JP2014003974A - ドレッシング及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】乳化状態の耐酸性又は耐塩性に優れ、乳化状態の経時的安定性に優れるドレッシング及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ドレッシングは、水相と、油相と、平均粒子径8nm〜500nmであり、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体、又は糖ポリマー微粒子と、を含む。ドレッシングの製造方法は、水、及び、平均粒子径50nm〜800nmである、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質で形成された閉鎖小胞体、又は糖ポリマー微粒子を含む水溶液と、油脂成分と、を混合する工程を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、食用のドレッシング及びその製造方法に関する。
ドレッシングは、食用油脂及び食酢若しくはかんきつ類の果汁などに食塩、砂糖類、香辛料等の調味成分を加えて調製し、水中油型に乳化したものであり、油相と水相が分離しており、使うときに振って混ぜ合わせるタイプの分離タイプのドレッシング、油と水相とが乳化している乳化タイプのドレッシングに大別できる。分離タイプのものも、使用時に振り混ぜ乳化させて使用するため、ドレッシングにおいて乳化安定性を付与することが求められている。ドレッシングの乳化安定性を付与するためには、キサンタンガム等のガム質を添加したり、卵黄、乳化剤などを添加したりすることが行われている(特許文献1、2)。しかし、卵黄はアレルギーの問題があったり、また乳化剤は酸や塩を含む乳化型のドレッシングで乳化安定性を保つためには多量に添加する必要があるため、乳化剤のエグ味を感じたり、風味を配慮し乳化剤の添加を低減すると乳化安定性が得られないという問題があった。
また、特許文献3には、寒天が添加されたドレッシングが開示されている。具体的には、寒天を水に加えて85℃で15分間加熱した後、そこに油を添加し混合することで、ドレッシングが製造される。特許文献1には、このドレッシングが分散性に優れることが記載されている。
特開昭56−26170号公報 特開昭62−265964号公報 特開平7−123934号公報
しかし、文献3のドレッシングは、寒天ゲルの構造体中に油脂を分散させることで乳化が維持されており、流動性に乏しく、また、酸味や塩味を与えるため、酸性で塩分を含有することが一般的であるが、酸性条件や塩分含有条件下での乳化状態が特に不十分である。また、従来のドレッシングは、乳化状態の経時的安定性の観点でも十分ではなかった。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、乳化状態の耐酸性又は耐塩性に優れ、乳化状態の経時的安定性に優れるドレッシング及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、平均粒子径8nm〜500nmである閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子が、耐酸性及び耐塩性に優れ、乳化状態を長時間に亘って維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下を提供する。
(1) 水相と、油相と、平均粒子径8nm〜500nmであり、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体、又は糖ポリマー微粒子と、を含むドレッシング。
(2) 前記糖ポリマーは、寒天を含む(1)記載のドレッシング。
(3) 前記糖ポリマーは、ヒドロキシプロピルデンプンを含む(1)記載のドレッシング。
(4) キサンタンガムの量が、0.2質量%以下(ゼロも含む)である(1)から(3)いずれか記載のドレッシング。
(5) キサンタンガムの量が水分に対して、0.25質量%以下(ゼロも含む)である(1)から(3)いずれか記載のドレッシング。
(6) 前記糖ポリマーは、キサンタンガムと、寒天又はヒドロキシプロピルデンプンと、を含む(1)記載のドレッシング。
(7) 前記糖ポリマー微粒子を含む画分は、ゾル状態である(1)から(6)いずれか記載のドレッシング。
(8) 20℃において、B型粘度計「DV−E」(Brook Field社製)を用い、治具No.2、回転数100rpmの条件で測定される前記ドレッシングの粘度が40cp以下であり、かつ、前記油相の平均粒子径が1μm以上200μm以下である(1)から(7)いずれか記載のドレッシング。
(9) 20℃において、B型粘度計「DV−E」(Brook Field社製)を用い、治具No.3、回転数12rpmの条件で測定される前記ドレッシングの粘度が500cp以上3000cp以下である(1)から(7)いずれか記載のドレッシング。
(10) 前記閉鎖小胞体及び前記糖ポリマー微粒子のいずれでもない界面活性剤の量が0.1質量%以下(ゼロも含む)である(1)から(9)いずれか記載のドレッシング。
(11) 前記油相の平均粒子径が1μm以上100μm以下であり、かつ、粒度分布の標準偏差が0.1以上0.5以下である(1)から(10)いずれか記載のドレッシング。
(12) 前記油相は、互いに異なる組成を有する2種以上の油相で構成される(1)から(11)いずれか記載のドレッシング。
(13) 前記ドレッシングのチキソ値が0.1以下である(1)から(12)いずれか記載のドレッシング。
(14) 前記ドレッシングの付着力が、荷重15gf以下又は付着距離8mm以下である(1)から(13)いずれか記載のドレッシング。
(15) 前記ドレッシングの塩濃度が15%以下且つpHが4以下である(1)から(14)いずれか記載のドレッシング。
(16) 水、及び、平均粒子径50nm〜800nmである、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質で形成された閉鎖小胞体、又は糖ポリマー微粒子を含む水溶液と、油脂成分と、を混合する混合工程を有するドレッシングの製造方法。
(17) 水溶性の調味成分及び/又は固形成分を前記水溶液に予め混合させておく第一の方法、水溶性の調味成分及び/又は固形成分を前記混合工程の後に混合させる第二の方法、のいずれかの方法を選択適用する(16)記載の方法。
(18) 前記糖ポリマーを水中へ分散した後、40℃以下に冷却することで、前記糖ポリマー微粒子を含む水溶液を調製する工程を更に有する(16)又は(17)記載の方法。
(19) 前記冷却を、撹拌又はせん断しながら行う(18)記載の方法。
(20) 前記冷却の後に、撹拌又はせん断を行う(18)又は(19)記載の方法。
(21) 前記糖ポリマーを水中へ分散した後、40℃以下に冷却しゲル状態とし、その後、せん断を行い、前記糖ポリマー微粒子を含む水溶液を調製する(20)記載の方法。
(22) 前記油脂成分として、互いに異なる組成を有する2種以上を用意し、それらを互いに均一に混合された状態ではなく、前記水溶液に混合する(16)から(21)いずれか記載の方法。
(23) 前記油相が互いに異なる組成を有する前記O/W型エマルション同士を混合する工程を更に有する(16)から(22)いずれか記載の方法。
本発明によれば、平均粒子径8nm〜500nmである閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子が、油相と水相との界面に介在し続けるため、乳化状態の耐酸性又は耐塩性に優れ、乳化状態の経時的安定性に優れるドレッシングが得られる。
以下、本発明の実施形態を説明するが、これらに本発明が限定されるものではない。
本発明のドレッシングは、水相と、油相と、平均粒子径8nm〜500nmであり、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体、又は糖ポリマー微粒子と、を含む。
閉鎖小胞体は、水系において自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質から形成された二分子膜構造体である。糖ポリマー微粒子は、糖ポリマーの粒子塊を水和させ、微粒子状に分離したものである。いずれも油相と水相との界面に位置し、分子間力により油相に吸着し、水相に分散させるものであり、従来の界面活性剤とは全く異なる作用で乳化を構成する。平均粒子径が8nm〜500nmであることで、酸性及び塩存在下での乳化状態を維持するのに十分な分子間力が得られる。平均粒子径は、pH及び塩濃度により適宜設定され、75nm〜500nmであってよい。なお、閉鎖小胞体及び糖ポリマー微粒子の平均粒子径は、20℃において、ゼータ電位・粒径測定システム「ELS−Z2」(大塚電子製)を用いて測定される。
両親媒性物質としては、リン脂質である卵黄レシチン、大豆レシチン、菜種レシチン、また、これらから得られるリゾレシチンや分別レシチン等を採用してもよい。ただし、卵黄レシチン(及びそれを含む卵黄)は、アレルギー対応及び官能性の点で含まれないことが好ましい。
両親媒性物質としては、脂肪酸エステルを採用してもよい。脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の食品用途に適したものを使用することが好ましい。脂肪酸エステルは、上記リン脂質と併用することが好ましい。脂肪酸エステルと併用するリン脂質としては、大豆レシチン等の大豆リン脂質が好ましい。
両親媒性物質の閉鎖小胞体は、例えば、両親媒性物質を水に分散させ、撹拌し続けることで調製される。閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質は1種又は複数種を含有してもよく、含有量は、特に限定されないが、ドレッシングに対し0.02〜1.5質量%程度でよい。
糖ポリマーは、澱粉、デキストリン、セルロース、その他の多糖類等のグルコシド構造を有するポリマーを指す。澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム等のエステル化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン等のエーテル化デンプン、酸化デンプン、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦粉デンプン、米デンプン、ワキシー米デンプン、タピオカデンプン等が、デキストリンとしては、サイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、マルトデキストリン等が、セルロースとしてはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸ナトリウム、セルロース結晶体、その他の多糖類としては、キサンタンガム、アラビアガム、トラガントガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、大豆多糖類、寒天、LMペクチン、HMペクチンカラヤガム、フコイダン、トラガントガム、グルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ガラクトマンナン、カードラン等の天然高分子が挙げられる。
中でも、乳化状態の経時的安定性の観点では、アラビアガム、トラガントガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、寒天、LMペクチン、HMペクチンカラヤガム、フコイダン、トラガントガム、グルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ガラクトマンナン、カードラン、ヒドロキシプロピルデンプンが好ましく、特に寒天又はヒドロキシプロピルデンプンを含むと、微細な油滴になり、さらに乳化状態が安定になるので好ましい。上記微粒子を形成する糖ポリマーは1種又は複数種を含有してもよく、含有量は特に限定されないが、ドレッシングに対し0.02〜1.5質量%程度でよい。
一般に、ドレッシングにはキサンタンガムなどの増粘剤が乳化性や乳化安定性を付与する目的で混合される場合がある。この際、キサンタンガムにより十分な乳化性を与えようとするとキサンタンガムの添加量が多くなり、結果、粘性が高く、ぬるついた食感となってしまう場合がある。ゆえにこうした食感を避ける嗜好のドレッシングは、キサンタンガムを含まない、又は含まれても含有量は、0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、あるいは、キサンタンガムの含有量が、水分に対して0.25質量%以下(ゼロも含む)、好ましくは0.23質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、0.1質量%以下であることが望ましい。ただし、キサンタンガムの含有量が0.2質量%以下、あるいは、水に対するキサンタンガムの量が0.25質量%以下の場合、その一部がキサンタンガム微粒子であっても、それによる乳化性は十分でないため、耐酸、耐塩性が低下したり、油相の分離やオイルアップにより油っぽい風味が生じたりし得るため、例えば、寒天又はヒドロキシプロピルデンプンの糖ポリマー微粒子を併用することが好ましい。
また、ドレッシングには特有の現象があり、例えば、ドレッシングの離水とは、油相及び水相の比重の違いにより油相と水相とが分かれて見える現象(コアセルベーション)であり、混合すれば再分散するため非乳化状態とは異なる。ドレッシングのセットとは、ドレッシングが経時的にゲル化する現象である。いずれも、ドレッシングの消費者に対して良い印象を与えないことから、望ましくないとされることがある。
キサンタンガムは、増粘作用により離水の抑制効果があるが、前述の通り、キサンタンガムで乳化性を得る量を添加すると、結果的にドレッシングがぬるつきやすく、さらにドレッシングがセットしてしまう場合がある。このため、ドレッシングの乳化安定性、耐酸・耐塩性及びぬるつきを良好にし、かつ離水及びセットを抑制する観点では、糖ポリマー微粒子が、キサンタンガムと、寒天又はヒドロキシプロピルデンプンと、を含むことが好ましい。特に固形分あるいは油分が多いドレッシングで、低粘度(20℃において、B型粘度計「DV−E」(Brook Field社製)を用い、治具No.3、回転数12rpmの条件で測定される前記ドレッシングの粘度が500cp以上3000cp以下)のドレッシングとする場合には、ドレッシング中の水分量が少なく、混合出来る糖ポリマー量が制約を受けるため、キサンタンガムを、水分に対して0.25質量%以下(ゼロも含む)、好ましくは0.23質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、0.1質量%以下とし、さらに寒天又はヒドロキシプロピルデンプンを併用することで、低粘度であり、乳化安定性、耐酸・耐塩性及びぬるつきを良好にし、かつ離水及びセットを抑制することができる。
また、上述のようにドレッシングに糖ポリマー微粒子とキサンタンガムを併用する場合、あるいは糖ポリマー微粒子を用い、固形分を含有する場合は水相成分(微粒子、水溶性調味成分、固形分)をあらかじめ混合した後に油脂成分を添加し乳化操作を行うことで、より乳化状態が良好で離水しにくいドレッシングを調製することができる。
前述のように、糖ポリマー微粒子は、糖ポリマーを充分に水和分散させ、粒子化したものである。例えば、80℃以上の水中に糖ポリマーの粒子塊を30分間以上に亘りおくことで、水和及び分散が生じる。その後冷却することにより、微粒子を形成する。冷却温度としては好ましくは40℃以下、更に好ましくは20℃以下である。特許文献3に示される条件(85℃の水中で15分間)では、充分な水和及び分散が生じないため、平均粒子径8nm〜500nmの糖ポリマー微粒子は得られない(粒子塊が水和した状態のままであり、比表面積が低いことから、粒子としての乳化力は弱い)。
糖ポリマー微粒子を含む画分は、ゾル状態であることが好ましい。一旦形成された糖ポリマー微粒子は互いに結合してゲルを形成しやすく、かかるゲルは乳化作用に乏しい。このため、優れた乳化性を発揮できる観点から、糖ポリマー微粒子の水分散液のゾル状態を維持したまま乳化を行うことが好ましく、結果的に得られたドレッシングにおける糖ポリマー微粒子を含む画分はゾル状態になる。また、糖ポリマーを水和した後、冷却しゲルを生成した後、このゲルをせん断することでゾル状態とすることもできる。なお、ゾル状態とは、画分を収容した容器を30℃に1時間静置した後、傾けた際に流動性が見られる状態を指す。糖ポリマー微粒子を含む画分は、ドレッシングの外相である水相を回収したものである。
両親媒性物質又は糖ポリマーの量は、油脂成分に対して0.01質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上2.5質量%以下である。この量が過小であると、乳化状態が十分には形成されにくい。なお、油脂成分に対する両親媒性物質又は糖ポリマーの量は、その種類に応じ、GC−MS、LC−MS、又はTLCのいずれか適切な方法により測定される。
水相には、水、及び両親媒性物質又は糖ポリマーにより形成された閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子の他、水溶性の種々成分が含まれてもよい。例えば、増粘剤(加工澱粉、キサンタンガム等)、界面活性剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等)、保存料、酸化防止剤、リン酸塩、香料、酸味成分(クエン酸、果汁、酢酸等)、塩分(塩化ナトリウム等)、各種調味料(グルタミン酸塩、醤油等)、糖(ブドウ糖、果糖、ショ糖、オリゴ糖等)、蛋白質等の水溶性調味成分が挙げられる。上記任意成分は、所望の効果の程度に応じ、適宜の量で使用されてよい。さらに水相には、ゴマ、スパイス、ハーブ、コショウ、ガーリック、チーズ、野菜、果物、魚肉などのペースト(例えばトマトペースト、オニオンペースト、ゴマペースト、アンチョビペースト)、チーズ、野菜、果物、魚肉、畜肉などのいわゆる具材のカット品などの固形分を分散させることもできる。
中でも、本発明のドレッシングの乳化状態は、耐酸性及び耐塩性に優れることから、酸味成分及び塩分の含有量の自由度は高い。具体的に、酸味成分は、水相のpHが5以下(具体的には4.0以下、3.0以下、2.5以下)になる量で使用されてよく、塩分は、塩濃度がドレッシングに対して2.0質量%以上(具体的には3.0質量%以上、5.0質量%以上)の量で使用されてよい。ただし、耐塩性の限界、ドレッシングの風味を考慮し、塩濃度はドレッシングに対し15質量%以下であることが好ましい。
本発明のドレッシングにおいて、閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子により十分な乳化状態が得られるため、界面活性剤は使用しない又は使用しても低量で足りる。具体的に、界面活性剤の量はドレッシングに対して0.1質量%以下(ゼロも含む)であってよく、これによりドレッシングの官能性が更に向上する。
増粘剤は、従来、外相である水相の粘性を付与し、非分散成分の沈殿及び油脂の浮上を抑制する目的で使用されてきた。本発明のドレッシングは乳化状態が優れるため、増粘剤の必要量は少なくて足り、例えばドレッシングに対し0.5質量%以下(ゼロも含む)であってよい。また、粘性増加が求められる場合、後述のように、糖ポリマー微粒子を含む水のゲル状物を撹拌又はせん断したものを用いることで、粘性増加を実現することができ、他の増粘剤の必要量は少なくて足りる。
油相を構成する油脂成分としては、一般的な食用油脂を、特に制限なく使用することができる。かかる食用油脂としては、液体、固体の動植物油脂、硬化した動植物油脂、動植物油脂のエステル交換油、分別した液体油又は固体脂等を例示することができる。具体的には、ナタネ油、コーン油、大豆油、綿実油、サフラワー油、パーム油、ヤシ油、米糠油、ごま油、カカオ脂、オリーブ油、パーム核油等の植物性油脂、魚油、豚脂、牛脂、鶏脂、乳脂等の動物性油脂及び、これらの油脂の硬化油又はエステル交換油、或いはこれらの油脂を分別して得られる液体油、固体脂等が挙げられる。これらの食用油脂は1種又は複数種で使用されてよい。油相の量は、風味の点から10〜90質量%が好ましい。
また、油脂成分としては、上記の他、生理機能性を有する油脂(以下、生理機能性油脂という場合がある)も使用可能である。生理機能性油脂としては、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸、αリノレン酸、γリノレン酸、共役酸等の脂肪酸を多く含むエゴマ油、アマニ油などの油脂や中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が挙げられる。これらの生理機能性油脂は複数使用されてもよいし、上記食用油脂と併用されてもよい。
また、油脂成分は、上記油脂以外の脂溶性成分を含んでもよい。例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等のような脂溶性ビタミン類、抗酸化物質、ステロール類、CoQ10、βカロチン等の生理機能性を有する脂溶性成分が挙げられる。なお、油脂成分に含有される脂溶性成分は、生理機能性を有するものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で、様々な種類であってよい。
油相は、互いに異なる組成を有する2種以上の油相で構成されてもよい。これにより、複数の油脂成分を含む1種の油相を有するドレッシングより、味わいをより際立たせることができる。各油相の組成は、GC−MS、LC−MS、又はTLC等のうち当該具体的組成の分析に適切な方法により分析される。
水相(両親媒性物質及び糖ポリマーを含む)及び油相の比率は、特に限定されない。本発明では乳化状態が強固であるため、上記比率の自由度が高く、水相:油相(質量比)が10:90〜90:10であってよい。ただし、ヘルシー志向への対応の点では、水相:油相(質量比)は30:70〜90:10であることが好ましく、より好ましくは40:60〜90:10である。
従来のドレッシングの乳化方法では、油滴粒子径が大きい場合、クリーミングが生じると乳化が不安定なため、油滴の凝集、合一が生じて最終的には分離状態になる等、安定性に問題があった。そのため、こうしたドレッシングにおいてはクリーミングを抑制するために粘度を過剰に高くする必要があり、これがぬるつきなど原因となっていた。また、粘度を上げずにクリーミングを抑制するためには、油滴径を微細にするために乳化剤を多量に添加し高せん断をかけることも有効であるが、この場合、乳化剤の異味が出て風味が劣ってしまう。これに対し、本発明のドレッシングは乳化時における界面の安定性が高いため、粘度にかかわらず任意の油相を分散させることができる。このため、本発明の一実施形態において、ドレッシングの粘度が40cp以下であり、かつ、油滴の平均粒子径が1μm以上200μm以下(具体的には、4μm以上100μm以下)であることができる。ドレッシングの粘度は、例えば増粘剤の量や糖ポリマーの種類によって調節できる。油相の平均粒子径は、例えば油相の成分(水に対する界面張力に影響する)、閉鎖小胞体及び糖ポリマー微粒子の平均粒子径、量、種類によって調節することができる。なお、前述のドレッシングの粘度は、20℃において、B型粘度計「DV−E」(Brook Field社製)を用い、治具No.2、回転数100rpmの条件で測定される。油相の平均粒子径は、20℃において、レーザー回折式光散乱装置「SALD−2100」(島津製作所製)を用いて測定される粒度分布より算出される。なお、高い粘度が要求される場合等、粘度が40cp超であってよいことは当然である。
同様の理由により、本発明の一実施形態において、油滴の平均粒子径が1μm以上100μm以下であり、かつ、粒度分布の標準偏差が0.1以上0.5以下(つまり粒度分布が比較的ブロードである)であることもできる。本明細書における標準偏差は、レーザー回折式光散乱装置「SALD−2100」(島津製作所製)により求めた対数スケール上で定義された標準偏差である。油滴の粒子径が大きいと、油脂や水相に含まれる調味成分の味が明確に表れやすい一方、油相の粒子径が小さいと、クリーミーな味わいが表れやすい。標準偏差が上記範囲であることで、粒子径の大きいものと小さいものを含むため、複雑な味わいが得られうる。標準偏差は、具体的に0.20以上であってよい。粒度分布の標準偏差は、例えば、糖ポリマー微粒子(具体例は後述のとおりであり、キサンタンガム以外が好ましく、より好ましくは寒天である)を用いることで高くすることができる。なお、与えるべき官能性がシャープな風味である場合等、標準偏差が0.1未満であってよいことは当然である。
本発明のドレッシングは、離水を抑制する観点で、20℃において、B型粘度計「DV−E」(Brook Field社製)を用い、治具No.3、回転数12rpmの条件で測定されるドレッシングの粘度が500cp以上であることが好ましい。他方、この方法で測定される粘度は、過大であると、ドレッシングがぬるつき、テクスチャーを不良にしやすいため、3000cp以下であることが好ましい。
本発明のドレッシングは、容器などから振出してサラダなどの野菜に振り掛ける場合には流れやすく、また野菜などに振り掛けた状態で力を加えないときには流れにくい点で、チキソ性を有することが好ましく、具体的にチキソ値が0.1以下(特に0.05以下)であることが好ましい。従来、チキソ性を高めようとすると、キサンタンガム等の増粘剤を多量に含める他なく、ぬるつきの問題が生じてしまっていた。これに対し、本発明では、用いる両親媒性物質又は糖ポリマーの種類、濃度(含有量)や状態(例えば、微粒子の形成温度、ゲルせん断力を調整してゾル化したものを用いる)、閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子の量を適宜選択することで、ぬるつきの問題を抑えつつ、チキソ性に優れたドレッシングが得られる。チキソ値は、E型粘度計「RC−105A」(東機産業社製)を用い、20℃のドレッシング1mLをステージにセットし、ローターの回転数を5rpmから150rpmまで10rpm/分で変化させたときの、5rpm時の粘度に対する150rpm時の粘度の比である。なお、求められる特性に応じ、チキソ値が0.1超であってもよいことは当然である。なお、ゲル状態とは、画分を収容した容器を30℃に1時間静置した後、傾けた際に流動性が見られない状態を指す。
ドレッシングの付着力が過大であると、ぬるつきの原因になり得る。このため、本発明のドレッシングの付着力は、荷重15gf以下(特に10gf以下)又は付着距離8mm以下(特に8.0mm以下)であることが好ましい。付着力は、クリープメーター「E−3305S」(山電社製)を用い、直径100mmの円筒状カップにドレッシングを高さ50mmになるよう注ぎ、直径40mmの円盤状治具を1mm/秒の速度でドレッシングに接触させ(歪率2%)、治具を引き上げた際の荷重及び付着し続けた距離である。本発明では、用いる両親媒性物質又は糖ポリマーの種類、閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子の量を適宜選択する(例えば寒天を用いる)ことで、チキソ性及び付着力の双方に優れたドレッシングが得られる。なお、求められる特性に応じ、付着力が荷重15gf超又は付着距離8mm超であってもよいことは当然である。
次に、本発明に係るドレッシングの製造方法を説明する。この方法は、水、及び、平均粒子径50nm〜800nmである、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質で形成された閉鎖小胞体、又は糖ポリマー微粒子を含む水溶液と、油脂成分と、を混合する工程を有する。この工程は、以下に詳細に述べる条件を除き、基本的に公知である(例えば、特許第3855203号参照)。混合のしかたは特に限定されないが、水溶液に対し油脂成分を添加(例えば滴下)することが好ましい。
両親媒性物質の閉鎖小胞体は、例えば、両親媒性物質を水に分散させ、撹拌し続けることで調製される。糖ポリマー微粒子は、例えば、80℃以上の水中に糖ポリマーの粒子塊を30分間以上に亘りおくことで、糖ポリマーを充分に水和分散させ、粒子化したものである。例えば、80℃以上の水中に糖ポリマーの粒子塊を30分間以上に亘りおくことで、水和及び分散が生じる。その後、冷却し、微粒子を形成する。冷却温度は好ましくは40℃以下、更に好ましくは20℃以下である。
この閉鎖小胞体または糖ポリマー微粒子を含む水溶液を混合する前後において、水に、増粘剤(加工澱粉、キサンタンガム等)、界面活性剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等)、酸味成分(クエン酸、乳酸等)、塩分(塩化ナトリウム等)、各種調味料(グルタミン酸塩等)、糖(ブドウ糖、果糖、ショ糖、オリゴ糖等)、蛋白質等の水溶性調味成分を加えてもよい。本発明は水相の塩濃度やpHが変化しても乳化状態が安定に維持されやすいため、水溶性調味成分及び/又は固形成分(好ましくは水溶性調味成分)は、油相と閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子を含む水溶液との混合により形成されたO/Wエマルションと混合してもよい。このようにエマルション調製後に水溶性調味成分を混合することにより、調味成分の種類や量にかかわらず、エマルション形成の条件を一定化しやすく、また、微粒子調製時には閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子の平均粒子径の制御が容易になるため、乳化性能に優れたドレッシングをより確実に製造することができる。より具体的には、閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子は油相と水相との界面に位置し、分子間力により油相に吸着するものであり、その際、塩、酸、糖などの水溶性調味成分が存在すると吸着が行われにくいおそれがある。O/W型エマルションを形成させた後に水溶性調味成分を混合することで、より安定な乳化が可能であり、耐酸、耐塩に優れたドレッシングを製造することができると考えられる。
水溶性調味成分、又は水溶性調味成分と固形分との組合せの混合は、ドレッシングの製造効率向上の観点から、油脂成分の混合前の、閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子を含む水溶液に行ってもよい。特に、水溶性調味成分が固形分を含み、かつ/又は、糖ポリマー微粒子がキサンタンガムを含む場合、水溶性調味成分の混合を油脂成分の混合前の上記水溶液に行うことは、離水やセットを促進せずにドレッシングの乳化安定性を向上できる点でも好ましい。この傾向は、糖ポリマー微粒子がキサンガンガムと寒天又はヒドロキシデンプンとを含む場合に顕著である。固形分は、ゴマ、スパイス、ハーブ、コショウ、ガーリック、野菜、果物、魚肉などのペースト(例えばトマトペーストオニオンペースト、ゴマペースト、アンチョビペースト)、チーズ、野菜、果物、魚肉、畜肉などのいわゆる具材のカット品であってよい。
糖ポリマーを水中へ分散した後、40℃以下、好ましくは20℃以下に冷却することで、糖ポリマー微粒子を含む水溶液を調製することが好ましい。これにより、より優れた乳化状態の耐酸性、耐塩性及び経時的安定性が得られる。
閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子を効率的に生成する観点では、冷却を撹拌又はせん断しながら行うことが好ましい。他方、チキソ性を多少与える観点では、冷却の過程では撹拌又はせん断を行わずにゲル生成を促進し、冷却の後に撹拌又はせん断(特にせん断)し、ゾルとすることにより平均粒子径8nm〜500nmの微粒子を得てもよい。糖ポリマー濃度、ゲル形成温度、せん断力などにより条件は異なるが、ゾル中に平均粒子径8nm〜500nmの微粒子が存在するのが確認されるまで、せん断を行うことが必要である。なお、撹拌又はせん断は、冷却中及び冷却後の双方で行ってもよい。撹拌又はせん断の方法は、特に限定されず、プロペラ、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等を用いて行われてよい。
油脂成分として、互いに異なる組成を有する2種以上を用意し、それらを互いに均一に混合された状態ではなく、水溶液に混合してよい。例えば水相に第1の油脂を添加しO/W型エマルションを形成させた後、さらに第2の油脂を添加しO/W型エマルションを形成する方法(逐次添加)、水相に第1の油脂の適量と第2の油脂の適量を交互に添加しO/W型エマルションを形成する方法(交互添加)、水相の異なる箇所に第1の油脂と第2の油脂を別々に添加しO/W型エマルションを形成する方法等が挙げられる。あるいは、油相が互いに異なる組成を有するO/W型エマルション同士を混合してもよい。これにより、互いに異なる組成を有する2種以上の油相を有するドレッシングが得られ、複数の油脂成分を予め混合した油相を有するドレッシングより、味わいをより際立たせることができる。なお、油脂種の多寡に依存して、用いられる閉鎖小胞体又は糖ポリマー微粒子の種類を1種または複数種のいずれかにしなければならない、というものでもないと考えられる。これに対し、従来の界面活性剤を用いた乳化法では、油と水との界面に界面活性剤が吸着し、その界面エネルギーを低下させることを乳化・分散の原理としており、界面活性剤が脱吸着しやすく、互いに異なる組成を有するO/W型エマルション同士を混合しても、エマルションの組成が均一となり、単独の油脂の風味が出にくい。
各評価の方法及び基準は次の通りである。
乳化物、ドレッシングの作製:
実施例1〜13に関しては、糖ポリマー、又は両親媒性物質を85℃にて水に30分間かけて水和、分散した後、表1の温度に冷却後微粒子水溶液、又は閉鎖小胞体水溶液を得た後、油脂と混合し、乳化物を得た。その後、実施例1、3〜13は上記乳化物と酢、醤油を混合し、ドレッシングを得た。(実施例2は微粒子水溶液と酢、醤油を混合後、油脂と混合しドレッシングを得た。)
比較例1、2は乳化剤を60℃で溶解後、油脂と混合し、乳化物を得て、酢、醤油と混合し、ドレッシングを得た。
ゾル:
実施例1〜7、9〜12に関しては、糖ポリマーを85℃にて水に30分間かけて水和、分散した後、それぞれ所定温度へと冷却した微粒子水溶液、実施例8に関しては冷却時の撹拌はせず、ゲルを作成した後にホモジナイザーでせん断して得た微粒子水溶液を収容した容器を30℃に1時間静置後、傾けた際に流動性が見られた場合、ゾルと判断した。なお、前記の比較例1に用いたSES1670および実施例13に用いたSEM1695は、両親媒性物質であるショ糖脂肪酸エステル、前記比較例2および実施例13に用いたSLPは、同様に両親媒性物質である大豆レシチンである。実施例13の「SLP−SEM1695」はSLPとSEMとの混合物である。各比較例に使用した乳化剤は実施例13使用の「SLP−SEM1695」と同様の両親媒性物質であるが、単独使用ではドレッシング中の酸あるいは塩分により、閉鎖小胞体としての粒子構造が破壊されて表1最下段のように乳化状態の安定性は維持されない。実施例13のようにSLPとSEM1695とを組み合わせると粒子構造が維持され、ドレッシングとしての乳化状態が安定化する。
小胞体/糖ポリマー微粒子の平均粒子径:
測定機器 大塚電子 ゼータ電位・粒径測定システム(ELS−Z2)
測定条件 サンプル温度;20℃
乳化状態(調味成分添加前のエマルション又は、ドレッシング):
乳化後、20℃に24時間静置した際の乳化状態を目視にて確認した
◎:良好、 ○:表面に僅かにオイル、 △:表面にオイル、 ×:分離
耐酸性及び耐塩性:
乳化物に対し最終濃度が食塩10%、クエン酸1%になるように食塩、クエン酸を添加し(pH2.1)、20℃に24時間静置した際の乳化状態を目視にて確認した。
◎:良好、 ○:表面に僅かにオイル、 △:表面にオイル、 ×:分離
ドレッシングの粘度:
ドレッシングの粘度はB型粘度計(Brook Field社;DV−E)を用い治具はNo,2、回転数100rpmの条件で測定した。この時サンプルは20℃で1時間に亘り調温した。
油滴の平均粒子径 標準偏差:
測定機器 島津製作所 SALD−2100
測定条件 サンプル温度;20℃
付着力、付着距離:
測定機器 クリープメーター(山電:E−3305S)
測定条件 サンプルを直径100mmの円筒状カップに高さ50mmまで入れ、直径40mmの円盤状治具を1mm/秒のスピードでサンプル表面に接触させ(歪率2%)引き上げた際の荷重(gf)と付着距離(mm)を測定した。
チキソ値:
測定機器 E型粘度計(東機産業:RC−105A)
測定条件 サンプル温度;20℃
ステージに1mlのサンプルをセットし、ローターの回転数を5−150rpmまで10rpm/分で変化させ、5rpmと150rpmとの粘度の比(150rpm時の粘度/5rpm時の粘度)を求めた。
水分:
測定機器 マイクロ波水分計K375D(アンリツ株式会社製)
測定条件 ろ紙にドレッシングサンプル0.2gを滴下し、出力4/9で180秒間乾燥し、乾燥によって減少した量から水分量(重量%)を求めた。
あぶらっぽさ、ぬるつき、酸味の強さ、醤油の風味、異味の有無:
訓練されたパネリスト20人によって官能評価を行った。
あぶらっぽさ:
パネリスト20名中15名以上があぶらっぽくないと回答した場合「なし」、15名未満の場合は「あり」と評価した。
ぬるつき:
パネリスト20名中15名以上がぬるつきがないと回答した場合「なし」、15名未満の場合は「あり」と評価した。
酸味の強さ:
パネリスト20名中15名以上がまろやかと回答した場合「まろやか」、15名未満の場合は「酸味強い」と評価した。
醤油の風味:
パネリスト20名中15名以上が醤油のかどがなくまろやかと回答した場合「まろやか」、15名未満の場合は「かどがある」と評価した。
異味の有無:
パネリスト20名中15名以上が異味がなく自然であると回答した場合「なし」、15名未満の場合は「あり」と評価した。
Figure 2014003974
Figure 2014003974
Figure 2014003974
表中、「SLP」は大豆レシチン「SLPホワイト」(ツールレシチン工業株式会社)、「SEM1695」はショ糖脂肪酸エステル「M1695」(三菱化学フーズ社)であり、「SES1670」はショ糖脂肪酸エステル「S1670」(三菱化学フーズ社)、「SLP−SEM1695」は大豆レシチンとショ糖脂肪酸エステルからなるベシクル(閉鎖小胞体)であって、SLP:SE=4:6の比率で混合したものである。何れも両親媒性物質である。ドレッシングのpHは、3.46、塩濃度は3.47%とした。比較例1,2に関しては、ドレッシングの乳化が安定でないため、ドレッシングの評価を行わなかった。
次に、実施例14〜16は実施例1と同様の方法で微粒子水溶液を調製し水相とした。比較例3は比較例1と同様に水溶液を調製し水相とした。その後、表2に示す配合及び手順で、ドレッシングを作成した。つまり、実施例12では各油脂を均一に混合した後、微粒子を含む水溶液に添加したのに対し、実施例13では、菜種油を先に水相に添加し乳化後、さらにごま油を加えさらに乳化し、乳化物を得た。実施例14、比較例3では各油脂のエマルション(乳化物A、B)(乳化物C、D)を調製した後、両エマルションを混合し乳化物を得た。
Figure 2014003974
表中、乳化物C及びDにおけるポリグリセリン脂肪酸エステルは、「MSW7S」(阪本薬品工業株式会社製)である。
次に、実施例17〜30は、実施例1と同様の方法で、表3の配合で微粒子水溶液を調製し水相とした。つまり、実施例17〜20、22〜27、29、30では、寒天のみ、ヒドロキシプロピルデンプンのみ、あるいはキサンタンガム及び寒天、キサンタンガム及びヒドロキシプロピルデンプンといった糖ポリマー全体を同時に水へ添加し、加熱・冷却を経ることで、糖ポリマー微粒子水溶液を調製した。また、実施例21及び28では、実施例1と同様の方法で加熱、冷却後にゲル化した寒天をホモミキサーにより粉砕する工程を更に経て、糖ポリマー微粒子水溶液を調製した。これに対し、比較例4〜7は、糖ポリマー微粒子が形成されないよう加熱後の水分散液を60℃までの冷却で留め、この温度を下回らない状態のものを水相とした。
その後、表4〜5に示す配合で、ドレッシングを作成した。このうち、実施例17〜23及び比較例4〜7では、調味成分(表4及び5中、水及び糖ポリマー以外の成分)を、油脂成分と混合する前の水溶液に添加し、実施例24〜30では、油脂成分を混合して形成したO/W型エマルションに対し添加した。
Figure 2014003974
固形分なし(フレンチドレッシング)
Figure 2014003974
固形分あり(サウザンアイランドドレッシング)
Figure 2014003974
得られたドレッシングについて、乳化安定性、ぬるつき、粘度、離水した部分の高さ、セットを評価した。この結果を表6及び7に示す。乳化安定性の評価基準は前述のとおりであり、ぬるつき、粘度、離水した部分の高さ、セットの評価基準は下に説明したとおりである。
ぬるつき:
パネリスト20名中15名以上がぬるつきがないと回答した場合「なし」、15名未満の場合は「あり」と評価した。
粘度:
ドレッシングの粘度はB型粘度計(Brook Field社;DV−E)を用い治具はNo,3、回転数12rpmの条件で測定した。この時サンプルは20℃で1時間に亘り調温した。
離水の高さ:
容量50mlのファルコンチューブの最上部までドレッシングを入れ、20℃にて4週間静置した後、チューブ底部に分離して見える水の高さを計測した。
セット:
容量50mlの透明なサンプル瓶に40gのドレッシングを入れ、5℃にて4週間静置した後、45°もしくは90°に瓶を傾けた際のドレッシングの流動性を観察した。
○:45°、90°に傾けた際にともに流れる。
△:45°に傾けた際に流れないが90°に傾けた際には流れる。
×:45°、90°に傾けた際にともに流れない。
ドレッシングの粘度:
ドレッシングの粘度はB型粘度計(Brook Field社;DV−E)を用い治具はNo,2、回転数100rpmの条件で測定した。この時サンプルは20℃で1時間に亘り調温した。
Figure 2014003974
Figure 2014003974

Claims (23)

  1. 水相と、油相と、平均粒子径8nm〜500nmであり、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体、又は糖ポリマー微粒子と、を含むドレッシング。
  2. 前記糖ポリマーは、寒天を含む請求項1記載のドレッシング。
  3. 前記糖ポリマーは、ヒドロキシプロピルデンプンを含む請求項1記載のドレッシング。
  4. キサンタンガムの量が、0.2質量%以下(ゼロも含む)である請求項1から3いずれか記載のドレッシング。
  5. キサンタンガムの量が、水分に対して0.25質量%以下(ゼロも含む)である請求項1から3いずれか記載のドレッシング。
  6. 前記糖ポリマーは、キサンタンガムと、寒天又はヒドロキシプロピルデンプンと、を含む請求項1記載のドレッシング。
  7. 前記糖ポリマー微粒子を含む画分は、ゾル状態である請求項1から6いずれか記載のドレッシング。
  8. 20℃において、B型粘度計「DV−E」(Brook Field社製)を用い、治具No.2、回転数100rpmの条件で測定される前記ドレッシングの粘度が40cp以下であり、かつ、前記油相の平均粒子径が1μm以上200μm以下である請求項1から7いずれか記載のドレッシング。
  9. 20℃において、B型粘度計「DV−E」(Brook Field社製)を用い、治具No.3、回転数12rpmの条件で測定される前記ドレッシングの粘度が500cp以上3000cp以下である請求項1から7いずれか記載のドレッシング。
  10. 前記閉鎖小胞体及び前記糖ポリマー微粒子のいずれでもない界面活性剤の量が0.1質量%以下(ゼロも含む)である請求項1から9いずれか記載のドレッシング。
  11. 前記油相の平均粒子径が1μm以上100μm以下であり、かつ、粒度分布の標準偏差が0.1以上0.5以下である請求項1から10いずれか記載のドレッシング。
  12. 前記油相は、互いに異なる組成を有する2種以上の油相で構成される請求項1から11いずれか記載のドレッシング。
  13. 前記ドレッシングのチキソ値が0.1以下である請求項1から12いずれか記載のドレッシング。
  14. 前記ドレッシングの付着力が、荷重15gf以下又は付着距離8mm以下である請求項1から13いずれか記載のドレッシング。
  15. 前記ドレッシングの塩濃度が15%以下且つpHが4以下である請求項1から14いずれか記載のドレッシング。
  16. 水、及び、平均粒子径50nm〜800nmである、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質で形成された閉鎖小胞体、又は糖ポリマー微粒子を含む水溶液と、油脂成分と、を混合する混合工程を有するドレッシングの製造方法。
  17. 水溶性の調味成分及び/又は固形成分を前記水溶液に予め混合させておく第一の方法、水溶性の調味成分及び/又は固形成分を前記混合工程の後に混合させる第二の方法、のいずれかの方法を選択適用する請求項16記載の方法。
  18. 前記糖ポリマーを水中へ分散した後、40℃以下に冷却することで、前記糖ポリマー微粒子を含む水溶液を調製する工程を更に有する請求項16又は17記載の方法。
  19. 前記冷却を、撹拌又はせん断しながら行う請求項18記載の方法。
  20. 前記冷却の後に、撹拌又はせん断を行う請求項18又は19記載の方法。
  21. 前記糖ポリマーを水中へ分散した後、40℃以下に冷却しゲル状態とし、その後、せん断を行い、前記糖ポリマー微粒子を含む水溶液を調製する請求項20記載の方法。
  22. 前記油脂成分として、互いに異なる組成を有する2種以上を用意し、それらを互いに均一に混合された状態ではなく、前記水溶液に混合する請求項16から21いずれか記載の方法。
  23. 前記油相が互いに異なる組成を有する前記O/W型エマルション同士を混合する工程を更に有する請求項16から22いずれか記載の方法。
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