セメントキルン排気ガス汚染削減のためのシステム、方法および装置の詳細な実施例を明細書中に開示するが、開示された実施例は単に、システム、方法および装置を説明するものにすぎず、様々な形態で実施できることを理解されたい。それゆえ、本明細書中に開示された特定の機能的な詳細な部分は、限定して解釈されるものではなく、単に、請求の範囲の基本的な部分、そして、当業者がセメントキルン排気ガス汚染削減のための上記システム、方法および装置を様々に利用できることを説明するための代表的な基本部分として解釈される。
本発明の上記のシステム、方法および装置によって処理されるべき水銀のような重金属は主として原材料に由来する。原材料は、これら原材料を、セメントキルンダストを含むセメントキルン排気ガス流内に放出するとともにキルンバグハウス、電気集塵機(ESP)または他の微粒子収集システムを通して空気に放つクリンカ処理中に化学的に変化する。これら原材料は、主として、石灰岩、粘土、頁岩、スラグ、砂、ミルスケール、鉄の豊富な材料(IRM)、軽石、ボーキサイト、再生ガラス、灰および、類似の材料の、様々な形態の材料に由来するカルシウム、シリカ、鉄およびアルミナを含むことができる。
一実施例では、セメントキルン排気ガスは、典型的には、キルンから、1つ以上のプロセス、ダクト、ミル、サイクロン、キルンバグハウス、ESPまたは他の微粒子収集システムなどの微粒子収集システムを通過し、キルン排気筒に出ていく。図1-3に示すように、セメントキルンダストを含むセメントキルン排気ガス流22は、キルン(図示せず)から排気ガスダイバータゲート24に流れる。ダイバータゲート24では、セメントキルン排気ガス流22の全部または一部は、ダクト26を通過させて原料ミル28内の乾燥および加熱のために使用することができ、或いは、バイパスダクト30を通過させることもできる。図1-3に示すように、セメントキルン排気ガス流22の全部または一部が原料ミル28内の乾燥および加熱のために使用されるとき、セメントキルン排気ガス流22は、原料ミル28およびダクト32を通過してキルン供給サイロ36の上方に配置された原料ミルサイクロン34に流れる。セメント排気ガス流22は、サイクロン34を通過したのち、バイパスダクト30に接続されたリターンダクト38を通過する。
バイパスダクト30内のセメントキルン排気ガス流22は、それから、1つ以上の、微粒子収集システム40を通過させることができる。セメントキルン排気ガス流22が微粒子収集システム40を通過中、微粒子(煤塵)が収集され、改質されたセメントキルンダスト(mCKD)42として使用される。微粒子収集システム40の後、セメントキルン排気ガス流22は、ダクト44を通過してキルン排気筒46を通して出ていく。
例示的実施例では、セメントキルン排気ガス流22は、流体、溶液または処理流体ともに、当該処理流体を、セメントキルン排気ガス流22を搬送する1つ以上の、ダクト、チャンバ、または、他の処理設備内に注入または噴射することで処理される。前記処理流体は、低コストに適用できるとともに既存の設備の改良が容易になる、十分に溶解可能な形態で提供することができる。
前記処理流体は、アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物を含む試薬を含んでもよい。前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物は、約10以上のpHを有するものとすることができる。また、前記処理流体は、当該処理流体内の前記試薬の濃度に依存して約7〜10のpHを有するものとすることができる。一実施例では、前記試薬は、前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物が水に対して約20%〜40%の濃度で含まれているものとすることができる。他の実施例では、前記試薬は、前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物が水中により高い濃度で含まれているものとすることができる。または、前記試薬は、実質的には前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物の割合が高い粉末または固形形態、もしくは、完全に前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物からなる粉末または固形形態であるものとすることができる。前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物は、前記試薬を形成するために他の個体、粉体または液体キャリアに添加させることができる。
例示的実施例では、前記試薬は、水中にアルカリ土類金属多硫化物を含む。前記アルカリ土類金属多硫化物は、マグネシウムまたはカルシウム多硫化物のいずれかとすることができる。また、前記アルカリ土類金属多硫化物は、水に対して約25%〜35%または約25%〜30%の量で、前記試薬内に存在させることもできる。他の例示的実施例では、前記アルカリ土類金属多硫化物は、マグネシウム多硫化物およびマグネシウム多硫化物の混合物であって、これら多硫化物は、水に対して約25%〜35%または約25%〜30%の量で、前記試薬内に存在させる。
例示的実施例では、前記処理流体は、前記試薬と水とを含む。前記処理流体は、前記試薬と水とを、約1:1〜1:10の比率で、約1:3〜1:6の比率で、および、さらに特には、約1:4の比率で含むものとすることができる。前記試薬が、水に対して約20%〜40%の濃度の前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物を含むとき、結果として得られる前記処理流体は、前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物と水とを、約1:4〜1:54の比率で、約1:9〜1:34の比率で、および、さらに特には、約1:11〜1:24の比率で含むものとすることができる。こうして、前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物は、約1.8%〜11%の量で、前記処理溶液内に存在させるものとすることができる。しかしながら、試薬と水および/または前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物と水の割合は、上記した範囲外に変更できることは理解されるべきことである。多くの適用例では、経済性の点から、前記アルカリ土類金属硫化物および/または多硫化物をほとんど使用しない場合がある。例えば、使用される前記割合は、前記セメントキルン排気ガス流内の微粒子の荷重および分散、当該排気ガス流の速さ、前記セメントキルン排気ガス流内の水銀および他の金属の濃度、ならびに、他の形式のパラメータに応じて変更することができる。
前記試薬および水は、セメントキルン排気ガス流22を搬送する1つ以上のダクト、チャンバ、または、他の処理設備内に前記処理流体を注入または噴射する前に、当該処理流体内に混合させてもよい。例えば、前記試薬および水は、1つ以上のダクト、チャンバ、または、他の処理設備内に前記処理流体を注入または噴射する十分前に(例えば、1時間以上前、1日以上前、1週間以上前、1ヶ月以上前など)、または、その直前に(例えば、1分以上前に)、混合させてもよい。
或いは、前記試薬および水はそれぞれ、分離して、セメントキルン排気ガス流22を搬送する1つ以上のダクト、チャンバ、または、他の処理設備内に、噴射または注入させて、前記試薬および水が、1つ以上のダクト、チャンバ、または、他の処理設備内で交わり、混ざり合い、相互に作用し、または、融合してその位置で、溶液または組成物を生成し、前記試薬とともに当該溶液または組成物の液滴を形成し、セメントキルン排気ガス流22内の金属と反応させて当該金属を取り除くことができる。他の変形例では、前記処理流体は、当該処理流体を、ダクト内に噴射される従来の排ガス脱硫液に添加することによって、セメントキルン排気ガス流22に導入させてもよい。
前記処理流体はまた、セメントキルン排気ガス流22からの金属の除去を促進する1つ以上の界面活性剤、分散剤、および/または、超分散剤を含んでもよい。一実施例では、界面活性剤、分散剤、および/または、超分散剤は、1つ以上のポリエチレンオキシド・ポリエチレン・ブロックコポリマー、および/または、そのリン酸塩類で構成される。界面活性剤、分散剤および/または超分散剤の前記処理流体への添加は、任意としてもよい。前記界面活性剤、分散剤および/または超分散剤を含むとき、当該界面活性剤、分散剤および/または超分散剤は、金属と反応させる前に、前記処理流体内での反応剤または試薬の作用化を維持するのに十分な量、例えば、約1%以下の量で与えることができる。後者の場合、前記界面活性剤、分散剤および/または超分散剤は、ポリエチレンオキシド・ポリエチレン・ブロックコポリマーと、そのリン酸塩類である。
例示的実施例では、前記試薬、水、および、1つ以上の、界面活性剤、分散剤および/または超分散剤は、セメントキルン排気ガス流22を搬送する1つ以上のダクト、チャンバ、または、他の処理設備の内部に前記処理流体を注入または噴射させる前に、前記処理流体内に混合させてもよい。例えば、前記試薬、水、および、1つ以上の、界面活性剤、分散剤および/または超分散剤は、1つ以上のダクト、チャンバ、または、他の処理設備内に前記処理流体を注入または噴射する十分前に(例えば、1時間以上前、1日以上前、1週間以上前、1ヶ月以上前など)、または、その直前に(例えば、1分以上前に)、混合させてもよい。
例示的実施例では、前記処理流体を、セメントキルン排気ガス流22内に噴射または注入させる。前記処理流体は、セメントキルン排気ガス流22内にガスレゾナンスチャンバを通して噴射または注入してもよい。また、前記処理流体は、前記セメントキルンバグハウス、電気集塵機、もしくは、微粒子収集システム40、および/または、排ガス脱硫スクラッバの前または後に組み込まれた適切な配管に噴射または注入してもよい。前記ガスレゾナンスチャンバまたは配管は、セメントキルン排気ガス流22内の微粒子およびガス流が前記処理流体と接触して反応することを促進するゾーン(空間)を形成するために構成されている。前記処理流体は、金属およびセメントキルンダストを含む前記ガスと反応し、当該セメントキルンダスト(CKD)上および内部に、金属の微粒子残留物を形成する。一実施例では、前記処理流体は、セメントキルン排気ガス流22内の水銀と反応して硫化水銀を生成する。
一度、チャンバまたは配管内のセメントキルン排気ガス22が前記処理流体に反応すると、前記微粒子残留物は一般的に下流で収集され、この収集は特定の構成に依存して、現存するキルンバグハウス内、電気集塵機内、二次研磨バグハウス内、または、他の微粒子収集システム40の内で行うことができる。収集された前記微粒子は、典型的には、改質されたセメントキルンダスト(mCKD)といわれる乾燥材料である。前記排ガス脱硫スクラッバを備えるセメントキルンの場合には、微粒子残留物はまた、前記スクラッバ内で、生成される合成石膏の成分構成要素として捕らえられることができ、この合成石膏は、結果的に、改質された合成石膏(mSyngyp)となる。前記mCKDおよび/またはmSyngypは、次に、セメント粉砕ミルに戻す計量制御のための貯蔵所に送ることができ、および/または、コンクリートバッチプラント、アスファルトプラント内の充填材料として使用することができ、または、非浸出のmCKDおよびmSyngypとして埋め立てることができる。
例示的実施例では、セメントキルン排気ガス流22内への前記処理流体の噴射または注入タイミングは、原料ミル28の作業との関係で調整してもよい。或いは、前記タイミングは、プラントの要求に応じて、連続的または断続的なものにしてもよい。或る適用例では、前記流体を注入するためのシステム(また本明細書では注入システムといわれる)は、排気ガスが捕捉される前記重金属に対する適用可能な放出限界を超えそうになるときに動作する。例えば、或る適用例では、原料ミル28が動作していないとき、前記排気ガスがより高い濃度の重金属を含みそうになると、そのときは、前記注入システムが適切に動作することができる。他のセメントキルン動作は、このような注入システムの動作のみならず、原料ミル28もまた動作している間、前記注入システムに、当該注入システムと協働するセメント製造装置およびプロセスに従って動作することを要求することができる。
例示的実施例では、セメントキルン排気ガスを処理するための前記注入システムは、噴射または処理流体を貯蔵するための1つのタンクまたは他の適切な容器と、前記セメントキルン排気ガス流に対する適切な流体接続とを含み、当該流体接続は、前記流体を、捕捉されるべき水銀および他の金属を含む前記セメントキルン排気ガス流に動作的に近接してこれに輸送する。前記注入システムは、噴射流体が形成されるように配置された、1つ以上の、ノズル、ポート、または、他の適切な開口部を含む。複数のノズルが間隔を置いた位置にあって角度の方向付けが異なることで、前記セメントキルン排気ガス流に接触するために適切な分散パターンを生成する。
具体例による、汚染を削減するためのセメントキルン排気ガス処理システムおよび方法は、図1を参照して記載されている。図1に示すように、前記注入システムは、前記キルン(図示せず)からのセメントキルン排気ガス流22を輸送するために使用される前記配管に組み込まれた1つ以上のノズル48を含む。この例示的実施例では、ノズル48は、既存のダクトに組み込まれている。ノズル48は、バイパスダクト30と連通するように適切に配置されている。ノズル48は、前記噴射または処理流体を貯蔵するための容器50に、パイプおよび/またはホースのような、1つ以上の流体接続52によって接続されている。前記処理流体は、容器50に貯蔵し、流体接続52を通してバイパスダクト30内のセメントキルン排気ガス流22に流通させてもよい。前記処理流体は、その後、排気ガス流22内に噴射させ、または、注入させることができる。
この実施例では、ノズル48は、原料ミル28の下流であって、微粒子収集システム40の前のバイパスダクト30と連通するように配置されている。図1に示す注入システムによる処理は、セメントキルン排気ガス流22が1つ以上の微粒子収集システム40に流入する前に行われる。従って、前記注入システムは、前記ダクトシステムの入口温度が動作中の当該注入システム内の温度降下に適応するのに十分な高さを有するとともに、現存する微粒子収集システム40、バグハウスまたはESPの動作要求を満たすように設計され、例えば入口温度は、高い加熱状態(例えば、400°Fを超える状態)と、腐食に導く低い露点状態(例えば、200°Fを下回る状態)との両方を回避するように選択される。前記注入システム内の動作中の前記温度降下は、前記入口温度、注入されるべき処理流体の量、および、他の種類の変量に依存させてもよいことは理解されるべきことである。
例示的実施例では、ノズル48を通して注入または噴射される前記処理流体は、当該処理流体が注入される間、前記処理流体が最低約1〜2秒のあいだ、断続的にまたは継続的に前記セメントキルン排気ガス流を途中で捕えるのに十分大きな液滴サイズを有し、反応を生じるようにする。前記反応が生じる。しかしながら、より長い滞留時間または捕捉時間を使用することができ、この滞留時間または捕捉時間はむしろ、個々の適用例を基に選択してもよいことは理解されるべきことである。
図1に示す前記注入システムによる処理は、セメントキルン排気ガス流22が1つ以上の微粒子収集システム40に流入する前に行われる。従って、微粒子は、乾燥した残留材料として捕らえられて、改質されたセメントキルンダスト(mCKD)42となる。収集された水銀および他の金属は今や永久に不溶性であるから、このmCKD42はもはや、土壌、セメントまたはコンクリート中の浸出性に関して溶解性でない。mCKD42は、以下、図4を参照してさらに詳細に説明するセメント製造処理の仕上げミル内に導入される追加の材料の1つとして使用してもよい。
ノズル48を含む前記注入システムは、既存のダクト、すなわち、バイパスダクト30内に組み込まれ、または、取り付けられるが、ノズル48を含む前記注入システムは、1つ以上の新たに加えられたダクト、変更されたダクト、又は、既存のダクト内の任意の複数の異なる位置に取り付けることができることは理解されるべきことである。例えば、前記注入システムは、原料ミル28の下流で、原料ミル28の上流で、バイパスダクト30内で、リターンダクト38内で、微粒子収集システム40の下流で、微粒子収集システム40の上流で、または、それと関連する1つ以上の既存の変更されたもしくは追加されたダクト内で、セメントキルン排出ガス流22と接触するように取り付けてもよいし、配置してもよい。
図1に示す統合注入システムに類似する注入システムは、微粒子収集システム40、キルンバグハウスまたはESPの後または下流に一体化され、または、取り付けられるとき、前記注入システムは、注入ゾーンの入口温度が、動作中の注入ゾーン内の温度降下に適応するのに十分な高さを有するとともに、図3に示すように二次微粒子収集システムの要求を満たすように設計することができる。この統合注入システムは、当該処理流体が注入される間、前記処理流体が最低約1〜2秒のあいだ、断続的にまたは継続的に前記セメントキルン排気ガス流を途中で捕えるのに十分大きな液滴サイズを有し、反応を生じるように構成することができる。結果的に得られる微粒子は直接的に、二次微粒子収集システム内を通過させ、濃縮残留物として収容してもよい。収集された水銀および他の金属は今や永久に不溶性であるので、この残留物はもはや土壌、セメントまたはコンクリート中の浸出性に関して不溶性にすることができる。
前記注入システムと協働する前記配管は、既存のもの、または、当該注入システムの部分として新たに取り付けたものでもよい。 前記注入システムと協働する、既存の、もしくは、新たな前記配管は、任意選択としてポリマーで処理してもよい。或いは、前記配管は、任意選択として、前記微粒子収集システムを流入する前に前記セメントキルン排気ガス流を意図したように処理するために、前記処理流体または残留化学物質が適した時間長さの間活性状態になるようにするために追加の配管処理、チャンバ、または、そのジオメトリに対する他の変更を要求してもよい。
他の実施例では、追加の配管、(ガスレゾナンスチャンバのような)チャンバ、および/または、既存の配管に対する変更は、適切な処理または注入システムを形成することに使用してもよい。例示的実施例による、汚染を削減するための他のセメントキルン排気ガス処理システムおよび方法が図2を参照して記載されている。図2に示すように、前記注入システムは、追加の配管を含み、微粒子収集システム40の上流に取り付けられ、または、配置されている。追加の配管は、第1ダクト54、レゾナンスチャンバまたはサイクロン56および第2ダクト58を含む。この具体例では、第1ダクト54はバイパスダクト30に接続され、レゾナンスチャンバ56は第1ダクト54に接続され、また、第2ダクト58はレゾナンスチャンバ56および微粒子収集システム40の入口に接続されている。こうして、セメントキルン排気ガス流22は、バイパスダクト30から第1ダクト54、レゾナンスチャンバ56および第2ダクト58を通過して、微粒子収集システム40内に流れる。
追加の配管に加えて、前記注入システムは、レゾナンスチャンバ56と連通するように適切に配置された1つ以上のノズル60を含む。この例示的実施例では、ノズル60は、パイプおよび/またはホースのような1つ以上の流体接続64を介して、噴射または処理流体貯蔵用の容器62に接続されている。前記処理流体は、典型的には容器62に貯蔵され、流体接続64を通して、レゾナンスチャンバ56内のセメントキルン排気ガス流22に移送される。前記処理流体はその後、セメントキルン排気ガス流22内に噴射または注入させることができる。
この実施例では、原料ミル28の下流であって微粒子収集システム40の前に、ノズル60は、レゾナンスチャンバ56を連通するように配置されている。図2に示す前記注入システムによる処理は、セメントキルン排気ガス流22が1つ以上の微粒子収集システム40に流入する前に行われる。同様に、この実施例では、前記注入システムは、レゾナンスチャンバ56の入口温度が動作中のレゾナンスチャンバ56の温度降下に適応するのに十分な高さを有するとともに、既存の微粒子収集システム40、バグハウスまたはESPの動作要求を満たすように設計することができる。例えば、入口温度は、高い加熱状態(例えば、400°Fを超える状態)と、腐食に導く低い露点状態(例えば、200°Fを下回る状態)との両方を回避するように選択される。
例示的実施例では、ノズル60を通して注入または噴射される前記処理流体は、試薬が注入される間、前記処理流体が約1〜4秒以上の間、断続的にまたは連続的に前記セメントキルン排気ガス流を途中で捕えるのに十分大きな液滴サイズを有し、反応を生じるようにする。しかしながら、より長い滞留時間または捕捉時間を使用することができ、この滞留時間または捕捉時間は個々の適用例を基に選択するのが好ましいことは理解されるべきである。先の実施例のように、微粒子は、乾燥した残留材料として捕らえられて、結果的に改質されたセメントキルンダスト(mCKD)42となる。mCKD42は、以下、図4を参照してさらに詳細に説明するセメント製造処理の仕上げミル内に導入される追加の材料の1つとして使用してもよい。
例示的実施例による、汚染を削減するためにセメントキルン排気ガスを処理するための他のシステムおよび方法が図3を参照して記載されている。図3に示すように、前記注入システムは、追加の配管を含み、2つの微粒子収集システム40aおよび40bの間に取り付けられ、または、配置されている。追加の配管は、第1ダクト66、ガスレゾナンスチャンバまたはサイクロン68および第2ダクト70を含む。この例示的実施例では、第1ダクト66は微粒子収集システム40aの出口に接続され、レゾナンスチャンバ68は第1ダクト66に接続され、また、第2ダクト70はレゾナンスチャンバ68および微粒子収集システム40bの入口に接続されている。こうして、セメントキルン排気ガス流22は、微粒子収集システム40aから第1ダクト66、レゾナンスチャンバ68および第2ダクト70を通過して、微粒子収集システム40b内に流れる。
先の実施例では、前記注入システムは、レゾナンスチャンバ68と連通するように適切に配置された1つ以上のノズル72を含む。この例示的実施例では、ノズル72は、パイプおよび/またはホースのような1つ以上の流体接続76を介して、噴射または処理流体貯蔵用容器74に接続されている。前記処理流体は、典型的には容器74に貯蔵され、流体接続76を通して、レゾナンスチャンバ68内のセメントキルン排気ガス流22に移送される。前記処理流体はその後、セメントキルン排気ガス流22内に噴射または注入させることができる。
この実施例では、ノズル72は、微粒子収集システム40aの下流であって微粒子収集システム40bの前に、レゾナンスチャンバ68と連通するように配置されている。図3に示す前記注入システムによる処理は、微粒子収集システム40aの後であって微粒子収集システム40bの前で行われる。この実施例では、他の実施例と同様に、前記注入システムは、レゾナンスチャンバ68の入口温度が動作中のレゾナンスチャンバ68内の温度降下に適応するのに十分な高さを有するとともに、微粒子収集システム40b、バグハウスまたはESPの動作要求を満たすように設計することができ、例えば、入口温度は高い加熱状態(例えば、400°Fを超える状態)と、腐食に導く低い露点状態(例えば、200°Fを下回る状態)との両方を回避するように選択される。
この例示的実施例では、他の実施例と同様に、ノズル72を通して注入または噴射される前記処理流体は、試薬が注入される間、前記処理流体が最低約1〜4秒の間、断続的に又は継続的に、前記セメントキルン排気ガス流を途中で捕えるのに十分大きな液滴サイズを有し、前記反応が生じるようにする。しかしながら、より長い滞留時間または捕捉時間を使用することができ、この滞留時間または捕捉時間は個々の適用例を基に選択するのが好ましいことは理解されるべきである。
結果として生じた微粒子は直接的に、微粒子収集システム40b内を通過させ、濃縮残留物78として収容してもよい。収集された水銀および他の金属は今や永久に不溶性であるので、この残留物78はもはや、土壌、セメントまたはコンクリートにおいて浸出の恐れはない。残留物78は、重金属とともに高濃度に濃縮させてもよく、廃棄のための追加テストを必要としてもよい。或いは、残留物78は、セメントミル内でプロセス添加物として使用してもよい。加えて、微粒子収集システム40aで補集された微粒子(CKD80)は、単独で、または、残留物78と一緒に混合させて、以下、図4を参照してさらに詳細に説明するセメント製造処理の仕上げミル内に導入される追加の材料の1つとして使用してもよい。
上記システムは所定の位置に取り付けられるが、当該システムは、任意の数の異なる位置に取り付けることもできることは理解されるべきである。例えば、前記システムは、原料ミル28の上流もしくは下流で、1つ以上の微粒子収集システムの上流および/または下流で、または、それらに関連する1つ以上の既存のダクトの間でセメントキルン排出ガス流と接触するように取り付けても、または、配置してもよい。このように処理は、様々な任意の既存のダクト、ガスレゾナンスチャンバ、乾式スクラッバによって、または、セメントキルンバグハウス、電気集塵機もしくは排ガス脱硫スクラッバを含む、1つ以上の微粒子収集システムの前もしくは後の他の適切なゾーンによって達成させてもよい。
本明細書に開示した具体例では、前記噴射タイミングは、原料ミル28の作業との関係で調整してもよい。或いは、前記噴射タイミングは、排出を抑えるように、または、適用可能な規定に応じるように、プラントの要求または目的に連続的に依存させてもよい。図1および2に示すように、既存の微粒子収集システム40の前に前記注入システムを利用するとことは、湿式スクラッバ、乾式スクラッバアプリケーションまたは活性炭噴射と比較したとき、投資コストおよび作業コストを削減することができる。
本明細書に開示された1つ以上の実施例では、「研磨バグハウス」は不要であることは理解されるべきことである。前記注入システムは、現存のキルンバグハウスと直列に取り付けてもよい。また、収集された前記材料は単に、前記注入システムが動作中、周期的に分離させてもよい。材料が制御ベースで仕上げミル内に戻すことができるまで、当該材料を保持するべく、分離ダストの貯蔵および計量システムを含んでもよい。収集された前記材料は、捕捉された前記水銀を放出する危険性なしに、セメントミル内でプロセス添加物として活用することができる。一度、前記残留材料がコンクリート内に捕らえられると、当該残留材料は、一般的に活性炭または吸収剤技術の使用から生じるものと違って、実質的に永久に、その安定した自然の形態に固められるので、再放出されない。捕捉された前記水銀は、その安定した自然の形態で含まれている。それは、キルンまたは燃焼システムによって再び物理的に処理されなれければ、空気中に再放出されず、また土壌に浸出されない。
本明細書に開示されたいずれの実施例も、水銀のような輸送重金属の除去の後、捕捉されたmCKDをさらなる製造工程で利用するために、または、キルン処理内に戻しての再利用するために、捕捉されたmCKDの収容と当該mCKDの再導入のためのダスト貯蔵および計量システムを含んでもよい。前記mCKDは、処理追加材料として、セメント粉砕ミル内に計量制御されて戻る貯蔵サイロに直接的に送ることができ、および/または、コンクリートバッチプラント、アスファルトプラント内の充填材料として使用することができ、または、非浸出のmCKDとして埋め立てることができる。
例示的実施例による、前記CKDおよび他の原材料を再利用する方法は、図4を参照して記載されている。キルン内で製造されたクリンカ82は冷却されて、計量制御のための貯蔵サイロ84から1つ以上の仕上げミル86に送られる。加えて、石膏88が、計量制御のための貯蔵サイロ90から仕上げミル86に送られる。石膏88は、例えば、利用される原材料全体の約5.0%に代えて、仕上げミル86に対するプロセス添加物として使用してもよい。具体例では、石膏88は、排ガス脱硫スクラッバによって捕らえられた、改質された合成石膏(mSyngyp)である。
図4に示すように、捕捉されたmCKD92を収容しセメント粉砕プロセスに再導入のためのダスト貯蔵および計量システムが含まれている。mCKD 92は直接的に、プロセス添加物として、計量制御のための貯蔵サイロ94から仕上げミル86に送ることができる。mCKD 92は、例えば、利用される原材材料全体の約5.0%に代えて、仕上げミル86に対するプロセス添加物として使用してもよい。本開示内容に接した当業者によって理解されるように、mCKDは、原材料全体に対するより大きな割合を占めても、または、より小さな割合を占めてもよいことは理解されるべきである。
mCKD 92は、最終的には、ポルトランドセメント内に固められて、結果として生じる安定化した非浸出材料を有するコンクリートして使用される。図4に示すように、ダスト貯蔵および計量システムは、mCKDを制御ベースで上の仕上げミル86内にmCKDを戻すことができるようになるまで当該mCKDを保持するために使用される。上述のように、mCKD92は、実質的に永久に、その安定した自然の形態に固められる。しかるがゆえに、;収集されたmCKD92は、捕捉された前記水銀を放出する危険性なしに、セメントミル内でプロセス添加物として活用することができる。
前記mCKDダスト貯蔵および計量システムの設置によって、前記プラントはmCKD材料92を効果的に管理し、再利用、再使用または処理に先立ってmCKD材料を検査することが可能になる。
他の具体例では、前記システムの一部として、システム性能の監視のために、水銀および他の重金属を正確に計測することができる連続放出監視システムを実装してもよい。
具体例による、統合注入システムの一例が、図5〜13を参照して記載されている。図5を参照すると、前記統合注入システムは、セメントプラント96に取り付けられている。プラント96は、キルン(図示せず)から排気ガス流98を発生し、この排気ガス流98は、キルンの下流から降下管ダクト102を通過する。降下管ダクト102のベースには、ドロップアウトボックス104がある。ドロップアウトボックス104は、排気ガス流98からあらゆる固化した材料を落とすように設計され、この固化した材料は、前記配管を通過し続ける前記ガスおよび微粒子物質から分離される。ドロップアウトボックス104の出口に接続されたダクト106は、排気ガス流98を下流の微粒子収集システム108に送る。排気ガス流98は、微粒子収集システム108を通ってダクト110内に流れ、このダクト110は、排気ガス流98の下流の排気筒112に流して、この排気筒112を通して排気ガス流98を空気中に放出する。
図5および図6を参照すると、前記統合注入システムは、降下管ダクト102に取り付けられた第1注入ポイント114と、ダクト106に取り付けられた第2注入ポイント116とを含む。前記統合注入システムは、微粒子収集システム108の上流に配置されている。従って、前述の実施例と同様に微粒子収集システム108内で微粒子が乾燥残留物として補集され、改質されたセメントキルンダスト(mCKD)118を生じる。補集された水銀および他の金属は今や永久的に不溶性であるから、このmCKD 118はもはや、土壌、セメントまたはコンクリート内において浸出の恐れはない。この場合も、先の例と同様に、mCKD 118は、図4を参照して上述したように、セメント製造処理の仕上げミル内に導入される追加の材料の1つとして使用してもよい。
具体例による、第1および第2注入ポイント114および116の概略上面図が図7に記載されている。図7に示すように、第1ポート120が、第1注入ポイント114で降下管ダクト102に取り付けられている。第2ポート122が、第2注入ポイント116でダクト106に取り付けられている。図示のように、降下管ダクト102は、約20 ft(フィート)の直径を有し、降下管ダクト102の円周周りに、9つの第1ポート120がある。ダクト106は、約11.5 ft(フィート)の直径を有し、ダクト106の円周周りに、9つの第2ポート122がある。しかしながら、第1ポート120の数と第2ポート122の数は、個々の適用例と前記ダクトのサイズに従い、9つよりも少なくても、または、9つよりも多くてもよいことは理解されるべきである。
図7〜11を参照すると、第1ポート120および第2ポート122の直径は4 インチ (in)であり、降下管ダクト102およびダクト106の円周周りにそれぞれ、放射状に間隔を置いて配置して取り付けられている。前記ポートは、互いに平行に整列している。個々の適用例に依存して、ポート120,122は、4 inよりも小さな直径でも、または、4 インチよりも大きな直径でもよく、ポート120は、ポート122と同じ寸法である必要はなく、また、前記間隔および方向を変更してもよいことは理解されるべきである。ポート120,122は、後述のように、噴射ノズルのランス128a〜128rを降下管ダクト102,106内に挿入するために、降下管ダクト102,106の側壁を貫通するように設計されている。
この例示的実施例では、ランスはその上に配置された1つ以上のノズルを有し、対応するポート120,122に挿入される。ポート120,122のそれぞれは、ランスを保持することができる。しかしながら、ポート120,122のすべてが、動作の間、そこに挿入される、対応するランスを有する必要があるとは限らないことは理解されるべきである。前記ランスは、特定のポートを通って前記ダクトの少なくとも一部を横切って延長する長さを有してもよい。前記ランスは、異なる長さを有してもよく、また、前記ダクトを横切る距離を変更して延長させてもよいことは理解されるべきことである。例えば、前記ランスは、実質的には、対応するポートから前記ダクトを横切って延長してもよく、或いは、こうしたポートから前記ダクトを横切る通路の一部を延長するために、寸法を規定し、または、さもなければ、構成してもよい。
図7,9に示すように、クロスサポート132および136は、対応するダクトの下を横切って延長されるとともに、各ランス(図示せず)のためのサドルを備え、これらのサドルは、これらのランスの下側または上側部分と契合してそれらを支持することができる。クロスサポート132および136は、対応するランスに所定の角度(このバージョンでは垂直)で伸びるとともに、対応するポート124,126によって取り付けられている。
例示的実施例による、ランス128a〜128rの1つの実施例は、さらに参照する図8に記載されている。図8に示すように、下記のランス128a〜128rのような、ランス128は、そこに取り付けられた1つ以上のノズル130を有する。この実施例では、ランス128は、ステンレス鋼から作られる。しかしながら、ランス128は、他の材料で作られてもよく、この材料には、鉄、アルミニウム、ポリマーおよび他の種類の材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではないことは理解されるべきことである。この実施例では、ノズル130は、前記処理流体の液滴を分散させるように構成されている。液滴サイズは、当該液滴が十分長い時間存在できるとともに、水銀イオンおよび水銀元素のような前記排気ガス内の金属と反応するように十分大きくすべきである。この実施例では、前記液滴は、約20〜40ミクロン(μm)の平均サイズ、さらに特に、約30〜40ミクロンの平均サイズを有するものとすることができる。前記液滴サイズを約30〜40ミクロンに設計すると、前記注入ポイントでの温度が約350°F平均であるときに、前記液滴を前記排気ガス流内に最低約1〜2秒のあいだ存在させることができる。しかしながら、前記液滴サイズは、排気ガス温度、処理流体濃度、水圧、流量(1分当たりの実立法フィート)、微粒子ダスト荷重および水銀濃度および他の要素に従って変更させることができ、例えば、当該液滴は、約20ミクロン(μm)以上の平均サイズを有する。
例えば、より高い温度を、約70〜90ミクロン(これは適切な液滴サイズの上限値でないが)のような、より大きな液滴サイズと関連付けてもよいことは理解されるべきことであり、また、より低い温度を、より小さな液滴サイズに対して使用してもよい。
降下管ダクト102内のノズル130による、注入ポイント114での噴射パターンの模式図が、参照する図9に図示されている。図9に示すように、9つのランス128a〜128iがあり、これらランス128a〜128iは、均等な間隔で配置されて、それぞれ(円形パターンで示すように)1つ以上のノズル130を有するとともに、9つの第1ポート120内に挿入されている。この実施例では、ランス128a〜128iは、ポート124の間を伸びるクロスサポート132によって支持されている。クロスサポート132は、ランス128a〜128iのためのサドルに嵌合させてもよく、当該サドルは、ランス128a〜128iがダクト102を横切って伸びるように、ランス128a〜128iを支持する。
図9に示すように、ノズル130は、(円形パターンによって示されているように)丸形の接触領域を有する円錐形の噴射パターンを有する。しかしながら、異なる形状の噴射パターンと接触領域を有する前記ノズルを使用できることは理解されるべきことである。
この実施例では、ランス128aおよび128iはそれぞれ、1つのノズル130を有し、ランス128bおよび128hはそれぞれ、4つノズル130を有し、ランス128a,128cおよび128gはそれぞれ、5つのノズル130を有し、また、ランス128dおよび128fはそれぞれ、6つのノズル130を有する。ノズル130の、円形パターンで示した噴射パターンは、降下管ダクト102の横断面全体の約90%をカバーする。しかしながら、異なる配置または個数のノズルを使用することにより、より大きい噴射パターン、より小さい噴射パターンまたは異なる噴射パターンを使用してもよく、また、降下管ダクト102の横断面領域全体の適用範囲の量を、より高い割合または小さな割合になるように変更してもよいことは理解されるべきことである。
ダクト106内のノズル130による、注入ポイント116での噴射パターンの模式図が、参照する図11に図示されている。図11に示すように、9つのランス128j〜128rがあり、これらランス128j〜128rは、均等な間隔で配置されて、それぞれ(円形パターンで示すように)1つ以上のノズル130を有するとともに、9つの第2ポート122内に挿入されている。この実施例では、ランス128j〜128rは、ポート126の間を伸びるクロスサポート136によって支持されている。クロスサポート136は、ランス128j〜128rのためのサドルを設けてもよく、当該サドルは、ランス128j〜128rがダクト106を横切って伸びるように、ランス128j〜128rを支持する。
図11に示すように、ノズル130は、(円形パターンによって示されているように)丸形の接触領域を有する円錐形の噴射パターンを有する。しかしながら、異なる形状の噴射パターンと接触領域を有する前記ノズルを使用できることは理解されるべきことである。
この実施例では、ランス128jおよび128rはそれぞれ、1つのノズル130を有し、ランス128k〜128mおよび128o〜128 qはそれぞれ、4つノズル130を有し、ランス128nは、5つのノズル130を有する。ノズル130の、円形パターンで示した噴射パターンは、ダクト106の横断面全体の約90%をカバーする。しかしながら、より小さな、または、より大きな噴射パターンを有するノズルを、ダクト106の横断面全体をより大きな割合で、または、より小さな割合でカバーするために使用してもよいことは理解されるべきことである。
図8〜10を参照して示すように、ノズル130は、1つ以上のランス128a〜128iを経て、パイプおよび/またはホースのような1つ以上の流体接続134を通って、前記処理流体を貯蔵するための1つ以上の容器に流体的に接続されている。前記処理流体は、前記容器に貯蔵されている。また前記処理流体は、(例えば、ポンプを経て)流体接続134、1つ以上のランス128a〜128i、降下管ダクト102内のノズル130を通って出ていく。前記処理流体はその後、降下管ダクト102内のセメントキルン排出ガス流98に接触する。同様に、図8,11および12に示すように、ランス128j〜128rのノズル130は、ダクト106の第2注入ポイント116で、パイプおよび/またはホースのような、1つ以上の流体接続138を経て、前記処理流体を含む容器に流体的に接続されている。
図5〜12を参照して上述の統合注入システムは、排気ガス流98から水銀を除去するためにセメントプラント96(図5)に設けることができる。排気ガス流98の温度は、直列方式の原料ミルおよび/またはキルンの状態の動作に従って変更する。この例示的実施例では、前記原料ミルの下流にある降下管ダクト102への出口での温度は、約600〜800°Fの間で変化する。微粒子収集システム108への入口での温度は、典型的には、微粒子収集システム108を保護するために、約240〜300°Fの間で変動する。前記原料ミルが動作しているとき、排気ガス流98は、研磨が行われているあいだ、前記原材料を乾燥させるための原料ミルを通過することで熱を失う。前記原料ミルが動作していないとき、一般的には、排気ガス流98の温度を、降下管ダクト102内の高圧水を使用することによって低下させる必要がある。これは、典型的には、微粒子収集システム108を保護するために、当該微粒子収集システム108への入口で、排気ガス流98を約325〜395°Fに冷却する。
排気ガス流98の前記微粒子荷重は、降下管ダクト102を通過する1時間当たり20トン(t)の圧力(tph)と同じ高さにすることができ、また、原料ミル動作に依存しない。排気ガス流98のガス量は、動作の間は温度変動と処理状況によって1時間当たり4,000,000立方フィート(ft3)の流量(scfh)まで変更することができる。
この実施例では、前記処理流体は、試薬と水を含む。前記試薬は、水に30%のカルシウム多硫化物を含むものである。前記試薬および水は、前記原料ミルが動作してないとき、約1 :4の比率で注入される。また、前記温度は、ダクト106の出口で、約350°Fに減少する。上述したように、第1注入ポイント114は、ドロップアウトボックス104の前の降下管ダクト102に取り付けられている。前記処理流体は、ノズル130を通って、約45 psi(ポンド毎平方インチ)の圧力、1分当たり約15ガロン(gal)の割合で注入されるとともに、約30〜40ミクロンの平均液滴サイズを有する。約30〜40ミクロンの前記液滴サイズは、前記試薬が、水銀硫化物を生成するために水銀イオンおよび水銀元素に接触して反応するのに十分な長さで、排気ガス流98に存在できるように設定されている。この実施例では、前記の30〜40ミクロンの前記液滴は、最低約1〜2秒のあいだ、蒸発前、平均で、約350°F の温度を有する排気ガス流98内に存在する。さらに、前記の30〜40ミクロンの液滴は、前記試薬がセメントプラント96に存在する下流予熱器IDファン(図示せず)に蓄積することを防止する。これらの状態の下、より小さな液滴は、前記反応を生じさせるのに十分な寿命を与えられない可能性があり、より大きな液滴は、前記予熱器IDファンに達してファンの故障を生じさせる蓄積および振動を与える可能性がある。
代表的な注入運転に対応した結果に関する表が、参照する図5および図13に図示されている。図13に示すように、6回の運転が行われた。統合注入システムの使用によって捕捉された水銀量は、第1注入ポイント114の前に配置された第1測定ポイント140と、微粒子収集システム108の入口の前に配置された第2測定ポイント142とで得られた測定値を基に算出した。
運転1および運転2のあいだ、前記処理流体は注入されず、また、前記第2測定ポイントでの排気ガス流98に存在する水銀量は、それぞれ、512.6ug/m3 および532.3ug/m3 であった。運転3および運転4のあいだ、前記処理流体は、前記注入ポイントの1箇所のみ、すなわち、第1注入ポイント114で注入された。前記処理流体は、前記試薬と前記水とを約1 :4の割合で含んだ試薬水混合物であった。前記処理流体は、前記注入ポイントの1箇所のみ、第1注入ポイント114で、1分当たり約15ガロンの割合(GPM)で、約30分間、注入された。前記処理流体は、継続的に、前記試薬が排気ガス流98を途中で捕らえられるように、前記反応が起きる最低約1〜2秒の間、注入された。(如何なる処理が行われる前の)第1測定ポイント140での排気ガス流98内の水銀の全量平均(すなわち、微粒子および蒸気での量)は、運転3の間と運転4の間では、約480ug/m3に固定されている。(処理後の)第2測定ポイント142での排気ガス流98内の水銀の全量平均は、運転3および運転4の間では、それぞれ、約281.8ug/m3および約326.6ug/m3に固定されている。同運転間における、処理前後の水銀濃度を前記排気ガスの通路に沿った同一の位置で比較するとき、運転3では、排気ガス流98内の全水銀の約41.3%の捕捉率を達成し、運転4では、排気ガス流98内の全水銀の約32%の捕捉率を達成する。こうして、第1注入ポイント114での前記処理流体の注入では、運転3および運転4を通じて、排気ガス流98内の全水銀の約36.7%の平均捕捉率を達成することが測定された。
前記水銀捕捉率は、運転1および運転2から第2測定ポイント142での未処理排気ガス流と、運転3および運転4から同じ測定ポイント142での処理済み排気ガス流とを比較したとき、よりさらに高くさえある。特に、運転1および運転2では、第2測定ポイント142での全水銀平均が522ug/m3であって、運転3および運転4では、304ug/m3であって、約42%の捕捉率を示している。
運転5の間と運転6の間では、前記処理流体は、第1ポイント114および第2ポイント116の両方を通して噴射された。前記処理流体は、前記試薬と前記水とを約 1: 4の比率で含む前記試薬水混合物であった。前記処理流体は、15分間、1分あたり約15ガロンの割合で、注入ポイント114および116を通して注入された。前記処理流体が、継続的に、注入ポイント114および116の両方を通して注入されることで、前記試薬は、各ポイントで前記処理を行う最低約1〜2秒のあいだ、排気ガス流98を途中で捕えることができる。第1測定ポイント140での排気ガス流98内の水銀の全量平均(すなわち、微粒子および蒸気段階での量)は、運転5および運転6の間では、それぞれ、約497ug/m3および475ug/m3に決定されている。第2測定ポイント142での排気ガス流98内の水銀の全量平均は、運転5および運転6の間では、それぞれ、約203.5ug/m3および約223.3ug/m3に決定されている。運転5では、排気ガス流98内の全水銀の約59%の捕捉率を達成し、運転6では、排気ガス流98内の全水銀の約52.9%の捕捉率を達成する。こうして、注入ポイント114および116の両方での前記処理流体の注入では、全水銀の約56%の補足率と、排気ガス流98内の蒸気内の水銀量の約66%の捕捉率を達成することが測定された。
重ねて、前記水銀捕捉率は、運転5および運転6で処理された測定ポイント142での排気ガス流と、運転1および運転2からの未処理排気ガス流とを比較したとき、キルンから供給された同じ比率を含む全ての排気ガスについて、よりさらに高くさえある。特に、未処理運転1および2のポイント142での全水銀平均は、運転5および6の全水銀平均213ug/m3と比較して、522ug/m3であった。これは、全水銀の約59%の捕捉率を意味している。
上述した運転では、図5〜12に示した前記統合注入システムによる処理は、排気ガス流98が微粒子収集システム108に流入する前に行われる。前記処理流体は、継続的に、前記試薬が排気ガス流98を途中で捕らえられるように、前記反応が起きる最低1〜2秒の間、注入された。前記反応の間、前記試薬は、排気ガス流98内の水銀元素および水銀イオンと相互に作用し、当該水銀元素および水銀イオンを水銀硫化物に変化させる。前記微粒子(水銀硫化物を含む)は、微粒子収集システム108内に達する。前記微粒子は、図5に示すように、乾燥した残留材料として捕らえられて、結果的に、改質されたセメントキルンダスト(mCKD)118となる。mCKD 118は、もはや、収集された水銀および他の金属が永久に溶解しないように、土壌、セメントまたはコンクリートの浸出物質に溶解しないであろう。mCKD118は、上記、図4を参照して説明されたセメント製造処理の仕上げミル内に導入される添加材の1つとして使用してもよい。
上述した前記運転は、原料ミルのオフとともに管理されるけれども、本明細書に記載されたシステムおよび方法は、原料ミルがオンのとき、または、多くの他の動作プロトコル下にあるとき、水銀および他の金属を除去するために利用されることは理解されるべきことである。前記原料ミルがオフのとき、水銀量が一般的に、前記原料ミルがオンのときよりも高くなることが期待されている。したがって、上述した処理流体プロセスは、前記原料ミルがオンのときに前記排気ガス流から水銀が除去される割合をより大きくすることが期待される。
本明細書に開示された前記システムおよび方法は、一実施例を説明するが、セメントキルンの構成は大きく変更しても良く、こうして、前記キルン排気ガス流に関する前記処理システムの配置および構成は、それに対応して、個々のセメントキルンに適用させるために変更してもよいことは理解されるべきことである。本明細書で想定された如何なる実施例では、個々の適用例に応じて、1つ以上の第2の微粒子除去システムを必要とするかどうかは任意であることは理解されるべきことである。
個々のキルン動作、原料ミルおよび燃料に応じて、本明細書に開示した前記システムは、必要に応じて単に断続的に実行しても、または、実質的には、継続的に、所望の削減目的を達成するために、実行時間の100%の処理流体の注入を含めて、実行してもよい。ほとんどの場合、水銀放出の最も高い期間は、直列垂直ミルもしくは原料ミルがオフのとき、または、キルンバグハウス、ESP、もしくは、他の微粒子収集システム内で温度不一致があるときに関係する。前記処理プロセスが、こうしたオフライン期間の間に実行するように構成してもよく、または、前記処理プロセスを、時間、所定の放出閾値が超過すること、放出が平均して実行されること、ガス成分の測定、および、他のタイプのパラメータのような、多くの任意のパラメータに応じて実行するためのきっかけにしてもよい。各システムは、実際の排出モデル、素材材料、コスト、および、任意の、他の動作的な、排出または機能パラメータを基に、各セメントキルンに合わせてもよい。
例示的実施例では、前記処理システムと協働するダクト、チャンバ、または、他の処理ゾーンは、前記排気流が下流に移動するとき、前記温度降下に対処するように構成されている。例えば、上述したように、所定の実施例では、前記処理ゾーン(ダクト、チャンバ、サイクロンなど)を、当該処理ゾーンの入口温度が、下流バグハウス、ESP、または、他の微粒子収集システムの動作要求に合わせながら動作中の間、前記ゾーン中の前記温度降下を調整するために十分な高温になるように選択または構成してもよい。こうした入口温度は、高い加熱状態と腐食に導く低い露点状態との両方を回避する。
本明細書に開示した前記システム、方法およびプロセスは、セメント産業のものとして認識され、適用され、そして、設計されている。ある形態では、本明細書に開示された前記システム、方法、および、プロセスは、より低い資本コスト、より低い作業コスト、そして、最も重要なものとして、水銀放出濃度の低下を与える。
この技術の仕様は、湿式スクラッバを備えるセメント製造プラントに適用させることができ、または、活性炭注入の使用のために既に設計することができることは理解されるべきことである。既存設備の改造は、明確に、可能性のある構成の1つである。
本明細書に開示した前記システムおよび方法を使用することは、水銀が、セメント製造プロセスの間に生成されるところにかかわらず、再加熱を必要としないで捕捉されることは理解されるべきである。本明細書に開示された前記システムおよび方法によれば、前記セメントプラントは、より多くの種類の原材料を、この開示で記載されたように、水銀または捕捉された他の重金属に対する、適用可能な如何なる放出限界を超える虞がなく使用することができる。生成された残留物質の量に応じて、プロセス添加物として利用できない前記部分を処分しなければならないが、これは、全体量のうちの少量になることが期待される。
上述したところは、一般的には、水銀捕捉に関するものであるが、前記システム、方法、プロセス、および、本明細書に開示された技術は、六価クロム、および、他の様式の金属、並びに、排出加熱ポイントを捕捉するために改良させてもよい。
上記記載および添付図面で説明した事項は、例示的に提示されるものにすぎず、限定されるものではない。セメントキルン排気ガス汚染削減のための、前記システム、方法、および、装置は、所定の実施例に関係付けて図示されているが、多くの変形および変更が当業者にとって明らかで、こうした多くの様式および変更は、前記開示の思想および範囲を逸脱することなく行うことができる。本開示は、したがって、上述した方法または構造の詳細に限定されるものではなく、このような変形および変更が本開示の範囲内に含まれることを意図する。