JP2013535200A - 細胞培養コーティングのためのプレポリマー調製品 - Google Patents

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Abstract

培養中の細胞、特に、治療に使用される細胞を担持することのできる合成表面を製造するための組成物が開示されている。この合成表面は、一方が細胞接着性ペプチドを有し、他方が架橋剤部分を有する、プレポリマーから形成される。それらの表面を製造する方法、並びにその表面上で細胞を培養する方法が開示されている。

Description

本開示は、合成細胞培養物品を製造する方法に関する。より詳しくは、本開示は、官能化された細胞結合ペプチドプレポリマーを架橋剤官能化プレポリマーと架橋させて、細胞培養表面に適した架橋ポリマーブレンドを形成することによって、細胞培養物品を製造する方法に関する。その上、本開示は、既知組成培地中の細胞培養物を担持するための合成表面および物品に関する。
配列表
本出願は配列表を含む。配列表に含まれる情報をここに引用する。
疾患の治療のためにヒトに導入できる細胞である治療用細胞が開発されている。治療用細胞の例としては、3種類の胚葉のいずれかに分化して、人体の任意の成体細胞タイプを生じる能力を有するヒト胚性幹細胞(hESC)などの多能性幹細胞が挙げられる。幹細胞のこの性質は、糖尿病、脊髄損傷、心臓病などの数多くの深刻な細胞変性疾患の新たな治療法を開発するための可能性を提供する。しかしながら、そのようなhESCに基づく治療の開発には、依然として障害がある。治療用細胞の培養物を開発し、管理する上で、細胞と組織の培養において適切な数の治療用細胞を得て維持すること、並びにこれらの細胞が、細胞培養中に望ましくない様式で変化しないことを確実にすることが重要である。例えば、hESC細胞培養物などの幹細胞培養物は、一般に、細胞銀行または細胞株からの少数の細胞により播種され、次いで、所定の治療用途のために分化が望ましくなるまで、未分化状態で増幅される。このことを達成するために、hESCまたはそれらの未分化細胞は現在、支持細胞層、血清、またはニュージャージー州、フランクリン・レイクス所在のBD Biosciences社から市販されているMatrigel(商標)などの、動物由来成分を含有する培地または表面の存在下で培養されている。培養環境にこれらの動物由来成分を添加すると、患者に移ったり、hESCの全体的な培養と維持を損なったりし得る潜在的に有害なウイルスまたは他の病原菌に、細胞が曝露される。その上、そのような生物学的製品は、バッチ毎のばらつき、免疫応答および限られた貯蔵寿命を被りやすい。
したがって、既知組成培地または無血清培地において、培養中の治療用細胞を含む細胞を担持できる合成細胞培養表面を製造する方法、およびそのように製造された表面が望ましい。
態様(1)において、高分子細胞培養表面を形成するための組成物であって、第1の高分子主鎖に結合された(conjugated to)細胞接着性ペプチドを含む第1のプレポリマー、および第2の高分子主鎖に結合された架橋剤部分を含む第2のプレポリマーを有してなる組成物が提供される。態様(2)において、細胞接着性ペプチドがRGD配列を含む、態様1の組成物が提供される。態様(3)において、細胞接着性ペプチドが、ビトロネクチン、ラミニン、骨シアロタンパク質、コラーゲン、またはフィブロネクチン中に見つかるアミノ酸の配列である、態様1または2の組成物が提供される。態様(4)において、細胞接着性ペプチドが、KGGGQKCIVQTTSWSQCSKS(配列番号1)、GGGQKCIVQTTSWSQCSKS(配列番号2)、KYGLALERKDHSG(配列番号3)、YGLALERKDHSG(配列番号4)、KGGSINNNRWHSIYITRFGNMGS(配列番号5)、GSINNNRWHSIYITRFGNMGS(配列番号6)、KGGTWYKIAFQRNRK(配列番号7)、GGTWYKIAFQRNRK(配列番号8)、KGGTSIKIRGTYSER(配列番号9)、GGTSIKIRGTYSER(配列番号10)、KYGTDIRVTLNRLNTF(配列番号11)、YGTDIRVTLNRLNTF(配列番号12)、KYGSETTVKYIFRLHE(配列番号13)、YGSETTVKYIFRLHE(配列番号14)、KYGKAFDITYVRLKF(配列番号15)、YGKAFDITYVRLKF(配列番号16)、KYGAASIKVAVSADR(配列番号17)、YGAASIKVAVSADR(配列番号18)、CGGNGEPRGDTYRAY(配列番号19)、GGNGEPRGDTYRAY(配列番号20)、CGGNGEPRGDTRAY(配列番号21)、GGNGEPRGDTRAY(配列番号22)、KYGRKRLQVQLSIRT(配列番号23)、YGRKRLQVQLSIRT(配列番号24)、KGGRNIAEIIKDI(配列番号25)、GGRNIAEIIKDI(配列番号26)、KGGPQVTRGDVFTMP(配列番号27)、GGPQVTRGDVFTMP(配列番号28)、GRGDSPK(配列番号29)、KGGAVTGRGDSPASS(配列番号30)、GGAVTGRGDSPASS(配列番号31)、YaalPQVTRGNVFTMP(配列番号32)、RGDYK(配列番号33)、およびそれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸の配列である、態様1〜4いずれか1つの組成物が提供される。態様(5)において、第1のプレポリマーが、式Rm−Sp−Capの官能化細胞接着性ペプチドの重合生成物を含み、式中、Rが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミドおよびフマレート、並びにそれらの組合せからなる群より選択される重合部分であり、mが1より大きい整数であり;Spが、式(O−CH2CHR’)m2を有するポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド(式中、R’はHまたはCH3であり、m2が0から20までの整数である)、またはXaan(式中、Xaaは、独立して任意のアミノ酸であり、nは0から3までの整数である)、もしくはそれらの組合せを含む随意的なスペーサ部分であり;Capは、細胞接着性配列を含むペプチドである、態様1〜4いずれか1つの組成物が提供される。態様(6)において、第1のプレポリマーが、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和モノマーとの重合生成物を含み、細胞接着性ペプチドがこのカルボキシル基を通じて第1のプレポリマーに結合されている、態様1〜5いずれか1つの組成物が提供される。態様(7)において、第1のプレポリマーのエチレン性不飽和モノマーが親水性である、態様6の組成物が提供される。態様(8)において、カルボキシル基を有さない第1のプレポリマーエチレン性不飽和モノマーが親水性である、態様6または7の組成物が提供される。態様(9)において、第2のプレポリマーが、エチレン性不飽和モノマーの重合生成物を含む、態様1〜8いずれか1つの組成物が提供される。態様(10)において、第2のプレポリマーのエチレン性不飽和モノマーが親水性である、態様9の組成物が提供される。態様(11)において、第2のプレポリマーが、ポリ−HEMAに結合したベンゾフェノン架橋剤部分を含む、態様10の組成物が提供される。態様(12)において、第2のプレポリマーが、エチレン性不飽和モノマーの重合生成物である、態様5の組成物が提供される。態様(13)において、第2のプレポリマーが、エチレン性不飽和モノマーの重合生成物を含む、態様6の組成物が提供される。態様(14)において、第1のプレポリマーを構成するカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和モノマーおよび第2のプレポリマーを構成するエチレン性不飽和モノマーが同じである、態様10〜13いずれか1つの組成物が提供される。態様(15)において、架橋剤部分が、ベンゾフェノンなどの感光性試薬を含む、態様1〜14いずれか1つの組成物が提供される。
追加の態様(16)において、細胞培養物品を製造する方法において、態様1〜15いずれか1つの第1と第2のプレポリマーを基板に提供する工程、および基板上の第1と第2のプレポリマーを、第1と第2のプレポリマーを互いと基板に架橋させるためのエネルギー源に曝露する工程を有してなる方法が提供される。態様(17)において、態様16の方法により製造された細胞培養物品が提供される。
細胞接着性ペプチドを含有する第1のプレポリマーの実施の形態である、ポリ(HEMA−co−MAA−PEG4−VN)を製造する方法を示す説明図 最初にHEMA−co−CEAを提供し、次いで、ペプチドを結合させて、HEMA−co−CEA−ペプチドを形成することによって、第1のプレポリマーの代わりの実施の形態を形成する反応を示す説明図 Photo−HEMAプレポリマーである第2のプレポリマーの実施の形態を製造する方法を示す説明図 細胞培養表面の実施の形態を製造するためのプレポリマーのPhoto−HEMAおよびポリ(HEMA−co−MAA−PEG4−VN)の組合せを示す説明図 細胞培養表面の実施の形態を形成するためのプレポリマーのPhoto−HEMAおよびポリ(HEMA−co−MAA−PEG4−VN)の架橋を示す別の説明図 Photo−HEMAおよびポリ(HEMA−co−CEA−VN)を組み合わせた、架橋済みプレポリマー細胞培養表面の別の実施の形態の説明図 二成分混合物におけるコポリマーを形成する第2のプレポリマー(光反応性プレポリマー)のパーセントの関数としての固定化された細胞培養コーティングの量を示すグラフ コーティングに使用される溶液中のペプチド含有プレポリマーである第1のプレポリマーの濃度(mg/ml)の関数としての固定化されたヒドロゲルの量を示すグラフ 二成分混合物における、ペプチド結合プレポリマーである第2のプレポリマーの質量パーセントの関数としての固定化されたペプチドの量(ピコモル/mm2)を示すグラフ 実施の形態による光ヒドロゲル被覆フラスコおよび未被覆の対照フラスコのコロイド金染色を示す写真 本発明の細胞培養表面の実施の形態(A)上および細胞接着性ペプチドを含まない対照表面(B)上のHT1080細胞を示す顕微鏡写真 コーニング社からのSynthemax(商標)(図12A)上、VN−HEMA−CEA(図12B)上、およびHEM−CEA(細胞接着性ペプチドを含まない)(図12C)上のNulli−SCC1細胞を示す顕微鏡写真。図12Dは、図12A〜Cに示された3種類の表面上の細胞増殖のOD測定値を示すグラフである。 コーニング社からの「Synthemax」(図13A)上、VN−HEMA−CEA(図13B)上、およびHEM−CEA(細胞接着性ペプチドを含まない)(図13C)上のES−D3細胞を示す顕微鏡写真。図13Dは、図13A〜Cに示された3種類の表面上の細胞増殖のOD測定値を示すグラフである。 ニュージャージー州、フランクリン・レイクス所在のBD Biosciences社から市販されている「Matrigel」(図14A)上、ニューヨーク州、コーニング所在のコーニング社から市販されている「Symthemax」(図14B)上、高分子コーティングのポリ(HEMA−co−VN−PEG4−MAA−10%)の実施の形態(図14C)上、およびPhotoHEMA+ペプチドの陰性対照(図14D)上の48時間後のES−D3マウス胚性幹細胞接着および形態を示す顕微鏡写真
実施の形態において、本開示は、合成高分子細胞培養表面を形成するための組成物であって、第1の高分子主鎖に結合した細胞接着性ペプチドを含む第1のプレポリマー、および第2の高分子主鎖に結合した架橋剤部分を含む第2のプレポリマーを有してなる組成物を提供する。実施の形態において、本開示は、細胞培養表面を製造する方法であって、細胞培養基板または基材の存在下で、第1のプレポリマーに第2のプレポリマーを提供する工程、第1のプレポリマーと第2のプレポリマーの混合物をエネルギー源に曝露して、細胞培養基材に結合した反応性ポリマーブレンドを形成する工程を有してなる方法も提供する。追加の実施の形態において、本開示は、前記プレポリマー組成物から製造された合成細胞培養表面、およびそのように製造された合成細胞培養表面上で細胞を培養する方法を提供する。
以下の詳細な説明において、その一部を形成し、装置、システムおよび方法のいくつかの特別な実施の形態が実例としてその中に示されている添付図面を参照する。他の実施の形態も考えられ、本開示の範囲または精神から逸脱せずに製造されるであろうと理解されよう。したがって、以下の詳細な説明は、制限の意味で解釈すべきではない。
ここに用いた科学用語と技術用語の全ては、別記しない限り、当該技術分野で一般に使用されている意味を有する。ここに与えられた定義は、この中に頻繁に使用されている特定の用語の理解を容易にするためであり、本開示の範囲を制限することは意図されていない。
本明細書および付随の特許請求の範囲に使用されるように、単数形は、明らかにそうではないと内容が指示しない限り、複数の対象を有する実施の形態を包含する。本明細書および付随の特許請求の範囲に使用されるように、「または」という用語は一般に、明らかにそうではないと内容が指示しない限り、「および/または」を含む意味で使用される。
ここに用いたように、「有する(have)(having)」、「含む(include)(including)」、「含む(comprise)(comprising)」などは、制限のない意味で使用されており、一般に、「含むが、それに制限されない」を意味する。
例えば、合成または組換えタンパク質もしくはペプチドを有する表面を含む合成細胞培養表面が、疾患の治療のためにヒトに導入できる細胞を担持するのに適している。合成ペプチドおよびタンパク質は、RGDなどの細胞接着性配列を含んでよい。ポリペプチド配列は、ここでは、それらの一文字のアミノ酸コードにより、またそれらの三文字のアミノ酸コードにより、言及される。これらのコードは交換可能に使用してよい。ペプチドは高価なことがあり、数少ないペプチドしか必要ない表面はそれほど高価ではないので、培養されている生存細胞を担持するのに必要なペプチドの量を減少させる合成表面が望ましい。その上、製造が容易であり、貯蔵中に安定であり、滅菌手法中ずっと安定であり、水性細胞培養条件への長期の曝露中ずっと安定である合成表面も望ましい。
本発明の実施の形態において、第1の高分子主鎖に結合した細胞接着性ペプチドを含む第1のプレポリマーが提供される。
実施の形態において、第1のプレポリマーは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミドまたはフマレートなどのエチレン性不飽和モノマーを有する重合部分を担持するように修飾すなわち官能化されたペプチドまたはポリペプチドを有し、第1のプレポリマーを形成するために重合されるモノマーから形成される。本開示の目的に関して、「官能化ペプチド」は、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、マレイミド基またはフマレート基などの重合部分を有するように修飾されたペプチドを意味する。実施の形態において、これらの重合部分は、随意的な触媒と共にUVまたは可視光などの外部エネルギー源の存在下で、または随意的な触媒と共に熱重合により、高分子を形成できる。実施の形態において、官能化ペプチドまたはポリペプチドはスペーサ部分を含有してもよい。
実施の形態において、官能化ペプチドは、式1:
式1: Rm−Sp−Cap
により記載される。
実施の形態において、Rmは、外部エネルギー源の存在下で重合できる、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミドまたはフマレートを含むα,β−不飽和基すなわちエチレン性不飽和基である、重合部分である。「m」は、1以上の整数である。実施の形態において、官能化ペプチドは、光重合部分または熱重合部分であってよい重合部分Rmを有する。
実施の形態において、Spはスペーサである。実施の形態において、Spは、例えば、式(O−CH2CHR’)m2により表されるポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)(式中、R’はHまたはCH3であり、m2は0から20までの整数である)を含むポリアルキレンオキシドであってよい。このスペーサは、親水性スペーサ、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)であってよい。実施の形態において、スペーサはPEO4である。実施の形態において、比較的短い鎖のポリアルキレンオキシドが望ましい。例えば、実施の形態において、Spは、PEG2、PEG4、PEG6、PEG8、PEG10、PEG12、またはPPG2、PPG4、PPG6、PPG8、PPG10、PPG12またはPPG20であってよい。実施の形態において、スペーサは、20以下の反復単位(すなわち、PEG4、PEG6、PEG8、PEG10、PEG12、PEG14、PEG16、PEG18またはPEG20)を有するポリエチレンオキシドである。実施の形態において、Spは、官能基を有するPPGまたはPEGである。例えば、そのPEGまたはPPGスペーサは、マレイミド、チオール、アミン、シラン、アルデヒド、エポキシド、イソシアネート、アクリレートまたはカルボキシル基を有してよい。実施の形態において、PEGスペーサは、アミン官能基を有するPEGである、JEFFAMINE(登録商標)である。追加の実施の形態において、そのPEGまたはPPGスペーサは分岐していてよい。例えば、分岐PEGまたはPPOは、Y分岐または星形PEGまたはPPGであってよい。実施の形態において、これらの分岐PEGまたはPPOは、多数のペプチドを、1つの官能ペプチドを通じて基材に結合させられるであろう。
細胞培養表面が一度形成されたら、スペーサは、ペプチド(Cap)を細胞培養表面から離して延ばし、そのペプチドを培養されている細胞に一層アクセス可能にし、細胞培養のための表面の効率を改善するように働くであろう。その上、親水性スペーサは、タンパク質を寄せ付けず、細胞またはタンパク質の官能化ペプチドへの非特異的吸収を防ぐように働くであろう。実施の形態において、細胞培養物品を調製する際のPEO(ポリエチレンオキシド)などのスペーサを有する細胞接着性ペプチドを使用すると、全体的に低い濃度の接着性ペプチドを使用して、そのような物品を調製することが可能になる。
実施の形態において、Spはアミノ酸Xaanであってよく、式中、Xaaは、独立して任意のアミノ酸であり、nは、0から30まで、0から10まで、0から6まで、または0から3までの整数である。例えば、実施の形態において、Spはアミノ酸Xaanであってよく、式中、XaaはGであり、n=1から20であり、またはSpはアミノ酸Xaanであってよく、式中、XaaはKであり、n=1から20であり、またはSpはアミノ酸Xaanであってよく、式中、XaaはDであり、n=1から20であり、またはSpはアミノ酸Xaanであってよく、式中、XaaはEであり、n=1から20である。実施の形態において、スペーサSpは、LysGlyGlyまたはLysTyrGlyなどの3つのアミノ酸配列であってよい。実施の形態において、Xaanは、一連の同じアミノ酸である。実施の形態において、スペーサSpは、Xaanとポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドとの組合せであってよい。Xaanは、リシン、グリシン、グルミタン酸、アスパラギン酸、またはアルギニンアミノ酸などの親水性アミノ酸を含んでよい。実施の形態において、Xaanは末端リシンまたはアルギニンを有してもよい。もしくは、実施の形態において、スペーサSpは、任意の組合せで、ポリエチレンオキシドスペーサとアミノ酸スペーサとを含んでもよい。実施の形態において、Spは、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸またはヘキサエチレンジアミンなどの疎水性スペーサであってよい。実施の形態において、Spはメタクリル酸カルボキシエチルであってよい。
重合部分は、ポリエチレンオキシドを通じて、リシンなどのアミノ酸の側鎖を通じて、またはアミノ酸のN末端で、スペーサSpに結合してよい。アミノ酸Xaanは、それ自体を分解から保護するために、アセチル化および/またはアミド化されてもよい。しかしながら、Xaanがアセチル化されている場合、重合部分は、アミノ酸のN末端を通じてXaanに結合され得ない。例えば、メタクリル酸は、SpがXaanであり、Xaaがリシンであり、n=1、およびRmがメタクリル酸である場合、リシンアミノ酸の側鎖を通じて、リシンアミノ酸に結合されるであろう。
実施の形態において、スペーサSpはXaanであり、Xaaは末端のリシンを有する。実施の形態において、Xaanは重合部分Rmに結合されていてよい。例えば、Xaanは、(MAA)LysGlyGlyまたは(MAA)LysTyrGlyであってよく、式中、MAAは、末端のリシンアミノ酸の側鎖を通じてXaanに結合した重合部分であるメタクリル酸(MAA)である。追加の実施の形態において、重合部分は、N末端がアセチル化されていなければ、Xaanアミノ酸またはアミノ酸鎖のN末端に結合されていてよい。各官能化ペプチドは、少なくとも1つの重合部分を有し、複数有していてもよい。Capは、細胞接着性または細胞結合性配列を有するペプチドまたはポリペプチドである。実施の形態において、細胞接着性または細胞結合性配列はRGDである。
実施の形態において、第1のプレポリマーは、上述したように、官能化ペプチドの重合生成物から形成してもよい。追加の実施の形態において、第1のプレポリマーは、追加のモノマーと、例えば、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとして、任意の形態で共重合された官能化ペプチドの重合生成物から形成してもよい。実施の形態において、これらの追加のモノマーは、例えば、低級アルキル、すなわち、C1からC20アルキルを含む(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレート、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルまたは(メタ)アクリル酸ドデシルを含むエチレン性不飽和モノマーである。さらに、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルおよび(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルなどの環式アルキルモノマー種を使用してもよい。メタクリル酸およびアクリル酸などの官能性モノマー、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルおよび(メタ)アクリル酸ジエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル。(メタ)アクリレートにより、メタアクリレートまたは類似のアクリレートのいずれを使用してもよいことを意味する。実施の形態において、追加のモノマーは非イオン性であってよい。実施の形態において、追加のモノマーは親水性であってよい。
図1は、官能化細胞接着性ペプチドプレポリマーから、第1のプレポリマーの実施の形態であるポリ(HEMA−co−MAA−PEG4−VN)を製造する方法を示す説明図である。図1に示されるように、官能化ペプチド101は、PEG4スペーサおよびメタクリル酸(MAA)重合部分を有する。式1:Rm−Sp−Capに戻ると、図1に示された実施の形態によれば、RmはMAAであり、SpはPEG4であり、Capは、RGD配列を含有する、VNと付された表1に示された配列のいずれであってもよいビトロネクチン配列のVNである。図1に示されるように、MAA−PEG4−VN官能化ペプチドは、熱開始剤であるエタノールの存在下、またはアルゴンまたはN2雰囲気下における68℃で、エチレン性不飽和モノマー102、この場合にはHEMAと反応させられて、第1のプレポリマー110の実施の形態である、HEMA−co−MAA−PEG4−VNを形成する。実施の形態において、官能化ペプチドプレポリマーは、10,000ダルトン超のMn(一般に20,000〜100,000)および30,000ダルトン超のMw(一般に、50,000から300,000)を有する。
追加の実施の形態において、第1のプレポリマーである官能化ペプチドプレポリマーは、そのエチレン性不飽和モノマーの1つがカルボキシル官能基を有するものである、複数のエチレン性不飽和モノマーから形成された主鎖を有するプレポリマーから形成される。実施の形態において、第1のプレポリマーを形成するエチレン性不飽和モノマーが、カルボキシル官能基を有してもよい。カルボキシル官能基は、必要以上の実験をせずに、適切な官能基がある、先に列記したエチレン性不飽和モノマーに組み込まれてもよいことが当業者には理解されよう。カルボキシル官能基を有するモノマーの一例はアクリル酸2−カルボキシエチル(CEA)であるが、多くのカルボキシル基含有モノマーを提供してもよい。実施の形態において、カルボキシル基を有さない第1のプレポリマーを形成するエチレン性不飽和モノマーは親水性である。実施の形態において、カルボキシル基を有する第1のプレポリマーを形成するエチレン性不飽和モノマーは親水性である。
図2は、第1のプレポリマーの実施の形態を形成するための反応を示す説明図である。図2において、2種類のエチレン性不飽和モノマーである、HEMA202およびCEA201が提供される。これらの2種類のモノマーが反応工程210において重合させられて(重合開始剤PI、204を添加することにより)、HEMA−co−CEAポリマー205が形成される。この重合は、紫外線203により、重合開始剤(PI)204の存在下で行われる。次いで、ペプチド221がHEMA−co−CEAポリマー205に結合させられて、反応222により、ペプチドが結合したHEMA−co−CEAポリマー220が形成される。適切な技法の1つに、当該技術分野で一般に公知の、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)/N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)化学反応が挙げられる。アミン反応性NHSエステルを生成するために、EDCおよびNHSまたはN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)をHEMA−co−CEAポリマーのカルボキシル基と反応させても差し支えない。本発明の実施の形態において、ペプチドとの結合のためのカルボキシル基を有するモノマーを含むことは重要である。EDCは、HEMA−co−CEAポリマーのカルボキシル基と反応して、加水分解を受けやすいアミン反応性O−アシルイソウレア中間体を生成する。NHSまたはスルホ−NHSの添加により、アミン反応性O−アシルイソウレア中間体をアミン反応性NHSまたはスルホ−NHSエステルに転化することによって、この中間体を安定化させて、二段階手法が可能になる。HEMA−co−CEAポリマーの活性化後、次いで、ペプチド221を加え、このペプチドの末端アミンを前記アミン反応性エステルと反応させて、安定なアミド結合を形成し、それゆえ、ポリペプチドをHEMA−co−CEAポリマーに結合させ、ペプチド結合HEMA−co−CEAポリマー220を形成することができる。EDC/NHS化学反応により、NHSとEDCの化学的性質を使用したポリペプチドのゼロレングス架橋が生じる。過剰なCOOHは、例えば、エタノールアミンでブロッキングしてもよい。
実施の形態において、第1のプレポリマーは、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーとカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和モノマーとの重合生成物を含み、細胞接着性ペプチドが、そのカルボキシル基を通じて第1のプレポリマーに結合されている。実施の形態において、第1のプレポリマーを製造するために使用されるカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和モノマーおよび第2のプレポリマーを製造するために使用されるエチレン性不飽和モノマーは同じモノマーである。
実施の形態において、細胞接着性ペプチドまたは細胞接着性ポリペプチド(これらの用語は相互に交換可能である)(Cap)は、例えば、インテグリン結合配列またはR−G−D配列であってよい、細胞結合または細胞接着性配列を有する。実施の形態において、細胞接着性ペプチドは、ビトロネクチン、ラミニン、骨シアロタンパク質、コラーゲン、またはフィブロネクチン中に見つかるアミノ酸の配列である。本開示の目的に関して、ペプチドまたはポリペプチドは、化学的に合成されても、または組換え方法により製造されてもよいアミノ酸配列である。しかしながら、本開示の目的に関して、ペプチドまたはポリペプチドは、完全なタンパク質ではなく、タンパク質の断片である。その上、ペプチドまたはポリペプチドは、動物源から単離されない。実施の形態において、ペプチドまたはポリペプチドは、lが0から3までの整数であり、Yaaがどのアミノ酸であっても、または、例えば、重合性基の結合を可能にするために末端アミノ酸がリシンまたはアルギニンでなければならないリシンを含んでよい、ビトロネクチンペプチド配列である、YaalProGlnValThrArgGlyAspValPheThrMetPro(配列番号32)のアミノ酸配列を含んでよい。実施の形態において、前記ペプチドまたはポリペプチドは環式であってよい。例えば、RGDYK(配列番号33)は環式c(RGDyK)であってよい。
実施の形態に使用してよいペプチドの例が表1に列挙されている。
Figure 2013535200
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存在するまたは細胞培養表面からアクセスできるペプチドの量は、プレポリマーの組成、スペーサの長さ、およびポリペプチド自体の性質に応じて様々であり得ることが理解されよう。その上、培養中の異なる細胞は、プレポリマーの組成、並びに表面で利用できるペプチドの個性と量に対して異なって応答するであろう。実施例において以下に論じるように、より高密度のペプチドが、例えば、既知組成培地中の未分化幹細胞などの特定の細胞タイプの付着および増殖をよりよく支持できるであろうが、異なるペプチド濃度で、他の細胞タイプがよりうまく増殖するかもしれない。
実施の形態において、第2の高分子主鎖に結合した架橋剤部分を有する第2のプレポリマーが提供される。この結合した架橋剤部分は、光反応性部分または熱反応性部分であってよい。例えば、架橋剤部分は、α,β不飽和ケトン光反応性基であってよい。光反応性基は、光に曝露された際に高反応性種を形成する分子または部分である。光反応性基の例としては、アジド、ジアザレン、ベータカルボニルジアゾ、ベンゾフェノン、アセトフェノンおよびそれらの誘導体が挙げられる。反応性種としては、ニトレン、カルベンおよびラジカルが挙げられる。その反応性種は、一般に、共有結合を形成することができる。例えば、実施の形態において、光反応性部分は、ベンゾフェノン含有部分、置換アリールアジド含有部分またはトリフルオロメチルアリールジアジリン含有部分である。実施の形態において、第2のプレポリマーは、「Photo−HEMA」と称される。本開示の目的に関して、「Photo−HEMA」は、結合した架橋剤部分を有するポリHEMAプレポリマーである。例えば、架橋剤部分は、ベンゾフェノン含有部分であってよい。実施の形態において、第2のプレポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合生成物を含み、架橋剤部分もさらに含む。
図3は、第2のプレポリマー(Photo−HEMA)の実施の形態を製造する方法を示す説明図である。図3は、ベンゾフェノンモノマー301およびHEMAモノマー302を示している。これらのモノマーは、第2のプレポリマー310を形成するために、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)などの開始剤の存在下で重合303させてもよい。このPhoto−HEMAプレポリマーは、第2の高分子主鎖に結合した架橋剤部分を含む第2のプレポリマーの実施の形態である。測定値は、N−(3−メタクリルアミドプロピル)−4−ベンゾイルベンズアミドおよびHEMAの共重合が90%超であることを示す(結果は示していない)。Photo−HEMAは、一般に、10,000超のMnおよび30,000超のMwを有する。
どのような適切な開始剤を使用してもよい。重合開始剤の例としては、有機過酸化物、アゾ化合物、キノン、ニトロソ化合物、ハロゲン化アシル、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、イミダゾール、クロロトリアジン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジケトン、フェノン、またはそれらの混合物が挙げられる。適切な市販の紫外線活性化および可視光活性化光開始剤の例としては、ニューヨーク州、タリタウン所在のCiba Specialty Chemicals社から市販されている、IRGACURE 651、IRGACURE 184、IRGACURE 369、IRGACURE 819、DAROCUR 4265およびDAROCUR 1173、およびBASF社(ノースカロライナ州、シャーロット所在)から市販されているLUCIRIN TPOおよびLUCIRIN TPO−Lなどの商標名のものが挙げられる。
追加の開始剤としては、例えば、(VA−044)2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩;(VA046B)2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫化物脱水物;(VA−50)2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩;(VA−057)2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物;(VA−060)2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩;(VA−061)2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン];(VA−067)2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチレンプロパン)二塩酸塩;(VA−080)2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド};または(VA−086)2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]を含む、熱重合に使用できる水溶性アゾ開始剤が挙げられるであろう。熱重合に、(V−70)2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル);(V−65)2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル);(V−601)ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート);(V−59)2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル);(V−40)1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル);(VF−096)2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド];(V−30)1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド;(VAm−110)2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド);または(VAm−111)2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)などの油溶性アゾ開始剤を使用してもよい。これらの開始剤は、例えば、バージニア州、リッチモンド所在のWAKO Chemicals社から入手できる。その上、PEG主鎖を有するアゾ開始剤などの高分子開始剤を熱重合に使用してもよい。
光増感剤が、適切な開始剤系に含まれてもよい。代表的な光増感剤は、カルボニル基または第三級アミノ基もしくはそれらの混合物を有する。カルボニル基を有する光増感剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンジル、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、キサントン、チオキサントン、9,10−アントラキノン、および他の芳香族ケトンが挙げられる。第三級アミンを有する光増感剤としては、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フェニルメチルエタノールアミン、および安息香酸ジメチルアミノエチルが挙げられる。市販の光増感剤としては、英国、クローリー所在のBiddle Sawyer Corp社からのQUANTICURE ITX、QUANTICURE QTX、QUANTICURE PTX、QUANTICURE EPDが挙げられる。
一般に、光増感剤または光開始剤の量は、0.01から10質量%まで様々であろう。陽イオン性光開始剤の例としては、アリールスルホニウム塩などのオニウム陽イオンの塩、並びにイオンアレーン系などの有機金属塩が挙げられる。
実施の形態において、本開示は、細胞培養表面を製造する方法であって、細胞培養基板または基材の存在下で、第1のプレポリマーに第2のプレポリマーを提供する工程、第1のプレポリマーと第2のプレポリマーの混合物をエネルギー源に曝露して、細胞培養基材に結合した反応性ポリマーブレンドを形成する工程を有してなる方法も提供する。追加の実施の形態において、本開示は、プレポリマー組成物から製造された合成細胞培養表面およびそのような製造された合成細胞培養表面上で細胞を培養する方法を提供する。
実施の形態において、本開示は、細胞培養表面を製造する方法であって、式Rm−Sp−Capの官能化細胞接着性ペプチド(例えば、図1の101)の重合生成物を含む第1のプレポリマー(式中、Rは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、またはフマレートおよびその組合せからなる群より選択される重合部分であり、mは1より大きい整数であり;Spは、例えば、式(O−CH2CHR’)m2を有するポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド(式中、R’はHまたはCH3であり、m2は0から20までの整数である)、またはXaa(Xaaは、独立して任意のアミノ酸であり、nは0から3までの整数である)、もしくはその組合せであり;Capは、細胞接着性配列を含むペプチドである)を、第2の高分子主鎖に結合した架橋剤部分を含む第2のプレポリマーと混合する工程を含む方法を提供する。
実施の形態において、本開示は、細胞培養表面を製造する方法であって、式Rm−Sp−Capの官能化細胞接着性ペプチドの重合生成物を含む第1のプレポリマー(式中、Rは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、またはフマレートおよびその組合せからなる群より選択される重合部分であり、mは1より大きい整数であり;Spは、例えば、式(O−CH2CHR’)m2を有するポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド(式中、R’はHまたはCH3であり、m2は0から20までの整数である)、またはXaa(Xaaは、独立して任意のアミノ酸であり、nは0から3までの整数である)、もしくはその組合せであり;Capは、第1の高分子主鎖に結合した細胞接着性配列を含むペプチドである)を、第2の高分子主鎖に結合した架橋剤部分を含む第2のプレポリマーと混合する工程を含む方法を提供する。
図4は、細胞培養表面の実施の形態を製造するためのプレポリマーのポリ(HEMA−co−MAA−PEG4−VN)110およびPhoto−HEMA310の組合せを示す。図5は、第1のプレポリマーのポリ(HEMA−co−MAA−PEG4−VN)を第2のプレポリマーのPhoto−HEMAと基板400上で組み合わせることによる、細胞培養表面の形成を示す説明図である。ペプチド部分を有する第1のプレポリマーおよび光反応性架橋剤部分を有する第2のプレポリマーの混合物を紫外線に曝露することによって、これらのプレポリマーが互いに架橋し、または基板に固定され、表面400上に高分子細胞培養コーティング500が形成される(図5および6を参照)。
図6は、Photo−HEMA310およびポリ(HEMA−co−CEA−VN)220を組み合わせた、架橋済みプレポリマー細胞培養表面の別の実施の形態の説明図である。ペプチド部分を有する第1のプレポリマーおよび光反応性架橋剤部分を有する第2のプレポリマーの混合物を紫外線に曝露することによって、これらのプレポリマーが互いに架橋し、または基板に固定され、表面400上に高分子細胞培養コーティング500が形成される。
実施の形態において、本開示は、細胞培養物品を製造する方法であって、第1の高分子主鎖に結合した細胞接着性ペプチドを含む第1のプレポリマー、および第2の高分子主鎖に結合した架橋剤部分を含む第2のプレポリマーを提供する工程、および基板上に第1と第2のプレポリマーを熱源に曝露して、第1と第2のプレポリマーを互いと基板に架橋させる工程を有してなる方法を提供する。
実施の形態において、基板は、セラミック物質、ガラス、プラスチック、ポリマーまたはコポリマー、それらの任意の組合せ、またはある材料の別の材料上のコーティングを含む、細胞を培養するのに適したどのような材料であってもよい。基材は、平らであっても、成形されていてもよい。そのような基材としては、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、Vycor(登録商標)ガラスまたは石英ガラスなどのガラス材料;シリコン;ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メチルメタクリレート)、(酢酸ビニル−無水マレイン酸)共重合体、ポリ(ジメチルシロキサン)モノメタクリレート、環式オレフィンポリマー、フルオロカーボンポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミンなどの樹状ポリマーを含むプラスチックまたはポリマー;(酢酸ビニル−無水マレイン酸)共重合体、(スチレン−無水マレイン酸)共重合体、(エチレン−アクリル酸)共重合体またはこれらの誘導体などのコポリマーが挙げられる。ここに用いるように、「環式オレフィンコポリマー」は、少なくとも1種類のモノマー種が環式オレフィンモノマーであり、少なくとも1種類の他のモノマー種が環式オレフィンモノマー種ではない、複数のモノマー種から形成されたポリマーを意味する。多くの実施の形態において、環式オレフィンコポリマーは、エチレンモノマーおよびノルボルネンモノマーから形成される。環式オレフィンコポリマー樹脂は、ケンタッキー州、フローレンス所在のBoedeker Plastics Inc社からのTOPAS(登録商標)および日本国の日本ゼオンからのZeonorの商標名で市販されている。
第1と第2のプレポリマーは、液体分配、回転塗布、吹付け塗布、または他の方法を含む当該技術分野で公知のどのような手段によって、基板の表面に提供してもよい。硬化または重合は、重合部分の性質に応じて、当該技術分野で公知のどのような手段によって行ってもよく、表面への紫外線、可視光、または熱エネルギーの適用を含んでもよい。架橋または硬化工程後、洗浄工程が望ましいであろう。洗浄は、撹拌の有無にかかわらず、液体分配およびインキュベーションを含む当該技術分野で公知のどのような手段により行ってもよく、その液体は、水、低級アルコール、水で希釈した低級アルコール、または他の溶媒であってよい。実施の形態において、合成細胞培養コーティングは、未反応モノマーまたはプレポリマーなどの不純物を除去するために、一回以上溶媒で洗浄してよい。様々な実施の形態において、層は、エタノールまたはエタノール水溶液、例えば、70%エタノール、90%超のエタノール、95%超のエタノールまたは約99%超のエタノールで洗浄される。70%エタノール溶媒による洗浄は、細胞毒であるかもしれない不純物を除去するように働くかもしれないだけでなく、細胞のインキュベーション前にその表面を滅菌するように働くことができる。
基材層を形成するプレポリマーに加え、コーティングを形成する組成物は、界面活性剤、湿潤剤、光開始剤、熱開始剤、触媒および活性化剤などの1種類以上の追加の化合物を含んでもよい。
実施の形態において、細胞培養表面は、細胞培養に適したどのような表面上に形成してもよい。細胞培養に適した物品の例としては、6,12,96,384および1536ウェルプレートなどのシングルおよびマルチウェルプレート、瓶、ペトリ皿、フラスコ、ビーカー、プレート、ローラーボトル、区画および多区画培養スライドなどのスライド、試験管、カバースリップ、バッグ、膜、中空繊維、ビーズおよびマイクロキャリア、カップ、スピナーボトル、潅流チャンバ、バイオリアクタ、CellSTACK(登録商標)(Corning Incorporated)および発酵槽が挙げられる。
図7は、二成分混合物中でコポリマーを形成する第2のプレポリマー(光反応性プレポリマー)のパーセントの関数としての固定化された細胞培養コーティングの量を示すグラフである。数量化は、クリスタル・バイオレット染色によって行われる。図7は、第1の高分子主鎖に結合した細胞接着性ペプチドを含む第1のプレポリマー、および第2の高分子主鎖に結合した架橋剤部分を含む第2のプレポリマーを含む高分子細胞培養表面を形成するための組成物中に存在する第2のプレポリマーのパーセントの関数としてのポリマーコーティングの固定化の用量依存性を示す。
図8は、コーティングに使用した溶液中のペプチド含有プレポリマーである第1のプレポリマーの濃度(mg/ml)の関数としての固定化されたヒドロゲルの量を示すグラフである。数量化は、クリスタル・バイオレット染色によって行われる。
図9は、二成分混合物におけるペプチド結合プレポリマーである第2のプレポリマーの質量パーセントの関数としての固定化されたペプチドの量(ピコモル/mm2)を示すグラフである。数量化は、Pierce(イリノイ州、ロックフォード所在)から得られるビシンコニン酸(BCA)アッセイにより行われる。
図10は、単離と精製後の光反応性ヒドロゲル形成コポリマーのベンゾフェノン含有量を決定できる校正曲線である。この校正曲線により、様々な濃度でのN−(3−メタクリルアミドプロピル)−4−ベンゾイルベンズアミド(1cmの光路)の溶液の336nmでの光学濃度(OD)が得られる。20mg/mlの光反応性ヒドロゲル形成コポリマー溶液の測定により、OD=0.907@336nmが得られ、これは、1.38mg/mlのN−(3−メタクリルアミドプロピル)−4−ベンゾイルベンズアミド、それゆえ、光反応性ヒドロゲル形成コポリマー中の6.9質量%のN−(3−メタクリルアミドプロピル)−4−ベンゾイルベンズアミド(モノマーの供給値からは7.6質量%と予測された)を与える。この結果は、N−(3−メタクリルアミドプロピル)−4−ベンゾイルベンズアミドとHEMAとの共重合が90%超であることを示す。
図10は、本発明の実施の形態により被覆されたフラスコおよび未被覆の対照フラスコの金コロイド染色(カリフォルニア州、ハーキュリーズ所在のBio−Radから市販されているColloidal Gold Total Protein Stain試薬)を示す写真である。
(i)治験研究に使用するため、または治療用途を開発するために、既知組成培地中の合成表面上で培養される十分な量の未分化幹細胞を得る、(ii)培養される細胞の治験研究のため、(iii)治療用途を開発するため、(iv)治療目的のため、(v)例えば、cDNAライブラリを作成することによって、遺伝子発現を研究するため、および(vi)薬物および毒性スクリーニングを研究するため、を含む任意の適切な目的のために、細胞を使用してよい。
本発明の方法の実施の形態により調製される細胞培養物品は、例えば、HT1080細胞、Nulli−SCC1細胞、ES−D3細胞、幹細胞、成体幹細胞、胚性幹細胞(ESC)、ヒト胚性幹細胞(hESC)または人工多能性細胞(IPC)を含む任意の関連細胞タイプの成長および増殖を促進するために親水性表面の界面に効果的に提示され得る。実施の形態において、培養されたこれらの細胞を治療用途に使用してもよい。ヒト胚性幹細胞(hESC)は、培養において未分化状態で連続的に増殖する能力を有するので、本発明に使用するためのhESCは、樹立された細胞株から得てもよい。樹立されたヒト胚性幹細胞の例としては、以下に限られないが、H1、H7、H9、H13またはH14(ウィスコンシン大学により樹立されたWiCellから入手できる)(Thompson (1998) Science 282:1145);hESBGN−01、hESBGN−02、hESBGN−03(ジョージア州、アセンズ所在のBresaGen,Inc.);HES−1、HES−2、HES−3、HES−4、HES−5、HES−6(シンガポール国所在のES Cell International,Inc.);HSF−1、HSF−6(カリフォルニア大学サンフランシスコ校);I3、I3.2、I3.3、I4、I6、I6.2、J3、J3.2(イスラエル国、ハイファ所在のTechnion−Israel Institute of Technologyで誘導された);UCSF−1およびUCSF−2(Genbacev et al., Fertil. Steril. 83(5):1517-29, 2005);株HUES1−17(Cowan et al., NEJM 350(13):1353-56, 2004);および株ACT−14(Klimanskaya et al., Lancet, 365(9471):1636-41, 2005)が挙げられる。本発明に使用される胚性幹細胞も、初代胚組織から直接得てもよい。一般に、この作業は、そうでなければ廃棄されるであろう、胚盤胞段階の凍結体外受精卵を使用して行われる。
他の適切な幹細胞としては、霊長類の人工多能性幹(iPS)細胞が挙げられる。本発明によるOPCは、霊長類の人工多能性幹(iPS)細胞から分化されてもよい。iPS細胞は、hESCなどの多能性幹細胞の表現型を得るために核が初期化されるように、例えば、1つ以上の適切なベクターでのトランスフェクションにより、遺伝子操作された、ヒトなどの幼若または成体哺乳類から得た細胞を称する。これらの核が初期化された細胞により得られる表現型の形質は、胚盤胞から単離された形態類似幹細胞、並びに胚性幹細胞から誘導された表面抗原発現、遺伝子発現およびテロメラーゼ活性類似胚盤胞が挙げられる。iPSは、概して、一次胚葉:外胚葉、内胚葉および中胚葉の各々から少なくとも1種類の細胞タイプに分化する能力を有し、それゆえ、様々な細胞タイプへの分化に適している。hESCなどのiPS細胞も、免疫不全マウス、例えば、SCIDマウスに注入されたときに、奇形腫を形成する(Takahashi et al., (2007) Cell 131(5):861; Yu et al., (2007) Science318:5858)。
本発明の実施の形態は、製造コストの全体的に著しい減少をもたらす、対費用効果的な様式で容易な製造プロセスにおいて、ペプチドなどの細胞に結合する接着性リガンドで表面を装飾するための効率的な技法を提供する。実施の形態において、それらの表面は、既知組成培地を使用して多能性(複数の潜在的な成果を有する)状態でヒト胚性幹細胞を含む細胞を培養するための有用な表面である。血清の使用は、治療用途を意図する培養細胞にとって有害であるかもしれない未確定の要因を細胞培養に導入するので、本発明の実施の形態における合成表面と組み合わされた既知組成培地の使用が重要である。
ここに開示されたプレポリマーを使用して調製される細胞培養コーティングには、以前に記載された方法より優れた利点がある。特に、この方法は、モノマーのその場重合と比べて、製造工程が削減され、よって、本発明のプロセスが、以前に開示されたプロセスよりも、制御可能であり、著しく安上がりであると予測される。実施の形態において、ここに開示された被覆プロセスにより、高いスループットで被覆物品を調製することができる。その上、関心のある様々な非処理基板上の細胞培養コーティングの非常に効率的な架橋と固定を行うことができる。それゆえ、この細胞培養コーティングの固定化は頑丈であり、細胞培養中に、コーティングの剥離や溶解は生じない。固定された細胞培養コーティングは、エタノール洗浄に耐え、よって、被覆物品は、エタノール水混合物により消毒することができる。ペプチド密度、架橋密度などのコーティングの性質は、組成物の2種類のプレポリマー成分の間の比率および固体含有量を単に変えることによって、微細に調整することができる。そのような微調整により、同じ原材料から、ペプチド密度、ゲルの厚さ、調整された架橋および剛性などの様々な性質を示す幅広いコーティングを調製することが可能になる。そのプロセスに関して、ポリマーを架橋させ、基板に結合させるために使用される方法は、空気中で行われ、それゆえ、不活性ガスのパージを必要としない(費用の節約)。光硬化条件は、水銀無電極ランプを使用した標準的なUV Fusionコンベヤシステムに適合する。本出願人は、意外なことに、本発明の組成物が、被覆すべき物品の壁、上面または下面を構成するポリスチレン材料を通しての紫外線曝露によって、都合よく架橋され、基板に取り付けられることも発見した。その場合、ポリスチレン材料は、非常に効率的な紫外線フィルタの役割を果たし、接着性ペプチドに有害な影響がある短い紫外線波長を遮断する。このことが、さらに組み立てなければならず、プロセスの複雑さを増す、蓋無しフラスコまたは分解された容器を使用する必要なく、組み立てられたフラスコまたは閉じた容器内での曝露を可能にする単純プロセスをもたらす。その上、ペプチドの分解を防ぐために、貯蔵が適切に行われ、光から保護され、温度が適切であり、防腐剤が加えられるという条件で、本発明の組成物により、組成物の有効期限が無制限となる。最後に、本発明の実施の形態により調製されたコーティングは、幹細胞の付着と増殖を支持し、少なくとも10から15ピコモル/mm2の接着性ペプチド密度を有する被覆プラスチック製品を対費用効果的に調製することが可能になる。
以下において、先に議論した物品および方法の様々な実施の形態を記載した非限定的実施例を提示する。
N−(3−メタクリルアミドプロピル)−4−ベンゾイルベンズアミドの調製
工程a:塩化4−ベンゾイルベンゾイルの合成 合成は、塩化ベンゾイル1の公知の合成にしたがった。4−ベンゾイル安息香酸(5g)を100mlの丸底フラスコに入れた。塩化チオニル(15ml)を加えた。この懸濁液を加熱して、1時間に亘り還流し、この最中に全ての固体が溶解した。回転蒸発により、全ての揮発性化合物を除去した。残留物をトルエン中に溶解させ、再び蒸発させた。塩化チオニルを全て除去するために、この操作を二回行った。粗製化合物は、石油エーテルからの再結晶化によりさらに精製できる(溶解度が100ml当たり約1gであることに留意)。この生成物は白色粉末である、Mp.95℃(Lit;:98〜99℃)。1H−NMRは公開データと合致する。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.20 (d, J = 7.5, 2H), 7.86 (d, J = 7.4, 2H), 7.78 (d, J = 7.4, 2H), 7.61 (d, J = 6.7, 1H), 7.49 (t, J = 7.4, 2H) ppm13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 195.31, 167.85, 143.27, 136.36, 135.75, 133.34, 131.15, 130.09, 130.01, 128.59 ppm。=O信号が170.42ppmである炭素スペクトルに、加水分解が容易に見られることに留意。
工程b:N−(3−メタクリルアミドプロピル)−4−ベンゾイルベンズアミドの合成: 730mg(4.1ミリモル)のN−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩を50mlの丸底フラスコ内の25mlのジクロロメタン中に溶解させた。1g(4.1ミリモル)の塩化4−ベンゾイルベンゾイルおよびフェノチアジン(1mg:重合開始剤として)を固体で加えた。トリエチルアミン(1.3ml、10ミリモル)を加えながら、懸濁液を氷浴で冷却した。氷浴を取り外し、3時間に亘り撹拌した。有機相を0.1NのHClで二回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させた。残りの粗生成物を、溶媒として酢酸エチルを使用したフラッシュカラムクロマトグラフィー(Rf=0.5)により精製した。収量は、510mg(36%)の純粋な化合物であった。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.01 (d, J = 7.5, 2H), 7.86 (d, J = 7.4, 2H), 7.80 (d, J = 7.2, 2H), 7.62 (s, 1H), 7.51 (d, J = 7.5, 2H), 5.81 (s, 1H), 5.39 (s, 1H), 3.49 ( 4H), 2.01 (s, 3H), 1.79 (s, 2H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 196.05, 169.53, 166.74, 139.93, 139.52, 137.63, 137.07, 132.79, 130.13, 130.06, 128.39, 127.00, 120.29, 35.98, 29.76, 18.68。
ポリHEMA−co−CEAプレポリマーの調製:
図2に示したように、撹拌子を備えた琥珀色のフラスコ内の90gのエタノールに、8.0g(0.061ミリモル)のHEMAおよび2.0g(13.9ミリモル)のアクリル酸カルボキシエチル(CEA)を加えた。次いで、0.30g(1.56ミリモル)の2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)を加え、溶解が完了するまで、撹拌した。1分間に亘りアルゴンをパージしながら、この溶液から酸素を除去した。次いで、密封したフラスコを、混合しなから68℃で24時間に亘り加熱し、光から保護した。室温まで冷却した後、ポリ(HEMA−co−CEA)ポリマーを、酢酸ブチル中での沈殿反応により単離した。得られた白色固体を酢酸ブチルで三回、ジイソプロピルエーテルで三回洗浄した。
ビトロネクチンペプチド結合コポリマー(VN−HEMA−CEA)の調製:
これも図2に示されるように、手短に言えば、100mgのポリ(HEMA−co−CEA)を1.5mlの無水DMF中に40℃で混合しながら溶解させた。1.67mlのEDC/NHS(400/200mM)を加え、30分間に亘り撹拌して、ポリ(HEMA−co−CEA)ポリマーのカルボン酸基を活性化させた。これと同時に、2.6mlのホウ酸緩衝液pH9.2および2.90mlのエタノール中に、100mgのビトロネクチンペプチドおよび150μl×Mのローダミン標識ペプチドの溶液を溶解させた。この溶液をDMF中のNHS−活性ポリマーに加え、45分間に亘り撹拌した。次いで、ホウ酸緩衝液pH9.2および1.4mlのエタノール中の2mlの1Mのエタノールアミンからなる溶液を加え、30分間に亘り撹拌した、未反応NHS基をブロッキングした。このポリマーを、公称3500MWCOを有するCell Sup T1再生セルロース管状膜を使用して、透析法により精製した。この透析法は、40%のエタノール/水溶液中で行った。72時間後、溶液をビーカーに移し、0.06ミリバール(6Pa)の圧力下において−89℃で一晩、凍結乾燥させた。結合したポリマーは、エタノール/水混合物、DMSO、DMF、TFE中に非常に可溶性であるピンク色のさらさらした粉末である。
MAA−PEG4−ペプチドの調製
ペプチド(KGGPQVTRGDVFTMP配列番号27)は、以下のプロセスによって、合成され、カリフォルニア州、サニーベール所在のAmerican Peptide社により提供された。(MAA−PEG4−VN):MAA−PEO4−Lys−Gly−Gly−Pro−Gln−Val−Thr−Arg−Gly−Asp−Val−Phe−Thr−Met−Pro−NH2の調製:このペプチドは、Fmoc化学反応により1ミリモルのFmoc−Rink−Amide樹脂上で合成した。アミノ酸に使用した保護基は:AspとThrについてはt−ブチル基、GlnについてはThr基、ArgについてはPbf、LysについてはBocである。Fmoc保護アミノ酸はEMD Biosciences社から購入した;Fmoc−PEG4−OHは、Quanta Biodesign社から購入した。カップリングおよび開裂(cleavage)のための試薬は、Aldrich社から購入した。溶媒はFisher Sceientific社から購入した。ペプチド鎖は、Fmoc保護基のそれぞれの除去および保護されたアミノ酸のカップリングによって、樹脂上に作製した。カップリング剤としてHBTUおよびHOBtを使用し、塩基としてNMMを使用した。脱Fmoc試薬としてDMF中20%のピペリジンを使用した。Fmoc保護基を除去した後、PEG4のアミノ酸にメタクリル酸(MAA)をカップリングさせた。最後のカップリング後、開裂および側鎖の保護基の除去のために、TFA/TIS/H2O(95:3:2、v/v/v)で処理した。粗製ペプチドを冷たいエーテルから沈殿させ、濾過により収集した。収量4.0グラム(合成収率210.1%)。粗製ペプチドを逆相HPLCにより精製した;90%超の純度で収集された分画をプールし、凍結乾燥した。最終生成物の収量1.035g(精製収率25.9%)。
生成物は、90%以上の純度でAmerican Peptide社により提供され、さらに精製せずに使用した。このプロセスにおける非反応性希釈液としてエタノールを使用し、これはSigma−Aldrich社から購入した。
官能化細胞接着性ペプチドプレポリマーの調製
図1に示されるように、撹拌子を備えた琥珀色のフラスコ内の7.5mlのエタノールに、60mg(0.46ミリモル)のHEMA、100mg(0.05ミリモル)のビトロネクチン−PEG4−メタクリレート(通称、VN−PEG4−MAA)を加えた。次いで、9mgの2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)を加え、溶解が完了するまで、撹拌した。1分間に亘りアルゴンをパージしながら、この溶液から酸素を除去した。次いで、密封したフラスコを、混合しなから68℃で24時間に亘り加熱し、光から保護した。室温まで冷却した後、ポリ(HEMA−co−VNPEGMAA)ポリマーを、酢酸ブチル中に粗製反応媒質を注ぐことにより単離した。得られた白色固体をジイソプロピルエーテルで三回洗浄し、真空下で乾燥させた。下記に記載するコーティングは、ポリ(HEMA−co−VN−PEG4−MAA)ポリマーを精製せずに作製したが、未反応のペプチドは、連続または不連続ダイアフィルトレーションプロセスなどのよく知られたプロセスによって、容易に除去できる。特に効率的な未反応ペプチドの除去は、例えば、5,000 MWCO Corning Spin−X濃縮カラムを使用して、行うことができる。
光反応性プレポリマー(Photo−HEMA)の調製
Photo−HEMAを、図3に示された反応にしたがって調製した。手短に言えば、撹拌子を備えた琥珀色のフラスコ内に秤量した132.8gのエタノールに、12.30g(94ミリモル)のメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、HEMAを加え、1.023g(2.9ミリモル)のN−(3−メタクリルアミドプロピル)−4−ベンゾイルベンズアミド(先に記載したプロトコルにしたがって調製した)を加え、この溶液に溶解させた。溶解後、0.48g(2.5ミリモル)の2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)を加え、溶解が完了するまで、撹拌した。1分間に亘りアルゴンをパージしながら、この溶液から酸素を除去した。次いで、密封したフラスコを、混合しなから68℃で24時間に亘り加熱し、光から保護した。室温まで冷却した後、このポリマーを、酢酸ブチル中での沈殿反応により単離した。得られた固体を酢酸ブチルで三回、ジイソプロピルエーテルで三回洗浄した。次いで、このポリマーを、20μmの多孔質ポリプロピレンフィルタを使用して濾過し、真空下で一晩、乾燥させた。反応工程の全ては、紫外線に直接曝露せずに行われる。
約6モル%のベンゾフェノン含有量を有する光反応性プレポリマー(Photo−HEMA)の調製
別の実施例において、図3にしたがって、手短に、撹拌子を備えた琥珀色のフラスコ内に秤量した132.8gのエタノールに、12.30g(94ミリモル)のメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、HEMAを加え、2.11g(6ミリモル)のN−(3−メタクリルアミドプロピル)−4−ベンゾイルベンズアミド(先に記載したプロトコルにしたがって調製した)を加え、この溶液に溶解させた。溶解後、0.48g(2.5ミリモル)の2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)を加え、溶解が完了するまで、撹拌した。1分間に亘りアルゴンをパージしながら、この溶液から酸素を除去した。次いで、密封したフラスコを、混合しなから68℃で24時間に亘り加熱し、光から保護した。室温まで冷却した後、このポリマーを、酢酸ブチル中での沈殿反応により単離した。得られた固体を酢酸ブチルで三回、ジイソプロピルエーテルで三回洗浄した。次いで、このポリマーを、20μmの多孔質ポリプロピレンフィルタを使用して濾過し、真空下で一晩、乾燥させた。反応工程の全ては、紫外線に直接曝露せずに行われる。
6−ウェルプレートの被覆:
架橋剤官能化プレポリマーである成分(i)および官能化細胞結合ペプチドプレポリマーである成分(ii)を、トリフルオロエタノール(TFE)中で1から10mg/mlまでの固体含有量で、様々な比率でブレンドすることによって、配合物を調製した。未処理のPS 6W−P Corning Incorporatedプレートを使用した。ウェル当たり26から31μlをアリコートにした(1/4インチ(約6.4mm)の孔のテンプレートの蓋を使用して手作業で)。この蓋をカバープレートと直ちに交換した。適所にカバープレートを配置して、配合物を縁まで広がらせた(相対湿度に応じて5から10分間。空気1kg当たり8〜10gの水が好ましい)。40℃で15分間に亘りカバープレートを濾紙と交換することによって、プレートを乾燥させた(または真空乾燥)。紫外線硬化を、「D」バルブ、80%の出力、0.5のベールと速度、1回通過で行い、プレートは、逆さまにして曝露される(プレートの底面が、ペプチドを保護する紫外線フィルタの役割を果たす)。プレートを1時間に亘りPBSで洗浄し、窒素を流しながら乾燥させた。必要に応じて、プレートをエタノールまたは水中70%v/vのエタノールで洗浄した(消毒を確実にするために)。
VNPEGMAA(プレポリマー1)およびPhoto−HEMA(プレポリマー2)を使用した6ウェルプレートの被覆:
Sigma Aldrich社から得られるトリフルオロエタノール(TFE)中の総固体含有量が10mg/mlで、成分(i−b)として、10質量%のPhoto−HEMAおよび成分(ii−b)として、90質量%のポリ(HEMA−co−VNPEGMAA)をブレンドすることによって、コーティング配合物を調製した。各ウェル中に30μlのコーティング溶液を分配することによって、TCT(細胞培養処理)PS 6−WP Corningプレートを被覆した。溶液が完全に広がった後、40℃で15分間に亘りコーティングを乾燥させた。次いで、このプレートを逆さまにして、Fusion「D」バルブ(80%の電力および0.6m/分のベルト速度)により提供される光に曝露することによって、コーティングを紫外線架橋させた。次いで、プレートを1時間に亘り1%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、脱イオン水で完全に濯ぎ、最後に、穏やかに乾燥ガス流を流して乾燥させた。このコーティングはDH2105−10Aと呼ばれる(無血清ESC培養データに関する図12C参照);BCAアッセイにより決定された固定化ペプチド密度が、固定化ペプチド密度が約30〜35ピコモル/mm2であることを示した。細胞培養の前に、プレートを、70%v/vのエタノール水溶液を加えることにより消毒したか、またはガンマ線への曝露により滅菌した(本発明のコーティング組成物は、細胞接着性能を損なわずに、ガンマ線滅菌が可能であることは注目に値する)。
比較例1: 比較例として、トリフルオロエタノール中の総固体含有量が10mg/mlで、成分(i)として、10質量%のPhoto−HEMA(6モル%のベンゾフェノン)およびAmerican Peptide Company社から受け取ったまま使用した90質量%のVNPEGMAAモノマー(この場合、アクリル化ペプチドはHEMAと共重合していなかったことに留意)をブレンドすることによって、コーティング配合物を調製した。被覆のコーティングは、Photo−HEMA+ペプチドと称した(図14D参照)。図14Dは、アクリル化ペプチドをモノマーとして使用した場合、すなわち、HEMAと共重合しなかった場合、細胞はそのコーティングに接着しないことを明らかに示している。このことは、成分(ii)は、アクリル化ペプチドのカップリングおよびフリーラジカル重合反応の開始が可能であるはずの成分(i)により提供されるベンゾフェノン反応性部分の存在にもかかわらず、モノマーではなく、ポリマーでなければならないことを示す。
細胞培養:
HT1080細胞(ATCC#CCL−121)を、10%のFBSおよびペニシリンストレプトマイシンが補われた培地である、カリフォルニア州、カールズバッド所在のLife Technologies社のイスコフ改変ダルベッコ培地中で維持した。細胞をトリプシン処理し、飽和密度に到達する前に希釈した。
Nulli−SCC1細胞(ATCC#CRL−1566)をゼラチン被覆プレート上で増殖させ、10%のFBSおよびペニシリンストレプトマイシンが補われた培地である、カリフォルニア州、カールズバッド所在のLife Technologies社のイスコフ改変ダルベッコ培地中で維持した。細胞をトリプシン処理し、飽和密度に到達する前に希釈した。
ES−D3細胞(ATCC#CRL−11632)を、カリフォルニア州、カールズバッド所在のATCCにより推奨されるように、15%のFBSおよび0.1mMのベータメルカプトエタノールが補給された培地である、カリフォルニア州、カールズバッド所在のLife Technologies社のイスコフ改変ダルベッコ培地中で維持した。細胞をトリプシン処理し、飽和密度に到達する前に希釈した。
短期接着アッセイ(Short term adhesion assay): 試験すべき表面を、D−PBS中の1%のウシ血清アルブミンと共に1時間に亘りインキュベーションし、次いで、カリフォルニア州、カールズバッド所在のLife Technologies社のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。
HT1080細胞をトリプシン処理し、計数し、D−PBS中で洗浄し、血清を含まずに、0.1%のBSAが補われたDMEM中に懸濁させた。6ウェルプレートの形式でウェル当たり3×105の細胞を、血清を含まない2mlのDMEM中に播種し、1時間に亘り37℃でインキュベーションした。インキュベーション後、培地をホルムアルデヒドで3.7%の最終濃度に調節することによって、細胞を10分間で固定した。次いで、細胞をD−PBS中で洗浄し、代表写真を撮影した。図。次いで、細胞を10分間に亘り1mlのトリパンブルーで染色し、D−PBS中で三回洗浄し、200μlの水中1%のSDSの添加により、溶解させた。次いで、100μlの溶解生成物について、570nmで光学濃度を測定した。図11Aは、VN−HEMA−CEA基板上のHT1080細胞を示している。ペプチドを含まないHEMA−CEA基板上には、細胞は存在しない(図11B)。
長期接着アッセイ(long term adhesion assay): 長期接着アッセイについて、Nulli−SCC1またはES−D3を、トリプシン処理により収集し、計数し、D−PBS中で洗浄し、mTeSR1合成培地(カナダ国、ブリティッシュコロンビア州所在のStem Cell Technologies社)中に再懸濁させた。次いで、6ウェルプレートの形式でウェル当たり5×105の細胞を、2mlのmTeSR1中に播種し、37℃でインキュベーションした。細胞形態を毎日調査し、代表写真を撮影した。図。培地を毎日新しくした。4から5日後、生きている細胞の数をMTTアッセイにより評価した。手短に言えば、細胞を、培養培地中5mg/mlのチアゾリルブルー臭化テトラゾリウム溶液、1mlと共に1時間に亘りインキュベーションし、次いで、D−PBS中で二回洗浄し、250μlの溶解緩衝液(1%のSDS、DMSO中4mMのHCl)中で溶解させた。100μlの溶解生成物について、570nmで光学濃度を測定した。図12Aは、コーニング社から市販されている「Synthemax」表面上で増殖したNulli−SCC1細胞を示している(陽性対照)。図12Bは、VN−HEMA−CEA表面上のNulli−SCC1細胞を示している。VN−HEMA−CEA表面上の細胞は、陽性対照と似ているようである。図12Cは、ペプチドを含まないHEMA−CEA上の細胞を示している。これらの細胞は、細胞培養表面には付着していない。図12Dは、MTTアッセイの結果を示しており、これは、細胞が、陽性対照(PAS−1)およびVN−HEMA−CEA表面上には存在したが、陰性対照表面(ペプチドを有さないHEMA−CEA)上には存在しなかったことを示している。同様に、図13Aは、コーニング社から市販されている「Synthemax」表面上で増殖したES−D3細胞を示している(陽性対照)。図13Bは、VN−HEMA−CEA表面上のES−D3細胞を示している。VN−HEMA−CEA表面上の細胞は、陽性対照と似ているようである。図13Cは、ペプチドを含まないHEMA−CEA上のES−D3細胞を示している。これらの細胞は、細胞培養表面には付着していない。図13Dは、MTTアッセイの結果を示しており、これは、細胞が、陽性対照(PAS−1)およびVN−HEMA−CEA表面上には存在したが、陰性対照表面(ペプチドを有さないHEMA−CEA)上には存在しなかったことを示している。
図14A〜Dは、ニュージャージー州、フランクリンレイクス所在のBD社から市販されている「Matrigel」(図14A)上、ニューヨーク州、コーニング所在のコーニング社から市販されている「Synthemax」(図14B)上、ポリマーコーティングのポリ(HEMA−co−VN−PEG4−MAA−10%)の実施の形態(図14C)上、およびPhotoHEMA+ペプチドの陰性対照(図14D)(先に議論した)上の、48時間後のES−D3マウス胚性幹細胞の接着および形態を示す顕微鏡写真である。
それゆえ、細胞培養コーティングのためのプレポリマー調製物の実施の形態が開示されている。当業者には、ここに記載されたアレイ、組成物、キット、物品および方法が、開示された実施の形態以外の実施の形態で実施できることが認識されよう。開示された実施の形態は、制限ではなく、説明の目的で提示されている。

Claims (5)

  1. 高分子細胞培養表面を形成するための組成物であって、第1の高分子主鎖に結合した細胞接着性ペプチドを含む第1のプレポリマー、および第2の高分子主鎖に結合した架橋剤部分を含む第2のプレポリマーを有してなり、
    前記第1のプレポリマーの細胞接着性ペプチドが式Rm−Sp−Capを有し、
    式中、
    Rは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミドおよびフマレート並びにそれらの任意の組合せからなる群より選択される重合部分であり、mは1より大きい整数であり、
    pは、R’がHまたはCH3であり、m2が0から20までの整数である式(O−CH2CHR’)m2により表されるポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド;またはXaaが独立して任意のアミノ酸であり、nが0から20までであるXaan;もしくはそれらの任意の組合せを含む随意的なスペーサ部分であり、
    apは、細胞接着性配列を有するペプチドであり、
    前記第2のプレポリマーの前記第2の高分子主鎖が、エチレン性不飽和モノマーの重合生成物を含む、組成物。
  2. 前記第1のプレポリマーの前記第1の高分子主鎖が、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和モノマーとの重合生成物を含み、前記細胞接着性ペプチドが前記カルボキシル基を通じて前記第1のプレポリマーに結合している、請求項1記載の組成物。
  3. 前記第1のプレポリマーのエチレン性不飽和モノマーが親水性である、請求項1または2記載の組成物。
  4. 前記第2のプレポリマーのエチレン性不飽和モノマーが親水性である、請求項1から3いずれか1項記載の組成物。
  5. 前記第2のプレポリマーが、ポリHEMAに結合したベンゾフェノン架橋剤部分を含む、請求項1から4いずれか1項記載の組成物。
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