JP2013256643A - フルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物 - Google Patents

フルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物 Download PDF

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Abstract

【課題】撥水性、撥油性、防汚性を有し、かつ、高い表面滑り性を有する層を形成することのできる新規なフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を提供する。
【解決手段】特定構造で示される、フルオロポリエーテル基とオルガノポリシロキサン基をそれぞれ1個または複数個有し、さらに加水分解可能なシリル基をも有するフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物。
【選択図】なし

Description

本発明は、フルオロポリエーテル基、特にパーフルオロポリエーテル基を含有するシリコーン化合物に関する。また、本発明は、かかるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を使用した表面処理剤等に関する。
ある種の含フッ素シラン化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層(以下、表面処理層とも言う)は、いわゆる機能性薄膜として、例えばガラス、プラスチック、繊維、建築資材など種々多様な基材に施されている。
そのような含フッ素シラン化合物として、パーフルオロポリエーテル基を分子主鎖に有し、Si原子に結合した加水分解可能な基を分子末端または末端部に有するパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物が知られている(特許文献1〜2を参照のこと)。このパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤を基材に適用すると、Si原子に結合した加水分解可能な基が基材との間および化合物間で反応することにより結合して、表面処理層を形成し得る。
特表2008−534696号公報 国際公開第97/07155号 特表2009−541498号公報 特開2011−116947号公報 特開2011−178835号公報
パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層は、上記のような機能を薄膜でも発揮し得ることから、光透過性ないし透明性が求められるメガネやタッチパネルなどの光学部材に好適に利用されている。とりわけ、これら用途においては、撥水性、撥油性、指紋等の汚れが付着するのを防止する防汚性に加えて、指紋等の汚れが付着しても容易に拭き取ることができる表面滑り性が求められる。
更に、近年、スマートフォンやタブレット型端末が急速に普及する中、タッチパネルの用途においては、ユーザが指でディスプレイパネルに触れて操作した際に優れた触感(使用感)を提供することが望まれている。このため、従来よりも一層高い表面滑り性を実現することが求められている。
しかしながら、従来のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層では、次第に高まる表面滑り性向上の要求に応えるには、もはや必ずしも十分とは言えない。
離型剤に関しては、シロキサン骨格を分子主鎖に有し、かつ炭素数1〜6のフルオロアルキル基を分子側鎖に有するフルオロアルキル基含有シリコーン化合物が知られている(特許文献3を参照のこと)。しかしながら、かかるフルオロアルキル基含有シリコーン化合物は、離型性を有するものの、基材に対して撥水性、撥油性、防汚性などを提供するものではない。
撥水性、撥油性、防汚性などを提供するために使用される表面処理剤に関しては、2価のパーフルオロポリエーテル基およびシロキサン骨格を分子主鎖に有し、シロキサン骨格を成すSi原子に−(CH)−の繰り返し単位を介してSi原子が連結され、これにより連結されたSi原子に、加水分解可能な基が結合しているパーフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物が知られている(特許文献4および5を参照のこと)。しかしながら、かかるパーフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物であっても、表面滑り性の点で必ずしも満足できるものではない。
本発明は、撥水性、撥油性、防汚性を有し、かつ、高い表面滑り性を有する層を形成することのできる新規なフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、かかるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を使用して得られる表面処理剤等を提供することを目的とする。
本発明の1つの要旨によれば、下記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)のいずれかで表される構造を有するフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物が提供される。
Figure 2013256643
(これら式中、Rは置換または非置換のメチル基であり、Rfはフルオロポリエーテル基を含む基であり、Xは3価の有機基であり、Yは2価の有機基であり、Zは加水分解可能な部位を含むシリル基であり、Sは一価のオルガノポリシロキサン基であり、Sは二価のオルガノポリシロキサン基であり、mは1以上5以下である。)
なお、本明細書を通じて、ある一般式中に同じ記号が複数存在している場合、これらは互いに独立して選択され得る。
本発明の上記フルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、フルオロポリエーテル基(Rf中)と、オルガノポリシロキサン基(SまたはS)と、加水分解可能な部位を含むシリル基(Z)とを有する。フルオロポリエーテル基(Rf中)は、撥水性および撥油性ひいては防汚性に寄与する。また、オルガノポリシロキサン基(SまたはS)のシロキサン骨格は、表面滑り性に寄与する。更に、加水分解可能な部位を含むシリル基(Z)は、摩擦耐久性に寄与する。かかるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物によれば、撥水性、撥油性、防汚性を有し、かつ、高い表面滑り性を有し、摩擦耐久性を有する層を形成することが可能となる。
上記一般式(Ia)および(Ib)において、Sは以下の式:
Figure 2013256643
(式中、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立してアルキル基またはアリール基であり、nは1以上200以下である。)
で表されるオルガノポリシロキサン基であってよい。
上記一般式(IIa)および(IIb)において、Sは以下の式:
Figure 2013256643
(式中、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立してアルキル基またはアリール基であり、nは1以上200以下である。)
で表されるオルガノポリシロキサン基であってよい。
上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Rfは、好ましくはパーフルオロポリエーテル基を含む基であるが、フッ素原子の一部が水素原子または他のハロゲン原子に置換されていてもよい。パーフルオロポリエーテル基は、撥水性および撥油性ひいては防汚性を一層高めることができる。
例えば、Rfは以下の式:
−(R−R10−R11
[式中、Rは炭素数1〜15のパーフルオロアルキレン基であり、
jは0または1であり、
10は以下の式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、cおよびvは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、cおよびvの和は少なくとも1であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表されるパーフルオロポリエーテル基であり、
11は以下の式:
−(Q)−(CFZ’)
(式中、Qは酸素原子または2価の極性基を表し、Z’はフッ素原子または低級フルオロアルキル基を表し、dおよびeはそれぞれ独立して0以上50以下の整数であって、dおよびeの和は少なくとも1であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基である。]
で表される基であってよい。
また例えば、上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Rfは以下の式:
−CFCF−(OCFCFCFa’−OCFCF
(式中、a’は1以上200以下の整数である。)
で表されるパーフルオロポリエーテル基であってよい。
上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Zは以下の式:
−SiT12 3−x
(式中、Tは水酸基または加水分解可能な基であり、R12は水素原子または炭素数1〜22のアルキル基であり、xは1、2または3である。)
で表されるシリル基であってよい。
上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Xは以下の式のいずれか:
Figure 2013256643
(これら式中、pは1以上10以下の整数であり、R13は2価の有機基であり、式の左端がRfに結合し、式の右端がSまたはSに結合し、式の下端がYに結合する。)
で表される基であってよい。
上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Yは以下の式:
−OCONH−(CH
(式中、rは1以上10以下の整数であり、式の左端がXに結合し、式の右端がZに結合する。)
で表される基であってよい。
本発明のもう1つの要旨によれば、上記フルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を含む表面処理剤もまた提供される。本発明の表面処理剤は、上記一般式(Ia)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物および上記一般式(Ib)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物の少なくとも一方を含み、これらの双方を含んでいてもよい。また、本発明の表面処理剤は、上記一般式(IIa)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物および上記一般式(IIb)で表される構造を有するフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物の少なくとも一方を含み、これらの双方を含んでいてもよい。しかしながら、本発明の表面処理組成物は、上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)で表される構造を有するフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物のいずれかを含んでいればよく、これらの2種以上を任意の組合せで含んでいてもよい。かかる本発明の表面処理剤は、撥水性、撥油性、防汚性、表面滑り性を基材に対して付与することができ、特に限定されるものではないが、防汚性コーティング剤として好適に使用され得る。
本発明の更にもう1つの要旨によれば、基材と、該基材の表面に、上記フルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物または上記表面処理剤より形成された層(表面処理層)とを含む物品もまた提供される。かかる物品における層は、撥水性、撥油性、防汚性を有し、かつ、高い表面滑り性を有する。
本発明によって得られる物品は、特に限定されるものではないが、例えば光学部材であり得る。光学部材は、表面滑り性の向上に対する要請が高く、本発明が好適に利用され得る。上記基材は、例えばガラスまたは透明プラスチックであり得る。なお、本発明において「透明」とは、一般的に透明と認識され得るものであればよいが、例えば、ヘイズ値3%以下のものを意味する。
本発明によれば、新規なフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物が提供され、この化合物は、フルオロポリエーテル基と、オルガノポリシロキサン基と、加水分解可能な部位を含むシリル基とを有し、これにより、撥水性、撥油性、防汚性を有し、かつ、高い表面滑り性を有し、摩擦耐久性を有する層を形成することができる。更に、本発明によれば、かかるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を使用して得られる表面処理剤およびそれらを適用した物品もまた提供される。
以下、本発明のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物、表面処理剤、およびそれらを適用して得られる物品について詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
・フルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物
本発明のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、下記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)のいずれかで表される(なお、より厳密には、一般式(IIb)の場合には、一般式(IIb)で表される構造を有し、以下も同様である)。
Figure 2013256643
上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Rは置換または非置換のメチル基である。メチル基の置換基としては、フッ素、ヨウ素、臭素などのハロゲン原子が挙げられる。Rは、フッ素原子で置換されたメチル基であってよく、好ましくはトリフルオロメチル基(CF−)である。
上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)中、Rfはフルオロポリエーテル基を含む基である。Rfのフルオロポリエーテル基は、エーテル結合鎖に関して、直鎖状、分枝状および環状構造をとり得るが、直鎖状であることが好ましい。また、Rfのフルオロポリエーテル基は、パーフルオロポリエーテル基であることが好ましいが、フッ素原子の一部が水素原子または他のハロゲン原子に置換されていてもよい。更に、Rfが全体として、パーフルオロポリエーテル基であることがより好ましい。
より詳細には、Rfは以下の式:
−(R−R10−R11
で表される基であることが好ましい。
この式中、Rは炭素数1〜15の(例えば直鎖状または分枝状の)パーフルオロアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜2のパーフルオロアルキル基(−CF−、−C−)である。jは0または1であってよい。
上記式中、R10は以下の式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
で表されるパーフルオロポリエーテル基である。この式中、a、b、cおよびvは、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロポリエーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上200以下、好ましくは1以上100以下の整数であって、a、b、cおよびvの和は少なくとも1、好ましくは1以上100以下である。また、添字a、b、cまたはvを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、便宜上、式中では特定の順序で記載したが、これら繰り返し単位の結合順序はこれに限定されず、任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC)−は、−(OCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCF)−、−(OCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCF(CF))−、−(OC(CFCF)−、−(OCFC(CF)−、−(OCF(CF)CF(CF))−、−(OCF(C)CF)−および−(OCFCF(C))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCFCF)−、−(OCF(CF)CF)−および−(OCFCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCF)−および−(OCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCF)−である。
また上記式中、R11は以下の式:
−(Q)−(CFZ’)
で表される基である。この式中、Qは酸素原子(−O−)または他の2価の極性基を表す。Qが酸素原子である場合、Rfは全体として、パーフルオロポリエーテル基となる。2価の極性基の例としては、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−COS−、−SCO−などが挙げられ、好ましくは−O−、−COO−、−CONH−である。Z’はフッ素原子または低級フルオロアルキル基、例えば炭素数1〜3のフルオロアルキル基を表す。またこの式中、dおよびeはそれぞれ独立して0以上50以下、好ましくは0〜20の整数、例えば1〜20の整数であって、dおよびeの和は少なくとも1、好ましくは1〜10である。dおよびeは0〜2の整数であることが一層好ましく、d=0または1、e=2であることがより一層好ましい。また、添字dおよびeを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、便宜上、式中では特定の順序で記載したが、これら繰り返し単位の結合順序はこれに限定されず、任意である。
かかるパーフルオロポリエーテル基を有する化合物は、優れた撥水性および撥油性ひいては防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)を発現し得る。
具体的には、Rfは以下の式:
−CFCF−(OCFCFCFa’−OCFCF
で表されるパーフルオロポリエーテル基であってよい。式中、a’は1以上200以下、好ましくは1以上100以下の整数である。この場合、パーフルオロポリエーテル基は直鎖状構造を有し、分枝状構造を有する場合に比べて高い摩擦耐久性を得ることができ、また、合成が容易であるという利点もある。
上記一般式(Ia)および(Ib)におけるSならびに上記一般式(IIa)および(IIb)におけるSは、いずれも直鎖状のオルガノポリシロキサン基であって、末端(直鎖状の基の末端、より詳細には、Sは片方の末端であり、Sは両方の末端である)にて、後述するXと結合する基であることが好ましい。直鎖状のオルガノポリシロキサン基は、側鎖に任意の適切な有機基を有し得る。
シロキサン骨格を有する化合物は、優れた表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の目立ちにくさや、指に対する優れた触感)を発現し得る。
より詳細には、Sは以下の式で表されるオルガノポリシロキサン基であってよい。
Figure 2013256643
式中、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、置換または非置換のアルキル基あるいは置換または非置換のアリール基である。かかる置換または非置換のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12を有する。置換または非置換のアリール基は、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12を有する。アルキル基の置換基としては、塩素原子などのハロゲン原子が挙げられる。アリール基の置換基としては、塩素原子などのハロゲン原子や、また、例えばメチル基などの炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。R〜Rの例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびドデシル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基;フェニル基およびナフチル基などの非置換アリール基;4−クロロフェニル基および2−メチルフェニル基などの置換アリール基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
また、式中、nは1以上200以下、好ましくは1以上100以下である。1つの化合物のみに着目すれば、nは整数であるが、本発明の化合物は上記一般式(Ia)で表される複数の化合物の混合物、上記一般式(Ib)で表される複数の化合物の混合物、上記一般式(IIa)で表される複数の化合物の混合物、または上記一般式(IIb)で表される複数の化合物の混合物であってよく、この場合、nは、かかる混合物の平均組成を表す実数であり得る。
また、Sは以下の式で表されるオルガノポリシロキサン基であってよい。
Figure 2013256643
式中、R、R、R、R、RおよびR、ならびにnについては、上記と同様の説明が当て嵌まる。
上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)中、Xは、RfとSまたはS(より詳細にはシロキサン骨格を成すSi)と後述するYとの間を結合する連結基である。Xは、3価の有機基であればよい。
より詳細には、Xは以下の式のいずれか:
Figure 2013256643
で表される基(但し、式の左端がRfに結合し、式の右端がSまたはSに結合し、式の下端がYに結合するものとする)であってよい。これら式中、pは1以上10以下、好ましくは1以上5以下の整数であり、R13は2価の有機基である。R13は、特に限定されないが、例えば−(CHq’−O−(CH−であってよく、qは1以上20以下、好ましくは1以上10以下の整数であり、q’は1以上10以下、好ましくは1以上5以下の整数、代表的には1である。
しかしながら、Xは上記の例に限定されず、RfとSまたはS(より詳細にはシロキサン骨格を成すSi)と後述するYとの間を結合する限り、任意の適切な2価の有機基を適用し得る。
上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Zは加水分解可能な部位を含むシリル基である。より詳細には、Zは以下の式:
−SiT12 3−x
で表されるシリル基であってよい。この式中、TおよびR12はSiに結合する基であり、xは1、2または3である。
Tは水酸基または加水分解可能な基を表す。加水分解可能な基の例としては、−OA、−OCOA、−O−N=C(A)、−N(A)、−NHA、ハロゲン(これら式中、Aは、置換または非置換の炭素数1〜3のアルキル基を示す)などが挙げられ、好ましくは−OA(アルコキシ基)である。Aの例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。
12は水素原子または炭素数1〜22の(例えば直鎖状または分枝状の)アルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜22のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基(CH−、C−、C−)である。
本発明の化合物において、Siに結合した加水分解可能な基(−T)は、基材との間および化合物間で反応することにより結合し得、かかる基を有する化合物は、(例えば後述するシリコーンオイルや含フッ素オイルに比べて)優れた摩擦耐久性を発現し得る。
上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)中、Yは、XとZとの間を結合する連結基である。Yは、2価の有機基であればよい。
より詳細には、Yは以下の式:
−OCONH−(CH
で表される基(但し、式の左端がXに結合し、式の右端がZに結合するものとする)であってよい。この式中、rは1以上10以下、好ましくは1以上5以下の整数である。
しかしながら、Yは上記の例に限定されず、XとZとの間を結合する限り、任意の適切な2価の有機基を適用し得る。
上記一般式(IIb)において、mは1以上5以下であり、好ましくは1以上3以下である。1つの化合物のみに着目すれば、mは整数であるが、本発明の化合物は上記一般式(IIb)で表される構造を有する複数の化合物の混合物であってよく、この場合、mは、かかる混合物の平均組成を表す実数であり得る。
以上、本発明の一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物について説明した。一般式(Ia)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、例えば1000〜30000の平均分子量を有することが好ましい。また、一般式(Ib)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、例えば2000〜15000の平均分子量を有することが好ましい。一般式(IIa)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、例えば1000〜30000の平均分子量を有することが好ましい。また、一般式(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、例えば2000〜15000の平均分子量を有することが好ましい。これにより、溶媒に対する高い溶解性が得られ、また、合成が容易であるという利点もある。なお、本発明において「平均分子量」は数平均分子量を言う。
かかる本発明のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、任意の適切な方法によって製造可能である。
例えば、上記一般式(Ia)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、シリコーン系原料として以下の一般式(i):
Figure 2013256643
(式中、R13およびSは上記の通りである。)
で表される化合物を、フルオロポリエーテル系原料として以下の一般式(ii)または(iii):
−Rf−(CH−OH ・・・(ii)
−Rf−(CH−NH ・・・(iii)
(式中、R、Rf、pは上記の通りである。)
で表される化合物とエポキシ開環反応に付し、およびシリル基含有原料として以下の一般式(iv):
OCN−(CH−Z ・・・(iv)
(式中、Z、rは上記の通りである。)
で表される化合物とウレタン結合形成反応に付すことによって得ることができる。
また例えば、上記一般式(Ib)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、シリコーン系原料として以下の一般式(i):
Figure 2013256643
(式中、R13およびSは上記の通りである。)で表される化合物を、フルオロポリエーテル系原料として以下の一般式(ii’)または(iii’):
HO−(CH−Rf−(CH−OH ・・・(ii’)
N−(CH−Rf−(CH−NH ・・・(iii’)
(式中、Rf、pは上記の通りである。)
で表される化合物とエポキシ開環反応に付し、およびシリル基含有原料として以下の一般式(iv):
OCN−(CH−Z ・・・(iv)
(式中、Z、sは上記の通りである。)で表される化合物とウレタン結合形成反応に付すことによって得ることができる。
また例えば、上記一般式(IIa)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、シリコーン系原料として以下の一般式(i’):
Figure 2013256643
(式中、R13およびSは上記の通りである。)で表される化合物を、フルオロポリエーテル系原料として以下の一般式(ii)または(iii):
−Rf−(CH−OH ・・・(ii)
−Rf−(CH−NH ・・・(iii)
(式中、R、Rf、pは上記の通りである。)
で表される化合物とエポキシ開環反応に付し、およびシリル基含有原料として以下の一般式(iv):
OCN−(CH−Z ・・・(iv)
(式中、Z、rは上記の通りである。)
で表される化合物とウレタン結合形成反応に付すことによって得ることができる。
また例えば、上記一般式(IIb)で表される構造を有するフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、シリコーン系原料として以下の一般式(i’):
Figure 2013256643
(式中、R13およびSは上記の通りである。)
で表される化合物を、フルオロポリエーテル系原料として以下の一般式(ii’)または(iii’):
HO−(CH−Rf−(CH−OH ・・・(ii’)
N−(CH−Rf−(CH−NH ・・・(iii’)
(式中、Rf、pは上記の通りである。)
で表される化合物とエポキシ開環反応に付し、およびシリル基含有原料として以下の一般式(iv):
OCN−(CH−Z ・・・(iv)
(式中、Z、sは上記の通りである。)
で表される化合物とウレタン結合形成反応に付すことによって得ることができる。
この例において得られるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物は、具体的には、使用するフルオロポリエーテル系原料にもよるが、以下の式のいずれかで表される化合物となる。
Figure 2013256643
これらいずれの例により得られるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物についても、Xは、使用するフルオロポリエーテル系原料に応じて以下の式のいずれか:
Figure 2013256643
(式中、pおよびR13は上記の通りであり、式の左端がRfに結合し、式の右端がSに結合し、式の下端がYに結合するものとする。)
で表される基となり、Yは以下の式:
−OCONH−(CH
(式中、rは上記の通りであり、式の左端がXに結合し、式の右端がZに結合するものとする)
で表される基となる。
また例えば、フルオロポリエーテル系原料として、一般式(ii)で表される化合物と一般式(ii’)で表される化合物とが混在している原料や、一般式(iii)で表される化合物と一般式(iii’)で表される化合物とが混在している原料(これら原料中、後述する一般式R−Rf−Fで表される含フッ素オイルが更に混在していてもよい)を用いてよい。また例えば、シリコーン系原料として、一般式(i)で表される化合物と一般式(i’)で表される化合物とが混在している原料を用いてよい。かかる場合には、得られる反応混合物において、上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物が、使用する原料に応じて適宜混在することとなる。
上記のエポキシ開環反応およびウレタン結合形成反応は、いずれも、無溶媒で、または溶媒中で進行させてよい。かかる溶媒の例としては、パーフルオロ脂肪族炭化水素、含フッ素置換基を有する芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)、ヒドロフルオロエーテルなどが挙げられ、これらを単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
エポキシ開環反応は、酸などの触媒の存在下にて、例えば0〜150℃で、簡便には常圧下で実施され得る。ウレタン結合形成反応は、有機スズ、有機チタンおよびアミン化合物などの触媒の存在下にて、例えば20〜150℃で、簡便には常圧下で実施され得る。エポキシ開環反応およびウレタン結合形成反応を実施する場合には、窒素気流下で反応させることが、縮合反応を抑える観点から好ましい。
以上、本発明の4種のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物について、それぞれ製造例を挙げて説明したが、本発明のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物はこれらの例によって製造されたものに限定されるものではない。
本発明の化合物は、下記するように表面処理剤において有用であるが、これに限定されず、例えば潤滑剤、相溶化剤としても用いることができる。
・表面処理剤
本発明の表面処理剤(または表面処理組成物)は、上述した本発明のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を含むものであればよい。具体的には、上記一般式(Ia)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物および上記一般式(Ib)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物の少なくとも一方を含み、これらの双方を含んでいてもよい。これらを組み合わせて用いる場合、一般式(Ia)で表される化合物と、一般式(Ib)で表される化合物とは、例えば、質量比1:1〜9:1で存在し得るが、これに限定されない。また、上記一般式(IIa)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物および上記一般式(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物の少なくとも一方を含み、これらの双方を含んでいてもよい。これらを組み合わせて用いる場合、一般式(IIa)で表される化合物と、一般式(IIb)で表される化合物とは、例えば、質量比1:1〜9:1で存在し得るが、これに限定されない。しかしながら、本発明の表面処理組成物は、上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物のいずれかを含んでいればよく、これらの2種以上を任意の組合せで含んでいてもよい。
表面処理剤は、フルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を主成分または有効成分として含んでいればよい。ここで、「主成分」とは、表面処理剤中の含量が50%を超える成分を言い、「有効成分」とは、表面処理すべき基材上に残留して表面処理層を形成し、何らかの機能(撥水性、撥油性、防汚性、表面滑り性、摩擦耐久性など)を発現させ得る成分を意味する。
本発明の表面処理剤は、上述のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を含んでおり、撥水性、撥油性、防汚性を有し、かつ、高い表面滑り性を有し、摩擦耐久性を有する表面処理層を形成することができるので、防汚性コーティング剤として好適に利用される。
更に、本発明の表面処理剤は、シリコーンオイルとして理解され得る(例えば非フッ素系)シリコーン化合物(以下、本発明のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物と区別する趣旨で、「シリコーンオイル」と言う)を含んでいてもよい。シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を一層向上させるのに寄与する。
本発明の表面処理剤中、上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物合計100質量部に対して、シリコーンオイルは、例えば0〜80質量部、好ましくは0〜40質量部で含まれ得る。
かかるシリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2000以下の直鎖状または環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
また、本発明の表面処理剤は、含フッ素オイルとして理解され得るフルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロポリエーテル化合物を含んでいてもよい(以下、本発明のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物と区別する趣旨で、「含フッ素オイル」と言う)。含フッ素オイルは、表面処理層の表面滑り性を一層向上させるのに寄与する。
本発明の表面処理剤中、上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物合計100質量部に対して、含フッ素オイルは、例えば0〜80質量部、好ましくは0〜40質量部で含まれ得る。
かかる含フッ素オイルとしては、以下の一般式(IV)で表される化合物(パーフルオロポリエーテル化合物)が挙げられる。
21−(OCv’’−(OCa’’−(OCb’’−(OCFc’’−R22 ・・・(IV)
式中、R21は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し、好ましくは1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基である。好ましくは、上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基は、末端炭素原子がCFH−であり他のすべての炭素原子がフッ素により全置換されているフルオロアルキル基、またはパーフルオロアルキル基であり、より好ましくはパーフルオロアルキル基である。
22は、水素原子、フッ素原子、または1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し、好ましくは1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基である。好ましくは、上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基は、末端炭素原子がCFH−であり他のすべての炭素原子がフッ素により全置換されているフルオロアルキル基、またはパーフルオロアルキル基であり、より好ましくはパーフルオロアルキル基である。
a’’、b’’、c’’およびv’’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロポリエーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数、1以上300以下の整数であって、a’’、b’’、c’’およびv’’の和は少なくとも1、好ましくは1〜100である。添字a’’、b’’、c’’またはv’’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC)−は、−(OCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCF)−、−(OCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCF(CF))−、−(OC(CFCF)−、−(OCFC(CF)−、−(OCF(CF)CF(CF))−、−(OCF(C)CF)−および−(OCFCF(C))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCFCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCFCF)−、−(OCF(CF)CF)−および−(OCFCF(CF))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCF)−および−(OCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCF)−である。
上記一般式(IV)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物の例として、以下の一般式(IVa)および(IVb)のいずれかで示される化合物(1種または2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
21−(OCFCFCFa’’’−R22 ・・・(IVa)
21−(OCFCFCFCFv’’’−(OCFCFCFa’’’−(OCFCFb’’’−(OCFc’’’−R22 ・・・(IVb)
これら式中、R21およびR22は上記の通りであり;式(IVa)中、a’’’は1以上100以下の整数であり;式(IVb)中、v’’’およびa’’’はそれぞれ独立して1以上30以下の整数であり、b’’’およびc’’’はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a’’’、b’’’、c’’’またはv’’’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。)
一般式(IVa)で示される化合物および一般式(IVb)で示される化合物は、それぞれ単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。一般式(IVa)で示される化合物よりも、一般式(IVb)で示される化合物を用いるほうが、より高い表面滑り性が得られるので好ましい。これらを組み合わせて用いる場合、一般式(IVa)で表される化合物と、一般式(IVb)で表される化合物とを、質量比1:1〜1:30で使用することが好ましい。かかる質量比によれば、表面滑り性と摩擦耐久性のバランスに優れた表面処理剤を得ることができる。
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式R−Rf−F(式中、RおよびRfは上記の通りであり、Rは好ましくはトリフルオロメチル基である)で表される化合物であってよい。R−Rf−Fで表される化合物は、上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)で表される各化合物と高い親和性が得られる点で好ましい。
含フッ素オイルは、好ましくは1000〜30000、より好ましくは3000〜30000の平均分子量を有する。これにより、高い表面滑り性を得ることができる。
また、本発明の表面処理剤は、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含んでいてもよい。パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、表面処理層の撥水性、撥油性、防汚性、表面滑り性、摩擦耐久性に寄与し、とりわけ摩擦耐久性向上に寄与し得る。
本発明の表面処理剤中、上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物合計100質量部に対して、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、例えば0〜80質量部、好ましくは0〜40質量部で含まれ得る。
かかるパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物としては、以下の一般式(Va)および(Vb)のいずれかで示される化合物(1種または2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Figure 2013256643
これら式中、R31は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基である。好ましくは、上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基は、末端炭素原子がCFH−であり他のすべての炭素原子がフッ素により全置換されているフルオロアルキル基、またはパーフルオロアルキル基であり、より好ましくはパーフルオロアルキル基である。
a、b、cおよびvは、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロポリエーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上200以下の整数、
例えば1以上200以下の整数であって、a、b、cおよびvの和は少なくとも1、好ましくは1〜100である。添字a、b、cまたはvを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC)−は、−(OCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCF)−、−(OCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCF(CF))−、−(OC(CFCF)−、−(OCFC(CF)−、−(OCF(CF)CF(CF))−、−(OCF(C)CF)−および−(OCFCF(C))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCFCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCFCF)−、−(OCF(CF)CF)−および−(OCFCF(CF))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCF)−および−(OCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCF)−である。
kは0または1である。
fは1以上10以下の整数である。
gは0以上2以下の整数である。
X’は水素原子またはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子、フッ素原子である。
Y’は水素原子または低級アルキル基を表す。低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。
Z’はフッ素原子または低級フルオロアルキル基を表す。低級フルオロアルキル基は、例えば炭素数1〜3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。
TおよびR32はSiに結合した基である。
Tは水酸基または加水分解可能な基を表す。加水分解可能な基の例としては、−OA、−OCOA、−O−N=C(A)、−N(A)、−NHA、ハロゲン(これら式中、Aは、置換または非置換の炭素数1〜3のアルキル基を示す)などが挙げられる。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。
32は水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜22のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。
xは1、2または3である。
なお、式中、X’、Y’、Z’、T、R32、k、f、g、xは複数存在するが、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
また、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の別の例として、以下の一般式(VIa)および(VIb)のいずれかで示される化合物(1種または2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Figure 2013256643
これら式中、R31は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基である。好ましくは、上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基は、末端炭素原子がCFH−であり他のすべての炭素原子がフッ素により全置換されているフルオロアルキル基、またはパーフルオロアルキル基であり、より好ましくはパーフルオロアルキル基である。
a、b、cおよびvは、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロポリエーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上200以下の整数、例えば1以上200以下の整数であって、a、b、cおよびvの和は少なくとも1、好ましくは1〜100である。添字a、b、cまたはvを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC)−は、−(OCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCF)−、−(OCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCF(CF))−、−(OC(CFCF)−、−(OCFC(CF)−、−(OCF(CF)CF(CF))−、−(OCF(C)CF)−および−(OCFCF(C))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCFCF)−、−(OCF(CF)CF)−および−(OCFCF(CF))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCF)−および−(OCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCF)−である。
kは0または1である。
hは1または2である。
iは2以上20以下の整数である。
Z’はフッ素原子または低級フルオロアルキル基を表す。低級フルオロアルキル基は、例えば炭素数1〜3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。
TおよびR32はSiに結合した基である。
Tは水酸基または加水分解可能な基を表す。加水分解可能な基の例としては、−OA、−OCOA、−O−N=C(A)、−N(A)、−NHA、ハロゲン(これら式中、Aは、置換または非置換の炭素数1〜3のアルキル基を示す)などが挙げられる。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。
32は水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜22のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3の直鎖状または分枝状のアルキル基である。
xは1、0または3である。
なお、式中、Z’、T、R32、k、h、i、xは複数存在するが、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
上記一般式(Va)、(Vb)、(VIa)、(VIb)中、−(OC−(OC−(OC−(OCF−は:
−(OCFCFCFa’
(式中、a’は1以上200以下の整数、好ましくは1以上100以下の整数である)
または
−(OCFCFCFCFv’−(OCFCFCFa’−(OCFCFb’−(OCFc’
(式中、v’およびa’は1以上30以下の整数であり、b’およびc’は1以上300以下の整数であり、添字a’、b’、c’またはv’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。)
であってよい。また、代表的には、Z’はフッ素原子であり、kは1である。
パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の分子量は、特に限定されないが、例えば1000〜12000の平均分子量を有していてよい。かかる範囲の中でも、2000〜10000の平均分子量を有することが、撥水性、撥油性、表面滑り性(例えば指紋拭き取り性)および摩擦耐久性の観点から好ましい。
本発明の表面処理剤は、基材に対して非反応性である化合物(例えばシリコーンオイルおよび/または含フッ素オイル)と、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の双方を含んでいてもよい。この場合、本発明の表面処理剤中、上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物合計100質量部に対して、基材に対して非反応性である化合物は、例えば0〜80質量部、好ましくは0〜40質量部で含まれ得、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、例えば0〜80質量部、好ましくは0〜40質量部で含まれ得る。
・物品
次に、かかる表面処理剤を使用して得られる物品について説明する。本発明の物品は、基材と、該基材の表面において上述の一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および/または(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物または表面処理剤(以下、これらを代表して単に表面処理組成物と言う)より形成された層(表面処理層)とを含む。この物品は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、基材を準備する。本発明に使用可能な基材は、例えばガラス、樹脂(天然または合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよく、板状、フィルム、その他の形態であってよい)、金属(アルミニウム、銅、鉄等の金属単体または合金等の複合体であってよい)、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、任意の適切な材料で構成され得る。
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラスまたは透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(または膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOなどが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiOおよび/またはSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I−CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
基材の形状は特に限定されない。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途および具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜または熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入または増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア−ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
またあるいは、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi−H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
次に、かかる基材の表面に、上記の表面処理剤の膜を形成し、この膜を必要に応じて後処理し、これにより、表面処理剤から表面処理層を形成する。
表面処理剤の膜形成は、上記の表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法および乾燥被覆法を使用できる。
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングおよび類似の方法が挙げられる。
乾燥被覆法の例としては、真空蒸着、スパッタリング、CVDおよび類似の方法が挙げられる。真空蒸着法の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、高周波加熱、イオンビームおよび類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ−CVD、光学CVD、熱CVDおよび類似の方法が挙げられる。
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
湿潤被覆法を使用する場合、表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。表面処理剤の安定性および溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:炭素数5〜12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素;ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)、パーフルオロブチルエチルエーテル(COC)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい))など。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)および/またはパーフルオロブチルエチルエーテル(COC)が特に好ましい。
膜形成は、膜中で表面処理剤が、加水分解および脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した表面処理剤をそのまま真空蒸着処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて真空蒸着処理をしてもよい。
触媒には、任意の適切な酸または塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
次に、必要に応じて、膜を後処理する。この後処理は、特に限定されないが、例えば、水分供給および乾燥加熱を逐次的に実施するものであってよく、より詳細には、以下のようにして実施してよい。なお、上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)のいずれかで表される化合物中、Zに含まれるTが全て水酸基である場合には、水分供給は必ずしも要しない。
上記のようにして基材表面に表面処理剤を膜形成した後、この膜(以下、前駆体膜とも言う)に水分を供給する。水分の供給方法は、特に限定されず、例えば、前駆体膜(および基材)と周囲雰囲気との温度差による結露や、水蒸気(スチーム)の吹付けなどの方法を使用してよい。
前駆体膜に水分が供給されると、表面処理剤中の一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および/または(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物(および存在する場合には、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物)のSiに結合した加水分解可能な基に水が作用し、当該化合物を速やかに加水分解させることができると考えられる。
水分の供給は、例えば0〜500℃、好ましくは100℃以上で、300℃以下の雰囲気下にて実施し得る。このような温度範囲において水分を供給することにより、加水分解を進行させることが可能である。このときの圧力は特に限定されないが、簡便には常圧とし得る。
次に、該前駆体膜を該基材の表面で、60℃を超える乾燥雰囲気下にて加熱する。乾燥加熱方法は、特に限定されず、前駆体膜を基材と共に、60℃を超え、好ましくは100℃を超える温度であって、例えば500℃以下、好ましくは300℃以下の温度で、かつ不飽和水蒸気圧の雰囲気下に配置すればよい。このときの圧力は特に限定されないが、簡便には常圧とし得る。
このような雰囲気下では、一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および/または(IIb)のいずれかで表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物(および存在する場合には、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物)間では、加水分解後のSiに結合した基(上記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)のいずれかで表される化合物中、Zに含まれるTが全て水酸基である場合にはその水酸基である。以下も同様)同士が速やかに脱水縮合する。また、かかる化合物と基材との間では、当該化合物の加水分解後のSiに結合した基と、基材表面に存在する反応性基との間で速やかに反応し、基材表面に存在する反応性基が水酸基である場合には脱水縮合する。(なお、このように結合した化合物間に、存在する場合には、シリコーンオイルおよび/または含フッ素オイルが混在することとなる。)この結果、一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および/または(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物(および存在する場合には、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物)間で結合が形成され、また、当該化合物と基材との間で結合が形成される(および存在する場合には、シリコーンオイルおよび/または含フッ素オイルが、一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および/または(IIb)のいずれかで表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物(およびパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物)に対する親和性により保持または捕捉される)。
上記の水分供給および乾燥加熱は、過熱水蒸気を用いることにより連続的に実施してもよい。
過熱水蒸気は、飽和水蒸気を沸点より高い温度に加熱して得られるガスであって、常圧下では、100℃を超え、一般的には500℃以下、例えば300℃以下の温度で、かつ、沸点を超える温度への加熱により不飽和水蒸気圧となったガスである。前駆体膜を形成した基材を過熱水蒸気に曝すと、まず、過熱水蒸気と、比較的低温の前駆体膜との間の温度差により、前駆体膜表面にて結露が生じ、これによって前駆体膜に水分が供給される。やがて、過熱水蒸気と前駆体膜との間の温度差が小さくなるにつれて、前駆体膜表面の水分は過熱水蒸気による乾燥雰囲気中で気化し、前駆体膜表面の水分量が次第に低下する。前駆体膜表面の水分量が低下している間、即ち、前駆体膜が乾燥雰囲気下にある間、基材の表面の前駆体膜は過熱水蒸気と接触することによって、この過熱水蒸気の温度(常圧下では100℃を超える温度)に加熱されることとなる。従って、過熱水蒸気を用いれば、前駆体膜を形成した基材を過熱水蒸気に曝すだけで、水分供給と乾燥加熱とを連続的に実施することができる。
以上のようにして後処理が実施され得る。かかる後処理は、摩擦耐久性を一層向上させるために実施され得るが、本発明の物品を製造するのに必須でないことに留意されたい。例えば、表面処理剤を基材表面に適用した後、そのまま静置しておくだけでもよい。
上記のようにして、基材の表面に、表面処理剤の膜に由来する表面処理層が形成され、本発明の物品が製造される。これにより得られる表面処理層は、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)、摩擦耐久性などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
これによって得られる表面処理層を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD−R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバーなど。
表面処理層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、表面処理層の厚さは、1〜30nm、好ましくは1〜15nmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性および防汚性の点から好ましい。
以上、本発明の表面処理剤を使用して得られる物品について詳述した。なお、本発明の表面処理剤の用途、使用方法ないし物品の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
本発明の表面処理剤およびそれを使用して得られる物品について、以下の実施例を通じてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例)
実施例1〜3として、それぞれ下記の合成例1〜3にてフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物の混合物を合成し、更に、これらより得られた各混合物を用いて表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。
・合成例1
還流冷却器、温度計、撹拌機、滴下ろうとおよび窒素ガス導入管を取り付けた50mLの4つ口フラスコ内で、窒素気流下、シリコーン系原料として下記の化合物(A)(平均組成 n=56)3gと、フルオロポリエーテル系原料として下記の化合物(B)および(C)の混合物(平均組成 n’=22、質量比6:1)2.5gに、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン6gを加え溶解させた。
このフラスコを氷水バスで冷却した後、ボロントリフリオリド−エチルエーテルコンプレックス0.02gを滴下し、15分間撹拌した。その後、70℃まで昇温し、10時間撹拌した。室温に冷却後、メタノール10gを加えて、下相(フルオラス相)を分取した。分取した下相部分から溶媒を留去して反応混合物を得た。
その後、得られた反応混合物5gに、ジブチルスズジラウレートの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液(ジブチルスズジラウレート濃度1質量%)0.5gおよび1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン6gを加え溶解させ、シリル基含有原料として下記の化合物(D)0.13gを加え、その後、80℃に加温し、10時間撹拌した。
Figure 2013256643
これにより、下記の化合物(X)および(Y)(平均組成 n’=22)の混合物を得た。混合物中、化合物(X)および(Y)は、質量比6:1で存在していた。
Figure 2013256643
・合成例2
フルオロポリエーテル系原料として化合物(B)および(C)の混合物(平均組成 n’=11、質量比6:1)1.4gを用いたこと以外は、合成例1と同様の手法により化合物(X)および(Y)(平均組成 n’=11)の混合物を得た。混合物中、化合物(X)および(Y)は、質量比6:1で存在していた。
・合成例3
フルオロポリエーテル系原料として化合物(B)および(C)の混合物(平均組成 n’=31、質量比6:1)3.6gを用いたこと以外は、合成例1と同様の手法により化合物(X)および(Y)(平均組成 n’=31)の混合物を得た。混合物中、化合物(X)および(Y)は、質量比6:1で存在していた。
・表面処理剤の調製
上記合成例1〜3で得た混合物1〜3(パーフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物の混合物)を、濃度20wt%になるように、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンにそれぞれ溶解させて、表面処理剤1〜3を調製した。
・表面処理層の形成
上記で調製した各表面処理剤を「ゴリラ」ガラス(コーニング社製)上に真空蒸着した。真空蒸着の処理条件は、圧力3.0×10−3Paとし、「ゴリラ」ガラス(コーニング社製)1枚あたり、各表面処理剤1mgを蒸着させた。その後、蒸着膜付き「ゴリラ」ガラス(コーニング社製)を、温度20℃および湿度65%の雰囲気下で24時間静置した。これにより、蒸着膜が硬化して、表面処理層が形成された。
(比較例)
混合物1〜3に代えて、比較例1〜2では以下の対照化合物1〜2を使用し、比較例3では以下の組成物1を使用したこと以外は、上記実施例と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。
・対照化合物1
Me3SiO-(Me2SiO)13-(MeHSiO)13-SiMe3
(記号Meはメチル基を表す。)
・対照化合物2
CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)20CF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3
・組成物1
対照化合物1と対照化合物2を1:1の質量比で混合した組成物。
(評価)
上記実施例および比較例により得られた「ゴリラ」ガラス(コーニング社製)上の表面処理層の表面をエタノールを含浸させたウエスで拭き取った後、表面処理層について、撥水撥油性、動摩擦係数(表面滑り性)、油性インク拭き取り性、指での使用感を下記の通り評価/測定した。これらの結果を表1に示す。
[撥水撥油性]
接触角計(協和界面科学株式会社製、「DropMaster」)を用いて、上記にて作製した「ゴリラ」ガラス(コーニング社製)上の表面処理層の水(1μL)に対する接触角およびノルマルヘキサデカン(1μL)に対する接触角を測定した。
[動摩擦係数(表面滑り性)]
表面性測定機(「トライボギア TYPE:14FW」、新東科学株式会社製)を用いて、摩擦子として鋼球を用いて、ASTM D1894に準拠し、動摩擦係数(−)を測定した。
[油性インク拭き取り性]
油性マーキングペン(ゼブラ株式会社製、「ハイマッキー」(登録商標))を用いて油性インクを表面処理層の表面に塗り、これをパルプ製ウエス(日本製紙クレシア株式会社製、「キムワイプ」(登録商標))で拭き取る操作(手でウエスを処理表面に押し当てて一方向に滑らせる操作)を行って、油性インクの拭き取り性(拭き取り易さ)を下記指標に従って目視により評価した。
A:1回の拭き取り操作で簡単に完全にインクを拭き取れる
B:1回の拭き取り操作では少しインクが残る
C:1回の拭き取り操作では半分ほどインクが残る
D:1回の拭き取り操作ではインクを全く拭きとれない
[指での使用感]
官能評価の専門パネラー20名が、処理表面を指で触り、その使用感を次の基準で評価し、その平均を求めた。
4:非常に良い
3:良い
2:普通
1:悪い
Figure 2013256643
表1から理解されるように、本発明のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を用いた実施例1〜3では、対照化合物1(ポリオルガノシリコーン化合物)を用いた比較例1に準じる程度に小さい動摩擦係数(高い表面滑り性)および優れた指での使用感が得られると共に、対照化合物2(パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物)を用いた比較例2に準じる程度に高い撥水撥油性(大きい接触角)および優れた油性インク拭き取り性が得られた。本発明のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を用いた実施例1〜2では、対照化合物1および2を単に混合した組成物1を使用した比較例3よりも、撥水撥油性が高く(接触角が大きく)、動摩擦係数が小さく(表面滑り性が高く)、油性インク拭き取り性および指での使用感に優れていた。
本発明は、種々多様な基材、特に透過性が求められる光学部材の表面に、表面処理層を形成するために好適に利用され得る。

Claims (15)

  1. 下記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)のいずれか:
    Figure 2013256643
    (これら式中、Rは置換または非置換のメチル基であり、Rfはフルオロポリエーテル基を含む基であり、Xは3価の有機基であり、Yは2価の有機基であり、Zは加水分解可能な部位を含むシリル基であり、Sは一価のオルガノポリシロキサン基であり、Sは二価のオルガノポリシロキサン基であり、mは1以上5以下である。)
    で表される構造を有するフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物。
  2. 前記一般式(Ia)および(Ib)において、Sは以下の式:
    Figure 2013256643
    (式中、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立してアルキル基またはアリール基であり、nは1以上200以下である。)
    で表されるオルガノポリシロキサン基である、請求項1に記載のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物。
  3. 前記一般式(IIa)および(IIb)において、Sは以下の式:
    Figure 2013256643
    (式中、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立してアルキル基またはアリール基であり、nは1以上200以下である。)
    で表されるオルガノポリシロキサン基である、請求項1または2に記載のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物。
  4. 前記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Rfは以下の式:
    −(R−R10−R11
    [式中、Rは炭素数1〜15のパーフルオロアルキレン基であり、
    jは0または1であり、
    10は以下の式:
    −(OC−(OC−(OC−(OCF
    (式中、a、b、cおよびvは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、cおよびvの和は少なくとも1であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
    で表されるパーフルオロポリエーテル基であり、
    11は以下の式:
    −(Q)−(CFZ’)
    (式中、Qは酸素原子または2価の極性基を表し、Z’はフッ素原子または低級フルオロアルキル基を表し、dおよびeはそれぞれ独立して0以上50以下の整数であって、dおよびeの和は少なくとも1であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
    で表される基である。]
    で表される基である、請求項1〜3のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物。
  5. 前記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Rfは以下の式:
    −CFCF−(OCFCFCFa’−OCFCF
    (式中、a’は1以上200以下の整数である。)
    で表されるパーフルオロポリエーテル基である、請求項4に記載のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物。
  6. 前記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Zは以下の式:
    −SiT12 3−x
    (式中、Tは水酸基または加水分解可能な基であり、R12は水素原子または炭素数1〜22のアルキル基であり、xは1、2または3である。)
    で表されるシリル基である、請求項1〜5のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物。
  7. 前記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Xは以下の式のいずれか:
    Figure 2013256643
    (これら式中、pは1以上10以下の整数であり、R13は2価の有機基であり、式の左端がRfに結合し、式の右端がSまたはSに結合し、式の下端がYに結合する。)
    で表される基である、請求項1〜6のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物。
  8. 前記一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)および(IIb)において、Yは以下の式:
    −OCONH−(CH
    (式中、rは1以上10以下の整数であり、式の左端がXに結合し、式の右端がZに結合する。)
    で表される基である、請求項1〜7のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を含む、表面処理剤。
  10. 前記一般式(Ia)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物および前記一般式(Ib)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を含む、請求項9に記載の表面処理剤。
  11. 前記一般式(IIa)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物および前記一般式(IIb)で表されるフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物を含む、請求項9に記載の表面処理剤。
  12. 防汚性コーティング剤として使用される、請求項9〜11のいずれかに記載の表面処理剤。
  13. 基材と、該基材の表面に、請求項1〜8のいずれかに記載のフルオロポリエーテル基含有シリコーン化合物または請求項9〜12のいずれかに記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。
  14. 前記物品が光学部材である、請求項13に記載の物品。
  15. 前記基材が、ガラスまたは透明プラスチックである、請求項13または14に記載の物品。
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