JP2013241986A - 転がり軸受 - Google Patents
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- F16C19/364—Bearings with rolling contact, for exclusively rotary movement with bearing rollers essentially of the same size in one or more circular rows, e.g. needle bearings for both radial and axial load with a single row of rollers with tapered rollers, i.e. rollers having essentially the shape of a truncated cone
Abstract
【解決手段】外輪3と内輪5と転動体6とを備えた転がり軸受において、外輪と内輪と転動体のうちの少なくとも1種の部材である軸受部品が、鋼中にSi、Mn、Cr、Moを適正量添加すると共に、酸化物系介在物の大きさに関する最大値、焼き入れ・焼き戻し後の鋼中に残存している球状化炭化物の割合を適切に規制する。これにより、前記鋼中に存在する非金属介在物の周辺でバタフライ型組織変化の発生を遅延させる。
【選択図】図1
Description
又、特許文献3には、320mm2中に含まれる酸化物非金属介在物の数を100〜200個とし、更に不純物元素であるSb量を0.001質量%以下に抑える事により、転がり軸受の長寿命化を図る軸受用鋼に関する発明が記載されている。
但し、実際の転がり軸受の運転状態では、この転がり軸受の高応力部に存在する非金属介在物のうちの最大の非金属介在物を起点として、剥離が生じる。この為、上述の様な特許文献2、3に記載された発明の様に、鋼材の微小な面積中に含まれる非金属介在物の数や大きさを制限しても、必ずしも非金属介在物を起点とする剥離寿命を延ばせるとは限らない。言い換えれば、予想外の起点剥離が生じ、意図した程剥離寿命が延びない個体が発生する可能性があった。
但し、この様な特許文献4に記載された発明の様に、最大で60μmと言った様な、或る程度の大きさの非金属介在物を許容する場合には、転がり軸受の使用条件が厳しいと、この非金属介在物を起点としてバタフライ型組織変化が生じ、剥離に至る場合がある。
特に、本発明の転がり軸受に於いては、前記第一の軌道輪と前記第二の軌道輪とこれら各転動体とのうちの少なくとも1種の部材である軸受部品を、
Cを0.85〜1.15質量%、Siを0.40〜0.90質量%、Mnを0.55〜1.20質量%、Crを1.30〜1.90質量%、Moを0.30質量%以下、Niを0.30質量%以下、Cuを0.20質量%以下、Sを0.025質量%以下、Pを0.020質量%以下、Oを15質量ppm以下、それぞれ含有し、残部をFeと不可避的不純物とし、
極値統計法により、面積30000mm2に存在する酸化物系介在物の大きさに関する最大値を予測した場合に、最大の酸化物系介在物の面積の平方根が22μm以上、50μm以下である鋼により構成している。
又、前記少なくとも1種の部材の、焼き入れ・焼き戻し後の硬さを、Hv697〜800としている。尚、この部材には、所謂ズブ焼き入れを施すので、この部材の硬さは、表面から芯部まで、ほぼ同じとなる。
更に、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]を、前記鋼中への各合金成分(元素)の含有量を質量%で表した数値とし、[MC]を、焼き入れ・焼き戻し後の鋼中に残存している球状化炭化物の割合を質量%で表した数値とした場合に、
2.5≦2[Si]+[Mn]+([Cr]−7[MC]/100)/(1−[MC]/100)+3[Mo]≦3.8
を満たす。
次に、この軸受部品を構成する鋼中に添加する元素及びその含有量、並びに、酸化物系介在物の大きさを規制した理由に就いて、以下に説明する。
Cは、焼き入れによって基地に固溶し、硬さを向上させる元素である為、軸受部品に必要な硬さを確保する為に添加する。合金成分中のC量が0.85質量%未満であると、焼き入れ後の硬さが不足して、耐摩耗性や転がり疲れ寿命が低下する。そこで、Cを0.85質量%以上、含有させる。これら耐摩耗性や転がり疲れ寿命をより安定的に得る為に、好ましくは、Cの含有量を0.95質量%以上とする。一方、Cの含有量が1.15質量%を超えると、得られた軸受部品が硬くなり過ぎて、研削性の低下や破壊靭性値の低下を生じる。そこで、Cの含有量を1.15質量%以下に抑える。前記研削性をより安定させる為に、好ましくは、Cの含有量を1.10質量%以下とする。
Siは、基地に固溶して焼き入れ性及び焼き戻し軟化抵抗性を向上させる効果がある為、軸受部品に必要な硬さを確保する為に添加する。且つ、Siは、本発明の重要な目的である、介在物起点型剥離の発生を抑える効果がある。即ち、Siは、基地組織中のマルテンサイトを安定化させ、非金属介在物周辺に生じるバタフライ型組織変化を遅延させて、軸受部品に介在物起点型剥離が発生する事を抑え(遅延させ)、この軸受部品を組み込んだ転がり軸受の寿命延長に寄与する。この様な、バタフライ型組織変化遅延による寿命延長効果は、Si量が0.40質量%未満の場合には十分には得られない。一方、Siの含有量が0.90質量%を超えると、球状化焼鈍後の硬さが上昇する為、旋削性及び冷間加工性が低下する。球状化焼鈍後の硬さを適正範囲に抑え、安定した旋削性及び冷間加工性を得る為に、好ましくは、Siの含有量を、0.70質量%以下に抑える。
Mnは、基地に固溶して焼き入れ性を向上させる効果がある為、軸受部品に必要な硬さを確保する為に添加する。且つ、Mnも、上述したSiの場合と同様に、本発明の重要な目的である、介在物起点型剥離の発生を抑える効果がある。即ち、Mnも、基地組織中のマルテンサイトを安定化させ、非金属介在物周辺に生じるバタフライ型組織変化を遅延させて、軸受部品に介在物起点型剥離が発生する事を抑え、この軸受部品を組み込んだ転がり軸受の寿命延長に寄与する。更に、Mnは、熱処理後の残留オーステナイト量を生成し易くする効果がある。残留オーステナイトは、比較的粘りのある組織であり、前述した表面起点型剥離を抑えて、別の観点から、前記軸受部品を組み込んだ転がり軸受の寿命延長に寄与する。この様な効果は、Mnの含有量が0.55質量%未満の場合には、十分には得られない。一方、Mnの含有量が1.20質量%を超えると、熱間鍛造時の変形抵抗が上昇して、熱間鍛造性を低下させる。又、軸受部品を構成する鋼中の残留オーステナイトは、転がり軸受の使用に伴って少しずつ分解し、分解に伴って、僅かとは言え体積が膨張する。この為、Mnの含有量を多くする事で残留オーステナイトの量が過剰になると、前記軸受部品の形状及び寸法の安定性が低下する。そこで、この軸受部品を構成する鋼中のMnの量を、0.55〜1.20質量%の範囲とする。尚、熱間鍛造性及び寸法安定性をより安定させる為に、好ましくは、Mnの含有量を0.85質量%以下に抑える。
Crは、基地のマルテンサイト中に固溶する分と、球状化炭化物中に固溶する分とに分配される。基地のマルテンサイト中に固溶したCrは、焼き入れ性を向上させて、軸受部品表面の硬さを確保する効果がある。又、Crも、前述したSi及び上述したMnの場合と同様に、本発明の重要な目的である、介在物起点型剥離の発生を抑える効果がある。即ち、Crも、基地組織中のマルテンサイトを安定化させ、非金属介在物周辺に生じるバタフライ型組織変化を遅延させて、軸受部品に介在物起点型剥離が発生する事を抑え、この軸受部品を組み込んだ転がり軸受の寿命延長に寄与する。この様な効果は、Crの含有量が1.30質量%未満の場合には、十分には得られない。一方、Crの含有量が1.90質量%を超えると、球状化焼鈍後の硬さが上昇する為、旋削性及び冷間加工性が低下する。そこで、前記軸受部品を構成する鋼中のCrの量を、1.30〜1.90質量%の範囲とする。尚、旋削性及び冷間加工性をより安定させる為に、好ましくは、Crの含有量を1.70質量%以下とする。
Moは、基地に固溶して、焼き入れ性及び焼き戻し軟化抵抗性を向上させて、軸受部品表面の硬さを確保する効果がある。又、Moも、前述したSi、Mn及び上述したCrの場合と同様に、本発明の重要な目的である、介在物起点型剥離の発生を抑える効果がある。即ち、Moも、基地組織のマルテンサイトを安定化させ、非金属介在物周辺に生じるバタフライ型組織変化を遅延させて、軸受部品に介在物起点型剥離が発生する事を抑え、この軸受部品を組み込んだ転がり軸受の寿命延長に寄与する。但し、Moの含有量が0.30質量%を超えると、Moの一部が硬い炭化物を形成し、研削性を低下させる。又、非常に高価な元素である為、前記軸受部品を含む転がり軸受の製造コストを高くする原因となる。そこで、Moの含有量を0.30質量%以下とした。好ましくは、Moの含有量を0.15質量%以下とする。尚、Moの含有量の下限値は、製造コストの面から規制するが、0.01質量%以上とする事が好ましい。
Niは、焼き入れ性を向上させる効果とオーステナイトを安定化させる効果とを持つ元素であり、更に、多量に添加すると靱性が向上する。但し、非常に高価な元素である為、前記軸受部品を含む転がり軸受の製造コストを高くする原因となる。そこで、Niに関しては、積極的には添加せず、その含有量を0.30質量%以下とした。好ましくは、Niの含有量を0.18質量%以下とする。尚、Niの含有量の下限値は、製造コストの面から規制するが、0.01質量%以上とする事が好ましい。
Cuは、焼き入れ性を向上させる効果と、粒界強度を向上させる効果とがある。但し、Cuの含有量が多くなると熱間鍛造性が低下する。そこで、Cuに関しては、積極的には添加せず、その含有量を0.20質量%以下とした。但し、Cuに関しては、添加する事による利点もあるので、好ましくは0.01質量%以上添加する。
Sは、MnSを形成し、介在物として作用する為、鋼中に含まれるS量は少ない程良い。但し、Sは自然界に多く存在する元素であり、Sの含有量を極端に少なく抑えようとすると、鋼材の生産性が低下し、鋼材の製造コストが上昇する為、工業上広く利用する事が難しくなる。一方、Sを0.025質量%程度含んでも、他の元素の含有量及び熱処理方法を適切にする事で、軸受部品に必要とされる耐久性を確保できる。そこで、Sの含有量の上限値を0.025質量%とした。
Pは、結晶粒界に偏析して、粒界強度や破壊靱性値を低下させるので、少ない程良い。但し、Pも自然界に多く存在する元素であり、Pの含有量を極端に少なく抑えようとすると、鋼材の製造コストが上昇する。一方、Pを0.020質量%程度含んでも、他の元素の含有量及び熱処理方法を適切にする事で、軸受部品に必要とされる耐久性を確保できる。そこで、Pの含有量の上限値を0.020質量%とした。
Oは、鋼中でAl2O3等の酸化物系の非金属介在物を形成する。酸化物系の非金属介在物は、剥離の起点となり、転がり疲れ寿命に悪影響を及ぼすので、Oの含有量は少ない程良い。但し、Oに関しても、含有量を極端に少なくすると鋼材コストが上昇するのに対して、Oを15質量ppm程度含んでも、他の元素の含有量及び熱処理方法を適切にする事で、軸受部品に必要とされる耐久性を確保できる。そこで、Oの含有量の上限値を15質量ppmとした。
本発明でこの平方根の値を規定する為に利用した極値統計法は、正規分布、指数分布、対数分布等に従う集合に対して、最大値及び最小値等の極値を予測する手法であり、鋼中に含まれる非金属介在物の最大径を予測する手法として有効である。又、転がり軸受を構成する軸受部品の鋼中に存在する非金属介在物による介在物起点型剥離に於いては、極値統計法で予測した最大介在物径と転がり疲れ寿命との間に良い相関が見られる。特に、酸化物系の非金属介在物は、寿命に最も悪影響をもたらす事が知られている。
本発明により抑えようとする介在物起点型の剥離は、前述した通り、バタフライ型の組織変化部分の界面に沿った、金属疲労による亀裂の進展として生じる。又、このバタフライ型の組織変化は、先に述べた通り、酸化物系介在物周辺の応力集中によって生じる大きな剪断応力が、基地のマルテンサイト組織に繰り返し負荷される事によって、マルテンサイト組織中の転位と固溶炭素とが動かされ、超微細なフェライト組織に変化する現象である。基地組織の硬さを向上させる事は、基地組織に剪断応力が加わった場合にも、マルテンサイト組織中で転位と固溶炭素とを動きにくくし、バタフライ型の組織変化が生じるのを遅延させる効果がある。硬さがHv697未満であると、上記の効果が不足する事によって、バタフライ型組織変化が生じ易くなり、転がり疲れ寿命が低下する。一方、硬さがHv800を超えると、軸受部品の研削性と破壊靱性値との低下が生じる。そこで、硬さの値をHv697〜Hv800の範囲に規制した。この硬さが、表面から芯部までほぼ同じである事は、前述した通りである。
[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]を、前記軸受部品を構成する鋼中への各合金成分の含有量を質量%で表した数値とし、[MC]を、焼き入れ・焼き戻し後の鋼中に残存している球状化炭化物の割合を質量%で表した数値とした場合に、
2.5≦2[Si]+[Mn]+([Cr]−7[MC]/100)/(1−[MC]/100)+3[Mo]≦3.8
を満たす点に関して。
この点を説明する為に、前記不等式中の「2[Si]+[Mn]+([Cr]−7[MC]/100)/(1−[MC]/100)+3[Mo]」で表される値を「算出値」とする。
鋼中に含まれる残留オーステナイトは、基地組織であるマルテンサイトに比べて軟質である為、鉄粉等の硬質の異物を噛み込む事で生じる圧痕の縁部分の応力集中を緩和する。そして、この圧痕の縁部分を起点とした亀裂の発生を抑制でき、表面起点型剥離寿命を延長する効果がある。本発明と組み合わせてこの様な効果を十分に得る為には、残留オーステナイト量を11容量%以上とする事が好ましい。前述した様に、本発明は介在物起点型剥離を抑える事を意図しており、上述の様な残留オーステナイト量を確保する事による表面起点型剥離寿命が介在物起点型剥離寿命以上である事が好ましい。鋼中の残留オーステナイトの量が11容量%未満の場合には、介在物起点型剥離よりも、表面起点型剥離が先に生じてしまう可能性が高くなる。これに対して、残留オーステナイト量が20容量%を超えると、前述した様な理由により、形状安定性及び寸法安定性が低下する。
但し、本発明を実施する場合、残留オーステナイト量を、必ずしも11容量%以上にする必要はない。例えば、残留オーステナイトの分解が進み易い、高温条件下で使用する転がり軸受に本発明を適用する場合には、形状安定性及び寸法安定性を重視して、残留オーステナイト量を11容量%未満にして使用する事が好ましい場合もある。
本発明の転がり軸受を実施する場合に於いて、特許請求の範囲に記載した条件を満たす軸受部品が軌道輪である場合には、素材に熱間加工と旋削加工とを順次施して、当該部品の形状を軌道輪の完成形状に近づけて中間素材とした後、この中間素材に焼き入れ及び焼き戻し処理を施して第二中間素材とする。その後、この第二中間素材のうちで、少なくとも軌道面部分に研削加工を施して、完成形状に仕上げる。前述した硬さ、残留オーステナイト量、及び残存する球状化炭化物の割合は、特許請求の範囲に記載した条件を満たす鋼材を使用し、更に、焼き入れ・焼き戻し条件を適正に規制する事によって実現できる。
但し、先に述べた様に、本発明を高温条件下で使用する転がり軸受に本発明を適用する場合には、形状安定性及び寸法安定性を重視して、200℃以上、290℃以下の温度で焼き戻しを行い、残留オーステナイト量を11容量%未満にしても良い。
本発明の転がり軸受は、深溝型玉軸受、アンギュラ型玉軸受、スラスト玉軸受等の玉軸受、円筒ころ軸受や円すいころ軸受、自動調心ころ軸受等のころ軸受、或いはニードル軸受等、転がり軸受の型式に制限されず適用可能である。このうち、最も一般的な玉軸受の場合には、軌道輪の軌道溝形状を、下記の様に規制する事が、玉軸受の耐久性確保と低トルク化との両立を図る面から好ましい。
玉の直径に対する軌道溝の曲率半径の比は、一般的には51〜52%程度であるが、本発明の転がり軸受の場合には、玉の直径に対する軌道溝の曲率半径の比を53%以上、54%以下にした場合でも、一般的な鋼で造られた玉の直径に対する軌道溝の曲率半径の比52%の軸受と同様の寿命が得られる。
これらの事を考慮すれば、本発明を玉軸受として実施する場合に、前記各玉の直径に対する前記軌道溝の曲率半径の比を、53%以上、54%以下にする事が好ましい(請求項3に記載した発明)。
[旋削性評価試験]
この表1に示す組成を有する鋼材を用いて、球状化焼鈍を行った後、旋削試験を行った。この旋削試験は、切削工具(バイト)により棒材の外周を20分間旋削した後、この切削工具の逃げ面の摩耗量を測定する事によって行った。試験条件を下記に示す。
切削工具 : 超硬(P20)
被切削部の周速 : 150m/min
切り込み量 : 1.0mm
切削工具の送り速度 : 0.2mm/rev
潤滑条件 : 乾式
一方、比較例1はSi量が、比較例3はCr量が、それぞれ本発明で規定するよりも高い為、旋削試験に於ける工具の逃げ摩耗量が大きく、旋削性が劣る。
前記表1に示した組成を有する鋼材を用いて、球状化焼鈍を行った後、直径60mm、厚さ6mmの円板試験片を作製した。それらを、前記表2の「焼き入れ温度」、「焼き戻し温度」の欄にそれぞれ記載した温度により、焼き入れ・焼き戻し処理した後、表面の硬さをビッカース硬度計で測定した。又、残留オーステナイト量(残留γ)も測定した。焼き入れ時の保持時間は40min、焼き戻し時の保持時間は2hrである。この様な熱処理条件は、SUJ2の熱処理条件とほぼ同じである。測定結果を、前記表2の「硬さ」の欄及び「残留γ」の欄に示す。
一方、比較例2は、Mn量が本発明で規定するよりも高い為、残留オーステナイト量が高い。従って、転がり軸受として長時間使用する際には、十分な形状安定性及び寸法安定性を得られない。
又、比較例9は、実施例5と同じ鋼材Eを使用しているが、焼き入れ温度の相違により、硬さが本発明で規定する範囲より高い為、軸受部品の研削性及び破壊靱性値確保の面から不利になる。
又、比較例10は、実施例7と同じ鋼材Gを用いているが、焼き入れ温度の相違により、硬さが本発明で規定する範囲よりも低い為、転がり疲れ寿命確保の面から不利になる。
又、酸化物系介在物の観察も行い、極値統計法によって、30000mm2中に含まれる最大の酸化物系介在物の大きさを予測した。予測した最大の酸化物系介在物の面積の平方根の値を、前記表2の酸化物系介在物最大径の欄に記載した。
前記表1に記載した組成を有する鋼材を用いて、呼び番号が6206である単列深溝型の玉軸受(内径30mm、外径62mm、幅16mm)の内輪及び外輪を、以下の工程で造った。先ず、鋼材に球状化焼鈍を施して中間素材としてから、この中間素材に旋削加工及び焼き入れ・焼き戻しを施して第二中間素材とし、最後にこの第二中間素材に研削加工を施して最終形状とした。研削加工後の軌道溝(内輪軌道及び外輪軌道)の表面粗さを測定する事によって、研削性の評価とした。表面粗さの測定は、算術平均粗さRaを指標として、内輪軌道及び外輪軌道の表面のうちで、軸方向に離隔した3箇所位置ずつを測定して(各試料毎に6種類ずつの測定値の)平均値を求めた。この様にして求めた表面粗さに関する測定結果を、前記表2の「溝粗さ」の欄に記載した。
一方、比較例4は、Moの含有量が本発明で規定する範囲よりも高い為、軌道溝の表面粗さが大きく(悪く)、研削性に劣る事が分かった。
又、比較例8は、算出値が本発明で規定する範囲よりも高い為、軌道溝の表面粗さが悪く、研削性に劣る事が分かった。
又、比較例9は、硬さが本発明で規定する範囲よりも高い為、軌道溝の表面粗さが悪く、研削性に劣る事が分かった。
上述した軸受試作試験で述べた様にして造った、呼び番号が6206である玉軸受の内輪と外輪との間に、SUJ2製の玉(直径9.525mm)を組み込み、ポリアミド樹脂製の冠型保持器により保持して、それぞれ試験軸受とした。
寿命試験条件は下記の通りである。各実施例及び各比較例で、それぞれ4〜8個ずつの玉軸受で寿命試験を実施し、累積破損確率が10%となる寿命(L10寿命)を求めた。
ラジアル荷重 : 13818N
回転速度 : 3900min−1
回転条件 : 内輪回転
潤滑油 : ISO−VG68相当の鉱油(強制循環方式)
尚、先に述べた各試験、旋削評価試験で不良と判定された比較例1、3と、熱処理試験で不良と判定された比較例2と、軸受試作(研削性)試験で不良と判定された比較例4、8、9に関しては、軸受寿命試験を省略した。
又、比較例7は、極値統計で予測した酸化物系介在物の大きさが本発明で規定する範囲より大きく、内輪或いは外輪のうちで、剥離が生じた方の軌道輪の軌道面直下に大きな酸化物系介在物が存在すると推定される。介在物の大きさが大きいと、バタフライ型組織変化が生じる過程を経ずに、酸化物系介在物から直接疲労亀裂が発生してしまう為、組成を変えた効果が得られず、寿命が短い。
更に、比較例10は、本発明で規定する範囲より硬さが低い。その為に、酸化物系介在物周辺の応力集中によって、バタフライ型組織変化が生じ易く、寿命が短い。
又、図4の(A)に、比較例5の剥離部の近傍に観察された酸化物系非金属介在物を示す。又、図4の(B)に、実施例2の剥離部近傍に観察された酸化物系非金属介在物を示す。何れの場合も、酸化物系介在物の周辺に、白く見えるバタフライ型の組織変化が発生している。但し、前記比較例5(算出値=2.4)と前記実施例2(算出値=3.8)とでは、酸化物系非金属介在物の大きさは同程度であるが、この酸化物系非金属介在物の周囲に発生したバタフライ型組織変化部は、実施例2が比較例5よりも小さく、組織変化が遅延していると推測される。
2、2a 外輪軌道
3、3a 外輪
4、4a 内輪軌道
5、5a 内輪
6 玉
7、7a 保持器
8 ラジアル円すいころ軸受
9 円すいころ
10 大径側鍔部
11 小径側鍔部
Claims (3)
- 何れかの面に第一の軌道面を有する第一の軌道輪と、この第一の軌道面と対向する面に第二の軌道面を有する第二の軌道輪と、これら第一、第二の両軌道面同士の間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えた転がり軸受に於いて、
前記第一の軌道輪と前記第二の軌道輪とこれら各転動体とのうちの少なくとも1種の部材である軸受部品が、
Cを0.85〜1.15質量%、Siを0.40〜0.90質量%、Mnを0.55〜1.20質量%、Crを1.30〜1.90質量%、Moを0.30質量%以下、Niを0.30質量%以下、Cuを0.20質量%以下、Sを0.025質量%以下、Pを0.020質量%以下、Oを15質量ppm以下、それぞれ含有し、残部をFeと不可避的不純物とし、
極値統計法により、面積30000mm2に存在する酸化物系介在物の大きさに関する最大値を予測した場合に、最大の酸化物系介在物の面積の平方根が22μm以上50μm以下である鋼から成り、
焼き入れ・焼き戻し後の硬さが、Hv697〜800であり、
[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]を、前記鋼中への各合金成分の含有量を質量%で表した数値とし、[MC]を、焼き入れ・焼き戻し後の鋼中に残存している球状化炭化物の割合を質量%で表した数値とした場合に、
2.5≦2[Si]+[Mn]+([Cr]−7[MC]/100)/(1−[MC]/100)+3[Mo]≦3.8
を満たす事を特徴とする転がり軸受。 - 請求項1の条件を満たす鋼により造られた部材の鋼中の残留オーステナイト量が、11容量%〜20容量%である、請求項1に記載した転がり軸受。
- 前記第一、第二の軌道面が母線形状が部分円弧形の軌道溝の表面であり、前記各転動体が玉であり、これら各玉の直径に対するこの軌道溝の曲率半径の比が53%以上、54%以下である、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012115251A JP5998631B2 (ja) | 2012-05-21 | 2012-05-21 | 転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
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