JP2014004869A - 運転曲線作成システム及びその方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】走行経路の各区間の制限速度を記憶する路線情報データベースと、 区間毎の開始点で区間の制限速度とする直前の区間で列車を減速させる位置と速度との関係を示す関数を示すブレーキ曲線を、区間毎に記憶するブレーキ曲線データベースと、力行からブレーキ曲線上のいずれかの位置において列車を減速させる際に、力行運転から減速までに必要な惰行時間を満足させる、力行から惰行に列車の制御を変更する位置と速度との関係を示す惰行開始曲線を、区間毎に記憶する惰行開始曲線データベースと、直前の区間での力行の列車の速度と位置とを基に、ブレーキ曲線及び惰行開始曲線とにより、区間毎の開始点で制限速度に到達する曲線を生成し、この生成した曲線を運転曲線とする運転曲線作成部とを備える。
【選択図】図1
Description
列車の運行計画における列車ダイヤの見直において、路線形態の変更に対応した運転曲線を作成し、新たな路線形態における各駅間の基準運転時分(所要時間、すなわち時間曲線)を算出する。
ここで、運転曲線とは、列車の走行位置の変化に対応させ、駅を出発してからの通過時間と、各走行位置における速度と時間とを継続的に計算してグラフ化したものである。これら曲線をそれぞれ速度曲線、時間曲線と呼称し、総称して運転曲線という。
また、運転曲線を編集する際、作成者が表示装置における列車運転時分の数値を確認しつつ、新たに設定された制限速度と運行計画の対象路線に関する路線情報とを変更し、従来の運転曲線を編集して新たな運転曲線を生成する。
a.列車の性能を十分に発揮する
b.線路の各走行区間の制限速度を超えない
の2点を満たすことが要求される。
このため、運転曲線の作成においては、列車が制限速度を超えないように、作成者が紙上で運転方法の試行錯誤しつつ、各走行地点における列車速度及び時間変化を算出することが一般的に行われている。
このため、路線形態の変更によって、新しい列車ダイヤを作成するため、多くの時間と費用が発生することになる。
運転曲線作成システムは、列車の走行する走行経路の路線単位(例えば、東海道線や東北本線などの路線)において、上述した各部の処理により、この路線が分割された複数の区間各々の制限速度を守って列車を走行させるための運転曲線を作成する。
速度曲線は路線の各位置における列車の速度を示すものであり、時間曲線は各位置に列車が到達する、始点Aを発車してから各地点に到達するまでの経過時間を示すものである。
例えば、路線が始点Aから終点Bまでの場合、横軸が地点Aを起点(0)から走行距離を地点としている。また、路線の始点Aから終点Bまでは、列車速度制限曲線で示される制限速度が異なる複数の区間に分割されている。また、本実施形態においては、始点は範囲において起点からの距離が最も小さい位置であり、終点は範囲において起点から最も大きい位置である。
図1に戻り、路線情報データベース8は、列車の路線単位において、路線における制限速度の異なる複数の区間毎の制限速度と、この区間の範囲を示す開始点及び終了点の範囲を示す位置のデータとが組として、予め書き込まれて記憶されている。本実施形態における位置は、路線の始点からの距離の値で示されている。例えば、「東海道線」の場合、始点は東京駅であり、東海道線における運転曲線の位置の始点は東京駅である。このため、各区間の開始点と終了点とは、東京駅からの距離で設定される。
ブレーキ曲線データベース9には、各制限速度の異なる区間の開始点、及び停車位置(駅など)の位置毎のブレーキ曲線が、後述されるブレーキ曲線作成部1により求められ、予め書き込まれて記憶されている。
このブレーキ曲線は、区間の開始点及び停車位置(駅など)に着目し、この位置から列車のブレーキ減速度を基に逆引き(後述)の計算を行い、この計算の結果算出された速度と位置とからなる座標点の軌跡を示す曲線である。
このブレーキ曲線に対応する区間の直前の区間において、列車がこのブレーキ曲線と交差する速度と位置とにおいてブレーキを掛けることにより、列車はこのブレーキ曲線に沿って減速あるいは停止することになる。
惰行開始曲線データベース10には、各制限速度の異なる区間の開始点、及び停車位置(駅など)の位置毎のブレーキ曲線に対応した惰行開始曲線が、後述される惰行開始曲線作成部2により求められ、予め書き込まれて記憶されている。
この惰行開始曲線は、列車の運転状態を、力行からブレーキを掛けるまでに必要な惰行を行う時間として設定された規定時間Tpcbを満足させるために設けられる曲線である。
力行で走行している列車がブレーキ曲線に対応してブレーキを掛ける場合、力行からブレーキを掛けるまでに、この規定時間Tpcbの間を惰行とする必要がある(規定がある)。
したがって、規定時間Tpcbを満足させるため、ブレーキ曲線と惰行開始曲線とに挟まれた領域において、力行とすることは禁止されることになる。
力行移行禁止曲線データベース11には、各制限速度の異なる区間の開始点及び終了点までで規定される力行移行禁止曲線が、後述される力行移行禁止曲線作成部3により求められ、予め書き込まれて記憶されている。
この力行移行禁止曲線は、列車の運転状態を惰行から力行を経て再度惰行とする際、力行とする最小の時間(最短時間)を規定する規定時間Tcpcを満足させるために設けられる曲線である。
惰行で走行している列車が力行とした後に、再度惰行とする場合、この力行の状態の最小時間として規定時間Tcpcが設定されている(規定されている)。
惰行移行禁止曲線データベース12には、各制限速度の異なる区間の開始点及び終了点までで規定される惰行移行禁止曲線が、後述される惰行移行禁止曲線作成部4により求められ、予め書き込まれて記憶されている。
この惰行移行禁止曲線は、列車の運転状態をブレーキから惰行を経て再度ブレーキとする際、最小の惰行とする時間を規定する規定時間Tbcbを満足させるために設けられる曲線である。
ブレーキを掛けた状態から一旦惰行とした後に、再度ブレーキを掛ける場合、この惰行の状態の最小時間として規定時間Tbcbが設定されている(規定されている)。
かすめ曲線データベース13には、各制限速度の異なる区間の開始点及び終了点の位置毎に対応したかすめ曲線が、後述されるかすめ曲線作成部5により求められ、予め書き込まれて記憶されている。
このかすめ曲線は、各区間の開始点及び終了点において、この区間における制限速度を超えないように、列車を減速あるいは加速するときの軌跡、すなわち、列車の速度と位置とによる座標点からなる曲線を示している。
また、このかすめ曲線は、列車の運転状態が力行の場合の力行かすめ曲線と、列車の運転状態が惰行の場合の惰行かすめ曲線との2種類が存在する。
ブレーキ曲線(またはブレーキ開始曲線)は、列車がブレーキにより所定の制動率により減速された際にたどる速度と位置との軌跡を示す曲線(関数曲線)であり、このブレーキ曲線のいずれかの位置において、この位置の速度にてブレーキをかけた場合、列車の位置と速度はこのブレーキ曲線を辿って、停止あるいは減速により所定の速度となる。
ブレーキ曲線作成部1は、上述したブレーキ曲線を以下に示すように作成し、作成したブレーキ曲線と、このブレーキ曲線に対応する区間の開始点の位置とを組として、ブレーキ曲線データベース9に対して書き込んで記憶させる。
ここで、逆引きによる速度と位置との計算は、列車の進行方向に対して逆方向に、ブレーキの減速度を単位時間毎に加算していく数値計算によって行う。
例えば、減速度がα(m/s2)であり、単位時間をΔtとすると、区間の制限速度がVnである場合、Vn−1は、以下の(1)式により求めることができる。
Vn−1=Vn + α×Δt …(1)
そして、このVn−1からVnに変化するまでの距離Δxnは、以下の(2)式により求めることができる。
Δxn=((Vn−1 + Vn)/2)×Δt …(2)
この求められたΔxnを、区間の開始点における位置Xnから減算していくことにより、各速度における列車の位置を求めることができる。
また、上述した計算に用いられる列車のブレーキの減速度α(負の加速度)には、ATS(Automatic Train Stop)を前提とすると、列車の走行中における各区間の速度制限となるように減速する際に用いられる途中ブレーキと、停車の際に用いられる停車ブレーキとの2種類がある。これら途中ブレーキ及び停車ブレーキの各々には独立に減速度が設定されており、ブレーキ曲線を作成する際に、減速の場合には途中ブレーキの減速度αを用い、一方、停車の場合には停車ブレーキの減速度αを用いてブレーキ曲線を(1)式及び(2)式により求める。
惰行開始曲線は惰行曲線上の任意の位置・速度から惰行運転にてTpcbの時間経過後ブレーキ曲線に至る点の集合である。惰行開始曲線は、ブレーキ曲線を基に、規定時間Tpcbの期間、惰行運転で逆算することにより計算する。
このとき、惰行開始曲線作成部2は、各区間の開始点におけるブレーキ曲線を、例えば位置の小さい順番(始点からの走行距離の短い順番)に、順次、上述した位置に対応するアドレスの示す領域に記憶されているブレーキ曲線を、ブレーキ曲線データベース9から読み出す。また、惰行開始曲線作成部2は、各区間における勾配によって予め設定されている惰行時に列車にかかる加速度あるいは減速度の数値を読み出す。
図4は、惰行時加速の区間から、惰行時減速の区間に至る際の、ブレーキ曲線に対応する惰行開始曲線の作成を説明する図である。この図4において、惰行開始曲線は、直前の区間における列車速度制限曲線及びブレーキ曲線の交点から逆引きした位置と、区間における制限曲線EX2の始点の位置で挟まれた範囲となる。
この制限曲線EX2の始点の速度は、区間の開始点の速度Vnから、以下の(3)式を用いて逆引きして求められた速度から求める。
Vn−1=Vn − β×Δt …(3)
上記(3)式において、βは列車の直前区間における加速度の絶対値である。
すなわち、惰行開始曲線作成部2は、単位時間Δt毎にさかのぼって、Δt前の速度Vn−1を順次求める。ここで、惰行開始曲線作成部2は、このΔtの積算値が規定時間Tpcbとなるまで繰り返し、算出されたVn−1を新たにVnとして、順次Δt前の速度を算出する。
すなわち、(2)式から求められたΔxnを、区間の開始点における位置Xnから減算していくことにより、各速度における列車の位置を求めることができる。
上述した計算をΔtの積算が規定時間Tpcbとなるまで繰り返して行う。
惰行開始曲線作成部2は、(3)式及び(2)式により、力行から惰行に移行した後の、列車の速度及び位置の軌跡としての制限曲線EX2を求める。この制限曲線EX2の始点は、規定時間TpcbとなるまでΔtを加算した回数、上記(2)により求められた速度によって得られたΔxnを位置Xnから減算した位置と、上記(3)式を繰り返して得られた速度との座標点である。ここで、制限曲線EX2は、惰行開始曲線の終端からブレーキ曲線の終端を結ぶ制限曲線とも言える。
そして、この惰行開始曲線の始点は、ブレーキ曲線と直前の区間の列車速度制限曲線との交点の座標点から逆引きして生成した制限曲線の始点である。また、惰行開始曲線の終点は、制限曲線EX2の始点である。
そして、惰行開始曲線作成部2は、算出した各区間の惰行開始曲線、制限曲線EX1、EX2及びEX3の各々を、各区間の位置に対応させて、惰行開始曲線データベース10へ書き込んで記憶させる。
図5は、惰行時減速の区間におけるブレーキ曲線に対応する惰行開始曲線の作成を説明する図である。この図5において、惰行開始曲線は、直前の区間における列車速度制限曲線の速度となる位置と、区間における制限曲線EX2の始点の位置で挟まれた範囲となる。
図1に戻り、この制限曲線EX2の始点の速度は、下記に示すように、惰行開始曲線作成部2において、区間の開始点の速度Vnから、以下の(4)式を用いて逆引きして求められた速度から求められる。
Vn−1=Vn + β×Δt …(4)
上記(3)式において、βは列車の直前区間における減速度の絶対値である。
すなわち、惰行開始曲線作成部2は、惰行時加速の場合と同様に、単位時間Δt毎にさかのぼって、Δt前の速度Vn−1を順次求める。ここで、惰行開始曲線作成部2は、このΔtの積算値が規定時間Tpcbとなるまで繰り返し、算出されたVn−1を新たにVnとして、順次Δt前の速度を算出する。
すなわち、(2)式から求められたΔxnを、区間の開始点における位置Xnから減算していくことにより、各速度における列車の位置を求めることができる。
上述した計算をΔtの積算が規定時間Tpcbとなるまで繰り返して行う。
惰行開始曲線作成部2は、(4)式及び(2)式により、力行から惰行に移行した後の、列車の速度及び位置の軌跡としての制限曲線EX2を求める。この制限曲線EX2の始点は、規定時間TpcbとなるまでΔtを加算した回数、上記(2)により求められた速度によって得られたΔxnを位置Xnから減算した位置と、上記(4)式を繰り返して得られた速度との座標点である。
そして、この惰行開始曲線の始点は、(4)式で求める制限曲線の始点の速度が列車速度制限曲線の制限速度になった位置となる。また、惰行開始曲線の終点は、制限曲線EX2の始点である。
そして、惰行開始曲線作成部2は、算出した各区間の惰行開始曲線及び制限曲線EX2の各々を、各区間の位置に対応させて、惰行開始曲線データベース10へ書き込んで記憶させる。
力行移行禁止曲線作成部3は,惰行と惰行との間に介在する力行の最小時間である規定時間Tcpcを満足させるため、力行時において規定時間Tcpc間に走行する距離を計算する。力行移行禁止曲線は惰行時減速区間における速度制限から逆引きしたものもある。
このとき、惰行開始曲線作成部2は、各区間の勾配による加速度または減速度による列車の速度の変化を、区間の開始点から終了点までの複数の位置から逆引きして、順次、惰行時において規定時間Tpcb間に走行する距離、及び変化する速度を計算する。また、力行移行禁止曲線作成部3は、各区間における勾配によって予め設定されている惰行時に列車にかかる加速度あるいは減速度の数値を読み出す。
次に、図6は、惰行時に減速度が印加される場合であり、列車速度制限曲線からの力行移行禁止曲線の算出を説明する図である。この図6において、力行移行禁止曲線は、区間の開始点から逆引きして求めた曲線の始点と、区間の終了点から逆引きして求めた曲線の始点とで挟まれた範囲となる。したがって、力行移行禁止曲線は、区間の開始点と終了点との間の複数の速度及び位置から逆引きした曲線の始点からなる曲線となる。
すなわち、惰行運転において列車が減速する惰行時減速の区間において、力行の最終の速度として、列車速度制限曲線における制限速度を用いることにより、力行から惰行に移行した後、列車は区間の勾配による印加される減速度により減速され、区間に設定されている制限速度を超えることはない。
そして、力行移行禁止曲線作成部3は、惰行開始曲線作成部2と同様に、単位時間Δtの積算が規定時間Tcpcを越えるまでの回数分、(3)式で求めた速度と単位時間Δtから(2)式を用いて、規定時間Tcpc前の位置を算出する。
これにより、力行移行禁止曲線作成部3は、区間内の列車速度制限曲線の開始点及び終了点を含む複数の座標点から、単位時間Δtの積算が規定時間Tcpcを越えるまで(3)式及び(2)式を用いて逆引きにより算出した曲線の始点の座標点(速度及び位置)を、力行移行禁止曲線として、区間の位置に対応して力行移行禁止曲線データベース11に書き込んで記憶させる。
次に、図7は、惰行時に加速度が印加される場合の力行移行禁止曲線の算出を説明する図である。この図7において、力行移行禁止曲線は、区間の惰行開始曲線上の複数の座標点と、直前の区間における制限曲線EX1上の複数の座標点と、区間における制限曲線EX1上の複数の座標点との各々から、逆引きして求めた曲線の始点の座標点からなる曲線となる。
そして、力行移行禁止曲線作成部3は、区間の惰行開始曲線と、区間の制限曲線EX1と、区間の制限曲線EX2と、直前の区間の制限曲線EX1との各々の曲線上の複数の座標点において、この座標点から単位時間Δtの積算が規定時間Tcpcを越えるまでの回数分、(4)式を用いた逆引きの計算を行い、単位時間Δt毎にさかのぼった時間の速度を順次求める。これにより、力行移行禁止曲線作成部3は、単位時間Δtの積算が規定時間Tcpcを越えるまでの回数分、(4)式によるΔt前の速度の算出を繰り返すことにより、規定時間Tcpc前の速度を算出する。
この結果、力行移行禁止曲線作成部3は、区間の惰行開始曲線と、区間の制限曲線EX1と、区間の制限曲線EX2と、直前の区間の制限曲線EX1との各々の曲線上の複数の座標点からの曲線を得る。力行移行禁止曲線作成部3は、区間の惰行開始曲線と、区間の制限曲線EX1と、区間の制限曲線EX2と、直前の区間の制限曲線EX1との各々の曲線上の複数の座標点を終点とする曲線の始点の座標点からなる曲線を、力行移行禁止曲線とする。
そして、力行移行禁止曲線作成部3は、求めた力行移行禁止曲線を、区間の位置に対応して力行移行禁止曲線データベース11に書き込んで記憶させる。
図8は、惰行時に減速度が印加される場合であり、惰行開始曲線からの力行移行禁止曲線の算出を説明する図である。この図8において、力行移行禁止曲線は、区間の惰行開始曲線上の複数の座標点と、直前の区間における制限曲線EX2上の複数の座標点との各々から、逆引きして求めた曲線の始点の座標点からなる曲線となる。
そして、力行移行禁止曲線作成部3は、区間の惰行開始曲線と、区間の制限曲線EX2との各々の曲線上の複数の座標点において、この座標点から単位時間Δtの積算が規定時間Tcpcを越えるまでの回数分、(3)式を用いた逆引きの計算を行い、単位時間Δt毎にさかのぼった時間の速度を順次求める。これにより、力行移行禁止曲線作成部3は、単位時間Δtの積算が規定時間Tcpcを越えるまでの回数分、(3)式によるΔt前の速度の算出を繰り返すことにより、規定時間Tcpc前の速度を算出する。
この結果、力行移行禁止曲線作成部3は、区間の惰行開始曲線と、区間の制限曲線EX2との各々の曲線上の複数の座標点からの曲線を得る。力行移行禁止曲線作成部3は、区間の惰行開始曲線と、区間の制限曲線EX2との各々の曲線上の複数の座標点を終点とする曲線の始点の座標点からなる曲線を、力行移行禁止曲線とする。
そして、力行移行禁止曲線作成部3は、求めた力行移行禁止曲線を、区間の位置に対応して力行移行禁止曲線データベース11に書き込んで記憶させる。
デッドセクションとは、電化された鉄道において、異なる電気方式や会社間の接続点に設けられた、架線に給電されていない区間・地点のことである。
したがって、デッドセクションを経由して走行する場合、上述したように、デッドセクション内では給電されないため、力行によって列車を運転することができず、惰行による運転となる。また、デッドセクション位置の直前で力行運転とした場合、最小力行時間である規定時間Tcpcを満足せずに、列車が無給電区間に進入することになる。
この場合においても、規定時間Tcpcを確保するため、デッドセクションに対応して、力行へ移行を禁止する力行移行禁止曲線を作成する。すなわち、この力行移行禁止曲線は、列車がデッドセクションを通過の際、規定時間Tcpcを満たさずデッドセクションに進入することを禁止する曲線である。この力行移行禁止曲線は、架線によって受電し走行する電車及び電気機関車などの電気を駆動源とする車両のみに該当するものである。
この図9における力行移行禁止曲線は、デッドセクションの位置上における複数の速度の座標点から、力行した際の加速度を用いた逆引きにより求められた曲線における始点の座標点からなる曲線である。
Vn−1=Vn − γ×Δt …(5)
力行移行禁止曲線作成部3は、デッドセクションの位置上における座標点の速度Vnから単位時間Δtの積算が規定時間Tcpcを越えるまでの回数分、(4)式を用いた逆引きの計算を行い、単位時間Δt毎にさかのぼった時間の速度を順次求める。これにより、力行移行禁止曲線作成部3は、単位時間Δtの積算が規定時間Tcpcを越えるまでの回数分、(4)式によるΔt前の速度の算出を繰り返すことにより、規定時間Tcpc前の速度を算出する。(5)式におけるγは、力行における加速度である。力行の場合、予め設定された力行ノッチ、例えば最大ノッチによる加速度で加速される。
この結果、力行移行禁止曲線作成部3は、デッドセクションの位置上における複数の座標点からの曲線を得る。力行移行禁止曲線作成部3は、デッドセクションの位置上における複数の座標点を終点とする曲線の始点の座標点からなる曲線を、力行移行禁止曲線とする。
そして、力行移行禁止曲線作成部3は、求めた力行移行禁止曲線を、区間の位置に対応して力行移行禁止曲線データベース11に書き込んで記憶させる。
本実施形態において、かすめ曲線とは、制限速度が規定されている区間の終了点を、列車を力行させて通過させる場合における列車の速度及び位置の座標点の移動の軌跡を示す曲線である。このかすめ曲線の軌跡に沿った走行を行うことにより、ある区間から隣接する次の区間に進入する際、時間的に最も無駄のない加速により力行を行うことができる。
次に、図10は、区間の終了点におけるかすめ曲線の一例を示す図である。この図10において、かすめ曲線は、区間の終了点をかすめる列車の走行に対応した速度及び位置の座標点の軌跡として示されている。
この図11において、列車速度制限曲線により設定されている制限速度内での列車の走行におけるのこぎり運転の状態を示している。列車は、惰行時減速(上り勾配)の区間において力行と惰行とを繰り返し、また惰行時加速(下り勾配)の区間において惰行とブレーキとを繰り返しながら、速度を維持するため、制限速度と再力行速度とのあいだで走行の速度を制御するのこぎり運転を行う。この際、列車の速度が予め設定されている再力行速度を下回った場合、列車を力行の運転とすることに規定されている。
しかしながら、かすめ曲線に沿った列車の走行は、力行の状態であるため、のこぎり運転をしていて、規定時間Tpcpを満足させることができない場合、図11に示すように、かすめ曲線に沿った走行を行うことができず、一旦惰行により走行して惰行としてから規定時間Tpcpが経過した後に力行の走行が可能となる。
この図13において、座標点Aと座標点Bとの間の曲線は、列車を制限速度に到達した時点から惰行させた場合に、かすめ曲線により力行するまでの時間が規定時間Tpcpを満足させる曲線である。
また、座標点Bと座標点Cとの間の曲線は、座標点Bから逆引きし、この座標点Bと規定時間Tcpc前の速度及び位置である座標点Cとを結ぶ曲線(逆引きした座標点の軌跡を示す曲線)である。
また、座標点Cと座標点Dとの間の曲線は、座標点Bから惰行した場合に、この座標点Bと、この惰行による走行の座標点の軌跡がかすめ曲線と交差する座標点Dとを結ぶ曲線である。
そして、力行移行禁止曲線作成部3は、読み出したかすめ曲線上の複数の座標点(区間の最終点の座標から開始)から、すでに説明した(4)式及び(2)式を用いた計算により、規定時間Tpc前の座標点を算出する。
ここで、力行移行禁止曲線作成部3は、算出した規定時間Tpcp前の複数の座標点から、座標点の速度が列車速度制限曲線の規定する制限速度である座標点を選択し、この座標点を座標点Bとし、この座標点Bに対して逆引きの始点となったかすめ曲線上の座標点を座標点Aとする。
そして、力行移行禁止曲線作成部3は、この座標点Bから惰行の走行をした場合の軌跡がかすめ曲線と交差する座標点Dを求める。
この場合、以下の(6)式及び(7)式を用いて、列車が惰行した場合における座標点(速度Vn+1、位置Xn+1)の軌跡を算出する。
Vn+1=Vn + β×Δt …(6)
Xn+1=Xn+Δxn=Xn+((Vn+1 + Vn)/2)×Δt …(7)
そして、力行移行禁止曲線作成部3は、速度と位置とを新たに始点の速度と位置とすることで、順次、上記(6)式及び(7)式により始点から単位時間Δt後の座標点を算出する。
ここで、力行移行禁止曲線作成部3は、上述した単位時間毎の座標点の算出を、この座標点の軌跡がかすめ曲線と交差するまで繰り返して行い、交差した座標点を座標点Dとして、座標点の軌跡の算出を終了する。
これにより、力行移行禁止曲線作成部3は、座標点Cから座標点Dまでの範囲における上記計算の軌跡を力行移行禁止曲線とする。
そして、力行移行禁止曲線作成部3は、求めた力行移行禁止曲線を、区間の位置に対応して力行移行禁止曲線データベース11に書き込んで記憶させる。
(D1)力行移行禁止曲線に到達する手前側において、列車が惰行で減速する場合、再力行速度に達した座標点において、力行運転に移行する。また、列車が惰行で速度制限から再力行速度に達するまでの時間が規定時間Tpcpを越えなければ(不足していなければ)、列車の惰行を継続させて、力行から惰行へ移行してから経過した時間が規定時間Tpcpを越えた座標点から、力行に移行させる。いずれの場合も、この際の惰行する時間は、規定時間Tpcpを満足しており、走行の規定を満足している。
(D3)座標点Bの位置を越えて惰行で減速する再、かすめ曲線とは関係なく、再力行速度に減速した時点、すなわち、惰行で走行して制限速度から再力行速度に達するまでの時間が規定時間Tpcpを越えていない場合、惰行の走行を継続させて、規定時間Tpcpを越えた時点で、列車の走行を惰行から力行に移行させる。
上述したように、(D1)から(D3)のいずれの場合も、座標点A、B、C及びDで囲まれた範囲において、列車の走行を惰行から力行に移行する制御は行われない。
また、力行移行禁止線を力行で通過する場合、列車の速度が制限速度となった時点で、力行から惰行に移行するため、上述した(D3)の場合と同様の制御が行われる。
・のこぎり運転に用いられる惰行移行禁止曲線の必要性
惰行移行禁止曲線は、ブレーキから惰行に移行した後、再度ブレーキを掛けるまで惰行を継続させる最小時間である規定時間Tbcbを遵守するために設けられた曲線である。
下り勾配の区間(惰行時加速の区間)においては、列車の速度が力行で制限速度に達した後、惰行の走行に移行したとしても、さらに勾配による加速が継続されることにより、制限速度を超えてしまうことになる。
そのため、制限速度に到達した時点からブレーキに移行する以前に、規定時間Tbcbを満足させるための速度差を、制限速度との間で有する速度を定義する惰行移行禁止曲線を作成しておく。
そして、運転曲線作成部6が運転曲線を作成する運転判断の際に、この惰行移行禁止曲線を利用することになる。この惰行移行禁止曲線は、主にのこぎり運転により走行する際に利用される。また、惰行移行禁止曲線は、惰行時加速の区間のみにおいて作成される。
次に、図15は、列車の走行におけるのこぎり運転に用いられる惰行移行禁止曲線の算出を説明する図である。
この図15において、惰行移行禁止曲線は、すでに述べたように、惰行時加速の区間における列車の走行を、ブレーキから惰行に移行する際、ブレーキから一旦惰行に移行してから、再度ブレーキとするまでの惰行での走行を行う最小時間を規定する規定時間Tpcpを満足させるために用いられる曲線である。
そして、惰行移行禁止曲線作成部4は、区間内の列車速度制限曲線上の複数の座標点(区間の開始点及び終了点を含む)を始点として、すでに説明したように、上記(3)式及び(2)式を用いて、規定時間Tpcp前の座標点を終点とした曲線を算出する。
そして、惰行移行禁止曲線作成部4は、終点となった複数の座標点からなる曲線を、惰行移行禁止曲線とする。
これにより、惰行移行禁止曲線作成部4は、求めた惰行移行禁止曲線を、区間の位置に対応して惰行移行禁止曲線データベース12に書き込んで記憶させる。
図16は、惰行移行禁止曲線を用いて、列車の走行をのこぎり運転とする制御を説明する図である。この図16において、曲線D1は、列車に対してブレーキを掛けた場合における、列車の走行での座標点の軌跡を示す曲線である。また、曲線D2は、曲線D1と惰行移行禁止曲線とが交差した座標点において、列車をブレーキから惰行に移行した際の軌跡を示す曲線である。
惰行時加速の区間において、列車の速度が、列車速度制限曲線の規定する制限速度に到達した場合、列車に対してブレーキを掛け、列車を減速させる。
そして、ブレーキにより減速されて、位置が進むにつれて列車の速度が低下し、座標点の軌跡が惰行移行禁止曲線と交差するまでブレーキを継続させた後、列車の走行をブレーキから惰行に移行させる。
したがって、惰行移行禁止曲線の座標点から、列車の走行をブレーキから惰行に移行することにより、次にブレーキを掛けるまでの規定時間Tbcbを満足させることができる。すなわち、列車の走行をブレーキから惰行に移行の際、最小惰行時間を規定する規定時間Tbcbを経過後においても、列車の速度が制限速度を越えることはない。
・2段ブレーキに使用する惰行曲線の必要性
図17は、すでに説明したブレーキ曲線作成部1が作成した隣接した区間R1とR2とにおける列車に対して連続してブレーキを印加する場合、すなわち2段ブレーキを説明する図である。この図17において、区間R1に対応して求められたブレーキ曲線B1(このとき区間R1における減速に用いるブレーキは途中ブレーキ)と、区間R2での列車の走行方向の区間において列車が停車するためのブレーキ曲線B2(この停車に用いるブレーキは停車ブレーキ)とが示されている。ブレーキ曲線B1とブレーキ曲線B2との間は、列車を惰行によって走行させることになる。
このとき、列車の走行は以下のようになる。
a.最高速度付近で走行している場合、区間R2にある制限速度を超えないように、ブレーキ曲線B1に沿って速度を落とす。
b.ブレーキ曲線B1に沿って、区間R2の開始点の座標点において、ブレーキから惰行に移行し、曲線D3に沿って惰行の走行を行う。
c.曲線D3とブレーキ曲線2との交差する座標点において、惰行からブレーキに移行して、停止位置までブレーキを掛ける。
このように、列車に対して、2段ブレーキを掛ける場合(すなわち、ブレーキを連続して掛ける場合)に、このブレーキ間における惰行の最小時間を規定する規定時間Tbcbを満足させる制御を行うために用いる惰行曲線を作成する必要がある。
上述した2段ブレーキ用の惰行曲線の形態は、その区間におけるこう配値(上りこう配あるいは下りこう配、またこう配の大きさ)によって異なる。しかし、惰行曲線の計算手法としては同様である。以下に、2段ブレーキ用の惰行曲線の作成例を示す。
次に、図18は、2段ブレーキに使用する惰行曲線(惰行時減速の場合)の作成を説明する図である。この図18において、曲線D4が最終的に惰行曲線として作成される曲線である。また、ブレーキ曲線B3は、2段ブレーキ用の惰行曲線の始点から、再度作成した区間R1に対応するブレーキ曲線である。
ここで、ブレーキ曲線B1は、ブレーキ曲線B3と交換され、運転曲線の作成には用いられない。
そして、かすめ曲線作成部5は、逆引き計算の過程において、計算された座標点における列車の速度が列車速度制限曲線の定義する制限速度を超えた場合、ブレーキ曲線B2におけるより速度の低い座標点を始点として惰行曲線を再度、上述した逆引きの計算により求める。
これにより、規定時間Tbcbで定められる最小惰行を行う時間の制限を満足したブレーキ曲線B3が得られる。
そして、かすめ曲線作成部5は、最初に存在したブレーキ曲線B1が無効なブレーキ曲線となるため、ブレーキ曲線データベース9において、作成したブレーキ曲線B3をブレーキ曲線B1に上書きして書き込み、ブレーキ曲線B1に換えてブレーキ曲線B3が運転曲線の計算で使用されるようにする。
次に、図19は、2段ブレーキに使用する惰行曲線(惰行時加速の場合)の作成を説明する図である。この図19において、曲線D5が最終的に惰行曲線として作成される曲線である。また、ブレーキ曲線B4は、2段ブレーキ用の惰行曲線の始点から、再度作成した区間R1に対応するブレーキ曲線である。
ここで、ブレーキ曲線B1は、ブレーキ曲線B4と交換され、運転曲線の作成には用いられない。
そして、かすめ曲線作成部5は、逆引き計算の過程において、計算された座標点における列車の速度が列車速度制限曲線の定義する制限速度を超えた場合、ブレーキ曲線B2におけるより速度の低い座標点を始点として惰行曲線を再度、上述した逆引きの計算により求める。
これにより、規定時間Tbcbで定められる最小惰行を行う時間の制限を満足したブレーキ曲線B4が得られる。
そして、かすめ曲線作成部5は、最初に存在したブレーキ曲線B1が無効なブレーキ曲線となるため、ブレーキ曲線データベース9において、作成したブレーキ曲線B4をブレーキ曲線B1に上書きして書き込み、ブレーキ曲線B1に換えてブレーキ曲線B4が運転曲線の計算で使用されるようにする。
かすめ曲線は、すでに説明した図10で説明したように、制限速度の異なる各区間の開始点及び終了点の座標点に対し、列車の走行における速度及び位置の軌跡が交差しないように、列車の走行における加速または減速における座標点の軌跡を示す曲線である。
このかすめ曲線は、力行かすめ曲線及び惰行かすめ曲線の分類がなされている。以下、この力行かすめ曲線及び惰行かすめ曲線の各々の説明を行う。
かすめ曲線作成部5は、路線情報データベース8から区間の列車速度制限曲線を読み出し、区間の終了点の座標点から、(5)式及び(2)式により、逆引きの計算を行うことにより、図10に示す力行かすめ曲線を作成する。
運転曲線作成部6は、図10に示す力行かすめ曲線に対し、列車の走行における座標点の軌跡が列車が惰行の走行中に交差した際、惰行時間が規定時間Tbcpまたは規定時間Tpcpを満足している場合、交差した座標において惰行から力行に移行させる。
これにより、運転曲線作成部6が効率的な加速となる運転曲線を生成することができる。
また、一旦かすめ曲線に乗ったならば、列車の走行において、この力行の継続する時間が規定時間Tcpcを満足する時間まで力行により走行させ、規定時間Tcpcを越えた時点で惰行に移行することが可能となる。
次に、図20は、区間の開始点及び終了点の座標点における惰行かすめ曲線を説明するための図である。
この惰行かすめ曲線は、図20に示すように、所定の制限速度の区間に対し、列車が惰行でかすめて開始点から進入、または終了点から惰行により次の区間に進出する際、列車の走行における座標点の軌跡を示す曲線である。
この惰行かすめ曲線に沿って、列車が惰行することにより、制限速度を守って、かつ余計に速度を低下させる無駄な減速を行わずに、区間に進入あるいは区間から進出する運転が可能となる。
この惰行かすめ曲線は、区間の開始点または終了点の座標点から、惰行による加速または減速の場合に対応して、それぞれ逆引き計算することにより作成される。
しかしながら、逆引き計算により求めた惰行かすめ曲線のどこまでの範囲を、実際に用いる惰行かすめ曲線として設定するかは、運転判断上重要となる。
以下、区間における制限速度の開始点と終了点との双方における惰行かすめ曲線についえそれぞれ説明する。
図21は、制限速度の区間(惰行時減速)の開始点における惰行かすめ曲線の作成を説明するための図である。
この図21において、曲線D10は、区間の開始点における座標点から、ブレーキの走行において逆引き計算により求めた、規定時間Tcbc前の列車の座標点を示す曲線である。
また、曲線D11は、曲線D10の始点の座標点から、惰行の走行において逆引き計算により求めた、規定時間Tpcb前の列車の座標点を示す曲線である、
また、曲線D12は、曲線D11の始点の座標点から、力行の走行において逆引き計算により求めた曲線である。
惰行かすめ曲線は、区間の開始点における座標点と、曲線D12及び惰行開始曲線の交点との間が実際に用いられる範囲となる。ここで、惰行開始曲線は実線と2点鎖線とを含めた線分であり、惰行かすめ曲線は実線の部分のみである。
かすめ曲線作成部5は、区間の開始点における座標点を始点として、惰行の走行において、(4)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、惰行開始曲線を算出する。 また、かすめ曲線作成部5は、区間の開始点における座標点を始点として、ブレーキの走行において、(1)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、曲線D10を算出して、規定時間Tcbc前の列車の座標点(曲線D10の始点)を求める。
次に、かすめ曲線作成部5は、曲線D10を始点として、惰行の走行において、(4)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、曲線D11を算出して、規定時間Tpcb前の列車の座標点(曲線D11の始点)を求める。
そして、かすめ曲線作成部5は、曲線D10を始点として、力行の走行において、(5)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、惰行開始曲線と交差する点まで、曲線D12を算出する。
これにより、かすめ曲線作成部5は、区間の開始点における座標点と、曲線D12及び惰行開始曲線の交点の座標点とのあいだの惰行開始曲線を、惰行かすめ曲線として、区間の位置に対応させて、かすめ曲線データベース13に書き込んで記憶させる。
図22は、制限速度の区間の開始点における惰行かすめ曲線による走行制御を説明するための図である。すなわち、この図22は、以下の3つの場合に対応した走行の制御を説明するために用いられる図である。この制御は、後述する運転曲線作成部6が各路線における列車の運転曲線を作成する際に行うものである。
(A)力行の走行における座標点の軌跡がかすめ曲線と交差しないため、力行を継続して惰行開始曲線と交差することになる。
(B)力行の走行における座標点の軌跡がかすめ曲線と交差するため、このかすめ曲線に沿った速度及び位置の座標点の軌跡として、区間の開始点まで、列車に対して惰行の走行を行わせる。
(C)力行の走行における座標点の軌跡がかすめ曲線と交差するため、このかすめ曲線に沿った速度及び位置の座標点の軌跡として、区間の開始点まで、列車に対して惰行の走行を行わせる。列車がかすめ曲線に沿って区間に進入した後、走行を惰行から力行に移行させる際、規定時間Tpcpを満足していない場合、かすめ曲線上の座標点において、力行から惰行に移行してからの時間が規定時間Tpcpを越えるまで、惰行の走行を継続させる。
図23は、制限速度の区間(惰行時加速)の終了点における惰行かすめ曲線(#1)の作成を説明するための図である。
この図23において、曲線D10は、区間の開始点における座標点から、ブレーキの走行において逆引き計算により求めた、規定時間Tcbc前の列車の座標点を示す曲線である。
また、曲線D11は、曲線D10の始点の座標点から、惰行の走行において逆引き計算により求めた、規定時間Tpcb前の列車の座標点を示す曲線である、
また、曲線D12は、曲線D11の始点の座標点から、力行の走行において逆引き計算により求めた曲線である。
惰行かすめ曲線は、区間の開始点における座標点と、曲線D12及び惰行開始曲線の交点との間が実際に用いられる範囲となる。ここで、惰行開始曲線は実線と2点鎖線とを含めた線分であり、惰行かすめ曲線は実線の部分のみである。
かすめ曲線作成部5は、区間の終了点における座標点を始点として、惰行の走行において、(3)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、惰行開始曲線を算出する。また、かすめ曲線作成部5は、区間の開始点における座標点を始点として、ブレーキの走行において、(1)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、曲線D10を算出して、規定時間Tcbc前の列車の座標点(曲線D10の始点)を求める。
次に、かすめ曲線作成部5は、曲線D10を始点として、惰行の走行において、(3)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、曲線D11を算出して、規定時間Tpcb前の列車の座標点(曲線D11の始点)を求める。
そして、かすめ曲線作成部5は、曲線D10を始点として、力行の走行において、(5)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、惰行開始曲線と交差する点まで、曲線D12を算出する。
これにより、かすめ曲線作成部5は、区間の終了点における座標点と、曲線D12及び惰行開始曲線の交点の座標点とのあいだの惰行開始曲線を、惰行かすめ曲線として、区間の位置に対応させて、かすめ曲線データベース13に書き込んで記憶させる。
図24は、制限速度の区間の終了点における惰行かすめ曲線(#1)による走行制御を説明するための図である。すなわち、この図24は、以下の3つの場合に対応した走行の制御を説明するために用いられる図である。この制御は、後述する運転曲線作成部6が各路線における列車の運転曲線を作成する際に行うものである。
(A)力行の走行における座標点の軌跡がかすめ曲線と交差しないため、力行を継続して、図4に示すブレーキ曲線に対応した惰行開始曲線と交差する。この場合、力行から惰行へ移行させ、惰行の走行の軌跡がブレーキ曲線と交差した時点で、惰行からブレーキに走行を変更する。
(B)力行の走行における座標点の軌跡がかすめ曲線と交差するため、このかすめ曲線に沿った速度及び位置の座標点の軌跡として、区間の開始点まで、列車に対して惰行の走行を行わせる。
(C)力行の走行における座標点の軌跡がかすめ曲線と交差するため、このかすめ曲線に沿った速度及び位置の座標点の軌跡として、区間の開始点まで、列車に対して惰行の走行を行わせる。列車がかすめ曲線に沿って区間に進入した後、走行を惰行から力行に移行させる際、規定時間Tpcpを満足していない場合、かすめ曲線上の座標点において、力行から惰行に移行してからの時間が規定時間Tpcpを越えるまで、惰行の走行を継続させ、規定時間Tpcpを越えた時点で力行に走行を変更する。
図25は、制限速度の区間(惰行時加速)の終了点における惰行かすめ曲線(#2)の作成を説明するための図である。
この図25において、惰行開始曲線は、区間の終了点における座標点から、惰行の走行における逆引き計算により求められている。
また、設定速度制限曲線は、列車速度制限曲線で設定されている制限速度(位置毎)に対し、予め設定された所定の係数値(<1)、例えば0.2を乗じた設定速度により構成される。
これにより、惰行かすめ曲線は、上記惰行開始曲線において、設定速度制限曲線上の設定速度を越える部分、すなわち惰行開始曲線から設定速度以下の位置範囲である曲線D13を除いた部分として作成されている。
かすめ曲線作成部5は、区間の終了点における座標点を始点として、惰行の走行において、(3)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、惰行開始曲線を算出する。 また、かすめ曲線作成部5は、列車速度制限曲線上の座標点毎に、制限速度に対して係数を乗算し、図25に示す設定速度制限曲線を作成する。
そして、かすめ曲線作成部5は、惰行開始曲線の各座標点の速度と、同一位置の設定速度制限曲線上の座標点における制限速度とを比較し、設定速度以下の位置範囲である曲線D13を除いた部分の惰行開始曲線を、惰行かすめ曲線として作成する。
これにより、かすめ曲線作成部5は、作成した惰行かすめ曲線を区間の位置に対応させて、かすめ曲線データベース13に書き込んで記憶させる。
図26は、制限速度の区間(惰行時加速)の終了点における惰行かすめ曲線(#2)による走行制御を説明するための図である。すなわち、この図26は、以下の2つの場合に対応した走行の制御を説明するために用いられる図である。この制御は、後述する運転曲線作成部6が各路線における列車の運転曲線を作成する際に行うものである。
(A)力行の走行における座標点の軌跡がかすめ曲線と交差しないため、力行を継続して、図4に示すブレーキ曲線に対応した惰行開始曲線と交差する。この場合、力行から惰行へ移行させ、惰行の走行の軌跡がブレーキ曲線と交差した時点で、惰行からブレーキに走行を変更する。
(B)力行の走行における座標点の軌跡がかすめ曲線と交差するため、このかすめ曲線に沿った速度及び位置の座標点の軌跡として、区間の開始点まで、列車に対して惰行の走行を行わせる。列車がかすめ曲線に沿って区間に進入した後、走行を惰行から力行に移行させる際、規定時間Tpcpを満足していない場合、かすめ曲線上の座標点において、力行から惰行に移行してからの時間が規定時間Tpcpを越えるまで、惰行の走行を継続させ、規定時間Tpcpを越えた時点で力行に走行を変更する。
次に、図27は、制限速度の区間が惰行時減速の領域と惰行時加速の領域とから構成されている場合における、区間の終了点における惰行かすめ曲線(#3)の作成を説明するための図である。例えば、この図27において、区間R11の開始点側の領域R11A(上りこう配)が惰行時減速であり、終了点側の領域R11Bが惰行時加速(下りこう配)である。この図27において、区間における領域R11A及びR11Bとの境界、すなわち区間R11において路線における走行経路のこう配が変化するこう配変化位置で、惰行かすめ曲線は傾きが変化する。区間R10は惰行時減速の上りこう配である。
また、図25と同様に、設定速度制限曲線は、列車速度制限曲線で設定されている制限速度(位置毎)に対し、予め設定された所定の係数値(<1)、例えば0.2を乗じた設定速度により構成される。
かすめ曲線作成部5は、列車速度制限曲線上の座標点毎に、制限速度に対して係数を乗算し、図25に示す設定速度制限曲線を作成する。
また、かすめ曲線作成部5は、区間R11の終了点における座標点を始点として、惰行の走行において、(3)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、算出する座標点の位置がこう配変化位置となるまで第1の惰行開始曲線D20を算出する。このとき、かすめ曲線作成部5は、上記第1の惰行開始曲線D20の座標位置が設定速度制限曲線と交差しない限り、こう配変化位置となるまで第1の惰行開始曲線D20の生成を継続する。
そして、かすめ曲線作成部5は、第1の惰行開始曲線D20と第2の惰行開始曲線D21とを合成し、合成して得られた曲線を、惰行かすめ曲線として作成する。
これにより、かすめ曲線作成部5は、作成した惰行かすめ曲線を区間の位置に対応させて、かすめ曲線データベース13に書き込んで記憶させる。
図28は、制限速度の区間が惰行時減速の領域R11Aと惰行時加速の領域R11Bとに、区間途中で走行路のこう配が変化する際の惰行かすめ曲線(#3)による走行制御を説明するための図である。すなわち、この図28は、以下の2つの場合に対応した走行の制御を説明するために用いられる図である。この制御は、後述する運転曲線作成部6が各路線における列車の運転曲線を作成する際に行うものである。
(A)力行の走行における座標点の軌跡が惰行時減速の領域R11Aにおける惰行かすめ曲線と交差した場合
力行の走行における座標点の軌跡が惰行かすめ曲線と交差した座標点において、列車の走行を力行から惰行に変更する。そして、列車の走行の軌跡を、この惰行かすめ曲線に沿って区間R11の隣接する区間R12の開始点(区間R12の制限速度と、区間R11及びR12間の切り替わりの位置とによる座標点)の位置、すなわち、区間R11の終了点(区間R11の制限速度と、区間R11及びR12間の切り替わりの位置とによる座標点)の位置を越えるまで惰行を継続させる。
そして、列車の走行が、力行から惰行に移行した時点から、惰行から力行に移行するまでの時間、すなわち最小惰行時間を規定する規定時間Tpcpを満足した後、惰行から力行へ運転を移行する。このとき、力行の走行の軌跡が惰行かすめ曲線に交差し、列車が力行から惰行に移行した後、区間R11に隣接する区間R12に進入した時点で、規定時間Tpcpを越えている場合、進入と同時に力行運転に移行する。
力行の走行における座標点の軌跡が惰行かすめ曲線と交差するため、このかすめ曲線に沿った速度及び位置の座標点の軌跡として、隣接する区間R12の開始点まで、列車に対して惰行の走行を行わせる。
そして、列車が惰行かすめ曲線に沿って区間R12に進入した後、列車の走行を惰行から力行に移行させる際、規定時間Tpcpを満足していない場合、惰行かすめ曲線上の座標点において、力行から惰行に移行してからの時間が規定時間Tpcpを越えるまで、区間R12において惰行の走行を継続させ、規定時間Tpcpを越えた時点で力行に走行を変更する。
次に、図29は、惰行時減速の区間が階段状に連続し、連続した区間の最後の区間が惰行時減速の領域と惰行時加速の領域とから構成されている場合における、最後の区間の終了点における惰行かすめ曲線(#4)の作成を説明するための図である。この図29において、区間R8、R9、R10及びR11と惰行時減速の区間が、列車制限速度曲線で定義されている制限速度が順次低下、すなわち階段状に制限速度が低下するように連続して存在している。そして、最後の区間R11が、図27の区間R11と同様に、開始点側の領域R11Aが惰行時減速であり、終了点側の領域R11Bが惰行時加速となっている。
また、曲線D11は、曲線D10の始点の座標点から、惰行の走行において逆引き計算により求めた、規定時間Tpcb前の列車の座標点を示す曲線である、
また、曲線D12は、曲線D11の始点の座標点から、力行の走行において逆引き計算により求めた曲線である。
この図29においては、惰行かすめ曲線は、第1の惰行開始曲線D20と第2の惰行開始曲線D21との結合した曲線として設定されている。
かすめ曲線作成部5は、列車速度制限曲線上の座標点毎に、制限速度に対して係数を乗算し、図29に示す設定速度制限曲線を作成する。
また、かすめ曲線作成部5は、区間R11の終了点における座標点を始点として、惰行の走行において、(3)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、算出する座標点の位置がこう配変化位置となるまで第1の惰行開始曲線D20を算出する。このとき、かすめ曲線作成部5は、上記第1の惰行開始曲線D20の座標位置が設定速度制限曲線と交差しない限り、こう配変化位置となるまで第1の惰行開始曲線D20の生成を継続する。
また、かすめ曲線作成部5は、区間の開始点における座標点を始点として、ブレーキの走行において、(1)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、曲線D10を算出して、規定時間Tcbc前の列車の座標点(曲線D10の始点)を求める。
次に、かすめ曲線作成部5は、曲線D10を始点として、惰行の走行において、(4)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、曲線D11を算出して、規定時間Tpcb前の列車の座標点(曲線D11の始点)を求める。
そして、かすめ曲線作成部5は、曲線D10を始点として、力行の走行において、(5)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、第2の惰行かすめ曲線D21と交差(この交差点を座標点Pとする)するまで、曲線D12を算出する。
これにより、かすめ曲線作成部5は、作成した惰行かすめ曲線を区間の位置に対応させて、かすめ曲線データベース13に書き込んで記憶させる。
また、例えば、かすめ曲線作成部5の生成する第2の惰行かすめ曲線D21上の座標点の速度が、区間R11の開始点において、この区間R11に設定されている列車速度制限曲線の定義する制限速度と、この区間R11に設定されている再力行速度曲線の定義する再力行速度との範囲内にあれば、上述した処理により惰行かすめ曲線を作成する。
一方、例えば、かすめ曲線作成部5の生成する第2の惰行かすめ曲線D21上の座標点の速度が、区間R11の開始点において、この区間R11に設定されている列車速度制限曲線の定義する制限速度と、この区間R11に設定されている再力行速度曲線の定義する再力行速度との範囲内になければ、こう配変化位置に対応する第1の惰行開始曲線D20の座標点を始点とした第2の惰行かすめ曲線D21を、区間R11の開始点までとする。
図30は、惰行時減速の区間が階段状に連続し、連続した区間の最後の区間が惰行時減速の領域と惰行時加速の領域とから構成されている場合における、最後の区間の終了点における惰行かすめ曲線(#4)による走行制御を説明するための図である。すなわち、この図30は、以下の3つの場合に対応した走行の制御を説明するために用いられる図である。この制御は、後述する運転曲線作成部6が各路線における列車の運転曲線を作成する際に行うものである。
(A)列車が力行で走行している軌跡が惰行かすめ曲線と交差しない場合
列車が力行で走行している軌跡が惰行かすめ曲線と交差しない場合、その後の列車の走行の処理は、この軌跡がいずれかの曲線と交差した時点により判断されて、走行が制御されることになる。
力行の走行における座標点の軌跡が惰行かすめ曲線(第2の惰行かすめ曲線D21)と交差するため、このかすめ曲線に沿った速度及び位置の座標点の軌跡として、隣接する区間R12の開始点まで、列車に対して惰行の走行を行わせる。
そして、列車が惰行かすめ曲線に沿って区間R11から区間R12に進入した後、列車の走行を惰行から力行に移行させる際、規定時間Tpcpを満足していない場合、惰行かすめ曲線上の座標点において、力行から惰行に移行してからの時間が規定時間Tpcpを越えるまで、区間R12において惰行の走行を継続させ、規定時間Tpcpを越えた時点で力行運転に変更する。
力行の走行における座標点の軌跡が惰行かすめ曲線(第1の惰行かすめ曲線D20)と交差するため、このかすめ曲線に沿った速度及び位置の座標点の軌跡として、隣接する区間R12の開始点まで、列車に対して惰行の走行を行わせる。
そして、列車が惰行かすめ曲線に沿って区間R11から区間R12に進入した後、列車の走行を惰行から力行に移行させる際、規定時間Tpcpを満足していない場合、惰行かすめ曲線上の座標点において、力行から惰行に移行してからの時間が規定時間Tpcpを越えるまで、区間R12において惰行の走行を継続させ、規定時間Tpcpを越えた時点で力行運転に変更する。
次に、図31は、制限速度が設定された区間内に複数のこう配の変化点を有する場合における、区間の終了点における惰行かすめ曲線(#5)の作成を説明するための図である。すなわち、図31は、速度制限範囲としての区間において、こう配変化点が複数存在する場合、できる限り惰行で走行し、区間の終了点で加速して通過すれば、エネルギー的に効率のよい走行となる。この走行を制御するため、図31に示す惰行かすめ曲線が存在する。
この図31においては、区間が惰行時加速(下りこう配)の領域RAと、惰行時減速(上りこう配)の領域RBと、惰行時加速(下りこう配)の領域RCとの3つのこう配の異なる領域に分かれている。
また、図31には、力行かすめ曲線と、第1の惰行かすめ曲線と、第2の惰行かすめ曲線との3つのかすめ曲線がある。
かすめ曲線作成部5は、この惰行かすめ曲線を作成する区間の列車制限速度曲線を、路線情報データベース8から読み出す。
次に、かすめ曲線作成部5は、区間の終了点における座標点を始点として、惰行の走行において、(3)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、算出する座標点の位置が第2のこう配変化位置となるまで惰行開始曲線D30を算出する。
そして、かすめ曲線作成部5は、惰行開始曲線D30上における第1のこう配変化位置に対応する位置の座標点を始点として、(4)式及び(2)式を用いた逆引き計算により、図31に示すように、惰行開始曲線D31を算出する。
これにより、かすめ曲線作成部5は、惰行開始曲線D30及び惰行開始曲線D31を合成し、第1の惰行かすめ曲線を作成する。
次に、かすめ曲線作成部5は、第1こう配変化位置に対応する位置の列車速度制限曲線上の座標点を始点とし、以下の(8)式を繰り返して計算することで、単位時間Δt経過毎の速度を求める。同様に、かすめ曲線作成部5は、上記(7)式を繰り返して計算することで、単位時間Δt経過後毎の位置を求める。
Vn+1=Vn − β×Δt …(8)
そして、かすめ曲線作成部5は、(7)式から得られる位置が第2こう配変化位置となるまで、(8)式及び(7)式を繰り返して計算し惰行開始曲線D33を作成する。
そして、かすめ曲線作成部5は、(6)式から得られる速度と、(7)式から得られる位置とによる座標点の軌跡が、力行かすめ曲線と交差するまで、(6)式及び(7)式を繰り返して計算し惰行開始曲線D32を作成する。
また、かすめ曲線作成部5は、第1こう配変化位置に対応する位置の列車速度制限曲線上の座標点を始点とし、(3)式及び(2)式による逆引きの計算を行い、惰行開始曲線D34を作成する。
これにより、かすめ曲線作成部5は、惰行開始曲線D32、惰行開始曲線D33及び惰行開始曲線D34を合成し、第2の惰行かすめ曲線を作成する。
この図32において、第2のこう配変化位置と同一の位置にある惰行開始曲線D33上の座標点を始点として生成された惰行開始曲線D32が、力行かすめ曲線と交差せずに、列車速度制限曲線と交差している。この図32の場合は、列車の運行としては、惰行から力行に移行して区間を通過することができない。
そして、かすめ曲線作成部5は、作成した惰行開始曲線D32が力行かすめ曲線と交差せずに、列車速度制限曲線と交差した場合(算出した座標点の速度が制限速度を超えた場合)、この惰行開始曲線D32を含む第1の惰行かすめ曲線の作成を行わない。すなわち、かすめ曲線作成部5は、作成した惰行開始曲線D32、D33及びD34を無効とする。
この図33において、第1のこう配変化位置と同一の位置にある列車速度制限曲線上の座標点を始点とする惰行開始曲線D33が、第2のこう配変化位置に到達するまえに、計算される列車の速度が設定速度制限曲線で設定されている設定速度を下回っている。この図33の場合は、列車の運行としては、区間内において設定されている、設定速度制限曲線を下回る速度となるため、効率のよい速度での走行が期待できない。
そして、かすめ曲線作成部5は、作成した惰行開始曲線D33が力行かすめ曲線と交差する前に、設定速度制限曲線と交差した場合(算出した座標点の速度が設定速度を下回った場合)、この惰行開始曲線D33を含む第1の惰行かすめ曲線の作成を行わない。すなわち、かすめ曲線作成部5は、作成した惰行開始曲線D33及びD34を無効とする。
図34は、区間が惰行時減速の領域と惰行時加速の領域とから構成されている場合における、区間最後の惰行時加速の領域の終了点における惰行かすめ曲線(#5)による走行制御を説明するための図である。すなわち、この図34は、以下の3つの場合に対応した走行の制御を説明するために用いられる図である。この制御は、後述する運転曲線作成部6が各路線における列車の運転曲線を作成する際に行うものである。
(A)列車が力行で走行している軌跡が第2の惰行かすめ曲線と交差した場合
列車が力行で走行している軌跡が第2の惰行かすめ曲線と交差した場合、この交差した座標点Fと同一位置において、より速度が高い他の惰行かすめ曲線の有無を検出する。そして、この交差した座標点の位置において、より速度の高い他の惰行かすめ曲線が検出されない場合、この第2の惰行かすめ曲線に沿って、列車を惰行により走行させる制御が行われる。
列車が力行で走行している軌跡が第2の惰行かすめ曲線と交差した場合、この交差した座標点Fと同一位置において、より速度が高い他の惰行かすめ曲線の有無を検出する(線分F1)。そして、この交差した座標点の位置において、より速度の高い第1の惰行かすめ曲線が検出された堤合、列車は座標点Fを力行運転で通過し、第1の惰行かすめ曲線に達したのち惰行運転に移行するよう制御が行われる。その後列車は第1の惰行かすめ曲線に沿って惰行で走行する。
(B−2)列車が力行で走行している軌跡が第2の惰行かすめ曲線と交差した場合
列車が力行で走行している軌跡が第2の惰行かすめ曲線と交差した場合、この交差した座標点Fと同一位置において、より速度が高い他の惰行かすめ曲線の有無を検出する(線分F1)。そして、この交差した座標点Fの位置において、より速度の高い第1の惰行かすめ曲線が検出されない場合、座標点Fから惰行運転に移行し、この第2の惰行かすめ曲線に沿って列車を惰行により走行させる制御が行われる。
運転曲線作成部6は、例えば図2におけるA駅(速度0、位置0の座標点)を出発してから、B駅へ到着するまでの運転曲線を以下に示すように作成する。
運転曲線作成部6は、各区間に設定されているブレーキ曲線、惰行開始曲線、力行移行禁止曲線、力行かすめ曲線、惰行かすめ曲線の各々のデータを、それぞれブレーキ曲線データベース9、惰行開始曲線データベース10、力行移行禁止曲線データベース11、惰行移行禁止曲線データベース12及びかすめ曲線データベース13から読み出す。
・現在より制限速度が低い区間に進入する場合
運転曲線作成部6は、列車の走行が力行である場合、最大加速によって速度を上昇させて走行を行った状態で、単位時間Δt毎の列車の速度及び位置を以下の(9)式及び上記(7)式により算出する。
Vn+1=Vn + η×Δt …(9)
この(9)式において、ηは列車の最大加速における加速度を示す。
また、図4に示すように、惰行時加速の区間に進入する場合、運転曲線作成部6は、力行の走行における軌跡と、制限曲線EX1(惰行に移行することを支持する曲線)とが交差した場合、列車を惰行の走行に移行させる。
そして、運転曲線作成部6は、この惰行により軌跡がブレーキ曲線と交差すると、このブレーキ曲線に沿った軌跡を生成する。
ここで、運転曲線作成部6は、力行により走行した軌跡と、惰行により走行した軌跡と、ブレーキにより走行した軌跡とを合成し、次の区間に進入するまでの運転曲線を生成する。
運転曲線作成部6は、図6に示す惰行時減速の区間において、惰行から力行へ運転を移行させる際、力行移行禁止曲線の速度より高い速度の場合のみ、惰行から力行に移行させる。すなわち、この力行移行禁止曲線の速度より速い速度の場合、規定時間Tcpcの最小の力行の走行を行う時間を満足できないためである。
そして、運転曲線作成部6は、上述した惰行から力行、力行から惰行による走行の軌跡を算出する。
惰行開始曲線とブレーキ曲線の間の区間においては力行しない。しかしながら、惰行開始曲線の手前で一旦力行の走行に移行した場合、最小力行時間を規定する規定時間Tcpcを経過するまで、力行の走行から惰行に移行することができない。この場合、惰行開始曲線を超えて力行することが必要になる。そのため、惰行開始曲線と列車の走行の軌跡が交差する前に、力行の走行を終了させる力行移行禁止曲線を用いて、規定時間Tcpcを満足させる運転を行う必要がある。
運転曲線作成部6は、図7に示す惰行時加速の区間において、惰行による列車の走行の軌跡が力行移行禁止曲線を越えた場合、規定時間Tcpcを満足させることができないため、そのまま惰行を継続させ、列車の走行における軌跡を算出する。
また、運転曲線作成部6は、惰行による列車の走行の軌跡が惰行開始曲線と交差した後、図4及び図5と同様にブレーキ曲線に沿った軌跡を作成する。
運転曲線作成部6は、図11に示すように、惰行時減速の区間において、列車速度制限曲線の制限速度と再力行速度とのあいだで、制限速度と再力行速度との間の速度を得るため、力行と惰行とを交互に繰り返すのこぎり運転を行う。
ここで、運転曲線作成部6は、こののこぎり運における列車の走行の軌跡を算出する。
また、運転曲線作成部6は、区間の終了点に対応した力行かすめ曲線が設定されている場合、惰行の走行の軌跡の延長が力行かすめ曲線と交差する場合、この交差した座標点から力行かすめ曲線に沿った軌跡を生成する。
すなわち、運転曲線作成部6は、図14において説明したように、(1)から(3)の場合に対応した軌跡の算出を行う。
運転曲線作成部6は、図15に示すように、規定時間Tbcbを満足させるため、ブレーキから惰行走行に移行する際、ブレーキで減速した速度がこの惰行移行禁止曲線の速度より低くなって時点でブレーキから惰行に移行する制御を行う。
また、運転曲線作成部6は、ブレーキから惰行への移行、惰行からブレーキへの移行における走行の軌跡を算出する。
運転曲線作成部6は、図17から図19に示すそれぞれの2段ブレーキの場合に対応して、2つの隣接する区間において、前段の区間から後段の区間に進入する際、前段の区間において、前段の区間においてブレーキ曲線B1に沿ってブレーキをかける。
そして、運転曲線作成部6は、ブレーキ曲線に対応し、規定時間Tcbcを満足させる新たなブレーキ曲線B3あるいはB4を、区間に対応してブレーキ曲線データベース9から読み出し、これらのブレーキ曲線B3あるいはB4の終点の座標点において、ブレーキから惰行に移行させる。
次に、運転曲線作成部6は、ブレーキ曲線B3あるいはB4の終点の座標点から、惰行を開始すると、各々走行の軌跡として曲線D4、D5が得られ、この曲線D4、D5に沿って軌跡が生成される。
そして、運転曲線作成部6は、惰行の軌跡がブレーキ曲線B2と交差した座標において、惰行からブレーキへと列車の走行を移行させ、このブレーキ曲線B2と同様の軌跡を生成する。
運転曲線作成部6は、惰行時減速の区間において、図22に示すように、すでに説明した(A)、(B)及び(C)の場合に対応して、力行から惰行に移行させ、隣接する次の区間に進入する軌跡を生成する。
運転曲線作成部6は、惰行時加速の区間において、図24、図26、図28、図30及び図34に示すように、すでに説明した各惰行かすめ曲線による、区間からの進出を制御し、次段の区間への進出する軌跡を生成する。
上述したように、運転曲線作成部6は、区間毎に設定されている曲線により作成した軌跡を、駅Aと駅Bとの間で合成し、駅Aと駅Bとの間の運転曲線を作成する。これを路線の全ての駅の間で行うことにより、路線全体の運転曲線が作成できる。
時間曲線作成部7は、運転曲線作成部6の生成した運転曲線における速度と距離との関係から、各区間を通過するための時間を算出し、駅A及び駅Bとの間で積算することにより、容易に駅Aから駅Bへの走行の必要時間を算出することができる。
ここで、時間曲線作成部7は、下記に示す(10)において、単位距離間の時間を算出し、この単位距離の時間を積算することにより、区間を走行する時間、さらに駅間を走行する時間を算出する。
t=Δxn/((Vn + Vn+1)/2) …(10)
ここで、Vnは単位距離Δxの始点の座標点における速度であり、Vn−1は単位距離Δxの終点の座標点における速度である
また、時間曲線作成部7は、上述した駅間の走行の必要時間を路線における全ての駅の間で行うことにより、路線全体の時間曲線を作成することができる。
また、本実施形態によれば、路線を新設あるいは駅を新設する場合に、シミュレーションにより予め運転曲線を作成し、各区間の制限速度を超えずに、列車の性能を十分に発揮し、より良い運転曲線を得ることができ、時間曲線も最適な運転による結果として得られるため、ダイヤ作成を容易に行うことができる。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
2…惰行開始曲線作成部
3…力行移行禁止曲線
4…惰行移行禁止曲線
5…かすめ曲線作成部
6…運転曲線作成部
7…時間曲線作成部
8…路線情報データベース
9…ブレーキ曲線データベース
10…惰行開始曲線データベース
11…力行移行禁止曲線データベース
12…惰行移行禁止曲線データベース
13…かすめ曲線データベース
Claims (5)
- 走行経路における各区間の制限速度を記憶する路線情報データベースと、
前記区間毎の開始点において、当該区間の前記制限速度とするための、直前の区間で所定の制動率により列車を減速させる位置と速度との関係を示す関数を示すブレーキ曲線を、前記区間毎に記憶するブレーキ曲線データベースと、
力行運転から前記ブレーキ曲線上のいずれかの位置において前記列車を減速させる際に、力行運転から前記減速までに必要な惰行時間を満足させる、力行から惰行に前記列車の制御を変更する位置と速度との関係を示す惰行開始曲線を、前記区間毎に記憶する惰行開始曲線データベースと、
前記直前の区間における力行状態の列車の速度と位置とを基にして、前記ブレーキ曲線及び前記惰行開始曲線とにより、前記区間毎の前記開始点において前記制限速度に到達する曲線を生成し、この生成した曲線を運転曲線とする運転曲線作成部と
を備えることを特徴とする運転曲線作成システム。 - 前記列車を惰行から力行させ前記制限速度に達したことで惰行に戻す最小時間を満足させる前記列車の速度と位置との関係を示す力行移行禁止曲線を、前記区間毎に記憶する力行移行禁止曲線データベースをさらに備え、
前記運転曲線作成部が、
前記区間における前記列車の速度と位置とを基にして、前記制限速度と前記力行移行止曲線の速度とを満足する前記運転曲線を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の運転曲線作成システム。 - 前記列車を減速して惰行させて再度減速させるまでの最小時間を満足させる前記列車の速度と位置との関係を示す惰行移行禁止曲線を、前記区間毎に記憶する惰行移行禁止曲線データベースをさらに備え、
前記運転曲線作成部が、
前記区間における前記列車の速度と位置とを基にして、前記制限速度と前記惰行移行禁止曲線の速度とを満足する前記運転曲線を生成する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の運転曲線作成システム。 - 前記区間毎の開始点あるいは終了点に対して設けられており、前記列車が力行あるいは惰行により当該区間に進入あるいは当該区間から進出する際、当該区間の前記開始点あるいは前記終了点において前記制限速度を満足する速度と位置との関係を示すかすめ曲線を、前記区間毎に記憶するかすめ曲線データベースをさらに備え、
前記運転曲線作成部が、
前記区間における前記列車の速度と位置とを基にして、前記制限速度と前記かすめ曲線の速度とを満足する前記運転曲線を生成する
ことを特徴とする請求項1からは請求項3のいずれか一項に記載の運転曲線作成システム。 - 運転曲線作成部が、
直前の区間における力行状態の列車の速度と位置とを基にして、走行経路における区間毎の開始点において、当該区間の予め設定されている制限速度とするための、直前の区間で所定の制動率により列車を減速させる位置と速度との関係を示す関数を示すブレーキ曲線と、力行運転から前記ブレーキ曲線上のいずれかの位置において前記列車を減速させる際に、力行運転から前記減速までに必要な惰行時間を満足させる、力行から惰行に前記列車の制御を変更する位置と速度との関係を示す惰行開始曲線とにより、前記区間毎の前記開始点において前記制限速度に到達する曲線を生成し、この生成した曲線を運転曲線とする
ことを特徴とする運転曲線作成方法。
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