JP2014001433A - 吹付け用半溶融Al系合金の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シリサイド(例えば、Mg2Si)微粒子を、めっき層中に均一に分散させて、加工性と耐食性に優れためっき層を形成するための半溶融Al系合金を提供する。
【解決手段】凝固前のAl系めっき層に吹き付ける半溶融Al系合金を製造する製造方法であって、(i)Alと擬二元共晶を形成するシリサイドを構成する元素を、所定の原子数比で含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶湯を、100℃/秒以上の冷却速度で急冷して、Al相中にシリサイド微粒子が分散して存在するAl系合金を製造し、次いで、(ii)上記Al系合金を、670℃以上、下記式(1)で求まる温度T(℃)未満の温度に加熱して、Al相のみを溶融し、シリサイド微粒子が均一に分散して存在する半溶融Al系合金を製造する。T=α×d+β・・・(1)、T:Al−シリサイド合金の溶融温度(℃)、d:Al−シリサイド合金中のシリサイド微粒子の量(質量%)、α、β:シリサイドの種類で定まる係数
【選択図】図1

Description

本発明は、被めっき材、特に、鋼材の表面に、加工性と耐食性に優れたAl系めっき層を形成するために、凝固前のAl系めっき層に、液滴状態で吹き付ける半溶融Al系合金を製造する方法に関するものである。
Al系めっき鋼材は、高温環境や中性湿潤環境で優れた耐食性を呈するので、建材分野や、自動車分野で、製品素材として幅広く用いられている。Al系めっき鋼材は、乾燥と湿潤が繰り返される一般的な中性腐食環境では、腐食生成物が安定化して、極めて良好な耐食性を呈するが、常に湿潤な環境や、海水等の塩化物イオンが存在する環境では、腐食生成物が安定化せず、十分な耐食性を発現しない。
また、Al系めっき鋼材を塗装して使用する場合、塗膜に傷が生じると、傷周辺の塗膜の下の腐食環境がアルカリ環境となり、この場合にも、腐食生成物が安定化せず、塗膜のブリスターが生じ易くなって、耐食性が劣化する。
さらに、Al系めっき鋼材において、中性腐食環境では、Alの不働態化により、めっき層の耐食性は良好であるが、一方で、地鉄に対する犠牲防食機能が機能しなくなるので、地鉄層が露出した鋼板の切断端面や、めっき層が傷ついて地鉄が露出した部分では、赤錆(鉄層の腐食)が発生するという課題がある。
加えて、Al系めっき鋼板は、めっき層と鋼板の界面に、Al−Fe−Si合金を主成分とする脆い合金層が存在するので、めっき層に、成形加工時、地鉄まで貫通する“めっき割れ”が生じ易いという問題を抱えている。この“めっき割れ”で露出した地鉄は、腐食の際、カソードサイトとして機能するので、めっき層の耐食性は著しく劣化する。
Al系めっき層が有するこれらの課題及び問題を解決するため、溶融めっき浴中に、Mgを添加することが検討されている。例えば、特許文献1及び2には、溶融めっき浴にMgを添加し、Al系めっき層中に、耐食性の向上に寄与するMg2Siを析出させることが開示されている。特許文献3には、溶融めっき浴にCaを添加して、Mg添加によるめっき層外観の悪化を抑制することが開示されている。
Al系めっき層へのMgの添加や、Mg及びCaの添加は、従来のAl系めっき鋼板の耐食性を改善する点で有効であるが、一方で、製造技術上の課題や、めっき品質上の課題を生み出している。
めっき浴中のMg及び/又はCaの量を調整し、めっき層中のMg及び/又はCaの量を最適化して析出させた析出物(Mg2Si)の粒径が、めっき層の層厚に対し大きいと、耐食性向上効果が充分に得られない。
即ち、析出物(Mg2Si)の粒径が小さいほど、耐食性は向上するが、通常、溶融めっきプロセスにおける冷却条件で得られる析出物の大きさは、μmオーダーであり、一方、めっき層厚は、数μmから数10μm程度であるので、析出物は、めっき層中に、不均一な状態で存在することになる。
析出物が、めっき層中に、不均一な分散状態で存在すると、耐食性向上効果の発現が不均一となるばかりでなく、(i)成形加工時、めっき層に“割れ”が発生して、加工部耐食性が低下する、(ii)めっき層の表面に析出物が突出して、外観品位が低下するなどの問題が生じる。
めっき浴におけるMgとSiの含有量を、原子量比で2:1にすると、析出物は、Al−Mg2Si擬共晶系の析出物となり、析出物の微細化が期待できる。しかし、めっき浴には、Si量の二倍の量のMgを添加するので、めっき浴中のMg量が多くなり、めっき浴表面及びめっき浴中に、“Mg主体の酸化物”(Mg系ドロス)が発生する。
Mg系ドロスの発生が顕著であると、該ドロスがめっき層中に巻き込まれて混在することになり、めっき層の外観品位や、各種めっき性能が劣化する。
また、Mg系ドロスの発生が顕著であると、めっき浴中のMgとSiの比率が変動して、共晶系以外の相、例えば、Si相や、Al8Mg5(β相)が析出する。特に、β相は、硬くて脆い相であり、めっき層を脆化させて、成形加工時のめっき層の割れを助長するので、好ましくない。また、β相は、Mg2Siに比較して、耐食性向上効果が小さい。
めっき後の冷却速度を増大すると、析出するMg2Siは微細化する。しかし、従来の溶融めっき浴でのめっきにおいては、めっきから冷却までの工程における技術的制約から、冷却速度に限界があり、めっき直後のめっき層を、限界の50℃/秒程度で急冷しても、析出するMg2Siの粒径は、小さくとも、1μm程度が限界である。
即ち、従来の溶融めっき浴を用いるめっきでは、析出するMg2Siの粒径を、耐食性の安定的な発現に必要な0.9μm以下にすることは不可能である。
さらに、めっき浴中のMgは、めっき層と地鉄の界面近傍に生成するAl−Fe−Si相の中にMg2Siとして析出しない。そのため、Al系めっき鋼材においては、成形加工時のめっき層の“割れ”や“傷み”で、Al−Fe−Si相が露出した時、露出部位の耐食性が問題となる。
ここで、擬二元共晶系について説明する。図1に、Al−Mg−Siの三元状態図を示す。図1において、Al−Fを結ぶ線がAl−Mg2Siの擬二元共晶線である。図1から解るように、Al−Mg2Si擬二元共晶系は、AlとMg2Siの二つの相が共晶組織として析出する系であり、Mg2Siは、MgとSiの原子数比が2:1で、残りがAlのときに生成する。
図1に示す三元状態図において、Al隅から、上記原子数比で線(Al−Fを結ぶ線)を引くと、その線がAl−Mg2Siの擬二元共晶線であり、その上下で、状態図は二分される。上記線より下部では、Al−Si−Mg2Siの三元共晶(D)組織となり、上記線より上部では、Al−Al8Mg5(β相)−Mg2Siの三元共晶(B)となる。
ところで、溶融Zn系めっきの分野においては、めっき浴に、めっき層の加工性及び/又は耐食性を改善する金属間化合物を形成する元素を所要量添加する替わりに、めっき直後のめっき層の表面に、別途製造した金属間化合物の粒子を、直接、吹き付けて、又は、溶射して、めっき層の加工性及び/又は耐食性を改善する方法が知られている(特許文献4〜6、参照)。
金属間化合物の粒径は小さいほど好ましいところ、別途製造する金属間化合物の細粒化には限界(50μm)があり、さらに、上記方法では、微粒子はそのままめっき層にとどまるので、不均一な組成のめっきになってしまう。
溶融Zn系めっきに係る上記手法を、溶融Al系めっきに、直ちに適用することはできないが、かりに、適用しても、めっき層全体の加工性及び/又は耐食性を顕著に改善することはできないし、逆に、金属間化合物の粒子がめっき層の表層近傍に滞留することに起因する弊害(成形加工時のめっき層の割れ、めっき層の外観品位の低下等)を助長することになる。
特開2000−239820号公報 特開2000−328216号公報 特開2001−73108号公報 特開2002−285312号公報 特開2004−107695号公報 特開2006−283188号公報
従来技術の課題及び問題を踏まえ、本発明は、被めっき材、特に、鋼材に、成形加工後も劣化しない、優れた耐食性を備え、さらに、優れた溶接性、プレス加工性、及び、塗装後の均一外観性を備える溶融Al系めっき層を形成することを前提課題とする。
Al系めっき層中に、耐食性向上作用をなす金属間化合物(例えば、シリサイド)を、微細化して均一に分散させることが、上記課題を解決する一つの手法であるが、これまで、上記化合物の微細化、及び、均一分散は実現していないし、また、解決手法の示唆もない。
そこで、本発明は、具体的には、耐食性向上作用をなす金属間化合物を微細化して、めっき層中に均一に分散させることを課題とし、該課題を解決する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した結果、次のことが判明した。
(i)粒径0.9μm以下の、Alとシリサイド化合物との共晶を形成するシリサイド微粒子を含む半溶融Al系合金を微粒化し、液滴状態で、凝固前の溶融Al系めっき層に吹き付けると、該めっき層中に、シリサイド微粒子を均一に分散して存在させることができる。その結果、
(ii)溶融Al系めっき層の美麗な外観を損なうことなく、加工性、種々の環境下での耐食性、及び、成形加工後の耐食性を著しく高めることができる。
本発明は、上記知見(i)を実現する、粒径0.9μm以下の、Alとシリサイド化合物との共晶を形成するシリサイド微粒子を含む吹付け用半溶融Al系合金の製造方法であって、その要旨は、以下の通りである。
(1)凝固前のAl系めっき層に吹き付ける半溶融Al系合金を製造する製造方法であって、
(i)Alと擬二元共晶を形成するシリサイドを構成する元素を、所定の原子数比で含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶湯を、100℃/秒以上の冷却速度で急冷して、Al相中にシリサイド微粒子が分散して存在するAl系合金を製造し、次いで、
(ii)上記Al系合金を、670℃以上、下記式(1)で求まる温度T(℃)未満の温度に加熱して、Al相のみを溶融し、シリサイド微粒子が均一に分散して存在する半溶融Al系合金を製造する
ことを特徴とする吹付け用半溶融Al系合金の製造方法。
T=α×d+β ・・・(1)
T:Al−シリサイド合金の溶融温度(℃)
d:Al−シリサイド合金中のシリサイド微粒子の量(質量%)
α:シリサイドの種類で定まる係数
β:シリサイドの種類で定まる定数
(2)前記シリサイド微粒子の粒径が0.9μm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の吹付け用半溶融Al系合金の製造方法。
(3)前記シリサイドがMg2Siであり、前記式(1)が、下記式(2)であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の吹付け用半溶融Al系合金の製造方法。
T=8.5×d+484 ・・・(2)
T:Al−Mg2Si合金の溶融温度(℃)
d:Al−Mg2Si合金中のMg2Si微粒子の量(質量%)
(4)前記吹付けに際し、前記溶融Al系合金を、ガスアトマイズ法又は溶射法で、細粒化して液滴状態にすることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の吹付け用半溶融Al系合金の製造方法。
本発明によれば、耐食性向上作用をなす金属間化合物を、溶融Al系めっき層中に均一に分散させることができる半溶融Al系合金を提供することができる。そして、本発明の半溶融Al系合金を、凝固前のAl系めっき層に吹き付けることにより、成形加工後の耐食性、溶接性、プレス加工性、及び、塗装後の均一外観性等が顕著に優れたAl系めっき層を形成することができる。
Al−Si−Mg系三元状態図である。
本発明は、凝固前のAl系めっき層に吹き付ける半溶融Al系合金を、次の手順で製造することを特徴とする。
(i)Alと擬二元共晶を形成するシリサイドの構成元素を、所定の原子数比で、かつ、シリサイド換算で、22質量%以上含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶湯を、100℃/秒以上の冷却速度で急冷して、Al相中にシリサイド微粒子が分散して存在するAl系合金を製造する。
(ii)上記Al系合金を、670℃以上、下記式(1)で求まる温度T(℃)未満の温度に加熱して、Al相のみを溶融し、シリサイド微粒子が均一に分散して存在する半溶融Al系合金を製造する。
T=α×d+β ・・・(1)
T:Al−シリサイド合金の溶融温度(℃)
d:Al−シリサイド合金中のシリサイド微粒子の量(質量%)
α:シリサイドの種類で定まる係数
β:シリサイドの種類で定まる定数
上記手順を、Mg2Siを例にして説明する。
上記(i)の工程においては、MgとSiを、原子数比2:1±0.1で、かつ、Mg2Si換算で22質量%以上含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶湯を、100℃/秒以上の冷却速度で急冷して、Al相中に粒径0.9μm以下のMg2Si微粒子が分散して存在するAl系合金を製造する。
上記(ii)の工程においては、上記Al系合金を、670℃以上、下記式(2)で求まる温度T(℃)未満の温度に加熱して、Al相のみを溶融し、粒径0.9μm以下のMg2Si微粒子が分散して存在する半溶融Al系合金を製造する。
T=8.5×d+484 ・・・(2)
T:Al−Mg2Si合金の溶融温度(℃)
d:Al−Mg2Si合金中のMg2Si微粒子の量(質量%)
Al相中に粒径0.9μm以下のMg2Si微粒子が分散して存在するAl系合金(Al−Mg2Si合金)を製造するためには、合金の成分組成と、それに応じた最適な熱処理を組み合わせることが必要である。
まず、MgとSiを、原子数比2:1±0.1で、Mg2Si換算で22質量%以上含み、残部がAlと不可避的不純物からなるAl−Mg−Si溶湯(Al系溶湯)を製造する。
MgとSiの原子数比は、完全に、2:1でなくてよい。Mg2Siが主な生成物として析出する成分組成(2:1の近傍組成)であればよい。
Mgの比率が大きいと、Al−Mg2Si−Mg5Al8の三元共晶物が生成して、耐食性向上作用が弱くなり、一方、Siの比率が大きいと、Al−Mg2Si−Siの三元共晶物が析出して、耐食性向上作用が弱くなるので、MgとSiの原子数比は、2:1±0.1が好ましい。より好ましくは、2:1±0.05である。
MgとSiの合計量は、Mg2Si換算で、22質量%以上が好ましい。この合計量が、Mg2Si換算で、22質量%未満であると、Al−Mg2Siの融点が、Alの融点よりも低くなり、後工程での再加熱−溶融のとき、Al相のみを溶融することができない。
MgとSiの合計量の上限は、溶融めっき浴の安定性の観点から、60質量%程度である。60質量%程度を超えると、MgとSiの酸化が激しくなり、Al系溶湯を安定して維持することができないし、また、Al系溶湯の急冷凝固後、酸化物が凝固相に混在して、所要の耐食性向上効果が得られない。
MgとSiを、原子数比2:1±0.1(好ましくは、2:1±0.05)で、かつ、Mg2Si換算で22質量%以上含むAl系溶湯を、急冷する。この急冷により、Al相中に、粒径0.9μm以下のMg2Si微粒子を均一に分散して存在させることができる。
急冷は、100℃/秒以上の冷却速度で行うことが好ましい。冷却速度が、100℃/秒未満であると、冷却途中で、Mg2Siが成長し、粒径0.9μm超のMg2Si微粒子が生成する。なお、析出するMg2Si微粒子の形状は、冷却態様により変化し、完全な球形にはならない。
上記溶湯の急冷は、溶融金属を急冷してアモルファス製造する公知の装置を用いて行えばよい。なお、上記装置としては、単ロール急冷装置、双ロール急冷装置、ガスアトマイズ急冷装置、銅厚板圧着急冷装置などがある。
Mg2Siは微細であるほど好ましいが、成形加工後のめっき層の耐食性に大きく影響を及ぼすのは、最大粒の長径方向の寸法であるので、微粒子の粒径として、最大粒の長径を採用する。
溶融めっき層中のMg2Si微粒子の粒径が0.9μmを超えると、溶融めっき層の塗装性、加工性、及び、耐食性が劣化するので、凝固前のAl系めっき層に吹き付ける半溶融Al系合金中のMg2Si微粒子の粒径は0.9μm以下とする。
溶融めっき層中の微粒子の粒径が0.9μmを超えると、電着塗装時に、電流集中によるスパーク状欠陥(通称“ブツ”)が、微粒子突起部で生じ易く、スパーク状欠陥が生じると、塗装性が劣化する。
通常、コイルコーティングラインで形成する塗膜の膜厚は20μm程度であるが、粒径が0.9μmを超える微粒子が存在すると、塗装後に、突起状の欠陥が生じ易くなる。突起状の欠陥があると、折曲げ加工や、プレス加工のとき、該欠陥に応力が集中して、めっき層が割れたり、剥離したりする。
硬くて脆いMg2Siが大きいと、鋼材の折曲げ加工等でめっき層に伸縮応力が加わったとき、Mg2Siに応力が集中し、Mg2Siが、めっき層の割れや剥離の起点となる。即ち、めっき層中に、粒径が0.9μmを超えるMg2Si粒子が存在すると、めっき層の加工性が低下する。
Mg2Siは、優れた腐食抑制剤として作用するが、粒径が大きくなると、不均一な分布となり、腐食抑制作用が及ばない部位が生じて、不均一な腐食が生じるようになる。即ち、めっき層中に、粒径が0.9μmを超えるMg2Si粒子が存在すると、めっき層の耐食性が低下する。
塗装時や成形加工時に生じる上記現象は、めっき材の品質を著しく下げ、めっき材を使用に値しないものとするので、上記現象が生じないよう、溶融めっき層中の微粒子の粒径は0.9μm以下とする必要がある。そのため、液滴状態で、凝固前のAlめっき層に吹き付ける半溶融Al系合金中のMg2Si微粒子の粒径は0.9μm以下とする。
なお、溶融Al系めっき層は、粒径0.9μm以下のMg2Si微粒子を、0.01〜10質量%含有することが好ましい。Mg2Si微粒子は、めっき層の耐食性を著しく高める作用をなすが、0.01質量%未満では、所要の耐食性向上作用が得られない。顕著な耐食性向上作用を確保するには、2質量%以上が好ましい。一方、溶融Al系めっき層が、Mg2Si微粒子を10質量%超えて含有しても、耐食性向上作用は飽和するだけである。
次いで、粒径0.9μm以下のMg2Si微粒子が分散して存在するAl系合金を、670℃以上で、下記式(2)で求まる温度T(℃)未満の温度に加熱して、Al相のみを溶融する。この加熱・溶融で、粒径0.9μm以下のMg2Siが均一に分散して存在する半溶融Al系合金を得ることができる。
T=8.5×d+484 ・・・(2)
ここで、Tは、Al−Mg2Si合金の溶融温度(℃)、dは、Al−Mg2Si合金中のMg2Si量(質量%)である。即ち、T(℃)は、Al−Mg2Si擬二元共晶系合金の融点である。dは、22〜60質量%、好ましくは、30〜55質量%である。
なお、8.5は、Mg2Siの含有率の増大に従い、Al−Mg2Si合金の溶融温度が上昇する程度を示す係数であり、484は、Mg2Siが22質量%の時の融点を得るための定数である。
上記Al系合金を加熱する温度が670℃未満であると、Al相が溶融せず、所望の半溶融Al系合金を得ることができないので、加熱温度は670℃以上とする。好ましくは、680℃以上である。
一方、加熱温度が、上記式(2)で求まる温度T(℃)以上であると、Mg2Siが溶解して、再度、急冷凝固させたとき、粒径が0.9μmを超えるMg2Siが生成する。粒径0.9μm以下のMg2Siと、粒径0.9μm超のMg2Siが混在すると、顕著な耐食性向上効果を得ることができないので、加熱温度は、上記式(2)で求まる温度T(℃)未満とする。
上記一連の工程により、粒径0.9μm以下のMg2Si微粒子が均一に分散して存在する半溶融Al系合金を製造することができる。
本発明の一利用態様では、粒径0.9μm以下のシリサイド微粒子が分散して存在する半溶融Al系合金を微粒化して、液滴状態で、凝固前の溶融Al系めっき層に吹き付ける。溶融めっき層は、Al相、Al−Fe相、Si相、及び、Al−Fe−Si合金相から形成されていて、液滴の成分Alは、溶融Al系めっき層に溶け込んで、Al相、Al−Fe相や、Al−Fe−Si合金相を形成する。液滴中に分散して存在する粒径0.9μm以下のシリサイド微粒子は、その粒径を増大することなく、そのまま、溶融Al系めっき層中に均一に分散する。
上記液滴の粒径は、特に、限定されないが、Al相の迅速な溶け込みや、シリサイド微粒子の迅速な分散態様を考慮すれば、1μm〜0.1mmが好ましい。
なお、シリサイド微粒子を含む溶融Al系合金を微粒化して液滴状態で吹き付ける方法としては、例えば、高温ガスを用いた高温ガスアトマイズ法、その他のアトマイズ法、又は、各種の溶射方法を適用することができる。
なお、溶融Alめっきを施す基材は、溶融Alめっきを施すことができる基材であればよく、鋼材に限られない。また、鋼材は、特定の鋼種に限定されるものではない。軟鋼、高張力鋼、Ni及び/又はCr含有鋼、及び、ステンレス鋼等を、めっき基材として使用することができる。また、めっき基材の形態についても、特に限定されるものではない。薄板材、線材、厚板材、管材、又は、これらを加工した構造材の溶融Al系めっきにも、本発明を適用することができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
表1に示す成分組成のAl−Mg−Si溶湯を、100℃/秒以上の冷却速度で急冷した。急冷は、単ロールアモルファス金属箔測定装置(真壁技研(株)、アモルファス薄帯製造装置VF−RQT)を用いて行った。冷却速度は100、000℃/秒程度で、得られた箔の厚さは約200μm程度であった。
また、数10〜数100mlの上記溶湯を柄杓で汲み取り、厚さ50mmで500mm角の銅板上に滴下して急冷した。冷却速度は100℃/秒以上であった。汲み取って滴下する量を変えることで、冷却速度を、70〜10000℃/秒の範囲で制御した。得られた箔の厚さは500μm程度であった。
溶融Al系めっきは、実験室の切板めっき装置を用いて行った。この装置は、鋼板の溶融めっきを行う装置であり、雰囲気制御が可能な加熱炉と溶融めっきポット、高温ガスアトマイジング吹付けスプレーが、縦位置に連結されて構成されている。
鋼板は、縦200mm、横100mmに切断し、予め、鋼板表面の防錆油をアルカリ脱脂液で除去した。次に、加熱炉に入れ、10体積%水素−窒素ガス雰囲気で、800℃で10分加熱した後、650℃まで冷却し、次いで、溶融めっき浴に浸漬した。
Siを5〜15質量%含むAl系溶融めっき浴を、680℃に加熱し、鋼板を2秒間浸漬した。鋼板を引き上げた後、窒素ガスを、ワイピングノズルより、鋼板表面に吹き付けて、めっき付着量を調整した。
その後、二流体スプレーノズル式の高温ガスアトマイジング装置で、Al−Mg2Si溶湯を吹き付けた。Al−Mg2Si溶湯は、Mg2Si含有率に応じて、670℃から式(2)の温度未満の範囲内の温度に加熱し、その温度と同程度の温度に加熱した窒素ガスをスプレーノズルに供給し、Al−Mg2Si溶湯を、鋼板表面に噴霧した。
付着量の調整は、溶湯の供給速度と噴霧時間を調整して行った。その後、窒素ガスを吹き付けて冷却した。
得られためっき鋼板については、加工性と加工後の耐食性を評価した。結果を、表1及び表2(表1の続き)に示す。
Figure 2014001433
Figure 2014001433
加工性は、めっき鋼板を50mm幅×100mmに切り出し、180度曲げ(曲率1T)を行って、折曲げ部の凸部側に発生しためっき層のクラックを、光学顕微鏡で観察して評価した。クラックが10本以上発生した場合は×、クラックが1〜9本発生した場合は○、クラックが発生しない場合は◎とした。×は不合格とし、それ以外は合格とした。
加工後の耐食性は、めっき鋼板を70mm幅×150mmに切り出し、8mm押出しのエリクセン加工を2箇所施したものと、エリクセン加工を施さない平板の二種類について、複合環境サイクル試験(JIS Z2371号の塩水噴霧試験、2時間、乾燥(60℃、相対湿度30%)を4時間、湿潤(50℃、相対湿度95%)を2時間)を200サイクル行い、めっき層の腐食減量で評価した。
めっき層の腐食減量を、平板とエリクセン加工板で比較したときに、両者に差がないと◎、エリクセン加工材の腐食減量が0〜5%多いと○、5%より大きいと×とした。×は不合格とし、それ以外は合格とした。
めっき層中のMg2Siの粒径(長径)は、めっき鋼材の断面を切り出し、樹脂に埋め込んで研磨し、SEM−EDXで計測した。Mg2Siは、めっき層中でランダムな方向で分散しているので、視野中での最大径を測定し、それを長径とみなした。
また、めっき層中に存在する相や、Mg2Siの存在する相は、同じく、樹脂に埋め込んだ研磨材を、SEM−EDXで元素濃度比を求めて、相構造を同定した。
表1において、No.1〜30の実施例においては、加工性、及び、耐食性のいずれもが合格であった。一方、No.31〜39の比較例においては、加工性や耐食性が劣り、不合格であった。
表1〜2に示すように、本発明で製造した溶融Al系合金を、凝固前の溶融Al系めっき層に、細粒化して液滴状態で吹付けると、加工性と加工後の耐食性の両者に優れためっき層を得ることができる。そして、上記めっき層を備える鋼材は、加工性と加工後の耐食性の両者に優れためっき鋼材であり、自動車、家電、家電製品、産業機械等の工業製品に、広く適用することが可能なものである。
前述したように、本発明によれば、耐食性向上作用をなす金属間化合物を、Al系めっき層中に均一に分散させることができる溶融Al系合金を提供することができる。そして、本発明の溶融Al系合金を、液滴状態で、凝固前のAl系めっき層に吹き付けることにより、成形加工後の耐食性、溶接性、プレス加工性、及び、塗装後の均一外観性等が顕著に優れためっき層を形成することができる。よって、本発明は、めっき鋼材製造産業及びめっき鋼材利用産業において利用可能性が高いものである。

Claims (4)

  1. 凝固前のAl系めっき層に吹き付ける半溶融Al系合金を製造する製造方法であって、
    (i)Alと擬二元共晶を形成するシリサイドを構成する元素を、所定の原子数比で含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶湯を、100℃/秒以上の冷却速度で急冷して、Al相中にシリサイド微粒子が分散して存在するAl系合金を製造し、次いで、
    (ii)上記Al系合金を、670℃以上、下記式(1)で求まる温度T(℃)未満の温度に加熱して、Al相のみを溶融し、シリサイド微粒子が均一に分散して存在する半溶融Al系合金を製造する
    ことを特徴とする吹付け用半溶融Al系合金の製造方法。
    T=α×d+β ・・・(1)
    T:Al−シリサイド合金の溶融温度(℃)
    d:Al−シリサイド合金中のシリサイド微粒子の量(質量%)
    α:シリサイドの種類で定まる係数
    β:シリサイドの種類で定まる定数
  2. 前記シリサイド微粒子の粒径が0.9μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の吹付け用半溶融Al系合金の製造方法。
  3. 前記シリサイドがMg2Siであり、前記式(1)が、下記式(2)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吹付け用半溶融Al系合金の製造方法。
    T=8.5×d+484 ・・・(2)
    T:Al−Mg2Si合金の溶融温度(℃)
    d:Al−Mg2Si合金中のMg2Si微粒子の量(質量%)
  4. 前記吹付けに際し、前記溶融Al系合金を、ガスアトマイズ法又は溶射法で、細粒化して液滴状態にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吹付け用半溶融Al系合金の製造方法。
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