JP2014001712A - ラジアルタービンロータ、及びこれを備えた可変容量ターボチャージャ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、少流量時におけるタービン効率の低下を低減することができるラジアルタービンロータ、及びこれを備えた可変容量ターボチャージャを得ることを目的とする。
【解決手段】ラジアルタービンロータ12は、ロータ軸部16と、複数の動翼40とを備えている。複数の動翼40は、ロータ軸部16から延出すると共に隣り合う翼間に、ロータ軸部16の径方向外側から流入する排気ガスをロータ軸部16の軸方向一方側へ流出させる流路42を形成している。この動翼40は、当該動翼40の上流側を構成する流路減少部40Fを有している。この流路減少部40Fによって流路42の流路断面積が、流入口42Aから排気ガスの流れ方向の下流側へ向うに従って減少している。
【選択図】図1

Description

本発明は、ラジアルタービンロータ、及びこれを備えた可変容量ターボチャージャに関する。
複数の動翼を有するラジアルタービンロータと、ラジアルタービンロータに流入する排気ガス等の流体の流量を調整する可変ノズルベーン機構を備えたラジアルタービンが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。この種のラジアルタービンでは、例えば、エンジンから排出される排気ガスの流量に応じて、可変ノズルベーン機構によりラジアルタービンロータへ供給する排気ガスの流量を増減することにより、タービン効率を向上させている。
特開2003−148101号公報 特開昭59−203808号公報
「自動車用高性能・高信頼性VGターボチャージャの開発」、三菱重工技報、2006、VOL.43、NO.3、P.31−35
ところで、ラジアルタービンロータに供給される流体の流量が少ない少流量時(以下、単に「少流量時」という)には、動翼間に形成された流路の流入口に対する流体の流入角度が大きくなり、流路の上流側において動翼の負圧面側に流体の低速領域が発生する可能性がある。
しかしながら、従来のラジアルタービンロータでは、流路の流路断面積が流入口から下流側へ向うに従って増加している。そのため、前述した少流量時には、流路の上流側において流体の低速領域が拡大し、動翼の負圧面側に渦が発生し易くなる。このような渦が発生すると、圧力損失が増加し、タービン効率が低下する。
本発明は、上記の事実を考慮し、少流量時におけるタービン効率の低下を低減することができるラジアルタービンロータ、及びこれを備えた可変容量ターボチャージャを得ることを目的とする。
請求項1に記載のラジアルタービンロータは、ロータ軸部と、前記ロータ軸部から延出すると共に隣り合う翼間に、前記ロータ軸部の径方向外側から流入する流体を該ロータ軸部の軸方向一方側へ流出させる流路を形成する複数の動翼と、前記動翼の上流側を構成し、前記流路の流入口から流体の流れ方向の下流側へ向うに従って該流路の流路断面積を減少させる流路減少部と、を備えている。
請求項1に係るラジアルタービンロータによれば、動翼の上流側は、流路減少部によって構成されている。この流路減少部によって、隣り合う翼間(動翼間)に形成された流路の流路断面積が流入口から流体の流れ方向の下流側へ向うに従って減少している。これにより、流路の流路断面積が流入口から流体の流れ方向の下流側へ向うに従って増加する場合と比較して、少流量時に、流路の上流側において流路減少部の負圧面側に流体の低速領域が発生し難くなる。この結果、少流量時に、流路の上流側において流路減少部の負圧面側に渦が発生することが抑制される。したがって、少流量時におけるタービン効率の低下が低減される。
請求項2に記載のラジアルタービンロータは、請求項1に記載のラジアルタービンロータにおいて、前記流路減少部の延出方向の基端部の翼厚は、前記流入口から前記流れ方向の下流側へ向うに従って増加し、前記動翼の前記流れ方向の中央部よりも上流側で最大となっている。
請求項2に係るラジアルタービンロータによれば、流路減少部の延出方向の基端部の翼厚は、流入口から流体の流れ方向の下流側へ向うに従って増加し、動翼の前記流れ方向の中央部よりも上流側で最大となっている。つまり、流路減少部の基端部側の流路幅が、流入口から流体の流れ方向の下流側へ向うに従って減少している。これにより、流路の上流側において流路減少部の基端部の負圧面側に流体の低速領域が発生し難くなる。したがって、少流量時におけるタービン効率の低下を効率的に低減することができる。
請求項3に記載のラジアルタービンロータは、請求項1又は請求項2に記載のラジアルタービンロータにおいて、前記動翼は、前記動翼の回転方向を向く負圧面と、該動翼の回転方向と反対側を向く正圧面と、を有し、前記流路減少部の延出方向の基端部における前記負圧面は、前記流れ方向に沿った断面形状が前記回転方向へ凸を成す湾曲面とされている。
請求項3に係るラジアルタービンロータによれば、流路減少部の延出方向の基端部における負圧面は、流れ方向に沿った断面形状が回転方向へ凸を成す湾曲面とされている。これにより、流入口から流入した流体が湾曲面に沿って流れ易くなるため、圧力損失が低減される。この結果、少流量時に、流路の上流側において流路減少部の基端部の負圧面側に流体の低速領域がさらに発生し難くなる。したがって、少流量時におけるタービン効率の低下がさらに低減される。
請求項4に記載のラジアルタービンロータは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のラジアルタービンロータにおいて、前記流路減少部の上流側の端部における前記動翼の回転方向側の縁部が、該回転方向へ凸を成す湾曲部とされている。
請求項4に係るラジアルタービンロータによれば、流路減少部の上流側の端部における動翼の回転方向側の縁部が回転方向へ凸を成す湾曲部とされている。
ここで、ラジアルタービンロータに供給される流体の流量が多い大流量時(以下、単に「大流量時」という)には、流体が流入口に対して動翼の回転方向と反対方向から流入する可能性がある。このように流体が流入口に対して動翼の回転方向と反対方向から流入すると、流体が流路減少部の負圧面に衝突する。そのため、流路の上流側において流路減少部の正圧面側に低速領域が発生し、流体が滞留し易くなる。この結果、流路の上流側において流体が流れる流路断面積(有効流路断面積)が実質的に減少し、タービン効率が低下する可能性がある。
これに対して本発明では、前述したように流路減少部の上流側の端部における動翼の回転方向側の縁部を湾曲部としたことにより、流体が流路減少部の負圧面に衝突した後に湾曲部に沿って流れ易くなる。これにより、大流量時に、流路の上流側において流路減少部の正圧面側に低速領域が発生することが抑制される。この結果、流路の上流側において流路断面積が実質的に減少することが抑制される。したがって、大流量時におけるタービン効率の低下が抑制される。
請求項5に記載の可変容量ターボチャージャは、タービンハウジングと、前記タービンハウジングに回転可能に収容された請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のラジアルタービンロータと、前記タービンハウジングに設けられ、前記ラジアルタービンロータの前記流入口へ流入する流体の流量を増減する可変ノズルベーン機構と、を備えている。
請求項5に係る可変容量ターボチャージャによれば、タービンハウジングに供給される流体の流量に応じて、タービンハウジングに設けられた可変ノズルベーン機構により、ラジアルタービンロータの流入口へ流入する流体の流量を増減することにより、タービン効率の低下が抑制される。
しかも、翼の上流側を流路減少部によって構成したことにより、流路の上流側において動翼の負圧面側に流体の低速領域が発生し難くなる。この結果、流路の上流側において動翼の負圧面側に渦が発生することが抑制される。したがって、少流量時におけるタービン効率の低下が抑制される。
以上説明したように、本発明に係るラジアルタービンロータ、及びこれを備えた可変容量ターボチャージャによれば、少流量時におけるタービン効率の低下を低減することができる。
本発明の第1実施形態に係るラジアルタービンを径方向に沿って切断した断面図である。 図1に示されるラジアルタービンを軸方向から見た正面図である。 (A)は図1に示されるラジアルタービンロータを示す拡大図であり、(B)は図3(A)の3B−3B線断面図である。 (A)は、図3(A)の4A−4A線断面図であり、(B)は比較例における動翼を示す図4(A)に相当する断面図である。 (A)は、図3(A)の5A−5A線断面における動翼のキャンバーラインに沿った翼厚分布であり、(B)は図3(A)の4A−4A線断面における動翼のキャンバーラインに沿った翼厚分布である。 本発明の第1,第2実施形態及び比較例における各流路の流路断面積の変化を示すグラフである。 比較例における動翼の流路内の排気ガスの流れを示す説明図であり、(A)は中流量時の排気ガスの流れを示し、(B)は少流量時の排気ガスの流れを示し、(C)は大流量時の排気ガスの流れを示している。 (A)は、数値解析により求めた本発明の第1実施形態における流路内の流体の流れを示す図4(A)に相当する断面図であり、(B)は、数値解析により求めた比較例における流路内の流体の流れを示す図4(B)に相当する断面図である。 本発明の第1実施形態における動翼の負圧面及び正圧面の圧力分布を示すグラフである。 (A)は、数値解析により求めた本発明の第1実施形態における流路内の流体の流れを示す図4(A)に相当する断面図であり、(B)は、数値解析により求めた比較例における流路内の流体の流れを示す図4(B)に相当する断面図である。 実験から得られた本発明の第1,第2実施形態及び比較例における各動翼のタービン効率を示すグラブである。 本発明の第2実施形態における動翼を示す図4(A)に相当する断面図である。 本発明の第2実施形態における動翼の図5(A)に相当する翼厚分布である。 (A)は、数値解析により求めた本発明の第2実施形態における流路の基端部側の流体の流れを示す図12(A)に相当する断面図であり、(B)は、数値解析により求めた本発明の第1実施形態における流路の基端部側の流体の流れを示す図4(A)に相当する断面図である。 本発明の第2実施形態における動翼の負圧面及び正圧面の圧力分布を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るラジアルタービンロータ、及びこれを備えた可変容量ターボチャージャについて説明する。
先ず、第1実施形態について説明する。
(可変容量ターボチャージャ、ラジアルタービン)
図1には、一実施形態に係る可変容量ターボチャージャ(以下、単に「ターボチャージャ」という)10の一部を構成するラジアルタービン12が示されている。ターボチャージャ10は、例えば、自動車用のエンジンに好適に搭載されるものである。そして、ラジアルタービン12は、流体としての排気ガス(気体)を動力としてターボチャージャ10の一部を構成する図示しないコンプレッサ部を動作させるものである。このラジアルタービン12は、ラジアルタービンロータ14と、タービンハウジング20と、可変ノズルベーン機構30とを備えている。
(ラジアルタービンロータ)
図1に示されるように、ラジアルタービンロータ14は、ロータ軸部16と、複数の動翼40を備えている。ロータ軸部16は、図示しないコンプレッサ部のコンプレッサロータと一体に回転可能に連結されている。複数の動翼40は、ロータ軸部16の回転軸Oを中心としてロータ軸部16の外周面16Aから後述するシュラウド部22の内周面22Aへ向けて放射状に延出している。
(タービンハウジング)
タービンハウジング20は、シュラウド部22を有している。このシュラウド部22の内部には、ラジアルタービンロータ14が回転可能に収容されたタービン室24が形成されている。このタービン室24の上流側には、ロータ軸部16の径方向外側へ向けて開口したタービン室入口24Aが形成されている。一方、タービン室24の下流側には、ロータ軸部16の軸方向一方側(下流側)へ向けて開口したタービン室出口24Bが形成されている。
タービンハウジング20におけるタービン室24の径方向外側には、図示しないエンジンから排気ガスが供給される渦巻状のスクロール通路26が形成されている。さらに、タービンハウジング20には、スクロール通路26とタービン室24とを連通するノズル通路28が形成されており、スクロール通路26に供給された排気ガスがノズル通路28を介してタービン室入口24Aからタービン室24へ流入するように構成されている。
(可変ノズルベーン機構)
可変ノズルベーン機構30は、タービン室入口24Aからタービン室24に流入する排気ガスの流量を調節するものであり、複数のノズルベーン32と、ノズルベーン32を支持する支持部材34とを有している。ノズルベーン32は、ノズル通路28内に配置された羽根状のベーン本体32Aと、支持部材34に対してベーン本体32Aを回転可能に支持する回転軸部32Bとを有している。
図2に示されるように、隣り合うベーン本体32Aの間には、排気ガス(矢印F)が通過するベーン流路36が形成されている。また、回転軸部32Bには、図示しないアクチュエータが連結されている。このアクチュエータによって、例えば、図示しないエンジンの回転数に応じて複数のベーン本体32Aを同時に回転させることにより、複数のベーン流路36が開閉されるように構成されている。これにより、エンジンの回転数、即ち、エンジンから排出される排気ガスの流量に応じて、ノズル通路28からタービン室入口24Aへ流入する排気ガスの流量が増減されるように構成されている。
ここで、ラジアルタービンロータ14の動翼40の構成について詳説する。
(動翼)
図3(A)には、動翼40を回転方向から見た側面が示されており、図3(B)には、動翼40の延出方向に沿った断面(図3(A)の3B−3B線断面)が示されている。なお、図3(A)には、排気ガスの流れ方向が矢印Vで示されている。また、図4(A)には、動翼40の延出方向の基端部40Bにおける排気ガスの流れ方向(以下、「流線方向」ともいう)に沿った断面(図3(A)の4A−4A線断面)が示されている。
図3(A)に示されるように、動翼40の下流側は、回転方向から見てロータ軸部16の軸方向に沿って延びている。一方、動翼40の上流側は、回転方向から見て動翼40の下流側に対してロータ軸部16の径方向外側(矢印D方向)へ湾曲されている。
図3(B)に示されるように、動翼40は、回転方向を向く負圧面40S1と、回転方向と反対側を向く正圧面40S2とを有している。この動翼40の翼厚Tは、ロータ軸部16の外周面16Aから動翼40の延出方向の先端部40Aへ向うに従って減少している。なお、本実施形態では、一例として、負圧面40S1及び正圧面40S2の流線方向から見た断面形状が直線状に形成されているが、二点鎖線で示されるように、動翼40の中心CL側へ凹む曲線状に形成することも可能である。
図4(A)に示されるように、隣り合う一対の動翼40は、その翼間(動翼40間)に流路42を形成している。また、動翼40の上流側の端部(以下、「上流側端部」という)44の間には、ロータ軸部16の径方向外側へ開口した流入口42Aが形成されている。一方、動翼40の下流側の端部(以下、「下流側端部」という)46の間には、ロータ軸部16の軸方向一方側へ開口した流出口42Bが形成されている。これにより、ロータ軸部16の径方向外側から流入口42Aに流入された排気ガスが、流路42に沿って流れ、流出口42Bからロータ軸部16(図1参照)の軸方向一方側へ流出するように構成されている。
また、動翼40は流路減少部40Fを有している。流路減少部40Fは、動翼40の流線方向の中央部に対する上流側を構成しており、この流路減少部40Fによって、流路42の流路断面積が流入口42Aから排気ガスの流れ方向の下流側へ向うに従って減少している。
具体的に説明すると、図5(A)には、動翼40の先端部40A(シュラウド部22の内周面22A側の端部)のキャンバーラインKに沿った翼厚Tの分布が示されている。また、図5(B)には、動翼40の基端部40B(ロータ軸部16側の端部)のキャンバーラインKに沿った翼厚Tの分布が示されている。なお、図4(A)及び図4(B)では、動翼40のキャンバーラインKが、その全長を1.0として無次元化されている。また、図5(A)及び図5(B)には、後述する従来の動翼90の負圧面90S1及び正圧面90S2が点線で示されている。
また、図6には、本実施形態における流路42の流路断面積の変化を示すグラフ70が示されている。なお、図6では、流路42の流路断面積が、その最大値を1.0として無次元化されている。また、グラフ100は、後述する比較例に係る流路92の流路断面積の変化を示しており、グラフ72は、後述する第2実施形態に係る流路52の流路断面積の変化を示している。
図5(A)に示されるように、流路減少部40Fの先端部40Aでは、キャンバーラインKを境に負圧面40S1側の翼厚が正圧面40S2側の翼厚よりも肉厚となっている。なお、流路減少部40Fの先端部40Aでは、点線で示される従来の動翼90と同様に、キャンバーラインKを境に負圧面90S1側と正圧面90S2側との翼厚を同じにしても良い。
一方、図5(B)に示されるように、流路減少部40Fの基端部40Bでは、キャンバーラインKを境に負圧面40S1側の翼厚と正圧面40S2側の翼厚とが同じになっている。また、流路減少部40Fの基端部40Bの翼厚Tは、上流側端部44(流入口42A)から下流側へ向うに従って徐々に増加し、動翼40における排ガスの流れ方向の中央部(S=0.5)よりも上流側で最大となっている。より具体的には、流路減少部40Fの翼厚Tは、キャンバーラインKの無次元長さSが0.2付近で最大となっている。なお、キャンバーラインKの無次元長さSが0.1〜0.4の範囲で流路減少部40Fの翼厚Tを最大にすることも可能である。換言すると、動翼40(流路減少部40F)の翼厚Tは、上流側端部44(流入口42A)から10%〜40%の範囲で最大にすることができる。
このように構成された流路減少部40Fを有する動翼40は、図6に示されるグラフ70のように、流路42の流路断面積が流入口42Aから排気ガスの流れ方向の下流側へ向うに従って減少している。
また、図4(A)に示されるように、流路減少部40Fの上流側端部44における動翼40の回転方向側の縁部は、動翼40の回転方向へ凸を成す湾曲部48とされている。
次に、第1実施形態の作用について説明する。
図1に示されるように、ラジアルタービン12では、スクロール通路26、ノズル通路28を通過し、タービン室入口24Aからタービン室24へ排気ガスが流入される。そして、タービン室24に流入された排気ガスがラジアルタービンロータ14の流入口42Aから流路42内に流入すると、ラジアルタービンロータ14が回転する。このラジアルタービンロータ14の回転に伴って、排気ガスが流路42に沿って流れ、流出口42Bからロータ軸部16の軸方向一方側(下流側)へ流出される。
この際、エンジンの回転数に応じて、即ちエンジンから排出される排気ガスの流量に応じて図示しないアクチュエータが可変ノズルベーン機構30を動作することにより、ノズル通路28からタービン室24へ供給される排気ガスの流量が増減される。具体的には、エンジンの回転数が低回転数のときには、図2に示されるように、図示しないアクチュエータがベーン流路36を閉じる方向にベーン本体32Aを回転させ、タービン室24へ供給される排気ガスの流量を減少させる(少流量時)。一方、エンジンの回転数が高回転数のときには、図示しないアクチュエータがベーン流路36を開く方向にベーン本体32Aを回転させ、タービン室24へ供給される排気ガスの流量を増加させる(大流量時)。
このようにエンジンから排出される排気ガスの流量に応じてタービン室24、即ちラジアルタービンロータ14へ供給される排気ガスの流量を増減することにより、エンジンから排出される排気ガスの流量が変化した場合であってもタービン効率を維持することができる。
ここで、本実施形態の作用を明確にするために、比較例について説明する。
先ず、比較例に係る動翼90の構成について説明する。
比較例に係る動翼90では、図5(B)に示されるように、基端部90Bの翼厚Tが上流側端部(流入口92A)から下流側へ向うに従って増加し、動翼90の流線方向の中央部(S=0.5)よりも下流側(流出口92B側)で最大となっている。具体的には、比較例に係る動翼90の基端部90Bの翼厚Tは、キャンバーラインKの無次元長さSが0.7付近で最大になっている。これにより、図4(B)に示されるように、比較例に係る動翼90では、流路92の上流側において隣り合う基端部90B間の流路幅Lが本実施形態における流路幅Lよりも広くなっている(L<L)。また、比較例に係る動翼90では、図6に示されるグラフ100のように、流路92の流路断面積が流入口92A付近から下流側へ向うに従って増加し、キャンバーラインKの無次元長さSが0.15付近で最大となっている。
次に、比較例に係る動翼90の流路92内の排気ガスの流れについて説明する。
図7(A)〜図7(C)には、比較例に係る動翼90の基端部90Bの流線方向に沿った断面が示されている。なお、図7(A)〜図7(C)には、動翼90の上流側端部94の回転速度ベクトルU、排気ガスの絶対速度ベクトルC、及び排気ガスの相対速度ベクトルWが示されている。
(少流量時)
図7(A)に示されるように、比較例に係る動翼90に所定量(中流量)の排気ガスが供給される場合は、流入口92Aに対する排気ガス(相対速度ベクトルW)の流入角度が小さくなり、排気ガスが流路92に沿って流れ易くなる。一方、図7(B)に示されるように、ベーン流路36の開度を小さくし、動翼90に供給される排気ガスを所定量よりも少なくした場合は、流入口92Aに対する排気ガス(相対速度ベクトルW)の流入角度が大きくなる。このように動翼90に供給される排気ガスの流量が少ない少流量時には、流路92の上流側において動翼90の負圧面90S1側に渦Xが発生し易くなる。
より具体的に説明すると、図8(B)には、数値解析で求めた少流量時における流路92内の基端部90B側の排気ガスの流れが示されている。この図8(B)に示されるように、少流量時には、流入口92Aに対する排気ガスの流入角度が大きくなり、排気ガスが動翼90の正圧面90S2に衝突する。これにより、流路92の上流側において動翼90の負圧面90S1側に排気ガスの低速領域が発生し易くなる。この排気ガスの低速領域では、動翼90の回転に伴う遠心力Pによって排気ガスが流入口92A側へ押し戻される。この結果、排気ガスが逆流すると、渦Xが発生する。特に、比較例に係る動翼90では、図4(B)に示されるように、流路92の上流側において隣り合う基端部90B間の流路幅Lが本実施形態における流路幅L(図4(A)参照)よりも広くなっているため(L<L)、流路92の上流側において排気ガスの低速領域が拡大し、渦Xが発生し易くなる。
このように動翼90の負圧面90S1側に渦Xが発生すると、圧力損失を増加する。また、図9に実線で示されるように、負圧面90S1の圧力が上昇し、正圧面90S2と負圧面90S1との圧力差が小さくなる。この結果、動翼90に発生するトルクが減少し、少流量時におけるタービン効率が低下する。なお、図9に示される点線は、渦Xが発生しない場合の負圧面90S1の圧力分布を示している。
これに対して本実施形態では、動翼40の上流側が流路減少部40Fによって構成されている。この流路減少部40Fの基端部40Bの翼厚Tは、図5(B)に示されるように、流入口42Aから下流側へ向うに従って増加し、動翼40の流線方向の中央部(S=0.5)よりも上流側で最大となっている。これにより、図4(A)に示されるように、隣り合う流路減少部40Fの基端部40B間の流路幅Lが、比較例における流路幅L(図4(B)参照)よりも狭くなっている。この流路減少部40Fによって、図6に示されるグラフ70のように、流路42の流路断面積が流入口42Aから排気ガスの流れ方向の下流側へ向うに従って減少している。
これにより、図8(A)に示されるように、少流量時に、流路42の上流側において流路減少部40Fの基端部40Bの負圧面40S1側に排気ガスの低速領域が発生し難くなる。この結果、少流量時に、流路42の上流側において流路減少部40Fの負圧面40S1側に渦Xが発生することが抑制される。したがって、少流量時におけるタービン効率の低下が低減される。なお、図8(A)には、数値解析で求めた少流量時における流路42内の基端部40B側の排気ガスの流れが示されている。
(大流量時)
次に、比較例に係る動翼90では、大流量時に、流路92内の排気ガスの流れが以下のようになる。即ち、図7(C)に示されるように、ベーン流路36の開度を大きくし、動翼90に供給される排気ガスを所定量よりも多くした場合は、流入口92Aに対して排気ガス(相対速度ベクトルW)が動翼90の回転方向と反対方向から流入する可能性がある。このように動翼90に供給される排気ガスの流量が多い大流量時には、流路92の上流側において動翼90の正圧面90S2側に排気ガスの低速領域が発生し易くなり、渦Xが発生する。
より具体的に説明すると、図10(B)には、数値解析で求めた大流量時における流路92内の基端部90B側の排気ガスの流れが示されている。この図10(B)に示されるように、大流量時には、排気ガスが動翼90の負圧面90S1に衝突する。そのため、流路92の上流側において正圧面90S2側に低速領域Yが発生し易くなる。このような低速領域Yが発生すると、前述した渦X(図7(C)参照)が発生し、圧力損失が増加する。さらに、低速領域Yでは排気ガスが滞留し易く、流路92の上流側において排気ガスが流れる流路断面積(有効流路断面積)が実質的に減少する。この結果、タービン効率と流量が低下する。
これに対して本実施形態では、前述したように流路減少部40Fの上流側端部44の回転方向側の縁部が、回転方向へ凸を成す湾曲部48とされている。これにより、図10(A)に示されるように、大流量時に、排気ガスが流路減少部40Fの負圧面40S1に衝突した後に排気ガスが湾曲部48に沿って流れ易くなる。これにより、圧力損失が低減される。また、流路減少部40Fの正圧面40S2側に低速領域が発生することが抑制される。この結果、流路42の上流側において、渦の発生が抑制されると共に流路断面積が実質的に減少することが抑制される。したがって、大流量時におけるタービン効率と流量の低下が抑制される。
なお、図11には、実験から得られた本実施形態に係る動翼40のタービン効率を示すグラブ80、及び比較例に係る動翼90のタービン効率を示すグラブ102が示されている。この図11に示されるように、本実施形態に係る動翼40では、少流量時(流体の流量Q)及び大流量時(流体の流量Q)におけるタービン効率と流量が比較例に係る動翼90よりも向上していることが分かる。なお、グラフ82は、後述する第2実施形態に係る動翼50のタービン効率である。
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図12には、第2実施形態に係る動翼50の基端部50Bにおける排気ガスの流れ方向に沿った断面が示されている。第2実施形態に係る動翼50は、その上流側に流路減少部50Fを有している。この流路減少部50Fの基端部50Bにおける負圧面50S1は、排気ガスの流れ方向に沿った断面形状が動翼50の回転方向へ凸を成す湾曲面54とされている。これにより、第2実施形態に係る動翼50では、流路52の上流側において隣り合う動翼50の基端部50B間の流路幅Lが第1実施形態における流路幅L(図4(A)参照)よりも狭くなっている(L<L)。
また、図13には、動翼50の基端部50BのキャンバーラインKに沿った翼厚Tの分布が示されている。なお、図13では、動翼50のキャンバーラインKが、その全長を1.0として無次元化されている。また、図13には、従来の動翼90の負圧面90S1及び正圧面90S2が点線で示されている。
前述したように、流路減少部50Fの基端部50Bにおける負圧面50S1は、湾曲面54とされている。この湾曲面54が形成された領域では、キャンバーラインKを境に負圧面50S1側の翼厚が正圧面50S2側の翼厚よりも肉厚になっている。また、流路減少部50Fの翼厚Tは、湾曲面54の頂部(S=0.25付近)で最大となっている。
このように構成された流路減少部50Fを有する動翼50は、前述した図6に示されるグラフ72のように、流路52の流路断面積が流入口52Aから排気ガスの流れ方向の下流側(流出口52B)へ向うに従って減少している。
次に、第2実施形態の作用について説明する。
図14(B)に示されるように、第1実施形態では、動翼40に供給される排ガスの流量が前述した少流量時より少なくなると、流入口42Aに対する排気ガスの流入角度がさらに大きくなる。この場合、第1実施形態に係る動翼40では、流路42の上流側において流路減少部40Fの基端部40Bの負圧面40S1側に渦Xが発生する可能性がある。
これに対して第2実施形態に係る動翼50では、図12に示されるように、流路減少部50Fの基端部50Bにおける負圧面50S1が湾曲面54とされている。そのため、図14(A)に示されるように、前述した少流量時よりも排気ガスの流量が少なくなった場合であっても、流入口52Aから流入した排気ガスが湾曲面54に沿って流れ易くなり、流路52の上流側において湾曲面54側に排気ガスの低速領域が発生し難くなる。したがって、タービン効率の低下が低減される。
また、図15に示されるように、動翼50の負圧面50S1の圧力(実線)が、第1実施形態に係る動翼40の負圧面40S1の圧力(点線)よりも低くなる。この結果、動翼50の正圧面50S2と負圧面50S1との圧力差が第1実施形態の動翼40よりも大きくなる。つまり、動翼50に発生するトルクが、第1実施形態に係る動翼40よりも大きくなる。したがって、第2実施形態に係る動翼50では、第1実施形態に係る動翼40よりもタービン効率を向上させることができる。
なお、図11には、前述したように実験から得られた本実施形態に係る動翼50のタービン効率を示すグラブ82が示されている。この図11に示されるように、第2実施形態に係る動翼50では、少流量時(流体の流量Q)よりも流体の流量が少ない流量時(流体の流量Q)において、第1実施形態に係る動翼40よりもタービン効率が向上していることが分かる。
以上、本発明の第1,第2実施形態について説明したが、本発明はこうした第1,第2実施形態に限定されるものでなく、第1,第2実施形態を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
10 可変容量ターボチャージャ
14 ラジアルタービンロータ
16 ロータ軸部
20 タービンハウジング
30 可変ノズルベーン機構
40 動翼
40B 基端部(動翼の延出方向の基端部)
40F 流路減少部
40S1 負圧面
40S2 正圧面
42 流路
42A 流入口
44 上流側端部(動翼の上流側の端部)
48 湾曲部
50 動翼
50B 基端部(動翼の延出方向の基端部)
50F 流路減少部
50S1 負圧面
50S2 正圧面
52 流路
52A 流入口
54 湾曲面
R 動翼の回転方向

Claims (5)

  1. ロータ軸部と、
    前記ロータ軸部から延出すると共に隣り合う翼間に、前記ロータ軸部の径方向外側から流入する流体を該ロータ軸部の軸方向一方側へ流出させる流路を形成する複数の動翼と、
    前記動翼の上流側を構成し、前記流路の流入口から流体の流れ方向の下流側へ向うに従って該流路の流路断面積を減少させる流路減少部と、
    を備えたラジアルタービンロータ。
  2. 前記流路減少部の延出方向の基端部の翼厚は、前記流入口から前記流れ方向の下流側へ向うに従って増加し、前記動翼の前記流れ方向の中央部よりも上流側で最大となっている、
    請求項1に記載のラジアルタービンロータ。
  3. 前記動翼は、前記動翼の回転方向を向く負圧面と、該動翼の回転方向と反対側を向く正圧面と、を有し、
    前記流路減少部の延出方向の基端部における前記負圧面は、前記流れ方向に沿った断面形状が前記回転方向へ凸を成す湾曲面とされている、
    請求項1又は請求項2に記載のラジアルタービンロータ。
  4. 前記流路減少部の上流側の端部における前記動翼の回転方向側の縁部が、該回転方向へ凸を成す湾曲部とされている、
    請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のラジアルタービンロータ。
  5. タービンハウジングと、
    前記タービンハウジングに回転可能に収容された請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のラジアルタービンロータと、
    前記タービンハウジングに設けられ、前記ラジアルタービンロータの前記流入口へ流入する流体の流量を増減する可変ノズルベーン機構と、
    を備えた可変容量ターボチャージャ。
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