以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
先ず、図1を参照し、本発明に係る液体吐出装置の第1実施形態としてのインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部101cから排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って記録媒体である用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像記録と、用紙Pの排紙部31への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのインクジェットヘッド1(以下、ヘッド1と称す)に対してインクが供給される。
空間Aには、ブラックインクを吐出するヘッド1、搬送機構8、キャップ機構40、用紙センサ32、加湿動作に用いられる加湿機構50(図5参照)、及び、制御装置100等が配置されている。
ヘッド1は、主走査方向を長手方向とし、長尺な略直方体形状を有する(図2参照)。ヘッド1は、ヘッドホルダ13を介して筐体101aに支持されて、プラテン6と所定の間隙で対向する。ヘッド1は、ヘッド本体3(図2参照)に加えて、リザーバユニット、フレキシブルプリント配線基板(FPC)、回路基板等が積層された積層体である。上流側流路部材としてのリザーバユニットには、リザーバを含む上流側インク流路(ともに不図示)が形成されており、カートリッジ4からインクが供給される。
下流側流路部材としての流路ユニット9は、アクチュエータユニット21と共にヘッド本体3を構成し、上面のインク供給口105bからリザーバユニットのインクが供給される。流路ユニット9の下面は、吐出面1aであり、複数の吐出口108(図4参照)が形成されている。吐出口108からは、アクチュエータユニット21の駆動により、インクが吐出される。
回路基板は、制御装置100からの信号を調整する。出力信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、さらにヘッド本体3のアクチュエータユニット21に出力される。アクチュエータユニット21は、駆動信号が供給されると、変形して流路ユニット9内のインクに圧力を加える。ヘッド1については、後に詳述する。
ヘッドホルダ13には、ヘッド1に加えて、キャップ機構40を構成する区画部材41が取り付けられている。区画部材41は、ヘッド1に配設された環状部材であって、主走査方向を長手方向とし、平面視でヘッド1を内包する。キャップ機構40については後に詳述する。
搬送機構8は、用紙Pをガイドする2つのガイド部5a,5bとプラテン6とを含み、用紙搬送経路を構成する。2つのガイド部5a,5bは、プラテン6を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部5aは、3つのガイド18aと3つの送りローラ対22〜24とを有し、給紙部101cとプラテン6とを繋ぐ。画像記録用の用紙Pが、プラテン6に向けて搬送される。搬送方向下流側のガイド部5bは、3つのガイド18bと4つの送りローラ対25〜28とを有し、プラテン6と排紙部31とを繋ぐ。画像記録後の用紙Pが、排紙部31に向けて搬送される。
プラテン6は、画像記録に際して、搬送される用紙Pを下から支える。また、プラテン6は、平面視において、区画部材41よりも一回り大きく、矩形平面形状を有する平板である。
用紙センサ32は、送りローラ対24の搬送方向上流側に配置され、搬送される用紙Pの先端を検知する。このとき出力された検知信号は、同期したヘッド1及び搬送機構8の駆動に用いられ、所望の解像度と速度で画像が記録されることになる。
加湿機構50は、キャップ状態(区画状態)及びアンキャップ状態(開放状態)の吐出口108に加湿空気を供給する。加湿機構50は、加湿空気の生成部と、供給部と、排出部とから構成される。生成部では、加湿空気が生成され、供給部に向けて送り出される。供給部では、加湿空気の供給を受けて、吐出口108の加湿が行われる。排出部では、吐出口108近傍から空気の排出が行われる。生成部は、図5に示すように、配管53,54に加え、タンク57及びポンプ58を含む。供給部は、図2に示すように、供給パイプ60を含む。排出部は、排出パイプ80を含む。タンク57は、加湿空気の生成源である。加湿動作に際してポンプ58が駆動され、加湿空気が、配管53,54を介して、供給パイプ60から吐出口108近傍に供給され、排出パイプ80から空気が排出される。
加湿機構50は、図2(b)、及び図5に示すように、供給口部65及び排出口部85を含む。供給口部65及び排出口部85は、吐出空間S1(吐出面1aとプラテン6とで挟まれる隙間)に連通し、吐出面1aと直交する方向から見たときに、副走査方向(ヘッド1の短手方向)に関して複数の吐出口108を挟んで配置される。また、供給口部65は、搬送方向D(図1中矢印D方向)に関してヘッド本体3の上流側側面1S1に沿って長手方向に延びる。排出口部85は、搬送方向Dに関してヘッド本体3の下流側側面1S2に沿って長手方向に延びる。加湿機構50は、供給口部65に加湿空気を供給するとともに、排出口部85から吐出空間S1の空気を排出する。
図1に戻って、空間Bには、給紙部101cが配置されている。給紙部101cは、給紙トレイ35及び給紙ローラ36を有する。このうち、給紙トレイ35が、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ35には、複数の用紙Pが収納される。給紙ローラ36は、給紙トレイ35内で最も上方の用紙Pを送り出す。
給紙トレイ35には、主走査方向の長さが異なる複数サイズの用紙Pを収容可能なように、スライド式のガイド(図示せず)が取り付けられている。このガイドは用紙Pの搬送方向に平行な一対の用紙規制壁35a(図3参照)を有しており、ユーザがその一方を主走査方向に変位させると、他方は連動して逆方向に同じ距離だけ変位する。一対の用紙規制壁35aを隔てる空間の主走査方向に関する中心位置は、これら用紙規制壁35aの位置に拘わらず、ヘッド1(吐出面1a)の主走査方向に関する中心位置(中心点Qを通る位置:図2(b)参照)と一致している。つまり、ユーザがこの用紙規制壁35aをスライドさせることによって、図3に示すように、用紙Pの主走査方向に関する中心が、いずれのサイズの用紙Pについてもヘッド1に対して同じ位置となる。
変形例として、ガイドがスライド式ではなく、主走査方向に関する間隔が互いに異なり且つ一対の用紙規制壁の中心がヘッド1の主走査方向に関する中心位置と一致するように用紙規制壁が固定された複数の給紙トレイが設けられていてもよい。
ここで、副走査方向とは、用紙Pが送りローラ対24,25によって搬送される搬送方向Dと平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ4が、筐体101aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジ4は、ヘッド1にチューブ(不図示)及びポンプ(不図示)を介して接続されている。なお、ポンプは、ヘッドにインクを強制的に送るとき(すなわち、パージ時やインクの初期導入時)に駆動される。これ以外は停止状態にあり、ポンプはヘッド1へのインク供給を妨げない。
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、例えば、画像記録動作、メンテナンス動作等を制御する。画像記録動作では、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)からの記録指令(画像データ)に基づいて、給紙部101c、ガイド部5a、5b(搬送機構8)、ヘッド1等を駆動する。具体的には、用紙Pが、給紙トレイ35から送り出され、ヘッド1に対向する記録領域に送られる。記録領域では、用紙センサ32からの検知信号に同期して、ヘッド1が駆動される。用紙Pがヘッド1の真下を通過する際、インクが吐出されて、所望の画像が記録される。用紙Pは、さらに搬送されて、筐体101a上部の排紙部31に排出される。
また、メンテナンス動作としては、定期的に、あるいはユーザの求めに応じて、インク排出動作(パージ動作とフラッシング動作)、キャッピング動作、及び、加湿動作等が実行される。いずれも、ヘッド1のインク吐出特性の維持・回復を目的とする。
例えば、インク排出動作では、吐出口108から、増粘したインクが排出される。パージ動作では、アクチュエータを駆動せずにポンプを駆動して圧力を加え、ヘッド1からインクが強制的に排出される。強制排出後は、吐出面1aのクリーニング(払拭動作)が行われる。フラッシング動作では、アクチュエータが駆動され、ヘッド1から所定量のインク滴が吐出される。アクチュエータの駆動は、フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づく。
キャッピング動作は、ヘッド1の休止時に行われ、図5(a)に示すように、区画部材41が外部空間S2から吐出空間S1を区画する。このとき、複数の吐出口108は、閉ざされた吐出空間S1にのみ連通する。これにより、吐出口108から、水分の散逸する経路が閉じられるので、インクの増粘や乾燥が抑制される。
加湿動作には、キャッピング動作中の休止中加湿動作と、画像記録動作中の記録中加湿動作とが含まれる。休止中加湿動作では、図5(a)に示すように、区画された吐出空間S1に対して供給口部65から加湿空気が供給され、排出口部85から内部の空気が排出される。このとき、吐出空間S1内には、水蒸気が充満するので、吐出口108の乾燥がさらに抑制される。休止中加湿動作は、キャッピング動作が行われている期間のうちの、或る所定期間の間のみ行われる。記録中加湿動作では、図5(b)に示すように、外部空間S2に開放された吐出空間S1に対して供給口部65から加湿空気が供給され、排出口部85から当該吐出空間S1の空気が排出される。このとき、加湿空気が吐出口108に供給されることで、吐出口108の乾燥が抑制される。
次に、図2、図4及び図6を参照して、ヘッド1について説明する。図4(a)では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、及び吐出口108を実線で描いている。
ヘッド本体3は、図2(a)に示すように、流路ユニット9の上面9aに4つのアクチュエータユニット21が固定された積層体である。上面9aには、図4(a)に示すように、複数の圧力室110が開口しマトリクス状に配置されている。各アクチュエータユニット21は、図4(c)に示すように、これら開口を封止し、圧力室110の側壁を構成する。
流路ユニット9は、図4(b)に示すように、9枚のステンレス製プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の内部には、インク流路が形成されている。インク流路は、図2及び図4に示すように、上面9aのインク供給口105bを一端とし、副マニホールド流路105aに分岐するマニホールド流路105、及び、副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て下面の吐出口108に至る個別インク流路132を含む。吐出面1aには、図2(b)に示すように、複数の吐出口108が圧力室110に対応してマトリクス状に配置されている。これら吐出口108は、主走査方向に関して、この方向の解像度である600dpiの間隔で配列されている。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図2(a)に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有している。これら4つのアクチュエータユニット21は、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に沿って、千鳥状に配置されている。
アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックスであり、図4(c)に示すように、3枚の圧電層141〜143から構成されている。最上層の圧電層141は、上面に複数の個別電極135が形成され、厚み方向に分極されている。圧電層142は、上面に共通電極134が全体的に形成されている。そして、個別電極135と圧力室110で挟まれた部分が、個別のユニモルフ型アクチュエータとして働く。個別電極135及び共通電極134間に分極方向の電界が生じると、アクチュエータ部分が圧力室110に向かって突出(ユニモルフ変形)する。このとき、圧力室内のインクが加圧され、吐出口108からインク滴が吐出される。ここで、共通電極134は、常にグランド電位にある。また、駆動信号は、個別電極135に選択的に供給される。
本実施形態では、インクの吐出に際して、引き打ち法が採用されている。個別電極135は、予め所定の電位にあり、アクチュエータはユニモルフ変形している。駆動信号が供給されると、個別電極135は、一旦共通電極134と同電位となり、所定時間後に所定電位に復帰する。同電位となるタイミングで、アクチュエータがユニモルフ変形を解消して、圧力室110にインクが吸い込まれる。電位の復帰タイミングで、アクチュエータが再びユニモルフ変形して、吐出口108からインク滴が吐出される。
図2及び図6に示すように、ヘッド本体3の外周側面には、サイドカバー70が設けられている。サイドカバー70は、ヘッド本体3の全周を取り囲み、樹脂製の環状部材である。サイドカバー70は、流路ユニット9及びリザーバユニットの両側面に跨って固定されている。サイドカバー70は、主走査方向に沿う一対の長尺部71と、副走査方向に沿う一対の短尺部72とで構成される。一対の短尺部72が一対の長尺部71を繋いでいる。
一対の長尺部71は、加湿空気が出入りする入口部及び出口部を有する。入口部は、図2(a)中、上側であって、搬送方向Dに関して上流側に設けられている。加湿空気が、入口部から吐出空間S1に流入する。入口部は、上流側長尺部71を上下(吐出面1aに直交する方向)に貫通する貫通孔71aと、貫通孔71aに挿通された供給パイプ(後述)60とから構成される。出口部は、図2(a)中、下側であって、搬送方向Dに関して下流側に設けられている。吐出空間S1の空気が、出口部から排出される。出口部は、下流側長尺部71を上下に貫通する貫通孔71bと、貫通孔71bに挿通された排出パイプ(後述)80とから構成される。貫通孔71a,71bは、吐出面1aの中心点Qについて点対称に配置されている。
次に、図6を参照し、ヘッドホルダ13及びキャップ機構40の構成について説明する。
ヘッドホルダ13は、金属等からなる剛体の枠状フレームであり、ヘッド本体3の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ13には、キャップ機構40の区画部材41が取り付けられている。
ここで、ヘッドホルダ13とヘッド本体3との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。また、ヘッドホルダ13と区画部材41との当接部も、全周に亘って接着剤で固定されている。ヘッドホルダ13には、貫通孔71a,71bに対応して、貫通孔13a,13bが形成されている。それぞれ供給パイプ60及び排出パイプ80が挿通されている。
キャップ機構40は、区画部材41、区画部材41を昇降させるキャップ昇降機構48、及び、プラテン(対向部材)6を含む。区画部材41は、プラテン6及び吐出面1aとともに、サイドカバー70及び吐出空間S1(吐出口108)を内包可能で、主走査方向に長い。区画部材41は、図6に示すように、リップ部材42、可動体43及びダイアフラム44を含む。
リップ部材42は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド1を囲んでいる。つまり、リップ部材42は、サイドカバー70の外側に配置されている。リップ部材42は、基部42x、及び、基部42xの下面から突出した突出部42aを含む。このうち、突出部42aは、断面が三角形であり、先端はプラテン6に当接する。基部42xの上面には、可動体43が固定されている。可動体43は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなる。
ダイアフラム44も、ゴム等の可撓性を有した環状薄膜部材からなり、平面視でヘッド1を囲む。ダイアフラム44は、外周端がリップ部材42と一体に繋がり、内周端部に密着部44aが形成されている。密着部44aの内側側面は、サイドカバー70の外周側面に固定され、上面はヘッドホルダ13の下面に固定されている。
キャップ昇降機構(リップ移動機構)48は、複数のギア45、及び昇降モータ(不図示)を有している。複数のギア45は可動体43と接続されている。制御装置100による制御の下、昇降モータが駆動されると、ギア45が回転して可動体43が昇降する。基部42xも、共に昇降する。これにより、突出部42aの先端と吐出面1aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。
リップ部材42の先端(突出部42a)は、可動体43の昇降に伴って、プラテン6の表面6aに当接する当接位置(図5(a)に示す位置)と、表面6aから離隔した離隔位置(図5(b)及び図6に示す位置)とを選択的に取る。当接位置は、リップ部材42がプラテン6に当接可能な位置である。リップ部材42が表面6aに当接されると、区画部材41、吐出面1a及びプラテン6により吐出空間S1が外部空間S2から区画された区画状態となる。このようにプラテン6は、キャップ機構40の一部を構成する。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2から開放された開放状態となる。なお、離隔位置にあっては、リップ部材42の先端は、用紙Pの搬送を妨げない程度に、吐出面1aよりも若干下方に位置する。
次に、加湿機構50の構成について説明する。加湿機構50は、上述のように、供給部(供給パイプ60)、排出部(排出パイプ80)、生成部(配管53,54、タンク57及びポンプ58)などを含む。
まず、供給部(供給パイプ60)について説明する。供給パイプ60は、加湿空気に対する入口部を構成する。供給パイプ60は、図6に示すように、互いに連通した第1供給パイプ61及び第2供給パイプ63を含む。加湿空気は、第1供給パイプ61に流入した後、第2供給パイプ63を経て吐出空間S1に供給される。
第1供給パイプ61は、鉛直方向に延在する。第1供給パイプ61は、上流側長尺部71の貫通孔71aに加え、ヘッドホルダ13の貫通孔13aにも挿通され、露出された先端部に配管54が接続されている。第1供給パイプ61と各貫通孔13a、71a間には、若干の隙間があるが、シール材等で充填されている。
第2供給パイプ63は、図6(c)に示すように、上面が上流側長尺部71の下面に接着されており、リップ部材42とヘッド1の上流側側面1S1との間に配置されている。第2供給パイプ63は、図6(a)に示すように、主走査方向に延在し、一端が第1供給パイプ61に接続され、他端は閉口部である。
第2供給パイプ63の下面には、ヘッド1の上流側側面1S1に沿って延在する供給口部65が形成されている。供給口部65は、第2供給パイプ63に形成された複数の供給穴65aの開口(供給口)から構成されている。これら供給穴65aは、主走査方向に沿って配列されており、第2供給パイプ63の内部と連通し、供給流路を構成する。加湿空気は、吐出空間S1に対して、各供給穴65a(開口)から均等に供給される。また、図2(b)に示すように、主走査方向に関して、最も外側にある2つの供給穴65aは、吐出面1aの最も外側にある2つの吐出口108よりも外側にある。つまり、供給口部65は、最も外側にある2つの吐出口108の間隔以上の長さを有している。なお、第2供給パイプ63は、全体に吐出面1aよりもプラテン6から上方にあり、用紙Pの搬送を妨げない。
供給穴65aは、図6(c)に示すように、第2供給パイプ63のヘッド側下部に形成され、その開口が吐出空間S1(隙間)と対向している。これにより、供給穴65aから供給された加湿空気が、搬送方向下流側に効果的に流れる。このため、複数の吐出口108の乾燥をより抑制することが可能となる。
第2供給パイプ63内の空気に対する流路抵抗は、加湿空気の流れの方向(図6中右側方向)に関して、上流側から下流側に向かうほど小さくされている。本実施形態においては、図2(b)及び図6(b)に示すように、供給穴65aの開口面積が、上流側から下流側に向かうほど大きい。これにより、略均等量の加湿空気が、各供給穴65aから流出される。変形例として、第2供給パイプ63内の流路の断面積を流れの方向に関して、上流側から下流側に向かうほど大きくしてもよい。
これら供給穴65aは、図2(b)及び図6(b)に示すように、主走査方向に関して、互いに隣接する2つの開口(供給口)の離隔距離が、中央から外側に向かうに連れて小さくなるように配置されている。これにより、主走査方向に関して、供給穴65aの開口の数が中央よりも外側の方が多くなる。このため、主走査方向に関して、吐出空間S1の中央よりも外側の方に多くの加湿空気が確実に供給される。
次に、排出部(排出パイプ80)について説明する。排出パイプ80は、加湿空気に対する出口部を構成する。排出パイプ80も、互いに連通した第1排出パイプ81及び第2排出パイプ83を含む。吐出空間S1の空気は、第2排出パイプ83に流入した後、第1排出パイプ81を経て、生成部に排出される。これら第1及び第2排出パイプ81,83は、第1及び第2供給パイプ61,63と同様な構成であり、吐出面1aの中心点Qに対して点対称に配置されている。
具体的には、第1排出パイプ81は、鉛直方向に延在し、貫通孔71b、貫通孔13bに挿通され、露出された先端部に配管53が接続されている。第2排出パイプ83は、上面が下流側長尺部71の下面に接着されており、リップ部材42とヘッド1の下流側側面1S2との間に配置されている。第2排出パイプ83は、主走査方向に延在し、一端が第1排出パイプ81に接続され、他端は閉口部である。
第2排出パイプ83の下面には、下流側側面1S2に沿って延在する排出口部85が形成されている。排出口部85は、第2排出パイプ83に形成された複数の排出穴85aの開口(排出口)から構成されている。これら排出穴85aは、主走査方向に沿って配列されており、第2排出パイプ83の内部と連通し、排出流路を構成する。吐出空間S1の空気は、各排出穴85a(開口)から排出される。
図2(b)に示すように、主走査方向に関して、最も外側にある2つの排出穴85aは、吐出面1aの最も外側にある2つの吐出口108よりも外側にある。つまり、排出口部85も、最も外側にある2つの吐出口108の間隔以上の長さを有している。なお、第2排出パイプ83も、全体に吐出面1aよりもプラテン6から上方にあり、用紙Pの搬送を妨げない。
排出穴85aは、図6(c)に示すように、第2排出パイプ83のヘッド側下部に形成され、その開口が吐出空間S1と対向している。これにより、吐出空間S1の空気を排出しやすくなる。
第2排出パイプ83内の空気に対する流路抵抗は、加湿空気の流れの方向(図2(b)中下方向)に関して、上流側から下流側に向かうほど大きくされている。本実施形態においては、排出穴85aの開口面積が、上流側(図中上側)から下流側(図中下側)に向かうほど小さい。これにより、略均等量の空気が、各排出穴85aから排出される。変形例として、第2排出パイプ83内の流路の断面積を流れの方向に関して、上流側から下流側に向かうほど小さくしてもよい。
これら排出穴85aも、主走査方向に関して、互いに隣接する2つの開口(排出口)の離隔距離が、中央から外側に向かうに連れて小さくなるように配置されている。これにより、主走査方向に関して、排出穴85aの開口の数が中央よりも外側の方が多くなる。このため、主走査方向に関して、吐出空間S1の中央よりも外側の方から空気が排出される。
次に、生成部(タンク57、ポンプ58等)について説明する。配管53,54は、全体として、加湿空気の生成源(タンク57)と供給部及び排出部との間で循環経路を構成する。図5に示すように、配管53は、一端が排出パイプ80に接続され、他端がタンク57に接続されている。途中部には、ポンプ58が介挿されている。配管54は、一端がタンク57に接続され、他端が供給パイプ60に接続されている。
タンク57は、下部空間に加湿用の水を貯留し、上部空間には加湿された加湿空気を貯蔵している。配管53が、タンク57の下部空間(水中)と連通し、配管54が、タンク57の上部空間と連通している。配管53のタンク57近傍には、図示しない逆止弁が取り付けられており、タンク57からの水の流出を防いでいる。なお、タンク57内の水が少なくなった場合には、図示しない水補給タンクより水がタンク57に補給される。
続いて、プリンタ101のキャッピング動作、及び休止中加湿動作の一連の流れについて説明する。プリンタ101は、画像記録動作を休止する際、キャッピング動作に加え、加湿動作を行う。
キャッピング動作が実行されると、区画部材41内において、ヘッド1の短手方向(副走査方向)に加湿空気の経路が形成される。制御装置100の制御の下、図5(a)に示すように、リップ部材42が当接位置とされる。区画部材41が、吐出空間S1を外部空間S2から区画する。
ここで、区画状態(キャップ状態)が続くと、吐出口108近傍のインクが乾燥することがある。また、プリンタ101の使用が長期間に及ぶと、区画部材41の内壁は、インクミストやインク自体の不慮の付着等により、汚染される虞がある。こうした残留インクは、乾燥すると、乾燥剤(水分の吸収源)として機能するようになり、区画状態での乾燥を助長する。
そこで、本実施の形態では、供給口部65及び排出口部85が、ヘッド1の短手方向に関して、すべての吐出口108を挟む。そして、休止中の区画状態において、加湿空気が供給され、吐出口108が加湿される。以下、具体的に休止中加湿動作について説明する。
休止中加湿動作が実行されると、制御装置100による制御の下、ポンプ58が駆動される。図5(a)に示すように、空気が、白抜き矢印に沿って流れる。タンク57の上部空間の加湿空気は、配管54及び第1供給パイプ61を介して第2供給パイプ63に供給される。そして、加湿空気は、第1供給口部65の複数の供給穴65aから吐出空間S1に供給される。吐出空間S1の空気は、加湿空気と置換されながら排出口部85に向かって副走査方向に流れる。また、吐出空間S1内の空気は、ポンプ58により第1排出パイプ81を介して吸い出され、排出口部85からタンク57へ向かう。空気は、タンク57の下部空間で加湿され、上部空間に移動する。生成された加湿空気は、ポンプ58の駆動が続く間、吐出空間S1に供給される。
続いて、プリンタ101のアンキャッピング動作(キャッピングの解除動作)、及び記録中加湿動作の一連の流れについて説明する。
アンキャッピング動作が実行されると、制御装置100の制御の下、図5(b)及び図6に示すように、リップ部材42が離隔位置とされる。区画部材41が、吐出空間S1を外部空間S2に開放した開放状態となる。
次に、プリンタ101が、受信した記録指令に基づいて、上述の画像記録動作が行われる。本実施形態において、用紙Pは、センターレジ方式で搬送される。つまり、用紙Pは、給紙トレイ35において、主走査方向の中心位置が、吐出面1aの中心位置(中心点Qを通る位置)と主走査方向に関して対応するように配置されている。記録領域において、用紙Pは、吐出口108の分布領域に対し、主走査方向に関する中心同士が重なるように搬送される。このとき、用紙Pのサイズが吐出口108の分布領域よりも小さいと、主走査方向両端部の吐出口108は大気に暴露されるのみであり、画像記録中に乾燥が進む。
この画像記録動作が行われる際に、制御装置100による制御の下、記録中加湿動作が実行される。また、本実施の形態では、供給口部65を構成する複数の供給穴65aは、主走査方向に関して、中央よりも外側の方が多く配置されている。以下、具体的に記録中加湿動作について説明する。
記録中加湿動作が実行されると、制御装置100の制御により、ポンプ58が駆動される。図5(b)に示すように、空気が、休止中加湿動作のときと同様に、白矢印に沿って流れる。タンク57の上部空間の加湿空気は、配管54及び第1供給パイプ61を介して第2供給パイプ63に供給される。そして、加湿空気は、第1供給口部65の複数の供給穴65aから吐出空間S1に放出されて、吐出口108へ供給される。
加湿空気の供給穴65aから吐出口108への移動は、用紙Pの搬送に伴う気流によって行われる。搬送方向の下流側では、吐出空間S1の空気が、ポンプ58により吸引され、排出口部85からタンク57へ向かう。このようにして、供給口部65から排出口部85への加湿空気の流れが形成される。このため、吐出面1a近傍に用紙搬送に伴う気流が生じていない場合(例えば、用紙Pが吐出面1aを通過する前、及び、通過して多少時間が経過した場合)でも、加湿空気が吐出口108に供給される。この結果、アンキャッピング状態でも、吐出口108の乾燥を抑制することができる。
また、複数の供給穴65aの開口面積は、加湿空気の流れの方向に関して上流側から下流側に向かうほど大きくされている。即ち、第2供給パイプ63内の空気に対する単位長さ当たりの流路抵抗は、加湿空気の流れの方向に関して、上流側から下流側に向かうほど小さい。これにより、放出される加湿空気の量は、複数の供給穴65a間で略均等となる。さらにこのとき、供給穴65aは、主走査方向に関して、中央よりも外側の方が多い。このため、吐出空間S1の主走査方向中央よりも外側の方に多くの加湿空気が供給される。つまり、センターレジ方式の搬送では、使用頻度の低い外側(主走査方向両端側)の吐出口108が乾燥しやすいが、これを効果的に抑制することが可能となる。したがって、フラッシング動作などによるインクの消費量を抑制することができる。なお、排出口部85から吸引した空気は、休止中加湿動作のときと同様に、タンク57の下部空間で加湿され、上部空間に移動する。生成された加湿空気は、ポンプ58の駆動が続く間、吐出空間S1に供給される。
リップ部材42の先端は、離隔位置にあっては、吐出面1aよりも若干下方に位置されている。これにより、供給口部65の供給穴65aから吐出空間S1に供給された加湿空気が、当該吐出空間S1(リップ部材42、及び、吐出面1aで囲まれた部分)に滞留しやすくなる。このため、加湿空気が吐出口108に効率良く供給され、吐出口108の乾燥をより一層抑制することが可能となる。
以上、本実施形態によると、加湿動作が、画像記録動作が行われるときに行われる。この記録中加湿動作において、供給口部65から供給された加湿空気は、用紙搬送に伴う気流に乗り、排出口部85側に、吐出空間S1(隙間)を横切る。これにより、画像記録動作中(開放状態)においても、吐出口108の乾燥を抑制する。さらにこのとき、加湿空気は、主走査方向に関して、吐出空間S1の中央よりも外側の方が多く供給される。このため、使用頻度の低い外側の吐出口108であっても、乾燥が効果的に抑制される。結果的に、フラッシングなどによるインクの排出が抑制される。
また、加湿動作が、区画状態(キャッピング動作)のときに行われる。このため、区画状態のときにおいても、複数の吐出口108において、インクの乾燥が抑制される。
また、加湿動作において、排出口部85から吐出空間S1の空気が排出される。このため、供給口部65から供給された加湿空気は、搬送方向D(ヘッドの短手方向)に沿って流れやすくなる。つまり、吐出空間S1(隙間)を経由して排出口部85に流れる。この結果、吐出口108のインク乾燥が効果的に抑制される。
キャップ機構40が、区画部材41、キャップ昇降機構48、及び、プラテン6から構成されている。これにより、キャップ機構40を比較的小さくすることが可能となり、装置全体の小型化を図ることが可能となる。また、供給口部65における各供給穴65a、及び排出口部85における各排出穴85aは、その開口の中心軸が吐出空間S1の内側に傾斜している。これにより、加湿空気を無駄の少ない状態で循環でき、各吐出口108への水分の均一供給に寄与している。
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、加湿機構の構成である。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
本実施形態における加湿機構250は、供給部及び排出部が、サイドカバー270に加え、区画部材41をそれぞれ含む。サイドカバー270は、ヘッド1の全周を取り囲み、樹脂製の環状部材である。サイドカバー270は、主走査方向に沿う一対の長尺部271と、副走査方向に沿う一対の短尺部272とで構成される。長尺部271は、主走査方向に関して、ヘッド1の側面1S1,1S2と同じ長さである。一対の短尺部272は、一対の長尺部271を繋いでいる。
上流側長尺部271(図7(b)中下側、及び、図8中左側)は、上流側固定部273aと、上流側鍔部274aとを有する。上流側固定部273aは、主走査方向に延在し、ヘッド1の側面1S1に固定されている。上流側固定部273aの外側側面には、密着部44aが固定されている。上流側鍔部274aは、上流側固定部273aに一体的に形成されており、上流側固定部273aの下端から上流側に向かって突出している。上流側鍔部274aも主走査方向に延在している。
上流側鍔部274aの先端(リップ部材42と対向する面)には、複数の切り欠き275aが形成されている。これら切り欠き275aは、鉛直方向に関して、上流側鍔部274aを貫通して形成されており、リップ部材42とによって、複数の開口(供給口)265a及び開口265aと繋がった複数の案内路265bを画定している。これら複数の開口265aによって、供給口部265が構成されている。これら開口265aは、主走査方向に沿って等間隔に配列されている。最も外側にある2つの開口265aは、吐出面1aの最も外側にある2つの吐出口108よりも外側にある。なお、サイドカバー270の下面は、全体に吐出面1aよりもプラテン6から上方にあり、用紙Pの搬送を妨げない。
主走査方向に関して、切り欠き275aの互いに対向する内側面は、開口265aに近づくほど、外側に位置するように傾斜している。これにより、開口265aから吐出空間S1に供給される加湿空気が、主走査方向外側に向かって供給される。このため、吐出空間S1の中央よりも外側に多くの加湿空気が供給される。また、主走査方向に関して最も外側にある切り欠き275aの内側面は、プラテン6のリップ部材42が当接する箇所(当接位置にあるリップ部材42の先端)に向かって加湿空気が供給されるように、傾斜している。これにより、区画状態において、リップ部材42とプラテン6との当接箇所に貯まるインクに水分を供給することが可能となる。
上流側固定部273aは、上方に突出した突出部276aを有している。突出部276aは、主走査方向に関して、上流側固定部273aの上面中央に形成されている。上流側固定部273aの中央には、鉛直方向に延在した流路277aが形成されている。流路277aは、突出部276aの中央を貫通し上流側固定部273aの側面に形成された開口278aと連通している。突出部276aは、ヘッドホルダ13の貫通孔13aに挿通され、配管54に接続されている。突出部276aと貫通孔13aとの間には、若干の隙間があるが、シール材等が充填されている。加湿空気は、配管54を介して開口278aから流出する。上流側鍔部274aの先端は、常にリップ部材42の内周面と当接している。また、一対の短尺部272は、副走査方向の両端において、ダイアフラム44と常に接触している。このため、上流側長尺部271と区画部材41とで囲まれた空間は、主走査方向の両端が封止され、流路277aと繋がった流路279aを構成する。加湿空気は、図7に示すように、流路279aにおいて、開口278aから図中左右に流れて、案内路265bを介して各開口265aから吐出空間S1に供給される。これら切り欠き275a(開口265a及び案内路265b)、及び、2つの流路277a,279aによって、吐出空間S1に加湿空気を供給する供給流路が構成されている。
開口265aの面積は、図7に示すように、加湿空気の流れの方向に関して、上流側(図7中中央)から下流側(図7中外側)に向かうほど大きい。これにより、略均等量の加湿空気が、各開口265aから供給される。
下流側長尺部271(図7(b)中上側、及び、図8中右側)は、下流側固定部273bと、下流側鍔部274bとを有している。この下流側長尺部271は、上流側長尺部271が吐出面1aの中心点Qを通る主走査方向に延びる直線に対して、線対称に配置されたものと同様な構成である。下流側固定部273bは、ヘッド1の側面1S2に固定されている。下流側固定部273bの外側側面には、密着部44aが固定されている。下流側鍔部274bは、下流側固定部273bの下端から下流側に向かって突出している。
下流側鍔部274bの先端(リップ部材42と対向する面)には、複数の切り欠き275bが形成されている。これら切り欠き275bも、鉛直方向に関して、下流側鍔部274bを貫通して形成されており、リップ部材42とによって、複数の開口(排出口)285a及び開口285aと繋がった複数の案内路285bを画定している。これら複数の開口285aによって、排出口部285が構成されている。これら開口285aも、主走査方向に沿って等間隔に配列され、最も外側にある2つの開口285aは、吐出面1aの最も外側にある2つの吐出口108よりも外側にある。また、主走査方向に関して、切り欠き275bの互いに対向する内側面は、開口285aに近づくほど、外側に位置するように傾斜している。
下流側固定部273bの突出部276bの中央には、鉛直方向に延在した流路277bが形成されている。流路277bは、突出部276bの中央を貫通し下流側固定部273bの側面に形成された開口278bと連通している。突出部276bは、ヘッドホルダ13の貫通孔13bに挿通され、配管53に接続されている。突出部276bと貫通孔13bとの間にも、若干の隙間があるが、シール材等が充填されている。下流側鍔部274bの先端は、常にリップ部材42の内周面と当接している。また、下流側長尺部271と区画部材41とで囲まれた空間は、主走査方向の両端が封止され、流路277bと繋がった流路279bを構成する。吐出空間S1の空気は、図8中矢印で示すように、開口285aから排出される。流路279bにおいて、開口285a及び案内路285bを介して吸引された空気は、開口278bに向かって中央に流れ、配管53を介してタンク57(外部)に排出される。これら切り欠き275b(開口285a及び案内路285b)、及び、2つの流路277b,279bによって、吐出空間S1の空気を外部に排出する排出流路が構成されている。
開口285aの開口面積は、加湿空気の流れの方向に関して、上流側(図7(b)中左右側)から下流側(図7(b)中中央)に向かうほど小さい。これにより、略均等量の空気が、各開口285aから排出される。
上述の加湿機構250を有するプリンタにおける、記録中加湿動作及び休止中加湿動作も、第1実施形態と同様に行われる。つまり、加湿空気が、複数の開口265aから吐出空間S1に供給される。記録中加湿動作においては、リップ部材42が離隔位置に配置されているが、その先端は各鍔部274a,274bよりも下方にある。このため、開口265aから放出された加湿空気は、リップ部材42の内面に当たって開口265a近傍に滞留しやすくなる。つまり、加湿空気が、搬送方向Dの上流側に流出しにくくなる。このとき、加湿空気は、各開口265aからほぼ同じ量であって主走査方向外側に向かって供給される。このため、主走査方向の外側に加湿空気が多く滞留する。そして、用紙Pの搬送に伴う気流や排出口部285からの吸引による気流によって、滞留した加湿空気が効果的に搬送方向Dに流れる。このため、加湿空気は、吐出空間S1の中央よりも外側の方が多く供給される。したがって、第1実施形態と同様に、アンキャッピング状態でも、使用頻度の低い外側にある吐出口108の乾燥を抑制することができるため、フラッシング動作などによるインクの消費量を抑制することができる。
休止中加湿動作においては、第1実施形態と同様に、加湿空気が、複数の開口265a(供給口部265)から吐出空間S1に供給される。このとき、主走査方向に関して最も外側にある開口265aから供給された加湿空気は、プラテン6のリップ部材42が当接する箇所に向かって供給される。これにより、区画状態において、リップ部材42とプラテン6との当接箇所に貯まるインクに水分を直接的に供給することが可能となる。このため、区画状態において、吐出口近傍のインクが乾燥しにくくなる。吐出空間S1の空気は、加湿空気と置換されながら排出口部285に向かって副走査方向に流れる。また、吐出空間S1内の空気は、ポンプ58により吸い出され、排出口部285からタンク57へ向かう。空気は、タンク57の下部空間で加湿され、上部空間に移動する。生成された加湿空気は、ポンプ58の駆動が続く間、吐出空間S1に供給される。
以上、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、加湿動作において、供給口部65から供給される加湿空気は、主走査方向に関して、吐出空間S1の中央よりも外側の方が多く供給される。このため、使用頻度の低い外側(主走査方向両端側)にある吐出口108の乾燥を抑制することが可能となる。したがって、フラッシングなどによるインクの排出を抑制することができる。
また、供給口部265及び排出口部285が、複数の切り欠き275a,275b(開口265a,285a及び案内路265b,285b)によって構成されているため、その構成が簡単になるとともに、簡単に形成することが可能となる。なお、第1実施形態と同様な構成については、同じ効果を得ることができる。
変形例として、図9に示すように、切り欠き275a,275bに替えて、各鍔部274a,274bに複数の貫通孔295a,295bが形成されていてもよい。これら貫通孔295a,295bは、切り欠き275a,275bよりもヘッド1に近づいた位置に配置されており、同様の形状を有する。このため、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、これら貫通孔295a,295bの開口によって、供給口部及び排出口部が構成される。
(第3実施形態)
続いて、本発明の第3実施形態について、図10及び図11を参照して説明する。第3実施形態において第2実施形態と異なる点は、キャップ機構及び加湿機構の構成である。以下においては、上述した第2実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
本実施形態における加湿機構350は、供給部及び排出部が、サイドカバー370から構成されている。サイドカバー370は、ヘッド1の全周を取り囲み、樹脂製の環状部材である。サイドカバー370は、主走査方向に沿う一対の長尺部371と、副走査方向に沿う一対の短尺部372とで構成される。長尺部371は、主走査方向に関して、ヘッド1の側面1S1,1S2と同じ長さである。一対の短尺部372は、一対の長尺部371を繋いでいる。
上流側長尺部371は、ヘッド1の側面1S1に固定されている。上流側長尺部371は、上方に突出した突出部376aを有している。突出部376aは、主走査方向に関して、上流側長尺部371の上面中央に形成されている。上流側長尺部371の中央には、鉛直方向に延在した流路377aが形成されている。上流側長尺部371の鉛直方向中央には、主走査方向に延在した流路378aが形成されている。流路377aは、突出部376aの中央を貫通し流路378aに連通している。突出部376aは、ヘッドホルダ13の貫通孔13aに挿通され、配管54に接続されている。突出部376aと貫通孔13aとの間には、若干の隙間があるが、シール材等が充填されている。
上流側長尺部371(図10(b)中下側、及び、図11中左側)の下面には、流路378aと連通する複数の供給穴375aが形成されている。これら供給穴375aは、複数の開口(供給口)365a及び開口365aと繋がった複数の案内路365bを画定している。これら複数の開口365aによって、供給口部365が構成されている。加湿空気は、配管54を介して流路377a,378aに流れる。加湿空気は、図10に示すように、流路378aにおいて、中央から図中左右に流れて、各供給穴375aから吐出空間S1に供給される。これら供給穴375a(開口365a及び案内路365b)、及び、2つの流路377a,378aによって、吐出空間S1に加湿空気を供給する供給流路が構成されている。
また、複数の開口365aは、主走査方向に沿って等間隔に配列されている。最も外側にある2つの開口365aは、吐出面1aの最も外側にある2つの吐出口108よりも外側にある。なお、サイドカバー370の下面は、全体に吐出面1aよりもプラテン6から上方にあり、用紙Pの搬送を妨げない。
主走査方向に関して、案内路365bの互いに対向する内側面は、開口365aに近づくほど、外側に位置するように傾斜している。これにより、開口365aから吐出空間S1に供給される加湿空気が、主走査方向外側に向かって供給される。このため、吐出空間S1の中央よりも外側に多くの加湿空気が供給される。
また、供給穴375aの案内路365bは、図11(a)に示すように、その開口365aが吐出空間S1(隙間)と対向するように、ヘッド1側(搬送方向下流側)にも傾斜している。これにより、開口365aから供給された加湿空気が、搬送方向下流側に効果的に流れる。このため、複数の吐出口108の乾燥をより抑制することが可能となる。
流路378a内の空気に対する流路抵抗は、加湿空気の流れの方向(図10中中央から外側方向)に関して、上流側から下流側に向かうほど小さくされている。本実施形態においては、図10(b)に示すように、開口365aの開口面積が、上流側(図中中央)から下流側(図中左右側)に向かうほど大きい。これにより、略均等量の加湿空気が、各開口365aから供給される。
下流側長尺部371(図10(b)中上側、及び、図11中右側)は、上流側長尺部371が吐出面1aの中心点Qを通る主走査方向に延びる直線に対して、線対称に配置されたものと同様な構成である。下流側長尺部371は、ヘッド1の側面1S2に固定されており、突出部376bを有している。下流側長尺部371には、鉛直方向に延在した流路377bと、主走査方向に延在し流路377bと連通する流路378bとが形成されている。突出部376bは、ヘッドホルダ13の貫通孔13bに挿通され、配管53に接続されている。突出部376bと貫通孔13bとの間には、若干の隙間があるが、シール材等が充填されている。
下流側長尺部371の下面には、流路378bと連通する複数の排出穴375bが形成されている。これら排出穴375bは、複数の開口(排出口)385a及び開口385aと繋がった複数の案内路385bを画定している。これら複数の開口385aによって、排出口部385が構成されている。これら開口385aは、主走査方向に沿って等間隔に配列されている。吐出空間S1の空気は、各排出穴375bから排出される。これら排出穴375b(開口385a及び案内路385b)、及び、2つの流路377b,378bによって、吐出空間S1の空気を外部に排出する排出流路が構成されている。
図10(b)に示すように、主走査方向に関して、最も外側にある2つの開口385aは、吐出面1aの最も外側にある2つの吐出口108よりも外側にある。主走査方向に関して、案内路385bの互いに対向する内側面は、開口385aに近づくほど、外側に位置するように傾斜している。
また、排出穴375bの案内路385bは、図11(a)に示すように、その開口385aが吐出空間S1(隙間)と対向するように、ヘッド1側(搬送方向上流側)にも傾斜している。これにより、吐出空間S1の空気を排出しやすくなる。
流路378b内の空気に対する流路抵抗は、加湿空気の流れの方向(図10中外側から中央に向かう方向)に関して、上流側から下流側に向かうほど大きくされている。本実施形態においては、開口385aの開口面積が、供給穴375aの開口385aと同様に、上流側(図中外側)から下流側(図中中央)に向かうほど小さい。これにより、略均等量の空気が、各開口385aから流入される。
キャップ機構340は、区画部材341と、対向部材345と、対向部材345を移動させる移動機構(不図示)とを有している。対向部材345は、長方形平面形状を有する平板であって、外形サイズがサイドカバー370とほぼ同じである。区画部材341は、ゴム等の環状弾性材料から構成されており、対向部材345の周縁部から一体的に立設されている。
移動機構は、制御装置100による制御の下、対向部材345を移動させ、区画部材341の先端とサイドカバー370との相対位置が、鉛直方向に変化する。区画部材341の先端は、対向部材345の移動に伴って、サイドカバー370の下面の周縁部に当接する当接位置(図11(b)に示す位置)と、サイドカバー370から離隔した離隔位置とを選択的に取る。区画部材341がサイドカバー370に当接されると、区画部材341、対向部材345及び吐出面1aにより吐出空間S1が外部空間S2から区画された区画状態となる。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2から開放された開放状態となる。
上述の加湿機構350及びキャップ機構340を有するプリンタにおける、記録中加湿動作及び休止中加湿動作も、第1実施形態と同様に行われる。
キャッピング動作が実行されると、区画部材341内において、ヘッド1の短手方向(副走査方向)に加湿空気の経路が形成される。制御装置100の制御の下、図11(b)に示すように、区画部材341が当接位置とされ、吐出空間S1を外部空間S2から区画する。
休止中加湿動作が実行されると、制御装置100による制御の下、加湿空気が、供給口部365(開口365a)から吐出空間S1に供給される。吐出空間S1の空気は、加湿空気と置換されながら排出口部385(開口385a)に向かって副走査方向に流れる。また、吐出空間S1内の空気は、ポンプ58により吸い出され、排出口部385からタンク57へ向かう。空気は、タンク57の下部空間で加湿され、上部空間に移動する。生成された加湿空気は、ポンプ58の駆動が続く間、吐出空間S1に供給される。
アンキャッピング動作が実行されると、制御装置100の制御の下、区画部材341が離隔位置とされる。区画部材341が、図11(a)に示すように、吐出空間S1を外部空間S2に開放した開放状態とする。
画像記録動作が行われる際に、記録中加湿動作が実行されると、空気が、休止中加湿動作のときと同様に、流れる。つまり、加湿空気は、供給口部365の複数の開口365aから吐出空間S1に放出されて、吐出口108へ供給される。なお、加湿空気の開口365aから吐出口108への移動は、第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態と同様に、アンキャッピング状態でも、吐出口108の乾燥を抑制することができる。
また、加湿空気は、各開口365aからほぼ同じ量であって主走査方向外側に向かって供給される。このため、吐出空間S1の主走査方向中央よりも外側の方に多くの加湿空気が供給される。したがって、使用頻度の低い外側にある吐出口108の乾燥を効果的に抑制することが可能となり、フラッシング動作などによるインクの消費量を抑制することができる。
以上、本実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様に、加湿動作が、画像記録動作が行われるときに行われる。この記録中加湿動作において、供給口部365から供給された加湿空気は、用紙搬送に伴って、搬送方向D(ヘッドの短手方向)に沿って流れる。つまり、吐出空間S1(隙間)を経由して排出口部85に流れる。これにより、画像記録動作中(開放状態)においても、複数の吐出口108の乾燥を抑制することが可能となる。さらにこのとき、供給口部365から供給される加湿空気は、主走査方向に関して、吐出空間S1の中央よりも外側の方が多く供給される。このため、使用頻度の低い外側にある吐出口108の乾燥を抑制することが可能となる。したがって、フラッシングなどによるインクの排出を抑制することができる。なお、第1及び第2実施形態と同様な構成については、同じ効果を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の第1〜第3実施形態を組合せ可能な場合には組み合せてもよい。第1実施形態において、第1供給パイプ61を第2供給パイプ63の中央に、第1排出パイプ81を第2排出パイプ83の中央に接続してもよい。第2及び第3実施形態において、突出部276a,276b,376a,376bを、一対の長尺部271,371の上面の端部にそれぞれ接続してもよい。
また、第1〜第3実施形態においては、排出口部85,285,385から吐出空間S1の空気を強制的に吸引しているが、単に外部に通じる排出口部85,285,385を設けて、自然に当該空間から空気を排出してもよいし、排出口部85,285,385自体を設けなくてもよい。また、供給口部65,265,365を構成する複数の開口は、加湿空気が主走査方向中央よりも外側の方に多く供給されれば、加湿空気の流れ方向に関して上流側から下流側に向かうほど大きくなくてもよい。
また、上述の実施形態では、記録中加湿動作は画像記録動作中に行われているが、吐出空間S1が外部空間S2に開放された開放状態であるならば、画像記録動作が行われていないときに行われてもよい。つまり、区画状態から開放状態とされてから画像記録動作が実行されるまでの待機時、及び、画像記録動作が終了してから区画状態とされるまでの待機時においても、加湿動作が行われてもよい。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。