JP2013237911A - 高強度摺動材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】窒化処理された鋳鉄材料の耐焼付性を改良する。
【解決手段】 黒鉛2とフェライト及びパーライトからなる組織を有する鋳鉄からなる基材1の摺動面に化合物層4が形成された高強度摺動材料。化合物層4の内部まで潤滑油が強制浸入5している。
【選択図】図2

Description

本発明は、高強度摺動材料に関するものであり、特に、強度と摺動特性を兼備した、浸
窒素処理を施した鋳鉄系摺動材料に関するものである。より詳しく述べるならば、本発
明は、建設、土木、鉱山などで使用される機械のエンジン駆動部、トランスミッション、
ショベル、クラッシャー、粉砕ミルなどの各種機器において軸受として使用されるブシュ
に関する。かかるブシュの摺動状況は、受ける荷重が大きい;過酷な環境で使用される;
長い時間、例えば1年連続運転されることもある;鉱山などでは給油を頻繁に行うことが
できないなどである。これらの状況に適用するために、かかるブシュは密封グリース潤滑
下で使用されることが多い。
鋳鉄材料
非特許文献1:トライボロジストVol.49/No.7/2004「鉄鋼材料の使い方」第541〜546頁はトライボロジ材料としての鋳鉄を、熱伝導性がすぐれた片状黒鉛を有するねずみ鋳鉄(FC)、保油性にすぐれた球状黒鉛鋳鉄(FCD)、黒鉛形状が片状と球状の中間の芋虫状であるCV鋳鉄に分類している。これらの鋳鉄は自己潤滑性を有する黒鉛が分散している点ではすぐれているが、硬さが低いために耐摩耗性が劣る傾向にあるので、耐摩耗性不足を補うために浸ホウ素処理や窒化処理が行なわれていることが多い。
鋳鉄の浸ホウ素処理
特許文献1(特許第3297150号明細書)は「質量%で、C:2.5〜3.6%、
Si:1.4〜2.6%、Mn:0.5〜1.0%、P:0.1〜0.4%、S:0.1
2%以下、Cr:0.1〜0.4%、B:0.03〜0.12%、Cu:0.2〜2.0%、
Co:1.0〜10%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる化学組成を有し、か
つパーライトからなるマトリックス中に、ステダイト及びボロン化合物からなる硬質相と
片状黒鉛とが分散した組織からなることを特徴とするすぐれた耐食性及び耐摩耗性を有する
鋳鉄」(請求項1)を提案する。この特許文献1の鋳鉄は、摺動面に、硬質Fe−B相と黒鉛相がパーライトマトリクス中に混在した状態であるため、潤滑剤が十分に供給されている場合や、潤滑剤切れが生じた場合ともに、それなりに性能を発揮するが、パーライトマトリクスが主要組織である鋳鉄は硬さが低いために、耐焼付性や耐摩耗性とも不十分である。
特許文献2(特許2912458号明細書)は、鉄鋼表面を浸ホウ素処理するものであ
り、浸ホウ素処理された摺動面は全面的にFe−B化合物となっている。このため油、グリースなどの潤滑剤が十分に摺動部に供給されている場合は問題無いが、潤滑剤切れが生じた場合、摺動材表面には潤滑成分が無いため、摩耗や焼付きなどの損傷が生じる。
鋳鉄の窒化処理
鋳鉄をアンモニアガス及びRXガスの雰囲気中で500〜600℃で加熱し、材料表面にFe−N化合物層を形成することは、特許文献3(特開平11−189859号公報)に従来技術として記載されている。しかし、この方法により得られた窒化層は相手材攻撃性があると評価されている。
特許文献4(実開昭59−145562号公報)はフェロ合金鋳鉄からなるバルブリフ
タの耐摩耗性鋳鉄はチル化組織とソルバイト組織又はベーナイト組織の共晶組織を有し、
これらの組織にガス窒化又はイオン窒化により窒素を拡散し、形成された窒化層の表面に、
初期潤滑として化成薬剤処理又はホモライジングを行うことを提案している。
特許文献5(特許第2851084号明細書)は、球状黒鉛鋳鉄からなる摺動部材の表面近傍の黒鉛をスパッタリングにより除去し、その表面をイオン窒化し、他方の摺動部材とすることを提案している。
硬化処理層の油溜り
摺動部材の表面に、化学エッチング、ショットブラスト、粗粒ラッピングにより油溜りを形成することは周知である。しかしホウ素処理層や窒化層は硬度が著しく高いために、微細な油溜りを形成することは困難である。このような背景から特許文献6(特開平2−34769号公報)においては、浸ホウ素処理により鉄系部材の表面に形成されたFe−B結晶相の表面をダイアモンド砥石などにより研摩することにより油溜りを形成することを提案している。
窒化処理により形成される化合物層
非特許文献2(Werkstofftechnik 2,Wolfgang Bergmann, Hanser, 2001,第280−287頁)から、鉄鋼材料の窒化に関して次の知見が得られる。
(イ)粉末窒化、ガス・塩浴軟窒化(Nitrocarburieren)、ガス窒化、プラズマ窒化などの中で、プラズマ窒化では化合物層(Verbindungsschicht, VS)が形成されないこともあるが、他の窒化法では化合物層が形成され、その下に窒素の拡散層が形成される。
(ロ)Fe−N二元系化合物としては、γ’(FeN),ε(Fe2−3N),ζ(FeN)などがある(図1参照)。なお、Fe−C−N三元系化合物も結晶形態としては上記二元系となる。窒化方法によって、ε単相、γ’単相、ε+γ’混相などの組織が形成される。
(ハ)窒素が鉄結晶に浸透すると鉄が著しく体積膨張を示すために、割れがγ’/εの界面に優先的に発生し、この結果窒化層の耐久性が劣化する。これに対してγ’単相組織を形成すると割れを防止することができる。
(ニ)窒化により供給される窒素の量が多いと、N原子が鉄の結晶粒界でN分子に再結合する際に結晶粒界を拡張する。この結果化合物層がポーラスになり、硬度と耐摩耗性の低下を招く。
(ホ)プラズマ窒化法で形成される化合物層はγ’単相になり、割れがない。
(へ)γ’単相もしくはε単相から構成される化合物層は耐凝着摩耗性にすぐれている。
オイルレスベアリング
オイルレスベアリングは古くから知られており、非特許文献3:「オイルレスベアリング」工業技術新書7、川崎 宗造著、日刊工業新聞社、昭和37年3月5日発行、第7版、第32頁には「一般にオイルレス・ベアリングというのは多孔性の材質に油性潤滑剤を浸潤含有させて、常時給油の必要をなくしたものをいう...」と定義されている。そして、オイルレスベアリングの材料としては、焼結合金、木材、樹脂、成長により多孔質化した鋳鉄などが挙げられている。ここで「浸潤含有」は「含浸」と同義であると理解される。
なお、本発明が対象とする鋳鉄材料は多孔質材料ではないので、強度は高いが、潤滑油の浸潤含有は不可能である。
サーフェステクスチャ
非特許文献4:トライボロジストVol.55/No.2/2010,第101〜105頁「サーフェステクチャの形状とトライボロジ特性」には、先ず、基本的技術として本出願人が開発したマイクログルーブ軸受が紹介され、続いて、レーザ、エッチング、機械加工、ショットブラストなどにより摺動材料の表面に溝などを形成する種々の技術が解説されている。例えば、ショットブラストでは数十ミクロンから数mmの溝が形成される。また、これら溝などがトライボロジ特定に及ぼす影響の体系的解明は困難であると考察されている。
特許第3297150号明細書 特許2912458号明細書 特開平11−189859号公報 実開昭59−145562号公報 特許第2851084号明細書 特開平2−34769号公報
トライボロジストVol.49/No.7/2004「鉄鋼材料の使い方」第541〜546頁 Werkstofftechnik 2,Wolfgang Bergmann, Hanser 2001,第280−287頁 「オイルレスベアリング」工業技術新書7、川崎 宗造著、日刊工業新聞社、昭和37年3月5日発行、第7版、第32頁 トライボロジストVol.55/No.2/2010,第101〜105頁「サーフェステクチャの形状とトライボロジ特性」
特許文献1にあっては、摺動部材の摺動面は、硬質Fe−B相と黒鉛相がパーライト中に混在した状態であるため、潤滑剤が十分に供給されている場合、潤滑剤切れが生じた場合ともそれなりに性能を発揮する。しかし、パーライト基地では耐焼付性、耐摩耗性ともに不充分である。特許文献2にあっては、摺動面が全面的にFe−B化合物となっているため潤滑剤(油、グリースなど)が、十分に供給されている場合は問題ないが、潤滑剤切れが生じた場合、摺動面に潤滑成分が無いため、摩耗、焼付きなどの損傷が生じる。
窒化処理により生成された化合物層は、耐摩耗性以外の摺動特性はすぐれていないので、不充分な特性を補うためには、油溜りの形成や、化成処理などが有効である。しかし、一般に油溜りの形成に使用される硬質砥粒は、Fe−N系化合物よりも硬度が低いために、十分な量の油を貯めることができる油溜りを形成することはできない。このような背景があるために、窒化処理された鋳鉄は建設、土木、鉱山などで使用される機器の摺動材料としては適していなかった。あるいは、この材料は十分なグリース潤滑を行なって使用されていた。
本発明は窒化処理された鋳鉄の表面に深い油溜まりを設けることにより、上述のように従来問題があった耐焼付性を改良することを目的とする。
本出願人は特許文献2及び6の出願人であり、これらの出願対象である高強度摺動材料につき長い間研究を行ってきたが、最近次のような実験を行った。すなわち、同じ方法及び条件で窒化処理を施こした同じJIS規格の鋳鉄につき、潤滑油を試験開始前に塗布し、試験中には油の補給を行なわなかった試料1と、以下説明する潤滑油強制浸入処理を行ない、かつ試料1と同様に塗布・非補給条件とした試料2を対象として、耐焼付試験を行なった。なお、試料1,2ともに、表面の化合物層をラップ研磨して化合物層を残した状態で試験を行なった。試験の結果は、後者2の耐焼付性が前者1より格段にすぐれていた。前者の試料1は窒化鋳鉄を油潤滑下で使用する従来技術に相当し、潤滑油は耐焼付性向上にある程度効果はあるが、長い試験時間中には「油切れ」状態となり焼付が起こり易い。従来から、窒化処理された鋳鉄の化合物層はポーラスになり、あるいは割れるなどの欠陥を有することは知られていたが、摺動部材として従来使用される窒化鋳鉄の表面構造は焼結材料のように潤滑油が浸透できるようなポーラスなものではないと考えられていた。しかしながら、本出願人の実験結果を示す試料2のように、意外にも、鋳鉄の窒化により形成された化合物層には保油効果をもつ深い油溜りが形成されていることが確かになった。
本発明は、上記知見に基づき完成したものであり、主要組織が、黒鉛と、フェライト及びパーライトとからなる鋳鉄からなる基材の摺動面に、窒化により生成した化合物からなる層(以下「化合物層」という)を表面に有する窒化層が形成された高強度摺動材料において、前記化合物層の内部まで潤滑油を強制浸入したことを特徴とする高強度摺動材料を提供する。
以下、本発明の構成を鋳鉄基材、化合物層、窒化法、潤滑油強制浸入の順で説明する。
本発明において、鋳鉄とは、パーライト及びフェライトと黒鉛が主要な基地組織を構成している。この組織をもつ鋳鉄は、基材の強度が高い材料である。具体的には、FC200、250、300などのねずみ鋳鉄、FCD600、700などの球状化黒鉛鋳鉄及びCV鋳鉄などである。これらの中では、黒鉛形状が大きい球状化黒鉛鋳鉄やねずみ鋳鉄が好ましく、球状化黒鉛鋳鉄がより好ましい。さらに、主要組織とはマウラーの鋳鉄組織図に表わされている組織である。これ以外の組織としては、球状黒鉛粒子の周りに、これを囲むように形成されるフェライト、Pなどの微量元素の添加によるステダイトなどが存在することがある。また、本発明において鋳鉄とは、成長により多孔質化したものでなく、通常の鋳造状態の密度をもっている。
化合物層は、γ’単相、ε単相、γ’+ε混相の何れかである。また、化合物層の厚さは100〜500μmが好ましい。化合物層は硬さがHv500未満であると、ポーラスになり、耐摩耗性が劣化し、一方Hv1000を超えると、化合物層の内部応力が高くなり、割れなどの欠陥が発生し、やはり耐摩耗性が劣る。好ましい化合物層の硬さはHv500〜1000であり、より好ましくは、Hv600〜800である。
窒化処理法は、ガス軟窒化、塩浴軟窒化、イオン窒化などであり、鋳鉄表面から最大で1mmの深さに亘って窒素を浸透させるとともに表面に化合物層を形成する方法である。窒化処理の具体的施工法は、摺動面となる表面を切削、研摩することにより鋳肌を除き、摺動面以外は適当なマスク剤で被覆して処理を行なう。なお、拡散層に分散した黒鉛は低摩擦性などに寄与するので、鋳鉄は黒鉛の固溶を招く熱処理を行なわないことが好ましい。
続いて、本発明において使用する潤滑油は40℃での粘度が220〜1500cst、好ましくは320〜1000cstのものである。潤滑油の粘度が220cstより低いと、建築機械などの荷重に軸受が耐えることができず、一方1500cstを超えると潤滑油を割れに含浸することが困難になる。
一般にいう「強制潤滑」はポンプにより潤滑油を循環させることにより行なわれるが、このような潤滑方式を採用しても、鋳鉄の化合物層の内部まで潤滑油を浸入させることはできない。本発明のおける「強制浸入」とは、窒化処理された鋳鉄表面から、化合物層の内部に潤滑油を強制的に浸透することである。通常の潤滑油塗布、滴下は勿論強制潤滑によっても潤滑油は化合物層の内部まで浸入しない。強制浸入は、具体的には、真空脱気又は加熱油中浸漬などにより行なう。真空脱気は、被処理材を真空中に曝露し、割れの内部を脱気した状態とし、この状態で潤滑油を被処理材表面に注入し、50〜80°程度に加熱後、冷却し大気圧に戻す方法である。加熱油中浸漬は80〜120℃に加熱した潤滑油中に窒化された鋳鉄を浸漬して行なう。
図2は、本発明に係る摺動材料の組織を球状黒鉛鋳鉄について例示する模式図であって、図中、1は鋳鉄基材、2は球状黒鉛、3はフェライト及びパーライトからなるマトリクス、4は、化合物層、5は割れである。なお、マトリクス3が化合物層4と接している界面1aから鋳鉄の内部に亘って窒素の拡散層が形成されているが、図示していない。この拡散層が形成された箇所では球状黒鉛2が分散している。
先に説明したように、化合物層4には深い油溜りが形成されているので、この形態を割れ5として模式的に示している。割れ5は化合物層4の不均一生成により形成されると考えられる。割れ5の量や大きさは窒化処理法により異なり、塩浴窒化では量(単位面積当たりの個数)・大きさ(1個の径)が大であり、ガス軟窒化では、これらが小である。したがって、窒化法を選択することにより含油量をコントロールすることができる。
それぞれの組織の機能について説明すると、先ず、球状黒鉛2や片状黒鉛は潤滑性に寄与する。次に、鋳鉄基材1の組織中に、延性にすぐれたフェライトと、強度が高いパーライトとの混合組織とすることによって、所望の高強度が得られる。化合物層4はすぐれた耐摩耗性を有する。その表面4aは、窒化法により形成された化合物層が残る程度にラップ仕上げをし、平滑にするとより望ましい。即ち、化合物層の表面4aに鋭い凹凸があると、突出部が相手材を摩滅させて、相手材と鋳鉄摺動材料の間の潤滑油形成を妨げるからである。このような平坦面に割れ5から給油することにより、潤滑の少ない条件ではよりすぐれた性能を示す。
続いて、本発明が特徴とする割れ5は、化合物層4の表面4aから鋳鉄基材1の界面1a、即ち窒化により形成された拡散層との界面に向かって伸びている。但し、割れ5は、図2の紙面の平行方向での左右に及び直交方向での前後で蛇行しながら、下向きに伸びている。割れ5は前後左右への蛇行よりも下向きに向かう傾向が強いので、化合物層4全体に対して表示すると直線状となる。また、割れ5は紙面の直交方向に奥行きをもっているので、立体的には帯状である。このような割れ5は、通常の機械加工では穿孔が困難であるほど非常に細く、図2に表される幅は金属顕微鏡で観察すると2〜10μmである。また窒化面積当りの割れの個数は機械加工で穿孔困難なほど多数である。このような特長をもった割れ5に浸入した潤滑油は、潤滑剤が摺動面に十分に供給されている状態から潤滑切れが生じた状態までに亘って、焼付防止に寄与する。このために、本発明の摺動材料は耐摩耗性と耐焼付性を兼備することとなる。
以上説明した効果を請求項ごとに整理して述べる。
・ 請求項1:耐摩耗性がすぐれた化合物層と潤滑油の強制浸入によって、耐摩耗性と耐焼付性が改良される。
・ 請求項2:化合物層の表面から内部に向かう割れは窒化処理の際の不均一反応により形成されるために、機械加工では穿設できない程度の微細のものである。このために、窒化鋳鉄使用中に潤滑油が徐々に表面に浸出して潤滑性向上に寄与する。さらに、本発明で特定する組織をもつ鋳鉄に軟窒化などを施すと割れは形成されるが、この割れ自体により軟窒化の効果が消失することはなく、軟窒化により耐摩耗性が向上する。本発明においては、この効果を一歩進めて、割れを油溜りとして利用する。
・ 請求項3、4:真空脱気や加熱油中浸漬により潤滑油が微細な割れに強制的に浸入する。
・ 請求項5:Hv500〜1000の硬さにより摺動部材の耐摩耗性を良好なレベルに保つことができ、さらに割れの量・程度を適正な範囲に収めることができる。
・ 請求項6:化合物層が相手材を摩滅する、いわゆる「相手材攻撃性」を防止することができる。また割れから浸出した潤滑油が平坦な潤滑面に供給される。
・ 請求項7:化合物層が局部的に摩滅した場合、拡散層中の黒鉛が潤滑性に寄与する。
・ 請求項8:化合物層の不均一反応を促進するための十分な黒鉛量が確保され、さらに、鋳鉄基地の組織が所定のものに保たれる。
・ 請求項9:一般に広く使用されている鋳鉄である。鋳鉄の耐焼付性を改良するために、特殊成分を添加し、あるいは鋳造条件を特殊な条件にするなどの手段が必要ではなく、一般的組成・製法の鋳鉄の耐焼付性を改良することができる。
表1にJIS規格名を示す鋳鉄及び鋼材(寸法:25×40×5mm)にガス軟窒化処理、高周波焼入れ、浸ホウ素処理又はリン酸マンガン化成処理を施した。ガス軟窒化処理は、アンモニアガス、Nガス及びCOガス雰囲気中で、5〜10hの条件で行ない、窒化後の表面を厚さ1〜2μm除去して化合物層の表面を平坦化した。ガス軟窒化により形成された化合物層は厚さが200μm、硬さがHv800であり、浸ホウ素処理により形成された化合物層は厚さが100μm、硬さがHv1600であった。高周波焼入れにより形成された硬化層は硬さがHv700であった。比較例9はFeBを添加した改良FC350である。実施例については、潤滑油(油種:ギア油)の強制浸入処理を施した。強制浸入処理は、真空脱気、加熱油中浸漬のそれぞれについて行なった。また、実施例及
び比較例10の化合物層に割れが発生していることは断面を金属顕微鏡で観察して確認した。
供試材につき次の条件で且つ図3に示すように摩耗試験を行なった。
摩耗試験条件
試験機:往復摺動試験機
荷重:200kgf
ストローク:20mm
周波数:5Hz
試験時間:10時間
相手材12−SUJ2焼入半球
供試材13−平板
温度:室温
潤滑:グリース(リチウム石けん)
塗布量: 0.03g
さらに、次の条件で、図4に示すように耐焼付性試験を行なった。
摩耗試験条件
試験機:リングオンプレート試験機
荷重:荷重漸増15MPa/10min
回転数:1000rpm
温度:室温〜成り行き
相手材12−SUJ2焼入リング
供試材13−平板
潤滑:グリース(リチウム石けん)
塗布量:0.1g
試験の結果を表1に示す。





表1に示された比較例No.4,5の高周波焼入れ材は耐摩耗性がすぐれているが、耐焼付性は不良である。鉄鋼材料の浸ホウ素処理材(比較例No.6)は、高強度材であり、かつ耐摩耗性がすぐれているが、潤滑成分である黒鉛が存在しないために、耐焼付性が不良である。無処理球状黒鉛鋳鉄及び化成処理球状黒鉛鋳鉄は耐摩耗性と耐焼付性の両方が不良である(比較例No.7,8,9)。
比較例10はガス軟窒化による化合物層が形成され、また化合物層には割れが存在している。その性能はガス軟窒化処理を施さない比較例8よりもすぐれていることから、割れ自体は性能劣化をもたらさないことが分かる。但し、比較例10は、潤滑油強制浸入処理を施さず、単にグリース潤滑を行なった従来の窒化処理材である。これに対して本発明実施例は、潤滑油が化合物層の内部まで浸入しているために、耐摩耗性と耐焼付性の両方がすぐれている。
以上説明したように、本発明の摺動材料は建設、土木、鉱山などで使用されるブシュに適している。
Fe−N二元系状態図である。 本発明の摺動材料の表面組織を示す模式図である。 摩耗試験法を説明する図である。 焼付試験法を説明する図である。
1―鋳鉄基材
2―球状黒鉛
3―フェライト及びパーライトからなるマトリクス
4―化合物層
5―割れ

Claims (9)

  1. 主要組織が、黒鉛と、フェライト及びパーライトとからなる鋳鉄からなる基材の摺動面に、窒化により生成した化合物からなる層(以下「化合物層」という)が形成された高強度摺動材料において、前記化合物層の内部まで潤滑油を強制浸入したことを特徴とする高強度摺動材料。
  2. 前記化合物層の表面から内部に向かう割れに前記潤滑油を強制浸入したことを特徴とする請求項1記載の高強度摺動材料。
  3. 前記基材を真空中に曝露して、前記割れの内部を脱気し、脱気された該割れに潤滑油を強制浸入したことを特徴とする請求項2記載の高強度摺動材料。
  4. 前記基材を加熱油中に浸漬することにより前記割れに潤滑油を強制浸入したことを特徴とする請求項2記載の高強度摺動材料。
  5. 前記化合物層の硬度がHv500〜1000であることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項記載の高強度摺動材料。
  6. 前記化合物層の表面がラップ加工により平滑化されていることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項記載の高強度摺動材料。
  7. 前記化合物層より内部の窒素拡散層に、前記鋳鉄の組織成分である黒鉛粒子が分散していることを特徴とする請求項1から6までの何れか1項記載の高強度摺動材料。
  8. 前記鋳鉄が、炭素2〜4質量%及びケイ素1〜3質量%を含有し、残部がFe 及び不可避的不純物である請求項1から7までの何れか1項記載の高強度摺動材料。
  9. 前記鋳鉄が球状黒鉛鋳鉄又はねずみ鋳鉄である請求項8記載の高強度摺動材料。
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