JP2013526284A - 身体試料を溶解するための汎用溶解バッファーおよび加工方法 - Google Patents

身体試料を溶解するための汎用溶解バッファーおよび加工方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、多種多様な試料タイプ、例えば呼吸器疾患の診断に関係する、異なるタイプの身体試料を加工するのに適した、カオトロピック剤、還元剤、およびタンパク質分解酵素を含む汎用溶解バッファーを提供する。さらにまた本発明は、広範な身体試料を溶解するための、カオトロピック剤、還元剤、およびタンパク質分解酵素の使用を提供する。さらに本発明は、さまざまな異なるタイプの身体試料の溶解に汎用することができる、身体試料を加工するための方法を提供する。さらにまた本発明は、身体試料を分析するための方法または身体試料中の病原体の存在を検出するための方法、好ましくは肺炎または結核などの呼吸器疾患を診断するための方法を提供する。好ましくは、これらの方法は、さまざまな試料タイプに汎用することができ、ワンチューブプロセスとして適用することができ、高スループット設定での実施に適しており、かつ自動化することができる。

Description

[発明の技術分野]
本発明は、身体試料、特に呼吸器疾患の診断に関係する身体試料を溶解するための、汎用溶解バッファーおよび加工方法に関する。
[発明の背景]
分子技法、特に核酸の分析は、診断分野における重要度が、ますます高まりつつある。特に、肺炎や結核などの呼吸器疾患の分野における分子診断では、極めて多様な外観を有する体液などの身体試料、例えば血液、喀痰、および気管分泌物の分析が、しばしば必要になる。今までのところ、各試料タイプは、異なる溶解バッファー、加工方法および溶解手順を必要とし、それらは他の試料タイプには転用できないことが多い。呼吸器疾患、例えば肺炎の分子診断に関係する全ての試料タイプを対象とするプロトコールは、まだ公表されていない。したがって、肺炎患者の診断に関係する全ての試料タイプに、標準化された使い勝手のよいルーチンプロトコールを使用することは、今のところできない。したがって、多種多様な身体試料、特に肺炎などの呼吸器疾患の診断に関係する試料に汎用することができる溶解バッファーおよび加工方法が望まれている。
気道の重症急性感染症を有する患者にとって、原因病原体とそれに付随するリスク因子、例えば薬物耐性などを素速く同定して、最初の広域抗生物質治療から、同定された薬物耐性を有する原因病原体に標的を絞った個別的治療へと切り換えることができるようにすることは、とりわけ重要である。院内感染性肺炎、人工呼吸器感染性肺炎、または医療ケア関連肺炎などの重症肺炎サブタイプに関する国際的ガイドラインは、抗生物質処方の計画に重大な影響を有する一定のリスク病原体(例えば緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)または多剤耐性に関するリスク因子(例えばmecA)の同定を、強く勧告している。
呼吸器疾患に関してこれまでに使われてきた診断アプローチ、例えば胸部X線撮影、塗抹標本顕微鏡検査、理学的検査、または(例えば喀痰培養物、気管支鏡試料の培養物、もしくは血液培養物の)微生物培養試験は、病原体またはリスク因子の同定には適していないことが多く、かつ/または効率が極めて低い。したがって今のところ、肺炎の診断に関して、検証された臨床試験によって裏付けられた、効率のよい検出方法はない。それゆえに、肺炎ガイドラインは、どの診断アプローチも、ゴールドスタンダード法としては推奨していない。むしろ、担当医の専門的技術と経験に基づいて、異なる試料を対象とする異なる診断方法の組合せが使用される。このような背景の下、診断には、いくつかの呼吸器試料ならびに非呼吸器試料が使用されている。例えば、血液培養物が細菌血症の指標として使用されたり、胸膜穿刺液が肺炎患者にとって高い死亡リスクにつながる蓄膿の指標として使用されたりする。
呼吸器疾患の診断に関係する試料は、一般に操作が困難である。そのような試料には、喀痰、膿、胸水、胃吸引物、気管内吸引物、経気管吸引物、気管支肺胞洗浄液、喉頭スワブ、鼻咽頭スワブなど、通常は化学的および物理的挙動が異なる多くの異なる構成要素の不均質な混合物である試料が包含される。一般にそのような試料は粘度が高く、同じタイプの試料でさえ、その組成は大きく異なる。しかし、起炎病原体のアクセシビリティおよび溶解は、それらが固形および粘稠な環境に閉じ込められていると、効率が下がりうる。
気道の試料中の病原体の検出を目的として今までに使用されてきた診断方法は全て、除染および液状化のために、プロテアーゼ、リパーゼ、DNase、またはグリコシダーゼなどの酵素、洗浄剤、カオトロピック剤、キレート剤、および還元剤その他の組合せを使った面倒な試料加工を必要とする。しかしこれらの薬剤の一部、例えばSDSなどは、核酸の増幅および分析方法の阻害因子であることが知られている。その上、結核が疑われる試料の処理はいずれも、感染リスクが高いので、生細菌への作業員の曝露を排除するために、認証された層流および包括的な防御手段を含むS3環境を必要とする。したがって、分子検査にとって、身体試料を核酸診断法に直接使用すること、ならびに操作集約的な除染および液状化手順を回避することができれば、有利であるだろう。
このように、呼吸器疾患における分子診断は、現在のところ、時間がかかり、手間がかかり、間違いを起こしやすく、高い汚染リスクを伴う。その上、各試料タイプが異なる操作手順を必要とするので、高スループット設定での加工は不可能である。
それゆえに、本発明の目標は、呼吸器疾患の診断に関係する身体試料など、多種多様な試料タイプの溶解に汎用することができ、試料の集中的な操作の必要を減らし、よって汚染のリスクを低下させ、かつ高スループット設定での分子診断を可能にする、溶解バッファーおよび簡単な加工方法を提供することである。
本発明者らは、驚いたことに、カオトロピック剤、還元剤およびプロテアーゼだけを活性成分として含有する溶解バッファーが、身体試料の溶解、特に呼吸器疾患の診断に関係する身体試料の溶解に、汎用できることを見いだした。したがって本発明の溶解バッファーは、例えば、組成が大きく異なる胃液および喀痰または気管分泌物試料の溶解に、汎用することができる。
さらにまた、本発明者らは、容易かつ安全に実施することができ、汎用することができ、自動化することができ、高スループット設定で適用することができる加工方法であって、面倒で時間のかかる試料の除染または液状化前処理を何も必要としない方法を開発した。特に本発明の加工方法では、1本の反応チューブ中で身体試料の完全溶解手順を行うことが可能であり、遠心分離および試料の移動またはピペッティングステップを必要としないので、要求される手作業および汚染リスクが実質的に減少する。本発明の加工方法によって生じる溶解物は、フェノール-クロロホルム抽出または沈殿などのさらなる核酸精製方法を必要とすることなく、例えばシリカメンブレン、シリカビーズ、または磁気ビーズ技術などに基づく核酸単離手順に、直接移行することができる。したがって本溶解物は、例えばQiaAmp(商標)DNA単離カラムへの直接的な移行に適していて、カラムの著しい目詰まりを起こさないが、これは、特に気道の高粘度試料では、予期されないことであった。
[発明の概要]
ある態様において、本発明は、(i)少なくとも1つのカオトロピック剤、(ii)少なくとも1つの還元剤、および(iii)少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む、溶解バッファーを提供する。好ましくは、本発明の溶解バッファーは、さらにビーズを含む。好ましくは、本発明の溶解バッファーは、身体試料の溶解、好ましくは呼吸器疾患の診断に関係するような身体試料の溶解に、汎用することができる。
もう一つの態様において、本発明は、広範な身体試料を溶解するための、(i)少なくとも1つのカオトロピック剤、(ii)少なくとも1つの還元剤、少なくとも1つのタンパク質分解酵素の使用を提供する。
さらにもう一つの態様において、本発明は、身体試料を加工するための方法であって、(i)加工すべき身体試料、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む混合物を用意するステップを含む方法を提供する。好ましくは、ステップ(i)は、(a)混合物の構成要素を接触させるステップ、および(b)混合物の構成要素を混合するステップを含む。好ましくは、本方法はさらに、(ii)混合物を第1温度(好ましくはタンパク質分解酵素が活性である温度)まで加熱するステップを含む。好ましくは、本方法はさらに、(iii)混合物を第2温度(好ましくは少なくとも80℃)まで加熱するステップを含む。好ましくは、本方法はさらに、(iv)混合物をビーズ粉砕するステップを含む。好ましい一実施形態では、ビーズ粉砕ステップ(iv)が加熱ステップ(iii)と並行して行われる。好ましい一実施形態では、本発明の方法のステップ(ii)〜(iv)、好ましくはステップ(i)(b)〜(iv)が、自動プロセスで行われる。好ましい一実施形態において、本方法はさらに、(v)混合物から核酸を単離するステップを含む。
もう一つの態様において、本発明は、身体試料を分析するための方法であって、本発明の身体試料加工方法に従って身体試料を加工すること、および(vi)混合物を核酸増幅/分析方法に適用することを含む方法に関する。
さらにもう一つの態様において、本発明は、身体試料中の病原体の存在を検出するための方法であって、本発明の身体試料加工方法に従って身体試料を加工すること、および(vi)混合物を該病原体の検出に適した核酸増幅/分析方法に適用することを含む方法を提供する。好ましくは、該病原体は、呼吸器疾患に関連する。
もう一つの態様において、本発明は、対象における呼吸器疾患、例えば肺炎、結核、気管支炎、または嚢胞性線維症もしくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)中の病原体感染、または呼吸器腫瘍を診断するための方法であって、本発明の身体試料加工方法に従って身体試料を加工すること、および(vi)混合物を呼吸器疾患の診断に適した方法に適用することを含む方法を提供する。
好ましくは、本発明の方法は、異なるタイプの身体試料に、好ましくは呼吸器疾患の診断に関係する異なるタイプの身体試料に、汎用することができ、それゆえに本発明の方法は、好ましくは、多種多様な試料タイプに高スループット設定で適用するのに適している。
さらなる態様において、本発明は、異なるタイプの身体試料である少なくとも2つの身体試料を加工するための方法であって、少なくとも2つの身体試料のそれぞれを本発明の身体試料加工方法に従って加工することを含む方法、異なるタイプの身体試料である少なくとも2つの身体試料を分析するための方法であって、少なくとも2つの身体試料のそれぞれを本発明の身体試料分析方法に従って分析することを含む方法、および異なるタイプの身体試料である少なくとも2つの身体試料中の病原体の存在を検出するための方法であって、少なくとも2つの身体試料のそれぞれにおける病原体の存在を、病原体の存在を検出するための本発明の方法に従って検出することを含む方法を提供する。
もう一つの態様において、本発明は、身体試料、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む、身体試料の溶解物を提供する。
さらにもう一つの態様において、本発明は、本発明の身体試料加工方法に従って身体試料を加工することによって得ることができる溶解物に関する。
もう一つの態様において、本発明は、(i)カオトロピック剤、(ii)還元剤、(iii)タンパク質分解酵素、および(iv)説明書を含むキットを提供する。好ましくは、カオトロピック剤と還元剤は、組成物として、1つ以上の反応チューブ、好ましくはスクリューキャップチューブ、好ましくはビーズをも含んでいるものに入れて提供され、好ましくはタンパク質分解酵素は、カオトロピック剤および還元剤とは別個に、例えば貯蔵チューブなどの別個のチューブに入れて提供されるか、またはチューブ(好ましくはスクリューキャップチューブ、好ましくはカオトロピック剤および還元剤を含む組成物が入っているもの)のフタの中の乾燥スポットとして提供される。好ましくは、本キットは、身体試料の溶解に、好ましくは呼吸器疾患の診断に関係する身体試料の溶解に、汎用することができる。
本発明の溶解バッファーを使った手動溶解方法の例。 プロセス例Aは、2500rpm(IKAボルテックスでの標準的最大速度であり、他の供給元からの装置の場合は異なるかもしれない)で30秒間(他の時間も同様に奏効するかもしれない)混合するための標準的ボルテックス、予熱した加熱ブロックおよび約100gに関係づけられる粉砕速度(他の速度も同様に奏効するかもしれないし、ジオメトリーが異なる他の装置では速度も異なりうる)の能力を有する粉砕装置を使用する手動プロセスである。全ての粉砕/混合ステップで、チューブが加熱ブロックから取り出され、室温で加工されることに注目されたい。 本発明の溶解バッファーを使った自動溶解方法の例。 プロセス例Bは、全てのプロセスステップ(混合、加熱、粉砕)を行うビーズ粉砕装置を使用する自動プロセスである。粉砕速度は、装置ジオメトリーに依存して50〜100gの力に関係づけられる。チューブはチャンバーと一緒にターゲット温度まで加熱されるので、より長いランピング速度がこの例には含まれているが、それでもなお、ランピング時間は決定的な問題ではなく、かなり短い場合もありうる。 異なる身体試料タイプの試料組成。 試料タイプの相違を平均スコアに基づいて記述するために、起源の異なる76の試料(呼吸器試料および関係する他の試料、例えば穿刺液やドレナージ液)を、粘度、血液、および沈渣含有量についてスコア化した。 異なる身体試料タイプでの溶解手順の成績。 各試料タイプごとの加工試料数を括弧内に示す。呼吸器疾患に関係する全ての試料が網羅されるように、血液を含む各試料タイプから参考資料を選択した(合計12試料)。これらの試料のそれぞれを、次に挙げる3つの異なる溶解プロトコールに付した:(a)図1に示し、実施例1において説明する、手動全溶解プロトコール(全溶解プロトコール)、(b)プロテイナーゼKの添加を伴わない全溶解プロトコール、(c)第2加熱ステップ(96℃)を伴わない(その代わりに試料を周囲温度でインキュベートした)溶解プロトコール。全ての試料を、実施例1(全溶解プロトコール)において述べるように、5分間の最終ビーズ粉砕ステップに付し、次に溶解物を移し、エタノールと混合し、シリカメンブレンカラム(QiaAmp(商標)、Qiagen)に適用した。プロテイナーゼK消化(第1加熱ステップ)後、第2加熱ステップ(96℃)後、およびビーズ粉砕後に、溶解効率をスコア化した。加えて、上清の濁りもモニターした。溶解物をシリカメンブレンに適用した後のフロースルーは、速度を下げた(推奨されている8000rpmではなく4000rpmでの)遠心分離を使ってモニターした。シリカメンブレンを、不十分な溶解を示す可能性がある着色または残留試料構成要素について調べた。 本発明の手動溶解方法を使って溶解した患者試料の典型例。 溶解試料は自動プロトコールでも同様である。A/B:喀痰、C:気管分泌物。 ビーズ粉砕および加熱が気管分泌物試料の溶解に及ぼす影響(プロテイナーゼK消化なし)。 第1ステップでは、溶解バッファーの添加と短時間の混合の後、直ちに試料を96℃で15分間インキュベートした。ビーズ粉砕は、加熱ステップ(96℃)中に行うか、または96℃インキュベーションステップの完了後に室温で行った[M]。溶解の進行を、溶解スコア(溶解スコア0:溶解しないか、不十分にしか溶解しなかった。粘液凝集塊がまだ存在する;溶解スコア1:部分的に溶解した。小さな凝集塊がまだ存在する;溶解スコア2:ほぼ完全に溶解した。未溶解の破片がまだ存在する;溶解スコア3:完全に溶解した)に基づいて、経時的にモニターした。溶解上清を、基本的に製造者の指示に従って、シリカメンブレンに適用した。フロースルーを、4000rpmから出発して遠心力を増やしつつ、モニターした。図6Aおよび6Bは、同じタイプの試料のばらつきを反映したそれぞれ2つの試料を示している。 プロテイナーゼKが気管分泌物試料の溶解に及ぼす影響。 図6と同じ試料を使用し、加熱ステップ(96℃)の前にプロテイナーゼK消化を追加して、図6について述べたように溶解プロトコールを実行した。プロテイナーゼK消化のために、20μlのQiagenプロテイナーゼK(20mg/ml)を溶解バッファーと共に試料に加え、試料を56℃で10分間インキュベートした。図6について述べたように、溶解効率をスコア化した。図7Aおよび7Bは気管分泌物試料の例をそれぞれ2つ示している。 異なる身体試料タイプからの精製DNAのDNA品質。 起源が異なる7つの患者試料に緑膿菌(20000病原体/ml=4400病原体/220μl使用試料)をスパイクし、図1および実施例1に記載の手動プロトコール(全溶解プロトコール)を使って溶解した。DNAを、QiaAmp(商標)DNA血液キットで、遠心分離を使って精製し、水200μl中に溶出させた。スパイクした試料から精製された単離DNAの品質を、5倍希釈した溶出物のスペクトル分析(220〜320nm)によってモニターした。BAL:気管支肺胞洗浄液。 選ばれた試料のPCR阻害試験。 推定されるPCR阻害因子の同時精製を、図8で述べた溶出物について、PCR阻害試験によって調べた。阻害試験のために、3μlのDNA溶出物を、無関係なテンプレートと対応するプライマー混合物とが入っている30μlのPCRに加える。阻害効果が何もなければ、これらのプライマーは、既知モル濃度のアンプリコンをいくつか生成する。アンプリコンモル濃度の有意な低下は、阻害を示すであろう。対照には、リン酸緩衝食塩水(PBS)から生成させた溶出物を使用した。PCR効率を評価し、PCR阻害因子の存在を決定するために、本発明の溶解物から単離されるDNAの存在下で生成するアンプリコンのモル濃度を、対照PCR(対照:n=4)によって生成するアンプリコンのモル濃度と比較した。 単離されたDNAのPCR効率(緑膿菌PCR)。 図8において述べた異なる身体試料の溶解物から単離したDNAを使って、緑膿菌に特異的なPCRを行った。図10は、異なるPCRのアンプリコンモル濃度とDNA収量とを示す。 本発明の方法に従って加工された患者試料のPCR結果。 図1および実施例1に記載の手動溶解プロトコール(全溶解プロトコール)を使って、27の患者試料を加工した。シリカメンブレンで精製したDNAを、呼吸器疾患を示す病原体(クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌、および宿主フローラの指標としてのストレプトコッカス(Streptococcus)属)を検出するマルチプレックスPCRで分析した。Agilent Bioanalyzerを使ってアンプリコンモル濃度を決定した。 PCR結果と微生物学的培養試験データの比較。 図11に示すPCR結果を、図11に示したものと同じ試料について行った微生物学的培養試験から得られたデータと比較した。5つの試料については微生物学的培養によって病原体の属が同定されたが、試料の大半については、微生物学的培養によって病原体が属レベルで同定されることはなかった。微生物学的培養試験によって得られた結果はPCR試験によって確認された。この試験において使用したヘモフィルス(Haemophilus)プライマーは、種インフルエンザエ(influenzae)と種パラインフルエンザエ(parainfluenze)とを弁別しない。一般に、PCRでは、微生物学的培養試験より多くの試料で、病原体を検出および同定することが可能であった。 臨床試料を使った手動溶解と自動溶解の比較。 溶解プロセスの全自動化のための装置を開発し、最下部に示すとおり微生物学的培養試験で結果が陽性だった臨床試料を使って「プロセス例B」(図2および実施例1、全溶解プロトコール、自動プロセス)によって成績を調べ、手動溶解プロトコール(図1および実施例1、全溶解プロトコール、手動プロセス)と比較した。この試験には粘度の高い気管分泌物を選択した。シリカメンブレンを使って溶解物から単離されたDNAを、シュードモナス(Pseudomonas)特異的プライマー、スタフィロコッカス(Staphylococcus)特異的プライマー、およびカンジダ(Candida)特異的プライマーを用いるトリプレックスPCRに適用した。 スパイクした臨床試料を使った手動溶解と自動溶解の比較。 試料の凍結と融解が病原体溶解に及ぼす影響を排除するために、もう一組の試料に20000病原体/mlの緑膿菌(グラム陰性)および黄色ブドウ球菌(グラム陽性)をスパイクし、手動または自動プロトコールで加工した。DNAの単離およびPCRは図13で述べたように行った。
[発明の詳細な説明]
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明は、本明細書に記載する特定の方法論、プロトコールおよび試薬類に(これらはさまざまでありうるので)限定されないことを理解すべきである。本明細書において使用する専門用語には特定の実施形態を説明するという目的しかなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定しようとするものではないことも理解すべきである。別段の定義がある場合を除き、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、当業者が一般に理解しているものと同じ意味を有する。
以下に、本発明の要素を説明する。これらの要素を具体的実施形態と共に列挙するが、それらは任意の方法でいくつでも組み合わせて、さらなる実施形態を作り出すことができると理解すべきである。種々記載する実施例および好ましい実施形態が、明示的に記載された実施形態だけに本発明を限定するものであると、解釈してはならない。この説明は、明示的に記載する実施形態と、ここに開示する要素および/または好ましい要素とを、いくつでも併せ持つ実施形態を、裏付け、包含するものであると理解すべきである。さらにまた、本願に記載する全ての要素の任意の順列および組合せは、文脈上別段の指示がある場合を除き、本願の記載によって開示されていると見なすべきである。例えば、好ましい一実施形態において本発明の溶解バッファーのカオトロピック剤がグアニジニウム塩酸塩であり、もう一つの好ましい実施形態において溶解バッファーの還元剤がジチオスレイトールであるとすると、グアニジニウム塩酸塩とジチオスレイトールとが本発明の溶解バッファー中に存在することは、本発明の好ましい実施形態である。
好ましくは、本明細書において使用する用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)」H.G.W.Leuenberger、B.NagelおよびH.Koelbl編、Helvetica Chimica Acta、スイスCH-4010バーゼル(1995)に記載されているように定義される。
本発明の実施には、別段の表示がある場合を除き、化学、生化学、および組換えDNA技術の従来の方法が使用され、それらは、当該分野の文献に説明されている(例えば「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(第2版、J.Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、1989)を参照されたい)。
本明細書とそれに続く特許請求の範囲の全体を通して、文脈上別段の必要がある場合を除き、用語「を含む」(comprise)とその異形(例えば「comprises」および「comprising」)は、明示された部材、整数もしくはステップ、または部材、整数もしくはステップの群の包含を含意するが、他の任意の部材、整数もしくはステップまたは部材、整数もしくはステップの群の排除を含意するわけではないと理解されるであろう。用語「を含む」は、文脈上そうでないことが明白である場合を除き、用語「から本質的になる」(essentially consisting of)および「からなる」(consisting of)も包含する。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される単数形「ある/一つの」(a/an)および「その」(the)は、文脈上そうでないことが明白である場合を除き、複数の指示物を包含する。
定義
本発明に関して、「溶解バッファー」は、細胞の内容物を分析する目的で、例えば細胞に含まれている核酸を分析するなどの目的で、細胞を溶解するのに適している。好ましくは、本発明の溶解バッファーは、哺乳動物細胞および/または微生物細胞、例えば細菌細胞や酵母細胞の溶解に適している。したがって本発明の溶解バッファーは、好ましくは、マイコバクテリウム科(Mycobacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、マイコプラズマ科(Mycoplasmataceae)、クラミジア科(Chlamydiaceae)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、スタフィロコッカス科(Staphylococcaceae)、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、キサントモナス科(Xantomonadaceae)、モラクセラ科(Moraxellaceae)、レジオネラ科(Legionellaceae)、バークホルデリア科(Burkholderiaceae)、コリネバクテリア科(Corynebacteriaceae)、ナイセリア科(Neisseriaceae)、バクテロイデス(Bacteroides)、およびパスツレラ科(Pasteurellaceae)からなる群より選択される科の細菌の溶解、およびサッカロミセス科(Saccharomycetaceae)、スポリジオボラス科(Sporidiobolaceae)、トリココマ科(Trichocomaceae)、およびニューモキスチス科(Pneumocystidaceae)からなる群より選択される科の酵母の溶解に適している。本発明の溶解バッファーの溶解特性は、該溶解バッファーにおける溶解すべき試料の加熱またはビーズ粉砕などといった加工ステップを必要としうる。加工ステップは、溶解すべき細胞のタイプおよびその細胞を含んでいる試料のタイプに依存しうる。好ましくは、本発明の溶解バッファーは水性溶解バッファー、すなわち水系の溶解バッファーである。したがって、本発明に関して、例えば(i)少なくとも1つのカオトロピック剤、(ii)少なくとも1つの還元剤、および(iii)少なくとも1つのタンパク質分解酵素からなる溶解バッファーとは、そのような溶解バッファーが、水および場合によってはバッファー構成要素(例えば溶解バッファーのpHを調節するためのもの)をも含有しうることを意味する。
「カオトロピック剤」という用語は、タンパク質、DNA、またはRNAなどの高分子の三次元構造を破壊し、それらを変性させる薬剤を指す。カオトロピック剤は、水素結合、ファンデルワールス力、および疎水性効果などの非共有結合力によって媒介される安定化分子内相互作用を妨げる。カオトロピックイオンは、例えば、いわゆるホフマイスター系列によれば、グアニジニウム、バリウム、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、および過塩素酸イオンである(陽イオン:NH4 +>Rb+>K+>Na+>Cs+>Li+>Mg2+>Ca2+>Ba2+>グアニジニウム;陰イオン:PO4 3->SO4 2->HPO4 2->酢酸イオン>クエン酸イオン>酒石酸イオン>Cl->Br->NO3 ->ClO3 ->ClO4 ->I->SCN-)。ホフマイスター系列では、左側の陽イオンおよび陰イオンが「コスモトロピック」(すなわちアンチカオトロープ)であり、疎水性相互作用の強さを増加させる。右側のイオンは「カオトロピック」であり、疎水性相互作用を弱める傾向がある。本発明のどの態様についても、カオトロピック剤は、ホフマイスター系列の少なくとも1つの陽イオンであって、系列内でカルシウムより右側にあるもの、またはホフマイスター系列の少なくとも1つの陰イオンであって、系列内で塩素酸(ClO3 -)陰イオンより右側にあるものを含有する。例えば、本発明に関して、カオトロピック剤は以下の1つを含有しうる:バリウム、グアニジニウム、過塩素酸イオン、ヨウ化物イオン、チオシアン酸イオン、またはイソチオシアン酸イオン。例えば、本発明のあらゆる対応に関して、カオトロピック剤は、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、グアニジニウム塩酸塩、塩化グアニジニウム、チオシアン酸アルカリ、イソチオシアン酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、または過塩素酸アルカリであることができる。これに関連して、アルカリイオンは、好ましくは、カリウムまたはナトリウムである。
本発明に関して、「還元剤」は、タンパク質などの高分子中または高分子内のジスルフィド結合を解離させる能力を有する任意の薬剤である。本発明のどの態様についても、還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)、N-アセチル-システイン(NALC)、β-メルカプトエタノール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、またはチオレドキシンであることができる。好ましくは、還元剤はDTTである。
本発明に関して、「タンパク質分解酵素」という用語は、タンパク質分解活性を有する、すなわちタンパク質の加水分解(好ましくはペプチド結合の加水分解)を触媒する能力を有する、任意の実体を指す。好ましくは、「タンパク質分解酵素」という用語は、酵素委員会(Enzyme Commission)番号(EC番号)EC3.4、好ましくはEC3.4.21またはEC3.4.22の酵素群に属する酵素を指す。好ましくは、タンパク質分解酵素はプロテアーゼ、好ましくはセリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼである。用語「プロテアーゼ」、「ペプチダーゼ」、および「プロテイナーゼ」は可換的に使用される。好ましくは、本発明において使用されるタンパク質分解酵素は、幅広い基質特異性を有する。好ましくは、タンパク質分解酵素は、1つ以上のカオトロピック剤の存在下で活性である。例えば、本発明において使用されるタンパク質分解酵素は、400mM、好ましくは600mM、好ましくは800mM、好ましくは1Mチオシアン酸グアニジニウムの存在下、および/または2M、好ましくは3M、好ましくは4M、好ましくは5M尿素の存在下、および/または1.5M、好ましくは2M、好ましくは4M、好ましくは5Mグアニジニウム塩酸塩の存在下で活性であることが好ましい。好ましくは、本発明において使用されるタンパク質分解酵素は、1つ以上の還元剤の存在下で活性である。したがって、タンパク質分解酵素は、10mM DTT、好ましくは20mM、好ましくは50mM DTT、好ましくは80mM DTT、より好ましくは100mM DTTの存在下で活性であることが好ましい。特に好ましい一実施形態では、タンパク質分解酵素が、約20mM DTTの存在下で活性である。本発明に関して、タンパク質分解酵素などの酵素、例えばプロテアーゼは、その酵素が触媒する反応の反応速度が、バッファー条件および温度条件などの至適条件を使った該酵素の最大反応速度の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、およびより一層好ましくは少なくとも80%であるならば、活性であると見なされる。本発明において使用されるタンパク質分解酵素の特に好ましい例は、プロテイナーゼK(好ましくはEC3.4.21.64)、サブチリシン(好ましくはEC3.4.21.62)、エラスターゼ(好ましくはEC3.4.21.11、EC3.4.21.36、EC3.4.21.37、またはEC3.4.21.71)、カスパーゼ(好ましくはEC3.4.22.36)である。特に好ましい一実施形態において、タンパク質分解酵素は、Qiagenから入手することができるプロテイナーゼK(例えば20mg/ml、>600mAU/ml、注文番号19131)などのプロテイナーゼK、またはサブチリシンである。本発明に関して、プロテイナーゼKの単位の好ましい定義は、次のとおりである:1単位は、1分間に1μmolのチロシンに相当するフォリン(Folin)陽性アミノ酸およびペプチドを遊離させるのに必要な活性である。本発明に関して、プロテイナーゼKの単位のもう一つの好ましい定義は、次のとおりである:1単位は、尿素変性ヘモグロビンを加水分解して、37℃、pH7.5において1分間に1μmolのチロシンに相当する呈色をもたらす。用語「単位」および「mAU」(AU=アンソン単位)は、本明細書においては可換的に使用される。同様の活性を得るために異なるタンパク質分解酵素を選択する方法は、当業者にはよく知られている。
本発明に関して、「ビーズ」という用語は、200μm〜2mm、好ましくは300μm〜800μmの範囲のサイズの粒子を指す。ビーズは任意の形状を呈することができ、例えばボール状、立方体状、三角形であってもよいし、任意の不規則な形状を呈してもよい。好ましくは、ビーズは、固形不活性材料でできている。したがってビーズは、好ましくは、硬いコンシステンシーを呈し、好ましくは、タンパク質や核酸などの生物学的物質とはほとんど化学反応しない。特に好ましい実施形態において、ビーズは、核酸にほとんど結合しない。好ましくは、ビーズは、ガラス、セラミックス、プラスチック、または鋼などの金属でできている。ビーズの素材は、最も好ましくはガラスである。好ましくは、本明細書において使用される用語「ビーズ」は、シリカビーズを指さず、核酸単離に使用されるどのビーズも指さない。
「溶解」または「溶解反応」という用語は、溶解手順を指し、好ましくは、本明細書に記載する身体試料の溶解に関する。本発明の全ての態様に関して、溶解反応は、好ましくは、溶解反応混合物の用意を包含する。本発明に関して「溶解反応混合物」は、好ましくは、試料、好ましくは身体試料、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む。好ましくは、溶解反応混合物はさらに、本明細書に記載のビーズを含む。例えば溶解反応混合物は、本発明の第1の態様による溶解バッファーと身体試料との混合物であるか、溶解反応混合物は、本明細書に記載する「混合済み溶解組成物」、身体試料、および少なくとも1つのタンパク質分解酵素の混合物であることができる。好ましくは、少なくとも1つのカオトロピック剤および少なくとも1つの還元剤の性質と濃度は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素が溶解反応混合物中で活性であるように選ばれる。好ましくは、カオトロピック剤の性質と濃度および/または還元剤の性質と濃度および/またはタンパク質分解酵素の性質と濃度は、溶解反応混合物における身体試料の液状化、好ましくは溶解が達成されるようなものとする。好ましくは、少なくとも1つのカオトロピック剤は本明細書に(例えば定義および本発明の第1の態様において)記載するとおりであり、好ましくは、0.1M〜4Mの範囲、好ましくは0.5M〜3.5Mの範囲、より好ましくは1.0M〜3.0Mの範囲、最も好ましくは1.2M〜2.6Mの範囲内の濃度で、溶解反応混合物中に存在する。例えば、少なくとも1つのカオトロピック剤、好ましくはグアニジニウム塩酸塩は、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、または4.0Mの濃度で、最も好ましくは約2.0±0.75Mの濃度で、溶解反応混合物中に存在しうる。例えば試料タイプおよび/またはタンパク質分解酵素に依存してカオトロピック剤が変われば、カオトロピック剤の至適濃度も変わりうることは、当業者にはわかるであろう。例えば、溶解反応混合物におけるグアニジニウム塩酸塩の好ましい濃度は、1.0〜3.0M、好ましくは2.0±0.75Mの範囲にあり、一方、チオシアン酸グアニジニウムの好ましい濃度は、0.1〜1.0M、好ましくは0.5±0.4Mの範囲、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9Mである。いくつかの実施形態では、本発明の第1の態様について説明するとおり、本発明においていうところの少なくとも1つのカオトロピック剤が、カオトロピック剤を構成要素として(好ましくは主要構成要素として)含有する市販の溶解バッファー、例えばQiagen溶解バッファーALである。これらの実施形態において、溶解反応混合物は、好ましくは、市販の溶解バッファー、好ましくはQiagen溶解バッファーALを、20%(vol/vol)〜80%(vol/vol)の範囲、好ましくは30%(vol/vol)〜70%(vol/vol)の範囲、より好ましくは40%(vol/vol)〜60%(vol/vol)の範囲内の濃度で含む。例えば市販の溶解バッファー、好ましくはQiagen溶解バッファーALは、20%(vol/vol)、30%(vol/vol)、40%(vol/vol)、50%(vol/vol)、60%(vol/vol)、70%(vol/vol)、または80%(vol/vol)の濃度で、好ましくは50±10%(vol/vol)、より好ましくは50±5%(vol/vol)の濃度で、溶解反応混合物中に存在しうる。溶解反応混合物中に存在する市販溶解バッファーのvol%が、該市販溶解バッファー中のカオトロピック剤のタイプおよび/または濃度に依存すること、そしてまた、市販溶解バッファー中のカオトロピック剤のタイプおよび/または濃度に基づいて溶解反応混合物中の市販溶解バッファーのvol%を適合させることが容易に可能であることは、当業者には理解されるであろう。好ましくは、少なくとも1つの還元剤は本明細書に記載するとおりであり、好ましくは、0.5mM〜100mMの範囲、好ましくは2.5mM〜50mMの範囲、より好ましくは10mM〜30mMの範囲内の濃度で、溶解反応混合物中に存在する。例えば、少なくとも1つの還元剤、好ましくはDTTは、0.5mM、1.0mM、5.0mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、または100mMの濃度で、溶解反応混合物中に存在することができ、好ましくは濃度は10mMより高く、好ましくは約20±5mM、より好ましくは約20mMである。好ましくは、少なくとも1つのタンパク質分解酵素は本明細書に記載するとおりであり、好ましくは、5〜200単位/mlの範囲、好ましくは10〜100単位/ml、より好ましくは20〜50単位/mlの範囲内の濃度で、溶解反応混合物中に存在する。例えば、タンパク質分解酵素、好ましくはプロテイナーゼKは、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100単位/mlの濃度、好ましくは25±10単位/mlの濃度、最も好ましくは25±5単位/mlの濃度で、溶解反応混合物中に存在することができ、ここで単位の定義は、好ましくは、プロテイナーゼKについて上述したとおりである。好ましくは、随意のビーズは本明細書に記載するとおりであり、好ましくは、50〜500mg/mlの範囲、好ましくは100〜400mg/mlの範囲、より好ましくは150〜350mg/mlの範囲、最も好ましくは250〜350mg/mlの範囲内の濃度で、溶解反応混合物中に存在する。例えば、随意のビーズは、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500mg/mlの濃度、好ましくは300±100mg/mlの濃度、より好ましくは300±50mg/mlの濃度で、溶解反応混合物中に存在しうる。ここに記載する濃度および百分率(例えばvol%)は随意のビーズの体積を考慮していないことを理解すべきである。いくつかの実施形態において、溶解反応混合物は、本明細書に(例えば定義において、および本発明の第1の態様による溶解バッファーに関して)記載する洗浄剤および/またはキレート剤を含有しない。いくつかの実施形態において、溶解反応混合物はさらに、本明細書に記載する1つ以上の洗浄剤および/または1つ以上のキレート剤を含む。好ましくは、溶解反応混合物は水に基づき、好ましくは、本発明の第1の態様による溶解バッファーについて説明するもののような緩衝性構成要素を含有する。好ましくは、溶解反応混合物のpHは、およそ中性〜アルカリ性である。好ましくは、溶解反応混合物のpHは、5.5〜8.0の範囲、すなわち5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、または8.0であり、好ましくは7付近である。好ましくは、溶解反応混合物は、前記少なくとも1つのタンパク質分解酵素以外の他の酵素を何も含有しない。例えば、溶解反応混合物は、本明細書に記載する身体試料、1.2〜2.6Mのカオトロピック剤、好ましくはグアニジニウム塩酸塩、21±5mMの還元剤、好ましくはDTT、25±5単位のタンパク質分解酵素、好ましくはプロテイナーゼK、および好ましくは300±50mg/mlのビーズを含み、好ましくはそれらから本質的になり、好ましくはそれらからなることができる。例えば、溶解反応混合物は、約48±3%(vol/vol)のQiagen溶解バッファーAL、例えば230μl±10μl、約2%(vol/vol)の1M DTT、例えば10μl±3μl、約4%(vol/vol)(>600mAU/ml)のプロテイナーゼK、例えば20μl±6μl、約46±5%(vol/vol)の身体試料、および好ましくは約300mg/ml±50mg/mlのビーズ、例えば140±30mgのガラスビーズからなることができる。プロテイナーゼKは乾燥した形態で溶解反応混合物に加えることもできる。
「混合済み溶解組成物」という用語は、少なくとも1つのカオトロピック剤および少なくとも1つの還元剤を含む組成物を指す。好ましくは、混合済み溶解組成物はさらに、本明細書に記載するビーズを含む。好ましくは、混合済み溶解組成物は、前記少なくとも1つのタンパク質分解酵素を欠く、本発明の第1の態様による溶解バッファーである。好ましくは、混合済み溶解組成物中のカオトロピック剤の性質と濃度および/または還元剤の性質と濃度は、身体試料の液状化、好ましくは溶解が、該身体試料を混合済み溶解組成物と混合した場合に、好ましくは該身体試料を混合済み溶解組成物と約1:1の体積比で混合した場合に、達成されるようなものとする。好ましくは、混合済み溶解組成物中のカオトロピック剤の性質と濃度および/または還元剤の性質と濃度は、タンパク質分解酵素が、その混合済み溶解組成物と身体試料との混合物中で、好ましくは混合済み溶解組成物を身体試料と約1:1の体積比で混合した場合に、活性であるようなものとする。好ましくは、混合済み溶解組成物中の少なくとも1つのカオトロピック剤および少なくとも1つの還元剤の濃度は、それを身体試料と混合し、タンパク質分解酵素を添加した後で、前記少なくとも1つのカオトロピック剤および前記少なくとも1つの還元剤の濃度が溶解反応混合物に関して定義したとおりになるようなものとする。好ましくは、少なくとも1つのカオトロピック剤は、本明細書に(例えば定義および本発明の第1の態様において)記載するとおりであり、好ましくは、0.2M〜8.0Mの範囲、好ましくは1.0M〜7.0Mの範囲、より好ましくは2.0M〜6.0Mの範囲、最も好ましくは2.5M〜5.2Mの範囲内の濃度で、混合済み溶解組成物中に存在する。例えば、少なくとも1つのカオトロピック剤、好ましくはグアニジニウム塩酸塩は、約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、または8.0Mの濃度、最も好ましくは約4.0±1.5Mの濃度で、混合済み溶解組成物中に存在しうる。例えば試料タイプおよび/またはタンパク質分解酵素に依存してカオトロピック剤が変われば、カオトロピック剤の至適濃度も変わりうることは、当業者にはわかるであろう。例えば、混合済み溶解組成物中のグアニジニウム塩酸塩の好ましい濃度は、2.0〜6.0M、好ましくは4.0±1.5Mの範囲にあり、一方、チオシアン酸グアニジニウムの場合、好ましい濃度は、0.2〜2.0M、好ましくは1.0±0.8Mの範囲にあって、例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、または1.8Mである。いくつかの実施形態では、本発明の第1の態様について説明するとおり、本発明においていうところの少なくとも1つのカオトロピック剤が、カオトロピック剤を構成要素として(好ましくは主要構成要素として)含有する市販の溶解バッファー、例えばQiagen溶解バッファーALである。これらの実施形態では、混合済み溶解組成物が、好ましくは、市販の溶解バッファー、好ましくはQiagen溶解バッファーALを、40%(vol/vol)〜99%(vol/vol)、好ましくは60%(vol/vol)〜98%(vol/vol)の濃度、より好ましくは80%(vol/vol)〜96%(vol/vol)の範囲内の濃度で含む。例えば、市販の溶解バッファー、好ましくはQiagen溶解バッファーALは、50%(vol/vol)、60%(vol/vol)、70%(vol/vol)、80%(vol/vol)、90%(vol/vol)、95%(vol/vol)、または98%(vol/vol)の濃度、好ましくは90±9%(vol/vol)、より好ましくは96±3%(vol/vol)の濃度で、混合済み溶解組成物中に存在しうる。混合済み溶解組成物中に存在する市販溶解バッファーのvol%が、該市販溶解バッファー中のカオトロピック剤のタイプおよび/または濃度に依存すること、そしてまた、市販溶解バッファー中のカオトロピック剤のタイプおよび/または濃度に基づいて混合済み溶解反応混合物中の市販溶解バッファーのvol%を適合させることが容易に可能であることは、当業者には理解されるであろう。好ましくは、少なくとも1つの還元剤は、本明細書に(例えば定義および本発明の第1の態様に)記載するとおりであり、好ましくは、1.0mM〜200mMの範囲、好ましくは5.0mM〜100mMの範囲、より好ましくは20mM〜60mMの範囲内の濃度で、混合済み溶解組成物中に存在する。例えば、少なくとも1つの還元剤、好ましくはDTTは、1.0mM、5.0mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、または200mMの濃度で、混合済み溶解組成物中に存在することができ、好ましくは濃度は20mMより高く、好ましくは濃度は約40±10mM、より好ましくは約40mMである。好ましくは、随意のビーズは本明細書に記載するとおりであり、好ましくは、100〜1000mg/mlの範囲、好ましくは200〜800mg/mlの範囲、より好ましくは300〜700mg/mlの範囲、最も好ましくは500〜700mg/mlの範囲内の濃度で、混合済み溶解組成物中に存在する。例えば、随意のビーズは、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000mg/ml、好ましくは600±200mg/mlの濃度、より好ましくは600±100mg/mlの濃度で、混合済み溶解組成物中に存在しうる。ここに記載する濃度は随意のビーズの体積なしで計算されていると理解すべきである。いくつかの実施形態では、混合済み溶解組成物が、本明細書に(例えば定義においてまたは本発明の第1の態様による溶解バッファーに関して)記載する洗浄剤および/またはキレート剤を含有しない。いくつかの実施形態では、混合済み溶解組成物がさらに、本明細書に記載する1つ以上の洗浄剤および/または1つ以上のキレート剤を含む。好ましくは、混合済み溶解組成物は水に基づき、好ましくは、本発明の第1の態様による溶解バッファーについて説明するもののような緩衝性構成要素を含有する。好ましくは、混合済み溶解組成物のpHは、およそ中性〜アルカリ性である。好ましくは、混合済み溶解組成物のpHは、5.5〜8.0の範囲、すなわち5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、または8.0であり、好ましくは7付近である。好ましくは、混合済み溶解組成物はタンパク質分解酵素を含有せず、好ましくは混合済み溶解組成物は酵素を何も含有しない。例えば、混合済み溶解組成物は、2〜6M、好ましくは2.5〜5.5M、より好ましくは2.5〜5.1Mの範囲内の濃度のカオトロピック剤、好ましくはグアニジニウム塩酸塩、20〜60mM、好ましくは40±10mMの範囲内の濃度の還元剤、好ましくはDTT、および好ましくはビーズ、好ましくは600±100mg/mlの範囲内の濃度のビーズを含み、好ましくはそれらから本質的になり、好ましくはそれらからなることができる。例えば、混合済み溶解組成物は、96±3%(vol/vol)のQiagen溶解バッファーAL、例えば230μl±10μl、4±1%(vol/vol)の1M DTT、例えば10±3μl、および好ましくはビーズ、好ましくは600±100mg/mlの濃度のビーズ、例えば140±30mgのガラスビーズを含み、好ましくはそれらから本質的になり、好ましくはそれらからなることができる。
本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および溶解反応混合物に関して、いくつかの実施形態では、還元剤がDTTであるならば、カオトロピック剤はチオシアン酸グアニジニウムではない。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤がチオシアン酸グアニジウムまたは尿素であるならば、還元剤はDTTではない。いくつかの実施形態では、還元剤がDTTではない。いくつかの実施形態では、還元剤がβ-メルカプトエタノールではない。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤がチオシアン酸グアニジニウムではない。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤が尿素ではない。
「カオトロピック剤の性質と濃度は、身体試料の液状化、好ましくは溶解が達成されるようなものとする」、「還元剤の性質と濃度は、身体試料の液状化、好ましくは溶解が達成されるようなものとする」、および「タンパク質分解酵素の性質と濃度は、身体試料の液状化、好ましくは溶解が達成されるようなものとする」という語句は、カオトロピック剤および/または還元剤および/またはタンパク質分解酵素ならびにそれらの濃度が、身体試料、好ましくは粘稠な身体試料を液化、好ましくは溶解するその能力に基づいて選ばれることを意味する。特にこれは、好ましくは、身体試料が、カオトロピック剤および/または還元剤および/またはタンパク質分解酵素による処理の前に、該処理後の粘度と比較して、より高い粘度を呈することを意味する。好ましくは、処理前の粘度は、処理後よりも少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍高く、最も好ましくは、処理前の粘度は、処理後よりも10倍高い。したがって、カオトロピック剤および/または還元剤および/またはタンパク質分解酵素の性質を、その適当な濃度と共に決定するために、当業者は、身体試料、好ましくは粘稠な身体試料、例えば喀痰または気管分泌物を、さまざまな濃度の、例えばカオトロピック剤については0.2M、0.5M、1M、2M、3M、4M、5M、および6Mおよび/または還元剤については1mM、5mM、10mM、25mM、50mM、および100mMおよび/またはタンパク質分解酵素については5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100単位/mlの候補カオトロピック剤および/または還元剤および/またはタンパク質分解酵素と共に、一定の時間、例えば5分、10分、20分、または30分にわたって、タンパク質分解酵素の場合には、そのタンパク質分解酵素が活性である温度においてインキュベートし、その処理前と処理後に試料の粘度を決定することができる。溶解特性について言えば、上記の表現は、身体試料が、カオトロピック剤および/または還元剤および/またはタンパク質分解酵素による処理前に、該処理後の細胞数と比較して、より多数の無傷細胞を含有することを意味する。好ましくは、処理前の無傷細胞の数は、処理後より少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍多く、最も好ましくは、処理前の無傷細胞の数は、処理後より10倍多い。したがって、カオトロピック剤および/または還元剤および/またはタンパク質分解酵素の性質を、その適当な濃度と共に決定するために、当業者は、身体試料を上述のようにインキュベートすることができ、試料中の無傷細胞の数が、処理前と処理後に、例えば顕微鏡分析によって決定される。次に、カオトロピック剤および/または還元剤および/またはタンパク質分解酵素が、上に指定したように身体試料を液状化、好ましくは溶解するのに適した濃度で選ばれる。
本発明において使用される「身体試料」という用語は、個体の身体に由来する任意の試料を指す。これに関連して、「個体」という用語は、好ましくは、動物、好ましくはヒトを含む哺乳動物を指す。例えば、本発明に関して、個体は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、またはヒト、好ましくはヒトであることができる。個体は患者であることができ、ここで「患者」という用語は、疾患を患っているまたは疾患を患っていると疑われる個体を指す。本発明に関して、疾患は、好ましくは、呼吸器疾患である。好ましくは、身体試料は体液または体組織であり、好ましくは、科学的試験のために、例えば疾患(例えば呼吸器疾患)を、例えば好ましくは呼吸器疾患の診断に関係する身体試料における病原体または腫瘍マーカーの存在を検出および/または同定することなどによって診断するために、採取されたものである。好ましくは、本発明に関して、身体試料は、細胞、例えば病原体、またはその身体試料の起源である個体の細胞、例えば腫瘍細胞を含む。
本発明に関して、好ましい身体試料は、呼吸器疾患の診断に関係する試料である。そのような身体試料は、呼吸器試料、すなわち気道に由来する身体試料、および非呼吸器試料、すなわち気道に由来しない身体試料であることができる。本発明に関して、気道は、好ましくは、鼻、鼻道、副鼻洞、のど、咽頭、発声器、喉頭、気管、気管支、細気管支、および肺(呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、および肺胞を含む)を含む。本発明に関して、呼吸器試料の例は、喀痰、膿(例えば副鼻腔からの膿)、気管支分泌物、気管分泌物、気管内分泌物、気管支吸引物、気管吸引物、気管内吸引物、気管支洗浄液、気管支肺胞洗浄液(BAL)、気管支スワブ、鼻咽頭スワブ、喉頭スワブ、および肺生検材料である。本発明において使用される好ましい非呼吸器試料は、呼吸器疾患の診断に関係する。本発明に関して、非呼吸器試料の好ましい例は、血液、膿、胸水、胸膜穿刺液、胃液、胃吸引物、および身体の他の場所からのドレナージ液または穿刺液である。
「異なるタイプの身体試料」という表現は、性質が異なる2つ以上の身体試料を指す。例えば、異なるタイプの身体試料は、そのコンシステンシー、例えば液状、粘稠、塊状、固形などが異なりうるか、かつ/または組成、例えば構成要素(タンパク質、脂質、ムチン、細胞、細胞外マトリックス、組織、膜、塩、多糖、水など)の構造および性質、pHなど、または起源が異なりうる。試料間の相違の程度は、試料タイプが異なれば異なりうる。したがって、2つの試料間で異なる特徴が多いほど、それらの試料の相違は大きい。例えば、血液と喀痰または胃液と喀痰が著しく相違するのに対し、喀痰と気管分泌物は相違が少ないなどである。
本発明において使用される「汎用することができる」(universally applicable)という用語は「幅広く使用できる」(broadly usable)を意味する。したがって汎用溶解バッファーは幅広く使用できる溶解バッファーである。例えば、身体試料などの試料の溶解に汎用することができる溶解バッファーは、好ましくは、いくつかの異なるタイプの試料、例えば少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、より好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、より一層好ましくは少なくとも9、最も好ましくは少なくとも10の異なるタイプの身体試料の溶解に、適用することができる。好ましくは、汎用溶解バッファーは、いくつかの異なるタイプの試料を溶解するのに有効である。最も好ましくは、汎用することができる溶解バッファーは、後述のように、いくつかの、好ましくは少なくとも2つの、著しく異なるタイプの身体試料の溶解に適用することができる。好ましくは、本発明に関して、「に適用することができる」(applicable to)とは、「に有効である」(effective in)または「に適している」(suitable for)を意味する。
本発明に関して、「いくつかの異なるタイプの試料を溶解するのに有効」および「2つ以上の異なるタイプの身体試料の溶解に適している」という表現は、好ましくは、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、より好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、より一層好ましくは少なくとも9、最も好ましくは少なくとも10の異なるタイプの身体試料において、身体試料に含まれる細胞の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より一層好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも90%、より一層好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%が溶解されることを意味する。
本発明に関して、「広範な身体試料」とは、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、より好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、より一層好ましくは少なくとも9、最も好ましくは少なくとも10の異なるタイプの身体試料を意味する。好ましい一実施形態において、「広範な身体試料」とは、「呼吸器疾患の診断に関係する広範な身体試料」を指す。最も好ましくは、「広範な身体試料」とは、後述のように、いくつかの、好ましくは少なくとも2つの、著しく異なるタイプの身体試料を指す。本発明に関して、「汎用溶解バッファー」は、好ましくは、広範な身体試料」の溶解に適用することができる。これに関連して、汎用溶解バッファーは広域溶解バッファーである。
好ましくは、本発明の溶解バッファー、使用、方法および/またはキットは、好ましくは、身体試料の溶解に、好ましくは呼吸器疾患の診断に関係する身体試料の溶解に、汎用することができ、かつ/または広範な身体試料の溶解に適用することができる。これは、例えば、本発明の溶解バッファー、使用、方法、またはキットが、血液、喀痰、膿(例えば副鼻腔からの膿)、胸水、胸膜穿刺液、気管支分泌物、気管分泌物、気管内分泌物、気管支吸引物、気管吸引物、気管内吸引物、気管支洗浄液、気管支肺胞洗浄液(BAL)、気管支スワブ、鼻咽頭スワブ、喉頭スワブ、胃液、胃吸引物、および肺生検材料からなる群より選択される少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、より好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8、より一層好ましくは少なくとも9、最も好ましくは少なくとも10の異なるタイプの身体試料の溶解に適用することができ、好ましくは適用されること、または本発明の溶解バッファー、使用、方法、またはキットが、血液、喀痰、気管分泌物、気管支分泌物、気管支肺胞洗浄液、胃液、および胸膜穿刺液からなる群より選択される少なくとも2、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも6タイプの身体試料の溶解に適用することができ、好ましくは適用されること、または本発明の溶解バッファー、使用、方法、またはキットが、血液、分泌物(例えば気管分泌物、気管支分泌物など)、喀痰、および洗浄液(例えば気管支洗浄液、気管支肺胞洗浄液など)からなる群より選択される少なくとも2、好ましくは少なくとも3タイプの身体試料、例えば血液と分泌物;血液と喀痰;血液と洗浄液;分泌物と喀痰;分泌物と洗浄液;喀痰と洗浄液;血液、分泌物、および洗浄液;血液、分泌物、および喀痰、血液、喀痰、および洗浄液;分泌物、喀痰、および洗浄液;ならびに血液、分泌物、喀痰、および洗浄液の溶解に適用することができ、好ましくは適用されることを意味する。
特に好ましい実施形態において、本発明の溶解バッファー、使用、方法、またはキットは、血液、喀痰、気管分泌物、気管支分泌物、気管支肺胞洗浄液、胃液、および胸膜穿刺液を含む、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる試料の溶解に適用することができ、好ましくは適用される。
好ましくは、本発明の溶解バッファー、使用、方法、またはキットは、少なくとも2つの著しく異なるタイプの身体試料、例えば血液と喀痰;血液と気管分泌物;血液と気管支分泌物;血液と気管支肺胞洗浄液;血液と胃液;血液と胸膜穿刺液;喀痰と胃液;喀痰と胸膜穿刺液;気管支肺胞洗浄液と胸膜穿刺液;気管支肺胞洗浄液と胃液;気管支肺胞洗浄液と喀痰;および胸膜穿刺液と胃液の溶解に適用することができ、好ましくは適用される。より好ましくは、本発明の溶解バッファー、使用、方法、またはキットは、少なくとも3つの著しく異なる試料、例えば血液、喀痰、および胃液;血液、喀痰、および胸膜穿刺液;血液、気管分泌物、および胃液;血液、気管分泌物、および胸膜穿刺液;血液、気管支分泌物、および胃液;血液、気管支分泌物、および胸膜穿刺液;血液、気管支肺胞洗浄液、および胃液;血液、気管支肺胞洗浄液、および胸膜穿刺液;喀痰、胃液、および胸膜穿刺液;気管分泌物、胃液、および胸膜穿刺液;気管支分泌物、胃液、および胸膜穿刺液;ならびに気管支肺胞洗浄液、胃液、および胸膜穿刺液の溶解に適用することができ、好ましくは適用される。
本発明に関して、「呼吸器疾患」は、呼吸器系を冒す任意の疾患である。例えば、本明細書にいう呼吸器疾患には、(i)閉塞性肺疾患、(ii)拘束性肺疾患、(iii)気道感染症、例えば上気道感染症、例えば普通感冒、副鼻腔炎、扁桃腺炎、中耳炎、咽頭炎、または喉頭炎、および下気道感染症、例えば肺炎、(iv)呼吸器腫瘍、例えば小細胞肺がん、非小細胞肺がん(例えば腺癌、大細胞未分化癌)、他の肺がん、例えばカルチノイド、カポジ肉腫、または黒色腫、リンパ腫、頭頚部がん、中皮腫、および肺におけるがん転移、例えば乳がん、大腸がん、前立腺がん、胚細胞がん、および腎細胞癌からの転移、(v)胸膜腔疾患、例えば蓄膿および中皮腫、ならびに(vi)肺血管疾患が包含される。本発明に関して、特に好ましい呼吸器疾患は、分子診断法を使って、好ましくは核酸増幅および分析法を使って、診断することができる、呼吸器疾患である。例えば、気道感染症、例えば病原体(例えば細菌、ウイルス、酵母、または真菌、好ましくは酵母または細菌)による感染症、および呼吸器腫瘍は、本発明に関して、好ましい呼吸器疾患である。本発明に関して、特に好ましい呼吸器疾患は、肺炎、特に病原体による感染症が引き起こす肺炎、例えば細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、真菌性肺炎、寄生虫性肺炎、非定型肺炎、市中感染肺炎、医療ケア関連肺炎、院内感染肺炎、人工呼吸器感染肺炎、または重症急性呼吸器症候群、結核、気管支炎、嚢胞性線維症または慢性閉塞性肺疾患(COPD)中の病原体感染、および呼吸器腫瘍である。
本明細書において使用する用語「洗浄剤」(detergent)は、「界面活性剤」(surfactant)を意味する。洗浄剤の例は、アルキル硫酸塩、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはラウリル硫酸アンモニウム、ノニオン界面活性剤、例えばTriton X-100、オクチルグルコシド、Genapol X-100、またはTween 20もしくはTween 80などのポリソルベート、およびサルコシル(N-ラウロイル-サルコシン)である。いくつかの実施形態では、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物が、洗浄剤を含有しない。好ましくは、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物はSDSを含有しない。好ましくは、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物は、Triton X-100を含有しない。好ましくは、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物は、Tween 20またはTween 80を含有しない。好ましくは、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物は、N-ラウロイル-サルコシンを含有しない。好ましくは、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物は、上記の洗浄剤をいずれも含有せず、より好ましくは、溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物は洗浄剤を何も含有しない。いくつかの実施形態では、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物が、1つ以上の洗浄剤、例えば上記洗浄剤の1つ以上を含有する。例えば、溶解反応混合物は1つ以上の洗浄剤を、0.1〜10%(w/v)、好ましくは0.25〜5%(w/v)の範囲内の濃度、例えば0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.5、または3%(w/v)の濃度で含有しうる。例えば、本発明の溶解バッファーまたは混合済み溶解組成物は、1つ以上の洗浄剤を、0.2〜20%(w/v)、好ましくは0.5〜10%(w/v)の範囲内の濃度、例えば0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10%(w/v)の濃度で含有しうる。例えば、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物または溶解反応混合物がカオトロピック剤としてQiagen溶解バッファーALを含む場合、Qiagen溶解バッファーALが洗浄剤を含有するのであれば、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物または溶解反応混合物は、洗浄剤を含有しうる。この場合、溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物は、Qiagen溶解バッファーAL中に存在するその特定洗浄剤および/または任意のさらなる洗浄剤を含有しうる。例えば、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物は、Triton X-100、Tween 20および/またはTween 80を、例えば上述の濃度で含有しうる。好ましくは、1つ以上の洗浄剤の性質および濃度を、本発明において使用されるタンパク質分解酵素が活性であるように選ぶ。
本発明において使用される「キレート剤」という用語は、「多座配位子」を指す。「キレート剤」、「キレーター」、「キラント」、および「封鎖剤」という用語は可換的に使用される。好ましくは、キレート剤は、金属イオン(例えばMg2+またはCa2+)などの単一原子への多重結合を形成する能力を有する。キレート剤の例は、アセチルアセトン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノジアセテート、トリエチレンテトラミン、トリアミノトリエチルアミン、ニトリロトリアセテート、エチレンジアミノトリアセテート、エチレンジアミノ四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、および1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)である。いくつかの実施形態では、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物が、EDTAおよび/またはEGTAを含有しない。より好ましくは、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物は、上記のキレート剤をいずれも含有せず、最も好ましくは、溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物はキレート剤を何も含有しない。いくつかの実施形態では、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、および/または溶解反応混合物が、1つ以上のキレート剤、例えば上記のキレート剤の1つ以上を含有する。例えば溶解反応混合物は、1つ以上のキレート剤を、0.5〜100mM、好ましくは1〜50mMの範囲内の濃度、例えば約1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50mMの濃度で含有しうる。例えば、本発明の混合済み溶解組成物または溶解バッファーは、1つ以上のキレート剤を、1〜200mM、好ましくは5〜100mMの範囲内の濃度、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100mMの濃度で含有しうる。例えば、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、または溶解反応混合物がカオトロピック剤としてQiagen溶解バッファーALを含む場合、Qiagen溶解バッファーALがキレート剤を含有するのであれば、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、または溶解反応混合物はキレート剤を含有しうる。この場合、溶解バッファーは、Qiagen溶解バッファーAL中に存在する特定キレート剤または任意のさらなるキレート剤を含有しうる。例えば、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物、または溶解反応混合物は、EDTAまたはEGTAを、上述した濃度で含有しうる。好ましくは、キレート剤の濃度は、本発明において使用されるタンパク質分解酵素が活性であるように選ばれる。
本発明に関して「加工」という用語は、一般に、加工される試料の1つ以上の物理的性質を処理/加工の前と後で決定した場合の該物理的性質の変化を含む、あらゆる処理を指す。好ましくは、本発明においていうところの「加工」は、試料の粘度が加工手順によって減少するような試料の液状化を含む。「加工」が試料の溶解、つまり試料中に存在する細胞の崩壊を含むことは、特に好ましい。そのような細胞は、原核細胞または真核細胞、例えば細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、動物細胞、哺乳動物細胞などであることができ、この場合、加工は、試料中の全ての細胞の溶解につながってもよいし、特定タイプの細胞または細菌のサブセットのみの溶解につながってもよい。本発明に関して、加工は病原体の溶解を含むことが、最も好ましい。
本発明に関して、「液状化」という用語は、液状化前の粘稠な試料の粘度が、液状化後の粘度と比較して高いこと、好ましくは少なくとも2倍は高いことを意味する。好ましくは、試料の粘度が、液状化前は液状化後の粘度と比較して少なくとも3倍は高い。より好ましくは、試料の粘度が、液状化前は液状化後の粘度と比較して、少なくとも5倍、最も好ましくは少なくとも10倍高い。
本発明に関して、「粘度」は、絶対粘度、すなわちkg・m−1・s−1=Pa・sの単位出測定されるηを意味する。絶対粘度のもう一つの一般的単位はセンチポアズ(cP)であり、1cPは1mPa・sに等しい。20℃の水は1.0020cPの粘度を有する。それより高い粘度を持つ材料の例をいくつか挙げる:37℃の血液=4〜25mPa・s、オリーブ油=約100mPa・s、蜂蜜=2000〜10000mPa・s、チョコレートシロップ=10000〜25000mPa・s、溶けたチョコレート=45000〜130000mPa・s、およびピーナツバター=約250000mPa・s。試料の粘度を決定する方法は当業者にはよく知られている。例えば、粘度を測定するための計器、すなわち粘度計は、市販されている。 本発明に関して「粘稠な試料」とは、高い粘度、好ましくは少なくとも1×104mPa・sの粘度を有する材料、例えば気管分泌物もしくは気管支分泌物、喀痰、または血液含有試料および膿状試料全般を意味する。
本発明に関して「未処理」という用語は、「未加工」または「生」を意味する。したがって「未処理身体試料」という表現は、身体試料が1つ以上の化学剤または物理力、例えば温度もしくは剪断力、または他の任意の手順、例えば遠心分離、濾過、もしくは篩分などの適用によって処理されていないことを意味する。本発明のどの態様についても、身体試料は、本発明の溶解バッファー、混合済み溶解組成物と接触させる前、または本発明の方法の第1ステップを行う前には、未処理であることが好ましい。しかし、本発明の方法を行う前に、または身体試料を本発明の溶解バッファーまたは混合済み溶解組成物と接触させる前に、身体試料が一定期間、例えば8時間以上、保存される場合には、身体試料を0℃未満、好ましくは-5℃未満、より好ましくは-10℃未満、最も好ましくは-20℃未満の温度で保存することが好ましい。したがって、本発明の方法を行う前または身体試料を本発明の溶解バッファーまたは混合済み溶解組成物と接触させる前に行われる身体試料の唯一の処理は、試料を凍結することである。
本発明に関して「核酸単離手順」は、物質および/または分子の複雑な混合物、例えば細胞溶解物からの、核酸の単離を可能にする方法である。好ましくは、本発明に関して、核酸単離手順は、シリカベースの技術または磁気ビーズ技術である。例えば、シリカベースの核酸単離手順は、シリカメンブレンに基づくか、シリカビーズに基づくことができ、好ましくはシリカメンブレンに基づくことができる。核酸単離キットは市販されており、例えばQiagen製のEZ-1 DNA組織キット(注文番号953034)またはQiaAmp(商標)DNA血液キット(注文番号51104)などがある。使用する核酸単離手順またはキットに応じて、核酸単離手順を実施する前に、加工した身体試料にさらなる試薬を補足する必要があるかもしれない。例えば、シリカメンブレン精製を使った核酸単離、例えばQiagen製のQiaAmp(商標)スピン手順を使った核酸単離の場合、溶解した身体試料にエタノール(96〜100%)を製造者の指示に従って加えてから、その混合物をQiaAmp(商標)スピンカラムに移す必要がある。身体試料の溶解に使用される構成要素に依存して、Qiagen溶解バッファーALとエタノール(96〜100%)との混合物を、溶解した身体試料に、好ましくは身体試料(身体試料の溶解に使用したQiagen溶解バッファーAL以外の構成要素を含む)とQiagen溶解バッファーALとエタノールの最終体積比が、その混合物をシリカメンブレンにローディングする前に、およそ1:1:1になるように加えることが、好ましいかもしれない。最も好ましくは、本発明が考える核酸単離手順は、フェノールおよび/またはクロロホルムなどの有機溶媒による抽出、またはエタノールもしくはイソプロパノールなどのアルコールによる沈殿を伴わない。単離された核酸は、核酸単離手順を行った後は、タンパク質などの他の高分子構造物を、好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは99%含まない。
本発明に関して「加熱」とは「温度を上昇させること」を意味する。したがって「混合物を第1温度まで加熱する」とは、混合物の温度を所定の温度まで上昇させることを意味する。例えば、混合物は室温から25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60℃、または60℃を上回る他の任意の温度まで加熱することができる。好ましくは「第1温度」は、25〜80℃、より好ましくは30〜60℃の範囲内にあり、最も好ましくは第1温度は56±5℃である。好ましくは、本発明に関して、第1温度は、タンパク質分解酵素(好ましくは本発明において使用されるタンパク質分解酵素)が活性であるような温度である。好ましくは、第1温度は、本発明において使用されるタンパク質分解酵素にとっての至適反応温度である。好ましくは、混合物の加熱には、混合物を、加熱の結果到達した温度に、一定の期間保つことも包含される。好ましくは「第2温度」は第1温度より高い。好ましくは、第2温度は50〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは80〜100℃の範囲内にある。例えば、第2温度は80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100℃、好ましくは96±5℃である。好ましくは、ある特定温度「まで加熱する」という用語は、ある特定温度「でインキュベートする」という用語を包含する。
「ビーズ粉砕」という用語は、ビーズの存在下での撹拌を意味する。したがって、試料または混合物、好ましくは液状、粘稠または半固形試料または混合物をビーズ粉砕する場合、試料または混合物はビーズを含有し、試料または混合物とビーズとが撹拌される。ビーズ粉砕は、好ましくは、高い液体剪断勾配およびビーズとの衝突ゆえに、試料または混合物の均質化と細胞の破壊をもたらす。均質化および細胞溶解の速度および有効性は、撹拌の速度、撹拌運動のタイプ、および/またはビーズのサイズならびに機材の寸法を変えることによって調整することができる。好ましくは、本発明の方法のビーズ粉砕ステップの条件は、混合物の1つ以上の物理的性質がビーズ粉砕ステップの前と後では異なるようなものとする。好ましくは、混合物はビーズ粉砕後の方がより均質であり、より好ましくは、混合物はビーズ粉砕後の方が粘度が、例えば少なくとも2倍は低く、最も好ましくは、ビーズ粉砕は、混合物中に存在する細胞の溶解、最も好ましくは細菌細胞および/または酵母細胞の溶解を含む。ビーズ粉砕手順は当業者にはよく知られている。例えばさまざまな寸法のビーズミルが市販されている。
本発明に関して、「核酸増幅法」は、核酸を増幅(すなわち増加)させるのに適した任意の分子生物学的技法であり、ここで、増幅は線形的であっても指数的であってもよい。核酸増幅法の例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(strand displacement amplification;SDA)法、多重置換増幅(multiple displacement amplification;MDA)法、Q-βレプリカーゼ増幅、およびループ媒介等温増幅(loop-mediated isothermal amplification;LAMP)法である。増幅法は、一定の核酸、例えば特異的遺伝子またはそのフラグメントに特異的であってもよいし、全ての核酸タイプまたはある特異的核酸タイプ(例えばmRNA)が普遍的に増幅されるように、汎用であってもよい。例えば、当業者は、目的の核酸に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、これらのプライマーをPCR実験において使用することができる。
本発明に関して、「核酸分析法」は、特異的核酸の検出および/または同定を可能にする任意の方法であり、ここで「検出」という用語は、核酸の定量的決定も含む。検出および/または同定は、特異的DNAフラグメントの増幅、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において該DNAフラグメントに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用する特異的増幅によるものに基づくことができる。目的の核酸に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを設計する方法は、当業者にはよく知られている。検出および/または同定は、例えば分析すべき核酸の配列決定によって、または例えばマイクロアレイ実験などにおける配列特異的ハイブリダイゼーションによって、増幅なしで達成することもできる。配列決定技法およびマイクロアレイベースの分析は、当分野では周知の手順である。
単離し、増幅し、または検出および/もしくは同定すべき核酸は、DNA、例えばゲノムDNAもしくはcDNA、またはRNA、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)もしくはリボソームRNA(rRNA)であることができる。好ましくは、核酸はDNAである。当分野における一般知識および文献を考慮すれば、核酸の単離、増幅、および分析方法は、当業者にはよく知られている。
「調製済み(ready-to-use)反応チューブ」という用語は、試料加工のためにそのまま使用することができる、予め小分けされた反応チューブを指す。これには、各使用前に反応バッファーを調製して小分けする必要がないという利点がある。本発明に関して、混合済み溶解組成物を調製済み反応チューブに入れて提供することは特に好ましい。本発明の溶解バッファーを調製済み反応チューブに入れて提供することも好ましい。好ましくは、チューブは、スクリューキャップチューブなど、確実に閉じることができるものである。好ましくは、チューブ、好ましくはスクリューキャップチューブは、1〜15ml、好ましくは1〜2mlの範囲内の容積、好ましくは1.5mlの容積を有する。1.5mlチューブは、標準的な加熱ブロックですぐに使用することができるので、好ましい。しかし、加工/分析すべき試料の性質および量に応じてチューブの容積を調節することができる。好ましくは、チューブは、チューブの容積の1/4(より好ましくはチューブの容積の1/8)に相当する最大量の溶解バッファーまたは混合済み溶解組成物を含有し、この場合、溶解バッファーおよび混合済み溶解組成物の体積は、ビーズの体積なしで決定される。
本明細書に記載する材料およびプロセスは、身体試料(特に粘稠な身体試料)などの生物学的試料のワンチューブ加工(one-tube-procesing)に適している。
「ワンチューブ加工」という用語は、更なる操作ステップの必要を取り除いて、ワンチューブで全ての加工ステップを行うことである。「ワンチューブで」という表現は、本発明によれば、核酸材料などの所望の材料を含有する加工された試料またはその一部を、加工ステップ中に、ある容器から別の容器に移動させないことを意味する。ただし、本発明にいう用語「チューブ」は、適切なサイズと形状のあらゆる反応容器を包含するものとする。好ましくは、本発明に関して、「ワンチューブ加工」は「ワンチューブ液状化」、より好ましくは「ワンチューブ溶解」、すなわち、それぞれ液状化および/または溶解までの全加工ステップが1つの容器中で行われることを意味する。最も好ましくは、そのように加工された材料は、それ以降の手順、例えば核酸の単離、増幅、分析および/または検出手順などに、そのまま適用することができる。
本発明に関して「自動プロセス」とは、自動化によって稼働および/または制御されるプロセスを意味する。好ましくは、本発明に関して、「自動プロセス」は、何らの手動操作ステップも必要としないまたは含まない。したがって、自動プロセスにおいて行われる方法ステップは、好ましくは、機器または装置(好ましくは該方法ステップを逐次的順序で行うようにプログラムすることができるもの)によって行われる。
本発明に関して、「病原体」は、他の生物において疾患を引き起こす任意の生物であることができる。好ましくは、「病原体」とは、ウイルス、細菌、原虫、酵母、真菌、または寄生虫などの感染性生物をいう。好ましくは、本発明に関して、病原体は、細菌、酵母、真菌、またはウイルスなどの微生物、より好ましくはヒト病原性の細菌、酵母、真菌、またはウイルスである。好ましくは、病原体は呼吸器疾患に関連する。「呼吸器疾患に関連する病原体」という用語は、呼吸器疾患との関連で通常出現する病原体を意味する。例えば、呼吸器疾患に関連する病原体は呼吸器疾患の原因でありうるが、呼吸器疾患を示すもののその原因ではない日和見病原体であってもよい。好ましくは、本発明に関して、細菌は、マイコバクテリウム科(例えば結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(Mycobacterium africanum)、マイコバクテリウム・カネッティ(Mycobacterium canetti)、マイコバクテリウム・カプラエ(Mycobacterium caprae)、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)、およびマイコバクテリウム・ピンニペディイ(Mycobacterium pinnipedii))、シュードモナス科(例えば緑膿菌)、マイコプラズマ科(例えば肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae))、クラミジア科(例えば肺炎クラミドフィラ(Chlamydophila pneumoniae))、腸内細菌科(例えばクレブシエラ・ニューモニエ、大腸菌)、スタフィロコッカス科(例えば黄色ブドウ球菌)、レンサ球菌科(例えばストレプトコッカス・ニューモニエ)、キサントモナス科(Xantomonadaceae)(例えばステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、モラクセラ科(例えばモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アシネトバクター・ルオフィイ(Acinetobacter lwoffii))、レジオネラ科(例えばレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila))、バークホルデリア科(例えばバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia))、コリネバクテリア科(例えばジフテリア菌(Corynabacterium diphtheria))、ナイセリア科(例えば髄膜炎菌(Neisseria meningitis)、ナイセリア・フラベセンス(Neisseria flavescens)、ナイセリア・シッカ(Neisseria sicca))、バクテロイデス(例えばバクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis))、およびパスツレラ科(例えばインフルエンザ菌)からなる群より選択される科の細菌であり、好ましくは、本発明に関して、酵母は、サッカロミセス科(例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、スポリジオボラス科(例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans))、トリココマ科(例えばアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus))、およびニューモキスチス科(例えばニューモシスチス・ジロベシ(Pneumocystis jirovecii))からなる群より選択される科の酵母である。
説明
第1の態様において、本発明は、(i)少なくとも1つのカオトロピック剤、(ii)少なくとも1つの還元剤、および(iii)少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む、好ましくはそれらから本質的になる、好ましくはそれらからなる、溶解バッファーに関する。好ましくは、本発明の溶解バッファーはさらに、ビーズを含む。したがって好ましくは、本発明の溶解バッファーは、(i)少なくとも1つのカオトロピック剤、(ii)少なくとも1つの還元剤、(iii)少なくとも1つのタンパク質分解酵素、および(iv)ビーズを含み、好ましくはそれらから本質的になり、好ましくはそれらからなる。好ましくは、該ビーズは、約300μm〜800μmの範囲内の直径、例えば300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、または800μmの直径を有し、好ましくは約600μmの直径を有する。好ましくは、ビーズは、未処理ビーズ上に存在しうるあらゆる汚染物質を溶解または加水分解するために酸洗浄されている。例えば、ビーズ、好ましくはガラスビーズは、それらを2M HNO3に少なくとも1時間に浸漬し、それらをすすぎ水がもはや酸性でなくなるまで水ですすぐことによって、酸洗浄することができる。あるいは、市販の酸洗浄ガラスビーズを例えばSigma-Aldrich(注文番号G8772)から入手することもできる。好ましくは、ビーズ、好ましくはガラスビーズは、約200〜1000mg/ml、好ましくは300〜900mg/ml、好ましくは400〜800mg/mlの範囲内の量で存在する。例えば、ビーズ、好ましくはガラスビーズは、約200mg/ml、300mg/ml、400mg/ml、500mg/ml、600mg/ml、700mg/ml、800mg/ml、900mg/ml、または1000mg/mlの量で存在し、最も好ましくは約550mg/mlの量で存在する。例えば、140mgのガラスビーズを250μlの溶解バッファーに加えることで、溶解バッファー中に560mg/mlのガラスビーズ量とすることができる(このようにガラスビーズの体積は考慮されない)。好ましくは、ビーズ(好ましくはガラスビーズ)は、ビーズ粉砕に適している。
好ましくは、少なくとも1つのカオトロピック剤および少なくとも1つの還元剤の性質および濃度は、前記少なくとも1つのタンパク質分解酵素が活性であるように選ばれる。
好ましい一実施形態において、カオトロピック剤の性質と濃度および/または還元剤の性質と濃度および/またはタンパク質分解酵素の性質と濃度は、溶解バッファーを試料と混合した時に身体試料の液状化、好ましくは溶解が達成されるようなものとし、ここで好ましくは、身体試料は上に定義したとおりである。好ましい一実施形態において、カオトロピック剤の性質と濃度および/または還元剤の性質と濃度および/またはタンパク質分解酵素の性質と濃度は、溶解バッファーが少なくとも2つの異なるタイプの身体試料の溶解に適しているようなもの、好ましくは溶解バッファーが汎用であるようなものとする。
本発明の溶解バッファーが、血液、穿刺液、ドレナージ液、喀痰、膿、胸水、胸膜穿刺液、気管支分泌物、気管分泌物、気管内分泌物、気管支吸引物、気管吸引物、気管内吸引物、気管支洗浄液、気管支肺胞洗浄液(BAL)、気管支スワブ、鼻咽頭スワブ、喉頭スワブ、胃液、胃吸引物、および肺生検材料などといった、呼吸器疾患の診断に関係する身体試料の溶解に汎用できることは、特に好ましい。好ましくは、本発明の溶解バッファーは、身体試料の溶解に汎用することができる。好ましくは、本発明の溶解バッファーは、好ましくは上に定義した意味で、汎用することができる。
好ましくは、本発明の溶解バッファーでは、カオトロピック剤がチオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、グアニジニウム塩酸塩、塩化グアニジニウム、チオシアン酸アルカリ、イソチオシアン酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、またはアルカリ過塩素酸であり、ここでアルカリイオンは好ましくはカリウムまたはナトリウムである。より好ましくは、カオトロピック剤は、グアニジニウム塩酸塩、チオシアン酸グアニジニウム、およびイソチオシアン酸グアニジニウムからなる群より選択され、最も好ましくは、カオトロピック剤が、グアニジニウム塩酸塩またはチオシアン酸グアニジニウムである。本発明の溶解バッファー中で2つ以上のカオトロピック剤を組み合わせてもよいことは、当業者にはわかるであろう。例えば、グアニジニウム塩酸塩およびチオシアン酸グアニジニウムを組み合わせることができる。ある実施形態では、本発明においていうところのカオトロピック剤が、カオトロピック剤を構成要素として、好ましくは主要構成要素として含有する市販の溶解バッファーである。これに関連して「主要構成要素」とは、そのバッファーが水以外に主としてそのカオトロピック剤を含有することを意味する。本発明の溶解バッファーとの関連でカオトロピック剤と見なされるそのような市販溶解バッファーの一例は、グアニジニウム塩酸塩を含有するQiagen溶解バッファーAL(Qiagen注文番号19075)である。
好ましい一実施形態では、カオトロピック剤またはカオトロピック剤の組合せが、0.2M〜8.0Mの範囲内、好ましくは1.0M〜7.0Mの範囲内、より好ましくは2.0M〜6.0Mの範囲内、最も好ましくは2.5M〜5.2Mの範囲内の濃度で存在する。例えば、少なくとも1つのカオトロピック剤、好ましくはグアニジニウム塩酸塩は、0.2M、0.5M、0.8M、1.0M、1.5M、2.0M、2.5M、3.0M、3.5M、4.0M、4.5M、5.0M、5.5M、6.0M、6.5M、7.0M、7.5M、または8.0Mの濃度、好ましくは3.0Mより高い濃度、好ましくは4.0Mより高い濃度、より一層好ましくは5.0M〜6.0Mの濃度、最も好ましくは5.5Mの濃度で存在しうる。本発明の溶解バッファー中のカオトロピック剤の至適濃度が、カオトロピック剤、加工すべき試料、および/または使用するタンパク質分解酵素の性質に依存し、使用するカオトロピック剤またはカオトロピック剤の組合せに基づいて調節できることは、当業者にはわかるであろう。例えば、カオトロピック剤がチオシアン酸グアニジニウムである場合、カオトロピック剤の濃度は、好ましくは、0.2M〜2.0M、より好ましくは0.2M〜1.5Mの範囲内にあり、例えば0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、または1.5Mである。最も好ましいカオトロピック剤はグアニジニウム塩酸塩およびチオシアン酸グアニジニウムである。
上述のように、本発明の溶解バッファーに含まれるカオトロピック剤は、市販の溶解バッファーによって提供されうる。これに関連して、上述の市販溶解バッファーは、本発明の溶解バッファー中に、好ましくは少なくとも50%(vol/vol)、好ましくは少なくとも60%(vol/vol)、好ましくは少なくとも70%(vol/vol)、好ましくは少なくとも80%(vol/vol)、より好ましくは少なくとも85%(vol/vol)、より一層好ましくは少なくとも90%(vol/vol)、および最も好ましくは少なくとも95%(vol/vol)存在し、最も好ましくはQiagen溶解バッファーALである。
好ましくは、還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)、N-アセチル-システイン(NALC)、β-メルカプトエタノール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、およびチオレドキシンからなる群より選択される。好ましくは、還元剤はNALCまたはDTTであり、最も好ましくはDTTである。2つ以上の還元剤の組合せも考えられる。還元剤または還元剤の組合せは、好ましくは、溶解バッファー中に、1.0mM〜200mMの範囲内、好ましくは5.0mM〜100mMの範囲内、より好ましくは20mM〜60mMの範囲内の濃度で存在する。例えば、少なくとも1つの還元剤、好ましくはDTTは、本発明の溶解バッファー中に、1.0mM、5.0mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、または200mMの濃度で存在することができ、好ましくは濃度は20mMより高く、好ましくは濃度は約40±10mM、より好ましくは約40mMである。ただし、本発明の溶解バッファー中の還元剤の濃度が、還元剤、加工すべき試料、および/または使用するタンパク質分解酵素の性質に依存し、使用する還元剤または還元剤の組合せに基づいて調節しうることは、当業者にはわかるであろう。
好ましくは、本発明の溶解バッファー中のタンパク質分解酵素は、上述のとおりである。好ましくは、タンパク質分解酵素は、10〜200単位/mlの範囲内、好ましくは20〜100単位/mlの範囲内、より好ましくは30〜70単位/mlの範囲内、より好ましくは40〜60単位/mlの範囲内の濃度で存在する。例えば、タンパク質分解酵素、好ましくはプロテイナーゼKは、本発明の溶解バッファー中に、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100単位/mlの濃度、好ましくは50±20単位/mlの濃度、最も好ましくは50±5単位/mlの濃度で存在することができ、この場合、好ましくは、単位の定義はプロテイナーゼKに関して上述したとおりである。最も好ましいタンパク質分解酵素はプロテイナーゼKである。プロテイナーゼKは幅広い基質特異性を有する安定なプロテアーゼであり、カオトロピック剤および還元剤の存在下でも活性が高く、広範なpHレベルおよびバッファー条件を許容し、56℃の作業温度で最適な活性を有する。
本発明の溶解バッファーは、前記少なくとも1つのタンパク質分解酵素以外の酵素を何も含有しないことが、特に好ましい。
ある実施形態では本発明の溶解バッファーが洗浄剤を含有せず、特に、本発明の溶解バッファーは、SDS、N-ラウロイル-サルコシン、Tween 20、Tween 80、およびTriton-X-100をいずれも含有しないことが好ましい。ある実施形態では、本発明の溶解バッファーがキレート剤を含有せず、特に、溶解バッファーはEDTAもEGTAも含有しないことが好ましい。ある実施形態では、溶解バッファーが(i)前記少なくとも1つのタンパク質分解酵素以外の酵素、(ii)洗浄剤、および(iii)キレート剤を含有しない。
好ましい一実施形態では、溶解バッファーがほぼ中性のpHを有する。好ましい一実施形態では、溶解バッファーが、5.5〜8の範囲内のpH、すなわち5.5、6、6.5、7、7.5、または8のpH、好ましくは7付近のpHを有する。本発明の溶解バッファーは、例えば溶解バッファーのpHを調節するために使用されうる緩衝性構成要素を含みうる。そのような緩衝性構成要素の例には、例えば3-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸(TAPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トリス)、N-トリス(ヒドロキシルメチル)メチルグリシン(トリシン)、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、ジメチルアルシン酸(カコジル酸)、SSC(saline sodium citrate)、および2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)などがある。
好ましい一実施形態では、本発明の溶解バッファーが、2〜6M、好ましくは2〜5M、好ましくは2.3〜4.7Mの範囲内の濃度のカオトロピック剤、25〜75mMの範囲内の濃度(好ましくは約50mM)の還元剤、20〜100単位/mlの範囲内の濃度(好ましくは約50単位/ml)のタンパク質分解酵素、および場合によっては、500〜700μM、好ましくは約600μMの範囲内の直径を有する、500〜700mg/mlの範囲内の濃度(好ましくは約600mg/ml)のビーズ、好ましくはガラスビーズを含み、好ましくはそれらから本質的になり、好ましくはそれらからなる。好ましくは、カオトロピック剤はグアニジニウム塩酸塩であり、かつ/または還元剤はDTTであり、かつ/またはタンパク質分解酵素はプロテイナーゼKである。好ましくは、ビーズ、好ましくはガラスビーズが、溶解バッファー中に存在する。
本発明の溶解バッファーの特に好ましい実施形態では、溶解バッファーが、80〜95%(vol/vol)のQiagen溶解バッファーAL、3〜7%(vol/vol)の1M DTT、6〜14%(vol/vol)の20mg/ml(>600mAU/ml)プロテイナーゼK、および場合によってはガラスビーズを含み、好ましくはそれらから本質的になり、好ましくはそれらからなり、好ましくは、溶解バッファーが、約88%(vol/vol)のQiagen溶解バッファーAL、約4%(vol/vol)の1M DTT、および約8%(vol/vol)の20mg/ml(>600mAU/ml)プロテイナーゼKからなり、これにガラスビーズを加えても加えなくてもよい。例えば、本発明の溶解バッファーを作成するために、230μl±5μlのQiagen溶解バッファーAL、10μl±2μlの1M DTT、20μl±4μl、および場合によっては140mg±20mgのガラスビーズ(直径約600μm)を混合することができ、好ましくはガラスビーズを加える。
好ましい一実施形態において、本発明の溶解バッファーは、調製済み反応チューブに入れて提供される。この実施形態では、タンパク質分解酵素が、好ましくは、カオトロピック剤および還元剤から分離されている。例えば、タンパク質分解酵素は、調製済み反応チューブに、チューブのキャップまたはフタの内側、例えばスクリューキャップの内側に、乾燥スポットとして存在しうる。
本発明の第2の態様は、広範な身体試料を溶解するための(i)少なくとも1つのカオトロピック剤、(ii)少なくとも1つの還元剤、および(iii)少なくとも1つのタンパク質分解酵素の使用に関する。好ましくは、これに関連して、溶解は、上記定義において説明した溶解反応混合物の用意を包含する。したがって、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、および少なくとも1つのタンパク質分解酵素を、溶解反応混合物について上に定義した溶解のために使用することが、特に好ましい。
好ましくは、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、および少なくとも1つのタンパク質分解酵素は、例えば定義において、および本発明の第1の態様の溶解バッファーに関して、上述したとおりである。好ましくは、身体試料は上述のとおりである。
本発明のこの態様では、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、および少なくとも1つのタンパク質分解酵素のうちの2つ以上が、組成物中に、例えば少なくとも1つのカオトロピック剤および少なくとも1つの還元剤を含み、好ましくは前記少なくとも1つのタンパク質分解酵素を欠く組成物中に、存在しうる。好ましい一実施形態では、該組成物が上記の定義において述べた混合済み溶解組成物である。もう一つの実施形態では、組成物が、本発明の第1の態様による溶解バッファーである。組成物は、好ましくは、調製済み反応チューブ中に存在する。身体試料は、また該当する場合にはタンパク質分解酵素も、好ましくは、調製済み反応チューブに加えられ、溶解は、好ましくは、該チューブ中で行われる。好ましくは、汚染のリスクを伴いうるさらなる操作ステップが省かれるように、溶解全体が1本のチューブで行われる。
ある実施形態では、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、および少なくとも1つのタンパク質分解酵素が、組成物中に存在する。好ましくは、該組成物は本発明の第1の態様による溶解バッファーである。この実施形態では、該組成物が、好ましくは、広域溶解バッファーとして、すなわち汎用溶解バッファーとして使用され、好ましくは、2以上、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の異なるタイプの身体試料の溶解に適しており、好ましくは適用され、好ましくは、身体試料が、例えば血液、喀痰、膿、胸水、胸膜穿刺液、気管支分泌物、気管分泌物、気管内分泌物、気管支吸引物、気管吸引物、気管内吸引物、気管支洗浄液、気管支肺胞洗浄液(BAL)、気管支スワブ、鼻咽頭スワブ、喉頭スワブ、胃液、胃吸引物、および肺生検材料など、呼吸器疾患の診断に関係する。好ましくは、異なるタイプの身体試料は上述のとおりである。
したがって本発明は、好ましくは身体試料用の、広域溶解バッファーとしての、(i)少なくとも1つのカオトロピック剤、(ii)少なくとも1つの還元剤、および(iii)少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む組成物の使用を提供する。
身体試料は、組成物を広域溶解バッファーとして使用する前には、未処理であるか、凍結しかされていないことが、特に好ましい。
溶解後、身体試料は、核酸単離手順、例えばシリカベースまたは磁気ビーズ技術ベースの核酸単離手順に、その核酸単離手順への適用に先だって有機溶媒による抽出や沈殿などといったさらなる加工を必要とすることなく、直接適用するのに適していることが、特に好ましい。しかし、核酸単離手順によっては、溶解した身体試料に、上述のようにさらなる試薬を補足する必要があるかもしれない。例えば、Qiagen製のEZ-1 DNA組織キット(磁気ビーズ技術)やQiaAmp(商標)DNA血液キット(シリカメンブレンベース)などの市販核酸単離キットを、本発明との関連で使用することができる。EZ-1核酸単離の場合は、溶解した身体試料を、好ましくは直接、BioRobot(登録商標)EZ-1ワークステーションに入れ、製造者の指示に従ってさらなる加工を行う。QiaAmp(商標)核酸単離の場合は、好ましくは、溶解した身体試料にエタノール(96〜100%)を製造者の指示に従って加え、その混合物をQiaAmp(商標)スピンカラムに移す。身体試料の溶解に使用する構成要素によっては、溶解した身体試料に、Qiagen溶解バッファーALとエタノール(96〜100%)との混合物を、好ましくは、身体試料(身体試料の溶解に使用したQiagen溶解バッファーAL以外の構成要素を含む)とQiagen溶解バッファーALとエタノールの最終体積比が、その混合物をシリカメンブレンにローディングする前に、およそ1:1:1になるように加えることが好ましいだろう。次に、製造者の推奨に従って、さらなるプロセスステップを実施する。遠心分離機を使用するシリカメンブレンベースの単離に代えて、減圧ベースの応用も使用することができる。好ましくは、この実験設定では、結合および洗浄ステップに、少なくとも400mbar、より好ましくは少なくとも600mbar、および最も好ましくは少なくとも800mbarの減圧を適用する。
本発明のこの態様では、広範な身体試料のそれぞれの溶解が、好ましくは本発明の第3の態様の方法について記述するとおりに行われ、好ましくは広範な身体試料のそれぞれに、本発明の第3態様の方法の本質的に同一な実施形態が使用される。
特に好ましい実施形態では、この使用は、広範な身体試料の高スループット溶解のための使用である。
第3の態様において、本発明は、身体試料を加工するための方法であって、(i)加工すべき身体試料、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む混合物を用意するステップを含む方法を提供する。好ましくは、混合物の構成要素は、例えば定義に、および本発明の第1の態様について、上述したとおりである。好ましくは、該混合物は上記の定義において述べた溶解反応混合物である。したがって好ましくは、第3の態様による方法のステップ(i)は、上記の定義において定義した溶解反応混合物を用意することである。
好ましくは、本発明の第3の態様による方法はさらに、(ii)混合物を第1温度まで加熱するステップを含む。好ましくは、本発明の第3の態様による方法はさらに、(iii)混合物を第2温度まで加熱するステップを含む。好ましくは、本発明の第3の態様による方法はさらに、(iv)混合物をビーズ粉砕するステップを含む。
好ましくは、本発明の第3の態様による方法は身体試料に、好ましくは呼吸器疾患の診断に関係する身体試料に、汎用することができる。好ましくは、本発明の第3の態様による方法は、広範な身体試料に適用することができ、好ましくは適用される。好ましくは、本方法は、広範な身体試料を加工(好ましくは溶解)するための方法である。
好ましくは、本発明の第3の態様による方法は、ステップ(i)、(ii)、(iii)、および(iv)を、好ましくはこの逐次的順序で含む。ただし、本発明の第3の態様による方法では、ステップ(ii)、(iii)、および(iv)の1つ以上を省略してもよい。例えば、本発明の第3の態様による方法は、ステップ(i)、(ii)、および(iv)、またはステップ(i)、(iii)、および(iv)、またはステップ(i)、(ii)、および(iii)、またはステップ(i)および(ii)、またはステップ(i)および(iii)、またはステップ(i)および(iv)を含みうる。さらにまた、個々のステップを繰り返してもよい。例えば、本発明の第3の態様による方法は、以下のステップをこの逐次的順序で含みうる:ステップ(i)、(iv)、(ii)、(iv)、(iii)、(iv)、(iii)、および(iv)(この場合、2つ以上のステップを同時に行い、かつ/またはある1ステップを別の1ステップ中に行ってもよい)。例えば、ステップ(iv)を、ステップ(iii)中に1回以上、例えば1、2、または3回行うことが好ましい。ステップ(i)において身体試料を溶解バッファーと混合するために、ステップ(iv)を行うことも好ましい。さらにまた、ステップ(ii)と(iii)の間にステップ(iv)を行うことが好ましい。
ステップ(i)は、好ましくは、(a)混合物の構成要素を(「一つにする」という意味で)接触させるステップ、および(b)混合物の構成要素を、好ましくは均一な混合物が得られるように、混合するステップを含む。構成要素は、個々の構成要素の考えうる任意の組合せで接触させ、混合することができる。
例えばこれには、混合物の構成要素のサブセットを(a1)接触させ、好ましくは(b1)混合した後、混合物の全ての構成要素の接触と混合がなされるまで、1つ以上の残りの構成要素を(a2)(b1)の混合物と接触させ、次に(b2)混合するという選択肢や、混合物の構成要素のうち2つ以上を(a1)接触させ(b1)混合し、他の2つ以上の構成要素を(a2)接触させ(b2)混合した後、混合物の全ての構成要素の接触と混合がなされるまで、(b1)と(b2)の混合物を(a3)接触させ(b3)混合するという選択肢なども含まれる。
例えば、ステップ(i)において、(1)例えば反応チューブに全ての構成要素を任意の考えうる逐次的順序で加えた後、その反応チューブ中で構成要素を混合することなどによって、混合物の全ての構成要素を接触させ、好ましくは混合すること、または(2)身体試料を除く、混合物の全ての構成要素を接触させ、好ましくは混合した後、身体試料を、他の予め接触させ好ましくは予め混合しておいた構成要素と接触させ、好ましくは混合すること、または(3)身体試料および少なくとも1つのタンパク質分解酵素を除く、混合物の全ての構成要素を接触させ、好ましくは混合した後、身体試料を、予め接触させ好ましくは予め混合しておいた構成要素と接触させ、好ましくは混合し、次に少なくとも1つのタンパク質分解酵素を、残りの予め接触させ好ましくは予め混合しておいた構成要素と接触させ、好ましくは混合すること、または(4)身体試料および少なくとも1つのタンパク質分解酵素を除く、混合物の全ての構成要素を接触させ、好ましくは混合し、身体試料およびタンパク質分解酵素を接触させ、好ましくは混合し、次に、予め接触させ好ましくは予め混合しておいた構成要素を接触させ、好ましくは混合することなどが可能である。
上記の変形例(1)では、全ての個々の構成要素を別々に、例えば反応チューブに加えて、混合することが可能である。例えば、混合物の個々の構成要素を加工すべき身体試料に個別に加えることができる。
上記の変形例(2)では、身体試料を除く混合物の全ての構成要素の混合物が、好ましくは少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む組成物であり、好ましくは本発明の第1の態様による溶解バッファーである。
上記の変形例(3)および(4)では、身体試料および少なくとも1つのタンパク質分解酵素を除く、混合物の全ての構成要素の混合物が、好ましくは、少なくとも1つのカオトロピック剤および少なくとも1つの還元剤を含む組成物であり、好ましくは、上記の定義において述べた混合済み溶解組成物である。
上記の変形例(3)は、本発明の第3の態様による方法の特に好ましい実施形態である。
混合物の構成要素の一部が、予め接触させ好ましくは予め混合しておいた組成物として提供される実施形態では、そのような組成物は、好ましくは、1つ以上の反応チューブ、好ましくは調製済み反応チューブに入れて提供される。これらの実施形態では、溶解バッファーを調製して小分けする必要も、各バッファー構成要素を個別に試料に加える必要もなく、反応チューブに、好ましくは調製済み反応チューブに、身体試料を直接加えることができる。場合によっては欠落しているタンパク質分解酵素などの構成要素は、例えば、身体試料と一緒に加えるか、身体試料の前にまたは身体試料の後に加えることができる。
本発明の第3の態様の特に好ましい実施形態では、ステップ(i)において、身体試料を、混合物の構成要素のサブセットを含む混合済み組成物と接触させ、好ましくは混合した後、混合物の残りの構成要素を、身体試料および混合済み組成物の混合物と接触させ、好ましくは混合する。混合物の構成要素のサブセットを含む混合済み組成物が、少なくとも1つのカオトロピック剤および少なくとも1つの還元剤を含むが、前記少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有しないことは、特に好ましい。好ましくは、混合済み組成物は、タンパク質分解酵素および身体試料を除く、混合物の全ての構成要素を含む。この混合済み組成物は上述の混合済み溶解組成物であることが特に好ましい。
この実施形態では、加工すべき身体試料を、好ましくは、混合済み組成物(好ましくは少なくとも1つのカオトロピック剤と少なくとも1つの還元剤とを含む(タンパク質分解酵素は含まない)もの)、好ましくは上述の混合済み溶解組成物と、ステップ(i)において、好ましくは、0.5:1〜1:2の範囲内の身体試料と混合済み組成物の体積比で、例えば0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1:1.2、1:1.4、1:1.6、1:1.8、または1:2、好ましくは1:1.1の比(ここで、混合済み組成物がビーズを含有する場合、混合済み組成物の体積については、そのビーズの体積を考慮しない)で接触させる。例えば、220μl±30μlの加工すべき身体試料、より好ましくは未処理身体試料を、240μl±30μlの混合済み溶解組成物(例えば230μl±25μlのQiagen溶解バッファーALと10μl±3μlの1M DTTからなるもの)であって、場合によっては140mg±20mgの好ましくは直径が約600μmのビーズ、好ましくはガラスビーズを含有するものに加える。この組成物を好ましくは混合する。少なくとも1つのタンパク質分解酵素は、混合前、混合中、または混合後に、組成物と接触させることができる。例えば、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を反応チューブのフタに乾燥スポットとして用意し、混合中に組成物を反応チューブのフタと接触させれば、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を混合中に加えることができる。少なくとも1つのタンパク質分解酵素は、混合前または混合後に、例えば溶液として加えることもできる。上記の例では、例えば20μlの20mg/ml(>600mAU/ml)を加えることができる。
ステップ(i)において、身体試料を、本発明の第1の態様による溶解バッファーと接触させる実施形態では、身体試料を好ましくは溶解バッファーと、0.5:1〜1:2の範囲内の身体試料と溶解バッファーの体積比で、例えば0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1:1.2、1:1.4、1:1.6、1:1.8、または1:2、好ましくは1:1.2の比(ここで、溶解バッファーの体積については、随意のビーズの体積を考慮しない)で接触させる。例えば、250μl±30μlの溶解バッファー(場合によっては、140mg±20mgの好ましくは直径が約600μmのビーズ、好ましくはガラスビーズを含有するもの)を、220μl±30μlの身体試料、より好ましくは未処理身体試料と接触させる。
身体試料の、特に粘稠な身体試料、例えば喀痰試料または気管分泌物試料の量を正確に等分することは、検体が非常に粘液性であれば、困難な場合があるが、この系は試料投入量の多少の変動には鋭敏ではないので、試料体積のばらつきが大きくてもよいことは、当業者にはわかるであろう。
好ましくは、ステップ(i)において、身体試料を、混合物の他の構成要素と、混合物の全ての構成要素間の良好な接触が保証されるように混合する。身体試料、特に粘稠な身体試料と、混合物の他の構成要素との十分な混合を達成する方法は、当業者にはよく知られている。例えば、身体試料は、混合物の他の構成要素と(例えば上述のように混合物の一定の構成要素の混合済み組成物と)接触させることができ、次にボルテックスするか、上下にピペッティングすることによって混合される。例えば、混合物は、例えば数秒から1〜2分にわたって(好ましくは激しく)ボルテックスすることによって、混合することができる。ステップ(iv)を適用することによって混合物を混合してもよい。上下にピペッティングすることを使用する場合は、広い開口部を有するピペットチップ、例えば先端が切り落とされたピペットチップを使用することが得策であろう。好ましい一実施形態では、ステップ(i)の混合物を、1分〜1時間の範囲内の時間、例えば1、5、10、15、20、25、30、40、50、または60分にわたって、好ましくはほぼ室温で、例えば18、20、22、24、または26℃でインキュベートする。インキュベーション時間は、ステップ(ii)および/または(iii)および/または(iv)を行うかどうかに依存する。ステップ(ii)、(iii)、および/または(iv)を省略する場合は、インキュベーション時間が、例えば60分と長くなりうることは、当業者にはわかるであろう。
好ましくは、ステップ(ii)では、混合物を、好ましくはタンパク質分解酵素が活性である第1温度まで加熱する。例えば、タンパク質分解酵素がプロテイナーゼKである場合、第1温度は好ましくは45〜60℃、好ましくは50〜60℃、より好ましくは54〜58℃の範囲にあり、最も好ましくは第1温度は約56±1℃である。好ましくは、混合物を、タンパク質分解酵素が身体試料中のタンパク質に作用することを可能にする時間、例えば5〜60分の範囲内の時間、例えば5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60分、好ましくは少なくとも10分にわたって、第1温度に保つ。一定のタンパク質分解結果を達成するためのインキュベーション時間は、バッファー条件および温度条件に合わせて調節する必要がありうることを、当業者は知っているであろう。例えば、最適ではない温度を使用する場合、かつ/または溶解バッファーがタンパク質分解酵素の活性を阻害する構成要素を含有する場合、理想的には、インキュベーション時間を延長する。
好ましくは、ステップ(iii)では、試料の液状化を引き起こすために、より好ましくは試料の溶解、すなわち試料中に存在する細胞の溶解を引き起こすために、十分な温度まで、かつ/または十分な時間にわたって、混合物を加熱する。好ましくは、ステップ(iii)では、試料中の粘稠構成要素および固形構成要素の可溶化を引き起こすために、十分な温度まで、かつ/または十分な時間にわたって、混合物を加熱する。好ましくは、加熱ステップ(iii)は、試料中の細胞の不活化、特に微生物、例えば細菌細胞および/または酵母細胞の不活化を含む。好ましくは、マイコバクテリアは加熱ステップ(iii)によって不活化される。当業者は、さまざまな条件下での加熱処理、すなわちさまざまな温度および時間での加熱処理の前と後に、試料の粘度および/または無傷細胞または生細胞の数を決定する簡単な実験により、液状化および/または溶解を引き起こすのに適した温度および加熱の継続時間を、容易に決定することができる。例えば、試料を、80℃に5分間、85℃に5分間、90℃に5分間、95℃に5分間、98℃に5分間、80℃に10分間、85℃に10分間、90℃に10分間、95℃に10分間、98℃に10分間、80℃に15分間、85℃に15分間、90℃に15分間、95℃に15分間、または98℃に15分間加熱することができ、粘度および/または無傷細胞もしくは生細胞の数を、加熱ステップの前と後に決定することができる。最適な加熱温度および加熱継続時間が、使用する試料の性質に依存することは、当業者にはわかるであろう。加熱ステップ(iii)が細胞の少なくとも一部の溶解、好ましくは試料中に存在する全ての細胞の溶解を含むことは、特に好ましい。最も好ましくは、加熱ステップ(iii)後には、混合物中に、生きた細胞、最も好ましくは生きたマイコバクテリア、特に生きた結核菌(M. tuberculosis)が存在しない。生細菌が混合物中に存在するかどうかを例えば培養試験などによって決定する方法は、当業者にはよく知られている。好ましくは、ステップ(iii)では、混合物を、80℃〜99℃の範囲内の温度まで、例えば80℃、85℃、90℃、92℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、または99℃まで加熱し、より好ましくは、少なくとも90℃、最も好ましくは約96℃まで加熱する。好ましくは、混合物を、加熱の結果到達した温度に、好ましくは5〜30分の範囲内の時間、例えば5、10、15、20、25、または30分にわたって、より好ましくは少なくとも10分にわたって、最も好ましくは少なくとも15分にわたって保つ。本発明の第3の態様の特に好ましい実施形態では、混合物を96℃±5℃まで、好ましくは96℃±1℃まで加熱し、その温度で15分間保つ。上述の効果が達成される限り、本発明では温度と時間の任意の組合せが考えられることは、当業者にはわかるであろう。例えば、試料を90℃に5分間、90℃に10分間、90℃に15分間、90℃に20分間、90℃に25分間、90℃に30分間、96℃に5分間、96℃に10分間、96℃に15分間、96℃に20分間、96℃に25分、または96℃に30分加熱することなどができる。
好ましくは、本発明の第3の態様による方法のビーズ粉砕ステップ(iv)の条件を、ビーズ粉砕ステップの前と後では混合物の1つ以上の物理的性質が異なるようなものとする。好ましくは、混合物はビーズ粉砕後の方が均質であり、より好ましくは混合物はビーズ粉砕後の方が粘度が、例えば少なくとも2倍は低く、最も好ましくはビーズ粉砕は、混合物中に存在する細胞の溶解、最も好ましくは細菌細胞および/または酵母細胞の溶解を含む。好ましくは、本発明の第3の態様による方法のステップ(iv)におけるビーズ粉砕手順に使用するビーズは、約300μm〜800μmの範囲内の直径、例えば300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、または800μmの直径を有し、好ましくは約600μmの直径を有する。好ましくは、本発明の第1の態様について述べたように、あらゆる汚染物質を溶解または加水分解するために、ビーズ(好ましくはガラスビーズ)は酸洗浄されている。好ましくは、ビーズ(好ましくはガラスビーズ)を含有する混合物を、1500〜3500rpmの範囲内の速度、例えば1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3250、3500rpmで、最も好ましくは2000±100rpmの速度で、好ましくは少なくとも2分、好ましくは少なくとも5分間にわたって、好ましくはIKAボルテックスなどの標準的ボルテックスを使って撹拌する。ボルテックスに代えて、またはボルテックスに加えて、ビーズ粉砕機をビーズ粉砕に使用してもよい。ビーズ粉砕機は好ましくは、50〜200g、好ましくは50〜100gの範囲内の加速度、好ましくは約100gの加速度に関係づけられる粉砕速度で、好ましくは2〜10分、好ましくは3〜8分、好ましくは約5分にわたって、稼働させる。好ましくは、ビーズ粉砕ステップは、高温で、例えば40℃を上回る、好ましくは50℃を上回る、好ましくは60℃を上回る、好ましくは70℃を上回る、より好ましくは80℃を上回る、より好ましくは90℃を上回る温度で行い、最も好ましくはビーズ粉砕ステップを約96℃で行う。
好ましい一実施形態では、ビーズ粉砕ステップ(iv)を、加熱ステップ(ii)または(iii)と並行して、好ましくは加熱ステップ(iii)と並行して行う。「あるステップを別のステップと並行して行う」という表現は、例えば、あるステップを別のステップと同時に行うこと、またはあるステップを別のステップ中に行うことを意味することができ、この場合、「同時に」は、好ましくは、両方のステップが同じ時間にわたって同時に行われることを意味し、「中に」は、好ましくは、短い方のステップを長い方のステップの間に、少なくとも1回、例えば1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれ以上行うことを意味する。したがって、ステップ(iv)をステップ(ii)または(iii)と同時に行うか、ステップ(ii)または(iii)中に少なくとも1回、好ましくは2回行うことが、特に好ましい。例えば、ステップ(iii)は15分間行うことができ、例えば混合物を96℃±5℃まで、好ましくは96℃±1℃まで15分間加熱すると共に、ステップ(iv)を、ステップ(iii)中に1回、好ましくは2回、好ましくは少なくとも1分、好ましくは少なくとも2分、好ましくは少なくとも3分、好ましくは少なくとも5分、最大15分まで行うことができる。例えば、短い方のステップは、長い方のステップの最初に開始してもよいし、短い方のステップを長い方のステップが開始し終えたあとに開始して長い方のステップが終了する前に停止してもよいし、短い方のステップが長い方のステップと一緒に終わるように短い方のステップを開始してもよい。好ましくは、短い方のステップを長い方のステップの最初に、好ましくは長い方のステップのターゲット温度に到達してから開始する。
本発明の第3の態様による方法の特に好ましい実施形態では、ステップ(i)、場合によっては(ii)、場合によっては(iii)、および場合によっては(iv)が、例えばこの逐次的順序で、1本のチューブ中で行われ、上清を移動させる必要がなく、試料/混合物を反応チューブから取り出すことを要求する他の操作ステップも必要としない。したがって、好ましくは、本発明の第3の態様による方法は、「ワンチューブ加工」法である。好ましくは、本発明の第3の態様による方法のこれらのステップ(i)、場合によっては(ii)、場合によっては(iii)、および場合によっては(iv)は、調製済み反応チューブ中で行われる。
本発明の第3の態様による方法の好ましい実施形態では、ステップ(ii)から(iv)まで、好ましくはステップ(i)(b)(すなわち混合物の構成要素を混合するステップ)から(iv)までが、自動プロセスで行われる。したがって、ステップ(i)の混合物の構成要素を混合すること、場合によっては(ii)混合物を第1温度まで加熱すること、場合によっては(iii)混合物を第2温度まで加熱すること、および場合によっては(iv)混合物をビーズ粉砕することを、装置により、1本のチューブ中で全自動で行うことにより、ステップ(i)(a)混合物の構成要素を接触させることのほかは、どの手動操作ステップも不要にし、よって汚染のリスクを低下させることは、特に好ましい。好ましくは、装置は、所望のステップを任意の逐次的順序で行うように、かつ/またはステップの1つ以上を繰り返すように、プログラムすることが可能である。本発明による自動法の一例を図2に示す。一般に、上述の方法ステップの全ての特徴は、自動プロセスにも適用することができる。本発明の第3の態様による方法の自動化は極めて有利であって、最適な溶解効率とプロセス時間の短縮をもたらし、本発明がなければ不可能であっただろう。というのも、1本のチューブで、すなわちワンチューブプロセスで、身体試料の全溶解を行う機会を提供するのは、本発明だけだからである。自動プロセスは、マイコバクテリア(例えば結核菌)などの高病原性生物を含有すると疑われる試料には、特に好ましい。
本発明の第3の態様の好ましい実施形態において、本方法は、身体試料の液状化、特に喀痰や気管分泌物などの粘稠な身体試料の液状化を含む。好ましくは、本発明の第3の態様による方法は、試料中に存在する細胞の溶解、最も好ましくは、試料中に存在する病原体(特にマイコバクテリア)の溶解および不活化を含む。好ましくは、身体試料は、ステップ(i)の前には処理、特に浄化処理または除染処理に付されない。これは、身体試料が、ステップ(i)の前に、試料を清澄化/液状化する目的で、DTTもしくはNALCまたはこれらの試薬の組合せなどといった薬剤で処理されることがなく、試料の除染を目的としてSDS、NaOH、NALC、またはこれらの試薬の組合せで処理されることもないことを意味する。「除染」とは、好ましくは、試料中のマイコバクテリアの存在を検出するために混合物を培養する前に、マイコバクテリア、特に結核菌以外のあらゆる生物、例えば細菌、酵母または宿主フローラを不活化することを意味する。ただし、本発明の第3の態様の方法が、ステップ(i)の前に除染に付されていない身体試料用、好ましくはステップ(i)の前に処理されていない身体試料用に考えられているとしても、本方法は、除染または他の前処理を受けた身体試料にも適していることを、強調しておく。
好ましい一実施形態において、身体試料は、本発明の第3の態様による方法のステップ(i)を行う前は、未処理である。もう一つの実施形態では、身体試料が、本発明の第3の態様による方法のステップ(i)を行う前に凍結されるが、好ましくは本方法は、ステップ(i)の前に、試料を凍結すること以外の処理ステップを何も含まない。したがって好ましい一実施形態では、ステップ(i)を行う前になされる身体試料の唯一の処理が、試料の凍結である。
本発明の第3の態様の特に好ましい実施形態では、混合物が、上述のようにステップ(ii)および(iii)において加熱され、上述のようにステップ(iv)においてビーズ粉砕される。例えば混合物を、ステップ(ii)では56±3℃に10〜20分間、好ましくは10分間加熱し、ステップ(iii)では96±5℃に10〜20分間、好ましくは15分間加熱し、次にステップ(iv)では2000±100rpmまたは100±10gで少なくとも5分間粉砕することができる。上述の加熱条件およびビーズ粉砕条件の他の任意の組合せも考えられる。ただし、本発明の第3の態様による方法では、加熱ステップ(ii)もしくは(iii)および/またはビーズ粉砕ステップ(iv)のいずれかまたは両方を省略しうることを強調しておく。ステップ(ii)、(iii)、および(iv)の1つ以上が省略される場合、ステップ(i)の混合物が、好ましくは、試料の1つ以上の物理的性質の変化(好ましくは粘度の例えば少なくとも2倍の低下)を引き起こすのに十分な時間、最も好ましくは試料中に存在する病原体の溶解および/または不活化を引き起こすのに十分な時間、インキュベートされることは、当業者にはわかるであろう。上述のように、物理的性質のそのような変化を決定する方法は、当業者にはよく知られている。
本発明の第3の態様のさらなる一実施形態では、本方法がさらに、(v)混合物から核酸を単離するステップを含む。ステップ(v)は、好ましくは、上述した方法の最後のステップ後に行われる。したがって、本方法がステップ(i)を含み、かつステップ(ii)、(iii)、および(iv)が省略される場合、核酸はステップ(i)後に混合物から単離され、本方法がステップ(i)および(ii)を含む場合、核酸はステップ(ii)後に混合物から単離されるという具合である。最も好ましくは、混合物を核酸単離手順に適用する前に、混合物中に存在する場合があるビーズを除去する。例えば、ビーズを重力で沈降させ、上清を新しい反応チューブに移すことにより、ビーズを除去することができる。最も好ましくは、本方法の最後のステップ、すなわちステップ(i)、(ii)、(iii)または(iv)後に得られた混合物が、核酸単離手順に直接適用するのに適していて、核酸単離手順への適用前に有機溶媒による抽出や沈殿などといったさらなる加工を必要としない。したがって、特に好ましい実施形態では、核酸単離手順への適用前に有機溶媒を使った抽出や沈殿などのさらなる加工を何も行わずに、混合物が核酸単離手順に直接適用される。しかし、使用する核酸単離手順によっては、例えば上記の定義および本発明の第2の側面において述べたように、さらなる試薬類を混合物に補足する必要がありうる。核酸単離手順は、好ましくは上述のように、例えば好ましくはシリカベースのまたは磁気ビーズベースの核酸単離技術を使って、例えばシリカメンブレンまたはシリカビーズに基づく、好ましくはシリカメンブレンに基づく核酸単離手順を使って行われる。
本発明の第3の態様による方法は、pHを調節すること、好ましくは混合物を中和することなどのさらなるステップを、例えば本方法のステップ(ii)の前に含みうる。例えば、pHの調節、好ましくは混合物の中和は、例えば本発明の第1の態様について上述したような、1つ以上の緩衝性構成要素を使って行うことができる。
本発明の第3の態様の特に好ましい実施形態において、本方法は、以下のステップを、好ましくはこの逐次的順序で含み、好ましくはそれらから本質的になり、好ましくはそれらからなる:(i)加工すべき身体試料、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む混合物を用意し、好ましくは上述の溶解反応混合物を用意し、場合によってはpHを、好ましくはほぼ中性またはアルカリ性pHに、調節すること、(iv)場合によっては混合物を10〜60秒間、例えば30秒間、好ましくはほぼ室温でビーズ粉砕すること、(ii)混合物を56±4℃で少なくとも10分間、例えば10、12、15、20、または25分間インキュベートすること、場合によっては先のステップ(ii)中にステップ(iv)ビーズ粉砕を10〜60秒、例えば30秒にわたって、少なくとも1回、好ましくは2回行うこと、場合によっては(iv)混合物を10〜60秒間、例えば30秒間、ビーズ粉砕すること、(iii)混合物を96±5℃で好ましくは10〜30分間、例えば15分間インキュベートすること、場合によっては先のステップ(iii)中にステップ(iv)ビーズ粉砕を10〜60秒、例えば30秒にわたって、少なくとも1回、好ましくは2回行うこと、および(iv)好ましくはビーズ粉砕機を使って、2〜10分間、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、または10分間、好ましくは5分間、好ましくは先のステップ(iii)中に、好ましくはステップ(iii)の最初に開始して、または先のステップ(iii)後に室温で、混合物をビーズ粉砕すること。好ましくは、前記のステップは、ステップ(i)において混合物の構成要素を混合するステップから始まる自動プロセスで行われる。
第4の態様において、本発明は、身体試料を分析するための方法であって、本発明の第3の態様の方法に従って身体試料を加工すること、および(vi)混合物を核酸増幅/分析方法に適用することを含む方法を提供する。好ましくは、この文脈における混合物は、かなり溶解された、好ましくは全溶解された身体試料、より好ましくはこの文脈における混合物は、核酸単離手順(v)から得られる溶出物である。好ましくは、混合物とは、本発明の第3の態様による方法の最後のステップにおいて得られた混合物を指す。
第5の態様において、本発明は、身体試料中の病原体の存在を検出するための方法であって、本発明の第3の態様の方法に従って身体試料を加工すること、および(vi)混合物を該病原体の検出に適した核酸増幅/分析方法に適用することを含む方法を提供する。好ましくは、この文脈における混合物は、かなり溶解された、好ましくは全溶解された身体試料であり、より好ましくはこの文脈における混合物は、核酸単離手順(v)から得られる溶出物である。好ましくは、混合物とは、本発明の第3の態様による方法の最後のステップにおいて得られた混合物を指す。
病原体が細菌である場合、細菌は、好ましくは、マイコバクテリウム科、シュードモナス科、マイコプラズマ科、クラミジア科、腸内細菌科、スタフィロコッカス科、レンサ球菌科、キサントモナス科、モラクセラ科、レジオネラ科、バークホルデリア科、コリネバクテリア科、ナイセリア科、バクテロイデス、およびパスツレラ科からなる群より選択される科の細菌である。病原体が酵母である場合、酵母は、好ましくは、サッカロミセス科、スポリジオボラス科、トリココマ科、およびニューモキスチス科からなる群より選択される科の酵母である。さらにまた、疾患に関連しないマイコバクテリアも、本発明の第5の態様による方法を使って検出することができる。本発明の第5の態様による方法を使って、マイコバクテリウム科の以下の種を検出することができる:M.アブセサス(M. abscessus)、M.アフリカヌム(M. africanum)、M.アグリ(M. agr)、M.アイチエンス(M. aichiense)、M.アルベイ(M. alvei)、M.アロシエンス(M. arosiense)、M.アルペンス(M. arupense)、M.アシアティカム(M. asiaticum)、M.アウバグネンス(M. aubagnense)、M.アウラム(M. aurum)、M.アウストロアフリカヌム(M. austroafricanum)、トリ菌群(Mycobacterium avium complex)(MAC)(AIDS患者にもける重大な死因である一群の種;この群の種には、M.アビウム(M. avium)、ヒトにおけるクローン病およびヒツジにおけるヨーネ病に関連付けられているヨーネ菌(M. avium paratuberculosis)、M.アビウム シルバティカム(M. avium silvaticum)、M.アビウム "ホミニッスイス"(M. avium "hominissuis")、M.コロンビエンス(M. colombiense)が含まれる)、M.ボエニケイ(M. boenickei)、M.ボヘミカム(M. bohemicum)、M.ボルレティイ(M. bolletii)、M.ボトニエンス(M. botniense)、
ウシ型結核菌、M.ブランデリ(M. branderi)、M.ブリスバネンス(M. brisbanense)、M.ブルマエ(M. brumae)、M.カナリアセンス(M. canariasense)、M.カプラエ(M. caprae)、M.セラータム(M. celatum)、M.ケロナエ(M. chelonae)、M.キメラ(M. chimaera)、M.チタエ(M. chitae)、M.クロロフェノリカム(M. chlorophenolicum)、M.チュブエンス(M. chubuense)、M.コンセプショネンス(M. conceptionense)、M.コンフルエンティス(M. confluentis)、M.コンスピキュウム(M. conspicuum)、M.クッキイ(M. cookii)、M.コスメティカム(M. cosmeticum)、M.ディエルンホフェリ(M. diernhoferi)、M.ドリカム(M. doricum)、M.ドゥバリイ(M. duvalii)、M.エレファンティス(M. elephantis)、M.ファラックス(M. fallax)、M.ファルシノゲネス(M. farcinogenes)、M.フラベッセンス(M. flavescens)、M.フロレンティナム(M. florentinum)、M.フルオロアンテニボランス(M. fluoroanthenivorans)、M.ホルツイタム(M. fortuitum)、M.ホルツイタム亜種アセトアミドリティカム(M. fortuitum subsp. acetamidolyticum)、M.フレデリクスバーゲンス(M. frederiksbergense)、M.ガディウム(M. gadium)、M.ガストリ(M. gastri)、M.ゲナベンス(M. genavense)、M.ギルバム(M. gilvum)、M.グッディイ(M. goodii)、M.ゴードナエ(M. gordonae)、M.ヘモフィルム(M. haemophilum)、M.ハシアカム(M. hassiacum)、M.ヘッケスホルネンス(M. heckeshornense)、M.ハイデルベルゲンス(M. heidelbergense)、M.ヒベルニアエ(M. hiberniae)、M.ホドレリ(M. hodleri)、M.ホルサティカム(M. holsaticum)、M.ヒューストネンス(M. houstonense)、M.イムノゲナム(M. immunogenum)、M.インタージェクタム(M. interjectum)、M.インターメディウム(M. intermedium)、M.イントラセルラー(M. intracellular)、M.カンサシイ(M. kansasii)、M.コモセンス(M. komossense)、M.クビカエ(M. kubicae)、M.クマモトネンス(M. kumamotonense)、M.ラクス(M. lacus)、M.レンティフラバム(M. lentiflavum)、ライ菌(M. leprae)(これはハンセン病を引き起こす)、M.レプラムリウム(M. lepraemurium)、M.マダガスカリエンス(M. madagascariense)、M.マジェリテンス(M. mageritense)、M.マルモエンス(M. malmoense)、M.マリナム(M. marinum)、M.マッシリエンス(M. massiliense)、M.ミクロティ(M. microti)、M.モナセンス(M. monacense)、M.モンテフィオレンス(M. montefiorense)、M.モリオカエンス(M. moriokaense)、M.ムコゲニカム(M. mucogenicum)、M.ムラーレ(M. murale)、M.ネブラスケンス(M. nebraskense)、M.ネオアウラム(M. neoaurum)、M.ニューオルレアンセンス(M. neworleansense)、M.ノンクロモゲニカム(M. nonchromogenicum)、M.ノボカストレンス(M. novocastrense)、M.オブエンス(M. obuense)、M.パルストレ(M. palustre)、M.パラフォルトゥイタム(M. parafortuitum)、M.パラスクロフラセウム(M. parascrofulaceum)、M.パルメンス(M. parmense)、M.ペレグリナム(M. peregrinum)、M.フレイ(M. phlei)、M.フォカイクム(M. phocaicum)、M.ピンニペディイ(M. pinnipedii)、M.ポルシナム(M. porcinum)、M.ポリフェラエ(M. poriferae)、M.シュードショットシイ(M. pseudoshottsii)、M.プルベリス(M. pulveris)、M.サイクロトレランス(M. psychrotolerans)、M.ピレニボランス(M. pyrenivorans)、M.ローデシアエ(M. rhodesiae)、M.サスカチェワネンス(M. saskatchewanense)、M.スクロフラセウム(M. scrofulaceum)、M.セネガレンス(M. senegalense)、M.セオウレンス(M. seoulense)、M.セプティカム(M. septicum)、M.シモイデイ(M. shimoidei)、M.ショットシイ(M. shottsii)、M.シミアエ(M. simiae)、スメグマ菌(M. smegmatis)、M.スファグニ(M. sphagni)、M.スルガイ(M. szulgai)、M.テラエ(M. terrae)、M.サーモレジスティバイル(M. thermoresistibile)、M.トーカイエンス(M. tokaiense)、M.トリプレックス(M. triplex)、M.トリビアレ(M. triviale)、結核菌群(MTBC)(メンバーはヒトおよび動物の結核の原因因子である;この群の種には、ヒト結核の主要原因である結核菌、ウシ型結核菌、ウシ型結核菌BCG、M.アフリカヌム、M.カネッティ、M.カプラエ、M.ピンニペディイが含まれる)、M.ツシアエ(M. tusciae)、「ブルーリ(Buruli)」または「ベアンズデイル(Bairnsdale)」潰瘍を引き起こすM.ウルセランス(M. ulcerans)、M.ワクカエ(M. vaccae)、M.バンバアレニイ(M. vanbaalenii)、M.ウォリンスキイ(M. wolinskyi)、およびM.ゼノピ(M. xenopi)。
好ましくは、マイコバクテリウム科の細菌は、結核菌、ウシ型結核菌、マイコバクテリウム・アフリカヌム、マイコバクテリウム・カネッティ、マイコバクテリウム・カプラエ、スメグマ菌、およびマイコバクテリウム・ピンニペディイ(Mycobacterium pinnipedii)からなる群より選択され、シュードモナス科の細菌は緑膿菌であり、マイコプラズマ科の細菌は肺炎マイコプラズマであり、クラミジア科の細菌は肺炎クラミドフィラであり、腸内細菌科の細菌は、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、シトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloaceae)、エンテロバクター・サカザキ(Enterobacter sakazakii)、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、大腸菌、モルガン菌(Morganella morganii)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、プロテウス・ペンネリ(Proteus penneri)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、および仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)からなる群より選択され、パスツレラ科の細菌はインフルエンザ菌およびパラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)からなる群より選択され、スタフィロコッカス科の細菌は黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)および他のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(非病原性宿主フローラ:ゲメラ・ヘモリサンス(Gemella haemolysans)、ゲメラ・モルビロラム(Gemella morbillorum))からなる群より選択され、レンサ球菌科の細菌はストレプトコッカス・ニューモニエ、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、およびストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(非病原性宿主フローラ:ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、およびストレプトコッカス・サングイナンス(Streptococcus sanguinans))からなる群より選択され、キサントモナス科の細菌は、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)であり、モラクセラ科の細菌はモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、アシネトバクター・バウマニ、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)(フローラ)、およびアシネトバクター・ルオフィイからなる群より選択され、レジオネラ科の細菌はレジオネラ・ニューモフィラであり、バークホルデリア科の細菌はバークホルデリア・セパシアであり、コリネバクテリア科の細菌はジフテリア菌であり、ナイセリア科の細菌は髄膜炎菌、ナイセリア・フラベッセンス、およびナイセリア・シッカからなる群より選択され、バクテロイデス科の細菌はバクテロイデス・フラジリスである。
好ましくは、サッカロミセス科の酵母は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニア(Candida lusitania)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、およびカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)からなる群より選択され、スポリジオボラス科の酵母はクリプトコッカス・ネオフォルマンスであり、トリココマ科の酵母はアスペルギルス・フラバスおよびアスペルギルス・フミガーツスからなる群より選択され、ニューモキスチス科の酵母はニューモシスチス・ジロベシである。
本発明の第4および第5の態様の好ましい実施形態では、核酸増幅/分析方法が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、Q-βレプリカーゼ増幅、およびLAMP法、MDA法、およびマイクロアレイ分析からなる群より選択される。ただし、他の任意の核酸増幅/分析方法が本発明との関連において応用されうることを注記しておく。核酸増幅/分析方法とそのような方法の実施の仕方は、当分野における一般知識および文献に基づいて、当業者にはよく知られている。特に好ましい実施形態では、核酸増幅/分析方法がPCRである。
最も好ましくは、本発明の第4および第5の態様に関して、核酸増幅手順は病原体を検出(より一層好ましくは同定)するのに適しており、この場合、病原体は好ましくは上述の細菌または酵母である。例えば、本発明の第3の態様による方法によって得られた混合物、溶解物、または溶出物に含まれる核酸を、検出すべき病原体、例えばマイコバクテリアに特異的なプライマーを用いるPCRによって増幅することができる。そのような特異的プライマーを、例えば国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)ホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)などで広く公開されている病原体ゲノムの配列に基づいて設計する方法は、当業者にはよく知られている。
本発明の第6の態様は、対象における呼吸器疾患を診断するための方法であって、本発明の第3の態様に従って身体試料を加工すること、および(vi)呼吸器疾患を診断するのに適した方法に混合物を適用することを含む方法に関する。好ましくは、この文脈における混合物は、かなり溶解された、好ましくは全溶解された身体試料、より好ましくはこの文脈における混合物は、核酸単離手順から得られる溶出物である。好ましくは、混合物とは、本発明の第3の態様による方法の最後のステップにおいて得られた混合物を指す。好ましくは、身体試料は呼吸器疾患の診断に関係する。好ましくは、呼吸器疾患は感染性呼吸器疾患または呼吸器腫瘍である。好ましくは呼吸器疾患はウイルス、細菌、真菌または酵母感染によるものであるか、呼吸器腫瘍である。好ましくは呼吸器疾患は、上に定義したとおりであり、好ましくは、肺炎、結核、気管支炎、嚢胞性線維症または慢性閉塞性肺疾患(COPD)中の病原体感染、および呼吸器腫瘍からなる群より選択される。
これに関連して呼吸疾患の診断に適した方法は、好ましくは、分子診断法、好ましくは核酸増幅/分析方法、好ましくは上述のものである。例えば、気道感染症は、感染性病原体を検出し、好ましくは同定することによって検出または診断することができ、気道腫瘍は、溶解された身体試料中に一定の腫瘍関連抗原を検出することによって検出または診断することができる。例えば、第6の態様による方法は、本発明の第4または第5の態様による方法を含みうる。したがって例えば、本発明の第5の態様による身体試料中の病原体の存在を検出するための方法を、本発明の第6の態様による呼吸器疾患、特に感染性呼吸器疾患の診断に使用することができる。
本発明のさらなる態様は、少なくとも2つの身体試料、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、60、70、80、90、または100を超える身体試料を加工するための方法であって、少なくとも2つの身体試料のそれぞれを本発明の第3の態様の方法に従って加工することを含む方法(ここで、前記少なくとも2つの身体試料は好ましくは異なるタイプの身体試料である)、少なくとも2つの身体試料、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、60、70、80、90、または100を超える身体試料を分析するための方法であって、少なくとも2つの身体試料のそれぞれを本発明の第4の態様の方法に従って分析することを含む方法(ここで、前記少なくとも2つの身体試料は好ましくは異なるタイプの身体試料である)、および少なくとも2つの身体試料、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、60、70、80、90、または100を超える身体試料における病原体の存在を検出するための方法であって、少なくとも2つの身体試料のそれぞれにおける病原体の存在を、本発明の第5の態様の方法に従って検出することを含む方法(ここで、前記少なくとも2つの身体試料は好ましくは異なるタイプの身体試料である)を提供する。好ましくは、少なくとも2つの身体試料は、本発明の第3、第4または第5の態様による方法の、類似する実施形態、好ましくは同一の実施形態を使って加工される。好ましくは、これらの態様による方法は、高スループット設定で行われる。
本発明はさらに、広範な身体試料を加工するための方法であって、広範な身体試料のそれぞれを本発明の第3の態様の方法に従って加工することを含む方法、広範な身体試料を分析するための方法であって、広範な身体試料のそれぞれを本発明の第4の態様の方法に従って分析することを含む方法、および広範な身体試料における病原体の存在を検出するための方法であって、広範な身体試料のそれぞれにおける病原体の存在を本発明の第5の態様の方法に従って検出することを含む方法を提供する。好ましくは、広範な身体試料の身体試料は、本発明の第3、第4または第5の態様による方法の、類似する実施形態、好ましくは同一の実施形態を使って加工される。好ましくは、これらの態様による方法は、高スループット設定で行われる。
もう一つの態様において、本発明は、身体試料、好ましくは呼吸器疾患の診断に適した身体試料と、少なくとも1つのカオトロピック剤と、少なくとも1つの還元剤と、少なくとも1つのタンパク質分解酵素とを含む、身体試料の溶解物を提供する。好ましくは、溶解物の構成要素は、例えば定義および本発明の第1の態様において、上述したとおりである。好ましくは、本発明の溶解物に関して「身体試料」とは、「身体試料の構成要素」を意味する。したがって「身体試料を含む身体試料の溶解物」とは、好ましくは、「身体試料の構成要素を含む身体試料の溶解物」を意味する。
ある実施形態では、本発明の溶解物が、身体試料(好ましくは上述のもの)、および本発明の第1の態様による溶解バッファーを含む。ある実施形態では、本発明の溶解物が上述の溶解反応混合物であり、そこでは、好ましくは身体試料が崩壊、例えば液状化、好ましくは溶解されている。
呼吸器疾患は、好ましくは、ウイルス、細菌、真菌、または酵母感染によるものである。好ましくは、呼吸器疾患は上述のとおりであり、好ましくは、肺炎、結核、気管支炎、嚢胞性線維症または慢性閉塞性肺疾患(COPD)中の病原体感染、および呼吸器腫瘍からなる群より選択される。好ましくは、身体試料は、溶解物の他の構成要素と接触させる前は未処理である。
ある実施形態では、溶解物が試料と本発明の溶解バッファーとを、0.5:1〜1:2の範囲内の試料と溶解バッファーの体積比で、例えば0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1:1.2、1:1.4、1:1.6、1:1.8、または1:2、好ましくは1:1.2の比(ここで、溶解バッファーがビーズを含有する場合、溶解バッファーの体積はビーズの体積なしで決定される)で混合することによって調製されるか、または得ることができる。好ましい一実施形態では、例えば溶解バッファーがビーズを含有していなかったか、ビーズが溶解物から除去されたために、溶解物がビーズを含まない。好ましくは、溶解物を作るには、本発明の第3の態様について上述したように、身体試料の混合物を加熱しかつ/またはビーズ粉砕し、好ましくは加熱しかつビーズ粉砕する。
さらにまた、溶解物は、溶解バッファーの1つ以上の構成要素に身体試料を加えてから、場合により残っている溶解バッファーの構成要素を加えることによって、調製することもでき、または得ることができる。例えば、少なくとも1つのカオトロピック剤と少なくとも1つの還元剤とを含む組成物に、好ましくは上述の混合済み溶解組成物に身体試料を加え、次に溶解物の残りの構成要素、例えばタンパク質分解酵素を加えることによって、溶解物を調製し、または得ることができる。
さらにまた本発明は、身体試料を本発明の第3の態様の方法に従って加工することによって得ることができる溶解物を提供する。さらにまた本発明は、本発明の第2の態様による使用を適用することによって得ることができる溶解物を提供する。
もう一つの態様において、本発明は、(i)カオトロピック剤、(ii)還元剤、(iii)タンパク質分解酵素、および(iv)説明書、好ましくは身体試料の加工に関する説明書、好ましくは身体試料の溶解に関する説明書を含むキットを提供する。好ましくは、キットの構成要素は、例えば定義および本発明の第1の態様において上述したとおりである。好ましくは、身体試料は、(好ましくは上述の)呼吸器疾患の診断に関係する。好ましくは、キットはさらに、ビーズ、好ましくは固形不活性材料、例えばガラス、セラミクス、プラスチック、または鋼などの金属でできているもの、好ましくは上述のものを含む。
本発明のキットの好ましい実施形態では、キットの2つ以上の構成要素、例えばカオトロピック剤と還元剤が、組成物として提供される。好ましくは、組成物は1つ以上の反応チューブに入れて、好ましくは調製済み反応チューブに入れて提供される。好ましくは、該1つ以上の反応チューブは、1つの身体試料の溶解に適した該組成物のアリコートを含む。好ましくは、該アリコートの体積は、反応チューブの容積の1/2〜1/10、好ましくは1/4〜1/10、例えば反応チューブの容積の1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、または1/10である。該組成物は、例えば本発明の第1の態様について上述したように、還元剤およびカオトロピック剤以外の構成要素、例えば緩衝性構成要素を含みうる。好ましくは、該組成物は、タンパク質分解酵素を含まない。前記1つ以上の反応チューブはビーズも含むことが好ましい。好ましくは、該組成物は、上記の定義において述べた混合済み溶解組成物である。好ましくは、前記1つ以上の反応チューブは、スクリューキャップチューブであり、好ましくは0.2〜50ml、好ましくは0.2〜15ml、好ましくは0.5〜10ml、好ましくは1〜2mlの範囲内の容積、好ましくは1.5mlの容積を有する。前記1つ以上の反応チューブはマルチウェルフォーマットの反応容器、例えば8もしくは12反応容器のストリップまたは24、48、もしくは96反応容器のプレートであって、好ましくは固く閉じることができるフタを有するものであってもよい。キットの構成要素の性質および濃度は、好ましくは、例えば定義において、および本発明の第1の態様による溶解バッファーの構成要素に関して、上に定義したとおりである。
本発明のキットの好ましい実施形態では、タンパク質分解酵素がカオトロピック剤および還元剤とは別個に提供され、例えばタンパク質分解酵素は別個の貯蔵チューブに入れてキット中に用意することができる。あるいはタンパク質分解酵素を、組成物(好ましくは混合済み溶解組成物)を含んでいる1つ以上の反応チューブ内に、例えばチューブのフタ中の、例えばスクリューキャップフタ中の乾燥スポットとして提供することもできる。
好ましい一実施形態では、キットがさらに、DNA単離のための手段、好ましくはシリカベースの、または磁気ビーズベースの核酸単離マトリックス、好ましくは上述のものを含む。
好ましい一実施形態において、本発明のキットは、身体試料を好ましくは上述のように溶解するためのキットである。この実施形態では、キットは、本発明の第3の態様による方法を説明した説明書を含みうる。もう一つの好ましい実施形態において、本発明のキットは、身体試料を好ましくは上述のように分析するためのキットである。この実施形態では、キットは、本発明の第4の態様による方法を説明した説明書を含みうる。もう一つの好ましい実施形態において、本発明のキットは、身体試料中の病原体の存在を好ましくは上述のように検出するためのキットである。この実施形態では、キットはさらに、病原体を検出するための手段、例えば該病原体に由来する核酸に特異的なオリゴヌクレオチド、例えばプライマーまたはプローブを含みうる。この実施形態では、キットは、本発明の第5の態様による方法を説明した説明書を含みうる。
もう一つの好ましい実施形態では、本発明のキットが、広範な身体試料を溶解するための、好ましくは少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7つの異なるタイプの身体試料を好ましくは上述のように溶解するためのキットである。もう一つの好ましい実施形態では、本発明のキットが、広範な身体試料を分析するための、好ましくは少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7つの異なるタイプの身体試料を、好ましくは上述のように分析するためのキットである。もう一つの好ましい実施形態では、本発明のキットが、広範な身体試料中の病原体の存在を検出するための、好ましくは少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7つの異なるタイプの身体試料中の病原体の存在を、好ましくは上述のように検出するためのキットである。この実施形態では、キットはさらに、病原体を検出するための手段、例えば該病原体に由来する核酸に特異的なオリゴヌクレオチド、例えばプライマーまたはプローブを含みうる。好ましくは、身体試料は呼吸器疾患の診断に関係する。
もう一つの実施形態では、キットが、呼吸器疾患を、好ましくは分子診断法によって、好ましくは核酸分析によって、例えば上述のように病原体または呼吸器腫瘍マーカーを検出および/または同定することによって、診断するためのキットである。この実施形態では、キットは好ましくはさらに、病原体または呼吸器腫瘍マーカーを検出するための手段、例えば該病原体に由来する核酸または呼吸器腫瘍マーカーに特異的なオリゴヌクレオチド、例えばプライマーまたはプローブを含む。この実施形態では、キットは好ましくはさらに、本発明の第6の態様による方法を説明した説明書を含む。
好ましくは、本発明のキットは、身体試料、好ましくは呼吸器疾患の診断に関係する身体試料の溶解に汎用することができる。
好ましい実施形態では、本発明のキットが、本発明の第3の態様による方法、本発明の第4の態様による方法、本発明の第5の態様による方法、または本発明の第6の態様による方法を実施するためのキットである。
本発明は、身体試料の溶解に汎用することができる溶解バッファー、使用、加工方法およびキットを、初めて提供するものである。これは、同じ溶解バッファーおよび加工プロトコールを使って数タイプの異なる身体試料、例えば呼吸器疾患の診断に関係する身体試料を並行して溶解すること、したがって異なるタイプの身体試料を高スループット設定で加工することを、初めて可能にするものである。さらにまた本発明は、身体試料、特に、操作が困難であるような身体試料、例えば喀痰または気管分泌物などの呼吸器試料を加工、好ましくは溶解するための、既存のアプローチに代わる、特に核酸の単離とそれに続くその分析とが必要な場合の、有用な代替策を提供する。本発明の利点の一部は、低い感染リスク(とりわけ、病原性の高い生物を検出すべき場合)、高粘度試料の効率的な可溶化/液状化および/または溶解、操作の削減、異なる試料タイプでもプロセスの自動化および高スループット設定でのプロセスの実施が可能であること、ならびに異なるDNA単離方法への適合性である。
以下の実施例は本発明の特に好ましい実施形態を例示するのに役立つものであり、決して、本発明の範囲を限定するものであるとみなしてはならない。上記の説明と以下の実施例には本発明の要旨と範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を加えうることは、当業者にはわかるであろう。
実施例1:プロセスの詳細と概観
材料および機材
Figure 2013526284
Figure 2013526284
Figure 2013526284
溶解チューブ(調製済み反応チューブ)の製造および貯蔵
溶解チューブには140mg±20mgのガラスビーズ、230μl±5μlの溶解バッファーAL、10μl±2μlの1M DTTが入っている。チューブは15〜25℃の温度で貯蔵される。プロテイナーゼKはバッファーALとは接触させずに、別途、15〜25℃において、液状で、または(例えばスクリューキャップの内面上の)乾燥スポットとして貯蔵される。
プロセスの概観
本発明の方法は、混合機(ボルテックス)や加熱ブロックのような標準的実験機材を使って手作業で行うか、ビーズ粉砕機などの自動装置を使って自動化することができる。本発明の手動プロセスおよび自動プロセスの例を、それぞれ図1および2に示す。
最も好ましくは、最善の効率とプロセス時間の削減のために、プロセスは、撹拌(例えば数本の軸に沿って回転)と加熱ステップとを同時に行う能力を有するビーズ粉砕装置使って行われ、これにより、本発明の加工方法の全自動化が可能になる。
プロセス例A(図1)は、2500rpm(IKAボルテックスでの標準的最大速度であり、他の供給元からの装置の場合は異なるかもしれない)で30秒間(他の時間も同様に奏効するかもしれない)混合するための標準的ボルテックス、予熱した加熱ブロックおよび約100gに関係づけられる粉砕速度(他の速度も同様に奏効するかもしれないし、ジオメトリーが異なる他の装置では速度も異なりうる)の能力を有する粉砕装置を使用する、手動プロセスである。全ての粉砕/混合ステップで、チューブが加熱ブロックから取り出され、室温で加工されることに注目されたい。
プロセス例B(図2)は、全てのプロセスステップ(混合、加熱、粉砕)を行うビーズ粉砕装置を使用する自動プロセスである。粉砕速度は、装置ジオメトリーに依存して50〜100gの力に関係づけられる。チューブはチャンバーと一緒にターゲット温度まで加熱されるので、より長いランピング速度がこの例には含まれているが、それでもなお、ランピング時間は決定的な問題ではなく、かなり短い場合もありうる。
方法ステップ
試料投入
試料体積は220μl±10μlとした。試料およびプロテイナーゼKを溶解チューブに加えた後、試料と溶解バッファーの良好な均質化を保証するために、ボルテックスを使用するか、ビーズ粉砕機を高速(最大100g)で使用して、最大1分間、チューブを激しく混合した。試料の添加は層流下で行った。結核菌群による感染が疑われる場合は、96℃加熱ステップまでの全ての作業をS3実験室内で行った。一般に、試料の交差汚染を避けるために、フィルターチップも使用した。高粘度試料からのアリコートをピペッティングするには、開口部が広い、スラントカットされたフィルターチップの使用が推奨される。
加熱ステップ
プロテイナーゼK消化のために第1加熱ステップを56℃±1℃で10分間行った。第2加熱ステップは熱溶解のために96℃±1℃で15分間行った。完全な液状化を保証するために、このステップを、好ましくは、5分未満には短縮しない。感染リスクを低下させるためにこのステップを行うのであれば、最小の加熱継続時間については、さまざまな臨床状況において、法的要件が適用可能である場合がありうる。56℃インキュベーションステップと96℃インキュベーションステップの途中および間は、まだ液状化していない試料破片を分解するために、チューブを短時間混合するか、最大1分間、さまざまな速度で粉砕してもよい。
ビーズ粉砕
ビーズ粉砕は、粉砕と加熱を並行して行う能力を有するビーズ粉砕装置を使って行った。あるいは、ボルテックスを使って激しく混合することにより、試料を手作業で加工してもよい。短い粉砕ステップは、プロトコール全体を通して、ボルテックスを使って手作業で、またはビーズ粉砕装置を使って50〜100gで行うことができる。最終粉砕ステップは、96℃加熱ステップの完了後に室温で数分(5分)間行うか、好ましくは、溶解効率の改善とプロセス時間の短縮のために、ビーズ粉砕装置を使って、96℃加熱ステップ中に最大100gの力および数分(5分)の粉砕時間で行った。96℃でのインキュベーション時間が粉砕時間を超える場合は、プロセスの最後にもう一度短い粉砕ステップを行った。
プロセスの仕上げ
チューブを溶解機から取り出す際に何らかの危険(火傷)がユーザーに及ぶことがないように、プロセスが終了した後に、溶解チューブを妥当な温度まで冷却した。
上清の移動とDNA精製
全てのピペッティングステップにフィルターチップを使用した。400μl±10μlの液状化上清を新しい1.5mlスクリューキャップチューブに移した。200μl±10μlの96%エタノールを上清に加え、チューブを短時間混合した。混合物(約600μl)をシリカメンブレンカラム(QiaAmp(商標))にローディングし、製造者の推奨に従って、遠心分離によって、または-800mbarまでの減圧によって加工した。
全溶解プロトコール
必要な試薬類を全て含有する調製済み溶解チューブとプロテイナーゼK(液状または乾燥のどちらか)は室温で貯蔵しておいた。新鮮患者試料を標準的臨床手順に従って集めた。試料のアリコート(220μl)を溶解チューブに移した。プロテイナーゼK(20μl)を加え、溶解チューブのスクリューキャップを硬く閉じた。粘液状試料のアリコートの移動には、スラントカットされた1000μlピペットチップを使用した。
手動プロセスの場合、特に高粘度検体については、溶解バッファーと試料との最適な接触を保証するために、チューブをボルテックスで短時間混合した。次に、最適なプロテイナーゼK消化のために、チューブを加熱ブロック(56℃)に10分間入れた。消化後に、チューブを短時間混合し、15分間の第2加熱ステップのために、加熱ブロック(96℃)に移した。両加熱ステップ中に1回または2回、試料を取り出し、短時間ボルテックスし、加熱ブロックに戻した。96℃加熱ステップが完了した後に、試料をビーズ粉砕装置に移し(代わりにボルテックスを使用することもできる)、未溶解の試料粒子を分解するために、ビーズ粉砕を5分間(最大100g)行った。全ての溶解ステップが完了した後、400μlの液状化上清を、新しいスクリューキャップチューブに移した。
自動プロセスの場合は、試料およびプロテイナーゼKを添加した後、ユーザーにさらなる操作または混合を何ら要求することなく、直ちに溶解チューブをビーズ粉砕装置に入れて、溶解プロセスを開始した(図2)。プロセスが完了した後、溶解した試料が入っているチューブを装置から取り出し、上述のように上清を移した。
QiaAmp(商標)DNA精製のために、200μlのエタノール(96%)を、移した上清に加えた。短時間の混合後に、溶解物をQiaAmp(商標)スピンカラム(Qiagen)に移した。さらなる精製ステップは製造者の推奨に従って行った。DNAを200μlの純水で溶出させた。
実施例2:試料タイプのばらつきと溶解特徴の影響
試料タイプの相違を平均スコアに基づいて記述するために、起源の異なる76の試料(呼吸器試料および他の関連試料、例えば穿刺液およびドレナージ液)を、粘度、血液および沈渣含有量についてスコア化した(図3)。各タイプについて、含まれる試料の数を括弧内に示す。血液を含む各試料タイプから、呼吸器疾患用の関連試料の全てが網羅されるように、参考資料を選択した(合計12試料)。
これらの試料のそれぞれを、個々の溶解特徴の影響を決定するために、3つの異なる溶解プロトコールに付した:(a)上述の手動全プロトコール、(b)プロテイナーゼKの添加を伴わない全プロトコール、(c)96℃加熱ステップを伴わないプロトコール(その代わりに試料を周囲温度においた)。全ての試料を5分間の最終ビーズ粉砕ステップに付し、次に上述のように溶解物を移し、エタノールと混合し、シリカメンブレンカラムに適用した。プロテイナーゼK消化(第1加熱ステップ)後、96℃加熱ステップ後、およびビーズ粉砕後に溶解効率をスコア化し、溶解効率を決定した。
試料全量の適用後に、速度を下げた遠心分離機(推奨されている8000rpmの代わりに4000rpm)を使って、シリカメンブレンを通る流れをモニターし、メンブレンを、不十分な溶解を示している可能性がある着色または残留試料構成要素についてチェックした(図4)。2つの試料がわずかに着色した膜をもたらしたが、これはフロースルーには何も影響を及ぼさなかった。未溶解試料破片はシリカメンブレン上に検出されなかった。もう一つの試料については、わずかな着色と多少の流量制限が検出されたが、溶解は完全だった。図5に、本発明の加工方法を使ってうまく溶解された患者試料の典型例を示す(A/B:喀痰、C:気管分泌物)。
実施例3:プロテイナーゼK処理なしでの溶解効率およびシリカメンブレンを通る流動挙動
二セット目の実験では、プロテイナーゼK、加熱、粉砕および並行加熱/粉砕の影響を、気管分泌物で調べた。特に、高い粘度および/または沈渣を有する試料を選択した。そのような試料は、溶解することが困難であると思われる。第1ステップでは、溶解バッファー(プロテイナーゼKなし)に添加して短時間混合した後、そのまま、試料を96℃で15分間インキュベートした。ビーズ粉砕は96℃インキュベーションステップの完了後に室温で5分間行うか[M]、または加熱ステップと並行して行った。溶解の進行を経時的にモニターした。次に、溶解上清をエタノールと混合し、上述のようにシリカメンブレンに適用した。4000rpmから出発して遠心力を増しながら、フロースルーをモニターした。図6Aおよび6Bは、異なる試料で観察されたばらつきを反映するそれぞれ2つの例を表す。
いくつかの試料は、目視では溶解が十分であるように見えたものの、流量制限を示した。時には、流量の低下とは相関しないわずかな濁りが認められた。ある試料(気管分泌物1)は、96℃における並行粉砕を行わないと、完全には溶解することができなかった。
96℃インキュベーションステップ中の並行粉砕は、全溶解に必要な時間を短縮し、プロセス速度と溶解の成功に対して著しい効果があった。
実施例4:プロテイナーゼK処理を行った場合の溶解効率およびシリカメンブレンを通る流動挙動
プロテイナーゼK消化ステップを含めて(56℃で10分)、実施例3で使用したものと同じ試料のアリコートを、実施例3について説明したように溶解し、モニターした。
一部の試料はプロテイナーゼK消化ステップ中に既に溶解していたが、他の試料はプロテイナーゼKでは変化しなかった。濁りの発生は減少し、フロースルーは著しく改善された。プロテイナーゼK消化ステップなしで溶解した時に、より高い遠心力を必要とした一定の試料が、小さい遠心力で早くも、よい成績を示した。未溶解残存試料はもはや観察されなかった(図7)。
したがってプロテイナーゼK消化ステップは、身体試料の溶解、例えば喀痰または分泌物などには有利であり、低い遠心力または減圧ベースのシステムを使った核酸単離手順が意図されている場合には特に有利である。実施例3の場合のように、加熱中の並行粉砕は、溶解効率の明確な増加およびプロセス時間の短縮を示した。
実施例5:異なる試料タイプでのDNA品質およびPCR成績
起源が異なる7つの患者試料に緑膿菌(20000病原体/ml=4400病原体/220μl使用試料)をスパイクし、上記実施例1で説明し図1に示す手動プロトコールを使って溶解した。遠心分離機を使ってQiaAmp(商標)DNA血液キットでDNAを単離した。スパイクした患者試料から単離されたDNAの品質を、5倍希釈した溶出物のスペクトル分析(220〜320nm)でモニターした(図8)。
推定されるPCR阻害因子の同時精製をPCR阻害試験によってチェックした。簡単に述べると、阻害効果が何も存在しなければ、サイズの異なる3つのアンプリコンを既知の平均モル濃度で産生するPCRに、200μl溶出物のうちの3μlを加えた。阻害試験では、DNA溶出物の存在下で生成するモル濃度を、4つの対照PCR(リン酸緩衝食塩水から生成した溶出物)と比較した。
さらにまた、緑膿菌PCRを行って、溶出物のアンプリコンモル濃度およびDNA収量を比較した(図10)。
全てのスペクトルが純粋なDNAの典型的外観を示す。さらにまた、対照と比べて阻害は認められなかった。しかしDNA収量は、個々の試料のバックグラウンドDNAレベルを反映して、大きく変動する。それでも、多少のばらつきは(スパイキング時に病原体懸濁液と混合することが困難な粘稠試料の場合は特に)あったものの、緑膿菌増幅のレベルは類似する範囲にあった。
実施例6:異なる試料タイプの患者身体試料における病原体の検出
上記実施例1で説明し図1に記載する手動溶解プロトコールを使って、27の患者試料を加工した。一般的な呼吸器病原体(クレブシエラ・ニューモニエ、ストレプトコッカス・ニューモニエ、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、および宿主フローラの指標としてのストレプトコッカス属)を検出するために、シリカメンブレン精製DNAを、マルチプレックスPCRを使って分析した。簡単に述べると、3μlのDNA溶出物を、マルチプレックスプライマー(それぞれ最終濃度350nM)と共にマルチプレックスPCRキット(Qiagen)で、30μlの総液量中、35サイクルにわたって増幅した。Agilent Bioanalyzerを使ってアンプリコンモル濃度を決定した(図11)。
PCRの結果を、これらの試料に関する微生物学的培養試験から得られたデータと比較した(図12)。試料の大半については、微生物学的培養試験によって病原体が属レベルで同定されることはなく、検出されたのは球菌、桿菌、または呼吸器(宿主)フローラ全般であった。事実、微生物学的培養試験では、5つの試料で病原体の属を同定できたに過ぎず、それらは全て陽性のPCR結果によって確認された。この試験において使用したヘモフィルスプライマーは、種インフルエンザエと種パラインフルエンザエとを弁別しないことに留意されたい。これらの実験の結果は、PCRが、微生物学的培養試験と比較して、より識別的な情報を個々の病原体について提供することにより、はるかに洗練された呼吸器疾患の分析および診断を可能にすることを、明確に実証している。
実施例7:臨床試料を使った自動溶解プロトコールの成績
溶解プロセスの全自動化のための装置を開発し、微生物学的培養で結果が陽性であった臨床試料に「プロセス例B」(図2)を適用することによって、成績を調べた。結果を手動溶解プロトコール(図1)と比較した。この試験には粘度の高い気管分泌物を選択した。溶解物からのDNAの単離は上述のようにシリカメンブレンを使って行い、溶出物に対して、シュードモナス特異的プライマー、スタフィロコッカス特異的プライマー、およびカンジダ特異的プライマーでトリプレックスPCRを行った(図13)。
試料の凍結と融解が病原体溶解に及ぼす影響を排除するために、もう一組の試料に20000病原体/mlの緑膿菌(グラム陰性)および黄色ブドウ球菌(グラム陽性)をスパイクし、手動または自動プロトコールで加工した(図14)。
どちらのプロトコールも、すなわち手動プロトコールも自動プロトコールも、微生物培養試験によって得られた結果を再現することに成功した。したがって自動プロセスは手動プロセスと同程度に有効である。
この実験データは、本発明が、使い勝手のよい標準化されたプロトコールの使用により、広範囲にわたるあらゆる関連試料タイプについて、呼吸器試料の分子診断を容易にするであろうことを、強く裏付けている。溶解を、例えばシリカメンブレンを使った核酸単離手順と組み合わせることで、後続のPCR用に、高品質なDNAを得ることができる。そのようなDNAは、標準的な微生物学的培養と比較するとはるかに迅速でありかつはるかに効率のよい病原体およびリスク因子の迅速な同時検出に使用することができる。予め小分けされた溶解チューブは、試料間変動、操作ステップ、および感染リスクを減少させる。自動プロセスは、訓練された人員やユーザーインタラクションを必要とすることなく、容易で均一な試料加工を可能にする。

Claims (17)

  1. (i)少なくとも1つのカオトロピック剤、
    (ii)少なくとも1つの還元剤、および
    (iii)少なくとも1つのタンパク質分解酵素
    を含む、溶解バッファー。
  2. さらにビーズ、好ましくは固形不活性材料、例えばガラス、セラミクス、プラスチック、または鋼などの金属でできているものを含む、請求項1に記載の溶解バッファー。
  3. 呼吸器疾患の診断に関係する身体試料の溶解に汎用することができる、請求項1または2に記載の溶解バッファー。
  4. 少なくとも1つのカオトロピック剤が、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、グアニジニウム塩酸塩、塩化グアニジニウム、チオシアン酸アルカリ、イソチオシアン酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、およびアルカリ過塩素酸からなる群より選択され、かつ/または少なくとも1つの還元剤が、ジチオスレイトール(DTT)、N-アセチル-システイン(NALC)、β-メルカプトエタノール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、およびチオレドキシンからなる群より選択され、かつ/または
    、少なくとも1つのタンパク質分解酵素が、セリンプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼからなる群より選択され、好ましくは少なくとも1つのタンパク質分解酵素がプロテイナーゼK、エラスターゼ、サブチリシン、およびカスパーゼからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶解バッファー。
  5. 前記少なくとも1つのタンパク質分解酵素以外に他の酵素を含有しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶解バッファー。
  6. 広範な身体試料を溶解するための
    (i)少なくとも1つのカオトロピック剤、
    (ii)少なくとも1つの還元剤、および
    (iii)少なくとも1つのタンパク質分解酵素
    の使用。
  7. 身体試料を加工するための方法であって、(i)加工すべき身体試料、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む混合物を用意するステップを含み、好ましくはさらに(ii)混合物を第1温度まで加熱するステップを含み、かつ/または好ましくはさらに(iii)混合物を第2温度まで加熱するステップを含み、かつ/または好ましくはさらに(iv)混合物をビーズ粉砕するステップを含む方法。
  8. ステップ(iv)が、ステップ(iii)と同時に行われるか、ステップ(iii)中に行われる、請求項7に記載の方法。
  9. ステップ(ii)〜(iv)が自動プロセスで行われる、請求項7または8に記載の方法。
  10. さらに(v)混合物から核酸を、好ましくはシリカベースまたは磁気ビーズベースの核酸単離技術を使って、単離するステップを含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 身体試料を分析するための方法であって、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法に従って身体試料を加工すること、および(vi)混合物を核酸増幅/分析方法に適用することを含む方法。
  12. 身体試料中の病原体の存在を検出するための方法であって、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法に従って身体試料を加工すること、および(vi)混合物を該病原体の検出に適した核酸増幅/分析方法に適用することを含み、好ましくは病原体が呼吸器疾患に関連する方法。
  13. 対象における呼吸器疾患を診断するための方法であって、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法に従って身体試料を加工すること、および(vi)呼吸器疾患を診断するのに適した方法に混合物を適用することを含み、好ましくは呼吸器疾患が感染性呼吸器疾患または呼吸器腫瘍である方法。
  14. 異なるタイプの身体試料である少なくとも2つの身体試料を加工するための方法であって、前記少なくとも2つの身体試料のそれぞれを、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法に従って加工することを含む方法。
  15. 身体試料、少なくとも1つのカオトロピック剤、少なくとも1つの還元剤、および少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む、身体試料の溶解物。
  16. 請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法に従って身体試料を加工することによって得ることができる溶解物。
  17. (i)カオトロピック剤、
    (ii)還元剤、
    (iii)タンパク質分解酵素、および
    (iv)身体試料の加工に関する説明書
    を含むキット。
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