[0001]本発明の実施形態は、画像処理に関する。詳細には、実施形態は、X線画像内に位置するマーカに関連した点の検出、位置特定及び分類を行う方法及びシステムを提供する。
[0002]現在の撮像システムは、1回の処置又は走査中に多くの画像を獲得する。これらの画像は、再生と呼ばれる処理を使用して組み合わされ、患者を通る有限幅の「スライス」を表す1つ又は複数の画像を作り出す。得られる画像は、医療若しくは歯科処置に備えて又は撮像機器を適切に較正するためにしばしば分析されるため、可能な限り明瞭であることが重要である。しかし、走査中の患者の動きが、画像内に誤差又はぼけを引き起こす可能性がある。
[0003]撮像手順の前には、しばしば患者にマーカが配置される。マーカは、得られる画像上にマーカ点として現れ、画像内の特定の特徴を識別するために使用される。マーカ点はまた、患者の動きに対して画像を補正するために使用することができる。典型的な運動補正シナリオでは、走査中に取り込まれる数百(例えば、600)個以上の画像のそれぞれにおいて、比較的少数のマーカ(例えば、7個)を識別しなければならない。従って、マーカを使用して患者の運動を検出及び補正することは、これらの画像内で数千個のマーカ点(例えば、上記の例を使用すると4,200個のマーカ点)を自動的に識別できる場合しか実用的でない。マーカ点の識別は、X線撮像の非線形の性質及びX線画像の比較的大きなダイナミックレンジによって更に複雑になる。
[0004]更に別の複雑な問題は、マーカ点の識別及び得られる運動補正は、完了しなければ画像の再生を開始できないため、迅速に実行する必要があることである。画像上のマーカ状の点を識別する既存の方法は、これらの点の概ね円形の性質に依拠し、画像勾配処理又はハフ変換の変形等の点識別技法を用いており、これには、完了するのに1画像当たり30秒程度かかる可能性がある。最も簡単な方法でも、1画像当たり1/10秒以上かかる可能性があり、多くの場合、1画像当たり5秒程度かかる。
[0005]これらの運動補正方法の精度は、マーカ点の位置を抽出する精度に直接関係する。例えば、大部分の補正方法では、マーカの位置は、ピクセルの1/4から1/8の精度まで特定しなければならない。この程度の精度を、広いダイナミックレンジの背景値、画像背景に対する非線形の依存性及びノイズの存在下で実現しなければならない。多くの既存の補正方法は、画像背景の非線形の性質に適切に対処できず、画像の縁部で位置誤差を招く。これらの既存の方法はまた、画像内のマーカが互いに比較的近接しているときはうまく機能しない。
[0006]画像内でマーカ点が識別された後、これらのマーカ点は、マーカ点の起源である物理的マーカに再びマッピングする必要がある。これらの物理的マーカは、3次元(「3D」)の位置座標によって一意的に識別される。従って、特定のマーカに関連する各射影画像から点のリストを作成するために、1つのステップは、各マーカの物理的な位置を識別することである。これは、各マーカに対して、ガントリが回転するにつれてマーカによって作成される点の位置が射影画像間でどのように変化するのかと最も一致している3D位置を識別することによって行うことができる。しかし、各マーカの関連する点の位置は、患者の動き又は計画外のシステム若しくは機器の動きのため、予想位置から著しく変動することがある。従って、ノイズ若しくは患者の運動が存在するとき又は複数のマーカが互いに近接して位置決めされたとき、マーカの3次元座標を識別する精度は低下する。マーカの3D位置を識別する既存の技法では、遠隔センサによって検出されて位置に変換される位置依存性の電磁界を使用することがある。この送信器及びセンサのシステムの複雑さに加えて、このシステムによって使用される技術は、マーカの3次元位置を求めるのに複数のセンサに依存する。他の位置特定技法は、複数の検出箇所間の固定の関係に関する知識に依存する光学的技術を伴い、この技術の複雑さを増大させる。
[0007]画像点に関連する物理的マーカが識別され、それぞれに位置が割り当てられた後でも、各画像上の各点をそのソースマーカに割り当てるという問題が依然として存在する。これを行うまで、全ての画像内の全ての点は、ただ一つのリストとしてしか存在しない。点の割当て(マーカ追跡)では、各画像上の各マーカ点と、そのマーカ点を実際に生成したマーカを関連付けることを試みる。点の割当てが完了した後、各マーカは、このマーカに関連するマーカ点の別個のリストを保有する。各マーカの別個のリストには、各射影画像に1つのマーカ点しかないことや、マーカ点がまったくないことがある。運動及び測定誤差の存在下でも、マーカとマーカに関連するマーカ点の正しい対応関係が維持されることが重要である。
[0008]実施形態は、画像内のマーカに関連した点を迅速に識別し、次いでこれらの点を運動補正システム内で使用できるシステム及び方法を提供する。1つの方法は、各射影画像を処理して円形の物体(即ち、マーカ点の形状)を除く全ての物体の明度を低減させるステップと、各画像内の極大を識別するステップと、極大を増大させて候補領域を作成するステップと、真円度及び射影の連続性の基準を各候補領域に適用するステップとを含む。この方法では、他の方法と比較して全体的な画像処理時間を少なくとも1桁低減させるように、一連の適用された単純平均フィルタ、差及び除算/減算演算を使用して、円形の物体を除く全ての物体の明度を低減させる。1つの方法は、画像を取得するステップと、2Dハイパスフィルタを適用して背景抑制画像を作成するステップと、背景画像からマーカに関連した点を抽出するステップとを含む。
[0009]実施形態はまた、画像内でマーカ点位置の正確なサブピクセルの位置特定を実行するシステム及び方法を提供する。1つの方法は、2つの次元のそれぞれにおいて画像内で識別された各マーカ点の位置を個別に評価するステップを含む。この評価は、マーカ点の片側又は両側をサンプリングすることにより、各マーカ点の背景プロファイルを求めることによって行われる。基線プロファイルとマーカ点プロファイルの比をとることで、X線減衰の非線形の性質に対処しながら、背景の影響を補正する。残りの背景オフセットは、マーカ点プロファイルの末端の平均値を引くことによって除去される。最後に、得られるマーカ点プロファイルを評価して、マーカ点の位置を表すその第1のモーメントを求める。別法として、プロファイルは、位置フィットパラメータを使用してそのマーカ点プロファイルに理論上のマーカ点プロファイルをフィッティングすることによって処理することができる。この方法は、射影画像のピクセルサイズより著しく高い解像度で、コンピュータ断層撮影走査の射影画像内のマーカ点の位置を求める。更に、この方法は、著しく不均一な背景及び隣接する構造の存在下で、マーカの識別又は位置特定を実行する。1つの方法は、マーカ点を含む画像を取得するステップと、背景補正されたマーカ点プロファイルを導出するステップと、背景及び基線補正されたマーカ点プロファイルを導出するステップと、背景補正されたマーカ点プロファイルのピークの中心として、マーカ点のサブピクセル位置を定めるステップとを含む。
[0010]実施形態はまた、近似の3D位置を迅速に識別して、画像上のマーカ点に関連するマーカに割り当てるシステム及び方法を提供する。1つの方法は、射影画像から射影画像への観察されたマーカ点の位置変化を得るステップと、φ、Z及びRの円筒座標の異なる可能な値を使用することによって定められた理論上の射影軌道にこの位置変化をフィッティングするステップとを含む。このステップは、1つ又は複数の円筒座標次元に対する潜在的な値の組を定め、この組からこれらの値の1つを選択することを含む。次いでこの方法は、この組から選択された値によって定められた軌道からの距離の範囲内に入る各射影画像内のマーカ点を求める。次いで、軌道範囲の境界からの各マーカ点の平均2乗距離を見つけることによって、この範囲内に入る各マーカ点にメトリックが割り当てられる。このメトリックを、範囲内の全てのマーカ点に対して合計して、特定の試行座標値の組に関連するただ一つのメトリックを導出する。これらのステップは、潜在的な座標値の組内の各値に対して繰り返され、得られるこのメトリックの値を(座標値の関数として)評価して関数ピークを判定し、関数ピークはそれぞれ、1つ又は複数のマーカの集団を表すものとする。これらのピークに関連する1つ又は複数の円筒座標に対するこれらの座標値は、対応する導出された物理的マーカに割り当てられる。これらのステップは、3つ全ての座標にマーカが割り当てられるまで、残りの円筒座標に対して繰り返される。メトリックフィッティングの性質のため、ノイズ及び患者の動きの存在下で平均マーカ位置を見つけ、互いに近接して位置決めされた複数のマーカを抽出して分離することが可能である。1つの方法は、画像シーケンスを取得するステップを含み、各画像は、スキャナの回転角度を表し、第1の値及び第2の値を有する。この方法はまた、この画像シーケンスにわたってマーカ点位置の第1の値の挙動を分析して、マーカの径方向の距離及びマーカの角度位置を求めるステップを含む。この方法はまた、この画像シーケンスにわたってマーカ点位置の第2の値の挙動を分析して、マーカの軸方向の位置を求めるステップを含む。
[0011]実施形態はまた、マーカ追跡と呼ばれる処理を通じて、各射影画像内の各マーカ点を、そのマーカ点に関連する可能性が最も高いただ一つの物理的マーカに割り当てるシステム及び方法を提供する。1つの方法は、複数のマーカ点を有する画像シーケンスを取得するステップと、各画像内の物理的マーカに対する予想されたU及びVの位置及び範囲を計算するステップとを含む。この方法はまた、物理的マーカを選択するステップと、その物理的マーカに対して理論的に求められた各射影画像内の予想されたマーカ点位置の範囲に入るマーカ点から構成される候補点のリストを作成するステップとを含む。この方法は、リスト内の各マーカ点の実際の画像位置から物理的マーカの理論上の軌道を引いて理論からの誤差を各マーカ点に割り当てることによってリストを処理するステップを更に含む。方法は次いで、U方向とV方向の両方における候補リスト内の連続する点の誤差間の第1の時間導関数及び他の基準に基づいて、射影ごとにリストを検討し、リストを1射影画像当たりゼロ又は1つの「良好点」に絞る。
[0012]本発明の他の態様は、詳細な説明及び添付の図面を検討することによって明らかになるであろう。
[0013]円錐ビームコンピュータ断層撮影システムを示す概略図である。
[0014]図1のコンピュータを示す概略図である。
[0015]多数のマーカ点を含む画像を示す図である。
[0016]マーカ点識別方法を示す流れ図である。
[0017]図4のマーカ点識別方法の背景低減処理を示す流れ図である。
図4のマーカ点識別方法の背景低減処理を示す流れ図である。
[0018]図5の背景低減処理の一部である、1次元において画像に迅速に平均フィルタをかけるために使用される処理の図である。
[0019]図5の背景低減処理を適用した後の図3の画像を示す図である。
[0020]図4のマーカ点識別方法のマーカ点抽出処理を示す流れ図である。
[0021]図8のマーカ点抽出処理のステップを実行した後の図7の画像を示す図である。
図8のマーカ点抽出処理のステップを実行した後の図7の画像を示す図である。
[0022]マーカ点サブピクセル位置特定方法を示す流れ図である。
[0023]図のマーカ点サブピクセル位置特定方法のマーカ点プロファイル導出処理を示す流れ図である。
[0024]図12のマーカ点プロファイル導出処理で分析されるマーカ点を取り囲む例示的なピクセル列の図である。
[0025]図12のマーカ点プロファイル導出処理で使用されるマーカ点プロファイル及び基線プロファイルの例示的な値を示すグラフである。
[0026]図11のマーカ点サブピクセル位置特定方法のマーカ点位置を求める処理を示す流れ図である。
[0027]図15の積分マーカ中心を求める処理を使用する例示的なマーカ点プロファイル曲線のサブピクセルのマーカ点中心位置を示すグラフである。
[0028]図15のカーブフィットマーカ点中心を求める処理を使用するマーカ点プロファイル曲線に対する例示的な最良適合のガウス曲線のサブピクセルマーカ点中心位置を示すグラフである。
[0029]物理的マーカの3次元位置特定方法を示す流れ図である。
[0030]U次元におけるマーカ点の挙動を分析する処理を示す流れ図である。
U次元におけるマーカ点の挙動を分析する処理を示す流れ図である。
[0031]V次元におけるマーカ点の挙動を分析する処理を示す流れ図である。
V次元におけるマーカ点の挙動を分析する処理を示す流れ図である。
[0032]U方向の運動の存在下で、一連の射影画像にわたってφの試行値を複数のマーカ点の複数のU位置にフィッティングする処理の一例を示すグラフである。
[0033]固定値Rにおける関数φとしてRとφの試行値ペアに対する累積フィッティングメトリックの例示的な1次元図を示すグラフである。
[0034]一連の射影画像にわたってZの試行値を3つのマーカのV軌道にフィッティングする処理の一例を示すグラフである。
[0035]関数Zとして累積フィッティングメトリックの例示的な1次元図を示すグラフである。
[0036]マーカ点を物理的マーカにマッピングする方法を示す流れ図である。
マーカ点を物理的マーカにマッピングする方法を示す流れ図である。
マーカ点を物理的マーカにマッピングする方法を示す流れ図である。
マーカ点を物理的マーカにマッピングする方法を示す流れ図である。
マーカ点を物理的マーカにマッピングする方法を示す流れ図である。
[0037]一連の射影画像にわたって識別される全てのマーカ点の例示的な物理的マーカ及び例示的なU位置に対する予想されたU範囲を示すグラフである。
[0038]図25に示すU範囲内にU位置を有する図25に示すマーカ点を示すグラフである。
[0039]例示的な候補マーカ点リストの一部分の図である。
[0040]例示的な候補マーカ点リストの平坦化処理の図である。
[0041]例示的な候補マーカ点リストの同期処理の図である。
[0042]「次の」射影画像が2つ以上の候補マーカ点を含むときに「次の」射影画像を処理する図である。
[0043]「次の」射影画像がただ一つの候補マーカ点を含むときに「次の」射影画像を処理する図である。
[0044]「次の」射影画像が候補マーカ点を含まないときに「次の」射影画像を処理する図である。
[0045]良好点リストが良好点及び疑わしい点を含むときに「次の」射影画像を処理する図である。
[0046]本発明の実施形態について詳細に説明する前に、本発明は、その適用分野において、以下の説明に述べ又は以下の図面に示す構成要素の構造及び構成の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実行又は実施することが可能である。
[0047]本発明を実施するために、複数のハードウェア及びソフトウェアベースのデバイス並びに複数の異なる構造上の構成要素を利用できることにも留意されたい。更に、後の段落で説明するように、図面に示す特有の構成は、本発明の実施形態を例示するものである。代替構成も可能である。
[0048]X線は、光線に類似した形式の放射であるが、人体を透過できる光線である。しかし、X線が人体を通過するとき、X線の強度は低減する。強度の低減量は、X線が通過する組織の密度に関係する。X線のこの特性を使用して、人体及び他の対象の内部構造の画像を作り出す。
[0049]従来、X線システムは、発散するX線ビームを生成するX線管を含む。X線管と、各位置に当たるX線の強度に対して感度の高い1枚のフィルムとの間に、人又は対象が配置される。X線管のオンとオフが切り換えられ、フィルムが現像されると、得られる画像は、X線の経路内の構造の「陰影画像」を示し、より高密度の構造は画像内でより白く見える。
[0050]現在のX線処理では、フィルムではなく、1つ又は複数の検出器を使用する。検出器は、検出器に到達するX線の量(即ち、強度)を電子的に検出して定量化する。これらの検出器を使用して、患者の周りでX線源を回転させ、得られるX線を、X線源から見て患者の反対側にある単一幅のストリップ状の検出器要素で電子的に検出するX線コンピュータ断層撮影(「CT」)システムが創出された。全ての異なるX線位置に対して、これらの検出器からのデータが収集され、次いで再生と呼ばれる処理で組み合わされる。組み合わされた画像は、患者を通るただ一つの有限幅の「スライス」を表し、各点における画像の明度は、特定の身体上の位置における組織のX線密度を表す。X線源、検出器及びX線源の回転を可能にする機械的構造の組合せを、「CTガントリ」と呼ぶ。
[0051]この処理を繰り返しながら、画像獲得又は走査間に患者、X線源又はその両方を動かすことによって、複数のスライスを獲得することができる。例えば、患者を支持する台を動かしながらX線源を回転させることで、スライスではなく「螺旋」状のデータを作り出す。更に、検出器ストリップ又はリングのサイズ又は幅を信号行の検出器から複数の行(例えば、最高256行)に増大させることで、より多くのデータをより迅速に獲得することができる。更に、検出器ストリップをより大きな2次元検出器に置き換えることで、単にただ一つのストリップのデータではなく、各X線源位置における検出器パネル画像全体を獲得する。600以上の数になりうるこれらの画像の集まりは、射影画像と呼ばれる。各射影画像は、X線源と検出器が同期して患者の周りを回転するときの異なる視点又は角度からの患者のX線スナップショットである。2次元検出器を覆うには円錐状のX線ビームが必要であるため、このタイプのCT撮像は、円錐ビーム(「CB」)CT撮像と呼ばれる。図1は、本発明の一実施形態によるCB−CT撮像システム10を概略的に示す。
[0052]CB−CT撮像システム10は、スキャナ12及びコンピュータ14を含む。スキャナ12はCTガントリ13を含み、CTガントリ13は、X線源16、検出器18及び回転キャリア20を含む。X線源16と検出器18は、回転キャリア20上で互いから反対側に位置合わせされ、回転キャリア20は、患者22の周りでX線源16及び検出器18を動かす。患者22は、座席24によって支持される。図1に示す撮像システム10は、歯科用の撮像システムである。従って、患者22は、座席24に座り、自身の下顎を支え26に配置する。支え26は、ガントリ13が回転して患者の頭部の走査を完了する間、患者の頭部を比較的静止したまま保持する。
[0053]スキャナ12は、コンピュータ14へ画像データを出力する。画像データは、走査中に検出器18によって検出されたX線の強度レベルを表す。コンピュータ14はコンソール30に接続され、コンソール30は、ディスプレイ32と、キーボード34等の1つ又は複数の入出力デバイスとを含む。使用者は、コンソール30を使用してコンピュータ14と対話する。例えば、使用者は、コンソール30を使用して、コンピュータ14に画像又は他のデータを要求することができる。コンピュータ14は、要求された情報をコンソール30へ提供し、コンソール30は、その情報をディスプレイ32上に表示し、その情報をプリンタ(図示せず)へ出力すること及びその情報をコンピュータ可読メモリモジュール(図示せず)へ保存することのうちの一方又は双方をする。
[0054]図2は、本発明の一実施形態による図1のコンピュータ14を概略的に示す。コンピュータ14は、入出力インターフェース40と、電子処理ユニット(「EPU」)42と、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)モジュール44及び読出し専用メモリ(「ROM」)モジュール46等の1つ又は複数のメモリモジュールとを含む。入出力インターフェース40は、スキャナ12から画像データを受け取り、その画像データをEPU42へ提供する。幾つかの実施形態では、入出力インターフェース40は、画像データをRAMモジュール44等のメモリモジュールへ記憶し、EPU42は、処理の際にはメモリモジュールから画像データを取得する。入出力インターフェース40はまた、較正及び動作データ又は命令等のデータをスキャナ12へ伝送することができる。
[0055]EPU42は、画像データを受け取り、1つ又は複数のアプリケーション又はモジュールを実行することによってその情報を処理する。幾つかの実施形態では、アプリケーション又はモジュールは、ROMモジュール46等のメモリ内に記憶される。他の実施形態では、アプリケーション又はモジュールをハードディスク記憶ユニット上に記憶し、実行の際にはRAMへ伝達することができる。図2に示すように、ROMモジュール46は、マーカ点識別モジュール50、マーカ点サブピクセル位置特定モジュール52、物理的マーカ3次元(「3D」)位置特定モジュール54、マーカ点マッピングモジュール56、患者運動識別モジュール58及び画像再生モジュール59を記憶する。EPU42は、マーカ点識別モジュール50を取り出して実行し、受け取った画像データ内のマーカ点を識別する(図4〜10参照)。EPU42は、マーカ点サブピクセル位置特定モジュール52を取り出して実行し、マーカ点位置の正確なサブピクセル位置特定を提供する(図11〜17参照)。EPU42は、物理的マーカ3D位置特定モジュール54を取り出して実行し、射影画像内のマーカ点を通じて識別された物理的マーカの3次元位置を求める(図18〜23参照)。EPU42は、マーカ点マッピングモジュール56を取り出して実行し、射影画像内で識別されたマーカ点を特定の物理的マーカにマッピングする(図24〜33参照)。EPU42は、患者運動識別モジュール58を取り出して実行し、患者運動情報を導出する。EPU42は、画像再生モジュール59を取り出して実行し、射影画像と運動情報を組み合わせて、1組の運動補正されたアキシャル画像を作り出す。
[0056]ガントリが完全に1回転するには、約8秒から40秒かかる。この間、患者が動くことがあり、得られる画像のぼけを引き起こす。典型的な画像解像度は、0.25ミリメートル程度である。従って、これと同程度に患者が動くと、画像がぼけることが多く、広範囲に患者が動くと、得られる画像は、意図された臨床上の目的では許容されない可能性がある。
[0057]コンピュータ14(図2参照)は、得られる画像内の剛性の物体の動きを追跡することによって、患者の動きに対して画像を補正することができる。例えば、患者の動きがない理想的な状態では、撮像される剛性の物体は、ガントリが患者の周りを回転するにつれて、射影画像の2つの次元における位置を明確に変化させる。画像内の物体の予想位置間のずれは、患者の動きによって引き起こされる。物体の予想位置からの明確な物体のずれを測定することによって、患者の運動量を測定及び補正することができる。具体的には、画像内に少なくとも3つの物体が存在する場合、物体の予想位置からの物体の測定されるずれを組み合わせて、6パラメータの患者位置誤差値(例えば、患者運動ベクトル)を求めることができ、この値を画像に適用して、患者の動きを補正することができる。
[0058]これらの画像内に所望の数の明確な剛性の物体が確実に存在するように、1つ又は複数の基準マーカが患者に配置される。これらのマーカは通常、鉛又は鋼のBBからなる。これらは高密度であり、X線が通過するのを防止又は制限する。マーカは、他の材料から作製することもでき、走査中に生成される射影画像の大部分で見える他の形態又は形状で構築することもできる。各マーカ又は複数のマーカは、接着剤層間に位置決めすることができ、この接着剤を患者に塗布して、処置中にマーカが動かないようにすることができる。
[0059]マーカは、CB−CT撮像システムによって作成される各視野又は画像が少なくとも3つのマーカ点を含むように、患者に配置される。例えば、CB−CT撮像システムによって作成される各画像内に少なくとも3つのマーカ点が位置するように、7個から9個のマーカを患者に配置すると、位置測定ノイズを低減させ、それらの結果の統計的な組合せを可能にすることができる。幾つかの実施形態では、マーカを均一に隔置して、患者の周りの空間分布を極大にし、正常な画像解釈への干渉を回避する。
画像内のマーカの識別
[0060]マーカが患者に配置された後、患者の頭部等、患者の走査が行われ、一連の射影画像を表す得られた画像データは、コンピュータ14(図2参照)へ伝送される。図3は、8個のマーカ点102を含む例示的な射影画像100を示す。生成された射影画像を患者の動きに対して補正する最初のステップとして、コンピュータ14は、生成された射影画像を処理して、各画像内のマーカ点を識別する。図4は、本発明の一実施形態によるマーカ点識別方法60を示す。マーカ点識別方法60は、EPU42がマーカ識別モジュール50を実行するときに、コンピュータ14のEPU42によって実行される。
[0061]図4に示すように、方法60の第1のステップは通常、各射影画像の背景の明度を低減させるステップを含む(ステップ62)。この背景抑制ステップは、画像の背景部分を最小にする。画像の背景部分には、マーカ点以外の画像内の全てが含まれる。基準マーカが明確な形状(即ち、球形又は円形の形状)を有するため、ステップ62は、この明確な形状をもたない画像内の全てを最小にする。
[0062]幾つかの実施形態では、各画像に線形ハイパスフィルタを適用することによって、背景抑制が実現される。許容される速度を得るために、3つの最適化が実行される。第1に、ハイパス演算は、元の画像とローパスフィルタ画像を組み合わせることによって実現される。第2に、2つの画像方向で同時にフィルタを実行する代わりに、2次元以上(即ち、0°、45°、90°及び135°)の画像に、1次元のハイパス演算が順次適用される。最後に、ローパス演算が実現され、後述する累積ピクセル手法で単純平均フィルタが実施される。
[0063]1次元ハイパスフィルタ演算は、フィルタの方向で迅速に変化する領域を強調する傾向がある。異なる方向で実行される一連のそのような演算は、円形の物体を他の全ての形状より強調する傾向がある。マーカによって作成されるマーカ点は円形であるため、この一連のフィルタリングで、マーカ点を強調し、あらゆる周囲の構造を減衰させる。
[0064]図5は、背景低減ステップ62に伴う処理又はステップを示す。図5に示すように、多次元のハイパスフィルタリング演算は、第1に元の画像A上で簡単な1次元の累積平均ローパス画像フィルタリングを実行して(ステップ69)フィルタ画像Bを作成することによって実行される。次いで、後述のように、フィルタ画像Bと元の画像Aを組み合わせて画像Cを作成する(ステップ70)。これらの2つのステップは、前のフィルタリングステップからの出力画像を、次のフィルタリングステップへの入力として使用して、各フィルタリング方向に対して繰り返される(ステップ71〜73)。図5に示す処理は、迅速な多次元のハイパスフィルタリングを実現して、画像の背景を低減させる。図6は、1つの方向における1次元のローパスフィルタリングに伴うこれらのステップの一例を示す。
[0065]より典型的なカーネルベースのフィルタリング手法を使用するのではなく、ステップ69及び71のフィルタリングは、累積平均フィルタ(図5Aに示す)を使用することによって、更に迅速に実現される。この迅速なフィルタリングは、新しい画像(画像B1)を作成することによって実現され、新しい画像の各ピクセルは、フィルタの方向に特定のピクセルから第1のピクセルまで、元の画像Aからの全てのピクセル値の累積和に設定される(ステップ74)。例えば、図6に示すように、コンピュータ14がスキャナ12から元の画像(画像A)を最初に取得したとき、この方法では、7個のピクセルを含む画像Aの1つの行について考察し(処理方向は水平である)、次いでこの行内の各ピクセルを、このピクセルの左側にあるピクセル値とこのピクセルの値の和に設定することによって、累積画像(画像B1)が作成される。
[0066]ステップ74で累積画像が生成された後、ローパスフィルタリング係数(例えば、2)に等しい量だけ画像B1をシフトさせ、シフト画像(画像C1)を作成する(ステップ75)。画像の縁部には、シフトされた縁部ピクセルを単にゼロにすることによって対処する。例えば、図6に示すように、累積画像(画像B1)内の各ピクセルを左側へ位置2つ分シフトさせ、シフト画像(画像C1)を作成する。最初の2つのピクセル(即ち、縁部ピクセル)の左側には位置2つ分のピクセルがないため、これらのピクセルは0に設定される。
[0067]次いで、累積画像(画像B1)からシフト画像(画像C1)を引き、差画像(画像D1)を作成する(ステップ76)。図6に示すように、これらの画像を引くために、シフトされていない累積画像(画像B1)内の対応するピクセル値から、シフト画像(画像C1)内の各ピクセル値が引かれる。最終のステップは、差画像内の各ピクセルをフィルタ係数(シフト値)で割ることによって差画像(画像D1)を正規化し、ローパスフィルタ画像Bを作り出すことである(ステップ77)。
[0068]ステップ74〜77に対する計算時間は、ローパスフィルタのカーネルサイズに依存しない。これらのステップにおける計算は、正常なカーネルベースのフィルタに通常必要な(カーネルサイズ)×N回の演算ではなく、約2×N回の加算及び減算を伴う。512×512ピクセルの画像及び典型的な平滑化係数15の場合、従来の1Dカーネル手法に対する計算時間の低減は7.5:1になる。フィルタ係数が15の場合の(2つの1D累積平均フィルタ演算に対する)2Dカーネルと比較して、速度の改善は56:1である。
[0069]1次元のローパスフィルタ画像が作成された後、ローパス画像(画像B)とローパス画像を生成するために使用された画像(画像A)を組み合わせることによって、ハイパスフィルタ画像(画像C)が作成される(ステップ73)。これは、2つの画像間の簡単な差分演算によって行うこともできる。しかし、第1の方向のフィルタリングステップ70における処理では、除算演算が使用される。除算は、X線減衰の指数的な性質及び正規化画像(画像B)を補償して画像Cを作成するために使用される(ステップ70)。X線減衰は材料密度の負の指数として発生するため、差画像の除算は効果的である。従って、除算は、対数を引いて累乗することと同等であるため、差画像を割ることで、計算コストがかかる対数及び累乗演算を回避する。
[0070]1次元の累積平均ローパスフィルタを適用して入力画像と出力画像を組み合わせる処理は、連続する次元のそれぞれにおいて繰り返される(ステップ71〜73)。しかし、第1の次元が処理されるときに実行される除算によってX線減衰の指数的な性質に対する補正が完了されるため、第1の次元が処理された後、ステップ72で、除算ではなく減算を使用することができる(ステップ70)。通常、広い範囲の背景から球形のマーカ点を適切に分離するには、0、45、90及び135度における4回の通過で十分である。図7は、図5の背景低減方法を適用した後の図3の画像100を示す。図7に示すように、背景(即ち、画像のうちマーカ点102以外の部分)の大部分は低減され又は暗くなっており、それによってマーカ点102をより容易に識別することができる。
[0071]図4に戻ると、上記のステップを通じて背景が低減された後、ハイパスフィルタ画像からマーカ点が抽出される(ステップ80)。図8は、ハイパス画像からマーカ点を抽出する処理又はステップを示す。図8に示すように、この処理は、各ハイパス画像内で極大を定めることから開始する(ステップ82)。このステップは、各画像内で、ピクセルの隣接ピクセルの8個全てがこのピクセルより小さい値を有する各ピクセルを識別することを含む。次に、識別された極大をシード点として使用し、領域を増大させる(ステップ84)。この処理では、特定の領域内に含まれる極大を組み合わせて、ただ一つの候補物体又は領域にする。幾つかの実施形態では、生成された領域のサイズ又は範囲は、実験的に指定される下限閾値によって制限される。図9は、領域が極大を増大させ(ステップ82及び84)、それによって候補領域104を作った後の図7の画像100を示す。
[0072]ステップ86で、各候補領域に形状基準を適用し、どの領域がマーカ点である可能性が最も高いかを識別する。幾つかの実施形態では、この処理は、(1)候補領域(a)のピクセル面積と、(2)候補領域の平均半径の2乗にπを掛けた値((aの平均半径)2*π)によって定められる面積との比を得ることによって実行される。この比の値を使用して、候補領域がマーカ点として適切な形状であるかどうか(例えば、候補領域が円形の形状を有するかどうか)を判定する。
[0073]最後に、ステップ88で、これらの候補領域を更に処理し、隣接する射影画像内の候補領域の位置を比較して近接基準を適用することによって、可能性が低い候補を排除する。例えば、連続する(sequential)射影画像間で候補領域の位置が動きすぎた場合、その候補領域がマーカ点である可能性は低い。同様に、2つの候補領域が互いに近接しすぎている場合、それらの領域がマーカ点である可能性は低い。図10は、候補領域104に形状基準を適用して可能性が低い候補領域104を排除した(ステップ86及び88)後の図9の画像100を示す。図10に示すように、これらのステップの後、8個のマーカ点102(図7及び8参照)に対応する候補領域104だけが残る。
[0074]幾つかの実施形態では、画像に2次元のハイパスフィルタを適用することは、第1にその画像に2次元ローパスフィルタを適用してローパス画像を作成することを含む。その後、ローパス画像と元の画像が組み合わされる。
[0075]幾つかの実施形態では、マーカ識別方法60は、1画像当たり50ミリ秒未満程度の時間内で実行することができる。更に、球形のマーカが使用されるとき、マーカ点識別方法60は、マーカには高い選択率を呈し、マーカに関連しない構造には高い排除率を呈する。例えば、幾つかの実施形態では、マーカ点識別方法60は、実際の状況で、100%の感度及び40:1を上回る特定性(2.5%未満の誤検出)を有することができる。
マーカのサブピクセル中心点を求めること
[0076]マーカ点識別方法60を使用して画像内でマーカ点が識別された後でも、これらのマーカ点を使用して運動補正を実行する前に、マーカ点を更に又はより正確に定める必要があることがある。具体的には、マーカ点識別方法60によって提供されるピクセル解像度(サブピクセル)より更に良好な解像度まで、マーカ点の有効な2次元位置を知る必要があることがある。ピクセル解像度の1/8程度まで小さい解像度が必要とされることがある。この場合も、これは、画像内でも画像間でも大いに変動する背景の存在下で行わなければならない。図11は、本発明の一実施形態によるマーカ点サブピクセル位置特定方法110を示す。マーカ点サブピクセル位置特定方法110は、EPU42がマーカ点サブピクセル位置特定モジュール52を実行するときに、コンピュータ14のEPU42によって実行される。幾つかの実施形態では、マーカ点サブピクセル位置特定方法110では、後述するように、マーカ点識別方法60によって識別されるマーカ点を開始点として使用して、正確なサブピクセルマーカ位置を求める。
[0077]図11に示すように、マーカ点サブピクセル位置特定方法110は通常、マーカ点プロファイル導出処理(ステップ112)及びマーカ点中心を求める処理(ステップ114)を含み、これらの処理は、射影画像の2つの次元のそれぞれに対して繰り返される(ステップ116)。より詳細に後述するように(図12〜14参照)、マーカ点プロファイル導出処理112は、一連のステップを適用して背景の大部分を除去し、所望の各次元における多ピクセルのマーカ点プロファイルを生成する。マーカ点中心を求める処理114で、生成されたマーカ点プロファイルは、マーカの予想された形状と比較され、1次元のサブピクセルマーカ点中心位置が導出される(図15〜16参照)。
[0078]図12は、本発明の一実施形態によるマーカ点プロファイル導出処理112を示す。マーカ点の垂直位置を導出する動作について考察する。ここで、垂直方向の一連のピクセルを列と呼び、水平方向の一連のピクセルを行と呼ぶ。マーカ点の水平位置を導出する処理は類似しているが、行に対する全ての言及は列に置き換えられ、列に対する言及は行に置き換えられる。1行のピクセル及び1列のピクセルをそれぞれ、ピクセル線と呼ぶことができる。
[0079]この処理の第1のステップは、マーカを取り囲む背景列の範囲にわたってピクセル値を平均することによって、垂直方向の背景プロファイルを導出することを伴う(ステップ120)。図13は、例示的なピクセル121の列がマーカ点122を中心として取り囲むところを示す。ステップ120は、マーカ点122を取り囲む背景列121aのピクセル値を平均し、マーカ点122を覆って中心に位置するマーカ列121bのピクセル値を除外する。背景列121aを平均することは、列121aの各行のピクセル値を合計し、その和を列の数で割ることを含む。背景列121aを平均することで、ただ一つの列の背景値を生成し、これがマーカ点122に対する背景プロファイルになる。
[0080]次に、マーカ点122を覆って中心に位置する列であるマーカ列121bを平均することによって、マーカ点プロファイルが導出される(ステップ124)。この場合も、マーカ列121bを平均することは、列121bの各行のピクセル値を合計し、その和を列の数で割ることを含む。マーカ列121bを平均することで、ただ一つの列のマーカ値を生成し、これがマーカ点122に対するマーカ点プロファイルになる。
[0081]ステップ126で、背景プロファイルを行ごとにマーカ点プロファイルで割る。例えば、背景プロファイルを構成する平均値の列の各行内の値を、マーカ点プロファイルを構成する平均値の列の対応する行内の値で割る。この順序で行の値を割ることで、画像の反転が行われる(例えば、暗い領域が明るくなり、明るい領域が暗くなる)。更に、ステップ126では、(例えば、減算ではなく)除算を使用して、X線減衰の負の指数的な性質を補償する(上述のように、除算は、2つのプロファイルの対数の差の指数を得ることと数学的に同等であるため)。
[0082]代替実施形態として、ピクセル値の対数を算出してから、マーカ点プロファイル及び背景プロファイルを見つけることができる。次いで、要素ごとに2つのプロファイルを引いて各要素の指数を得ることによって、マーカ点プロファイルの背景補償が実現される。この手法は、平均した行における画像のばらつきにより正確に対処するため、上記の手法よりわずかに高精度であるが、簡単な平均及び除算手法より多くの時間がかかる。
[0083]この時点で、マーカ点の妥当な基線補正プロファイルが取得された。しかしそれでもなお、特に末端が非対称形である場合、プロファイルの末端にゼロからの何らかのオフセットが残っていることがある。プロファイルは、以下の手順によってゼロになる。マーカ点中心から離れてもピクセル値が低減しなくなる列等)、マーカ点のピーク(例えば、最も高い値を有するマーカ点内のピクセル)から離れた末端の列においてピクセル値を平均することによって、平均基線オフセット値が求められる(ステップ128)。画像内の他のマーカ又は他の構造等、このマーカ点に隣接するあらゆる構造に関連する末端内の平均ピクセルを、ここから注意深く除外する。図14は、例示的なマーカ点プロファイル129及び例示的な基線プロファイル130の値並びにマーカ点プロファイルを完全に基線補正した後の結果133を図示する。
[0084]図11に戻ると、基線補正したマーカ点プロファイルが生成された後、位置特定方法110の第2のステップは、マーカ点位置を求める処理114を含む。図15は、この処理をより詳細に示す。図15に示すように、この処理を実行する少なくとも2つの代替手段又は選択肢がある。第1の選択肢は、マーカ点プロファイルの積分を求めるステップ(ステップ140)と、この積分の半分である積分に沿った位置としてマーカ点位置を定めるステップ(ステップ142)とを含む。このマーカ点位置は実質上、積分の第1のモーメント又は積分のうちこの点の左側の部分が積分のうちこの点の右側の部分に等しい位置である。図16は、例示的なマーカ点プロファイル曲線146の例示的なサブピクセルマーカ点位置144を示す。
[0085]図15に戻ると、マーカ点位置を求める第2の選択肢は、最小2乗又は他のフィッティングを使用して適当な曲線関数をマーカ点プロファイルにフィッティングし(ステップ146)、曲線関数の中心を表すパラメータとしてマーカ点位置を定める(ステップ148)。図17は、例示的なマーカ点プロファイル曲線151にフィッティングされた最良適合のガウス曲線150の例示的なサブピクセルマーカ点位置149を示す。
[0086]ステップ146で使用される曲線関数は、部分的な体積の影響及び指数的な減衰特性等の撮像物理に関係する問題を考慮するマーカ点のガウス曲線又は予想された曲線とすることができる。通常、ステップ146で使用される曲線関数は、曲線定義パラメータの1つが曲線中心を表す任意の曲線とすることができる。曲線関数はまた、一定でない基線プロファイルに対処することもできる。幾つかの実施形態では、一定でない基線プロファイルに対処する曲線関数が選択された場合、マーカ点プロファイル導出ステップ112内のステップ128及び132を除くことができる。更に、曲線関数は、既知のマーカ寸法、ピクセルサイズ及び他の次元におけるマーカの近似のサブピクセル位置等、測定可能な画像特性に基づいて、各マーカ、画像又は画像の組に対して動的に修正することができる。
マーカに対する3D円筒座標を求めること
[0087]画像内でマーカ点及びマーカ点中心が識別された(例えば、マーカ点識別方法60及びマーカ点サブピクセル位置特定方法110を使用)後でも、各マーカ点がその点の生成を担う物理的マーカに適切に関連付けられるように、マーカ点の蓄積を分類する必要がある。これを行うため、第1のステップは、各物理的マーカ点を一意的に識別することである。物理的マーカ点はそれぞれ、3次元(3D)座標を通じて一意的に識別される。従って、マーカ点と物理的マーカを関連付ける第1のステップは、物理的マーカを識別し、それぞれを3D座標に割り当てることである。しかし、この処理は、患者の動き及び射影画像上のマーカ点位置を求めることにおける誤差によって複雑になる可能性がある。更に、複数のマーカが存在するため、幾つかの射影画像では、一部のマーカ点が他のマーカ点に重なることがある。
[0088]図18は、それぞれの物理的マーカを識別し、各物理的マーカを3D空間内の位置に割り当てる物理的マーカ3D位置特定方法160を示す。物理的マーカ3D位置特定方法160は、EPU42が物理的マーカ3D位置特定モジュール54を実行するときに、コンピュータ14のEPU42によって実行される。物理的マーカ3D位置特定方法160は通常、CTガントリが回転するにつれて生成される一連の画像を通じてマーカによって作成される点の位置を追跡し、そのマーカを3D空間内の位置にマッピングする。
[0089]既存の追跡技術では、複数のセンサ及び複数の検出された箇所間の複数の固定の関係を使用して、3D空間内の患者の位置を追跡する。しかし、方法160で適用される追跡技術又は方法では、分離されたただ一つの点検出箇所を使用する。従って、同時に収集された複数の箇所の特性を比較するのではなく、この追跡方法では、ただ一つの箇所の特性を経時的に収集し、観察された位置の経時変化と、同じ位置の経時変化をもたらすはずの3D位置とを整合させる。この追跡方法は、CT撮像ガントリ以外にいかなる追加の機器も必要とせず、比較的大量の画像ノイズ及び患者の動きに耐える。
[0090]図18に示すように、方法160は、「U」及び「V」とラベル付けした2つの画像次元における各射影画像上の各マーカ点の位置(例えば、マーカサブピクセル位置特定方法110によって求められる各マーカ点の中心)を取得することから開始する(ステップ162)。Uは、CTガントリの回転円に対して接線方向の次元であり、Vは、CTガントリの回転軸に対して平行な次元である。マーカ点のこれらの次元位置は、マーカ識別点方法60、マーカ点サブピクセル位置特定方法110又はこれらの組合せによって求めることができる。
[0091]マーカが3D空間内に固定の位置を有する場合、各射影画像上のそのマーカのU位置及びV位置(又は値)は、以下の式で記述される。
上式で、3D円筒座標(R=径方向の距離、φ=角度位置及びZ=高さ又は軸方向の位置)は、マーカの3D位置を表し、θは、CTガントリの開始位置からの回転角度であり、DSDは、X線源から検出器までの距離であり、DSOは、X線源から物体又は患者までの距離である。
[0092]マーカの3D位置を求めるには、上記のU及びV式並びにマーカの既知のU値及びV値を使用して、マーカの円筒座標又はパラメータ(R、φ及びZ)を求めなければならない。しかし、特定の射影画像内のU位置及びV位置は、測定誤差のため、正しい値とは異なることがある。また、R、φ及びZは、患者の運動のため、時間の関数(例えば、R(t)、φ(t)及びZ(t))である。
[0093]これらの難点のため、方法160では、R、φ及びZに対する「平均」値を見つける(ステップ164)。これらの平均値は、上記のU式及びV式によって指定される各射影画像内のマーカの予想位置からの各射影画像内のマーカの実際の位置の最小和の2乗誤差をもたらす値である。以下の誤差式は通常、これらの平均値を提供する。
[0094]しかし、U次元はZに依存しないため、Ravg、Zavg及びφavgに対する所望の値を見つける処理は簡略化される。従って、この処理は、(1)U次元におけるマーカの挙動を分析する処理(図19A〜Bの方法166参照)及び(2)V次元におけるマーカの挙動を分析する処理(図19C〜Dの方法168参照)という2つの処理又はステップに分割することができる。
[0095]図19A〜Bは、本発明の一実施形態によるU次元におけるマーカの挙動を分析する方法166を示す。図19Aに示すように、方法166は、Rパラメータ及びφパラメータに対する全ての可能な値ペアのサブサンプルであるRとφの値ペアの数の組を選択することから開始する(ステップ170)。このサブサンプルの組のサイズは、R及びφに対する実行速度と取得可能な精度の間の妥協を表す。通常、R値及びφ値は、物理的に可能なR値及びφ値の範囲を均一にサンプリングするように選択される。即ち、Rは、0とスキャナの径方向の最大視野の間であり、φは、0°と360°の間である。別法として、Rの値を仮定することができ、可能なφの値のサブサンプルのみが選択される。従って、方法166の残りのステップについて、R値とφ値のペアを参照して説明するが、これらのステップは、Rの値を仮定し、φの値を変動させることで実行できることを理解されたい。
[0096]図19Aに示すように、サブサンプルの組が選択された後、このサブサンプルの組から、処理すべきRとφの値ペアが選択される(ステップ172)。次に、選択されたRとφの値ペア及び上記のU式を使用して、各射影画像に対する「理論上のU」値が求められる(ステップ174)。各射影画像がCTガントリの特定の回転角度に関連するため、U式内で各射影画像に関連するθ値を使用して、それぞれの「理論上のU」を求める。次いで、それぞれの「理論上のU」値の周りにU範囲が定められる(ステップ176)。U範囲は、「理論上のU」値を中心とし、中心からの各方向の大きさは、患者の運動によって引き起こされるマーカの平均又は予想されたU位置からのマーカの最大の予想されたU変動に等しい。
[0097]次に、各射影画像内で識別されるマーカ点のU位置は、各射影画像に対するU範囲と比較される。射影画像内で識別された何れかのマーカ点が、射影画像のU範囲内に入るU値を有する場合(ステップ180)、このマーカ点は、マーカ点候補と識別される(ステップ182)。この範囲に入らないマーカ点は、無視される。2つ以上のマーカ点が、特定の射影画像に対するU範囲内のU値を有することがあることを理解されたい。実際には、複数の隣接する物理的マーカが患者上に位置決めされる場合、射影画像内で識別された2つ以上のマーカが、特定の射影画像に対するU範囲内のU値(即ち、特定のθの値)を有する可能性が高い。
[0098]図20は、一連の300個の射影画像を通じた複数のマーカのU位置を示す。図20に示すように、φ値の試行又は変動が3回実行され、対応するR値は仮定され、一定に保持された。具体的には、第1の試行で60度のφ値を使用し、第2の試行で100度のφ値を使用し、第3の試行で140度のφ値を使用した。これらの試行のそれぞれに対するU範囲を、グラフに破線で示す。各射影画像(x軸参照)に対して、U範囲内のU位置を有する各マーカ点が、候補マーカとして示される。
[0099]次に、各射影画像内の各候補マーカ点に対して、フィッティングメトリックが求められる(ステップ182)。幾つかの実施形態では、フィッティングメトリックは、マーカ候補のU値とU範囲のより近接した境界との間の距離の2乗である。例えば、マーカのU値が20であり、U範囲が0〜30である場合、フィッティングメトリックは、10(20〜30(より近接したU範囲境界)の距離である)の2乗、即ち100に設定されるはずである。マーカのU値が「理論上のU」値と同じである場合、フィッティングメトリックは最大になる。次いで、全ての候補点からのフィッティングメトリック値を合計して累積フィッティングメトリックを作成し、この累積フィッティングメトリックが、現在選択されたRとφの値ペアに割り当てられる(ステップ184)。
[00100]図19Aに示すように、サブサンプルの組内のそれぞれのRとφの値ペアに対してステップ172〜186を繰り返し(ステップ188)、累積フィッティングメトリックを各値ペアに割り当てる。Rとφの値ペアの全てに累積フィッティングメトリックが割り当てられた後、方法166は、全てのRとφの値ペアに対する累積フィッティングメトリックを、R及びφの関数として評価する(図19Bのステップ190)。方法166は、ピーク検出を使用して、この関数内のR及びφのピークを求める(ステップ192)。関数のピークは、それぞれ1つ又は複数の物理的マーカを表すRとφのピーク値ペアである。方法166は、それぞれのRとφのピーク値ペアを、そのピークに関連する対応するマーカに割り当てる(ステップ194)。図21は、φの関数としてRとφの値ペアに対する累積フィッティングメトリックの1次元図(例えば、ヒストグラム)の一例を示す(Rの値は仮定され、一定に保持される)。図21に示すように、図示の関数のピークは、物理的マーカに対するφ値を表す。
[00101]U次元におけるマーカ点の挙動を分析した後、候補マーカが配置され、R値及びφ値が割り当てられるが、同じR値及びφ値を有する2つ以上のマーカが存在する可能性がある。この状況に対処するために、V次元におけるマーカ点の挙動が分析される。図19C〜Dは、本発明の一実施形態によるV次元におけるマーカ点の挙動を分析する方法168を示す。図19Cに示すように、方法168は、方法166中にそのマーカ候補に割り当てられたRとφのピーク値ペアを利用することから開始する(図19Bのステップ194参照)。方法168では、これらの値を使用して候補点を識別し、Zに関して更に評価する(ステップ200)。次いで、全ての可能なZの値のサブサンプルが選択される(ステップ202)。このサブサンプル内の値の数は、実行速度と所望のZ値解像度の間の兼ね合いとして選択される。サブサンプルの範囲は、物理的に可能なZの値(ある時点で走査視野内に入りうる点)の範囲を覆うように選択される。
[00102]次いで、このサブサンプルの組からZ値が選択される(ステップ204)。この1つ又は複数のマーカに対して事前に求められたRとφの値ペア、選択されたZ値及び上述のV式を使用して、各射影画像に対する「理論上のV」値が求められる(ステップ206)。各射影画像がCTガントリの特定の回転角度に関連するため、V式内で各射影画像に関連するθ値を使用して、それぞれの理論上のVを求める。次いで、それぞれの理論上のV値の周りにV範囲が定められる(ステップ206)。V範囲は、理論上のV値を中心とし、中心からの各方向の大きさは、患者の運動によって引き起こされるマーカの平均又は予想されたV位置からのマーカの最大の予想されたV変動に等しい。
[00103]次に、候補リストの一部である各マーカ点のV位置のV値が、このZ試行に対するV範囲と比較される。ある点が射影画像のV範囲内に入るV値を有する場合(ステップ212)、マーカは、更に限られたマーカ点候補と識別される。明確には、点は、候補と見なされるには、そのR値及びφ値に関連するU値の範囲内並びにそのR値、φ値及びZ値に関連するV値の範囲内に入らなければならない。上述のように、特定の射影画像内で識別される2つ以上のマーカ点が、その射影画像に関連する現在のV範囲及びU範囲内のV値及びU値を有することがある。
[00104]図22は、一連の300個の射影画像を通じた3つのマーカのV位置を示す。図22では、Z値の3回の試行又は変動を示す。具体的には、第1の試行で70ミリメートルのZ値を使用し、第2の試行で30ミリメートルのZ値を使用し、第3の試行で−15ミリメートルのZ値を使用した。これらの試行のそれぞれに対するV範囲を、グラフに破線で示す。各射影画像(x軸参照)に対して、V範囲内のV位置を有する各マーカが、マーカ候補として示される。
[00105]図19Cに戻ると、各射影画像内の各マーカ候補に対して、フィッティングメトリックが求められる(ステップ214)。フィッティングメトリックは、マーカ候補のV値とV範囲のより近接した境界との間の距離の2乗である。例えば、マーカのV値が20であり、V範囲が0〜30である場合、フィッティングメトリックは、100(10、即ち20〜30(より近接したV範囲境界)の距離の2乗である)に設定されるはずである。次いで、全ての射影画像からのメトリックフィッティングを合計して累積フィッティングメトリックを作成し、この累積フィッティングメトリックが、現在選択されたZ値に割り当てられる(ステップ216)。
[00106]図19Cに示すように、サブサンプルの組内のそれぞれのZに対してステップ204〜218を繰り返し(ステップ215)、累積フィッティングメトリックを各値に割り当てる。サブサンプルの組内のZ値の全てに累積フィッティングメトリックが割り当てられた後、方法166は、Zと、得られる累積フィッティングメトリックとの関係を評価する(図19Dのステップ218)。次いで、方法166は、ピーク検出を使用して、この関係のピークを求める(ステップ220)。
[00107]累積フィッティングメトリックとZの関係における各ピークは、固有の物理的マーカに関連する。ピークのZ値は、対応する物理的マーカのZ値である。割り当てられたR値及びφ値は、1つ又は複数のマーカに対して事前に見つけた値である。このとき、これらのマーカはそれぞれ、3つ全ての円筒座標(R、φ、Z)に対する既知の値を有する。図23は、Zの関数として累積フィッティングメトリックの1次元図(例えば、ヒストグラム)の一例を示す。図23では、3つのピークが、それぞれ同じR及びφの値である3つの別個の物理的マーカに対応する。
[00108]方法166によって求められた他のRとφのペアのそれぞれに対して、方法168(ステップ200〜222)を繰り返し(ステップ224)、全ての固有の物理的マーカを分離し、それぞれに対するZ値を求める。方法168は、全てのマーカ候補が固有の物理的マーカに分離され、各物理的マーカに3つ全ての円筒座標が割り当てられたときに終了する。割り当てられた円筒座標は、マーカの3D位置を表すマーカの平均のR値、φ値及びZ値である。
[00109]図19A〜Dに関して上述した方法166及び168は、2つの別個の方法を使用してマーカに3D円筒座標を割り当てる(即ち、第1の方法でR値及びφ値を割り当て、第2の方法でZ値を割り当てる)2ステップ処理である。マーカ3D位置特定方法160の第1の代替実装形態では、これらの方法を組み合わせて1回の動作にし、R、φ及びZの値のサブサンプルの組が選択され、値のそれぞれの組合せを使用し、組み合わせたUとVの誤差に基づいて、ただ一つのフィッティングメトリックを求める。この1回の処理の結果、それぞれの分離された物理的マーカと一致するピーク値を有する3次元アレイが得られる。しかし、この実装形態は、別個の方法の実装形態より時間かかることがある。具体的には、R、φ及びZがそれぞれm、n及びq個のサブサンプルを有する場合、第1の代替実装形態では、分離された実装形態のために、(m*n)+qに対してm*n*q回の反復を必要とする。
[00110]マーカ3D位置特定方法160の第2の代替実装形態を使用して、分離された実装形態を速めることもできる。第2の代替実装形態では、最初に説明した2ステップ処理と同様に、R、φ及びZが見つけられるが、第1の方法166で処理されるR値の数(m)は、より粗い頻度でRのサブサンプルを抽出することによって低減されるはずである。これは、フィッティングがR値の影響をそれほど受けないため、妥当である。次いで、φ及びZを固定のまま保持し、より細かく抽出されたRのサブサンプルの組及び上述したフィッティングメトリック処理を使用してRを最適化する第3の方法を追加することができる。
[00111]マーカ3D位置特定方法160の第3の代替実装形態もまた、1つのパラメータ、2つのパラメータ又は3つ全てのパラメータに対して、サブサンプリングをより粗くすることができる。この実装形態はまた、より狭い範囲を覆う各パラメータサブサンプルの組に対してより細かいサンプリングレートを使用する各マーカ候補に対する最終のフィッティング方法を含むことができる。この実装形態では、方法160の速度を増大させるとともに、マーカ位置座標の最終の精度を改善することができる。
[00112]マーカ3D位置特定方法160に対する1つの一般的な難題は、マーカが互いに非常に近接して位置決めされるが、それでもなお各マーカに対して相当な範囲の運動を可能にする状況に対処することである。これらのマーカが、予期される最大の運動ほど分離されない場合、方法160は、2つのマーカが1つのマーカである場合のようにこれらのマーカにラベル付けし、2つのマーカの実際の位置間の位置にこの1つのマーカを割り当てることがある。この状況を防止するために、十分な物理的な離隔距離をもってマーカを患者に配置するべきである。しかし、方法160は、配置基準が守られない状況に対処する必要がある。方法160は、大きな割合の射影画像が候補点許容範囲内に2つ以上のマーカを有する状況を識別するように又は累積メトリックピークがただ一つのマーカの場合に予期されるより大きい状況を識別するように修正することができる。これらの状況の何れかが検出された場合、方法160は、2つのマーカをより適切に分離するための追加の処理を含むことができる。1つの手法は、マーカの重複が疑われるとき、より細かいサブサンプリング及び疑わしいマーカだけを覆うように絞られた範囲で、位置特定処理を繰り返すことであろう。
[00113]第2の難題は、マーカ運動が累積フィッティングメトリック内で2つのピークを引き起こしたときである。この場合、ただ一つのマーカが2つに見える。この可能性に対処するために、方法160は、θ範囲を部分範囲に分割し、各部分範囲内で別個にフィッティングを実行し、次いで結果をマージすることができる。更に、方法160では、3つの座標パラメータ、R、φ及びZに対する候補点許容範囲を適応可能に変化させることもできる。例えば、方法160は、運動がほとんどないものとすると、密接するマーカを十分に分離するように、小さい許容範囲で開始することができる。恐らく運動のため、これらの範囲内に十分な数の点が含まれない場合、十分な候補マーカ点が見つかるまで、この範囲を増大させることができる。
[00114]通常、マーカ3D位置特定方法160は、走査中に2センチメートル程度の患者の運動の存在下で、1ミリメートルを上回る座標解像度まで、マーカの位置を特定する。方法160はまた、24個以上のマーカの存在下で実質上動作し、測定ノイズに耐える。最後に、方法160は、約5秒未満で300個の射影画像にわたって24個のマーカを処理することができる。
患者上の物理的マーカへの点のマッピング
[00115]画像マーカ点が識別されて位置が特定され、対応する物理的マーカが識別されて3D座標が割り当てられた後でも、各マーカ点を、患者に配置された特有の物理的マーカに割り当てなければならない。600個の画像及び9個のマーカを用いる典型的なCB−CT走査では、射影画像内で5,000個を超える識別点をそれぞれ、9個の物理的マーカの1つに割り当てなければならない。
[00116]ただ一つの射影画像内で識別されたマーカ点を見ると、画像内で識別された特定のマーカ点を患者上に位置決めされた特定の物理的マーカに割り当てるのに十分な情報がない(少なくとも、通常は十分でない)。理想では、マーカが物理的に動かず、マーカの物理的な位置が正確に分かっている場合、射影画像内で識別された任意のマーカ点に対して、1つの射影画像から次の画像へのマーカ点位置の変化の固有のU追跡及びV追跡を定めることができる。特定のマーカが1つの射影画像から次の射影画像へ行う点位置追跡には、1つの物理的マーカだけが一致している。従って、理論的には、これらの2つのマーカ点を対応する物理的マーカに割り当てるには、2つの射影画像で十分である。
[00117]しかし、射影画像内でのマーカの物理的な位置が正確に分からないとき又は走査中に著しい量の患者の運動(若しくは不測のガントリ運動)が生じた場合、追加の難題が生じる可能性がある。これらの場合、あるレベルの軌道の不確実性が追加され、射影画像内で識別されたマーカ点を患者に配置された物理的マーカに適切に割り当てるのを複雑にする。
[00118]図24A〜Eは、本発明の一実施形態による、射影画像内で識別されたマーカ点を患者に配置された特有の物理的マーカに割り当てる物理的マーカマッピング方法250を示す。通常、方法250は、患者の運動の存在下で連続する射影画像内のマーカ点位置を追跡し、射影画像ごとに各マーカ点を評価して、特定の物理的マーカに関連する可能性が最も高いマーカ点を識別する。方法250は、マーカ点に対して測定されたU及びVと物理的マーカに関連する理論上のU及びVの距離並びにこれらの距離の時間導関数を含めて、複数の異なる基準を使用する。
[00119]図24Aに示すように、方法250の最初のステップは、走査に関連する全ての物理的マーカを識別して、それぞれに対する近似の3D位置を取得することを含む(ステップ252)。このステップは、物理的な測定、再生された画像データセットからの測定又は射影画像の直接分析を使用して行うことができる。幾つかの実施形態では、方法250は、上述した物理的マーカ位置特定方法160を使用して、各物理的マーカに対する近似の3D位置を取得する。
[00120]次に、方法250は、1つの物理的マーカを選択し、各射影画像に対する予想されたU位置(Uimage)及び予想されたV位置(Vimage)を計算する(ステップ254)。方法250は、CTガントリの特定の幾何形状に基づいて、空間内の物理的な点が画像間でどのように動くことが予期されるかを記述する以下の等式を使用する。
[00121]例えば、CTガントリが回転中心の周りを平滑に回転すると仮定すると、Rは、回転面内のこの中心からの点の距離であり、φは、マーカの角度位置であり、Zは、中心回転面(即ち、X線源の位置を定める点を含む面)からのマーカの距離である。DSDは、X線源から検出器面までの距離であり、DSOは、X線源からCTガントリの回転中心までの距離である。各射影画像は、ガントリ回転角度θで獲得される。これらの等式を使用して、方法250は、各射影画像角度θにおけるR、φ及びZの3D位置を用いて、物理的マーカの予想されたU及びVの射影画像位置を定める。
[00122]次いで、方法250は、予想されたU及びVのマーカ画像位置を使用して、物理的マーカに対する軌道の予想されたU範囲及び予想されたV範囲を定める(ステップ256)。これらの範囲は、患者の運動の存在下でも、物理的マーカに関連する全ての点を含むのに十分な大きさである。例えば、画像の獲得中に患者が20ミリメートル程度動くことが予期される場合、特定の物理的マーカに対する予想されたU範囲及びV範囲は、
及び
になるはずである。
[00123]次いで、方法250は、物理的マーカに対する候補点リストを作成し(ステップ258)、予想されたU範囲と予想されたV範囲の両方の範囲内に入る各射影画像内で識別された各マーカ点を追加する(ステップ260)。図25は、特定の物理的マーカに対する例示的な予想されたU範囲(点線間)及び一連の射影画像を通じて識別されるマーカ点の例示的なU位置を示すグラフである。図26は、図25に示すマーカのうち、図25に示す予想されたU範囲内にU位置を有するものを示す。これらのマーカのうち、同じく予想されたV範囲内にV位置を有するものは何れも、物理的マーカの候補点リストに追加される。例えば、図27は、候補点リストの一部分を示す。図27に示すように、候補点リストは、予想されたU範囲及びV範囲内に入るU位置及びV位置を有する各射影画像からの各マーカを含む。物理的マーカに関連するマーカ点の最終のリストは、この候補点リストから選択される。図27に示すように、候補点リストは、特定の射影画像内に1つより多くのマーカを含む可能性がある(この例では、射影1と射影6の両方で2つの候補点が生じる。これは、一連の射影画像を通じて2つのマーカが互いの経路を交差するときに生じる可能性がある。また、2つの物理的マーカが患者上で互いに近接して位置決めされた場合も、特定の射影画像に対する候補点リスト内に2つ以上のマーカ点が位置する可能性がある。
[00124]図24A及び24Bに示すように、候補点リストを作って取り込んだ後(ステップ258及び260)、方法250は、U次元とV次元の両方に対して、候補点リスト内に含まれる各点に対する実際のマーカ点の位置から物理的マーカの「予想された」マーカ位置を引くことによって、候補点リストを処理する(ステップ262)。この処理は、マーカの位置を平坦化して、「予期からの誤差」候補点リストを作成する。従って、「予期からの誤差」候補点リストは、射影画像内に反映される物理的マーカの予想位置と実際のマーカ点位置の間の不一致又は誤差(例えば、患者の動き又は測定の誤差によって引き起こされる)の量を表す。図28は、例示的な候補点リストに適用されるこの平坦化処理を示す。
[00125]物理的マーカに対して「予期からの誤差」候補点リストが作成された後、点追跡処理が行われる。この処理の目的は、1つの射影から次の射影へ進み、次の射影内で正しい点である「可能性」が最も高い1点、即ち関連する物理的マーカによって本当にもたらされた可能性が最も高い点を選択することである。これを実現するために、複数の発見的方法が適用される。全体的な処理は通常、同期及び追跡という2つの構成要素を有する。同期の構成要素では、特定の点が物理的マーカに関連する可能性が高いことが分かるまで、点リストが、一度に1射影ずつ処理される。追跡の構成要素は、この時点から開始し、引き続き射影ごとに、このマーカによって形成されることが予期されるはずの追跡に最も一致している1つ(又はゼロ)の点を(その射影におけるゼロから複数の点のリストから)選択する。設定された数の画像に対して一致する点が見つからない場合、同期は失われ、再取得しなければならない。追跡処理は、射影番号を増大させる方向にも、射影番号を低減させる方向にも進むことができる。
[00126]追跡処理では、新しい射影ごとに、点が存在しない場合、1つの点が存在する場合及び2つ以上の点が存在する場合という3つの可能な場合がある。運動及び測定のノイズは、「正しい点」が予期される場所にない可能性があるという点で、この処理を複雑にする。これは、「疑わしい点」の概念を実施することによって対処される。最良の候補点が何らかの基準の範囲内に入らない場合、この点は疑わしいとラベル付けされる。このラベルは、今後の射影における点の位置に関してその位置を見ることによって除去され、この点は包含又は排除される。以下は、この処理に対する詳細を提供する。
[00127]幾つかの実施形態では、方法250の追跡の構成要素、ステップ266〜352は、射影番号を増大させる方向と射影番号を低減させる方向のどちらにでも実行することができる。後者の場合、「次の射影」及び「前の射影」への言及並びに順序に関する他の用語は、処理方向に対するものであることを理解されたい。
[00128]図24Bに戻ると、ステップ262で候補点リストを処理した後、方法250は、物理的マーカに対して空の良好点リストを作成する(ステップ264)。より詳細に後述するように、良好点リストには、物理的マーカに関連する可能性が高い射影画像内で識別されたマーカ点が取り込まれる。第1のステップは、同期である(ステップ266〜270)。方法250は、各画像が候補点リスト内にただ一つの候補点を有する場合、3等の定められた数の連続する射影画像が見つかるまで、候補リストを一度に1射影ずつ試験する(例えば、第1の射影画像から開始する)(ステップ266)。検出された一連の射影画像内の第1の射影画像に関連する点は、「基準良好点」又は基準点とラベル付けされる(ステップ268)。更に、方法250は、この点を良好点リストに追加する(ステップ270)。図29は、例示的な候補点リスト上での同期処理を示す。図29に示すように、候補点リストは、3つの連続する射影画像のシーケンス271を含み、シーケンス271内の各画像は、候補点リスト内に1つの点だけを有する。同期処理では、検出されたシーケンス(271aとラベル付け)内の第1の射影画像は、基準良好点とラベル付けされたただ一つの候補点271bを含み(ステップ268)、良好点リストに追加される(ステップ270)。
[00129]同期が取得された後、方法250は、シーケンス内の「次の」射影画像へ進む(ステップ272)。幾つかの実施形態では、方法250は、同期処理内で見つかった射影画像を使用し、まずこの点から後方へ進み、次いで前方へ進む。後方処理は、良好点リスト内に点を有する射影に到達するまで又はこれが第1の同期である場合、第1の射影まで続けられる。前方処理は、最後の射影に到達するまで又は同期が失われるまで続けられる。この場合も、連続する射影を処理するとき、「次」の定義は、処理が前方へ進むか、それとも後方へ進むかに依存する。
[00130]次の射影画像へ進んだ後、方法250は、その射影画像内に候補点がいくつあるかを判定する(ステップ274)。幾つかの実施形態では、ステップ274に対する結果には2つのカテゴリがある。次の射影画像は、1つ若しくは複数の候補点を含む可能性があり又は候補点を含まない可能性がある。図30は、次の射影画像275が2つの候補点を有する状況を示す。図31は、次の射影画像275が1つの候補点だけを有する状況を示し、図32は、次の射影画像275が候補点をもたない状況を示す。
[00131]図24B及び24Cに戻ると、次の射影画像が1つ又は複数の候補点を有する場合、方法250は、次の射影画像内の各候補点と、良好点リスト内の最近追加された「良好点」との間で、θ(射影角度)に対するU及びV位置誤差の導関数を求める(ステップ276)。この導関数は、事実上、図27のように、2つの点を接続する線の平坦さを表す。ゼロの導関数は、実際と理論の間の誤差の量が2つの画像間で変化しなかったことを意味する。
[00132]次に、方法250は、ゼロに最も近い導関数に関連する候補点を選択し(ステップ278)、この点を良好点リストに追加する(ステップ280)。ただ一つの候補点だけが存在する場合、この点が選択される。候補点リストを平坦化して、誤差(例えば、患者の動き又は測定ノイズによって引き起こされる)を除く全ての影響を除去したため、2つの隣接する射影内のマーカ点間で位置誤差導関数の分散が大きいことは、(1)画像内の構造若しくは物体が誤ってマーカと定められたこと又は(2)そのマーカ点が実際には異なる物理的マーカに関連することを示すことができる。
[00133]従って、隣接する射影画像に関連し、ゼロに近い導関数を有する候補点リスト内の2つのマーカは、同じ物理的マーカに関連する隣接するマーカである可能性が高い。例えば、図30に示すように、次の射影画像275は、2つの候補点292a、292bを含む。基準「良好点」293と候補点292aの間の導関数は、基準良好点293と候補点292bの間の導関数よりゼロに近い。従って、ステップ278では候補点292aが選択される。別の例として、図31に示すように、次の射影画像275は、1つの候補点292aを含む。基準良好点293と候補点292aの間の誤差導関数が計算され、ステップ280で、候補点292aが良好点として良好点リストに追加される。
[00134]ゼロに最も近い導関数に関連する候補点を選択した後、方法250は、候補点の導関数が導関数試験に通るかどうかを判定する(ステップ282)。導関数試験は、微分値が0.02mm等、所定の量を超える分だけゼロとは異なるかどうかを判定することを含むことができる。異ならない場合、候補点は導関数試験に通り、方法250は、この点に基準良好点とラベル付けする(ステップ284)。この点が導関数試験に通らなかった場合、方法250は、この点に「疑わしい点」とラベル付けする(ステップ286)。この新たに追加された点を使用して、後の射影画像内の候補点を処理する。
[00135]導関数試験に対する所定の量は、方法250の感度を修正するように設定及び変更することができる。例えば、所定の量をより大きい値に設定して、良好点リストに追加される疑わしい点をより少なくすることができ、それによって、特定の物理的マーカへ最終的にマッピングされるマーカ点の量を増大させることができる。幾つかの実施形態では、導関数試験は、次の射影画像内の候補点の数、良好点リストが疑わしい点を含むかどうか等に基づいて、変動する可能性がある。幾つかの実施形態では、疑わしいとラベル付けされた点は、今後の処理で考察されずに、常に不良と見なされ、良好点リストに追加されないことがある。これらの場合、関連する射影は点をもたないはずである。
[00136]再び図24Bのステップ274に戻ると、次の射影画像がいかなる候補点も含まない場合、方法250は、次の射影画像を飛ばし、引き続き、最近追加された基準良好点(及び適宜最近追加された疑わしい点)を使用して、後の射影画像内の候補点を処理する(ステップ292)。例えば、図32に示すように、次の射影画像275は、いかなる候補点も含まない。従って、方法250は、次の射影画像275を飛ばし、引き続き、最近追加された基準良好点293(即ち、現在の射影画像295から)を使用して、後の射影画像297内の候補点(複数可)(例えば、候補点296a)を処理する。
[00137]疑わしい点は、測定ノイズにより特定の点が誤って配置されたため又は患者若しくは計画外のガントリの運動で物理的マーカ内の実際の動きを引き起こしたために存在する可能性がある。適切な運動補正のためには、前者に関係する点を排除し、後者に関係する点を含むことが望ましい。疑わしい点の取扱いは、これらの運動補正の目標に対処する。基本的に、疑わしい点を取り扱う方式の実装形態は、運動のために疑わしい点の挙動は、複数の隣接する射影内に反映される可能性が高いという概念に基づく。従って、疑わしい点が警告された後、最終の分類は、今後の射影挙動及び更なる可能な過去の射影挙動を試験することに依存する。
[00138]上述のように、方法250が、良好点リスト内に前の疑わしい点(古い疑わしい点とも呼ばれる)が存在し、次の射影画像が1つ又は複数の候補点を有すると判定した場合、特別な処理が必要とされる(図24D内のステップ300及び302参照)。その場合、誤差導関数は、良好点リスト内の疑わしい点と最近追加された点との間に形成される(ステップ300及び302)。疑わしい点に関連する導関数を形成した後、方法250は、この導関数が導関数試験に通るかどうかを判定する(ステップ304及び306)。導関数試験は、微分値が0.02mm等、所定の量を超える分だけゼロとは異なるかどうかを判定することを含むことができる。導関数が所定の値より小さい分だけ異なる場合、疑わしい点は導関数試験に通ったと考えられる。導関数が所定の値以上に異なる場合、疑わしい点は導関数試験に落ちたと考えられる。この疑わしい点が導関数試験に通った場合、疑わしいというラベルはこの点から除去される(ステップ308及び310)。疑わしい点が導関数試験に落ちた場合、前の点による導関数試験及び後続の点による導関数試験という2つの導関数試験に落ちたため、この点は良好点リストから除去される(ステップ312及び314)。
[00139]前の疑わしい点が導関数試験に通り、良好点リストに最近追加された点がその導関数試験に落ちた場合、この前の疑わしい点が、後続の射影の処理における基準良好点になる(ステップ316)。この場合、運動が生じており、前の疑わしい点が、ここで新しいマーカ位置の最良の表示であると見なされる。
[00140]例えば、図33に示すように、疑わしい点321と候補点323の間の第1の導関数はゼロに最も近く、導関数試験に通る。更に、良好点320と候補点323の間の対応する第1の導関数は、導関数試験に落ちる。従って、ステップ310で、疑わしい点321の疑わしいというラベルが除去される。前にラベル付けされた疑わしい点321は、次の射影画像を処理する際に、基準点として使用される(ステップ316)。
[00141]点の追跡には複数の代替実施形態があり、多くは、疑わしい点を取り扱う代替方法を伴う。一実施形態では、方法250は、候補点を有する誤差導関数が、2以上の所定の数の連続する射影画像に対して基準良好点を有する対応する導関数よりゼロに近い場合、疑わしい点を良好点として許容し又はラベルを付け直すように構成される。例えば、方法250は、1行内の3つの射影画像に対して、疑わしい点と候補点の間の導関数が基準良好点と候補点の間の対応する導関数よりゼロに近いかどうかを判定することができる。近い場合、方法250は、この疑わしい点を良好点としてラベルを付け直す。疑わしいものを許容するのに必要な射影画像の数は、方法250の感度を変化させるように設定及び修正することができる(即ち、最終的に良好点として受け入れられる疑わしい点の数)。別の代替実施形態では、あらゆる更なる考察から、あらゆる疑わしい点をすぐに除去することもできる。そのような場合、再同期への依拠がより大きくなることがある。別の実施形態では、疑わしい点フラグは、疑わしいとの個々の点のラベル付けを置き換える。この場合、疑わしい点フラグが設定された状態で実行される処理は、候補点リストがただ一つの点を有するか、それとも2つ以上の点を有するかに応じて異なることがある。
[00142]5等、特定の数より多い射影が候補点をもたない場合、処理は同期を失ったと宣言される(ステップ299)。これらの場合、上述した同期処理を繰り返して、再び同期を獲得する。
[00143]図24C及び24Dに示すように、次の射影画像内の候補点(複数可)を処理した後、方法250は、次の射影画像を新しい現在の射影画像と定め(ステップ350)、新しい現在の射影画像に対してステップ272〜350(即ち、当該ステップ)を繰り返す。この処理は、最初の現在の射影画像から一方向に全ての射影画像が「次の射影画像」として処理されるまで繰り返される(例えば、第1の射影画像に到達し、次の射影画像として処理される)(ステップ352)。
[00144]幾つかの実施形態では、方法250の射影画像ステップ266〜352は、最も低い射影番号から最も高い射影番号まで進んだ後及び最も高い射影番号から最も低い射影番号まで進んだ後、2回完全に実行することができ、各方向で別個の良好点リストを生成する。これらの点リストが生成された後、これらの点リストを射影ごとに組み合わせて新しいリストにし、どちらの元のリストにもないあらゆる点は除かれる。このステップにより、最終の良好点リスト内に含まれるあらゆる点が正しい可能性がより高くなる(ステップ354)。図30〜32は、後方即ち逆方向に射影画像を処理することを示す。図33は、前方方向に射影画像を処理することを示す。
[00145]射影画像が何れかの方向に処理された後、方法250は、各物理的マーカに対してステップ254〜354を繰り返す(ステップ356)。例えば、走査前に9個の物理的マーカが患者に配置された場合、方法250は、9個の物理的マーカのそれぞれに対してステップ254〜354を繰り返す。各物理的マーカに対してステップ254〜354が実行された後、方法250では各物理的メーカに対する良好点リストが作成されており、各良好点リストは、特定の物理的マーカに関連する可能性が最も高い射影画像内で識別されたマーカ点である「良好点」を含む(ステップ260)。各良好点リストは、特定の物理的マーカに関連する各射影画像から、ゼロ又は1つのマーカ点だけを含むことができる。良好点リスト内の「良好点」を使用して、患者運動情報を抽出することができる。例えば、連続する射影画像を通じてマーカ点として反映される物理的マーカの予想位置を、連続する射影画像を通じて物理的マーカに関連するマーカの実際の位置と比較して、患者の動きの量を求めることができる。
[00146]1つの一般的な難題は、物理的マーカが互いに近接して(例えば、患者の動きに対して可能な範囲より互いに近接して)位置決めされた場合、マーカを特定の物理的マーカに適切に割り当てるのが困難になることがある。これは、物理的マーカを患者に配置するときに適切な距離だけ分離することによって回避することができる。それにもかかわらず、方法250は、少なくとも部分的に、配置基準が守られない状況に対処するように設計される。この状況が生じた場合、追跡処理でマーカ点を誤って割り当てる可能性があり、この処理は「トラックジャンピング(track jumping)」と呼ばれる。1つのマーカ点が誤ったトラックへ「ジャンプ」した後、新しい(且つ誤った)トラック内の一連の点が欠落していない限り、正しいトラックへジャンプして戻るのに良い根拠がないことがある。方法250は、マーカのトラック上の欠落点に対処できるが、余分な欠落点は、トラックジャンピングを招く可能性がある。この可能性は、物理的マーカの候補点リストに対して小さい範囲の候補点を選択することによって最小にすることができる(例えば、患者の動きの量がより低いと予期されるため)。
[00147]更に、射影画像を両方向(例えば、前方及び後方)に処理することで、トラックジャンピングを識別して除くことができる。例えば、射影画像を前方方向に処理する結果と射影画像を後方方向に処理する結果を比較することによって、方法250は、追跡上の問題を示す、延びた長さの差を識別することができる。追跡上の問題を識別する別の方法は、異なる物理的マーカに対する良好点リストを比較することである。2つの良好点リストが少数(例えば、1又は2)を超える同じマーカを含む場合、方法250は、誤った追跡上の問題を検出して補正することができる。しかし、マーカ点検出が妥当であり、物理的マーカが約1センチメートル以上分離された状態では、方法250には通常、トラックジャンピングは存在しない。
[00148]マーカ点識別方法60、マーカ点サブピクセル位置特定方法110、物理的マーカ3D位置特定方法160及びマーカ点マッピング方法250について、CB−CT撮像に関連して説明したが、これらの方法は、CT、MRI、超音波、他の形式の医療用の撮像及び写真等の非医療用の撮像の形式にも有用である。例えば、マーカ点識別方法60は、明確な形状の物体(例えば、小さい物体)を複雑な背景から迅速に分離する必要がある状況で使用することができる。更に、マーカ点識別方法60について、円形又は球形のマーカとともに使用する場合を説明したが、方法60は、他の明確な形状のマーカ点に対して使用することもできる。例えば、ステップ80(方法60の一部)のステップ86及び88は、他の形状を認識するように修正することができる。方法60はまた、患者の体内の明確な解剖上の物体をマーカとして使用することもできる。更に、方法60は、特定の目印の全体的な形状を探すことによって解剖上の目印を抽出する開始点として使用することができる。
[00149]同様に、マーカ点サブピクセル位置特定方法110は、形状の特性が分且つており、特定の画像内のマーカの全体的な向きを確認できる限り、あらゆる任意の形状のマーカに適用することができる。様々な手法を使用して、マーカの全体的な向きを確認することができる。例えば、1つ(又は2つ)の次元における範囲を使用して他の次元におけるマーカ点プロファイルの位置を定めることを助けることで、マーカ点を全体的に評価することができる。次いで、マーカ点プロファイルは、簡単な第1のモーメントの計算又はより細密なカーブフィッティングで処理することができる。更に、画像の形状を、異なる向きで予期される形状の図と比較することができ、適当な形状を選択することができる。更に、CT画像データの再生を使用してマーカの3D画像を作り出し、その向きを求めてから、適切な曲線関数を定めてフィッティングすることができる。
[00150]マーカ点サブピクセル位置特定方法110はまた、医療用の撮像及び非医療用の撮像で、他の潜在的な適用分野を有する。例えば、歯科用の撮像では、歯列矯正治療でブラケットを配置するために方法110を使用することができ、ブラケットの位置は、約100マイクロメートル以上の精度まで評価することができる。また、方法110を使用して、異なる時点で獲得されたが同じ外部又は内部マーカを有する画像を正確に位置合わせすることもできる。同様に、マーカ3D位置特定方法160の基本的な手法は、天文学等、マーカを使用しないCT走査及び他のCT以外の走査の適用分野でも使用することができる。
[00151]物理的マーカマッピング方法250はまた、単に患者の運動を追跡すること以外の潜在的な適用分野を有する。例えば、方法250を使用して、理想的でない回転を受けたガントリに対して動的な較正を行うことができる。この場合、方法250は、埋込みマーカを含む固定の模型に適用されるはずである。この適用分野は、X線画像増倍管(C−Arm走査設備と呼ばれることもある)を有するCTシステムにとって特に有用なはずである。更に、方法250は通常、物体が「理想的な」進行を有するが、実際には理想的でないこともあるシステムとともに使用することもできる。
[00152]更に、上述した方法では、様々なデータ処理技法を使用することができる。例えば、マーカ点マッピング方法250では、候補点、良好点及び疑わしい点を追跡するための様々なリスト及びリストの組合せ又は表を使用することができる。例えば、方法250は、別個の良好点リストを作成するのではなく、候補点リストを作成し、良好でない点を除去することができる。更に、方法250は、点の1つ又は複数のリストを作成し、フラグ又はビットを使用して、候補点、良好点、不良点及び疑わしい点を区別することができる。
[00153]また、図2は、別個のモジュール(例えば、50、52、54、56等)を記憶するROMモジュール46を示すが、幾つかの実施形態では、これらのモジュールを組み合わせて、ROMモジュール46、他のメモリモジュール又はこれらの組合せ内に記憶された1つ又は複数のモジュールに分散させる。例えば、幾つかの実施形態では、同じモジュールが、マーカ識別方法及びマーカサブピクセル位置特定方法を実行する。更に、ROMモジュール46は、上述した関数以外の関数を実行する他のモジュールを含むことができる。幾つかの実施形態では、これらのモジュールを、ハードディスク、フラッシュ又は他の半永久的な媒体上に記憶して、実行の際にはRAMへ伝達することができる。
[00154]従って、本発明は、とりわけ、画像内のマーカ点を識別し、画像内で識別されたマーカ点のサブピクセル中心点を求め、画像内で識別されたマーカに対する3D座標を求め、患者に配置された特定の物理的マーカにマーカ点をマッピングする方法及びシステムを提供する。本発明の様々な特徴及び利点を、以下の特許請求の範囲に記載する。
[0001]本発明の実施形態は、画像処理に関する。詳細には、実施形態は、X線画像内に位置するマーカに関連した点の検出、位置特定及び分類を行う方法及びシステムを提供する。
[0002]現在の撮像システムは、1回の処置又は走査中に多くの画像を獲得する。これらの画像は、再生と呼ばれる処理を使用して組み合わされ、患者を通る有限幅の「スライス」を表す1つ又は複数の画像を作り出す。得られる画像は、医療若しくは歯科処置に備えて又は撮像機器を適切に較正するためにしばしば分析されるため、可能な限り明瞭であることが重要である。しかし、走査中の患者の動きが、画像内に誤差又はぼけを引き起こす可能性がある。
[0003]撮像手順の前には、しばしば患者にマーカが配置される。マーカは、得られる画像上にマーカ点として現れ、画像内の特定の特徴を識別するために使用される。マーカ点はまた、患者の動きに対して画像を補正するために使用することができる。典型的な運動補正シナリオでは、走査中に取り込まれる数百(例えば、600)個以上の画像のそれぞれにおいて、比較的少数のマーカ(例えば、7個)を識別しなければならない。従って、マーカを使用して患者の運動を検出及び補正することは、これらの画像内で数千個のマーカ点(例えば、上記の例を使用すると4,200個のマーカ点)を自動的に識別できる場合しか実用的でない。マーカ点の識別は、X線撮像の非線形の性質及びX線画像の比較的大きなダイナミックレンジによって更に複雑になる。
[0004]更に別の複雑な問題は、マーカ点の識別及び得られる運動補正は、完了しなければ画像の再生を開始できないため、迅速に実行する必要があることである。画像上のマーカ状の点を識別する既存の方法は、これらの点の概ね円形の性質に依拠し、画像勾配処理
又はハフ変換の変形等の点識別技法を用いており、これには、完了するのに1画像当たり30秒程度かかる可能性がある。最も簡単な方法でも、1画像当たり1/10秒以上かかる可能性があり、多くの場合、1画像当たり5秒程度かかる。
[0005]これらの運動補正方法の精度は、マーカ点の位置を抽出する精度に直接関係する。例えば、大部分の補正方法では、マーカの位置は、ピクセルの1/4から1/8の精度まで特定しなければならない。この程度の精度を、広いダイナミックレンジの背景値、画像背景に対する非線形の依存性及びノイズの存在下で実現しなければならない。多くの既存の補正方法は、画像背景の非線形の性質に適切に対処できず、画像の縁部で位置誤差を招く。これらの既存の方法はまた、画像内のマーカが互いに比較的近接しているときはうまく機能しない。
[0006]画像内でマーカ点が識別された後、これらのマーカ点は、マーカ点の起源である物理的マーカに再びマッピングする必要がある。これらの物理的マーカは、3次元(「3D」)の位置座標によって一意的に識別される。従って、特定のマーカに関連する各射影画像から点のリストを作成するために、1つのステップは、各マーカの物理的な位置を識別することである。これは、各マーカに対して、ガントリが回転するにつれてマーカによって作成される点の位置が射影画像間でどのように変化するのかと最も一致している3D位置を識別することによって行うことができる。しかし、各マーカの関連する点の位置は、患者の動き又は計画外のシステム若しくは機器の動きのため、予想位置から著しく変動することがある。従って、ノイズ若しくは患者の運動が存在するとき又は複数のマーカが互いに近接して位置決めされたとき、マーカの3次元座標を識別する精度は低下する。マーカの3D位置を識別する既存の技法では、遠隔センサによって検出されて位置に変換される位置依存性の電磁界を使用することがある。この送信器及びセンサのシステムの複雑さに加えて、このシステムによって使用される技術は、マーカの3次元位置を求めるのに複数のセンサに依存する。他の位置特定技法は、複数の検出箇所間の固定の関係に関する知識に依存する光学的技術を伴い、この技術の複雑さを増大させる。
[0007]画像点に関連する物理的マーカが識別され、それぞれに位置が割り当てられた後でも、各画像上の各点をそのソースマーカに割り当てるという問題が依然として存在する。これを行うまで、全ての画像内の全ての点は、ただ一つのリストとしてしか存在しない。点の割当て(マーカ追跡)では、各画像上の各マーカ点と、そのマーカ点を実際に生成したマーカを関連付けることを試みる。点の割当てが完了した後、各マーカは、このマーカに関連するマーカ点の別個のリストを保有する。各マーカの別個のリストには、各射影画像に1つのマーカ点しかないことや、マーカ点がまったくないことがある。運動及び測定誤差の存在下でも、マーカとマーカに関連するマーカ点の正しい対応関係が維持されることが重要である。
[0008]実施形態は、画像内のマーカに関連した点を迅速に識別し、次いでこれらの点を運動補正システム内で使用できるシステム及び方法を提供する。1つの方法は、各射影画像を処理して円形の物体(即ち、マーカ点の形状)を除く全ての物体の明度を低減させるステップと、各画像内の極大を識別するステップと、極大を増大させて候補領域を作成するステップと、真円度及び射影の連続性の基準を各候補領域に適用するステップとを含む。この方法では、他の方法と比較して全体的な画像処理時間を少なくとも1桁低減させるように、一連の適用された単純平均フィルタ、差及び除算/減算演算を使用して、円形の物体を除く全ての物体の明度を低減させる。1つの方法は、画像を取得するステップと、2Dハイパスフィルタを適用して背景抑制画像を作成するステップと、背景画像からマーカに関連した点を抽出するステップとを含む。
[0009]実施形態はまた、画像内でマーカ点位置の正確なサブピクセルの位置特定を実行するシステム及び方法を提供する。1つの方法は、2つの次元のそれぞれにおいて画像内で識別された各マーカ点の位置を個別に評価するステップを含む。この評価は、マーカ点の片側又は両側をサンプリングすることにより、各マーカ点の背景プロファイルを求めることによって行われる。基線プロファイルとマーカ点プロファイルの比をとることで、X
線減衰の非線形の性質に対処しながら、背景の影響を補正する。残りの背景オフセットは、マーカ点プロファイルの末端の平均値を引くことによって除去される。最後に、得られるマーカ点プロファイルを評価して、マーカ点の位置を表すその第1のモーメントを求める。別法として、プロファイルは、位置フィットパラメータを使用してそのマーカ点プロファイルに理論上のマーカ点プロファイルをフィッティングすることによって処理することができる。この方法は、射影画像のピクセルサイズより著しく高い解像度で、コンピュータ断層撮影走査の射影画像内のマーカ点の位置を求める。更に、この方法は、著しく不均一な背景及び隣接する構造の存在下で、マーカの識別又は位置特定を実行する。1つの方法は、マーカ点を含む画像を取得するステップと、背景補正されたマーカ点プロファイルを導出するステップと、背景及び基線補正されたマーカ点プロファイルを導出するステップと、背景補正されたマーカ点プロファイルのピークの中心として、マーカ点のサブピクセル位置を定めるステップとを含む。
[0010]実施形態はまた、近似の3D位置を迅速に識別して、画像上のマーカ点に関連するマーカに割り当てるシステム及び方法を提供する。1つの方法は、射影画像から射影画像への観察されたマーカ点の位置変化を得るステップと、φ、Z及びRの円筒座標の異なる可能な値を使用することによって定められた理論上の射影軌道にこの位置変化をフィッティングするステップとを含む。このステップは、1つ又は複数の円筒座標次元に対する潜在的な値の組を定め、この組からこれらの値の1つを選択することを含む。次いでこの方法は、この組から選択された値によって定められた軌道からの距離の範囲内に入る各射影画像内のマーカ点を求める。次いで、軌道範囲の境界からの各マーカ点の平均2乗距離を見つけることによって、この範囲内に入る各マーカ点にメトリックが割り当てられる。このメトリックを、範囲内の全てのマーカ点に対して合計して、特定の試行座標値の組に関連するただ一つのメトリックを導出する。これらのステップは、潜在的な座標値の組内の各値に対して繰り返され、得られるこのメトリックの値を(座標値の関数として)評価して関数ピークを判定し、関数ピークはそれぞれ、1つ又は複数のマーカの集団を表すものとする。これらのピークに関連する1つ又は複数の円筒座標に対するこれらの座標値は、対応する導出された物理的マーカに割り当てられる。これらのステップは、3つ全ての座標にマーカが割り当てられるまで、残りの円筒座標に対して繰り返される。メトリックフィッティングの性質のため、ノイズ及び患者の動きの存在下で平均マーカ位置を見つけ、互いに近接して位置決めされた複数のマーカを抽出して分離することが可能である。1つの方法は、画像シーケンスを取得するステップを含み、各画像は、スキャナの回転角度を表し、第1の値及び第2の値を有する。この方法はまた、この画像シーケンスにわたってマーカ点位置の第1の値の挙動を分析して、マーカの径方向の距離及びマーカの角度位置を求めるステップを含む。この方法はまた、この画像シーケンスにわたってマーカ点位置の第2の値の挙動を分析して、マーカの軸方向の位置を求めるステップを含む。
[0011]実施形態はまた、マーカ追跡と呼ばれる処理を通じて、各射影画像内の各マーカ点を、そのマーカ点に関連する可能性が最も高いただ一つの物理的マーカに割り当てるシステム及び方法を提供する。1つの方法は、複数のマーカ点を有する画像シーケンスを取得するステップと、各画像内の物理的マーカに対する予想のU及びVの位置及び範囲を計算するステップとを含む。この方法はまた、物理的マーカを選択するステップと、その物理的マーカに対して理論的に求められた各射影画像内の予想マーカ点位置の範囲に入るマーカ点から構成される候補点のリストを作成するステップとを含む。この方法は、リスト内の各マーカ点の実際の画像位置から物理的マーカの理論上の軌道を引いて理論からの誤差を各マーカ点に割り当てることによってリストを処理するステップを更に含む。方法は次いで、U方向とV方向の両方における候補リスト内の連続する点の誤差間の第1の時間導関数及び他の基準に基づいて、射影ごとにリストを検討し、リストを1射影画像当たりゼロ又は1つの「良好点」に絞る。
[0012]本発明の他の態様は、詳細な説明及び添付の図面を検討することによって明らかになるであろう。
[0013]円錐ビームコンピュータ断層撮影システムを示す概略図である。
[0014]図1のコンピュータを示す概略図である。
[0015]多数のマーカ点を含む画像を示す図である。
[0016]マーカ点識別方法を示す流れ図である。
[0017]図4のマーカ点識別方法の背景低減処理を示す流れ図である。
1D累積平均フィルタの適用例を示す流れ図である。
[0018]図5の背景低減処理の一部である、1次元において画像に迅速に平均フィルタをかけるために使用される処理の図である。
[0019]図5の背景低減処理を適用した後の図3の画像を示す図である。
[0020]図4のマーカ点識別方法のマーカ点抽出処理を示す流れ図である。
[0021]図8のマーカ点抽出処理のステップを実行した後の図7の画像を示す図である。
図8のマーカ点抽出処理のステップを実行した後の図7の画像を示す図である。
[0022]マーカ点サブピクセル位置特定方法を示す流れ図である。
[0023]図のマーカ点サブピクセル位置特定方法のマーカ点プロファイル導出処理を示す流れ図である。
[0024]図12のマーカ点プロファイル導出処理で分析されるマーカ点を取り囲む例示的なピクセル列の図である。
[0025]図12のマーカ点プロファイル導出処理で使用されるマーカ点プロファイル及び基線プロファイルの例示的な値を示すグラフである。
[0026]図11のマーカ点サブピクセル位置特定方法のマーカ点位置を求める処理を示す流れ図である。
[0027]図15の積分マーカ中心を求める処理を使用する例示的なマーカ点プロファイル曲線のサブピクセルのマーカ点中心位置を示すグラフである。
[0028]図15のカーブフィットマーカ点中心を求める処理を使用するマーカ点プロファイル曲線に対する例示的な最良適合のガウス曲線のサブピクセルマーカ点中心位置を示すグラフである。
[0029]物理的マーカの3次元位置特定方法を示す流れ図である。
[0030]U次元におけるマーカ点の挙動を分析する処理を示す流れ図である。
U次元におけるマーカ点の挙動を分析する処理を示す流れ図である。
[0031]V次元におけるマーカ点の挙動を分析する処理を示す流れ図である。
V次元におけるマーカ点の挙動を分析する処理を示す流れ図である。
[0032]U方向の運動の存在下で、一連の射影画像にわたってφの試行値を複数のマーカ点の複数のU位置にフィッティングする処理の一例を示すグラフである。
[0033]固定値Rにおける関数φとしてRとφの試行値ペアに対する累積フィッティングメトリックの例示的な1次元図を示すグラフである。
[0034]一連の射影画像にわたってZの試行値を3つのマーカのV軌道にフィッティングする処理の一例を示すグラフである。
[0035]関数Zとして累積フィッティングメトリックの例示的な1次元図を示すグラフである。
[0036]マーカ点を物理的マーカにマッピングする方法を示す流れ図である。
マーカ点を物理的マーカにマッピングする方法を示す流れ図である。
マーカ点を物理的マーカにマッピングする方法を示す流れ図である。
マーカ点を物理的マーカにマッピングする方法を示す流れ図である。
マーカ点を物理的マーカにマッピングする方法を示す流れ図である。
[0037]一連の射影画像にわたって識別される全てのマーカ点の例示的な物理的マーカ及び例示的なU位置に対する予想U範囲を示すグラフである。
[0038]図25に示すU範囲内にU位置を有する図25に示すマーカ点を示すグラフである。
[0039]例示的な候補マーカ点リストの一部分の図である。
[0040]例示的な候補マーカ点リストの平坦化処理の図である。
[0041]例示的な候補マーカ点リストの同期処理の図である。
[0042]「次の」射影画像が2つ以上の候補マーカ点を含むときに「次の」射影画像を処理する図である。
[0043]「次の」射影画像がただ一つの候補マーカ点を含むときに「次の」射影画像を処理する図である。
[0044]「次の」射影画像が候補マーカ点を含まないときに「次の」射影画像を処理する図である。
[0045]良好点リストが良好点及び疑わしい点を含むときに「次の」射影画像を処理する図である。
[0046]本発明の実施形態について詳細に説明する前に、本発明は、その適用分野において、以下の説明に述べ又は以下の図面に示す構成要素の構造及び構成の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実行又は実施することが可能である。
[0047]本発明を実施するために、複数のハードウェア及びソフトウェアベースのデバイス並びに複数の異なる構造上の構成要素を利用できることにも留意されたい。更に、後の段落で説明するように、図面に示す特有の構成は、本発明の実施形態を例示するものである。代替構成も可能である。
[0048]X線は、光線に類似した形式の放射であるが、人体を透過できる光線である。しかし、X線が人体を通過するとき、X線の強度は低減する。強度の低減量は、X線が通過する組織の密度に関係する。X線のこの特性を使用して、人体及び他の対象の内部構造の画像を作り出す。
[0049]従来、X線システムは、発散するX線ビームを生成するX線管を含む。X線管と、各位置に当たるX線の強度に対して感度の高い1枚のフィルムとの間に、人又は対象が配置される。X線管のオンとオフが切り換えられ、フィルムが現像されると、得られる画像は、X線の経路内の構造の「陰影画像」を示し、より高密度の構造は画像内でより白く見える。
[0050]現在のX線処理では、フィルムではなく、1つ又は複数の検出器を使用する。検出器は、検出器に到達するX線の量(即ち、強度)を電子的に検出して定量化する。これらの検出器を使用して、患者の周りでX線源を回転させ、得られるX線を、X線源から見て患者の反対側にある単一幅のストリップ状の検出器要素で電子的に検出するX線コンピュータ断層撮影(「CT」)システムが創出された。全ての異なるX線位置に対して、これらの検出器からのデータが収集され、次いで再生と呼ばれる処理で組み合わされる。組み合わされた画像は、患者を通るただ一つの有限幅の「スライス」を表し、各点における画像の明度は、特定の身体上の位置における組織のX線密度を表す。X線源、検出器及びX線源の回転を可能にする機械的構造の組合せを、「CTガントリ」と呼ぶ。
[0051]この処理を繰り返しながら、画像獲得又は走査間に患者、X線源又はその両方を動かすことによって、複数のスライスを獲得することができる。例えば、患者を支持する台を動かしながらX線源を回転させることで、スライスではなく「螺旋」状のデータを作り出す。更に、検出器ストリップ又はリングのサイズ又は幅を信号行の検出器から複数の行(例えば、最高256行)に増大させることで、より多くのデータをより迅速に獲得することができる。更に、検出器ストリップをより大きな2次元検出器に置き換えることで、単にただ一つのストリップのデータではなく、各X線源位置における検出器パネル画像全体を獲得する。600以上の数になりうるこれらの画像の集まりは、射影画像と呼ばれる。各射影画像は、X線源と検出器が同期して患者の周りを回転するときの異なる視点又
は角度からの患者のX線スナップショットである。2次元検出器を覆うには円錐状のX線ビームが必要であるため、このタイプのCT撮像は、円錐ビーム(「CB」)CT撮像と呼ばれる。図1は、本発明の一実施形態によるCB−CT撮像システム10を概略的に示す。
[0052]CB−CT撮像システム10は、スキャナ12及びコンピュータ14を含む。スキャナ12はCTガントリ13を含み、CTガントリ13は、X線源16、検出器18及び回転キャリア20を含む。X線源16と検出器18は、回転キャリア20上で互いから反対側に位置合わせされ、回転キャリア20は、患者22の周りでX線源16及び検出器18を動かす。患者22は、座席24によって支持される。図1に示す撮像システム10は、歯科用の撮像システムである。従って、患者22は、座席24に座り、自身の下顎を支え26に配置する。支え26は、ガントリ13が回転して患者の頭部の走査を完了する間、患者の頭部を比較的静止したまま保持する。
[0053]スキャナ12は、コンピュータ14へ画像データを出力する。画像データは、走査中に検出器18によって検出されたX線の強度レベルを表す。コンピュータ14はコンソール30に接続され、コンソール30は、ディスプレイ32と、キーボード34等の1つ又は複数の入出力デバイスとを含む。使用者は、コンソール30を使用してコンピュータ14と対話する。例えば、使用者は、コンソール30を使用して、コンピュータ14に画像又は他のデータを要求することができる。コンピュータ14は、要求された情報をコンソール30へ提供し、コンソール30は、その情報をディスプレイ32上に表示し、その情報をプリンタ(図示せず)へ出力すること及びその情報をコンピュータ可読メモリモジュール(図示せず)へ保存することのうちの一方又は双方をする。
[0054]図2は、本発明の一実施形態による図1のコンピュータ14を概略的に示す。コンピュータ14は、入出力インターフェース40と、電子処理ユニット(「EPU」)42と、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)モジュール44及び読出し専用メモリ(「ROM」)モジュール46等の1つ又は複数のメモリモジュールとを含む。入出力インターフェース40は、スキャナ12から画像データを受け取り、その画像データをEPU42へ提供する。幾つかの実施形態では、入出力インターフェース40は、画像データをRAMモジュール44等のメモリモジュールへ記憶し、EPU42は、処理の際にはメモリモジュールから画像データを取得する。入出力インターフェース40はまた、較正及び動作データ又は命令等のデータをスキャナ12へ伝送することができる。
[0055]EPU42は、画像データを受け取り、1つ又は複数のアプリケーション又はモジュールを実行することによってその情報を処理する。幾つかの実施形態では、アプリケーション又はモジュールは、ROMモジュール46等のメモリ内に記憶される。他の実施形態では、アプリケーション又はモジュールをハードディスク記憶ユニット上に記憶し、実行の際にはRAMへ伝達することができる。図2に示すように、ROMモジュール46は、マーカ点識別モジュール50、マーカ点サブピクセル位置特定モジュール52、物理的マーカ3次元(「3D」)位置特定モジュール54、マーカ点マッピングモジュール56、患者運動識別モジュール58及び画像再生モジュール59を記憶する。EPU42は、マーカ点識別モジュール50を取り出して実行し、受け取った画像データ内のマーカ点を識別する(図4〜10参照)。EPU42は、マーカ点サブピクセル位置特定モジュール52を取り出して実行し、マーカ点位置の正確なサブピクセル位置特定を提供する(図11〜17参照)。EPU42は、物理的マーカ3D位置特定モジュール54を取り出して実行し、射影画像内のマーカ点を通じて識別された物理的マーカの3次元位置を求める(図18〜23参照)。EPU42は、マーカ点マッピングモジュール56を取り出して実行し、射影画像内で識別されたマーカ点を特定の物理的マーカにマッピングする(図24〜33参照)。EPU42は、患者運動識別モジュール58を取り出して実行し、患者運動情報を導出する。EPU42は、画像再生モジュール59を取り出して実行し、射影画像と運動情報を組み合わせて、1組の運動補正されたアキシャル画像を作り出す。
[0056]ガントリが完全に1回転するには、約8秒から40秒かかる。この間、患者が動くことがあり、得られる画像のぼけを引き起こす。典型的な画像解像度は、0.25ミリ
メートル程度である。従って、これと同程度に患者が動くと、画像がぼけることが多く、広範囲に患者が動くと、得られる画像は、意図された臨床上の目的では許容されない可能性がある。
[0057]コンピュータ14(図2参照)は、得られる画像内の剛性の物体の動きを追跡することによって、患者の動きに対して画像を補正することができる。例えば、患者の動きがない理想的な状態では、撮像される剛性の物体は、ガントリが患者の周りを回転するにつれて、射影画像の2つの次元における位置を明確に変化させる。画像内の物体の予想位置間のずれは、患者の動きによって引き起こされる。物体の予想位置からの明確な物体のずれを測定することによって、患者の運動量を測定及び補正することができる。具体的には、画像内に少なくとも3つの物体が存在する場合、物体の予想位置からの物体の測定されるずれを組み合わせて、6パラメータの患者位置誤差値(例えば、患者運動ベクトル)を求めることができ、この値を画像に適用して、患者の動きを補正することができる。
[0058]これらの画像内に所望の数の明確な剛性の物体が確実に存在するように、1つ又は複数の基準マーカが患者に配置される。これらのマーカは通常、鉛又は鋼のBBからなる。これらは高密度であり、X線が通過するのを防止又は制限する。マーカは、他の材料から作製することもでき、走査中に生成される射影画像の大部分で見える他の形態又は形状で構築することもできる。各マーカ又は複数のマーカは、接着剤層間に位置決めすることができ、この接着剤を患者に塗布して、処置中にマーカが動かないようにすることができる。
[0059]マーカは、CB−CT撮像システムによって作成される各視野又は画像が少なくとも3つのマーカ点を含むように、患者に配置される。例えば、CB−CT撮像システムによって作成される各画像内に少なくとも3つのマーカ点が位置するように、7個から9個のマーカを患者に配置すると、位置測定ノイズを低減させ、それらの結果の統計的な組合せを可能にすることができる。幾つかの実施形態では、マーカを均一に隔置して、患者の周りの空間分布を極大にし、正常な画像解釈への干渉を回避する。
画像内のマーカの識別
[0060]マーカが患者に配置された後、患者の頭部等、患者の走査が行われ、一連の射影画像を表す得られた画像データは、コンピュータ14(図2参照)へ伝送される。図3は、8個のマーカ点102を含む例示的な射影画像100を示す。生成された射影画像を患者の動きに対して補正する最初のステップとして、コンピュータ14は、生成された射影画像を処理して、各画像内のマーカ点を識別する。図4は、本発明の一実施形態によるマーカ点識別方法60を示す。マーカ点識別方法60は、EPU42がマーカ識別モジュール50を実行するときに、コンピュータ14のEPU42によって実行される。
[0061]図4に示すように、方法60の第1のステップは通常、各射影画像の背景の明度を低減させるステップを含む(ステップ62)。この背景抑制ステップは、画像の背景部分を最小にする。画像の背景部分には、マーカ点以外の画像内の全てが含まれる。基準マーカが明確な形状(即ち、球形又は円形の形状)を有するため、ステップ62は、この明確な形状をもたない画像内の全てを最小にする。
[0062]幾つかの実施形態では、各画像に線形ハイパスフィルタを適用することによって、背景抑制が実現される。許容される速度を得るために、3つの最適化が実行される。第1に、ハイパス演算は、元の画像とローパスフィルタ画像を組み合わせることによって実現される。第2に、2つの画像方向で同時にフィルタを実行する代わりに、2次元以上(即ち、0°、45°、90°及び135°)の画像に、1次元のハイパス演算が順次適用される。最後に、ローパス演算が実現され、後述する累積ピクセル手法で単純平均フィルタが実施される。
[0063]1次元ハイパスフィルタ演算は、フィルタの方向で迅速に変化する領域を強調する傾向がある。異なる方向で実行される一連のそのような演算は、円形の物体を他の全ての形状より強調する傾向がある。マーカによって作成されるマーカ点は円形であるため、この一連のフィルタリングで、マーカ点を強調し、あらゆる周囲の構造を減衰させる。
[0064]図5は、背景低減ステップ62に伴う処理又はステップを示す。図5に示すよう
に、多次元のハイパスフィルタリング演算は、第1に元の画像A上で簡単な1次元の累積平均ローパス画像フィルタリングを実行して(ステップ69)フィルタ画像Bを作成することによって実行される。次いで、後述のように、フィルタ画像Bと元の画像Aを組み合わせて画像Cを作成する(ステップ70)。これらの2つのステップは、前のフィルタリングステップからの出力画像を、次のフィルタリングステップへの入力として使用して、各フィルタリング方向に対して繰り返される(ステップ71〜73)。図5に示す処理は、迅速な多次元のハイパスフィルタリングを実現して、画像の背景を低減させる。図6は、1つの方向における1次元のローパスフィルタリングに伴うこれらのステップの一例を示す。
[0065]より典型的なカーネルベースのフィルタリング手法を使用するのではなく、ステップ69及び71のフィルタリングは、累積平均フィルタ(図5Aに示す)を使用することによって、更に迅速に実現される。この迅速なフィルタリングは、新しい画像(画像B1)を作成することによって実現され、新しい画像の各ピクセルは、フィルタの方向に特定のピクセルから第1のピクセルまで、元の画像Aからの全てのピクセル値の累積和に設定される(ステップ74)。例えば、図6に示すように、コンピュータ14がスキャナ12から元の画像(画像A)を最初に取得したとき、この方法では、7個のピクセルを含む画像Aの1つの行について考察し(処理方向は水平である)、次いでこの行内の各ピクセルを、このピクセルの左側にあるピクセル値とこのピクセルの値の和に設定することによって、累積画像(画像B1)が作成される。
[0066]ステップ74で累積画像が生成された後、ローパスフィルタリング係数(例えば、2)に等しい量だけ画像B1をシフトさせ、シフト画像(画像C1)を作成する(ステップ75)。画像の縁部には、シフトされた縁部ピクセルを単にゼロにすることによって対処する。例えば、図6に示すように、累積画像(画像B1)内の各ピクセルを左側へ位置2つ分シフトさせ、シフト画像(画像C1)を作成する。最初の2つのピクセル(即ち、縁部ピクセル)の左側には位置2つ分のピクセルがないため、これらのピクセルは0に設定される。
[0067]次いで、累積画像(画像B1)からシフト画像(画像C1)を引き、差画像(画像D1)を作成する(ステップ76)。図6に示すように、これらの画像を引くために、シフトされていない累積画像(画像B1)内の対応するピクセル値から、シフト画像(画像C1)内の各ピクセル値が引かれる。最終のステップは、差画像内の各ピクセルをフィルタ係数(シフト値)で割ることによって差画像(画像D1)を正規化し、ローパスフィルタ画像Bを作り出すことである(ステップ77)。
[0068]ステップ74〜77に対する計算時間は、ローパスフィルタのカーネルサイズに依存しない。これらのステップにおける計算は、正常なカーネルベースのフィルタに通常必要な(カーネルサイズ)×N回の演算ではなく、約2×N回の加算及び減算を伴う。512×512ピクセルの画像及び典型的な平滑化係数15の場合、従来の1Dカーネル手法に対する計算時間の低減は7.5:1になる。フィルタ係数が15の場合の(2つの1D累積平均フィルタ演算に対する)2Dカーネルと比較して、速度の改善は56:1である。
[0069]1次元のローパスフィルタ画像が作成された後、ローパス画像(画像B)とローパス画像を生成するために使用された画像(画像A)を組み合わせることによって、ハイパスフィルタ画像(画像C)が作成される(ステップ73)。これは、2つの画像間の簡単な差分演算によって行うこともできる。しかし、第1の方向のフィルタリングステップ70における処理では、除算演算が使用される。除算は、X線減衰の指数的な性質及び正規化画像(画像B)を補償して画像Cを作成するために使用される(ステップ70)。X線減衰は材料密度の負の指数として発生するため、差画像の除算は効果的である。従って、除算は、対数を引いて累乗することと同等であるため、差画像を割ることで、計算コストがかかる対数及び累乗演算を回避する。
[0070]1次元の累積平均ローパスフィルタを適用して入力画像と出力画像を組み合わせる処理は、連続する次元のそれぞれにおいて繰り返される(ステップ71〜73)。しか
し、第1の次元が処理されるときに実行される除算によってX線減衰の指数的な性質に対する補正が完了されるため、第1の次元が処理された後、ステップ72で、除算ではなく減算を使用することができる(ステップ70)。通常、広い範囲の背景から球形のマーカ点を適切に分離するには、0、45、90及び135度における4回の通過で十分である。図7は、図5の背景低減方法を適用した後の図3の画像100を示す。図7に示すように、背景(即ち、画像のうちマーカ点102以外の部分)の大部分は低減され又は暗くなっており、それによってマーカ点102をより容易に識別することができる。
[0071]図4に戻ると、上記のステップを通じて背景が低減された後、ハイパスフィルタ画像からマーカ点が抽出される(ステップ80)。図8は、ハイパス画像からマーカ点を抽出する処理又はステップを示す。図8に示すように、この処理は、各ハイパス画像内で極大を定めることから開始する(ステップ82)。このステップは、各画像内で、ピクセルの隣接ピクセルの8個全てがこのピクセルより小さい値を有する各ピクセルを識別することを含む。次に、識別された極大をシード点として使用し、領域を増大させる(ステップ84)。この処理では、特定の領域内に含まれる極大を組み合わせて、ただ一つの候補物体又は領域にする。幾つかの実施形態では、生成された領域のサイズ又は範囲は、実験的に指定される下限閾値によって制限される。図9は、領域が極大を増大させ(ステップ82及び84)、それによって候補領域104を作った後の図7の画像100を示す。
[0072]ステップ86で、各候補領域に形状基準を適用し、どの領域がマーカ点である可能性が最も高いかを識別する。幾つかの実施形態では、この処理は、(1)候補領域(a)のピクセル面積と、(2)候補領域の平均半径の2乗にπを掛けた値((aの平均半径)2*π)によって定められる面積との比を得ることによって実行される。この比の値を使用して、候補領域がマーカ点として適切な形状であるかどうか(例えば、候補領域が円形の形状を有するかどうか)を判定する。
[0073]最後に、ステップ88で、これらの候補領域を更に処理し、隣接する射影画像内の候補領域の位置を比較して近接基準を適用することによって、可能性が低い候補を排除する。例えば、連続する(sequential)射影画像間で候補領域の位置が動きすぎた場合、その候補領域がマーカ点である可能性は低い。同様に、2つの候補領域が互いに近接しすぎている場合、それらの領域がマーカ点である可能性は低い。図10は、候補領域104に形状基準を適用して可能性が低い候補領域104を排除した(ステップ86及び88)後の図9の画像100を示す。図10に示すように、これらのステップの後、8個のマーカ点102(図7及び8参照)に対応する候補領域104だけが残る。
[0074]幾つかの実施形態では、画像に2次元のハイパスフィルタを適用することは、第1にその画像に2次元ローパスフィルタを適用してローパス画像を作成することを含む。その後、ローパス画像と元の画像が組み合わされる。
[0075]幾つかの実施形態では、マーカ識別方法60は、1画像当たり50ミリ秒未満程度の時間内で実行することができる。更に、球形のマーカが使用されるとき、マーカ点識別方法60は、マーカには高い選択率を呈し、マーカに関連しない構造には高い排除率を呈する。例えば、幾つかの実施形態では、マーカ点識別方法60は、実際の状況で、100%の感度及び40:1を上回る特定性(2.5%未満の誤検出)を有することができる。
マーカのサブピクセル中心点を求めること
[0076]マーカ点識別方法60を使用して画像内でマーカ点が識別された後でも、これらのマーカ点を使用して運動補正を実行する前に、マーカ点を更に又はより正確に定める必要があることがある。具体的には、マーカ点識別方法60によって提供されるピクセル解像度(サブピクセル)より更に良好な解像度まで、マーカ点の有効な2次元位置を知る必要があることがある。ピクセル解像度の1/8程度まで小さい解像度が必要とされることがある。この場合も、これは、画像内でも画像間でも大いに変動する背景の存在下で行わなければならない。図11は、本発明の一実施形態によるマーカ点サブピクセル位置特定方法110を示す。マーカ点サブピクセル位置特定方法110は、EPU42がマーカ点サブピクセル位置特定モジュール52を実行するときに、コンピュータ14のEPU42
によって実行される。幾つかの実施形態では、マーカ点サブピクセル位置特定方法110では、後述するように、マーカ点識別方法60によって識別されるマーカ点を開始点として使用して、正確なサブピクセルマーカ位置を求める。
[0077]図11に示すように、マーカ点サブピクセル位置特定方法110は通常、マーカ点プロファイル導出処理(ステップ112)及びマーカ点中心を求める処理(ステップ114)を含み、これらの処理は、射影画像の2つの次元のそれぞれに対して繰り返される(ステップ116)。より詳細に後述するように(図12〜14参照)、マーカ点プロファイル導出処理112は、一連のステップを適用して背景の大部分を除去し、所望の各次元における多ピクセルのマーカ点プロファイルを生成する。マーカ点中心を求める処理114で、生成されたマーカ点プロファイルは、マーカの予想形状と比較され、1次元のサブピクセルマーカ点中心位置が導出される(図15〜16参照)。
[0078]図12は、本発明の一実施形態によるマーカ点プロファイル導出処理112を示す。マーカ点の垂直位置を導出する動作について考察する。ここで、垂直方向の一連のピクセルを列と呼び、水平方向の一連のピクセルを行と呼ぶ。マーカ点の水平位置を導出する処理は類似しているが、行に対する全ての言及は列に置き換えられ、列に対する言及は行に置き換えられる。1行のピクセル及び1列のピクセルをそれぞれ、ピクセル線と呼ぶことができる。
[0079]この処理の第1のステップは、マーカを取り囲む背景列の範囲にわたってピクセル値を平均することによって、垂直方向の背景プロファイルを導出することを伴う(ステップ120)。図13は、例示的なピクセル121の列がマーカ点122を中心として取り囲むところを示す。ステップ120は、マーカ点122を取り囲む背景列121aのピクセル値を平均し、マーカ点122を覆って中心に位置するマーカ列121bのピクセル値を除外する。背景列121aを平均することは、列121aの各行のピクセル値を合計し、その和を列の数で割ることを含む。背景列121aを平均することで、ただ一つの列の背景値を生成し、これがマーカ点122に対する背景プロファイルになる。
[0080]次に、マーカ点122を覆って中心に位置する列であるマーカ列121bを平均することによって、マーカ点プロファイルが導出される(ステップ124)。この場合も、マーカ列121bを平均することは、列121bの各行のピクセル値を合計し、その和を列の数で割ることを含む。マーカ列121bを平均することで、ただ一つの列のマーカ値を生成し、これがマーカ点122に対するマーカ点プロファイルになる。
[0081]ステップ126で、背景プロファイルを行ごとにマーカ点プロファイルで割る。例えば、背景プロファイルを構成する平均値の列の各行内の値を、マーカ点プロファイルを構成する平均値の列の対応する行内の値で割る。この順序で行の値を割ることで、画像の反転が行われる(例えば、暗い領域が明るくなり、明るい領域が暗くなる)。更に、ステップ126では、(例えば、減算ではなく)除算を使用して、X線減衰の負の指数的な性質を補償する(上述のように、除算は、2つのプロファイルの対数の差の指数を得ることと数学的に同等であるため)。
[0082]代替実施形態として、ピクセル値の対数を算出してから、マーカ点プロファイル及び背景プロファイルを見つけることができる。次いで、要素ごとに2つのプロファイルを引いて各要素の指数を得ることによって、マーカ点プロファイルの背景補償が実現される。この手法は、平均した行における画像のばらつきにより正確に対処するため、上記の手法よりわずかに高精度であるが、簡単な平均及び除算手法より多くの時間がかかる。
[0083]この時点で、マーカ点の妥当な基線補正プロファイルが取得された。しかしそれでもなお、特に末端が非対称形である場合、プロファイルの末端にゼロからの何らかのオフセットが残っていることがある。プロファイルは、以下の手順によってゼロになる。マーカ点中心から離れてもピクセル値が低減しなくなる列等)、マーカ点のピーク(例えば、最も高い値を有するマーカ点内のピクセル)から離れた末端の列においてピクセル値を平均することによって、平均基線オフセット値が求められる(ステップ128)。画像内の他のマーカ又は他の構造等、このマーカ点に隣接するあらゆる構造に関連する末端内の平均ピクセルを、ここから注意深く除外する。図14は、例示的なマーカ点プロファイル
129及び例示的な基線プロファイル130の値並びにマーカ点プロファイルを完全に基線補正した後の結果133を図示する。
[0084]図11に戻ると、基線補正したマーカ点プロファイルが生成された後、位置特定方法110の第2のステップは、マーカ点位置を求める処理114を含む。図15は、この処理をより詳細に示す。図15に示すように、この処理を実行する少なくとも2つの代替手段又は選択肢がある。第1の選択肢は、マーカ点プロファイルの積分を求めるステップ(ステップ140)と、この積分の半分である積分に沿った位置としてマーカ点位置を定めるステップ(ステップ142)とを含む。このマーカ点位置は実質上、積分の第1のモーメント又は積分のうちこの点の左側の部分が積分のうちこの点の右側の部分に等しい位置である。図16は、例示的なマーカ点プロファイル曲線145の例示的なサブピクセルマーカ点位置144を示す。
[0085]図15に戻ると、マーカ点位置を求める第2の選択肢は、最小2乗又は他のフィッティングを使用して適当な曲線関数をマーカ点プロファイルにフィッティングし(ステップ146)、曲線関数の中心を表すパラメータとしてマーカ点位置を定める(ステップ148)。図17は、例示的なマーカ点プロファイル曲線151にフィッティングされた最良適合のガウス曲線150の例示的なサブピクセルマーカ点位置149を示す。
[0086]ステップ146で使用される曲線関数は、部分的な体積の影響及び指数的な減衰特性等の撮像物理に関係する問題を考慮するマーカ点のガウス曲線又は予想の曲線とすることができる。通常、ステップ146で使用される曲線関数は、曲線定義パラメータの1つが曲線中心を表す任意の曲線とすることができる。曲線関数はまた、一定でない基線プロファイルに対処することもできる。幾つかの実施形態では、一定でない基線プロファイルに対処する曲線関数が選択された場合、マーカ点プロファイル導出ステップ112内のステップ128及び132を除くことができる。更に、曲線関数は、既知のマーカ寸法、ピクセルサイズ及び他の次元におけるマーカの近似のサブピクセル位置等、測定可能な画像特性に基づいて、各マーカ、画像又は画像の組に対して動的に修正することができる。
マーカに対する3D円筒座標を求めること
[0087]画像内でマーカ点及びマーカ点中心が識別された(例えば、マーカ点識別方法60及びマーカ点サブピクセル位置特定方法110を使用)後でも、各マーカ点がその点の生成を担う物理的マーカに適切に関連付けられるように、マーカ点の蓄積を分類する必要がある。これを行うため、第1のステップは、各物理的マーカ点を一意的に識別することである。物理的マーカ点はそれぞれ、3次元(3D)座標を通じて一意的に識別される。従って、マーカ点と物理的マーカを関連付ける第1のステップは、物理的マーカを識別し、それぞれを3D座標に割り当てることである。しかし、この処理は、患者の動き及び射影画像上のマーカ点位置を求めることにおける誤差によって複雑になる可能性がある。更に、複数のマーカが存在するため、幾つかの射影画像では、一部のマーカ点が他のマーカ点に重なることがある。
[0088]図18は、それぞれの物理的マーカを識別し、各物理的マーカを3D空間内の位置に割り当てる物理的マーカ3D位置特定方法160を示す。物理的マーカ3D位置特定方法160は、EPU42が物理的マーカ3D位置特定モジュール54を実行するときに、コンピュータ14のEPU42によって実行される。物理的マーカ3D位置特定方法160は通常、CTガントリが回転するにつれて生成される一連の画像を通じてマーカによって作成される点の位置を追跡し、そのマーカを3D空間内の位置にマッピングする。
[0089]既存の追跡技術では、複数のセンサ及び複数の検出された箇所間の複数の固定の関係を使用して、3D空間内の患者の位置を追跡する。しかし、方法160で適用される追跡技術又は方法では、分離されたただ一つの点検出箇所を使用する。従って、同時に収集された複数の箇所の特性を比較するのではなく、この追跡方法では、ただ一つの箇所の特性を経時的に収集し、観察された位置の経時変化と、同じ位置の経時変化をもたらすはずの3D位置とを整合させる。この追跡方法は、CT撮像ガントリ以外にいかなる追加の機器も必要とせず、比較的大量の画像ノイズ及び患者の動きに耐える。
[0090]図18に示すように、方法160は、「U」及び「V」とラベル付けした2つの
画像次元における各射影画像上の各マーカ点の位置(例えば、マーカサブピクセル位置特定方法110によって求められる各マーカ点の中心)を取得することから開始する(ステップ162)。Uは、CTガントリの回転円に対して接線方向の次元であり、Vは、CTガントリの回転軸に対して平行な次元である。マーカ点のこれらの次元位置は、マーカ識別点方法60、マーカ点サブピクセル位置特定方法110又はこれらの組合せによって求めることができる。
[0091]マーカが3D空間内に固定の位置を有する場合、各射影画像上のそのマーカのU位置及びV位置(又は値)は、以下の式で記述される。
上式で、3D円筒座標(R=径方向の距離、φ=角度位置及びZ=高さ又は軸方向の位置)は、マーカの3D位置を表し、θは、CTガントリの開始位置からの回転角度であり、DSDは、X線源から検出器までの距離であり、DSOは、X線源から物体又は患者までの距離である。
[0092]マーカの3D位置を求めるには、上記のU及びV式並びにマーカの既知のU値及びV値を使用して、マーカの円筒座標又はパラメータ(R、φ及びZ)を求めなければならない。しかし、特定の射影画像内のU位置及びV位置は、測定誤差のため、正しい値とは異なることがある。また、R、φ及びZは、患者の運動のため、時間の関数(例えば、R(t)、φ(t)及びZ(t))である。
[0093]これらの難点のため、方法160では、R、φ及びZに対する「平均」値を見つける(ステップ164)。これらの平均値は、上記のU式及びV式によって指定される各射影画像内のマーカの予想位置からの各射影画像内のマーカの実際の位置の最小和の2乗誤差をもたらす値である。以下の誤差式は通常、これらの平均値を提供する。
[0094]しかし、U次元はZに依存しないため、Ravg、Zavg及びφavgに対する所望の値を見つける処理は簡略化される。従って、この処理は、(1)U次元におけるマーカの挙動を分析する処理(図19A〜Bの方法166参照)及び(2)V次元におけるマーカの挙動を分析する処理(図19C〜Dの方法168参照)という2つの処理又はステップに分割することができる。
[0095]図19A〜Bは、本発明の一実施形態によるU次元におけるマーカの挙動を分析する方法166を示す。図19Aに示すように、方法166は、Rパラメータ及びφパラメータに対する全ての可能な値ペアのサブサンプルであるRとφの値ペアの数の組を選択することから開始する(ステップ170)。このサブサンプルの組のサイズは、R及びφに対する実行速度と取得可能な精度の間の妥協を表す。通常、R値及びφ値は、物理的に可能なR値及びφ値の範囲を均一にサンプリングするように選択される。即ち、Rは、0とスキャナの径方向の最大視野の間であり、φは、0°と360°の間である。別法として、Rの値を仮定することができ、可能なφの値のサブサンプルのみが選択される。従って、方法166の残りのステップについて、R値とφ値のペアを参照して説明するが、これらのステップは、Rの値を仮定し、φの値を変動させることで実行できることを理解さ
れたい。
[0096]図19Aに示すように、サブサンプルの組が選択された後、このサブサンプルの組から、処理すべきRとφの値ペアが選択される(ステップ172)。次に、選択されたRとφの値ペア及び上記のU式を使用して、各射影画像に対する「理論上のU」値が求められる(ステップ174)。各射影画像がCTガントリの特定の回転角度に関連するため、U式内で各射影画像に関連するθ値を使用して、それぞれの「理論上のU」を求める。次いで、それぞれの「理論上のU」値の周りにU範囲が定められる(ステップ176)。U範囲は、「理論上のU」値を中心とし、中心からの各方向の大きさは、患者の運動によって引き起こされるマーカの平均又は予想U位置からのマーカの最大の予想U変動に等しい。
[0097]次に、各射影画像内で識別されるマーカ点のU位置は、各射影画像に対するU範囲と比較される。ステップ178において、識別されるマーカ点が選択される。(ステップ180で判定されるように)射影画像内で識別されるこの選択されたマーカ点が射影画像のU範囲内に入るU値を有する場合、このマーカ点はマーカ点候補と識別され、方法はステップ182に進む。この範囲に入らないマーカ点は、無視される。2つ以上のマーカ点が、特定の射影画像に対するU範囲内のU値を有することがあることを理解されたい。実際には、複数の隣接する物理的マーカが患者上に位置決めされる場合、射影画像内で識別された2つ以上のマーカが、特定の射影画像に対するU範囲内のU値(即ち、特定のθの値)を有する可能性が高い。
[0098]図20は、一連の300個の射影画像を通じた複数のマーカのU位置を示す。図20に示すように、φ値の試行又は変動が3回実行され、対応するR値は仮定され、一定に保持された。具体的には、第1の試行で60度のφ値を使用し、第2の試行で100度のφ値を使用し、第3の試行で140度のφ値を使用した。これらの試行のそれぞれに対するU範囲を、グラフに破線で示す。各射影画像(x軸参照)に対して、U範囲内のU位置を有する各マーカ点が、候補マーカとして示される。
[0099]次に、各射影画像内の各候補マーカ点に対して、フィッティングメトリックが求められる(ステップ182)。幾つかの実施形態では、フィッティングメトリックは、マーカ候補のU値とU範囲のより近接した境界との間の距離の2乗である。例えば、マーカのU値が20であり、U範囲が0〜30である場合、フィッティングメトリックは、10(20〜30(より近接したU範囲境界)の距離である)の2乗、即ち100に設定されるはずである。マーカのU値が「理論上のU」値と同じである場合、フィッティングメトリックは最大になる。次いで、全ての候補点からのフィッティングメトリック値を合計して累積フィッティングメトリックを作成し、この累積フィッティングメトリックが、現在選択されたRとφの値ペアに割り当てられる(ステップ184)。図19Aのステップ186に示すように、ステップ178〜184は、全ての射影画像内の全ての点に対して繰り返される。
[00100]図19Aに示すように、サブサンプルの組内のそれぞれのRとφの値ペアに対してステップ172〜186を繰り返し(ステップ188)、累積フィッティングメトリックを各値ペアに割り当てる。Rとφの値ペアの全てに累積フィッティングメトリックが割り当てられた後、方法166は、全てのRとφの値ペアに対する累積フィッティングメトリックを、R及びφの関数として評価する(図19Bのステップ190)。方法166は、ピーク検出を使用して、この関数内のR及びφのピークを求める(ステップ192)。関数のピークは、それぞれ1つ又は複数の物理的マーカを表すRとφのピーク値ペアである。方法166は、それぞれのRとφのピーク値ペアを、そのピークに関連する対応するマーカに割り当てる(ステップ194)。図21は、φの関数としてRとφの値ペアに対する累積フィッティングメトリックの1次元図(例えば、ヒストグラム)の一例を示す(Rの値は仮定され、一定に保持される)。図21に示すように、図示の関数のピークは、物理的マーカに対するφ値を表す。
[00101]U次元におけるマーカ点の挙動を分析した後、候補マーカが配置され、R値及びφ値が割り当てられるが、同じR値及びφ値を有する2つ以上のマーカが存在する可能
性がある。この状況に対処するために、V次元におけるマーカ点の挙動が分析される。図19C〜Dは、本発明の一実施形態によるV次元におけるマーカ点の挙動を分析する方法168を示す。図19Cに示すように、方法168は、方法166中にそのマーカ候補に割り当てられたRとφのピーク値ペアを利用することから開始する(図19Bのステップ194参照)。方法168では、これらの値を使用して候補点を識別し、Zに関して更に評価する(ステップ200)。次いで、全ての可能なZの値のサブサンプルが選択される(ステップ202)。このサブサンプル内の値の数は、実行速度と所望のZ値解像度の間の兼ね合いとして選択される。サブサンプルの範囲は、物理的に可能なZの値(ある時点で走査視野内に入りうる点)の範囲を覆うように選択される。
[00102]次いで、このサブサンプルの組からZ値が選択される(ステップ204)。この1つ又は複数のマーカに対して事前に求められたRとφの値ペア、選択されたZ値及び上述のV式を使用して、各射影画像に対する「理論上のV」値が求められる(ステップ206)。各射影画像がCTガントリの特定の回転角度に関連するため、V式内で各射影画像に関連するθ値を使用して、それぞれの理論上のVを求める。次いで、それぞれの理論上のV値の周りにV範囲が定められる(ステップ208)。V範囲は、理論上のV値を中心とし、中心からの各方向の大きさは、患者の運動によって引き起こされるマーカの平均又は予想V位置からのマーカの最大の予想V変動に等しい。
[00103]次に、候補リストの一部である各マーカ点のV位置のV値が、このZ試行に対するV範囲と比較される。ステップ210において、射影画像内の点が選択される。この点が射影画像のV範囲内に入るV値を有する場合(ステップ212)、マーカは、更に限られたマーカ点候補と識別される。明確には、点は、候補と見なされるには、そのR値及びφ値に関連するU値の範囲内並びにそのR値、φ値及びZ値に関連するV値の範囲内に入らなければならない。上述のように、特定の射影画像内で識別される2つ以上のマーカ点が、その射影画像に関連する現在のV範囲及びU範囲内のV値及びU値を有することがある。図19Cのステップ216に示すように、ステップ210〜215は、全ての射影画像内の全ての点に対して繰り返される。
[00104]図22は、一連の300個の射影画像を通じた3つのマーカのV位置を示す。図22では、Z値の3回の試行又は変動を示す。具体的には、第1の試行で70ミリメートルのZ値を使用し、第2の試行で30ミリメートルのZ値を使用し、第3の試行で−15ミリメートルのZ値を使用した。これらの試行のそれぞれに対するV範囲を、グラフに破線で示す。各射影画像(x軸参照)に対して、V範囲内のV位置を有する各マーカが、マーカ候補として示される。
[00105]図19Cに戻ると、各射影画像内の各マーカ候補に対して、フィッティングメトリックが求められる(ステップ214)。フィッティングメトリックは、マーカ候補のV値とV範囲のより近接した境界との間の距離の2乗である。例えば、マーカのV値が20であり、V範囲が0〜30である場合、フィッティングメトリックは、100(10、即ち20〜30(より近接したV範囲境界)の距離の2乗である)に設定されるはずである。次いで、全ての射影画像からのメトリックフィッティングを合計して累積フィッティングメトリックを作成し、この累積フィッティングメトリックが、現在選択されたZ値に割り当てられる(ステップ215)。
[00106]図19Cに示すように、サブサンプルの組内のそれぞれのZに対してステップ204〜218を繰り返し(ステップ217)、累積フィッティングメトリックを各値に割り当てる。サブサンプルの組内のZ値の全てに累積フィッティングメトリックが割り当てられた後、方法168は、Zと、得られる累積フィッティングメトリックとの関係を評価する(図19Dのステップ218)。次いで、方法168は、ピーク検出を使用して、この関係のピークを求める(ステップ220)。
[00107]累積フィッティングメトリックとZの関係における各ピークは、固有の物理的マーカに関連する。ピークのZ値は、対応する物理的マーカのZ値である。割り当てられたR値及びφ値は、1つ又は複数のマーカに対して事前に見つけた値である。このとき、これらのマーカはそれぞれ、3つ全ての円筒座標(R、φ、Z)に対する既知の値を有す
る。図23は、Zの関数として累積フィッティングメトリックの1次元図(例えば、ヒストグラム)の一例を示す。図23では、3つのピークが、それぞれ同じR及びφの値である3つの別個の物理的マーカに対応する。
[00108]方法166によって求められた他のRとφのペアのそれぞれに対して、方法168(ステップ200〜222)を繰り返し(ステップ224)、全ての固有の物理的マーカを分離し、それぞれに対するZ値を求める。方法168は、全てのマーカ候補が固有の物理的マーカに分離され、各物理的マーカに3つ全ての円筒座標が割り当てられたときに終了する。割り当てられた円筒座標は、マーカの3D位置を表すマーカの平均のR値、φ値及びZ値である。
[00109]図19A〜Dに関して上述した方法166及び168は、2つの別個の方法を使用してマーカに3D円筒座標を割り当てる(即ち、第1の方法でR値及びφ値を割り当て、第2の方法でZ値を割り当てる)2ステップ処理である。マーカ3D位置特定方法160の第1の代替実装形態では、これらの方法を組み合わせて1回の動作にし、R、φ及びZの値のサブサンプルの組が選択され、値のそれぞれの組合せを使用し、組み合わせたUとVの誤差に基づいて、ただ一つのフィッティングメトリックを求める。この1回の処理の結果、それぞれの分離された物理的マーカと一致するピーク値を有する3次元アレイが得られる。しかし、この実装形態は、別個の方法の実装形態より時間かかることがある。具体的には、R、φ及びZがそれぞれm、n及びq個のサブサンプルを有する場合、第1の代替実装形態では、分離された実装形態のために、(m*n)+qに対してm*n*q回の反復を必要とする。
[00110]マーカ3D位置特定方法160の第2の代替実装形態を使用して、分離された実装形態を速めることもできる。第2の代替実装形態では、最初に説明した2ステップ処理と同様に、R、φ及びZが見つけられるが、第1の方法166で処理されるR値の数(m)は、より粗い頻度でRのサブサンプルを抽出することによって低減されるはずである。これは、フィッティングがR値の影響をそれほど受けないため、妥当である。次いで、φ及びZを固定のまま保持し、より細かく抽出されたRのサブサンプルの組及び上述したフィッティングメトリック処理を使用してRを最適化する第3の方法を追加することができる。
[00111]マーカ3D位置特定方法160の第3の代替実装形態もまた、1つのパラメータ、2つのパラメータ又は3つ全てのパラメータに対して、サブサンプリングをより粗くすることができる。この実装形態はまた、より狭い範囲を覆う各パラメータサブサンプルの組に対してより細かいサンプリングレートを使用する各マーカ候補に対する最終のフィッティング方法を含むことができる。この実装形態では、方法160の速度を増大させるとともに、マーカ位置座標の最終の精度を改善することができる。
[00112]マーカ3D位置特定方法160に対する1つの一般的な難題は、マーカが互いに非常に近接して位置決めされるが、それでもなお各マーカに対して相当な範囲の運動を可能にする状況に対処することである。これらのマーカが、予期される最大の運動ほど分離されない場合、方法160は、2つのマーカが1つのマーカである場合のようにこれらのマーカにラベル付けし、2つのマーカの実際の位置間の位置にこの1つのマーカを割り当てることがある。この状況を防止するために、十分な物理的な離隔距離をもってマーカを患者に配置するべきである。しかし、方法160は、配置基準が守られない状況に対処する必要がある。方法160は、大きな割合の射影画像が候補点許容範囲内に2つ以上のマーカを有する状況を識別するように又は累積メトリックピークがただ一つのマーカの場合に予期されるより大きい状況を識別するように修正することができる。これらの状況の何れかが検出された場合、方法160は、2つのマーカをより適切に分離するための追加の処理を含むことができる。1つの手法は、マーカの重複が疑われるとき、より細かいサブサンプリング及び疑わしいマーカだけを覆うように絞られた範囲で、位置特定処理を繰り返すことであろう。
[00113]第2の難題は、マーカ運動が累積フィッティングメトリック内で2つのピークを引き起こしたときである。この場合、ただ一つのマーカが2つに見える。この可能性に
対処するために、方法160は、θ範囲を部分範囲に分割し、各部分範囲内で別個にフィッティングを実行し、次いで結果をマージすることができる。更に、方法160では、3つの座標パラメータ、R、φ及びZに対する候補点許容範囲を適応可能に変化させることもできる。例えば、方法160は、運動がほとんどないものとすると、密接するマーカを十分に分離するように、小さい許容範囲で開始することができる。恐らく運動のため、これらの範囲内に十分な数の点が含まれない場合、十分な候補マーカ点が見つかるまで、この範囲を増大させることができる。
[00114]通常、マーカ3D位置特定方法160は、走査中に2センチメートル程度の患者の運動の存在下で、1ミリメートルを上回る座標解像度まで、マーカの位置を特定する。方法160はまた、24個以上のマーカの存在下で実質上動作し、測定ノイズに耐える。最後に、方法160は、約5秒未満で300個の射影画像にわたって24個のマーカを処理することができる。
患者上の物理的マーカへの点のマッピング
[00115]画像マーカ点が識別されて位置が特定され、対応する物理的マーカが識別されて3D座標が割り当てられた後でも、各マーカ点を、患者に配置された特有の物理的マーカに割り当てなければならない。600個の画像及び9個のマーカを用いる典型的なCB−CT走査では、射影画像内で5,000個を超える識別点をそれぞれ、9個の物理的マーカの1つに割り当てなければならない。
[00116]ただ一つの射影画像内で識別されたマーカ点を見ると、画像内で識別された特定のマーカ点を患者上に位置決めされた特定の物理的マーカに割り当てるのに十分な情報がない(少なくとも、通常は十分でない)。理想では、マーカが物理的に動かず、マーカの物理的な位置が正確に分かっている場合、射影画像内で識別された任意のマーカ点に対して、1つの射影画像から次の画像へのマーカ点位置の変化の固有のU追跡及びV追跡を定めることができる。特定のマーカが1つの射影画像から次の射影画像へ行う点位置追跡には、1つの物理的マーカだけが一致している。従って、理論的には、これらの2つのマーカ点を対応する物理的マーカに割り当てるには、2つの射影画像で十分である。
[00117]しかし、射影画像内でのマーカの物理的な位置が正確に分からないとき又は走査中に著しい量の患者の運動(若しくは不測のガントリ運動)が生じた場合、追加の難題が生じる可能性がある。これらの場合、あるレベルの軌道の不確実性が追加され、射影画像内で識別されたマーカ点を患者に配置された物理的マーカに適切に割り当てるのを複雑にする。
[00118]図24A〜Eは、本発明の一実施形態による、射影画像内で識別されたマーカ点を患者に配置された特有の物理的マーカに割り当てる物理的マーカマッピング方法250を示す。通常、方法250は、患者の運動の存在下で連続する射影画像内のマーカ点位置を追跡し、射影画像ごとに各マーカ点を評価して、特定の物理的マーカに関連する可能性が最も高いマーカ点を識別する。方法250は、マーカ点に対して測定されたU及びVと物理的マーカに関連する理論上のU及びVの距離並びにこれらの距離の時間導関数を含めて、複数の異なる基準を使用する。
[00119]図24Aに示すように、方法250の最初のステップは、走査に関連する全ての物理的マーカを識別して、それぞれに対する近似の3D位置を取得することを含む(ステップ252)。このステップは、物理的な測定、再生された画像データセットからの測定又は射影画像の直接分析を使用して行うことができる。幾つかの実施形態では、方法250は、上述した物理的マーカ位置特定方法160を使用して、各物理的マーカに対する近似の3D位置を取得する。
[00120]次に、方法250は、1つの物理的マーカを選択し、各射影画像に対する予想U位置(Uimage)及び予想V位置(Vimage)を計算する(ステップ254)。方法250は、CTガントリの特定の幾何形状に基づいて、空間内の物理的な点が画像間でどのように動くことが予期されるかを記述する以下の等式を使用する。
[00121]例えば、CTガントリが回転中心の周りを平滑に回転すると仮定すると、Rは、回転面内のこの中心からの点の距離であり、φは、マーカの角度位置であり、Zは、中心回転面(即ち、X線源の位置を定める点を含む面)からのマーカの距離である。DSDは、X線源から検出器面までの距離であり、DSOは、X線源からCTガントリの回転中心までの距離である。各射影画像は、ガントリ回転角度θで獲得される。これらの等式を使用して、方法250は、各射影画像角度θにおけるR、φ及びZの3D位置を用いて、物理的マーカの予想のU及びVの射影画像位置を定める。
[00122]次いで、方法250は、予想のU及びVのマーカ画像位置を使用して、物理的マーカに対する軌道の予想U範囲及び予想V範囲を定める(ステップ256)。これらの範囲は、患者の運動の存在下でも、物理的マーカに関連する全ての点を含むのに十分な大きさである。例えば、画像の獲得中に患者が20ミリメートル程度動くことが予期される場合、特定の物理的マーカに対する予想のU範囲及びV範囲は、
及び
になるはずである。
[00123]次いで、方法250は、物理的マーカに対する候補点リストを作成し(ステップ258)、予想U範囲と予想V範囲の両方の範囲内に入る各射影画像内で識別された各マーカ点を追加する(ステップ260)。図25は、特定の物理的マーカに対する例示的な予想U範囲(点線間)及び一連の射影画像を通じて識別されるマーカ点の例示的なU位置を示すグラフである。図26は、図25に示すマーカのうち、図25に示す予想U範囲内にU位置を有するものを示す。これらのマーカのうち、同じく予想V範囲内にV位置を有するものは何れも、物理的マーカの候補点リストに追加される。例えば、図27は、候補点リストの一部分を示す。図27に示すように、候補点リストは、予想のU範囲及びV範囲内に入るU位置及びV位置を有する各射影画像からの各マーカを含む。物理的マーカに関連するマーカ点の最終のリストは、この候補点リストから選択される。図27に示すように、候補点リストは、特定の射影画像内に1つより多くのマーカを含む可能性がある(この例では、射影1と射影6の両方で2つの候補点が生じる。これは、一連の射影画像を通じて2つのマーカが互いの経路を交差するときに生じる可能性がある。また、2つの物理的マーカが患者上で互いに近接して位置決めされた場合も、特定の射影画像に対する候補点リスト内に2つ以上のマーカ点が位置する可能性がある。
[00124]図24A及び24Bに示すように、候補点リストを作って取り込んだ後(ステップ258及び260)、方法250は、U次元とV次元の両方に対して、候補点リスト内に含まれる各点に対する実際のマーカ点の位置から物理的マーカの「予想」マーカ位置を引くことによって、候補点リストを処理する(ステップ262)。この処理は、マーカ
の位置を平坦化して、「予期からの誤差」候補点リストを作成する。従って、「予期からの誤差」候補点リストは、射影画像内に反映される物理的マーカの予想位置と実際のマーカ点位置の間の不一致又は誤差(例えば、患者の動き又は測定の誤差によって引き起こされる)の量を表す。図28は、例示的な候補点リストに適用されるこの平坦化処理を示す。
[00125]物理的マーカに対して「予期からの誤差」候補点リストが作成された後、点追跡処理が行われる。この処理の目的は、1つの射影から次の射影へ進み、次の射影内で正しい点である「可能性」が最も高い1点、即ち関連する物理的マーカによって本当にもたらされた可能性が最も高い点を選択することである。これを実現するために、複数の発見的方法が適用される。全体的な処理は通常、同期及び追跡という2つの構成要素を有する。同期の構成要素では、特定の点が物理的マーカに関連する可能性が高いことが分かるまで、点リストが、一度に1射影ずつ処理される。追跡の構成要素は、この時点から開始し、引き続き射影ごとに、このマーカによって形成されることが予期されるはずの追跡に最も一致している1つ(又はゼロ)の点を(その射影におけるゼロから複数の点のリストから)選択する。設定された数の画像に対して一致する点が見つからない場合、同期は失われ、再取得しなければならない。追跡処理は、射影番号を増大させる方向にも、射影番号を低減させる方向にも進むことができる。
[00126]追跡処理では、新しい射影ごとに、点が存在しない場合、1つの点が存在する場合及び2つ以上の点が存在する場合という3つの可能な場合がある。運動及び測定のノイズは、「正しい点」が予期される場所にない可能性があるという点で、この処理を複雑にする。これは、「疑わしい点」の概念を実施することによって対処される。最良の候補点が何らかの基準の範囲内に入らない場合、この点は疑わしいとラベル付けされる。このラベルは、今後の射影における点の位置に関してその位置を見ることによって除去され、この点は包含又は排除される。以下は、この処理に対する詳細を提供する。
[00127]幾つかの実施形態では、方法250の追跡の構成要素、ステップ266〜352は、射影番号を増大させる方向と射影番号を低減させる方向のどちらにでも実行することができる。後者の場合、「次の射影」及び「前の射影」への言及並びに順序に関する他の用語は、処理方向に対するものであることを理解されたい。
[00128]図24Bに戻ると、ステップ262で候補点リストを処理した後、方法250は、物理的マーカに対して空の良好点リストを作成する(ステップ264)。より詳細に後述するように、良好点リストには、物理的マーカに関連する可能性が高い射影画像内で識別されたマーカ点が取り込まれる。第1のステップは、同期である(ステップ266〜270)。方法250は、各画像が候補点リスト内にただ一つの候補点を有する場合、3等の定められた数の連続する射影画像が見つかるまで、候補リストを一度に1射影ずつ試験する(例えば、第1の射影画像から開始する)(ステップ266)。検出された一連の射影画像内の第1の射影画像に関連する点は、「基準良好点」又は基準点とラベル付けされる(ステップ268)。更に、方法250は、この点を良好点リストに追加する(ステップ270)。図29は、例示的な候補点リスト上での同期処理を示す。図29に示すように、候補点リストは、3つの連続する射影画像のシーケンス271を含み、シーケンス271内の各画像は、候補点リスト内に1つの点だけを有する。同期処理では、検出されたシーケンス(271aとラベル付け)内の第1の射影画像は、基準良好点とラベル付けされたただ一つの候補点271bを含み(ステップ268)、良好点リストに追加される(ステップ270)。
[00129]同期が取得された後、方法250は、シーケンス内の「次の」射影画像へ進む(ステップ272)。幾つかの実施形態では、方法250は、同期処理内で見つかった射影画像を使用し、まずこの点から後方へ進み、次いで前方へ進む。後方処理は、良好点リスト内に点を有する射影に到達するまで又はこれが第1の同期である場合、第1の射影まで続けられる。前方処理は、最後の射影に到達するまで又は同期が失われるまで続けられる。この場合も、連続する射影を処理するとき、「次」の定義は、処理が前方へ進むか、それとも後方へ進むかに依存する。
[00130]次の射影画像へ進んだ後、方法250は、その射影画像内に候補点がいくつあるかを判定する(ステップ274)。幾つかの実施形態では、ステップ274に対する結果には2つのカテゴリがある。次の射影画像は、1つ若しくは複数の候補点を含む可能性があり又は候補点を含まない可能性がある。図30は、次の射影画像275が2つの候補点を有する状況を示す。図31は、次の射影画像275が1つの候補点だけを有する状況を示し、図32は、次の射影画像275が候補点をもたない状況を示す。
[00131]図24B及び24Cに戻ると、次の射影画像が1つ又は複数の候補点を有する場合、方法250は、次の射影画像内の各候補点と、良好点リスト内の最近追加された「良好点」との間で、θ(射影角度)に対するU及びV位置誤差の導関数を求める(ステップ276)。この導関数は、事実上、図27のように、2つの点を接続する線の平坦さを表す。ゼロの導関数は、実際と理論の間の誤差の量が2つの画像間で変化しなかったことを意味する。
[00132]次に、方法250は、ゼロに最も近い導関数に関連する候補点を選択し(ステップ278)、この点を良好点リストに追加する(ステップ280)。ただ一つの候補点だけが存在する場合、この点が選択される。候補点リストを平坦化して、誤差(例えば、患者の動き又は測定ノイズによって引き起こされる)を除く全ての影響を除去したため、2つの隣接する射影内のマーカ点間で位置誤差導関数の分散が大きいことは、(1)画像内の構造若しくは物体が誤ってマーカと定められたこと又は(2)そのマーカ点が実際には異なる物理的マーカに関連することを示すことができる。
[00133]従って、隣接する射影画像に関連し、ゼロに近い導関数を有する候補点リスト内の2つのマーカは、同じ物理的マーカに関連する隣接するマーカである可能性が高い。例えば、図30に示すように、次の射影画像275は、2つの候補点292a、292bを含む。基準「良好点」293と候補点292aの間の導関数は、基準良好点293と候補点292bの間の導関数よりゼロに近い。従って、ステップ278では候補点292aが選択される。別の例として、図31に示すように、次の射影画像275は、1つの候補点292aを含む。基準良好点293と候補点292aの間の誤差導関数が計算され、ステップ280で、候補点292aが良好点として良好点リストに追加される。
[00134]ゼロに最も近い導関数に関連する候補点を選択した後、方法250は、候補点の導関数が導関数試験に通るかどうかを判定する(ステップ282)。導関数試験は、微分値が0.02mm等、所定の量を超える分だけゼロとは異なるかどうかを判定することを含むことができる。異ならない場合、候補点は導関数試験に通り、方法250は、この点に基準良好点とラベル付けする(ステップ284)。この点が導関数試験に通らなかった場合、方法250は、この点に「疑わしい点」とラベル付けする(ステップ286)。この新たに追加された点を使用して、後の射影画像内の候補点を処理する。
[00135]導関数試験に対する所定の量は、方法250の感度を修正するように設定及び変更することができる。例えば、所定の量をより大きい値に設定して、良好点リストに追加される疑わしい点をより少なくすることができ、それによって、特定の物理的マーカへ最終的にマッピングされるマーカ点の量を増大させることができる。幾つかの実施形態では、導関数試験は、次の射影画像内の候補点の数、良好点リストが疑わしい点を含むかどうか等に基づいて、変動する可能性がある。幾つかの実施形態では、疑わしいとラベル付けされた点は、今後の処理で考察されずに、常に不良と見なされ、良好点リストに追加されないことがある。これらの場合、関連する射影は点をもたないはずである。
[00136]再び図24Bのステップ274に戻ると、次の射影画像がいかなる候補点も含まない場合、方法250は、次の射影画像を飛ばし、引き続き、最近追加された基準良好点(及び適宜最近追加された疑わしい点)を使用して、後の射影画像内の候補点を処理する(ステップ292)。例えば、図32に示すように、次の射影画像275は、いかなる候補点も含まない。従って、方法250は、次の射影画像275を飛ばし、引き続き、最近追加された基準良好点293(即ち、現在の射影画像295から)を使用して、後の射影画像297内の候補点(複数可)(例えば、候補点296a)を処理する。
[00137]疑わしい点は、測定ノイズにより特定の点が誤って配置されたため又は患者若
しくは計画外のガントリの運動で物理的マーカ内の実際の動きを引き起こしたために存在する可能性がある。適切な運動補正のためには、前者に関係する点を排除し、後者に関係する点を含むことが望ましい。疑わしい点の取扱いは、これらの運動補正の目標に対処する。基本的に、疑わしい点を取り扱う方式の実装形態は、運動のために疑わしい点の挙動は、複数の隣接する射影内に反映される可能性が高いという概念に基づく。従って、疑わしい点が警告された後、最終の分類は、今後の射影挙動及び更なる可能な過去の射影挙動を試験することに依存する。
[00138]上述のように、方法250が、良好点リスト内に前の疑わしい点(古い疑わしい点とも呼ばれる)が存在し、次の射影画像が1つ又は複数の候補点を有するとステップ288又は290で判定した場合、特別な処理が必要とされる(図24D内のステップ300及び302参照)。その場合、誤差導関数は、良好点リスト内の疑わしい点と最近追加された点との間に形成される(ステップ300及び302)。疑わしい点に関連する導関数を形成した後、方法250は、この導関数が導関数試験に通るかどうかを判定する(ステップ304及び306)。導関数試験は、微分値が0.02mm等、所定の量を超える分だけゼロとは異なるかどうかを判定することを含むことができる。導関数が所定の値より小さい分だけ異なる場合、疑わしい点は導関数試験に通ったと考えられる。導関数が所定の値以上に異なる場合、疑わしい点は導関数試験に落ちたと考えられる。この疑わしい点が導関数試験に通った場合、疑わしいというラベルはこの点から除去される(ステップ308及び310)。疑わしい点が導関数試験に落ちた場合、前の点による導関数試験及び後続の点による導関数試験という2つの導関数試験に落ちたため、この点は良好点リストから除去される(ステップ312及び314)。
[00139]前の疑わしい点が導関数試験に通り、良好点リストに最近追加された点がその導関数試験に落ちた場合、この前の疑わしい点が、後続の射影の処理における基準良好点になる(ステップ316)。この場合、運動が生じており、前の疑わしい点が、ここで新しいマーカ位置の最良の表示であると見なされる。
[00140]例えば、図33に示すように、射影画像322の疑わしい点321と候補点323の間の一次導関数はゼロに最も近く、導関数試験に通る。更に、良好点320と候補点323の間の対応する一次導関数は、導関数試験に落ちる。従って、ステップ310で、疑わしい点321の疑わしいというラベルが除去される。前にラベル付けされた疑わしい点321は、次の射影画像を処理する際に、基準点として使用される(ステップ316)。
[00141]点の追跡には複数の代替実施形態があり、多くは、疑わしい点を取り扱う代替方法を伴う。一実施形態では、方法250は、候補点を有する誤差導関数が、2以上の所定の数の連続する射影画像に対して基準良好点を有する対応する導関数よりゼロに近い場合、疑わしい点を良好点として許容し又はラベルを付け直すように構成される。例えば、方法250は、1行内の3つの射影画像に対して、疑わしい点と候補点の間の導関数が基準良好点と候補点の間の対応する導関数よりゼロに近いかどうかを判定することができる。近い場合、方法250は、この疑わしい点を良好点としてラベルを付け直す。疑わしいものを許容するのに必要な射影画像の数は、方法250の感度を変化させるように設定及び修正することができる(即ち、最終的に良好点として受け入れられる疑わしい点の数)。別の代替実施形態では、あらゆる更なる考察から、あらゆる疑わしい点をすぐに除去することもできる。そのような場合、再同期への依拠がより大きくなることがある。別の実施形態では、疑わしい点フラグは、疑わしいとの個々の点のラベル付けを置き換える。この場合、疑わしい点フラグが設定された状態で実行される処理は、候補点リストがただ一つの点を有するか、それとも2つ以上の点を有するかに応じて異なることがある。
[00142]ステップ294で判定されるように、5等、特定の数より多い射影が候補点をもたない場合、処理は同期を失ったと宣言される(ステップ299)。これらの場合、上述した同期処理を繰り返して、再び同期を獲得する。
[00143]図24C及び24Dに示すように、次の射影画像内の候補点(複数可)を処理した後、方法250は、次の射影画像を新しい現在の射影画像と定め(ステップ350)
、新しい現在の射影画像に対してステップ272〜350(即ち、当該ステップ)を繰り返す。この処理は、最初の現在の射影画像から一方向に全ての射影画像が「次の射影画像」として処理されるまで繰り返される(例えば、第1の射影画像に到達し、次の射影画像として処理される)(ステップ352)。
[00144]幾つかの実施形態では、方法250の射影画像ステップ266〜352は、最も低い射影番号から最も高い射影番号まで進んだ後及び最も高い射影番号から最も低い射影番号まで進んだ後、2回完全に実行することができ、各方向で別個の良好点リストを生成する(ステップ354)。これらの点リストが生成された後、これらの点リストを射影ごとに組み合わせて新しいリストにし、どちらの元のリストにもないあらゆる点は除かれる(ステップ355)。この組み合わせステップにより、最終の良好点リスト内に含まれるあらゆる点が正しい可能性がより高くなる。図30〜32は、後方即ち逆方向に射影画像を処理することを示す。図33は、前方方向に射影画像を処理することを示す。
[00145]射影画像が何れかの方向に処理された後、方法250は、各物理的マーカに対してステップ254〜354を繰り返す(ステップ356)。例えば、走査前に9個の物理的マーカが患者に配置された場合、方法250は、9個の物理的マーカのそれぞれに対してステップ254〜354を繰り返す。各物理的マーカに対してステップ254〜354が実行された後、方法250では各物理的メーカに対する良好点リストが作成されており、各良好点リストは、特定の物理的マーカに関連する可能性が最も高い射影画像内で識別されたマーカ点である「良好点」を含む(ステップ360)。各良好点リストは、特定の物理的マーカに関連する各射影画像から、ゼロ又は1つのマーカ点だけを含むことができる。良好点リスト内の「良好点」を使用して、患者運動情報を抽出することができる。例えば、連続する射影画像を通じてマーカ点として反映される物理的マーカの予想位置を、連続する射影画像を通じて物理的マーカに関連するマーカの実際の位置と比較して、患者の動きの量を求めることができる。
[00146]1つの一般的な難題は、物理的マーカが互いに近接して(例えば、患者の動きに対して可能な範囲より互いに近接して)位置決めされた場合、マーカを特定の物理的マーカに適切に割り当てるのが困難になることがある。これは、物理的マーカを患者に配置するときに適切な距離だけ分離することによって回避することができる。それにもかかわらず、方法250は、少なくとも部分的に、配置基準が守られない状況に対処するように設計される。この状況が生じた場合、追跡処理でマーカ点を誤って割り当てる可能性があり、この処理は「トラックジャンピング(track jumping)」と呼ばれる。1つのマーカ点が誤ったトラックへ「ジャンプ」した後、新しい(且つ誤った)トラック内の一連の点が欠落していない限り、正しいトラックへジャンプして戻るのに良い根拠がないことがある。方法250は、マーカのトラック上の欠落点に対処できるが、余分な欠落点は、トラックジャンピングを招く可能性がある。この可能性は、物理的マーカの候補点リストに対して小さい範囲の候補点を選択することによって最小にすることができる(例えば、患者の動きの量がより低いと予期されるため)。
[00147]更に、射影画像を両方向(例えば、前方及び後方)に処理することで、トラックジャンピングを識別して除くことができる。例えば、射影画像を前方方向に処理する結果と射影画像を後方方向に処理する結果を比較することによって、方法250は、追跡上の問題を示す、延びた長さの差を識別することができる。追跡上の問題を識別する別の方法は、異なる物理的マーカに対する良好点リストを比較することである。2つの良好点リストが少数(例えば、1又は2)を超える同じマーカを含む場合、方法250は、誤った追跡上の問題を検出して補正することができる。しかし、マーカ点検出が妥当であり、物理的マーカが約1センチメートル以上分離された状態では、方法250には通常、トラックジャンピングは存在しない。
[00148]マーカ点識別方法60、マーカ点サブピクセル位置特定方法110、物理的マーカ3D位置特定方法160及びマーカ点マッピング方法250について、CB−CT撮像に関連して説明したが、これらの方法は、CT、MRI、超音波、他の形式の医療用の撮像及び写真等の非医療用の撮像の形式にも有用である。例えば、マーカ点識別方法60
は、明確な形状の物体(例えば、小さい物体)を複雑な背景から迅速に分離する必要がある状況で使用することができる。更に、マーカ点識別方法60について、円形又は球形のマーカとともに使用する場合を説明したが、方法60は、他の明確な形状のマーカ点に対して使用することもできる。例えば、ステップ80(方法60の一部)のステップ86及び88は、他の形状を認識するように修正することができる。方法60はまた、患者の体内の明確な解剖上の物体をマーカとして使用することもできる。更に、方法60は、特定の目印の全体的な形状を探すことによって解剖上の目印を抽出する開始点として使用することができる。
[00149]同様に、マーカ点サブピクセル位置特定方法110は、形状の特性が分且つており、特定の画像内のマーカの全体的な向きを確認できる限り、あらゆる任意の形状のマーカに適用することができる。様々な手法を使用して、マーカの全体的な向きを確認することができる。例えば、1つ(又は2つ)の次元における範囲を使用して他の次元におけるマーカ点プロファイルの位置を定めることを助けることで、マーカ点を全体的に評価することができる。次いで、マーカ点プロファイルは、簡単な第1のモーメントの計算又はより細密なカーブフィッティングで処理することができる。更に、画像の形状を、異なる向きで予期される形状の図と比較することができ、適当な形状を選択することができる。更に、CT画像データの再生を使用してマーカの3D画像を作り出し、その向きを求めてから、適切な曲線関数を定めてフィッティングすることができる。
[00150]マーカ点サブピクセル位置特定方法110はまた、医療用の撮像及び非医療用の撮像で、他の潜在的な適用分野を有する。例えば、歯科用の撮像では、歯列矯正治療でブラケットを配置するために方法110を使用することができ、ブラケットの位置は、約100マイクロメートル以上の精度まで評価することができる。また、方法110を使用して、異なる時点で獲得されたが同じ外部又は内部マーカを有する画像を正確に位置合わせすることもできる。同様に、マーカ3D位置特定方法160の基本的な手法は、天文学等、マーカを使用しないCT走査及び他のCT以外の走査の適用分野でも使用することができる。
[00151]物理的マーカマッピング方法250はまた、単に患者の運動を追跡すること以外の潜在的な適用分野を有する。例えば、方法250を使用して、理想的でない回転を受けたガントリに対して動的な較正を行うことができる。この場合、方法250は、埋込みマーカを含む固定の模型に適用されるはずである。この適用分野は、X線画像増倍管(C−Arm走査設備と呼ばれることもある)を有するCTシステムにとって特に有用なはずである。更に、方法250は通常、物体が「理想的な」進行を有するが、実際には理想的でないこともあるシステムとともに使用することもできる。
[00152]更に、上述した方法では、様々なデータ処理技法を使用することができる。例えば、マーカ点マッピング方法250では、候補点、良好点及び疑わしい点を追跡するための様々なリスト及びリストの組合せ又は表を使用することができる。例えば、方法250は、別個の良好点リストを作成するのではなく、候補点リストを作成し、良好でない点を除去することができる。更に、方法250は、点の1つ又は複数のリストを作成し、フラグ又はビットを使用して、候補点、良好点、不良点及び疑わしい点を区別することができる。
[00153]また、図2は、別個のモジュール(例えば、50、52、54、56等)を記憶するROMモジュール46を示すが、幾つかの実施形態では、これらのモジュールを組み合わせて、ROMモジュール46、他のメモリモジュール又はこれらの組合せ内に記憶された1つ又は複数のモジュールに分散させる。例えば、幾つかの実施形態では、同じモジュールが、マーカ識別方法及びマーカサブピクセル位置特定方法を実行する。更に、ROMモジュール46は、上述した関数以外の関数を実行する他のモジュールを含むことができる。幾つかの実施形態では、これらのモジュールを、ハードディスク、フラッシュ又は他の半永久的な媒体上に記憶して、実行の際にはRAMへ伝達することができる。
[00154]従って、本発明は、とりわけ、画像内のマーカ点を識別し、画像内で識別されたマーカ点のサブピクセル中心点を求め、画像内で識別されたマーカに対する3D座標を
求め、患者に配置された特定の物理的マーカにマーカ点をマッピングする方法及びシステムを提供する。本発明の様々な特徴及び利点を、以下の特許請求の範囲に記載する。