JP2013508263A - プログラム細胞死を誘導するための方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進するための方法であって、前記細胞を有効量の式(I)で表される化合物に曝露することを含む方法に関する。また、本発明は、有効量の式(I)で表される化合物を投与を必要とする患者に投与することによって疾患又は障害を治療又は予防するための方法であって、前記化合物は、患者の少なくとも1つの細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進する方法に関する。
【選択図】図1

Description

本発明は、全体として、カスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進するための方法及びmTOR活性を阻害するための方法に関する。また、本発明は、異常又は不要な細胞成長及び/又は増殖に関連する疾患及び症状の治療に関する。
プログラム細胞死は進化的に保存された経路によるものであり、その活性化によってエネルギー依存性細胞自殺メカニズムが生じる。プログラム細胞死の2つの形態が一般に文献に記載されている。すなわち、アポトーシス又はカスパーゼ依存性細胞死及びカスパーゼ非依存性細胞死である。2種類のプログラム細胞死のうち、カスパーゼ依存的アポトーシスはよく研究されている経路によるものであり、プログラム細胞死とアポトーシスという用語は通常は同じ意味で使用される。カスパーゼ介在アポトーシスは、カスパーゼ(一群のプロテアーゼ)の逐次活性化を伴い、Fas及びTNFR等の細胞死受容体のライゲーション(外因性経路)又はミトコンドリア脱分極(内因性経路)によって活性化される。アポトーシス促進タンパク質(Bak及びBax等)及び抗アポトーシスタンパク質(Bcl2及びBclx)を含むBcl2ファミリータンパク質はミトコンドリアの完全性を制御し、経路(外因性経路又は内因性経路)はミトコンドリア外膜におけるアポトーシス促進タンパク質及び抗アポトーシスタンパク質の比率に応じて決定される。
カスパーゼ非依存性細胞死は、カスパーゼ活性化の非存在下で細胞が死ぬ際に生じる事象を含む。自己貪食は、最もよく研究されているカスパーゼ非依存性プログラム細胞死経路であり、II型プログラム細胞死と呼ばれる場合が多い。自己貪食は、自己貪食空胞(二重膜細胞質小胞)の制御された形成を含み、リソソームと融合し、自己貪食空胞内の分子が消化される。自己貪食はAkt-mTOR経路によって制御され、ベクリン-1及びクラスIII PI3キナーゼ等の主要なタンパク質が関与する。Akt-mTOR経路は細胞生存を促進するために活性化される経路だが、固有のメカニズムのために細胞死も生じ得る。カスパーゼ非依存性アポトーシスを含むカスパーゼ非依存性細胞死のその他の経路はHail et al, 2006に記載されている。
多くの研究により、ほとんどの化学療法剤がアポトーシス経路を活性化することによって細胞死を誘導し、XIAP等の抗アポトーシスブロッカーの高い細胞内レベルによるアポトーシス耐性が薬剤耐性の主な原因であることが分かっている。実際、XIAP等のアポトーシスブロッカーの分子又は薬物ターゲティングによって薬剤耐性が消失する(例えば、Alvero et al, 2006及びKluger et al, 2007)。また、異常な細胞成長及び/又は増殖も様々な疾患症状に関連し、アポトーシス誘導物質の治療的応用に対する関心が増している。
本願明細書に記載するように、本願発明者らは、ヒト細胞におけるカスパーゼ非依存性非自己貪食プログラム細胞死を誘導し、様々な新たな治療法への道を開くイソフラボノイド化合物を特定した。
Hail Jr N, et al. Apoptosis 2006, 11: 889-904. Alvero AB, et al. Cancer 2006, 106: 599-608. Kluger HM, et al. J Transl Med 2007, 5: 6.
本発明の第1の態様は、細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進するための方法であって、前記細胞を有効量の下記式(I)で表される化合物:
式中、
R1は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ又はOC(O)R7であり、
R2及びR3は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、ハロ又はOC(O)R7であり、
R4、R5及びR6は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アシル、アミノ、C1〜4-アルキルアミノ、ジ(C1〜4-アルキル)アミノ、OC(O)R7又はOR8であり、
R7は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル又はアミノであり、
R8は、アリール又はアリールアルキルであり、
R9及びR10は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ又はハロであり、かつ
---」の描画は、単結合又は二重結合を表す;
又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体に曝露することを含む方法を提供する。
一実施形態では、前記化合物は、以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オールである。
別の実施形態では、前記化合物は、以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オールである。
前記細胞の前記化合物への曝露は、試験管内、生体外又は生体内で行うことができる。
特定の実施形態では、前記細胞は癌細胞ではない。例えば、前記細胞は心筋細胞又は免疫細胞であってもよい。前記免疫細胞は、増殖性T細胞であってもよい。
本発明の第2の態様は、細胞におけるmTOR活性を阻害するための方法であって、前記細胞を有効量の前記式(I)で表される化合物に曝露することを含む方法を提供する。
通常、mTOR活性の阻害は、mTORの脱リン酸化を含む。
本発明の第3の態様は、疾患又は症状を治療又は予防するための方法であって、有効量の前記式(I)で表される化合物又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体を、必要に応じて、1以上の製薬学的に許容し得る希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤と共に、投与を必要とする患者に投与することを含み、前記化合物は、前記患者の少なくとも1つの細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進する方法を提供する。
本発明の第4の態様は、疾患又は症状を治療又は予防するための方法であって、有効量の前記式(I)で表される化合物又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体を、必要に応じて、1以上の製薬学的に許容し得る希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤と共に、投与を必要とする患者に投与することを含み、前記化合物は、前記患者の少なくとも1つの細胞におけるmTOR活性を阻害する方法を提供する。
第3及び第4の態様の特定の実施形態では、前記細胞は癌細胞ではない。例えば、前記細胞は心筋細胞又は免疫細胞であってもよい。
第3及び第4の態様では、通常、前記疾患又は症状は、異常又は不要な細胞成長又は増殖に関連するものである。一実施形態では、前記疾患又は症状は、狭窄症、再狭窄、移植拒絶反応及び関節リウマチから選択されてもよい。細胞増殖がT細胞増殖である場合には、前記疾患又は症状は、T細胞白血病、自己免疫疾患、移植片対宿主病等の移植又は移植片拒絶反応から選択されてもよい。自己免疫疾患の例としては、肝硬変、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、アジソン病、伝染性単核球症、セザリー症候群、エプスタイン・バーウイルス感染症が挙げられる。
狭窄症又は再狭窄の治療の場合には、前記化合物又は前記化合物を含む組成物を、冠状動脈に挿入するステントにコーティング又は導入することができる。前記ステントは、所望の結果が得られるように前記化合物又は組成物が時間の経過と共に前記ステントから溶出するものであってもよい。
一実施形態では、前記化合物は、以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オールである。
別の実施形態では、前記化合物は、以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オールである。
本発明の第5の態様は、異常又は不要な細胞成長及び/又は増殖に関連する疾患又は症状を治療又は予防するための薬剤であって、前記式(I)で表される化合物又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体を含む薬剤を提供する。
本発明の第6の態様は、前記式(I)で表される化合物の、細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進するための医薬の製造のための使用を提供する。
本発明の第7の態様は、前記式(I)で表される化合物の、細胞におけるmTOR活性を阻害するための医薬の製造のための使用を提供する。
本発明の第8の態様は、疾患又は症状を治療又は予防するための医薬の製造のための前記式(I)で表される化合物の使用であって、前記化合物は、患者の少なくとも1つの細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進する使用を提供する。
本発明の第9の態様は、疾患又は症状を治療又は予防するための医薬の製造のための前記式(I)で表される化合物の使用であって、前記化合物は、患者の少なくとも1つの細胞におけるmTOR活性を阻害する使用を提供する。
本発明の第10の態様は、患者の細胞又は組織に少なくとも1種の活性薬剤を送達するための埋め込み型医療機器であって、前記少なくとも1種の活性薬剤は前記式(I)で表される化合物を含む、機器を提供する。
通常、前記化合物は、細胞又は組織に化合物を投与するために前記機器にコーティング又は導入される。また、前記機器は、必要に応じて、1種以上の他の活性薬剤を含んでいてもよい。
一実施形態では、埋め込み型医療機器は薬剤溶出ステントである。
上記態様及び実施形態では、前記患者は、通常はヒトである。別の実施形態では、前記患者は、霊長類、ヒツジ属動物、ウシ属動物、イヌ科動物、ネコ科動物、ブタ、ウマ科動物、ネズミ科動物からなる群から選択されてもよい。
以下、本発明を限定するものではない実施形態、実施例及び図面を参照して本発明について説明する。
(A)EOC細胞を段階的濃度の化合物1で24時間処理し、本願明細書に記載するように細胞生存率を測定した。図示する結果は3つの独立した実験を表している。(B)未処理の対照細胞及び化合物1(10 g/ml)で24時間処理した細胞をHoechst及びPIで染色し、フローサイトメトリーで分析した。(C)段階的濃度の化合物1又は2μMのパクリタクセル(パクリタキセル, Paclitaxel)で24時間処理した細胞から得られた細胞溶解物のカスパーゼ活性を測定した。 EOC細胞を10 g/mlの化合物1で図示する時間にわたって処理し、全細胞溶解物をウェスタンブロットによって分析した。(A):XIAP、(B):リン酸化Akt(p-Akt)。β-アクチンとAktのブロットの負荷量は同じである。(C)Z-VAD-FMK(20μM)又は3-MA(10μM)の存在下又は非存在下で細胞を段階的濃度の化合物1で24時間処理した。これらのデータは分析した全てのEOC細胞株から得られた結果の代表を示す。 EOC細胞を10 g/mlの化合物1で図示する時間にわたって処理し、全細胞溶解物をウェスタンブロットによって分析した。(A):リン酸化mTOR及びpS6k、(B):LC3-II、(C)本願明細書に開示する8種類のリン酸タンパク質のレべル。β-アクチン、S6kのブロットの負荷量は同じである。 (A)未刺激又は(B)10 g/mlの化合物1で2時間処理したEOC細胞の共焦点顕微鏡画像。Bでは細胞内液胞が存在するが、Aでは存在しない(赤い矢印)。(C)未刺激又は(D)10μg/mlの化合物1で2時間処理し、JC-1で染色した細胞の蛍光顕微鏡画像。先端が丸い矢印は未刺激細胞の赤い染色を示す。先端がダイヤモンド状の矢印はミトコンドリア脱分極を有する細胞を示す。矢印の先端は明るい緑色の蛍光を有する細胞を示し、ほとんどのミトコンドリアが脱分極していることを示唆している。 化合物1(10μg/ml)で1時間(A)又は4時間(B)処理したEOC細胞をJC-1色素で染色し、フローサイトメトリーで分析した。結果は代表細胞株のものである。他の細胞株でも同様の結果が得られた。 (A)化合物1(10μg/ml)で処理したEOC細胞の細胞溶解物及びミトコンドリア画分のウェスタンブロット解析。全細胞溶解物は完全長Bidについて分析し、ミトコンドリア画分はベクリン-1及びBaxについて分析した。β-アクチン及びVDACは負荷量対照である。(B)化合物1(10μg/mL、1時間)で処理したEOC細胞のミトコンドリア画分の抗ベクリン免疫沈降ウェスタンブロット解析(プローブ:抗Bcl-2、抗Bak)。 EOC細胞を化合物1(10μg/mL)で図示する時間にわたって処理し、本願明細書に記載するように核画分を得た。AIF及びEndoGのレべルをウェスタンブロット解析で測定した。トポイソメラーゼI(Topo-I)は負荷量対照である。 皮下注射によってEOC腫瘍をNCRヌードマウスに注射し、本願明細書に記載するように治療(処理)を行った。腫瘍の大きさはノギスで測定した(by caliper measurements)。(A)EOC腫瘍増殖動態。(B)溶媒対照、パクリタクセル、カルボプラチン又は化合物1を投与したマウスの終末腫瘍体積。(C)溶媒対照又は化合物1を投与した代表マウスの切除した腫瘍を(50 mg/kg又は100 444 mg/kg)。(D)代表マウスの腫瘍を溶解し、リン酸化S6キナーゼ(p-S6K)及び総S6キナーゼ(S6K)についてウェスタンブロット解析で分析した。(E)マウスの腫瘍のパラフィン包埋切片をEndoの位置特定のためにIHCによって分析した。*p=0.02(溶媒対照に対して)。 FACS分析により測定された膵臓腺癌細胞における化合物10誘導アポトーシス及び壊死に対するカスパーゼ阻害剤I(z-VAD-fmk)の効果。A.HPAC、B.MIAPaCa-2。細胞は、10μMの化合物10の添加前に1時間10μM z-VAD-fmkと共に培養した。42〜46時間後、細胞を取り出し、アポトーシスについてFACS分析を行った。陽性カスパーゼ依存性対照として、HPAC細胞をFas活性化抗体(CH-11、Upstate)に曝露し、MIAPaCa-2細胞を50 ng/mL TRAIL(Alexis)に曝露した。各なスペクトルにおいて、10,000gated eventsを記録・分析した。全ての実験は三つ組で行った(エラーバーは1つの標準偏差を表す)。 FACS分析によって測定した膵臓癌細胞におけるin situカスパーゼ活性。(A)化合物10処理(10μM、24時間)及び未処理MIAPaCa-2細胞におけるカスパーゼ2、3及び9活性のヒストグラム。(B)化合物10処理(10μM、24時間)及び未処理HPAC細胞におけるカスパーゼ2、3及び9活性のヒストグラム。(C)化合物10処理(10μM、24時間)及び未処理PANC-1細胞におけるカスパーゼ2、3及び9活性のヒストグラム。全ての実験は三つ組で行った(エラーバーは1つの標準偏差を表す)。 アポトーシスに不可欠な主要な調節タンパク質(p21及びp53)のウェスタンブロット解析。(A)MIAPaCa-2及びHPAC細胞のカスパーゼ2、カスパーゼ9、XIAP、Bcl-2、Bid、及びAktウェスタンブロット解析。(B)MIAPaCa-2及びHPAC細胞におけるp21及びp53の発現のウェスタンブロット解析。細胞は、0、4、8、16、24及び48時間にわたって10μMの化合物10で処理した。細胞を溶解し、遠心分離を行い、溶解物を回収した。各時点で得られた細胞溶解物(25μg)試料をSDS-PAGEによって分離し、PVDF膜に移し、標的抗原に特異的な抗体を使用して調べた。タンパク質負荷量はGAPDHに標準化し、GAPDHデータは複数回実験の代表(RDI)を示す。(C)化合物10(5及び10μg/ml)で48時間処理したPANC-1細胞からのチトクロムc放出のウェスタンブロット解析。並行実験を行い、細胞質及びミトコンドリア画分はウエスタンブロット分析前に分離した。細胞質及びミトコンドリア調製物の完全性を示すためにcox-4を含め、タンパク質負荷量はβ-アクチンに標準化した。 HPAC及びMIAPaCa-2細胞のミトコンドリア膜電位に対する化合物10の効果。MIAPaCa-2細胞は、0μM(A)又は100μM(B)の化合物10に48時間曝露した。Y軸に無傷の分極ミトコンドリアからの凝集JC-1赤色蛍光を示し、X軸に脱分極ミトコンドリアを有するアポトーシス細胞からの単量体JC-1緑色蛍光を示す。左上の四分割を分極細胞と定義する。右上及び右下の四分割の和を脱分極細胞と定義する。各スペクトルにおいて、10,000gated eventsを記録・分析した。HPAC(C)又はMIAPaCa-2(D)細胞のミトコンドリア膜電位を段階的濃度の化合物10を使用して測定した。各実験は三つ組で行った。 MIAPaCa-2、HPAC及びPANC-1細胞の細胞周期進行に対する化合物10(Cpd 10)の効果。(A)未処理(untreated)及び化合物10処理(10μM、4時間(hr)、24時間)MIAPaCa-2細胞、HPAC細胞及びPANC-1細胞の代表的FACSヒストグラム。Gates:M1=sub-G0/G1、M2=G0/G1、M3=S、M4=G2/M、M5=倍数体細胞。各スペクトルにおいて、10,000gated eventsを記録・分析した。全ての実験は三つ組で行った。(B)細胞周期分布の組み合わせプロット。細胞は、0、4、24及び48時間にわたって10μMの化合物10に曝露した。細胞はエタノールで固定し、ヨウ化プロピジウムで染色し、FACS分析で分析した。全ての実験は三つ組で行った(エラーバーは1つの標準偏差を表す)。
本願明細書及び特許請求の範囲において、「含む」という用語は、文脈上他の意味に解釈されない限り、記載された実在物又は工程又は実在物又は工程の群を含むが、その他の実在物又は工程又は実在物又は工程の群を排除するものではないことを意味する。
本願明細書において、特に「複数」と記載していない場合には「1以上」又は「少なくとも1」を意味する。例えば、「構成要素」という場合には、「1つの構成要素」又は「2以上の構成要素」を意味する。
本願明細書において、「治療」及び「予防」という用語は、症状を改善あるいは症状又は疾患を予防あるいは症状又は疾患の進行を予防、防止、遅延又は逆転させるあらゆる手段(use)を意味する。従って、「治療」、「予防」等という用語は、それらの最も広い意味において解釈される。例えば、「治療」という用語は、患者が完全に回復するまで治療することを必ずしも意味する訳ではない。
本願明細書において、「有効量」及び「有効用量」という用語は、無毒だが、所期の効果を得るために十分な薬剤又は化合物の量又は用量を意味する。必要とされる正確な量又は用量は、治療対象の種、患者の年齢及び全身状態、治療対象の症状の重症度、投与する物質、投与方法等の要因に応じて患者毎に異なる。そのため、正確な「有効量」又は「有効用量」を特定することはできない。しかしながら、当業者は、所与の患者に適切な「有効量」又は「有効用量」を通常の実験のみによって決定することができる。
「製薬学的に許容し得る塩」という用語は、電荷を帯び、例えば、塩中の対カチオン(counter-cation)又は対アニオン(counter-anion)として薬剤と共に投与することができる有機又は無機部分を意味する。製薬学的に許容し得るカチオンは公知であり、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、四級アミンが挙げられる。製薬学的に許容し得るアニオンは公知であり、例えば、塩化物、酢酸塩、クエン酸塩、重炭酸塩、炭酸塩が挙げられる。
「製薬学的に許容し得る誘導体」という用語は、レシピエントに投与すると、直接又は間接的に親化合物又は代謝産物を生成することができるか、それ自体が活性を示す活性化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、本発明の範囲に含まれる。
本願明細書に例示する化合物1及び10は、様々な癌細胞株に対する抗増殖活性を有する化合物のフェニル置換イソフラバンファミリーに属する。本願では、上記ファミリーの化合物による、ヒト細胞におけるカスパーゼ非依存性非自己貪食細胞死経路の活性化について説明する。少なくとも化合物1の場合には、上記活性化はmTORの脱リン酸化を含む。本願明細書に例示するように、パクリタクセル耐性細胞株は、化合物1の存在下において、p-mTORのダウンレギュレーション、ベクリン-1ミトコンドリア移行、ヌクレアーゼEndoGの核移行及びDNA断片化によって特徴付けられるカスパーゼ非依存性細胞死を起こすことが証明されている。細胞死は、アポトーシス誘導物質の存在下で進行し、自己貪食細胞死ではないため、本願明細書では「カスパーゼ非依存性アポトーシス」と呼ぶ。同様に、化合物10は、細胞周期停止を誘導し、様々な細胞株のアポトーシスを引き起こすことが証明されている。化合物10によって誘導されるアポトーシスは、汎作用(pan-acting)カスパーゼ阻害剤の存在下で進行し、アポトーシスのカスパーゼ介在経路及びカスパーゼ非依存性経路が誘導されることを示している。
本発明は、細胞におけるアポトーシスを誘導又は促進するための方法であって、前記細胞を有効量の下記式(I)で表される化合物に曝露することを含む方法を提供する。
また、本発明は、アポトーシスの減少又は異常なアポトーシスに関連する疾患及び障害を治療又は予防するための方法を提供する。
本発明の一態様は、患者の疾患又は障害を予防又は治療するための方法であって、有効量の、以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール:
又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体を前記患者に投与することを含み、前記化合物は、前記患者の少なくとも1つの細胞におけるアポトーシスを誘導又は促進する方法を提供する。前記化合物は、必要に応じて、1種以上の製薬学的に許容し得る希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤を含んでもよい医薬組成物として投与する。
当業者には、本発明において、2種以上の式(I)で表される化合物の投与及び/又は少なくとも1種の式(I)で表される化合物と少なくとも1種の他の治療化合物又は薬剤の投与を行うことができることは明らかだろう。
本発明において有用な化合物は、下記一般式(I)で表される化合物:
式中、
R1は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ又はOC(O)R7であり、
R2及びR3は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、ハロ又はOC(O)R7であり、
R4、R5及びR6は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アシル、アミノ、C1〜4-アルキルアミノ、ジ(C1〜4-アルキル)アミノ、OC(O)R7又はOR8であり、
R7は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル又はアミノであり、
R8は、アリール又はアリールアルキルであり、
R9及びR10は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ又はハロであり、かつ
---」の描画は、単結合又は二重結合を表す;
又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体である。
式(I)で表される化合物におけるR2及びR3の通常の置換パターンを以下に示す。
式(I)で表される化合物におけるR4、R5及びR6の通常の置換パターンを以下に示す。
式(I)で表される化合物において、「---」の描画は単結合を表す。
一実施形態では、式(I)で表される化合物において、
R1は、ヒドロキシ、C1〜4-アルコキシ又はOC(O)R7であり、
R2及びR3は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、C1〜4-アルコキシ、ハロ又はOC(O)R7であり、
R4、R5及びR6は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アシル又はOC(O)R7であり、
R7は、C1〜4-アルキル、フェニル又はベンジルであり、かつ
R9は、水素、ヒドロキシ、アルキル又はハロである;
又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体。
一実施形態では、式(I)で表される化合物において、
R1は、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ又はアセチルオキシであり、
R2及びR3は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブロモ、クロロ、フルオロ又はアセチルオキシであり、
R4は、水素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ又はアセチルオキシであり、
R5及びR6は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、アセチル又はアセチルオキシであり、
R9は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、ブロモ、クロロ、フルオロ又はアセチルオキシであり、かつ
R10は水素である;
又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体。
式(I)で表される化合物は以下の置換基を有することができる:
すなわち、R1は、ヒドロキシ、メトキシ又はアセチルオキシであり、
R2及びR3は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ、ブロモ又はアセチルオキシであり、
R4及びR6は、相互に独立して、水素、ヒドロキシ、メトキシ又はアセチルオキシであり、
R5及びR10は水素であり、かつ
R9は、水素、メチル又はブロモである;
又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体。
一実施形態では、R9はメチルである。
本発明の実施形態では、式(I)で表される化合物の例としては、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール(化合物1)、
3-(4-メトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-8-メチルクロマン(化合物2)、
3-(3,4-ジメトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール(化合物3)、
3-(4-メトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール(化合物4)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-8-メチルクロマン(化合物5)、
3-(3-メトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール(化合物6)、
3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-8-メチルクロマン(化合物7)、
3-(3-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール(化合物8)、
3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチルクロマン-7-オール(化合物9)
及びそれらの製薬学的に許容し得る塩が挙げられる。
別の実施形態では、R9は水素である。
別の実施形態では、式(I)で表される化合物の例としては、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物10)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルクロマン-7-オール(化合物11)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(3-メトキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物12)、
3-(3,4-ジメトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物13)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メチルフェニル)クロマン-7-オール(化合物14)、
3-(4-メトキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシクロマン(化合物15)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(2,6-ジメトキシ-4-ヒドロキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物16)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(2-ヒドロキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物17)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(3-アシル-2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物18)、
3-(3-ヒドロキシフェニル)-4-(3-メトキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物19)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物20)、
3-(4-ブロモフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物21)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(3-メトキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物22)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(3-アミノフェニル)クロマン-7-オール(化合物23)、
3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-フェノキシフェニル)クロマン-7-オール(化合物24)
及びそれらの製薬学的に許容し得る塩が挙げられる。
本発明に係る式(I)で表される化合物は、2つのキラル中心を有する。本発明は、式(I)で表される化合物の鏡像異性体、ジアステレオ異性体及び任意の比率の混合物を含む。また、本発明は、単離された鏡像異性体又は一対の鏡像異性体も含む。鏡像異性体及びジアステレオ異性体を分離する方法は公知である。
式(I)で表される化合物において、複素環上のアリール置換基は、シス又はトランス配置であってもよい。
本発明の特定の実施形態に関連する化合物としては、
化合物1(シス異性体を含む)
又はその製薬学的に許容し得る塩、及び
化合物10
又はその製薬学的に許容し得る塩が挙げられる。
「アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖の飽和アルキル基を含む。アルキル基は1〜4個の炭素原子を含むことがより好ましく、特にメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルが挙げられる。
シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3〜6シクロアルキル基を含む。
アルキル基又はシクロアルキル基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、C1〜4-アルコキシカルボニル、C1〜4-アルキルアミノカルボニル、ジ(C1〜4-アルキル)アミノカルボニル、ヒドロキシル、C1〜4-アルコキシ、ホルミルオキシ、C1〜4-アルキルカルボニルオキシ、C1〜4-アルキルチオ、C3〜6-シクロアルキル及びフェニルの1以上によって随意で(必要に応じて)置換されていてもよい。アルキル基は置換基を有していなくてもよい。
「アリール」という用語は、フェニル、ベンジル、ビフェニル及びナフチルを含み、C1〜4-アルキル、ヒドロキシル、C1〜4-アルコキシ、カルボニル、C1〜4-アルコキシカルボニル、C1〜4-アルキルカルボニルオキシ、ニトロ、ハロの1以上によって随意で置換されていてもよい。
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードを含み、好ましくはフルオロ及びクロロであり、よりで好ましくはフルオロである。例えば、「ハロアルキル」という用語は、モノハロゲン化、ジハロゲン化及びペルハロゲン化までのアルキル基を含む。好ましいハロアルキル基は、トリフルオロメチル及びペンタフルオロエチルである。
本発明の化合物は、酸付加塩、アニオン塩及び双性イオン塩等のあらゆる塩を含み、特に、当業者に公知の製薬学的に許容し得る塩を含む。製薬学的に許容し得る塩としては、酢酸(acetic acid)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、アスパラギン酸(aspartic acid)、安息香酸(benzoic acid)、ベンゼンスルホン酸(benzenesulphonic acid)、クエン酸(citric acid)、桂皮酸(cinnamic acid)、エタンスルホン酸(ethanesulphonic acid)、フマル酸(fumaric acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、グルコン酸(gluconic acid)、塩酸(hydrochloric acid)、臭化水素酸(hydrobromic acid)、乳酸(lactic acid)、マレイン酸(maleic acid)、リンゴ酸(malic acid)、メタンスルホン酸(methanesulphonic acid)、ナフトエ酸(naphthoic acid)、ヒドロキシナフトエ酸(hydroxynaphthoic acid)、ナフタレンスルホン酸(naphthalenesulphonic acid)、ナフタレンジスルホン酸(naphthalenedisulphonic acid)、ナフタレンアクリル酸(naphthaleneacrylic acid)、オレイン酸(oleic acid)、シュウ酸(oxalic acid)、オキサロ酢酸(oxaloacetic acid)、リン酸(phosphoric acid)、ピルビン酸(pyruvic acid)、p-トルエンスルホン酸(p-toluenesulphonic acid)、酒石酸(tartaric acid)、トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)、トリフェニル酢酸(triphenylacetic acid)、トリカルバリル酸(tricarballylic acid)、サリチル酸(salicylic acid)、硫酸(sulphuric acid)、スルファミン酸(sulphamic acid)、スルファニル酸(sulphanilic acid)、又はコハク酸(succinic acid)から形成される塩が挙げられる。
製薬学的に許容し得る誘導体としては、溶媒和化合物、製薬学的に活性を有するエステル、プロドラッグ等が挙げられる。製薬学的に許容し得る誘導体としては、生体内で開裂して本発明の化合物又はその活性部分を生成することができる生理的に開裂可能な脱離基を有する誘導体も挙げられる。脱離基は、アシル、ホスフェート、サルフェート、スルホネート、好ましくはモノ-、ジ-及びペルアシルオキシ置換化合物を含むことができ、1以上のペンダントヒドロキシ基がアシル基、好ましくはアセチル基によって保護されている。通常は、本発明のアシルオキシ置換化合物は、対応するヒドロキシ置換化合物に容易に開裂する。
本発明の式(I)で表される化合物は、正常細胞に対して良好な毒性プロファイルを有し、良好なバイオアベイラビリティを有する。これらの化合物は、国際特許出願第PCT/AU2005/001435号(国際公開第WO2006/032085号として公開)及び国際特許出願第PCT/AU2005/001436号(国際公開第WO2006/032086号として公開)に開示されており、上記出願の開示内容は本願明細書に援用する。
mTOR(mammalian target of rapamycin)は、細胞の成長及び増殖、細胞の生存、細胞運動性並びにタンパク質合成の調節に関与するセリン/トレオニンタンパク質キナーゼである(Hay and Sonenberg,2004を参照)。mTORの重要な機能は、S6k及び4EBP1の調節による翻訳の制御である。経路の活性化により、翻訳の増加、細胞質量の増加及び細胞周期進行が生じる。また、mTORは、増殖、抗アポトーシス性及び血管形成性シグナル伝達を統合することができる腫瘍進行の不可欠な要素である。再狭窄、移植拒絶反応、関節リウマチ等の様々な疾患及び症状を治療するためのmTOR阻害剤の治療への応用(シロリムス、より最近ではシロリムス類似化合物であるテムシロリムス及びエベロリムス等)に対する関心が高まっている。
本発明の実施形態は、異常又は不要な細胞成長及び/又は増殖に関連する疾患及び症状並びにmTOR活性の阻害が有益である疾患及び症状の治療又は予防的治療に特に適用することができる。本願明細書において、異常又は不要な細胞成長及び/又は増殖に関連する疾患及び症状に関して使用する「関連する」という表現は、疾患又は症状が異常な細胞増殖によって生じるか、異常な細胞増殖を生じさせるか、異常な細胞増殖に関連するかもしれないことを意味する。異常な細胞増殖は、例えば、心筋細胞又は免疫細胞(通常は増殖性又は異常増殖性T細胞)等の任意の細胞型におけるものであってもよい。好ましくは、前記細胞は癌細胞ではない。
従って、本発明の実施形態が適用される好適な疾患及び症状の例としては、狭窄症、再狭窄、移植拒絶反応、関節リウマチ、異常な免疫細胞増殖又は活性化に関連する疾患及び症状が挙げられる。例えば、イソフラボノイド化合物は、現状では臨床的に有意な再狭窄を引き起こす異常増殖応答を低減又は防止する手段として、冠状動脈形成術又は血管形成術等の血管インターベンションの直前及び直後の期間に投与することができる。移植拒絶反応は、任意の組織又は器官のものであってもよい。当業者には、様々な疾患及び症状が異常又は不要な細胞成長及び/又は増殖に関連し、本発明はそのような疾患又は症状の治療に使用することができることは明らかであろう。
本発明の実施形態は、アポトーシス誘導による免疫細胞増殖の阻害並びに異常な免疫細胞(特にT細胞)の増殖又は刺激に関連する疾患又は症状の治療又は予防的治療に適用することができる。通常、本発明に関連して使用する場合、異常なT細胞増殖は異常に急速な増殖を意味する。疾患及び症状の例としては、T細胞白血病、自己免疫疾患、移植片対宿主病等の移植又は移植片拒絶反応が挙げられる。自己免疫疾患の例としては、肝硬変、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、アジソン病、伝染性単核球症、セザリー症候群、エプスタイン・バーウイルス感染症が挙げられる。当業者には、様々な疾患及び症状が異常なT細胞増殖に関連し、本発明はそのような疾患又は症状の治療に使用することができることは明らかであろう。
本発明の化合物は、異常又は不要な細胞成長及び/又は増殖に関連する疾患及び症状並びにmTOR活性の阻害が有益である疾患及び症状を治療するために単独に投与するか、他の活性薬剤と共に投与することができる。例えば、再狭窄を治療する場合には、本発明の化合物を、シロリムス、テムシロリムス又はエベロリムス等の他のmTOR阻害剤と共に投与することができる。そのような併用療法を行う場合には、活性薬剤は順次又は同時に投与することができる。
本発明は、異常又は不要な細胞成長及び/又は増殖に関連する疾患又は症状に罹患した患者に対する既存の治療計画を向上させるための方法であって、前記式(I)で表される化合物又はその製薬学的に許容し得る塩又はプロドラッグの有効量を投与を必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。例えば、前記化合物は、増殖性T細胞活性及び/又は増殖の減少が有益である様々な疾患及び症状の既存の治療と共に使用することができる。すなわち、免疫調節有効量の本願明細書に開示する化合物の投与により、患者が罹患した疾患又は症状に対する既存の治療に対する患者の反応を向上させることができる可能性がある。
「免疫調節有効量」とは、免疫系又は免疫応答を調節するために十分な化合物の量又は用量を意味する。免疫調節量は化合物の治療量以下の用量であってもよく、治療量は、特定の疾患又は症状に対する非免疫調節性治療効果を有するために十分な用量である。すなわち、非免疫調節性治療効果を達成するために必要な量又は用量よりも少量又は少用量の化合物を免疫調節効果を得るために投与することができる。
本発明の方法によれば、イソフラボノイド化合物及びイソフラボノイドを含む組成物は、全身又は局所的に適当な経路で投与することができる。任意の状況において使用される特定の投与経路は、治療対象の症状の性質、症状の重症度及び程度、送達(deliver)する特定の化合物の用量並びに化合物の潜在的副作用等の多くの要因に応じて異なる。例えば、治療対象の体内部位に適切な濃度の所望の化合物を直接送達することが必要な場合には、全身投与ではなく、局所投与を行うことができる。局所投与により、非常に高い局所濃度の所望の化合物を所望の部位に送達することができ、その他の臓器が化合物に曝露されることを回避し、副作用を潜在的に減少させながら、所望の治療又は予防効果を達成することができる。
例えば、本発明の実施形態に係る投与は、腔内、膀胱内、筋肉内、動脈内、静脈内、眼内、皮下、局所的又は経口等の標準的な経路で行うことができる。
本発明の特定の実施形態によれば、イソフラボノイド化合物及びイソフラボノイドを含む組成物は、投与用埋め込み型医療機器に導入することができる。特に、ステント及びカテーテルは、血管(例えば、冠状動脈)、胆管、食道、結腸、気管、大気管支、尿管、尿道等の患者の体腔に埋め込まれる。ステントは、アテローム硬化性狭窄症及び動脈瘤の治療に特に有用である。
通常、ステントは収縮状態で血管又は管腔内に埋め込まれ、血管内を流体が流れるように血管の開存性を維持するために血管内に配置された時に拡張させることができる。ステントは、要求される強度を得るために金属構造等の支持構造を有し、生体適合性及び/又は血液適合性表面を有するように外面をコーティングする場合が多い。通常、コーティングはポリマー材料であり、周囲の血管又はその下流における作用のために特定の血管内部位に放出する治療活性薬剤が充填されている。
薬剤溶出ステントは、冠状動脈疾患の治療、具体的には、アテローム性動脈硬化症によって狭窄した動脈内の血流の再開及び修復に有望である。経皮インターベンション中に薬剤溶出ステントを使用した後の再狭窄率は、ベアメタルステント術及びバルーン血管形成術に比べて有意に低くなる。
本発明に使用する薬剤溶出ステントは実質的にいかなる種類のものであってもよい。薬剤溶出ステントは、少なくとも部分的に、ステンレス鋼、白金、チタン、タンタル、ニッケル-チタン、コバルト-クロム又はそれらの合金等の医療用グレードの金属材料で形成することができる。ステントは生体吸収性材料で形成することもできる。通常、これらのステントは、金属状スキャフォールドを有する完全吸収性構造体であり、標準的なバルーン展開を利用し、薬剤を充填することができる。生体吸収性ステントを形成することができる材料の例としては、ポリ乳酸(PLA)、生分解性を有する熱可塑性脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、生分解性を有する生体適合性コポリマー、マグネシウムが挙げられる。
活性薬剤は、薬剤放出プラットフォームとなる任意の手段によって埋め込み型医療機器の表面に付着させることができる。活性薬剤は、共有結合、イオン結合又はその他の分子相互作用(水素結合及びファンデルワールス力等)によって結合させることができる。コーティング方法の例としては、析出、コアセルベーション、結晶化が挙げられる。より典型的には、活性薬剤と適当な生体適合性ポリマーの複合体を形成する。次に、当業者に公知の方法により、ポリマー-薬剤複合体を放出制御型医療機器を形成するために使用するか、予備成形した医療機器に導入するか、医療機器をコーティングするために使用する。コーティングは液体ポリマー/溶剤マトリックスとして塗布することができる。液体コーティングは、パッド印刷、インクジェット印刷、ロール、印刷、噴霧、微細噴霧、浸漬、ワイピング、静電沈着、蒸着、エピタキシャル成長又はそれらの組合せによって塗布することができ、活性薬剤の制御放出を達成するその他の方法も本発明の一部である。
埋め込み型医療機器のコーティングに好適に使用することができるポリマーの例としては、ポリ(エチレン-コ-ビニルアルコール)(poly(ethylene-co-vinyl alcohol)(EVAL))、ポリ(N-ビニルピロリドン)(poly(N-vinylpyrrolidone)(PVP))、エチルセルロース(ethyl cellulose)、酢酸セルロース(cellulose acetate)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、セルロース誘導体(cellulosics)、キチン(chitin)、キトサン(chitosan)、ポリ(ビニルアルコール)(poly(vinyl alcohol))、ヘパリン(heparin)、デキストラン(dextran)、デキストリン(dextrin)、硫酸デキストラン(dextran sulfate)、コラーゲン(collagen)、ゼラチン(gelatin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、硫酸コンドロイタン(chondroitan sulfate)、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycans)、ポリ[(2-ヒドロキシエチル)メチルメタクリレート](poly[(2-hydroxyethyl)methylmethacrylate])、ポリウレタン(polyurethanes)、ポリ(エーテルウレタン)(poly(ether urethanes))、ポリ(エステルウレタン)(poly(ester urethanes))、ポリ(炭酸ウレタン)(poly(carbonate urethanes))、熱可塑性ポリエステル(thermoplastic polyesters)、溶媒可溶性ナイロン(solvent soluble nylons)、ポリ(アクリルアミド)(poly(acrylamide))、ポリ(アクリル酸)(poly(acrylic acid))、アクリル酸とアクリレートのコポリマー(copolymers of acrylic acid and acrylates)、ポリ(メタクリル酸)(poly(methacrylic acid))、メタクリル酸とメタクリレートのコポリマー(copolymers of methacrylic acid and methacrylates)、及びそれらの混合物が挙げられる。
当業者には明らかなように、医療機器コーティングを形成する際には、異なるポリマーが異なる溶媒に適している。適当な溶媒の例としては、アセトン(acetone)、酢酸エチル(ethyl acetate)、クロロホルム(chloroform)、ジクロロメタン(dichloromethane)、DMAC、DMSO、DMF、THF、ホルムアミド(formamide)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone (NMP))、スルホラン(sulfolane)、ベンジルアルコール(benzyl alcohol)、シクロヘキサノール(cyclohexanol)、フェノール(phenol)、ギ酸(formic acid)、m-クレゾール(m-cresol)、p-クレゾール(p-cresol)、トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)、グリセリン(glycerol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanols )、及びそれらの混合物が挙げられる。活性薬剤は、ポリマー/溶媒混合物に可溶又は分散可能であり、コーティング過程で活性を維持する必要がある。ポリマーは、浸漬、噴霧、ワイピング、ブラッシング等の公知の金属-ポリマー接着法を使用してステントに接着する(付着させる)ことができる。その後、送風又は回転等のウェブクリーニング操作と、蒸発、加熱、減圧下における溶媒除去及びポリマー含有薬剤の硬化等の乾燥操作を行う。ポリマーコーティングは約1〜約10μm以上の厚みを有することができ、プライマーコーティングや保護層コーティング等の2以上のコーティングが望ましい場合もある。
通常、充填する活性薬剤の量は、薬剤-ポリマー層を形成するために使用する組成の全質量の約0.1〜約10質量%である。薬剤は、保存剤や安定剤等として患者に治療又は予防的効果を与えることができるか、薬剤送達を向上させるために使用する他の物質を含むことができる。
ステントに好適に同時塗布することができる治療薬の例としては、パクリタキセル及びラパマイシン等の抗増殖薬(antiproliferatives including paclitaxel and rapamyacin)、抗トロンビン薬(antithrombins)、シロリムス等の免疫抑制薬(immunosuppressants including sirolimus)、抗脂質剤(薬剤)(antilipid agents)、抗炎症剤(anti-inflammatory agents)、抗新生物薬(antineoplastics)、抗血小板薬(antiplatelets)、血管形成薬(angiogenic agents)、血管新生阻害剤(anti-angiogenic agents)、ビタミン(vitamins)、抗有糸分裂薬(antimitotics)、メタロプロテイナーゼ阻害剤(metalloproteinase inhibitors)、NOドナー(NO donors)、エストラジオール(estradiols)、硬化阻害剤(anti-sclerosing agents)、血管作用剤(and vasoactive agents)、内皮成長因子(endothelial growth factors)、エストロゲン(estrogen)、β遮断薬(beta blockers)、AZ遮断薬(AZ blockers)、ホルモン(hormones)、スタチン(statins)、インスリン成長因子(insulin growth factors)、抗酸化剤(antioxidants)、膜安定剤(membrane stabilizing agents)、カルシウムアンタゴニスト(calcium antagonists)、レチノイド(retenoid)、ビバリルジン(bivalirudin)、フェノキソジオール(phenoxodiol)、エトポシド(etoposide)、チクロピジン(ticlopidine)、ジピリダモール(dipyridamole)、トラピジル(trapidil )、が挙げられる。これらの治療薬は単独で使用するか、本願明細書に記載する任意の治療薬と組合せて使用することができる。その他の治療薬の例としては、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、脂質、タンパク質-薬剤、タンパク質共役体薬剤、酵素、オリゴヌクレオチド及びその誘導体、リボザイム、他の遺伝的材料、細胞、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、モノクローナル抗体、血小板、プリオン、ウイルス、細菌、内皮細胞等の真核細胞、幹細胞、ACE阻害剤、単球/マクロファージ、血管平滑筋細胞が挙げられる。治療薬は、宿主に投与すると所望の薬剤に代謝するプロドラッグであってもよい。また、治療薬(薬剤)は、治療層に導入する前に、マイクロカプセル、ミクロスフェア、マイクロバブル、リポソーム、ニオソーム(niosomes)、エマルション、分散剤等として予め配合してもよい。治療薬は、放射性同位元素又は光エネルギー又は超音波エネルギー等のエネルギー又は全身投与することができる他の循環分子によって活性化される薬剤であってもよい。治療薬は、血管形成、再狭窄、細胞増殖、血栓症、血小板凝集、凝固及び血管拡張の調節等の複数の機能を有することができる。抗炎症薬の例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、アリール酢酸誘導体(ジクロフェナク等)、アリールプロピオン酸誘導体(ナプロキセン等)、サリチル酸誘導体(アスピリン及びジフルニサル等))が挙げられる。その他の抗炎症薬の例としては、デキサメタゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン等の糖質コルチコイド(glucocoriticoids, ステロイド)が挙げられる。抗炎症薬は、組織の抗増殖薬への反応を軽減させるために抗増殖薬と組合せて使用することができる。
本発明の薬剤溶出ステント及びカテーテルは、神経、頸動脈、冠状動脈、腎臓、大動脈、腸骨、大腿部、その他の末梢血管系等の血管系の任意の部分に使用することができる。ステントは、埋込部位又はその下流に活性薬剤を送達することができる。
薬剤溶出ステントは、独立して作製した複数の層を有することができ、個別の化学組成物及び薬物動態学的特性を各層に付与することができる。各層は、層毎で同一又は異なる割合で1以上の薬剤を含んでいてもよい。層間の薬剤濃度の変化を利用して所望の送達プロファイルを得ることができる。例えば、約24時間にわたる減少薬剤放出を達成することができる。別の例では、初期放出後に約1週間の一定の放出を達成することができる。別の例では、数日から数ヶ月等の持続期間にわたって薬剤を送達することができる。数時間から数ヶ月の期間にわたって実質的に一定の放出速度を達成することができる。層は、固体又は多孔質であってもよく、他の薬剤又は賦形剤等を充填してもよい。
本発明の方法を使用する場合には、イソフラボノイド化合物は医薬組成物として使用することができる。適当な組成物は当業者に公知の方法によって調製することができ、製薬学的に許容し得る希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤を含んでいてもよい。希釈剤、アジュバント及び賦形剤は、組成物中の他の成分との適合性を有し、患者に対して有害ではないという意味で許容し得るものでなければならない。希釈剤、アジュバント又は賦形剤は、固体及び/又は液体であってもよく、例えば、0.5〜59重量%又は100重量%以下の活性化合物を含む単位用量錠剤として化合物に配合することができる。本発明の製剤は1種以上の活性化合物を含んでいてもよく、実質的に、随意で1種以上の補助成分を含む成分を混合することからなる公知の製薬方法によって調製することができる。
製薬学的に許容し得る希釈剤の例としては、脱塩又は蒸留水(demineralised or distilled water);食塩水(saline solution);落花生油(peanut oil)、ベニバナ油(safflower oil)、オリーブ油(olive oil)、綿実油(cottonseed oil)、トウモロコシ油(maize oil)、胡麻油(sesame oils)、落花生属油(arachis oil)、ココナツ油(coconut oil)等の植物油;メチルポリシロキサン(methyl polysiloxane)、フェニルポリシロキサン(phenyl polysiloxane)、メチルフェニルポリシロキサン(methylphenyl polysolpoxane)等のポリシロキサン(polysiloxanes)を含むシリコーン油;揮発性シリコーン(volatile silicones)、流動パラフィン(liquid paraffin)、軟パラフィン(soft paraffin)、スクアラン(squalane)等の鉱油;メチルセルロース(methyl cellulose)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(sodium carboxymethylcellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose)等のセルロース誘導体;エタノール(ethanol)、イソプロパノール(iso-propanol)等の低級アルカノール;低級アラルカノール(lower aralkanols)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、1,3-ブチレングリコール(1,3-butylene glycol)、グリセリン(glycerin)等の低級ポリアルキレングリコール又は低級アルキレングリコール;パルミチン酸イソプロピル(isopropyl palmitate)、ミリスチン酸イソプロピル(isopropyl myristate)、オレイン酸エチル(ethyl oleate)等の脂肪酸エステル;ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrridone)、寒天(agar)、カラゲナン(carrageenan)、トラガカントゴム(gum tragacanth)、アラビアゴム(gum acacia)、ワセリン(petroleum jelly)、が挙げられる。通常、組成物における担体の含有量は1〜99.9重量%である。
経口投与に適した製剤は、例えば、カプセル、小袋(sachets)、薬用ドロップ(lozenges)、錠剤等の所定量の活性化合物を含む個別単位で、粉末又は顆粒、溶液又は水性又は非水性懸濁液、水中油又は油中水エマルションとして提供することができる。そのような製剤は、活性化合物と適当な担体(1以上の上記の補助成分を含んでいてもよい)を接触させる(混合する)工程を含む適当な製薬方法によって調製することができる。通常、本発明の製剤は、活性化合物を液状及び/又は細かく粉砕した固体状の担体と均一に混合し、必要に応じて、得られる混合物を単位用量となるように成形することによって調製する。例えば、活性化合物及び必要に応じて1以上の補助成分を含む粉末又は顆粒を圧縮又は成形することによって錠剤を調製することができる。圧縮錠剤は、適当な機械内において、必要に応じて結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤及び/又は界面活性/分散剤と混合した粉末又は顆粒等の流動性化合物を圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、適当な機械内において、不活性液体結合剤によって湿潤させた粉末化合物を成形することによって調製することができる。
経口投与のための固形製剤は、ヒト及び動物の製薬学的に許容し得る結合剤、甘味剤、崩壊剤、希釈剤、香味料、被覆剤、保存剤、潤滑剤及び/又は遅延剤を含んでいてもよい。適当な結合剤の例としては、アラビアゴム、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールが挙げられる。適当な甘味剤の例としては、蔗糖、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、サッカリンが挙げられる。適当な崩壊剤の例としては、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、ザンサンガム(xanthan gum)、ベントナイト、アルギン酸、寒天が挙げられる。適当な希釈剤の例としては、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二リン酸カルシウム(dicalcium phosphate)が挙げられる。適当な香味料の例としては、ハッカ油、ウィンターグリーン油、サクランボ、オレンジ又はラズベリー香味料が挙げられる。適当な被覆剤の例としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はそれらのエステルのポリマー又はコポリマー、ロウ(waxes)、脂肪アルコール、ゼイン、シェラック(shellac)、グルテンが挙げられる。適当な保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、αトコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、亜硫酸水素ナトリウム(sodium bisulphite)が挙げられる。適当な潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、タルクが挙げられる。適当な遅延剤の例としては、モノステアリン酸グリセリン、グリセリルジステアレート(glyceryl distearate)が挙げられる。
経口投与のための液体製剤は、上述した成分に加えて液体担体を含むことができる。適当な液体担体の例としては、水、オリーブ油、落花生油、胡麻油、ひまわり油、ベニバナ油、落花生属油、ココナツ油等の油、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド、それらの混合物が挙げられる。
口腔(舌下)投与に適した製剤の例としては、香味ベース(通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガカントゴム)内に活性化合物を含む薬用ドロップ、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアラビアゴム等のベース内に当該化合物を含むトローチ(lozenges)が挙げられる。
非経口投与に適した本発明の組成物は、通常、活性化合物の無菌水性製剤を含み、レシピエントの血液と等張であってもよい。通常、これらの製剤は静脈注射により投与するが、皮下、筋肉内又は皮内注射によって投与することもできる。このような製剤は、化合物を水又はグリシン緩衝液と混合し、得られる溶液を無菌かつ血液と等張にすることによって簡便に調製することができる。通常、本発明に係る注射製剤は、0.1〜60%(w/v)の活性化合物を含み、0.1ml/分/kg等で投与する。
注入製剤は、例えば、生理食塩水を担体として使用し、シクロデキストリン又はその誘導体等の可溶化剤を使用して調製することができる。適当なシクロデキストリンの例としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、トリ-メチル-β-シクロデキストリンが挙げられる。より好ましくは、シクロデキストリンはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。適当なシクロデキストリン誘導体の例としては、米国特許第5,134,127号に開示されているシクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体及びその類似体;Captisol(登録商標)が挙げられる。
通常、直腸投与に適した製剤は単位用量の坐薬として提供する。これらは、活性化合物を1以上の固体担体(カカオバター等)と混合し、得られる混合物を成形することによって調製することができる。
皮膚への局所投与に適した製剤又は組成物は、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ジェル、スプレー、エアロゾル又はオイルであってもよい。使用することができる担体の例としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、それらの2種以上の組合せが挙げられる。通常、活性化合物は、0.1〜0.5%(w/w)、例えば0.5〜2%(w/w)の濃度で含まれる。そのような組成物の例としは、化粧用スキンクリームが挙げられる。
吸入に適した製剤は、溶液、懸濁液又はエマルション状の噴霧組成物として送達することができる。吸入噴霧組成物は、二酸化炭素、亜酸化窒素又は1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン又はそれらの混合物等の水素含有フルオロカーボン等の製薬学的に許容し得る噴霧剤を含んでいてもよい。
経皮投与に適した製剤は、レシピエントの表皮に長期間に渡って密接に接触するパッチとして提供することができる。そのようなパッチは、随意で緩衝された水溶液として活性化合物を含み、例えば、0.1M〜0.2Mの濃度で活性化合物を含むことが適当である。また、経皮投与に適した製剤は、イオントフォレシス(例えば、Pharmaceutical Research 3(6),318(1986)を参照)によって送達することができ、通常は随意で緩衝された活性化合物の水溶液である。例えば、適当な製剤は、クエン酸塩又はビス/トリス緩衝液(pH:6)又はエタノール/水を含み、0.1M〜0.2Mの活性成分を含む。
活性化合物は、例えば、食品に添加、混合、コーティング又は組み合わせることによって食品として提供することができる。「食品」という用語は、可能な限り最も広い意味で使用し、飲料(乳製品を含む)等の液体組成物及びその他の食品(ヘルスバー、デザート等)を含む。本発明の化合物を含む食品組成物は、通常の方法によって容易に製造することができる。
本発明によれば、化合物及び組成物は治療的又は予防的に投与することができる。治療用途では、化合物又は組成物を、疾患又は障害に罹患しているか、症状を経験している患者に、疾患又は障害、症状及び/又は合併症を治癒させるか、少なくとも部分的に進行を止めるために十分な量で投与する。化合物又は組成物は、患者を効果的に治療することができる量の活性化合物を含んでいなければならない。
特定の患者に投与する化合物の有効用量は、治療する症状の種類と症状の段階、使用する化合物の活性、使用する組成物、患者の年齢、体重、健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路、化合物の隔離速度、治療期間、治療と共に使用する医薬、その他の関連する要因等の様々な要因に応じて異なる。
当業者は、症状を治療するために必要な有効かつ毒性のない用量を日常的な実験によって決定することができる。用量は、通常はケースバイケースで決定する。例えば、有効用量は、通常、体重1kg当たり約0.0001〜約1000mg/24時間、体重1kg当たり約0.001〜約750mg/24時間、体重1kg当たり約0.01〜約500mg/24時間、体重1kg当たり約0.1〜約500mg/24時間、体重1kg当たり約0.1〜約250mg/24時間又は体重1kg当たり約1.0〜約250mg/24時間である。より典型的には、有効用量は、体重1kg当たり約10〜約200mg/24時間であると予想される。
また、最適な量及び投与間隔は、主として、治療する症状の性質及び程度、投与の形態、経路及び部位並びに治療する個体に応じて決定する。適した条件は通常の方法によって決定することができる。
また、所定の日数にわたる1日当たりの組成物の投与回数等の最適な治療は、通常の治療判定試験を使用して当業者が確認することができる。
本発明の方法によれば、イソフラボノイド化合物又はその製薬学的に許容し得る誘導体、プロドラッグ又は塩は、所望の作用を妨げない薬剤又は所望の作用を補完する薬剤と共投与することができ、そのような薬剤としては、例えば、抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬、脂質低下薬、血小板凝集阻害薬、抗血栓薬、カルシウムチャネル遮断薬、コルチコステロイド、抗ウイルス化合物が挙げられる。使用する薬剤は多くの要因に応じて異なり、通常は治療する疾患又は障害に合わせる。薬剤の共投与は、同時又は順次行うことができる。同時投与は、化合物を単一の組成物として投与するか、同時又はほぼ同時に投与する異なる組成物として投与することによって行うことができる。連続(順次)投与は、必要に応じて任意の順序とすることができる。
本願明細書における刊行物(又は刊行物から得られた情報)又は公知の事項への言及は、刊行物(又は刊行物から得られた情報)又は公知の事項が本願明細書に記載する技術分野における一般的な常識であると自認したり、示唆するものではない。
以下、詳細な実施例によって本発明について説明するが、本発明の範囲は以下の実施例によって制限されるものではない。
方法
化合物1
細胞株及び培養条件:ヒトEOC細胞株A2780及びA2780/CP70(TC Hamilton博士から寄贈)(Behrens et al,1997)をRPMI+10%ウシ胎仔血清(Gemini Bio-Products, Woodland, CA)内で増殖させた。初代培養EOC細胞株を悪性卵巣腹水から分離するか、卵巣腫瘍から取り出し、上述したように培養した(Alvero et al.、2006)。サイトケラチン7抗原の免疫染色で測定したEOC細胞の純度は100%だった。全ての細胞株は、5%CO2雰囲気内において37℃で成長させた。
細胞生存率検定:細胞生存率は公知の方法によって測定した(Alvero et al.、2006)。簡単に説明すると、細胞(5×103)を96ウェルマイクロタイタープレート(BD Biosciences/Pharmingen、カリフォルニア州サンディエゴ)のウェル(三つ組)に入れた(100μL/ウェル)。細胞を70%の集密状態まで成長させ、処理前に低血清フェノール不含Opti-MEM培地(Invitrogen-GIBCO、カリフォルニア州カールスバッド)内において4時間培養した。化合物1(Novogen Inc.、オーストラリア・ニューサウスウェールズ)を10mg/mLストックから培地に添加し、結果の節に記載した最終濃度にした。24時間の処理後、細胞生存率を、CellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用し、取扱説明書に従って評価した。試料の光学濃度は、自動マイクロプレートリーダー(Model 550、Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して490nmで測定した。処理細胞の値を未処理対照の値と比較し、パーセント生存率とした。各実験は三つ組で行った。
カスパーゼ阻害剤(Z-VAD-FMK(Sigma Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を使用する実験では、処理を行う30分前に阻害剤を培養物に添加し、最終濃度を20μMとした。自己貪食阻害剤(3-メチルアデニン(Sigma Aldrich))を使用する実験では、処理を行う1時間前に阻害剤を添加し、最終濃度10mMとした。
Hoechst及びヨウ化プロピジウム染色を使用したフローサイトメトリー:処理後、細胞にトリプシンを作用させ、PBSで2回洗浄し、再懸濁させた(1×106細胞/mL)。次に、細胞を、5μg/mLのHoechst 33342(Invitrogen-Molecular Probes、カリフォルニア州カールスバッド)及び1μg/mLのヨウ化プロピジウム(Sigma Aldrich)で染色し、暗室内で15分間培養した。その後、BD LSR II Systemを使用してデータを取得し、FloJo FACS分析ソフトウェア(Tree Star,Inc.、オレゴン州アシュランド)を使用して分析した。
タンパク質調製及び細胞分画:薬剤による処理後、タンパク質を抽出し、上述した方法によって測定した(Alvero et al.、2006)。細胞質及びミトコンドリア画分の分離のために、ApoAlert(商標)Cell Fractionation Kit(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)を使用し、取扱説明書に従って細胞ペレットを処理した。細胞質及び核画分の分離のために、NE-PER Nuclear and Cytoplasmic Extraction(Pierce Biotechnology,Inc.、イリノイ州ロックフォード)を使用してペレットを処理した。
カスパーゼ3/7、8及び9活性検定:10μgのタンパク質(全容量:50μL)を、50μLの平衡化Caspase-Glo10 3/7、8又は9試薬(Promega)と混合した。室温で1時間培養した後、発光をTD 20/20 Luminometer(Turner Designs、カリフォルニア州サニーベル)を使用して測定した。ブランク値を減算し、対照(未処理)に対する活性の増加(倍)を決定した。
SDS-PAGE及びウェスタンブロット:細胞溶解物(タンパク質:20μg)を試料緩衝液(2.5% SDS、10%グリセリン、5% β-メルカプトエタノール、0.15Mトリス(pH=6.8)、0.01% ブロモフェノールブルー)内で変性させ、文献に記載された方法で12% SDS-PAGEを行った(Kamsteeg他、2003)。抗体としては、マウス抗XIAP(BD、1:1000)、ウサギ抗MAP LC3(1:200)、ウサギ抗アクチン(Sigma、1:10,000)、ウサギ抗リン酸化Akt(Cell Signaling、1:1000)、ウサギ抗Akt(Cell Signaling、1:1000)、ウサギ抗リン酸化mTOR(Cell Signaling、1:1000)、ウサギ抗mTOR(Cell Signaling、1:1000)、ウサギ抗シトクロムc(Clontech Laboratories、Inc、カリフォルニア州マウンテンビュー、1:100)、ウサギ抗Omi(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス、1:5000)、ウサギ抗Bid(Cell Signaling、1:1000)、マウス抗Bax(BD Pharmingen、1:250)、ウサギ抗VDAC(Sigma Aldrich、1:2000)、マウス抗Bcl2(BD Pharmingen、1:500)、ウサギ抗AIF(Sigma Aldrich、1:1000)、ウサギ抗EndoG(Sigma Aldrich、1:1000)、マウス抗トポイソメラーゼI(BD Pharmingen、1:10,000)を使用した。タンパク質は増強化学発光(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を使用して可視化した。
xMAP法を使用したリン酸タンパク質の分析:処理後、細胞を溶解し、Beadlyte(登録商標)8-plex Multi-Pathway Signaling kit(Millipore、マサチューセッツ州ビレリカ)を使用し、取扱説明書に従い、溶解物を使用して8種類のタンパク質のリン酸化状態を測定した。データは、BioPlex System(BioRad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して取得した。
JC-1を使用したミトコンドリア脱分極の検定:処理後、細胞にトリプシンを作用させ、Mitocapture(商標)ミトコンドリア性アポトーシス検出キット(BioVision Research Products、カリフォルニア州マウンテンビュー)を使用し、取扱説明書に従ってJC-1色素で染色した。データはBD LSR II Systemを使用して取得し、BD FACSDiva Software(商標)を使用して分析した。
免疫沈降:Catch and Release(登録商標)v2.0 Reversible Immunoprecipitation System(Millipore、マサチューセッツ州ビレリカ)及び抗ウサギベクリン-1(Abcam、マサチューセッツ州ケンブリッジ)を使用し、10μg/mLの化合物1で1時間処理した細胞のミトコンドリア画分からベクリン-1を免疫沈降させた。
マウス異種移植研究:エール大学のInstitutional Animal Care&Use委員会による承認された生体内研究を行った。細胞(1×106細胞)を50% RPMI及び50% BD Matrigel Matrix(BD Biosciences、マサチューセッツ州ベッドフォード)(合計量:200μL)に再懸濁させ、NCRヌードマウスの右脇腹に皮下注射した。接種後、以下の腹腔内療法を8日間行った。すなわち、パクリタクセル:10 mg/kg q×3d、カルボプラチン:40mg/kg q×7d、20% HPBCDで希釈した化合物1:100mg/kgを毎日投与した。対照群には、PBSで希釈した20% HPBCDを投与した。マウスは、3週間にわたって治療・観察した。腫瘍の大きさはノギスによって測定し、最大腫瘍阻害に関する抗腫瘍活性(治療/対照(T/C))を文献に記載されている方法で分析した(Kamsteeg et al.、2003)。
免疫組織化学分析:免疫組織化学分析は、ウサギ抗EndoG(Lifespan Biosciences、ワシントン州シアトル)(1:100に希釈)を使用して文献に記載された方法で行った(Kelly et al,2006)。
化合物10
細胞:ヒト膵細胞株HPAC、MIAPaCa-2及びPANC-1をATCC(バージニア州マナッサス)から入手した。細胞を、Gln及び高グルコース(Mediatech、バージニア州マナッサス)、10%ウシ胎仔血清(FBS、HyClone、ユタ州ローガン)、ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM培地内に保持した。
抗体:この研究で使用したp53及びp21に特異的な抗体は、(Calbiochem、EMD、カリフォルニア州サンディエゴ)、カスパーゼ9、XIAP、COX IV、Bcl2、Akt(Cell Signaling Technology、マサチューセッツ州ダンバース)、カスパーゼ2、シトクロムc、Bid(BD Pharmingen、カリフォルニア州サンディエゴ)から入手した。GAPDH(RDI、マサチューセッツ州コンコード)又はβ-アクチン(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を、ゲル及びブロットのタンパク質負荷量を標準化するハウスキーピング遺伝子として使用した。
細胞生存率:細胞生存率は、96ウェルプレート上でMTS検定(CellTiter 96 AQueous One、Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用し、文献に記載された方法で測定した(Alvero et al.、2006)。
FACS分析:アポトーシスは、プローブとしてAnnexin-V-FITC及びヨウ化プロピジウム(PI)(Biovision、カリフォルニア州マウンテンビュー)を使用し、FACS分析によって測定した(Ahn et al.,2003)。ミトコンドリア膜電位は、プローブとしてJC-1(Biovision)を使用し、FACS分析によって測定した(Ahn et al.,2003)。細胞周期は、PIで染色したエタノール固定RNaseA処理細胞を使用して分析した。各スペクトルにおいて、FACSCalibur(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)を使用し、10,000gated eventsを記録・分析した。全ての実験は三つ組で行った(エラーバーは1つの標準偏差を表す)。カスパーゼ阻害剤I(zVAD-fmk)はCalbiochemから入手した。
ウェスタンブロット解析:細胞を100mm組織培養プレートに播種し、約90%の集密状態まで一晩成長させた。次に、細胞を薬剤の組み合わせによって表示された時点まで処理した。最後の処理工程後、1% ノニデットP-40、0.1% SDS、0.5%デオキシコール酸、150mM NaCl、50mM Tris-HCl (pH:7.5)、1mM EDTA、1mM PMSF、プロテアーゼ阻害剤(Roche)を含む500μLの溶解緩衝液を使用して細胞を氷上で30分間溶解させた。細胞溶解物を無菌セルスクレーパで取り出し、15,000×gで15分間遠心分離を行って細胞砕片を除去した。タンパク質をBCA法(Pierce)によって調べ、50μgのアリコートを12%,T、2.6%C SDS-PAGEゲルに分離した。タンパク質は、ウェット移動法を使用し、電気泳動によってPVDF膜(Immobilon P、Millipore、マサチューセッツ州ビルレカ)に移動させた。これらの膜は、特異的抗体並びにタンパク質負荷量を標準化するハウスキーピング遺伝子として使用した抗GAPDHを使用して調べた。ブロットは、HRP結合二次抗体(Southern Biotech、アラバマ州バーミンガム)及び化学発光基質(ECL、ニューヨーク州アマーシャム)を使用してX線フィルムに転写した。
カスパーゼ活性:10μMの化合物10で48時間処理した後、HPAC、MIAPaCa-2及びPANC-1細胞をトリプシン処理で取り出し、10% FBSを含むDMEM培地に再懸濁させた。細胞をカスパーゼ基質と共に37℃で1時間培養し(5% CO2)、Annexin-V-Cy5及びsytoxブルーを使用して調べた。カスパーゼ+ve細胞はヒストグラムに示すようにゲートし、Annexin-V-Cy5/sytoxブルースペクトル上に青色細胞として表示した。蛍光基質を使用してin situカスパーゼ活性を調べた。カスパーゼ2の場合にはFITC-VDVAD-fmk(Biovision K182-100)を使用し、カスパーゼ3の場合にはFITC-DEVD-fmk(K183-100)を使用し、カスパーゼ9の場合にはFITC-LEHD-fmk(K199-100)を使用した。これらの基質は各活性化カスパーゼに非可逆的に結合し、カスパーゼ活性化をフローサイトメトリーによって測定した。37℃で1時間培養した後(5% CO2)、細胞を5%FBSを含むDPBSによって洗浄し、Annexin-V-Cy5(Biovision K103-3)及びsytoxブルー(Invitrogen)(壊死細胞に結合する色素)を含むアネキシンV結合緩衝液に再懸濁させた。カスパーゼ活性化、アポトーシス及び壊死を、BD LSRIIフローサイトメーター内においてバイオレット、青及び赤色レーザーを使用して同時に測定した。
実施例1-化合物1誘導細胞死はカスパーゼ非依存性DNA断片化を含む
化合物1は、EOC細胞株を含む様々な癌細胞における細胞生存率を減少させることが分かっている(データは示さず)。そのため、本願発明者らの第1の目的は、パクリタクセル耐性培養物(R182、R456)を含む、腹水又は腫瘍組織から分離したEOC細胞の初代培養のパネルに対する化合物1の作用を決定することだった(Kelly et al.、2006)。これらの培養物は、高いレベルの抗アポトーシスタンパク質XIAP及びFLIPを発現する(16)。パクリタクセル感受性及びパクリタクセル耐性培養物は、化合物1による処理後に生存細胞の割合の有意な低下を示した(GI50=5〜10μg/mL)(図1A)。
細胞生存率の低下がアポトーシスによるものであるか否かを決定するために、細胞をHoechst及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメトリーで分析した。また、カスパーゼ3/7、8及び9の活性を測定し、2種類の抗アポトーシス分子であるXIAP及びリン酸化Akt(p-Akt)の状態を調べた。化合物1は、断片化DNAの発生の有意な上昇を誘導し、95%の細胞が24時間後にHoechst及びPIで染色されていた(図1B)。しかしながら、公知のアポトーシス誘導物質であるパクリタクセルによる処理後に観察されたカスパーゼ活性の上昇とは対照的に、化合物1による処理後にカスパーゼ3/7、8及び9の活性の変化は観察されなかった(図1C)。また、XIAP(抗アポトーシスタンパク質)の変化は観察されなかった(図2A)。しかしながら、興味深いことに、化合物1による処理後15分の時点でp-Aktの強いダウンレギュレーションが観察された(図2B)。
カスパーゼ活性化の非存在下におけるDNA断片化は、カスパーゼ非依存性経路の関与を示唆している。化合物1誘導細胞死がカスパーゼ非依存性であることを示すために、汎カスパーゼ阻害剤であるZ-VAD-FMKの存在下及び非存在下において化合物1の濃度を上昇させて細胞を処理した。カスパーゼの阻害は、化合物1誘導細胞死に影響を与えなかった(図2C)。これらの結果は、化合物1誘導細胞死は、DNA断片化を生じさせる、カスパーゼ非依存性だが、恐らくはp-Akt依存性の経路を介して進行することを示唆している。
実施例2-自己貪食は化合物1誘導細胞死に必要ではない
形態学的には、化合物1で処理したEOC細胞は、アクリジンオレンジで明確に染色された大きな細胞内空胞(図4B)を含んでおり(データは示さず)、化合物1は自己貪食細胞死を誘導することを示唆している。自己貪食が関与しているか否かを調べるために、リン酸化mTOR(p-mTOR)(自己貪食経路の主要な制御因子)及びその標的の1つであるリボソームp70 S6キナーゼ(p-S6k)のレベルを調べた。また、自己貪食マーカーLC3-IIのレべルも調べた。ウェスタンブロット解析では、化合物1による処理後15分間でp-mTOR及びp-S6kのダウンレギュレーションが生じ(図3A)、その後、LC3-IIレべルの有意な上昇が生じた(図3B)。これは、自己貪食経路の活性化を示すものである。
自己貪食が化合物1誘導細胞死の主要な機序であるか否かを調べるために、よく研究された自己貪食阻害剤である3-メチルアデニン(3-MA)(オートファゴソーム形成の最も早い段階を阻害する(Seglen and Bohley, 1992))の存在下及び非存在下において化合物1(10μg/mL)で細胞を処理した。3-MA(10μM)を使用した細胞生存率に関する研究では、3-MAは化合物1誘導細胞死を阻害することができないことが分かった(図2C)。これらのデータは、自己貪食の特徴が観察されはしたが、自己貪食は化合物1誘導細胞死の主要な機序ではないことを示唆している。
化合物1が特定の生存経路に影響を与えるか否かを調べるために、10μg/mLの化合物1の存在下又は非存在下で培養した細胞中のリン酸タンパク質のパネルを評価した。図3Cに示すように、試験を行った8種類のリン酸タンパク質のうち、化合物1はp-S6kのみのダウンレギュレーションを生じさせ(ウェスタンブロットの結果と一致)、pIκB、pSTAT3及びp38に対しては全く又はほとんど影響を与えなかった。また、ERK、pJNK、pSTAT5a/b及びpCREBのアップレギュレーションが観察され、これは、おそらくは代償性反応を示すものである。これらの結果は、mTOR経路に対する化合物1の特異的な効果を示唆している。
実施例3-ミトコンドリア脱分極、ミトコンドリア移行及び核移行
対照細胞及び処理細胞をJC-1色素(ミトコンドリアを赤に染色し、ミトコンドリア脱分極時に緑に変化するカチオン性蛍光染料)で染色した。溶媒対照と比較して、化合物1で処理した細胞の免疫蛍光像は大部分が緑色だった(図4)。化合物1で処理した細胞におけるJC-1スペクトルの赤から緑への変化は、化合物1がミトコンドリア脱分極を誘導することができることを示している。赤から緑への変化はフローサイトメトリーによって確認し、化合物1による処理後に、30%(1時間)及び50%(4時間)の細胞が脱分極したミトコンドリアを有していた(図5)。
ミトコンドリア膜の安定性は、保存BHドメインによって特徴付けられるBcl2ファミリータンパク質によって部分的に制御される。Bid及びBaxは、ミトコンドリアに移行して脱分極を開始させる細胞質タンパク質である。一方、Bcl2は、膜を安定化させるミトコンドリアタンパク質である。化合物1による処理の2時間後にBaxのミトコンドリア移行が誘導されたが、Bidの活性化は誘導されなかった(図6A)。通常はミトコンドリア膜不安定化の最初のメディエーターの1つであるBaxの移行が化合物1誘導ミトコンドリア脱分極の開始後に生じるとすると、別の機序がミトコンドリア不安定性の開始の原因であるに違いない。ベクリン-1は、自己貪食における役割に関連して最も言及される分子である。また、ベクリン-1はBHドメインを有することが最近になって分かっており、ベクリン-1はBcl2ファミリータンパク質であることが証明されている。RT-PCRによるベクリン-1 mRNAの分析及び全細胞溶解液からのベクリン-1タンパク質レべルは、化合物1による処理によってベクリン-1mRNA又はタンパク質発現が変化しなかったことを示している(データは示さず)。しかしながら、ミトコンドリア画分の分析によれば、ベクリン-1は、化合物1による処理後1時間でミトコンドリアに移行し(図6A)、これはミトコンドリア脱分極の発生と相関を有する。
クラスIII PI-3キナーゼと相互作用して自己貪食を開始させる役割以外に、ベクリン-1のBH3ドメインはBcl2及びBcl-xLと相互作用できることが証明されている。本願発明者らは、ベクリン-1ミトコンドリア移行により、ベクリン-1はBcl2と相互作用し、Bcl2のミトコンドリア安定化能力に干渉すると仮定した。そのため、未処理細胞又は化合物1で1時間処理した細胞のミトコンドリア画分からベクリン-1を免疫沈降させた。次に、免疫複合体におけるBcl2及びBakの存在をウエスタンブロッティングによって測定した。未処理の対照と比較して、化合物1による処理後にベクリン-1との複合体における高いBcl2レベルが観察され(図6B)、化合物1誘導ベクリン-1ミトコンドリア移行によってベクリン-1-Bcl2相互作用が生じることが証明された。Bakは複合体内に観察されず、ベクリン-1とBcl2の特異的な相互作用であることを示唆している。これらの知見は、ベクリン-1は、ミトコンドリアに移行することによってミトコンドリア脱分極を開始させることができ、Bid-Bak又はBid-Bax相互作用と同様に、Bcl2に結合して不活化させる可能性があることを示している。
ミトコンドリアヌクレアーゼは、ミトコンドリアから放出されると、核に移行し、DNA断片化を誘導することができるタンパク質のファミリーである。化合物1がミトコンドリア脱分極を誘導することができるという事実は、ミトコンドリアヌクレアーゼは観察されたDNA断片化の原因となり得ることを示唆している。そのため、ウェスタンブロット解析を使用し、化合物1で処理した細胞の核画分におけるミトコンドリアヌクレアーゼ(アポトーシス誘導因子(AIF)及びエンドヌクレアーゼG(EndoG))のレべルを定量化した。化合物1による処理後に核EndoGレべルの上昇が観察され(AIFレべルの上昇は観察されなかった)(図7)、EndoGはミトコンドリアから放出され、核に移行し、DNA断片化を促進することを示唆している。
実施例4-化学耐性EOC異種移植モデルに対する化合物1の抗腫瘍活性
次に、本願発明者らは化合物1の生体内抗腫瘍活性を評価した。悪性卵巣癌腹水から分離したEOC細胞を使用してヌードマウスEOC異種移植モデルを得た。上述のように、化合物1の抗腫瘍活性を、カルボプラチン及びパクリタクセルの抗腫瘍活性と比較した。化合物1は、カルボプラチン及びパクリタクセル(図8A及び図8B)と比較して、用量依存的に(図8B及び図8C)、腫瘍増殖動態(図8A)及び最終的な腫瘍の大きさ及び体積の有意な減少をもたらした。化合物1、カルボプラチン及びパクリタクセルのT/C値は、それぞれ30%、58%及び58%だった。化合物1処理群では毒性副作用は全く見られなかったが、カルボプラチン群のマウスは体重の激減及び悪液質を示した。
最後に、化合物1の生体内抗腫瘍活性が試験管内で観察された機序に類似するものであることを証明するために、腫瘍を溶解し、ウェスタンブロット解析によってp-S6kレべルを測定し、マウス腫瘍のパラフィン包埋切片をEndoGについて免疫染色した。図8Dに示すように、化合物1で処理したマウスから採取した腫瘍は、溶媒対照と比較して、有意なp-S6kレべルの低下を示した(図8D)。また、化合物1で処理したマウスから採取した腫瘍にはEndoGの核局在化が観察されたが、対照マウスから採取した腫瘍では細胞質染色のみが観察された(図8E)。
実施例5-化合物10の誘導によるカスパーゼ非依存性アポトーシス
化合物10が膵臓癌細胞のアポトーシスを誘導することができるか否かを調べるために、48時間の曝露による用量漸増研究を行い、Annexin-V-FITC/PI染色細胞に対してFACS分析を行った。分析した全ての細胞型(HPAC、MIAPaCa-2及びPANC-1)において、化合物10は用量依存的にアポトーシスを誘導した(図9)。壊死はほとんど観察されなかった。
HPAC細胞は、TRAILに耐性を有し、FasL-依存性アポトーシスに感受性を有する。MIAPaCa-2細胞は、TRAIL-依存性アポトーシスに感受性を有し、FasL-依存性アポトーシスに耐性を有する。これらはカスパーゼ依存性アポトーシス経路である。そのため、これらの細胞型における陽性対照としてFas-活性化抗体CH11(Upstate)及びTRAILを使用した。HPAC細胞では、10μM カスパーゼ阻害剤I(zVAD-fmk)で細胞を1時間前処理すると、Fas依存性壊死は阻害された。また、化合物10依存性壊死は阻害されたが、化合物10誘導アポトーシスは阻害されなかった(図9A)。MIAPaCa-2細胞では、zVAD-fmkで細胞を前処理すると、TRAIL依存性アポトーシスは阻害された。また、化合物10依存性壊死は阻害されたが、おそらくは壊死に達することが妨げられた結果として、化合物10誘導アポトーシスは明らかに増加した(図9B)。これらの結果は、化合物10によって誘導されたアポトーシス効果の多くが膵臓癌細胞内のカスパーゼ非依存性経路を使用し、化合物10誘導壊死経路はカスパーゼ依存性であることを示している。
未処理及び化合物10で処理した膵臓癌細胞におけるカスパーゼ活性化、アポトーシス及び壊死をフローサイトメトリーによって同時に測定した。48時間後、化合物10はMIAPaCa-2及びPANC-1細胞のカスパーゼ2、3及び9を活性化させた(図10)。また、カスパーゼ陽性細胞はAnnexin-V-Cy5陽性であり、化合物10誘導カスパーゼ活性化はアポトーシスが進行中の細胞におけるものであることが示された。化合物10で処理したカスパーゼ陽性細胞の約60%がAnnexin-V陽性かつsytoxブルー陰性であり、それらの細胞はアポトーシスの初期にあることが示された。カスパーゼ陽性細胞の約30%がAnnexin-V-Cy5及びsytoxブルーに結合し、それらの細胞はアポトーシスの後期に入っていることが示された。化合物10誘導カスパーゼ陽性細胞の5%未満がsytoxブルー陽性かつAnnexin-V陰性であり、カスパーゼは化合物10依存性壊死にほとんど寄与しないことが示された。処理HPAC細胞において適度に誘導されたカスパーゼ3を除き、カスパーゼ2及びカスパーゼ9は採用した条件下において上記細胞株に誘導されなかった(図10)。より高い濃度(30μM)では、HPAC細胞において化合物10はカスパーゼ9を活性化させたが、カスパーゼ2は活性化させなかった(データは示さず)。これらのデータは、アポトーシスのカスパーゼ非依存性機序が化合物10で処理したHPAC細胞において活性化されることを示唆している。
ウェスタンブロット解析によれば、完全長カスパーゼ2(48Kd)は10μMの化合物10への曝露によってMIAPaCa-2細胞内で切断した(図11A)。一方、HPAC細胞では、化合物10によるカスパーゼ2の切断は少なかった(図11A)。経時的実験において、化合物10は切断カスパーゼ9(17kd)の初期低下を誘導し、両方の細胞型において16時間後に増加が生じた(図11B)。化合物10による処理によって、MIAPaCa-2及びHPAC細胞におけるカスパーゼ3の有意な切断は生じなかった。より長い曝露では、HPAC細胞におけるカスパーゼ3のわずかな切断が観察されたが、MIAPaCa-2細胞では観察されなかった(データは示さず)。これらの結果は、化合物10がカスパーゼ活性化及び合成に影響を与えることを示唆している。
実施例6-試験管内ミトコンドリア電位及び細胞周期進行に対する化合物10の効果
試験を行った全ての細胞株(実施例5を参照)において、化合物10は、48時間の処理後に用量依存的にミトコンドリアを脱分極させ、アポトーシスの内因性経路が活性化されたことを示している(図12)。
全ての細胞株において、化合物10はG2/M期において様々な度合いで細胞周期を停止させ、G0/G1の喪失及びsub-G0/G1期の増加が見られた(図13)。化合物10がG2/M停止を誘導したタイミングは各細胞株で異なっていた。PANC-1は、G2/Mにおいて化合物10による処理後4〜24時間で停止し、少なくとも48時間停止したままだった。MIAPaCa-2細胞は、G2/Mにおいて化合物10による処理後24〜48時間で停止した。停止に伴い、G0/G1細胞数の対応する減少が生じた。化合物10に対応してHPAC細胞において観察されたG2/M停止はより明白ではなく、G0/G1における停止を伴った。しかしながら、誘導された停止は一過性であるように思われた(図13)。
OEC細胞に関する過去の研究は、カスパーゼ3阻害剤XIAPはフェノキソジオール(phenoxodiol, イソフラボノイド)によって有意に減少し、フェノキソジオールがBIRCファミリーメンバーの自己分解を誘導することを示している(Alvero et al.、2006)。HPAC及びMIAPaCa-2細胞において化合物10はXIAPレべルを低下させたが(図11A)、XIAPレべルの低下はMIAPaCa-2細胞においてより顕著だった。XIAPの減少は、カスパーゼ3活性化に関するブロックを除去する可能性が高い(Deveraux et al.,1997)。重要なことに、総Akt(total Akt)も初期の時点(4時間)で減少し、XIAP分解に伴う総Akt除去は化合物10の作用機序における最も初期の事象の2つであることを示唆している。また、Akt発現の減少もXIAPの発現に影響を与える(Alvero et al.、2006及びAlvero et al.、2008)。
実施例7-Bcl2ファミリーメンバーの化学量論に対する化合物10の効果
実施例6に記載したように、化合物10はミトコンドリア脱分極を誘導した。そのため、本願発明者らは、化合物10の作用が、アポトーシス促進(Bid、Bak、Bax)及び抗アポトーシス(Bcl2、Bcl-xL)ファミリーメンバーの化学量論の変化に関与するか否かについて調べた。化合物10による処理によって、MIAPaCa-2及びHPAC細胞におけるBcl2レべルは低下した(図11A)。化合物10による処理によって、MIAPaCa-2細胞における経時的なBid切断が誘導され(図11A)、HPAC細胞においては化合物10によるBid切断の一時的な増加があるように思われた(図11A)。
細胞周期はサイクリン依存性キナーゼによって制御され、サイクリン依存性キナーゼは、通常はp53-依存性経路においてp21によって調節される。ほとんどの膵臓癌では変異型p53が見られ、変異型p53はp53-依存性転写を停止させる。HPAC細胞は通常と異なり野生型p53を有し、MIAPaCa-2及びPANC-1はp53にR248W及びR273H変異を有する。これらの突然変異はp53のループ3にあり、p53のDNA結合能に影響を与える。p53タンパク質の基底レベルはMIAPaCa-2細胞においてHPAC細胞よりも94倍高い(データは示さず)。MIAPaCa-2細胞におけるp53の発現は化合物10の影響を受けなかったが(図11B)、HPAC細胞においては48時間で増加した(図11B)。p21の発現はMIAPaCa-2細胞において非常に低く、化合物10によって増加した(図11B)。p21はHPAC細胞において多く、化合物10によって実質的に変化しなかった(図11B)。
実施例8-化合物10単独及び化合物10とゲムシタビン(gemcitabine)の組み合わせの抗腫瘍活性
異種移植研究を行うために、5週齢のBalb/cヌードマウス(雄)にイソフラボンを含まない飼料を与え、標準飼料によるバックグラウンドイソフラボンレべルを除去した。接種日に、DMEM(-FBS)を使用してMIAPaCa2又はHPAC細胞の懸濁液を調製し、氷上で冷やした後、等量のマトリゲル(BD)を添加した。マウスの背側面に沿って3×106のMIAPaCa2又はHPAC細胞を左右対称(腋窩と鼠径部の中間)に皮下接種し、注入した細胞がmid-end対数期で成長するようにした。腫瘍増殖を10〜15日間観察した。溶媒として1%カルボキシメチルセルロース(CMC)を使用し、強制飼養によって化合物10は経口投与した。PBSを使用してゲムシタビンを腹腔内注射した。組み合わせ群では、上記のそれぞれの投与スケジュール、用量及び経路を使用して、最初に化合物10を投与し、次にゲムシタビンを投与した。
膵臓癌のHPACモデルでは、50mg/kgの化合物10及び4 mg/kgのゲムシタビンを投与したマウスでは、化合物10又はゲムシタビンのみを投与した対照群と比較して、腫瘍増殖率及び末期腫瘍量(%T/C=38)が有意に低下した(データは示さず)。また、対照群(25 mg/kgの化合物10又は2mg/kgのゲムシタビン)の半分の用量の化合物10及びゲムシタビンを投与したマウスも、単剤治療の対照群と比較して、腫瘍増殖動態及び末期腫瘍量(%T/C=47.8)が有意に低下した。化合物10及びゲムシタビンの組み合わせの有効性は、化合物10及びゲムシタビンを投与したマウスでは、対応する単剤治療の対照群と比較して腫瘍が用量依存的に有意に低い速度で増殖したことからも証明された(データは示さず)。また、これらのデータは、組み合わせて投与した場合に、化合物10とゲムシタビンは相乗的に作用して、HPAC膵臓癌腫瘍モデルの総腫瘍量を低下させることを示している。
膵臓癌のMIAPaCa-2モデルでは、溶媒対照と比較して、経口投与した化合物10(100 mg/kg、qd×12)は、ゲムシタビン(20 mg/kg、q3d×4)と同様なレベルで腫瘍増殖速度を低下させた。100mg/kgの化合物10及び20mg/kgのゲムシタビンを投与したマウスでは、溶媒及び化合物10又はゲムシタビンのみを投与した対照群と比較して、腫瘍増殖及び末期腫瘍量(%T/C=51)が有意に低下した。組み合わせの場合の平均末期腫瘍量は対照群よりも顕著に低かった(100 mg/kgの化合物10、T/C=94%;20mg/kgのゲムシタビン、T/C=79%)。これらのデータは、組み合わせて投与した場合に、化合物10とゲムシタビンは相乗的に作用して、MIAPaCa-2膵臓癌異種移植の総腫瘍量を低下させることを示唆している。
化合物10及びゲムシタビンを高用量及び低用量で投与したマウスでは、腎及び肝機能マーカー及び白血球及び赤血球数は対照群と同等だった(データは示さず)。重要臓器の組織病理学分析によれば、薬物毒性によるものとみられる異常は観察されなかった(図示せず)。これらのデータは、化合物10は測定パラメータに関してゲムシタビン急性毒性を悪化させず、上述した用量でゲムシタビンと組み合わせて安全に使用することができることを示している。
参考文献
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Alvero AB, et al. Cancer 2006, 106: 599-608.
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Deveraux QL, et al. Nature 1997, 388: 300-304.
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Seglen PO and Bohley P. Experientia 1992, 48: 158-172.

Claims (26)

  1. 細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進するための方法であって、前記細胞を、有効量の以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール
    又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体に曝露することを含む方法。
  2. 前記細胞の前記化合物への曝露を生体外又は試験管内で行う、請求項1に記載の方法。
  3. 前記細胞の前記化合物への曝露を生体内で行う、請求項1に記載の方法。
  4. 前記細胞が癌細胞ではない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記細胞が心筋細胞及び免疫細胞から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 細胞におけるmTOR活性を阻害するための方法であって、前記細胞を、有効量の以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール
    又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体に曝露することを含む方法。
  7. 前記細胞の前記化合物への曝露を生体外又は試験管内で行う、請求項6に記載の方法。
  8. 前記細胞の前記化合物への曝露を生体内で行う、請求項6に記載の方法。
  9. 前記mTOR活性の阻害が、mTORの脱リン酸化を含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 疾患又は症状を治療又は予防するための方法であって、有効量の以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール
    又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体を、必要に応じて1以上の製薬学的に許容し得る希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤と共に、投与を必要とする患者に投与することを含み、前記化合物は、前記患者の少なくとも1つの細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進する方法。
  11. 疾患又は症状を治療又は予防するための方法であって、有効量の以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール
    又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体を、必要に応じて、1以上の製薬学的に許容し得る希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤と共に、投与を必要とする患者に投与することを含み、前記化合物は、前記患者の少なくとも1つの細胞におけるmTOR活性を阻害する方法。
  12. 前記細胞が癌細胞ではない、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 前記細胞が増殖性T細胞である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記疾患又は症状が、異常又は不要な細胞成長又は増殖に関連するものである、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記疾患又は症状が、狭窄症、再狭窄、移植拒絶反応、関節リウマチ、T細胞白血病、自己免疫疾患、及び移植又は移植片拒絶反応から選択される、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 狭窄症又は再狭窄を治療するために、前記化合物又は前記化合物を含む組成物を、冠状動脈に挿入するステントにコーティング又は導入する、請求項15に記載の方法。
  17. 前記ステントが、所望の結果が得られるように前記化合物又は組成物が時間の経過と共に前記ステントから溶出するようになっている、請求項16に記載の方法。
  18. 前記自己免疫疾患が、肝硬変、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、アジソン病、伝染性単核球症、セザリー症候群、エプスタイン・バーウイルス感染症から選択される、請求項17に記載の方法。
  19. 異常又は不要な細胞成長及び/又は増殖に関連する疾患又は症状を治療又は予防するための薬剤であって、以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール
    又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体を含む薬剤。
  20. 患者の細胞又は組織に少なくとも1種の活性薬剤を送達するための埋め込み型医療機器であって、前記少なくとも1種の活性薬剤は、以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール
    又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体を含む医療機器。
  21. 前記化合物が、前記細胞又は組織に前記化合物を投与するために前記機器にコーティング又は導入されている、請求項20に記載の機器。
  22. 薬剤溶出ステントである、請求項20又は21に記載の医療機器。
  23. 以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール
    又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体の、細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進及び/又はmTOR活性を阻害するための使用。
  24. 以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール
    又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体の、疾患又は症状を治療又は予防するための医薬の製造のための使用であって、前記化合物は、患者の少なくとも1つの細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進及び/又はmTOR活性を阻害する使用。
  25. 細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進及び/又はmTOR活性を阻害するために使用される組成物であって、以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール
    又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体を、必要に応じて担体及び/又は賦形剤と共に含む組成物。
  26. 患者の疾患又は症状を治療又は予防するために使用される組成物であって、以下の構造を有する3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)クロマン-7-オール
    又はその製薬学的に許容し得る塩又は誘導体を、必要に応じて担体及び/又は賦形剤と共に含み、前記化合物が、患者の少なくとも1つの細胞におけるカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導又は促進及び/又はmTOR活性を阻害する組成物。
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