JP2014006112A - 鋼の力学特性の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼の微小領域における力学特性を精度よく評価することが可能な鋼の力学特性の評価方法を提供する。
【解決手段】鋼の力学特性の評価方法は、互いに異なる稜間角を有する複数の三角錐圧子1を所定の荷重で鋼に押し込むことにより、鋼に圧痕を形成するステップ(S10)と、圧痕の深さを調査するステップ(S20)と、複数の圧子の各々に対応する圧痕の深さと上記荷重との関係から、鋼の力学特性を導出するステップ(S40)とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は鋼の力学特性の評価方法に関し、より特定的には、三角錐圧子を用いた鋼の力学特性の評価方法に関するものである。
鋼からなる機械部品において、その強度、耐久性等を見積もるために、当該機械部品の局所的な力学特性(降伏応力、加工硬化指数など)の評価が有用である。このような局所的な力学特性の評価方法として、圧子を鋼の所望の領域に押し込むことにより、当該領域の力学特性を評価するインデンテーション法が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
Yonezu et al.,"Evaluations of Elasto−Plastic Properties and Fracture Strength Using Indentation Technique",Key Engineering Materials Vols.353−358(2007),pp.2223−2226
上記非特許文献1に開示された評価方法を含めて、従来のインデンテーション法による評価では、圧子の押し込み深さhと押し込み荷重Fとの関係を調査し、これに基づいて負荷曲線(F=Ch)の定数Cを決定する。ここで、正確な定数Cの値を得るためには、圧子は、鋼の表面に対して垂直な方向に押し込まれる必要がある。しかし、鋼の表面の平坦度等の影響により、圧子の押し込み方向が鋼の表面に垂直な方向に対して傾くことを完全に回避することは困難である。そのため、定数Cを精度良く決定するためには、複数の圧子のそれぞれについて押し込み実験をある程度多くの回数実施する必要がある。一方、たとえば鋼中に存在する微小な組織の力学特性を調査したい場合、圧子の押し込み実験を多数回行なうことは困難である。そのため、従来のインデンテーション法による評価では、鋼中のある程度大きな領域の力学特性の評価に、その適用範囲が制限されるという問題があった。
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、鋼の微小領域における力学特性を精度よく評価することが可能な鋼の力学特性の評価方法を提供することである。
本発明に従った鋼の力学特性の評価方法は、互いに異なる稜間角を有する複数の三角錐圧子を所定の荷重で鋼に押し付けることにより、鋼に圧痕を形成するステップと、圧痕の深さを調査するステップと、複数の圧子の各々に対応する圧痕の深さと荷重との関係から、鋼の力学特性を導出するステップとを備える。
上述のように、従来のインデンテーション法による評価では、圧子の押し込み深さhと押し込み荷重Fとの関係を調査し、これに基づいて負荷曲線(F=Ch)の定数Cを決定する。このとき、圧子の押し込み方向が鋼の表面に垂直な方向に対して傾いていた場合、圧子の押し込み方向に沿った圧子の変位と、実際に鋼に形成される圧痕の深さとの間に差が生じる。そして、この差が従来のインデンテーション法による評価の精度を低下させる。そのため、定数Cを精度良く決定するためには、圧子の押し込み実験をある程度多くの回数実施する必要がある。
これに対し、本発明に従った鋼の力学特性の評価方法では、圧子を押し込みつつ圧子の押し込み深さhと押し込み荷重Fとを検出し、定数Cを決定するのではなく、圧子によって形成された圧痕の深さを調査し、これに基づいて定数Cを決定する。このとき、圧子の押し込み方向が鋼の表面に垂直な方向に対して傾いていた場合でも、実際に形成された圧痕の形状から圧痕の深さを算出し、これに基づいて精度よく定数Cを決定することができる。そのため、圧子の押し込み方向の傾きによる誤差を低減するための多数回の圧子の押し込み実験を行なうことなく、精度よく定数Cを決定することができる。その結果、本発明の力学特性の評価方法によれば、鋼の微小領域における力学特性を精度よく評価することが可能な鋼の力学特性の評価方法を提供することができる。なお、本発明の鋼の力学特性の評価方法では、加工硬化指数n、塑性定数Kおよび降伏応力σからなる群から選択される少なくとも1つの力学特性が評価されることが好ましい。
上記鋼の力学特性の評価方法において好ましくは、圧痕を形成するステップでは、深さ1μm以上の圧痕が形成される。これにより、圧痕形状の寸法依存性が軽減され、精度よく力学特性を評価することができる。
上記鋼の力学特性の評価方法においては、上記複数の三角錐圧子の稜間角は、いずれも115°以上であってもよい。
上記鋼の力学特性の評価方法では、複数の三角錐圧子が用いられる。特に高硬度の鋼を評価する場合、複数の三角錐圧子の稜間角をいずれも115°以上とすることにより、評価精度を向上させることができる。なお、三角錐圧子においては、稜間角が大きくなるに従って先端近傍が平面に近づく。そして、稜間角が120°になると先端近傍を構成する3つの面が同一平面となり先端部が存在し得なくなるため、稜間角は120°未満である必要がある。
上記鋼の力学特性の評価方法においては、複数の三角錐圧子の稜間角は、いずれも119°未満であってもよい。
稜間角が119°以上になると、圧子の押し込み方向が所望の方向から僅かにずれただけで、圧痕形状が、本来形成されるべき形状と大きく異なったものとなり、力学特性の評価精度が大きく低下するおそれがある。複数の圧子の稜間角をいずれも119°未満とすることにより、比較的容易に高い評価精度を確保することができる。
上記鋼の力学特性の評価方法においては、上記複数の三角錐圧子間の稜間角の差はいずれも1°以上であってもよい。
圧子間の稜間角の差が小さすぎると、力学特性の評価精度が低下するおそれがある。上記複数の圧子同士を比較した場合、稜間角の差が1°未満となる組合せが存在しないようにすることにより、高い評価精度を確保することが容易となる。
上記鋼の力学特性の評価方法においては、上記複数の圧子はダイヤモンドからなっていてもよい。
評価対象となる鋼に押し込まれる際に圧子の先端部が大きく変形すると、評価精度が低下する。評価対象を高硬度鋼とした場合でも先端部の変形を十分に抑制するためには、圧子はダイヤモンドからなっていることが好ましい。
上記鋼の力学特性の評価方法においては、2つの三角錐圧子を用いて実施されてもよい。
本発明の評価方法は稜間角が互いに異なる3つ以上の圧子を用いて実施されてもよいが、圧子の数を2つとしても十分な精度が得られる。そして、圧子の数を2つとすることにより、本発明の評価方法を簡便化することができる。
上記鋼の力学特性の評価方法においては、正常な圧痕を形成させるには、押込み速度1〜100mN/secが望ましい。
上記鋼の力学特性の評価方法においては、上記鋼の硬度は50HRC以上であってもよい。
本発明の力学特性の評価方法は、50HRC以上、さらには55HRC以上という高い硬度を有する鋼の評価に適用することができる。特に、上記複数の三角錐圧子の稜間角を、いずれも115°以上とすることにより、高い精度で鋼の力学特性を評価することができる。
上記鋼の力学特性の評価方法においては、表面硬化領域の力学特性が評価されてもよい。
局所的な力学特性の評価が可能な本発明の評価方法は、浸炭焼入、浸炭窒化焼入、高周波焼入などの表面硬化処理によって形成された表面硬化領域の力学特性の評価にも好適である。
上記鋼の力学特性の評価方法においては、上記表面硬化領域の硬度は50HRC以上であってもよい。
本発明の力学特性の評価方法は、50HRC以上、さらには55HRC以上という高い硬度を有する表面硬化領域の力学特性の評価にも好適である。
上記鋼の力学特性の評価方法においては、圧痕の観察には、AFM(原子間力顕微鏡)、レーザー顕微鏡、電子顕微鏡などを用いることができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の鋼の力学特性の評価方法によれば、鋼の微小領域における力学特性を精度よく評価することが可能な鋼の力学特性の評価方法を提供することができる。
力学特性の評価手順の概略を示すフローチャートである。 三角錐圧子(圧子の先端部)を示す概略図である。 押し込み荷重Fと押し込み深さhとの関係を模式的に示す図である。 円錐圧子(圧子の先端部)を示す概略図である。 真応力−真ひずみの関係の算出結果を示す図である。
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。図1を参照して、本実施の形態における力学特性の評価方法では、まず、評価対象となる鋼に対して圧痕を形成するステップ(S10)が実施される。このステップ(S10)においては、たとえば評価対象となる鋼材が準備され、当該鋼材の平坦部に対して圧子が押し込まれることにより圧痕が形成される。このとき、鋼材に表面粗さが小さい平坦部が形成されていることが好ましい。そのため、平坦部の表面は、予め研磨されていることが好ましい。また、鋼中の特定の組織についての評価を行なう場合、平坦部の表面は適切な腐食液によりエッチングされていてもよい。
図2を参照して、本実施の形態における力学特性の評価方法では、互いに異なる稜間角φを有する複数の三角錐圧子1が用いられる。当該複数の三角錐圧子1の稜間角φは、いずれも115°以上119°未満とすることができる。より具体的には、たとえば稜間角φが115°の圧子および118°の圧子の2つの圧子を採用することができる。
次に、ステップ(S10)にて形成された圧痕の深さを測定するステップ(S20)が実施される(図1参照)。ここで、圧子が、鋼材の上記平坦部に垂直な方向に対して傾いた方向に押し込まれた場合、以下のように実際の圧痕の深さを算出することができる。
三角錐圧子1が鋼材の平坦部に押し込まれると、当該平坦部の表面を含む平面内に圧痕の外周を構成する3つの頂点A、B、Cが形成されるとともに、当該平面よりも鋼材の内部側の位置に、圧子の先端に対応する頂点Tが形成される。そして、圧痕の深さは、点Tを通る平面ABCの法線の長さである。ここで、圧痕を構成する上記点A、B、CおよびTの座標を、それぞれ(xa,ya,za)、(xb,yb,zb)、(xC,yC,zc)および(xt,yt,zt)とする。また、平面ABCは以下の式(1)で表すことができる。式(1)において、a、b、cおよびdはそれぞれ定数(係数)である。
Figure 2014006112
さらに、ベクトルABおよびベクトルACの成分は、それぞれ式(2)および(3)で表すことができる。
Figure 2014006112
ここで、ベクトルABとベクトルACとの外積は、これら二つのベクトルに垂直なベクトル、すなわち平面ABCの法線ベクトルである。そして、当該ベクトルの成分は、以下の式(4)に示すように、上記式(1)の係数a、bおよびcである。
Figure 2014006112
したがって、上記式(1)の係数a、b、cおよびdは、それぞれ以下の式(5)、(6)、(7)および(8)で表すことができる。そして、点Tを通る平面ABCの法線の長さ、すなわち圧痕の深さhsは以下の式(9)で表すことができる。
Figure 2014006112
Figure 2014006112
したがって、圧痕を観察し、上記点A、B、CおよびTの座標を確定することにより、圧子が、鋼材の上記平坦部に垂直な方向に対して傾いた方向に押し込まれた場合でも、圧痕の深さを算出することができる。
次に、ステップ(S20)にて得られた圧痕の深さに基づいて、押し込み荷重Fと圧子の押し込み深さhとの関係を示す曲線の定数Cを算出するステップ(S30)が実施される(図1参照)。定数Cは、図3を参照して、試験体である鋼材に押し込まれる圧子の押し込み深さhと押し込み荷重Fとの関係を示す負荷曲線(F=Ch;図3の曲線A)の定数である。圧子の押し込み開始時、すなわち圧子が鋼材に接触し、かつ押し込み荷重Fが0であるとき、押し込み深さhは0である。そして、圧子の押し込みが進行する、つまり押し込み深さhが大きくなるに従って、押し込み深さhの2乗に比例して押し込み荷重Fが大きくなる。そして、押し込み荷重が最大値であるFmaxとなった時点で、押し込み深さhは最大値hmaxとなる(図3の点Tに対応)。従来のインデンテーション法では、上記押し込みの進行時における押し込み深さhと押し込み荷重Fとの関係を記録し、これに基づいて定数Cを決定する。一方、本実施の形態では、ステップ(S20)にて得られた圧痕の深さに基づいて、定数Cが算出される。
押し込み荷重Fおよび押し込み深さhが最大値となっている状態(図3中のTの状態)から徐々に押し込み荷重Fを低下させていくと、押し込み深さhは、鋼材(試験体)の複合ヤング率Sを傾きとする直線Cに従って小さくなる。しかし、押し込み深さhは、押し込み荷重が小さい領域では圧子の部分接触などの影響により直線Cを外れ、曲線Bに従って減少する。そして、押し込み荷重Fが0になった時点における圧子の押し込み深さhはhfとなる。これに対し、鋼材の変形量は、圧子の部分接触などの影響を受けないため、図3中のTの状態から直線Cに従って小さくなり、押し込み荷重Fが0になった時点における鋼材の変形量、すなわち圧痕の深さはhsとなる。
本実施の形態では、ステップ(S20)において圧痕の深さhsが得られている。また、複合ヤング率Sに関しては、以下の式(10)が成立する。
Figure 2014006112
ここで、Eおよびνは、それぞれ鋼材のヤング率およびポアソン比、Eおよびνは、それぞれ圧子のヤング率およびポアソン比である。すなわち、複合ヤング率Sは、予め算出しておくことができる。さらに、押し込み荷重の最大値Fmaxは、ステップ(S10)において記録しておくことができる。図3を参照して、本実施の形態におけるステップ(S30)では、ステップ(S20)において得られた圧痕の深さhs、予め算出された複合ヤング率S(直線Cの傾き)およびステップ(S10)において記録された押し込み荷重の最大値Fmaxの値から、点Tの座標を求める。そして、この点Tおよび原点を通る二次曲線
F=Ch2
の係数である定数Cを算出する。
次に、ステップ(S30)において算出された定数Cに基づいて、試験体である鋼材の力学特性を算出するステップ(S40)が実施される。このステップ(S40)では、まず、予め導出されたS/σrとC/σrとの関係から代表応力σrを算出する。そして、この代表応力σと既知の代表ひずみεとの関係式を稜間角φの異なる複数の三角錐圧子1に対して求め、これらに基づいて鋼の力学特性である加工硬化指数nおよび塑性定数Kが算出される。さらに、これらの算出結果と既知の鋼のヤング率とから、鋼の力学特性である降伏応力σを算出する。
より具体的には、たとえば以下のような手順で力学特性が算出される。複合ヤング率Sに関しては、上述のように式(10)が成立する。さらに、各圧子に対応するS/σとC/σとの関係は、nに依存する関数Πを用いて以下の式(11)ように表される。
Figure 2014006112
ここで、頂角θは、図2および図4を参照して、稜間角φを有する三角錐圧子1の軸方向(押し込み方向)の投影面積と押し込み深さhとの比が等しくなる円錐圧子2の頂角θに対応する。
このとき、代表ひずみεを適切に選択することにより、全ての加工硬化指数nの値に対してE/σとC/σとの関係を1つの関数Πで表すことが可能となる。この関数Πを、異なる稜間角φを有する各圧子のそれぞれについて導出する。関数Πの導出には、たとえば有限要素解析を利用することができる。
このようにして各圧子について得られた関数Πと、一般的な真応力と真ひずみとの関係式である以下の式(12)および(13)とに基づいて、鋼材(試験体)の加工硬化指数n、降伏応力σ等を算出することができる。以上の手順により、本実施の形態における力学特性の評価方法を実施することができる。
Figure 2014006112
本実施の形態における鋼の力学特性の評価方法では、上述のように、三角錐圧子1を鋼材に押し込みつつ圧子の押し込み深さhと押し込み荷重Fとを検出し、定数Cを決定するのではなく、三角錐圧子1によって形成された圧痕の深さhs、予め算出された複合ヤング率S(直線Cの傾き)およびステップ(S10)において記録された押し込み荷重の最大値Fmaxの値に基づいて定数Cが決定される。そのため、三角錐圧子1の押し込み方向の傾きによる誤差を低減するための多数回の押し込み実験を行なうことなく、精度よく定数Cを決定することができる。その結果、本実施の形態における力学特性の評価方法によれば、鋼の微小領域における力学特性を精度よく評価することができる。
また、本実施の形態における鋼の力学特性の評価方法では、ステップ(S10)において深さ1μm以上の圧痕が形成されることが好ましい。これにより、圧痕形状の寸法依存性が軽減され、精度よく力学特性を評価することができる。
さらに、本実施の形態における鋼の力学特性の評価方法では、ステップ(S10)において用いられる複数の三角錐圧子1間の稜間角φの差は、いずれも1°以上であることが好ましい。これにより、高い評価精度を確保することが容易となる。
また、本実施の形態における鋼の力学特性の評価方法では、三角錐圧子1はダイヤモンドからなっていることが好ましい。これにより、評価対象を高硬度鋼とした場合でも先端部の変形が十分に抑制され、高い精度を確保することが容易となる。
さらに、本実施の形態における鋼の力学特性の評価方法では、50HRC以上という高硬度の鋼について、その力学特性を評価することができる。より具体的には、焼入硬化された高炭素クロム軸受鋼、浸炭、あるいは浸炭窒化焼入された機械構造用合金鋼の表面硬化層、高周波焼入された機械構造用合金鋼や機械構造用炭素鋼の表面硬化層などの力学特性を評価することができる。このような力学特性の評価は、鋼からなる機械部品、たとえば軸受部品の局所的な力学特性の評価に適用することができる。
本発明の力学特性の評価方法の有効性を確認する実験を行なった。実験手順は以下の通りである。
上記実施の形態と同様の方法で、稜間角φ115°および118°の三角錐圧子を用いた鋼材の力学特性の評価を行なった。より具体的には、試験体である鋼材を準備し、当該鋼材の真応力−真ひずみの関係を算出した(実施例)。一方、比較のため、同様に準備した鋼材に対して稜間角φ115°および118°の三角錐圧子を押し込みつつ圧子の押し込み深さhと押し込み荷重Fとを検出し、定数Cを決定する従来のインデンテーション法によっても、真応力−真ひずみの関係を算出した(比較例)。さらに、同様に準備した鋼材について引張試験を実施し、真応力−真ひずみの関係を調査した。実験結果を図5に示す。
図5において、横軸は真ひずみ、縦軸は真応力を表している。また、実線は上記実施例の方法により算出された真応力−真ひずみの関係である。一点鎖線は、上記比較例の方法により算出された真応力−真ひずみの関係である。さらに、破線は、引張試験の結果によりえられた真応力−真ひずみの関係である。また、図5中において、中空の菱形および丸は、比較例の方法により得られたデータポイントである。一方、中実の菱形および丸は、実施例の方法により得られたデータポイントである。また、菱形は稜間角φが115°、丸は稜間角φが118°のデータポイントである。
図5を参照して、本発明の評価方法により得られた真応力−真ひずみの関係は、従来の評価方法により得られた真応力−真ひずみの関係に比べて、引張試験の結果から得られた真応力−真ひずみの関係により近いものとなっている。このことから、本発明の鋼の力学特性の評価方法によれば、従来のインデンテーション法による力学特性の評価方法に比べて高い充分な精度で、鋼の力学特性が評価可能であるといえる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の鋼の力学特性の評価方法は、鋼の微小領域における力学特性の評価に、特に有利に適用され得る。
1 三角錐圧子、2 円錐圧子。

Claims (10)

  1. 互いに異なる稜間角を有する複数の三角錐圧子を所定の荷重で鋼に押し込むことにより、前記鋼に圧痕を形成するステップと、
    前記圧痕の深さを調査するステップと、
    前記複数の圧子の各々に対応する前記圧痕の深さと前記荷重との関係から、前記鋼の力学特性を導出するステップとを備える、鋼の力学特性の評価方法。
  2. 前記圧痕を形成するステップでは、深さ1μm以上の圧痕が形成される、請求項1に記載の鋼の力学特性の評価方法。
  3. 前記複数の三角錐圧子の稜間角は、いずれも115°以上である、請求項1または2に記載の鋼の力学特性の評価方法。
  4. 前記複数の三角錐圧子の稜間角は、いずれも119°未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼の力学特性の評価方法。
  5. 前記複数の三角錐圧子間の稜間角の差はいずれも1°以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼の力学特性の評価方法。
  6. 前記複数の圧子はダイヤモンドからなっている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼の力学特性の評価方法。
  7. 2つの前記三角錐圧子を用いて実施される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼の力学特性の評価方法。
  8. 前記鋼の硬度は50HRC以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋼の力学特性の評価方法。
  9. 表面硬化領域の力学特性が評価される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋼の力学特性の評価方法。
  10. 前記表面硬化領域の硬度は50HRC以上である、請求項9に記載の鋼の力学特性の評価方法。
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