JP2013253781A - 神経変性疾患の検査方法及び神経変性疾患判定キット - Google Patents

神経変性疾患の検査方法及び神経変性疾患判定キット Download PDF

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Abstract

【課題】ヒトを含む被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候を比較的正確且つ容易に確認することのできる神経変性疾患の進行度合いを判定するキットを提供する。
【解決手段】被験動物から採取した尿中及び/又は血液中のホモシステイン酸含量を調べることとした。また、被験動物から採取した第1の尿中のホモシステイン酸含量を、前記第1の尿の採取以前に前記被験動物より採取した第2の尿中のホモシステイン酸含量と比較して、前記第1の尿中のホモシステイン酸含量が、前記第2の尿中のホモシステイン酸含量より小さくなったことにより、その減少量が大きいほど前記被験動物の神経変性疾患が進行しているものと判定することにも特徴を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、神経変性疾患の検査方法及び神経変性疾患の進行度合いを判定するキットに関する。
従来、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)やレビー小体型認知症、脳血管性認知症などの変性性認知症は、神経変性疾患の代表的な症例として知られている。
例えば、これら神経変性疾患のうち、アルツハイマー病は、過去の出来事の記憶が失われてしまったり、新しい出来事を記憶するのが困難となる等の病状を示すのが特徴的である。
このような病状は、何等手立てを打たないままであると、経時的に徐々に進行することとなり、日常生活において極めて重大な支障を来すこととなってしまう場合がある。
したがって、早期にこれら神経変性疾患の兆候を確認し、病状の進行に対して有効な手立てを打つことが重要である。
そこで、患者を被験者として複数の質問を行うことにより、神経変性疾患の兆候や進行度合いを確認するテスト等が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
このようなテストによれば、早期にできるだけ簡単にアルツハイマー病の診断を行うことができるとしている。
2010−187959号公報
しかしながら、上記従来のテストでは、神経変性疾患の進行度合いを必ずしも迅速に把握するのが困難な場合があった。
そこで、比較的迅速に神経変性疾患の進行度合いを把握可能な判定手段や方法が望まれている。
また、神経変性疾患の研究においては、神経変性疾患の病態を示すマウスやラット等の非ヒト動物が用いられているが、これら研究用の非ヒト動物においても、容易且つ正確に神経変性疾患の兆候を確認することができれば、研究において極めて有用である。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、ヒトを含む被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候を比較的正確且つ容易に確認することのできる神経変性疾患の検査方法及び進行度合いを判定するキットを提供する。
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る本発明では、被験動物から採取した尿中及び/又は血液中のホモシステイン酸含量を調べることとした。
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の神経変性疾患の検査方法において、被験動物から採取した第1の尿中のホモシステイン酸含量を、前記第1の尿の採取以前に前記被験動物より採取した第2の尿中のホモシステイン酸含量と比較して、前記第1の尿中のホモシステイン酸含量が、前記第2の尿中のホモシステイン酸含量より小さくなったことにより、その減少量が大きいほど前記被験動物の神経変性疾患が進行しているものと判定することに特徴を有する。
また、請求項3に係る本発明では、請求項1又は請求項2に記載の神経変性疾患の検査方法において、被験動物から採取した第1の血液中のホモシステイン酸含量を、前記第1の血液の採取以前に前記被験動物より採取した第2の血液中のホモシステイン酸含量と比較して、前記第1の血液中のホモシステイン酸含量が、前記第2の血液中のホモシステイン酸含量より大きくなったことにより、その増加量が大きいほど前記被験動物の神経変性疾患が進行しているものと判定することに特徴を有する。
また、請求項4に係る本発明では、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した尿を用いて判定するためのキットであって、前記尿と接触させる尿接触手段と、前記尿接触手段に接触させた尿の中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、前記抗ホモシステイン酸抗体の前記尿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、前記尿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が少ない程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能とした。
また、請求項5に係る本発明では、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した血液を用いて判定するためのキットであって、前記血液又は前記血液より得られる血漿を接触させる接触手段と、前記接触手段に接触させた血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、前記抗ホモシステイン酸抗体の前記血液又は血漿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、前記血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が多い程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能とした。
また、請求項6に係る本発明では、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するに際して、前記被験動物より採取した第1の尿中におけるホモシステイン酸の含有量と前記第1の尿の採取以前に前記被験動物より採取した第2の尿中のホモシステイン酸含有量とを比較して前記被験動物に対して非侵襲的に神経変性疾患の進行度合いを判定するための、少なくとも前記第1の尿中におけるホモシステイン酸の含有量と、前記第2の尿中におけるホモシステイン酸の含有量との比が分かるデータを使用した。
また、請求項7に係る本発明では、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するに際して、前記被験動物より採取した第1の血液中におけるホモシステイン酸の含量と前記第1の血液の採取以前に前記被験動物より採取した第2の血液中のホモシステイン酸含量とを比較して神経変性疾患の進行度合いを判定するための、少なくとも前記第1の血液中におけるホモシステイン酸の含量と、前記第2の血液中のホモシステイン酸含量との比が分かるデータを使用した。
また、請求項8に係る本発明では、被験動物より採取した尿及び/又は血液に含まれるホモシステイン酸を、神経変性疾患に対するバイオマーカーとして使用した。
請求項1に係る本発明によれば、被験動物から採取した尿中及び/又は血液中のホモシステイン酸含量を調べることとしたため、ヒトを含む被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候を比較的正確且つ容易に確認することのできる神経変性疾患の検査方法を提供することができる。
また、請求項2に係る本発明によれば、被験動物から採取した第1の尿中のホモシステイン酸含量を、前記第1の尿の採取以前に前記被験動物より採取した第2の尿中のホモシステイン酸含量と比較して、前記第1の尿中のホモシステイン酸含量が、前記第2の尿中のホモシステイン酸含量より小さくなったことにより、その減少量が大きいほど前記被験動物の神経変性疾患が進行しているものと判定することとしたため、被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候や進行度合いを比較的正確且つ容易に確認することができる。
また、請求項3に係る本発明によれば、被験動物から採取した第1の血液中のホモシステイン酸含量を、前記第1の血液の採取以前に前記被験動物より採取した第2の血液中のホモシステイン酸含量と比較して、前記第1の血液中のホモシステイン酸含量が、前記第2の血液中のホモシステイン酸含量より大きくなったことにより、その増加量が大きいほど前記被験動物の神経変性疾患が進行しているものと判定することとしたため、被験非ヒト動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候や進行度合いを比較的正確且つ容易に確認することができる。
また、請求項4に係る本発明によれば、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した尿を用いて判定するためのキットであって、前記尿と接触させる尿接触手段と、前記尿接触手段に接触させた尿の中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、前記抗ホモシステイン酸抗体の前記尿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、前記尿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が少ない程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能としたため、ヒトを含む被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候を比較的正確且つ容易に確認することのできる神経変性疾患の進行度合いを判定するキットを提供することができる。
また、請求項5に係る本発明によれば、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した血液を用いて判定するためのキットであって、前記血液又は前記血液より得られる血漿を接触させる接触手段と、前記接触手段に接触させた血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、前記抗ホモシステイン酸抗体の前記血液又は血漿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、前記血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が多い程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能としたため、ヒトを含む被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候を比較的正確且つ容易に確認することのできる神経変性疾患の進行度合いを判定するキットを提供することができる。
また、請求項6に係る本発明によれば、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するに際して、前記被験動物より採取した第1の尿中におけるホモシステイン酸の含有量と前記第1の尿の採取以前に前記被験動物より採取した第2の尿中のホモシステイン酸含有量とを比較して前記被験動物に対して非侵襲的に神経変性疾患の進行度合いを判定するための、少なくとも前記第1の尿中におけるホモシステイン酸の含有量と、前記第2の尿中におけるホモシステイン酸の含有量との比が分かるデータを使用したため、被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候や進行度合いを比較的正確且つ容易に確認することができる。
また、請求項7に係る本発明によれば、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するに際して、前記被験動物より採取した第1の血液中におけるホモシステイン酸の含量と前記第1の血液の採取以前に前記被験動物より採取した第2の血液中のホモシステイン酸含量とを比較して神経変性疾患の進行度合いを判定するための、少なくとも前記第1の血液中におけるホモシステイン酸の含量と、前記第2の血液中のホモシステイン酸含量との比が分かるデータを使用したため、被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候や進行度合いを比較的正確且つ容易に確認することができる。
また、請求項8に係る本発明によれば、被験動物より採取した尿及び/又は血液に含まれるホモシステイン酸を、神経変性疾患に対するバイオマーカーとして使用したため、被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候や進行度合いを比較的正確且つ容易に確認することができる。
被験者の認知機能検査のスコアと尿中のホモシステイン酸濃度との関係を示したグラフである。 被験者の認知機能検査のスコアと血中のホモシステイン酸濃度との関係を示したグラフである。 被験者の尿中ホモシステイン酸濃度と血中ホモシステイン酸濃度との関係を示したグラフである。 抗原の合成過程を示した説明図である。 本実施形態に係るイムノクロマトキットの構成を示した説明図である。 ホモシステイン酸標品サンプルを測定したクロマトグラムである。 (a)は高濃度領域における検量線、(b)は低濃度領域における検量線である。 尿サンプルを測定した際のクロマトグラムである。 血液サンプルを測定した際のクロマトグラムである。 尿中ホモシステイン酸含量とMMSEスコアとの相関を示した説明図である。 試験群女性又は男性被験者における相関を示した説明図である。 血中ホモシステイン酸含量とMMSEスコアとの相関を示した説明図である。
本発明は、被験動物の神経変性疾患の検査方法、及び、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した尿や血液を用いて判定するためのキットを提供するものである。
本実施形態において説明する、神経変性疾患の検査方法、換言すれば、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定する方法(以下、単に検査方法ともいう。)や、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した尿や血液を用いて判定するためのキット(以下、単に判定キットともいう。)は、本願発明者らの鋭意研究により得られた新たな知見に基づくものである。
そこで、発明の理解を容易とするために、まずはこれら新たな知見について図面を参照しながら説明する。
従来、神経変性疾患の発病原因は、一般に老人斑として知られているアミロイドβ42が神経細胞の外に蓄積し、その後神経細胞内に繊維状の塊である神経原繊維であるタウと呼ばれるタンパクが蓄積し、その結果神経細胞の機能が障害されて神経細胞の死を迎えることにより起こると理解されている。
しかしながら、上述のアミロイドタンパクは、近年の研究によって健常者の脳内にも十分量蓄積していることが観察されている。
また、神経変性疾患の前駆症状であるMCI(Mild Cognitive Impairment)の患者や、神経変性疾患の患者においても、健常者と同様にアミロイドタンパクが蓄積していることが観察されている。
これらの事実から、なぜ健常者は、神経変性疾患の患者と同様にアミロイドタンパクが蓄積しているにもかかわらず、認知機能の正常性を保つことができるのかが問題となっている。
本願発明者は、この点について研究を重ねたところ、図1〜図3に示す結果が得られた。図1は被験者の認知機能検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)のスコアと尿中のホモシステイン酸濃度との関係を示したグラフであり、図2は被験者の認知機能検査のスコアと血中のホモシステイン酸濃度との関係を示したグラフであり、図3は被験者の尿中ホモシステイン酸濃度と血中ホモシステイン酸濃度との関係を示したグラフである。
本発明者が尿中のホモシステイン酸濃度に着目したところ、図1に示すように、認知機能検査のスコアと尿中のホモシステイン酸濃度とは正の相関を示すことが分かった。
また、血中のホモシステイン酸濃度に着目したところ、図2に示すように、認知機能検査のスコアと血中のホモシステイン酸濃度とは逆の相関を示すことが分かった。
また、尿中及び血中のホモシステイン酸濃度を検討すると、図3に示すように、逆の相関を示すことが分かった。
これらの結果から、本発明者は、ホモシステイン酸が神経の変性において重要な役割を担っていることを見出した。
すなわち、図4に示すように、神経変性疾患に罹患している患者は、症状の進行に伴って尿中へのホモシステイン酸の排出が抑制され、血中のホモシステイン酸濃度が上昇する。
血中のホモシステイン酸濃度が上昇すると、血液脳関門(blood-brain barrier)を突破し、ホモシステイン酸が脳内に侵入する。
脳内においてアミロイドタンパクが神経変性作用を生起するためには、グルタメート系のNMDA受容体の活性化が必要であり、脳内に侵入したホモシステイン酸は、NMDA受容体のアゴニスト、換言すればNMDA受容体を刺激する伝達物質として機能するということが分かった。
また、本願発明者は、医学研究者として日頃から数多くの神経変性疾患患者と接してきている。このような中で、患者の自宅などにおいて、例えば家族らによって簡便に神経変性疾患の進行度合いを確認し一次スクリーニングを行うことができれば、早期に疾患を発見し、早期の治療に役立つと考えた。
また、このようにして一次スクリーニングを終えた患者が来院した際には、より定量的に尿中又は血中のホモシステイン酸含量を測定することで、医師や医療従事者によって、患者の神経変性疾患の進行度合いを容易且つ速やかに把握することが可能となると考えた。
また、前述したように、これら神経変性疾患の研究現場では、多くの試験動物を用いて研究が行われているが、従来より提案されている神経変性疾患のバイオマーカは、脳や脊髄にアクセスが必要であるなど極めて侵襲的な方法によって得られるものが多く、試験結果へのバイアスとなる可能性について懸念があった。
本発明は、本願発明者が上述のような状況やデータを踏まえ完成するに至ったものである。
すなわち、本発明に係る神経変性疾患の検査方法では、被験動物から採取した尿中及び/又は血液中のホモシステイン酸含量を調べることとした。
付言すれば、本発明は、被験動物から採取した尿中又は血液中におけるホモシステイン酸の検出を含む、前記被験動物における神経変性疾患の状態を判定する方法についての概念も包含するものである。
また、本発明に係る被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した尿を用いて判定するためのキットは、前記尿と接触させる尿接触手段と、前記尿接触手段に接触させた尿の中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、前記抗ホモシステイン酸抗体の前記尿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、前記尿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が少ない程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能とした。
また、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した血液を用いて判定するためのキットは、前記血液又は前記血液より得られる血漿を接触させる接触手段と、前記接触手段に接触させた血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、前記抗ホモシステイン酸抗体の前記血液又は血漿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、前記血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が多い程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能とした。
ここで神経変性疾患とは、神経細胞が障害を受けて神経死を招く疾患を総称するものである。このような疾患について具体的に示すならば、例えばヒトの場合、アルツハイマー病やレビー小体型認知症などの変性性認知症と解釈することができる。また、非ヒト動物の場合は、これらアルツハイマー病やレビー小体型認知症などの変性性認知症と同様の機序により発症する疾病であると解釈することができる。
また、本明細書において被験動物とは、ヒトと、非ヒト動物との両者を含む概念である。
本明細書において示す被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するためのキットは、被験動物から得られた尿を用いるものと、被験動物から得られた血液を用いるものとがあるが、いずれも、尿中又は血中に含まれるホモシステイン酸の含量により判定を行う点に特徴を有している。
具体的には、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した尿を用いて判定するためのキットでは、前記尿と接触させる尿接触手段と、前記尿接触手段に接触させた尿の中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、前記抗ホモシステイン酸抗体の前記尿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、前記尿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が少ない程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能としている。
尿は、被験動物から採取するに際し、被験動物に対して非侵襲的であることから、神経変性疾患の進行度合いの評価を行うときの被験動物への負担を飛躍的軽減することができる。
特に、被験動物がヒトである場合には、高齢者に対する負担を可及的防止することができる。また、被験動物が試験・研究等に用いられる非ヒト動物である場合には、非ヒト動物に対する侵襲の影響を排除しつつ、神経変性疾患の研究を行うことができる。
また、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した血液を用いて判定するためのキットでは、前記血液又は前記血液より得られる血漿を接触させる接触手段と、前記接触手段に接触させた血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、前記抗ホモシステイン酸抗体の前記血液又は血漿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、前記血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が多い程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能としている。
ここで、接触手段に接触させるサンプルは、血液(全血)又は血漿のいずれであっても良い。特に血漿を用いれば、すでに血球等が除かれているため、より円滑に評価を行うことができる。また、血漿も、トリクロロ酢酸(TCA)等を用いて除タンパク処理を行えば、より評価に適したサンプルとすることができる。
本実施形態に係る尿や血液を用いて判定するためのキットは、上述の構成を備えていれば特に限定されるものではなく、あらゆる形態にて提供されうるものである。
このようなキットとして一例を示すとすれば、イムノクロマト法を採用したキットや、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)を採用したキットなどを挙げることができる。
例えば、イムノクロマト法を採用したキットとして本実施形態に係る尿や血液を用いて判定するためのキットを実現した場合には、尿と接触させる尿接触手段や血液又は前記血液より得られる血漿を接触させる接触手段は、サンプルパッドの部分と解釈することができる。
また、イムノクロマト法を採用したキットの場合、尿や血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体は、コンジュゲートパッドの部分や、テストラインの部分に含まれることとなる。
また、イムノクロマト法を採用したキットの場合、抗ホモシステイン酸抗体の尿中や血液又は血漿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段としては、例えば、コンジュゲートパッドに含まれる抗ホモシステイン酸抗体に結合させた金コロイド等の標識物質やメンブレン、メンブレン上にライン状に配置した抗ホモシステイン酸抗体等からなる一連のシステムと解することができる。
このように、本実施形態に係るキットにおいてイムノクロマト法を採用した場合には、保存安定性や判定の容易性が良好であり、特別な装置を必要とすることなく被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、被験動物より採取した尿や血液又は血漿を用いて判定することができる。
一方、ELISA法を採用したキットとして本実施形態に係る尿や血液を用いて判定するためのキットを実現した場合には、尿と接触させる尿接触手段や血液又は前記血液より得られる血漿を接触させる接触手段は、マイクロプレート等に形成されたウェル等と解釈することができる。
また、ELISA法を採用したキットの場合、尿や血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体は、ウェル底部や、一次抗体として備えられることとなる。
また、ELISA法を採用したキットの場合、抗ホモシステイン酸抗体の尿中や血液又は血漿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段としては、例えば、一次抗体又は二次抗体に結合させた酵素等の標識物質等と解することができる。
このように、本実施形態に係るキットにおいてELISA法を採用した場合には、定量性を良好とすることができ、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、被験動物より採取した尿や血液又は血漿を用いて判定することができる。
上述してきたように、本実施形態に係る尿や血液を用いて被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するためのキットによれば、ヒトを含む被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候を比較的正確且つ容易に確認可能なキットとすることができる。すなわち、本発明は、被験動物から採取した尿中又は血液中におけるホモシステイン酸を検出するための抗ホモシステイン酸抗体を含む、神経変性疾患の診断薬を提供するものであるとも言える。
また、本願は、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを同被験動物より採取した尿や血液を用いて判定する方法を提供するものでもある。
すなわち、本実施形態に係る神経変性疾患の検査方法では、被験動物から採取した尿中及び/又は血液中のホモシステイン酸含量を調べることとしている。
本実施形態に係る神経変性疾患の検査方法を実施するにあたって行われる尿中及び/又は血液中のホモシステイン酸含量の測定は特に限定されるものではない。例えば、前述のキットを使用しても良く、また、各種クロマトを行うことにより定量しても良い。
本実施形態に係る検査方法では、尿を用いて判定する方法においては、被験動物から採取した第1の尿中のホモシステイン酸含量を、前記第1の尿の採取以前に前記被験動物より採取した第2の尿中のホモシステイン酸含量と比較して、前記第1の尿中のホモシステイン酸含量が、前記第2の尿中のホモシステイン酸含量より小さくなったことにより、その減少量が大きいほど前記被験動物の神経変性疾患が進行しているものと判定する。
このことは、先に示した図1及び図3の結果に基づくものであり、尿へのホモシステイン酸の排出量が抑制される程、脳細胞への障害が進み、神経変性疾患が進行することに由来している。
このように、尿を用いて神経変性疾患の進行度合いを判定することができれば、被験動物に対して極めて非侵襲的に、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを評価・判定することが可能となる。
また、別の視点によれば、本願は、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するに際して、前記被験動物より採取した第1の尿中におけるホモシステイン酸の含有量と前記第1の尿の採取以前に前記被験動物より採取した第2の尿中のホモシステイン酸含有量とを比較して前記被験動物に対して非侵襲的に神経変性疾患の進行度合いを判定するための、少なくとも前記第1の尿中におけるホモシステイン酸の含有量と、前記第2の尿中におけるホモシステイン酸の含有量との比が分かるデータを使用する発明を提供するものとも言える。
すなわち、上述のような尿中のホモシステイン酸のデータを神経変性疾患の進行度合いを判定に利用することにより、被験動物に対して極めて非侵襲的に、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを評価・判定することが可能となるのである。
なお付言すれば、被験動物より採取した第1の尿中におけるホモシステイン酸の含有量と、第1の尿の採取以前に被験動物より採取した第2の尿中のホモシステイン酸含有量とを比較する場合にあっては、各サンプル中のホモシステイン酸含有比率が分かれば良く、必ずしも定量を必要としない。
例えば、各サンプルを高速液体クロマトグラフに供し、検量線と対比することなく(定量することなく)、ピーク面積同士を比較して、神経変性疾患の進行度合いを把握するようにしても良い。
すなわち、本明細書におけるホモシステイン酸含量とは、定量的な量をいうのは勿論のこと、比較対照サンプルに対して何倍などの比率についても含む概念である。
また、血液を用いて判定する方法においては、被験動物から採取した第1の血液中のホモシステイン酸含量を、前記第1の血液の採取以前に前記被験動物より採取した第2の血液中のホモシステイン酸含量と比較して、前記第1の血液中のホモシステイン酸含量が、前記第2の血液中のホモシステイン酸含量より大きくなったことにより、その増加量が大きいほど前記被験動物の神経変性疾患が進行しているものと判定する。
このことは、先に示した図2及び図3の結果に基づくものであり、血中にホモシステイン酸が多くなる程、脳細胞への障害が進み、神経変性疾患が進行することに由来している。
このように、血液を用いて神経変性疾患の進行度合いを判定することができれば、被験動物に対し、従来のバイオマーカーによる検査に比して非侵襲的に、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを評価・判定することが可能となる。
また、別の視点によれば、本願は、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するに際して、前記被験動物より採取した第1の血液中におけるホモシステイン酸の含量と前記第1の血液の採取以前に前記被験動物より採取した第2の血液中のホモシステイン酸含量とを比較して神経変性疾患の進行度合いを判定するための、少なくとも前記第1の血液中におけるホモシステイン酸の含量と、前記第2の血液中のホモシステイン酸含量との比が分かるデータを使用する発明を提供するものとも言える。
すなわち、上述のような血中のホモシステイン酸含量のデータを神経変性疾患の進行度合いを判定に利用することによっても、被験動物に対し、従来のバイオマーカーによる検査に比して非侵襲的に、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを評価・判定することが可能となるのである。
また、上述した血液中に含まれるホモシステイン酸含量と、尿中に含まれるホモシステイン酸含量との両者を加味して、神経変性疾患の診断、検査、発症可能性を検討するようにしても良い。
例えば、以下の工程(a)〜(d)を含む、被験動物の神経変性疾患の検査法とすることで、より正確な判定を行うことが可能となる。
(a)被験動物から尿及び血液を採取する工程;
(b)前記尿中及び血液中のホモシステイン酸を検出する工程;
(c)前記尿中のホモシステイン酸含量と、前記血液中のホモシステイン酸含量とを比較する工程;
(d)比較結果に基づき、神経変性疾患の発症可能性を判定する工程。
このように、本発明によれば、被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候を比較的正確且つ容易に神経変性疾患の進行度合いを検査できる。
換言すれば、本発明は、被験動物より採取した血中又は尿中に含まれるホモシステイン酸を、神経変性疾患のバイオマーカーとして使用することを提案するものであるとも言える。
すなわち、ホモシステイン酸からなる、神経変性疾患検出用バイオマーカーや、被験者より採取された尿中又は血液中のホモシステイン酸量を指標とした神経変性疾患の検査法も含む。
以下、本実施形態に係る神経変性疾患の検査方法や、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを前記被験動物より採取した尿を用いて判定するためのキット、被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するに際してのデータの使用について詳細に説明する。
〔1.抗ホモシステイン酸抗体の調製〕
まず、キットに使用する抗ホモシステイン酸抗体の調製を行った。
(抗原の調製)
抗体を作らせる動物に接種するための抗原を図4に示す方法により調製した。まず、L-ホモシステイン酸(L-Homocysteic acid) 0.27mmolに過剰量のグルタルアルデヒド(Glutaraldehyde)2.7mmolを反応させ、図4(a)に示すように、ホモシステイン酸のアミノ基をグルタルアルデヒドで修飾した(HCA-GA)。
次いで、得られたHCA-GAの過剰量をKLH(スカシ貝ヘモシアニン:keyhole limpet hemocyanin)上に複数存在するアミノ基と反応させて、図4(b)に示すように、中間体を合成した。
そして、この中間体を還元した後、ゲル濾過により低分子を除き、図4(c)に示すように、抗原としてのKLHとホモシステイン酸の複合体(HCA-G-KLH)を得た。
(抗体の調製)
つぎに、上記操作によって得られたHCA-G-KLHを抗原とし、ウサギを用いて免疫動物を作成し、2週間後に血液中にHCA-G-KLHに対する抗体を出現させた。
このウサギより得た血清を精製することにより、ウサギ由来の第1抗ホモシステイン酸抗体を得た。また、同様の操作を行って、第1抗ホモシステイン酸抗体と競合しない第2抗ホモシステイン酸抗体を得た。
〔2.キットの作成〕
次に、本実施形態に係る被験動物の神経変性疾患の進行度合いを前記被験動物より採取した尿や血液又は前記血液より得られる血漿を用いて判定するためのキットの作成を行った。本実施形態では、イムノクロマト法を採用したキットと、ELISA法を採用したキットの2種のキットの作成を行った。具体的には、それぞれ以下に示す通りである。
(イムノクロマト法を利用したキットの作成)
図5に示すようなストリップ状のイムノクロマトキットAの作成を行った。図5(a)は平面視におけるイムノクロマトキットAを示した説明図であり、図5(b)は側面視におけるイムノクロマトキットAを示した説明図である。なお、本実施形態に係るイムノクロマトキットAの構成は、従来より公知の一般的なイムノクロマトキットと略同様であるため、本発明に特徴的なホモシステイン酸抗体を用いている点以外については説明を省略する場合がある。
図5(a)及び図5(b)に示すように、イムノクロマトキットAは、尿や血液又は血漿を検体として受け、同検体を均一に分配するためのサンプルパッド10と、金コロイドにて標識した第1抗ホモシステイン酸抗体を含むコンジュゲートパッド11と、テストライン12a及びコントロールライン12bが表示されるメンブレン12と、検体の吸収材として機能する吸収パッド13とで構成した。
サンプルパッド10は、尿を接触させる尿接触手段や、血液又は血漿を接触させる接触手段として機能する部位である。このサンプルパッド10には、必要に応じてサンプル組成を変えるための試薬等を含浸させておいても良い。また、血液を接触させる接触手段として機能させる場合には、血球等をトラップさせるフィルターとしての役割を担うよう構成しても良い。
テストライン12aの位置には、メンブレン12上に第2ホモシステイン酸抗体が固定されており、尿や血液又は血漿の水分ともに展開される第1抗ホモシステイン酸抗体と結合したホモシステイン酸とサンドイッチ状に結合するよう構成した。
また、コントロールライン12bの位置には、メンブレン12上に抗ウサギ抗体が固定されており、テストラインにてトラップされなかった第1抗ホモシステイン酸抗体が結合するように構成した。
(ELISA法を利用したキットの作成)
ELISA法を利用したキットは、透明な底壁を有するELISA法用96ウェルのサンプルプレートと、第2抗ホモシステイン酸抗体を含有する第1抗体試薬と、第2抗ホモシステイン酸に結合可能な抗ウサギ抗体を含有する第2抗体試薬と、抗ウサギ抗体に結合した酵素により発色する発色物質を含有させた発色試薬とを備えている。
サンプルプレートの各ウェルの底壁内面には、第1抗ホモシステイン酸抗体が固定されており、ウェル内に収容した尿や血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸を捕捉可能に構成している。なお、各ウェルは、尿を接触させる尿接触手段や、血液又は血漿を接触させる接触手段として機能する部位である。
〔3.ヒトにおけるキットの機能試験〕
上述したイムノクロマトキットA及びELISA法を利用したキットについて、それぞれ尿、血液、血漿を接触手段に接触させて、ホモシステイン酸が検出可能か否かについて検討を行った。
サンプルは、健常者、軽度のアルツハイマー病と診断された神経変性疾患患者(以下、軽度患者という。)、中程度のアルツハイマー病と診断された神経変性疾患患者(以下、中程度患者という。)、重度のアルツハイマー病と診断された神経変性疾患患者(以下、重度患者という。)から得た尿、血液(全血)、血漿を用いた。なお、各患者の軽度、中程度、重度の度合いは、MMSEスコアによって分類されたものである。
まず、予め各サンプルに含まれるホモシステイン酸含量について、高速液体クロマトグラフィーにて定量を行った。
その結果、尿中のホモシステイン酸濃度は、健常者において最も高く、症状が重篤となるに従い減少していた。
また、血液(全血)、血漿中のホモシステイン酸濃度は、健常者において最も低く、症状が重篤となるに従って増加していた。
これらのことから、尿中に含まれるホモシステイン酸が少ない程、被験動物の神経変性疾患が進行していること、及び、血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸が多い程、被験動物の神経変性疾患が進行していることが示された。
次に、イムノクロマトキットAに各サンプルを供して試験を行った。その結果、前述の高速液体クロマトグラフィーでの定量結果と同様の変化がテストラインにおいて観察された。
次に、ELISA法を利用したキットに各サンプルを供して試験を行った。発色試薬の発色変化を吸光度計にて計測した結果、前述の高速液体クロマトグラフィーでの定量結果と同様の変化が観察された。
これらの結果から、本実施形態に係る被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した尿を用いて判定するためのキットは、尿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が少ない程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能であることが示された。
また、本実施形態に係る被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した血液を用いて判定するためのキットは、血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が多い程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能であることが示された。
〔4.ラットにおけるキットの機能試験〕
上述の〔3.ヒトにおけるキットの機能試験〕と同様にラットを用いて非ヒト動物における試験を行った。
サンプルは、健常ラット、軽度の神経変性疾患ラット(以下、軽度ラットという。)、中程度の神経変性疾患ラット(以下、中程度ラットという。)、重度神経変性疾患ラット(以下、重度ラットという。)から得た尿、血液(全血)、血漿を用いた。なお、各患者の軽度、中程度、重度の度合いは、水迷路実験による記憶障害判定によって分類されたものである。
その結果、ヒトにおける試験と同様の結果が得られた。これらの結果から、被験非ヒト動物の神経変性疾患の進行度合いを同被験非ヒト動物より採取した尿を用いて判定するにあたり、被験非ヒト動物の尿中におけるホモシステイン酸の含有量と、前記被験非ヒト動物の神経変性疾患罹患前における尿中のホモシステイン酸含有量とを比較して、前記被験非ヒト動物の尿中におけるホモシステイン酸の含有量が前記神経変性疾患罹患前における尿中のホモシステイン酸含有量より小さくなったことにより、その減少量が大きいほど前記被験非ヒト動物の神経変性疾患が進行しているものと判定可能であることが示された。
また、被験非ヒト動物の神経変性疾患の進行度合いを同被験非ヒト動物より採取した血液を用いて判定するにあたり、被験非ヒト動物の血中におけるホモシステイン酸の含有量と、前記被験非ヒト動物の神経変性疾患罹患前における血中のホモシステイン酸含有量とを比較して、前記被験非ヒト動物の血中におけるホモシステイン酸の含有量が前記神経変性疾患罹患前における血中のホモシステイン酸含有量より大きくなったことにより、その増加量が大きいほど前記被験非ヒト動物の神経変性疾患が進行しているものと判定可能であることが示された。
〔ヒト試験〕
次に、ヒトより採取した尿及び血液により行われた試験について説明する。試験プロトコルは、順天堂大学倫理委員会によって承認され、また、被験者からは書面による同意を得た。被験者の詳細を表1に示す。
これら被験者より尿及び血液の採取を行った。採取した尿サンプルは、防腐剤を添加することなく−20℃で冷凍保存した。
(尿中ホモシステイン酸含量の測定)
各尿サンプルは、まず比重の測定を行い、比重を1.020に調節した。その後、ECD検知器およびカラム(Shim-pack XR-ODS、島津製作所製)を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供することで、各サンプル尿中のホモシステイン酸含量の測定を行った。
なお、HPLCに供する各サンプルは、水で10倍希釈したものを使用した。また尿中のホモシステイン酸含量の測定は、ブラインド条件下で行った。図6はホモシステイン酸標品サンプルを測定したクロマトグラムであり、図7(a)は高濃度領域における検量線、図7(b)は低濃度領域における検量線である。また、図8に尿サンプルを測定した際の典型的なクロマトグラムを示す。
(血液中のホモシステイン酸含量の測定)
各血液サンプルもまた、前処理を行った上で、前述の尿サンプルと同様にHPLC法により、ホモシステイン酸含量の測定を行った。図9に血液サンプルを測定した際の典型的なクロマトグラムを示す。
(データの解析)
統計的有意性は、スチューデントのt検定によって評価した。また、Spearman analysisにて相関性の分析を行った。
(結果)
上記分析の結果、尿中のホモシステイン酸含量は、アルツハイマー病の患者のMMSEスコアーと関連することが確認された。すなわち、図10(a)及び図10(b)に示すように、MMSEスコアが低いほど、尿中におけるホモシステイン酸含量は減少する傾向が見られた。
一方、対照群(コントロール群)では、尿中のホモシステイン酸含量と、MMSEスコアとの関係においては、関連を見出すことができなかった。
特に、アルツハイマー病患者における尿中ホモシステイン酸含量とMMSEスコアとの相関性は、図11(a)及び図11(b)に示すように、男性よりも女性においてより強まる傾向が見られた。
また、前述の分析結果により、表2に示すように、試験群と対照群との間で尿中のホモシステイン酸含量について比較した場合、違いは統計的に有意(p<0.01)であるとの結果が得られた。
また、尿中のホモシステイン酸含量と、血液サンプル中のホモシステイン酸含量とについて検討したところ、図3に示したように尿中のホモシステイン酸含量と、血液中のホモシステイン酸含量との間に逆の相関関係が示された(r=-0.6、p=0.007、n=19)。
また、血液中のホモシステイン酸含量と、アルツハイマー病の患者のMMSEスコアーとの間には、図12に示すように逆の相関関係(r=-0.79、p=0.0000518、n=19)があることが示された。
上述してきたように、本発明に係る神経変性疾患の検査方法によれば、被験動物から採取した尿中及び/又は血液中のホモシステイン酸含量を調べることとしたため、ヒトを含む被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候を比較的正確且つ容易に確認することができる。
また、本発明に係る被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した尿を用いて判定するためのキットによれば、前記尿と接触させる尿接触手段と、前記尿接触手段に接触させた尿の中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、前記抗ホモシステイン酸抗体の前記尿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、前記尿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が少ない程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能としたため、ヒトを含む被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候を比較的正確且つ容易に確認することのできる神経変性疾患の進行度合いを判定するキットを提供することができる。
また、本発明に係る被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した血液を用いて判定するためのキットによれば、前記血液又は前記血液より得られる血漿を接触させる接触手段と、前記接触手段に接触させた血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、前記抗ホモシステイン酸抗体の前記血液又は血漿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、前記血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が多い程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能としたため、ヒトを含む被験動物に対して負担が少なく、神経変性疾患の兆候を比較的正確且つ容易に確認することのできる神経変性疾患の進行度合いを判定するキットを提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
本実施形態では、第1抗ホモシステイン酸抗体及び第2抗ホモシステイン酸抗体の調製を行う際にウサギを用いることとしたが、これに限定されるものではない。抗体の調製に一般的に使用される動物であれば、いずれであっても良い。
また、例えば乳牛を免疫動物として乳中に第1抗ホモシステイン酸抗体及び第2抗ホモシステイン酸抗体を出現させるようにすれば、これらの抗体を容易に大量調製することも可能である。なお、イムノクロマトキットAのコントロールラインに固定される抗体や、ELISA法を利用したキットにおける2次抗体は、ホモシステイン酸抗体と結合可能とすべく、免疫動物の種類に応じて変更するのは言うまでもない。
10 サンプルパッド
11 コンジュゲートパッド
12 メンブレン
12a テストライン
12b コントロールライン
13 吸収パッド
A イムノクロマトキット

Claims (8)

  1. 被験動物から採取した尿中及び/又は血液中のホモシステイン酸含量を調べることを特徴とする神経変性疾患の検査方法。
  2. 被験動物から採取した第1の尿中のホモシステイン酸含量を、前記第1の尿の採取以前に前記被験動物より採取した第2の尿中のホモシステイン酸含量と比較して、前記第1の尿中のホモシステイン酸含量が、前記第2の尿中のホモシステイン酸含量より小さくなったことにより、その減少量が大きいほど前記被験動物の神経変性疾患が進行しているものと判定することを特徴とする請求項1に記載の神経変性疾患の検査方法。
  3. 被験動物から採取した第1の血液中のホモシステイン酸含量を、前記第1の血液の採取以前に前記被験動物より採取した第2の血液中のホモシステイン酸含量と比較して、前記第1の血液中のホモシステイン酸含量が、前記第2の血液中のホモシステイン酸含量より大きくなったことにより、その増加量が大きいほど前記被験動物の神経変性疾患が進行しているものと判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の神経変性疾患の検査方法。
  4. 被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した尿を用いて判定するためのキットであって、
    前記尿と接触させる尿接触手段と、
    前記尿接触手段に接触させた尿の中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、
    前記抗ホモシステイン酸抗体の前記尿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、
    前記尿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が少ない程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能としたことを特徴とするキット。
  5. 被験動物の神経変性疾患の進行度合いを、前記被験動物より採取した血液を用いて判定するためのキットであって、
    前記血液又は前記血液より得られる血漿を接触させる接触手段と、
    前記接触手段に接触させた血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸を抗原とする抗ホモシステイン酸抗体と、
    前記抗ホモシステイン酸抗体の前記血液又は血漿中のホモシステイン酸への結合量に応じて変化する標識手段と、を備え、
    前記血液又は血漿中に含まれるホモシステイン酸に結合した前記抗ホモシステイン酸抗体が多い程、前記標識手段の変化によって前記被験動物の神経変性疾患が進行していることを表示可能としたことを特徴とするキット。
  6. 被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するに際して、前記被験動物より採取した第1の尿中におけるホモシステイン酸の含有量と前記第1の尿の採取以前に前記被験動物より採取した第2の尿中のホモシステイン酸含有量とを比較して前記被験動物に対して非侵襲的に神経変性疾患の進行度合いを判定するための、少なくとも前記第1の尿中におけるホモシステイン酸の含有量と、前記第2の尿中におけるホモシステイン酸の含有量との比が分かるデータの使用。
  7. 被験動物の神経変性疾患の進行度合いを判定するに際して、前記被験動物より採取した第1の血液中におけるホモシステイン酸の含量と前記第1の血液の採取以前に前記被験動物より採取した第2の血液中のホモシステイン酸含量とを比較して神経変性疾患の進行度合いを判定するための、少なくとも前記第1の血液中におけるホモシステイン酸の含量と、前記第2の血液中のホモシステイン酸含量との比が分かるデータの使用。
  8. 被験動物より採取した尿及び/又は血液に含まれるホモシステイン酸の、神経変性疾患に対するバイオマーカーとしての使用。
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