
図6(b)に示すように、カバー部材72が樹脂ベース71の方向(図中白抜き矢印方向)に押圧されると、可動片4の斜面47とカバー部材72の斜面78とが当接する。斜面47及び斜面78は、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って連続して形成されているので、なおもカバー部材72が樹脂ベース71の方向に押圧されると、可動片4の斜面47はカバー部材72の斜面78によって可動片4の長手方向に押される(付勢される)。その結果、斜面78,47によって力の方向が変換され、可動片4の全体が長手方向すなわち固定片2の存在する矢印A方向に押されて移動する。このとき、斜面47に対向して配設されている一対の係合部48と、斜面78に対向して配設されている一対の位置決め部75とが当接して係合する。これにより、突起74a等によって仮の位置合わせがなされていた可動片4は、樹脂ベース71に対して正確に位置決めされる。すなわち、樹脂ベース71に対して可動片4が組み込まれる際に生じている仮の位置合わせ時の誤差は軽減され、樹脂ベース71に対する可動片4の位置決め誤差を、実質的に樹脂ベース71の位置決め部75と可動片4の係合部48の製造時における寸法誤差程度に留めることができる。
樹脂ベース71にカバー部材72が装着されるとき、樹脂ベース71がカバー部材72の方向に押圧されながら、樹脂ベース71又はカバー部材72のいずれか一方又は両方に超音波振動が付与されると、樹脂ベース71とカバー部材72との当接部位(主として、樹脂ベース71及びカバー部材72の周縁部)は摩擦熱により溶着し、樹脂ベース71とカバー部材72とが一体化され、ケース7を構成する。
以上のように、本実施形態のブレーカー1によれば、固定片2が樹脂ベース71との境界95において凹部27を有するので、樹脂ベース71を構成する材料が凹部27に充填されることより、境界95における樹脂ベース71の肉厚を確保することが可能となる。これにより、境界95にバリが発生することを抑制でき、固定接点21と可動接点3との間の接触導通がバリによって妨げられる虞を低減できる。また、可動片4の斜面47及び係合部48、カバー部材72の斜面78、並びに樹脂ベース71の位置決め部75の作用によって、可動片4が樹脂ベース71に対して正確に位置決めされ、境界95に対する可動接点3の相対的な位置精度が高められるので、凹部27によるバリの抑制効果と相まって、固定接点21と可動接点3との間の接触導通を良好なものとすることができる。
また、樹脂ベース71がフィラーとしてガラス繊維等を添加した樹脂によって構成されている場合にあっても、境界95の部分における樹脂ベース71の肉厚を確保できるので、ガラス繊維等を樹脂によって強固に結合し留めておくことが可能となる。これにより、ガラス繊維等の一部が、ケース7の内部に飛散して固定接点21と可動接点3との間に介在することを抑制でき、両接点間の接触導通が妨げられる虞を低減できる。
また、凹部27が曲部26の外側表面に設けられているので、樹脂ベース71の肉厚が薄くなり易い傾向のある曲部26の外側表面においても、樹脂ベース71の肉厚を確保することが可能となる。これにより、固定接点21と可動接点3との間の接触導通が妨げられる虞をより一層低減できる。
また、凹部27が固定片2の表面に対して垂直な側壁27bを有するので、固定片2と樹脂ベース71との境界95におけるケースの肉厚を容易に確保でき、これにより固定接点21と可動接点3との間の接触導通が妨げられる虞をより一層低減できる。
また、凹部27は、側壁27bに向かって登り勾配の第2斜面27cを有する構成によれば、樹脂ベース71を構成する材料が、凹部27に充填される際に第2斜面27cを登ることにより、その先端部分における充填圧力が徐々に低下する。これにより、該先端部分の充填圧力が適正化され、固定片2と樹脂ベース71との境界95にバリが発生することをより一層抑制でき、固定接点21と可動接点3との間の接触導通が妨げられる虞をより一層低減できる。特に本実施形態においては、第1斜面24及び第2斜面27cが段階的に形成されているので、樹脂材料の充填速度及び充填圧力を効果的に減少させることができる。
(変形例1)
図7は、固定片の別の変形例に係る固定片2Aを適用したブレーカー1を示す。固定片2Aは、凹部27が形成されている面とは反対側の面に、凹部27に対応して形成された凸部28を有する。すなわち、凹部27は固定片2Aの表面側に、凸部28は固定片2Aの裏面側にそれぞれ形成される。凸部28は、固定片2Aの表面側に凹部27を形成することによって生ずる固定片2Aの局所的な肉厚の減少を補うために形成される。そのため、凸部28の形状は、凹部27に対応する形状(凸部28の輪郭が側面視において、凹部27と相似形)とされる。本変形例によれば、固定片2Aの表面に凹部27を形成することによって生ずる固定片2Aの局所的な肉厚の減少を、裏面に形成した凸部28によって補うことができる。これにより、固定片2Aの強度を確保することができる。なお、底壁27a、側壁27b及び第2斜面27cについては、図4に示した固定片2と同様である。
(変形例2)
図8は、固定片の別の変形例に係る固定片2Bを適用したブレーカー1を示す。固定片2Bは、曲部25と曲部26の間に固定接点21の表面に対して略垂直な側壁29を有する(迎角αが略90゜である形態に相当する)点で、図4に示した固定片2とは異なる。図8に示した固定片2Bに対して、凹部27に対応して形成された凸部28を組み合わせてもよい。本変形例によれば、曲部25と曲部26とを平面視で重複するように配設できるので、固定片2Bひいてはブレーカー1の長手方向の寸法を、容易に小さくすることができる。この変形例においては、側壁29の迎角αが急峻となるので、図4に示した形態と比較すれば、樹脂材料の充填速度及び充填圧力は高くなる。しかしながら、第2斜面27cを有する凹部27に樹脂材料が流入することにより、その充填速度及び充填圧力を低下させることができるので、バリの発生等の不具合を効果的に抑制できる。なお、底壁27a、側壁27b及び第2斜面27cについては、図4に示した固定片2と同様である。また、図7に示した固定片2Aと同様に、固定片2Aの裏面側に凸部28が形成されていてもよい。
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも、ケース7が固定片2をインサートして成形され、固定片2は、ケース7との境界95に凹部27を有する構成であればよい。従って、ケース7が、樹脂ベース71及びカバー部材72によって構成されている形態に限られず、単一の部品によって構成されていてもよく、さらには、別の部品が追加される形態であってもよい。また、同様にケース7が、樹脂ベース71及びカバー部材72とは異なる形態の第1ケース及び第2ケースを有するように構成されていてもよい。
また、凹部27は、曲部26から離れた平坦部に配設されていてもよく、固定片2が第1金型201及び第2金型202によって区画されるキャビティ空間203に装填されたとき、キャビティ空間203と連通しない箇所に配設されていてもよい。かかる箇所に配設されている凹部27であっても、凹部27に流入した樹脂材料を収容して、バリの拡大を抑制する効果を発揮できるからである。
また、本発明は、上記変形例の他、種々の変形が可能である。例えば、図1等においては、可動片4は、貫通穴45、段曲げ部46、斜面47、係合部48及びくびれ部49の構成を有する形態であるが、これらの構成うちのいずれか又は全てが廃されていてもよい。例えば、貫通穴45を廃する場合は、樹脂ベース71の突起74aも廃される。また、段曲げ部46、斜面47が廃される場合は、可動片4は平面状に形成され、樹脂ベース71の当接部74及びカバー部材72の当接部79が平坦な形状となる。この構成においては、段曲げ部46及び斜面47を廃することにより、可動片4及び樹脂ベース71の長手方向の寸法を小さくして、ブレーカー1のさらなる小型化を図ることができる。なお、可動片4の段曲げ部46及び斜面47は、必要に応じて樹脂ベース71の外部に設けられていてもよい。また、係合部48及びくびれ部49が廃される場合は、可動片4は、固定部42から端子41に亘って等幅に形成され、これに伴い樹脂ベース71の位置決め部75の形状も変更される。
また、樹脂ベース71とカバー部材72との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合される手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状(膠状)の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。
また、本実施形態では、PTCサーミスター6による自己保持回路を有しているが、本発明は、このような構成を省いた形態であっても適用可能であり、導通抵抗を抑制しつつ、ブレーカー1の小型化を図ることができる。また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカー1の構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。また、本発明は、例えば特開2006−331705号公報に示されるような、可動片(バイメタル)の両端に第1の接点及び第2の接点を有する形態にも適用することができる。この場合、第1の電極及び/又は第2の電極が段曲げされて筐体内にインサートして成形され、その曲部に凹部が形成される。さらにまた、第1の電極と第2の電極の間にPTCサーミスターが設けられていてもよい。
また、特開2005−203277号公報に示されるような、固定部42又はその近傍において、端子41の側と可動接点3の側に構造的に分離されている形態に、本発明を適用してもよい。この場合において、端子41の側と可動接点3の側とが溶接等によって固定されていてもよい。
また、本発明のブレーカー1は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。図9は2次電池パック100を示す。2次電池パック100は、2次電池101と、2次電池101の出力端回路中に設けたブレーカー1とを備える。図10は電気機器用の安全回路102を示す。安全回路102は2次電池101の出力回路中に直列にブレーカー1を備えている。
さらにまた、本発明は、ブレーカー1に限られず、接点を有する導電体と、この導電体をインサートして成形された絶縁体を備えたインサート成型品にも広く適用可能である。このようなインサート成型品の例としては、ブレーカーの他、コネクタ(レセプタクルコネクタ及び/又はプラグコネクタ)、スイッチ、リレー等の回路において接続又は切断を切り換える電気部品を挙げることができる。すなわち、ブレーカー1から熱応動素子5及びPTCサーミスター6を省くことにより、スイッチ、コネクタ、リレー等を構成できる。本発明のインサート成型品において、導電体は絶縁体との境界に凹部を有する。絶縁体を構成する材料が凹部に充填されることより、境界における絶縁体の肉厚を確保することが可能となる。これにより、境界にバリが発生することを抑制でき、接点の接触導通がバリによって妨げられる虞を低減できる。また、絶縁体がフィラーとしてガラス繊維等を添加した樹脂によって構成されている場合における効果についても、上記と同様である。
また、スイッチ、コネクタ、リレー等について、凹部が、導電体に形成されている曲部の外側表面に設けられている構成、導電体の表面に対して垂直な側壁を有する構成、側壁に向かって登り勾配の斜面を有する構成、及び導電体が、凹部が形成されている面とは反対側の面に、凹部に対応して形成された凸部を有する構成、さらには段曲げによって形成された2つの曲部の間に接点の表面に対して垂直な側壁を有する構成に関しても上記と同様である。
1 ブレーカー
2 固定片(導電体)
2A 固定片
2B 固定片
3 可動接点
4 可動片
5 熱応動素子
7 ケース(絶縁体)
21 固定接点
26 曲部
27 凹部
27b 側壁
27c 第2斜面
28 凸部
71 樹脂ベース(ケース、絶縁体)
95 境界

Claims (8)

  1. 固定接点を有する固定片と、
    弾性変形する弾性部と該弾性部の先端部に可動接点とを有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
    温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、
    前記固定片、可動片及び熱応動素子を収容するケースとを備えたブレーカーにおいて、
    前記ケースは、前記固定片をインサートして成形され、
    前記固定片は、前記ケースとの境界に凹部を有することを特徴とするブレーカー。
  2. 前記凹部は、前記固定片に形成されている曲部の外側表面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のブレーカー。
  3. 前記凹部は、前記固定片の表面に対して垂直な側壁を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブレーカー。
  4. 前記凹部は、前記側壁に向かって登り勾配の斜面を有することを特徴とする請求項3に記載のブレーカー。
  5. 前記固定片は、前記凹部が形成されている面とは反対側の面に、前記凹部に対応して形成された凸部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のブレーカー。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のブレーカーを備えたことを特徴とする電気機器用の安全回路。
  7. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のブレーカーを備えたことを特徴とする2次電池パック。
  8. 接点を有する導電体と、前記導電体をインサートして成形された絶縁体とを備え、
    前記導電体は、前記絶縁体との境界に凹部を有することを特徴とするインサート成型品。
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