JP2013247890A - トロポニンtと結合するdna、これを用いた腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびにこれを用いた細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤 - Google Patents
トロポニンtと結合するdna、これを用いた腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびにこれを用いた細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 所定の塩基配列からなるDNA、所定の塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA、および所定の塩基配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または挿入された塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNAからなる群から選択されるDNA、前記DNAと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜構造体、ならびに前記DNAを有効成分とする、腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびに細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤を提供する。
【解決手段】 所定の塩基配列からなるDNA、所定の塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA、および所定の塩基配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または挿入された塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNAからなる群から選択される。
【選択図】 図10
【解決手段】 所定の塩基配列からなるDNA、所定の塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA、および所定の塩基配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または挿入された塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNAからなる群から選択される。
【選択図】 図10
Description
本発明は、トロポニンTと結合するDNA、これを用いた腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびにこれを用いた細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤に関する。
特定の分子と特異的に結合する核酸やペプチドは、アプタマーとも呼ばれ、結合相手に対する特異性が高く、試験管内で化学的に短時間での合成が可能であることから、医療分野や生物工学的分野において利用価値が高い。特に、特定の分子と特異的に結合するDNAについては、免疫原性もほとんどないことから、抗体に代わる特異的結合分子として利用が期待されている。これまでに、特定の分子と結合するDNAとしては、例えば、免疫グロブリンGに結合するDNA(特許文献1)、8−ヒドロキシデオキシグアノシンに結合するDNA(特許文献2)、キチンに結合するDNA(特許文献3)、ビスフェノールAに結合するDNA(特許文献4)、ベロ毒素I型に結合するDNA(特許文献5)などが開示されている。
一方、腫瘍組織における血管新生阻害療法は、悪性腫瘍に対する有力な治療方法として期待されている。これは、Folkmanらによって1971年に提唱された治療法であり、腫瘍組織における血管新生を阻害して腫瘍実質細胞への血流を遮断することにより、腫瘍実質細胞への栄養分や酸素の供給を途絶えさせて、その増殖を防ぐ他、死滅させるという戦略に基づくものである。腫瘍組織における血管新生抑制剤として、これまでに、大麦玄麦エチルアルコール抽出画分または大麦玄麦アルカリ抽出画分(特許文献6)や、子のう菌類であるネオサルトルヤ属微生物の培養物から得られる新規化合物(特許文献7)などが開示されている。
また、一般に、薬剤などの目的物質が細胞内で効果を奏する性質のものである場合は、当該目的物質を標的細胞へ到達させるだけでは効果が得られず、細胞内へ取り込ませる特別の仕掛けが必要となる場合がある。そこで、細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤が研究開発されており、これまでに、例えば、脂質膜構造体に結合して脂質膜構造体の腫瘍細胞への取り込みを促進するトランスフェリン(特許文献8)や核酸やタンパク質と融合して用いうる細胞内へ内在化されるペプチド(特許文献9)などが開示されている。
しかしながら、特許文献1〜5に記載されたDNAは、いずれもトロポニンTと結合するDNAではない。また、特許文献6および7に記載された腫瘍組織における血管新生抑制剤もまた、いずれも、トロポニンTと結合するDNAを利用するものではない。さらに、特許文献8および9に記載された細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤もまた、いずれも、トロポニンTと結合するDNAを利用するものではない。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、配列番号5の塩基配列からなるDNA、配列番号5の塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA、および配列番号5の塩基配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または挿入された塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNAからなる群から選択されるDNA、これらのDNAと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜構造体、ならびに配列番号5の塩基配列または配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列を有するDNAを有効成分とする、腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびに細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、初代腫瘍血管内皮細胞を用いたcell based selex法により選定した配列番号5の塩基配列からなるDNAが、トロポニンTと結合すること、細胞表面のトロポニンTと結合して細胞内に取り込まれること、腫瘍組織における血管新生や脈管形成を抑制すること、および細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ脂質膜構造体が取り込まれることを促進することを見出し、下記の各発明を完成した。
(1)下記の(a)、(b)および(c)からなる群から選択されるDNA;(a)配列番号5の塩基配列からなるDNA、(b)配列番号5の塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA、(c)配列番号5の塩基配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または挿入された塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA。
(2)細胞表面のトロポニンTと結合して細胞内に取り込まれる、(1)に記載のDNA。
(3)腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成を抑制する、(1)または(2)に記載のDNA。
(4)(1)から(3)のいずれかに記載のDNAと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜構造体。
(5)配列番号5の塩基配列または配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列を有するDNAを有効成分とする、腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤。
(6)配列番号5の塩基配列または配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列を有するDNAを有効成分とする、細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤。
(7)目的物質が脂質膜構造体である、(6)に記載の剤。
本発明に係るDNAはトロポニンTと結合することができ、トロポニンTは後述する実施例で示すように腫瘍マーカーであることから、本発明に係るDNAによれば、腫瘍の診断や治療をすることができる他、腫瘍の診断法や治療法の研究開発に用いることができる試薬を提供することができる。また、トロポニンTは心筋障害の発生や進行に伴い血中濃度が上昇する心筋障害マーカーでもあることから、本発明に係るDNAによれば、心筋障害の診断をすることができる。また、本発明に係るDNAと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜構造体によれば、当該脂質膜構造体に結合された物質や内包された物質を、細胞内へ効率的に送達することができる。また、本発明に係るDNAおよび本発明に係る腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤によれば、上述した血管新生阻害療法を行うことができ、腫瘍の治療や進行を抑制することができる。また、本発明に係るDNAおよび本発明に係る細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤によれば、細胞表面にトロポニンTを有する細胞の内部へ、目的物質を選択的かつ効率的に送達することができる。
さらに、本発明に係るDNAによれば、生体に存在するトロポニンTや生体から分離採取したトロポニンTと有効に結合するDNAを得ることができる。何故なら、本発明に係るDNAが、タンパク質の構造変化や発現構成の変化の虞が大きい単離タンパク質や系代培養細胞を用いて選定されたものではなく、そのような虞が比較的小さい初代腫瘍血管内皮細胞を用いて選定されたものだからである。なお、後述する実施例で示すように、本発明に係るDNAは初代腫瘍血管内皮細胞に対して特異的に結合することが確認されている。
以下、本発明に係るDNA、腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびに細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤について詳細に説明する。
本発明に係るDNAは、
(a)配列番号5の塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号5の塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA、
(c)配列番号5の塩基配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または挿入された塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA、
以上(a)、(b)および(c)からなる群から選択される。
(a)配列番号5の塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号5の塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA、
(c)配列番号5の塩基配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または挿入された塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA、
以上(a)、(b)および(c)からなる群から選択される。
本発明に係る「DNA」すなわちデオキシリボ核酸は、1本鎖でもよく相補的結合した2本鎖でもよい。また、その構造としては、環状構造や直鎖状、相補的二本鎖構造の他、これらが入り混じった構造などを挙げることができる。
(b)および(c)のDNAは、トロポニンTと結合する限り、それぞれ、配列番号5の塩基配列および配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列以外の塩基配列を有していてもよい。すなわち、(b)においては配列番号5の塩基配列に、(c)においては配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列に、それぞれ、1個もしくは複数個のヌクレオチドが付加されていてもよい。これらの場合の付加されるヌクレオチドの個数は、トロポニンTと結合する限り特に限定されないが、例えば35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の任意の個数を挙げることができる。
(c)のDNAにおいて、「1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、または挿入された塩基配列」というときの、欠失、置換、または挿入されるヌクレオチドの個数もまた、トロポニンTと結合する限り、特に限定されないが、例えば30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の任意の個数を挙げることができる。
本発明において、DNAがトロポニンTと結合するか否かは、定法に従い確認することができ、例えば、ゲルシフトアッセイにより簡便に確認することができる。ゲルシフトアッセイでは、蛍光標識したDNAをトロポニンTと混合してインキュベートすることにより反応させた後、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、蛍光を検出することでDNAの泳動速度を検出する。トロポニンTと反応させない場合と比較して、トロポニンTと反応させた場合にDNAの泳動速度が遅くなれば、そのDNAはトロポニンTと結合すると判断することができる。
ここで、トロポニンTは、心筋や骨格筋においてカルシウム濃度を調整するタンパク質として知られるトロポニンのサブユニットの一つである。本発明において、トロポニンTは、トロポニンの他のサブユニットであるトロポニンIやトロポニンCと複合体を形成しているものでもよく、トロポニンTのみからなる単量体や二量体、三量体などでもよい。また、トロポニンTの由来する生物種はどのような生物種でもよく、具体的には、例えば、ヒト、ヒトを除く霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、鳥類などを挙げることができるが、これらのうちのいずれでもよい。また、トロポニンTの由来する組織や器官としては、例えば、心筋、骨格筋、腫瘍組織などを挙げることができるが、これらのうちのいずれでもよい。また、トロポニンTは、生体あるいは細胞から単離・精製したものでもよく、生体内や細胞内、細胞表面上などに存在するものでもよい。
本発明に係るDNAは、(a)、(b)および(c)からなる群から選択される限り、特に限定されないが、好ましくは、細胞表面のトロポニンTと結合して細胞内に取り込まれるDNAである。ここで、本発明における「細胞表面のトロポニンT」とは、細胞表面に存在するトロポニンTを意味する。トロポニンTが細胞表面に存在する態様としては、例えば、細胞膜に埋め込まれた態様や、膜タンパク質や膜の構成脂質の細胞外側に結合した態様、細胞膜上の糖鎖に結合した態様などを挙げることができるが、これらのうちのいずれでもよく、これらのような態様でなくてもよい。また、本発明に係るDNAが細胞内に取り込まれる態様としては、例えば、ファゴサイトーシスやピノサイトーシス、マクロピノサイトーシスなどのエンドサイトーシスにより取り込まれる態様、チャネルタンパク質から取り込まれる態様などを挙げることができるが、これらのうちのいずれでもよく、これらのような態様でなくてもよい。
本発明において、DNAが細胞表面のトロポニンTと結合して細胞内に取り込まれるか否かは、定法に従って確認することができ、そのような方法としては、例えば、細胞と反応させたDNAの位置を蛍光観察する方法を挙げることができる。この方法では、まず、細胞表面にトロポニンTを有する細胞と蛍光標識したDNAとを混合して一定時間インキュベートする。次に、細胞核やリソソームなどの細胞小器官を蛍光染色する。その後、DNAおよび細胞小器官を蛍光観察し、それらの位置関係からDNAが細胞内に存在するのか細胞外に存在するのかを確認する。当該DNAが細胞内に存在すれば、細胞表面のトロポニンTと結合して細胞内に取り込まれたと判断することができる。
なお、本発明における「細胞表面にトロポニンTを有する細胞」として、具体的には、例えば、腫瘍血管内皮細胞を挙げることができる。ここで、本発明において、その表面にトロポニンTを有する細胞か否かは定法に従い確認することができ、そのような方法としては、例えば、蛍光標識したトロポニンT抗体を反応させた細胞をフローサイトメトリーに供して蛍光強度を測定する方法を挙げることができる。測定した蛍光強度がトロポニンT抗体を反応させない場合の蛍光強度と比較して大きい場合は、その細胞は表面にトロポニンTを有すると判断することができる。これらの方法により、任意の細胞から本発明に係る「細胞表面にトロポニンTを有する細胞」を得ることができる。
また、本発明に係るDNAは、(a)、(b)および(c)からなる群から選択される限り、特に限定されないが、好ましくは腫瘍組織における血管新生や脈管形成を抑制するDNAである。ここで、本発明における「腫瘍組織」は良性および悪性のいずれでもよく、腫瘍(癌)の種類も問わない。腫瘍(癌)の種類としては、例えば、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、頭頸部癌、胃癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、良性前立腺肥大症、直腸癌、腎臓癌、精巣癌、子宮癌、甲状腺癌、喉頭癌などを挙げることができる。
血管新生とは、元々存在する血管から新しい血管が生じることをいい、脈管形成とは、管構造を未だ形成していない中胚葉性の細胞が血管構造を形成することをいう。腫瘍組織では腫瘍実質細胞の増殖など、腫瘍の進行に伴って血管新生が起こることが知られている。本発明において、DNAが腫瘍組織において血管形成や脈管形成を抑制するか否かは、定法に従って確認することができる。そのような方法としては、例えば、腫瘍組織から単離した腫瘍血管内皮細胞にDNAを投与して一定時間培養し、細胞によって形成された管構造の様子を観察あるいは管構造の長さを測定する方法を挙げることができる。その結果、DNAを投与せずに培養した場合と比較して、管構造が形成された領域が小さい場合や管構造の長さが短い場合は、投与されたDNAが血管形成や脈管形成を抑制すると判断することができる。
本発明に係るDNAは、当業者によって適宜選択可能な方法を用いて合成することができる。そのような方法としては、例えば、DNA合成装置を用いて固相合成法などにより化学合成する方法の他、配列番号5の塩基配列、または配列番号5において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または挿入された塩基配列を鋳型とし、DNAポリメラーゼを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により合成する方法、プラスミドベクターやウイルスベクターなどのベクターに配列番号5の塩基配列、または配列番号5において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または挿入された塩基配列を挿入して組み換えベクターを作製し、作製した組み換えベクターを適切な宿主細胞に導入して得られる形質転換体を培養して増殖させ、増殖させた形質転換体から採取する方法などを挙げることができる。なお、いずれの合成法においても、当業者により広く知られている一般的な方法の他、あらゆる方法を利用することができる。
本発明に係るDNAは、本発明の特徴を損なわない範囲において、適宜、必要に応じて、保護基や官能基、標識物質などで修飾をすることができ、そのように修飾されたDNAも本願発明に包含される。本発明に係るDNAの修飾に用いることができる物質としては、例えば、アシル基やジメトキシトリチル基、チオール基、2’−フッ化ピリミジン、ポリエチレングリコール(PEG)鎖、テネイシン、32Pや3H、14C、13C、15Nなどの放射性同位体(RI)、FITCやジゴキシゲニン(DIG)、ビオチンなどの標識物質を挙げることができる。また、DNAを構成するヌクレオチドにおけるリン酸基の酸素原子が硫黄原子で置換(ホスホロチオエート化)されていてもよい。
また、本発明に係るDNAは、本発明の特徴を損なわない範囲において、種々の物質と混合あるいは結合などして、複合体として用いることができる。本発明に係るDNAと複合体を形成しうる物質として、具体的には、例えば、各種薬剤、核酸、ペプチド、酵素や抗体などのタンパク質、単糖や多糖といった生理活性物質や標識物質、リポソームやミセルなどの脂質膜構造体を挙げることができる。
次に、本発明は、本発明に係るDNAと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜構造体を提供する。本発明に係る脂質膜構造体の好ましい形態としては、脂質二重層からなる脂質膜を有する閉鎖小胞を挙げることができ、そのような脂質膜構造体としては、例えば、リポソームを挙げることができる。
本発明に係る「DNAと結合した脂質」は、DNAと脂質とが直接結合したものでもよく、マレイミド基やメトキシ基、チオール基などの官能基や保護基、ポリエチレングリコール(PEG)などの何らかのスペーサーを介してDNAと脂質とが結合したものでもよい。
本発明に係る脂質膜構造体は、単純水和法、超音波処理法、エタノール注入法、エーテル注入法、逆相蒸発法、界面活性剤法、凍結・融解法などの公知の方法を用いて製造することができる。なお、本発明に係る脂質膜構造体の製造に際し、本発明に係るDNAは、脂質膜構造体を調製した後に、当該脂質膜構造体の構成脂質である脂質に結合させてもよく、あらかじめ本発明に係るDNAと結合した脂質を調製して、当該脂質を用いて脂質膜構造体を製造してもよい。
本発明に係る脂質膜構造体は、正帯電性、非帯電性、両(正負)帯電性および負帯電性のいずれでもよい。また、本発明に係る脂質膜構造体が有する脂質膜の枚数は1枚であってもよく、2以上の複数枚であってもよい。本発明に係る脂質膜構造体を構成する脂質は、正帯電性脂質、両(正負)帯電性脂質や非帯電性脂質を含む中性脂質、負帯電性脂質のいずれでもよく、脂質の種類としては、例えば、リン脂質、糖脂質、ステロール、長鎖脂肪族アルコールあるいはグリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリンなど)、ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロールなど)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルグリセロフォスフォエタノールアミン(DOPE)など)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸(PA)、カルジオリピン、またはこれらの水素添加物、卵黄、大豆その他の動植物に由来する天然脂質(例えば、卵黄レシチン、大豆レシチンなど)などを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
糖脂質としては、スフィンゴミエリン、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリドなどのグリセロ糖脂質、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシドなどのスフィンゴ糖脂質などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
ステロールとしては、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロールなどの動物由来のステロール、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロールなどの植物由来のステロール(フィトステロール)、チモステロール、エルゴステロールなどの微生物由来のステロールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、これらのステロールは、一般には脂質二重層を物理的または化学的に安定させるために、あるいは膜の流動性を調節するために用いることができる。
長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールとしては、炭素数10〜20の脂肪酸またはそのアルコールを使用することができる。そのような長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールとしては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、アラキジン酸、マルガリン酸、ツベルクロステアリン酸などの飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、アラキドン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エレオステアリン酸などの不飽和脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、リノリルアルコールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
正帯電性脂質としては、上述した脂質の他、例えば、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(dioctadecyldimethylammonium chloride、DODAC)、N−(2,3−オレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム(N−(2,3−dioleyloxy)propyl−N,N,N−trimethylammonium、DOTMA)、ジドデシルアンモニウムブロミド(didodecylammonium bromide、DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2−dioleoyloxy−3−trimethylammonio propane、DOTAP)、3β−N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモールコレステロール(3β−N−(N’,N’,−dimethyl−aminoethane)−carbamol cholesterol、DC−Chol)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(1,2−dimyristoyloxypropyl−3−dimethylhydroxyethyl ammonium、DMRIE)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート(2,3−dioleyloxy−N−[2(sperminecarboxamido)ethyl]−N,N−dimethyl−1−propanaminum trifluoroacetate、DOSPA)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
また、両(正負)帯電性脂質や非帯電性脂質を含む中性脂質としては、上述した脂質の他、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミドなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、負帯電性脂質としては、上述した脂質の他、例えば、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン(N−スクシニルPE)、ホスファチジルエチレングリコール、コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
本発明に係る脂質膜構造体の脂質膜には、上述した脂質の他に、トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの正荷電を付与する荷電物質、ジセチルホスフェートなどの負電荷を付与する荷電物質、膜表在性タンパク質、膜内在性タンパク質などの膜タンパク質、抗体、脂質膜構造体に細胞透過能や核移行能を付与するペプチドなどの機能性ペプチド、標的化リガンドその他のドラッグデリバリー用機能性素子を結合または含有させることができ、その結合量や含有量は適宜調節することができる。
本発明に係る脂質膜構造体は、生理食塩水、リン酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液などの適当な水性溶媒に分散させて使用することができる。分散液には、糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、抗酸化剤、pH調節剤、水和促進剤などの添加剤を適宜添加してもよい。また、本発明に係る脂質膜構造体は、前記の分散液を乾燥させた状態で保存することができる。
なお、本発明において、「結合」は、「付着」、「接着」、「合体」、「接続」、「連結」、「接合」、「密着」、「相互作用」「接触」と交換可能に用いられる場合がある。また、本発明における結合様式としては、例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合や機械的結合、ハロゲン結合などの非共有結合、ジスルフィド結合、ペプチド結合、ホスホジエステル結合、グリコシド結合、疎水結合、スタッキング結合などを挙げることができるが、これらのうちのいずれであってもよい。
次に、本発明は、腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤を提供する。本発明に係る腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤は、
(d)配列番号5の塩基配列を有するDNA、
(e)配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列を有するDNA、
以上(d)または(e)を有効成分とする。なお、腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤において、上述した本発明に係るDNAまたはDNAと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜構造体の構成と同等または相当する構成については再度の説明を省略する。
(d)配列番号5の塩基配列を有するDNA、
(e)配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列を有するDNA、
以上(d)または(e)を有効成分とする。なお、腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤において、上述した本発明に係るDNAまたはDNAと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜構造体の構成と同等または相当する構成については再度の説明を省略する。
(d)および(e)のDNAは、腫瘍組織における血管新生や脈管形成を抑制する限り、それぞれ、配列番号5の塩基配列および配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列以外の塩基配列を有していてもよい。すなわち、(d)においては配列番号5の塩基配列に、(e)においては配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列に、それぞれ、1個もしくは複数個のヌクレオチドが付加されていてもよい。この場合の付加されるヌクレオチドの個数は、腫瘍組織における血管新生や脈管形成を抑制する限り特に限定されないが、例えば35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の任意の個数を挙げることができる。
(e)のDNAにおいて、「1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、または挿入された塩基配列」というときの、欠失、置換、または挿入されるヌクレオチドの個数もまた、腫瘍組織における血管新生や脈管形成を抑制する限り、特に限定されないが、例えば30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の任意の個数を挙げることができる。
最後に、本発明は、細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤を提供する。本発明に係る細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤は、
(f)配列番号5の塩基配列を有するDNA、
(g)配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列を有するDNA、
以上(f)または(g)を有効成分とする。なお、細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤において、上述した本発明に係るDNA、DNAと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜構造体、または腫瘍組織における血管新生および/もしくは脈管形成抑制剤と同等または相当する構成については再度の説明を省略する。
(f)配列番号5の塩基配列を有するDNA、
(g)配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列を有するDNA、
以上(f)または(g)を有効成分とする。なお、細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤において、上述した本発明に係るDNA、DNAと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜構造体、または腫瘍組織における血管新生および/もしくは脈管形成抑制剤と同等または相当する構成については再度の説明を省略する。
(f)および(g)のDNAは、細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する限り、それぞれ、配列番号5の塩基配列および配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列以外の塩基配列を有していてもよい。すなわち、(f)においては配列番号5の塩基配列に、(g)においては配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列に、それぞれ、1個もしくは複数個のヌクレオチドが付加されていてもよい。この場合の付加されるヌクレオチドの個数は、細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する限り特に限定されないが、例えば35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の任意の個数を挙げることができる。
(e)のDNAにおいて、「1または数個のヌクレオチドが欠失、置換、または挿入された塩基配列」というときの、欠失、置換、または挿入されるヌクレオチドの個数もまた、細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する限り、特に限定されないが、例えば30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個の任意の個数を挙げることができる。
本発明における「目的物質」は、本発明の特徴を損なわない範囲においていかなる物質でもよく、例えば、各種薬剤、核酸、ペプチド、タンパク質、糖またはこれらの複合体などの種々の生理活性物質や標識物質、リポソームやミセルなどの脂質膜構造体を挙げることができ、診断、治療などの目的に応じて適宜選択することができる。このうち、目的物質が脂質膜構造体である場合は、当該脂質膜構造体に各種薬剤や核酸、ペプチド、酵素や抗体などのタンパク質、糖またはこれらの複合体などの種々の生理活性物質を内包あるいは結合させて目的物質とすることができる。
本発明において、目的物質が細胞内へ取り込まれる態様は、上述の本発明に係るDNAが細胞内に取り込まれる態様と同様のものを挙げることができる。また、目的物質が細胞内へ取り込まれるか否かの確認は、上述の本発明に係るDNAが細胞内に取り込まれるか否かを確認する方法と同様の方法により行うことができる。
本発明に係る腫瘍組織における血管新生および/もしくは脈管形成抑制剤ならびに細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤の製剤化には、当業者に公知の方法を用いることができる。投与形態もまた、当業者によって適宜選択することができる投与形態でよく、そのような投与形態としては、例えば、経口投与製剤として調製する場合の、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、コーティング剤、液剤、懸濁剤などの形態を挙げることができ、非経口投与製剤にする場合の、吸入剤、注射剤、点滴剤、座薬、塗布剤、噴霧剤、貼付剤などの形態を挙げることができる。また、その投与量は、医薬組成物の製剤形態、投与方法、使用目的およびこれに適用される投与対象の年齢、体重、症状によって適宜設定することができる。
以下、本発明に係るDNA、腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびに細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
<試薬・細胞の調製>
(1)セレクションバッファーの調製
終濃度で50mMのTris−HCl(pH7.5)、5mmol/LのKCl、100mmol/LのNaCl、1mmol/LのMgCl2、250mmol/Lのsucrose、0.1%(w/v)のsodium azid、2μmol/Lのウシ血清アルブミン(BSA)、および2μmol/Lの酵母由来tRNAを含む水溶液を調製し、濾過滅菌して、これをセレクションバッファーとした。
(1)セレクションバッファーの調製
終濃度で50mMのTris−HCl(pH7.5)、5mmol/LのKCl、100mmol/LのNaCl、1mmol/LのMgCl2、250mmol/Lのsucrose、0.1%(w/v)のsodium azid、2μmol/Lのウシ血清アルブミン(BSA)、および2μmol/Lの酵母由来tRNAを含む水溶液を調製し、濾過滅菌して、これをセレクションバッファーとした。
(2)細胞の調製
既報(Akino T.ら、Am.J.pathol.、第175巻、第2657−2667頁、2009年;Hida K.ら、Cancer Sci.、第99巻、第459−466頁、2008年)に従い、マウスの真皮からマウス正常血管内皮細胞(mEC)およびマウス腫瘍血管内皮細胞(mTEC)を、ヒト腎臓癌組織からヒト腫瘍血管内皮細胞(hTEC)をそれぞれ単離した。このようにして得られたmEC、mTECおよびhTECは初代培養細胞である。また、ヒト腎細胞癌培養細胞(OSRC−II;独立行政法人理化学研究所)、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC;Lonza社)および本願発明者がMD Anderson Cancer Center,Houston,TX,USAのIsaiah J.Fridler氏より供与されたメラノーマ(RFP−SM)を用意した。
既報(Akino T.ら、Am.J.pathol.、第175巻、第2657−2667頁、2009年;Hida K.ら、Cancer Sci.、第99巻、第459−466頁、2008年)に従い、マウスの真皮からマウス正常血管内皮細胞(mEC)およびマウス腫瘍血管内皮細胞(mTEC)を、ヒト腎臓癌組織からヒト腫瘍血管内皮細胞(hTEC)をそれぞれ単離した。このようにして得られたmEC、mTECおよびhTECは初代培養細胞である。また、ヒト腎細胞癌培養細胞(OSRC−II;独立行政法人理化学研究所)、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC;Lonza社)および本願発明者がMD Anderson Cancer Center,Houston,TX,USAのIsaiah J.Fridler氏より供与されたメラノーマ(RFP−SM)を用意した。
細胞は、フローサイトメトリーに供する場合は、10cmのRep Cell dish(CellSeed社)に、それ以外の場合は通常のdishに、それぞれ5×105個の濃度で播種した後、1×106個になるまで培養した。培養条件は37℃、5%CO2、湿度95%とした。培地は、初代mEC、初代mTECおよび初代hTECに対しては5%(v/v)となるよう仔ウシ血清(FBS)および成長因子を添加した血管内皮細胞用増殖培地(EGM−2MV培地)を、OSRC−IIに対しては10%(v/v)となるようFBSを添加したRPMI−1640培地を、HUVECに対しては2%(v/v)となるようFBSを添加したEBM−2培地を、RFP−SMに対してはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM培地)を、それぞれ用いた。細胞を使用する際は、Rep Cell dishには4℃に冷却した培地を加えることにより、通常のdishには0.1%(w/v)となるようトリプシンを添加することにより、dishから細胞を剥がした。次に、1000×g、4℃の条件下で5分間遠心分離を行って上清を除去した後、セレクションバッファーで3回洗浄した。続いて、40μmの孔径を有するセルストレーナー(BD−Falcon社;以下「40μmストレーナー」という。)に通した後に、使用した。
<実施例1>DNAの選定
(1)0サイクルDNAライブラリーの調製
DNA固相合成機ABI394(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、ホスホロアミダイト法に基づく化学合成によりDNAを調製し、0サイクルDNAライブラリーとした。0サイクルDNAライブラリーに含まれるDNAの塩基配列は、5’側および3’側にそれぞれ21merのPCR用配列を持ち、その間にアデノシン(A)、グアノシン(G)、シトシン(C)およびチミジン(T)の群から任意に選択されてなる40merのランダム配列(N40)を持つ計82merとした。すなわち、その塩基配列は5’−CGTAGAATTCATGAGGACGTT−NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN−AGCTAAGCTTACCAGTGCGAT−3’(配列番号1;NはA、G、CおよびTから選択されるいずれかの塩基である)で表される。
(1)0サイクルDNAライブラリーの調製
DNA固相合成機ABI394(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、ホスホロアミダイト法に基づく化学合成によりDNAを調製し、0サイクルDNAライブラリーとした。0サイクルDNAライブラリーに含まれるDNAの塩基配列は、5’側および3’側にそれぞれ21merのPCR用配列を持ち、その間にアデノシン(A)、グアノシン(G)、シトシン(C)およびチミジン(T)の群から任意に選択されてなる40merのランダム配列(N40)を持つ計82merとした。すなわち、その塩基配列は5’−CGTAGAATTCATGAGGACGTT−NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN−AGCTAAGCTTACCAGTGCGAT−3’(配列番号1;NはA、G、CおよびTから選択されるいずれかの塩基である)で表される。
具体的には、チミジン3’−水酸基を担持したControlled pore glassを固相担体とし、塩基部をアシル基で、5’−水酸基をジメトキシトリチル基でそれぞれ保護したA、G、CおよびTの各ホスホロアミダイトを、促進剤ベンズイミダゾリウムトリフレートの存在下で反応させて鎖長を伸張した。N40の合成は、A、G、CおよびTの各ホスホロアミダイトを1:1:1:1の割合で混合した溶液を導入して行った。続いて、50℃で16時間アンモニア処理を行って塩基部を脱保護した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行って精製した。HPLCは、装置としてElite LaChrom L−2000 series(日立社)を、カラムとしてZorbax Eclipse plus C18、4.6×250mm(agilent社)を、展開溶媒A液として100mmol/L酢酸トリエチルアンモニウムを、展開溶媒B液としてメタノールを、検出器として紫外検出器を、それぞれ用いて、カラム温度は65℃とし、紫外線の波長は254nmとして、定法に従い行った。その後、80%(v/v)酢酸を用いてジメトキシトリチル基の脱保護を行い、再度、同条件でHPLCを行って精製した。その結果を図1に示す。図1に示すように、保持時間6分27秒において、目的とする82merのDNAに相当する最大ピークが確認されたため、これを分取して、0サイクルDNAライブラリーとした。この結果から、cell based selex法に用いるのに十分な高純度のDNAライブラリーが得られたことが確認された。
(2)cell based selex法
[2−1]1サイクルの選定
本実施例1(1)の0サイクルDNAライブラリー200pmolをセレクションバッファー500μLに加えて80℃で10分間加熱した後、放冷することにより二次構造を形成させた。続いて、2nmolの酵母由来tRNAおよび1000pmolのBSAを加えて、結合用DNA溶液を調製した。1×106個のmTECに結合用DNA溶液を添加し、5分間隔で天地転倒しながら4℃で45分間インキュベートすることにより、DNAとmTECとの結合反応を行った。結合反応後、4℃、200×gの条件下で5分間遠心分離を行い、上清を除去して細胞を回収した。回収した細胞をセレクションバッファーに懸濁し、80℃に加熱することにより細胞に結合したDNAを変成させた。4℃、200×gの条件下で5分間遠心分離を行ってDNAを含む上清を回収した。回収した上清を3回のフェノール/クロロホルム抽出に供して水層を回収した。水層をクロロフルムで3回洗浄した後、50μLの3mol/L酢酸ナトリウム、5μLの1mg/mLグリコーゲンおよび1200μLのエタノールを加えて、−20℃で一晩静置することによりDNAを沈殿させた。その後、15000×g、4℃の条件下で60分間遠心分離を行って上清を除去し、DNAペレットを回収した。得られたDNAペレットに70%(v/v)エタノールを加え、15000×g、4℃の条件下で30分間遠心分離を行って 上清を除去することにより洗浄した。
[2−1]1サイクルの選定
本実施例1(1)の0サイクルDNAライブラリー200pmolをセレクションバッファー500μLに加えて80℃で10分間加熱した後、放冷することにより二次構造を形成させた。続いて、2nmolの酵母由来tRNAおよび1000pmolのBSAを加えて、結合用DNA溶液を調製した。1×106個のmTECに結合用DNA溶液を添加し、5分間隔で天地転倒しながら4℃で45分間インキュベートすることにより、DNAとmTECとの結合反応を行った。結合反応後、4℃、200×gの条件下で5分間遠心分離を行い、上清を除去して細胞を回収した。回収した細胞をセレクションバッファーに懸濁し、80℃に加熱することにより細胞に結合したDNAを変成させた。4℃、200×gの条件下で5分間遠心分離を行ってDNAを含む上清を回収した。回収した上清を3回のフェノール/クロロホルム抽出に供して水層を回収した。水層をクロロフルムで3回洗浄した後、50μLの3mol/L酢酸ナトリウム、5μLの1mg/mLグリコーゲンおよび1200μLのエタノールを加えて、−20℃で一晩静置することによりDNAを沈殿させた。その後、15000×g、4℃の条件下で60分間遠心分離を行って上清を除去し、DNAペレットを回収した。得られたDNAペレットに70%(v/v)エタノールを加え、15000×g、4℃の条件下で30分間遠心分離を行って 上清を除去することにより洗浄した。
得られたDNAを10μLのTCEP水に溶解し、これを鋳型として、下記条件により一段階目のPCRを行うことによりDNAを増幅し、増幅DNAを得た。続いて、増幅DNAを3.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後のゲルをエチジウムブロミドにより染色し、Dolphine view2 トランスイルミネーター(倉敷紡績社)により検出した。その結果を図2に示す。図2に示すように、サイクル数12回において、目的とする82merのDNAに相当するバンドのみが確認されたため、これを切り出した。切り出したゲルについて、SpectraPor Dialysis menbrane MWCO 2000(SpectrumLab社)を用いて、50Vで、30分間電気溶出することにより、DNAを溶出した。続いて、定法に従いフェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出およびエタノール沈殿に供し、これを精製増幅DNAとした。
一段階目のPCRの条件
DNAポリメラーゼ;Taq DNA polymerase(キアゲン社)
フォワードプライマー;5’末端にFITCが結合した次の配列からなるプライマー 5’−CGTAGAATTCATGAGGACGTT−3’(配列番号2)
リバースプライマー:5’末端にFITCが結合した次の配列からなるプライマー 5’−AGCTAAGCTTACCAGTGCGAT−3’(配列番号3)
反応液の組成;鋳型DNA1nmol/L、プライマー各1μmol/L、dNTPs200μmol/L、DNAポリメラーゼ5U
反応条件;95℃で5分間の後、94℃で30秒、50℃で30秒および72℃で1分の反応を1サイクルとして、10、12、15、20、25または30サイクル行い、最後に72℃で4分間インキュベートすることにより、増幅DNAを得た。
DNAポリメラーゼ;Taq DNA polymerase(キアゲン社)
フォワードプライマー;5’末端にFITCが結合した次の配列からなるプライマー 5’−CGTAGAATTCATGAGGACGTT−3’(配列番号2)
リバースプライマー:5’末端にFITCが結合した次の配列からなるプライマー 5’−AGCTAAGCTTACCAGTGCGAT−3’(配列番号3)
反応液の組成;鋳型DNA1nmol/L、プライマー各1μmol/L、dNTPs200μmol/L、DNAポリメラーゼ5U
反応条件;95℃で5分間の後、94℃で30秒、50℃で30秒および72℃で1分の反応を1サイクルとして、10、12、15、20、25または30サイクル行い、最後に72℃で4分間インキュベートすることにより、増幅DNAを得た。
その後、精製増幅DNAを鋳型として、既報(Gyllenstten U.B.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.、第85巻、第7652−7656頁、1988年)に従い、不斉PCR(不斉一次PCRおよび不斉二次PCR)を行うことにより、一本鎖DNAのみを増幅させた不斉二次PCR産物を得た。不斉一次PCRの条件は、鋳型として精製増幅DNAの濃度を1μmol/Lとし、サイクル数を10サイクルとした以外は一段階目のPCRと同条件とした。不斉二次PCRの条件は下記のとおりとした。不斉二次PCR産物を20%(w/v)の非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。泳動後のゲルをエチジウムブロミドにより染色し、UVトランスイルミネーターにより検出した。その結果を図3に示す。図3に示すように、82merの1本鎖DNAに相当するバンドが確認されたため、これを切り出した。切り出したゲルを細かく砕いた後、37℃でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸すことによりDNAを溶出して溶液とした。得られた溶液を定法に従いフェノール/クロロホルム抽出およびエタノール沈殿に供した後、NAP−5カラムを用いて脱塩し、これを1サイクルの選定後のDNAライブラリーとした。
不斉二次PCRの条件(下記以外は一段階目のPCRと同条件)
DNAポリメラーゼ;Taq DNA polymerase(キアゲン社)
反応液の組成;鋳型DNAとして不斉一次PCRのPCR産物1/10量、一段階目のPCRのフォワードプライマーのみ1μmol/L、dNTPs200μmol/L、DNAポリメラーゼ5U
反応条件;95℃で5分間の後、94℃で30秒、50℃で30秒および72℃で1分の反応を1サイクルとして、25サイクル行い、最後に72℃で4分間インキュベートすることにより、不斉二次PCR産物を得た。
DNAポリメラーゼ;Taq DNA polymerase(キアゲン社)
反応液の組成;鋳型DNAとして不斉一次PCRのPCR産物1/10量、一段階目のPCRのフォワードプライマーのみ1μmol/L、dNTPs200μmol/L、DNAポリメラーゼ5U
反応条件;95℃で5分間の後、94℃で30秒、50℃で30秒および72℃で1分の反応を1サイクルとして、25サイクル行い、最後に72℃で4分間インキュベートすることにより、不斉二次PCR産物を得た。
[2−2]12サイクルの選定
本実施例1(1)の0サイクルDNAライブラリーを本実施例1(2)[2−1]の1サイクルの選定後のDNAライブラリーに代えて、本実施例1(2)[2−1]の操作を行い、2サイクルの選定後のDNAライブラリーを得た。以降、同様の操作を繰り返し行い、12サイクルの選定後のDNAライブラリーを得て、これを選定後DNAとした。ただし、11サイクル目および12サイクル目では、mTECに代えてmECおよびOSRC−IIをそれぞれ用い、結合反応後の遠心分離を行った際に、沈殿物を除去して上清を回収することにより、ネガティブセレクションを行った。
本実施例1(1)の0サイクルDNAライブラリーを本実施例1(2)[2−1]の1サイクルの選定後のDNAライブラリーに代えて、本実施例1(2)[2−1]の操作を行い、2サイクルの選定後のDNAライブラリーを得た。以降、同様の操作を繰り返し行い、12サイクルの選定後のDNAライブラリーを得て、これを選定後DNAとした。ただし、11サイクル目および12サイクル目では、mTECに代えてmECおよびOSRC−IIをそれぞれ用い、結合反応後の遠心分離を行った際に、沈殿物を除去して上清を回収することにより、ネガティブセレクションを行った。
(3)クローニングおよびシークエンス
本実施例1(2)[2−2]の選定後DNAについて、TOPO TA cloning kit(Invitrogen社)を用いて添付の使用書に従いクローニングを行い、選定後DNAが挿入されたプラスミドを得た。プラスミドを定法に従ってchemical competent E.coli DH5αに導入した。SOC培地を加えて大腸菌を1時間培養した後、アンピシリンを添加したLB寒天培地に播種し、37℃で18時間培養してコロニーを得た。得られたコロニーについて、選定後DNAが挿入されたプラスミドを持つことを、定法に従いコロニーPCRを行って確認した後、60個のコロニーを、50μg/mLのアンピシリンを含むLB液体培地に加えて37℃で18時間培養した。その後、QIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン社)を用いて添付の使用書に従いプラスミドを回収し、定法に従ってシークエンシングを行った。その結果、選定後DNAの塩基配列は、5’−CGTAGAATTCATGAGGACGTTACGTACCGACTTCGTATGCCAACAGCCCTTTATCCACCTCAGCTAAGCTTACCAGTGCGAT−3’(配列番号4)であることが明らかになった。すなわち、PCR用配列の間の40merのランダム配列(N40)は、5’−ACGTACCGACTTCGTATGCCAACAGCCCTTTATCCACCTC(配列番号5)−3’であることが明らかになった。
本実施例1(2)[2−2]の選定後DNAについて、TOPO TA cloning kit(Invitrogen社)を用いて添付の使用書に従いクローニングを行い、選定後DNAが挿入されたプラスミドを得た。プラスミドを定法に従ってchemical competent E.coli DH5αに導入した。SOC培地を加えて大腸菌を1時間培養した後、アンピシリンを添加したLB寒天培地に播種し、37℃で18時間培養してコロニーを得た。得られたコロニーについて、選定後DNAが挿入されたプラスミドを持つことを、定法に従いコロニーPCRを行って確認した後、60個のコロニーを、50μg/mLのアンピシリンを含むLB液体培地に加えて37℃で18時間培養した。その後、QIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン社)を用いて添付の使用書に従いプラスミドを回収し、定法に従ってシークエンシングを行った。その結果、選定後DNAの塩基配列は、5’−CGTAGAATTCATGAGGACGTTACGTACCGACTTCGTATGCCAACAGCCCTTTATCCACCTCAGCTAAGCTTACCAGTGCGAT−3’(配列番号4)であることが明らかになった。すなわち、PCR用配列の間の40merのランダム配列(N40)は、5’−ACGTACCGACTTCGTATGCCAACAGCCCTTTATCCACCTC(配列番号5)−3’であることが明らかになった。
<実施例2>DNAの結合性および解離定数の検討
(1)配列番号4の塩基配列からなるDNAの腫瘍血管内皮細胞に対する結合性
FITCで標識した配列番号4の塩基配列からなるDNA(以下、「FITC標識4番DNA」という。)を化学合成した。FITC標識4番DNA200pmolおよび1000pmol、ならびに実施例1(1)の0サイクルDNAライブラリー200pmolについて、mTECに対し、実施例1(2)[2−1]に記載の方法により結合反応を行って細胞を回収した。続いて、回収した細胞をセレクションバッファーに懸濁した後、40μmストレーナーで濾過して濾液を回収した。濾液をFACS Calibur flow cytometer(BD−Falcon社)を用いてフローサイトメトリーに供し、10000個の細胞のFITCの蛍光強度を測定して、蛍光強度を横軸、細胞数を縦軸に示すヒストグラムを得た。また、結合反応を行っていないmTECを同様にフローサイトメトリーに供してヒストグラムを得た。その結果を図4に示す。
(1)配列番号4の塩基配列からなるDNAの腫瘍血管内皮細胞に対する結合性
FITCで標識した配列番号4の塩基配列からなるDNA(以下、「FITC標識4番DNA」という。)を化学合成した。FITC標識4番DNA200pmolおよび1000pmol、ならびに実施例1(1)の0サイクルDNAライブラリー200pmolについて、mTECに対し、実施例1(2)[2−1]に記載の方法により結合反応を行って細胞を回収した。続いて、回収した細胞をセレクションバッファーに懸濁した後、40μmストレーナーで濾過して濾液を回収した。濾液をFACS Calibur flow cytometer(BD−Falcon社)を用いてフローサイトメトリーに供し、10000個の細胞のFITCの蛍光強度を測定して、蛍光強度を横軸、細胞数を縦軸に示すヒストグラムを得た。また、結合反応を行っていないmTECを同様にフローサイトメトリーに供してヒストグラムを得た。その結果を図4に示す。
図4に示すように、結合反応を行っていないmTECおよび0サイクルDNAライブラリーと結合反応を行ったmTECでは蛍光強度の大きい細胞は検出されず、蛍光強度の小さい細胞が大多数であった。これに対し、200pmolおよび1000pmolのFITC標識4番DNAと結合反応を行ったmTECでは、蛍光強度の大きい細胞が多数検出された。また、1000pmolのFITC標識4番DNAと結合反応を行ったmTECの方が、200pmolのFITC標識4番DNAと結合反応を行ったmTECよりも細胞の蛍光強度が大きかった。これらの結果から、配列番号4の塩基配列からなるDNAは、腫瘍血管内皮細胞に結合することが明らかになった。
(2)配列番号5の塩基配列からなるDNAの腫瘍血管内皮細胞に対する結合性
FITCで標識した配列番号5の塩基配列からなるDNA(以下、「FITC標識5番DNA」という。)を化学合成した。FITC標識4番DNAに代えてFITC標識5番DNAを用いて、本実施例2(1)と同様の実験を行った。その結果は、FITC標識4番DNAを用いた場合と同様であった(結果は図示しない)。これらの結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、腫瘍血管内皮細胞に結合することが明らかになった。そこで、以下の実験では、配列番号5の塩基配列からなるDNAを用いることとした。
FITCで標識した配列番号5の塩基配列からなるDNA(以下、「FITC標識5番DNA」という。)を化学合成した。FITC標識4番DNAに代えてFITC標識5番DNAを用いて、本実施例2(1)と同様の実験を行った。その結果は、FITC標識4番DNAを用いた場合と同様であった(結果は図示しない)。これらの結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、腫瘍血管内皮細胞に結合することが明らかになった。そこで、以下の実験では、配列番号5の塩基配列からなるDNAを用いることとした。
(3)正常血管内皮細胞、腫瘍実質細胞およびメラノーマに対する結合性
FITC標識4番DNAに代えてFITC標識5番DNAを、mTECに代えてmEC、OSRC−IIおよびRFP−SMをそれぞれ用いて、本実施例2(1)と同様の実験を行った。その結果を図5に示す。図5に示すように、mEC、OSRC−IIおよびRFP−SMのいずれにおいても、結合反応を行っていない場合および0サイクルDNAライブラリーと結合反応を行った場合と、200pmolおよび1000pmolのFITC標識5番DNAと結合反応を行った場合とで、細胞の蛍光強度は同程度であった。すなわち、FITC標識5番DNAは、mEC、OSRC−IIおよびRFP−SMには結合しないことが明らかになった。これらの結果および本実施例2(2)の結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、正常血管内皮細胞、腫瘍実質細胞およびメラノーマには結合せず、腫瘍血管内皮細胞に特異的に結合することが示された。
FITC標識4番DNAに代えてFITC標識5番DNAを、mTECに代えてmEC、OSRC−IIおよびRFP−SMをそれぞれ用いて、本実施例2(1)と同様の実験を行った。その結果を図5に示す。図5に示すように、mEC、OSRC−IIおよびRFP−SMのいずれにおいても、結合反応を行っていない場合および0サイクルDNAライブラリーと結合反応を行った場合と、200pmolおよび1000pmolのFITC標識5番DNAと結合反応を行った場合とで、細胞の蛍光強度は同程度であった。すなわち、FITC標識5番DNAは、mEC、OSRC−IIおよびRFP−SMには結合しないことが明らかになった。これらの結果および本実施例2(2)の結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、正常血管内皮細胞、腫瘍実質細胞およびメラノーマには結合せず、腫瘍血管内皮細胞に特異的に結合することが示された。
(4)ヒトの腫瘍血管内皮細胞に対する結合性
FITC標識4番DNAに代えてFITC標識5番DNAを、mTECに代えてhTECおよびHUVECをそれぞれ用いて、本実施例2(1)と同様の実験を行った。その結果を図6に示す。図6に示すように、hTECでは、結合反応を行っていない場合および0サイクルDNAライブラリーと結合反応を行った場合と比較して、200pmolおよび1000pmolのFITC標識5番DNAと結合反応を行った場合は、蛍光強度の大きい細胞が多数検出された。一方、HUVECでは、結合反応を行っていない場合および0サイクルDNAライブラリーと結合反応を行った場合と200pmolおよび1000pmolのFITC標識5番DNAと結合反応を行った場合とで、細胞の蛍光強度は同程度であった。すなわち、FITC標識5番DNAは、hTECに結合し、HUVECには結合しないことが明らかになった。これらの結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、マウスのみならずヒトにおいても、腫瘍血管内皮細胞に特異的に結合することが示された。
FITC標識4番DNAに代えてFITC標識5番DNAを、mTECに代えてhTECおよびHUVECをそれぞれ用いて、本実施例2(1)と同様の実験を行った。その結果を図6に示す。図6に示すように、hTECでは、結合反応を行っていない場合および0サイクルDNAライブラリーと結合反応を行った場合と比較して、200pmolおよび1000pmolのFITC標識5番DNAと結合反応を行った場合は、蛍光強度の大きい細胞が多数検出された。一方、HUVECでは、結合反応を行っていない場合および0サイクルDNAライブラリーと結合反応を行った場合と200pmolおよび1000pmolのFITC標識5番DNAと結合反応を行った場合とで、細胞の蛍光強度は同程度であった。すなわち、FITC標識5番DNAは、hTECに結合し、HUVECには結合しないことが明らかになった。これらの結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、マウスのみならずヒトにおいても、腫瘍血管内皮細胞に特異的に結合することが示された。
(5)解離定数
FITC標識5番DNAについて、mTECおよびmECに対し、実施例1(2)[2−1]に記載の方法により結合反応を行って細胞を回収した。ただし、結合反応の際の細胞数は1サンプルあたり5×105個とし、FITC標識5番DNAの濃度は1nmol/L〜150nmol/Lの範囲で変化させた。続いて、回収した細胞を、本実施例2(1)に記載の方法によりフローサイトメトリーに供して測定を行った。次に、SigmaPlot(SYSTAT社)を用いて、蛍光強度と結合反応時のFITC標識5番DNAの濃度との関係をプロットしたグラフを作成し、FITC標識5番DNAとmTECとの解離定数(Kd)を算出した。その結果を図7に示す。図7に示すように、Kdの値は43.8±13.7nmol/Lであった。既報(keefe,AD.ら、Nat.Rev.Drug Discov.、第9巻、第537−550頁、2010年)によると、現在治療などに利用可能性があるアプタマーの解離定数は0.13〜420nmol/Lであるのに対し、得られたKdの値はこの範囲内であったことから、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、腫瘍血管内皮細胞に対してアプタマーとして十分使用可能な程度に高い解離定数を有することが明らかになった。
FITC標識5番DNAについて、mTECおよびmECに対し、実施例1(2)[2−1]に記載の方法により結合反応を行って細胞を回収した。ただし、結合反応の際の細胞数は1サンプルあたり5×105個とし、FITC標識5番DNAの濃度は1nmol/L〜150nmol/Lの範囲で変化させた。続いて、回収した細胞を、本実施例2(1)に記載の方法によりフローサイトメトリーに供して測定を行った。次に、SigmaPlot(SYSTAT社)を用いて、蛍光強度と結合反応時のFITC標識5番DNAの濃度との関係をプロットしたグラフを作成し、FITC標識5番DNAとmTECとの解離定数(Kd)を算出した。その結果を図7に示す。図7に示すように、Kdの値は43.8±13.7nmol/Lであった。既報(keefe,AD.ら、Nat.Rev.Drug Discov.、第9巻、第537−550頁、2010年)によると、現在治療などに利用可能性があるアプタマーの解離定数は0.13〜420nmol/Lであるのに対し、得られたKdの値はこの範囲内であったことから、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、腫瘍血管内皮細胞に対してアプタマーとして十分使用可能な程度に高い解離定数を有することが明らかになった。
また、図7に示すように、FITC標識5番DNAの濃度がいずれの場合も、mTECの方がmECと比較して蛍光強度が大きかった。さらに、mECではFITC標識5番DNAの濃度に関わらず蛍光強度が一定であったのに対して、mTECではFITC標識5番DNAの濃度が大きいほど蛍光強度が大きかった。これらの結果は本実施例2(2)および(3)と一致する結果であったことから、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、腫瘍血管内皮細胞に特異的に結合し、正常血管内皮細胞には結合しないことが再度確認された。
<実施例3>DNAの標的物質の同定
(1)標的物質の単離および同定
6×106個のmTECを3群用意し、A群、B群およびコントロール群とした。1%(w/v)となるようtritonを、0.1%(w/v)となるようプロテアーゼインヒビターをそれぞれ加え、30分間撹拌することにより細胞を溶解した。続いて、14000×g、4℃の条件下で5分間遠心分離を行って上清を回収した。次に、A群およびB群には、5’末端をビオチンで標識した配列番号5の塩基配列からなるDNAを加え、コントロール群には何も加えなかった。続いて、B群にクロスリンカーとして50nmolのDTSSPを加えて2時間反応させた。一方、A群およびコントロール群には何も加えずに1時間撹拌した。その後、2mLのストレプトアビジン結合磁気ビーズを使用書に従って洗浄した後、A群、B群およびコントロール群に加えて、10分間混和した。磁石を用いてストレプトアビジン結合磁気ビーズを保持し、上清を分離した。分離した上清は、ストレプトアビジン結合磁気ビーズに結合しなかった細胞成分を含むため、回収してこれをビーズ非結合分画とした。続いて、ストレプトアビジン結合磁気ビーズを3回洗浄した後、加熱して、DNAを変性させてストレプトアビジン結合磁気ビーズから分離させた。その後、上清を回収してこれをビーズ結合分画とした。ビーズ結合分画およびビーズ非結合分画を、4〜15%グラジエントゲルを用いたドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供し、既報(Shangguan D.ら、J.Proteome Res.、第7巻、第2133−2139頁、2008年)に従って銀染色を行ってタンパク質を検出した。その結果を図8に示す。図8において楕円で囲んで示すように、A群およびB群のビーズ結合分画における約70KDaのバンドが、ビーズ非結合分画では検出されず、ビーズ結合分画にのみ特異的に検出されたものであることが明らかになった。すなわち、この約70KDaのバンドに含まれるタンパク質が、ビオチンで標識した配列番号5の塩基配列からなるDNAを介してストレプトアビジン結合磁気ビーズに特異的に結合したタンパク質であると考えられた。
(1)標的物質の単離および同定
6×106個のmTECを3群用意し、A群、B群およびコントロール群とした。1%(w/v)となるようtritonを、0.1%(w/v)となるようプロテアーゼインヒビターをそれぞれ加え、30分間撹拌することにより細胞を溶解した。続いて、14000×g、4℃の条件下で5分間遠心分離を行って上清を回収した。次に、A群およびB群には、5’末端をビオチンで標識した配列番号5の塩基配列からなるDNAを加え、コントロール群には何も加えなかった。続いて、B群にクロスリンカーとして50nmolのDTSSPを加えて2時間反応させた。一方、A群およびコントロール群には何も加えずに1時間撹拌した。その後、2mLのストレプトアビジン結合磁気ビーズを使用書に従って洗浄した後、A群、B群およびコントロール群に加えて、10分間混和した。磁石を用いてストレプトアビジン結合磁気ビーズを保持し、上清を分離した。分離した上清は、ストレプトアビジン結合磁気ビーズに結合しなかった細胞成分を含むため、回収してこれをビーズ非結合分画とした。続いて、ストレプトアビジン結合磁気ビーズを3回洗浄した後、加熱して、DNAを変性させてストレプトアビジン結合磁気ビーズから分離させた。その後、上清を回収してこれをビーズ結合分画とした。ビーズ結合分画およびビーズ非結合分画を、4〜15%グラジエントゲルを用いたドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供し、既報(Shangguan D.ら、J.Proteome Res.、第7巻、第2133−2139頁、2008年)に従って銀染色を行ってタンパク質を検出した。その結果を図8に示す。図8において楕円で囲んで示すように、A群およびB群のビーズ結合分画における約70KDaのバンドが、ビーズ非結合分画では検出されず、ビーズ結合分画にのみ特異的に検出されたものであることが明らかになった。すなわち、この約70KDaのバンドに含まれるタンパク質が、ビオチンで標識した配列番号5の塩基配列からなるDNAを介してストレプトアビジン結合磁気ビーズに特異的に結合したタンパク質であると考えられた。
そこで、この約70KDaのバンドを切り出して精製し、ペプチドマスフィンガープリント分析に供して、タンパク質を同定した。ペプチドマスフィンガープリント分析における質量分析はMALDI−TOFにより、質量データに基づくタンパク質同定はMASCOT Serverにより、genomine社に委託してそれぞれ行った。MALDI−TOF Massのスペクトルおよびプロテインスコアのヒストグラムおよびプロテインスコアが最大であったタンパク質(配列番号6)のアミノ酸配列を図9に示す。図9に示すように、約70KDaのバンドに含まれるタンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列と最も高い一致が見られ、この配列番号6のタンパク質はマウスの骨格筋トロポニンTであることが明らかになった。この結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAの標的物質は、骨格筋トロポニンTであることが明らかになった。なお、骨格筋トロポニンTの分子量は33KDaであることから、約70KDaのバンドを含まれるタンパク質は骨格筋トロポニンTの二量体であると考えられた。骨格筋トロポニンTは二量体を形成することが報告されており(Risnik V.V.ら、Biochem.J.、第25巻、第549−552頁、1985年)、これらの既報と一致する結果であった。
(2)心筋トロポニンTとDNAとの結合の確認
トロポニンTは主に骨格筋に発現しているもの(骨格筋トロポニンT;配列番号6)と主に心筋に発現しているもの(心筋トロポニンT;配列番号7)とでアミノ酸組成が異なることが知られているため、マウスの骨格筋トロポニンTとヒトの心筋トロポニンTとの全長アミノ酸配列の相同性を検討した。その結果を図10に示す。図10に示すように、骨格筋トロポニンTと心筋トロポニンTとは、アミノ酸配列においておよそ60%の高い相同性を有することが明らかになった。この結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、骨格筋トロポニンTのみならず、心筋トロポニンTとも結合することが示唆された。
トロポニンTは主に骨格筋に発現しているもの(骨格筋トロポニンT;配列番号6)と主に心筋に発現しているもの(心筋トロポニンT;配列番号7)とでアミノ酸組成が異なることが知られているため、マウスの骨格筋トロポニンTとヒトの心筋トロポニンTとの全長アミノ酸配列の相同性を検討した。その結果を図10に示す。図10に示すように、骨格筋トロポニンTと心筋トロポニンTとは、アミノ酸配列においておよそ60%の高い相同性を有することが明らかになった。この結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、骨格筋トロポニンTのみならず、心筋トロポニンTとも結合することが示唆された。
そこで、心筋トロポニンTと配列番号5の塩基配列からなるDNAとの結合性を、定法に従いゲルシフトアッセイ(electrophoresis mobility shift assay;EMSA)を行うことにより確認した。具体的には、スルホインドシアニンスクシンイミジルエステル(Cy5)で標識した配列番号5の塩基配列からなるDNAを、10nmol/Lとなるようセレクションバッファーに入れ、80℃で10分間加熱し、その後放冷して二次構造を形成させた。これを、0〜2000nmol/Lの濃度の心筋トロポニンTに加えて、4℃で30分間インキュベートすることにより、結合反応を行った。続いて、8%(v/v)ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、蛍光イメージアナライザーLAS4000(GEヘルスケア社)を用いてCy5の蛍光を検出した。その結果を図11に示す。図11に示すように、DNAのバンドは、心筋トロポニンTの濃度が0、5.33、および16nmol/Lでは下部に見られた。これに対し、80nmol/Lでは下部から中間部にわたって幅広く見られ、400nmol/Lでは上部に見られ、2000nmol/Lではより上部に見られた。すなわち、心筋トロポニンTの濃度が大きいほど、配列番号5の塩基配列からなるDNAの泳動速度が遅くなったことが明らかになった。この結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、心筋トロポニンTと結合することが示された。
以上の本実施例3(1)および(2)の結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAの標的物質はトロポニンTであることが明らかになった。
(3)腫瘍血管内皮細胞におけるトロポニンT発現の確認
[3−1]フローサイトメトリー
5×105個のmTECを2群用意し、抗体添加群および抗体無添加群とした。抗体添加群には、FITCで標識した心筋トロポニンT抗体を0.9mg/mLとなるよう加え、抗体無添加群には何も加えず、それぞれ4℃で50分間攪拌した。その後、セレクションバッファーを用いて細胞を2回洗浄し、実施例2(1)に記載の方法によりフローサイトメトリーによる測定を行った。また、mTECに代えてmECを用いて同様の実験を行った。それらの結果を図12に示す。図12に示すように、mTECにおける細胞の蛍光強度は、抗体無添加群と比較して抗体添加群の方が大きかったのに対し、mECにおける細胞の蛍光強度は、抗体無添加群と抗体添加群とで同等であった。すなわち、心筋トロポニンT抗体は、mTECに結合し、mECには結合しないことが明らかになった。これらの結果から、心筋トロポニンTは、腫瘍血管内皮細胞の細胞表面に発現しており、かつ、正常血管内皮細胞の細胞表面には発現していないことが明らかになった。
[3−1]フローサイトメトリー
5×105個のmTECを2群用意し、抗体添加群および抗体無添加群とした。抗体添加群には、FITCで標識した心筋トロポニンT抗体を0.9mg/mLとなるよう加え、抗体無添加群には何も加えず、それぞれ4℃で50分間攪拌した。その後、セレクションバッファーを用いて細胞を2回洗浄し、実施例2(1)に記載の方法によりフローサイトメトリーによる測定を行った。また、mTECに代えてmECを用いて同様の実験を行った。それらの結果を図12に示す。図12に示すように、mTECにおける細胞の蛍光強度は、抗体無添加群と比較して抗体添加群の方が大きかったのに対し、mECにおける細胞の蛍光強度は、抗体無添加群と抗体添加群とで同等であった。すなわち、心筋トロポニンT抗体は、mTECに結合し、mECには結合しないことが明らかになった。これらの結果から、心筋トロポニンTは、腫瘍血管内皮細胞の細胞表面に発現しており、かつ、正常血管内皮細胞の細胞表面には発現していないことが明らかになった。
[3−2]リアルタイムPCR
RNeasy micro kit(キアゲン社)を用いて、添付の使用書に従いmTECおよびmECからトータルRNAを抽出した。続いて、トータルRNAを鋳型としてRever Tra−Plus(東洋紡社)を用いて、添付の使用書に従い逆転写を行ってcDNAを得た。cDNAを鋳型とし、下記に示すプライマーおよびSsoFast(BIO−RAD社)を用いて、添付の使用書に従いリアルタイムPCRを行うことにより、骨格筋トロポニンTの相対的発現量を測定した。リアルタイムPCRの標準物質はグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)とした。その結果を図13に示す。図13に示すように、骨格筋トロポニンTの相対的発現量は、mECと比較してmTECの方が大きかった。この結果から、腫瘍血管内皮細胞では、正常血管内皮細胞と比較して、骨格筋トロポニンTの発現量が増大していることが明らかになった。
RNeasy micro kit(キアゲン社)を用いて、添付の使用書に従いmTECおよびmECからトータルRNAを抽出した。続いて、トータルRNAを鋳型としてRever Tra−Plus(東洋紡社)を用いて、添付の使用書に従い逆転写を行ってcDNAを得た。cDNAを鋳型とし、下記に示すプライマーおよびSsoFast(BIO−RAD社)を用いて、添付の使用書に従いリアルタイムPCRを行うことにより、骨格筋トロポニンTの相対的発現量を測定した。リアルタイムPCRの標準物質はグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)とした。その結果を図13に示す。図13に示すように、骨格筋トロポニンTの相対的発現量は、mECと比較してmTECの方が大きかった。この結果から、腫瘍血管内皮細胞では、正常血管内皮細胞と比較して、骨格筋トロポニンTの発現量が増大していることが明らかになった。
マウスGAPDH
フォワード:5’−TCTGACGTGCCGCCTGGAG−3’(配列番号8)
リバース:5’−TCGCAGGAGACAACCTGGTC−3’(配列番号9)
マウス骨格筋由来トロポニンT1
フォワード:5’−TTGGAGGCCGCTGGAAGTGAGA−3’(配列番号10)
リバース:5’−ACAGATGGGACACGCTCCAGTG−3’(配列番号11)
フォワード:5’−TCTGACGTGCCGCCTGGAG−3’(配列番号8)
リバース:5’−TCGCAGGAGACAACCTGGTC−3’(配列番号9)
マウス骨格筋由来トロポニンT1
フォワード:5’−TTGGAGGCCGCTGGAAGTGAGA−3’(配列番号10)
リバース:5’−ACAGATGGGACACGCTCCAGTG−3’(配列番号11)
以上の本実施例3(1)〜(3)[3−2]の結果および実施例2(2)〜(4)の結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、トロポニンTと結合することが示された。また、トロポニンTは、正常血管内皮細胞や腫瘍実質細胞、メラノーマの細胞表面には発現せず、腫瘍血管内皮細胞の表面に特異的に発現する腫瘍マーカーであることが明らかになった。
<実施例4>DNAの細胞内への取り込みの検討
(1)取り込みの検討
直径3.5cmのガラスボトムディッシュに 1×105個のmTECを播種し、24時間培養した。培養したmTECに対し、FITC標識5番DNAを用いて、実施例1(2)[2−1]に記載の方法により結合反応を行った。ただし、結合反応の時間は45分間に代えて30分間とした。続いて、細胞核に対する染色色素であるHoechst33432および酸性コンパートメントに対する染色色素であるLysotracker Redをそれぞれ1mg/mLおよび0.5μmol/Lとなるよう加えて、15分間静置することにより染色した。その後、細胞を洗浄し、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて、蛍光観察を行った。FITC、Hoechst33432およびLysotracker Redの励起および検出はそれぞれ励起波長/検出波長(nm)=494/518、350/461、577/590で行った。その結果を図14に示す。図14に示すように、FITC(FITC標識5番DNA)およびLysotracker Red(酸性コンパートメント)は、細胞内の同じ部位で検出された。すなわち、FITC標識5番DNAは、エンドサイトーシスなどにより細胞内に取り込まれたために、リソソームなどの酸性コンパートメントに存在していることが明らかになった。この結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、細胞内に取り込まれることが明らかになった。これらの結果と実施例3(1)〜(3)[3−2]の結果とから、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、細胞表面のトロポニンTと結合して細胞内に取り込まれることが明らかになった。
(1)取り込みの検討
直径3.5cmのガラスボトムディッシュに 1×105個のmTECを播種し、24時間培養した。培養したmTECに対し、FITC標識5番DNAを用いて、実施例1(2)[2−1]に記載の方法により結合反応を行った。ただし、結合反応の時間は45分間に代えて30分間とした。続いて、細胞核に対する染色色素であるHoechst33432および酸性コンパートメントに対する染色色素であるLysotracker Redをそれぞれ1mg/mLおよび0.5μmol/Lとなるよう加えて、15分間静置することにより染色した。その後、細胞を洗浄し、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて、蛍光観察を行った。FITC、Hoechst33432およびLysotracker Redの励起および検出はそれぞれ励起波長/検出波長(nm)=494/518、350/461、577/590で行った。その結果を図14に示す。図14に示すように、FITC(FITC標識5番DNA)およびLysotracker Red(酸性コンパートメント)は、細胞内の同じ部位で検出された。すなわち、FITC標識5番DNAは、エンドサイトーシスなどにより細胞内に取り込まれたために、リソソームなどの酸性コンパートメントに存在していることが明らかになった。この結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、細胞内に取り込まれることが明らかになった。これらの結果と実施例3(1)〜(3)[3−2]の結果とから、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、細胞表面のトロポニンTと結合して細胞内に取り込まれることが明らかになった。
(2)取り込み促進効果の検討
[2−1]DNA結合脂質の調製
マレイミド基が付加された分子量2000のポリエチレングリコール(PEG2000)が1,2−distearoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DSPE)に結合してなる脂質(PEG脂質)と5’をチオール基で修飾した配列番号5の塩基配列からなるDNAとを、終濃度5mmol/Lのトリス(2‐カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含むトリスHCl緩衝液に入れて12時間反応させることにより、3’−配列番号5の塩基配列からなるDNA−5’、マレイミド基、PEG2000およびDSPEがこの順で結合してなるDNA結合PEG脂質を調製した。DNA結合PEG脂質の模式図を図15に示す。続いて、定法に従いゲル濾過カラムクロマトグラフィーに供することによりDNA結合PEG脂質を精製した後、配列番号5の塩基配列からなるDNAとともに4〜20%グラジエントポリアクリルアミドゲル電気泳動に供して分子量を確認した。その結果を図16に示す。図16に示すように、DNA結合PEG脂質は、配列番号5の塩基配列からなるDNAと比較して、顕著に大きい分子量を有していた。この結果から、DNA結合PEG脂質は、PEG脂質と配列番号5の塩基配列からなるDNAとが結合してなるものであることが確認された。
[2−1]DNA結合脂質の調製
マレイミド基が付加された分子量2000のポリエチレングリコール(PEG2000)が1,2−distearoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(DSPE)に結合してなる脂質(PEG脂質)と5’をチオール基で修飾した配列番号5の塩基配列からなるDNAとを、終濃度5mmol/Lのトリス(2‐カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含むトリスHCl緩衝液に入れて12時間反応させることにより、3’−配列番号5の塩基配列からなるDNA−5’、マレイミド基、PEG2000およびDSPEがこの順で結合してなるDNA結合PEG脂質を調製した。DNA結合PEG脂質の模式図を図15に示す。続いて、定法に従いゲル濾過カラムクロマトグラフィーに供することによりDNA結合PEG脂質を精製した後、配列番号5の塩基配列からなるDNAとともに4〜20%グラジエントポリアクリルアミドゲル電気泳動に供して分子量を確認した。その結果を図16に示す。図16に示すように、DNA結合PEG脂質は、配列番号5の塩基配列からなるDNAと比較して、顕著に大きい分子量を有していた。この結果から、DNA結合PEG脂質は、PEG脂質と配列番号5の塩基配列からなるDNAとが結合してなるものであることが確認された。
[2−2]リポソームの調製
本実施例4(2)[2−1]のDNA結合PEG脂質を2.5モル%または5モル%の濃度で構成脂質として含むリポソームを、単純水和法により調製した。具体的には、まず、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)とコレステロール(Chol)とを、モル比がEPC:Chol=7:3となるようエタノールに溶解して、EPC/Chol溶液を調製した。また、ジオレオイルグリセロフォスフォエタノールアミン(DOPE)にローダミンが結合したローダミン標識DOPEをエタノールに溶解して、ローダミン標識DOPE溶液を調製した。また、本実施例(2)[2−1]のPEG脂質およびDNA結合PEG脂質を、それぞれ10mmol/LのHEPES緩衝液に溶解して、PEG脂質溶液およびDNA結合PEG脂質溶液を調製した。続いて、EPC/Chol溶液、ローダミン標識DOPE溶液およびPEG脂質溶液またはDNA結合PEG脂質溶液を、各脂質のモル%比が下記に示す比となるよう混合して、a、b、cおよびdの計4つの混合脂質溶液を調製した。
本実施例4(2)[2−1]のDNA結合PEG脂質を2.5モル%または5モル%の濃度で構成脂質として含むリポソームを、単純水和法により調製した。具体的には、まず、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)とコレステロール(Chol)とを、モル比がEPC:Chol=7:3となるようエタノールに溶解して、EPC/Chol溶液を調製した。また、ジオレオイルグリセロフォスフォエタノールアミン(DOPE)にローダミンが結合したローダミン標識DOPEをエタノールに溶解して、ローダミン標識DOPE溶液を調製した。また、本実施例(2)[2−1]のPEG脂質およびDNA結合PEG脂質を、それぞれ10mmol/LのHEPES緩衝液に溶解して、PEG脂質溶液およびDNA結合PEG脂質溶液を調製した。続いて、EPC/Chol溶液、ローダミン標識DOPE溶液およびPEG脂質溶液またはDNA結合PEG脂質溶液を、各脂質のモル%比が下記に示す比となるよう混合して、a、b、cおよびdの計4つの混合脂質溶液を調製した。
a;EPC/Chol:ローダミン標識DOPE:PEG脂質=96.5:1:2.5
b;EPC/Chol:ローダミン標識DOPE:DNA結合PEG脂質=96.5:1:2.5
c;EPC/Chol:ローダミン標識DOPE:PEG脂質=94:1:5
d;EPC/Chol:ローダミン標識DOPE:DNA結合PEG脂質=94:1:5
b;EPC/Chol:ローダミン標識DOPE:DNA結合PEG脂質=96.5:1:2.5
c;EPC/Chol:ローダミン標識DOPE:PEG脂質=94:1:5
d;EPC/Chol:ローダミン標識DOPE:DNA結合PEG脂質=94:1:5
続いて、混合脂質溶液をデシケーターに供することにより溶媒を除いて脂質フィルムを調製した。脂質フィルムに10mmol/LのHEPES緩衝液を添加し、10分間静置することにより脂質フィルムを水和させた。その後、1分間超音波処理することによりリポソームを調製した。すなわち、混合脂質溶液aからはPEG脂質を2.5モル%の濃度で構成脂質として含む、ローダミンで標識したリポソーム(リポソームA)を、混合脂質溶液bからはDNA結合PEG脂質を2.5モル%の濃度で構成脂質として含む、ローダミンで標識したリポソーム(リポソームB)を、混合脂質溶液cからはPEG脂質を5モル%の濃度で構成脂質として含む、ローダミンで標識したリポソーム(リポソームC)を、混合脂質溶液dからはDNA結合PEG脂質を5モル%の濃度で構成脂質として含む、ローダミンで標識したリポソーム(リポソームD)を、それぞれ調製した。各リポソームについて、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments社)を用いて、平均粒子径、粒度分布指数(Phase Doppler Interferometer;PDI)および表面電位をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、A、B、CおよびDのいずれも、平均粒子径は43.33nm〜142.3nmの範囲、PDIは0.3前後、表面電位は比較的差の小さいマイナス電位であった。この結果から、A、B、CおよびDは、同様の物性を有することが明らかになった。
[2−3]リポソームの取り込みの検討
24穴プレートに4×104個のmTECを播種し、一晩培養した。培地を交換した後、2mLのPBSを用いて細胞を洗浄し、5mmol/Lのグルコースを含むクレブス緩衝液800μLを加え、さらに、本実施例4(2)[2−2]のリポソームA、B、CおよびDをそれぞれ含むHEPES緩衝液200μL(脂質濃度0.5mmol/L)を加えた。続いて、37℃で3時間静置することにより細胞にリポソームを取り込ませた、PBSを用いて細胞を洗浄し、Lysis緩衝液を用いて細胞を溶解した。続いて、10000×g、4℃の条件下で5分間遠心分離を行い、上清を回収して、蛍光光度計を用いてローダミンの蛍光強度を測定した。その結果を図17に示す。
24穴プレートに4×104個のmTECを播種し、一晩培養した。培地を交換した後、2mLのPBSを用いて細胞を洗浄し、5mmol/Lのグルコースを含むクレブス緩衝液800μLを加え、さらに、本実施例4(2)[2−2]のリポソームA、B、CおよびDをそれぞれ含むHEPES緩衝液200μL(脂質濃度0.5mmol/L)を加えた。続いて、37℃で3時間静置することにより細胞にリポソームを取り込ませた、PBSを用いて細胞を洗浄し、Lysis緩衝液を用いて細胞を溶解した。続いて、10000×g、4℃の条件下で5分間遠心分離を行い、上清を回収して、蛍光光度計を用いてローダミンの蛍光強度を測定した。その結果を図17に示す。
図17に示すように、蛍光強度を、リポソームAおよびBを取り込ませた場合で比較するとBを取り込ませた場合の方が顕著に大きく、リポソームCおよびDを取り込ませた場合で比較するとDを取り込ませた場合の方が顕著に大きかった。すなわち、DNA結合PEG脂質を構成脂質として含むリポソームを取り込ませた場合の方が、PEG脂質を構成脂質として含むリポソームを取り込ませた場合と比較して、細胞の蛍光強度が大きいことが明らかになった。また、蛍光強度を、リポソームBおよびDを取り込ませた場合で比較するとDを取り込ませた場合の方が大きかった。すなわち、DNA結合PEG脂質を、5モル%の濃度で構成脂質として含むリポソームを取り込ませた場合の方が、2.5モル%の濃度で構成脂質として含むリポソームを取り込ませた場合と比較して、細胞の蛍光強度が大きいことが明らかになった。これらの結果から、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、腫瘍血管内皮細胞の細胞内へ、脂質膜構造体が取り込まれることを促進することが示された。
以上の本実施例4(2)[2−2]の結果および実施例3(1)〜(3)[3−2]の結果から、配列番号5の塩基配列を有するDNAは、細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進することが明らかになった。
<実施例5>血管新生・脈管形成抑制効果の検討
配列番号5の塩基配列からなるDNAおよび実施例1(1)の0サイクルDNAライブラリーについて、mTECに対し、実施例1(2)[2−1]に記載の方法により結合反応を行って細胞を回収し、5番DNA群および0サイクル群とした。ただし、結合反応の際の細胞数は1サンプルあたり1×105個とし、配列番号5の塩基配列からなるDNAおよび0サイクルDNAライブラリーの濃度はそれぞれ5μmol/Lとした。また、結合反応を行っていないmTECを同数用意してコントロール群とした。5番DNA群、0サイクル群およびコントロール群を、マトリゲルでコートした24穴プレートに播種し、16時間培養した後、倒立顕微鏡を用いて、細胞が形成した管構造の様子を観察した。また、観察画像を撮影し、これをImageJ(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を用いて解析して、画像内の管構造の長さを測定した。複数の画像で同様の操作を行って、群ごとに平均値を算出し、Student−Newman−Keuls法による一元配置分散分析で有意差検定を行った。その結果を図18に示す。図18に示すように、管構造は、コントロール群および0サイクル群では画像内の全領域にわたって形成されているのに対し、5番DNA群では、形成されている領域と未形成の領域とがおよそ半々であった。また、管構造の長さは、コントロール群および0サイクル群と比較して、5番DNA群で有意に短かった。すなわち、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、腫瘍血管内皮細胞による管構造の形成を抑制することが明らかになった。これらの結果から、配列番号5の塩基配列を有するDNAは、腫瘍組織における血管新生や脈管形成を抑制することが示された。
配列番号5の塩基配列からなるDNAおよび実施例1(1)の0サイクルDNAライブラリーについて、mTECに対し、実施例1(2)[2−1]に記載の方法により結合反応を行って細胞を回収し、5番DNA群および0サイクル群とした。ただし、結合反応の際の細胞数は1サンプルあたり1×105個とし、配列番号5の塩基配列からなるDNAおよび0サイクルDNAライブラリーの濃度はそれぞれ5μmol/Lとした。また、結合反応を行っていないmTECを同数用意してコントロール群とした。5番DNA群、0サイクル群およびコントロール群を、マトリゲルでコートした24穴プレートに播種し、16時間培養した後、倒立顕微鏡を用いて、細胞が形成した管構造の様子を観察した。また、観察画像を撮影し、これをImageJ(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を用いて解析して、画像内の管構造の長さを測定した。複数の画像で同様の操作を行って、群ごとに平均値を算出し、Student−Newman−Keuls法による一元配置分散分析で有意差検定を行った。その結果を図18に示す。図18に示すように、管構造は、コントロール群および0サイクル群では画像内の全領域にわたって形成されているのに対し、5番DNA群では、形成されている領域と未形成の領域とがおよそ半々であった。また、管構造の長さは、コントロール群および0サイクル群と比較して、5番DNA群で有意に短かった。すなわち、配列番号5の塩基配列からなるDNAは、腫瘍血管内皮細胞による管構造の形成を抑制することが明らかになった。これらの結果から、配列番号5の塩基配列を有するDNAは、腫瘍組織における血管新生や脈管形成を抑制することが示された。
Claims (7)
- 下記の(a)、(b)および(c)からなる群から選択されるDNA;
(a)配列番号5の塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号5の塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA、
(c)配列番号5の塩基配列において1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または挿入された塩基配列を有し、かつトロポニンTと結合するDNA。 - 細胞表面のトロポニンTと結合して細胞内に取り込まれる、請求項1に記載のDNA。
- 腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成を抑制する、請求項1または請求項2に記載のDNA。
- 請求項1から請求項3のいずれかに記載のDNAと結合した脂質を構成脂質として含む脂質膜構造体。
- 配列番号5の塩基配列または配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列を有するDNAを有効成分とする、腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤。
- 配列番号5の塩基配列または配列番号5の塩基配列において1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは挿入された塩基配列を有するDNAを有効成分とする、細胞表面にトロポニンTを有する細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤。
- 目的物質が脂質膜構造体である、請求項6に記載の剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012124073A JP2013247890A (ja) | 2012-05-31 | 2012-05-31 | トロポニンtと結合するdna、これを用いた腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびにこれを用いた細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2012124073A JP2013247890A (ja) | 2012-05-31 | 2012-05-31 | トロポニンtと結合するdna、これを用いた腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびにこれを用いた細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤 |
Publications (1)
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JP2013247890A true JP2013247890A (ja) | 2013-12-12 |
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ID=49847257
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2012124073A Pending JP2013247890A (ja) | 2012-05-31 | 2012-05-31 | トロポニンtと結合するdna、これを用いた腫瘍組織における血管新生および/または脈管形成抑制剤ならびにこれを用いた細胞内へ目的物質が取り込まれることを促進する剤 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2013247890A (ja) |
-
2012
- 2012-05-31 JP JP2012124073A patent/JP2013247890A/ja active Pending
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