JP2013256623A - ポリウロン酸又はその塩の製造方法 - Google Patents

ポリウロン酸又はその塩の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリウロン酸又はその塩を、セルロースの前処理を必要とすることなく、簡便で環境負荷の少ない方法で製造する方法を提供する。
【解決手段】〔1〕下記工程(1)及び(2)を有するポリウロン酸又はその塩の製造方法である。
工程(1):セルロース含有原料を有機溶媒に溶解して、セルロース溶液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたセルロース溶液中のセルロースを、該セルロースの一級水酸基1モルに対して0.5〜100モルの水、ニトロキシルラジカル化合物、及び酸化剤の存在下で酸化して、ポリウロン酸又はその塩を得る工程
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリウロン酸又はその塩の製造方法に関する。
水溶性高分子材料は、粒子の分散・安定化、凝集、粘度調整、及び接着等の機能を有し、様々な分野に応用されている。特にポリカルボン酸は安価に製造できる場合が多いため、多くの品種が製造、使用されている。
また、環境に対する意識が高まるにつれ、環境負荷の少ない材料が強く求められており、再生可能な天然原料から製造される高分子材料等が開発されている。その一つとして、水溶性多糖類やその誘導体が挙げられ、中でもポリウロン酸は、吸水性樹脂、分散剤等への応用が期待されている。
ポリウロン酸の製造方法としては、多糖類を原料とし、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−1−オキシル等のN−オキシル化合物触媒を用いて、多糖類を構成するピラノース環のC6位の一級水酸基を酸化する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、結晶化度が30%以下の低結晶性の粉末セルロースを原料として、N−オキシル化合物の存在下で酸化反応を行うことで、C6位一級水酸基を選択的に効率よく酸化させる方法が記載されている。
特許文献2には、N−オキシル化合物とアルデヒド基を酸化する酸化剤とを含む中性又は酸性の反応溶液中で、アルカリ処理セルロース又は再生セルロースを酸化させる工程を有するセルロースの改質方法が記載されている。
非特許文献1には、ガス状又は液状二酸化窒素、又は四塩化炭素等の塩素化炭化水素中の二酸化窒素溶液によってセルロースを酸化する方法が記載されている。
特許文献3には、セルロースをパーフルオロカーボン溶媒中の二酸化窒素溶液と反応させる工程を有するセルロースの酸化方法が記載されている。
また、特許文献4には、塩化リチウムと、N,N−ジメチアセトアミド及び/又はN−メチルピロリドンとの混合溶媒中で、活性化されたセルロースをアシル化する方法が記載されており、特許文献5には、活性化されたセルロースとイミダゾリジノン単独又はイミダゾリジノンとN,N−ジメチアセトアミド又はN−メチルピロリドンとの混合物に塩化リチウムを加えるセルロースの溶解方法が記載されている。
特開2009−263641号公報 特開2009−209217号公報 特許3021897号公報 特開昭58−17101号公報 特開昭59−124933号公報
R. H. Hasek他、Ind. & Eng. Chem. Vol. 41、第2頁(1949年)「セルロースの酸化」
特許文献1の方法では、反応前に、原料セルロースを機械的に非晶化しておく必要があり、特許文献2の方法では、原料セルロースを銅−アンモニア溶液に溶解したり、溶解後誘導体化前に再生処理を行う必要があるため、煩雑な工程を経なければならず、分子量低下が起こりやすく、さらに環境負荷が大きいという問題がある。
非特許文献1の方法では、酸化反応が十分に進行しないという問題がある。
特許文献3の方法では、(i)溶媒の大気寿命が長く、温室ガス効果が高い、また(ii)煩雑な工程を経るため環境負荷が大きいという問題がある。
本発明は、ポリウロン酸又はその塩を、セルロースの前処理を必要とすることなく、簡便で環境負荷の少ない方法で製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、均一系反応によってセルロースを酸化し、ポリウロン酸を合成するにあたり、セルロースを有機溶媒に溶解せしめ、得られたセルロース溶液中で、特定量の水の存在下で反応を行うことにより、ポリウロン酸又はその塩を簡便に製造できることを見出した。
すなわち本発明は、下記工程(1)及び(2)を有するポリウロン酸又はその塩の製造方法に関する。
工程(1):セルロース含有原料を有機溶媒に溶解して、セルロース溶液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたセルロース溶液中のセルロースを、該セルロースの一級水酸基1モルに対して0.5〜100モルの水、ニトロキシルラジカル化合物、及び酸化剤の存在下で酸化して、ポリウロン酸又はその塩を得る工程
本発明によれば、ポリウロン酸又はその塩を、セルロースの前処理を必要とすることなく、簡便で環境負荷の少ない方法で製造することができる。
本発明のポリウロン酸又はその塩の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有する。
工程(1):セルロース含有原料を有機溶媒に溶解して、セルロース溶液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたセルロース溶液中のセルロースを、該セルロースの一級水酸基1モルに対して0.5〜100モルの水、ニトロキシルラジカル化合物、及び酸化剤の存在下で酸化して、ポリウロン酸又はその塩を得る工程
以下、各工程、及び各工程で用いられる各成分について、順次説明する。
[工程(1)](セルロース溶解工程)
工程(1)では、セルロース含有原料を有機溶媒に溶解して、セルロース溶液を得る。
<セルロース含有原料>
本発明の工程(1)で用いられるセルロース含有原料は、一般的に用いられる、セルロースを含む原料を意味する。セルロースには幾つかの結晶構造が知られており、アモルファス部と結晶部の全量に対する結晶部の割合から、結晶化度が算出される。
工程(1)で用いられるセルロース含有原料中に含まれるセルロース(以下「原料セルロース」ともいう)の結晶化度に、特に限定はないが、好ましくは33%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。
ここで、「結晶化度」とは、天然セルロースの結晶構造に由来するI型の結晶化度を意味し、セルロース含有原料に粉末X線結晶回折スペクトル法を適用して得られる回折強度値からSegal法により算出したもので、下記式(1)により定義される。本明細書においては、このセルロースI型結晶化度を単に「結晶化度」ということがある。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
通常、セルロースの結晶化度を低下させる前処理を行うと、セルロース鎖の切断による重合度低下が伴うが、本発明においては、前記のセルロースの結晶化度を低下させる前処理は不要である。
前記セルロース含有原料には特に制限はなく、各種木材チップ;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等が挙げられる。
セルロース含有原料は、該原料から水を除いた残余の成分中の原料セルロースの含有量が20質量%以上のものが好ましく、40質量%以上のものがより好ましく、60質量%以上のものが更に好ましい。セルロース含有量の上限は100質量%である。ここで、セルロース含有量とはセルロース量及びヘミセルロース量の合計量を意味する。市販のパルプの場合、水を除いた残余の成分中、セルロースの他、リグニンを含むが、含量は極わずかであり、パルプから水を除いた残余をセルロースと略同一として扱うことができる。
セルロース含有原料中の水分含量は、特に限定はない。セルロース含有原料中の水分含量が、原料セルロースに対し20質量%以下であれば、操作性の向上を目的として必要に応じて行うことができる粉砕機等による粉砕も容易になることから好ましい。この観点から、セルロース含有原料中の水分含量は、原料セルロースに対し15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。セルロース含有原料中の水分含量の下限は0質量%である。
セルロース含有原料の形状に特に限定はないが、製造時の操作性向上の観点からセルロース含有原料の形状はチップ状、粉末状が好ましい。間伐材やシート状パルプなどのセルロース含有原料の形状をチップ状にするには、シュレッダー(例えば、株式会社明光商会製、商品名:「MSX2000−IVP440F」)、シートペレタイザー(例えば、株式会社ホーライ製、商品名:「SGG−220−3X3」)やロータリーカッターを用いることができる。チップの大きさは、通常0.6〜50mm角、好ましくは0.8〜30mm角、より好ましくは1〜10mm角である。
セルロース含有原料を粉末状にする場合は、間伐材やシート状パルプなどのセルロース含有原料を直接、又はチップ状セルロース含有原料等を、公知の押出機処理、粉砕機処理により適度な嵩密度を有する粉末状にすることができる。
粉砕機については「化学工学の進歩 第30集 微粒子制御」(社団法人 化学工学会東海支部編、1996年10月10日発行、槇書店)を参照することができる。
<有機溶媒>
工程(1)で用いられる有機溶媒としては、塩化リチウム系、アミンオキシド系、SO2−アミン系、アルデヒド系、ニトロシル化合物系、含硫黄系、含窒素系のセルロース溶媒が挙げられる。
(塩化リチウム系セルロース溶媒)
塩化リチウム系セルロース溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる少なくとも1種と塩化リチウムとの混合溶媒が挙げられるが、セルロースの溶解性、酸化剤との反応性の観点から、塩化リチウムとN,N−ジメチルアセトアミド混合溶媒が好ましい。
塩化リチウム系セルロース溶媒中の塩化リチウム濃度は、セルロースの溶解性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、塩化リチウムの溶媒への溶解性及びコストの観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
(アミンオキシド系セルロース溶媒)
アミンオキシド系セルロース溶媒としては、第一級アミンオキシド、第二級アミンオキシド、第三級アミンオキシド等が挙げられるが、セルロースの溶解性の観点から、第三級アミンオキシドが好ましい。第三級アミンオキシドとしては、セルロース溶液を調製するのに使用される公知のものが使用可能である。例えば、N−メチルモルホリン−N−オキシド、N−メチルピペリジン−N−オキシド、N−メチルピロリジン−N−オキシド、N−メチルホモピペリジン−N−オキシド、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン−N−オキシド、N,N−ジメチルエタノールアミン−N−オキシド、N,N−ジメチルベンジルアミン−N−オキシド、N,N,N−トリメチルアミン−N−オキシド、N,N,N−トリエチルアミン−N−オキシド、1’(ヒドロキシ−2−プロピオキシ)−2−エチル−N,N−ジエチルアミン−N−オキシド等が挙げられる。
これらの中でも、入手のし易さ、使用済み溶剤の回収精製のし易さ等からN−メチルモルホリン−N−オキシドが好ましい。
(SO2−アミン系セルロース溶媒)
SO2−アミン系セルロース溶媒としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソアミルアミン、及びピペリジン等から選ばれる少なくとも1種のアミンとSO2、必要に応じて更にジメチルスルホキシド等の溶媒を組み合わせた混合溶媒が挙げられる。
上記の有機溶媒の中では、セルロースの溶解性、酸化剤との反応性の観点から、塩化リチウム系、アミンオキシド系、及びSO2−アミン系のセルロース溶媒から選ばれる少なくとも1種が好ましく、塩化リチウム系セルロース溶媒、及びアミンオキシド系セルロース溶媒から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
上記の有機溶媒は1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
<溶解工程>
(セルロース含有原料の水による膨潤と、有機溶媒による水の置換)
工程(1)において、セルロース含有原料を有機溶媒に溶解させる方法に特に限定はなく、有機溶媒中にセルロース含有原料を加え撹拌等を行って溶解してもよいが、予めセルロース含有原料に一旦水を加えて膨潤させた後、膨潤したセルロース含有原料中に含まれる水を有機溶媒で置換すると、セルロース含有原料の有機溶媒への溶解が容易に行えるため、好ましい。
セルロース含有原料の膨潤のために用いる水の量は特に限定されないが、十分に膨潤させる観点から、セルロース含有原料に対し、0.1質量倍以上が好ましく、0.5質量倍以上がより好ましく、2質量倍以上が更に好ましい。また、生産性の観点から、セルロース含有原料の膨潤のために用いる水の量は、100質量倍以下が好ましく、50質量倍以下がより好ましく、20質量倍以下が更に好ましい。
前記水の添加後は、十分に膨潤させる観点から、撹拌しながら、又は撹拌せずに、5〜100℃、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜70℃の温度範囲で、1分〜24時間、好ましくは5分〜5時間、より好ましくは10分〜1時間、維持することが好ましい。
膨潤したセルロース含有原料中に含まれる水の有機溶媒への置換は、例えば、膨潤したセルロース含有原料への有機溶媒の添加とろ過を繰り返すことで行うことができる。
置換に用いる有機溶媒としては、前述の塩化リチウム系セルロース溶媒、アミンオキシド系セルロース溶媒、SO2−アミン系セルロース溶媒の他、前記の塩化リチウム系セルロース溶媒から塩化リチウムを除いた有機溶媒を用いることができる。置換に用いる有機溶媒とセルロース含有原料の溶解に用いる有機溶媒は、同一であることが好ましいが、セルロース含有原料の溶解に用いる有機溶媒が塩化リチウム系セルロース溶媒である場合には、置換には、塩化リチウム系セルロース溶媒から塩化リチウムを除いた有機溶媒を用いることが好ましい。
添加する有機溶媒の量は、置換効率の観点から、セルロース含有原料に対して0.1質量倍以上が好ましく、0.5質量倍以上がより好ましく、2質量倍以上が更に好ましく、100質量倍以下が好ましく、50質量倍以下がより好ましく、20質量倍以下が更に好ましい。
有機溶媒添加後は撹拌を行い、膨潤したセルロース含有原料中の水と有機溶媒を混合させ、その後ろ過により水を含む有機溶媒を除去することが好ましい。
有機溶媒の添加、及びろ過の繰り返し回数は特に限定されないが、後のセルロース含有原料の溶解を容易に行う観点から、ろ過時に除去された有機溶媒中の水分量が、1質量%以下になるまで行うことが好ましく、0.5質量%以下になるまで行うことがより好ましく、0.3質量%以下になるまで行うことが更に好ましく、0.1質量%以下になるまで行うことがより更に好ましい。
(セルロース含有原料の溶解)
セルロース含有原料の有機溶媒への溶解方法に特に限定はないが、公知の方法、例えば、特開昭59−124933号公報記載の、活性化されたセルロースとイミダゾリジノン単独又はイミダゾリジノンとN,N−ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドンとの混合物に塩化リチウムを加えるセルロースの溶解方法等を用いてもよい。
有機溶媒の使用量は、生産性及び流動性の観点から、得られるセルロース溶液中のセルロース濃度が、0.1〜20質量%となる量が好ましく、0.3〜15質量%となる量がより好ましく、0.5〜10質量%となる量が更に好ましく、1〜8質量%となる量がより更に好ましい。
溶解時の温度に特に限定はないが、分解抑制の観点から、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましく、一方、溶解速度の観点から、−80℃以上が好ましく、−40℃以上がより好ましく、0℃以上が更に好ましい。
溶解時間は、溶解の進行の程度に応じて適宜調整することが可能であり、特に限定されないが、通常、1〜100時間である。生産性の観点からは、40時間以下であることが好ましく、20時間以下であることがより好ましい。一方、十分に溶解させる観点から、2時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましく、8時間以上が更に好ましい。
[工程(2)](酸化反応)
工程(2)では、工程(1)で得られたセルロース溶液中のセルロースを、該セルロースの一級水酸基1モルに対して0.5〜100モルの水、ニトロキシルラジカル化合物、及び酸化剤の存在下で酸化して、ポリウロン酸又はその塩を製造する。
<水>
工程2では、工程(1)で得られたセルロース溶液中のセルロースの一級水酸基を、該一級水酸基1モルあたり0.5〜100モルの水の存在下で酸化する。共存する水の量が前記範囲外であると酸化反応が円滑に進行しない。
温和な条件で酸化反応を円滑に進行させる観点から、水の量は、セルロースの一級水酸基1モルに対して、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上、更に好ましくは3モル以上、より更に好ましくは5モル以上であり、好ましくは50モル以下、より好ましくは40モル以下、更に好ましくは30モル以下、より更に好ましくは20モル以下である。
<ニトロキシルラジカル化合物>
本発明の工程(2)で触媒として用いられるニトロキシルラジカル化合物は、ヒンダードアミンのN−酸化物であり、その分子内に、下記構造式(1)で表されるニトロキシルラジカルを有し、該構造中の窒素原子のα位に水素原子を有しないものである。
Figure 2013256623
ニトロキシルラジカル化合物としては、窒素原子のα位に嵩高い基を有するものが好ましく、ジ−tert−アルキルニトロキシル化合物がより好ましい。
ジ−tert−アルキルニトロキシル化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−1−オキシル(TEMPO)等の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル;2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル等の2,2,5,5−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル;4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−プロピオニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等の4−アルコキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等が挙げられる。
これらの中では、ニトロキシルラジカル化合物の反応性の観点から4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルが好ましい。
なお、ニトロキシルラジカル化合物を触媒として用いる酸化反応では、後述する酸化剤によりニトロキシルラジカルの一電子酸化体であるオキソアンモニウムイオンが生成し、これが触媒活性種として機能すると考えられる。
工程(2)におけるニトロキシルラジカル化合物の使用量は、工程(2)の反応速度及び酸化効率の観点から、セルロース含有原料中のセルロースの一級水酸基1モルに対して、0.01〜10モルが好ましく、0.05〜8モルがより好ましく、0.1〜6モルが更に好ましく、0.15〜4モルがより更に好ましい。
かかるニトロキシルラジカル化合物は、市販品を用いることもできるし、公知の方法、例えば、(a)二級アミン類を有機過酸化物を用いて酸化する方法(欧州特許出願公開157738号)、(b)タングステン酸塩の存在下、過酸化水素で酸化する方法(英国特許1199351号)、(c)カーボネート類、ケイ酸塩等の存在下、過酸化水素で酸化する方法(特開2002−145861号)等の方法により製造したものを用いてもよい。
また、ニトロキシルラジカル化合物は、そのまま添加することもできるし、溶媒に溶解又は懸濁させて添加してもよい。
ニトロキシルラジカル化合物を溶解又は懸濁させるための溶媒は、酸化反応に不活性なものであれば特に制限されない。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル、メチルイソブチルケトン、メチルtert−ブチルケトン等のケトン、水等の単独又は混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量も特に制限されない。
<酸化剤>
工程(2)の酸化反応に用いられる酸化剤に特に制限はない。例えば、有機N−ハロ化合物、ジアセトキシヨードベンゼン、次亜ハロゲン酸又はその塩、亜ハロゲン酸又はその塩、ハロゲン酸又はその塩、過ハロゲン酸又はその塩等のハロゲン系酸化剤、窒素酸化物、過酸化水素、過酢酸等の過有機酸又はその塩、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、及び酸素等が挙げられる。
有機N−ハロ化合物とは、窒素原子にハロゲン原子、好ましくは塩素、臭素、ヨウ素が結合した構造(>N−Cl、>N−Br、>N−I)を有する化合物の総称である。有機N−ハロ化合物の具体例としては、トリクロロイソシアヌル酸、トリブロモイソシアヌル酸等のトリハロイソシアヌル酸、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド等のN−ハロスクシンイミド、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン等のジハロヒダントイン、N−ブロモアセトアミド、N−ブロモサッカリン等が挙げられる。
有機N−ハロ化合物の中では、トリハロイソシアヌル酸、N−ハロスクシンイミド、ジハロヒダントイン、及びN−ブロモアセトアミドがより好ましく、トリハロイソシアヌル酸、N−ハロスクシンイミド、及びジハロヒダントインがより好ましく、トリクロロイソシアヌル酸が特に好ましい。
次亜ハロゲン酸又はその塩としては、次亜塩素酸、及び次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等の次亜ハロゲン酸又はそのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等が挙げられ、次亜塩素酸のアルカリ金属塩が好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがより好ましい。
亜ハロゲン酸又はその塩としては、亜塩素酸、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウム等の亜塩素酸のアルカリ金属塩;亜臭素酸、亜ヨウ素酸等の亜ハロゲン酸又はそのアルカリ金属塩等が挙げられ、亜塩素酸のアルカリ金属塩が好ましい。
過ハロゲン酸又はその塩としては、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸等が挙げられ、
ハロゲン酸化物としては、ClO、ClO2、Cl26、BrO2、Br37等が挙げられ、窒素酸化物としては、NO、NO2、N23等が挙げられる。
これらの酸化剤は単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
これらの酸化剤の中では、酸化力の観点から、有機N−ハロ化合物、ジアセトキシヨードベンゼン、次亜ハロゲン酸又はその塩、及び亜ハロゲン酸又はその塩から選ばれる少なくとも1種のハロゲン系酸化剤が好ましく、有機溶媒への溶解性の観点から有機N−ハロ化合物、ジアセトキシヨードベンゼンから選ばれる少なくとも1種のハロゲン系酸化剤がより好ましく、有機N−ハロ化合物が更に好ましく、トリハロイソシアヌル酸、N−ハロスクシンイミド、及びジハロヒダントインから選ばれる少なくとも1種がより更に好ましく、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、トリクロロイソシアヌル酸、及びトリブロモイソシアヌル酸から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
酸化剤の使用量は、所望の酸化の程度に応じて適宜調整することが可能であり、特に限定されないが、酸化反応速度及び酸化剤の添加効率の観点から、セルロース含有原料中の一級水酸基1モルに対して、0.5〜20モルが好ましく、0.6〜10モルがより好ましく、0.7〜7モルが更に好ましく、1.0〜5モルがより更に好ましい。
添加時の酸化剤の形態は気体、液体、固体のいずれでもよく、水や有機溶媒に溶解させた状態で用いてもよい。酸化剤の添加は反応初期に一括で添加してもよく、また、酸化反応工程において分割で添加してもよい。
<共酸化剤ないし助触媒>
工程(2)の酸化工程においては、より温和な条件でも酸化反応を円滑に進行させる観点から、酸化剤と共に共酸化剤ないし助触媒を共存させることができる。
共酸化剤ないし助触媒としては、例えば、臭化又はヨウ化アンモニウム;臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等の臭化又はヨウ化アルカリ金属;臭化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化ストロンチウム等の臭化アルカリ土類金属又はヨウ化アルカリ土類金属等が挙げられる。これらの臭化物塩やヨウ化物塩は単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中では、臭化ナトリウムが好ましい。
共酸化剤ないし助触媒の使用量は、酸化反応速度及び酸化剤の添加効率の観点から、セルロース含有原料中のセルロースの一級水酸基1モルに対して0.001〜10モルが好ましく、0.01〜5モルがより好ましく、0.1〜3モルが更に好ましい。
<酸化反応条件>
酸化反応の温度は、反応の選択性、副反応の抑制の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下であり、その下限は、反応速度の観点から、−20℃以上が好ましく、−10℃以上がより好ましく、0℃以上が更に好ましい。
酸化反応の反応時間は、酸化反応の進行速度及び所望の酸化の程度に応じて適宜調整することが可能であり、特に限定されないが、通常、0.1〜100時間である。生産性の観点からは、40時間以下であることが好ましく、20時間以下であることがより好ましい。一方、十分に反応を進行させる観点から、2時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましく、8時間以上が更に好ましい。
<精製>
上記酸化反応によるポリウロン酸又はその塩の製造においては、ニトロキシルラジカル化合物等の触媒の残存や塩の副生が生じ易い。そこで、純度の高いポリウロン酸塩を得るために、必要に応じて精製を行なうことできる。精製法には限定はなく、酸化反応における溶媒の種類、生成物の酸化の程度、精製の程度を考慮して、最適な方法を採用することができる。例えば、良溶媒として水、貧溶媒としてメタノール、エタノール、アセトン等を用いた再沈殿、ヘキサン等の水と相分離する溶媒への触媒等の抽出、及び塩のイオン交換、透析等による精製等が挙げられる。
<ポリウロン酸又はその塩>
本発明方法で得られるポリウロン酸又はその塩は、D−グルクロン酸、及びD−グルコースがグリコシド結合で連結した重合体、又はその塩で、代表的には下記構造式(2)で表される。
本発明においてポリウロン酸の塩とは、ポリウロン酸のカルボキシ基の一部又は全部が、塩を形成しているものをいう。塩を形成している場合、カルボキシ基の対イオンとしては、水溶性の観点からアルカリ金属イオンであることが好ましい。
本発明で得られるポリウロン酸又はその塩の重量平均分子量は特に限定されないが、水溶性及び生分解性を付与する観点から、好ましくは100万以下であり、より好ましくは50万以下であり、更に好ましくは10万以下である。
本発明方法によれば、従来法では製造が困難であった高分子量のポリウロン酸又はその塩を環境負荷の少ない方法で効率的に製造することができる。この観点から、本発明で得られるポリウロン酸又はその塩の重量平均分子量は、2万以上が好ましく、3万以上がより好ましい。なお、本発明においてポリウロン酸又はその塩の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるプルラン換算分子量である。具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
Figure 2013256623
構造式(2)中、Xは陽イオンを示す。具体的には、水素イオンの他、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、各種アミン又はアミノ酸のプロトン化物が挙げられる。ここで陽イオンの価数(a)が2以上である場合、カルボキシ基1個あたりのXの数は、1/a個である。生成するポリウロン酸が塩である場合は塩の水溶性の観点から、Xはアルカリ金属イオンであることが好ましく、ナトリウムイオンであることがより好ましい。
構造式(2)中のmは、ポリウロン酸又はその塩を構成する単糖ユニット中におけるアンヒドログルクロン酸ユニットのモル分率とアンヒドログルクロン酸塩ユニットのモル分率の和を示す。mは、生成するポリウロン酸又はその塩の水溶性の観点から、0.3〜0.99が好ましく、0.3〜0.9がより好ましく、0.3〜0.8が更に好ましい。構造式(2)において、Xがアルカリ金属である場合、mが0.6を超えればポリウロン酸又はその塩は、高い水溶性を示す。
構造式(2)中のnは、ポリウロン酸又はその塩を構成する単糖ユニット中におけるアンヒドログルコースユニットのモル分率を示し、生成するポリウロン酸又はその塩の水溶性の観点から、nは0.01〜0.7が好ましく、0.1〜0.7がより好ましく、0.2〜0.7が更に好ましい。
本発明においてポリウロン酸又はその塩のカルボン酸置換度は、生成するポリウロン酸又はその塩の水溶性の観点から、0.3〜0.99が好ましく、0.3〜0.9がより好ましく、0.3〜0.8が更に好ましい。ここで、ポリウロン酸又はその塩のカルボン酸置換度とは、ポリウロン酸又はその塩一分子あたりのカルボキシ基(塩であるものを含む)の数を、ポリウロン酸又はその塩の主鎖を構成する単糖ユニットの数で除した数をいい、ポリウロン酸の中和滴定に要した塩基性化合物の当量数を用いて算出される。具体的には、実施例記載の中和滴定法により、測定されたポリウロン酸単位質量当りのカルボン酸量から、下記計算式(2)によって求められた値である。
カルボン酸置換度=162.1×A/(1−14.0×A) (2)
ここで、Aは中和滴定によって求められたカルボン酸量(mol/g)である。
なお、中和に用いられる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物、アンモニアやアミン化合物等が挙げられる。
本発明の製造方法により得られたポリウロン酸又はその塩は、生分解性水溶性高分子材料として、吸水性樹脂、分散剤、等の様々な用途に用いることができる。
本発明の方法で得られたポリウロン酸又はその塩を吸水性樹脂に応用した場合、該吸水性樹脂は吸水性に優れていることから、生理用ナプキン、紙おむつ、成人用シーツ、タンポン、及び衛生綿等の衛生材料に有用である。また、この吸水性樹脂は、原料が植物由来であるために、製造時及び廃棄時の排出CO2量が少なく、地球環境への負荷が小さい。
以下の実施例において、セルロース含有原料中におけるセルロースの結晶化度の測定、水分含量の測定、セルロース含量の測定、ポリウロン酸塩の重量平均分子量、カルボン酸置換度、及び赤外吸収スペクトルの測定は、以下の方法により行った。なお、実施例において「%」は特段の断りがない場合は、「質量%」を意味する。
(1)セルロース含有原料中のセルロースの結晶化度の測定法
株式会社リガク製「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて、以下の条件で測定した。
・X線光源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA
測定範囲:2θ=5〜45°
・測定サンプル:面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮して作成
・X線のスキャンスピード:10°/min
(2)セルロース含有原料の水分含量の測定方法
セルロース含有原料の水分含量の測定には、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、製品名「FD−610」)を使用した。120℃にて測定を行い、30秒間の質量変化率が 0.1%以下となる点を測定の終点とした。測定された水分量の値を、セルロース含有原料に対する質量%に換算し、水分含量とした。
(3)セルロース含有原料中のセルロース含有量
セルロースパウダーから水分量を除いた残余をセルロース含有量と見なした。
(4)ポリウロン酸塩の重量平均分子量の測定
実施例又は比較例で得られたポリウロン酸塩の重量平均分子量(Mw)は、株式会社日立製作所製、L−6000型高速液体クロマトグラフィーを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって下記条件で測定した。
・検出器:ショーデックスRI SE−61示差屈折率検出器
・カラム:東ソー株式会社製、G4000PWXL、G2500PWXLを直列につないで使用した。
・溶離液:0.2Mリン酸緩衝液/アセトニトリル=90/10(容量比)
・サンプル;溶離液を用いて0.5g/100mLの濃度に調整し、20μLを用いた。
・カラム温度:40℃
・流速:1.0mL/分
・標準ポリマー:プルラン
(5)カルボン酸置換度の測定
実施例又は比較例で得られたポリウロン酸塩の2%水溶液を50g調整し、6N塩酸にてpHを1以下とした。この酸性溶液をエタノール500mLに投入し、生じた沈殿物を回収、エタノールで数回洗浄、乾燥した。得られたポリウロン酸を0.1g精秤し、イオン交換水30mLに溶解又は分散させ、フェノールフタレインを指示薬として0.1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、ポリウロン酸単位質量あたりのカルボン酸量を求め、このカルボン酸量から、前記計算式(2)によりカルボン酸置換度を算出した。
(6)赤外吸収スペクトルの測定
株式会社堀場製作所製の赤外分光光度計、FT−710型を用いて、ATR法により測定した。
(7)1H−NMRスペクトルの測定
1H−NMRスペクトルの測定は以下の装置、条件で行った。
測定装置:Varian社製 Mercury400
測定周波数:400MHz
測定用溶媒:D2
(8)セルロース溶液中の含有水分量の測定
京都電子工業株式会社製のカールフィッシャー水分計MKS−500を用いて、容量滴定法により測定した。
実施例1
(1)セルロースの溶解
セルロースパウダー(KCフロック W−400G、日本製紙ケミカル株式会社製、結晶化度60%、水分含量1.2%、セルロース含有量98.8%)10gを蒸留水100gに30分浸漬した後、ガラスフィルターを用いて脱液した。脱液処理後の含水セルロースパウダーをN,N−ジメチルアセトアミド(脱水)(和光純薬工業株式会社製)100gで3回洗浄、ガラスフィルターを用いた脱液を繰り返した。3回目の脱液操作で除去されたN、N−ジメチルアセトアミド中の含有水分量は0質量%であった。3回目の脱液操作で得られたN,N−ジメチルアセトアミドが一部残留したセルロースパウダーにN,N−ジメチルアセトアミド200gと塩化リチウム(LiCl)(和光純薬工業株式会社製)20gを加え、100℃で1時間加熱後、室温で一晩撹拌することで、セルロース濃度4.35質量%の均一なセルロース溶液を得た。溶液中の含水分量は0質量%であることを確認した。〔工程(1)〕。
(2)ポリウロン酸の製造
100mLスクリュー管に工程(1)で調製したセルロース溶液22g、N,N−ジメチルアセトアミド40g、水1.1g(セルロースの一級水酸基1モルに対して10モル、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO、シグマアルドリッチ社製)94mgを入れ600rpmの回転数で攪拌を行った。温度を25℃に保ち、トリクロロイソシアヌル酸(和光純薬工業株式会社製、酸化剤)をセルロース含有原料中の一級水酸基1モルに対して2モル添加した後、12時間攪拌し、酸化反応を行った〔工程(2)〕。
反応終了後は、工程(2)の反応終了物をアセトン300mLに注ぎ、白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.8)に溶解し、5倍量のエタノールで再沈し、白色固体を沈殿させた。沈殿物を回収し、エタノールで洗浄した後に、40℃で乾燥させることで、白色のポリウロン酸ナトリウム(1)0.7gを得た。
得られたポリウロン酸ナトリウム(1)の重量平均分子量は6.3万であった。得られたポリウロン酸ナトリウム(1)の1H−NMRスペクトルは3.0〜4.5ppm付近に糖骨格に由来するピークを示した。また、その赤外吸収スペクトルは、1600cm-1付近にカルボン酸イオンに相当するピークが観察されており、これらの結果から、セルロースパウダー中のセルロースを構成するアンヒドログルコースの6位の一級水酸基が酸化されていることが確認された。カルボン酸置換度は0.70であった。
実施例2
実施例1(2)において、水の添加量をセルロースの一級水酸基1モルに対して20モル(2.2g)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリウロン酸ナトリウム(2)0.7gを得た。
得られたポリウロン酸ナトリウム(2)の重量平均分子量は3.0万、カルボン酸置換度は0.39であった。
実施例3
実施例1(2)において、トリクロロイソシアヌル酸をセルロース含有原料中の一級水酸基1モルに対して、4モル添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリウロン酸ナトリウム(3)0.5gを得た。
得られたポリウロン酸ナトリウム(3)の重量平均分子量は9.0万、カルボン酸置換度は0.41であった。
実施例4
実施例1の工程(1)において、水の添加量をセルロースの一級水酸基1モルに対して2.0モル(0.22g)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリウロン酸ナトリウム(4)0.6gを得た。
得られたポリウロン酸ナトリウム(4)の重量平均分子量は3.6万、カルボン酸置換度は0.56であった。
比較例1
実施例1(2)において、水を添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリウロン酸ナトリウム(5)0.7gを得た。
得られたポリウロン酸ナトリウム(5)のカルボン酸置換度は0.20であった。ポリウロン酸ナトリウム(5)は水には溶解しなかった。

Claims (8)

  1. 下記工程(1)及び(2)を有するポリウロン酸又はその塩の製造方法。
    工程(1):セルロース含有原料を有機溶媒に溶解して、セルロース溶液を得る工程
    工程(2):工程(1)で得られたセルロース溶液中のセルロースを、該セルロースの一級水酸基1モルに対して0.5〜100モルの水、ニトロキシルラジカル化合物、及び酸化剤の存在下で酸化して、ポリウロン酸又はその塩を得る工程
  2. 有機溶媒が、塩化リチウム系セルロース溶媒、又はアミンオキシド系セルロース溶媒である、請求項1に記載のポリウロン酸又はその塩の製造方法。
  3. 塩化リチウム系セルロース溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる少なくとも1種と、塩化リチウムとの混合溶媒である、請求項2に記載のポリウロン酸又はその塩の製造方法。
  4. 酸化剤がハロゲン系酸化剤である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウロン酸又はその塩の製造方法。
  5. ハロゲン系酸化剤が、有機N−ハロ化合物、ジアセトキシヨードベンゼン、次亜ハロゲン酸又はその塩、及び亜ハロゲン酸又はその塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載のポリウロン酸又はその塩の製造方法。
  6. 有機N−ハロ化合物が、トリハロイソシアヌル酸、N−ハロスクシンイミド、及びジハロヒダントインから選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載のポリウロン酸又はその塩の製造方法。
  7. 工程(1)で得られたセルロース溶液のセルロース濃度が0.1〜20質量%である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリウロン酸又はその塩の製造方法。
  8. ポリウロン酸又はその塩の重量平均分子量が2万以上である、請求項1〜7のいずれかに記載のポリウロン酸の製造方法。
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