本発明について、種々の変更および代案の形態が可能であるが、本発明の特定のいくつかの実施形態が、あくまでも例として図面に示され、本明細書において詳しく説明される。図面は、必ずしも比例尺ではない。図面および詳細な説明が、本発明を開示される特定の形態に限定しようとするものではなく、むしろ反対に、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の技術的思想および技術的範囲に包含されるすべての変更、同等物、および代案を含むものであることを、理解すべきである。
以下の説明は、大まかには、地層内の炭化水素を処理するためのシステムおよび方法に関する。そのような地層を、炭化水素生成物、水素、および他の生成物をもたらすために処理することができる。
「交流(AC)」は、実質的に正弦曲線の方式で方向を逆転させる時間変化する電流を指す。ACは、強磁性の導体において電流の表皮効果を生じさせる。
「接続」は、1つ以上の物体または構成部品の間の直接的な接続または間接的な接続(例えば、1つ以上の介在する接続)を意味する。「直接的に接続され」という表現は、物体または構成部品が「ポイントオブユース」の方式で働くように互いに直接的に接続されるような物体または構成部品の間の直接的な接続を意味する。
「地層」は、1つ以上の炭化水素含有層、1つ以上の非炭化水素層、上層土(overburden)、および/または下層土(underburden)を含む。「炭化水素層」は、地層内の炭化水素を含んでいる層を指す。炭化水素層は、非炭化水素物質および炭化水素物質を含むことができる。「上層土」および/または「下層土」は、1つ以上の異なる種類の不浸透性物質を含む。例えば、上層土および/または下層土は、岩盤、シェール、泥岩、または湿った/締まった炭酸塩を含むことができる。現場(in situ)熱処理プロセスのいくつかの実施形態においては、上層土および/または下層土が、比較的不浸透性である1つ以上の炭化水素含有層であって、上層土および/または下層土の炭化水素含有層の大きな特性変化につながる現場熱処理プロセスの際の温度に曝されることがない1つ以上の炭化水素含有層を含むことができる。例えば、下層土が、シェールまたは泥岩を含むことができるが、現場熱処理プロセスの際に熱分解温度にまで加熱されることはない。場合によっては、上層土および/または下層土が、或る程度は浸透性であってもよい。
「地層流体」は、地層内に存在する流体を指し、熱分解流体、合成ガス、易動化炭化水素、および水(蒸気)を含むことができる。地層流体は、炭化水素流体および非炭化水素流体を含むことができる。用語「易動化流体」は、炭化水素を含有する地層において、地層の熱処理の結果として流動可能となった流体を指す。「産出流体」は、地層から取り出された流体を指す。
「熱源」は、実質的に伝導および/または放射による熱伝達によって地層の少なくとも一部へと熱を供給するための任意のシステムである。例えば、熱源は、導電性の材料を含むことができ、さらには/あるいは絶縁された導体、細長い部材、および/または導管内に配置された導体などの電気ヒータを備えることができる。熱源が、地層の外部または内部で燃料を燃焼させることによって熱を発生させるシステムを備えてもよい。システムは、表面バーナ、ダウンホールガスバーナ、無炎分散燃焼器、および自然分散燃焼器であってもよい。いくつかの実施形態においては、1つ以上の熱源へと供給され、あるいは1つ以上の熱源において生成される熱を、他のエネルギ源によってもたらすことができる。他のエネルギ源が、地層を直接加熱することができ、あるいはエネルギを、地層を直接的または間接的に加熱する伝達媒体に加えることができる。地層へと熱を加える1つ以上の熱源が、異なるエネルギ源を使用してもよいことを、理解すべきである。すなわち、例えば所与の地層について、いくつかの熱源が、導電性材料または電気抵抗ヒータからの熱を供給することができ、いくつかの熱源が、燃焼からの熱をもたらすことができ、いくつかの熱源が、1つ以上の他のエネルギ源(例えば、化学反応、太陽エネルギ、風力エネルギ、バイオマス、または他の再生可能なエネルギ源)からの熱を供給することができる。化学反応は、発熱反応(例えば、酸化反応)を含むことができる。また、熱源は、ヒータ抗井などの加熱位置の付近および/または周囲の領域へと熱をもたらす導電性材料および/またはヒータを備えてもよい。
「ヒータ」は、坑井または坑井穴の領域の付近で熱を生じさせるための任意のシステムまたは熱源である。ヒータは、これらに限られるわけではないが電気ヒータ、バーナ、地層内の物質または地層から生成される物質と反応する燃焼器、ならびに/あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
「炭化水素」は、一般に、主として炭素原子および水素原子によって形成される分子と定義される。炭化水素は、これらに限られるわけではないがハロゲン、金属元素、チッ素、酸素、および/または硫黄など、他の元素を含んでもよい。炭化水素は、これらに限られるわけではないがケロゲン、ビチューメン、ピロビチューメン、油、天然鉱ろう、およびアスファルタイトであってもよい。炭化水素は、地球の鉱物基質内に位置でき、あるいは地球の鉱物基質に隣接して位置することができる。基質として、これらに限られるわけではないが堆積岩、砂、シリシライト、炭酸塩、珪藻岩、および他の多孔質媒体を挙げることができる。「炭化水素流体」は、炭化水素を含む流体である。炭化水素流体は、水素、チッ素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水、およびアンモニアなどの非炭化水素流体を含むことができ、取り込むことができ、あるいはそのような非炭化水素流体に取り込まれていてもよい。
「現場変換プロセス」は、熱源から炭化水素を含有している地層を加熱し、地層内で熱分解流体が生成されるように熱分解温度よりも高い温度へと地層の少なくとも一部分の温度を上昇させるプロセスを指す。
「現場熱処理プロセス」は、易動化流体、粘性低下流体、および/または熱分解流体が地層内に生成されるように、熱源で炭化水素を含有している地層を加熱し、易動化流体、粘性低下、および/または炭化水素含有物質の熱分解をもたらす温度よりも高い温度まで地層の少なくとも一部分の温度を上昇させるプロセスを指す。
「絶縁導体」は、電気を通すことができ、電気絶縁材料によって全体または一部が覆われている任意の細長い材料を指す。
「チッ化物」は、チッ素と周期表の1つ以上の他の元素との化合物を指す。チッ化物として、これらに限られるわけではないがチッ化ケイ素、チッ化ホウ素、またはチッ化アルミナが挙げられる。
「穿孔」は、導管、管、パイプ、または他の流路の壁に位置し、導管、管、パイプ、または他の流路への流入あるいは導管、管、パイプ、または他の流路からの流出を可能にする開口、スリット、孔、または穴を含む。
「熱分解」は、熱の印加に起因する化学結合の破壊である。例えば、熱分解として、熱のみによって化合物を1つまたは複数の他の物質に変換することが挙げられる。熱を、熱分解を生じさせるために地層の一部分へと伝えることができる。
「熱分解流体」または「熱分解生成物」は、実質的に炭化水素の熱分解の際に生成される流体を指す。熱分解反応によって生成される流体が、地層内で他の流体と混ざってもよい。混合物は、熱分解流体または熱分解生成物と考えられる。本明細書において使用されるとき、「熱分解ゾーン」は、反応させられ、あるいは反応することによって熱分解流体を形成する地層(例えば、タールサンド地層などの比較的浸透性の地層)の一部分を指す。
層の「厚さ」は、層の断面の厚さを指し、断面は、層の面に対して垂直である。
用語「坑井穴」は、掘削または地層への導管の挿入によって形成された地層の穴を指す。坑井穴は、実質的に円形の断面または他の断面形状を有することができる。本明細書において使用されるとき、用語「坑井」および「開口」は、地層の開口を指すとき、用語「坑井穴」と入れ換え可能に使用することができる。
地層を、多数のさまざまな生成物を生み出すためにさまざまなやり方で処理することができる。現場熱処理プロセスの際に地層を処理するために、さまざまな段階またはプロセスを使用することができる。いくつかの実施形態においては、地層の1つ以上の部位が、当該部位から可溶性の鉱物を取り出すために溶解採鉱される。鉱物の溶解採鉱を、現場熱処理プロセスの前、最中、および/または後に実行することができる。いくつかの実施形態においては、溶解採鉱される1つ以上の部位の平均温度を、約120℃よりも低く維持することができる。
いくつかの実施形態においては、地層の1つ以上の部位が、当該部位から水を除去し、さらには/あるいは当該部位からメタンおよび他の揮発性の炭化水素を取り出すために加熱される。いくつかの実施形態においては、水および揮発性の炭化水素を取り出す際に、平均温度を周囲の温度から約220℃よりも低い温度まで上昇させることができる。
いくつかの実施形態においては、地層の1つ以上の部位が、地層内の炭化水素の移動および/または粘性低下を可能にする温度へと加熱される。いくつかの実施形態においては、地層の1つ以上の部位の平均温度が、当該部位の炭化水素の易動化温度(例えば、100℃〜250℃の範囲、120℃〜240℃の範囲、または150℃〜230℃の範囲の温度)まで上昇させられる。
いくつかの実施形態においては、1つ以上の部位が、地層内での熱分解反応を可能にする温度へと加熱される。いくつかの実施形態においては、地層の1つ以上の部位の平均温度を、当該部位の炭化水素の熱分解温度(例えば、230℃〜900℃の範囲、240℃〜400℃の範囲、または250℃〜350℃の範囲の温度)へと上昇させることができる。
炭化水素を含有している地層を複数の熱源で加熱することで、地層内の炭化水素の温度を所望の加熱速度で所望の温度へと上昇させる熱源の周囲の温度勾配を確立させることが可能である。所望の生成物について、易動化温度の範囲および/または熱分解温度の範囲を通過する温度上昇の速度によって、炭化水素を含有している地層から生成される地層流体の質および量を操作することが可能である。易動化温度の範囲および/または熱分解温度の範囲を通って地層の温度をゆっくりと上昇させることで、地層からの高品質、高API重力の炭化水素の産出を可能にすることができる。易動化温度の範囲および/または熱分解温度の範囲を通って地層の温度をゆっくりと上昇させることで、炭化水素生成物として地層内に存在する大量の炭化水素の取り出しを可能にすることができる。
いくつかの現場熱処理の実施形態においては、地層の一部が、温度を温度範囲を通ってゆっくりと加熱する代わりに、所望の温度へと加熱される。いくつかの実施形態においては、所望の温度が300℃、325℃、または350℃である。所望の温度として他の温度を選択してもよい。
熱源からの熱の重ね合わせが、地層において所望の温度を比較的迅速かつ効率的に確立させることを可能にする。熱源からの地層へのエネルギの入力を、地層の温度を実質的に所望の温度に維持するように調節することが可能である。
易動化および/または熱分解の生成物を、生産坑井によって地層から産出することができる。いくつかの実施形態においては、1つ以上の部位の平均温度が易動化温度へと上昇させられ、炭化水素が生産坑井から産出される。1つ以上の部位の平均温度を、易動化による生産が所定の値を下回って低下した後に、熱分解温度へと上昇させることができる。いくつかの実施形態においては、1つ以上の部位の平均温度を、熱分解温度に達する前の生産がほとんどなくても、熱分解温度へと上昇させることができる。熱分解生成物を含む地層流体を、生産坑井を介して生成してもよい。
いくつかの実施形態においては、1つ以上の部位の平均温度を、易動化および/または熱分解後に、合成ガスの生成を可能にするために充分な温度へと上昇させることができる。いくつかの実施形態においては、炭化水素を、合成ガスの生成を可能とするために充分な温度へと、合成ガスの生成を可能にするために充分な温度に達する前の生成がほとんどないままに上昇させることができる。例えば、合成ガスを、約400℃〜約1200℃、約500℃〜約1100℃、または約550℃〜約1000℃の温度範囲で生成することができる。合成ガス発生流体(例えば、蒸気および/または水)を、合成ガスを生成するための部位へと導入することができる。合成ガスを、生産坑井から産出することができる。
溶解採鉱、揮発性炭化水素および水の取り出し、炭化水素の易動化、炭化水素の熱分解、合成ガスの生成、ならびに/あるいは他のプロセスを、現場熱処理プロセスにおいて実行することができる。いくつかの実施形態においては、いくつかのプロセスを、現場熱処理プロセスの後に行うことができる。そのようなプロセスとして、これらに限られるわけではないが、処理後の部位から熱を回収すること、予め処理された部位に流体(例えば、水および/または炭化水素)を保存すること、および/または予め処理された部分に二酸化炭素を隔離することを挙げることができる。
図1が、炭化水素を含有している地層を処理するための現場熱処理システムの一部分の実施形態の概略図を示している。現場熱処理システムは、障壁坑井200を含むことができる。障壁坑井200は、処理領域の周囲に障壁を形成するために使用される。障壁は、処理領域への流体の流入および/または処理領域からの流体の流出を抑制する。障壁坑井として、これらに限られるわけではないが、脱水坑井、真空坑井、捕獲坑井、注入坑井、グラウト坑井、凍結坑井、またはこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態においては、障壁坑井200が、脱水坑井である。脱水坑井は、液体の水を取り除くことができ、さらには/あるいは液体の水が地層の加熱対象の部位または加熱中の地層に進入することを抑制することができる。図1に示した実施形態においては、障壁坑井200が、熱源202の一方の側に沿ってのみ延在して示されているが、障壁坑井は、典型的には、地層の処理領域を加熱するために使用され、あるいは使用されるべきすべての熱源202を取り囲む。
熱源202は、地層の少なくとも一部分に配置される。熱源202は、絶縁導体、導管内導体ヒータ、地表バーナ、無炎分散燃焼器、および/または自然分散燃焼器などのヒータを備えることができる。熱源202が、他の種類のヒータを備えてもよい。熱源202は、地層の少なくとも一部分に熱をもたらして、地層内で炭化水素を加熱する。供給ライン204を介して熱源202にエネルギを供給することができる。供給ライン204は、地層を加熱するために使用される1つ以上の熱源の種類に応じて構造的に異なっていてもよい。熱源用の供給ライン204は、電気ヒータのための電気を送ることができ、燃焼器のための燃料を運ぶことができ、あるいは地層を循環する熱交換流体を運ぶことができる。いくつかの実施形態においては、現場熱処理プロセスのための電気が、1つ以上の原子力発電所によってもたらされてもよい。原子力の使用は、現場熱処理プロセスからの二酸化炭素の排出を削減し、あるいは皆無にすることができる。
地層が加熱される場合、地層への熱の入力が、地層の膨張および地質工学的運動を引き起こすことが可能である。熱源を、脱水プロセスの前、脱水プロセスと同時、または脱水プロセスの最中に作動させることができる。コンピューターシミュレーションにより、加熱に対する地層の反応をモデル化することが可能である。コンピューターシミュレーションを、地層の地質工学的運動が熱源、生産坑井、および地層内の他の設備の機能に悪影響を及ぼすことがないように、地層内の熱源を動作させるためのパターンおよび時間系列を開発するために使用することができる。
地層を加熱することで、地層の浸透性および/または気孔率の増大を生じさせることができる。浸透性および/または気孔率の増大を、水の蒸発および除去、炭化水素の除去、および/または破砕の生成に起因する地層のマスの減少からもたらすことができる。流体は、地層の浸透性および/または気孔率の増大ゆえに、地層の加熱された部位をより容易に流れることが可能である。地層の加熱された部位の流体は、浸透性および/または気孔率の増大ゆえに、地層を通って相当な距離を移動することが可能である。相当な距離は、地層の浸透性、流体の特性、地層の温度、および流体の移動を可能とする圧力勾配などのさまざまな要因に応じて、1000mを超えることが可能である。流体が地層内で相当な距離を移動する能力は、生産坑井206を地層において比較的間隔を空けて配置することを可能にする。
生産坑井206は、地層から地層流体を取り出すために使用される。いくつかの実施形態においては、生産坑井106が熱源を備える。生産坑井の熱源は、生産坑井または生産坑井の付近において地層の1つ以上の部位を加熱することができる。いくつかの現場熱処理プロセスの実施形態においては、生産坑井から地層へと供給される生産坑井1メートル当たりの熱量は、地層を加熱する熱源から地層へと加えられる熱源1メートル当たりの熱量よりも小さい。生産坑井から地層に加えられた熱は、生産坑井に隣接する液相流体を蒸発および除去し、さらには/あるいはマクロ破砕および/またはミクロ破砕の形成によって生産坑井に隣接する地層の浸透性を増大させることによって、生産坑井に隣接する地層の浸透性を増大させることが可能である。
2つ以上の熱源を、生産坑井に配置してもよい。隣接した熱源からの熱の重ね合わせが、生産坑井で地層を加熱することによってもたらされる利点を無効にするほどに充分に地層を加熱する場合、生産坑井の下方の部位の熱源をオフにすることができる。いくつかの実施形態においては、生産坑井の下方の部位の熱源を停止させた後に、生産坑井の上方の部位の熱源はオンのままでよい。生産坑井の上方の部位の熱源が、地層流体の凝縮および還流を抑制することが可能である。
いくつかの実施形態においては、生産坑井206の熱源は、地層からの地層流体の気相除去を可能にする。生産坑井において加熱をもたらし、あるいは生産坑井を介して加熱をもたらすことで、以下が可能になる。すなわち、(1)そのような生成流体が上層土に隣接した生産坑井内を移動するときに、生成流体の凝縮および/または還流を抑制でき、(2)地層への熱の入力を増すことができ、(3)熱源を持たない生産坑井と比較し、生産坑井からの生成速度を増すことができ、(4)生産坑井での高炭素数化合物(C6以上の炭化水素)の凝縮を抑制でき、さらには/あるいは(5)生産坑井または生産坑井の付近における地層の浸透性を増大させることができる。
地層内の地下の圧力は、地層内で生成される流体の圧力に相当することができる。地層の加熱対象の部位の温度が上昇するにつれ、加熱対象の部位の圧力が、現場の流体の熱膨張、流体の発生の増大、および水の蒸発の結果として、増大する可能性がある。地層からの流体除去の速度を制御することで、地層内の圧力を制御することができる。地層内の圧力を、生産坑井の付近または生産坑井、熱源の付近または熱源、あるいは監視坑井など、いくつかの異なる位置において割り出すことができる。
炭化水素を含有しているいくつかの地層においては、地層内の少なくともいくつかの炭化水素が易動化され、さらには/あるいは熱分解されるまで、地層からの炭化水素の生産が抑制される。地層流体が選択された品質を有する場合、地層流体を地層から産出することが可能である。いくつかの実施形態においては、選択された品質として、少なくとも約20°、30°、または40°のAPI重力が挙げられる。少なくともいくつかの炭化水素が易動化され、さらには/あるいは熱分解されるまで生産を抑制することは、重炭化水素の軽質炭化水素への変換を増大させることが可能である。初期の生産の抑制は、地層からの重炭化水素の産出を最小限にすることが可能である。相当量の重炭化水素の産出は、高価な設備を必要とし、さらには/あるいは生産設備の寿命を短くする可能性がある。
炭化水素を含有しているいくつかの地層においては、地層内の炭化水素を、実質的な浸透性が地層の加熱された部位において生じる前に、易動化温度および/または熱分解温度に加熱することが可能である。初期には浸透性がないことで、生成された流体の生産坑井206への移動を抑制することができる。初期の加熱の際に、地層内の流体の圧力を、熱源202の付近において増大させることが可能である。増大した流体の圧力を、1つ以上の熱源202によって解放、監視、変更、および/または制御することができる。例えば、選択された熱源202または別途の圧力逃し坑井が、地層からの一部の流体の除去を可能にする圧力逃しバルブを備えることができる。
いくつかの実施形態においては、生産坑井206への開いた経路または任意の他の圧力シンクが地層内に未だ存在しなくてもよいが、地層内で発生した易動化流体、熱分解流体、または他の流体の膨張によって生じる圧力が、増加することが可能であってもよい。流体の圧力は、地盤圧力に向かって増加することが可能であってもよい。流体が地盤圧力に達すると、炭化水素を含有している地層の破砕が生じることがある。例えば、破砕は、地層の加熱された部位において、熱源202から生産坑井206へと生じる可能性がある。加熱された部位における破砕の発生は、当該部位の圧力の一部を逃がすことができる。地層内の圧力は、望ましくない産出を抑制し、上層土または下層土の破砕を抑制し、さらには/あるいは地層内の炭化水素のコーキングを抑制するため、所定の圧力未満に維持されなければならないかもしれない。
易動化温度および/または熱分解温度に達し、地層からの産出が可能とされた後で、生成される地層流体の組成を変更および/または制御し、地層流体内の非凝縮性流体と比べたときの凝縮性流体の割合を制御し、さらには/あるいは生成される地層流体のAPI重力を制御するために、地層内の圧力を変化させることが可能である。例えば、圧力を低下させることによって、凝縮性の流体成分をより多く生成することができる。凝縮性の流体成分は、オレフィンをより大きな割合で含むことができる。
現場熱処理プロセスのいくつかの実施形態においては、地層内の圧力を、20°よりも大きいAPI重力を有する地層流体の生成を促進するために充分に高く維持することができる。地層内の圧力を高く維持することで、現場熱処理の際の地層の沈下を抑制することができる。高い圧力を維持することで、地層流体を回収導管にて処理施設へと運ぶために地表において圧縮する必要を低減でき、あるいは皆無にすることができる。
地層の加熱された部位の高い圧力を維持することで、驚くべきことに、向上した品質および比較的低い分子量の炭化水素を大量に生成することができる。生成された地層流体において所定の炭素数を超える化合物の量が最小限となるように、圧力を維持することが可能である。所定の炭素数は、最大で25、最大で20、最大で12、または最大で8であってもよい。一部の高炭素数の化合物が、地層内の蒸気に取り込まれる可能性があり、蒸気とともに地層から取り出される可能性がある。地層内で高い圧力を維持することで、高炭素数の化合物および/または多環の炭化水素化合物の蒸気への取り込みを抑制することができる。高炭素数の化合物および/または多環の炭化水素化合物を、かなりの時間にわたって地層内で液相のままにしておくことができる。このかなりの時間が、化合物が熱分解して低炭素数の化合物を形成するための充分な時間を提供することができる。
比較的低分子量の炭化水素の生成は、一部には、炭化水素を含有している地層の一部分における水素の自己生成および反応に起因すると考えられる。例えば、高い圧力を維持することで、熱分解において生成される水素を地層内の液相へと強制することができる。一部分を熱分解温度範囲内の温度へと加熱することで、地層内の炭化水素を熱分解して、液相熱分解流体を生成することが可能である。生成された液相熱分解流体成分は、二重結合および/またはラジカルを含むことができる。液相内の水素(H2)が、生成された熱分解流体の二重結合を還元することで、生成された熱分解流体からの長鎖化合物の重合または形成の可能性を低減することが可能である。さらに、H2は、生成された熱分解流体内のラジカルを中和することも可能である。液相内のH2は、生成された熱分解流体が互いに反応および/または地層内の他の化合物と反応することを、抑制することが可能である。
生産坑井206から産出された地層流体を、収集管208を介して処理施設210へと運ぶことが可能である。地層流体を、熱源202から産出することも可能である。例えば、流体を、熱源に隣接する地層内の圧力を制御するために熱源202から産出することが可能である。熱源202から産出された流体を、管または配管によって収集管208へと運ぶことができ、あるいは産出された流体を、管または配管によって処理施設210へと直接運ぶことができる。処理施設210は、分離ユニット、反応ユニット、品質向上ユニット、燃料電池、タービン、貯蔵容器、ならびに/あるいは産出された地層流体を処理するための他のシステムおよびユニットを備えることができる。処理施設は、地層から産出された炭化水素の少なくとも一部から輸送燃料を形成することが可能である。いくつかの実施形態においては、輸送燃料が、JP−8などのジェット燃料であってもよい。
絶縁導体を、ヒータの電気ヒータ素子または熱源として使用することができる。絶縁導体は、電気絶縁体によって囲まれた内側の導電体(コア)と、外側の導電体(ジャケット)とを備えることができる。電気絶縁体は、無機絶縁体(例えば、酸化マグネシウム)または他の電気絶縁体を含むことができる。
特定の実施形態においては、絶縁導体が、炭化水素を含有している地層の開口に配置される。いくつかの実施形態においては、絶縁導体が、炭化水素を含有している地層のケーシングを持たない開口に配置される。絶縁導体を炭化水素を含有している地層のケーシングを持たない開口に配置することで、絶縁導体から放射および伝導によって地層へと熱を伝えることができる。ケーシングを持たない開口を使用することで、必要であれば坑井からの絶縁導体の回収を容易にすることができる。
いくつかの実施形態においては、絶縁導体が、地層内のケーシングに配置され、地層内にセメントで固定され、あるいは砂、砂利、または他の充てん材料によって開口に埋めることができる。絶縁導体を、開口に配置される支持部材上に支持することができる。支持部材は、ケーブル、棒、または導管(例えば、パイプ)であってもよい。支持部材を、金属、セラミック、無機材料、またはこれらの組み合わせで製作することができる。支持部材の一部分が、使用時に地層流体および熱に曝される可能性があるため、支持部材は、化学的な耐性および/または熱的な耐性を有することができる。
タイ、スポット溶接、および/または他の種類のコネクタを、絶縁導体を絶縁導体の長さに沿った種々の位置において支持部材へと接続するために使用することができる。支持部材を、地層の上面において坑井の上部の構造物へと取り付けることができる。いくつかの実施形態においては、絶縁導体が、支持部材が不要であるような充分な構造強度を有する。絶縁導体は、多くの場合に、温度変化を被る場合の熱膨張による損傷を防ぐために、少なくとも或る程度の柔軟性を有することができる。
特定の実施形態においては、絶縁導体が、支持部材および/またはセントラライザ(centralizer)を備えずに坑井穴に配置される。支持部材および/またはセントラライザを持たない絶縁導体は、使用時の絶縁導体の故障を防止する温度、ならびに耐食性、クリープ強度、長さ、太さ(直径)、および冶金技術の適切な組み合わせを有することができる。
図2が、絶縁導体212の実施形態の端部の斜視図を示している。絶縁導体212は、これらに限られるわけではないが円形(図2に示されている)、三角形、楕円形、矩形、六角形、または不規則な形など、任意の所望の断面形状を有することができる。特定の実施形態においては、絶縁導体212が、コア214、電気絶縁体216、およびジャケット218を備えている。コア214は、電流がコアを通過するときに抵抗によって発熱することができる。交流または時間変化する電流ならびに/あるいは直流を、コアが抵抗によって発熱するようにコア214へと電力をもたらすために使用することができる。
いくつかの実施形態においては、電気絶縁体216が、ジャケット218への電流の漏れおよびアーク放電を防止する。電気絶縁体216は、コア214において生じた熱をジャケット218へと伝えることができる。ジャケット218が、熱を地層へと放射または伝導することができる。特定の実施形態においては、絶縁導体212の長さが、1000mまたはそれ以上である。より長い絶縁導体またはより短い絶縁導体も、個々の用途の必要に合わせて使用することができる。絶縁導体212のコア214、電気絶縁体216、およびジャケット218の寸法を、絶縁導体が上限の使用温度においても自らを支持することができる充分な強度を有するように選択することができる。そのような絶縁導体を、支持部材を絶縁導体と一緒に炭化水素を含有している地層へと延ばすまでもなく、坑井の上部の構造物あるいは上層土と炭化水素を含有している地層との間の境界付近に配置された支持体から吊り下げることができる。
絶縁導体212を、最大約1650ワット/メートルまたはそれ以上の電力レベルで動作するように設計することができる。特定の実施形態においては、絶縁導体212が、地層を加熱するときに約500ワット/メートル〜約1150ワット/メートルの間の電力レベルで動作する。絶縁導体212を、典型的な動作温度における最大の電圧レベルでも、電気絶縁体216に実質的な熱的および/または電気的破壊が生じないように設計することができる。絶縁導体212を、ジャケット218がジャケット材料の耐食性の大きな低下につながりかねない温度を超えることがないように設計することができる。特定の実施形態においては、絶縁導体212を、約650℃〜約900℃の間の範囲の温度に達するように設計することができる。個々の動作の要件に合致するよう、他の動作範囲を有する絶縁導体を形成することができる。
図2は、単一のコア214を有する絶縁導体212を示している。いくつかの実施形態においては、絶縁導体212が、2つ以上のコア214を有する。例えば、1つの絶縁導体が、3つのコアを有することができる。コア214を、金属または他の導電性材料で製作することができる。コア214を形成するために使用される材料として、これらに限られるわけではないがニクロム、銅、ニッケル、炭素鋼、ステンレス鋼、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。特定の実施形態においては、コア214が、オームの法則から導出されるコアの抵抗により、コアが選択された1メートル当たりのワット損、ヒータの長さ、および/またはコア材料に許される最大電圧において電気的および構造的に安定であるような動作温度における直径および抵抗率を有するように選択される。
いくつかの実施形態においては、コア214が、絶縁導体212の長さにおいて異なる材料で製作される。例えば、コア214の第1の部位を、コアの第2の部位よりも大幅に抵抗の少ない材料で製作することができる。第1の部位を、第2の部位に隣接する第2の地層ほど高い温度に加熱する必要がない地層に隣接して位置させることができる。コア214の種々の部位の抵抗率を、直径を変えることによって調節でき、さらには/あるいはコアの部位を異なる材料で製作することによって調節することができる。
電気絶縁体216は、さまざまな材料で製作することが可能である。一般的に使用される粉末として、これらに限られるわけではないがMgO、Al2O3、ジルコニア、BeO、尖晶石の種々の化学的変種、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。MgOが、良好な熱伝導率および電気絶縁特性を提供することができる。所望の電気絶縁特性として、少ない漏れ電流および高い絶縁耐力が挙げられる。少ない漏れ電流は、熱的破壊の可能性を少なくし、高い絶縁耐力は、絶縁体をまたいでのアーク放電の可能性を少なくする。熱的破壊は、漏れ電流によって絶縁体の温度が次第に上昇し、絶縁体をまたぐアーク放電にもつながる場合に生じうる。
ジャケット218は、外側の金属層または導電層であってもよい。ジャケット218は、高温の地層流体に接する可能性がある。ジャケット218を、高い温度において高い耐食性を有する材料で製作することができる。ジャケットの所望の動作温度範囲において使用することができる合金として、これらに限られるわけではないが304ステンレス鋼、310 ステンレス鋼、Incoloy(R)800、およびInconel(R)600が挙げられる(Inco Alloys International,Huntington,West Virginia,U.S.A.)。ジャケット218の厚さは、高温および腐食性の環境において3〜10年間にわたって存続するために充分でなければならないと考えられる。ジャケット218の厚さは、一般に、約1mm〜約2.5mmの間でさまざまであってもよい。例えば、厚さ1.3mmの310ステンレス鋼の外側層をジャケット218として使用して、3年を超える期間にわたって地層の加熱ゾーンにおける硫化腐食に対して良好な耐化学性をもたらすことができる。ジャケットのより大きな厚さまたはより小さな厚さを、個々の用途の要件に合致するように使用することができる。
1つ以上の絶縁導体を、1つ以上の熱源を形成すべく地層の開口に配置することができる。電流を、地層を加熱すべく開口内の各々の絶縁導体に通すことができる。あるいは、開口内の選択された絶縁導体に電流を通すことができる。使用されない導体を、予備のヒータとして使用することができる。絶縁導体を、任意の好都合なやり方で電源へと電気的に接続することができる。絶縁導体の各々の端部を、坑井の上部の構造物を通過する引き込みケーブルへと接続することができる。そのような構成は、典型的には、熱源の底部の付近に位置する180°の曲げ(「ヘアピン」カーブ)またはターンを有する。180°の曲げまたはターンを備える絶縁導体は、底部における終端処理を不要にできるが、180°の曲げまたはターンが、ヒータにおける電気的および/または構造的弱点となりうる。絶縁導体を、直列、並列、あるいは直列と並列との組み合わせにて、互いに電気的につなぎ合わせることが可能である。熱源のいくつかの実施形態においては、熱源の底部においてコア214をジャケット218(図2に示されている)へと接続することによって、電流が絶縁導体の導体へと通過でき、絶縁導体のジャケットを通って戻ることができる。
いくつかの実施形態においては、3つの絶縁導体212が、電源へと三相Y字の構成で電気的に接続される。図3が、表面下の地層の開口においてY字の構成に接続された3つの絶縁導体の実施形態を示している。図4が、地層の開口220から取り出すことができる3つの絶縁導体212の実施形態を示している。Y字構成の3つの絶縁導体においては、底部の接続を不要にすることができる。あるいは、Y字構成の3つの絶縁導体のすべてを、開口の底の付近で互いに接続してもよい。接続を、絶縁導体の加熱部分の端部において直接行うことができ、あるいは絶縁導体の底部において加熱部分へと接続された低温ピン(より低抵抗の部位)の端部において行うことができる。底部の接続を、絶縁体で満たされて封じられたキャニスタまたはエポキシで満たされたキャニスタによって行ってもよい。絶縁体は、電気絶縁として使用される絶縁体と同じ組成であってもよい。
図3および図4に示した3つの絶縁導体212を、セントラライザ224を使用して支持部材222へと接続することができる。あるいは、絶縁導体212を、金属ストラップを使用して支持部材222へと直接固定してもよい。セントラライザ224は、支持部材222上で絶縁導体212の位置を保ち、さらには/あるいは移動を防止することができる。セントラライザ224を、金属、セラミック、またはこれらの組み合わせで製作することができる。金属は、ステンレス鋼または腐食性および高温の環境に耐えることができる任意の他の種類の金属であってもよい。いくつかの実施形態においては、セントラライザ224が、およそ6m未満の間隔で支持部材へと溶接された弓形の金属片である。セントラライザ224に使用されるセラミックは、これらに限られるわけではないがAl2O3、MgO、または他の電気絶縁体であってもよい。セントラライザ224は、絶縁導体の動作温度において絶縁導体の移動が防止されるよう、支持部材222上の絶縁導体212の位置を維持することができる。さらに、絶縁導体212は、加熱時の支持部材222の膨張に耐えるために或る程度柔軟であってもよい。
支持部材222、絶縁導体212、およびセントラライザ224を、炭化水素層226の開口220に配置することができる。絶縁導体212を、低温ピン230を使用して底部導体接合部228へと接続することができる。底部導体接合部228は、各々の絶縁導体212を互いに電気的に接続することができる。底部導体接合部228は、開口220において見られる温度で溶けることがない導電性の材料を含むことができる。低温ピン230は、絶縁導体212よりも低い電気抵抗を有する絶縁導体であってもよい。
引き込み導体232を、絶縁導体212へと電力を供給するために坑井の上部の構造物234へと接続することができる。引き込み導体232を、引き込み導体を通過する電流に起因して生じる熱が比較的少ないよう、比較的低い電気抵抗の導体で製作することができる。いくつかの実施形態においては、引き込み導体が、ゴムまたはポリマーで絶縁された銅の縒り線である。いくつかの実施形態においては、引き込み導体が、銅芯を有する無機絶縁導体である。引き込み導体232を、地表236に位置する坑井の上部の構造体234へと、上層土238と地表236との間に位置するシール用フランジを介して接続することができる。シール用フランジは、流体が開口220から地表236へと逃げ出すことを防止することができる。
特定の実施形態においては、引き込み導体232が、つなぎ導体240を使用して絶縁導体212へと接続される。つなぎ導体240は、絶縁導体212の低抵抗部分であってもよい。つなぎ導体240を、絶縁導体212の「低温ピン」と称することもできる。つなぎ導体240を、単位長さ当たりの消失電力が、絶縁導体212の主たる加熱部分と比べて約10分の1〜約5分の1であるように設計することができる。つなぎ導体240は、典型的には、約1.5m〜約15mの間であってもよいが、より短い長さまたはより長い長さも、個々の用途の必要性に対応すべく使用することができる。一実施形態においては、つなぎ導体240の導体が、銅である。つなぎ導体240の電気絶縁体は、主たる加熱部分に使用される電気絶縁体と同じ種類であってもよい。つなぎ導体240のジャケットを、耐食性の材料で製作することができる。
特定の実施形態においては、つなぎ導体240が、スプライスまたは他の接続ジョイントによって引き込み導体232へと接続される。スプライスは、つなぎ導体240を絶縁導体212へと接続するためにも使用可能である。スプライスは、対象ゾーンの動作温度の半分に等しい温度に耐えなければならない可能性がある。スプライスにおける電気絶縁の密度は、多くの場合に、必要とされる温度および動作電圧に耐えるために充分に高くなければならない。
いくつかの実施形態においては、図3に示されるように、パッキン材料242が上層土のケーシング244と開口220との間に配置される。いくつかの実施形態においては、補強材料246によって上層土のケーシング244を上層土238へと固定することができる。パッキン材料242は、流体が開口220から地表236へと流れることを防止することができる。補強材料246は、例えば高温性能改善用のシリカ粉、スラグ、またはシリカ粉、ならびに/あるいはこれらの混合物と混ぜ合わせられたクラスGまたはクラスHのポルトランドセメントを含むことができる。いくつかの実施形態においては、補強材料246が、約5cm〜約25cmの幅にて半径方向に広がる。
図3および図4に示されるとおり、支持部材222および引き込み導体232を、地層の表面236に位置する坑井の上部の構造体234へと接続することができる。表面導体248が、補強材料246を囲んで坑井の上部の構造体234へとつながることができる。表面導体のいくつかの実施形態は、地層の開口へと約3m〜約515mの深さまで延びることができる。あるいは、表面導体は、地層へと約9mの深さまで延びることができる。電流を電源から絶縁導体212へと供給し、絶縁導体の電気抵抗によって熱を生じさせることができる。3つの絶縁導体212から生じた熱を開口220内で伝達し、炭化水素層226の少なくとも一部分を加熱することができる。
絶縁導体212が生じさせる熱で、炭化水素を含有している地層の少なくとも一部分を加熱することができる。いくつかの実施形態においては、実質的に、生じた熱の地層への放射によって熱が地層へと伝えられる。一部の熱は、開口に存在する気体による熱の伝導または対流によって伝えられる。開口は、図3および図4に示されるように、ケーシングを持たない開口であってもよい。ケーシングを持たない開口は、ヒータの地層への熱的固定に関するコスト、ケーシングに関するコスト、および/またはヒータを開口に詰め込むコストを不要にする。さらに、放射による熱の伝達は、伝導による熱の伝達よりも効率的であるため、開放の坑井穴においてはヒータをより低い温度で運転することができる。熱源の初期の動作時の伝導による熱の伝達を、開口に気体を追加することによって向上させることができる。気体を、最大約27bar(絶対圧)の圧力に保つことができる。気体は、これらに限られるわけではないが、二酸化炭素および/またはヘリウムを含むことができる。開放の坑井穴における絶縁導体ヒータは、好都合なことに、熱膨張および熱収縮に対応するように自由に膨張または収縮することができる。絶縁導体ヒータを、好都合なことに、開放の坑井穴から取り出し、あるいは再び配置することができる。
特定の実施形態においては、絶縁導体ヒータアセンブリが、スプールアセンブリを使用して設置され、あるいは取り除かれる。絶縁導体および支持部材の両方を同時に設置するために、2つ以上のスプールアセンブリを使用することができる。あるいは、支持部材を、巻かれた管ユニットを使用して設置することができる。ヒータをスプールから引き出し、支持体が坑井へと挿入されるときに支持体へと接続することができる。電気ヒータおよび支持部材を、スプールアセンブリから引き出すことができる。スペーサを、支持部材の長さにおいて支持部材およびヒータに接続することができる。さらなる電気ヒータ素子のために、さらなるスプールアセンブリを使用することができる。
いくつかの用途において炭化水素を含有している地層を加熱するなど、地下の用途に使用される無機絶縁(MI)ケーブル(絶縁導体)は、MIケーブル業界における典型と比べて、より長く、より大きな外径を有する可能性があり、より高い電圧および温度で動作する可能性がある。これらの地下の用途においては、地下を効率的に加熱するために必要な深さおよび距離に達する充分な長さのMIケーブルを作成するため、および異なる機能を有する部位をつなぎ合わせる(例えば、引き込みケーブルをヒータ部分へと接続する)ために、複数のMIケーブルをつなぎ合わせることが必要である。そのような長いヒータは、ヒータの最も遠い端部まで充分な電力をもたらすために、より高い電圧も必要とする。
従来のMIケーブルのスプライスの設計は、典型的には、1000Vを超え、1500ボルトを超え、あるいは2000ボルトを超える電圧には適しておらず、650℃(約1200°F)を超え、700℃(約1290°F)を超え、あるいは800℃(約1470°F)を超えるような高い温度において不具合を生じることなく長期にわたって動作することができない。そのような高電圧かつ高温の用途は、典型的に、スプライスにおける無機絶縁体の圧縮が、絶縁導体(MIケーブル)そのものにおける圧縮のレベルに出来るだけ近いかそれ以上であることを必要とする。
いくつかの用途においては、MIケーブルの比較的大きな外径および長い長さゆえに、ケーブルを水平に向いた状態でつなぎ合わせることが必要である。水平に作られるMIケーブルの他の用途のためのスプライスが存在する。これらの技術は、典型的には、小さな穴を使用して無機絶縁体(酸化マグネシウム粉末など)をスプライスへと充てんし、振動および突き固めによってわずかに圧縮する。このような方法は、無機絶縁体の充分な圧縮をもたらさず、場合によっては無機絶縁体の圧縮がまったく不可能であり、したがって上述の地下の用途に必要な高い電圧において使用されるスプライスの製作には適することができない。
したがって、単純でありながら不具合を生じることなく長い期間にわたって地下の環境において高い電圧および温度で機能することができる絶縁導体のスプライスについて、ニーズが存在している。さらに、スプライスは、地下においてケーブルに加わる可能性がある重量の負荷および温度のもとで不具合を生じることがないよう、より高い曲げおよび引張強度を必要とする可能性がある。さらに、スプライスにおける漏れ電流を少なくし、動作電圧と電気的破壊との間の余裕を増やすために、電界強度を下げるための技術および方法も利用することができる。電荷強度を下げることは、スプライスの電圧および温度の動作範囲を広げるうえでも役に立つ可能性がある。
図5および図6が、絶縁導体をつなぎ合わせるために使用される取付具250の別の実施形態の断面図を示している。図5が、絶縁導体212A、212Bが取付具の中へと移動させられているときの取付具250の断面図を示している。図6が、絶縁導体212A、212Bが取付具の内側でつなぎ合わせられた状態の取付具250の断面図を示している。特定の実施形態においては、取付具250がスリーブ252および継手258を備えている。
取付具250を、絶縁導体212Aを絶縁導体212Bへと、絶縁導体のジャケット(鞘)、絶縁体、およびコア(導体)の機械的および電気的な完全性を維持しながら接続する(つなぐ)ために使用することができる。取付具250を、熱を生じる絶縁導体を熱を生じない絶縁導体と接続するために使用することができ、熱を生じる絶縁導体を別の熱を生じる絶縁導体と接続するために使用することができ、あるいは熱を生じない絶縁導体を別の熱を生じない絶縁導体と接続するために使用することができる。いくつかの実施形態においては、2つ以上の取付具250が、多数の熱を生じる絶縁導体および熱を生じない絶縁導体を接続して長い絶縁導体をもたらすために使用される。
取付具250を、異なる直径の絶縁導体を接続するために使用することができる。例えば、絶縁導体が、異なるコア(導体)の直径、異なるジャケット(鞘)の直径、または異なる直径の組み合わせを有することができる。また、取付具250を、異なる冶金技術、異なる種類の絶縁、またはこれらの組み合わせを有する絶縁導体を接続するために使用することができる。
継手258は、取付具250の内部で絶縁導体212A、212Bのコア214A、214Bをつなぎ合わせて電気的に接続するために使用される。継手258を、銅または他の適切な導電体で製作することができる。特定の実施形態においては、コア214A、214Bが継手258へと圧入され、あるいは押し込まれる。いくつかの実施形態においては、継手258が、コア214A、214Bを継手に滑り込ませることができるように加熱される。いくつかの実施形態においては、コア214Aが、コア214Bとは異なる材料で製作される。例えば、コア214Aが銅であってもよい一方で、コア214Bがステンレス鋼、炭素鋼、または合金180である。そのような実施形態においては、コアを一体に溶接するために特殊な方法を使用しなければならないかもしれない。例えば、コアの引っ張り強さの特性および/または降伏強さの特性を、コア間の接続が時間または使用につれて劣化することがないよう、ぴったりと一致させなければならないかもしれない。
いくつかの実施形態においては、継手258が、継手の内側に1つ以上の溝を備える。溝は、コアが継手においてつなぎ合わせられた後に、継手への粒子の出入りを阻止することができる。いくつかの実施形態においては、継手258がテーパ状の内径を有する(例えば、継手の中央に向かうにつれて内径が小さくなる)。テーパ状の内径は、継手258とコア214A、214Bとの間により良好な圧入をもたらすことができる。
特定の実施形態においては、電気絶縁材料256が、スリーブ252の内側に位置する。いくつかの実施形態においては、電気絶縁材料256が、酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムとチッ化ホウ素との混合物(80重量%の酸化マグネシウムおよび20重量%のチッ化ホウ素)である。電気絶縁材料256として、酸化マグネシウム、滑石、セラミック粉末(例えば、窒化ホウ素)、酸化マグネシウムと他の電気絶縁体(例えば、最大約50重量%の窒化ホウ素)との混合物、セラミックセメント、セラミック粉末の特定の非セラミック材料(硫化タングステン(WS2)など)との混合物、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。例えば、電気絶縁材料の流動性を改善し、電気絶縁材料の誘電特性を改善し、あるいは取付具の柔軟性を改善するために、酸化マグネシウムを窒化ホウ素または他の電気絶縁体と混合することができる。いくつかの実施形態においては、電気絶縁材料256が、絶縁導体212A、212Bの少なくとも一方の内部に使用される電気絶縁体と同様の材料である。電気絶縁材料256は、絶縁導体212A、212Bの少なくとも一方の内部に使用される電気絶縁体と実質的に同様の誘電特性を有することができる。
特定の実施形態においては、スリーブ252の内側の空間が、電気絶縁材料256で実質的に満たされる。特定の実施形態において、「実質的に満たされる」は、空間(複数可)を電気絶縁材料で空間(複数可)内に巨視的な空隙が実質的に存在しないように完全またはほぼ完全に満たすことを指す。例えば、「実質的に満たされる」は、微視的な空隙ゆえの或る程度の空隙率(例えば、最大約40%の空隙率)を有する電気絶縁材料でほぼ空間全体を満たすことを指す。
いくつかの実施形態においては、スリーブ252が1つ以上の溝308を有する。溝308は、電気絶縁材料256がスリーブ252の外へと移動することを防止することができる(例えば、溝が電気絶縁材料をスリーブ内に閉じ込める)。
特定の実施形態においては、電気絶縁材料256が、図5に示されるように継手258の縁または縁の付近に凹状の端部を有する。電気絶縁材料256の凹状の形状は、絶縁導体212A、212Bの電気絶縁体216A、216Bとの結合を向上させることができる。いくつかの実施形態においては、電気絶縁体216A、216Bが、電気絶縁材料256との結合を向上させるために凸状(または、テーパ状)の端部を有する。電気絶縁材料256および電気絶縁体216A、216Bの端部が、絶縁導体の接合の際に加えられる圧力のもとで入り交じり、あるいは混ざり合うことができる。絶縁材料の入り交じり、または混ざり合いが、絶縁導体間の結合を向上させることができる。
特定の実施形態においては、絶縁導体212A、212Bが、絶縁導体を取付具の中央に向かって移動させる(押し合わせる)ことによって取付具250で接合される。コア214A、214Bが、絶縁導体212A、212Bの移動につれて継手258の内側で接合される。絶縁導体212A、21Bが取付具250の中へと移動した後に、取付具および取付具の内側の絶縁導体の端部を圧縮またはプレスすることで、絶縁導体を取付具に固定するとともに、電気絶縁材料256を圧縮することができる。クランプアセンブリまたは他の同様の装置を、絶縁導体212A、212Bおよび取付具250を接合するために使用することができる。特定の実施形態においては、電気絶縁材料256を圧縮するための力が、絶縁材料の容認できる圧縮をもたらすために、例えば少なくとも25,000ポンド/平方インチ〜最大55,000ポンド/平方インチである。組み立てプロセスの最中の電気絶縁材料256の圧縮は、電気絶縁材料に、現実的な範囲において絶縁導体212A、212Bの内部の電気絶縁材料の誘電特性に比肩する誘電特性をもたらすことができる。圧縮を促進するための方法および装置として、これらに限られるわけではないが、機械的な方法、空気圧、水圧/油圧、スエージ、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態においては、スリーブ252の端部が、絶縁導体212A、212Bのジャケット218A、218Bへと接続(溶接またはろう付け)される。いくつかの実施形態においては、支持スリーブおよび/またはひずみ緩和具が、取付具にさらなる強度をもたらすために取付具250を覆って配置される。
図5および図6に示した取付具250は、絶縁導体間の丈夫な電気的および機械的接続を形成することができる。例えば、本明細書に示される取付具は、1000ボルトを超え、1500ボルトを超え、あるいは2000ボルトを超える電圧、ならびに少なくとも約650℃、少なくとも約700℃、あるいは少なくとも約800℃の温度において長期にわたって機能するために適することができる。
特定の実施形態においては、本明細書に示される取付具が、加熱に使用される絶縁導体(例えば、炭化水素含有層に配置される絶縁導体)を加熱には使用されない絶縁導体(例えば、地層の上層土の部分に使用される絶縁導体)へと接続する。加熱用の絶縁導体は、加熱用でない絶縁導体よりも小さなコアおよび加熱用でない絶縁導体とは異なる材料のコアを有することができる。例えば、加熱用の絶縁導体のコアが、銅−ニッケル合金、ステンレス鋼、または炭素鋼であってもよい一方で、加熱用でない絶縁導体のコアは、銅であってもよい。しかしながら、コアのサイズおよび材料の電気的特性の相違ゆえに、それぞれの部位の電気絶縁体が、ただ1つの取付具で絶縁導体を接合するのでは補償できない充分に異なる厚さを有する可能性がある。したがって、いくつかの実施形態においては、加熱用の絶縁導体と加熱用でない絶縁導体との間に、短い中間の加熱用の絶縁導体を使用することができる。
中間の加熱用の絶縁導体は、加熱用でない絶縁導体のコアの直径から加熱用の絶縁導体のコアの直径へとテーパ状になるコアの直径を有することができる一方で、加熱用でない絶縁導体と同様のコア材料を使用することができる。例えば、中間の加熱用の絶縁導体は、加熱用の絶縁導体と同じ直径へとテーパ状になるコアの直径を持つ銅であってもよい。このようにして、中間の絶縁導体と加熱用の絶縁導体とを接続する取付具における電気絶縁体の厚さが、加熱用の絶縁導体における電気絶縁体の厚さと同様になる。同じ厚さとすることで、絶縁導体を取付具において容易に接合することが可能になる。中間の加熱用の絶縁導体は、小さなコアの直径ゆえに或る程度の電圧低下および或る程度の加熱損失をもたらす可能性があるが、中間の加熱用の絶縁導体は、これらの損失が最小限であるように比較的短い長さであってもよい。
本発明が、当然ながらさまざまであってもよい上述の特定のシステムに限られないことを、理解すべきである。また、本明細書において使用される用語が、あくまでも特定の実施形態を説明する目的のためのものにすぎず、本発明を限定しようとするものではないことを、理解すべきである。本明細書において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈からそのようでないことが明らかでない限り、言及の対象が複数存在する場合も包含する。すなわち、例えば「コア(a core)」は、2つ以上のコアからなる組み合わせを包含し、「材料(a material)」は、材料の混合物を包含する。
本発明の種々の態様について、さらなる変更および代案の実施形態が、本明細書に照らして、当業者にとって明らかであろう。したがって、本明細書は、あくまでも例示として解釈されるべきであり、本発明を実施する一般的なやり方を当業者に教示する目的のためのものである。本明細書において図示および説明した本発明の形態を、現時点における好ましい実施形態として受け取るべきであることを、理解すべきである。いずれも本発明の上述の説明の恩恵を手にした当業者にとって明らかであると考えられるが、本明細書において例示および説明した構成要素および材料について、代替の構成要素および材料が可能であり、部品およびプロセスを逆にすることが可能であり、本発明の特定の特徴を独立して利用することが可能である。本明細書に記載の要素について、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の技術的思想および技術的範囲から離れることなく、変更を行うことが可能である。