別に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、例えばペプチド化学、細胞培養およびファージディスプレイ、核酸化学および生化学/生物化学の分野などの当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。標準的な技法が分子生物学、遺伝学および生化学的方法に使用され(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology(1999)4th ed.,John Wiley & Sons,Inc.参照)、それらは引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
本明細書において言及される、ペプチドリガンドとは、分子足場と共有結合したペプチドをさす。一般に、そのようなペプチドは、足場と共有結合を形成する能力のある2以上の反応性基、および、ペプチドが足場と結合する場合にそれがループを形成するのでループ配列と呼ばれる前記反応性基間に内在する配列を含む。
反応性基は、分子足場と共有結合を形成する能力のある基である。一般に、反応性基はペプチド上のアミノ酸側鎖に存在する。好ましいものは、システイン、リジンおよびセレノシステインなどのアミノ含有基である。
多重特異性は、2以上の標的と結合する能力である。一般に、結合ペプチドは、それらの立体構造的特性によって、単一の標的、例えば抗体の場合のエピトープなどと結合する能力がある。しかし、2以上の標的と結合することのできるペプチド;例えば、上述のように当分野で公知の二重特異性抗体を開発することができる。本発明において、ペプチドリガンドは、2以上の標的と結合する能力があり、そのため多重特異性である。好ましくは、リガンドは2つの標的と結合し、二重特異性である。結合は独立していてよく、それはペプチド上の標的の結合部位が、その標的の一方または他方の結合によって構造的に妨害されないことを意味し得る。この場合、両方の標的は独立に結合してよい。より一般には、一つの標的の結合は、他方の結合を少なくとも一部分妨げることになると予測されている。
多重特異性ペプチドは、個々の標的に結合しているペプチドリガンドの個々のループを連結することにより形成することができる。連結されるループは、隣接するループ(lops)であってもよいし、第3のループにより隔てられていてもよいし、さらに、さらなるループであってもよい。多重特異性ペプチドにおいてループが直接隣接して配置されている場合、該ループの一本を規定する反応性基の一つを取り除くことが、ある一つの位置での反応性基の効率的な複製(effective duplication)を回避するために好ましい。
標的は、ペプチドリガンドが結合する分子またはその部分である。一般に、標的は、エピトープに類似し、従って同じ分子上の異なるエピトープ、または異なる分子上の異なるエピトープの形をとり得る。標的が同じ分子上にある場合、二重特異性リガンドを使用することは、分子に対するリガンドの結合活性を増大させることとなり、分子を架橋することまたは分子の規定された機能部分を占有することによってその他の特性を付与することができる。
分子足場は、複数の点でペプチドを結び付けて1以上の構造的特徴をペプチドに付与する能力のある分子である。分子足場は、それがただ単にジスルフィド結合を置換しないという点において、架橋剤ではない。その代わりに、分子足場は2以上のペプチドの結合点を提供する。好ましくは、分子足場は、足場反応性基と呼ばれる、少なくとも3つのペプチドの結合点を含む。これらの基は、ペプチド上の反応性基と反応して共有結合を形成する能力がある。分子足場に好ましい構造は、以下に記載される。
レパートリは、その配列が異なる変異体、この場合はポリペプチド変異体のコレクションである。一般に、反応性基の位置および性質は変化しないが、反応性基間にループを形成する配列はランダム化することができる。
結合活性(または任意のその他の所望の活性)についてのスクリーニングは、当分野で周知の方法に従って、例としてファージディスプレイ技術から実施される。例えば、固相に固定化された標的を用いてレパートリの結合メンバーを同定および単離することができる。スクリーニングは、所望の特性に応じたレパートリのメンバーの選択を可能にする。
ライブラリとは、異種ポリペプチドまたは核酸の混合物をさす。ライブラリはメンバーで構成され、その各々は単一のポリペプチドまたは核酸配列を有する。この点で、ライブラリはレパートリと同義である。ライブラリメンバー間の配列の違いが、ライブラリ中に存在する多様性の原因である。ライブラリは、ポリペプチドまたは核酸の単純な混合物の形をとってもよいし、核酸のライブラリで形質転換された、生物または細胞、例えば細菌、ウイルス、動物もしくは植物細胞などの形であってもよい。好ましくは、各々の個々の生物または細胞は、ただ一つまたは限定された数のライブラリメンバーを含む。
有利には、核酸によってコードされるポリペプチドの発現を可能にするために、核酸は発現ベクターに組み込まれる。従って、好ましい態様では、ライブラリは、宿主生物の集団の形をとってよく、各々の生物は、発現させてその対応するポリペプチドメンバーを生成することのできるライブラリの単一のメンバーを核酸形態で含有する発現ベクターの1以上のコピーを含有する。よって、宿主生物の集団は、遺伝的に多様なポリペプチド変異体の大きなレパートリをコードする可能性を有する。
好ましくは、核酸のライブラリは、ポリペプチドのレパートリをコードする。ライブラリの各々の核酸メンバーは、好ましくは1以上のその他のライブラリのメンバーに関連する配列を有する。関連配列は、ライブラリの少なくとも一つのその他のメンバーに対して少なくとも50%の同一性、好適には少なくとも60%の同一性、好適には少なくとも70%の同一性、好適には少なくとも80%の同一性、好適には少なくとも90%の同一性、好適には少なくとも95%の同一性、好適には少なくとも98%の同一性、好適には少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を意味する。同一性は、参照配列の少なくとも3つのアミノ酸の連続するセグメントにわたって、好適には少なくとも4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸、好適には最小12のアミノ酸、好適には最小14のアミノ酸、好適には最小16のアミノ酸、好適には最小17のアミノ酸または全長の連続するセグメントにわたって好適に判断される。
ペプチドリガンドに結合する官能基は、例えば、さらなる結合活性を媒介するか、またはエフェクター基の結合を可能にする基である。よって、官能基には、抗体およびその結合断片、本明細書に記載されるさらなるペプチドリガンド、化学反応性基、ならびに同類のものが含まれる。
エフェクター基は、特異的活性を有するペプチドリガンドに結合する基である。例として、ペプチドリガンドの半減期を増加させるタンパク質、例えばヒト血清アルブミン(HSA)などであり得る。また、エフェクター基には、薬物、例えば細胞傷害性薬物、免疫エフェクター(immunoeffectors)、例えば抗体のFc領域など、および次のパラメータ:5以下の水素結合供与体(窒素または酸素原子と1以上の水素原子);10以下の水素結合アクセプター(窒素原子または酸素原子);500ダルトン未満の分子量;ならびに、5未満のオクタノール−水分配係数logP、に従う化合物が含まれる。
多重特異性ペプチドリガンド
本発明に従うペプチドリガンドは、先行技術で公知であるか、または本明細書に記載される技法により調製することができる。リガンドの成分、特に分子足場およびポリペプチド成分は、Timmerman et al.,2005 ChemBioChem 6:821−824、ならびにWO2004/077062号、WO2006/078161号およびWO2008/013454号から公知である。分子足場と複合体化するポリペプチドを選択するためにファージディスプレイを使用することは、Heinis et al.,2009,Nature Chemical Biology 5,502−507、ならびに本発明者らの同時係属未公開国際特許出願PCT/GB09/000301号に記載されている。これらの文書の各々は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。本発明に従う多重特異性分子を構築するために好ましい方法、およびファージディスプレイの使用は、下により詳細に記載されている。
一般に、本発明に従う多重特異性分子は、(a)2つの個別の単一特異的ペプチドリガンドから生じる2つのループを融合するステップと、(b)2つの単一特異的ペプチドリガンド全体を融合するステップと、(c)結合基をペプチドリガンドに、N末端またはC末端で結合するか、もしくは分子足場に結合するステップ、または(d)官能基またはエフェクター基を直接ペプチドリガンドに、好ましくは分子足場上に化学的に結合するステップにより構築することができる。
(A)ペプチドリガンドの構築
(i)分子足場
分子足場は、「分子コア」または「連結化合物」と呼ばれることもある。好適には、分子足場は、分子対称性を有する。好適には、分子足場は3つの足場反応性基を有し、3回対称性を有する。これには、単一の反応生成物のみを生成するという利点がある。分子足場が対称分子でない場合には、複数の反応生成物が生成される可能性がある。これは、複雑な状態を引き起こし得るか、または、所望の異性体をその他の反応生成物から分離することを必要とし得る。
ペプチドを分子足場にコンジュゲートするために好ましい反応性基は、システインである。しかし、3以上の反応性基が分子足場との少なくとも3つの別個の共有結合のために存在する場合、前記反応性基は各々がシステインである必要はない。例えば、これらの3つの反応性基は、一つのシステインと2つのさらなる適した反応性基からなってよく、それは例えばリジン、セレノシステインまたはその他のものからなってよい。好適には3つ全ての反応性基がシステインである。
公知の技法では、せいぜい架橋剤が、遺伝的にコードされたポリペプチドなどのポリペプチドに導入されるかまたは結合されてきた。一方、本発明は、同じポリペプチドの異なる部分の複数の多重配位のための分子足場を提供する。
好適には、分子足場は小分子であってよい。好適には、分子足場は有機小分子である。
好適には、分子足場は、天然モノマー、例えばヌクレオシド、糖、またはステロイドなどであってもよいし、またはそれらに基づいていてもよい。好適には、分子足場は、そのような物質の短いポリマー、例えば二量体または三量体を含んでよい。
好適には、分子足場は、既知毒性の、好適には低い毒性の化合物である。適した化合物の例としては、コレステロール、ヌクレオチド、ステロイド、またはタマゼパム(tamazepam)などの既存の薬物が挙げられる。
好適には、分子足場は、高分子であってよい。好適には、分子足場は、アミノ酸、ヌクレオチドまたは炭水化物で構成される高分子である。
好適には、分子足場は、ポリペプチドの官能基(1または複数)と反応して共有結合を形成する能力のある反応性基を含む。
分子足場は、アミン、チオール、アルコール、ケトン、アルデヒド、ニトリル、カルボン酸、エステル、アルケン、アルキン、アジド、無水物、スクシンイミド、マレイミド、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アシルのような化学基を含むことができる。
好適には、分子足場は、トリス(ブロモメチル)ベンゼン、特に1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼン(「TBMB」)、またはその誘導体を含んでもよいし、それからなってもよい。
好適には、分子足場は、ポリペプチドの3つの官能基と分子足場との反応が単一の生成物異性体を生じるような、3回回転対称を有する。
一部の実施形態では、分子足場は、コードされたポリペプチドの4つの官能基と分子足場との反応が最大2つの生成物異性体を生じるような、4面体の形状を有し得る。
適した分子足場は、2,4,6−トリス(ブロモメチル)メシチレンである。それは1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼンに類似するが、ベンゼン環に結合した3つのメチル基をさらに含む。これは、さらなるメチル基が、ポリペプチドとのさらなる接触点を形成することができ、そのためにさらなる構造的制約を加える点で有利である。
本発明の分子足場は、小分子かまたは巨大分子構造のいずれかから選択される。前記分子足場は、有機、無機または有機および無機成分からなる。
好ましい実施形態では、分子足場は、例えば直鎖アルカンのような有機小分子である。より好適には、分子足場は、分枝アルカン、環状アルカン、多環式アルカン、芳香族(aromate)、複素環式アルカンまたは複素環式芳香族であり、これらは柔軟性が低い(すなわち、より硬質である)という利点をもたらす。最も好適には、分子足場は、ベンジル基を含む。
もう一つの実施形態では、分子足場は、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは多糖のような巨大分子構造から選択される。
本発明の分子足場は、本発明のコードされたライブラリのポリペプチドの官能基に分子足場との共有結合を形成することを許容する化学基を含む。前記化学基は、アミン、チオール、アルコール、ケトン、アルデヒド、ニトリル、カルボン酸、エステル、アルケン、アルキン、無水物、スクシンイミド、マレイミド、アジド、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アシルを含む広い範囲の官能基から選択される。
(ii)ポリペプチド
コードされたポリペプチドの反応性基は、好適には天然もしくは非天然アミノ酸の側鎖により提供される。コードされたポリペプチドの反応性基は、好適にはチオール基、アミノ基、カルボキシル基、グアニジウム基、フェノール基またはヒドロキシル基から選択される。コードされたポリペプチドの反応性基は、好適にはアジド基、ケト−カルボニル基、アルキン基、ビニル基、またはハロゲン化アリール基から選択されてよい。分子足場に連結するためのコードされたポリペプチドの反応性基は、好適にはポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端であり得る。
一部の実施形態では、分子足場に連結するためのポリペプチドの反応性基の各々は、同じ種類のものである。例えば、各々の反応性基は、システイン残基であってよい。
一部の実施形態では、分子足場と連結するための反応性基は、2以上の異なる種類を含んでよい、または、3以上の異なる種類を含んでよい。例えば、反応性基は、2個のシステイン残基と1個のリジン残基を含んでよい、または、1個のシステイン残基、1個のリジン残基および1個のN末端アミンを含んでよい。
システインは、その反応性が、その他の全てのアミノ酸とは非常に異なっているという利点を有するため、最も適したアミノ酸である。システインのチオール基と反応させるために分子足場で使用することができ得る足場反応性基は、ハロゲン化アルキル(またはハロゲノアルカンまたはハロアルカンとも命名される)である。例は、ブロモメチルベンゼン(TBMBに例示される足場反応性基)またはヨードアセトアミドである。タンパク質中で化合物をシステインと選択的に結合させるためのその他の使用される足場反応性基は、マレイミドである。本発明において分子足場として使用することのできるマレイミドの例としては、トリス−(2−マレイミドエチル)アミン、トリス−(2−マレイミドエチル)ベンゼン、トリス−(マレイミド)ベンゼンが挙げられる。セレノシステインも、システインに似た反応性を有する天然アミノ酸であり、同じ反応に用いることができる。従って、システインが言及される場合はいつも、前後関係から別のものが示唆される場合を除いて、一般にセレノシステインを代用することが容認される。システインが使用されることが最も適している。
リジン(およびペプチドのN末端の第一級アミン)も、分子足場に連結することによりファージ上でペプチドを修飾するための反応性基として適している。しかし、それらはファージタンパク質中でシステインよりも豊富であり、ファージ粒子が架橋されかねないか、またはそれらがその感染性を失いかねないというリスクが高まる。それにもかかわらず、分子足場との第2のまたは連続的な連結を形成するために、リジンが分子内反応において特に有用である(例えば、分子足場が既にファージペプチドに連結されている場合)ことが見出された。この場合、分子足場は、提示されたペプチドのリジン(特にすぐ近くにあるリジン)と優先的に反応する。第一級アミンと選択的に反応する足場反応性基は、スクシンイミド、アルデヒドまたはハロゲン化アルキルである。いくつかの添付される実施例で用いられるブロモメチル基において、ベンゼン環の電子は、カチオン遷移状態を安定化することができる。この特定のハロゲン化アリールは、そのためハロゲン化アルキルよりも100〜1000倍反応性が高い。分子足場として使用するためのスクシンイミドの例としては、トリス−(スクシンイミジルアミノトリアセテート)、1,3,5−ベンゼントリ酢酸が挙げられる。分子足場として使用するためのアルデヒドの例としては、トリホルミルメタンが挙げられる。分子足場として使用するためのハロゲン化アルキルの例としては、1,3,5−トリス(ブロモメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(ブロモメチル)−2,4,6−トリエチルベンゼンが挙げられる。
一部の実施形態では、分子リンカーまたは分子修飾体を、分子足場の結合の前にコードされたポリペプチドの反応性基に添加する(または反応性基を生成する)ことができる(この際、前記リンカーまたは修飾は該分子足場と反応する能力がある)。
分子足場と連結するための反応性基を含むアミノ酸は、コードされたポリペプチド内の任意の適した位置に位置してよい。生成される特定の構造またはループに影響を及ぼすためには、反応性基を有するアミノ酸の位置は、熟練した操作者によって、例えば製造したポリペプチドを変異させるためにポリペプチドをコードする核酸の操作によって、様々であり得る。
コードされたポリペプチドの各々のアミノ酸は、熟練作業者または本発明が適用される目的の必要性に従う変異誘発(例えば、変動の制限された変異誘発)の標的であり得る。明らかに、分子足場と結合するために少なくとも3つの反応性基が目的のポリペプチド上に必要である。分子足場との結合に必要とされるもの以外のアミノ酸は、操作者の必要性に従って自由に変動してよく、「可変性アミノ酸」と称される。前記コードされたポリペプチド(例えば、ポリペプチドライブラリメンバー(1または複数))の可変性アミノ酸は、ランダム化されていてもよく、部分的にランダム化されていてもよく、または定常的であってもよい。
ポリペプチドは、分子足場結合セグメントを含む。これは、分子足場が結合する領域である。好適には、ポリペプチド上の反応性基に関する解説は、この結合セグメントに適用される。好適には、ポリペプチドの分子足場結合セグメントは、1〜27個のアミノ酸残基、好適には5〜20個のアミノ酸残基を含む。好適には、ポリペプチドの分子足場結合セグメントは、10個より少ないアミノ酸を含む。これは、それが分子足場に結合すると、さらなる立体構造的制約をポリペプチドセグメントに課すという利点を有する。
ポリペプチドは、好適には配列AC(X)6C(X)6CGを含み、この際、Xはランダム天然アミノ酸を表し、Aはアラニンを表し、Cはシステインを表し、Gはグリシンを表す。
ポリペプチドは、好適には配列(X)IY(X)mY(X)nY(X)oを含み、この際、Yは反応性基をもつアミノ酸を表し、Xはランダムアミノ酸を表し、mおよびnは介在するポリペプチドセグメントの長さを規定する1〜20の間の数字であり、かつIおよびoは隣接するポリペプチドセグメントの長さを規定する0〜20の間の数字である。
一部の実施形態では、本発明のペプチドリガンドは、配列AC(X)6C(X)6CGをもつポリペプチドを含み得る。一実施形態では、本発明のライブラリメンバーまたはペプチドリガンドは、メシチレン分子足場および配列AC(X)6C(X)6CGをもつポリペプチドを含んでよく、この際、ポリペプチドは、ポリペプチドのシステイン残基を介して分子足場のエキソ環状メチル基に繋ぎ止められ、それとともに3つのチオエーテル結合を形成し、かつ、この際、Xはアミノ酸、(好適には天然アミノ酸)を表し、Aはアラニンを表し、Cはシステインを表し、Gはグリシンを表す。メシチレン足場の使用は、ペプチドリガンドの構造にある程度の柔軟性を導入する。
(iii)ポリペプチドの反応性基
本発明の分子足場は、ポリペプチド上の官能基また反応性基を介してポリペプチドに結合させることができる。これらは、一般にポリペプチドポリマー中に見出される特定のアミノ酸の側鎖から形成される。そのような反応性基は、システイン側鎖、リジン側鎖、あるいはN末端アミン基または任意のその他の適した反応性基であってよい。
好適には、少なくとも一つの反応性基は、システイン基である。リジンまたはN末端アミンなどの基は、一般に便宜な時間枠内で独力で分子足場と結合するほど十分に反応性ではない。しかし、ひとたび分子足場が少なくとも一つのシステインに引き付けられるかまたは結合すれば、通常の反応速度論は、リジン結合またはアミン結合はそれ以降迅速かつ安定して形成され得ることが意味する。この理由から、好適には少なくとも一つの反応性基はシステイン基である。
ポリペプチド上にシステイン/リジン/アミン基以外の反応性基を所望する場合、ポリペプチド上の最適な特定の官能性反応性基と対とするために、異なる分子足場を選んでよい。
好適には、システイン、リジンまたはアミン基を、目的のポリペプチド上の官能性または反応性基として使用する。
好適には、少なくとも3つの共有結合が分子足場と目的のポリペプチドとの間に形成される。
一部の実施形態では、4つの結合またはそれより多くの結合が分子足場と目的のポリペプチドとの間に形成され得る。しかし、4より多くの結合を用いる場合、一般に形成される生成混合物は、次第に複雑になり、その後の使用または用途を妨げる可能性がある。この理由から、分子足場と目的のポリペプチドとの間には3つの結合または4つの結合が好ましい。いずれの実施形態でも、分子足場の分子対称性が好ましい。最も好ましいのは、3つの官能基または反応性基を有する分子足場である。最も好ましいのは、3回対称性を有する分子足場である。
本発明の遺伝的にコードされたポリペプチドの反応性基は、分子足場/分子コアと共有結合を形成する能力がある。反応性基は、天然アミノ酸か非天然アミノ酸のいずれかの中の原子の特定の基である。優先的に、独特の化学反応性をもつ反応性基を用いてポリペプチドを分子足場に連結して、本発明の複合体を形成する。前記独特の反応性基の使用により、分子足場/分子コアの結合は、複合体のポリペプチド、核酸またはその他の成分のいずれかの多様性要素のその他の化学基とではなく、ポリペプチドの指定された反応性基とだけ可能となる。
天然アミノ酸の適した反応性基は、システインのチオール基、リジンのアミノ基、アスパラギン酸またはグルタミン酸のカルボキシル基、アルギニンのグアニジウム基、チロシンのフェノール基あるいはセリンのヒドロキシル基である。非天然アミノ酸は、アジド、ケト−カルボニル、アルキン、ビニル、またはハロゲン化アリール基を含む、広い範囲の反応性基を提供することができる。ポリペプチドの末端のアミノおよびカルボキシル基も、分子足場/分子コアと共有結合を形成するための反応性基としての役割を果たし得る。
本発明のコードされたポリペプチドは、好適には少なくとも3つの反応性基を含む。前記ポリペプチドは、4以上の反応性基を含むこともできる。より多くの反応性基を使用するほど、より多くの多様性セグメントが分子足場/分子コアに繋ぎ止められ得る。しかし、過剰な数の反応性基と分子足場/分子コアの結合は、管理しにくい数の生成物異性体をもたらし得るので、推奨されない。好適には3つ、4つまたは5つの分子足場に対する共有結合、最も好適には3つまたは4つの共有結合、最も好適には3つの共有結合が使用される。
好ましい実施形態では、3つの反応性基をもつコードされたポリペプチドが生成される。前記ポリペプチドと、3回回転対称を有する分子足場/分子コアの反応は、単一の生成物異性体を生成する。単一の生成物異性体の生成は、いくつかの理由で好ましい。化合物ライブラリの核酸は、ポリペプチドの一次配列だけをコードするが、コードされたポリペプチドと分子コアの反応によって形成される分子の異性状態をコードしない。ただ一つの生成物異性体だけを形成することができれば、生成物異性体に対する核酸の割り当ては明確に規定される。複数の生成物異性体が形成される場合、核酸は、スクリーニングまたは選択プロセスで単離された生成物異性体の性質についての情報を与えることができない。単一の生成物異性体の形成はまた、本発明のライブラリの特定のメンバーを合成する場合にも有利である。この場合、ポリペプチドと分子足場の化学反応は、異性体の混合物よりもむしろ単一の生成物異性体を生じる。
本発明もう一つの実施形態では、4つの反応性基をもつコードされたポリペプチドが生成される。前記ポリペプチドと、4面体対称を有する分子足場/分子コアの反応は、2つの生成物異性体を生成する。たとえ2つの異なる生成物異性体が一つの同じ核酸(「遺伝コード」)でコードされていても、単離された異性体の異性体としての性質は、両方の異性体を化学的に合成し、2つの異性体を分離し、両方の異性体を標的リガンドとの結合について試験することにより決定することができる。
本発明の一実施形態では、ポリペプチドの反応性基の少なくとも一つ、残りの反応性基に対して直交する。直交反応性基を使用することにより、前記直交反応性基を分子コアの特定の部位に向けることが可能となる。直交反応性基を伴う連結戦略を用いて、形成される生成物異性体の数を制限することができる。言い換えれば、少なくとも3つの結合の残りに選択される反応性基とは別個または異なる反応性基を少なくとも3つの結合の1以上に選択することにより、ポリペプチドの特定の反応性基の分子足場上の特定の位置に対する、特定の順序の結合または配向を、有用に達成することができる。
もう一つの実施形態では、本発明コードされたポリペプチドの反応性基を、分子リンカーと反応させる。この際、前記リンカーは、最終の結合状態でリンカーが分子足場とポリペプチドの間に介在するように、分子足場と反応する能力がある。
遺伝的にコードされたコンビナトリアル化学ライブラリのメンバーの適したアミノ酸は、任意の天然もしくは非天然アミノ酸で置換することができる。これらの交換可能なアミノ酸から除外されるものは、ポリペプチドを分子コアに架橋するための官能基を有するものである。変動し得る隣接アミノ酸の群は、ポリペプチドセグメントと定義される。単一のポリペプチドセグメントのサイズは、好適には1〜20アミノ酸の範囲である。ポリペプチドセグメントは、ランダム配列か、定常配列か、またはランダムアミノ酸と定常アミノ酸を含む配列のいずれかを有する。反応性基をもつアミノ酸は、本発明のコードされたポリペプチド内の規定された位置かまたはランダム位置のいずれかに配置される。
一実施形態では、分子足場/分子コアと結合するための反応性基を有する2つのアミノ酸により境界されるポリペプチドセグメントは、10またはそれよりも少ないアミノ酸からなる短いアミノ酸配列である。前記コードされたポリペプチド配列と分子コアとの反応は、高い立体構造的制約をもつライブラリメンバーを生じる。立体構造的に制約されたリガンドは、一般に特異性がより高く、より高い結合親和性を有する。立体構造的制約はまた、例えば体液中でのタンパク質分解からリガンドを保護することができる。
一実施形態では、3つの反応性基をもつコードされたポリペプチドは、配列(X)IY(X)mY(X)nY(X)oを有し、この際、Yは反応性基をもつアミノ酸を表し、Xはランダムアミノ酸を表し、mおよびnは介在するポリペプチドセグメントの長さを規定する1〜20の間の数字であり、かつIおよびoは隣接するポリペプチドセグメントの長さを規定する0〜20の間の数字である。
好ましい実施形態では、本発明のコードされたポリペプチドライブラリは、配列AC(X)6C(X)6CGを含み、この際、Aはアラニンを表し、Cはシステインを表し、Xはランダム天然アミノ酸を表し、Gはグリシンを表す。
チオール媒介コンジュゲーションの代替法を用いて、共有相互作用を介して分子足場をペプチドに結合させることができる。あるいはこれらの技法は、さらなる部分(例えば分子足場とは異なる目的の小分子など)を本発明に従って選択するかまたは単離した後に、ポリペプチドとの修飾または結合に使用してもよい。この実施形態において、その時、明らかに該結合は共有結合である必要はなく、非共有結合を包含してよい。これらの方法は、相補的な反応性基を有する小分子と組み合わせて、必要な化学反応性基をもつ非天然アミノ酸を有するタンパク質およびペプチドを提示するファージを産生することによるか、あるいは、選択/単離ステップの後に分子を作製する場合には非天然アミノ酸を化学合成または組換え合成ポリペプチドの中に組み込むことにより、チオール介在方法の代わりに(またはそれと組み合わせて)使用することができる。
ファージ上のペプチドおよびタンパク質に組み込まれる非天然アミノ酸には、1)ヒドラジン、ヒドロキシルアミンおよびそれらの誘導体と特異的に反応することのできるケトン反応性基(パラもしくはメタアセチル−フェニルアラニンに見出されるもの)(Addition of the keto reactive group to the genetic code of Escherichia coli.Wang L,Zhang Z,Brock A,Schultz PG.Proc Natl Acad Sci U S A.2003 Jan 7;100(1):56−61;Bioorg Med Chem Lett.2006 Oct 15;16(20):5356−9.Genetic introduction of a diketone−containing amino acid into proteins.Zeng H,Xie J,Schultz PG)、2)銅触媒「クリック化学」または歪みにより促進される(strain promoted)(3+2)環化付加(cyloadditions)を介してアルキンと反応し、対応するトリアゾールを形成することのできるアジド(p−アジド−フェニルアラニンに見出されるもの)(Addition of p−azido−L−phenylalanine to the genetic code of Escherichia coli.Chin JW,Santoro SW,Martin AB,King DS,Wang L,Schultz PG.J Am Chem Soc.2002 Aug 7;124(31):9026−7;Adding amino acids with novel reactivity to the genetic code of Saccharomyces cerevisiae.Deiters A,Cropp TA,Mukherji M,Chin JW,Anderson JC,Schultz PG.J Am Chem Soc.2003 Oct 1;125(39):11782−3)、または、シュタウディンガー・ライゲーション(Selective Staudinger modification of proteins containing p−azidophenylalanine.Tsao ML,Tian F,Schultz PG.Chembiochem.2005 Dec;6(12):2147−9)を介してアリールホスフィンと反応して、対応するアミドを形成することのできるアジド、4)アジドと反応して対応するトリアゾールを形成することのできるアルキン(In vivo incorporation of an alkyne into proteins in Escherichia coli.Deiters A,Schultz PG.Bioorg Med Chem Lett.2005 Mar 1;15(5):1521−4)、5)1より多くの適切に間隔を空けたヒドロキシル基を含有する化合物と特異的に反応することができるか、あるいはパラジウムに媒介されるハロゲン化化合物との結合を受けることのできるボロン酸(ボロネート)(Angew Chem lnt Ed Engl.2008;47(43):8220−3.A genetically encoded boronate−containing amino acid.,Brustad E,Bushey ML,Lee JW,Groff D,Liu W,Schultz PG)、6)金属イオンを特異的に配位させることのできる、ビピリジルを有するものを含む、金属キレート化アミノ酸(Angew Chem lnt Ed Engl.2007;46(48):9239−42.A genetically encoded bidentate,metal−binding amino acid.Xie J,Liu W,Schultz PG)が含まれてよい。
非天然アミノ酸は、1)コドンに応答して非天然アミノ酸の組込みを指示する、直交アミノアシル−tRNAシンセターゼおよびtRNA、2)非天然アミノ酸組込みの部位で選択されたコドンを含むように変更されたファージDNAまたはファージミドプラスミド、を有するプラスミドまたはプラスミドの組合せで大腸菌を形質転換することにより、ファージ上に提示されるペプチドおよびタンパク質に組み込まれてよい((Proc Natl Acad Sci U S A.2008 Nov 18;105(46):17688−93.Protein evolution with an expanded genetic code.Liu CC,Mack AV,Tsao ML,Mills JH,Lee HS,Choe H,Farzan M,Schultz PG,Smider W;A phage display system with unnatural amino acids.Tian F,Tsao ML,Schultz PG.J Am Chem Soc.2004 Dec 15;126(49):15962−3)。直交アミノアシル−tRNAシンセターゼおよびtRNAは、メタノコッカス・ヤナシイ・チロシル対またはシンセターゼ(Addition of a photocrosslinking amino acid to the genetic code of Escherichiacoli.Chin JW,Martin AB,King DS,Wang L,Schultz PG.Proc Natl Acad Sci U S A.2002 Aug 20;99(17):11020−4)およびピロリジンを自然に組み込むtRNA対(Multistep engineering of pyrrolysyl−tRNA synthetase to genetically encode N(epsilon)−(o− azidobenzyloxycarbonyl)lysine for site−specific protein modification.Yanagisawa T,lshii R,Fukunaga R,Kobayashi T1 Sakamoto K,Yokoyama S.Chem Biol.2008 Nov 24;15(11):1187−97;Genetically encoding N(epsilon)−acetyllysine in recombinant proteins.Neumann H,Peak−Chew SY,Chin JW.Nat Chem Biol.2008 Apr;4(4):232− 4.Epub 2008 Feb 17)から誘導されてよい。組込みのためのコドンは、アンバーコドン(UAG)であっても別の停止コドン(UGA1またはUAA)であってもよく、あるいはそれは4塩基コドンであってもよい。アミノアシル−tRNAシンセターゼおよびtRNAは、既存のベクターから作出してよく、それには、pBK系列のベクター、pSUP(Efficient incorporation of unnatural amino acids into proteins in Escherichia coli.Ryu Y,Schultz PG.Nat Methods.2006 Apr;3(4):263−5)ベクターおよびpDULEベクター(Nat Methods.2005 May;2(5):377−84.Photo−cross−linking interacting proteins with a genetically encoded benzophenone.Farrell IS1 Toroney R1 Hazen JL1 Mehl RA,Chin JW)が含まれる。用いる大腸菌株は、(一般にtraオペロンを介して)F線毛を発現する。アンバー抑制を用いる場合、大腸菌株自体は、活性なアンバーサプレッサーtRNA遺伝子を含有しない。このアミノ酸は成長培地に、好ましくは1mMまたはそれ以上の終濃度で添加されることになる。アミノ酸組込みの効率は、直交リボソーム結合部位を含む発現構築物を使用し、リボ−Xを含む遺伝子を翻訳することにより高めることができる(Evolved orthogonal ribosomes enhance the efficiency of synthetic genetic code expansion.Wang K,Neumann H,Peak−Chew SY,Chin JW.Nat Biotechnol.2007 Jul;25(7):770−7)。これにより、リガンドとの複数の結合部位をもたらす非天然アミノ酸の効率的な多重部位組込みを可能にすることができる。
(iv)多重特異性分子を形成するためのループの組合せ
ペプチドリガンド、またはペプチドリガンドのレパートリからのループは、有利には、配列決定および合わせたループを組み込むポリペプチドのデノボ合成により結合される。あるいは、そのようなポリペプチドをコードする核酸を合成してもよい。
レパートリ、特に単一ループレパートリを合わせる場合、該レパートリをコードする核酸は、有利に消化され、再連結されて、構成(constituent)レパートリからのループの異なる組合せを有する新規なレパートリを形成する。ファージベクターには、制限酵素のためのポリリンカーおよびその他の部位を含むことができ、それはベクターを切断およびライゲーション(relegation)するための独自の点を提供し、所望の多重特異性ペプチドリガンドを作成することができる。ファージライブラリを操作するための方法は、抗体については周知であり、本事例でも同様に適用することができる。
(v)結合後修飾
一部の実施形態では、ポリペプチド−分子足場複合体は、結合後の時点で修飾することができる。
プロテアーゼ切断
一部の実施形態では、本発明のポリペプチド要素は、分子足場/分子コアに繋ぎ止められるとすぐにタンパク質分解によって切断される。この切断により、分子足場/分子コアに繋ぎ止められた別個のペプチド断片を有するリガンドが生成される。このアプローチにより、個々のペプチドリガンドからのループの組合せを促進し、本発明に従う多重特異性ペプチドリガンドを形成することができる。
例えば、ポリペプチドの1以上のアミド結合は、ポリペプチドを分子コアに繋ぎ止めた後に、タンパク質分解によって切断されてよい。これには、各々が少なくとも一つの共有結合により分子足場に結合されているが、親ポリペプチドをコードする核酸を含む複合体中に保持される異なる分子構造を提示する、短いポリペプチドを作成するという利点がある。ポリペプチド切断は、好適には、当分野で公知の任意の適した手段、例えば制御された加水分解またはより好適には適したプロテアーゼによる酵素切断などにより触媒される。プロテアーゼは、任意の適したプロテアーゼであってよいが、好ましくは特定のポリペプチド認識配列またはモチーフを含むプロテアーゼである。これにより、より規定された、かつ/またはより予測可能なポリペプチド切断産物の産生が有利にもたらされる。実際に、この実施形態では、プロテアーゼ認識配列は、例えばポリペプチドをコードする核酸(1または複数)を操作することにより、ポリペプチドに体系的に付加されるかまたはそれから除去され得る。これにより、有利には、本発明に従って提示される分子において、より高度な制御がもたらされ、かつ、より高度な多様性が生成されることが許容される。最も好適には、ポリペプチドは、少なくとも一つのプロテアーゼ認識部位を含む。好適には、各々の前記切断部位は、分子足場と共有結合するために用いられるポリペプチド上の反応性基間のアミノ酸配列(1または複数)の中に含まれる。好適には、各々の前記切断部位は、分子足場と共有結合するために用いられるポリペプチド上の反応性基間のアミノ酸配列(1または複数)の中に含まれる。
ペプチドループは、好適には、特定のアミノ酸位置でポリペプチドを認識し保有するプロテアーゼ、例えばトリプシン(P1位置のアルギニンまたはリジン)またはサーモリシン(P1位置の脂肪族側鎖)で切断される。酵素は、提示された分子のペプチドループの効率的なプロセシングを可能にするがファージ粒子を残す濃度で使用される。最適な条件は、ポリペプチドループの長さ、および用いるプロテアーゼによって変動し得る。例えばトリプシンは、一般に10℃にて10分間、TBS−Caバッファー(25mM トリスHCl/137mM NaCl/1mM CaCl2、pH7.4)中200nMで用いられる。提示されるポリペプチドを修飾するがファージを残すために適したあらゆる種類のプロテアーゼが、Kristensen,P.およびWinter,G.(Proteolytic selection for protein folding using filamentous bacteriophages;Fold Des.1998;3(5):321−8)に記載されている。ファージ上のペプチドの酵素プロセシングは、限定された数のファージコートタンパク質が切断されることを排除することができないために、「部分的タンパク質分解」であり得る。よって、条件の最適化では、標的の切断を最大化することとファージ粒子を最大限残すこととの間の最良のバランスが好適に選択される。
好適には、ポリペプチドは、少なくとも一つのそのようなタンパク質分解切断部位を含む。好適には、ポリペプチドは、少なくとも2つのそのようなタンパク質分解切断部位を含む。
好適には、ポリペプチドは、少なくとも3つのそのようなタンパク質分解切断部位を含む。
各々のそのようなタンパク質分解の実施形態において、好適には、前記プロテアーゼ部位(1または複数)は、分子足場により範囲が定められるポリペプチドループ内に位置する。これは、分子足場が複合体上に保持される点で有利である。そうでなければポリペプチド−分子足場複合体はポリペプチドをコードする核酸から分離される可能性があり、それは大部分の本発明の用途に望ましくないためである。
短いループ(例えば6アミノ酸残基以下の短さ)の使用は、一部のプロテアーゼのループ内で切断する能力を損なう可能性がある。一部の例では、プロテアーゼに接近する可能性のより高い、より長いループを選択することが望ましい場合がある。さらに、エンドプロテアーゼによるループの切断後に、その他のエンドプロテアーゼで、あるいは実際にはエキソプロテアーゼ、例えばカルボキシペプチダーゼまたはアミノペプチダーゼなどによって、さらにループを短くすることが望ましい場合がある。
ポリペプチドが1より多くのそのようなプロテアーゼ部位を含む場合、好適には、それらの部位の各々は、ポリペプチドと分子足場との間に作成される2つの共有結合間に存在する。必要であれば、複数の切断部位が結合間に存在してもよい。
プロテアーゼ耐性
もう一つの実施形態では、ポリペプチドは、プロテアーゼ切断に対して耐性であり得る。一般に、プロテアーゼは、ポリペプチドを切断するためにそれに物理的に接近することができないので、しっかりと折りたたまれたポリペプチド構造は、プロテアーゼに対する耐性がより高い。そのため、ペプチドリガンド中の足場および足場結合の操作によって、ポリペプチドループの折りたたみに影響を及ぼすことにより、プロテアーゼ感受性を調節することができる。
前節に示されるように、プロテアーゼステップは、化学足場に結合したループ内の接近可能な部位を切断するために導入することができる。ペプチド抱合体のレパートリがファージ上に提示されると、各々が少なくとも一つの共有結合により化学足場に結合しているが、親ポリペプチドをコードする核酸を含む抱合体に保持されているペプチドがもたらされる。抗原による選択の前に化学修飾されたファージをプロテアーゼで処理することにより、切断されたループ(1または複数)を含むペプチド抱合体を有するファージ、および、切断部位の欠如に起因して切断されていないか、そうでなければ切断に耐性であるループ(1または複数)を含むペプチド抱合体を有するファージも生じることが見込まれる。一方が抗原に結合し、他方が結合しない場合、選択されたファージクローンと標的抗原の結合をプロテアーゼ処理の前および後に比較することによりこれらの種を識別することは可能である。よって、切断されたループをもつ種は、プロテアーゼ処理の前ではなく後に結合すると予測される;一方、プロテアーゼ耐性の種は、処理の前および後の両方に結合すると予測される。抱合体が切断されたループと切断されていないループの両方と結合する場合は(カリクレイン切断後にPK15のように;Heinis et al,2009参照)、プロテアーゼ耐性と不正確に認定される可能性があることに留意する。これは、切断を確かめるための直接的方法(例えばペプチド抱合体を化学的に合成することによる)を使用すること、および切断を確かめること(例えば質量分析による)の重要性を示す。
切断されたループ抱合体がプロテアーゼ耐性抱合体に好ましい場合、1回目の選択の前に化学的に修飾されたファージレパートリをプロテアーゼで処理し、後続の回で、同じプロテアーゼか、または共通の切断部位をもつプロテアーゼを使用し続けることが有利となる。しかし、その代わりにプロテアーゼ耐性抱合体が望ましいことがある。そのようなペプチドは、腸プロテアーゼを生き残る経口投与か、またあるいは血液、組織または細胞においてタンパク質分解作用にさらされる投与に有用であり得る。この場合、プロテアーゼを用いない1回目の選択は、その後にプロテアーゼを用いる後続の回の選択が続く、耐性のある種の選択を好むはずである。
プロテアーゼの使用は、選択プロセス中にさらなる有用性がある。例えば、(a)ヌクレオチドの合成でのエラーにより必要なシステイン残基をコードできなかった、または(b)必要なシステイン残基が溶液中の遊離システインとジスルフィド結合を形成した(恐らく不適切な還元または再酸化に起因)、あるいは、不可逆的な方法で反応した(例えば、酸化されてシステイン酸になる、または、必要なシステインの一つが足場の異なる分子と反応して他のものになる)という理由から、一部の形成されていないループ(配列の直線状のセグメント)が、ライブラリ中に存在する可能性がある。配列の直線状のセグメントは、ループよりもプロテアーゼの作用に感受性が高いので、切断部位が存在する条件では、プロテアーゼを使用してそのようなバインダーを避けることが可能であり得る。
プロテアーゼステップ(還元剤の存在下)はまた、化学足場によるよりも、必要なシステイン間のジスルフィドを介して形成されたループを除去するのに有利である。これは、ファージ上にシステインの不十分な還元(または後続の再酸化)がある場合に予期され得る。この理由から、本発明者らは、化学架橋ステップの間に脱気したバッファーを使用した;また、本発明者らはTBMBとの反応の間に還元剤(TCEP)を低レベルに保って還元環境を維持した。それにもかかわらず、1回目の選択の後、本発明者らは4つのシステイン残基(ループ中に3つの必要なシステイン残基、およびさらなるシステイン残基)が含まれた多くの配列、例えば、PEP21(CFNSEWSCLQSCSNC)を見出した。合成ヌクレオチドライブラリにはランダムコドンが含まれるので(NNK多様性:ここでNはアデニン、チミン、グアニン、およびシトシンヌクレオチドの各々の25%混合物を表し、Kはチミンおよびグアニンヌクレオチドの各々の50%混合物を表す)、そのような余分のシステインはペプチドレパートリ中に存在すると予期される。一部の条件下で、例えば不十分な還元、または必要なシステインと化学足場の不完全な反応(恐らくアミノ基または水による足場に対する競合反応に起因する)がある場合、余分のシステインが、酸化条件下で、3つの必要なシステインの一つとジスルフィドループを形成することが予測され得る。あるいは、余分のシステインが足場と反応し、必要な2つのシステインにジスルフィドで閉じられたループを形成させる可能性がある。
それらの生成の背後にある正確な機構が何であろうと、そのようなジスルフィドで閉じられたループは、足場で閉じられたループと競合し、優勢となる可能性がある。モノマーでなくトリプレットから構築した合成ヌクレオチドライブラリを使用し、そうしてループ中のシステインコドンを回避することによって、余分のシステインの発生頻度を低下させること;および/または、ジスルフィドで閉じられたループを開くために還元剤の存在下で選択を行うことが可能であるはずである。より便宜には、本発明者らは、ループを開いてその次に切断するために、還元剤(例えばジチオスレイトールまたはTCEPなど)の存在下で化学的に修飾されたファージレパートリをプロテアーゼで処理することが、そのような種の寄与を最小限にするのに役立つことを見出した。
そのため、一実施形態では、本発明のペプチドリガンドは、実質的にプロテアーゼ耐性である。標的に対する選択の後にペプチドリガンドを切断させることは、プロテアーゼ切断に耐性である結合ペプチドリガンドの同定を促す。特定のペプチドリガンドが、切断後も標的に結合する能力を保持している可能性を完全に除外することはできない。しかし、そのようなリガンドの発生率は低いことになる。そのため、本発明は、
(a)ポリペプチドの第1のレパートリを準備するステップと、
(b)前記ポリペプチドを、2以上のアミノ酸残基でポリペプチドに結合する分子足場にコンジュゲートして、ポリペプチド抱合体のレパートリを形成するステップと、
(c)前記レパートリを標的に対する結合についてスクリーニングするステップ、および、標的に結合する第1のレパートリのメンバーを選択するステップと、
(d)所望により、選択したレパートリを還元剤で処理するステップと、
(e)レパートリをプロテアーゼで処理するステップと、
(f)前記レパートリを標的との結合についてさらにスクリーニングするステップと
を含む、増大したプロテアーゼ耐性を有するペプチドリガンドを選択するための方法を提供する。
もう一つの実施形態では、本発明のペプチドリガンドは、プロテアーゼにより実質的に切断される。プロテアーゼステップは、レパートリのスクリーニングの前に含められ、切断された形態で標的に結合するペプチドリガンドの同定を促す。そのため、本発明は、
(a)ポリペプチドの第1のレパートリを準備するステップと、
(b)前記ポリペプチドを、2以上のアミノ酸残基でポリペプチドに結合する分子足場にコンジュゲートして、ポリペプチド抱合体のレパートリを形成するステップと、
(c)所望により、レパートリを還元剤で処理するステップと、
(d)レパートリをプロテアーゼで処理するステップと、
(e)前記レパートリを標的に対する結合についてスクリーニングし、プロテアーゼでの処理の後に標的に結合する、第1レパートリのメンバーを選択するステップと
を含む、プロテアーゼにより切断されたペプチドリガンドを選択するための方法を提供する。
プロテアーゼ耐性についてのスクリーニングは、簡単に、結合がプロテアーゼに感受性であるかまたはプロテアーゼの作用を必要とするレパートリメンバーを同定するための、プロテアーゼによる制限消化の形をとってよい。最も望ましいのは、二環式ペプチドが使用されることになる条件下、例えば血清の存在下で活性であるプロテアーゼを使用することになる。
(vi)エフェクター基および官能基の結合
上記のように、エフェクター基および/または官能基は、ポリペプチドのNまたはC末端に、あるいは分子足場に結合することができる。
適したエフェクター基には、抗体およびその部分または断片が含まれる。例として、エフェクター基には、抗体軽鎖定常領域(CL)、および抗体CH1重鎖ドメイン、抗体CH2重鎖ドメイン、抗体CH3重鎖ドメイン、またはそれらの任意の組合せが、1以上の定常領域ドメインに加えて含まれ得る。エフェクター基はまた、抗体のヒンジ領域(そのような領域は、通常IgG分子のCH1ドメインとCH2ドメインの間に見出される)を含むことができる。
本発明のこの態様のさらに好ましい実施形態では、本発明に従うエフェクター基は、IgG分子のFc領域である。有利には、本発明に従うペプチドリガンド−エフェクター基は、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上または7日以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合体を含むか、またはそれからなる。最も有利には、本発明に従うペプチドリガンドは、1日以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合体を含むか、またはそれからなる。
官能基には、一般に、結合基、薬物、その他の物質の結合のための反応性基、大環状ペプチドの細胞内への取り込みを助ける官能基、および同類のものが含まれる。
ペプチドが細胞を透過する能力により、ペプチドは細胞内標的に対して効果的となることができる。細胞を透過する能力をもつペプチドによって接近することのできる標的としては、転写因子、チロシンキナーゼなどの細胞内シグナル分子、およびアポトーシス経路に関与する分子が挙げられる。細胞の透過を可能にする官能基としては、ペプチドかまたは分子足場のいずれかに付加されたペプチドまたは化学基が挙げられる。ペプチドは、例えばVP22、HIV−Tat、ショウジョウバエのホメオボックスタンパク質(アンテナペディア)由来ペプチド、例えば、Chen and Harrison,Biochemical Society Transactions(2007)Volume 35,part 4,p821「Cell−penetrating peptides in drug development:enabling intracellular targets」および「Intracellular delivery of large molecules and small peptides by cell penetrating peptides」by Gupta et al.in Advanced Drug Discovery Reviews(2004)Volume 57 9637に記載される通りである。血漿膜を貫通する転位で効率的であることが示された短いペプチドの例としては、ショウジョウバエアンテナペディアタンパク質由来の16アミノ酸ペネトラチンペプチド(Derossi et al(1994)J Biol.Chem.Volume 269 p10444「The third helix of the Antennapedia homeodomain translocates through biological membranes」)、18アミノ酸「両親媒性ペプチドモデル」(Oehlke et al(1998)Biochim Biophys Acts Volume 1414 p127「Cellular uptake of an alpha−helical amphipathic model peptide with the potential to deliver polar compounds into the cell interior non−endocytically」)およびHIV TATタンパク質のアルギニン富化領域が挙げられる。ペプチド以外のアプローチとしては、生体分子に容易に結合することのできる小分子模倣物またはSMOCの使用が挙げられる(Okuyama et al(2007)Nature Methods Volume 4 p153’Small−molecule mimics of an a−helix for efficient transport of proteins into cells’)。分子にグアニジウム基を付加するその他の化学戦略も、細胞の透過を強化する(Elson−Scwab et al(2007)J Biol Chem Volume 282 p13585「Guanidinylated Neomcyin Delivers Large Bioactive Cargo into cells through a heparin Sulphate Dependent Pathway」)。ステロイドなどの低分子量分子を、分子足場に付加して細胞内への取り込みを強化することができる。
ペプチドリガンドと結合することのできる官能基の一つの種類には、抗体およびその結合断片、例えばFab、Fvまたは単一のドメイン断片などが含まれる。特に、インビボでペプチドリガンドの半減期を増大する能力のあるタンパク質と結合する抗体を使用することができる。
多くの細胞上に存在するインテグリンと結合するRGDペプチドも組み込むことができる。
一実施形態では、本発明に従うペプチドリガンド−エフェクター基は、12時間以上、24時間以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、11日以上、12日以上、13日以上、14日以上、15日以上または20日以上からなる群から選択されるtβ半減期を有する。有利には、本発明に従うペプチドリガンド−エフェクター基または組成物は、12〜60時間の範囲内のtβ半減期を有する。さらなる実施形態では、それは1日以上のt半減期を有する。さらなる実施形態ではなお、それは12〜26時間の範囲内である。
官能基には、薬物、例えば癌治療のための細胞傷害性薬剤が含まれる。これらには、アルキル化剤、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン、ならびにオキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イフォスファミドなど;プリン類似体アザチオプリンおよびメルカプトプリン))またはピリミジン類似体を含む代謝拮抗薬;ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビンおよびビンデシンなどのビンカアルカロイドを含む、植物アルカロイドおよびテルペノイド;ポドフィロトキシンおよびその誘導体エトポシドおよびテニポシド;本来タキソールとして公知のパクリタキセルを含む、タキサン;カンプトテシン類、つまりイリノテカンおよびトポテカンを含む、トポイソメラーゼ阻害剤、ならびに、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、およびテニポシドを含む、タイプII阻害剤が含まれる。さらなる薬剤には、免疫抑制剤ダクチノマイシン(腎臓移植で使用される)、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシンなどを含む抗腫瘍性抗生物質が含まれ得る。
また、可能性のあるエフェクター基には、酵素、例として酵素/プロドラッグ療法で使用するためのカルボキシペプチダーゼG2などが含まれ、ここで、ペプチドリガンドがADEPTにおける抗体に代わる。
(vii)合成
注目すべきは、ひとたび目的のポリペプチドが本発明に従って単離または同定されると、それに続くその合成は、可能な限り簡略化することができることである。例えば、目的のポリペプチド配列を決定することができ、それは標準的な技法により合成によって製造した後、インビトロで分子足場と反応させることができる。これを実施する場合、遺伝的にコードされた担体粒子の官能価または完全性を保存する必要はもはやないので、標準的な化学を使用することができる。これにより、さらなる下流の実験または検証のための可溶性材料の迅速な大規模調製が可能となる。この点において、本発明の方法により同定された候補化合物またはリード化合物の大規模調製は、Timmerman et alに開示されるような従来の化学を用いて達成することができ得る。
従って、本発明はまた、本明細書に記載されるように選択されるポリペプチドまたは抱合体の製造にも関し、この際、製造は、下に説明されるように任意選択のさらなるステップを含む。最も好適にはこれらのステップは、ファージではなく、化学合成により製造された最終生成物ポリペプチド/抱合体で実行される。
所望により、抱合体(conjugate)または複合体(complex)を例えば、初期の単離/同定ステップの後に製造する場合に、目的のポリペプチド中のアミノ酸残基を置換してもよい。
また、ペプチドを伸長して、例えば別のループを組み込み、その結果多重特異性を導入することができる。
ペプチドを伸長するために、標準的な固相または液相化学を用いてそのN末端またはC末端でペプチドを化学的に簡単に伸長することができる。標準的なタンパク質化学を用いて活性化可能なNまたはC末端を導入すればよい。あるいは、断片縮合またはネイティブ・ケミカル・ライゲーションにより、例えば(Dawson PE,Muir TW,Clark−Lewis I,Kent,SBH.1994.Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation.Science 266:776−779)に記載されるように、または酵素により、例えば(Subtiligase:a tool for semisynthesis of proteins Chang TK,Jackson DY,Burnier JP,Wells JA Proc Natl Acad Sci U S A.1994 Dec 20;91(26):12544−8またはBioorganic & Medicinal Chemistry Letters Tags for labelling protein N−termini with subtiligase for proteomics Volume 18,Issue 22,15 November 2008,Pages 6000−6003 Tags for labeling protein N−termini with subtiligase for proteomics;Hikari A.I.Yoshihara,Sami Mahrus and James A.Wells)に記載されるようにサブチリガーゼを用いて、付加を作製してもよい。
あるいは、ジスルフィド結合によるさらなるコンジュゲーションにより、ペプチドを伸長または修飾してよい。これは、第1および第2のペプチドを細胞の還元環境内で一度お互いから解離させるというさらなる利点を有する。この場合、分子足場(例えばTBMB)を、3つのシステイン基と反応するように第1のペプチドの化学合成の間に付加することができた;次に、さらなるシステインを第1のペプチドのN末端に付加して、このシステインが第2のペプチドの遊離システインとだけ反応するようにすることができた。
同様の技法は、2つの二環式かつ二重特異性大環状分子の合成/カップリングに等しく適用し、四重特異性分子を作成する可能性がある。
さらに、その他の官能基またはエフェクター基の付加を、同じ方法で、適切な化学を用いて、NもしくはC末端でのカップリングにより、または側鎖を介して達成してよい。好適には、カップリングは、いずれの物質の活性も遮断しないような方法で行われる。
(B)ペプチドリガンドのレパートリ
(i)ライブラリの構築
選択を目的とするライブラリは、当分野で公知の技法、例えばWO2004/077062号に記載されるような技法、または、本明細書に記載されるファージベクター系を含む生物系を用いて構築することができる。その他のベクター系は、当分野で公知であり、それにはその他のファージ(例として、ファージλ)、細菌プラスミド発現ベクター、真核細胞系発現ベクター(酵母ベクターを含む)、および同類のものが挙げられる。
非生物系、例えば、WO2004/077062号に記載されるようなものなどは、従来の化学スクリーニングアプローチに基づいている。それらは単純であるが、ペプチドリガンドの大きなライブラリをスクリーニングすることは不可能であるか、または少なくとも実行不可能なほどに面倒であるので、生物系の能力に欠く。しかし、それらは、例として、ごく少数のペプチドリガンドをスクリーニングする必要がある場合に有用である。しかし、そのような個別のアッセイによるスクリーニングは、時間がかかる可能性があり、特定の標的との結合について試験することのできる独自分子の数は、一般に106の化学物質を超えない。
その一方、生物学的スクリーニング法または選択法は、一般に、それより非常に大きな数の異なる分子のサンプリングが可能である。従って、本明細書の適用において、生物学的方法がより好適に使用される。生物学的手順において、分子は単一の反応容器中でアッセイされ、好ましい特性(すなわち結合)をもつものは、不活性分子から物理的に分離される。1013より多くの個々の化合物を同時に生成しアッセイすることを可能にする選択戦略が利用できる。強力な親和性選択技法のための例は、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイまたはRNA/DNAアプタマー法である。これらの生物学的なインビトロでの選択法は、リガンドレパートリがDNAまたはRNAによりコードされることを共通して有する。それらは、配列決定により選択されたリガンドの増殖および同定を可能にする。ファージディスプレイ技術は、例えば、事実上いかなる標的に対しても非常に高い結合親和性をもつ抗体の単離に使用されている。
生物系を使用する場合、ひとたびベクター系を選択し、目的のポリペプチドをコードする1以上の核酸配列をライブラリベクターにクローニングすると、発現よりも前に変異誘発を行うことによりクローン分子の中に多様性を生成することができる。あるいは、変異誘発および追加の回の選択の前に、コードされたタンパク質を発現させ、選択することが好ましい。
そのようなアプローチは、本明細書に記載されるペプチドリガンドの親和性成熟に特に適応される。例えば、第1および第2の標的に結合するペプチドリガンドの第1および第2のレパートリを合わせ、得られる第3のレパートリを、該レパートリをコードする核酸ライブラリメンバーの変異誘発による親和性成熟に供する。
構造上最適化されたポリペプチドをコードする核酸配列の変異誘発は、標準的な分子法により実行される。特に有用なものは、ポリメラーゼ連鎖反応、またはPCR、(Mullis and Faloona(1987)Methods Enzymol.,155:335、引用することにより本明細書の一部をなすものとする)である。PCRは、目的の標的配列を増幅するために熱安定性のDNA依存性DNAポリメラーゼによって触媒されるDNA複製の複数のサイクルを使用し、当分野で周知である。様々な抗体ライブラリの構築は、Winter et al.(1994)Ann.Rev.Immunology 12,433−55、およびそこに引用される参照文献において考察されている。
PCRは、鋳型DNA(少なくとも1fg、り有用には、1〜1000ng)および少なくとも25pmolのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて実施される。各々の配列はプールの分子のほんの小さな部分により表され、後の増幅サイクルで量が制限されるようになるので、プライマープールが極めて異種である場合には、より多くの量のプライマーを使用することが有利であり得る。典型的な反応混合物には、2μlのDNA、25pmolのオリゴヌクレオチドプライマー、2.5μlの10X PCR緩衝液1(米国カリフォルニア州フォスターシティ、パーキンエルマー社製)、0.4μlの1.25μM dNTP、0.15μl(または2.5単位)のTaq DNAポリメラーゼ(米国カリフォルニア州フォスターシティ、パーキンエルマー社製)および脱イオン水が、全容積が25μlとなるように含まれる。1.鉱油を重層し、プログラム可能なサーマルサイクラーを用いてPCRを行う。PCRサイクルの各々のステップの長さおよび温度、ならびにサイクルの数を、事実上ストリンジェンシー要件に従って調節する。アニーリング温度およびタイミングは、両方ともプライマーが鋳型にアニールされると予測される効率および許容されるはずであるミスマッチの程度により決定される。明らかに、核酸分子が同時に増幅および変異誘発される場合、少なくとも第1回の合成において、ミスマッチが必要とされる。プライマーアニーリング条件のストリンジェンシーを最適化する能力は、十分に当業者の知識の範囲内である。30℃〜72℃の間のアニーリング温度を使用する。鋳型分子の初期変性は、通常92℃〜99℃の間で4分間起こり、それに続いて変性(94〜99℃、15秒〜1分間)、アニーリング(上述のように決定した温度で、1〜2分)、および伸長(72℃、1〜5分間、増幅産物の長さによって決まる)からなるサイクルを20〜40回行う。最終伸長は一般に72℃で4分間であり、その後に4℃の不定(0〜24時間)ステップが続いてよい。
あるいは、本発明に従う短い鎖長のポリペプチドが与えられれば、変異体を好ましくはデノボ(de novo)合成し、適した発現ベクターに挿入する。ペプチド合成は、上記のように、当分野で公知の標準的技法により実行することができる。自動ペプチド合成装置、例えばApplied Biosystems ABI 433(米国カリフォルニア州フォスターシティ、アプライドバイオシステムズ社)などが、広く利用可能である。
(ii)遺伝的にコードされた多様性
目的のポリペプチドは、好適には遺伝的にコードされる。これにより、取扱いの容易さとともに多様性の増加という利点がもたらされる。遺伝的にコードされたポリペプチドライブラリの一例は、mRNAディスプレイライブラリである。別の例は、ファージディスプレイライブラリなどの複製可能な遺伝子ディスプレイパッケージ(rgdp)ライブラリである。好適には、目的のポリペプチドは、ファージディスプレイライブラリとして遺伝的にコードされる。
従って、好適には本発明の複合体は、ファージ粒子などの複製可能な遺伝子ディスプレイパッケージ(rgdp)を含む。これらの実施形態では、好適には核酸は、ファージゲノムに含まれる。これらの実施形態では、好適にはポリペプチドはファージコートに含まれる。
一部の実施形態では、本発明を用いて、いくつかの核酸を対応するポリペプチドに翻訳し、前記分子足場の分子を前記ポリペプチドに連結することにより生成されるポリペプチドの、遺伝的にコードされたコンビナトリアルライブラリを作製することができる。
遺伝的にコードされた、ポリペプチドのコンビナトリアルライブラリは、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、細菌ディスプレイまたはmRNAディスプレイにより作製することができる。
好適には、遺伝的にコードされた、ポリペプチドのコンビナトリアルライブラリは、ファージディスプレイにより作製される。ファージディスプレイ実施形態では、好適にはポリペプチドは、下に記載されるものなどの確立された技法に従ってファージに提示される。最も好適には、そのようなディスプレイは、目的のポリペプチドと、目的のポリペプチドの、外部ディスプレイを可能にする操作された遺伝子との融合により達成される;好適には前記操作された遺伝子は、ファージの操作された遺伝子9(p9または遺伝子IX)、遺伝子8(遺伝子VIII)、遺伝子7(p7または遺伝子VII)、遺伝子6(p6または遺伝子VI)または遺伝子3(p3または遺伝子III)を含む。これらのタンパク質は、TBMBなどの分子足場と反応し、副生成物を生じることができるシステインをわずかしか、または全く含まないという利点をもたらす。p6に関して、システイン84をセリンに変異させることが有利である。p7およびp9のシステインは、埋没する可能性が最も高く、そのためにそれらは必ずしも変異させて除去する必要はない。p8は、それがシステイン残基を含まないという利点をもたらす。従って、より好適には、前記操作された遺伝子は、ファージの操作された遺伝子8(遺伝子VIII)、遺伝子6(遺伝子VI)または遺伝子3(遺伝子III)を含む。
最も好適には、そのようなディスプレイは、目的のポリペプチドの、ドメイン1および2のシステイン残基を欠く操作された遺伝子3タンパク質との融合により達成される。この融合は、当分野で公知の任意の適した技法、例えば、ファージ遺伝子IIIタンパク質をコードする核酸を操作して、システインをコードするコドンをその他のアミノ酸(1または複数)をコードするコドン(1または複数)に変えることにより、かつ、ポリペプチドをファージ粒子の外部で遺伝子III融合タンパク質として提示されるように、ポリペプチドをコードする核酸配列をインフレームの遺伝子IIIコード配列に挿入することにより達成することができる。
本発明の利益は、得られる操作された遺伝子(1または複数)が、ファージを感染性にする、すなわち感染および増殖を可能にすることである。たとえ操作された遺伝子が遺伝子3以外の遺伝子であっても、(例えば遺伝子6または遺伝子8)、1以上のシステイン残基(例えば全てのシステイン残基)を除去するように遺伝子3を操作することがなお望ましいと思われる。
好ましい実施形態では、本発明の遺伝的にコードされたポリペプチドは、核酸を翻訳し、生成されたポリペプチドを前記コードに関連付けることにより生成される。表現型と遺伝子型が連携することにより、コードされたリガンドレパートリを増殖または解読することが可能となる。ポリペプチドをそのポリヌクレオチドコードに関連付けるための様々な技法が利用できる。これらの技法としては、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、酵母ディスプレイおよび細菌ディスプレイなどが挙げられる。1013までの個別メンバーを含む、コードされたポリペプチドレパートリが前記方法で作製されている。本発明に従って生成することのできる個別リガンドの数は、従来のスクリーニングで一般にアッセイされる個別分子の数を明らかに凌いでいる。
好ましい実施形態では、ファージディスプレイ技術を用いて本発明のポリペプチドを遺伝的にコードする。ファージディスプレイは、ポリペプチドの遺伝子をファージコートタンパク質の遺伝子と融合させる方法である。ファージを細菌細胞で産生させる場合、ポリペプチドはコートタンパク質の融合体として発現させる。ファージ粒子を集合させると、ポリペプチドはファージの表面上に提示される。ファージレパートリを固定化した抗原に接触させることにより、一部のファージは抗原に結合したまま残るが、その他のファージは洗浄により除去される。ファージを溶離して増殖させることができる。選択されたファージのポリペプチドをコードするDNAを配列決定することができる。ファージディスプレイを用いて1010より多くの個別ポリペプチドをコードしてよい。ファージディスプレイの好ましい態様は、一本鎖DNAである遺伝コードをコートの中に詰め込むことである。コートはDNAを分子コアとの反応から保護することができる。
もう一つの好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドライブラリは、遺伝子3タンパク質融合体としてファージ上に提示される。各々のファージ粒子は、前記ファージコートタンパク質約3〜5コピーを有する。修飾したポリペプチドの複数のコピーをディスプレイする結果として、マイクロモルの親和性をもつリガンド(弱いバインダー)も、ファージ選択で単離され得る。あるいは、ファージミドを用いてファージあたりのポリペプチドの数を減らして結合活性効果を回避し、親和性のより高いリガンドを選択する。
もう一つの好ましい実施形態では、修飾したコートタンパク質を含むファージを、本発明のポリペプチドライブラリをコードするために使用する。特に、コートタンパク質において特定の種類のアミノ酸を欠くかまたは特定の種類のアミノ酸の減少したファージを使用する。前記コートタンパク質を使用することは、分子コアが前記特定の種類のアミノ酸に対して反応性である場合に有利であり得る。これは、明らかに、分子コアを架橋するための提示されたポリペプチドの反応性基が天然アミノ酸であり、同じ種類の天然アミノ酸がファージコートの表面露出領域に存在する場合の事例である。前記ファージを修飾したコートタンパク質とともに使用することにより、複数のファージのアミノ酸と、同じ分子コアとの反応によってファージ粒子の架橋を防ぐことができる。その上、前記ファージを使用することにより、ポリペプチドの反応性基のアミノ酸側鎖と、ファージコートタンパク質のアミノ酸側鎖の両方と、同じ分子コアとの架橋を減らすことができる。
さらにもう一つの好ましい実施形態では、ドメイン1および2においてジスルフィド架橋C7−C36、C46−C53、C188−C201のシステイン残基を欠く遺伝子3タンパク質を含むファージを用いて、本発明のポリペプチドライブラリを提示する。前記位置(C7C、C36I、C46I、C53V、C188V、C201A)における突然変異、および熱安定性の低下を補うための遺伝子3タンパク質中の14個のさらなる突然変異(T13I、N15G、R29W、N39K、G55A、T56I、I60V、T101I、Q129H、N138G、L198P、F199L、S207L、D209Y)を含むファージが、Schmidt F.X.および共同研究者ら(Kather,I.et al.,J.Mol.Biol.,2005)により作成された。前記マイナーコートタンパク質中のチオール基を含まないファージは、ポリペプチドを分子コアに架橋するための1以上の官能性アミノ酸がシステイン残基である場合に適している。ファージコートタンパク質中のシステイン残基を除去することは、ポリペプチドと分子足場との間の前記結合反応へのシステイン残基の干渉を防ぐ。
本発明で適用するためのこの例となるファージをこれからより詳細に説明する。
FX Schmidのジスルフィドを含まないファージ(ドメインD1−D2)は、ベクターfCKCBSに由来するfdファージを含む(Krebber,C,1997,J.Mol.Biol.)。ベクターfCKCBSは、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC:15669−B2)に由来するfdファージベクターに基づく。
野生型fdファージのp3のドメイン1および2のアミノ酸配列は、公に、例えばPubMedデータベースにおいて入手可能である。参照が容易なように、例となる配列は、
AETVESCLAKPHTENSFTNVWKDDKTLDRYANYEGCLWNATGVVVCTGDETQCYGTWVPIGLA
IPENEGGGSEGGGSEGGGSEGGGTKPPEYGDTPIPGYTYINPLDGTYPPGTEQNPANPNPSLEES
QPLNTFMFQNNRFRNRQGALTVYTGTVTQGTDPVKTYYQYTPVSSKAMYDAYWNGKFRDCAF
HSGFNEDPFVCEYQGQSSDLPQPPVNAPSG
である。
FX Schmidおよび共同研究者らは、4個のアミノ酸を変異させることにより、このファージのp3を進化的に安定化させた(Martin,A.and Schmid,FX.,2003,J.Mol.Biol.)。継続的な研究においてFX Schmidおよび共同研究者らは、6個のシステインを変異させて3個のジスルフィド架橋を除去し、さらなる突然変異を挿入して安定性の喪失を補った(Kather,I.and Schmid FX.,2005,J.Mol.Biol.)。複数の進化サイクルにおいて、彼らは、熱安定性を変えた、全てがジスルフィドを含まないp3を有するクローン19、20、21、および23を生成した。
変異株21(「クローン21」)は、記載される通りに作成してもよいし、または簡単にFX Schmidおよび共同研究者らより入手してもよい。FX Schmidの出版物によれば、このクローンは、ドメイン1および2に次の変異を含む:C7S、T13I、N15G、R29W、C36I、N39K、C46I、C53V、G55A、T101I、Q129H、C188V、F199L、C201A、D209Y。その上、本発明者らは、クローンを配列決定してそれを野生型fdファージと比較した時に、次の変異をドメイン1および2に見出した:P11SおよびP198L。理論に縛られることを望むものではないが、これらの変異はベクターfCKCBSのファージに既に存在していたと考えられる。
クローン21のドメインD1およびD2は、次のアミノ酸配列:
AETVESSLAKSHIEGSFTNVWKDDKTLDWYANYEGILWKATGVVVITGDETQVYATWVPIGLA
IPENEGGGSEGGGSEGGGSEGGGTKPPEYGDTPIPGYIYINPLDGTYPPGTEQNPANPNPSLEES
HPLNTFMFQNNRFRNRQGALTVYTGTVTQGTDPVKTYYQYTPVSSKAMYDAYWNGKFRDVAF
HSGFNEDLLVAEYQGQSSYLPQPPVNAPSG
を有する。
一実施形態では、スクリーニングは、本発明のライブラリを標的に接触させ、前記標的に結合する1以上のライブラリメンバーを単離することにより実施されてよい。
もう一つの実施形態では、前記ライブラリの個々のメンバーを、スクリーニングにおいて標的と接触させ、前記標的に結合する前記ライブラリのメンバーを同定する。
もう一つの実施形態では、前記ライブラリのメンバーを、同時に標的に接触させ、前記標的に結合する前記ライブラリのメンバーを選択する。
標的(1または複数)は、ペプチド、タンパク質、多糖、脂質、DNAまたはRNAであってよい。
標的は、受容体、受容体リガンド、酵素、ホルモンまたはサイトカインであってよい。
標的リガンドは、原核生物タンパク質、真核生物タンパク質、または古細菌タンパク質であってよい。より具体的には、標的リガンドは、哺乳動物タンパク質または昆虫タンパク質または細菌タンパク質または真菌タンパク質またはウイルスタンパク質であってよい。
標的リガンドは、酵素、例えばプロテアーゼであってよい。
注目すべきは、本発明が、本発明に従うスクリーニングから単離されたライブラリメンバー(1または複数)も包含することである。好適には、本発明のスクリーニング法(1または複数)は、前記標的に結合する能力があるとして単離された一定量の本発明の複合体を製造するステップをさらに含む。
本発明はまた、本発明に従うスクリーニングにより単離されているか、または単離されることのできるライブラリメンバーにも関し、前記メンバーは、その後に本発明の複合体の一部である時に前記ポリペプチドをコードする核酸をさらに用いることなく、生成/製造される。例えば、適した本発明の方法は、分子足場をポリペプチドに結合させることによる、本発明の方法により単離または同定された一定量のポリペプチドを製造する追加のステップをさらに含み、前記ポリペプチドは組換えによって発現されるかまたは化学的に合成される。例えば、この実施形態でポリペプチドが組換えによって合成される場合、本来本発明の複合体の一部としてポリペプチドをコードする核酸は、もはや直接的に存在しないが、中間ステップ、例えば複合体の元の核酸のPCR増幅またはクローニングステップでは存在していた可能性があり、この追加のステップでポリペプチドを合成することのできる鋳型核酸の製造がもたらされる。
本発明はまた、2本よりも多くのループを有するペプチドリガンドに関する。例えば、分子足場に連結された三環式ポリペプチドは、本発明に従う分子足場に連結された二環式ポリペプチドのN末端およびC末端を連結することにより作成することができる。このように、連結されたN末端およびC末端は第3のループを作成し、三環系ポリペプチドを作製する。この実施形態は、好適にはファージ上で実行されず、好適には本発明のポリペプチド−分子足場抱合体上で実行される。N末端およびC末端を連結することは、日常的なペプチド化学のことである。何らかの指針が必要な場合は、C末端を活性化させ、かつ/またはN末端およびC末端を伸長させて、例えばシステインを各々の末端に付加した後、ジスルフィド結合によりそれらを連結すればよい。あるいは、N/C末端に組み込んだリンカー領域を用いることにより連結を達成してもよい。あるいは、N末端およびC末端を従来のペプチド結合により連結してもよい。あるいはN末端およびC末端を連結するための任意のその他の適した手段を用いてよい、例えばN−C−環化を、例えば、Linde et al.Peptide Science 90,671−682(2008)「Structure− activity relationship and metabolic stability studies of backbone cyclization and N− methylation of melanocortin peptides」に、またはHess et al.J.Med.Chem.51 ,1026− 1034(2008)「backbone cyclic peptidomimetic melanocortin−4 receptor agonist as a novel orally administered drug lead for treating obesity」に開示されるような、標準的な技法によって行うこともでき得る。そのような三環式分子の一つの利点は、特にエキソプロテアーゼ作用による、遊離末端のタンパク質分解の回避である。この性質の三環系ポリペプチドのもう一つの利点は、第3のループを、一般に適用可能な機能、例えばBSA結合、細胞侵入もしくは輸送作用、タギングまたは任意のその他のそのような使用などに利用することができることである。この第3のループは、一般に選択に利用可能でない(それはファージ上でなくポリペプチド−分子足場抱合体上でのみ生成されるため)、そのためその他のそのような生物学的機能にそれを使用することで、さらに有利にはループ1と2の両方が特異性の選択/創造のために残されることが注目される。従って、本発明はまた、そのような三環式ポリペプチドならびにその製造および使用に関する。
本発明は、遺伝的にコードされた化合物ライブラリを標的リガンドと接触させるための方法、および前記標的リガンドと結合するリガンドを同定するためのさらなる方法を提供する。遺伝的にコードされた化合物ライブラリは、スクリーニングかまたは選択手順のいずれかによりアッセイされる。
スクリーニング手順では、ライブラリの個々のメンバーがアッセイされる。ライブラリの個々のメンバーの複数のコピーは、例えば標的リガンドとともにインキュベートされる。ライブラリのメンバーを接触させる前または後に標的リガンドを固定化し、結合しなかったメンバーを洗浄により除去する。結合リガンドは、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で検出する。標的リガンドに結合したライブラリのメンバーのアミノ酸配列を、遺伝コードの配列決定により決定する。
選択手順では、コードされた化合物ライブラリの複数のメンバーを1以上の標的と接触させる。ライブラリのメンバーを接触させる前または後に標的を固定化し、結合しなかったメンバーを洗浄により除去する。結合リガンドの遺伝暗号を配列決定する。あるいは、選択されたリガンドを増殖させてさらなる選択回を実施する。
本発明の一実施形態では、化合物ライブラリは、ファージディスプレイによりコードされ、選択は、ファージパニングにより実施される。
(iii)ファージ精製
ファージの精製のためのどんな適した手段を使用してもよい。本発明では標準的技法が適用され得る。例えば、ファージは、濾過またはPEG沈殿などの沈殿により精製することができる;ファージ粒子は、既に記載したようにポリエチレン−グリコール(PEG)沈殿により製造および精製することができる。
さらなる指針が必要な場合は、Jespers et al(Protein Engineering Design and Selection 2004 17(10):709−713.Selection of optical biosensors from chemisynthetic antibody libraries.)に言及する。好適には、ファージは該文献中で教示される通り精製され得る。この出版物の内容は、ファージ精製の方法について参照により本明細書に具体的に援用される;特にJespers et alの709頁の右欄の部分から始まる材料および方法の節を参照する。
さらに、ファージは、Marks et al J.Mol.Biol vol 222 pp581−597により公開される通り精製されてよく、該文献は、どのようにファージ製造/精製を実施するかの詳細な説明を参照することにより本明細書に具体的に援用される。
何らかの指針が必要な場合は、ファージを以下のように還元し、精製すればよい。約5×1012ファージ粒子を1mMのジチオスレイトール(DTT)と室温にて30分間反応させ、次いでPEG沈殿させる。水ですすいだ後、ペレットを1mlの反応バッファー(10mMリン酸緩衝液、1mMのEDTA、pH7.8)に再懸濁する。次に、ファージを所望により50μlの1.6mMのN−[(2−ヨードアセトキシ)エチル]−N−メチルアミノ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBDIA)(分子プローブ)と室温にて2時間反応させるか、またはより好適には、本明細書に記載される分子足場と反応させる。反応は、ファージ粒子のPEG沈殿で終了する。
ファージを製造/精製することのできるなお一層さらなる方法は、Schreier and Cortese(A fast and simple method for sequencing DNA cloned in the single−stranded bacteriophage M13.Journal of molecular biology 129(1):169−72,1979)に教示される通りである。この出版物は、一本鎖DNAを鋳型として必要とする、Sanger et al.(1977)の鎖終結DNA塩基配列決定法を扱っている。M13ファージDNAは、一本鎖として存在するため、M13にクローニングされるあらゆるDNA配列は、この形態で容易に得ることができる。SchreierおよびCorteseは、M13一本鎖DNAが、配列決定の鋳型として使用するのに十分純粋であり、ファージ粒子の簡単な遠心分離およびフェノールでの抽出により調製することができることを示す。SchreierおよびCorteseの出版物は、ファージの生成の方法について参照することにより本明細書に具体的に援用される。疑いを避けるために、フェノール抽出は核酸精製を目的とするため、本発明に従う複合体を作成するためにはフェノール抽出は実施しない。従って、SchreierおよびCorteseのフェノールステップは、好適には除外される。SchreierおよびCorteseの方法には、精製されたファージ粒子の時点までしか従わない。
従って、ファージの精製のための当分野で周知の無数の技法が存在する。本発明の状況において、そのような精製は、分子足場との結合のために、特にそのような結合がシステイン残基を解する場合に、目的のポリペプチド中の反応性基を還元するために使用した還元剤を除去するために使用される。
所望により、下の反応化学の節で考察される、ファージ精製に特に有利な技法を採用してもよい。これらの技法は本発明に不可欠と見なされるものではないが、特に役立つ方法に相当するか、または本発明のファージ粒子を作製する最善の様式でさえあり得ることを明確に注意するべきである。しかし、分子足場の結合の前の還元剤の除去の段階で、ファージ上の還元した官能基/反応性基の再酸化を回避することに注意が払われているならば、原則としてどんな技法を用いてこれを達成してもよい。記載される濾過技法は、効果的であるが、標準的な技法よりも複雑になってもいるので、操作者が、彼らの本発明の特定の作業に最も適している技法を選ぶことになる。
(iv)反応化学
先行技術のポリペプチドの修飾のための技術は、厳しい化学および独立したポリペプチド修飾反応を伴ってきた。一方、本発明は、有利には生成物の遺伝的にコードされたエレメントの機能および完全性を保持するポリペプチドの修飾のための化学条件を利用する。具体的には、遺伝的にコードされたエレメントが、それをコードするファージの表面に提示されたポリペプチドである場合、その化学は有利にはファージの生物学的完全性を損なわない。これらの化学反応を増強または促進することのできる限られた枠の条件が存在することが本明細書に開示されている。特に、下により詳細に説明されるが、使用する溶媒および温度が効率的な反応に重要である。さらに、使用する試薬の濃度も、正確な結合を促進するのに役立ち、さらに修飾されているポリペプチド部分の架橋または損傷を回復または除去するのに役立つ。
特に、ポリペプチド中のシステインの還元が、最も効率的な反応に必要とされることが開示されている。明らかに、それらのシステインを化学的に還元するために使用した還元剤は、所望の結合を実施するために除去されねばならない。一つの公知の技法は、沈殿反応においてファージ粒子などの粒子を沈殿させるために、ジチオスレイトール(DTT)またはトリスカルボキシエチルホスフィン(TCEP)をシステインの還元のために使用すること、および還元剤の除去のために使用することである。そのような沈殿反応は、一般に20%ポリエチレングリコール(PEG)を、ファージ粒子の沈殿を導く2.5モルのNaClとともに含む。しかし、重要なことは再酸化を回避することである。下により詳細に開示されるように、脱気した緩衝液の使用、反応混合物中でのキレート剤の使用、および粒子を抽出するための濾過の使用、またはTBMBの存在下で低濃度のTCEPの使用を含む、一連の戦略に解決法が見出される。
例えば分子足場とポリペプチドの結合のための反応条件は、注意深く選択するべきである。条件の選択は、本発明が適用される用途に応じて非常に変動する可能性がある。ポリペプチドがファージ粒子に含まれる場合には特別な注意が必要である。本明細書および実施例の節全体にわたって指針が提供されている。
反応温度、分子足場濃度、溶媒および/またはpHのような反応条件は、ポリペプチドの反応性基と分子足場との効率的な反応を可能にするが、単離分子を(例えば、配列に対して)解読することを可能にする、および/あるいは単離分子を(例えば、PCRによるか、またはファージ増殖によるか、または任意のその他の適した技法で)増殖させる条件で、ポリペプチドをコードする核酸を残すように選択するべきである。さらに、反応条件は、ファージコートタンパク質を、それがファージを増殖させる条件で残すべきである。
ファージにコードされるポリペプチドのチオール基は、分子足場結合の前に還元剤で還元されてよい。そのような実施形態では、特にファージディスプレイ実施形態では、または特に還元剤がTCEPである場合には、過剰な還元剤は、濾過、例えば、ファージの濾過により除去することが好適である。
本発明において、一方では、コードされたポリペプチドを分子足場に効率的に連結させ、他方では、付加した核酸(およびファージコートタンパク質)を増殖または解読を可能にする条件に残す、反応条件が適用される。前記反応条件は、例えば反応温度、分子足場濃度、溶媒組成物またはpHである。
本発明の一実施形態では、システイン残基のチオール基を、ポリペプチドを分子コアと連結させる反応性基として使用する。一部の化学反応には、ポリペプチドのチオール基を還元する必要がある。ファージ提示されたポリペプチドのチオール基は、例えばトリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)のような還元剤の添加により効率的に還元される。過剰な還元剤は結合反応に干渉し得るため、それは主としてファージの濾過により、またはPEG沈殿により除去されるが、結合反応の間に還元条件を維持するために低濃度(10マイクロモル以下)が望ましいことがある。
チオール基の再酸化は、ペプチドと分子足場との反応にTCEPを含めることにより防ぐことができる。
チオール基の再酸化は、反応バッファーを脱気することにより好適に防止される。
また、チオール基の再酸化は、キレート化、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)によるキレート化による金属イオンの複合体形成により好適に防止される。
最も好適には、チオール基の再酸化は、TCEPを分子足場の反応に含めることにより、キレート化により、かつ、脱気した緩衝液の使用により防止または阻害される。
本発明の一実施形態では、ポリペプチドと分子足場との結合は、ファージにコードされるポリペプチドのチオール基などのポリペプチドの反応性基を分子足場と1時間反応させることにより達成される。
好適には、それらは30℃で反応させる。
好適には、それらは分子足場(例えばトリス(ブロモメチル)ベンゼンなど)と10μM〜40μMの濃度で反応させる。
好適には反応は、水性緩衝液中で行う。
好適には反応はpH8で行う。
好適には反応バッファーは、アセトニトリルを含む。好適には反応バッファーは、20%アセトニトリルを含む。
最も好適には、反応は、2以上の前記条件を特徴とする。好適には、反応は、3以上の前記条件を特徴とする。好適には、反応は、4以上の前記条件を特徴とする。好適には、反応は、5以上の前記条件を特徴とする。好適には、反応は、6以上の前記条件を特徴とする。好適には、反応は、前記条件の各々を特徴とする。
これらの反応条件を最適化してポリペプチドのチオール基とトリス(ブロモメチル)ベンゼンの反応性基とを定量的に反応させる。同じ反応条件下で、約20%のファージ粒子は、増殖および解読のために遺伝暗号を細菌細胞に導くために感染性のままである。
一実施形態では、分子足場、例えばTBMBは、ポリペプチド、例えばファージにコードされるポリペプチドなどに、20%のアセトニトリルを含有するpH8の水性緩衝液中10μM TCEPの存在下、10μMのTBMB(すなわち、トリス(ブロモメチル)ベンゼン)で30℃にて1時間、ポリペプチドのチオール基を反応(インキュベーション)させることにより結合させることができる。もう一つの実施形態では、この反応は、同じ緩衝液中30μM TCEPの存在下、40μMのTBMBを用いて実行することができる。
本発明者らはまた、ファージ感染性への反応物中の分子足場の濃度の効果を開示する。特に、本発明は、好適には反応で用いられる分子足場の濃度を最小化する。言い換えれば、常に十分な分子足場がファージポリペプチドに連結されるならば、ファージのポリペプチドとの反応の時点で用いられる分子足場の濃度は低いほど、よい。このようにして存在する分子足場を最小化することの利点は、分子足場のカップリングの後のファージ感染性の保存に優れていることである。例えば、分子足場がTBMBである場合、分子足場の濃度が100μMより大きいと感染性を損ない得る。従って、好適には分子足場がTBMBである場合、好適には、ポリペプチドとの結合の時点で存在するTBMBの濃度は、100μM未満である。
(C)本発明に従う二重特異性リガンドの使用
本発明の方法に従って選択された多重特異性ペプチドリガンドは、インビボでの治療および予防用途、インビトロおよびインビボでの診断用途、インビトロでのアッセイおよび試薬用途などで用いることができる。
上記に示唆されるように、本発明に従って選択された分子は、診断、予防および治療手技で有用である。一般に、二重特異性ペプチドリガンドの使用は、二重特異性抗体の使用に置換することができる。本発明に従って選択された二重特異性抗体は、ウエスタン解析および標準的な免疫組織化学法による原位置でのタンパク質検出において診断上有用である;これらの用途で使用するために、選択されたレパートリの抗体を当分野で公知の技法に従って標識してよい。その上、そのような抗体ポリペプチドは、クロマトグラフ保持体、例えば樹脂などと複合体化した場合には、アフィニティークロマトグラフィー法で準備として使用することができる。そのような技法は全て当業者に周知である。本発明に従うペプチドリガンドは、抗体の結合能に似た結合能を有し、そのようなアッセイにおいて抗体に置換することができる。
本発明に従う二重特異性リガンドの診断使用には、2つの標的が同時に結合できないように、2つの標的に競合して結合する(閉鎖型立体構造)二重特異性ペプチドリガンドの能力、またあるいは2つの標的に同時に結合する(開放型立体構造)能力、を利用する分析物のための均一アッセイが含まれる。
真のイムノアッセイ形式が、創薬開発で使用される診断アッセイ系および研究アッセイ系の製造業者らにより熱心に探究されている。主な診断マーケットとしては、病院、医院および診療所、商業的な基準検査室、血液バンク、および家庭でのヒト検査、非ヒト診断(例えば、食物検査、水質検査、環境検査、生体防御(biodefence)、および獣医学検査)、ならびに、最後に研究(創薬;基礎研究および学術研究を含む)が挙げられる。
現在、これらのマーケットは全て、化学発光、ELISA、蛍光または希少な例ではラジオイムノアッセイ技術を中心に構築されたイムノアッセイ系を利用している。各々のこれらのアッセイ形式は、分離ステップ(結合した試薬を非結合試薬から分離すること)を必要とする。一部の例では、数個の分離ステップが必要である。これらの追加ステップを加えることにより、試薬および自動化が加えられ、時間がかかり、アッセイの最終結果に影響が及ぶ。ヒト診断では、分離ステップは自動化することができ、この問題を遮蔽するが、除去はしない。ロボット工学、追加の試薬、追加のインキュベーション時間などは、相当なコストおよび複雑さを付加する。創薬、例えば、文字通り何百万のサンプルを同時に非常に低レベルの被検分子を用いて試験するハイスループットスクリーニングなどにおいて、追加の分離ステップを加えることは、スクリーニングを実施する能力を排除し得る。しかし、分離を回避することにより、読み出しにおいて過剰なノイズが生成される。従って、現行のアッセイ形式から得ることのできる範囲で感受性をもたらす真の均一形式が必要である。有利には、アッセイは、高感受性の完全定量的読み出しおよび大きなダイナミックレンジを有する。感受性は、必要なサンプル量を減らすことができるので重要な要件である。これらの両方の特徴は、均一系がもたらす特徴である。これは、ケア検査の点で、かつサンプルが貴重な創薬において非常に重要である。現在当分野で利用可能な不均一系は、大量のサンプルおよび高価な試薬を必要とする。
均一アッセイの用途には、癌検査が含まれ、癌検査で最大のアッセイは、前立腺癌について男性をスクリーニングする際に使用される前立腺特異的抗原のアッセイである。その他の用途としては不妊検査が挙げられ、これは妊娠に関するβ−hcgを含む、妊娠を試みる女性に一連の試験を提供する。肝炎、HIV、風疹、ならびにその他のウイルスおよび微生物および性的に伝染する疾患を含む感染症。試験は、特にHIV、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、非A非B肝炎の試験が、血液バンクにより使用される。治療薬のモニタリング試験には、患者において処方薬のレベルを有効性についてモニタリングすること、ならびに、毒性を避けるためにモニタリングすることが含まれる(例えば不整脈に対してジゴキシン、精神病の場合にはフェノバルビタールレベル;喘息に対してテオフィリン)。
診断検査は、乱用薬物試験、例えばコカイン、マリファナなどについての試験においてさらに有用である。代謝検査は、甲状腺機能、貧血およびその他の生理学的障害および機能を測定するために用いられる。
均一な結合アッセイ形式は、標準的な臨床化学アッセイの製造においてさらに有用である。イムノアッセイおよび化学アッセイを同じ装置に封入することは、診断検査において非常に有利である。適した化学アッセイとしては、グルコース、コレステロール、カリウムなどの検査が挙げられる。
均一な結合アッセイのさらに主要な用途は、創薬開発である:ハイスループットスクリーニングには、超高容量でコンビナトリアル化学ライブラリを標的に対して試験することが含まれる。シグナルを検出し、次に陽性群をより小さな群に分け、最終的に細胞で、次いで動物で試験する。均一アッセイは、これらの全ての種類の試験で使用することができる。創薬では、特に動物実験および臨床試験においてイムノアッセイの頻繁な使用が行われる。均一アッセイは、これらの手順を大いに加速し、簡略化する。その他の用途としては、食品および飲料検査:大腸菌、サルモネラ菌などに対する食肉およびその他の食品の検査;水質検査(大腸菌を含む全種類の汚染物質についての水性植物での試験を含む);ならびに獣医学検査が含まれる。
広範な実施形態では、本発明は、本発明に従う二重特異性ペプチドリガンドに結合した検出可能な薬剤を含む結合アッセイを提供し、その検出可能な特性は、分析物と前記二重特異性ペプチドリガンドとの結合により変更される。
そのようなアッセイは、各々が二重特異性ペプチドリガンドの上記特性を利用する、いくつかの異なる方法で企図されてよい。
二重特異性リガンドが閉鎖型の立体構造にある場合、アッセイは、分析物による薬剤の直接または間接的な置換の結果、薬剤の検出可能な特性の変化がもたらされることに依存する。例えば、薬剤が、検出可能なエンドポイントを有する反応を触媒する能力のある酵素である場合、前記酵素は、ペプチドリガンドによってその活性部位を妨げ、それにより酵素を不活化させるように結合され得る。これも二重特異性リガンドにより結合されている分析物は、酵素を置換し、活性部位を自由にすることにより酵素を活性化させる。次に、酵素は基質と反応する能力があり、検出可能な事象を生じさせる。代替実施形態では、ペプチドリガンドは、活性部位の外側の酵素に結合し、酵素の立体構造に影響を及ぼし、よってその活性を変更し得る。例えば、活性部位の構造は、リガンドの結合により制約され得る、または活性に必要な補因子の結合が妨げられ得る。
アッセイの物理的実施は、当分野で公知のどの形態をとってもよい。例えば、二重特異性ペプチドリガンド/酵素複合体を、試験ストリップの上に準備し;基質を該試験ストリップの異なる領域に準備し、分析物を含有する溶媒にリガンド/酵素複合体を通じて移動させ、酵素を置換し、それを基質領域に運んでシグナルを生成することができる。あるいは、リガンド/酵素複合体を試験スティックの上またはその他の固相に準備し、分析物/基質溶液に浸漬し、分析物の存在に応答して酵素を溶液中に放出させることができる。
分析物の各々の分子は一つの酵素分子を放出する可能性があるので、アッセイは定量的であり、所与時間内に生じたシグナルの強度は、溶液中の分析物の濃度に依存する。
閉鎖型の立体構造において分析物を用いるさらなる立体配置も可能である。例えば、二重特異性リガンドは、酵素のアロステリック部位に結合し、それにより酵素を活性化することが企図され得る。そのような実施形態では、酵素は分析物の不在下で活性である。分析物の添加により酵素は置換されてアロステリック活性化が失われ、従って酵素を不活化させる。
酵素活性を分析物濃度の尺度として用いる上記の実施形態の状況において、酵素の活性化または不活性化とは、酵素がシグナル生成反応を触媒する能力として測定される、酵素の活性の増加または低下をさす。例えば、酵素は、検出不能な基質のその検出可能な形態への変換を触媒し得る。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは、商業的に入手可能な発色基質または化学発光基質とともに当分野で広く使用されている。酵素の活性の増加または低下のレベルは、10%〜100%の間、例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%であってよい;活性の増加の場合には、増加は100%より大きい、すなわち200%、300%、500%またはそれ以上であってよく、あるいは、阻害酵素のベースライン活性が検出不能である場合には百分率として測定できなくてもよい。
さらなる立体配置では、二重特異性リガンドは、酵素よりも酵素/基質対の基質に結合し得る。そのため、分析物の結合を通じて二重特異性リガンドから基質が放出されるまで酵素には基質は利用できない。
この立体配置の実施は、酵素に結合する立体配置に関するものである。
さらに、蛍光がリガンドとの結合で消光されるような立体構造において、蛍光分子、例えばフルオレセインまたは別のフルオロフォアなどに結合するアッセイが企図され得る。この場合、分析物とリガンドとの結合は、蛍光分子を置換し、従ってシグナルを生じる。本発明において有用な、蛍光分子に対する代替物には、発光剤、例えばルシフェリン/ルシフェラーゼなど、および、HRPなどのイムノアッセイにおいて慣用される薬剤を含む発色剤が含まれる。
さらに、「開放型」立体構造で二重特異性リガンドを使用するアッセイが企図され得る。この立体構造では、二重特異性リガンドは、同時に2つの標的に結合する能力がある。例えば、第1の実施形態において、二重特異性リガンドが酵素および基質に結合するようなアッセイが企図されてよく、ここで酵素は基質に対して低い親和性を有し;かつ、酵素または基質のいずれかが分析物である。
基質と酵素の両方が二重特異性リガンドにより一緒にされる場合、この両者間の相互作用は増強され、シグナルの強化につながる。
あるいは、二重特異性リガンドは、上記のように蛍光分子に結合してよく、蛍光分子は分析物の結合により消光される。そのため、この実施形態では、蛍光は分析物の不在下で検出可能であるが、その存在下で消光される。
このようなアッセイの基本的実施は、上記に閉鎖型の立体構造アッセイについて記載される通りである。
本発明に従って調製される二重特異性リガンドの治療的使用および予防的使用は、本発明に従って選択されたリガンドのレシピエント哺乳動物、例えばヒトへの投与を伴う。二重特異性は、ペプチドリガンドを大きい結合活性で多量体抗原に結合させることができる。二重特異性ペプチドリガンドは、例えば腫瘍細胞株の死滅を媒介するための細胞傷害性T細胞の補充において、2つの抗原の架橋を可能にすることができる。
二重特異性はまた、一部の例では医学的状態の治療において有利である、2以上の標的の生物活性に拮抗することのできるペプチドリガンドの生成を可能にする。二重特異性はまた、一部の例では医学的状態の治療において有利である、2以上の標的でアゴニストとして作用することのできるペプチドリガンドの生成を可能にする。
均一性が少なくとも90〜95%の実質的に純粋なペプチドリガンドが、哺乳動物への投与に好ましく、製薬学的用途には、特に哺乳動物がヒトである場合に、均一性が98〜99%またはそれ以上であるのが最も好ましい。要望どおり部分的にまたは均質に、いったん精製されると、選択されたポリペプチドは、診断的または処理的に(体外を含む)またはアッセイ手順、免疫蛍光染色などの開発および実施において使用することができる(Lefkovite and Pernis,(1979 and 1981)Immunological Methods,Volumes I and II,Academic Press,NY)。
本発明のペプチドリガンドは、炎症状態、アレルギー性過敏症、癌、細菌もしくはウイルス感染、および自己免疫障害(それには、限定されるものではないが、1型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、クローン病および重症筋無力症が含まれる)を予防、抑制または治療する際の使用が見出される。
本出願において、用語「予防」は、疾患の誘発よりも前に保護用組成物を投与することを伴う。「抑制」とは、誘導性の事象の後であるが、疾患の臨床所見よりも前の組成物の投与をさす。「治療」は、疾患症状が明白となった後の保護用組成物の投与を伴う。
疾患に対する保護または疾患の治療におけるペプチドリガンドの有効性をスクリーニングするために用いることのできる動物モデル系が利用可能である。
感受性の高いマウスにおける全身性紅斑性狼瘡(SLE)の試験のための方法は、当分野で公知である(Knight et al.(1978)J Exp.Med.,147:1653;Reinersten et al.(1978)New Eng.J :Med.,299:515)。重症筋無力症(MG)は、SJL/J雌マウスにおいて別の種由来の可溶性AchRタンパク質で疾患を誘発することにより試験される(Lindstrom et al.(1988)Adv.Inzn7unol.,42:233)。関節炎は、感受性の高いマウス系統において2型コラーゲンの注射により誘発される(Stuart et al.(1984)Ann.Rev.Immunol.,42:233)。感受性の高いラットにおいてマイコバクテリアの熱ショックタンパク質の注射によりアジュバント関節炎を誘発するモデルが記載されている(Van Eden et al.(1988)Nature,331:171)。甲状腺炎は、記載されるようにサイログロブリンの投与によりマウスにおいて誘発される(Maron et al.(1980)J.Exp.Med.,152:1115)。インスリン依存性真性糖尿病(IDDM)は、天然に起こるか、またはKanasawa et al.(1984)Diabetologia,27:113に記載されるものなどのマウスの系統において誘発させることができる。マウスおよびラットにおけるEAEは、ヒトにおけるMSのモデルとして役立つ。このモデルでは、ミエリン塩基性タンパク質の投与により脱髄性疾患が誘発される(Paterson(1986)Textbook of Immunopathology,Mischer et al.,eds.,Grune and Stratton,New York,pp.179−213;McFarlin et al.(1973)Science,179:478:およびSatoh et al.(1987)J;Immunol.,138:179参照)。
一般に、本ペプチドリガンドは、精製された形態で薬理学的に適切な担体とともに利用される。一般に、これらの担体としては、水性またはアルコール性/水溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられ、いずれも生理食塩水および/または緩衝媒体を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウムおよび乳酸リンゲル液が挙げられる。適した生理学的に許容されるアジュバントは、ポリペプチド複合体を懸濁液中に保持するために必要な場合、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギン酸塩などの増粘剤から選択されてよい。
静脈内ビヒクルには、流動体ならびに栄養補充剤および電解質補充剤、例えばリンゲルデキストロースに基づくものなどが含まれる。防腐剤およびその他の添加剤、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガスも存在してよい(Mack(1982)Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Edition)。
本発明のペプチドリガンドは、別々に投与される組成物として、またはその他の薬剤とともに使用されてよい。これらには、抗体、抗体フラグメントおよび様々な免疫療法薬、例えばシクロスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシンまたはシスプラチナム、および免疫毒素などが挙げられる。医薬組成物には、それらが投与前に貯蔵されていようといまいと、様々な細胞毒性剤またはその他の薬剤の「カクテル」が、本発明の選択された抗体、受容体またはその結合タンパク質とともに、またさらには異なる特異性を有する本発明に従う選択されたポリペプチドの組合せ、例えば異なる標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドなどとともに含まれてよい。
本発明に従う医薬組成物の投与経路は、一般に当業者に公知の経路のいずれであってもよい。治療(免疫療法を含むがこれに限定されるものではない)には、本発明の選択された抗体、受容体またはその結合タンパク質を、いずれの患者にも標準的な技法に従って投与することができる。投与は、任意の適切な様式によるものであってよく、それには非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、肺経路を介して、または、適切にカテーテルでの直接注入も挙げられる。投薬量および投与頻度は、患者の年齢、性別および状態、その他の薬物の同時投与、対抗兆候(counterindications)ならびに臨床医が考慮に入れるべきその他のパラメータによって決まることになる。
本発明のペプチドリガンドは、貯蔵用に凍結乾燥し、使用前に適した担体で再構成することができる。この技法は、これまでに有効であることが示され、当分野で公知の凍結乾燥および再構成技法を用いることができる。当然ながら、凍結乾燥および再構成が、様々な程度の活性消失をもたらし得ること、ならびにそれを補うために使用レベルを上方に調節する必要があり得ることは、当業者に理解される。
本ペプチドリガンドまたはそのカクテルを含有する組成物は、予防および/または治療上の処置のために投与することができる。特定の治療用途において、選択された細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅、またはその他のいくつかの測定可能なパラメータを達成するために適切な量は、「治療上有効量」と定義される。この投薬量を実現するために必要な量は、疾患の重篤度および患者自身の免疫系の一般的状態によって決まることになるが、一般に体重1キログラム当たり0.005〜5.0mgの選択されたペプチドリガンドの範囲であり、0.05〜2.0mg/kg/用量の用量がより一般的に使用されている。予防用途には、本ペプチドリガンドまたはそのカクテルを含有する組成物は、同様かまたはわずかに少ない投薬量で同じく投与されてよい。
本発明に従うペプチドリガンドを含有する組成物は、哺乳動物における選択標的細胞集団の変更、不活性化、死滅または除去に役立つ予防設定および治療設定に利用することができる。その上、本明細書に記載されるポリペプチドの選択されたレパートリを、体外でまたはインビトロで選択的に用いて、細胞の不均一コレクションから標的細胞集団を死滅、枯渇またあるいは効果的に除去することができる。哺乳動物から得た血液を体外で選択されたペプチドリガンドと組み合わせて、それにより不要な細胞を死滅させるか、またあるいは標準的な技法に従って哺乳動物に戻すために血液から除去することができる。
実施例1.MDM2に対するプロテアーゼ耐性三環系ペプチド
MDM2は、腫瘍抑制因子であるp53のトランス活性化ドメインを認識する酵素(E3ユビキチンリガーゼ)であり、プロテオソームによるP53のユビキチン化および分解を導く。p53−MDM2相互作用のヌトリン阻害剤は、p53経路のインビボ活性化を導くことができ、そのような薬剤が抗癌剤としての可能性を有し得ることが示唆されてきた。本発明者らは標的「抗原」であるMDM2に対する2種類の二環式ペプチド(PEP10およびPEP48)の選択をここに記載する。各々の合成ペプチドの親和性はマイクロモル以下で、250〜750nMの範囲内であった。競合ELISAにより、これらのペプチドの少なくとも一つが、p53−MDM2相互作用を阻止することが既に示されている線状ペプチドと同じ部位に結合することが示された。
プロトコールは、特に断りのない限り、一般に以前にHeinis et al.,2009,Nature Chemical Biology 5,502−507に記載されるものに従った。Heinis et al.の研究ではカリクレインとカテプシンGという標的の両方がプロテアーゼであった。カリクレイン阻害剤はカリクレインによるタンパク質分解に相当に耐性であるが、それにはカリクレイン切断部位が含まれる。MDM2はプロテアーゼではない。そのため、選択されたペプチドもプロテアーゼに耐性であるかどうかは明白ではなかった。このために、およびその他の理由のために(詳細については下記参照)、本発明者らは、1以上のプロテアーゼ(キモトリプシン)ステップをファージペプチドレパートリとTBMBとの(酸化または還元条件下での)反応の後、かつMDM2に対するレパートリの選択の前に含めた。これらの2種類の選択されたファージペプチドPEP10およびPEP48は、ファージELISAで示されるように、タンパク質分解に耐性であると思われる。
ファージ産生および精製
少なくとも4×109クローンの多様性をもつファージペプチドライブラリを調製し、TBMBを以前に記載されるように、少しの変更とともにコンジュゲートした。
1.以前に記載したファージのcx6ライブラリ(TG1細胞から調製)を用いて非サプレッサー株HB2151(Carter,Bedouelle & Winter.1985.Nucleic Acids Res.13:4431−43)を感染させ、感染細胞を播種した。約8ml 2xTY培地中、30ug/mlクロラムフェニコール、10%グリセロール(v/v)の中に細菌をプレートからこすり落とした。
2.約0.8mlの原液を、30ug/mlクロラムフェニコールを含む800ml 2xTY培地に添加して、600nmで約0.1のODを得た。培養物を30℃にてインキュベートし、2リットルのフラスコ中で200rpmにて16時間振盪した。
3.細胞培養を、4,000rpm(ヘレウス社製Megafuge 2R)で4℃にて30分間遠心した。上清を200ml冷20%PEG、2.5M NaCLに移した。この混合物を氷上に1時間放置した。
4.沈殿した上清/ファージ混合物を、4℃にて30分間遠心沈殿し、上清を捨てた。
5.ファージを、35ml PBS、5mM EDTAに再懸濁し、それに続いて4000rpm(ヘレウス社製Megafuge 2R)で15分間回転させて細胞残屑を除去した。上清を新しい50mlファルコンチューブに移した。
TBMBによるファージの修飾
1.5mlの8mM TCEP(H2O中)を、ファージに添加して、終濃度1mMのTCEPを得た。チューブを数回反転させて混合し、42℃の水浴中で1時間インキュベートした。
2.TCEPを、2回目のPEG沈殿により除去した。10mlの20%PEG、2.5M NaCL(脱気溶液)を添加し、混合し、氷上で45分間インキュベートして、4℃、4000rpmで30分間回転させた。
3.上清を注意深く取り出し、12ml PBS、5mM EDTA、10uM TCEP(脱気緩衝液)にペレットを再懸濁した。
4.3mlの、アセトニトリル中50uM TBMBを、12mlの還元したファージに添加して、10uMのTBMB終濃度を得た。チューブを数回反転させ、水浴中30℃にて1時間放置した。ファージを氷上で冷却し、1/5量の20%PEG、2.5M NaCLで30分間沈殿させた。4000rpm(ヘレウス社製Megafuge 2R)にて20分間回転させることによりファージを回収した。上清を取り出し、ファージを4mlのPBSに再懸濁させた。ファージを2mlのエッペンドルフチューブに移し、13000rpm(エッペンドルフ社製卓上遠心機)で10分間回転させた。上清を新しいエッペンドルフチューブに移し、ファージの感染性を測定した。
ファージ選択:一般的なプロトコール
1回目の選択
1.上記のように精製し化学的にコンジュゲートさせたファージを、ストレプトアビジンでコートしたダイナビーズ(ダイナル・バイオテク社)の表面上に固定化されたビオチン化MDM2(bio−MDM2)ペプチド(res2−125)に対して選択した。80ulのビーズをまず洗浄し、PBS中2%(w/v)のマーベル社製粉乳(PBSM)で40分間ブロッキングし、それに続いて総量1mlで100nM bio−MDM2とともに20分間インキュベートした。
2.化学的に修飾したファージ(1010〜1011TU)を、PBSMとともに40分間インキュベートした。
3.ステップ1のブロックされたAgコートビーズを、PBS中0.1%Tween(PBST)で過剰なAgから洗浄し、総量1mlでブロックされたファージとともに30分間インキュベートした。
4.非結合ファージを、PBSTで10回、その後PBSで2回洗浄した。各々の3度目の洗浄ステップの後、ファージコートビーズを新しいエッペンドルフチューブに移した。
5.回転ホイール上で、500ulの50mMグリシン、pH2.2とともに10分間インキュベートすることにより、ファージを溶離した。溶離したファージを、250ulの1Mトリス、pH7.5で中和した。
6.375ulのファージを、10mlのHB2151細胞とともに、振盪せずに、37℃にて90分間インキュベートした。
7.次に、感染細胞を37℃にて30分間振盪した後、クロラムフェニコールプレート(20×20cm)に播種した。
8.上記のように、コロニーをプレートから2xTY、クロラムフェニコール、10%グリセロールの中にこすり落とし、グリセロール原液として−80℃にて貯蔵した。細胞の一部分を用いて2回目の選択のためのファージを調製した。
2回目の選択
2回目の選択は、少しの変更を除いて1回目の選択に類似した。
1.ニュートラアビジンでコートした磁性ビーズを、ストレプトアビジンでコートしたものの代わりに使用した。
2.選択で使用した抗原の量は20nMであった。
3.化学的に修飾されたファージ(1010−5×1010TU)を最初に50ug/mlのキモトリプシンで2分間処理した後、PBSMで40分間ブロッキングした。
4.非結合ファージを、PBSTで15回、その後PBSで2回、そのほかの点では上記の通り洗浄した。
ファージ選択:変異プロトコール
上記のような一般的なプロトコールを用いてクローン48を選択し、一方クローン10を、導入されている修飾プロトコールの結果として開発した。これらの修飾は、以下である:
1.1回目では、化学的に修飾されたファージを50ug/mlのキモトリプシンで2分間前処理した後、PBSMで40分間ブロッキングした。
2.2回目では、化学的に修飾されたファージを最初に5mM DTTで20分間還元した後、50ug/mlのキモトリプシンで2分間インキュベートし、PBSMで40分間ブロッキングした。
ペプチド合成
ファージクローン48およびファージクローン10由来のコードペプチドを、遊離N末端およびC末端を用いて合成した。PEP10:H−Ser−Cys−Glu−Leu−Trp−Asn−Pro−Lys−Cys−Arg−Leu−Ser−Pro−Phe−Glu−Cys−Lys−Gly−OH;PEP48:H−Ser−Cys−Val−Arg−Phe−Gly−Trp−Thr−Cys−Asp−Asn−Ser−Trp−His−Gly−Cys−Lys−Gly−OH。
これらの合成は、DMF中PyBopおよびNMP中DIPEA(それぞれ1当量および2当量)で活性化した5倍過剰のFmoc−アミノ酸を用いて、0.1ミリモルFmoc−Gly−PEG PS樹脂でCEM社製Libertyマイクロ波ペプチド合成装置でのFmoc−ペプチド合成により実施された。側鎖保護基は、次の通りであった:Arg(Pbf);Asn(Trt);Asp(OtBu);Cys(Trt);Glu(OtBu);Lys(Boc);Ser(tBu);Thr(tBu);Trp(Boc)。Fmoc−脱保護は、0.1M HOBtを含有する20% v/v ピペリジン/DMFを用いて実施された。H−ペプチジル−樹脂を、DMFで、次いでプロパン−2−オールで洗浄し、真空乾燥させた。側鎖保護基および支持体からの切断は、94:2.5:2.5:1 v/v/v/v TFA/EDT/H2O/iPr3SiHを2時間用いて達成した。ペプチド/TFA混合物を濾過して支持体を除去し、ペプチド/TFA混合物を水で希釈し、Et20(5回)で洗浄し、水層を凍結乾燥させた。
逆相HPLCを、フェノメネックス社製ジュピター5μ C18 300Å 250×4.6mmカラムで実施した。バッファーA:0.1%TFA/H2O;バッファーB:10%バッファーAを含有するCH3CN。カラムを10%バッファーBと均一濃度で2分間溶離し、次いで10〜90%の直線勾配で25分にわたって溶離した。検出は215/230nmで;流速は1.5ml/分であった。
ペプチドを凍結乾燥し、質量分析によって確認した。PEP10 MALDI−TOF mass(M+H):2099.9Da(理論値:2098.4Da)。PEP48 MALDI−TOF Mass(M+H):2043.8Da(理論値:2042.8Da)。次に、ペプチドをTBMBでコンジュゲートした。実施例2に記載される通り、ペプチドをTBMBでコンジュゲートした。
結合アッセイ
ファージELISAアッセイ
0.6μg/mLのビオチン化MDM2ペプチド(res2〜125)を、ストレプトアビジンコートプレート(ロシュ社)上に固定化した。プレートをPBSM(但し粉乳中4%)でブロッキングし、直鎖状またはTBMBコンジュゲートファージ(5mM DTTの存在下または不在下、PBSM中107TU/ウェル)を、プレート上で室温にて50分間インキュベートした。同様に、ファージを最初に5mM DTT中で20分間還元し、キモトリプシン(PBS中50ug/ml)で2分間処理し、PBSM(終濃度)と混合し、プレート上で50分間室温にてインキュベートした。抗−M13−HRPモノクローナル抗体(1:5000、アマシャム社)を用いてファージを検出した。
結果(図1)は、ファージクローン10とクローン48の両方が環状抱合体としてMDM2に結合するが、非コンジュゲートペプチド(DTTでの前処理の有無に関わらず)としては結合しないことを定性的に示した。さらに、コンジュゲートペプチドの結合は、タンパク質分解に耐性である。DTTが、キモトリプシンのジスルフィド結合を還元し、プロテアーゼとしてその不活性化を導くことができることに留意されたい。キモトリプシンがアッセイ条件下で活性であったことを裏付けるため、本発明者らは、上記のようにDTTでの前処理の後にMDM2に結合する線状ペプチドを有する対照ファージをインキュベートした。本発明者らの実験条件下で、対照ファージの結合活性は、タンパク質分解で失われた。その他の実験では、本発明者らは、PBS中室温にて2分間、キモトリプシン(0.1mg/ml〜1mg/ml)の存在下、0.2mM〜5mMまでのTCEPを使用した。これらの条件も、本発明者らがファージ上の線状ペプチドと環状ペプチドを区別することを許容した。
蛍光異方性測定
滴定実験は、実験室のソフトウェアにより制御されたハミルトン社製Microlab滴定装置を備えたホリバ・ジョバンイボン社製蛍光光度計で実施した。用いたλexおよびλemは、それぞれ295nmおよび350nmであった。励起および発光のスリット幅は、5nmおよび15nmであり、10秒の積分時間を各々の測定に用いた。ペプチド10、48中のトリプトファンの内部蛍光を用いて、MDM2(res2〜125)に対するそれらの結合親和性を測定した。実験は23℃にてPBS中、5mM DTTで実施した。通常は250ulのMDM2(150uM)を、1.2mlのペプチド(1uM)に滴定した。滴定データを、平衡Kd=[A][B]/[AB]に対する二次方程式の解(quadratic solution)を用いて標準的な1:1結合モデルで分析した。Kdは、解離速度であり、[A]および[B]は、それぞれ、滴定剤(MDM2)および蛍光ペプチド10および48の濃度をさす。フィッティング方程式には、線形ドリフト(linear drift)を説明するために余分の項目を含めた。
これらの結果(図2および下記)は、各々のペプチドの親和性がマイクロモル以下であり、250〜750nMの範囲内であることを示す。PEP48の測定を繰り返した。
PEP10+MDM2、測定値λex=295nm、Kd=267nM;
PEP48+MDM2、測定値λex=280nm、Kd=760nM;
PEP48+MDM2、測定値λex=295nm、Kd=567nM
競合アッセイ
PEP48ファージとMDM2の結合は、MDM2にp53部位でKd=3.3nMで結合するペプチドpMI(TSFAEYWNLLSP)に競合された(Pazgier et.al.,2009 PNAS,106,4665−4670)。0.6μg/mlのビオチン化MDM2ペプチド(res2〜125)を、ストレプトアビジンコートプレート(ロシュ社)上に固定化した。プレートをPBSMでブロッキングした。TBMB−コンジュゲートファージ(1%PBSM中107TU/ウェル)を、一連の濃度のpDI(6.94nM〜1uM)と前もって混合し、プレート上で75分間室温にてインキュベートした。抗M13−HRPモノクローナル抗体(1:5000、アマシャム社)を用いてファージを検出した。PEP48ファージとMDM2の結合は、pMIペプチドの添加により抑制され、IC50=125nMと推定された。
実施例2.2以上の標的と結合する環状ペプチド
Heinis et al.,(2009)の研究は、カリクレイン(PK15)に対する二環式ペプチド(PK15)の単離を実証する。PK15は、二段階法により作製された。第1の二環式レパートリを両方のループの多様性を含めて作成した。カリクレインでの反復選択の後、PK2がその代表である、一連のコンセンサス配列が第1のループに出現した。次に、第1のループにPK2配列を保持しながら第2のレパートリを作製し、第2のループを多様化させた。カリクレインでの反復選択の後、一連のコンセンサス配列が第2のループに出現した。この二段階法は、結合親和性の向上をもたらした。
PK2の第1のループにおけるコンセンサス配列の出現は、このループが結合に重要な貢献をしていることを示唆する。第2のループもPK2において結合に重要な貢献をしている可能性は排除されない。実際にPK15における第2のループのコンセンサス配列の出現は、第2のループが本当にPK15において重要な貢献をしていることを示唆する。
それでもやはり、本発明者らは、異なる特異性の二環式ペプチドからの個々のループを合わせることにより、2つの標的に対する結合特異性をもつ二環式ペプチドを構築することが可能であるかどうか疑問に思った。本発明者らは、各々の標的に対する結合親和性の重大な喪失を見ることを予測したが、本発明者らは、さらなる変異誘発が改良された結合親和性をもつ変異体をもたらすはずであると考えた。
従って、本発明者らはまず、TBMBコア上のPK15の第1のループのいくつかの変異体を、Heinis et al.,(2009)により以前に記載された方法で、または、本発明者らがTBMBとファージのコンジュゲーションに用いる反応条件を模倣しようと試みた、下に記載される方法により、合成した。三環系には、二環式ペプチドのNおよびC末端を連結するためのさらなる化学ステップを必要とした。二環式ペプチドを、HPLCにより精製し、質量分析により確認し、凍結乾燥により乾燥させた。各々の変異ペプチドのカリクレイン活性の阻害に関するIC50を表に要約する。
PK15の第1のループは、各々の変異体において下線が引かれ、カテプシンGに対して向けられるCG4ペプチドの第1のループ(二重線の下線)か(Heinis et al,1990)、またはMDM2に対して向けられるPEP48の第1のループ(破線の下線)と組み合わされた(WO2009/098450号参照)。
これらの結果から、PK15の第1のループは、第2の標的に対して向けられる二環式(または三環式)ペプチドからのループと合わせると、カリクレイン活性を阻害することが可能であることが示される。しかし阻害活性はその同族のループと組み合わせた場合よりもはるかに低く、非同族ループの配列および/または順序に従って変動する。
また、本発明者らは、PK15と合わせた、PEP48の第1のループの結合についての結果を得た(図3)。従って、PK15L1−PEP48L1二環式ペプチドは、全PEP48L1−PEP48L2二環式ペプチドの親和性(実施例1、Kd=500〜800nM)よりもたったの2倍または3倍低い、MDM2に対する結合親和性(Kd=1.55uM)を有する。さらに、後に実施例3で示されるように、FmocPEP48L1−PK15L1ペプチドは、1uMより小さい結合親和性を有すると推定される。これは、異なる標的特異性の2種類の二環式ペプチドからのループを結合することが可能であり、それにより2つの標的特異性をもつ二環式ペプチドを作成することが可能であることを実証する。
これらの二環式ペプチドの結合親和性を改善することは、例えば(a)ペプチドをコードする変異DNAカセットを「スパイクされた」オリゴヌクレオチドと合成すること、(b)前記変異ペプチドレパートリをファージ上に提示すること、および(c)前記ファージレパートリを徐々にストリンジェントになる条件下で(例えば、より低い濃度の抗原、または標的に結合したファージのより広範囲の洗浄を用いる)選択回に付すことにより、可能である。さらに、レパートリを各々の標的に対して順番に選択することにより(ファージの収量によって、細菌増殖の回を間に入れても入れなくてもよい)、淘汰圧を確実に両方の標的で維持することが可能であるはずである。二重特異性ファージを作製するためのその他の戦略のさらなる考察は、実施例4に記載される。
TBMB−ペプチド抱合体の合成
最初の反応を実施して、ファージ選択の間に用いた条件を模倣した。一般に、5mgの精製ペプチドを水1mlに溶解させ、0.8ml 50mM NH3HCO3を添加し、それに続いて40μlのTCEPを添加した。MeCNに溶解したTBMB(ペプチドの重量に基づいて3当量)を、この反応に加えた。反応を1.5時間放置した後、HPLCでモニターした。完了すると、反応物をHPLCにより精製した。一般に、0.5〜1.5mgの最終生成物が得られた。この方法は、多くの副生成物を生じ、主な生成物は所望の質量+250amuである。これは、TCEPの目的生成物への添加に相当し、この生成物の収量は反応時間とともに増加する。加えて、2回目のTBMBの添加に相当する、その他の質量のより高い生成物が、MALDI−TOF質量分析で観察されたが、単離されなかった。
TCEP付加物の形成に基づいて、好ましい方法が開発された。ペプチドを樹脂から切断した後、ペプチドをHPLCにより直接精製するか、またはHPLC精製の前にTCEPで15分間前処理した。HPLC溶出バッファー(一般に6ml)中の、HPLC反応からの生成物を、50mM NH3HCO3(4ml)で中和し、上記のようにMeCN中のTBMBを添加する。10%THFを添加した結果、透明な溶液が得られ、その結果反応が促進される。反応は質量分析によりモニターされるが、一般に1〜2時間で完了する。この反応からの副生成物は(生成物+16の存在が質量分析により観察されるが)最小限である。この反応は、HPLC精製の前に有機溶媒を除去するための濃度を必要とし、そうでなければ生成物は溶媒先端とともに溶離する傾向がある。この方法から得られる生成物の収量は、一般に、3mgのペプチドから0.5〜1.5mgであるが、これは最適化されていない。
三環系ペプチドの合成
三環系ペプチドCG4L1−PK15L1−PK15−L2を、次のように合成した:約1mgの二環式X−CG4L1−PK15L1−Y(ここで、XおよびYは、PK15L2の部分を表す)を、2mlの20mM NH3HCO3に溶解し、EDC(水100μl中0.8mg、10当量)で処理し、マイクロ波合成装置において50Wにて0℃から始めて37℃まで加熱した。反応の進行を15分および30分にモニターした、その時は環化した生成物が主な生成物であったが、もう一つの水分損失も観察された。反応物をHPLC(セミ分取)により精製して三環系抱合体を単一ピークとして得た、収量0.5mg。
カリクレインアッセイ
酵素はシグマ・アルドリッチ社より、基質はバッケムAG社より購入した。アッセイ緩衝液は、10mMトリスpH7.4、150mM NaCl、10mM MgCl2、1mM CaCl2、0.1%BSA、0.01%トリトンX100および5%DMSOからなる。基質の添加の前に、酵素を阻害剤とともに室温にて30分間インキュベートする。全ての実験は30℃で90分間記録した。
アッセイは、exc/em 350/450nmの波長でBMG Pherastarプレートリーダーで実施した。カリクレインを、1080μg/mLの溶液として購入し、希釈してアッセイ緩衝液中0.3nMの作業濃度とした。基質Z−Phe−Arg−amcをDMSO中10mMの原液濃度で可溶化し、アッセイ緩衝液で300μMの作業濃度に希釈した。阻害剤をアッセイ緩衝液中で60μMの原液濃度に対して可溶化した。ウェルあたり150μLの最終容積のために、各々の試薬50μLをウェルに導入する。アッセイでのカリクレインの終濃度は0.1nMであり、基質は100μMである。
阻害剤の終濃度は:0.5nM、1nM、2nM、5nM、8nM、10nM、20nM、50nM、80nM、100nM、200nM、500nM、800nM、1μM、2μM、5μM、8μM、10μMおよび20μMであった。反応の初期速度は、蛍光=f(時間)データをプロットし、各々の濃度の阻害剤に直線的な趨勢線を当てはめることにより得られる。阻害曲線は、初期速度=f([l])をプロットすることにより得られ、IC50値を求めることができる。
実施例3.同じペプチド内に3つの官能基を与えるための二環式ペプチドへの血清アルブミン結合機能の付加
本発明のリガンドには、1以上の官能基との抱合体が含まれ得る。官能基は、直接ペプチドに、または足場に連結されてよい。官能基は、天然ペプチド、または化学基または両方を含み得る。本発明者らはここに、血清アルブミンに結合をもたらし、それによりリガンドの血清中半減期を延長するために、本発明のリガンドに連結することのできる官能基を記載する。
血清アルブミンのX線結晶構造は、ワルファリンとの複合体において解析された(Petitpas et.(2001)J.Biol.Chem.276,22804−22809)。ワルファリンは、構造の深部の疎水性ポケットに位置する。本発明者らは、同様の構造のその他の化学物質はペプチドとの結合をもたらすのかどうか疑問に思った。本発明者らは、ペプチド合成の間にアミノ基を保護するために使用されるフルオレニルオキシカルボニル基(Fmoc)が適しているのではないかと注目し;同様にペプチドを蛍光標識するために使用されるメトキシ−クマリン(Mca)が適しているのではないかと注目した。
従って本発明者らは、リジンおよびFmocおよび/またはMcaを含む単純なペプチド抱合体を作成し、血清アルブミンとの結合においてこれらを試験した。下の実験は、Fmocは血清アルブミンと結合するが、Mcaは結合しないこと;さらに、Fmoc−TrpまたはFmoc−Pheが結合親和性の増大をもたらすことを示す。本発明者らは、フルオレン環を含むその他の抱合体も血清アルブミンに結合すると予想する(例えば、加水分解に対してより安定していると予想されるフルオレン酢酸)。
本発明者らはまた、モデル二環式ペプチドとのFmoc−Trpの使用を示す。従ってN末端Fmoc−Trpおよびグリシンスペーサーが、二環式ペプチドに付加された(PEP48L1−PK15L1)。この二環式ペプチドは、2つの異なる特異性の二環式ペプチドからのループを含む。第1のループは、実施例1に記載されるように、MDM2に結合する二環式ペプチドであるPEP48からの第1のループ(L1)であった。第2のループは、以前に記載されているように(Heinis et al.,2009)、カリクレインを阻害する二環式ペプチドであるPK15からの第1のループ(L1)であった。蛍光滴定は、二環式ペプチドが、約60nMの親和性で血清アルブミンと結合する能力があり、血清中の半減期延長に適した範囲内に十分あることを示す(Nguyen et al.(2006)PEDS19,291−297)。
この二環式ペプチドの結合親和性を、MDM2に対しても測定した。予備データは、このペプチドが1uMより小さい親和性でMDM2に結合する能力があることを示した。さらなる予備実験(実施例2に記載)により、このペプチドによるカリクレインの抑制に関するIC50が約17マイクロモルであることが明らかとなった。従って、この二環式ペプチドは3つの機能;Fmocペプチドにより与えられる血清アルブミンとの結合、第1のペプチドループを介するMDM2との結合、および第2のペプチドループによるカリクレインとの結合、を有する。
この実施例において結合機能は、治療薬においてそれぞれ何らかの有用性を有するかもしれないが、発明者らは、同じ薬剤中のこれらの3つの機能を一緒に合わせることが特に有利であり得ると伝えることを意図するものではない。しかし、血流内(例えばカリクレインの抑制のため)、または細胞内(例えばp53−MDM2相互作用を阻止するため)で標的に送達される薬物に関して、血清中の半減期が延長されているのは有利であり得る。
Fmoc−アミノ酸とウシ血清アルブミンの結合
フルオロフォアの標的タンパク質に対する親和性定数(Kd)を決定するために、本発明者らは、蛍光異方性滴定を選択する。ここで、漸増量のウシ血清アルブミン(BSA)を蛍光ペプチドに滴定し、結合が起こると、BSAにより次第に複合体化したペプチドの典型的な飽和曲線(異方性の変化の関数として記録される(r))が観察される。結合平衡Kd=A*B/[AB]に対する二次方程式の解(quadratic solution)を用いて、Kdを決定することができる(Teufel et al,(2007)PNAS 104,7009−7014)。
・Fmoc−Lys−Mca
A324にて12900/M/cmの吸光係数を用いて、Fmoc−Lys−Mca(ノバ・バイオケム社より入手)でのフルオロフォアメトキシ−クマリン(またはMca、Lysの□−NH2に連結される)の濃度を推定することができ得る。A280は、BSAに対して0.667AU/mg/mLである。ホリバ・ジョバンイボン社製蛍光光度計(フランス、ロンジュモー市)を用いて、1.2mlのPBS(25mMリン酸カリウム、125mM NaCl、pH7.4)中500nMのFmoc−Lys−Mcaを、合計250μlの15μM BSA(PBS中)の40の漸増アリコートで滴定し、rの変化を漸増濃度のBSAの関数として記録した。励起はクマリンに特異的であり(328nm)、発光は393nmであった。積分時間は、通常少なくとも10秒に設定し、励起/発光スリット幅を、濃度およびフルオロフォアの量子収量に応じて調節した:ここではスリット幅は励起について2nm、発光について10nmであった。データを適合させた後、実験は、Fmoc−Lys−McaがBSAを340+/−40nMのKdで堅く結合することを示した(図4)。
・Lys−Mca
McaまたはFmocがBSAを結合する役割を果たすかどうか決定するために、Fmoc基をDMF中20%ピペリジンによって取り出した。この方法で処理したFmoc−Lys−Mcaを10倍量のエーテルに添加し、Lys−Mcaを沈殿させた。沈殿物を凍結乾燥し、再溶解し、アセトニトリル/H2O/0.1% TFAを溶媒として用いる分析C18逆カラムで精製した。純粋なLys−Mcaであることは、A299でのFmocの特性吸収ピークの不在、および質量スペクトル(MALDI TOF、Voyager、アプライドバイオシステムズ社を使用)でのFmoc−Lys−Mcaの質量の不在によって明白であった。上記と同じ蛍光光度計の設定を用いて、結合(すなわち、異方性の変化)をLys−Mcaについて観察することができなかった、これによりFmoc部分が結合事象を担っていることが示唆される(図4)。
・Mca−OH
Mca−OH(ノバ・バイオケム社)を試験して上記の知見を検証した。BSAによる滴定の間の異方性変化の欠如により証明されるように、Lys−Mcaとして、Mca−OHはBSAを結合しなかった(図4)。
・Fmoc−Gly−OH
Fmocの隣接基(ここではGly)がBSAとの結合に影響を及ぼすかどうかを決定するため、同様の実験をFmoc−Gly−OH(ノバ・バイオケム社)を用いて実行した。Fmocの固有の蛍光特性を異方性実験に使用した。Fmocは、2つの異なる吸収ピークを288nmと299nmで示した。Fmoc−Gly−OHの吸光係数(規定量のDMF中の規定量を秤量し、これをPBS中1000倍に希釈し、その吸収を288nmと299nmの両方で記録することにより決定される)は、A288およびA299でそれぞれ4800および5300/M/cmである。Fmoc−Gly−OHの最大蛍光は315nmであったので、蛍光異方性滴定実験を励起波長288および発光波長315で、スリット幅はそれぞれ5および7nmで実行した。キュベット中のFmoc−Gly−OHの濃度は依然0.5μM(1.2ml中)であり、合計250μlの62.7μM BSAをその中に滴定した。Kdは、420+/−40nMであり、Fmoc−Lys−Mcaとほぼ同じであった。
・Fmoc−Phe−OH
隣接する疎水性の嵩高な基が、BSA結合に増強効果または有害作用を有するかどうかを決定するため、Fmoc−Phe−OHを上記のように試験した。ここで決定された吸光係数はA288で4240/M/cmであった。結合がより強固であるので、フルオロフォア(Fmoc−Phe−OH)の濃度は、Kdのより正確な測定のために100nMまで下げなければならず、それは250μlの15.7μM BSAで滴定された。Kdは、約100nMであったので、Fmoc−Gly−OHよりも有意に強固であり、隣接する疎水基(フェニル環)がFmocとBSAの結合にプラスの効果を有することが示された(図4)。
Fmoc−Phe−OHとヒト血清アルブミン(HSA)の結合
Fmoc−Phe−OHは高い親和性でウシ血清アルブミンと結合するので、本発明者らは、ヒト相同体HSAについて同じことを観察することができるかどうか試験した。12.6μMの250μlHSA(36600/M/cmの吸光係数を使用、Moreno et al)を、200nMのFmoc−Phe−OHに滴定した。親和性は、BSA(Kdは約100nM)よりも有意に高く(Kdは約10nM)、結合はわずかに協同的であった(従ってヒルの方程式をデータフィッティングに使用した)(図5)。Kdを正確に測定することはできないが、フルオロフォア濃度はわずかにKdを上回るため、より正確なKd測定には、Fmocを化学修飾することによるか、またはより良好なフルオロフォアC末端をフェニルアラニンに付加する(同時にそれはHSA結合に干渉するべきでない)ことによる、より大きい量子収量をもつフルオロフォアが必要となる。
Fmoc−ペンタペプチドとウシ血清アルブミンの結合
Fmoc−5−mer誘導体の合成および精製:
ペプチドFmoc−GGSGD−NH2、Fmoc−FGGGD−NH2、Fmoc−FGSGD−NH2およびFmoc−WGSGD−NH2を、CEM マイクロ波ペプチド合成装置(NC、USA)で0.1ミリモルのスケールで、製造業者により提供される標準的なプロトコールを用いて合成した。用いた固相樹脂は、アプライドバイオシステムズ社製のPAL−PEG−PSであった。合成後の保護基の除去および樹脂切断を、樹脂を95%トリフルオロ酢酸(TFA)、2.5%トリイソプロピルシラン、および2.5% H2Oとともに3時間振盪することで達成した。全てのペプチドを、N末端のFmoc、およびC末端のアミド(NH2)でキャップした。切断後、ペプチドを凍結乾燥し、5mLのDMF中で可溶化した。100μlのこのペプチドを、Waters HPLCを用いる分析C18カラムに装入し、メタノールおよび水(両方とも0.1%TFAの存在下)を溶媒として用いた。Fmocペプチドは、80%を上回るメタノールで溶離し、不純物は含んでいなかった。
・Fmoc−GGSGD−NH2
ペプチド濃度を、Fmocに対するA299での5300/M/cmの吸光係数により推定した(上記参照)。キュベット中のペプチド濃度は200nMであった。これを、励起波長および発光波長にそれぞれ299nmおよび315nmを用い、13.1μMの250μlBSAで滴定した。BSAに対するこのペプチドの親和性は、1300+/−380nMであった、これは個別のFmoc−Gly−OHよりも弱い。これにより、追加のアミノ酸GSGDは、BSAを結合する際にマイナスの効果を有することが示される(図6)。
・Fmoc−FGSGD−NH2
本発明者らは、BSAを結合する際のFmocに隣接するフェニルアラニンの増強効果もペンタ−ペプチドFmoc−FGSGD−NH2において観察できるかどうか決定した。Fmoc−GGSGD−NH2に関する濃度および設定で、Kdは、160+/−20nMであった、従ってグリシン変異体よりも8倍強固であった。これは、Phe(Fmocに隣接)が、より長いペプチド配列という状況でも結合を増強することを裏付ける(図6)。
・Fmoc−FGGGD−NH2
中央がセリンでなくてグリシンの(比較のためにFmoc−GGSGD−NH2を参照)このペプチドは、余分なセリン側鎖の欠如がBSA結合に有意な効果を有するかどうかを確認するために作製した。滴定実験により、わずかに低い親和性(Kd=200+/−40nM)が明らかとなり、アミノ酸3(Fmoc基から数える)の異なる側鎖がBSAを結合する際に効果を有し得ることが示された(図6)。
・Fmoc−WGSGD−NH2
この実験を行って、Fmocに対するTrp(PheまたはGlyよりも)C末端がFmocのBSAとの結合にさらなる増強効果を有するかどうか確認した。ここで、0.4μMのペプチドを、13.1μMの250μL BSA(上記)とともに使用した。励起は299nm(Trp吸収を最小化するため)で、発光は320nmであった。スリット幅は、それぞれ5nmおよび12nmであった。親和性(Kd約60+/−8nM)は、Fmoc−FGSGD−NH2よりも3倍強く、より大きな疎水基がBSAを結合するために有益であることが示された。従って、調査した全ての配列から、Fmoc−Trp−GSGDがBSAを結合するのに最適である(図6)。
FMOC二環式ペプチドの血清アルブミンおよびその他の2つの標的との結合
ペプチド合成および精製
ペプチドを、前述同様にCEMマイクロ波合成装置を用いて合成した。配列は、Fmoc−WGGGACVRFGWTCSDRFRNCG−NH2であった。全てのCysおよびArgを室温にて30分間カップリングし、最後の5残基(WGGGA)をカップリングステップの後にキャップした。凍結乾燥後、ペプチドを80/20のDMF/H2Oに溶解し、遠心した。5mLの上清を、同じWatersシステムのC18分取カラムに装入した。溶媒は、アセトニトリル/H2O/0.1%TFAであり、90%を上回る純粋なペプチドの溶出は約50%アセトニトリルで起こった。収量は36mlの約300μMペプチドであった(図7A、B)。
TBMBによる誘導体化
上記で得たHPLC画分に含まれるペプチドを直接TBMBと反応させた。まず、Fmocを発色団(300μM)として用いてA299で濃度を推定した。これの10mlに対して、0.4mlのH2O中1M重炭酸アンモニウムを添加して40mMの終濃度を得た。これは溶液中に存在するTFAを中和するのに十分であり、TBMBとペプチドとの間の反応の結果として生じる新生HBrのスカベンジャーとして作用するために十分に過剰(32mM)である。これに、40μlのアセトニトリル中100mM TBMBを添加して400μMのTBMBという終濃度を得た。この反応の後に質量分析が続き、それは3分後に完了し、残っている出発物質はなく、主な副生成物も生じなかった(図7D)。次にTBMB結合ペプチドを、上記のようにHPLCにより精製し、その際、反応混合物を直接C18分取カラムに装入した(図7E)。収量:13mlの92μMの二環式Fmoc−WGGGA−PEP48L1−PK15−L1。
二環式Fmoc−WGGGA−PEP48L1−PK15L1のBSAに対する活性
二環式ペプチドはあまり水に可溶性でなかったので、それをまずDMFに可溶化し、次にPBSに希釈した。実験には、合計250μLの13.5μM BSAを漸増アリコートで1.2mLの500nMペプチドに滴定した。ペプチド濃度は、4700/M/cmの吸光係数を用いて299nmでの吸光度により推定した。励起は299nmであり、発光は320nmに設定し、それぞれ5nmおよび12nmのスリット幅であった。データは、標準的なリガンド結合方程式の一つに適合することができ(r=F*[c]/(Kd+[c])+offset、式中、rは異方性の観察値であり、Fは倍率であり、[c]は、滴定剤(ここではBSA)の濃度である)、解離定数Kdは、62+/−14nMであった。従って、Fmoc−Trp−GGG部分は、二環式ペプチドPEP48L1−PK15−L1と連結された場合に、BSAを結合する際に完全に機能性である(図8)。
二環式Fmoc−WGGGA−PEP48L1−PK15L1のMdm2に対する活性
Mdm2は、完全なPEP48ペプチドを良好な親和性で結合する。本発明者らは、Mdm2結合がFmoc−Trp−リンカー−二環式誘導体の中でなお機能性であるかどうかをここに決定した。250μLの18.8μM Mdm2(Teufel et al,PNAS 2007に記載されるように発現および精製されたもの)を、1.2mlの500nMペプチドに滴定した。強い結合事象が生じた(Kd<1μM)が、Kdがこの実験で用いたペプチドの濃度よりもはるかに低すぎたため、データを適合することができなかった(図9)。より低い濃度のペプチドは、技術的な限界のために使用することができなかった。Mdm2に対するこのペプチドの解離定数の正確な決定は、Fmocよりも優れたフルオロフォア(上記参照)、または等温滴定熱量測定法(ITC)などの異なる方法論を必要とする。
実施例4.レパートリのシャッフリングによる二重特異性二環式ペプチドの作製
実施例2では、2つの異なる標的に対して向けられる個々の二環式ペプチドからのループの組合せが、二重特異性をもつ二環式ペプチドを導くことができることが示される。しかし、予測できない結合親和性の損失がある。一般的な代替法は、個々のループではなくループのレパートリを合わせることであり、これを実行することのできる方法は多数ある。
第1のアプローチは、ペプチドの3つのシステインと3つの共有結合を形成することのできるトリスブロモメチルベンゼンなどの足場を用いて、(両方のループに多様性をもつ)二環式ペプチドのレパートリを作製することである。次に、このレパートリを、少なくとも1回、または選択されたクローンの配列決定により第1の(または第2の)ループにおけるコンセンサス配列の痕跡が明らかとなるまで、標的Aに対して選択することができる。次に、第1の(または第2の)ループレパートリを、同様の未処理の第2の(または第1の)ループレパートリと必要に応じて共通のシステインで結合させることができ、結合した三価の足場上の2つのループのレパートリは、少なくとも1回、標的Bに対して選択することができる。合わせたレパートリのその後の選択を2つの標的間で交互に行うことにより、二重特異性をもつ二環式ペプチドを導くことが可能である。
第2のアプローチは、上記のように二環式ペプチドのレパートリを作製し、次いでそれを標的Aに対して選択し、同様のレパートリを別々に標的Bに対して選択する(いずれの場合も少なくとも1回)ことである。標的Aの第1の(または第2の)ループレパートリは、次に標的Bの第2の(または第1の)ループレパートリと必要に応じて共通のシステインで結合させて、三価の足場上の2つのループの合わせたレパートリを得る。合わせたレパートリの選択を2つの標的で交互に行うことにより、二重特異性をもつ二環式ペプチドを導くことが可能である。
第3のアプローチは、ペプチドの2つのシステインと2つの共有結合を形成することのできるビスブロモメチルベンゼンなどの足場を用いて、(ループに多様性を有する)単環式ペプチドのレパートリを作製し、次に、それを標的Aに対して、そして同様のライブラリを別々に標的Bに対して、いずれの場合も少なくとも1回、選択することである。次に、標的Aのループレパートリを標的Bのループレパートリとシステインで結合させて、次にトリスブロモメチルベンゼンなどの三価の足場にコンジュゲートすることができる。合わせた2つのループレパートリの選択を2つの標的間で交互に行うことにより、同様に二重特異性をもつ二環式ペプチドを導くことが可能である。この戦略の変形は、ループの基部でシステイン間の対形成を可能にすることにより、単環式ペプチドレパートリを作製することである。(この場合、ファージは単に培養から回収され、ジスルフィドは空気酸化により自然に形成される)。
3つの全ての可能性において、二環式ペプチドの結合親和性は、各々の標的に対して最適とならない可能性がある。これらは、スパイクされたオリゴヌクレオチドでペプチドをコードするDNAを合成することにより改良することができ、それにより三価の足場との反応後にファージで変異二環式ペプチドのレパートリを作製することができる。レパートリは、よりストリンジェントな条件下(例えば、長い洗浄時間、またはより低い濃度の標的)を除いて、上記の両方の標的で選択することができる。
接続して外すことのできるループを含むペプチドレパートリを作製する能力は、適したベクターの設計を必要とする。これらは、制限部位に構築されてもよいし、または合成DNAプライマーによるPCR増幅に適したループに隣接するヌクレオチドのストレッチを保存してもよい。説明の目的で本発明者らは下に制限部位の使用を記載するが、本質的なモジュールの特徴はPCR戦略に類似する。
第1ライブラリ−単一ループ(標的A用)。単一ループを含む第1のペプチドライブラリは、一般式Nterm−C−X1−C−R1−Fusion−R2に従って、ベクター内の発現カセットのために設計されてよい。カセット内で、Ntermは、単一ループライブラリのN末端隣接配列を意味し、Cは、システイン残基を意味し、X1は、ランダム化アミノ酸残基の第1の配列を意味し、R1は、第2のシステイン残基に対する1以上のアミノ酸C末端を意味し、第1の制限部位を形成するDNA配列によりコードされ、Fusionは、ペプチドに融合したポリペプチドの少なくとも一部を意味し、最後にR2は、第2の制限部位を形成するDNAにコードされるアミノ酸を意味する。第2のシステイン残基は、R1とともに第1の制限部位を形成することができる。
第1ライブラリ−2ループ(標的A用)。2つのループを含む第1のペプチドライブラリは、一般式Nterm−C−X1−C−R1−X2−C−Fusion−R2に従って、ベクター内の発現カセットのために設計されてよい。カセット内の表記は上記の通りであるが、さらにX2は、ランダム化アミノ酸の第2の配列を意味する。
第2ライブラリ−単一ループ(標的B用)。単一ループを含む第2のペプチドライブラリは、一般式Nterm−C−R1−Y1−C−Fusion−R2に従って、ベクター内の発現カセットのために設計されてよい。カセット内の表記は上記の通りであるが、さらにY1は、ランダム化アミノ酸残基の第3の配列を意味する。
第2ライブラリ−2ループ(標的B用)。2つのループを含む第2のペプチドライブラリは、一般式Nterm−C−R1−Y1−C−R3−Y2−C−Fusion−R2に従って、ベクター内の発現カセットのために設計されてよく、この際、Y2は、ランダム化残基の第4の配列を意味する(その他の表記は上記の通り)。
これらの設計において、第1および第2の単一ループライブラリは、対応する2つのループライブラリから容易に導くことができることに留意されたい。例えば、2ループライブラリで、標的選択後に第2のループを、部位R1およびR2に特異的な制限酵素による消化により(カセットNterm−C−X1−C−R1−X2−C−Fusion−R2に関して)、または部位R3およびR2に特異的な制限酵素による消化後に(カセットNterm−C−R1−Y1−C−R3−Y2−C−Fusion−R2に関して)除去することができる。消化の後に、部分的カセットR1−Fusion−R2またはR3−Fusion−R1(適したプライマーを用いてPCRにより調製することができる)のDNAの連結による挿入が続き、設計Nterm−C−X1−C−R1−Fusion−R2またはNterm−C−R1−Y1−C−R3−Fusion−R2の単一ループライブラリが得られる。
これらのライブラリはまた、3つの制限部位での適した切り出しおよび貼り付けにより容易に再結合させることができる。第1のライブラリから選択された標的特異的(ファージ特異的)クローンのプールのためのベクターDNAを、ファージのプールを発現している細菌から調製する。少なくとも第2のライブラリの発現カセットを含むDNAも、例えば選択されたファージのプールからのDNAのPCR増幅により、調製する。第1のライブラリ由来のベクターDNAおよび少なくとも第2のライブラリの発現カセットを含むDNAを、R1およびR2をコードするDNAに特異的な制限酵素で消化させ、その後に連結し、発現のために細菌に形質転換する。これにより、第1の(標的Aで選択した)ライブラリのX1−loopに続いて第2の(標的Bで選択した)ライブラリのY1−loopを含むコンビナトリアルライブラリが得られる。得られるライブラリ中のクローンは、得られる発現カセットNterm−C−X1−C−R1−Y2−C−Fusion−R2またはNterm−C−X1−C−R1−Y2−C−R3−Fusion−R2(表記は上記の通り)を有することになる。
実施例5.二環式ペプチドのプロテアーゼ耐性
Heinis et al.,2009の二環式ペプチドPK15およびCG4を、それぞれプロテアーゼであるカリクレインおよびカテプシンGに対して選択した。二環式ペプチドがこれらのプロテアーゼによる消化に耐性であれば、それは驚くべきことではない、特に足場の制約された性質は、タンパク質分解作用に対する保護に役立つはずである。
本発明者らは、直鎖状PK15(ヨードアセトアミドで処理したシステイン)と、TBMB足場にコンジュゲートしたPK15、カリクレインと、その他のプロテアーゼとを比較した、下の表を参照されたい(スケールの範囲は、+++(実質的に無傷である)から−(完全に切断された)までである)。予測したようにTBMBを含むPK15抱合体は、カリクレインによる攻撃に対して直鎖状よりも耐性が高かった。異なる濃度の酵素を比較することによって示されるように、係数は約100倍であった。
その他のプロテアーゼに関して、係数は、プロテアーゼによって、10〜100倍の間の範囲であった。また、本発明者らは、二環式CG4L1−PK15L1(実施例2)のタンパク質分解に対する耐性を比較した。この場合、係数は、プロテアーゼに応じて1〜100倍以上の範囲であった。従って、抱合体は、選択プロセスの間に曝露されたプロテアーゼ(カリクレイン)以外のプロテアーゼに対して増大した耐性を有する。
プロテアーゼによる耐性の変化は、実施例1において既に記載されるように、タンパク質分解ステップを選択またはスクリーニングプロセスに含めることが望ましいことを示唆する。最も望ましいのは、二環式ペプチドを使用する条件下で、例えば血清の存在下で活性であるプロテアーゼを使用することである。興味から本発明者らはPK15の血清に対する耐性を調べた。これにより、直鎖状PK15が、約2時間以内に37℃の血清中でプロテアーゼにより消化されることが示された。しかし、PK15抱合体は、少なくとも48時間タンパク質分解に抵抗する;それ以降の時間はまだ試験していない。
方法
直鎖状ペプチド(PK15およびCG4L1−PK15L1)を、まず消化試験の前にヨードアセトアミドで処理した。これらのペプチド(約3〜4mg)を、HPLC(一般的な方法に記載されるようにセミ分取プロテオカラムカラム)により精製し、HPLC画分(約3ml)を等容積の50mM重炭酸アンモニウムで中和した。アセトニトリル(1ml)中のヨードアセトアミド(3mg、約9当量)を添加し、質量分析により反応の完了が示されるまで(一般に2〜3時間)反応物を室温で放置した。反応混合物を濃縮し(ロータリーエバポレーター)、上記のようにHPLCにより再精製した。
ペプチド(直鎖状および抱合体)を1mg/mlの濃度で水に溶解し、約0.5mM原液の有効濃度を得た。2μlのペプチド抱合体(実際の分子量に応じて反応物中約30μM)を、反応バッファー(下記参照)に溶解して総反応容積を30μlとし、その後にプロテアーゼが続き、サンプルを37℃にて1時間インキュベートした。10μlアリコートを20μlのMeCN/H2O(1:1)中10%ジクロロ酢酸の中でクエンチし、−20℃にて30分貯蔵し、4℃(13000rpm)にて5分間遠心した後、分析のためにMALDI−TOF質量分析計プレートにスポットした。
全ての反応は37℃で行った。カテプシンGおよびカリクレイン(kalikrein)の反応は、10mMトリスpH7.4、150mM NaCl、10mM MgCl2、1mM CaCl2、0.1%BSA、0.01%トリトンX100および5%DMSO中で実施した。キモトリプシン反応は、100mMトリスpH7.4、10mM CaCl2中で実施した。プロナーゼおよびプロテイナーゼKの反応は、100mMトリスpH7.4、0.5%SDS中で実施した。スブチリシンの反応は、50mM KH2PO4 pH7.5中で実施した。トリプシンの反応は、67mMリン酸ナトリウムpH7.6中で実施した。血清を含む反応条件は、ペプチドを1×PBS(総容積24μl)に溶解することおよび6μlのヒト血清をこの反応に添加することを伴う。
実施例6:二環式ペプチド−Fc断片抱合体
二環式ペプチドを抗体のFcフラグメントに化学的にコンジュゲートして、その循環半減期を延長させた。抗体のFcドメインは、IgG再循環を媒介する新生児Fc受容体(FcRn)に結合する、そのためにタンパク質およびその抱合体を長期間(一般に数日)循環中に保持する。FcRnとの結合はまた、内皮および上皮性関門を横断する経細胞輸送を媒介し、IgGおよびFcおよびそれらの抱合体のエアゾール送達を許容する。
マレイミド官能化二環式ペプチドPK15の調製
二環式ペプチドPK15(TBMBとコンジュゲートしたNH2−ACSDRFRNCPADEALCG−NH2)のN末端を、アミン反応性およびスルフヒドリル反応性リンカー(N−e−マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミドエステル)(EMCS)で修飾した。DMSOに溶解させた50mLのリンカー(2mM)を、50mMトリスpH8、100mM NaCl中950mLのPK15(50mM)に添加し、混合し、25℃にて1時間インキュベートした。反応生成物をクロマトグラフによって精製した。
Fcフラグメントの調製
Fcγ1断片を、ヒト正常IgG1からタンパク質をパパインで消化し、鎖間ジスルフィド架橋を選択的還元することによるか(Stevenson,GT.et al.,Journal of Immunology,1997)、または哺乳動物細胞におけるFcフラグメントの組換え発現から調製した。後者の場合は、セレノシステインを組み込んで二環式ペプチドを化学反応において選択的に結合することのできるハンドルを得た(Hofer,T.,et al.,PNAS,2008)。
Fcフラグメントの酵素による調製のため、20mg/ml IgGを、0.5mM 2−メルカプトエタノールの存在下、パパイン(0.5mg/ml)とともに37℃およびpH6.7にて20分間インキュベートした。これらの条件下で、大部分のIgGが切断され、分子内ジスルフィド結合の還元は検出されなかった。FcフラグメントをFabおよび未消化のIgGから分離した。この断片の2つの鎖間結合(ヒンジ部)を、1,4−ジチオスレイトール(DTT;2mM)にpH8および25℃にて15分間曝露することにより還元した。DTTを除去し、緩衝液を0.1M酢酸緩衝液、pH5に交換した。還元したシステインのうちの一つを、N−エチルマレイミド(NEM)と、0.75当量のNEMの添加および37℃で2時間のインキュベーションにより反応させた。次に、ジスルフィド架橋のうちの一つを再構成し、残っているシステイン残基をマレイミド活性化二環式ペプチドPK15と反応させ、固定化ヒト血漿カリクレインおよびゲル濾過を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
C末端セレノシステイン残基を用いるFcフラグメントの組換え発現のために、ヒトIgG由来Fcフラグメントをコードする遺伝子、TGAコドン、ヘキサヒスチジンタグおよびヒトセレン含有タンパク質チオレドキシンレダクターゼ1の遺伝子の3’UTRを、哺乳動物発現ベクターに挿入した。このタンパク質を、セレノシステイン源(Na2SeO3;1mM)を含有する血清フリー培地を含む懸濁液中のHEK293細胞で発現させ、ニッケルアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。精製したFc−セレノシステインタンパク質のマレイミド官能化二環式ペプチドPK15との、0.1mM DTTの存在下、pH5.2の100mMリン酸ナトリウム緩衝液中25℃にて1時間のインキュベーションにより、ペプチドとFcフラグメントの部位選択的結合がもたらされた。このFcフラグメント−環式ペプチド抱合体を、固定化ヒト血漿カリクレインを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、かつゲル濾過により順次精製した。
実施例7:細胞を透過する二環式ペプチド抱合体
それらのC末端に様々な細胞透過性ペプチド(CPP)配列または制御配列を含有する、いくつかのPep48誘導体のフルオレセインまたはメトキシ−クマリン修飾型を調製した。フルオロフォアは常にN末端に結合した。配列は次の通りである。
CPP配列は、通常数個の連続するアルギニンを含有し(Pep48−R3、Pep48T−1および−3を参照)、これらのポリアルギニンは、アルギニンをそのD型で用いる(Pep48T−2)ことによりさらに安定化され得る(Schmidt et al,FEBS Letters 2009,PMID:19925791)。Pep48T−4およびPep48T−5は、それぞれCPP配列HIV−tatおよびペネトラチンを含有する。両方のCPPは、標的分子の細胞取り込みの促進において十分に確立されている(Wadia et al,Nat Med.2004 10(3):310−5,およびDom et al,Nucleic Acids Res.2003,31(2):556−61)。
Pep48配列は、実施例1に記載されるように約1.2μMのKdでMdm2と結合する能力のある(TBMB抱合体として)配列に相当する。Pep48T配列は、後に100nMの推定Kdで選択される、より堅く結合親和性成熟したPep48誘導体に相当する。第1ループの配列は、いずれの場合にも同一である。
2つの細胞株、HeLaおよびHCT116を、これらの実験に使用した。HeLaは、ヒトネグロイド子宮頸部類上皮細胞癌腫であり、HCT116は、ヒト結腸癌腫である。両方の細胞種は広く入手可能である;例として、HeLa細胞は、UK HPAからカタログ番号93021013で入手可能である。HCT116細胞は、UK HPAからカタログ番号91091005で入手可能である。
細胞を、Lab−Tekホウケイ酸カバーガラスチャンバー(Nunc社製)に播種した。48時間培養した後(細胞は40〜60%培養密度に達した)、培地を取り除き、10μMのペプチドを添加した新鮮な培地を細胞に加えた。細胞をさらに3.5時間または24時間培養した。インキュベーション時間の終わりに細胞を3回DMEMで洗浄し、最後に10mM HEPES緩衝液を添加したDMEM完全培地再懸濁した。生細胞イメージングをレーザー走査顕微鏡(LSM 710、ツァイス社製)で行って、微分干渉コントラスト(DIC)および蛍光画像を得た。
フルオレセインPep48−R3およびPep48−D3 TBMB抱合体ペプチドをHCT116細胞とともにインキュベートすることにより、「R3」ペプチドによる細胞内の蛍光染色が示されたが、「D3」ペプチドでは示されなかった。これは、二環式ペプチドが細胞を透過することができることを示し、上に引用される、いくつかのアルギニン残基がこれを促進する可能性があるとの文献に一致する。
HeLa細胞での、TBMBを含むその他のフルオレセインペプチド抱合体(Pep48T1−5)を用いるその後の実験により、それらは全て細胞を透過することが示された。一般に染色は点状であったので、ペプチドがエンドソームに蓄積した可能性が示唆される。
TBMBを含むクマリンペプチド抱合体はまた、細胞に選択的に侵入すると思われた(対応する「R3」および「D3」抱合体によって示される通りであるが、蛍光発光シグナルは弱かったので、画像の解釈はより困難となった)。
方法
Pep48T−1〜Pep48T−5を実施例3に記載されるように、0.25ミリモルのスケールで上記のように合成し、各々のカップリングステップの後に最後の10残基をキャップした。次に、5種類の細胞透過性ペプチドの各々の樹脂を等しい部分に分割し、DMF中20%ピペリジンで脱保護し、5,6カルボキシフルオレセインスクシンイミド(5,6−FAM)(ビオチウム社)またはFmoc−Lys−メトキシクマリン(Lys−Mca)(ノバ・バイオケム社)と反応させた。前者には、300mgの5,6−FAMを、5.1mLのDMFに溶解し、1.02mLのアクチベーター・ベース(Activator Base)(34.5mLジイソプロピルエチルアミンおよび65.5mL N−メチルピロリドンの原液由来)を添加した。1.22mLのこの混合物を、脱保護したDMF洗浄ペプチド樹脂と反応させ、室温にて16時間振盪した。次に、樹脂を排水し、DMF、DCMで洗浄し、前述同様にTFA/トリイソプロピルシラン/H2Oで切断した。Lys−Mcaをペプチド合成装置で室温にて1時間、標準的なカップリングプロトコールを用いてN末端に結合させた。蛍光標識されたPep48−R3およびPep48−D3を、0.1ミリモルのスケールを除いて上記のように調製した。
次に、これらのペプチドを、実施例3に記載されるように、次の通りTBMBにコンジュゲートした。1)切断し凍結乾燥したペプチドの、6Mグアニジウム塩酸塩+DTT(0.2g/5mL)への溶解、2)H2O/アセトニトリル/0.1%ヘプタフルオロ酪酸勾配を用いるHPLC、3)正確な画分を同定するためのMALDI−TOF、4)40mM重炭酸アンモニウムの存在下、TBMBとのカップリング、5)凍結乾燥、6)6Mグアニジウム塩酸塩への溶解、6)2)と同様のHPLC、7)3)と同様のMS、8)最終凍結乾燥。蛍光標識されたペプチドの濃度を、フルオレセインに関して492nmで66,000M−1cm−1の吸光係数を用いることにより推定した。同様に、クマリン標識ペプチド濃度を、324nmでE=12,000M−1cm−1を用いて決定した。
細胞は、5%CO2雰囲気下、37℃にて、「ダルベッコ改変イーグル培地」(DMEM、GIBCO社)で培養し、10%(v/v)の熱失活ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、10U/mlペニシリン、および100ug/mlストレプトマイシン(DMEM完全培地)を添加した。
上記明細書において言及される全ての刊行物は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。本発明の記載される態様および実施形態の様々な変更および変形は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明らかである。本発明は具体的な好ましい実施形態に関連して記載されているが、特許請求される本発明がかかる具体的な実施形態に過度に限定されるべきでないことは当然理解される。実際に、当業者には明らかな、本発明を実行するための記載される形態の様々な変更は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。