JP2013509420A - 5,6−ジヒドロ−1h−ピリジン−2−オン重水素化合物 - Google Patents

5,6−ジヒドロ−1h−ピリジン−2−オン重水素化合物 Download PDF

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Abstract

【課題】5,6−ジヒドロ−1H−ピリジン−2−オン重水素化合物の提供。
【解決手段】本発明は、5,6−ジヒドロ−1H−ピリジン−2−オン重水素化合物、及び、C型肝炎ウイルスによる感染症を治療するのに有用である該化合物を含有する医薬組成物に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、5,6−ジヒドロ−1H−ピリジン−2−オン重水素化合物、及び、C型肝炎ウイルスによる感染症を治療するのに有用である該化合物を含有する医薬組成物に関する。
C型肝炎は世界的に重大な健康問題である。世界保健機構の概算によれば、1億7千万人の人々がC型肝炎ウイルス(HCV)の慢性保菌者であって、米国だけでも400万人の保菌者がいる。米国内では、HCV感染者が慢性肝疾患の患者の40%を占めており、HCV疾患が肝移植の理由として最多のものとなっている。HCVへの感染は慢性感染へとつながり、感染者のうち約70%が慢性的な肝組織変化(慢性肝炎)へと進行し、10〜40%の肝硬変のリスクを伴い、更に肝細胞癌の生涯リスクは4%であると見積もられている。米国疾病管理予防センター(CDC)の概算によると、米国では毎年35,000件の新しいHCV感染症例が発生し、HCV疾患によって約1万人が死亡している。
今のところ標準的に行われているのは、ペグインターフェロン/リバビリンの併用による治療であるが、この治療は年に約30,000ドルの費用を要する。これらの薬剤は投薬上厄介な問題と副作用を抱えており、相当数の診断患者がウイルス持続陰性化(sustained viral response、SVR)を達成できていない。ペグインターフェロン治療には、危険なインフルエンザ様症状、過敏症、集中不能、自殺念慮、及び、白血球減少症が伴う。リバビリンには、溶血性貧血や先天的欠損症が伴う。
この標準治療に対する総合効果(overall response)は低く、患者の約3分の1には効果がない。効果があった患者でも、6〜12カ月間の治療が完了したのち6カ月以内に再発する者もいる。その結果、治療をはじめた全患者の長期奏効率は50%程度でしかない。現在行われている療法、すなわち抗HCV薬治療の奏効率は比較的低く、副作用も顕著であるため、慢性HCV感染症に対する長期効果が否定的なことも相まって、改良された治療法への医学的ニーズが継続的に存在している。HCVのようなRNAウイルス疾患を治療するための抗ウイルス製剤はほとんど存在せず、上述したように多数の副作用を伴う場合が多い。
C型肝炎感染症の治療に有用なNS5B阻害剤が多くの刊行物に記載されている。例えば、特許文献1([1,2−b]ピリダジノン化合物を記載)、特許文献2(ある種のピリダジノンを開示)、特許文献3(選択された複素環式化合物を開示)、並びに、特許文献4、特許文献5及び特許文献6(それぞれ特定の種類の置換チアジアジンを記載)が挙げられる。
症例によっては疾患症状を軽減する市販薬が存在する一方で、根本的な原因であるウイルスの複製を効果的に阻害する薬剤はほとんど存在しない。C型肝炎ウイルスによる慢性感染症等(但しこれに限定されない)のRNAウイルス疾患の重大性及び有病率から、現行の抗ウイルス製剤の有用性及び効果が限られていることも相まって、これらの疾患を治療する新規な製剤へのニーズが切実かつ継続的なものとなっている。
米国特許出願公開第2008/0031852号明細書 米国特許出願公開第2006/0189602号明細書 米国特許出願公開第2006/0252785号明細書 国際公開第03/059356号 国際公開第02/098424号 国際公開第01/85172号
本発明は、5,6−ジヒドロ−1H−ピリジン−2−オン重水素化合物及びその医薬的に許容される塩に関し、これらはC型肝炎ウイルス感染症の治療又は予防を必要とする患者において上記感染症を治療又は予防するのに有用であって、該治療又は予防は、5,6−ジヒドロ−1H−ピリジン−2−オン重水素化合物を治療上又は予防上有効な量で患者に投与することを含む。
本発明の一般的な態様によれば、本発明は、下記式I:
Figure 2013509420
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に水素及び重水素から選択され、
はFであり、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22及びR23の少なくとも1つは重水素である)で表される化合物、又は、その医薬的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性体若しくは立体異性体に関する。
本発明の一態様によれば、R、R及びR置換基の少なくとも1つは重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明の一態様によれば、R12及びR13置換基の少なくとも1つは重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明の一態様によれば、R、R、R10、R11、R12及びR13置換基の少なくとも1つは重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明の一態様によれば、R16又はR17は重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明の一態様によれば、R、R、R10、R11、R16及びR17の少なくとも1つは重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明の一態様によれば、R12、R13、R16及びR17の少なくとも1つは重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明の一態様によれば、R、R、R10、R11、R12、R13、R16及びR17の少なくとも1つは重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明の一態様によれば、R、R、R、R12及びR13置換基の少なくとも1つは重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明の一態様によれば、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13置換基の少なくとも1つは重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明の一態様によれば、R、R、R、R16及びR17の少なくとも1つは重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明の一態様によれば、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R16及びR17の少なくとも1つは重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である。
本発明はまた、式Iの化合物の医薬的に許容される塩及び医薬的に許容される溶媒和物にも関する。更に、式Iの化合物の有利な製造方法にも関する。
一態様によれば、本発明は、C型肝炎ウイルス感染症の治療又は予防を必要とする哺乳類、好ましくはヒトにおいて上記感染症を治療又は予防する方法を包含し、該方法は、式Iの化合物を治療上又は予防上有効な量で患者に投与することを含む。一実施形態によれば、本発明は、C型肝炎ウイルス感染症の治療又は予防を必要とする患者に、HCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤である式Iの化合物を治療上又は予防上有効な量で投与することによって、C型肝炎ウイルス感染症を治療又は予防する方法を包含する。
別の態様によれば、本発明は、C型肝炎ウイルス感染症の治療又は予防を必要とする患者において上記感染症を治療又は予防する方法を包含し、該方法は、治療上又は予防上有効な量の式Iの化合物と、医薬的に許容される賦形剤、担体又はビヒクルを上記患者に投与することを含む。
別の態様によれば、本発明は、C型肝炎ウイルス感染症の治療又は予防を必要とする患者において上記感染症を治療又は予防する方法を包含し、該方法は、治療上又は予防上有効な量の式Iの化合物と、追加の治療剤、好ましくは追加の抗ウイルス剤又は免疫調節剤を上記患者に投与することを含む。
本明細書中、以下の用語が使用されている箇所においては、以下の定義の通り使用される。
本明細書中、「含む(「含有する」ともいう;comprising)」、「有する(having)」、「包含する(including)」という語はオープンであり、非限定的な意味で使用される。
本明細書中、「アルキル」という語は、他に特に記載のない限り、直鎖、分枝若しくは環状構造(縮合環式及び橋かけ環式の二環構造及びスピロ環構造を含む)又はこれらの構造を組み合わせたものを有し、且つ、炭素数が1〜12である1価の飽和炭化水素ラジカルを包含する。アルキル基が環状構造を有するためには、炭素原子を少なくとも3つ有する必要がある。
「免疫調節剤」という語は、刺激又は抑制により正常又は異常な免疫系を調節できる天然物又は合成物をいう。
「予防(防止)」という語は、本発明に係る化合物又は組成物が、本明細書中で特定された疾患を、その疾患を有すると診断された患者又はその疾患が発症する恐れのある患者において防止できることをいう。また、本用語は、既にそのような疾患を患っている又はその症状が出ている患者において、それ以上の疾患の進行を防止することも包含する。
「患者(患畜)」又は「投与対象」という語は、動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット等)又は哺乳類を意味し、動物及び哺乳類のキメラ体及びトランスジェニック体も包含する。HCV感染症の治療又は予防において、「患者(患畜)」又は「投与対象」という語は、サル又はヒトを意味することが好ましく、ヒトが最も好ましい。具体的な実施形態においては、患者(患畜)又は投与対象はC型肝炎ウイルスに感染しているか、同ウイルスに曝されている。ある種の実施形態群において、患者は、ヒトの幼児(0〜2歳)、小児(2〜17歳)、青年(12〜17歳)、成人(18歳以上)又は老人(70歳以上)である。また、上記患者は、HIV陽性患者、癌患者、免疫療法又は化学療法を受けている患者等の免疫不全患者を含む。特定の一実施形態において、患者は健康な個体、すなわち他のウイルス感染症の症状を示さない個体である。
「治療上有効な量」という語は、本発明に係る化合物が、ウイルス疾患の治療又は予防に利益をもたらすのに充分な量、ウイルス感染症又はウイルス誘発性疾患に伴う症状を遅延させる又は最小限に抑えるのに充分な量、あるいは、疾患若しくは感染症又はそれらの原因を治癒又は改善させるのに充分な量をいう。特に、治療上有効な量は、インビボで治療上の利益をもたらすのに充分な量をいう。本発明に係る化合物の量について用いた場合、該用語は、総治療率(overall therapy)を改善する、疾患の症状若しくは原因を減少させる若しくは回避する、他の治療剤の治療効力を高める、又は、他の治療剤と相乗的に作用させるような無毒性量も包含することが好ましい。
「予防上有効な量」という語は、本発明に係る化合物又は他の有効成分が、ウイルス感染症の感染、再発又は拡散を防止するのに充分な量をいう。予防上有効な量は、初期感染、又は、感染症若しくは感染症に伴う疾患の再発若しくは拡散を防止するのに充分な量ともいえる。本発明に係る化合物の量について用いた場合、該用語は、総予防率(overall prophylaxis)を改善する、他の予防剤若しくは治療剤の予防効果を高める、又は、他の予防剤若しくは治療剤と相乗的に作用させるような無毒性量も包含することが好ましい。
「組み合わせ(「併用」ともいう;in combination)」という語は、複数の予防及び/又は治療剤を同時に又は連続して、それぞれの効果が付加される又は相乗されるように用いることをいう。
「治療」という語は、
(i)疾患、異常及び/又は不調が起こりやすいが、まだそれらを有しているとは診断されていない動物において、そのような疾患、異常又は不調が起こるのを防ぐこと;
(ii)疾患、異常又は不調を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること;及び
(iii)疾患、異常又は不調を軽減すること、すなわち、疾患、異常及び/又は不調の退行を生じさせることをいう。
「R」又は「S」という語は、記載された化学構造において不斉炭素原子における置換基の特定の立体化学的配置を示す。
「rac」という語は、化合物がラセミ化合物であることを示し、ラセミ化合物は、鏡像異性体ペアの等モル混合物と定義される。「rac」化合物は光学活性を示さない。ラセミ化合物の化学名又は化学式は、(±)−若しくはrac−(若しくはracem−)という接頭辞、又は、RS及びSRという符号によって鏡像異性体と区別される。
「endo」及び「exo」という語は、ビシクロ[x.y.z]アルカン(x≧y>z>0)において非橋頭原子に結合した置換基の相対的な配向を示すものである。
「syn」及び「anti」という語は、ビシクロ[x.y.z]アルカン(x≧y>z>0)において橋頭原子に結合した置換基の相対的な配向を示すものである。
Figure 2013509420
「exo」という語は、最も大きな番号のついた橋(Z橋;例えば下記例ではC−7)側に配向した置換基(例えば下記例のC−2に結合したBr)に付される。置換基が最も大きな番号のついた橋から離れるように配向していれば、「endo」と表記される。
「syn」という語は、最も大きな番号のついた橋(Z橋)に結合し、且つ、最も小さな番号のついた橋(X橋;例えば下記例ではC−2及びC−3)側に配向した置換基(例えば下記例ではC−7に結合したF)に付される。置換基が最も小さな番号のついた橋から離れるように配向していれば、「anti」と表記される。
Figure 2013509420
「cis」及び「trans」という語は、二重結合で互いにつながっているか、又は、環内に含まれている別々の原子に結合した2つの配位子の関係を示す表記である。これら2つの配位子が一平面の同じ側に存在している場合、互いにcis位であるという。それぞれ反対側に存在している場合、これらの相対配置はtrans位と表記される。二重結合の基準面は、関連するσ結合の面と垂直であり、且つ、二重結合を通るものが適切である。環の場合、基準面は環の中央面である。
「重水素濃縮度」という語は、分子内の所定位置に水素の代わりに導入された重水素の割合(%)をいう。例えば、所定位置での重水素濃縮度が1%とは、所定のサンプル中の分子の1%が該特定位置に重水素を含んでいることを意味する。重水素の天然存在比は約0.0156%なので、非濃縮出発材料を用いて合成した化合物における任意の位置での重水素濃縮度は約0.0156%である。重水素濃縮度は、質量分析法や核磁気共鳴分光法等といった当業者に公知の従来の分析方法によって測定できる。
〜R23などの分子内での所定位置を記述するために使用される「重水素である」という語、又は、分子構造図の所定位置を表すために使用される「D」という符号は、その特定された位置が重水素で濃縮され、重水素の天然存在比よりも高くなっていることを意味する。一実施形態において、重水素濃縮度は上記特定位置で約25%以上、他の実施形態においては約50%以上、また別の実施形態においては約75%以上、更に別の実施形態においては約95%以上である。
本発明の化合物は互変異性現象を示すものであってもよい。式Iでは存在しうる互変異性体の全てを明確に描写できていないものの、式Iは、描写された化合物の互変異性体を全て表すことを意図しており、式に描写された特定の化合物の形態のみに限定されないと理解されたい。
本発明に係る化合物の中には、単一の立体異性体(すなわち、本質的に他の立体異性体を含まない)、ラセミ化合物、及び/又は、鏡像異性体及び/又はジアステレオ異性体の混合物として存在しているものがあってもよい。これら単一の立体異性体、ラセミ化合物、及び、上記混合物はすべて本発明の範囲内であることを意図している。光学活性を示す本発明に係る化合物は、光学的に純粋な形態で使用することが好ましい。
通常、当業者に理解されるように、キラル中心を1つ(すなわち不斉炭素原子を1つ)有する光学的に純粋な化合物は、2つの存在しうる鏡像異性体のうちの一方で本質的に構成された(すなわち鏡像異性的に純粋な)ものであり、複数のキラル中心を有する光学的に純粋な化合物は、ジアステレオ異性的にも鏡像異性的にも純粋なものである。本発明に係る化合物は、少なくとも90%がその他の鏡像異性体又はジアステレオ異性体を含まない形態で使用されることが好ましい。すなわち、単一の異性体を少なくとも90%含む形態(鏡像体過剰率(e.e.)又はジアステレオ異性体過剰率(d.e.)が80%)が好ましく、少なくとも95%含む形態(90%e.e.又はd.e.)がより好ましく、少なくとも97.5%含む形態(95%e.e.又はd.e.)が更に好ましく、少なくとも99%含む形態(98%e.e.又はd.e.)が最も好ましい。
また、式Iは、特定された構造の溶媒和した形態及び溶媒和していない形態をも包含することを意図している。例えば、式Iは、示された構造を有する化合物の水和した形態及び水和していない形態のどちらも包含する。溶媒和物の他の例としては、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸、又は、エタノールアミンと組み合わせた構造が挙げられる。
式Iの化合物に加え、本発明は、そのような化合物及び代謝産物の医薬的に許容されるプロドラッグ、医薬的に有効な代謝産物、及び、医薬的に許容される塩を包含する。
「医薬的に許容されるプロドラッグ」とは、その薬理作用を示す前に、生理学的条件下で又は加溶媒分解によって、特定された化合物又はその化合物の医薬的に許容される塩に変換され得る化合物である。プロドラッグは、一般的に、化学的安定性の向上、患者の受容性(acceptance)や服薬遵守の向上、バイオアベイラビリティの向上、作用持続時間の延長、器官選択性の向上、処方の改善(水溶解性の向上等)、及び/又は、副作用(毒性等)の低減を目的として調剤される。プロドラッグは、Burger,Medicinal Chemistry and Drug Chemistry,1,172−178,949−982(1995)に記載された方法等、当該分野で公知の方法によって、式Iの化合物から容易に調製できる。また、Bertoliniら,J.Med.Chem.,40,2011−2016(1997);Shanら,J.Pharm.Sci.,86(7),765−767;Bagshawe,Drug Dev.Res.,34,220−230(1995);Bodor,Advances in Drug Res.,13,224−331(1984);Bundgaard,Design of Prodrugs(Elsevier Press 1985);Larsen,Design and Application of Prodrugs,Drug Design and Development(Krogsgaard−Larsenら編,Harwood Academic Publishers,1991);Dearら,J.Chromatogr.B,748,281−293(2000);Spraulら,J.Pharmaceutical&Biomedical Analysis,10,601−605(1992);及び、Proxら,Xenobiol.,3,103−112(1992)も参照されたい。
「医薬的に有効な代謝産物」は、特定された化合物又はその塩を体内で代謝することで生成される薬理的に有効な生成物を意味するものである。ほとんどの薬剤は、体内に取り込まれると、その物性及び生物学的効果を変化させ得る化学反応の基質となる。これらの代謝変換は、通常、式Iの化合物の極性に影響を与え、それにより、薬剤の体内への分布のされ方や体内からの排出のされ方が変化する。だが、治療効果を得るために薬剤の代謝が必要な場合もある。例えば、代謝拮抗薬系の抗癌剤は、癌細胞に運ばれた後でその活性型に変換される必要がある。
ほとんどの薬剤は何らかの代謝変換を受けるため、薬剤代謝に関与する生化学反応は多種多様である。薬剤代謝が起こる主要部位は肝臓であるが、他の組織が関与する場合もある。
このような変換の主な特徴は、代謝生成物、すなわち「代謝産物」の方が親薬物よりも極性が高いことである。ただし、極性を有する薬剤からより極性の低い生成物が得られることもある。脂質/水分配係数が高い物質は細胞膜を容易に通過するが、尿細管から腎尿細管細胞を通って血漿中へと拡散し戻りやすい。従って、これらの物質は腎クリアランスが低く、且つ、体内滞留時間が長い傾向にある。薬剤が、より極性が高い化合物、すなわち、より分配係数が低いものに代謝される場合、その尿細管再吸収は大きく減少することとなる。更に、近位尿細管及び肝実質細胞でのアニオン及びカチオンに対する特定の分泌機構は、極性の高い物質に対して働く。
具体例として、フェナセチン(アセトフェネチジン)及びアセトアニリドはどちらも穏やかに作用する解熱鎮痛剤であるが、体内で、より極性が高くより効果の高い代謝産物であって、今日では広く使用されているp−ヒドロキシアセトアニリド(アセトアミノフェン)に変換される。アセトアニリドをヒトに投与すると、血漿中では次々と生成される各種代謝産物のピークと減衰が連続して起こる。最初の1時間では、アセトアニリドが主な血漿中成分である。次の1時間では、アセトアニリド濃度が減少するので、代謝産物のアセトアミノフェン濃度がピークに達する。最後に、数時間経過すると、主な血漿中成分は別の不活性な代謝産物となり、これが体内から排出され得る。従って、薬剤自体の他、1つ以上の代謝産物の血漿中濃度が薬理学的に重要であり得る。
「医薬的に許容される塩」は、特定された化合物の遊離酸及び遊離塩基の生物学的効果を保持し、且つ、生物学的に又は他の理由から望ましくないものではない塩を意味する。本発明に係る化合物は、充分に酸性を示す、又は、充分に塩基性を示す、又は、その両方を示す官能基を有していてもよく、従って、いくらかの無機塩基や有機塩基、及び、無機酸や有機酸と任意に反応して、医薬的に許容される塩を形成してもよい。医薬的に許容される塩としては、鉱酸若しくは有機酸又は無機塩基と、本発明の化合物との反応で調製される塩が挙げられ、例えば、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタン−スルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、及び、マンデル酸塩等の塩が挙げられる。
本発明の化合物が塩基である場合、医薬的に許容される望ましい塩は、当該技術分野で利用できる任意の好適な方法で調製できる。例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸等の無機酸で遊離塩基を処理してもよく、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸(グルクロン酸、ガラクツロン酸等)、α−ヒドロキシ酸(クエン酸、酒石酸等)、アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸等)、芳香族酸(安息香酸、ケイ皮酸等)、スルホン酸(p−トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸等)等の有機酸で遊離塩基を処理してもよい。
本発明の化合物が酸である場合、医薬的に許容される望ましい塩は、任意の好適な方法で調製できる。例えば、アミン(1級、2級又は3級)、アルカリ金属水酸化物、又は、アルカリ土類金属水酸化物等の無機塩基又は有機塩基で遊離酸を処理してもよい。好適な塩の具体例としては、グリシンやアルギニン等のアミノ酸、アンモニア、1級、2級及び3級アミン、並びに、ピペリジン、モルホリン及びピペラジン等の環状アミンに由来する有機塩の他、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムに由来する無機塩が挙げられる。
薬剤が固体の場合、本発明の化合物及び塩は様々な結晶形態、共結晶形態又は多形形態で存在するものであってもよいことが当業者に理解される。また、いずれも本発明及び特定された式の範囲を逸脱するものではない。
C型肝炎ウイルス感染症の治療法及び予防法
本発明によれば、C型肝炎ウイルス感染症の治療又は予防を必要とする患者において上記感染症を治療又は予防する方法を提供できる。
また、本発明によれば、C型肝炎ウイルス感染症を治療及び/又は予防中の患者の血流中に、式Iの化合物又はそれら化合物を組み合わせたものを治療上有効な量で導入する方法を提供できる。
だが、感染症の急性期又は慢性期の治療又は予防において、本発明に係る式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の予防量又は治療量は、感染症の性質及び深刻さ、並びに、有効成分が投与される経路によって異なる。また、投与量、場合によっては投与頻度も、治療する感染症、並びに、各患者の年齢、体重及び反応性によって異なる。当業者であれば、このような要因を考慮して、好適な投与計画を容易に選択できる。
本発明に係る方法は、とりわけヒト患者に好適である。特に、本発明に係る方法及び投与量は、癌患者、HIV感染患者、及び、免疫変性疾患の患者等の免疫不全患者に有用であり得るが、それらに限定されない。更に、本方法は、現在は寛解期にある免疫不全患者に有用であり得る。本発明に係る方法及び投与量はまた、他の抗ウイルス治療を受けている患者にも有用であり得る。本発明に係る予防方法は、ウイルス感染症の恐れのある患者にとりわけ有用である。このような患者としては、医療従事者(医者、看護師、ホスピス介護者等)、軍人、教師、保育者、及び、外国、特に第三世界の地域に旅行又は居住している患者(社会支援従事者、宣教師、外交官等)が挙げられるが、これらに限定されない。最後に、本方法及び組成物は、難治性患者、すなわち、逆転写酵素阻害剤やプロテアーゼ阻害剤等への耐性等といった治療耐性を有する患者への治療を包含する。
投与量
本発明に係る化合物の毒性及び効能は、例えば、LD50値(個体数の50%が死に至る投与量)及びED50値(個体数の50%に治療上の効果が現れる投与量)を測定するための手順等、細胞培養又は実験動物において標準的な薬学的手順により決定できる。毒性と治療効果の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比で表される。
細胞培養アッセイ及び動物実験で得られたデータを用いることで、化合物をヒトに使用する際の投与量範囲を決定できる。このような化合物の投与量は、毒性をほとんど又は全く示さないED50値を含む循環濃度の範囲内であることが好ましい。投与量は、採用した剤形及び利用した投与経路に応じて、この範囲内で変更してもよい。本発明の方法で使用される化合物についてはいずれも、最初は細胞培養アッセイから治療上有効な投与量を推定できる。細胞培養で求めたように、動物モデルにおいて、IC50値(すなわち、症状の阻害が最大値の半分に達するときの試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲になるように投与量を決定してもよい。あるいは、動物モデルにおいて、式Iの化合物の循環血漿中濃度範囲が一定の反応の大きさを達成するのに必要な濃度と一致するように該化合物の投与量を決定してもよい。これらの情報から、ヒトに対して有用な投与量を更に正確に決定できる。血漿中濃度は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定できる。
本発明におけるプロトコル及び組成物は、ヒトで使用する前に、所望の治療又は予防効果をインビトロ、続いてインビボで試験することが好ましい。例えば、特定の治療プロトコルの適用を指示すべきか否か決定するのに用いられるインビトロアッセイとしては、インビトロ細胞培養アッセイが挙げられる。該アッセイにおいては、式Iに係る化合物の作用に応答する細胞を該リガンドに曝し、適当な方法で反応の大きさを測定する。続いて、式Iの化合物の効能及び式Iの化合物のプロドラッグ変換率について、式Iの化合物を評価する。本発明の方法で使用する化合物は、ヒトで試験する前に、以下に限定されないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、ハムスター等の好適な動物モデル系で試験してもよい。その後、化合物を適当な臨床試験に使用できる。
感染症又は症状の急性期/慢性期の予防又は治療において、本発明に係る式Iの化合物のプロドラッグ又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の予防量又は治療量は、該感染症の性質及び深刻さ、並びに、有効成分が投与される経路によって異なる。また、投与量、場合によっては投与頻度も、治療する感染症、並びに、各患者の年齢、体重及び反応性によって異なる。当業者であれば、このような要因を考慮して、好適な投与計画を容易に選択できる。一実施形態において、投与量は、使用する具体的な化合物、並びに、患者の体重及び症状によって決定できる。また、投与量は、式Iの各種化合物により異なっていてもよい。好適な投与量は、上述のインビトロ測定及び動物実験に基づいて予測できる。すなわち、本明細書中で記載又は参照した系で測定した場合に、式Iの他の化合物と比べてより低い濃度で有効性を示した式Iの化合物に対してはより少ない投与量が好適である、といったように予測できる。通常、一日当たりの投与量は約0.001〜100mg/kgであり、好ましくは約1〜25mg/kgであり、更に好ましくは約5〜15mg/kgである。C型肝炎ウイルスに感染したヒトを治療する場合、1日当たり約0.1mg〜約15g、好ましくは1日当たり100mg〜12g、より好ましくは1日当たり100〜8000mgを1日1〜4回程度に分けて投与する。
また、推奨される一日投与量を、単一の薬剤として又は他の治療剤と組み合わせて、周期的に投与してもよい。一実施形態においては、一日投与量を1回で、又は、同量ずつ複数回に分けて投与する。関連する実施形態においては、推奨される一日投与量を、週1回、週2回、週3回、週4回又は週5回投与することもできる。
一実施形態において、本発明に係る化合物が投与されると、化合物は患者の体内で全身に分布する。関連する実施形態では、本発明に係る化合物が投与されると、体内で全身的に効果が生じる。
別の実施形態において、本発明に係る化合物は、経口、経粘膜(舌下、口腔内、直腸、鼻、膣等)、非経口(皮下、筋肉内、ボーラス注入、動脈内、静脈内等)、経皮又は局所投与等によって投与される。一特定実施形態において、本発明に係る化合物は、経粘膜(舌下、口腔内、直腸、鼻、膣等)、非経口(皮下、筋肉内、ボーラス注入、動脈内、静脈内等)、経皮又は局所投与によって投与される。他の一特定実施形態において、本発明に係る化合物は経口的に投与される。更に他の一特定実施形態において、本発明に係る化合物は経口的に投与されない。
当業者には容易に理解されるように、感染症の種類が異なれば、適用できる治療上有効な量も異なる。同様に、そのような感染症を治療又は予防するには充分であるが、従来の療法に伴う副作用を引き起こすには至らない量又はその副作用を減少させるのに充分な量も、上述の投与量及び投与頻度計画に包含される。
併用療法
特定の本発明に係る方法においては、追加の治療剤(すなわち、本発明に係る化合物以外の治療剤)を更に投与する。本発明の特定の実施形態によれば、本発明に係る化合物は少なくとも1つの別の治療剤と組み合わせて使用できる。治療剤としては、抗生物質、抗嘔吐剤、抗鬱剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗癌剤、免疫調節剤、α−インターフェロン、β−インターフェロン、リバビリン、アルキル化剤、ホルモン類、サイトカイン類、及び、toll様受容体調節剤等が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、本発明は、HCV特異的であるか又は抗HCV活性を示す追加の治療剤を投与することを包含する。
本発明に係る式Iの化合物は、抗生物質と組み合わせて投与又は処方できる。例えば、以下のものと共に処方できる。マクロライド(トブラマイシン(Tobi(登録商標))等)、セファロスポリン(セファレキシン(Keflex(登録商標))、セフラジン(Velosef(登録商標))、セフロキシム(Ceftin(登録商標))、セフプロジル(Cefzil(登録商標))、セファクロル(Ceclor(登録商標))、セフィキシム(Suprax(登録商標))、及び、セファドロキシル(Duricef(登録商標))等)、クラリスロマイシン(クラリスロマイシン(Biaxin(登録商標))等)、エリスロマイシン(エリスロマイシン(EMycin(登録商標))等)、ペニシリン(ペニシリンV(V−Cillin K(登録商標)又はPen Vee K(登録商標))等)、キノロン(オフロキサシン(Floxin(登録商標))、シプロフロキサシン(Cipro(登録商標))、ノルフロキサシン(Noroxin(登録商標))等)、アミノグリコシド系抗生物質(アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ネオマイシン、ネオマイシンウンデシレナート、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン等)、アンフェニコール系抗生物質(アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、チアンフェニコール等)、アンサマイシン系抗生物質(リファミド、リファンピン等)、カルバセフェム類(ロラカルベフ等)、カルバペネム類(ビアペネム、イミペネム等)、セファロスポリン類(セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム等)、セファマイシン類(セフブペラゾン、セフメタゾール、セフミノクス等)、モノバクタム類(アズトレオナム、カルモナム、チゲモナム等)、オキサセフェム類(フロモキセフ、モキサラクタム等)、ペニシリン類(アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ペナムシリン(penamccillin)、ペネタメートヨウ化水素酸塩、ペニシリンo−ベネタミン、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン、ペニメピサイクリン、フェネチシリンカリウム等)、リンコサミド類(クリンダマイシン、リンコマイシン等)、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンジュラシジン、エンビオマイシン、テトラサイクリン類(アピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、デメクロサイクリン等)、2,4−ジアミノピリミジン類(ブロジモプリム等)、ニトロフラン類(フラルタドン、塩化フラゾリウム等)、キノロン類及びそのアナログ(シノキサシン、クリナフロキサシン、フルメキン、グレパフロキサシン等)、スルホンアミド類(アセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルファミド、ノプリルスルファミド、フタリルスルファセタミド、スルファクリソイジン、スルファシチン等)、スルホン類(ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、ソラスルホン等)、シクロセリン、ムピロシン及びツベリン等。
本発明に係る式Iの化合物はまた、抗嘔吐剤と組み合わせて投与又は処方できる。好適な抗嘔吐剤としては、メトクロプロミド、ドンペリドン、プロクロルペラジン、プロメタジン、クロルプロマジン、トリメトベンザミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、ヒドロキシジン、アセチルロイシンモノエタノールアミン、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ビエタナウチン、ブロモプリド、ブクリジン、クレボプリド、シクリジン、ジメンヒドリナート、ジフェニドール、ドラセトロン、メクリジン、メタラタール、メトピマジン、ナビロン、オキシペンジル、ピパマジン、スコポラミン、スルピリド、テトラヒドロカンナビノール、チエチルペラジン、チオプロペラジン及びトロピセトロン、並びに、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る式Iの化合物は、抗鬱剤と組み合わせて投与又は処方できる。好適な抗鬱剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。ビネダリン、カロキサゾン、シタロプラム、ジメタザン、フェンカミン、インダルピン、塩酸インデロキサジン、ネホパム、ノミフェンシン、オキシトリプタン、オキシペルチン、パロキセチン、セルトラリン、チアゼシム、トラゾドン、ベンモキシン、イプロクロジド、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、オクタモキシン、フェネルジン、コチニン、ロリシプリン、ロリプラム、マプロチリン、メトラリンドール、ミアンセリン、ミルタザピン、アジナゾラム、アミトリプチリン、アミトリプチリンオキシド、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デメキシプチリン、デシプラミン、ジベンゼピン、ジメタクリン、ドチエピン、ドキセピン、フルアシジン、イミプラミン、イミプラミンN−オキシド、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、メタプラミン、ノルトリプチリン、ノキシプチリン、オピプラモール、ピゾチリン、プロピゼピン、プロトリプチリン、キヌプラミン、チアネプチン、トリミプラミン、アドラフィニル、ベナクチジン、ブプロピオン、ブタセチン、ジオキサドロール、デュロキセチン、エトペリドン、フェバルバメート、フェモキセチン、フェンペンタジオール、フルオキセチン、フルボキサミン、ヘマトポルフィリン、ヒペリシン、レボファセトペラン、メジホキサミン、ミルナシプラン、ミナプリン、モクロベミド、ネファゾドン、オキサフロザン、ピベラリン、プロリンタン、ピリスクシデアノール、リタンセリン、ロキシンドール、塩化ルビジウム、スルピリド、タンドスピロン、トザリノン、トフェナシン、トロキサトン、トラニルシプロミン、L−トリプトファン、ベンラファキシン、ビロキサジン及びジメルジン等。
本発明に係る式Iの化合物は、抗真菌剤と組み合わせて投与又は処方できる。好適な抗真菌剤としては、アムホテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、髄腔内注射(intrathecal)、フルシトシン、ミコナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチン、テルコナゾール、チオコナゾール、シクロピロックス、エコナゾール、ハロプログリン、ナフチフィン、テルビナフィン、ウンデシレナート及びグリセオフルビン等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る式Iの化合物は、抗炎症剤と組み合わせて投与又は処方できる。有用な抗炎症剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサレート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、メフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、トルメチン、ケトロラック、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ドロキシカム、ピボキシカム、テノキシカム、ナブメトン、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アンチピリン、アミノピリン、アパゾン及びニメスリド等の非ステロイド系抗炎症薬;以下に限定されないが、ジレウトン、オーロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム及びオーラノフィン等のロイコトリエン拮抗剤;以下に限定されないが、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン誘導体、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、フルニソリド、フルコキシノリド、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フランカルボン酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンジアセテート及びトリアムシノロンヘキサセトニド等のステロイド類;並びに、以下に限定されないが、メトトレキサート、コルヒチン、アロプリノール、プロベネシド、スルフィピラゾン及びベンズブロマロン等のその他の抗炎症剤等。
本発明に係る式Iの化合物は、別の抗ウイルス剤と組み合わせて投与又は処方できる。有用な抗ウイルス剤としては、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、及び、ヌクレオシドアナログ等が挙げられるが、これらに限定されない。上記抗ウイルス剤としては、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、レボビリン、ビラミジン、リバビリン及びタリバビリンの他、ホスカルネット、アマンタジン、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、アンプレナビル、ロピナビル、リトナビル、α−インターフェロン類、β−インターフェロン類、アデフォビル、クレブジン、エンテカビル、プレコナリル、BMS−824393及びGI−5005等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る式Iの化合物は、免疫調節剤と組み合わせて投与又は処方できる。免疫調節剤としては、メトトレキサート(methothrexate)、レフルノミド、シクロホスファミド、シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナル、マロノニトリラマイド類(レフルナミド(leflunamide)等)、T細胞受容体調節剤及びサイトカイン受容体調節剤、ペプチド模倣物及び抗体(ヒト、ヒト化、キメラ、単クローン、多クローン、Fvs、ScFvs、Fab若しくはF(ab)2フラグメント、エピトープ結合フラグメント等)、核酸分子(アンチセンス核酸分子、三重らせん等)、小分子、有機化合物、及び、無機化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。T細胞受容体調節剤としては、抗T細胞受容体抗体(抗CD4抗体(cM−T412(Boehringer社)、IDEC−CE9.1(登録商標、IDEC社及びSKB社)、mAB4162W94、オルソクローン及びOKTcdr4a(Janssen−Cilag社)等)、抗CD3抗体(ヌヴィオン(Protein Design Labs社)、OKT3(Johnson&Johnson社)及びリツキサン(IDEC社)等)、抗CD5抗体(抗CD5リシン結合免疫複合体等)、抗CD7抗体(CHH−380(Novartis社)等)、抗CD8抗体、抗CD40リガンド単クローン抗体(IDEC−131(IDEC社)等)、抗CD52抗体(キャンパス1H(Ilex社)等)、抗CD2抗体、抗CD11a抗体(ザネリム(Genentech社)等))、抗B7抗体(IDEC−114(IDEC社)等)、CTLA4免疫グロブリン、及び、Toll様受容体(TLR)調節剤(ANA773、IMO−2125、PF−04878691等)等が挙げられるが、これらに限定されない。サイトカイン受容体調節剤としては、可溶性サイトカイン受容体(TNF−α受容体の細胞外ドメイン又はそのフラグメント、IL−1β受容体の細胞外ドメイン又はそのフラグメント、IL−6受容体の細胞外ドメイン又はそのフラグメント等)、サイトカイン又はそのフラグメント(インターロイキン(IL)−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15、TNF−α、インターフェロン(IFN)−α、IFN−β、IFN−γ、GM−CSF等)、抗サイトカイン受容体抗体(抗IFN受容体抗体、抗IL−2受容体抗体(ゼナパックス(Protein Design Labs社)等)、抗IL−4受容体抗体、抗IL−6受容体抗体、抗IL−10受容体抗体、抗IL−12受容体抗体等)、及び、抗サイトカイン抗体(抗IFN抗体、抗TNF−α抗体、抗IL−1β抗体、抗IL−6抗体、抗IL−8抗体(ABX−IL−8(Abgenix社)等)、抗IL−12抗体等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る式Iの化合物は、ウイルス酵素を阻害する薬剤と組み合わせて投与又は処方でき、そのような薬剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。VX−500、VBY−376、BMS−650032、MK−7009(vaniprevir)、TMC−435350、BI−201335、SCH−503034(ボセプレビル)、ITMN−191(ダノプレビル)、VX−950(テラプレビル)、SCH900518(narlaprevir)、VX−813、VX−985、PHX1766、ABT−450、ACH−1625、ACH−1095、IDX136、IDX316、ITMN−5489等のHCVプロテアーゼ阻害剤;GS−9190、MK−3281、VCH−759(VX−759)、VCH−916、ABT−333、BMS−791325、PF−00868554(filibuvir)、IDX−184、R7128、PSI−6130、R1626、PSI−7851、VCH−222(VX−222)、ABT−072、BI207127等のNS5Bポリメラーゼ阻害剤;並びに、BMS−790052、A−831、AZD2836等のNS5Aタンパク質阻害剤等。
本発明に係る式Iの化合物は、HCVポリメラーゼを阻害する薬剤と組み合わせて投与又は処方でき、そのような薬剤としては、Wu,Curr Drug Targets Infect Disord.,2003,3(3),207−19に記載されたもの等が挙げられる。また、ウイルスのヘリカーゼ機能を阻害する化合物と組み合わせてもよく、そのような化合物としては、Bretner Mら,Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids.,2003,22(5−8),1531に記載されたもの等が挙げられる。更に、HCV特異的な他の標的の阻害剤と組み合わせてもよく、そのような阻害剤としては、Zhang X.,IDrugs,2002,5(2),154−8に記載されたもの等が挙げられる。
本発明に係る式Iの化合物は、ウイルス複製を阻害する薬剤と組み合わせて投与又は処方できる。
本発明に係る式Iの化合物は、シクロフィリンを阻害する薬剤と組み合わせて投与又は処方できる。シクロフィリン阻害剤としては、Debio−025、NIM−811及びSCY−635等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る式Iの化合物は、サイトカイン類と組み合わせて投与又は処方できる。サイトカイン類としては、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン15(IL−15)、インターロイキン18(IL−18)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン(Epo)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、プロラクチン、及び、インターフェロン(IFN;IFN−α、IFN−γ等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る式Iの化合物は、ホルモン類と組み合わせて投与又は処方できる。ホルモン類としては、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放出ホルモン、ACTH、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、視床下部放出因子、インシュリン、グルカゴン、エンケファリン、バソプレッシン、カルシトニン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリン類似物質、合成及び天然オピオイド、インシュリン、甲状腺刺激ホルモン及びエンドルフィン等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る式Iの化合物は、β−インターフェロン類と組み合わせて投与又は処方できる。β−インターフェロン類としては、インターフェロンβ−1a及びインターフェロンβ−1b等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る式Iの化合物は、α−インターフェロン類と組み合わせて投与又は処方できる。α−インターフェロン類としては、インターフェロンα−1、インターフェロンα−2a(ロフェロン)、インターフェロンα−2b、イントロン、ペグ−イントロン、ペガシス、コンセンサスインターフェロン(インファーゲン)、及び、アルブフェロン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明に係る化合物は、BLX−883(ロクテロン)、オメガインターフェロン及びペグ−インターフェロンラムダ等のインターフェロン類と組み合わせて投与又は処方できる。
本発明に係る式Iの化合物は、吸収促進剤、特にリンパ系を標的としたものと組み合わせて投与又は処方できる。そのような吸収促進剤としては、グリココール酸ナトリウム;カプリン酸ナトリウム;N−ラウリル−β−D−マルトピラノシド;EDTA;混合ミセル;及び、Muranishi,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.,7,1−33(その全体が参照により本願明細書に組み込まれる)に記載のもの等が挙げられるが、これらに限定されない。これら以外の公知な吸収促進剤を使用してもよい。従って、本発明は、1つ以上の本発明に係る式Iの化合物と、1つ以上の吸収促進剤を含有する医薬組成物を包含する。
本発明に係る式Iの化合物は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼによって代謝される式Iの化合物の薬物動態(半減期の増加、ピーク血漿中濃度までの時間の増加、血中濃度の増加等)を改善するシトクロムP450モノオキシゲナーゼ阻害剤と組み合わせて投与又は処方できる。そのような阻害剤としては、リトナビル並びにその医薬的に許容される塩、エステル及びプロドラッグ等が挙げられるが、これらに限定されない。従って、本発明は、本発明に係る式Iの化合物と、1つ以上のシトクロムP450モノオキシゲナーゼ阻害剤を含有する医薬組成物を包含する。
本発明に係る式Iの化合物は、胃腸管での式Iの化合物の吸収を促進し、且つ、式Iの化合物のバイオアベイラビリティを高めるために、食物と組み合わせて投与できる。
本発明に係る式Iの化合物は、アルキル化剤と組み合わせて投与又は処方できる。アルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン、メチルメラミン、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン及びテモゾロマイド等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る化合物と他の治療剤とは、相加的に作用してもよいが、相乗的に作用することが更に好ましい。一実施形態において、本発明に係る化合物を含有する組成物は、他の治療剤の投与と同時に投与される。ここで、他の治療剤は同じ組成物の一部であってもよく、本発明に係る化合物を含有する組成物とは異なる組成物に含まれていてもよい。別の実施形態において、本発明に係る化合物は、他の治療剤の投与の前又は後に投与される。更に別の実施形態において、本発明に係る化合物は、他の治療剤、とりわけ抗ウイルス剤による治療を今まで受けたことがない又は現在は受けていない患者に投与される。
一実施形態において、本発明の方法は、追加の治療剤を投与することなく、本発明に係る式Iの化合物を1つ以上投与することを含む。
医薬組成物及び剤形
本発明はまた、本発明に係る式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物を含有する医薬組成物及びシングルユニット型剤形を包含する。本発明における各剤形は、経口、経粘膜(舌下、口腔内、直腸、鼻、膣等)、非経口(皮下、筋肉内、ボーラス注入、動脈内、静脈内等)、経皮又は局所投与に好適である。本発明に係る医薬組成物及び剤形は、通常、更に医薬的に許容される賦形剤を1つ以上含む。本発明は滅菌剤形も意図している。
別の実施形態において、本実施形態に包含される医薬組成物は、本発明に係る式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物と、少なくとも1つの追加の治療剤を含有する。追加の治療剤としては上述のものが挙げられるが、それらに限定されない。
本発明における剤形の組成、形状及び種類は、通常、その用途によって異なる。例えば、ある疾患又はその関連疾患を急性期に治療する場合、同じ疾患を慢性期に治療する場合と比べて、剤形は1つ以上の有効成分をより多くの量含んでいてもよい。同様に、非経口剤形は、同じ疾患又は異常を治療するのに使用される経口剤形と比べて、1つ以上の有効成分をより少ない量含んでいてもよい。本発明に包含される各特定剤形のこのような又は他の異なり方は当業者に直ちに明らかであろう。Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing,Easton PA(1990)等を参照されたい。剤形としては、錠剤;カプレット;ソフト弾性ゼラチンカプセル等のカプセル;カシェ剤;トローチ;薬用ドロップ;分散薬;座剤;軟膏;パップ剤(湿布);泥膏;粉末;包帯;クリーム;硬膏;溶液;パッチ;エーロゾル(点鼻スプレー、吸入薬等);ゲル;懸濁液(水性又は非水性の懸濁液、水中油型エマルション、油中水型液状エマルション等)、溶液及びエリキシル剤等の患者に経口又は経粘膜投与するのに好適な液体剤形;患者に非経口投与するのに好適な液体剤形;並びに、液体に溶かすと患者に非経口投与するのに好適な液体剤形となる無菌固体(結晶固体、非晶質固体等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
通常の医薬組成物及び剤形には、担体、賦形剤又は希釈剤が1つ以上含まれる。好適な賦形剤は医薬分野の当業者に周知であり、好適な賦形剤の例を本明細書中に記載するものの、これらに限定されない。ある具体的な賦形剤が医薬組成物又は剤形に配合するのに好適なものであるか否かは、当該分野において周知の様々な要因により決定される。これら要因としては、剤形を患者に投与する方法等が挙げられるが、これに限定されない。例えば、錠剤等の経口剤形には、非経口剤形への使用には適さない賦形剤が含まれていてもよい。ある具体的な賦形剤の適性は、剤形中の特定の有効成分によって決まる場合もある。
本発明は更に、有効成分を含有する無水医薬組成物及び剤形を包含する。というのも、水が化合物の分解を促進する場合があるからである。例えば、水(例えば5%)を添加することが、製剤の貯蔵寿命や経時安定性等の特性を決定するために長期保存をシミュレートする手段として、医薬分野において広く受け入れられている。Carstensen,Drug Stability:Principles&Practice,2d.Ed.,Marcel Dekker,NY,NY,1995,pp.379−80等を参照されたい。実際、水及び熱によって化合物の分解が促進される場合もある。従って、製剤の製造、取扱、包装、貯蔵、輸送及び使用に際して、通常、水分及び/又は湿度に曝されるため、製剤に対する水の影響は非常に重大なものとなり得る。
本発明に係る無水医薬組成物及び剤形は、無水又は低水分の各成分を使用し、低水分又は低湿度条件下で調製できる。
無水医薬組成物は、調製後、その無水性が保持されたまま保存する必要がある。従って、無水組成物は、水に曝露されないようにする公知の材料を用いて、好適な処方キット内に収められるように包装することが好ましい。好適な包装材としては、密閉ホイル、プラスチック、単位用量容器(バイアル等)、ブリスターパック及びストリップパック等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明は更に、有効成分の分解速度を遅らせる化合物を1つ以上含有する医薬組成物及び剤形を包含する。そのような化合物は、本明細書中で「安定剤」ともいい、アスコルビン酸等の酸化防止剤、pH緩衝剤及び塩緩衝剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
賦形剤の量及び種類と同様、剤形中の有効成分の量及び具体的な種類は、以下に限定されないが患者に投与する経路等の要因によって異なる。だが、本発明における剤形は、通常、本発明に係る式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物を1単位当たり0.1〜1500mg含有し、1日当たりの用量が約0.01〜200mg/kgとなる。
経口剤形
経口投与に好適な本発明に係る医薬組成物は、以下に限定されないが、錠剤(チュアブル錠等)、カプレット、カプセル、及び、液剤(フレーバーシロップ等)等の個別の剤形で提供してもよい。このような剤形は所定量の有効成分を含有しており、当業者に周知の調剤方法によって調製できる。概略は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing,Easton PA(1990)を参照されたい。
本発明の典型的な経口剤形は、従来の医薬調合方法によって有効成分と少なくとも1つの賦形剤とを充分に混合することで調製される。投与するのに望ましい製剤の形態に応じて、賦形剤は様々な形態をとり得る。例えば、経口液又はエーロゾルの剤形で使用するのに好適な賦形剤としては、水、グリコール類、オイル、アルコール類、香料、保存料及び着色料等が挙げられるが、これらに限定されない。固体の経口剤形(粉末、錠剤、カプセル、カプレット等)で使用するのに好適な賦形剤としては、でんぷん、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
容易に投与できることから、錠剤及びカプセルが経口投与単位の形態としては最も有利であり、この場合、固体の賦形剤が使用される。必要に応じ、標準的な水性又は非水性手段によって錠剤をコーティングしてもよい。このような剤形は、任意の調剤方法で調製できる。通常、医薬組成物及び剤形は、有効成分と液状担体、固体担体微粉末又はその両方とを均一且つ充分に混合し、その後必要に応じて望ましい外見に成形することで調製される。
例えば、錠剤は圧縮又は成型により調製できる。圧縮錠剤は、粉末や顆粒等の自由流動する形態の有効成分を、必要に応じて賦形剤と混合し、好適な機械を用いて圧縮することで調製できる。成型錠剤は、不活性な希釈液で湿らせた化合物粉末からなる混合物を好適な機械を用いて成型することで調製できる。
本発明に係る経口剤形で使用できる賦形剤としては、結合剤、フィラー、崩壊剤及び滑沢剤等が挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物及び剤形で使用するのに好適な結合剤としては、コーンスターチ、ジャガイモでんぷん、その他のでんぷん、ゼラチン、アラビアゴム等の天然及び合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、その他のアルギン酸塩、トラガント末、グアーガム、セルロース及びその誘導体(エチルセルロース、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α化でんぷん、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(No.2208、2906、2910等)及び微結晶セルロース、並びに、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中の医薬組成物及び剤形で使用するのに好適なフィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム(顆粒、粉末等)、微結晶セルロース、セルロース粉末、デキストレート(dextrate)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、でんぷん、及びα化でんぷん、並びに、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明に係る医薬組成物中の結合剤又はフィラーの量は、通常、医薬組成物又は剤形の約50〜約99重量%である。
好適な微結晶セルロースとしては、AVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103、AVICEL RC−581、及び、AVICEL−PH−105(FMC社、アメリカンビスコース事業部、AVICEL販売部門(ペンシルバニア州マーカスフック)から入手可能)として販売されている材料、並びに、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な結合剤としては、微結晶セルロースと、AVICEL RC−581として販売されているカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物が挙げられる。好適な無水又は低水分の賦形剤又は添加剤としては、AVICEL−PH−103(登録商標)及びStarch1500LM等が挙げられる。
崩壊剤を本発明に係る組成物で使用した場合、提供される錠剤は水性環境に曝されると崩壊する。錠剤中に含まれる崩壊剤が多すぎると、保存中に崩壊する恐れがあり、一方、少なすぎると、所望の速度又は所望の環境下で崩壊しない恐れがある。従って、有効成分の放出に不利な変化をきたすことがないように過不足ない十分な量の崩壊剤を用いて、本発明に係る固形の経口剤形を調製するべきである。使用される崩壊剤の量は製剤の種類によって異なり、この量は当業者には容易に理解できる。通常の医薬組成物は、崩壊剤を約0.5〜約15重量%、特に約1〜約5重量%含有する。
本発明に係る医薬組成物及び剤形で使用できる崩壊剤としては、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ又はタピオカでんぷん、α化でんぷん、その他のでんぷん、粘土、その他のアルギン類、その他のセルロース類、及び、ゴム、並びに、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る医薬組成物及び剤形で使用できる滑沢剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、軽鉱物油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、その他のグリコール類、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(落花生油、綿実油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油等)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル及び寒天、並びに、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。他の滑沢剤としては、シロイドシリカゲル(AEROSIL200、W.R.Grace社(メリーランド州ボルチモア)製)、合成シリカの凝結エーロゾル(Degussa社(テキサス州プレイノー)製)、及び、CAB−O−SIL(焼成二酸化ケイ素、Cabot社(マサチューセッツ州ボストン)製)、並びに、これらの混合物等が挙げられる。使用するとしても、滑沢剤の量は、通常、配合される医薬組成物又は剤形の約1重量%未満である。
遅延放出剤形
本発明に係る有効成分は、当業者に周知の制御放出手段又は送達装置により投与できる。例えば、米国特許第3,845,770号明細書、第3,916,899号明細書、第3,536,809号明細書、第3,598,123号明細書、第4,008,719号明細書、第5,674,533号明細書、第5,059,595号明細書、第5,591,767号明細書、第5,120,548号明細書、第5,073,543号明細書、第5,639,476号明細書、第5,354,556号明細書及び第5,733,566号明細書等に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。このような剤形は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他のポリマーマトリクス、ゲル、浸透膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、リポソーム若しくは微小球、又は、これらの組み合わせ等を用いて、1つ以上の有効成分をゆっくりと放出させる又は制御して放出させるのに使用でき、それにより、様々な割合での所望の放出プロファイルを提供できる。当業者に公知の好適な制御放出製剤としては、本明細書中に記載のもの等が挙げられるが、これらは、本発明に係る有効成分と使用する上で容易に選択できる。本発明は、従って、制御して放出させるのに適した、経口投与に好適なシングルユニット型剤形、例えば以下に限定されないが、錠剤、カプセル、ゲルカプセル及びカプレット等を包含する。
あらゆる制御放出医薬品に共通する目的は、制御していない対応の医薬品で得られるよりも薬剤治療効果を向上させることである。最適化された制御放出製剤を治療に使用することによって、使用する原薬の量を最小に抑えて、最短の時間で症状を治癒又は抑制することが理想である。制御放出製剤の利点としては、薬の作用が長く続くこと、投与頻度が減少すること、及び、患者の服薬遵守が向上すること等が挙げられる。また、制御放出製剤を使用すると、薬剤の作用開始時間や、血中濃度等の他の特性に影響を与えるので、副作用(悪影響等)の発生にも影響を与え得る。
ほとんどの制御放出製剤は、まず、所望の治療効果をすぐに生じさせる量の薬剤(有効成分)を放出し、徐々にかつ断続的に残りの薬剤を放出して、長時間にわたってこの治療又は予防効果のレベルが維持されるように設計されている。このように一定した薬剤レベルを体内で維持するため、薬剤は、代謝され、体内から排出される薬剤量を補充するような割合で剤形から放出されなければならない。有効成分の制御放出は、例えば以下に限定されないが、pH、温度、酵素、水、その他の生理学的条件又は化合物等の種々の条件により促進され得る。
非経口剤形
非経口剤形は、皮下、静脈内(ボーラス注入等)、筋肉内及び動脈内等の様々な経路で患者に投与されるが、これらに限定されない。この剤形で投与する場合、通常、汚染物質に対する患者の自然防御機構を通らないため、非経口剤形は滅菌されているか、患者に投与する前に滅菌できることが好ましい。非経口剤形としては、注射用溶液、医薬的に許容されるビヒクルに溶解又は懸濁させて注射できる乾燥物及び/又は凍結乾燥物(液体に溶いて再構成可能な粉末)、注射用懸濁液、及び、エマルション等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る非経口剤形を得るのに使用できる好適なビヒクルは当業者に周知である。例えば、USP規格注射液用水;以下に限定されないが、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖・塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンガー注射液等の水性ビヒクル;以下に限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の水混和性ビヒクル;並びに、以下に限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル等の非水性ビヒクル等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る非経口剤形には、本明細書中に記載した有効成分のうち1つ以上のものの溶解性を高める化合物を配合してもよい。
経皮剤形
経皮剤形としては「リザーバー型」及び「マトリクス型」のパッチが挙げられ、皮膚に所定の期間貼り付けたままにしておくと、所望量の有効成分が浸透する。
本発明に包含される経皮及び局所剤形を得るのに使用できる好適な賦形剤(担体、希釈剤等)及びその他の材料は、医薬分野の当業者に周知であり、これらは、所定の医薬組成物又は剤形が投与される具体的な組織によって異なる。このことを考慮しつつ、典型的な賦形剤としては、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル及び鉱物油、並びに、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
治療する具体的な組織に応じて、本発明に係る有効成分による治療の前、同時又は後に追加の成分を使用してもよい。例えば、有効成分を組織へ送達し易くするために浸透促進剤を使用してもよい。好適な浸透促進剤としては、アセトン;エタノール、オレイルアルコール、テトラヒドロフリルアルコール等の各種アルコール;ジメチルスルホキシド等のアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドン等のピロリドン;Kollidonの各グレード(ポビドン及びポリビドン);尿素;並びに、Tween80(ポリソルベート80)、Span60(モノステアリン酸ソルビタン)等の各種水溶性又は不溶性糖エステル等が挙げられるが、これらに限定されない。
医薬組成物若しくは剤形のpH、又は、医薬組成物若しくは剤形が投与される組織のpHは、1つ以上の有効成分の送達が改善されるように調整してもよい。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度又は張性も、送達が改善されるように調整してもよい。また、ステアリン酸塩等の化合物を医薬組成物又は剤形に添加し、1つ以上の有効成分の親水性又は親油性を有利に変えて送達を改善してもよい。この点で、ステアリン酸塩は、製剤用の脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、更に送達促進剤又は浸透促進剤として機能できる。得られる組成物の性質を更に調整する目的で、有効成分の他の塩、水和物又は溶媒和物を使用してもよい。
局所剤形
本発明に係る局所剤形としては、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、溶液、エマルション、懸濁液、及び、その他の当業者に公知なもの等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th eds.,Mack Publishing,Easton PA(1990);及び、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,4th ed.,Lea&Febiger,Philadelphia(1985)を参照されたい。
本発明に包含される経皮及び局所剤形を得るのに使用できる好適な賦形剤(担体、希釈剤等)及びその他の材料は、医薬分野の当業者に周知であり、これらは、所定の医薬組成物又は剤形が投与される具体的な組織によって異なる。このことを考慮しつつ、典型的な賦形剤としては、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル及び鉱物油、並びに、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
治療する具体的な組織に応じて、本発明に係る有効成分による治療の前、同時又は後に追加の成分を使用してもよい。例えば、有効成分を組織へ送達し易くするために浸透促進剤を使用してもよい。好適な浸透促進剤としては、アセトン;エタノール、オレイルアルコール、テトラヒドロフリルアルコール等の各種アルコール;ジメチルスルホキシド等のアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドン等のピロリドン;Kollidonの各グレード(ポビドン及びポリビドン);尿素;並びに、Tween80(ポリソルベート80)、Span60(モノステアリン酸ソルビタン)等の各種水溶性又は不溶性糖エステル等が挙げられるが、これらに限定されない。
経粘膜剤形
本発明に係る経粘膜剤形としては、点眼薬、スプレー及びエーロゾル、並びに、その他の当業者に公知なもの等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th eds.,Mack Publishing,Easton PA(1990);及び、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,4th ed.,Lea&Febiger,Philadelphia(1985)を参照されたい。口腔内の粘膜組織を治療するのに好適な剤形は、うがい薬又は経口ゲルとして調剤できる。一実施形態によれば、エーロゾルは担体を含む。別の実施形態によれば、エーロゾルは担体を含まない。
本発明に係る式Iの化合物は、吸入することで肺に直接投与してもよい。吸入によって投与する場合、式Iの化合物は、多種多様な装置によって肺まで簡便に送達できる。例えば、ジクロロジフルオルメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、その他の好適なガス等の好適な低沸点高圧ガスを含んだ缶を利用した定量噴霧式吸入器(「MDI」)を使用して、式Iの化合物を肺に直接送達できる。MDI装置は、3M社、Aventis社、Boehringer Ingelheim社、Forest Laboratories社、Glaxo−Wellcome社、Schering Plough社及びVectura社等の複数の業者から入手可能である。
あるいは、ドライパウダー式吸入(DPI)装置を用いて式Iの化合物を肺に投与してもよい(例えば、Raleighら,Proc.Amer.Assoc.Cancer Research Annual Meeting,1999,40,397を参照。該文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。DPI装置は、通常、気体の噴出によって乾燥粉末の雲を容器内に作り出し、それを患者が吸入するような機構を用いている。また、DPI装置は当該分野で周知であり、Fisons社、Glaxo−Wellcome社、Inhale Therapeutic Systems社、ML Laboratories社、Qdose社及びVectura社等の複数の業者から購入できる。反復投与DPI(「MDDPI」)システムがその変種として普及しており、複数回分の治療量を送達できる。MDDPI装置は、AstraZeneca社、Glaxo Wellcome社、IVAX社、Schering Plough社、SkyePharma社及びVectura社等の企業から入手できる。例えば、吸入器や散布器で使用するゼラチンのカプセル及びカートリッジは、ラクトースやでんぷん等といったこれらのシステムに好適な粉末基剤と上記化合物との混合粉末を含ませて調剤できる。
式Iの化合物を肺に送達するのに使用できる別の装置としては、Ardigma社等から販売されている液体噴霧装置が挙げられる。液体噴霧システムでは、極めて小さい噴口を使って液状製剤をエーロゾル化し、それが肺に直接吸入される。
一実施形態においては、式Iの化合物を肺に送達するのにネブライザー装置を使用する。ネブライザーは、例えば超音波エネルギー等を使って液状製剤からエーロゾルを作り出し、容易に吸入できる微粒子を形成する(例えば、Verschoyleら,British J.Cancer,1999,80,Suppl 2,96を参照。該文献は参照により本明細書に組み込まれる)。ネブライザーとしては、Sheffield/Systemic Pulmonary Delivery社(例えば、Armerら,米国特許第5,954,047号明細書;van der Lindenら,米国特許第5,950,619号明細書;van der Lindenら,米国特許第5,970,974号明細書を参照。該文献は参照により本明細書に組み込まれる)、Aventis社及びBatelle Pulmonary Therapeutics社から販売されている装置が挙げられる。
一実施形態においては、式Iの化合物を肺に送達するのに電気流体力学(「EHD」)エーロゾル装置を使用する。EHDエーロゾル装置は、電気エネルギーを使って薬剤溶液又は懸濁液をエーロゾル化する(例えば、Noakesら,米国特許第4,765,539号明細書;Coffee,米国特許第4,962,885号明細書;Coffee,国際公開第94/12285号;Coffee,国際公開第94/14543号;Coffee,国際公開第95/26234号;Coffee,国際公開第95/26235号;Coffee,国際公開第95/32807号等を参照。該文献は参照により本明細書に組み込まれる)。式Iの化合物の製剤が有する電気化学的特性は、EHDエーロゾル装置を用いてこの薬剤を肺に送達する際に最適化するべき重要なパラメータであり得る。このような最適化は、当業者が通常行うものである。EHDエーロゾル装置は、既存の肺への送達法と比較してより効率的に薬剤を肺に送達できる。式Iの化合物を肺内に送達するその他の方法は当業者に公知であり、本発明の範囲に包含される。
ネブライザー、液体噴霧装置及びEHDエーロゾル装置で使用するのに好適な液状製剤としては、通常、医薬的に許容される担体を伴った式Iの化合物が挙げられる。医薬的に許容される担体としては、アルコール、水、ポリエチレングリコール、パーフルオロカーボン等の液体が好ましい。式Iの化合物の溶液又は懸濁液が有するエーロゾル特性を変えるために、必要に応じて、その他の材料を添加してもよい。このような材料としては、アルコール、グリコール、ポリグリコール、脂肪酸等の液体が好ましい。エーロゾル装置で使用するのに好適な薬剤溶液又は懸濁液を調剤するその他の方法は当業者に公知である(例えば、Biesalski,米国特許第5,112,598号明細書;Biesalski,米国特許第5,556,611号明細書を参照。該文献は参照により本明細書に組み込まれる)。式Iの化合物は、カカオバターやその他のグリセリド等の従来の座剤基剤等を含有する座剤又は停留浣腸剤等といった直腸又は膣用組成物に調剤してもよい。
上述した製剤に加え、式Iの化合物はデポー剤として調剤してもよい。そのような長期作用製剤は、(皮下又は筋肉内等への)植え込み又は筋肉内注射により投与できる。従って、上記化合物は、例えば、好適な高分子材料若しくは疎水性材料と共に(例えば、許容される油中のエマルションとして)、イオン交換樹脂と共に、又は、難溶性誘導体(難溶性の塩等)として、調剤できる。
あるいは、他の医薬送達システムを採用してもよい。式Iの化合物を送達するのに使用できる送達ビヒクルの周知な例として、リポソーム及びエマルションが挙げられる。毒性が強いという問題が通常あるものの、ジメチルスルホキシド等のある種の有機溶媒も使用できる。式Iの化合物は、制御放出システムによっても送達できる。一実施形態においては、ポンプが使用できる(Sefton,CRC Crit.Ref Biomed Eng.,1987,14,201;Buchwaldら,Surgery,1980,88,507;Saudekら,N.Engl.J.Med.,1989,321,574)。別の実施形態においては、高分子材料が使用できる(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger及びPeppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.,1983,23,61;Levyら,Science,1985,228,190;Duringら,Ann.Neurol.,1989,25,351;Howardら,J.Neurosurg.,71,105(1989)を参照)。更に別の実施形態においては、本発明に係る化合物の標的(肺等)の近傍に制御放出システムを配置することができるため、全身投与量の一部しか必要としない(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release(上述),vol.2,pp.115(1984)を参照)。その他の制御放出システムも使用できる(例えば、Langer,Science,1990,249,1527を参照)。
本発明に包含される経粘膜剤形を得るのに使用できる好適な賦形剤(担体、希釈剤等)及びその他の材料は、医薬分野の当業者に周知であり、これらは、所定の医薬組成物又は剤形が投与される具体的な部位又は方法によって異なる。このことを考慮しつつ、典型的な賦形剤としては、無毒性で医薬的に許容される水、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル及び鉱物油、並びに、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。このような追加の成分の例は当業者に周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th eds.,Mack Publishing,Easton PA(1990)を参照されたい。
医薬組成物若しくは剤形のpH、又は、医薬組成物若しくは剤形が投与される組織のpHは、1つ以上の有効成分の送達が改善されるように調整してもよい。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度又は張性も、送達が改善されるように調整してもよい。ステアリン酸塩等の化合物を医薬組成物又は剤形に添加し、1つ以上の有効成分の親水性又は親油性を有利に変えて送達を改善してもよい。この点で、ステアリン酸塩は、製剤用の脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、更に送達促進剤又は浸透促進剤として機能できる。得られる組成物の性質を更に調整する目的で、有効成分の他の塩、水和物又は溶媒和物を使用してもよい。
キット
本発明は、C型肝炎ウイルス感染症の治療又は予防に有用な式Iの化合物を含む容器を1つ以上有する医薬パック又はキットを提供する。他の実施形態において、本発明は、C型肝炎ウイルス感染症を治療又は予防するのに有用な式Iの化合物を含む容器を1つ以上と、追加の治療剤、例えば以下に限定されないが、上述したもののなかでも特に、抗ウイルス剤、インターフェロン、ウイルス酵素を阻害する薬剤、又は、ウイルス複製を阻害する薬剤等を含む容器を1つ以上とを有する医薬パック又はキットを提供する。ここで、追加の治療剤がHCV特異的であるか、抗HCV活性を示すものであるのが好ましい。
本発明はまた、本発明に係る医薬組成物の成分を1つ以上含む容器を1つ以上有する医薬パック又はキットを提供する。必要に応じて、医薬品又は生物学的製剤の製造、使用又は販売を規制する行政機関により規定された所定の注意書が上記容器に添付されていてもよい。この注意書は、ヒトに投与する目的での製造、使用又は販売に対する行政機関からの承認を意味する。
本発明に係る薬剤は、容易に入手できる出発材料を使用し、当業者に公知の一般的な方法を採用して、以下に示す反応経路及び合成スキームによって調製できる。本発明に係る化合物のうち例示していないものは、当業者には明白な変更を加えることで、例えば、妨害基を適切に保護すること、当該分野で公知の他の好適な試薬へ変更すること、又は、よくある変更を反応条件に加えること等で上手く合成できる。あるいは、本明細書中に記載した他の反応又は当該分野で公知の反応も、本発明に係る他の化合物を調製するのに適用し得ると考えられる。
化合物の調製
以下のスキーム1〜4に、式Iに係る5,6−ジヒドロ−1H−ピリジン−2−オン重水素化合物を調製するのに使用できる一般的な手順を示す。
スキーム1
Figure 2013509420
スキーム1に示す通り、シス−3−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸エステル(米国特許出願公開第2010/0034773号明細書(A1)及び国際公開第2008/124450号(A1))は、対応する1−[ハロ()メチル]−4−フルオロベンゼン又は1−[ハロ()メチル]−4−フルオロ−()ベンゼンから重水素標識化3−(4−フルオロ−ベンジルアミノ)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸エステルに変換でき、それを(7−メタンスルホニルアミノ−1,1−ジオキソ−1,4−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[1,2,4]チアジアジン−3−イル)−酢酸(米国特許出願公開第2010/0034773号明細書(A1)及び国際公開第2008/124450号(A1))を用いたアミド形成と環化によって最終生成物に変換できる。
スキーム2
Figure 2013509420
他の方法としては、出発材料であるシス−3−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸エステルと[4−フルオロフェニル](H)ホルムアルデヒド又は[4−フルオロ()フェニル](H)ホルムアルデヒドとを、シアノ重水素化ホウ素ナトリウムで還元的アミノ化することによって、重水素標識化N−{3−[3−(4−フルオロ−ベンジル)−6−ヒドロキシ−4−オキソ−3−アザ−トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−5−エン−5−イル]−1,1−ジオキソ−1,4−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[1,2,4]チアジアジン−7−イル}−メタンスルホンアミドを調製できる(スキーム2)。重水素標識化3−(4−フルオロ−ベンジルアミノ)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸エステルは、(7−メタンスルホニルアミノ−1,1−ジオキソ−1,4−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[1,2,4]チアジアジン−3−イル)−酢酸を使用して、スキーム1に記載したように最終生成物に変換できる。
スキーム3
Figure 2013509420
別の典型的な合成経路(スキーム3)においては、重水素を用いた触媒条件下で、不飽和のシス−3−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸エステル(米国特許出願公開第2010/0034773号明細書(A1)及び国際公開第2008/124450号(A1))を還元及び脱保護できる。続いて、適当な還元的アミノ化条件下で、シス−3−アミノ−(5,6−)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸エステルをN−ベンジルアミノエステルに変換できる。重水素標識化3−(4−フルオロ−ベンジルアミノ)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸エステルは、(7−メタンスルホニルアミノ−1,1−ジオキソ−1,4−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[1,2,4]チアジアジン−3−イル)−酢酸を使用して、スキーム1に記載したように最終生成物に変換できる。
スキーム4
Figure 2013509420
スキーム4に示す合成手順を採用して、(7−メタンスルホニルアミノ−1,1−ジオキソ−1,4−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[1,2,4]チアジアジン−3−イル)−酢酸に重水素を導入できる。2−アミノ−5−()メタンスルホニルアミノ−ベンゼンスルホンアミドは、標準的なスルホニルアミノ形成条件下で、2,5−ジアミノベンゼンスルホンアミド(米国特許出願公開第2010/0034773号明細書(A1)及び国際公開第2008/124450号(A1))とメタン−−スルホニルクロリドから調製できる。その後、2−アミノ−5−()メタンスルホニルアミノ−ベンゼンスルホンアミドは、米国特許出願公開第2010/0034773号明細書(A1)及び国際公開第2008/124450号(A1)に概説されている、対応する非標識(7−メタンスルホニルアミノ−1,1−ジオキソ−1,4−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[1,2,4]チアジアジン−3−イル)−酢酸の合成工程に従って、(7−()メタンスルホニルアミノ−1,1−ジオキソ−1,4−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[1,2,4]チアジアジン−3−イル)−酢酸に変換できる。スキーム1〜3に記載のアミド形成及び環化条件を用いて、(7−()メタンスルホニルアミノ−1,1−ジオキソ−1,4−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[1,2,4]チアジアジン−3−イル)−酢酸を最終生成物に更に変換できる。
上記記載は、本質的に例示的かつ説明的なものであり、本発明及びその好ましい実施形態を説明するものであると理解されたい。当業者であれば、通常の実験を行って、本発明の趣旨から逸脱することなく自明の改変及び変形を行うことが可能であることを理解するであろう。

Claims (16)

  1. 下記式I:
    Figure 2013509420
    (式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に水素及び重水素から選択され、
    はFであり、
    、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22及びR23の少なくとも1つは重水素である)で表される化合物、又は、その医薬的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性体若しくは立体異性体。
  2. 、R及びR置換基の少なくとも1つは重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  3. 12及びR13置換基の少なくとも1つは重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  4. 、R、R10、R11、R12及びR13置換基の少なくとも1つは重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  5. 16又はR17は重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  6. 、R、R10、R11、R16及びR17の少なくとも1つは重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  7. 12、R13、R16及びR17の少なくとも1つは重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  8. 、R、R10、R11、R12、R13、R16及びR17の少なくとも1つは重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  9. 、R、R、R12及びR13置換基の少なくとも1つは重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  10. 、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13置換基の少なくとも1つは重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  11. 、R、R、R16及びR17の少なくとも1つは重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  12. 、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R16及びR17の少なくとも1つは重水素であり、R18又はR19は重水素であり、残りのR置換基は水素である、
    請求項1に記載の化合物。
  13. C型肝炎ウイルス感染症の治療又は予防を必要とする哺乳類において前記感染症を治療又は予防する方法であって、
    請求項1に記載の式Iの化合物を治療上有効な量で患者に投与することを含む方法。
  14. さらに追加の治療剤を1つ以上用いる、
    請求項13に記載の方法。
  15. 前記治療剤のうちの1つは抗ウイルス剤又は免疫調節剤である、
    請求項14に記載の方法。
  16. C型肝炎ウイルス感染症の治療又は予防を必要とする患者において前記感染症を治療又は予防する方法であって、
    治療上有効な量の請求項1に記載の式Iの化合物と、医薬的に許容される賦形剤、担体又はビヒクルを前記患者に投与することを含む方法。
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