JP2013255455A - 細胞壁穿孔方法、および微生物検出方法 - Google Patents

細胞壁穿孔方法、および微生物検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熟練した技を要さずとも、容易に微生物の細胞壁に孔を開けることができ、かつ、サンプル中に夾雑物があったとしても微生物の細胞壁に確実に孔を開ける。
【解決手段】細胞壁穿孔方法は、微生物を含むサンプルに粉体群を接触させる工程(粉体群接触工程S110)と、粉体群を介在させて、サンプルに圧力を印加する工程(圧力印加工程S120)と、サンプルに圧力を印加する工程を遂行した後に、洗浄液で粉体群を洗浄する工程(洗浄工程S130)を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、微生物の細胞壁に孔を開ける細胞壁穿孔方法、およびこれを用いた微生物検出方法に関する。
従来、微生物数を定量するために、FISH(Fluorescence In Situ Hybridization)法が広く利用されている(例えば、非特許文献1)。FISH法では、まず、採取した場所から微生物の検出を行う施設(試験機関や研究機関、分析機関等)に移動する際に微生物が増殖してしまう事態を回避するために固定(微生物の細胞分裂を抑止すること)を行う。そして、検出目的の微生物のrRNAと相補的に結合する蛍光標識されたプローブ(以下、単に蛍光標識プローブと称する)と、固定した微生物群とを、ハイブリダイズさせる。続いて、蛍光顕微鏡やフローサイトメータで、蛍光標識プローブを検出することにより、検出目的の微生物数の定量を行う。
しかし、自然界に生息する微生物には、タンパク質合成の触媒反応の活性が低いため、rRNAの含有量が少ない微生物も多く存在する。このようなrRNAの含有量が少ない微生物は、FISH法での検出を試みたとしても、蛍光標識プローブと結合するrRNAが少ないため、蛍光顕微鏡やフローサイトメータにおいて認識できる程度の蛍光強度を得られないことがある。
そこで、近年、酵素反応を利用して蛍光色素を細胞内に沈着させることで、蛍光強度を向上させたCARD(CAtalyzed Reporter Deposition)−FISH法が開発されている(例えば、非特許文献2)。CARD−FISH法では、西洋わさびペルオキシターゼ(HRP:HorseRadish Peroxidase)で標識したプローブ(以下、単にHRP標識プローブと称する)を利用する。まず、検出目的の微生物のrRNAと相補的に結合するHRP標識プローブと、固定した微生物群とを、ハイブリダイズさせる。そして、HRPの基質となる過酸化水素とチラミン−蛍光色複合体とを加える。そうすると、HRPによって、チラミン−蛍光色素複合体がラジカル化され、細胞内のタンパク質等に共有結合し、その結果、多数の蛍光色素が検出目的の微生物の細胞内に沈着する。こうして、検出目的の微生物の細胞の蛍光強度が、従来のFISH法の数十倍以上となり、蛍光顕微鏡やフローサイトメータにおいて十分認識できる程度の蛍光強度を得ることができる。
しかし、微生物の中には、細胞壁の透過性が低い(細胞壁を貫通する孔が少ない、または、孔が小さい)ものがあり、このような微生物の細胞内に物質を大量に挿入したり、孔より大きい物質を挿入するのは困難である。したがって、HRPといった酵素等の高分子で標識されたプローブのような大きい分子が、細胞壁を通過できない場合や、通過できたとしてもごくわずかな量しか通過できない場合がある。このような微生物の細胞内には、HRP標識プローブを浸透させることが困難であり、CARD−FISH法を行うことができない。
そこで、細胞壁を構成するタンパク質を分解する酵素を利用して、細胞壁を貫通する孔を開ける(または、もともと存在する孔の径を大きくする)ことが考えられる。例えば、アクチノバクテリアはペプチドグリカン(ムレイン)で構成される厚い細胞壁を持つため、かかる細胞壁に孔を開けるために、リゾチームおよびアクロモペプチダーゼの双方を利用している。
しかし、微生物によって細胞壁を構成するタンパク質が異なるため、検出目的の微生物ごとに利用する酵素を変える必要があり、検査者に煩雑な作業を強いることとなっていた。また微生物によっては、細胞壁を構成するタンパク質が特殊であったり、細胞壁の構造が特殊であったりするために、市販の酵素では、細胞壁に孔を開けることが困難な微生物も多く存在する。例えば、メタノサルシナ属の微生物の細胞壁はメタノコンドロイチンやタンパク質を含んで構成されているため、市販の酵素では、細胞壁に孔を開けることができない。また、メタノバクテリウム属等の古細菌の多くは、細胞壁がシュードムレインで構成されているため、市販の酵素では、細胞壁に孔を開けることができない。
このような微生物に対してCARD―FISH法を行う場合、細胞壁を構成するタンパク質を分解可能な酵素を作成しなければならず、コスト高となっていた。また、細胞壁を構成するタンパク質を分解可能な酵素が存在しない場合もある。
そこで、微生物群を含むサンプルをピンセットの先端部分で押圧するとともに、ピンセットの先端部分を押圧方向と直交する方向に相対的にずらすことで、微生物にせん断力を付与して、微生物の細胞壁に孔を開ける技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
特開2008−29294号公報
R I Amann,et al, Combination of 16S rRNA-targeted oligonucleotide probes with flow cytometry for analyzing mixed microbial populations., Appl. Environ. Microbiol.1990, 56(6):1919. A Pernthaler,et al, Fluorescence In Situ Hybridization and Catalyzed Reporter Deposition for the Identification of Marine Bacteria., Appl. Environ. Microbiol.2002, 68(6):3094.
しかし、特許文献1の技術を用いたとしても、ピンセットの先端部分とサンプルとの接触面積が小さいため、サンプル中の微生物全体に対して均一に細胞壁に孔を開けることが困難であった。
また、特許文献1の技術では、サンプル中に微生物よりも大きい夾雑物がある場合、ピンセットからの押圧力が夾雑物に集中してしまい、微生物に押圧力が伝達されず、細胞壁に孔を開けることができない。
そこで本発明は、このような課題に鑑み、熟練した技を要さずとも、容易に微生物の細胞壁に孔を開けることができ、かつ、サンプル中に夾雑物があったとしても微生物の細胞壁に確実に孔を開けることが可能な細胞壁穿孔方法、およびこれを用いた微生物検出方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の細胞壁穿孔方法は、微生物を含むサンプルに粉体群を接触させる工程と、前記粉体群を介在させて、前記サンプルに圧力を印加する工程と、を含むことを特徴とする。
また、前記サンプルに圧力を印加する工程を遂行した後に、洗浄液で前記粉体群を洗浄する工程を含むとしてもよい。
また、前記洗浄液は、脱水作用がある溶媒であるとしてもよい。
また、前記粉体群は、水溶性の塩で構成されるとしてもよい。
また、前記粉体群は、塩化ナトリウムで構成されるとしてもよい。
また、前記圧力は、15kg/cm以上であるとしてもよい。
上記課題を解決するために、本発明の微生物検出方法は、FISH法を用いた微生物検出方法であって、検出目的の微生物を含むサンプルにおいて、該検出目的の微生物を固定する工程と、前記サンプルに粉体群を接触させる工程と、前記粉体群を介在させて、前記サンプルに圧力を印加する工程と、圧力が印加された前記サンプルをプローブとともにインキュベートすることで、前記検出目的の微生物の核酸と該プローブとを相補的に結合させる工程と、前記相補的に結合させる工程において残存したプローブを除去する工程と、前記検出目的の微生物の核酸と相補的に結合したプローブを検出する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、熟練した技を要さずとも、容易に微生物の細胞壁に孔を開けることができ、かつ、サンプル中に夾雑物があったとしても微生物の細胞壁に確実に孔を開けることが可能となる。
細胞壁穿孔方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。 細胞壁穿孔方法で利用される細胞壁穿孔装置の一例を説明するための図である。 細胞壁穿孔方法における細胞壁に対する穿孔の機構を説明するための図である。 微生物検出方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(細胞壁穿孔方法)
図1は、本実施形態にかかる細胞壁穿孔方法の処理の流れを説明するためのフローチャートであり、図2は、本実施形態にかかる細胞壁穿孔方法で利用される細胞壁穿孔装置の一例を説明するための図である。なお、図2(a)は、細胞壁穿孔装置200の構成を示し、図2(b)〜(d)は、細胞壁穿孔装置200における載置台210近傍の部分拡大図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる細胞壁穿孔方法は、粉体群接触工程S110、圧力印加工程S120、洗浄工程S130を含む。以下、細胞壁穿孔方法の各工程について詳述する。
(粉体群接触工程:ステップS110)
粉体群接触工程S110は、微生物を含むサンプルに粉体群を接触させる工程である。例えば、図2(a)に示す細胞壁穿孔装置200を利用して、まず、図2(b)に示すように、載置台210における、ピストンガイド220に囲繞された箇所に、微生物を含むサンプルを載置する。例えば、微生物を含むサンプルをフィルタに捕捉したフィルタサンプルを、サンプルを捕捉した面の背面が載置台210の上面210aに接触するように、載置台210に載置する。続いて、図2(c)に示すように、フィルタにおけるサンプルを捕捉した面に粉体群を接触させる。つまり、サンプルを載置台210に載置し、その鉛直上方から粉体群を接触させる。
ここで、粉体群を構成する粉体は、酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化ケイ素(シリカ)等の非水溶性の物質であってもよいが、好ましくは水溶性の塩(酸由来の陰イオン(アニオン)と塩基由来の陽イオン(カチオン)とがイオン結合した化合物)であるとよい。水溶性の塩は、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、硫酸アンモニウム((NHSO)、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、リン酸塩(例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム)等であり、好ましくは、塩化ナトリウムである。
粉体を水溶性の塩とすることで、後述する洗浄工程S130において、サンプルから粉体を容易に除去することができる。また、粉体を塩化ナトリウムとすることで、容易かつ安価に粉体を入手することができる。さらに、塩化ナトリウムは、微生物を変性させるおそれがない。
また、粉体の硬度は、微生物の硬度よりも大きければよい。
また、粉体の平均粒径は、微生物の大きさの1/3〜3/2倍程度が好ましい。粉体の平均粒径が微生物の大きさの1/3未満であると、後述する圧力印加工程S120において微生物の細胞壁にせん断力を十分に与えることができない。また粉体の平均粒径が微生物の大きさの3/2倍以上であると、サンプル中に微生物よりも大きい夾雑物がある場合、圧力印加工程S120において、押圧力が夾雑物に集中してしまい、微生物の細胞壁にせん断力を十分に与えることができない。
(圧力印加工程:S120)
圧力印加工程S120は、粉体群を介在させて、サンプルに圧力を印加する工程である。図2(a)中、白抜き矢印で示す方向にレバー230を移動させると、レバー230に連結されたピストン240がピストンガイド220に案内されて鉛直下方(図2中、Y軸方向)に移動する(図2(a)中、黒い矢印で示す)。つまり、ピストン240が載置台210(サンプル)の方向に移動する。そうすると、図2(d)に示すように、ピストン240が粉体群を介してサンプルに圧力を印加することになり、サンプルが粉体群に囲繞されたペレットが形成される。ここで、印加する圧力は、例えば、15kg以上/cmであり、印加時間は、例えば、15秒以上である。
かかる圧力印加工程S120を経ることで、サンプル中の微生物の細胞壁に孔が開くこととなる。図3は、細胞壁穿孔方法における細胞壁に対する穿孔の機構を説明するための図である。図3(a)中白抜き矢印で示すように、ピストン240によって、粉体群に圧力が印加されると、粉体がそれぞれ独立して鉛直下方向(図3(a)中、Y軸方向)に移動する。
そうすると、図3(b)に示すように、微生物に対して、鉛直方向の力(図3(b)中、黒い矢印で示す)が加えられる。このとき、微生物は、複数の粉体によって力が加えられるが、個々の粉体が与える力の大きさが異なり、微生物に対して、せん断力が加えられることになる。かかるせん断力によって、微生物の細胞壁に孔(亀裂)が生じる。
また、上述したように、粉体の平均粒径が3/2倍未満であるため、サンプル中に微生物よりも大きい夾雑物があったとしても、微生物に押圧力を伝達することができ、微生物の細胞壁にせん断力を十分与えることが可能となる。
(洗浄工程:S130)
洗浄工程S130は、洗浄液で粉体群を洗浄する工程である。ここで、洗浄液は、水等の粉体を溶解する溶媒であってもよいが、好ましくは、脱水作用がある溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)であるとよい。
洗浄工程S130を経ることにより、サンプルから粉体が除去される。なお、微生物を含むサンプルをフィルタに捕捉したフィルタサンプルに対して処理を行う場合、水等の粉体群を溶解する溶媒で洗浄すると、粉体とともに微生物がフィルタから剥離(脱落)してしまうおそれがある。そこで、脱水作用がある溶媒で洗浄することで、微生物をフィルタに結合(疎水結合)させることができ、フィルタからの微生物の剥離を抑制しつつ、サンプルから粉体を容易に除去することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態にかかる細胞壁穿孔方法によれば、粉体群を介在させて、サンプルに圧力を印加するだけといった簡易な構成で、熟練した技を要さずとも、容易に微生物の細胞壁に孔を開けることができ、かつ、サンプル中に夾雑物があったとしても微生物の細胞壁に確実に孔を開けることが可能となる。
(微生物検出方法)
続いて、上記細胞壁穿孔方法を利用した微生物検出方法について説明する。図4は、本実施形態にかかる微生物検出方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。図4に示すように、微生物検出方法は、CARD−FISH法を用いた微生物検出方法であり、固定工程S310、濃縮工程S320、前処理工程S330、細胞壁穿孔工程S340、酵素反応工程S350、第1洗浄工程S360、ハイブリダイゼーション工程S370、第2洗浄工程S380、反応工程S390、第3洗浄工程S400、検体作成工程S410、定量工程S420を含む。以下、各工程について詳述する。
なお、ここで、微生物を含むサンプルは、水系の微生物を含むサンプルや、土壌系の微生物を含むサンプル、活性汚泥、食品等が挙げられる。
(固定工程S310)
固定工程S310は、サンプル中の微生物の固定を行う工程である。例えば、サンプルにパラホルムアルデヒド水溶液を加え、パラホルムアルデヒドの最終濃度が4%となるように調整する。そして、サンプルにパラホルムアルデヒドを加えた状態で、4℃で一晩保持して、化学固定を行う。
(濃縮工程S320)
濃縮工程S320は、固定後の微生物群(検出目的の微生物を含む)を含むサンプルを分散させたのち、フィルタで濾過し、微生物群(検出目的の微生物を含む)をフィルタ上に捕捉する工程である。ここで、分散には、ホモジナイザーや超音波処理機を利用するとよい。また、フィルタは、例えば、孔径が0.22μmのポリカーボネート製のフィルタが挙げられる。
(前処理工程S330)
前処理工程S330は、40℃程度で溶解した状態の寒天溶液(例えば、0.1%)に、微生物群を捕捉したフィルタを浸漬し、乾燥させることで、微生物群がフィルタから剥がれ落ちないように寒天でカバーする工程である。
(細胞壁穿孔工程S340)
細胞壁穿孔工程S340は、上述した細胞壁穿孔方法(粉体群接触工程S110、圧力印加工程S120、洗浄工程S130)を利用して、フィルタサンプル(検出目的の微生物を含む)における微生物の細胞壁に孔を開ける工程である。
(酵素反応工程S350)
酵素反応工程S350は、細胞壁穿孔工程S340後のフィルタサンプルに酵素を加える工程である。微生物の中には、細胞壁が多重になっているものもある。そこで、細胞壁のうち、もっとも外側を構成する細胞壁(最外殻の細胞壁)については、上記細胞壁穿孔工程S340で孔を開けておき、酵素反応工程S350において酵素を加えることで、細胞壁穿孔工程S340で開けられた孔を通じて酵素を導入することができる。これにより、最外殻の細胞壁の内側に存在する細胞壁に酵素を到達させることができ、細胞壁が多重になっている微生物であっても、確実に細胞壁内まで貫通する孔を開けることが可能となる。
(第1洗浄工程S360)
第1洗浄工程S360は、酵素反応工程S350後のフィルタサンプルを、水等で洗浄し、その後、エタノール等で乾燥させ、さらに、過酸水化素(H)を含むメタノールに30分程度浸漬する工程である。
(ハイブリダイゼーション工程S370)
ハイブリダイゼーション(CARD−FISH反応)工程S370は、フィルタサンプルをプローブとともにインキュベートすることで、検出目的の微生物の核酸(例えば、rRNAやrRNAの前駆体)とプローブとを相補的に結合させる(ハイブリダイゼーション)工程である。
ここでプローブは、検出目的の微生物の核酸と特異的に結合する、HRP標識されたオリゴヌクレオチドプローブや、HRP標識されたPNA(Peptide Nucleic Acid)プローブである。例えば、検出目的の微生物の16SrRNAと特異的に結合するプローブや、検出目的の微生物の23SrRNAと特異的に結合するプローブ、検出目的の微生物の5SrRNAと特異的に結合するプローブ、検出目的の微生物の18SrRNAと特異的に結合するプローブが挙げられる。
また、検出目的の微生物のrRNAの前駆体と特異的に結合するプローブが挙げられる。ここで、rRNAの前駆体とは、例えば、rrnオペロンから転写された後であって、リボヌクレアーゼ(例えば、RNaseIII)で切断される前の状態のものを指す。rRNAの前駆体は、増殖期に多く存在するため、rRNAの前駆体と特異的に結合するプローブを利用することで、増殖している細胞(微生物)のみを検出することが可能となる。
PNAプローブは、オリゴヌクレオチドプローブ中のリン酸基による負電荷の反発が解消されているため、対象となるrRNAやmRNAとより強くハイブリダイズする。したがって、PNAプローブを用いることにより、オリゴヌクレオチドプローブを用いる場合と比較して、ハイブリダイゼーション工程S370におけるインキュベート時間を短くすることができる。
(第2洗浄工程S380)
第2洗浄工程S380は、プローブを含まない溶媒でフィルタサンプルを洗浄することにより、残存したプローブ(ハイブリダイズしなかったプローブ)をフィルタサンプルから除去する工程である。
(反応工程S390)
反応工程S390は、第2洗浄工程S380後のフィルタサンプルをPBS(Phosphate Buffered Saline)等に浸漬した後、過酸化水素と、蛍光標識したチラミド(チラミン−蛍光色複合体)とを加える工程である。かかる反応工程S390を経ることにより、プローブに結合されたHRPによって、チラミン−蛍光色素複合体がラジカル化され、微生物の細胞内のタンパク質等に共有結合する。
(第3洗浄工程S400)
第3洗浄工程S400は、反応工程S390後のフィルタサンプルを、PBS、超純水等で洗浄した後、エタノール(例えば、99.5%)に浸漬することで脱水し、乾燥させる工程である。
(検体作成工程S410)
検体作成工程S410は、第3洗浄工程S400において乾燥させたフィルタサンプルを、微生物群を捕捉した面の裏面がスライドガラスに接触するように、スライドガラスにマウントし、微生物群を捕捉した面にDNA染色試薬(例えば、DAPI)およびグリセリンを含む溶液を介在させてカバーガラスを密着させ、検体を作成する工程である。
グリセリンは、粘度が高く、揮発困難であり、かつ、ガラスと屈折率が近い状態に希釈調整できる液体である。したがって、液体がグリセリンを含むことにより、後述する定量工程S420において、安定的に観察を行うことができる。
(定量工程S420)
定量工程S420は、検出目的の微生物の核酸と相補的に結合した(ハイブリダイズした)HRP標識プローブに基づいて発光した蛍光を検出する工程である。具体的には、蛍光顕微鏡やフローサイトメータを用いて、蛍光に染色された個体数をカウントする。
また、定量工程S420では、DNA染色試薬によって染色された個体数をカウントする。
HRP標識プローブに基づいて発光した蛍光に染色された個体数、および、DNA染色試薬によって染色された個体数をカウントすることで、下記(A)、(B)に示す効果を得ることができる。
(A)DNA染色試薬によって染色された個体数をカウントすることで、HRP標識プローブに基づいて発光した蛍光に染色された個体が、生物であるか否かを判定することができる。つまり、HRP標識プローブに基づいて発光した蛍光に染色され、かつ、DNA染色試薬によって染色された個体が検出目的の微生物であることが分かる。
(B)DNA染色試薬によって染色された個体数をカウントすることで、サンプル中のすべての微生物の個体数が分かる。したがって、HRP標識プローブに基づいて発光した蛍光に染色され、かつ、DNA染色試薬によって染色された個体と、DNA染色試薬によってのみ染色された個体とを比較することで、サンプル中の全微生物における検出目的の微生物が占める割合を算出することができる。
以上説明したように、本実施形態にかかる微生物検出方法によれば、従来、CARD−FISH法を用いた検出が困難であった、細胞壁の透過性が低い微生物、例えば、メタノサルシナ属やメタノバクテリウム属の微生物であっても、CARD−FISH法で検出することが可能となる。
(実施例)
検出目的の微生物を含むサンプルにパラホルムアルデヒド水溶液を加え、パラホルムアルデヒドの最終濃度が4%となるように調整した。そして、サンプルにパラホルムアルデヒドを加えた状態で、4℃で一晩保持して、化学固定を行った(固定工程S310)。
そして、固定後のサンプルを含む溶媒において、微生物を分散させるために、1分間超音波処理を行った。続いて、ポリカーボネート製のフィルタ(直径25mm、孔径0.22μm)で濾過して、フィルタ上に微生物群を捕捉した(濃縮工程S320)。
そして、40℃で溶解した状態の寒天溶液(0.1%)に、微生物群を捕捉したフィルタを浸漬し、微生物群を捕捉した面の裏面がスライドガラスに接触するように、フィルタサンプルをスライドガラスに気泡が入らないように付着させ、乾燥させた(前処理工程S330)。その後、フィルタサンプルをスライドガラスから剥離し、フィルタサンプルを12片に分割した。以降の処理については、分割した1片のフィルタサンプルを用いた。
続いて、フィルタサンプルをエタノールに浸漬し、エタノールで濡れた状態のまま、細胞壁穿孔装置200の載置台210に載置した。このとき、ピストンガイド220にフィルタサンプルが触れないように注意した。そして、ピストンガイド220の内側に塩化ナトリウムの粉体群を入れ、フィルタサンプル全面を覆うようにした(粉体群接触工程S110)。塩化ナトリウムの粉体群は、塩化ナトリウムをメノウ乳鉢で粉砕することで作成した。また、作成した粉体群の粒径は0.1μm〜3μmであった。
そして、粉体群の上から、ピストンガイド220内にピストン240を挿入し、レバー230を操作することで20kg/cmの圧力を15秒間印加した(圧力印加工程S120)。このようにして、フィルタサンプルが粉体群に囲繞されたペレットが形成された。
その後、ペレットをエタノールで洗浄した(洗浄工程S130)。その結果、粉体群がほぐれて、フィルタサンプルから除去された。
続いて、フィルタサンプルをアクロモペプチターゼ溶液に浸漬し、室温で30分反応させた(酵素反応工程S350)。
次に、フィルタサンプルを水で洗浄し、エタノールに浸漬して脱水し、乾燥させた。その後、フィルタサンプルを、0.0015%Hを含むメタノール中に30分浸漬した(第1洗浄工程S360)。
続いて、フィルタサンプルを、検出目的の微生物の核酸と特異的に結合するHRP標識されたオリゴヌクレオチドプローブ8pmol/μLを含む溶液2μLと、バッファーA300μLに浸漬して、45℃で2時間インキュベートした(ハイブリダイゼーション工程S370)。ここでバッファーAは、0.9M NaCl、20mM Tris−HCl、35% ホルムアミド、2% Blocking reagent、0.02% SDSの水溶液を用いた。
その後、インキュベート後のフィルタサンプルを、バッファーBに浸漬し、48℃で15分間洗浄した(第2洗浄工程S380)。ここでバッファーBは、80mM NaCl、20mM Tris−HCl、5mM EDTA、0.01% SDSの水溶液を用いた。
続いて、フィルタサンプルを、10mlのPBS(8gのNaCl、0.2gのKCl、1.44gのNaHPO、0.24gのKHPOを1Lの超純水に溶解させpH7.4にしたもの)に数分浸漬した。その後、フィルタサンプルを反応液に浸漬し、37℃で15分間反応させ、反応液に含まれる蛍光色素を検出目的の微生物の細胞内に沈着させた(反応工程S390)。ここで、反応液は、0.0015%H、1%Blocking reagentのPBS溶液500μLと5,6−FAM(蛍光色素)で標識したチラミド(tyramide)溶液3μLの混合液である。
そして、反応後のフィルタサンプルを、約10mlのPBSで5分間洗浄し、超純水で1分間洗浄した後にエタノールに浸漬して脱水し乾燥した(第3洗浄工程S400)。
その後、フィルタサンプルを、微生物群を捕捉した面の裏面がスライドガラスに接触するように、スライドガラスにマウントし、微生物群を捕捉した面にDNA染色試薬およびグリセリンを含む溶液を介在させてカバーガラスを密着させた(検体作成工程S410)。最後に、蛍光顕微鏡を用いて、5,6−FAMを検出した(定量工程S420)。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態における細胞壁穿孔装置200は、一例に過ぎず、粉体群を介在させて、サンプルに圧力を印加することができれば、構成に限定はない。例えば、上述した実施形態では、サンプルの鉛直上方に粉体群を載せ、粉体群を介在させて、鉛直上方からサンプルに圧力を印加する構成について説明した。しかし、サンプルの鉛直下方に粉体群を配置し(粉体群の鉛直上方にサンプルを載せ)、粉体群を介在させて、鉛直下方からサンプルに圧力を印加してもよい。また、サンプルの横方向に粉体群を配置し、粉体群を介在させて、横方向(水平方向)からサンプルに圧力を印加してもよい。
また、上述した実施形態において、細胞壁穿孔装置200における載置台210の上面210aを、鏡面加工するとよい。上面210aが凹凸である場合、凹部に微生物が嵌まってしまい、粉体から押圧力を得られないためである。
また、上述した実施形態において、酵素反応工程S350を遂行する場合について説明したが、検出目的の微生物の種類によっては、酵素反応工程S350を省略することもできる。また、酵素反応工程S350における酵素として、アクロモペプチターゼを例に挙げて説明したが、酵素の種類に限定はなく、例えば、プロテイナーゼK等であってもよい。
また、上述した実施形態において、細胞壁穿孔方法を利用する例としてCARD−FISH法を例に挙げて説明した。しかし、本実施形態にかかる細胞壁穿孔方法は、微生物を検出する様々な技術(例えば、FISH法)に利用することができる。
なお、本明細書の細胞壁穿孔方法および微生物検出方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。
本発明は、微生物の細胞壁に孔を開ける細胞壁穿孔方法、およびこれを用いた微生物検出方法に利用することができる。
S110 …粉体群接触工程
S120 …圧力印加工程
S130 …洗浄工程
S310 …固定工程
S320 …濃縮工程
S330 …前処理工程
S340 …細胞壁穿孔工程
S350 …酵素反応工程
S360 …第1洗浄工程
S370 …ハイブリダイゼーション工程
S380 …第2洗浄工程
S390 …反応工程
S400 …第3洗浄工程
S410 …検体作成工程
S420 …定量工程

Claims (7)

  1. 微生物を含むサンプルに粉体群を接触させる工程と、
    前記粉体群を介在させて、前記サンプルに圧力を印加する工程と、
    を含むことを特徴とする細胞壁穿孔方法。
  2. 前記サンプルに圧力を印加する工程を遂行した後に、洗浄液で前記粉体群を洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の細胞壁穿孔方法。
  3. 前記洗浄液は、脱水作用がある溶媒であることを特徴とする請求項2に記載の細胞壁穿孔方法。
  4. 前記粉体群は、水溶性の塩で構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の細胞壁穿孔方法。
  5. 前記粉体群は、塩化ナトリウムで構成されることを特徴とする請求項4に記載の細胞壁穿孔方法。
  6. 前記圧力は、15kg/cm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の細胞壁穿孔方法。
  7. FISH法を用いた微生物検出方法であって、
    検出目的の微生物を含むサンプルにおいて、該検出目的の微生物を固定する工程と、
    前記サンプルに粉体群を接触させる工程と、
    前記粉体群を介在させて、前記サンプルに圧力を印加する工程と、
    圧力が印加された前記サンプルをプローブとともにインキュベートすることで、前記検出目的の微生物の核酸と該プローブとを相補的に結合させる工程と、
    前記相補的に結合させる工程において残存したプローブを除去する工程と、
    前記検出目的の微生物の核酸と相補的に結合したプローブを検出する工程と、
    を含むことを特徴とする微生物検出方法。
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