JP2013536248A - 多発性嚢胞腎を処置するためのレセプタータイプキナーゼの調節因子の使用 - Google Patents

多発性嚢胞腎を処置するためのレセプタータイプキナーゼの調節因子の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、哺乳動物(例えば、ヒトもしくはネコ科の動物(例えば、ペルシャ猫))における多発性嚢胞腎(PKD)を処置するための医薬を調製するための、下記の式(I)の化合物の治療上有効な量の使用を包含する。また、PKDを処置するための上記化合物および上記化合物を含む組成物が提供される。本発明は、多発性嚢胞腎(PKD)の進行において活性なキナーゼの特有の群をダウンレギュレートするキナーゼインヒビター化合物の使用、およびPKDを処置するための方法に関する。

Description

(関連出願への相互参照)
本出願は、2010年8月26日に出願された米国仮出願第61/377,211号の優先権の利益を主張し、上記米国仮出願の内容は、その全容が参考として本明細書に援用される。
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、細胞活動(例えば、増殖、分化およびプログラムされた細胞死)に影響を及ぼすための複数のプロテインキナーゼ酵素の活性を調節するための化合物に関する。具体的には、本発明は、上記で言及されるとおりの細胞活動における変化に関連するキナーゼ酵素のセットおよびレセプターシグナル伝達経路を阻害、調整および/もしくは調節するキナゾリン、これら化合物を含む組成物、ならびにこれら化合物を使用して、キナーゼ依存性疾患および状態を処置するための方法に関する。さらにより具体的には、本発明は、多発性嚢胞腎(PKD)の進行において活性なキナーゼの特有の群をダウンレギュレートするキナーゼインヒビター化合物の使用、およびPKDを処置するための方法に関する。
(関連技術の要約)
標的化治療の開発は、初期には、がんにおける細胞増殖に必須の選択されたキナーゼ酵素を特異的に標的とし得る薬物の検索に焦点を当てていた。選択性についての検索をする目的は、毒性を試験して制限することであった。このアプローチは、一般に、失敗に終わった。なぜなら、既知の540ものキナーゼの活性キナーゼドメインの「重なり」および相同性に起因して、単一のキナーゼ標的阻害を達成することが困難であったからである。第2に、集中した標的化は、経路における任意の単一の点での阻害を回避し得る細胞の選択を生じることが、次第に明らかになってきた。現在の考え方は、単一もしくは複数の経路において複数の部位を標的とすることに傾いている。この見解は、腫瘍学における経験から学んだものであり、他の疾患にも適用され得る(以下に概説されるとおり)。
プロテインキナーゼは、タンパク質(特に、タンパク質のチロシン、セリンおよびスレオニン残基のヒドロキシ基)のリン酸化を触媒する酵素である。この表面上単純な活性の結果は、細胞分化および増殖の時間をずらし、影響を及ぼすことである。様々な形で、細胞生命の実質的に全ての局面は、プロテインキナーゼ活性に依存している。さらに、異常なプロテインキナーゼ活性は、比較的生命を脅かすものではない疾患(例えば、乾癬)から極めて悪性の疾患(例えば、神経膠芽腫(脳のがん))までの範囲に及ぶ多くの障害に関連していた。
プロテインキナーゼは、レセプタータイプもしくは非レセプタータイプとして分類され得る。レセプタータイプのチロシンキナーゼは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを有する一方で、非レセプタータイプのチロシンキナーゼは、全体として細胞内にある。
レセプタータイプのチロシンキナーゼは、多様な生物学的活性を有する多くの膜貫通レセプターから構成される。実際に、レセプタータイプのチロシンキナーゼの約20個の異なるサブファミリーが、既に同定されている。1つのチロシンキナーゼサブファミリーは、HERサブファミリーと称され、EGFR(HER1)、HER2、HER3、およびHER4から構成される。これまで同定されたレセプターのこのサブファミリーのリガンドは、上皮増殖因子、TGF−α、アンフィレグリン、HB−EGF、ベータセルリンおよびヘレグリンを含む。これらレセプタータイプのチロシンキナーゼの別のサブファミリーは、インスリンサブファミリーであり、これは、INS−R、IGF−IR、およびIR−Rを含む。PDGFサブファミリーは、PDGF−αレセプターおよびβレセプター、CSFIR、c−kitならびにFLK−IIを含む。さらには、FLKファミリーがあり、これは、キナーゼ挿入ドメインレセプター(KDR)、fetal liver kinase−1(FLK−1)、fetal liver kinase−4(FLK−4)およびfms様チロシンキナーゼ−1(flt−1)から構成される。上記PDGFおよびFLKファミリーは、通常、上記2つの群の類似性に起因して、一緒に考えられる。上記レセプタータイプのチロシンキナーゼの詳細な考察については、非特許文献1(これは、全ての目的のために本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
チロシンキナーゼの上記非レセプタータイプも、多くのサブファミリーから構成され、上記サブファミリーとしては、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack、およびLIMKが挙げられる。これらサブファミリーの各々は、種々のレセプターへとさらに細分化される。例えば、上記Srcサブファミリーは、最も大きなもののうちの1つであり、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、Fgr、およびYrkを含む。酵素の上記Srcサブファミリーは、腫瘍形成に関連していた。チロシンキナーゼの上記非レセプタータイプのより詳細な考察については、非特許文献2(これは、全ての目的のために本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
プロテインキナーゼ酵素活性の誤調整(deregulation)は、変化した細胞特性(例えば、がんと関連する、制御されない細胞増殖)をもたらし得る。腫瘍学的徴候に加えて、変化したキナーゼシグナル伝達は、多くの他の病的疾患に関連する。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:免疫学的障害、心血管疾患、炎症性疾患、および変性性疾患。従って、レセプターおよび非レセプターのプロテインキナーゼはともに、低分子創薬の魅力的な標的である。
キナーゼ調節の治療的使用に関する1つの特に魅力的なゴールは、腫瘍学的徴候に関する。例えば、がんの処置のためのプロテインキナーゼ活性の調節は、慢性骨髄性白血病(CML)および消化管間質がん(GIST)の処置についてのグリベック(登録商標)(イマチニブメシレート)(East Hanover,NJのNovartis Pharmaceutical Corporationによって製造)のFDA承認をもって首尾良く実証された。グリベックは、c−KitおよびAblキナーゼインヒビターである。
細胞増殖および脈管形成(腫瘍増殖および生存に必要とされる2つの重要な細胞プロセス(非特許文献3))の調節(特に、阻害)は、低分子薬物の開発にとって魅力的なゴールである。抗脈管形成治療は、調節不全の血管新生と関連した固形腫瘍および他の疾患(虚血性冠動脈疾患、糖尿病性網膜症、乾癬および関節リウマチが挙げられる)の処置のための潜在的に重要なアプローチを代表する。また、抗細胞増殖剤は、腫瘍の増殖を遅らせるかもしくは停止させるために望ましい。
EGF、VEGFおよびエフリンシグナル伝達の阻害は、細胞増殖および脈管形成(腫瘍増殖および生存に必要とされる2つの重要な細胞プロセスである)を妨げる(非特許文献3)。VEGFレセプターは、低分子阻害の標的であると以前に記載されている。
上記Ephレセプターは、レセプターチロシンキナーゼの最も大きなファミリーを構成し、それらの配列相同性に基づいて、2つの群EphAおよびEphBに分けられている。上記Ephレセプターのリガンドは、エフリンであり、これは、膜に固定されている。エフリンAリガンドは、EphAレセプターに優先的に結合する一方で、エフリンBリガンドは、EphBレセプターに結合する。Ephレセプターへのエフリンの結合は、レセプター自己リン酸化を引き起こし、代表的には、細胞間相互作用を必要とする。なぜなら、レセプターおよびリガンドはともに、膜に結合されているからである。
Ephレセプターの過剰発現は、種々の腫瘍における増大した細胞増殖と関連した(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。Ephレセプターチロシンキナーゼのファミリーおよびそれらのエフリンリガンドは、胚発生中の種々のプロセスにおいて、ならびに病的な脈管形成および潜在的には転移においても重要な役割を果たす。従って、Ephレセプターキナーゼ活性の調節は、異常な細胞増殖(例えば、上記に記載されるもの)と関連する疾患状態を処置もしくは予防するための手段を提供するはずである。
上皮増殖因子レセプター(EGFR、HER1、erbB1)は、細胞の成長、増殖、およびアポトーシスを制御する原形質膜レセプターチロシンキナーゼのファミリーの一部である。EGFRのリガンドは、上皮増殖因子であり、上記EGFRシグナル伝達経路の誤調整は、腫瘍形成およびがん進行に影響を及ぼし、従って、これを新規な抗がん処置の臨床的に関連する標的にする(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。
EGFRは、種々のヒトがんにおいて、特に、非小細胞肺がんおよび神経膠芽腫において過剰発現される。これらがんにおいて、EGFR過剰発現は、一般に、進行した疾患および不良な予後に関連する(非特許文献10)。
「多発性嚢胞腎」(PKD)とは、両側性腎嚢胞の発生を生じ、最終的に腎不全をもたらす単一遺伝子による障害の群に言及する。PKDは、全ての生命を脅かす遺伝子疾患の中で最も一般的であり、全世界で12〜1500万人の人々が罹患している。PKDには2つの主要な形態がある:常染色体劣性(ARPKD)および常染色体優性(ADPKD)。ARPKDは、しばしば、1ヶ月齢での顕著な死亡数を引き起こす、上記疾患の頻度の低い遺伝形態である。ARPKDは、PKHD1遺伝子における変異によって引き起こされる一方で、ADPKDは、PKD1遺伝子もしくはPKD2遺伝子いずれかにおける変異によって引き起こされる(よって、これら形態は、1型もしくは2型のADPKDといわれる)。これら単一変異は、尿細管細胞がそれらの二次元極性(器官内の位置)を維持し、それらの増殖を制御する能力において劇的な変化を生じる。ADPKDは、最も一般的な遺伝性の遺伝子疾患である。各個体は、彼らの非キャリアの親から受け継いだ1つの正常な対立遺伝子を有するので、その優性の変異遺伝子は、上記正常な対立遺伝子が失われるかもしくは不活性化されるまで、その効果を発現させない。従って、いくらかの患者は、子供の頃に症状を発症させるが、大部分は、上記正常な対立遺伝子がいつ失われるかに依存して、40歳までに症候性になる。PKDと関連する臨床的知見に関連する生化学的機構は、カルシウムイオンチャネルにおける異常に関連すると考えられている。
上記のように、PKDは、腎臓構造体の変化、変形したネフロンおよび腎不全をもたらす、多嚢胞の両側性の形成および増殖によって特徴付けられる。ADPKDにおいて、嚢胞は、尿細管細胞の増殖が、正常の管の流動の閉塞をもたらす場合に形成される。上記嚢胞の内側の裏張りを形成する尿細管細胞は、それらの正常の分泌機能を保持し、上記嚢胞を多くのレセプターリガンド(シグナル伝達タンパク質)(例えば、TGF−αおよびEGF)を含む流体で満たす(Wilson SJ et al 2006 Biochim Biophys Acta Jul;1762(7):647−55)。上記嚢胞が拡大するにつれて、上記腎臓は、後期ステージ疾患において20〜30ポンド程度へと拡大する。
ADPKD患者におけるヒトの臨床症状としては、腹痛および側腹部痛(上記嚢胞が拡大するにつれて)、高血圧症、肝嚢胞、血尿、感染および最終的には腎不全が挙げられる。PKDの進行を妨げるための具体的処置は、利用可能ではない(Grantham JJ 2008 NEJM 359:1477−1485)。
同様に、PKDは、全世界でペルシャ猫のうちの約38%が罹患しており、このことから、最も顕著なネコ科の動物の遺伝性疾患になっている(Young AE et al 2005 Mammalian Genome 16:59−65)。これはヒト疾患によく似ており、PKD1遺伝子における変異の後に続くものである。
Plowman et al., DN&P 1994 7(6):334−339 Bolen, Oncogene, (1993) 8:2025−2031 Matter A., Drug Disc Technol 2001 6:1005−1024 Zhou R, Pharmacol Ther. 1998 77:151−181 Kiyokawa E, Takai S, Tanaka M et al, Cancer Res 1994 54:3645−3650 Takai N Miyazaki T, Fujisawa K, Nasu K および Miyakawa., Oncology Reports 2001 8:567−573 Drevs J et al, Curr Drug Targets 2003 4, 113−121 Ciardiello F および Tortora G., Clin. Cancer Res. 2001 7:2958−2970 Thomas M., Semin Onc. Nurs. 2002 18:20−27 Baselga J et al, Semin. Oncol. 1999 26:78−83
(発明の要旨)
多くのストラテジーが、PKDを処置することについて提唱されてきたが、ほとんど適用されていない。本発明者らは、本明細書において、少なくとも4種のキナーゼ(3種のレセプターチロシンキナーゼ(HER1、HER2、およびVEGFR)および1種の細胞質チロシンキナーゼ(SRC))を阻害することに基づく処置モダリティーを提唱する。本発明者らの提唱は、PKDの進行の有効な阻害を達成するために、4種全てのキナーゼを標的とする必要性を強調する。
従って、一局面において、本発明は、PKDを本明細書に開示される化合物および組成物で処置するための方法に関する。
別の局面において、本発明は、PKDを処置するための医薬の製造のための本明細書に開示される化合物もしくは組成物の使用を包含する。
別の局面において、本発明は、PKDの処置における使用のための化合物および組成物を包含する。
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、以下でより詳細に記載される。
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、XL−647(PRIM−001およびKD019としても公知)および関連化合物(これらは、米国特許第7,576,074号(その全体において本明細書に参考として援用される)に記載される)は、以下で記載されるように、PKDに影響を及ぼすEGFRシグナル伝達カスケードの重要なエレメント、およびVEGF−Rを標的とすることにおいて特有であると認識した。従って、本発明者らは、このような化合物は、単一の化合物においてPKDの処置のために必要な阻害全てを提供すると認識した。各標的に対するXL−647活性の有効性は、例えば、腫瘍学臨床研究において使用されるものより低い用量を予測することによる。XL−647は、上記単一の標的化薬剤単独の各々より毒性が低く、組み合わせにおいて使用されるそれら薬剤より明らかに毒性が低い。従って、PKDにおけるXL−647の使用は、重要な標的に対して広い範囲の活性を提供し、腎臓における低下したVEGF−R活性および潜在的に改善された安全性プロフィールの利益を付加する。
PKDにおける上皮増殖因子レセプター(EGFR)の役割の以前の記載は、Du および Wilsonによって示され(Grantham JJ 2008 NEJM 359:1477−1485; Wilson PD et al 1993 Eur J Cell Biol Jun;61(1):131−8; Du J および Wilson PD 1995 Am J Physiol Cell Physiol 269: C487−C495)、SweeneyおよびAvnerによって拡げられた(Sweeney WE および Avner ED 1998 Am J Physiol 275:387−394)。細胞株を、bpkマウス(ARPKDのマウスモデル)およびImmortoマウスの交雑繁殖によって得た(Sweeney WE et al 2001 Am J Physiol Cell Physiol 281:1695−1705)。これら動物は、拡大した嚢胞腎および胆管拡張を発症し、腎不全および肝臓異常を生じた。嚢胞細胞株は、インビトロで樹立され、それら頂端面へのEGFRの誤った局在化を示した。これはインビトロで確認され、Wilson および Duによって実証された(Wilson PD et al 1993 Eur J Cell Biol Jun;61(1):131−8; Du J および Wilson PD 1995 Am J Physiol Cell Physiol 269: C487−C495)。彼らはまた、PKDの尿細管細胞増殖におけるTGF−αおよびEGFの役割を示した。さらに、ヒト嚢胞液は、EGFおよびTGF−αを含むことが示された(Wilson SJ et al 2006 Biochim Biophys Acta Jul;1762(7):647−55; Klinger R et al 1992 Am J Kidney Dis 19(1):22−30)。EGFRのこの誤った局在化は、さらなるマウスモデル、ならびにARPKDおよびADPKDにおけるヒト組織の両方で確認された(Wilson PD et al 1993 Eur J Cell Biol Jun;61(1):131−8; Du J および Wilson PD 1995 Am J Physiol Cell Physiol 269: C487−C495; Avner ED および Sweeney WE 1995 Pediatr Res 37:359A; Orellana SA et al 1995 Kidney Int 47:490−499; Richards WG et al 1998 J Clin Invest 101:935−939)。Pugh et al (Pugh JL et al 1995 Kidney Int 47:774−781)は、PKDにおいて上昇したEGFRチロシンキナーゼ活性をさらに示した。最後に、ハイポモルフEGFR対立遺伝子(waved−2)を、orpk(Oak Ridge Polycystic Kidney)マウス変異を有する嚢胞マウスに交雑したところ、EGFR活性および嚢胞形成が顕著に低下した(Richards WG et al 1998 J Clin Invest 101:935−939)。その後の研究から、細胞発生性疾患(cytogenic disease)を促進することにおけるEGFRリガンドの潜在的役割が示された。EGFおよびTGF−αはともに、インビトロで嚢胞生成性(cystogenic)である(Pugh JL et al 1995 Kidney Int 47:774−781; Avner ED および Sweeney WE 1990 Pediatr Nephrol 4:372−377; Neufield TK et al 1992 Kidney Int 41:1222−1236)。嚢胞腎は、増大したEGF−α RNA発現を有し、PKDマウスおよびラットモデルからの腎嚢胞液は、有糸分裂濃度における複数のEGFペプチドを含んだ(Lowden DA et al 1994 J Lab Clin Med 124, 386−394)。
変異PKD遺伝子がEGFR異常を生じる正確な機構が、十分に特徴付けられていない間、PKDの齧歯類モデルにおける嚢胞発生に対するEGFR阻害の効果を評価することは、必然であった。Sweeney et. al.(Sweeney WE et al 2000 Kidney Int 57:33−40)は、上記EGFRキナーゼインヒビター(EKI−785)でのbpkマウスの処置がPKDの進行を妨げることにおいて有効であることを示した。EKI−785において維持された動物は、長期間生存したが、上記薬物を除去した場合には進行した(Sweeney et al 2000 Kidney Int 57:33−40)。この知見は、2種の異なるEGFRインヒビターを使用して確認された。
PKDにおけるEGFRの役割の証拠は、EGFRリガンド放出の阻害がまた、PKDを改善し得るという証明によってさらに裏付けられた。TACE(TNF−α変換酵素)インヒビターでのbpkマウスの処置は、腎臓の大きさにおける劇的な縮小および動物の生存の増大を生じた(Dell KM et al 2001 Kidney Int 60:1240−1248)。TACEは、メタロプロテイナーゼ酵素ファミリーのメンバーであり、その機能は、プレプロペプチドをプロセシングして、上記活性ペプチドの切断を可能にする。PKDにおいて、上記TACE酵素であるADAM−17の阻害は、TGF−αの放出を低下させ、EGFR活性化の低下を生じた。
Wilson et. al.によるその後の分析(Wilson SJ et al 2006 Biochim Biophys Acta Jul;1762(7):647−55)は、EGFR複合体の誤った局在化の一部としてHER−2の役割をさらに示した。いくつかの動物モデルにおいて、HER−2は、尿細管細胞増殖を誘導する優性EGFRであるようである。上記PCKラットは、特定のHER−2インヒビター(2つが試験された)が、PKDの発症を予防することにおいて有効であるようなモデルである。あるものは、ヘテロダイマーならびにHER−1およびHER−2が、疾患進行における主要な要因であると主張する(Wilson SJ et al 2006 Biochim Biophys Acta Jul;1762(7):647−55)。従って、二機能性HER−1/HER−2キナーゼインヒビターは、処置において有効である可能性が高い。
EGFR活性化は、DNA転写因子およびタンパク質生成に最終的に影響を及ぼす事象のカスケードを生じる。EGFRからのシグナル伝達事象における重要なエレメントのうちの1つは、上記細胞質酵素SRCによって媒介される。上記EGFRキナーゼドメインの阻害が、疾患進行を阻害する場合、上記シグナル伝達経路のメンバー(例えば、SRC)を阻害することによって、同じ結果が起こり得るということは、論理にかなっている。SRCは、少なくとも2つのシグナル伝達経路(MER/ERKおよびPKA/bRAF)における複数の工程に影響を及ぼすことによって作用するので、標的として選択された。さらに、SRCは、EGFR活性を促進し、下流の標的のEGFRリン酸化を増強することが公知である(Browman PA et al 2004 Oncogene 23:7957−68; Roskoski R 2005 Biochem Biophys Res Commun 331:1−14)。SRCはまた、細胞膜におけるMMPの活性化を刺激し、リガンド放出を増強する。上記SRCインヒビターであるSKI−606でのbpkマウスもしくはPCKラットの処置は、上記HER−1依存性およびHER−2依存性両方の齧歯類モデルにおいて腎嚢胞形成および胆管異常を改善した(Roskoski R 2005 Biochem Biophys Res Commun 331:1−14)。SRC阻害はまた、上昇したcAMPの低下と相関する(Roskoski R 2005 Biochem Biophys Res Commun 331:1−14)。
VEGFは、創傷治癒および腫瘍形成の間に脈管形成において主要な役割を果たす。VEGFリガンドは、低酸素症、およびHIF1−αの生成に応じて生じる。VEGFは、PKD嚢胞液に存在し、機構的破壊によって生じた低酸素症および嚢胞によって引き起こされた血管制限(vascular restriction)に対する応答であると考えられる。VEGR−1およびVEGR−2は、腎臓内皮細胞に存在し、VEGF経路の活性化が、腫瘍に関して提唱されたものに類似の様式において新血管形成を促進することによって嚢胞増殖を促進すると仮定される。従って、VEGFRの阻害は、脈管増殖を妨げ、腎嚢胞拡大を低下させる。
HER−1、HER−2もしくはSRCに対して活性な個々のキナーゼインヒビター(Wilson SJ et al 2006 Biochim Biophys Acta Jul;1762(7):647−55; Lowden DA et al 1994 J. Lab. Clin. Med. 124, 386−394; Swenney WE et al 2008 J Am Soc Nephrol 19: 1331−1341)は、PKDの齧歯類モデルにおいて活性であることが示された。本発明は、薬剤の組み合わせが、臨床的により有効であり、より低用量であるという見解に基づく。組み合わせ治療の使用は、腫瘍学における先例を有し、ここでは単一の薬剤はほとんど使用されない。実際に、この原理は、PKDモデルにおける実験(ここで本発明者らは、EGFRインヒビター(EKB−569)およびTACEインヒビターの組み合わせで動物を処置した)によって立証された。上記EGFRインヒビターは、嚢胞形成を低下させ、かつ正常な腎機能を維持することにおいて有効であった一方;TACEインヒビターの添加は、より高用量でのEKB−569単独でのものと等しい効果を達成しながら、EKB−569用量の67%の低下を可能にした(Sweeney WE et al 2003 Kidney Int 64:1310−1319)。
理論上は、組み合わせ治療は、HER−1、HER−2、SRCおよびVEGF−Rを個々に標的とする薬物を単純に合わせることによって使用され得るが、これは、実施上の複雑さおよび商業的制約に起因して、実際には起こる可能性は低い。さらに、キナーゼ活性の範囲は極めて広く、増大した毒性リスクを生じる。例えば、ラパチニブ(Lapatanib)とスニチニブとの組み合わせは、ERB−1、ERB−2およびVEGF−Rに影響を及ぼすのみならず、ERK−1、ERK−2、AKT、Cyclin−D、PDGFR、cKITおよびFLT−3をも標的とする(しかしSRCに影響を及ぼすことはない)。この組み合わせにダサチニブ(Dastinib)を加えると、SRCだけでなく、ABLにも影響を及ぼし、cKITおよびPDGFRの過度な阻害によって潜在的に毒性を増大させる。さらに、これら組み合わせ研究の臨床試験は、過度に複雑であり、いかなる合理的期間においても達成可能ではなかったようである。例えば、各薬物は、異なるPK/PD特徴を有し、毒性が重なり得るので、投与スケジュールを複雑にし得る。最後に、異なる製造業者の3種もしくは4種の薬剤を組み合わせるコストは、ひどく高くなり得る。
本発明者らは、XL−647および関連化合物が、HER−1、HER−2、SRCおよびVEGF−Rを標的とし得、従って、組み合わせ治療の必要性を回避し得、組み合わせ治療と関連した複雑さを克服し得ることを発見した。
従って、一局面において、本発明は、PKDを、XL−647もしくは関連化合物およびその薬学的に受容可能な組成物で処置するための方法に関する。このような薬学的に受容可能な組成物は、XL−647もしくは関連化合物、ならびに薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、および/もしくは賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、上記キャリアは、水である。他の実施形態において、上記キャリアは、水以外である。
本発明の方法は、治療上有効な量のXL−647もしくは関連化合物(もしくはその薬学的に受容可能な塩)を、PKDを有する哺乳動物に投与する工程を包含する。一実施形態において、XL−647もしくは関連化合物は、薬学的に受容可能な組成物の形態にある。いくつかの実施形態において、上記哺乳動物は、ヒトである。他の実施形態において、上記哺乳動物は、ネコ科の動物(例えば、ペルシャ猫)である。
別の局面において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒトもしくはネコ科の動物(特に、ペルシャ猫))におけるPKDを処置するための医薬の製造のための、本明細書に開示される化合物もしくは組成物の使用を包含する。
別の局面において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒトもしくはネコ科の動物(特に、ペルシャ猫))におけるPKDを処置することにおける使用のための化合物および組成物を包含する。
XL−647は、N−(3,4−ジクロロ−2−フルオロフェニル)−7−({[(3aR,5r,6aS)−2−メチルオクタヒドロシクロペンタ[c]ピロール−5−イル]メチル}オキシ)−6−(メチルオキシ)キナゾリン−4−アミン:
である。上記XL−647は、米国特許第7,576,074号(実施例14を参照のこと)に記載される方法に従って合成され得る。
上記に示されかつ本明細書で使用される場合、関連化合物は、式Iの米国特許第7,576,074号におけるもの:
またはその薬学的に受容可能な塩、水和物、もしくはプロドラッグであり、ここで
は、1〜3個のR50置換基で必要に応じて置換されたC−Cアルキルであり;
は、−H、ハロゲン、トリハロメチル、−CN、−NH、−NO、−OR、−N(R)R、−S(O)0−2、−SON(R)R、−CO、−C(=O)N(R)R、−N(R)SO、−N(R)C(=O)R、−N(R)CO、−C(=O)R、必要に応じて置換された低級アルキル、必要に応じて置換された低級アルケニル、および必要に応じて置換された低級アルキニルから選択され;
は、−HもしくはRであり;
は、必要に応じて置換された低級アルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換された低級アリールアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクリル、および必要に応じて置換された低級ヘテロシクリルアルキルから選択されるか;または
およびRは、これらが結合される共通する窒素と一緒になった場合、必要に応じて置換された5〜7員のヘテロシクリルを形成し、上記必要に応じて置換された5〜7員のヘテロシクリルは、必要に応じて、N、O、S、およびPから選択される少なくとも1個のさらなるヘテロ原子を含み;
qは、0〜5であり;
Zは、−OCH−、−O−、−S(O)0−2−、−N(R)CH−、および−NR−から選択され;
は、−Hもしくは必要に応じて置換された低級アルキルであり;
は、−H、R50によって必要に応じて置換されたC−Cアルキル−L−L−、G(CH0−3−、またはR53(R54)N(CH0−3−であり;ここでGは、1個もしくは2個の環構成ヘテロ原子を含み、かつ1〜3個のR50置換基で必要に応じて置換された、飽和5〜7員のヘテロシクリルであり;Lは、−C=O−もしくは−SO−であり;Lは、直接結合、−O−、もしくは−NH−であり;そしてR53およびR54は、独立して、1〜3個のR50置換基で必要に応じて置換されたC−Cアルキルであり;
は、環1個あたり1個、2個もしくは3個の環構成ヘテロ原子を必要に応じて含み、かつ0〜4個のR50置換基で必要に応じて置換された、飽和または一不飽和もしくは多不飽和のC−C14単環式もしくは縮合した多環式ヒドロカルビルであり;そして
は、−NR−、−O−であるか、もしくは存在せず;
は、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−であるか、もしくは存在せず;
は、−Hもしくは必要に応じて置換された低級アルキルであり;
50は、−H、ハロ、トリハロメチル、−OR、−N(R)R、−S(O)0−2、−SON(R)R、−CO、−C(=O)N(R)R、−C(=NR25)N(R)R、−C(=NR25)R、−N(R)SO、−N(R)C(O)R、−NCO、−C(=O)R、必要に応じて置換されたアルコキシ、必要に応じて置換された低級アルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換された低級アリールアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクリル、および必要に応じて置換された低級ヘテロシクリルアルキルであり;あるいは
50のうちの2個は、同じ炭素原子上で一緒になった場合、オキソであり;あるいは
50のうちの2個は、これらが結合される共通する炭素と一緒になった場合、必要に応じて置換された3〜7員のスピロシクリルを形成し、上記必要に応じて置換された3〜7員のスピロシクリルは、N、O、S、およびPから選択される少なくとも1個のさらなるヘテロ原子を必要に応じて含み;そして
25は、−H、−CN、−NO、−OR、−S(O)0−2、−CO、必要に応じて置換された低級アルキル、必要に応じて置換された低級アルケニル、および必要に応じて置換された低級アルキニルから選択され、
そして米国特許第7,576,074号に開示される亜属および種を含む。
XL−647は、重要なマウスモデル(ARPKDのBPKモデル)において有効な治療剤である。上記ARPKDのBPKモデルは、マウスおよびヒトのADPKDにおいて認められるEGFRの同じ位置の変化を保持する。このモデルは、従って、PKD(ARPKDおよびADPKDの両方)におけるEGFR異常性に影響を及ぼすための一般的手段として広く受け入れられている。上記BPKモデルは、BALB/cマウスの近親交配コロニーにおいて自然発生的変異として生じた。ホモ接合性bpkマウスは、かなり拡大した腎臓を生じ、平均して生後24日齢(PN−24)において腎不全で死亡する。無処置の罹患動物の平均死亡齢は、25日であり、21〜29日の範囲である。さらなる腎臓での発現としては、胆管増殖および管拡張が挙げられる。上記疾患の劣性の性質が原因で、野生型+/+およびヘテロ接合型bpk/+マウスは、表現型として正常である。これら研究において使用される主な測定量は、腎臓重量 対 体重比(KW/BW)の比較である。この比は、PKD治療の効力の正確な評価であることを一貫して示した。さらなる測定量としては、腎機能(BUN、クレアチニンおよびMUCA)の評価ならびに腎臓サイズおよび集合管−嚢胞指数(CT−CI)の組織学的評価が挙げられる。
以下に記載されるbpkマウスモデルにおいて、XL−647処置は、無処置動物と比較して、上記腎臓重量 対 体重比を、7.5mg/kg q.o.d.については21.5%、15.0mg/kg q.o.d.については36.7%、および15.0mg/kg q.dについては41.19%低下させた。これらの比は、単一の薬剤での実験において認められたものに匹敵するかもしくはより優れている(「Src Inhibition ameliorates Polycystic Kidney Disease」, J Am Soc Nephrol 19: 2008, pp. 1331−1341; 「Treatment of PKD with a novel tyrosine kinase inhibitor」, Kidney International, Vol. 57, 2000, pp. 33−40)。XL−647処置は、腎臓重量を7.5mg/kg q.d.で21.8%、および15mg/kg q.dで40.3%低下させた。さらに、BUNは、42%および60.5%低下し、クレアチニンは、8.3%および25%低下し、そしてMUCAは、20.1%および66.2%改善した(それぞれ、7.5mg/kg q.d.および15mg/kg q.d.に関して)。上記CT−CI指数は、それぞれ、25%および45.8%低下した。これら知見は、XL−647が、PKDの進行を妨げるための有効な手段であることを示す。
同様に、XL−647は、齧歯類モデル(PCKラットモデル)において有効な治療である。XL−647での処置は、腎臓重量を、7.5mg/kg q.d.で13.4%、および15mg/kg q.d.で26.0%低下させた。このことは、上記処置したPCK(疾患)ラットにおけるKW/BW比の用量依存性低下と対応した。CT−CIは、7.5mg/kg q.d.および15mg/kg q.d.についてそれぞれ、19.6%および35.7%低下した。上記BUNレベルは、7.5mg/kg q.d.で19.2%、および15mg/kg q.d.で28.8%低下した。
純粋形態もしくは適切な薬学的組成物での、XL−647もしくは関連化合物、もしくはそれらの薬学的に受容可能な塩の投与は、受け入れられた投与様式もしくは類似の有用性を供するための作用因子のうちのいずれかを介して行われ得る。従って、投与は、固体、半固体、凍結乾燥粉末、もしくは液体投与形態の形態(例えば、錠剤、坐剤、丸剤、軟質弾性および硬質のゼラチンカプセル剤、散剤、液剤、懸濁物、もしくはエアロゾルなど)において、好ましくは、正確な投与量の単純な投与に適した単位投与形態において、例えば、経口、鼻に、非経口(静脈内、筋肉内、もしくは皮下)、局所に、経皮、膣内に、嚢内に、大槽内に、もしくは直腸に、であり得る。
上記組成物は、従来の薬学的キャリアもしくは賦形剤、および活性薬剤として本発明の化合物を含み、さらに、他の医療用薬剤、薬学的薬剤、キャリア、補助物質などを含む。本発明の組成物は、がんに関して処置されている患者に一般に投与される抗がん剤もしくは他の薬剤との組み合わせにおいて使用され得る。補助物質としては、保存剤、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤、香料、乳化剤、および分散剤が挙げられる。微生物活動の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)によって確実にされ得る。等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を含むこともまた、望ましいことであり得る。注射用の薬学的形態の長期間吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によってもたらされ得る。
所望されれば、本発明の薬学的組成物はまた、少量の補助物質(例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化剤、抗酸化剤など(例えば、クエン酸、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、ブチル化ヒドロキシトルエンなど))を含み得る。
非経口的注射に適した組成物は、生理学的に受容可能な滅菌水性溶液もしくは非水性溶液、分散物、懸濁物もしくはエマルジョン、および滅菌注射用溶液もしくは分散物への再構成のための滅菌散剤を含み得る。適切な水性および非水性のキャリア、希釈剤、溶媒もしくはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、これらの適切な混合物、植物性油(例えば、オリーブ油)および注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性が、例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用によって、分散物の場合には必要とされる粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。
1つの好ましい投与経路は、処置されるべき疾患状態の重篤度に従って調節され得る、便利な1日投与レジメンを使用する、経口である。
経口投与のための固体投与形態としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。このような固体投与形態において、上記活性化合物は、少なくとも1種の不活性な慣例的賦形剤(もしくはキャリア)、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、または(a)充填剤もしくは増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、(b)結合剤(例えば、セルロース誘導体、デンプン、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシアガム)、(c)保湿剤(例えば、グリセロール)、(d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ポテトもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、複合ケイ酸塩(complex silicate)、および炭酸ナトリウム)、(e)溶液リターダー(solution retarder)(例えば、パラフィン)、(f)吸収促進剤(例えば、4級アンモニウム化合物)、(g)湿潤剤(例えば、セチルアルコール、およびグリセロールモノステアレート、ステアリン酸マグネシウムなど)、(h)吸着剤(例えば、カオリンおよびベントナイト)、ならびに(i)潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、もしくはこれらの混合物)と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、上記投与形態はまた、緩衝化剤を含み得る。
上記に記載される固体投与形態は、コーティングおよび外殻(例えば、腸溶性コーティングおよび当該分野で周知の他のもの)とともに調製され得る。それらは、調節剤(pacifying agent)を含み得、また、遅延した様式で腸管の特定の部分において上記活性化合物を放出するような組成物であり得る。使用され得る埋め込まれる組成物の例は、ポリマー物質およびワックスである。上記活性化合物はまた、上記の賦形剤のうちの1種以上で微小被包された形態(適切な場合)にあり得る。
経口投与のための液体投与形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、液剤、懸濁物、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。このような投与形態は、例えば、本発明の化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩、および選択肢的な薬学的補助物質をキャリア(例えば、水、食塩水、デキストロース水性溶液、グリセロール、エタノールなど);可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド);油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油および胡麻油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル);またはこれら物質の混合物などに溶解、分散等させて、それによって、溶液もしくは懸濁物を形成することによって調製される。
懸濁物は、上記活性化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、もしくはこれら物質の混合物などを含み得る。
直腸投与のための組成物は、例えば、坐剤であり、これは、本発明の化合物と、例えば、適切な非刺激性賦形剤もしくはキャリア、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコールもしくは坐剤用ワックス(これらは、通常の温度では固体であるが、体温では液体であるので、適切な体腔においては融解し、その中で上記活性化合物を放出する)とを混合することによって調製され得る。
本発明の化合物の局所投与のための投与形態としては、軟膏剤、散剤、スプレー、および吸入薬が挙げられる。上記活性成分は、滅菌条件下で、生理学的に受容可能なキャリアおよび任意の保存剤、緩衝化剤、もしくは高圧ガス(必要であり得る場合には)と混合される。眼用処方物、眼用軟膏剤、散剤、および液剤はまた、本発明の範囲内にあると企図される。
一般に、意図された投与形態に依存して、上記薬学的に受容可能な組成物は、約1重量%〜約99重量%の本発明の化合物、もしくはその薬学的に受容可能な塩、および99重量%〜1重量%の適切な薬学的賦形剤を含む。一例において、上記組成物は、約5重量%〜約75重量%の本発明の化合物、もしくはその薬学的に受容可能な塩であり、残りは、適切な薬学的賦形剤である。
このような投与形態を調製するための実際の方法は当業者に公知であるか、または当業者に明らかである;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., (Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990)を参照のこと。投与されるべき上記組成物は、いずれにしても、本発明の教示に従って、疾患状態の処置のために、治療上有効な量の本発明の化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩を含む。
本発明の化合物、もしくはそれらの薬学的に受容可能な塩は、種々の要因に依存して変動する治療上有効な量において投与される。上記要因としては、使用される特定の化合物の活性、上記化合物の代謝的安定性および作用時間の長さ、年齢、体重、全身的な健康状態、性別、食事、投与様式および投与時間、排出速度、薬物の組み合わせ、特定の疾患の状態の重篤度、ならびに宿主が受けている治療が挙げられる。本発明の化合物は、約0.1〜約1,000mg/日の範囲の投与レベルにおいて患者に投与され得る。約70kgの体重を有する通常の成人については、約0.01〜約100mg/kg 体重/日の範囲の投与量が、一例である。しかし、使用される特定の投与量は、変動し得る。例えば、上記投与量は、上記患者の要件、処置される状態の重篤度、および使用される化合物の薬理学的活性を含む多くの要因に依存し得る。特定の患者のための最適投与量の決定は、当業者に周知である。
例示的なインビトロおよびインビボのプロトコルは、Gendreau SB, Ventura R, Keast P, et al., Inhibition of the T790M Gatekeeper Mutant of the Epidermal Growth Factor Receptor by EXEL−7647, Clin Cancer Res 3713, 13(12) (2007)(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)において見いだされ得る。
(化合物調製)
インビトロアッセイに関して、XL−647の10mmol/L ストック溶液を、DMSO中に調製し、最適なアッセイ緩衝液もしくは培養培地で希釈した。最終DMSOアッセイ濃度は、0.3%(v/v)を超えないようにした。インビボ研究に関しては、XL−647を、乾燥粉末(HCl塩もしくはトシレート塩のいずれか)を滅菌濾過した(0.45μm;Nalge Nunc International)食塩水(0.9% USP, Baxter Corp.)中もしくは滅菌水(Baxter)中に溶解することによって、経口投与用に処方した。全ての化合物をボルテックスすることによって混合し、ウォーターバス中で超音波処理して、大きな粒子を壊した。全ての投与溶液/懸濁物を、毎日用事調製した。
(実施例1:ARPKDのBPKモデル)
ARPKDを処置することにおけるXL−647の効力を、ARPKDのBPKモデルを使用して試験した。bpkマウスは、BALB/cバックグラウンドを有し、マウスおよびヒトのADPKDにおいて認められるEGFR遺伝子において同じ変異を含む。これら動物は、Medical College of Wisconsinの飼育施設において飼育した。全ての動物実験を、実験動物の管理および使用に関するNIH指針ならびにMedical College of Wisconsinの動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の方針に従って行った。
生後7日目(PN−7)に開始して、ホモ接合性(疾患)およびヘテロ接合性を含む、証明済のbpkヘテロ接合体ブリーダーの同腹仔全体、ならびに野生型の動物に、XL−647を注射し、7.5mg/kgもしくは15mg/kgにおいて隔日で投与したか、または15mg/kgで毎日投与した。動物を、PN−7からPN−21まで処置し、疾患の程度について評価した。bpk+/+動物の正体は、非常に拡大した腎臓の存在によって剖検で容易に決定され得る。PN−21に、上記研究を終了し、動物を屠殺した。各動物の質量を決定した。各動物から両側の腎臓を摘出し、秤量した。腎臓重量 対 体重比(KW/BW)を、以下の式によって決定した:KW/BW=[両側の腎臓質量]/[動物の質量]。
さらに、腎嚢胞指数(CI)を計算した。近位尿細管(PT)に特異的なレクチン(lotus tetragonolobus[LTA])および集合管(CT)に特異的なレクチン(Dolichos biflorus agglutins[DBA])を染色し、0〜5のスケールで嚢胞拡張の重篤度を評価するために使用した。腎機能を、心臓穿刺を介してBUNおよびクレアチニンレベルを得ることによって評価した。MUCAを、12時間にわたって動物を水なしで飼育した後に測定した。
表1に示される結果は、XL−647が、処置したbpkマウスにおいて、21.8%(7.5mg/kg q.d.:1.61±0.23)および40.3%(15mg/kg q.d.:1.28±0.09)腎臓重量を有意に低下させたことを実証する。KW/BWは、処置により21.5%(7.5mg/kg q.d.:15.34±1.26)および36.7%(15mg/kg q.d.)低下した。低下した腎臓サイズはまた、7.5mg/kg q.d.および15mg/kg q.d.において、それぞれ、処置したbpkマウスにおけるCT−CIの25%および45.8%低下を反映する。
XL647処置bpkマウスに対するbpkビヒクル処置マウスのp値:*p<0.05;**p<0.001。
表2の結果は、XL−647での処置が、腎機能を有意に改善することを示す。BUNレベルは、7.5mg/kg q.d.で42.0%、および15mg/kg q.d.で60.5%低下し、そしてクレアチニンレベルは、それぞれ、8.3%および25%低下した。XL−647で処置したbpkマウスにおけるMUCA測定値の改善は、それぞれ、20.1%および66.2%であった。ウェスタンブロット分析は、XL−647の有効性を確認するために使用した。
疾患XL647処置マウスに対する疾患ビヒクル処置マウスについてのp値:*p<0.05;**p<0.001。
(実施例2:PCKモデル)
XL−647を、PCKラットモデル(ARPKDのオルソログモデル)において使用して、ErbB2を阻害することにおけるその効力を決定した。上記PCKラットの表現型は、よりゆっくりとした疾患進行およびよりゆっくりとした腎機能低下を有するという点で、ヒトの表現型とは異なる。上記PCKラットは、藤田保健衛生大学のSprague−Dawleyラットの変異コロニーに由来したものであり、Medical College of Wisconsinにおいて飼育した。全ての動物実験を、実験動物の管理および使用に関するNIH指針ならびにMedical College of Wisconsinの動物実験委員会の方針に従って行った。
PN30からPN 90まで、PCK(疾患)ラットに、XL−647を胃管栄養法によって7.5mg/kg/q.d.および15mg/kg/q.d.において与えた。PN90における最後の注射の2時間後に、上記ラットを屠殺し、腎臓および肝臓を取り出して、秤量した。剖検測定は、KW/BW比、ならびに皮質、髄質、および腎乳頭からの腎臓切片を使用した嚢胞指数(CI)を含んだ。次いで、CT−CIを、PN0からPN135まで15日間隔で腎臓嚢胞サイズに基づいた嚢胞指数から決定した。腎機能を、心臓穿刺から、BUNおよびクレアチニンレベルから評価した。
表3は、XL−647で処置したPCKラットが、KW/BW比における有意な低下と、13.4%(7.5mg/kg q.d.:5.77±0.47)および26.0%(15mg/kg q.d.:4.93±0.42)の腎臓重量における対応する低下を示したことを示す。腎臓サイズが低下することによって、CT嚢胞が低下する。表3は、XL−647での処置が、CT−CIを、7.5mg/kg q.d.および15mg/kg q.d.に関して、それぞれ、19.6%および35.7%低下させることを示す。
*PCKラットに対するSDラットのビヒクル処置についてのp値:p<0.001;**PRIM−001処置PCKラットに対するビヒクル処置PCKラットについてのp値:p<0.05;***PRIM−001処置PCKラットに対するビヒクル処置PCKラットについてのp値:p<0.001。
表4は、腎機能の測定値を示す。処置を受けたPCKラットは、19.2%(7.5mg/kg q.d.:27.50±3.74)および28.8%(15mg/kg q.d.:24.25±4.3)低下したBUNレベルを有した。ウェスタンブロット分析を使用して、XL−647の効力を確認および検証した。
疾患XL647処置マウスに対する疾患ビヒクル処置マウスについてのp値:*p<0.05;**p<0.001。
(実施例3:XL−647の阻害に関するインビトロ生化学アッセイ)
いくつかのキナーゼ(EGFR、ErbB2/HER2、およびKDR/VEGFR2を含む)の活性に対する上記XL−647化合物の効果を、3つアッセイ形式のうちの1つを使用して測定した。用量応答実験を、384ウェルマイクロタイタープレート中で10の異なるインヒビター濃度を使用して行った。各アッセイについて使用したATP濃度は、各キナーゼについてのKに等価であった。IC50値を、4変数の方程式を使用して、非線形回帰分析によって計算した:Y=最小+(最大−最小)/[1+([I]/IC50)N](ここでYは、観察されたシグナルであり、[I]は、インヒビター濃度であり、最小は、酵素の非存在下(0%酵素活性)でのバックグラウンドシグナルであり、最大は、インヒビターの非存在下(100%酵素活性)でのシグナルであり、IC50は、50%酵素阻害において必要とされるインヒビター濃度であり、Nは、協同性の尺度としての経験的なヒルの傾き(empirical Hill slope)を表す。結果を、表5にまとめる。
ラジオメトリック33P−ホスホリル転移キナーゼアッセイを、EphB4、インスリン様増殖因子−Iレセプター(IGFR−1)、およびインスリンレセプター(IRK)活性を測定するために使用した。反応を、384ウェルの白色透明底の高結合マイクロタイタープレート(Greiner)において行った。プレートを、50μL容積において2μg/ウェル ペプチド基質でコーティングした。コーティング緩衝液は、40μg/mL EphB4およびIRK基質ポリ(Ala−Glu−Lys−Tyr)もしくはIGFR−1基質ポリ(Glu−Tyr)6:2:5:1(Perkin−Elmer)、22.5mmol/L NaCO、27.5mmol/L NaHCO、150mmol/L NaCl、および3mmol/L NaNを含んだ。上記コーティングプレートを、室温において一晩インキュベートした後、50μL アッセイ緩衝液で一度洗浄した。試験化合物と、5nmol/L EphB4(バキュロウイルス発現系において発現され、金属キレートクロマトグラフィーを使用して精製された、6ヒスチジンNH末端タグを含むヒトEphB4の残基E605−E890)、4nmol/L インスリン様増殖因子−Iレセプター(ヒトインスリン様増殖因子−Iレセプターの残基M954−C1367(Proqinase GmbH))、もしくは15nmol/L インスリンレセプター1(ヒトインスリンレセプター1の残基P948−S1343(Proqinase))のいずれかとを、全容積20μLにおいて、[33P]g−ATP(5μmol/L,3.3μCi/nmol)と組み合わせた。上記反応混合物を、室温において1.5〜2.5時間にわたってインキュベートし、吸引によって終了させた。その後、上記マイクロタイタープレートを、0.05% Tween−PBS緩衝液で6回洗浄した。シンチレーション液(50μL/ウェル)を添加し、組み込まれた33Pを、MicroBetaシンチレーションカウンター(Perkin−Elmer)を使用して、液体シンチレーション分光光度法によって測定した。
ルシフェラーゼ結合化学発光アッセイを使用して、EGFRおよびKDR(VEGFR2)活性を測定した。キナーゼ活性を、ルシフェラーゼ−ルシフェリン結合化学発光を使用して、キナーゼ反応後に消費したATPのパーセンテージとして測定した。反応を、384ウェル白色中程度結合マイクロタイタープレート(Greiner)において行った。キナーゼ反応を、20mL容積において、XL−647、3μmol/L ATP、1.6μmol/L 基質(ポリ(Glu,Tyr)4:1;Perkin−Elmer)と、EGFR(7nmol/L,ヒトEGFRの残基H672−A1210(Proqinase))もしくはKDR(5nmol/L,ヒトKDRの残基D807−V1356(Proqinase))のいずれかとを合わせることによって開始した。上記反応混合物を、室温において4時間にわたってインキュベートした。上記キナーゼ反応の後、Kinase Glo(Promega)の20μLアリコートを添加し、ルミネッセンスシグナルを、Victor2プレートリーダー(Perkin−Elmer)を使用して測定した。全ATP消費を50%に制限した。
AlphaScreenチロシンキナーゼアッセイを使用して、ErbB2およびFlt−4活性を測定した。ストレプトアビジンでコーティングしたドナービーズ、およびPY100抗ホスホチロシン抗体でコーティングしたアクセプタービーズ(Perkin−Elmer)を使用した。ビオチン化ポリ(Glu,Tyr)4:1を、基質として使用した。基質リン酸化を、ドナー−アクセプタービーズ添加、続いて、複合体形成後のルミネッセンスによって測定した。試験化合物、3μmol/L ATP、3nmol/L ビオチン化ポリ(Glu,Tyr)4:1、および1nmol/L ErbB2(ヒトErbB2の残基Q679−V1255(Proqinase))もしくはFlt−4(ヒトFlt−4の残基D725−R1298(Proqinase))を、384ウェル白色中程度結合のマイクロタイタープレート(Greiner)において、容積20μLのアッセイ緩衝液(20mM TrisHCl,pH7.5、10mM MgCl、3mM MnCl、1mM DTT、0.01% Triton)中に合わせた。反応混合物を、1時間にわたって室温においてインキュベートした。反応を、10μLの15〜30μg/mL AlphaScreenビーズ懸濁物(75mmol/L HEPES(pH7.4)、300mmol/L NaCl、120mmol/L EDTA、0.3% ウシ血清アルブミン、および0.03% Tween 20を含む)を添加することによってクエンチした。室温において2〜16時間インキュベートした後、プレートを、AlphaQuestリーダー(Perkin−Elmer)を使用して読み取った。
結果を、少なくとも3回の独立した測定の平均±SDとして現す。
EGFR、ErbB2、KDR、およびEphB4の作用機構の研究から、XL−647が、可逆的かつATP競合性のインヒビターであることが確認された。高濃度の酵素およびXL−647(>>Ki)を合わせ、氷上で2時間にわたってインキュベートした。以下の濃度の酵素およびXL−647を使用した:200nM EphB4、400nM XL−647;0.5nM EGFR、5nM XL−647;3nM KDR、1000nM XL−647。酵素活性を、酵素−インヒビター複合体の希釈後に標準的方法によって測定した。活性を、同一条件下でのDMSOコントロール処理と比較した。
(実施例3:XL−647の特異性に対するインビトロ生化学スクリーニング)
XL−647の特異性を、薬理学的標的のパネル(レセプター、トランスポーター、および酵素を含む)に対して評価した(NovaScreen,Hanover,MD)。10μMの単一のインビトロ濃度において、XL−647は、上記薬理学的標的のうちのわずかと相互作用することを示した(表7)。ヒトセロトニントランスポーターのみが、IC50<1μM(IC50=188nM)で阻害された。ムスカリン性レセプター、α2−アドレナリン作動性レセプターおよびドパミントランスポーターにおいても効果が観察され、これらは、1〜2.7μMのIC50値を示した。
XL−647は、10個のチロシンキナーゼ(インスリンおよびインスリン様増殖因子−1レセプターを含む)および55個のセリン−スレオニンキナーゼ(サイクリン依存性キナーゼ、ストレス活性化プロテインキナーゼ、およびプロテインキナーゼCアイソフォームを含む)のパネルに対して不活性であった。
さらなるスクリーニングを、実施例2の生化学アッセイ法を使用して行った。成分および濃度のさらなる説明を、以下の表8、表9、および表10にまとめる。スクリーニングの結果は、表11に見いだされる。
1μMを超えるIC50値を有する酵素としては、以下が挙げられる:AMPK、c−Raf、CamKII、CamKIV、CDK1、CDK2、CDK3、CDK5、CDK6、CDK7、CK2、GSK3β、IKKα、IKKβ、JNK1α、JNK2α、JNK3α、MAPK1、MAPK2、PRAK MEK1、MKK4、MKK6、MKK7β、MAP4K3、MAP4K5、p70S6K、PAK2、Plk1、CK1PRAK2、ROCK II、Rsk1、Rsk2、Rsk3、SAPK3、SAPK4、Syk。10μMを超えるIC50値を有する酵素としては、以下が挙げられる:Chk1、Chk2、Clk1、Clk2、EMK、MAPKAP2、PKBα、PKBβ、PKCα、PKC−γ、PKC−ε、PKC−ζ、PKA、p70S6K、SGK。
(実施例4:インビボ細胞ベースの活性アッセイ)
XL−647によるEGFRの阻害を、A431ヒト類表皮がん(American Type Culture Collection)、MDA−MB−231ヒト腺がん(Georgetown University)、H1975 NSCLC腺がん(American Type Culture Collection)、およびLx−1扁平上皮がん(Department of Oncology Drug Discovery, Bristol−Myers Squibb)の細胞を使用して、インビボで確認した。A431は、過剰発現されるwtヒトEGFRを含む。H1975は、EGFRにおける活性化変異(L858R)、ならびにゲフェチニブおよびエルロチニブに対する抵抗性を付与する第2の部位の変異(T790M)の両方を含む。Lx−1細胞は、内因性EGFRを発現せず、外因性EGFR構築物を発現させるために使用した。他の細胞株を、表12にまとめる。
A431細胞株およびMDA−MB−231細胞株を、10% 熱不活化ウシ胎仔血清(Hyclone)、100単位/mL ペニシリンG、100μg/mL ストレプトマイシン(1% ペニシリン/ストレプトマイシン,Mediatech)、および1% 非必須アミノ酸(Mediatech)を補充した、L−グルタミンを含むDMEM(Mediatech)中で、37℃において、加湿5% COインキュベーターの中で単層培養物として維持し、増殖させた。H1975細胞株、およびLx−1細胞株を、完全RPMI 1640(30−2,001;American Type Culture Collection;10% 熱不活化ウシ胎仔血清、1% ペニシリン/ストレプトマイシン、および1% 非必須アミノ酸を補充し、L−グルタミンを含む)中、37℃において、加湿5% COインキュベーターの中で維持した。他の細胞株を、標準培地中で同様の方法によって維持し、増殖させた。
wt EGFRに対するXL−647の効果を、A431細胞における細胞ベースのEGFR自己リン酸化アッセイによってインビボで測定した。A431細胞を、96ウェルマイクロタイタープレート(3904 Costar,VWR)中、5×10/ウェルにおいて播種し、完全に補充したDMEM中で、16時間にわたってインキュベートした。その後、増殖培地を無血清DMEMと置換し、上記細胞を、さらに24時間にわたってインキュベートした。無血清培地中のXL−647の連続希釈物(三連で)を静止した細胞(quiescent cell)に添加し、1時間にわたってインキュベートし、その後、100ng/mL 組換えヒトEGF(R&D Systems)で10分間刺激した。陰性コントロールウェルは、EGFを受容しなかった。処理後、細胞単層を冷PBSで洗浄し、直ぐに冷溶解緩衝液(50mmol/L Tris−HCl(pH8.0)、150mmol/L NaCl、10% グリセロール、1% NP40、0.1% SDS、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、1mmol/L EDTA、50mmol/L NaF、1mmol/L ピロリン酸ナトリウム、1mmol/L オルトバナジン酸ナトリウム、2mmol/L フェニルメチルスルホニルフルオリド、10μg/mL アプロチニン、5μg/mL ロイペプチン、5μg/mL ペプスタチン)で溶解した。溶解物を遠心分離にかけ、ビオチン結合体化マウスモノクローナル抗ヒトEGFR(2μg/mL;Research Diagnostics)を含む96ウェルストレプトアビジンコーティングプレート(Pierce)に移し、2時間にわたってインキュベートした。プレートを、TBST(25mmol/L Tris、150mmol/L NaCl(pH7.2)、0.1% ウシ血清アルブミン、および0.05% Tween 20)で3回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化抗ホスホチロシン抗体(1:10,000;Zymed Laboratories)とともにインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ活性を、ELISA Femto基質(Pierce)の添加後に、Victor2プレートリーダーの中で上記プレートを読み取ることによって決定した。IC50値を、XL−647処理での全EGFRチロシンリン酸化 対 増殖因子処理単独での全EGFRチロシンリン酸化に基づいて決定し、レセプターレベルに対して正規化した。
wtおよび変異型EGFRに対するXL−647の効果を、一過性にトランスフェクトしたLx−1細胞を使用して、インビボで測定した。Lx−1細胞を使用したのは、それらが、バックグラウンドEGFR活性を欠いているからである。最も長いEGFRアイソフォームに対応するクローン(Genbankアクセッション番号 NM_005228.3/NP_005219.2 ♯21−176,Upstate Biotechnology)を、テンプレートとして使用して、部位特異的変異誘発によって2個の変異型EGFR遺伝子(L858RおよびL861Qをコードする)を生成した。WTおよび上記2個の配列を確認した変異型を、COOH末端Flagタグ化レトロウイルス性サイトメガロウイルスプロモーター駆動哺乳動物発現ベクターに移した。2個のTet−On発現ベクター、EGFR WT(Tet−On)およびEGFRvIII(Tet−On)(これらは、COOH末端Flagタグ化されている)は、Abhijit Guha博士(University of Toronto,Toronto,Ontario,Canada)が惜しみなく提供してくれた。
Lx−1細胞の一過性トランスフェクションを、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して、製造業者のプロトコルに従って行った。上記WT、L858R、およびL861Q構築物のトランスフェクションについては、1μg プラスミドDNAを、各トランスフェクションに使用した(12ウェルプレートの各ウェル)。Tet制御EGFR WTおよび改変型III構築物のトランスフェクションについては、0.5μgのいずれかの構築物を、各トランスフェクションについて0.5μgのpTet−Onプラスミド(BD Biosciences)と合わせた。細胞を、トランスフェクションの24時間後に採取し、化合物処理のために96ウェルプレート(4×10細胞/ウェル)、もしくはイムノブロットアッセイのために12ウェルプレート(2×10細胞)のいずれかに再度プレーティングした。上記EGFRvIII導入遺伝子の発現を、1μg/mL ドキシサイクリンを上記培地に添加することによって、トランスフェクション24時間後、誘導した。これら細胞を、実験の残りのために、ドキシサイクリンの存在下で維持した。12時間のインキュベーション後、上記細胞を血清欠乏にし(ウシ胎仔血清なしの培地中)、直ぐに、上記示された化合物で三連で24時間にわたって処理し、続いて、組換えヒトEGF(100ng/mL)で10分間処理した。全細胞溶解物を、EGFRリン酸化ELISAもしくはイムノブロットいずれかのために、各ウェルに、50mmol/L NaF、1mmol/L ピロリン酸ナトリウム、1mmol/L オルトバナジン酸ナトリウム、2mmol/L フェニルメチルスルホニルフルオリド、10μg/mL アプロチニン、および5μg/mL ロイペプチンに加えて、プロテアーゼインヒビター(Protease Inhibitor Cocktail Tablets,Roche)を含む放射性免疫沈降アッセイ緩衝液(Boston Bioproducts)を125μL添加することによって作製した。
上記EGFRリン酸化ELISAに関しては、Reacti−Bindストレプトアビジンコーティングプレート(Pierce)を、2μg/mL ビオチン結合体化抗Flag抗体(Sigma)でコーティングした。次いで、全細胞溶解物(10μg)を、最終容積100μLにおいて、2時間にわたって室温で上記抗Flagコーティングウェルに添加し、次いで、TBSTで3回洗浄した。抗ホスホチロシン西洋ワサビペルオキシダーゼ結合2次抗体(1:10,000;Zymed)を使用して、リン酸化されたEGFR(pEGFR;室温において1時間、続いて、TBSTで3回洗浄)を検出した。西洋ワサビペルオキシダーゼ活性を、ELISA Femto基質を添加した後に、Victor2プレートリーダーの中で上記プレートを読み取ることによって決定した。
上記EphB4自己リン酸化ELISAは、EphB4/Hep3B細胞を利用した。細胞を、2×10細胞/ウェルにおいて、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar 3904)に、10% FBS(熱不活化,Hyclone)、1% ペニシリン−ストレプトマイシン(Cellgro)および450μg/ml G418(Invitrogen)を含むMEME(Cellgro)中で播種した。次いで、上記細胞を、37℃、5% COにおいて24時間にわたってインキュベートした。増殖培地を無血清MEMEで置き換え、細胞を、さらに16時間にわたってインキュベートした。新たな無血清培地中でのXL−647の連続希釈物を、静止した細胞に添加し、1時間にわたってインキュベートし、その後、組換えマウスEphrin B2/Fcキメラタンパク質(2μg/ml,R&D Systems)およびヤギ抗ヒトIgG/Fc(20μg/ml,Pierce)の混合物で30分間刺激した。陰性コントロールウェルは、増殖因子で処理しなかった。処理後、培地を除去し、上記細胞単層を、冷PBSで洗浄し、直ぐに、冷溶解緩衝液(50mM Tris−HCl,pH8.0、200mM NaCl、0.5% NP−40、0.2% デオキシコール酸ナトリウム、1mM EDTA、50mM NaF、1mM ピロリン酸ナトリウム、1mM オルトバナジン酸ナトリウム、2mM フェニルメチルスルホニルフルオリド、10μg/ml アプロチニン、5μg/ml ロイペプチンおよび5μg/ml ペプスタチンA)で溶解した。溶解物を遠心分離にかけ、抗マウスEphB4(2.5μg/ml,R&D Systems)でコーティングしたブロックされた(1% BSA)高結合96ウェルプレート(Costar 3925)中でインキュベートした。次いで、プレートを、HRP結合体化抗ホスホチロシンカクテル(1:10,000,Zymed Laboratories,Inc)とともにインキュベートし、続いて、ルミノールベースの基質溶液を添加した。プレートを、Victor分光光度計(Wallac)を使用して読み取った。IC50値を、XL−647処理での全EphB4レセプターチロシンリン酸化 対 増殖因子処理単独での全EphB4レセプターチロシンリン酸化に基づいて決定した。
上記EphA2自己リン酸化ELISAは、PC−3(ATCC)細胞を利用した。細胞を、2.5×10細胞/ウェルにおいて、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar 3904)に、10% FBS(熱不活化,Hyclone)、1% ペニシリン−ストレプトマイシン(Cellgro)、および1% NEAA溶液(Cellgro)を含むDMEM(Cellgro)中で播種した。次いで、上記細胞を、37℃、5% COにおいて16時間にわたってインキュベートした。増殖培地を無血清DMEMで置き換え、細胞を、さらに24時間にわたってインキュベートした。新たな無血清培地中でのXL−647の連続希釈物を、静止した細胞に添加し、1時間にわたってインキュベートし、その後、組換えマウスEphrin A1/Fcキメラタンパク質(1μg/ml,R&D Systems)およびヤギ抗ヒトIgG/Fc(10μg/ml,Pierce)の混合物で20分間刺激した。陰性コントロールウェルは、増殖因子で処理しなかった。処理後、培地を除去し、上記細胞単層を冷PBSで洗浄し、直ぐに、冷溶解緩衝液で溶解した。溶解物を遠心分離にかけ、ビオチン結合体化マウス抗ホスホチロシンPY20(2μg/ml,Calbiochem)でコーティングした、96ウェルストレプトアビジンコーティングプレート(Pierce)の中でインキュベートした。プレートを、ウサギポリクローナル抗EphA2,C−20(1:500,Santa Cruz Biotechnology,Inc)、続いて、2次抗体(Cell SignalingのHRP結合体化ヤギ抗ウサギIgG,1:1000)とともにインキュベートし、さらにルミノールベースの基質溶液を添加した。プレートを、Victor分光光度計(Wallac)で読み取った。IC50値を、XL−647処理での全EphA2レセプターチロシンリン酸化 対 増殖因子処理単独での全EphA2レセプターチロシンリン酸化に基づいて決定した。
上記c−Kit自己リン酸化ELISAは、HeLa(ATCC)細胞を利用した。細胞を、6×10細胞/ウェルにおいて、100mmディッシュに播種した。24時間後、HeLa細胞を、C末端にFlagエピトープタグを有するヒトc−kitのオープンリーディングフレームに作動可能に連結したCMVプロモーターを含む哺乳動物発現プラスミドでトランスフェクトした。24時間後、c−KitトランスフェクトHeLa細胞をトリプシン処理し、6×10細胞/ウェルにおいて、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar 3904)へと、10% FBS(熱不活化,Hyclone)、1% ペニシリン−ストレプトマイシン(Cellgro)、および1% NEAA溶液(Cellgro)を含むDMEM(Cellgro)中で再度播種した。次いで、上記細胞を、37℃、5% COにおいて24時間にわたってインキュベートした。新たな無血清培地中でのXL−647の連続希釈物を、上記細胞に添加し、1時間にわたってインキュベートし、その後、10分間組換えヒトSCFで刺激(100ng/ml,R&D Systems)した。陰性コントロールウェルは、刺激しないままであった。刺激の後、培地を除去し、上記細胞単層を冷PBSで洗浄し、直ぐに、冷溶解緩衝液で溶解した。溶解物を、ビオチン結合体化ヤギ抗ヒトc−Kit(1μg/ml,R&D Systems)でコーティングした、96ウェルストレプトアビジンコーティング(Pierce)中でインキュベートした。プレートをTBSTで3回洗浄し、HRP結合体化抗ホスホチロシン(1:10,000,Zymed Laboratories,Inc)もしくはHRP結合体化抗Flag(M2)(1:2,000,Sigma)のいずれかとともにインキュベートした。プレートを、上記のように再度洗浄し、続いて、ルミノールベースの基質溶液を添加し、Victor分光光度計(Wallac)で読み取った。IC50値を、XL−647処理でのc−Kitチロシンリン酸化 対 SCF処理単独でのc−Kitチロシンリン酸化(正規化後)に基づいて決定した。
上記Flt−4自己リン酸化ELISAは、COS細胞を利用した。細胞を、6ウェルプレート中、DMEM(10%FBSを含む)中で200,000細胞/ウェルにおいて播種し、5% COおよび37℃において増殖させた。24時間の増殖の後、細胞を、1μg/ウェル Flt−4 cDNAで、3μl FuGENE−6(Roche)を使用してトランスフェクトした。細胞を、トランスフェクション24時間後、1時間にわたって新たな無血清DMEM中のXL−647で処理し、次いで、300ng/ml VEGF−Cで10分間にわたって刺激した。上記細胞単層を、冷PBSで2回洗浄し、150μl 氷冷溶解緩衝液へと掻き取ることによって採取した。細胞溶解物を、13,000gにおいて15分間にわたって遠心分離にかけ、氷冷PBSで1:10に希釈し、抗ヒトVEGF−C(Flt−4)ビオチン化ヤギIgG(2μg/ウェル,R&D Biosciences)でコーティングした、透明なストレプトアビジンプレート(Pierce)に移した。洗浄後、抗Flag M2マウスIgG−HRP(Sigma 1:10,000希釈)もしくは抗ホスホチロシンウサギIgG−HRP(Zymed,61−5820,1:10,000)を使用して、全Flt−4およびリン酸化Flt−4を検出した。サンプルを正規化し、IC50値を、XL−647処理でのFlt−4チロシンリン酸化とVEGF−C処理単独でのFlt−4チロシンリン酸化とを比較することによって決定した。
上記ErbB2自己リン酸化ELISAは、BT474(ATCC)細胞を利用した。細胞を、3×10細胞/ウェルにおいて、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar 3904)へと、10% FBS(熱不活化,Hyclone)、1% ペニシリン−ストレプトマイシン(Cellgro)、1% NEAA溶液(Cellgro)、および2% L−グルタミン(Cellgro)を含む1:1(DMEM:F12K)(Cellgro)中で播種した。次いで、上記細胞を、37℃、5% COにおいて40時間にわたってインキュベートした。細胞を、新たな無血清培地中でのXL−647の連続希釈物で処理し、1時間にわたってインキュベートした。処理後、培地を除去し、上記細胞単層を冷PBSで洗浄し、直ぐに、冷溶解緩衝液で溶解した。溶解物を遠心分離にかけ、ウサギポリクローナル抗ErbB2(1.3μg/ml,Cell Signaling Technology)でコーティングした、ブロックした(1% BSA)96ウェル高結合プレート(Costar 3925)に移した。次いで、プレートを、HRP結合体化抗ホスホチロシンカクテル(1:10,000,Zymed Laboratories, Inc)とともにインキュベートし、続いて、ルミノールベースの基質溶液を添加した。プレートを、Victor分光光度計(Wallac)で読み取った。IC50値を、化合物処理での全ErbB2チロシンリン酸化 対 化合物処理なしでの全ErbB2チロシンリン酸化に基づいて決定した。
(実施例5:イムノブロット分析)
XL−647で処理したH1975細胞の溶解物を、イムノブロットによって分析した。H1975イムノブロット研究のために、3×10細胞を、各ウェル(12ウェルプレート)にプレーティングし、16時間にわたって完全RPMI 1640中でインキュベートし、ウシ胎仔血清を含まないRPMI 1640ですすぎ、ウシ胎仔血清を含まない培地中での試験化合物の連続希釈物と2時間にわたってインキュベートし、続いて、100ng/mL ヒト組換えEGFで10分間にわたって刺激した。全細胞タンパク質溶解物を、上記のように調製し、10分間にわたって13,000×gにおいて4℃で遠心分離にかけて、いかなる不溶性物質をも除去した。全タンパク質を、ビシンコニン酸試薬を使用して決定し、等量のタンパク質を、LDSローディング緩衝液(Invitrogen)と、製造業者の説明書に従って合わせた。タンパク質を、4%〜15% ポリアクリルアミドゲルでのゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜に転写し、イムノブロッティングによって検出した。抗体:抗原複合体を、化学発光を使用して検出した。Cell Signaling Technology製の以下の抗体を、1:1,000希釈において使用した: 抗EGFR、抗pEGFRTyr1068、抗AKT、抗pAKTSer473、抗ERK、および抗pERKThr202/Tyr204。抗β−アクチン1次抗体(Accurate Chemical and Scientific)を、1:10,000において使用し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合2次抗体を、Jackson ImmunoResearchから購入し、1:5,000において使用した。
イムノブロッティングから、XL−647は、30μmol/Lおよび10μmol/LにおいてEGFRのリン酸化を阻害し、AKTおよびERKのリン酸化(これは、EGFRリン酸化の下流にある)をも阻害することが示された。イムノブロットの一例は、Gendreau SB, Ventura R, Keast P, et al., Inhibition of the T790M Gatekeeper Mutant of the Epidermal Growth Factor Receptor by EXEL−7647, Clin Cancer Res 3713, 13(12) (2007)(これらは、本明細書に参考として援用される)に見いだされ得る。
(実施例6:A431異種移植片モデル)
雌性重症複合型免疫不全マウスおよび雌性無胸腺ヌードマウス(NCr)(5〜8週齢および体重約20〜25g)を、それぞれ、The Jackson LaboratoryおよびTaconicから購入した。上記動物を、Exelixis動物実験委員会によって概説される指針に従って、Exelixis飼育施設において飼育した。全ての研究の間、動物の飼料および水は不断給餌とし、70°F〜75°Fおよび60% 相対湿度に調整した部屋において飼育した。
処置前に、H1975細胞、A431細胞、もしくはMDA−MB−231細胞を、指数関数的に増殖している培養物から採取し、短時間のトリプシン処理によって剥離し、冷HBSS中で2回洗浄し、氷冷HBSS中に再懸濁し、s.c.(H1975,3×10細胞/マウス)もしくはi.d.(A431,1×10細胞/マウス)のいずれかで背側側腹部、またはs.c.で乳腺脂肪パッド(MDA−MB−231,1×10細胞/マウス)へと移植した。触診できる腫瘍を、平均腫瘍重量が、約80〜120mgの範囲になるまでカリパスで1週間に2回測定した。腫瘍重量を、垂直方向の直径をカリパスで測定し、2次元の直径の測定値を乗算することによって決定した:腫瘍体積(mm)/2=長さ(mm)×幅(mm)/2。腫瘍重量(mg)を、換算率1と仮定することによって、腫瘍体積(mm)から外挿した。移植後の適切な日に、群平均腫瘍重量が、約100±15mgになるように、マウスを群分けした(10マウス/群)。それぞれのコントロール群および処置群の各動物における上記平均腫瘍重量を、投与期間の間、1週間に2回測定した。腫瘍異種移植片を、雌性マウスにおいて確立し、処置前に約100mgに達するようにした。一例が、Gendreau SB, Ventura R, Keast P, et al., Inhibition of the T790M Gatekeeper Mutant of the Epidermal Growth Factor Receptor by EXEL−7647, Clin Cancer Res 3713, 13(12) (2007)(これは、本明細書に参考として援用される)に記載される。
処置に対する腫瘍の応答を、処置群の平均腫瘍重量と、適切なコントロール群とを比較することによって決定した。腫瘍増殖のパーセンテージ阻害を、以下の式で決定した:パーセンテージ阻害=100×[1−(X−X)/(Y−Y)](ここでXおよびYは、それぞれ、上記処置群およびコントロール群のf日目の平均腫瘍重量であり、XおよびYは、それぞれ、処置群およびコントロール群の0日目の平均腫瘍重量(群分け後の設定された腫瘍重量)である。
XL−647の経口投与後の血漿中の化合物レベルの決定のために、全血を、氷上のヘパリン化エッペンドルフチューブに入れ、20,000×gで4分間にわたって遠心分離した。その血漿上清(50μL)を、100μL 内部標準溶液(アセトニトリル中250ng/mL 内部標準)に添加し、ボルテックスして混合し、遠心分離にかけた。サンプル抽出物(20μL)を、LC/MS/MS分析によってXL−647についてアッセイした。血漿レベルを、信頼できる標準曲線を使用して計算した。定量限界は、XL−647については0.004μmol/L(2ng/mL)であった。平均値およびSDを、各時点について計算し、用量濃度を評価した。
H1975、MDA−MB−231および他の異種移植片の免疫組織化学分析については、安楽死の後に腫瘍を摘出し、パラフィンブロックの中へと加工処理する前に、亜鉛固定液(BD Biosciences)中で48時間にわたって固定した。5μm単位での連続切片を、各腫瘍について、可能な最大表面の面積から得、標準法に従って染色した。以下の抗体を使用した:Ki67(SP6;Labvision)、CD31(MECA.32;BD Biosciences)、pERKThr202/Tyr204(ホスホ−p44/42マイトジェン活性化プロテインキナーゼ;Cell Signaling Technology)、pAKTSer473(Cell Signaling Technology)、およびpEGFRTyr1068(Cell Signaling Technology)。免疫蛍光染色のために、切片を、次いで、Alexa 594結合体化ヤギ抗ウサギ2次抗体(Invitrogen)とともにインキュベートし、核対比染色として、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(Molecular Probes)を含むFluorescent Mounting Medium(DAKO)中にマウントした。蛍光染色を、Zeiss AxioImagerを使用して可視化し、AxioVision画像分析ソフトウェアに結合したZeiss高分解能カメラを使用して、デジタルで取り込んだ。3つの重複しない代表的視野のうちの2つを、組織学的読み取りに依存して、×200もしくは×400の倍率で取り込み、Metamorphソフトウェア(Universal Imaging Corp.)における統合形態計測解析機能を用いて定量した。アポトーシス細胞を、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介性dUTPニック末端標識インサイチュ細胞死検出キットを使用して、製造業者の説明書(Roche Diagnostics GmbH)に従って検出した。
ACIS自動細胞画像化システム(Clarient, Inc.)における統合形態計測解析機能を用いて、各腫瘍切片における、CD31陽性腫瘍脈管、Ki67陽性増殖細胞、およびpERK染色を同定および定量し、盲検の観察者によって検討させた。CD31陽性脈管の数を、目に見える腫瘍組織において、×100倍率において等しいサイズの5〜10個の無作為に選択した視野にわたって同定し、各腫瘍に関して、脈管数/mmとして計算し、各処置群で平均し、ビヒクル処置コントロールと比較した。パーセンテージKi67陽性細胞を、目に見える腫瘍組織において、等しいサイズの5〜10個の無作為に選択された視野にわたって同定した全細胞数で除算したKi67陽性細胞の比として計算した。各腫瘍および処置群の結果を平均し、ビヒクル処置コントロールと比較した。pERK染色のレベルを、上記のように決定し、同定された全細胞数で除算した抗体染色の比として計算し、各処置群で平均し、ビヒクル処置コントロールと比較した。
結果を、各グラフもしくは表について示されるように、平均±SDもしくはSEとして表す。A431細胞生存性実験におけるIC50比較に関しては、2サンプルスチューデントt検定を適用して、用量応答曲線の周囲の反復物の無作為変動が、上記t検定の「サンプルサイズ」として使用した個々の反復物(三連で行った9点の用量応答)で対数正規分布していると仮定して、各IC50対のP値を決定した。インビボ研究からの免疫組織化学結果の統計分析のために、両側スチューデントt検定分析およびボンフェローニの補正を行って、ビヒクルコントロール群(単一ビヒクルコントロール群の複数使用)と比較して有意差を同定した(P<0.05の累積最小要件を伴う)。上記H1975効力研究の終わりの最終腫瘍重量測定値、ならびにH1975異種移植片における、パーセンテージpEGFR、pAKT、Ki67指数、CD31、および末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介性dUTPニック末端標識を、XL−647とエルロチニブとの間の統計的差異の決定のための、一元配置ANOVA、続いて、ポストホックStudent−Newman−Keul分析で分析した。
A431異種移植片マウスにおいて、14日間にわたるXL−647(10mg/kg/日、30mg/kg/日、および100mg/kg/日)の1日1回の経口投与は、用量依存様式において腫瘍増殖を有意に阻害した。10mg/kg/日において、65%の腫瘍増殖阻害と、上記研究の終わりに向かって腫瘍増殖の停止の証拠が認められた。100mg/kg/日の用量は、顕著な腫瘍退縮(出発重量:109±20mg;最終重量:36±15mg)を生じた。
免疫組織化学分析から、100mg/kg qd×14によるXL−647での雌性無胸腺ヌードマウスにおける皮下で増殖したA431腫瘍の処置は、ビヒクル処置腫瘍と比較して2.9倍、全腫瘍壊死のパーセンテージを有意に増大させることが示された(表14)。生きている腫瘍組織におけるCD31陽性脈管のパーセンテージは、10mg/kg、30mg/kg、および100mg/kgのXL−647での処置によって有意に低下した。腫瘍脈管形成のこの阻害は、用量依存性を示した。上記A431腫瘍におけるKi67発現細胞のパーセンテージは、全ての用量レベルにおいて有意に低下した。このことは、上記研究の終わりに腫瘍中の増殖している細胞の数が低下していることを示す。
MVC,平均脈管数;NA,適用不能
値は、平均±SDである。
投与の14日目に、全血を、終末心臓穿刺によって集め、XL−647の血漿濃度プロフィールを、液体クロマトグラフィーと質量分析法(LC/MS/MS)によって決定した。XL−647は、長期の血漿薬物曝露のPKプロフィールを示した。マイクロモル濃度の血漿濃度が、上記30mg/kgおよび100mg/kgの用量において上記研究の最終用量の投与後、最大24時間まで観察された。
(実施例7:さらなる異種移植片腫瘍学モデル)
いくつかのさらなるのモデルを使用して、腫瘍増殖阻害およびインビボでの腫瘍退縮に関して、XL−647の効力および有効性を調査した。使用した腫瘍細胞株は、固形腫瘍の代表であり、表15に列挙される。これら研究の標準実験設計では、上記で詳細に記載されるように、確立された固形腫瘍が指定された大きさ(大部分の異種移植片モデルについて約100mg)に達したときに始めて、XL−647の1日1回の経口投与を含んだ。投与期間全体を通じて、腫瘍サイズを1週間に2回測定し(適切な場合)、体重を毎日測定した。XL−647は、これら研究において強力な抗腫瘍活性を示し、実質的な退縮が固形腫瘍に関して観察された。腫瘍を、いくつかの研究の終了時に摘出し、微小脈管密度(CD31染色)、増殖している細胞(Ki67染色)、および壊死(ヘマトキシリン/エオシン染色)に関して組織学的に試験した。腫瘍増殖の阻害は、一般に、増大した腫瘍壊死、低下した腫瘍血管新生、および低下した腫瘍細胞増殖指数と十分に相関した。このことは、抗脈管形成活性が、XL−647の強力な抗腫瘍効力に寄与したことを示唆する。
耐性を、体重を毎日測定することによってこれらの研究においてモニターした。XL−647は、一般に、100mg/kg/日の14日間にわたる投与において実質的な体重減少なしに、マウスにおいて十分に耐性であるようであった。
試験した株のうち、A431およびHN5は、最も感受性が高く、効果的なXL−647用量は、上記A431モデルに関して14日間もしくは28日間の投与後に、それぞれ、5.9mg/kg/日および3.8mg/kg/日において、および上記HN5モデルに関して14日間の投与後に、3mg/kg/日未満において、推定される50%腫瘍増殖阻害(ED50)を生じた(表15にまとめる)。
A431,類表皮がん;BT474,乳がん;Calu−6,NSCLC;H1975,ゲフィチニブおよびエルロチニブに抵抗性を付与するEGFRにおける活性化変異(L858R)および第2の部位の変異(T790M)の両方を含むNSCLC(Pao et al.,2005);HN5,頭頸部がん;HT−29,結腸がん;MDA−MD−231,乳がん;ND,行わなかった;PC−3,前立腺がん;qd,1日に1回。
ED50=50%腫瘍阻害に必要な用量。腫瘍を有する無胸腺マウスを、14日間または28日間、XL647で処置した。
MVC,平均脈管数;NA,適用不能;TUNEL,末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼビオチン−dUTPニック末端標識
値は、平均±SDである
P<0.0001
P<0.005。
NA,適用しない
値は、平均±SDである
P<0.0001。
標的レセプターチロシンキナーゼ(RTK)(EGFR、HER2/ErbB2、VEGFR2/KDR)の活性に対するXL−647のインビボ効果は、XL−647の経口(PO)投与後に(表18)、以前記載されたものに類似の方法を使用して、腫瘍異種移植片(EGFR、HER2/ErbB2)もしくはマウス肺(VEGFR2/KDR)においてレセプターリン酸化レベルを測定することによって評価した。
これら薬力学的実験のデータは、インビボで、XL−647が、腫瘍増殖および脈管形成の促進、ならびにPKD(EGFR、HER2/ErbB2、VEGFR2/KDR)にも関与する重要なRTKを阻害することを示す。このことは、複数の異種移植片に対するXL−647の効力が、腫瘍細胞分裂および宿主内皮細胞応答の阻害から生じるという仮説の裏付けを提供する。一般に、試験した用量において、血漿薬物濃度の増大とレセプターのリン酸化の阻害の増大との間には良好な相関があった。100mg/kgのXL−647の単一用量は、レセプターのリン酸化の長期の阻害を生じた(>72時間)。
血漿曝露およびEGFRの阻害についての薬力学の比較は、用量依存性を示した。血漿濃度4μMは、A431異種移植片においてEGFRリン酸化の89%阻害を生じた(表19)。血漿濃度/リン酸化EGFRの阻害の関係性に基づいて、EGFRリン酸化の50%阻害は、血漿濃度0.72μMにおいて起こると推定される。
EGFR,表皮増殖因子レセプター;IC50,50%阻害に必要とされる濃度;SD,標準偏差。
XL647を、EGF投与の3.5時間前に投与した。p−Y−EGFRレベルを、EGF投与の30分後に測定した。
XL−647が腫瘍増殖および血管新生に影響を及ぼす動態を、3日間、5日間、もしくは7日間にわたってXL−647で毎日処置したマウスから採取した、切片化したMDA−MB−231異種移植片腫瘍に対する定量的免疫組織化学および組織学を使用して決定した。腫瘍増殖を、S期細胞を選択的に同定するKi67の染色によって測定した。腫瘍血管新生の程度を、内皮細胞マーカーCD31での染色によって測定した(表20)。
ビヒクルに対して。
100mg/kgのXL−647は、血管分布における迅速な低下を引き起こした。3日間での76%阻害が明らかになり、上記腫瘍中のほぼ完全な内皮細胞の喪失が7日間で明らかになった。増殖している細胞の数の低下は、上記実験の期間にわたって徐々に起こった。50%低下が7日目で認められた。
これら腫瘍からの微小血管喪失の迅速な開始および程度は、XL−647が、継続中の脈管形成のみを阻害するのではなく、新脈管構造における内皮細胞の生存に影響を及ぼすことを強く示唆する。
(実施例8:前臨床実施例−非臨床薬物動態)
XL−647の非臨床薬物動態(PK)を、マウス、ラット、イヌ、およびサルにおいて研究した。動物に、以下の表21および表22に記載されるように、1回もしくは数日間にわたって1日1回のいずれかで投与した。結果のまとめはまた、以下の表21および表22に見いだされ得る。XL−647を、100%の生理食塩水との液体処方物として、または10mg/kgもしくは30mg/kgのゼラチンカプセル剤における固体として、投与した。全身薬物曝露(すなわち、AUC)は、ラット(10〜100mg/kg)、サル(2〜20mg/kg)、およびイヌ(3〜30mg/kg)においては、低用量範囲にわたって、ほぼ用量に比例して増大するようであったが、単一用量研究においては、高用量範囲(ラットにおいては200〜2000mg/kg、サルにおいては5〜300mg/kg、およびイヌにおいては100〜1000mg/kg)にわたって、用量比例値未満(less than dose proportionally)の増大であった。血漿中のXL−647の最小(<2倍)蓄積が、反復される1日1回の投与で認められた。平均tmax値は、ほぼ4〜8時間であり、血漿終末半減期は、9.41〜20.9時間の範囲に及んだ。XL−647 PKにおける明らかな性別関連差異は、観察されなかった。大きな分布容積(すなわち、IV投与後に>18L/kg)は、全ての種において認められた。XL−647は、マウス、ラットおよびイヌにおいて経口的に生体利用可能であった。最高の生体利用可能性を、イヌにおいて測定し(63%〜74%)、これは、錠剤および液体処方物に関して類似していた。
XL−647は、標準法を使用して限外濾過によって決定される場合、ラット、マウスおよびヒトの血漿中の血漿タンパク質に対して、中程度に高いタンパク質結合(91〜96%)を示した。平衡透析から、XL−647が、ヒト血漿において93〜97.5%のタンパク質と結合することを示した。
AUC0−t,0時間〜最後のサンプリング時点までの血漿濃度 対 時間曲線下の面積;Cmax,最大血漿濃度;F,雌性;GI,胃腸;GLP,優良試験所基準;HCT,ヘマトクリット;HGB,ヘモグロビン;LOAEL,観察可能な最低有害影響レベル;M,雄性;MTD,最大耐量;NA,適用しない;NOAEL,観察可能な有害影響レベルなし;po,経口;RBC,赤血球;t1/2,終末半減期。
A/G比,アルブミン 対 グロブリン比;ALT,アラニンアミノトランスフェラーゼ;AST,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;AUC0−24,0〜24時間までの血漿薬物濃度時間曲線下の面積;BUN,血中尿素窒素;Cmax,最大血漿濃度;F,雌性;GI,胃腸;GLP,優良試験所基準;HGB,ヘモグロビン;HCT,ヘマトクリット;M,雄性;NA,利用可能でない;NG,経鼻胃;NOAEL,観察可能な有害影響レベルなし;po,経口;qd,1日1回;t1/2,終末半減期
a 最後の用量の後に決定し、平均として報告した。別段示されなければ、雄性および雌性の組み合わせに適用可能。
b トキシコキネティクス値は、7日目のものである。
c 値は、7日目の0〜48時間のサンプリングに基づく。
(実施例9:ヒト臨床試験のまとめ)
XL−647を、50mgの白色から灰白色の錠剤として提供した。これら錠剤を、2つの構成において提供する:1)白色から灰白色の楕円形錠剤(一方で分割でき、他方は平ら)。33.33% 薬物濃度処方物において50mgのXL−647を含む、および2)白色から灰白色の円い錠剤。50% 薬物濃度処方物において50mgのXL−647を含む。
両方の即時放出のラクトースベース処方物についての組成は、以下の表23および表24に提供される。上記2種のXL−647処方物の比較溶解研究を、インビボ生体利用可能性に関連する条件下で評価し、両方の処方物の適合性を確認した。全ての研究医薬を、室温において貯蔵し、適用可能な州および連邦の規則に従って目録に記入した。研究薬物を再パッケージングした場合、それを、高密度ポリエチレン(HDPE)バイアルの中に分注した。
個々の研究を、以下のように行った:
研究XL−647−001:進行した固形腫瘍を有する被験体(n=41)に、14日サイクルの間欠性投与スケジュール(「間欠性5&9スケジュール」)で投与した。1〜5日目に、被験体に、XL−647を与え、続く9日間(6〜14日目)は処置しなかった。XL−647を、上記間欠性5&9スケジュールにおいて、0.06〜7.00mg/kgの範囲の用量レベルで、種々の固体腫瘍を有する41名の被験体に投与した。登録は完全であり、全ての被験体が、2007年5月31日に研究を終えた。被験体には、最初に、ボトル中の粉末(PIB)の処方物を、質量ベースの投与を使用して与えた。上記MTDを、4.68mg/kgであると決定し、これを、固定した用量350mgに変換した。最終のコホートには、錠剤処方物中350mgの固定した用量を与えた。
研究XL−647−002:進行した固形腫瘍を有する被験体を、単一経口用量において毎日XL−647を受容するように、一連のコホートに登録した。合計31名の被験体を、75〜350mgの範囲に及ぶ5種の用量レベルにわたって処置した。上記MTDを、300mgであると決定し、18名の被験体を、この用量レベルにおいて処置した。
研究XL−647−004:健康なボランティア(n=24)に、摂食状態もしくは絶食状態のいずれかにおいて、XL−647の単一の300mg用量を与え、次いで、22日後に、逆のアームへと交換した。生体利用可能性に対する食品の効果を分析した。
研究XL−647−005:健康なボランティア(n=8)に、標識したXL−647(14C−XL−647)の単一の経口用量300mgを与え、薬物代謝および排除を評価した。吸収、代謝、排出、およびマスバランスを分析した。
研究XL−647−201:腺腫内がん(adenomacarcinoma)組織の非小細胞肺がん(NSCLC)(ステージIIIB(悪性胸水を伴う)もしくはステージIV(転移性疾患について以前処置しなかった))を有する被験体(n=52)を登録した。被験体を、EGFRインヒビターへの応答を予測する臨床的特徴(アジア人、女性、および/もしくは最小限の過去の喫煙歴)について選択した。XL−647を、上記間欠性5&9スケジュールで350mg(n=41)、もしくは1日1回スケジュールで300mg(n=13)のいずれかとして投与した。
研究XL−647−203:回帰もしくは再発性NSCLC(ステージIIIBもしくはステージIV)を有する被験体(n=41)(エルロチニブもしくはゲフィチニブでの単一薬剤処置からの利益の後に進行性疾患が記録されたか、または公知のEGFR T790M変異を有する)を、登録した。被験体には、300mgのXL−647を経口で1日に1回与えた。
2008年8月1日現在で、臨床安全性データは、XL−647で処置したがんを有する159名の被験体について利用可能である。単一薬剤XL−647を受けている被験体が経験した最も一般的な有害事象(AE)(頻度≧10%,頻度が低下する順に)は、下痢、発疹、疲労、悪心、乾燥肌、咳、呼吸困難、食欲不振、心電図のQT延長(機械読み取り)、嘔吐、便秘、味覚異常、上気道感染、腹痛、背部痛、発熱、目眩、およびドライマウスであった。これらAEの大部分は、グレード1もしくはグレード2であり、研究薬物中止を生じなかった。研究薬物が原因となった死亡はなかった。
抗腫瘍活性を、上記間欠性5&9スケジュールおよび毎日投与スケジュールの両方においてXL−647を受けている被験体において観察した。間欠性スケジュールを使用する第1相研究において、NSCLCを有する1名の被験体は、未確認の部分応答(PR)を得た場合に、228日目まで安定した疾患を有し、14名の他の被験体(NSCLCを有する3名の被験体を含む)は、3ヶ月間より長く継続する長期の安定した疾患(SD)を有した。第2の第1相研究であるXL−647−002において、16名の被験体(NSCLCを有する3名の被験体を含む)は、3ヶ月間より長く継続するSDを達成した。上記5&9スケジュールにおける第2相研究XL−647−201に登録した上記38名の評価可能な被験体(第一線,EGFR変異について濃縮するように臨床的特徴について選択された被験体において)のうち、10名の被験体はPRを有し、17名の被験体は、71%という臨床利益率(PR+SD)に関して3ヶ月以上持続するSDを経験した。臨床利益を達成したこれらの被験体のうち、腫瘍がEGFRエキソン19欠失を含んでいた6名の被験体およびL858R変異を有する1名の被験体は、PRを経験し、L858R点変異を有する2名は、SDを有した。回帰もしくは再発性NSCLCを有する被験体(ステージIIIBもしくはステージIV,n=41)(エルロチニブもしくはゲフィチニブでの単一薬剤からの利益の後に進行性疾患が記録されたか、または公知のEGFR T790M変異を有する)における第2の第2相研究において、1名の被験体は、PRを達成し、19名の被験体は、それらの最良の応答としてSDを達成した。
上記間欠性5&9スケジュールにおいてXL−647の経口用量を受けている被験体の臨床薬物動態(PK)データの予備分析において、濃度時間曲線下の面積(AUC)および最大血漿薬物濃度(Cmax)は、一般に、研究した全用量範囲(すなわち、3.4〜586mgの全用量)にわたって、用量と比例して増大した。5連続用量後のメジアン終末半減期は、約60時間であり、一般に、用量とは無関係であるようであった。XL−647は、経口投与後に迅速に吸収され、メジアンtmaxは約4時間であった。300mg/日(MTD)での1日1回の経口投与後に、XL−647は血漿中に約4倍蓄積し、定常状態は、約15日目までに達成された。300mg XL−647の1日1回の投与は、350mgの間欠性5&9投与に対して、28日の期間にわたる平均曝露において約2倍の増大を生じた。
非臨床的およびインビトロ代謝プロファイリング研究から、XL−647は、ヒト肝臓ミクロソームにおけるCYP3A4媒介性代謝の基質であることが示唆される。XL−647は、インビトロでアイソザイムCYP2D6およびCYP2C8のインヒビターであったが、ヒト肝臓ミクロソーム中のCYP3A4のインヒビターではなかった。XL−647は、複数の種において経口で生体利用可能であり、ヒト血漿において非常にタンパク質に結合する(93〜99%)。
健康な被験体における臨床的食品効果研究(XL−647−004)において、AUCは、食品の存在下で約18%増大したのに対して、Cmaxは、約5%だけ増大するに過ぎなかった。従って、食品を伴ったXL−647の投与、またはCYP3A4の活性を阻害する薬物もしくは物質と組み合わせた場合は、上昇したXL−647曝露を生じ得る。
マスバランス研究からの予備データから、XL−647は、顕著に代謝され、主に糞便中に排出されることが示唆された。

Claims (13)

  1. 哺乳動物におけるPKDを処置する方法であって、該方法は、治療上有効な量の以下の式:
    の化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩を投与する工程を包含する、方法。
  2. 前記哺乳動物はヒトである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記哺乳動物はネコ科の動物である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記ネコ科の動物は、ペルシャ猫である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記化合物は、該化合物もしくはその塩、ならびに薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、および/もしくは希釈剤を含む薬学的組成物の形態において送達される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 哺乳動物におけるPKDを処置するための医薬の製造のための、以下の式:
    の化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩の使用。
  7. 前記哺乳動物はヒトである、請求項6に記載の使用。
  8. 前記哺乳動物はネコ科の動物である、請求項6に記載の使用。
  9. 前記ネコ科の動物はペルシャ猫である、請求項8に記載の使用。
  10. 哺乳動物におけるPKDを処置することにおいて使用するための化合物、もしくは化合物を含む組成物であって、ここで該化合物は、以下の式:
    である、化合物もしくは組成物。
  11. 前記哺乳動物はヒトである、請求項10に記載の化合物もしくは組成物。
  12. 前記哺乳動物はネコ科の動物である、請求項10に記載の化合物もしくは組成物。
  13. 前記ネコ科の動物はペルシャ猫である、請求項12に記載の化合物もしくは組成物。
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