JP2013257180A - 放射性物質を内部に取り込んだものの処理方法 - Google Patents

放射性物質を内部に取り込んだものの処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】放射性物質を内部に取り込んだものを生活環境において安全なものにする。
【解決手段】水性液体と放射性物質を内部に取り込んだ被処理物とを前記水性液体の臨界温度以下で飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理した後、圧力を解放する工程、被処理物を加圧下に置き、急激に圧力を解放する工程、及び水性液体と被処理物を前記水性液体の臨界温度以下で飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理した後に圧力を急激に解放する工程から選択されたいずれかの工程である加熱/加圧/圧力解放工程と、前記加熱/加圧/圧力解放工程後の被処理物と水性液体との混合物を液分と固体分とに分離する分離工程と、前記分離された液分を気化させて放射性物質を濃縮する濃縮工程と、を包含する。
【選択図】なし

Description

本発明は放射性物質を内部に取り込んだものを生活環境において安全なものにする処理方法に関する。
固体核燃料を用いる原子力発電や原爆などはウラン235やプルトニウム239の原子核を人工的に破壊する核分裂反応に依る。その際、ウラン235やプルトニウム239の原子核は二つあるいはそれ以上の塊(核種すなわち元素)に分裂し、その時にエネルギーが発生する。この分裂をゆっくり制御的に行えば発電になり、瞬時に解放させれば爆弾となる。分裂の結果生じた複数の核種(核分裂生成物)は総じて陽子数と中性子数の均衡を欠いているため放射能を有する放射性核種となる。これらの放射性核種形態(固体/液体/固体)や放射能の強さは核種によって異なっている。放射性核種は放射線を放出しながら最終的に放射性を有しない安定な別の核種に到達するが、その時間も核種によって大きく異なっている。ある核種の放射能が半分になる時間をその核種の半減期というが、半減期の短い核種の放射能は高い。核分裂生成物である放射性クリプトンや放射性キセノンは常温で気体であり、これらを主成分とする放射性雲は移動中にその周辺へ強烈な放射線を放射するが、通過して遠ざかってしまえば放射線が残ることはない。また、気体の放射性沃素は半減期が8日なので半年後には殆ど消滅する。
放射性セシウムは678℃で気体になるため、原発事故で放出されやすく、そうなれば容易に広く環境に拡散する。しかも半減期が30年と長い。またセシウムは土壌粒子と結合しやすいため長い間地表から流出されない。このため、半減期の短い放射性核種や放射性沃素が消滅した後にも残り、地面から放射線を放ち続け、農作物にも取り込まれて、長期にわたる被曝の原因になる。1960年代末までの大気圏核実験によって1億500万京ベクレルという、膨大な核分裂生成物がばらまかれ、地球全体を汚染した。核実験による放射性セシウムは、現在も海水・地表・大気中に残留している。またチェルノブイリ原発事故では、直径約250kmの範囲にわたり、高濃度汚染地域が点在している。さらに福島原発事故でも原発から遠く離れた静岡県の茶からも放射性セシウムが検出された。
また、放射性ストロンチウムも半減期が28年であり、放射性セシウムと同様の問題があるが、原爆実験や原子力発電所の事故に於いてはチェルノブイリ原発事故のように炉心が完全に破壊したような場合に、その爆発によって放出されるものであり、環境への拡散は放射性セシウムより限定される。よって、環境への放射性物質の汚染を考慮する上では、まず放射性セシウムへの対策がきわめて重要である。
このような厄介な放射性セシウムで汚染された、環境にある物体からこのような放射性物質を除去し、放射性物質を特定領域に集約する方法としては、環境中の放射能セシウムが表面に付着しているような物質を水中に入れ、水に溶ける放射性セシウムを水に溶かし、そこにフェロシアン化鉄やフェロシアン化ニッケルなどのフェロシアン化物を溶かし、水中の放射性セシウムをフェロシアン化物に吸着させる方法が知られている(非特許文献1)。
毎日新聞 「顔料使ってセシウム汚染水浄化 東工大が開発」 2011.4.15 毎日新聞社
"福島の土壌はこうすれば生き返る|食の安全|JBpress"、[online]、[2011年9月20日検索]インターネット<URL:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5920>
有田正規"Doc:Radiation/Clay Minerals"、[online]、[2011年9月20日検索]、インターネット<URL;http://metabolomics.jp/wiki/Doc:Radiation/Clay Minerals
上記先行技術は放射性物質が表面に付着するものを水洗して除去する方法であり、放射性物質が内部に取り込まれているもの、例えば、植物や下水汚泥中の微生物のように細胞膜内に取り込まれたもの、または、土壌や焼却灰のように微細孔の中に取り込まれた放射性物質に対しては無力であるという課題がある。本発明は上記課題を解決しようとするものであって、放射性物質を内部に取り込んだものを生活環境において安全なものにする処理方法である。
本発明は水、水溶性液体若しくはそれらの混合物(以下、「水、水溶性液体若しくはそれらの混合物」を「水性液体」という)と放射性物質を内部に取り込んだ被処理物とを前記水性液体の臨界温度以下で飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理した後、圧力を解放する工程、被処理物を加圧下に置き、急激に圧力を解放する工程、及び、水性液体と被処理物を前記水性液体の臨界温度以下で飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理した後に圧力を急激に解放する工程から選択されたいずれかの工程である加熱/加圧/圧力解放工程と、
前記加熱/加圧/圧力解放工程後の被処理物と水性液体との混合物を液分と固体分とに分離する分離工程と、
前記分離された液分を気化させて放射性物質を濃縮する濃縮工程と、
を包含することを特徴とする放射性物質を内部に取り込んだものの処理方法である。
本発明によれば、放射性物質を内部に取り込んだものから放射性物質を工業的な方法により除去又は低減することができ、本発明により処理された、放射性物質を内部に取り込んでいたものは安全に生活環境に戻すことができる。特に放射性物質を内部に取り込んだものと水性液体とを水性液体の臨界温度以下の温度、且つ飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理した後、急激に圧力を解放すると、除染の程度をより一層高めることができる。
また、吸着剤を使用せずに液分を気化させて放射性物質を濃縮するので、放射性物質をより小さな量にまとめることができ、集約性をより向上させることができる。
なお、本発明で「放射性セシウム」或いは「セシウム」というときは、放射性セシウム化合物を包含する。
本発明では、放射性物質を内部に取り込んだものを被処理物とする。この被処理物としては、任意のものとすることができるが、植物、下水汚泥中の微生物といった生物、土壌、焼却灰を例示することができる。また、生物としては、放射性物質が拡散された土壌、海洋、河川に放射性物質を取り込む目的で意図的に配された生物、及び意図せずに放射性物質を内部に取り込んだ生物のいずれをも包含する。本発明ではまず、被処理物と水性液体とを、水性液体の臨界温度以下の温度、且つ飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理した後、圧力を解放するか、被処理物を加圧下に置き、急激に圧力を解放するか、または前記加熱処理後に圧力を急激に解放する。以下、それぞれの処理について説明する。
[被処理物と水性液体とを水性液体の臨界温度以下の温度、且つ飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理した後、圧力を解放する工程]
本発明の加熱処理をする場合、本発明ではまず被処理物と水性液体とを容器内に収容し、加熱処理する前に、好ましくは、前記被処理物を覆う程度以上に水性液体で浸す。このようにすることで、その水性液体が加熱されることで生ずる圧力で、被処理物全体を水性液体で浸しつつ加圧する。その結果、被処理物が例えば、土壌や焼却灰のような、多孔質空孔を有するものである場合には、多孔質空孔に水性液体を浸入させることができる。これに対し、蒸煮のように水分が予め存在しない状況下で加熱すると、蒸煮のためのスチームが一部凝結されるとしても、その量は僅かであり、焼却灰や土壌の多孔質の隙間に浸入することができない。水性液体が浸入することによる効果は後述する。ここで「覆う」のは水性液体の臨界温度以下で飽和蒸気圧以上の状態で被処理物が水性液体で覆われている状態にあればよい。よって、加熱前に予め被処理物を水性液体で覆う程度に浸す必要はなく、例えば、予め存在する水分は覆う程度になくても、加熱に用いる蒸気が凝結することにより生ずる水分が加わって、加熱処理中に覆う程度になってもよい。また、「覆う程度」とは、被処理物の放射性物質の放射能の程度により異なるものの、被処理物の70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上が覆われている状態であれば多くの場合、水性液体の浸入効果が期待できる。しかし、これは容器が固定されている場合であり、容器が例えば水平軸に対し回転するものであれば、より少量の水性液体で被処理物が浸される機会を得ることができる。また、常温以下の温度に置かれた被処理物が蒸気に曝されることで凝結される水性液体の量も加味すると、かなりの程度、被処理物は浸されるからである。被処理物を完全に覆うと共に被処理物表面よりも水性液体の表面が上回るようにすればするほど、水性液体の量が増えるので、水性液体に溶け出す放射性物質量も増え、除染効果はよくなる反面、温度を上げるためのエネルギーがより多く必要となるので、これらのバランスで「覆う程度」の最適条件が決められるとよい。一つの目安としては容器が固定されている場合には、被処理物の容積の1.5〜5倍、より好ましくは2〜4倍である。ここで水性液体としては水、メタノール、エタノール、アセトンなどが好適に用いられる。また、界面活性剤を含む水性液体も被処理物が微細な多孔構造を有する場合には浸透しやすいのでより好適に用いられる。
次いで、容器の密閉状態で、被処理物を水性液体の臨界温度以下の温度、且つ飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理する。この条件は亜臨界状態の一種である。水性液体が水の場合で説明すると、亜臨界状態とは、一般的に、水の臨界温度以上、臨界圧力以下(水の臨界温度は374℃、臨界圧力は22.1MPaである)の高温中圧の水蒸気の状態と、水の臨界温度以下で飽和水蒸気圧以上の中温中圧の液体水の状態を指すが、本発明では後者の水の臨界温度以下で飽和水蒸気圧以上の中温中圧の液体の亜臨界状態で行う。このような状態での水のイオン積は、室温、大気圧下と比較して非常に大きくなる。室温、大気圧下でのイオン積が10-14モル2/kg2であるのに対し、亜臨界状態では10-12〜10-11モル2/kg2と、室温、大気圧下でのイオン積の100〜1000倍になるので、H+とOH-の濃度は常温における値の約3〜30倍となり、加水分解力が非常に大きく、加水分解の起こり得る結合部位への攻撃が極めて大きくなる。水以外の水溶性液体も同様である。水と水溶性液体の混合物の場合には、各成分の持つ加水分解力と成分比を考慮していずれかの成分の臨界温度以下、飽和蒸気圧以上の中温中圧の液体の状態で行う。このような強い加水分解力から、放射性物質、特にセシウムは水性液体に溶解されやすくなっているものと思われる。330℃より温度が高くなると、温度の上昇に伴い、水のイオン積は急激に減少するため加水分解力も急激に衰え、加水分解力は臨界点を超えるとなくなるので、臨界点以下の温度で処理を行うとよい。また、130℃より低い温度でも加水分解力は緩やかではあるが低下するので、好ましくは130〜330℃で、より好ましくは180〜300℃、より一層好ましくは230〜280℃、特に好ましくは240〜270℃で行われる。この反応は無触媒でもよいが、触媒の存在下で行うとさらに効果的である。触媒としては鉄粉などの鉄材が好ましく用いられる。被処理物は、好適には水性液体で覆われており、上記条件下で処理されるので、被処理物は強い加水分解力を受ける。被処理物が土壌や焼却灰の場合には、多孔質中に存在すると思われる放射性セシウムが強い加水分解力を受ける。その結果、放射性セシウムは水性液体中に溶解されやすくなるものと思われる。また、被処理物が、例えば、植物や微生物である場合には、細胞膜が強い加水分解力を受けて、細胞膜は物理的、化学的に破壊されて細胞膜内にある細胞液が外界に流出し得る状態になる。その結果、細胞膜を構成する固体有機物を短時間に低分子の有機物に分解し、リグニンやセルロースのような分子量の高いものも分解することが可能である。その結果、放射性セシウムは水性液体中に溶解されやすくなるものと思われる。これに対し、蒸煮では水性液体が多孔質や細胞膜の中に浸透するほど存在せず、多孔質は蒸気に接しているだけであるので、放射性セシウムは水性液体に溶解されて加水分解力を受ける状況下にはないか、あっても乏しいので、好ましくない。
放射性物質を内部に取り込んだ被処理物を加圧する圧力としては高圧ほど、被処理物が焼却灰や土壌の場合には、その細孔中に水性液体が浸透しやすくなり、生物の場合には物理的にも化学的にも強く影響を受けるので望ましく、3気圧(0.3MPa)以上、好ましくは5気圧(0.5MPa)以上、より好ましくは10気圧(1.0MPa)以上である。熱処理は密閉空間を外部から加熱する方法をとってもよいし、密閉空間に例えば蒸気を注入するような加熱媒体を加える方法であってもよい。後者の場合は蒸気だけでは水分量が足りないので予め水分をある程度存在させておく必要があり、そのために水性液体で浸しておくとよいことは前述した通りである。
容器の大きさは大きいと内部の温度が不均一になりやすいので、容器の大きさを小さいものにするか、或いは攪拌させるのが望ましい。前者の場合は、容量が30〜200L程度、好適には30〜100L程度の小型のものを用いればよく、処理時間は温度によって異なるが、好ましい温度であれば、数秒で十分であるが、装置によって、好ましい温度に至らない場合も考慮すると、数秒〜60分、多くの場合は2〜30分あれば十分である。大量処理が必要な場合にはこのような小型容器を複数個用意する。このような小型容器を複数連動させることで、大型容器を所定の温度にするまでの昇温時間に比べて、短時間で所定温度に達することができ、容器内の温度分布を均一にできることと相俟って大型容器を用いて処理を行う以上に大量処理が可能である。例えば、コンベア上に置かれた被処理物からリミットスイッチによりバルブを介して開いた計量計に向けて被処理物が送り込まれ、所定量の被処理物が計量されたことを光センサーで感知したところでバルブを閉めると、所定量の被処理物が、容器に送り込まれる。相互の容器の被処理物や蒸気の入口と出口はそれぞれリミットスイッチにより所定の条件を満たすと開閉して、順次、熱処理される。
水性液体の臨界温度以下で飽和蒸気圧以上の状態は超臨界水のような酸化還元力がないので、超臨界水を扱う装置に比べれば亜臨界反応を行わせる容器は腐蝕され難いものの、水分と酸素が存在するので、腐蝕を加速させる要因を有する。しかしながら、熱処理において酸素を含まないようにすることで腐蝕そのものを起こさせないようにすることがかなりの程度まで可能である。また、容器内にある空気(酸素や窒素など)は圧力を急激に解放したとき、水蒸気と違って液体になるわけではないので、装置の小型化を図る点からもできるだけ存在しないようにするのが望ましい。そのような手段として、蒸気に用いる水にせよ、予め存在させる水にせよ、純水を使い、しかも80℃程度に加熱して酸素が仮に入り込んだ場合でも追い出したものを用いるのが好ましい。また被処理物に吸着されている空気を例えば0.5〜0.8MPa程度の水蒸気でブロータンク或いは系外に追い出して系内のガスを水蒸気だけにすることも好ましい手段である。また、無機の燐が含まれないようにすることも好ましい手段である。このような配慮をした上で、熱処理後の圧力解放を、急激な圧力低下で行なうと、容器内部の全てのものが吹き飛ばされるので、容器内部は清浄にされるため、相対的に長期にわたる使用が可能であり、容器の長期使用の耐久性の面からも好ましい。本発明で用いられる容器の材料としてはオーステナイト系、マルテンサイト系や二層合金系などのステンレス鋼、高合金鋼などが好適に用いられるが、鉄等も使用可能である。しかしながら、この反応の過程で水酸化セシウムが生成するので、セシウム濃度が高い場合にはその強アルカリ性に対して用心が必要である。
加熱処理した後は、圧力を解放し、常温、常圧に戻す。圧力の解放は急激に行なってもよいし、徐々に圧力を解放してもよい。急激に圧力を解放する場合は、温度が前記加熱処理温度でなされる他は後述の場合と同様である。急激に圧力を解放せずに、徐々に圧力を解放した場合には加熱条件下でせっかく活性化された例えばセシウムのような放射性物質のイオンが解離しているのに、高圧下で徐冷されるため、解離前の相手と再結合する可能性が高くなるので、再結合をできるだけ防ぐべく、加熱処理中に放射性物質を吸着する吸着剤を共存させる方法が用いられる。臨界温度以下という高温に耐えられる吸着性物質としては、粘土、ゼオライトなどの無機系吸着剤が挙げられる。吸着剤については後述する。
上述した、加熱処理中に放射性物質を吸着する吸着剤を共存させない場合には、圧力を解放する工程では圧力を急激に解放する。熱処理後に急激に圧力を解放することの効果は次の段落で詳述するので、ここでは省略する。
[被処理物を加圧下に置き、急激に圧力を解放する工程]
本発明において、前記工程の代わりに、被処理物を加圧下に置き、急激に圧力を解放する工程としてもよい。その際、温度は常温でもよいし、臨界温度以下の高温であってもよいが、好適には臨界温度以下の高温でなされる。この処理の場合には物理的作用が主体となる。熱処理後に急激に圧力を解放すれば、被処理物が生物の場合には、急激な圧力の解放で細胞膜外は常圧になるのに対し、細胞膜内は高圧のままであり、その圧力差が大きい場合には細胞膜が破断され、細胞膜内に取り込まれていた放射性物質は外界にさらされる。また、被処理物が焼却灰や土壌の場合には、その時点まで放射性物質が吸着されていると考えられる土壌や焼却灰の多孔質の孔の中にまで含浸していた水性液体が熱膨張だけでなく、気化することで急激な体積膨張が生じ、その孔は急激な圧力を受けて更に拡げられる。その結果、放射性物質は水性液体とともに外界に飛び出すことができる。蒸煮のような、凝結による僅かな液体しかない場合と比べて、より多くの液体が多孔質の孔に含浸しているので、急激に圧力を解放することで、焼却灰や土壌の細孔のあちらこちらで急激な体積膨張が生じる。加圧下に置き、圧力を急激に解放する工程とは、急激な圧力変化により被処理物を破断する操作をいう。ここで「急激に圧力を解放」とは、熱処理を行なった密閉空間の容積(cm3)に対する、圧力を一度に解放するための開口部の面積(cm2)の比が0.0002/cm以上のものである。この比が高いほど、好ましく、好適には0.0005/cm以上であり、より好ましくは0.001/cm以上であり、より一層好ましくは0.005/cm以上であり、特に好ましくは、0.01/cm以上である。これは圧力を解放する場が大気圧であって、開口部を一気に開けた場合について規定したものであるが、その他の条件下の場合には、適宜その圧力差と移動速度を換算するものとする。また、かかる意味で、加熱処理する前に被処理物を微粉状にしておくことが好ましい。
また、急激に圧力を解放することには別な効果がある。急激に圧力を解放せずに、徐々に圧力を解放した場合には加熱条件下でせっかく活性化された例えばセシウムのような放射性物質のイオンが解離しているのに、高圧下で徐冷されるため、解離前の相手と再結合される可能性が高くなるが、熱処理後、圧力を急激に解放すれば、急激に加水分解しやすい条件からしにくい条件に移るため、再結合される可能性は薄らぎ、液体或いはその液体の気化と共に放出される可能性が高くなる。この意味でも急激に圧力を解放するのが好適である。
この工程に用いられる装置は爆砕装置である。爆砕装置は、圧力容器、圧力容器にバルブを介して連結されるブロータンク、及び必要に応じてサイレンサー等から構成する。圧力容器中に被処理物を60〜90容量%、好適には70〜90容量%、より好適には80〜85容量%で投入し、圧力容器内を高圧にした後、バルブを開き、常圧のブロータンクに被処理物を送り込んで、一気に圧力を解放する。処理量が多く、容器を複数個用意する場合には、その後工程である、圧力を急激に解放する工程は共通のブロータンクにしてもよく、そこに処理されたものが送り込まれる。その過程で、放射性物質は水性液体に溶け込むものもあるが、圧力を急激に解放することで破砕された物やブロータンクの壁に付着しているものもある。後者の放射性物質はブロータンク内をときどき水洗浄することで水に溶け込ませて次の処理工程に廻すことができる。なお、圧力容器中に占める被処理物の量が上記好ましい範囲を下回ると処理効率が悪いだけであり、上記範囲にこだわる必要はない。
[被処理物を水性液体の臨界温度以下の温度、且つ飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理し、圧力を急激に解放する工程]
前記二つの方法の他に、被処理物を水性液体の臨界温度以下の温度、且つ飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理した後、圧力を急激に解放する方法としてもよく、この三つの方法の中ではこの方法が最もよい。前述の説明でこの方法が最も良いことは明らかであるから説明は省略する。
[必要に応じてなされる、気体中の放射性物質の除去工程]
前記加熱処理されたものは、例えば密閉容器中で熱処理後、自然冷却されれば、殆どの放射性物質は水性液体中に溶解していて、気体中には僅かであるので、多くの場合、気体中の放射性物質の除去は不要である。しかしながら、急激に圧力を解放したような場合には、液化されるものもそれなりにあるものの、温度も高く、気体中に放射性物質が同伴されやすい。その量が安全レベルを超えていれば、そのまま大気中に放出することができないので、気化された水性ガスと共に存在する放射性物質が外界に放出されないように密閉系で本発明処理を行ない、放射性物質の回収をしなければならない。その方法としては、気体を、フラッシュコンデンサーのような公知の熱交換手段を用いて冷却して水性液体とする方法、気体を吸着性カラムなどの吸着手段を通すことにより、放射性物質を吸着させる方法、あるいは気体を水性液体中に通すことで放射性物質を水性液体中に溶解させる方法など、公知の方法が採用される。これにより、熱処理後の気体は大気中に安全に放出することが可能である。
[液分と固形分に分離する工程]
次いで被処理物を液分と固形分とに分離する。固形分と液分との固液分離手段としては濾過、スクウィーズ、スクリュープレス、遠心分離など、公知の固液分離手段が用いられ得る。ここで固形分としては被処理物の他に、熱処理工程で吸着剤を用いる場合の吸着剤がある。固形分の中には、爆砕や加熱処理により破砕されて破断が細かいため、一見すると固体と認識しにくい場合が多い。しかも、水性液体が存在するために、本発明でいう固形分は、固形分というより、ドロドロした液状といってもよい場合がある。また、固液分離手段によっては、微粒子であるがために固体でありながら、液分に移行するものも当然存在する。このようなものまで固形分に移行させて回収した方が好ましいのであるが、放射性物質は水性液体中に移り、溶解しているので、そうしなければならないわけではない。固形分に存在する放射性物質は固形分の表面に付着する放射性物質だけであり、多くの場合、安全レベルにある。そのような場合には、生活居住空間に戻される。熱処理時に吸着剤を混在させる場合には、放射性物質を吸着した吸着剤と、除染された固形分との分離がしやすいようにしなければならない。その一つの方法としては比重の違いを利用する方法である。被処理物はその種類により、比重が1を超えるものと1より小さいものがあるので、比重が1より大きい場合には、吸着剤としては比重が1より小さいものを選び、被処理物の比重が1以下の場合には、吸着剤の比重が1より大きいものを選ぶことで分離が可能である。しかし、これに限られるのではなく、被処理物の比重が1より小さいとき、吸着剤も比重が1より小さいものを選び、放射性物質を吸着した吸着剤のみを凝集剤で沈澱させることで除染された被処理物と放射性物質を吸着した吸着剤を分離するようにしてもよい。
[必要に応じてなされる、被処理物の表面を水洗する工程]
被処理物の表面になお付着している放射性物質のために固形分がそのままでは安全レベルを超えている場合には、水洗する。水洗浄は攪拌洗浄が好ましい。また、水洗の際に、固形分を振動させることも効果的である。また、それでも安全レベルを超える場合には、水洗を繰り返すことで、より安全レベルに達することが可能である。または、前述の加熱処理及び圧力解放処理、または加圧・圧力解放処理を繰り返すことでもよい。
[放射性物質を溶存する液分を気化させて、放射性物質を濃縮する工程]
一方、放射性物質を溶存する液分には放射性物質が溶存しているので、液分を気化させることで放射性物質を濃縮することができる。気化手段としては加温或いは常温での蒸発、減圧乾燥などの公知の手段が採用され、例えば、火力発電所や原子力発電所、焼却炉などの廃熱が利用できる。また、減圧乾燥には、減圧下での凍結乾燥が好適に採用される。
セシウムの蒸気圧は水の蒸気圧に比べて低いので、液体分を凍結させて減圧下で乾燥させる。蒸気は、放射線強度が安全レベルであれば、そのまま大気に解放することができる。また、放射線強度が安全レベルでない場合には、蒸気を集めて凍結し、再び減圧下で蒸発させる工程を繰り返すことで、安全レベルまで放射線強度を低めることができる。液体分気化後の残留放射性物質は、樹脂で固めて集約させる。
この濃縮工程では、吸着剤を使用しないことで、放射性物質を小さな量にまとめることができ、集約性を向上させることができる。
(実施例1)
放射能が1385Bqの焼却灰30.6g(放射線強度45300Bq/kg)と湯160.4gを、吉村式穀類膨張機(有限会社ポン菓子機販売製)の釜に入れた。釜は開口部の形状が直径約5cmの円で、釜内容量が600cm3であり、開口部を蓋で閉じ、外部からプロパンガスで加熱して急速加熱させ、釜の表面温度を約240℃、圧力2MPaにし、5分間この状態で保持した。釜の表面温度は非接触温度計で釜外周での温度を計ったものである。この後、釜本体と釜の蓋とを密着させるべく止めているストッパーの爪を木槌で叩き、膨張機に向けて開口部を有し、回収用ポリスチロール容器を内装とするスチール箱に一気に圧力を解放した。膨張機の釜の加熱処理空間容積600cm3に対する開口部の面積約50cm2の比は約0.08/cmである。ポリスチロール容器は厚さが5mmであり、大きさは55cm×55cm×奥行き120cmの直方体であり、スチール箱は厚さ1.2mmであり、大きさは60cm×60cm×120cmの直方体である。箱壁面に付着している処理された、水を含んでいる焼却灰をキムワイプ(登録商標)で拭き取って回収し、31.9gを得た。その放射線強度は8390Bq/kgであった。なお、釜内には残渣はなく、投入した湯の殆どは蒸気として気化した。回収した31.9gに対し、湯301.2gに分散し、攪拌し、濾紙(No.1)を用い、固液分離した。濾液は251.2gであり、181Bqの放射能であり、放射線強度は720Bq/kgであったが、この液を気化させて放射性セシウム含有液を濃縮させ2.5gとし、72000Bq/kgになった。他方、濾過残渣(固形分)は水分が含まれているが72gであり、放射能は97Bqであり、1340Bq/kgの放射線強度であった。当初の焼却灰の放射線強度である45300Bq/kgが1340Bq/kgに減少しており、焼却灰に含まれていた放射能の約97%を除去することができた。
(比較例1)
実施例1のような熱処理をせず、水洗のみでどこまで放射能を減らせるかを見たものである。実施例1と同一の焼却灰30.6gを湯74.9gに分散し、攪拌し、No.1濾紙を用い、濾過し、その残渣に対し、更に湯16.5gを加え、同様に攪拌、濾過した。残渣は放射能が325Bqで、水分も含有する46.0gであり、その放射線強度は7065Bq/kgである。よって、焼却灰の約85%の放射能が除去されただけであった。この水洗後の焼却灰をさらに同様に水洗したが、放射線強度はそれ以下には下がらないことも分かった。
本発明は、放射性物質で汚染された環境を元の状態に復帰させるのに利用することができる。

Claims (5)

  1. 水、水溶性液体若しくはそれらの混合物(以下、「水、水溶性液体若しくはそれらの混合物」を「水性液体」という)と放射性物質を内部に取り込んだ被処理物とを前記水性液体の臨界温度以下で飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理した後、圧力を解放する工程、被処理物を加圧下に置き、急激に圧力を解放する工程、及び、水性液体と被処理物を前記水性液体の臨界温度以下で飽和蒸気圧以上の圧力状態で加熱処理した後に圧力を急激に解放する工程から選択されたいずれかの工程である加熱/加圧/圧力解放工程と、
    前記加熱/加圧/圧力解放工程後の被処理物と水性液体との混合物を液分と固体分とに分離する分離工程と、
    前記分離された液分を気化させて放射性物質を濃縮する濃縮工程と、
    を包含することを特徴とする放射性物質を内部に取り込んだものの処理方法。
  2. 前記濃縮工程は、液分を高温または常温下で蒸発させることを特徴とする請求項1記載の放射性物質を内部に取り込んだものの処理方法。
  3. 前記濃縮工程は、液分を凍結させて行うことを特徴とする請求項1記載の放射性物質を内部に取り込んだものの処理方法。
  4. 前記濃縮工程は、液分を加圧下で蒸発させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放射性物質を内部に取り込んだものの処理方法。
  5. 前記加熱/加圧/圧力解放工程の前に、被処理物を覆う程度以上に被処理物を水性液体で浸すことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の放射性物質を内部に取り込んだものの処理方法。
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