患者の検査及び治療のため、しばしば、磁気共鳴イメージング(MRI)及び磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)システムが使用されている。このようなシステムにより、検査すべき身体組織(tissue)の核スピンが、静的な主磁場B0によって整列され、そして、無線周波数帯域で振動する横断磁場B1によって励起される。撮像(イメージング)においては、緩和(リラクゼーション)信号を傾斜磁場に晒すことで、得られる共鳴の位置が特定される。そして、緩和信号を受信し、1次元又は多次元の画像へと再構成する。スペクトロスコピーにおいては、共鳴信号の周波数成分にて、組織の組成に関する情報が担持される。
一般的に使用されている2種類のMRシステムとして、“オープン”MRシステム(縦型システム)と“ボア型”システムとがある。前者では、患者は、C字型ユニットによって接続された2つの磁極の間に位置する検査ゾーンに導き入れられる。検査又は治療中に、実質的に全ての側から患者にアクセス可能である。後者は円筒形の検査空間(アクシャルシステム)を有し、そこに患者が導き入れられる。
RFコイルシステムが、RF信号の送信と共鳴信号の受信とを実現する。撮像機器に恒久的に組み込まれたRFコイルシステムに加えて、検査すべき特定の領域の周り又は内部に、特殊用途のコイルを柔軟に配置することができる。特殊用途コイルは、特に、一様な励起及び高感度検出が要求される状況において、信号対雑音比(SNR)を最適化するように設計される。さらに、複数チャンネルのアンテナ構成によって、特別なRF信号シーケンス、より高い磁場強度、大きいフリップ角、又は実時間シーケンスを実現・生成することができ、また、多次元励起を加速することが可能である。
マルチエレメント(複数素子)送信コイル(マルティクス)システムにおいて、個々のコイル素子の各々がRF電力増幅器(パワーアンプ)に接続される。マルティクスシステムは、B1磁場の均一性を向上させるとともに、患者内での比吸収率(specific absorption rate;SAR)を低減することができ、それにより、例えば2テスラ(T)又はそれ以上といった、より高い磁場強度での動作を可能にする。より高磁場強度において個々のコイルを直接的にRF電力増幅器に接続することに起因して、幾つかの問題が生じる。電力増幅器は、例えば50Ωといった選択されたインピーダンスに予め調整される。マッチング(整合)回路が、各コイル素子のインピーダンスを、予め選択された上記のインピーダンスに整合する。しかしながら、患者によってコイル素子の装荷が変化され、それにより、インピーダンスが変化されてインピーダンスミスマッチが生じる。インピーダンスのミスマッチが存在すると、RF電力が反射されて電力増幅器へと戻され、コイル素子に送達されるよう意図された電力を浪費してしまう。これは、個々のコイル素子間の不十分な絶縁、ひいては、電力増幅器の出力ポートにおける不十分なアイソレーション(分離性)をもたらし、最終的に、電力増幅器に非線形応答を生じさせる。
電力増幅器のアイソレーションに伴う問題を解決するため、導波路サーキュレータすなわちアイソレータが導入されてきた。サーキュレータは、入射波と反射波とを分離するために使用される基本的な3ポートの非相反性(non-reciprocal)の部品である。そのフェライトコア内に、絶縁された導体巻線によって、磁場が生成されると、信号を1つのポートから別の1つのポートへと循環させるために使用可能な磁気回転効果が発生される。入射信号は1方向のみに循環して、すなわち、時計回り又は反時計回りに循環して次のポートに到達する。ポートのうちの1つが、マッチングの取られた負荷で終端される場合、サーキュレータは、一方の方向で高い損失を有し且つ他方の方向で低い損失を有するアイソレータとして機能する。故に、逆方向においては、ポートが互いにアイソレートされ、信号伝播が制限される。磁性フェライトコアは、その優れた(RF)性能と可動部がないこととにより、受動サーキュレータを製造するための最も一般的な材料である。特定の周波数範囲内で望ましい応答が起こる。これは、フェライトコアの寸法と静磁場の大きさとを調整することによって達成可能であり、すなわち、より高い電力において、より大きいコアが必要となる。
例えばMRシステムで使用されるものなどのハイパワーサーキュレータは、設計・製造するのが高くつく。それらは、大型のフェライトコアを必要とするとともに、アーチ状にすることを妨げる、ヒートシンクと低い誘電率を有する高価な熱伝導材料とを含む複雑な熱交換システムを必要とする。より大きいフェライトコア内に磁気回転効果を誘起するためには、更なる負荷が必要となる。フェライトコアの飽和特性及びその固有の磁気特性により、サーキュレータは、MR主磁石から或る距離を置いた位置になければばらない。これは、RF電力増幅器を更に遠くに位置付けるよう強いることになり、RFエネルギーの既に高いコストを増大させるとともにMR室に配線の複雑性を追加してしまい得る。また、サーキュレータの動作中、反射されたRF電力がフェライトコアを加熱し、RF電力増幅器の非線形をもたらし得る信頼性のない動作を生じさせるとともに、増幅器のポートにおけるアイソレーションを低下させる。
図1を参照するに、磁気共鳴(MR)撮像システム10は、検査領域14中に時間的に一様なB0磁場を生成する主磁石12を含んでいる。主磁石は、円形若しくはボア型の磁石、C字状のオープン磁石、その他の設計のオープン磁石、又はこれらに類するものとし得る。主磁石に隣接配置された傾斜磁場コイル16が、磁気共鳴信号を空間エンコーディングすること、又は磁化スポイリング磁場勾配を生成することなどのために、B0磁場に対して選択された軸に沿って磁場勾配を生成するよう機能する。傾斜磁場コイル16は、3つの直交する方向(典型的に、軸方法すなわちz方向、横方向すなわちx方向、及び縦方向すなわちy方向)における磁場勾配を作り出すように構成された複数のコイルセグメントを含み得る。
例えば全身無線周波数コイルなどの無線周波数(RF)コイルアセンブリ(組立体)18が、検査領域に隣接して配置される。RFコイルアセンブリは、被検体の整列された双極子に磁気共鳴を励起するための無線周波数B1パルスを生成する。無線周波数コイルアセンブリ18はまた、撮像領域から生じる磁気共鳴信号を検出するよう機能する。必要に応じて、磁気共鳴信号の、より高感度で局在化された、空間エンコーディング、励起及び受信のため、全身RFコイル18に加えて、あるいは代えて、局部、表面又は体内(インビボ)RFコイル18’が配設される。マルチエレメントRFコイルアセンブリにおいて、RFコイルアセンブリは、B1の均一性を向上させ且つ被検体内での比吸収率(SAR)を低下させるため、複数の個別のコイル素子を含む。
被検体の磁気共鳴データを収集するため、被検体は検査領域内、好ましくは、主磁場のアイソセンター又はその付近に配置される。スキャンコントローラ20が勾配コントローラ22を制御する。勾配コントローラ22は、傾斜磁場コイルに、選択された磁気共鳴イメージング又はスペクトロスコピーのシーケンスに適当な選択傾斜磁場パルスを、撮像領域に印加させる。スキャンコントローラ20はまたRF送信器24を制御し、RF送信器24は、RFコイルアセンブリに、磁気共鳴励起・操作B1パルスを生成させる。マルチエレメントRFコイルアセンブリにおいて、RF送信器24は、複数の送信器を含み、あるいは、各送信チャンネルがコイルアセンブリの対応するコイル素子に動作的に接続されるRF増幅器を含む複数の送信チャンネルを備えた単一の送信器を含む。単一コイル設計において、単一の送信チャンネルは、励起・操作信号を生成する単一のRF電力増幅器を含む。
スキャンコントローラ20はまた、生成された磁気共鳴信号をRFコイルアセンブリから受信するために、RFコイルアセンブリに接続されたRF受信器26を制御する。マルチエレメントRFコイルアセンブリにおいて、RF受信器26は、複数の受信器を含み、あるいは、各受信チャンネルがコイルアセンブリの対応するコイル素子に動作的に接続される前置増幅器を含む複数の受信チャンネルを備えた単一の受信器を含む。単一コイル設計において、単一の受信チャンネルは、受信された磁気共鳴信号を増幅する単一の前置増幅器を含む。
スキャンコントローラはまた、RFコイルアセンブリ18、18’をRF送信器24又はRF受信器26の一方に選択的に結合させることによって、RFコイルアセンブリ18、18’を送信モードと受信モードとの間で切り換える切換ユニット28を制御する。マルチエレメントRFコイルアセンブリにおいて、切換ユニット28は複数のスイッチを含み、各スイッチが、個別の1つのコイル素子を、RF送信器14のRF送信チャンネルのうちの対応する1つ、又はRF受信器26のRF受信チャンネルのうちの対応する1つへと選択的に切り換える。
典型的に、MRシステムを組み立てるのに先立ち、RFコイルアセンブリの個々のコイル素子は、対応するRF電力増幅器の出力ポートと整合するよう調整される。しかしながら、例えば2テスラ(T)又はそれ以上といった高い磁場強度においては、患者によって個々のコイル素子各々の装荷が変化され、それにより、それらのインピーダンスが変化される。インピーダンスのミスマッチは、RF電力増幅器によって生成された信号の一部又は全体を反射させてRF送信器24へと戻し、RFエネルギーを浪費するとともに、場合により、入射信号を歪ませ、且つ場合により、RF送信器にダメージを与え得る。
第1の態様において、RF送信器24と切換ユニット28との間に、自動調整・整合ユニット(automatic tune and match unit;ATMU)30が配置される。マルチエレメントRFコイルアセンブリにおいて、ATMU30は複数のATMUを含み、各ATMUが、RF送信器24の対応するRF送信チャンネルと切換ユニット28の対応するスイッチとの間に配置される。MRシステム10が送信モードにあるとき、切換ユニット28はRF送信器24をRFコイルアセンブリ18、18’に選択的に結合させる。各ATMU30が、RFコイルアセンブリ18、18’の各コイル素子とRF送信器24の対応するRF電力増幅器との間のインピーダンスミスマッチを検出する。スキャンコントローラ20がATMUを制御して、検出されたインピーダンスミスマッチを補償して反射信号の一部又は全体を排除させる。
図2を参照するに、第2の態様において、ATMU30は切換ユニット28とRFコイルアセンブリ18、18’との間に配置される。MRシステム10が送信モードにあるとき、切換ユニット28はRF送信器24をRFコイルアセンブリ18、18’に選択的に結合させ、ATMU30が、RFコイルアセンブリ18、18’とRF送信器24との間の、あるいは、マルチエレメントRFコイルアセンブリの例においてはRFコイルアセンブリ18、18’の各コイル素子とRF送信器24の対応するRF電力増幅器との間の、インピーダンスミスマッチを検出して補償する。MRシステム10が受信モードにあるとき、切換ユニット28はRF受信器26をRFコイルアセンブリ18、18’に選択的に結合させ、ATMU30が、RFコイルアセンブリ18、18’とRF受信器26との間の、あるいは、マルチエレメントRFコイルアセンブリの例においてはRFコイルアセンブリ18、18’の各コイル素子とRF受信器26の対応する前置増幅器との間の、インピーダンスミスマッチを検出して補償する。
図3を参照するに、各ATMU30は、インピーダンスミスマッチを検出する反射電力センサ32を含んでいる。反射電力センサ32は、インピーダンスのミスマッチ及び大きさを様々な手法で検出することができ、例えば、電圧定在波比(voltage standing wave ratio;VSWR)又はこれに類するものを決定することによって検出する。ATMUは、RFコイルアセンブリ18、18’とRF送信器/受信器24、26との間に直列に、インダクタマトリクス34を含み、且つRFコイルアセンブリ18、18’とRF送信器/受信器24、26との間に並列に、キャパシタマトリクス36を含んでいる。インダクタマトリクス34及びキャパシタマトリクス36はLCマッチング回路を形成する。なお、認識されるように、RFコイルアセンブリ18、18’とRF送信器/受信器24、26との間の、並列のインダクタマトリクス及び直列のキャパシタマトリクスとすることも意図される。
マトリクスコントローラ38が、検出されたインピーダンスミスマッチを補償するよう、インダクタマトリクス34及びキャパシタマトリクス36を制御する。インダクタマトリクス34は、異なる大きさの複数のインダクタを含んでおり、各インダクタは、該インダクタを動作状態又は非動作状態の一方に選択的に切り換える対応するスイッチに結合されている。同様に、キャパシタマトリクス36は、異なる大きさの複数のキャパシタを含んでおり、各キャパシタは、該キャパシタを動作状態又は非動作状態の一方に選択的に切り換える対応するスイッチに結合されている。マトリクスコントローラ38は、インダクタ及びキャパシタのマトリクス34、36の双方のスイッチを制御する。斯くして、インダクタマトリクス34は複数のインダクタンスを生じさせることができ、キャパシタマトリクス36は複数のキャパシタンスを生じさせることができる。マトリクスコントローラ38はまた、LCマッチング回路の構成を、後方L型回路(図4A)、前方L型回路(図4B)又はπ型回路(図4C)のうちの1つに変更する回路スイッチ40を制御する。
マトリクスコントローラ38は、ルックアップテーブル(LUT)42とメモリユニット44とを含んでいる。ルックアップテーブルは、メモリユニット44に格納された既知のインピーダンスミスマッチを、やはりメモリユニット44に格納された対応するインダクタマトリクスプログラム及び/又はキャパシタマトリクスプログラムに関連付ける。認識されるように、メモリユニット44には、複数の既知のインピーダンスミスマッチ及び対応するインダクタ及び/又はキャパシタマトリクスプログラムが格納されている。インダクタ及び/又はキャパシタマトリクスプログラムがマトリクスコントローラ38に命令し、マトリクスコントローラ38が、既知のインピーダンスミスマッチを補償するようインダクタ及びキャパシタのマトリクス34、36の制御を切り換える。マトリクスコントローラ38は、検出されたインピーダンスミスマッチを、メモリユニット44に格納された既知の複数のインピーダンスと比較する。検出されたインピーダンスミスマッチが、或る既知のインピーダンスミスマッチと相関を有する場合、マトリクスコントローラ38は、インダクタマトリクス34及びキャパシタマトリクス36を、それぞれ、該既知のインピーダンスミスマッチに対応するインダクタマトリクスプログラム及びキャパシタマトリクスプログラムに従ってプログラムする。
検出されたインピーダンスミスマッチが、格納された既知のインピーダンスミスマッチと相関を有しない場合、マトリクスコントローラ38は、検出されたインピーダンスミスマッチが補償されるまで、インダクタ及びキャパシタのマトリクス34、36によって生成される複数のインダクタンス及びキャパシタンスにわたって反復することによって、対応するインダクタマトリクスプログラム及びキャパシタマトリクスプログラムを生成するように構成される。マトリクスコントローラ38は、検出されたインピーダンスミスマッチを既知のインピーダンスミスマッチとして格納するとともに、生成された対応するインダクタ及びキャパシタマトリクスプログラムを格納し、そして、最近格納された既知のインピーダンスミスマッチと対応するインダクタ及びキャパシタマトリクスプログラムとの間の関連付けを含むようにLUT42を更新する。一実施形態において、マトリクスコントローラ38は、検出されたインピーダンスミスマッチを補償するのに必要な反復回数を減らすため、既知のインピーダンスミスマッチの何れが、検出されたインピーダンスミスマッチと最も強く相関するかを決定する。そして、マトリクスコントローラ38は、最も強い相関を用いて、対応するインダクタ及びキャパシタマトリクスプログラムを、検出されたインピーダンスミスマッチが補償されるまで体系的に調整する。検出されたインピーダンスミスマッチは、対応するインダクタ及びキャパシタマトリクスプログラムとともに、既知のインピーダンスミスマッチとしてメモリユニット44に格納され、LUT42が更新される。斯くして、マトリクスコントローラは、利用可能な誘導素子及び容量素子から、コイル18、18’のインピーダンスに最良に整合する回路を提供するマッチング回路を構成する。
ATMU30は非磁性材料で構築され、例えば、インダクタマトリクス及びキャパシタマトリクスのスイッチは、MEMSに基づくもの、pinダイオード、又はこれらに類するものにされる。こうすることは、RFコイルアセンブリ18、18’又はマルチエレメントシステムの場合の個々のコイル素子の比較的近くにATMUを位置付けることを可能にし、ひいては、RF送信器及び/又は受信器24、26をMRシステム10の比較的近くに位置付けることを可能にする。図5Aを参照するに、一実施形態において、ATMU30はTEM(transverse electromagnetic)コイル50に隣接配置される。図5Bを参照するに、他の一実施形態において、ATMU30はループコイル52に隣接配置される。
図6A及び6Bを参照するに、他の一実施形態において、ATMU30はRFコイルアセンブリに統合される。図示したように、ATMU30は、分割(スプリット)型傾斜磁場コイル56の中断部55内に配置されたTEMコイル54に統合される。分割型傾斜磁場コイルは、RFコイルアセンブリが配置される隙間又は中断部55を傾斜磁場コイル間に画成することにより、より大きいボアサイズを可能にする。この構成は、より大きい被検体を収容し、また、不安を軽減し得る。統合されたATMU30を備えたTEMコイルの上面図である図6Bに示すように、ATMUは、TEMコイルの印刷回路素子(PCB)58上に配置されることが可能である。ATMU30をRF送信器24及び/又はRF受信器26に接続する伝送線は、主磁石や傾斜磁場コイルの動作と干渉しないように、MRシステム10の筐体内を配線されることができる。
図7を参照するに、第3の態様において、RFコイルアセンブリ18、18’は、マルチ周波数のマルチエレメントRFコイルアセンブリ、より具体的には、インターリーブ(交互配置)型複同調(double-tuned)RFコイルアセンブリである。RFコイルアセンブリ18、18’は、例えば13C及び1Hなどといった複数の核種の同時励起のために相異なる周波数に同調される隣接コイル素子60、62を含んでいる。しかしながら、例えば31P又は19Fなどのその他の種も、非インターリーブ型構成、及び三重同調(triple-tuned)や四重同調(quadruple-tuned)などのアセンブリとともに意図される。
図8を参照するに、第4の態様において、RFコイルアセンブリ18、18’は、マルチ周波数のマルチエレメントRFコイルアセンブリ、より具体的には、例えば13C 60といった1つのアレイがハードウェア結合器64を介してRF送信器24に接続されるインターリーブ型複同調RFコイルアセンブリである。この構成は、複数の核種のうちの1つが13Cの低めの共振周波数のために個々のコイル素子に患者依存負荷を示さないときに有用である。図8に示した例において、13Cコイル素子60はAMTUに接続されていない。何故なら、例えば2Tなどの特定の磁場強度で13Cコイル素子60は有意な患者依存インピーダンスミスマッチを示さない、すなわち、13Cの低めの共振周波数では個々のコイル素子の被検体依存装荷は有意でないためである。しかしながら、同じ磁場強度において、1Hコイル素子62は、被検体によって装荷されてインピーダンスミスマッチを示す。このインピーダンスミスマッチは、対応するATMU30を用いて補償されることができる。なお、例えば31P又は19Fなどのその他の種も、非インターリーブ型構成、及び三重同調や四重同調などのアセンブリとともに意図される。
図9を参照するに、スキャンコントローラ20は、このタイミング図に例示するように、複数回の画像収集の合間にインピーダンスミスマッチを補償するよう、ATMU30を制御する。一実施形態において、如何なるMR画像表現の収集にも先立ち、スキャンコントローラ20は、被検体が検査領域14内の最適位置にある間に、インピーダンスミスマッチを補償するようATMU30を制御し、それにより、全ての未知のインピーダンスミスマッチが画像収集に先立って不具にされ得る。他の一実施形態において、スキャンコントローラ20は、移動寝台検査におけるインピーダンスミスマッチを補償するよう、ATMU30を制御する。移動寝台検査においては、検査領域14内の多数の異なる寝台位置で被検体の画像表現が収集される。検査に先立ち、スキャンコントローラ20は、全ての寝台位置でインピーダンスミスマッチを補償するようATMU30を制御するよう構成され、それにより、全ての未知のインピーダンスミスマッチが画像収集に先立って不具にされ得る。他の例では、MRスキャン中にインピーダンスミスマッチが測定され、そのスキャン中に、最適なインピーダンス整合を維持するようにATMUが動的に調整される。
図1を再び参照するに、受信器26からの受信データは、データバッファ70に一時的に格納され、磁気共鳴データプロセッサ72によって処理される。磁気共鳴データプロセッサは、画像再構成(MRI)、磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)、及びカテーテル若しくは介入機器の位置特定などを含む技術的に知られた様々な機能を実行することができる。再構成された磁気共鳴画像、スペクトロスコピー読み出し結果、介入機器の位置情報、及びその他の処理されたMRデータは、例えば医療施設の患者アーカイブなどの記憶装置に格納される。グラフィックユーザインタフェース又は表示装置74は、スキャンのシーケンス及びプロトコルを選択すること、及びMRデータを表示することなどのためにスキャンコントローラ20を制御するよう臨床医が使用可能なユーザ入力装置を含んでいる。
好適実施形態を参照して本発明を説明した。以上の詳細な説明を読んで理解した当業者は、変更及び変形に気付くであろう。本発明は、添付の請求項の範囲又はその均等範囲に入る限りにおいて、そのような全ての変更及び変形を含むものとして解されるものである。