JP2013258320A - エレクトレットシートの製造方法 - Google Patents

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Kazuho Uchida
かずほ 内田
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文吾 八田
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Abstract

【課題】本発明は、高温下での使用であっても高い圧電性を保持するエレクトレットシートの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のエレクトレットシートの製造方法は、オレフィン系樹脂シートを、その表面温度が上記オレフィン系樹脂の融点よりも低い温度にて養生させた後に、上記オレフィン系樹脂シートに電荷を注入して帯電させることを特徴とする。このような本発明の方法により得られるエレクトレットシートは、高温下にてオレフィン系樹脂の結晶部の流動に起因する電荷の放電を防止しており、よって、高温下の使用でおいても経時的に圧電性が低下することはなく、長期間に亘って優れた圧電性を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高温下での使用であっても高い圧電性を保持するエレクトレットシートの製造方法に関する。
エレクトレットは絶縁性の高分子材料に電荷を注入することにより、内部に帯電を付与した材料である。エレクトレットは繊維状に成形して集塵フィルターなどとして広く用いられている。
又、合成樹脂シートはこれを帯電させることによってセラミックスに匹敵する非常に高い圧電性を示すことが知られている。このような合成樹脂シートを用いたエレクトレットは、その優れた感度を利用して音響ピックアップや各種圧力センサーなどへの応用が提案されている。
エレクトレットシートとして、特許文献1には、塩素化ポリオレフィンが付与されているシートであって、かつ、該シートが1×10-10クーロン/cm2以上の表面電荷密度を有するエレクトレットシートが開示されている。
しかしながら、上記エレクトレットシートは、高温下にて使用すると経時的に圧電性が低下するという問題点を有している。
特開平8−284063号公報
本発明は、高温下での使用であっても高い圧電性を保持するエレクトレットシートの製造方法を提供する。
本発明のエレクトレットシートの製造方法は、オレフィン系樹脂シートを、その表面温度が上記オレフィン系樹脂の融点よりも低い温度にて養生させた後に、上記オレフィン系樹脂シートに電荷を注入して帯電させることを特徴とする。
オレフィン系樹脂シートに用いられるオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、及びシクロオレフィン系樹脂などが挙げられる。
エチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、又はエチレン成分を50重量%を超えて含有するエチレンと少なくとも1種の炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。エチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などを挙げることができる。直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である。なお、直鎖状低密度ポリエチレン中におけるα−オレフィンの含有量は、1〜15重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。
エチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−エイコセンなどが挙げられる。なかでも、炭素数が4〜10のα−オレフィンが好ましく、1−オクテンがより好ましい。
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、又はプロピレン成分を50重量%以上含有するプロピレンと少なくとも1種のプロピレン以外の炭素数2〜20のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。プロピレンと少なくとも1種のプロピレン以外の炭素数3〜20のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。
プロピレンと共重合されるα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。なかでも、プロピレン以外の炭素数が2〜10のオレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
シクロオレフィン系樹脂としては、シクロアルケンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。シクロアルケンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、及び3−メチルシクロヘキセンなどが挙げられる。シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリシクロブテン、ポリシクロペンテン、ポリシクロヘキセン、ポリシクロオクテン、ポリ3−メチルシクロペンテン、ポリ4−メチルシクロペンテン、及びポリ3−メチルシクロヘキセンなどが挙げられる。
オレフィン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。オレフィン系樹脂は、プロピレン系樹脂及びエチレン系樹脂を含んでいることが好ましく、プロピレン系樹脂としてプロピレン単独重合体及びプロピレン−エチレン共重合体と、エチレン系樹脂として直鎖状底密度ポリエチレンとを含んでいることが好ましい。プロピレン系樹脂及びエチレン系樹脂を含んでいるオレフィン系樹脂シートでは、プロピレン系樹脂とエチレン系樹脂との界面に電荷をトラップすることができ、これにより得られるエレクトレットシート中の総電荷量を向上させて、エレクトレットシートの圧電性を向上させることが可能となる。
オレフィン系樹脂がエチレン系樹脂とプロピレン系樹脂とを含有する場合、オレフィン系樹脂中におけるエチレン系樹脂の含有量は、1〜55重量%が好ましく、20〜50重量%がより好ましい。また、オレフィン系樹脂がエチレン系樹脂とプロピレン系樹脂とを含有する場合、オレフィン系樹脂中におけるプロピレン系樹脂の含有量は、45〜99重量%が好ましく、50〜80重量%がより好ましい。このような含有量でエチレン系樹脂とプロピレン系樹脂とを含むオレフィン系樹脂によれば、高温条件下でも優れた圧電性を維持することが可能なエレクトレットシートを提供することができる。
また、オレフィン系樹脂シートには、その物性を損なわない範囲内において、酸化防止剤、金属害防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、ブロッキング防止剤などの添加剤が含有されていてもよい。
オレフィン系樹脂シートは、オレフィン系樹脂非発泡シートであってもオレフィン系樹脂発泡シートであってもよい。なかでも、オレフィン系樹脂発泡シートが好ましい。オレフィン系樹脂発泡シートは、その内部に複数の空孔を含んでいる。このようなオレフィン系樹脂発泡シートでは、空孔とオレフィン系樹脂との界面に電荷をトラップすることができ、これにより得られるエレクトレットシート中の総電荷量を向上させて、エレクトレットシートの圧電性を向上させることが可能となる。
オレフィン系樹脂非発泡シートの製造方法としては、例えば、(I)オレフィン系樹脂を押出機に供給して溶融混練し押出機に取り付けたTダイからシート状に押出してオレフィン系樹脂非発泡シートを製造する方法、(II)オレフィン系樹脂を押出機に供給して溶融混練し押出機に取り付けたサーキュラダイから円筒状体を押出し、この円筒状体を押出方向に連続的に内外周面間に亘って切断して円筒状体を展開しオレフィン系樹脂非発泡シートを製造する方法が挙げられる。
また、オレフィン系樹脂発泡シートの製造方法としては、例えば、(1)オレフィン系樹脂、熱分解型発泡剤、及び多官能モノマーを押出機に供給して溶融混練し、押出機に取り付けたTダイからシート状に押し出すことにより発泡性オレフィン系樹脂シートを得、発泡性オレフィン系樹脂シートに電離性放射線を照射して発泡性オレフィン系樹脂シートを架橋した後、発泡性オレフィン系樹脂シートを上記熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱してオレフィン系樹脂発泡シートを製造する方法、(2)オレフィン系樹脂、熱分解型発泡剤、及び多官能モノマーを押出機に供給して溶融混練し、押出機に取り付けたTダイからシート状に押し出すことにより発泡性オレフィン系樹脂シートを得、発泡性オレフィン系樹脂シートを熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱すると共に発泡性オレフィン系樹脂シートに電離性放射線を照射して架橋して、オレフィン系樹脂発泡シートを製造する方法などが挙げられる。
熱分解型発泡剤としては、従来から発泡体の製造に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などが挙げられ、これらは単独で用いられても二種類以上が併用されてもよい。
多官能モノマーとしては、従来から発泡体の製造に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどが挙げられる。これらは単独で使用しても二種以上が併用されてもよい。
多官能モノマーの添加量は、少ないと、所望の架橋度が得られない一方、多くても、効果は変わらないので、オレフィン系樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、0.2〜20重量部がより好ましい。
電離性放射線としては、例えば、光、γ線、電子線などが挙げられ、電子線が好ましい。電離性放射線の照射線量は、オレフィン系樹脂発泡シートのゲル分率が30〜45重量%となるように調整することが好ましい。例えば、電子線の加速電圧は、100〜1000kVが好ましく、200〜800kVがより好ましい。また、電子線の照射量は、1〜200kGyが好ましく、3〜100kGyがより好ましい。
オレフィン系樹脂シートは、後述する養生を行う前に延伸させることが好ましい。オレフィン系樹脂シートを延伸することによって、オレフィン系樹脂シートを構成しているオレフィン系樹脂を延伸方向に配向させることができる。そして、このような延伸が行われたオレフィン系樹脂シートに後述する養生を施すことによって、オレフィン系樹脂において配向された部分が結晶化をより促進させることが可能となる。
さらに、オレフィン系樹脂シートとして、オレフィン系樹脂発泡シートを用いた場合、オレフィン系樹脂発泡シートを養生させる前に延伸することによって、オレフィン系樹脂発泡シートの厚みを低減させることができると共に、オレフィン系樹脂発泡シート内に含まれている空孔の形状を、オレフィン系樹脂発泡シートの厚み方向に偏平化させて楕円体状にすることができる。このような延伸されたオレフィン系樹脂シートでは、空孔とオレフィン系樹脂との界面にたまった電荷が正電荷と負電荷とに分極しやすく、得られるエレクトレットシートの圧電性をさらに向上させることができる。
オレフィン系樹脂シートの延伸方法としては、一軸延伸又は二軸延伸など公知の延伸方法によって行うことができるが、一軸延伸が好ましい。
オレフィン系樹脂シートを一軸延伸する場合、オレフィン系樹脂シートをその押出方向に延伸することが好ましい。長尺状のオレフィン系樹脂シートを用いた場合には、長尺状のオレフィン系樹脂シートの長さ方向が押出方向となる。オレフィン系樹脂シートをその押出方向に延伸することによって、オレフィン系樹脂シートを構成しているオレフィン系樹脂の分子鎖を延伸方向により配向させることができ、後述する養生工程において、オレフィン系樹脂の結晶成長をより促進させることが可能となる。
一軸延伸時のオレフィン系樹脂シートの表面温度は、100〜160℃が好ましく、130〜155℃がより好ましい。一軸延伸時のオレフィン系樹脂シートの表面温度が高過ぎると、オレフィン系樹脂シートが溶融して空孔が閉塞する虞れがある。また、一軸延伸時のオレフィン系樹脂シートの表面温度が低過ぎると、一軸延伸時にオレフィン系樹脂シートが破断する虞れがある。
オレフィン系樹脂シートの延伸倍率は、1.2〜10倍が好ましく、1.5〜5倍がより好ましい。オレフィン系樹脂シートの延伸倍率が小さいと、延伸による十分な効果が得られない虞れがある。また、オレフィン系樹脂シートの延伸倍率が大きいと、一軸延伸時にオレフィン系樹脂シートが破断する虞れがある。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂シートの延伸倍率とは、延伸後のオレフィン系樹脂シートの長さを延伸前のオレフィン系樹脂シートの長さで除した値をいう。
本発明の方法では、上述したオレフィン系樹脂シートを、その表面温度がオレフィン系樹脂シートを構成するオレフィン系樹脂の融点よりも低い温度にて養生させる。オレフィン系樹脂シートを養生させることにより、オレフィン系樹脂シートを構成しているオレフィン系樹脂の結晶化を促進させて、結晶の径や厚みを増大させることができる。養生後のオレフィン系樹脂シートにおいて、径や厚みが増大された結晶部分と非結晶部分との界面にも見掛け上、正電荷と負電荷に分極した状態で電荷がたまりやすい。そして、結晶部分と非結晶部分との界面にたまった電荷は、高温条件下であっても放電されにくい。したがって、このような養生後のオレフィン系樹脂シートによれば、高温条件下でも優れた圧電性を維持することが可能なエレクトレットシートを提供することができる。
オレフィン系樹脂シートの養生温度は、オレフィン系樹脂の融点よりも低い温度が好ましい。オレフィン系樹脂シートの養生温度が、オレフィン系樹脂の融点以上であると、オレフィン系樹脂が溶解して、結晶の成長を促進させることができない虞れがある。
また、オレフィン系樹脂シートの養生温度が低過ぎると、オレフィン系樹脂の結晶を成長させることができない虞れがある。したがって、オレフィン系樹脂シートの養生温度は、オレフィン系樹脂の融点よりも150℃低い温度以上で且つ上記オレフィン系樹脂の融点よりも15℃低い温度以下が好ましく、オレフィン系樹脂の融点よりも130℃低い温度以上で且つ上記オレフィン系樹脂の融点よりも20℃低い温度以下がより好ましく、オレフィン系樹脂の融点よりも90℃低い温度以上で且つ上記オレフィン系樹脂の融点よりも40℃低い温度以下が特に好ましい。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂シートの養生温度とは、オレフィン系樹脂シートの表面温度を意味する。
また、オレフィン系樹脂の融点は、JIS K7121に準拠して測定されたDSC(示差走査熱量計)曲線のピーク温度をいう。また、オレフィン系樹脂シートが二種以上のオレフィン系樹脂を含んでいる場合には、各オレフィン系樹脂についてJIS K7121に準拠してDSC(示差走査熱量計)曲線を測定し、オレフィン系樹脂のDSC曲線のピークのうち、最も高いピークを示しているオレフィン系樹脂のDSC曲線のピーク温度をいう。
オレフィン系樹脂シートの養生時間は、1〜120時間が好ましく、2〜72時間がより好ましく、20〜72時間が特に好ましい。オレフィン系樹脂シートの養生時間が短過ぎると、オレフィン系樹脂シートの表面から内部まで均一な温度で養生させることができず、オレフィン系樹脂シートを構成しているオレフィン系樹脂の結晶化を充分に促進することができない虞れがある。また、オレフィン系樹脂シートの養生時間が長過ぎると、オレフィン系樹脂シートを構成しているオレフィン系樹脂が熱劣化する虞れがある。
次に、本発明の方法では、上述した養生工程後のオレフィン系樹脂シートに汎用の要領で電荷を注入することによって、オレフィン系樹脂シートを帯電させてエレクトレットシートを製造することができる。
オレフィン系樹脂シートに電荷を注入する方法としては、特に限定されず、例えば、(1)オレフィン系樹脂シートを一対の平板電極で挟持し、一方の平板電極をアースすると共に他方の平板電極を高圧直流電源に接続して、オレフィン系樹脂シートに直流又はパルス状の高電圧を印加してオレフィン系樹脂に電荷を注入してオレフィン系樹脂シートを帯電させる方法、(2)電子線、X線などの電離性放射線や紫外線をオレフィン系樹脂シートに照射して、オレフィン系樹脂シートの近傍部の空気分子をイオン化することによってオレフィン系樹脂に電荷を注入してオレフィン系樹脂シートを帯電させる方法、(3)オレフィン系樹脂シートの一面にアースされた平板電極を密着状態に重ね合わせ、オレフィン系樹脂シートの他面側に所定間隔を存して直流の高圧電源に電気的に接続された針状電極又はワイヤー電極を配設し、針状電極の先端又はワイヤー電極の表面近傍への電界集中によりコロナ放電を発生させ、空気分子をイオン化させて、針状電極又はワイヤー電極の極性により発生した空気イオンを反発させてオレフィン系樹脂に電荷を注入してオレフィン系樹脂シートを帯電させる方法などが挙げられる。上記方法の中でオレフィン系樹脂シートに容易に電荷を注入することができるので、上記(2)(3)の方法が好ましく、上記(3)の方法がより好ましい。
上記(1)(3)の方法において、オレフィン系樹脂シートに印加する電圧の絶対値は、小さいと、オレフィン系樹脂シートに十分に電荷を注入することができず、高い圧電性を有するエレクトレットシートを得ることができないことがあり、大きいと、アーク放電してしまい、却って、オレフィン系樹脂シート十分に電荷を注入することができず、高い圧電性を有するエレクトレットシートを得ることができないことがあるので、3〜100kVが好ましく、5〜50kVより好ましい。
上記(2)の方法において、オレフィン系樹脂シートに照射する電離性放射線の加速電圧の絶対値は、小さいと、空気中の分子を十分に電離することができず、オレフィン系樹脂シートに十分な電荷を注入することができず、圧電性の高いエレクトレットシートを得ることができないことがあり、多いと、電離性放射線が空気を透過するので、空気中の分子を電離させることができないことがあるので、5〜15kVが好ましい。
エレクトレットシートの厚みは、10μm〜3mmが好ましく、10〜500μmがより好ましい。エレクトレットシートの厚みが厚過ぎると、電荷が均一に注入されておらず、優れた圧電性能を有するエレクトレットシートが得られない虞れがある。また、エレクトレットシートの厚みが薄過ぎると、エレクトレットシートの機械的強度が低下する虞れがある。
本発明の方法により得られるエレクトレットシートでは、高温下における電荷の放電が防止されており、よって、高温下の使用においても経時的に圧電性が低下することはなく、長期間に亘って優れた圧電性を有する。
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[実施例1〜7]
(押出工程)
プロピレン系樹脂として、ホモポリプロピレン(融点165℃、曲げ弾性率:1800MPa、メルトフローレイト(MFR):0.5g/10分、日本ポリプロ社製 商品名「ノバテックPP EA9」)15重量部、及びプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分50重量%以上含有、融点145℃、曲げ弾性率:950MPa、メルトフローレイト:0.8g/10分、日本ポリプロ社製 商品名「ノバテックPP EG8」)55重量部、エチレン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(融点119℃、密度:0.917kg/m3、メルトフローレイト:1.3g/10分、プライムポリマー社製 商品名「モアテック0138N」)30重量部、熱分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド3.3重量部、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)3.5重量部、酸化防止剤として2,6−ジブチル−p−クレゾール0.3重量部及びジラウリルチオプロピオネート0.3重量部、並びに金属害防止剤としてメチルベンゾトリアゾール0.5重量部を、バレル温度が170℃に調整された二軸押出機を用いて十分に溶融混錬した後、上記二軸押出機の先端に取り付けたTダイから押出して長尺状の発泡性オレフィン系樹脂シート(厚み0.4mm)を得た。
なお、発泡性オレフィン系樹脂シートを構成するオレフィン系樹脂の融点は、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、及び直鎖状低密度ポリエチレンのうち、融点(DSC曲線のピーク温度)が最も高いホモポリプロピレンの融点(融点165℃)とした。
(発泡工程)
次に、発泡性オレフィン系樹脂シートに電子線を加速電圧300kVの条件下にて25kGy照射して発泡性オレフィン系樹脂シートを架橋させた。この架橋させた発泡性オレフィン系樹脂シートを250℃の熱風オーブンに投入して、熱分解型発泡剤を分解させて発泡性オレフィン系樹脂シートを発泡させて、オレフィン系樹脂発泡シート(見かけ密度0.2g/cm3、厚さ0.6mm)を得た。
(延伸工程)
次に、オレフィン系樹脂発泡シートを熱風オーブン中に供給し、オレフィン系樹脂発泡シートの表面温度を150℃とした上で、オレフィン系樹脂発泡シートをその押出方向(長さ方向)のみに延伸倍率2倍で一軸延伸することによって、長尺状のオレフィン系樹脂発泡シート(厚み0.3mm)を得た。
(養生工程)
次に、オレフィン系樹脂発泡シートを熱風炉中に供給して、オレフィン系樹脂発泡シートをその表面温度が表1の養生温度の欄に示した温度となるようにして、表1の養生時間の欄に示した時間に亘って養生させた。
(電荷注入工程)
そして、長尺状のオレフィン系樹脂発泡シートを裁断することによって縦3cm×横3cmの平面正方形状に成形した。その後、オレフィン系樹脂発泡シートの一面にアースされた平板電極を密着状態に重ね合わせ、オレフィン系樹脂発泡シートの他面側に所定間隔を存して直流の高圧電源に電気的に接続された針状電極を配設し、針状電極の表面近傍への電界集中により、電圧−10(kV)、放電距離10mm及び電圧印可時間1分の条件下にてコロナ放電を発生させ、空気分子をイオン化させて、針状電極の極性により発生した空気イオンを反発させてオレフィン系樹脂発泡シートに電荷を注入してオレフィン系樹脂発泡シートを帯電させた。その後、電荷を注入したオレフィン系樹脂発泡シートをアルミニウム箔で包み込こんだ後にアースに接地された導電性マット上に3時間に亘って設置することによって、オレフィン系樹脂発泡シート表面に存在する静電気を除去してエレクトレットシート(厚み0.3mm)を得た。
[比較例1]
養生工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、エレクトレットシートを作製した。
[評価]
実施例及び比較例において作製したエレクトレットシートの圧電定数d33を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
(圧電定数d33)
エレクトレットシートの両面に金蒸着を施して試験体を作製した。試験体に加振機を用いて荷重Fが2N、動的荷重が±0.25N、周波数が110Hzの条件下にて押圧力を加え、その時に発生する電荷Q(クーロン)を計測した。電荷Q(クーロン)を荷重F(N)で除することによって圧電定数d33を算出した。なお、圧電定数dijはj方向の荷重、i方向の電荷を意味し、d33はエレクトレットシートの厚み方向の荷重及び厚み方向の電荷となる。
製造直後のエレクトレットシートを23℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽内に1時間に亘って放置した後に、エレクトレットシートの圧電定数d33を測定し、結果を表1における「圧電定数d33(初期)」の欄に記載した。
さらに、エレクトレットシートを80℃の熱風炉中に7日間に亘って放置した後、エレクトレットシートを23℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽内に1時間に亘って放置した。このエレクトレットシートの圧電定数d33を測定し、結果を表1における「圧電定数d33(80℃、7日)」の欄に記載した。
Figure 2013258320

Claims (7)

  1. オレフィン系樹脂シートをその表面温度が上記オレフィン系樹脂の融点よりも低い温度にて養生させた後に、上記オレフィン系樹脂シートに電荷を注入して帯電させることを特徴とするエレクトレットシートの製造方法。
  2. オレフィン系樹脂シートが、エチレン系樹脂及び/又はプロピレン系樹脂を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のエレクトレットシートの製造方法。
  3. オレフィン系樹脂シートが、オレフィン系樹脂発泡シートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレクトレットシートの製造方法。
  4. オレフィン系樹脂シートを延伸した後に養生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトレットシートの製造方法。
  5. オレフィン系樹脂シートをその表面温度が上記オレフィン系樹脂の融点よりも150℃低い温度以上で且つ上記オレフィン系樹脂の融点よりも15℃低い温度以下にて養生させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトレットシートの製造方法。
  6. オレフィン系樹脂シートの養生を1〜120時間行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエレクトレットシートの製造方法。
  7. オレフィン系樹脂シートにコロナ放電処理によって電荷を注入してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエレクトレットシートの製造方法。
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